3.次世代の学校を実現するための指導体制強化

(1)基本的な考え方

  •   現在の学校が直面している様々な課題に対応し,「次世代の学校」の創生を実現するためには,それに見合った教職員定数の改善を図っていく必要がある。
  •   同時に,教員の質の向上を図る必要がある。新たな教育課題に対応できる知識・ノウハウを備えた教員の育成環境を整えるとともに,大量退職・大量採用を背景とした年齢・経験年数の不均等による若手教員への知識・技能の伝承の停滞を克服するべく,養成・採用・研修の一体改革を着実に進めることも必要である。
  •   「次世代の学校」は,教員の「質」と「数」の充実のみで実現するものではない。校長のリーダーシップの下,学校のマネジメント機能を強化し,組織として教育活動に取り組む体制を創り上げるとともに,必要な指導体制を整備することが必要である。その上で,生徒指導や特別支援教育等を充実していくために,学校や教員が心理や福祉等の専門家(専門スタッフ)や専門機関等と連携・分担する「チーム学校」体制を整備し,学校の機能を強化していくことが重要である。
  •   あわせて,学校現場の業務改善に向けた支援も必要である。「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」での検討を踏まえ,本年6月には,「学校現場における業務の適正化について(報告)」を取りまとめた。これに基づき,文部科学省としても,学校現場における業務の適正化に向けた支援に一層取り組む必要がある。
  •   上記の取組を総合的に進めることにより,次世代の学校の実現のための諸課題に対応した目標を達成することが必要である。

(2)「エビデンス」を活用した政策形成

  •   教育政策について質の向上を目指し,学校やその周辺環境に関する数量データ,事例等を調査・分析し,いわゆる「エビデンス」を活用した政策形成についての取組を一層推進することが重要である。「経済・財政再生アクション・プログラム」(平成27年12月24日 経済財政諮問会議決定)の中では,「少子化の進展及び小規模化した学校の規模適正化の動向,学校の課題に関する客観的データ等の学校・教育環境に関するデータ収集及び教育政策に関する実証研究の進展,地方自治体の政策ニーズ等を踏まえた予算の裏付けのある教職員定数の中期見通しを策定,公表,提示するとともに,データや教育政策の成果及び費用,背景にある環境要因を総合的に考慮して予算要求を行い,教育におけるPDCAサイクルを確立する」こととされている。
  •   同時に策定された「経済・財政再生計画改革工程表」では,平成28年度から平成32年度までの5年間を通して,「各種の加配措置,少人数教育,習熟度別指導等多様な教育政策に関する費用効果分析を含め,研究者・有識者からなる実効性ある研究推進体制の下で,一定数の意欲ある自治体等の協力を得て実施すること」,その際には,1知識・技能,思考力・判断力・表現力,学習意欲等,2コミュニケーション能力,自尊心・社会性等の非認知能力,3児童生徒の行動といった「多面的な教育成果・アウトカムの測定」「子供の経時的変化の測定」を行い,その際には,「学校以外の影響要因の排除等も考慮」することとされている。
  •   具体的には,以下の基本方針に沿って,国として実証研究を進めることとする。

*  教育の目的の多面性と教育の手段の多様性を踏まえて,(1)政策効果や(2)現場における政策ニーズを総合的に把握するための(i)量的研究及び(ii)質的研究を組み合わせて実施。
*  地方自治体の協力を得つつ,国立教育政策研究所や大学等の研究者・有識者により実証研究を実施。関連施策の費用と効果について把握・分析。
*  学校や児童生徒の状況全体を通じた政策の効果を評価するためには,政策と目指す教育目的との間をブラックボックス化せず,学校で教育活動が実際にどのように展開されているのかなど,教育の過程に着目した研究が必要。
*  個々の研究結果が,特定のサンプルに関する特定の条件下でのものであることを踏まえ,政策が実施される背景にある環境要因も総合的に考慮しつつ,多様な研究成果を踏まえて,全体としての傾向を把握することが必要。
*  これらの研究成果を踏まえ,教育政策について質の向上を図りつつ,PDCAサイクルを確立。

