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第3章 地域の教育力の充実と地域における学校との協働体制の在り方について

第1節 地域における学校との連携・協働の意義について

1.地域の教育力に関する課題

 現在の地域の状況を見ると、高齢化や人口減少、厳しい財政状況の中で、地域課題・社会課題が増加していることは第1章でも触れたところである。こうした課題が地域において解決できない要因の一つには、地域で活動してきた社会教育関係団体等が、少子化等の影響により活動への参加者が十分に集まらないなど、その活動を縮小する傾向があり、また、従来の地縁による団体が地域において担っていた教育力が低減していることも挙げられる。

 現代社会の変容の中、こうした社会教育関係団体の努力等の他に、地域社会に必要とされるのは、これまで提供されてきた行政サービスなどの維持といったいわゆる「公助」を期待する地域住民の受け身の意識ではなく、「互助・共助」の視点から、自ら生活する地域を創っていく、という地域住民の主体的な意識である。こうした意識の醸成のためには、地域住民が「学び」を通じて新たな関係を作り、それぞれで考え、成長していくことが必要である。

 家庭についても、子供の教育について関心が高い家庭がある一方で、様々な状況もあり家庭教育を行うことが困難になってしまっている家庭もあり、家庭教育の二極化とも言える状況が見られる。地域で活動する側においては、そうした多様化する家庭の状況について理解を深めることが必要である。

2.地域の教育力の充実のために学校と連携・協働することの意義

 地域が学校と連携・協働することは、子供たちの教育環境の充実に資することにとどまらず、地域がその教育力を高め、持続可能な地域づくりにもつながるものである。

 まず、学校教育については、第1章でも述べたように、今後、学校内に閉じない「社会に開かれた教育課程」の実現が必要とされており、社会教育との連携も重要とされている。一方、子供たちへの教育は学校だけで完結するものではない。特に変化の激しい時代にあって、地域住民や企業、NPOなど様々な専門知識・能力を持った地域人材が関わることで、将来を生き抜く子供たちに必要な知識・能力を育成することができる。

 また、地域の大人は、子供が関わる事件に際して、そのことをどこに連絡・相談したら良いのか分からないとの実態もあり、まずは学校に関する活動の中で、気軽に子供たちに声をかけることから始めてみることも重要であり、学校と地域の連携の中で子供の様子を見守っていくことが重要である。

 これらの状況の下で、地域における学校との連携・協働を進めていく際には、何よりも子供を中心の軸において検討することが必要である。すなわち、変化の激しい社会の中で、次代を担っていく子供に対して、どのような資質を育むのかという目標を共有して、地域社会と学校が協働して子供の教育に取り組んでいく必要がある。

 このように、子供の教育という共通の旗印の下に、地域住民がつながり、地域と学校が協働することで、従来の地縁団体だけではない新しい人と人のつながりも生まれる。さらに、地域社会の課題解決にも、地域の一員として学校も関わっていくことにつながる。このため、真の意味で地域と学校が協働することを目標としていく必要がある。

 地域社会の側においても、これまでの単なる「学校支援」を超えた体制整備が必要である。社会教育の実施体制を強化しつつ、それぞれの地域の状況に合ったコーディネート機能を構築するとともに、学校のパートナーとしての機能・実態を持った地域社会を維持することが必要である。

 例えば、郷土の伝統文化や地域防災、子供との接し方など、大人が子供に教えるためには、まず大人が学ばなければならない。学校に関わることは、すなわち大人の学びが豊かになることであり、子供の教育を軸として、学校教育と社会教育は表裏一体の関係であると言える。

 そのため、社会教育施設をはじめとする学びの場やICTを活用したものも含め、多様な形態による学習機会を整備することなど、今後も社会教育の役割の重要性を踏まえた取組を推進していく必要がある。

 地域の教育力の再生・充実は、地域の課題解決や地域振興に向けた連携・協働につながり、持続可能な地域社会の源となる。また、人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される「生涯学習社会」の構築に資するものである。

