資料2-1 チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申(素案))【骨子】

1.背景

教育活動の更なる充実の必要性

 我が国の教員は、学習指導、生徒指導等、幅広い業務を担い、子供たちの状況を総合的に把握して指導し、高い成果を上げている。一方で、新しい時代の子供たちに必要な資質・能力を育むためには、教育活動の更なる充実が求められている。

学習指導要領改訂の理念を実現するための組織の在り方

 子供たちに、必要な資質・能力を育むためには、学校が、社会や世界と接点を持ちつつ、多様な人々とつながりを保ちながら学ぶことができる開かれた環境となることが不可欠であり、これからの教育課程には、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会の変化に目を向け、柔軟に受け止めていく「社会に開かれた教育課程」としての役割が期待されている。
  この理念を実現していくためには、各学校において、「アクティブ・ラーニング」の視点を踏まえた不断の授業方法の見直し等による授業改善「カリキュラム・マネジメント」を通した組織運営の改善に一体的に取り組むことが重要である。
 さらに、「コミュニティ・スクール」や様々な地域人材等との連携・協働を通して、保護者や地域の人々を巻き込み、教育活動を充実していくことも求められている。

複雑化・多様化した課題

 その一方で、社会や経済の変化に伴い、子供や家庭、地域社会も変容し、生徒指導や特別支援教育等に関わる課題が複雑化・多様化しており、学校や教員だけが課題を抱えて対応するのでは、十分に解決することができない課題も増えている

学校や教員の役割、業務の見直し

 また、我が国の学校や教員は、欧米諸国の学校と比較すると、多くの役割を担うことを求められており、子供に対して総合的に指導を行うという利点がある反面、役割や業務を際限なく担うことにもつながりかねない側面がある。国際調査においても、我が国の教員は、幅広い業務を担い、労働時間も長いという結果が出ている。
  学校や教員の役割は、子供に必要な資質・能力を育むことであり、業務改善の視点から、家庭や地域社会との役割分担を見直し、必要な資質・能力を子供に育むための教育活動に学校や教員が重点を置いて取り組むことができるように、体制を整備するとともに、家庭や地域社会の理解と支援を得ることが求められる。

複雑化・多様化した課題を解決するための組織の在り方

 その上で、生徒指導や特別支援教育等を充実していくために、学校や教員が、心理や福祉等の専門家や専門機関と連携・協働することが求められていることから、心理や福祉等の専門能力スタッフが学校教育に参画する体制を整備していくことが重要である。

「チームとしての学校」の必要性

 以上のように、学校が、複雑化・多様化した課題を解決し、子供に必要な資質・能力を育んでいくためには、教職員一人一人が、自らの専門性を発揮するとともに、心理や福祉等の専門能力スタッフの参画を得て、課題の解決に求められる専門性や経験を補い、組織として成果を上げることができる「チームとしての学校」の実現が求められている。
  また、「チームとしての学校」を国・私立学校で推進するに当たっては、その位置付け等に配慮し、各学校の取組に対する必要な支援の在り方を検討していく必要がある。

2.3つの視点

 「チームとしての学校」を実現するためには、次の3つの視点が重要である。

専門性に基づくチーム体制の構築

 まず、教員が、学校や子供たちの実態を踏まえ、学習指導や生徒指導等に取り組むため、指導体制の充実が必要である。加えて、心理や福祉等の専門能力スタッフについて、学校の職員として、職務内容等を明確化し、質の確保と配置の充実を進めるべきである。

学校のマネジメント機能の強化

 また、「チームとしての学校」が機能するよう、管理職等に優れた人材を確保するための取組を推進するとともに、主幹教諭の配置促進や事務体制の充実等により、学校のマネジメント機能を強化することが必要である。

教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備

 さらに、教職員一人一人が力を発揮できるような環境整備も重要である。教育委員会や校長は、人事評価や表彰制度等を有効に活用し、人材育成に取り組むとともに、教職員が自らの力を十分に発揮できるよう、学校の業務改善を推進していくべきである。

3.具体的な改善方策

(1)教職員の指導体制の充実

1.教職員の指導体制の充実

  • 国、教育委員会は、教員が自らの専門性を発揮するとともに、授業準備や研修等に時間を充てることにより、その資質を高めることができるよう、教員の業務を見直し、事務職員や他の専門能力スタッフの活用を推進する。
  • 国、教育委員会は、「アクティブ・ラーニング」の視点を踏まえた不断の授業方法の見直し等による授業改善や、いじめ、特別支援教育等に対応するため、必要な教職員定数の拡充を図る。