  •   一方,実際に公立学校の管理運営や教職員人事等を担うのは各地方自治体である。これまでも地方自治体は,定量的・定性的な調査等を通じてエビデンスを示してきているところであり,政策形成においては,こうした蓄積も踏まえる必要がある。

(3)「次世代の学校」指導体制強化に向けた中期見通しの策定

  •   教職員定数については,前述の「経済・財政再生アクション・プログラム」及び「経済・財政再生計画改革工程表」において,少子化の進展及び小規模化した学校の規模適正化の動向,学校の課題に関する客観的データ等の収集及び実証研究の進展,地方自治体の政策ニーズ等を踏まえた予算の裏付けのある教職員定数の中期見通しを策定,公表,各都道府県・指定都市に提示することが定められている。
  •   前述のとおり,第7次教職員定数改善計画(平成13~17年度)の完成から10年以上,新たな定数改善計画は策定されていない。一方,教職員の任命権者である都道府県・指定都市教育委員会にとって,「予算の裏付けのある教職員定数の中期見通し」が示されることは,中長期的視点に立った教職員人事を実現する観点からも大変重要であり,地方自治体のワイズ・スペンディングにも寄与するものである。
  •   このため,10年程度を視野に入れた中期見通しとして,「「次世代の学校」指導体制実現構想(仮称)」を策定するとともに,公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を改正し,平成29年度から,「基礎定数」と「加配定数」の性質(※19) を踏まえた計画的かつ効果的な教職員定数の改善を行う必要がある。
  •   各都道府県や指定都市にとっての予見性を高める観点からは,基本的には,必要な加配定数を確保しつつ,客観的条件に応じて算定される基礎定数の拡充を目指すべきである。
  •   特に,現在加配定数で措置されている通級による指導や外国人児童生徒等教育のための教員については,(4)2に掲げるように,対象となる児童生徒数に応じて算定する基礎定数へと転換することが必要である。
  •   なお、「「次世代の学校」指導体制実現構想(仮称)」に基づく教職員定数の改善を行う場合においても,厳しい財政事情を勘案して,真に必要性の高い事項に限定することにより,国民に追加的な財政負担を求めないように最大限努めるべきである。

(4) 実現構想(仮称)に盛り込むべき事項

1 学習指導要領改訂による「社会に開かれた教育課程」の実現

  •   急激な社会的変化の中でも,子供たちに未来の創り手となるために必要な資質・能力を育むため,中央教育審議会において,学習指導要領の改訂による教育課程の充実について検討を進めている。新しい学習指導要領は,過去の改訂スケジュールを踏まえて実施されれば,小学校では平成32年度から,中学校では平成33年度から全面実施される予定である。
  •   主体的・対話的で深い学びを実現するための授業改善や教材研究,カリキュラム・マネジメントや学習評価の充実,子供一人一人の学びを充実させるための少人数によるきめ細かな指導の充実など,次期学習指導要領における指導や業務の在り方に対応するため,教職員定数の充実が求められる。

【専科指導の充実等】

  •   教育課程の編成・実施状況調査によると,特に小学校高学年において,理科や音楽などを中心に専科指導を行う学校の割合は年々増加しているところである。こうした専科指導の充実は、子供たちの個性に応じた得意分野を伸ばしていくためにも重要である。
  •   特に,小学校における外国語活動については,中学年から「聞く」「話す」を中心とした外国語活動を,高学年から発達段階に応じて段階的に文字を「読むこと」及び「書くこと」を加えた、領域を総合的・系統的に扱う教科学習を行う方向で検討されている。こうした状況に対応するためには,専科指導を行う教員の養成・確保や中学校教員の活用など,専門性を一層重視した指導体制を構築する必要がある。
  •   加えて,学習内容が高度化する小学校高学年においては,指導の専門性の強化が課題となっている。観察・実験,実習等の学習活動が多い教科(例えば理科,音楽科等)を中心に,専科指導を進めるための戦略的な定数の充実が必要である。
  •   2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として,優れたアスリートと学校教育との関わりを強化することも有意義である。こうした関わりにおいては,部活動のみならず,小学校体育専科教員,中学校・高校の体育教員として活用することも,専門性を重視した指導という観点から有効であると考えられる。この場合,特別免許状や特別非常勤講師の活用を図るとともに,これらの者について,教員等として必要な能力や専門性の担保が十分担保されるよう,選考や研修等で適切に対応することも必要である。