第2節 地域における学校との連携・協働の現状等について

1.これまでの地域における学校との連携・協働の現状

(1)これまでの地域における学校との連携・協働の経緯等

 学校週5日制への移行に向け、少子化の進展ともあわせて、学校・家庭・地域社会の相互の連携が重要になってきた。平成10年から11年にかけて改訂され、平成14年度からの学校週5日制の完全実施と併せて実施された学習指導要領では、新たに設けられた「総合的な学習の時間」等を活用して、各教科等の学習で得た知識を様々な体験活動の中で実感を持って理解することや、学び方やものの考え方を身に付けさせるなど、生涯学習の基礎ともなる「生きる力」の育成が必要とされたところである。

 家庭や地域では、豊富な生活体験、社会奉仕体験、自然体験などを経験させ、子供たちに豊かな心やたくましさなどの「生きる力」を育むため、地域で子供を育てる環境を整備することとされ、平成11~13年度まで「全国子どもプラン」、平成14年度から「新子どもプラン」が実施され、関係府省の協力の下で、子供たちの体験活動の充実に資する各種施策が推進されてきた。

 平成18年には、教育基本法が戦後初めて改正され、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力の重要性がうたわれた。

 教育基本法の改正も受けて、平成19年度からは、文部科学省と厚生労働省の連携により、「放課後子どもプラン」が推進され、放課後児童クラブと連携しながら、放課後や週末等の子供たちの安心・安全な居場所を設け、全ての子供たちに学習や体験・交流活動等の機会を提供する「放課後子供教室」の取組が推進されている。

 特に、放課後子供教室に関しては、平成26年7月に、文部科学省及び厚生労働省が策定した、「放課後子ども総合プラン」に基づき、「女性の活躍推進のためには、共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、全ての就学児童が放課後を安心・安全に過ごし、多様な体験・活動ができるよう、関係府省が連携して総合的な放課後対策に取り組むことが必要」として、一体型または連携型の放課後子供教室と放課後児童クラブの計画的な整備が推進されている。

 平成20年には、平成18年の教育基本法の改正を受け、社会教育法が改正され、放課後子供教室や学校支援地域本部の活動を念頭に置いて関係規定が新設された。

 平成20年度からは、社会教育法の改正を受け、地域住民等の参画により、学校の教育活動を支援する仕組みであり、地域が学校と連携するための活動体としての「学校支援地域本部」が推進されてきたが、その活動の企画や学校・地域との連絡調整を地域のコーディネーターが中核として担ってきた。

 平成25年には、教育基本法に基づき策定されている第2期教育振興基本計画において、学校支援地域本部や放課後子供教室などの取組を充実するための体制を全国の小・中学校区に構築することが施策目標とされるなど、地域における学校との連携・協働に関する事項が、政策体系に位置付けられてきた。

 加えて、平成26年度からは、子供たちが多様な技能や経験を持つ多くの社会人と出会う機会を作っていくことが重要との考え方から、学校の授業や希望者が参加する地域の取組において、地域の人材や企業・団体・大学等と連携した土曜日の教育活動が推進されている。

 さらに、平成27年度からは、経済的な理由や家庭の事情により、家庭での学習が困難であったり、学習環境が十分に身についていない子供たちに対して、地域住民が参画する学習支援を充実させる必要があることから、中学生等を対象として、教員を志望する大学生や教員OBなどの地域住民、学習塾などの民間教育事業者、NPO等の協力による学習支援である「地域未来塾」の取組が推進されている。

