子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について(中間報告)(案) はじめに

 この中間報告は,幼児教育の重要性について,国民各層に向けて広く訴えるものである。

 平成15年5月,中央教育審議会は,文部科学大臣から「今後の初等中等教育改革の推進方策について」の諮問を受けた。
 この諮問により検討を求められた多岐にわたる課題のうち,義務教育制度に接続するものとしての幼児教育の在り方について審議するため,初等中等教育分科会の下に,幼児教育部会を設置し,幅広い観点から審議を重ねてきたが,この度,中間的な報告を取りまとめ,公表することとした。
 教育は,常に子どもの望ましい発達や健やかな成長を期待し,子どもの持つ潜在的な可能性に働き掛け,その人格の形成を図る営みである。
 特に幼児期は,生涯にわたる人間形成の基礎が培われる重要な時期であり,このような幼児期に行われる教育は,子どもの心身の健やかな成長を促す上で極めて重要な意義を有するものである。

このような認識の下に,この中間報告では,子どもの視点に立ち,子どもの健やかな成長を期待して,小学校就学前のすべての幼児に対する教育の在り方を提唱している。具体的には,家庭,地域社会,幼稚園・保育所等の施設の三者を視野に入れて検討を行った。
 特に,幼稚園等の施設については,現在,幼稚園には約170万人,保育所には約190万人が在園しており,5歳児に限ると幼児の約95%が,いずれかの施設に在園している。
 幼稚園や保育所における教育については,幼稚園では,幼稚園教育要領に基づいた教育が行われている。一方で,保育所では,保育所保育指針に基づき,養護と教育を一体とした保育が行われている。この保育所保育指針は,3歳以上の幼児の教育に関しては,幼稚園教育要領との整合性を保ちながら定められている。
 このため,この中間報告では,保育所も含めて,広く幼児に対する教育機能を担う施設を「幼稚園等施設」と捉えて,幼児の健やかな成長のために必要と考えられる幼児教育の在り方について,考え方を取りまとめている。
 ただし一方で,希望する3歳以上の幼児に教育を行う学校である幼稚園と保育に欠ける0歳以上の幼児を保育する児童福祉施設である保育所には,その目的や機能において違いがあるため,幼稚園に対する個別具体的な方策を保育所等においても求めることは,必ずしも適当ではない場合がある。このため,この場合には,幼稚園にのみ言及している。

 この中間報告の構成については,第1章において,子どもを取り巻く環境の変化を踏まえて,今後の幼児教育の方向性として,(1)幼稚園等施設が中核となって,家庭や地域社会とともに幼児教育を総合的に推進していくことの必要性,(2)幼児の生活や発達・学びの連続性を踏まえて幼児教育を充実していくことの必要性等を提唱した。
 これらを踏まえて,第2章において,今後の幼児教育の充実のために,幼稚園に係る施策を中心に,幼児教育の具体的方策について提言を行った。

 中央教育審議会では,今後幅広く国民の皆様からの意見を伺いながら,さらに議論を深め,答申を取りまとめることとしている。

 なお,平成18年度から実施することとされている「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」(以下「総合施設」という。)の在り方についても議論を行ってきたところである。これについては,本年5月に設けられた中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会との合同の検討会議において,現在検討が行われていることから,同会議における検討結果を踏まえ,最終的な答申において取りまとめる予定である。

 この中間報告を機に,幼児教育の重要性について,社会全体で認識が深まり,議論の輪が広がることを期待している。
 また,現在,地方公共団体や事業主においては,次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定が求められているところである。幼児教育の充実に関する事項等については,この中間報告が十分に活用され,特に,地方公共団体にあっては,幼児教育の在り方について主体的に考え,その振興に積極的に取り組む契機となることを切に願う。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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-- 登録:平成21年以前 --