【少人数によるきめ細かな指導の充実】

  •   少人数によるきめ細かな指導については,各地方自治体や学校現場の判断により,地方独自の少人数学級のほか,ティーム・ティーチング,習熟度別少人数指導など様々な方法で進められている。
  •   こうした少人数による指導は,「アクティブ・ラーニング」の視点に立った学びを効果的に進めるためにも,一層重要性を増している。
  •   特に,小学校においては,発達段階に応じてそれぞれ異なる課題が見受けられるとの指摘もある。低学年においては,その2年間に表れた学力差が,その後の学力差の拡大に大きく影響しているとの課題が指摘されていること,中学年においては,指導事項も次第に抽象的な内容に近づいていく段階であり,そうした内容を扱う学習に円滑に移行できるような指導上の配慮が課題であること,高学年においては,子供たちの抽象的な思考力が高まる時期であり,教科等の学習内容の理解をより深め,育成すべき資質・能力の育成に確実につなげるためには,指導の専門性の強化が課題とされており,こうした点を踏まえた指導体制の確立が必要である。
  •   一方,独自の少人数学級を進めている地方自治体からは,これまでの少人数学級の成果やニーズに基づく少人数学級推進の要望が多くあることも踏まえる必要がある。また,諸外国と比して学級規模が大きいという点にも留意する必要がある。
  •   こうした状況を踏まえ,今後の少人数教育の推進に伴う教職員定数の在り方については,学校現場において様々な方法のベストミックスを実現できるようにしつつ,学年段階や児童生徒の習熟の状況等に応じて推進することが必要である。

2 多様な子供たち一人一人の状況に応じた教育

【障害のある児童生徒の指導】

  •   通級による指導については,障害の状態や教育上必要な支援の内容等が個々に異なる児童生徒(※20) に対して,通常の学級での学習におおむね参加することを前提とした上で,より個別的で,より児童生徒一人一人の教育的ニーズに即した,適切な指導及び必要な支援を提供するものである。
  •   通級による指導のために必要な教員については,現在,加配により措置されており,毎年度の予算編成過程等を通じて総数及び各自治体への配分数が決定されることになっている。換言すれば,教員数に合わせて通級による指導を受けられる児童生徒数や指導時数が決まる仕組みとなっている。
  •   一方,通級による指導に関する専門性を有する教員の養成・確保,通級による指導を必要とする児童生徒数の動向,客観的根拠に基づく指導の効果等を踏まえれば,平成29年度から,通級による指導を必要とする児童生徒数に応じて,教職員定数が措置される仕組みとし(基礎定数化),指導体制の充実を図るべきである。
  •   また,通級による指導を受ける児童生徒であっても,ほとんどの授業を通常の学級で受けることから,通常の学級における指導体制の充実についても検討すべき課題である。
  •   これまでも進めてきたインクルーシブ教育システム構築に向けた特別支援教育の推進に加え,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が本年4月から施行されたこと等に伴い,学校内の関係者や医療・福祉等の関係機関との連絡・調整等を担う特別支援教育コーディネーターの重要性が一層高まっている。特別支援学校のみならず,小学校・中学校等においても,拠点校(大規模校・対象児童生徒が多数いる学校)を中心に,学級担任等を持たないなど,主たる職務として特別支援コーディネーターの役割を担う教員を配置できるよう定数措置を進めることが必要である(※21) 。
  •   あわせて,特別支援学校における教員の特別支援学校教諭免許状の保有率が7割程度である現状を踏まえ、これを100%に引き上げることを目指すとともに,特別支援学級を担当する教員の同免許状の保有率向上や通級による指導を担当する教員の専門的な研修の受講の促進を図るなど、指導体制の質的な強化も必要である。