<参考>
  • 近年、法令面において、地域における学校との連携・協働に関する規定が整備されてきた。平成18年の教育基本法改正では、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力について規定が創設された(第13条)。それを踏まえ、平成20年の社会教育法改正では、放課後子供教室(第5条第13号)や、学校支援地域本部の活動も含む概念としての、「社会教育における学習の機会を利用して行った学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会の提供等」(第5条第15号)が教育委員会の事務として、新たに規定された。
  • 教育振興基本計画においても、平成20年に策定した第1期計画では、「学校・家庭・地域の連携・協力を強化し、社会全体の教育力を向上させる」ための施策として、「地域ぐるみで学校を支援し子どもたちを育む活動の推進」が記載され、学校支援地域本部等の取組の推進が記載された。
  • 続いて、平成25年1月にまとめられた第6期中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理では、「絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた学習活動や体制づくりの推進」のためには、「地域住民が積極的に参画して子供たちの学びを支援し、社会全体で子供たちを育むため、学校と地域が連携・協働する体制づくりが重要」とされた。これを受けて、平成25年6月に策定された第2期教育振興基本計画において、「絆づくりと活力あるコミュニティの形成に向けた学習環境・協働体制の整備推進」という基本施策の下、「「学校支援地域本部」、「放課後子ども教室」などの取組を充実させ、保護者はもとより、地域住民の参画により子どもたちの学びを支援するための体制を、平成29年度までに全国の小・中学校区に構築する」ための取組の推進について記載された。

(2)地域における学校との連携・協働の現状

 平成27年度には、地域が学校と連携・協働して行う様々な活動の中でも、学校支援活動を行っている学校支援地域本部は、公立小中学校の34%の約4,20本部である(約10,100校)。放課後子供教室は、公立小学校で約14,000教室である。土曜日の教育活動は、立小中高等学校の35%の約12,000校で実施されている。

 また、保護者や地域住民が学校支援活動に関わることで、学校の教育水準の向上に効果があると回答している小中学校は約90%とほとんどである(H25 全国学力・学習状況調査より)。

 東日本大震災の時に、避難所となった宮城県内の中学校で学校支援地域本部が設置されていた学校は自治組織が速やかに組織されるなど、緊急時の分担と協働作業につながった事例もあり、それを契機に、被災した各地において学校支援地域本部の設置が拡大した。

 また、学校支援活動を各学校ごとだけでなく、幼稚園と小学校、小学校と中学校が連携・協働して中学校区全体の活動とすることで、幼稚園・小学校の連携、小学校・中学校の連携も進展してきている事例もある。

 これらを通じて、地域の高齢者や子育て経験者をはじめとする多様な人材の参画を得て、子供たちに様々な学習や体験活動を行う取組が全国各地で広まりつつある。

2.地域における学校との連携・協働の課題

 平成25年に策定された第2期教育振興基本計画では、今後取り組むべき具体的方策として、「全ての学校区において、学校支援地域本部や放課後子供教室の取組の実施など、学校と地域が連携・協働する体制が構築されることを目指す」とされており、さらなる取組の充実と普及が必要である。

 現状の活動では、それぞれの活動ごとにコーディネートがなされる状況もある。この場合、例えば、放課後の支援活動、学校支援活動、学校と連携した公民館活動等の活動が、それぞれ個別に行われており、それぞれ互いの活動の目標や、主に参画している関係者等の情報の共有などについて、必ずしも連携が十分でなく、調整ができていないことによる地域人材や活動機会、場所の偏り、不足などの場合が生じている。

 さらに、コーディネート機能の大部分を特定の個人に依存し、結果として、持続可能な体制がつくられていない場合が多いこともあげられる。

 また、学校支援地域本部では、地域から学校への一方向の活動内容にとどまっており、子供と住民が共に活動することで地域の振興にもつながる、という意識は十分ではない。

第3節 地域における学校との協働体制の今後の方向性について

1.地域における学校との協働体制の目指す姿

(1)今後の方向性-協働と総合化-

 今後、国全体として、各地域を支援しつつ、目指すべき整備の方向性は、第一に、第1章第2節で既に述べたとおり、地域と学校がパートナーとして、共に子供を育て、そのことを通じて共にこれからの地域を創るという理念に立つことである。「支援」を超えて、目的を共有し長期的な双方向性のある展望を持った「協働」に向かうことを目指す。第1章第1節でも述べたように地域の人的・物的資源を活用するなど、学校教育の目指すところを社会と共有・連携しながら実現する必要がある。例えば、郷土学習の場合は、地域住民と学校とが相互に知識と経験、物や施設を提供し合って教育活動を行うことが望ましい。その際、話し合いの過程と継続的な実施を通じて、地域の伝統文化の継承者が生まれ、地域の持続・発展の芽が育つ。