2.教員以外の専門能力スタッフの参画

1)心理や福祉の専門性等を有する専門能力スタッフ
  • 国は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを学校等において必要とされる標準的な職として、職務内容等を法令上、明確化することを検討する。
  • 国は、教育委員会や学校の要望等も踏まえ、日常的に相談できるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡充、資質の確保を検討する。
2)授業等において教員を支援する専門能力スタッフ
  • 国、教育委員会は、ICT活用のスキルを持った専門人材等の確保、活用を図りつつ、ICT支援員を養成し、学校への配置の充実を図る。
  • 国、教育委員会は、資格・養成の在り方の検討や研修の実施など、学校司書の専門性を確保する方策を検討・実施するとともに、その配置の充実を図る。
  • 国、教育委員会は、効果的なティーム・ティーチングが可能となるよう外国語指導助手の指導力向上のために必要な研修を実施する。
  • 国は、JETプログラムによる外国語指導助手の配置について、所要の地方財政措置を講じる。地方公共団体は、JETプログラムの積極的活用を図るとともに、学校や教職員をサポートする英語の専門人材に対する支援の充実を検討する。
  • 国は、多彩な人材の積極的参加による地域ぐるみの教育を推進するため、学校や教職員をサポートするスタッフを配置する地方公共団体に対する支援の充実を検討する。
3)部活動に関する専門能力スタッフ
  • 国は、学校が、地域や学校の実態に応じ、部活動等の指導体制を整えることができるよう、教員に加え、部活動等の指導・助言や各部活動の指導、顧問、単独での引率等を行うことを職務とする職員を部活動指導員(仮称)として、法令上に位置付けることを検討する。
  • 教育委員会等は、部活動指導員(仮称)の任用に際して、指導技術に加え、学校全体や各部の活動の目標や方針、生徒の発達段階に応じた科学的な指導等について理解させるなど必要な研修を実施することを検討する。
4)特別支援教育に関する専門能力スタッフ
  • 国は、医療的ケアを必要とする児童生徒の増加に対応するため、特別支援学校における看護師等配置に係る補助事業を拡充し、配置人数を増加させる。
  • 国は、特別支援教育支援員について、配置実績に応じた所要の地方財政措置を講じる。

3.地域との連携体制の整備

  • 国は、地域の力を生かした学校教育の充実や学校全体の負担軽減、マネジメント力の向上を図るため、学校内において地域との連携の推進を担当する教職員を地域連携担当教職員(仮称)として法令上明確化することを検討する。

(2)学校のマネジメント機能の強化

1.管理職の適材確保

  • 国、教育委員会は、校長がリーダーシップを発揮し、学校の教育力を向上させていくため、副校長の配置や教頭の複数配置など、校長の補佐体制を強化するための取組を検討する。
  • 国、教育委員会は、副校長及び教頭が力を発揮することができるよう、教頭と事務職員の分担の見直しなど事務体制の整備や、主幹教諭の配置等の取組を進める。
  • 国は、教育委員会が実施する管理職研修の充実のため、プログラムの開発など必要な支援を行う。

2.主幹教諭制度の充実

  • 国は、主幹教諭が本来、期待される役割を十分に担い、校長、副校長、教頭を補佐し、主幹教諭のさらなる配置を促進するための加配措置を拡充することを検討する。

3.事務体制の強化

  • 国は、事務職員の職務規定等を見直し、事務職員が、学校における総務・財務等の専門性等を生かし、学校運営に関わる職員であることについて法令上、明確化することを検討する。
  • 学校事務体制の強化を図るための定数措置など、事務体制の一層の充実を図る。
  • 国は、事務機能の強化を推進するため、事務の共同実施組織について、法令上、明確化することを検討する。
  • 国は、事務職員が、管理職を補佐して学校運営に関わる職として、自らの専門性を伸ばしていくことができるよう、事務職員を対象とした研修プログラムを教育委員会や事務職員の関係団体等と協力して開発するとともに、開発したプログラムをもとにした各教育委員会における研修の実施を支援する。

(3)教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備

  • 教育委員会は、評価者研修を実施するとともに、地方公務員法の趣旨を踏まえ、人事評価の結果を任用・給与などの処遇や研修に適切に反映させることによって、教職員一人一人の成長を促していく取組を進める。
  • 国は、文部科学大臣優秀教職員表彰について、教職員個人だけでなく、学校単位、分掌単位等の取組を表彰することを検討する。あわせて、表彰された教職員の実践や指導力を活用する方策を検討する。

2. 業務環境の改善

  • 国は、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」(平成27年7月27日 文部科学省)等を活用した研修を実施することなどにより、教育委員会の業務改善を支援する。
  • 教育委員会、学校は、「教職員のメンタルヘルス対策について(最終まとめ)」(平成25年3月29日 教職員のメンタルヘルス対策検討会議)等も参考に、メンタルヘルスに係る一次予防や復職支援等に取り組む

3. 教育委員会等による学校への支援の充実

  • 国、都道府県は、小規模の市町村において指導主事の配置が進むよう引き続き支援する。
  • 国は、学校の教職員が、保護者や地域からの要望等に対応するため、弁護士等の専門家から支援を受けたり、専門的な知見を直接聞いたりすることができるような仕組みを教育委員会が構築することを支援する。
  • 国、教育委員会は、警察や弁護士会等の関係機関、関係団体と連携し、不当な要望等への対応について、実例等に基づいた研修を実施する。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年01月 --