【外国人児童生徒等(※22) 教育】

  •   外国籍の児童生徒に加え,日本国籍であるが,両親のいずれかが外国籍である等の外国につながる児童生徒など外国につながる子供たちが進学・就職し,日本の社会に適応して経済・社会的に自立すること,また,我が国と母国の架け橋となるグローバル人材として活躍することは,我が国の経済・社会の安定・発展にとって有意義である。加えて,共に学ぶ日本人児童生徒にとっても異文化理解能力やコミュニケーション能力の向上といった効果も期待できる。
  •   平成26年には,日本語指導が必要な児童生徒に対して特別の教育課程の編成・実施を可能とする制度改正を行い,取り出しによる日本語指導と教科指導の統合的指導を進めている。
  •   一方,外国人児童生徒等教育に必要な教員についても,加配により措置されており,日本語と教科の統合的指導,生活指導等を含めた総合的な指導を行っている。前述の障害のある児童生徒に対する通級による指導の場合と同様の課題等を踏まえれば,平成29年度から,これらの指導を必要とする児童生徒数に応じて,教職員定数が措置される仕組みとし(基礎定数化),指導体制の充実を図るべきである。
  •   さらには,在籍学級における指導体制の充実やこうした教員をバックアップする日本語指導支援員や母語支援員の充実を図り,全ての外国人児童生徒等が適切な支援を受けられる体制を整備する必要がある。

【貧困等に起因する学力課題の解消に向けた取組の強化】

  •   これまでの研究等により,所得をはじめとした家庭の社会経済的背景と学力との間には明らかな相関関係が見られるとの指摘もある(※23) 。こうした状況を踏まえ,習熟度別少人数指導や学校におけるきめ細かい指導(放課後の学習相談や,学習の補助,授業への入り込み補助,抽出による補充学習など),家庭学習のサポートなど,学力保障のための指導体制を充実するための教員定数の拡充を図る必要がある。
  •   また,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置等と組み合わせた集中的な支援により,学力保障のために重点的な支援を必要とする学校における課題の解消を目指すことが必要である(※24) 。

【いじめ・不登校等の未然防止・早期対応の強化】

  •   現在,生徒指導の観点から設けられている定数措置としては、学級数が一定規模以上の学校に対して基礎定数として措置しているもの(※25) と,児童生徒支援のための加配定数として措置しているもの(※26) とがある。
  •   いじめ・不登校等の未然防止や早期対応のためには,一人の学級担任等だけが抱え込むのではなく,組織的な指導体制を構築することが不可欠である。
  •   そのためには,児童生徒数で一定規模以上の学校については,担当する授業時数が軽減され,学校現場の諸課題の対応において中心的な役割を担う教員(児童生徒支援専任教員)の配置を可能とするため,基礎定数を拡充すべきである。
  •   特に,小学校は学級担任制であり,日中,学級担任が生徒指導に十分な時間を費やすことが困難であることや,近年暴力行為発生件数が増加するなど,生徒指導上の課題が複雑化,困難化していることに鑑み,小学校を中心に専任教員の配置の充実が必要である。
  •   また,こうした教員をバックアップするスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門スタッフの配置拡充を図る必要がある。
  •   あわせて,教育支援センターを全国展開・強化するとともに,不登校の子供に配慮した特別の教育課程を編成する学校(不登校特例校)の設置を促進することが重要である。教育再生実行会議第9次提言において,都道府県が不登校特例校を設置する場合にも,国からの同様の支援が受けられるよう,制度の見直しを検討することが提言されている。この点も踏まえ,現在,国庫負担の対象外とされている都道府県立小・中学校の教職員の給与(※27) について,不登校特例校等を国庫負担の対象とするための制度改正を検討すべきである。
  •   こうした取組を通じ,全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り,安心して教育を受けられるようにする体制を確立する必要がある。