 また、これらの学習については、基礎的な教育を学校の授業でも行った上で、放課後や土曜日における社会教育の場でさらに発展的な活動を行うことも考えられる。学校教育と社会教育の連携によって学びを深める一例である。

 第二に、活動やコーディネート機能のつながりを深めることである。地域によっては、既に、授業への地域人材の協力、放課後子供教室、土曜学習、親子が参加する地域行事等を複数のコーディネーターが手分けしながら一体の組織で企画・実施している例がある。多様な活動の違いを超えて総合的な運営を進めることにより、地域の人的なネットワークが広がり、協力体制が手厚くなる。

 このように、活動を広げながら、学校・地域社会それぞれの特性を生かした「連携」と、共通の目標に向かって相互に意見を交わしつつそれぞれの資源を最適に組み合わせて達成を目指す「協働」の双方の、地域における基盤となる体制が、今後の教育には必要である。そのためには、従来の学校支援地域本部活動や放課後子供教室などの個別の取組を有機的に結びつけていくことが必要である。「支援」から「連携・協働」、個別の活動から総合化を目指す今後の新たな体制を、地域が学校と協働する枠組みとして、「地域学校協働本部(仮称)(※1)」と呼ぶことを提唱したい。


※1 第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日)において、学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組など「保護者はもとより、地域住民の参画により子供たちの学びを支援するための体制」を平成29年度までに全国に整備することとなっている。

(2)「地域学校協働本部(仮称)」の在り方

 「地域学校協働本部(仮称)」についての特徴は、社会教育のフィールドにおいて、地域の人々や団体により「緩やかなネットワーク」を形成した、任意性の高い体制としてイメージされるものである。一方で、地域住民が参加しやすいつながりの緩やかなものではあるが、参加者の世代交代なども経ながら永く持続していくものでもある。

 各地域で展開されている活動の実態、組織の現状と課題から考察すると、この体制が恒常的、組織的、安定的に実質を伴ったものとして持続するためには、地域と学校が子供の育成の方針など目指すべき方向性を共有しつつ、次の3要素が必須と考えられる。

  • (1)コーディネート機能
  • (2)活動する地域住民
  • (3)継続的な活動の実施

 どのような内容の活動が行われるかは、地域の実情、本体制の発展段階に応じ、多様であるものと考える。例えば、放課後子供教室から始まり、次に学校の授業の支援が加わり、さらに郷土学習の共同企画や学校と地域の行事の共催等を実施するという場合もあれば、学校の環境整備や登下校の見守りから始まり、放課後や土曜日の教育に拡張する場合もある。

 現在の機能をさらに進めるものとして、学校教育部局との連携強化や、教育委員会だけではなく首長部局の各部局との連携強化を推進することが挙げられる。これにより、取組の幅が広がっていき、子供の教育内容の充実につながるものである。さらに、地域にある高等学校等と連携することは、設置者の違いを超え、高校や高校生等も協働の輪に入ってもらうことで、ネットワークのつながりが広がっていくことになる。

 また、「地域学校協働本部(仮称)」への参加者一人一人が学び合う場を持って、子供の教育や地域の課題解決に関して、ともに学び続けていくことは、まさに生涯学習社会の実現のために求められることである。

 さらに、地域が学校との連携を深める中で、子供にとって、地域は学校や家庭ではない第三の場所として安心な居場所になることが考えられ、また孤立した保護者にとっても、地域における学校との連携協働体制があることで、様々な悩みなどを相談できる心の居場所となる。「地域学校協働本部(仮称)」には、子供や家庭にとってもよい関係となることが期待される。