3 「次世代の学校・地域」創生プランの推進

【教員研修の充実】

  •   近年の教員の大量退職を受け,初任者研修の対象者は,この10年間で約1.5倍となっている(※28) 。
  •   初任者研修は,主としてOJTから成る校内研修と,教員研修施設等において実施される校外研修とで構成されている。このうち,小・中学校の校内研修については,地域の拠点校に初任者指導教員を配置し,拠点校を含む複数の学校に配置されている初任者の指導に当たる「拠点校方式」を基本としており,初任者指導教員を加配により措置している。
  •   「拠点校方式」については,「通常,1人の初任者に対して週1回程度しか指導に当たれず,初任者に対し継続的に十分な指導を行うことが困難な場合が見受けられる」「初任者指導教員に初任者の指導を任せてしまい,学校として責任をもって初任者の育成に組織的に取り組む体制が十分に構築されていない場合も見受けられる」との指摘(※29) がなされている。
  •   また,加配措置については,「機械的な配置基準(初任者4人に加配教員1人)の見直しを行うべき」「異なる免許の加配教員を指導員として配置することを止め」るべきとの指摘(※30) もされている。一方,初任者研修のための加配教員については,拠点校方式が導入された平成15年度以降,加配教員数は固定されており,実際には,そもそも初任者4人に加配教員1人という配置基準は達成されていない状況にある。
  •   初任者に対しては,各種研修を受講する必要性等から,学校現場において,学級担任を持たせない等の業務負担上の配慮を講じていることがある。こうした点について,「1多くの県で行われている初任者への特別な配慮との兼ね合い,2実際の担任を受け持つ初任者の割合との関係,などを踏まえ,現在の機械的な加配措置の配置基準(初任者4人に加配教員1人)の見直しを行うべき」との指摘(※31)もある。一方,業務上の配慮の有無にかかわらず,教員の質の向上のためには,経験豊かな教員のサポートを伴うOJTが必要であることには変わりはない。
  •   これらの点を踏まえ,初任者研修のための加配については,必要数をしっかり確保した上で,加配により措置された教員が直接初任者を指導する形態だけに限らず,初任者指導に当たる校内教員の後補充にも使えるような運用上の改善,現在でも制度上認められている再任用短時間勤務教員の活用促進等により,これまで以上に効果的な加配教員の活用を促進するべきである。
  •   また,最近では,若手教員の育成の強化を図るため,2年目・3年目研修を実施するなど若手教員のための研修を継続して実施する例や,メンター方式により,校内のベテラン・ミドルリーダークラスの教員が,若手教員のみならず臨時的任用や非常勤の教員も含めて研修を行い、成果を上げている例も見られる。
  •   こうした取組を支援し,教員全体の質の向上につなげるため,若手教員が多い,又は,若手教員の割合が高い学校を中心に,他の教員に対して指導・助言できる指導教諭等を加配できるよう,必要な措置を講じるべきである。
  •   また,多忙を極める教員の研修機会を確保するためには,研修等定数の充実を図る必要がある。

【チーム学校の整備】

  •   学校が抱える課題が複雑化・困難化している状況の中,学習指導要領の改訂及び実施(平成32年度~)に合わせた次世代の学校指導体制の基盤として,教員に加えて,事務職員や,心理や福祉等の専門家(専門スタッフ)が学校運営や教育活動に参画し,それぞれの専門性を生かして,子供たちに必要な資質・能力を身につけさせることができる学校(チーム学校)を整備していくことが必要である。
  •   特に,事務職員については,学校運営事務に関する総務・財務等の専門性を有する,ほぼ唯一の職員であり,学校経営職員として位置づけ,情報管理や危機管理,地域連携等にも積極的に携わっている例も見られる。事務職員には,総務・財務等の専門性も生かしつつ,より広い視点に立って,学校運営について更に役割を担うことが期待されており,その役割の拡大に応じた学校事務体制の充実を図ることが必要である。
  •   このため,事務職員の職務規定の見直しや,学校事務の共同実施を行うための組織の法律上明確化を進めるとともに,複数の事務職員を配置するための配置基準の引下げや,共同実施体制強化のための定数措置の充実を進めることが必要である。
  •   また,子供が抱える困難の背景には心の問題,家庭環境の問題等が混在することから,教員をバックアップする体制が必要であり,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの職務等を法令上明確化し,配置を充実することが必要である。
  •   あわせて,全国的な配置の進捗状況を踏まえ,これらを各学校に置くべき職として位置づけ,将来的に国庫負担の対象とすることも検討する必要がある。
  •   さらに,部活動の指導を充実するためには,部活動の指導,顧問単独での引率等を行うことができる部活動指導員(仮称)を省令上位置付けるべきである。
  •   こうした専門スタッフの参画は,学校において単なる業務の切り分けや代替を進めるものではない。教員と専門スタッフとがそれぞれ異なる専門性を活かし,また,地域人材も含めて適切な連携・分担することにより,学校の機能を強化するために行われる必要がある。

【提案型「先導的実践加配制度」の創設】

  •  加配定数については,これまでも,指導方法の工夫改善や児童生徒支援などのほか,教育指導の改善等に関する特別な研究を行う場合(例:研究開発学校制度(※32) )に加配するなど,教育改革の取組を促す政策ツールとして大きく貢献してきている。
  •   一方,加配定数措置の実効性は,教育委員会と現場における加配の活用方法にかかっており,加配による教育活動の成果を把握・評価し,加配の有効活用の意識を高めていくことが求められる。
  •   このため,義務教育の機会均等や水準の維持向上といった義務教育費国庫負担制度の趣旨に則しつつ,各地方自治体からの提案による教育政策と連動した配分枠を創設し,全国的な教育課題の解決に寄与する先導的な教育政策の実証研究を促進することが必要である。
  •   その際には,加配定数の配分方針及び配置後の効果の多面的な評価を進め,加配措置のより効果的な活用やPDCAサイクルの確立に向けた取組を促進することが考えられる。
  •   あわせて,各都道府県においては,各市町村・学校の状況に応じたメリハリのある配置を進めることを徹底すべきである。




(※19)基礎定数は,学級数や児童生徒数に連動するため,教職員の安定的・計画的な採用・配置を行いやすくなる一方,機動的な政策対応になじみにくい性質がある。これに対し,加配定数については,その時代の教育課題に対応した政策目的や地域の事情等に応じたきめ細かな定数措置が可能となる一方,毎年度の予算編成の中で数が決定するため,安定的・計画的な教職員の確保につながりにくいという性質がある。
(※20)小・中学校等における通級による指導の対象については,学校教育法施行規則第140条において,1言語障害者,2自閉症者,3情緒障害者,4弱視者,5難聴者,6学習障害者(LD),7注意欠陥多動性障害者(ADHD),8その他障害のある者で,この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの,と規定されている。さらに,8については、平成14年の文部科学省初等中等教育局長通知において,肢体不自由,病弱及び身体虚弱が「その他障害」に該当すると示されている。
(※21)特別支援教育コーディネーターは,各学校における特別支援教育の推進のため,主に,校内委員会・校内研修の企画・運営,関係機関・学校との連絡・調整,保護者からの相談窓口などの広範な役割を担う。特別支援教育コーディネーターの公立学校における指名率は,小学校100.0%,中学校99.9%。一方,専任率は,小学校13.7%,中学校14.1%(平成26年度)。
(※22)外国籍の児童生徒に加え,日本国籍であるが,両親のいずれかが外国籍である等の外国につながる児童生徒を指す。
(※23)「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」国立大学法人お茶の水女子大学(平成26年3月28日)
(※24)例えば,児童生徒の就学援助率が2割以上の公立小中学校(児童生徒数10人未満の学校を除く。)のうち,平成27年度全国学力・学習状況調査の結果が,1いずれかの科目で,全国下位25%の児童生徒が半数以上を占めている,2全ての科目の平均正答率が全国平均よりも5ポイント以上低い,のいずれかの条件を満たす学校は,全国で約1,000校程度と推計される。
(※25)標準法7条1項3号の規定により,小学校30学級以上で2校に1人,中学校18~29学級で1人,30学級以上で2校に3人が配置し得ることとされている。
(※26)標準法15条第2号によるもの。同号の加配の中には、いじめ、不登校や問題行動への対応を目的とするもののほか,教育格差解消や外国人児童生徒等教育,学校統合支援,小規模学校支援などを目的とするものが含まれる。
(※27)現在,都道府県立の学校では,中高一貫教育(連携型・併設型)を行う中学校についてのみ国庫負担の対象
(※28)小・中・特別支援学校の初任者研修対象者 平成16年度:16,106人,平成26年度:23,822人
(※29)中央教育審議会「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~(答申)(中教審第184号)」
(※30)財務省「平成28年度予算執行調査」
(※31)同上
(※32)教育課程の基準の改善に資する実証的資料を得るため,学習指導要領等現行の教育課程の基準によらない教育課程の編成・実施を認め,新しい教育課程,指導方法等について研究開発を行う制度


お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年11月 --