 なお、このような協働体制を目指すに当たり、最初の段階から学校に対して地域づくりへの過度な関与を求めることは、学校現場における負担を増大させる可能性もあることから、そのような協働の取組の基礎は、まず、地域住民等による学校支援の取組によって地域との接点が作られ、地域と学校が子供の教育に関わることを通じ、相互の信頼関係が醸成されていく中で徐々に形成されていくものであることに留意する必要がある。

2.地域における学校との協働体制の整備の方向性

 1.で示した地域における「地域学校協働本部(仮称)」が、早期に、全小学校区(約20,000)において構築されることを目指す。また、小・中学校のみならず、高等学校においても有効な取組であるため、高等学校も巻き込んだものとしていくことが重要である。

 市町村としては、各学校区の活動を把握し、検証するとともに、自治体全体としての今後の推進の方向性を示していくことが重要である。

 また、このような「地域学校協働本部(仮称)」は、将来的には、子供たちを社会の主体的な一員として受け入れ、様々な実践への参加を促す機能を有する体制の構築へと進化・発展することが考えられる。その中で、子供も大人も加わって、ワークショップ等の手法を用いつつ、地域課題や地域の将来の姿、さらには子供たちの体験活動やキャリア教育などについて議論を重ね、評価を加え、修正を繰り返すなどして、実践を継続し、改善の方向を探ることも期待される。そのような営みによって住民の意思を作っていくことは、地域の様々な課題に対して、それを解決しつつ、地域を経営することにもつながるものである。

第4節 地域における学校との協働のための取組の推進について

1.地域における学校との協働のための体制の整備

 体制の整備において重要となるのは、コーディネート機能の強化である。具体的には、これまでの地域における様々な既存の体制では、地域人材が務める「地域コーディネーター」がその機能を果たしており、地域の実情に応じた様々な学校づくりや地域づくり活動等の企画調整を担っている。

(1)学校区における地域コーディネーター

 課題でも述べたとおり、既存の体制では、多くは活動ごとに企画調整がなされるなど、効果的な連携によるそれぞれの活動の充実の視点が不足しているため、今後、地域コーディネーターの役割は、これまでの学校支援地域本部や放課後子供教室など各活動ごとの担当にとどまらず、より広い視野で地域における学校との協働体制を作っていくことが必要である。

 また、地域コ-ディネーターによるコーディネート機能は、1.地域住民が主体となって活動する場合、2.PTAが主体となって活動する場合、3.NPO等と協働して活動する場合、4.公民館など社会教育施設等を拠点に活動する場合、など地域の実情に応じて、様々な態様がある。

 どの場合であっても、地域に根付いていく継続的な取組になることを目指すことが必要である。たとえ地域コーディネーターを務める人物に交代があっても、「地域学校協働本部(仮称)」としては将来的にも継続した取組となるよう、都道府県・市町村教育委員会の中で、必要な研修を修了したことなどを踏まえた職能的な要件を課し、資質・能力等が備わった別の地域人材がコーディネーターを引き継ぐ仕組みとするなどの工夫が必要である。

 加えて、「地域学校協働本部(仮称)」の中核を担う地域コーディネーターは、様々な人々や活動をつなぐ役割が大きく、それぞれの地域コーディネーターの経験の共有と継承が重要であるため、地域コーディネーター間の十分な情報共有や、研修などを通じて、相互に学び合うことが有効である。

 地域社会と関連の深い教育改革の動向を把握することが大事であり、学校教育で今後期待されていることについて、地域コーディネーターに対する十分な研修の機会が提供される必要がある。

 なお、地域コーディネーターは、子供の状況に触れることになるため、守秘義務を重視し、責任の所在の明確化を図る場合は、地域の実情に応じて、委嘱等の契約を行うなど、何らかのルールを設けることで、学校との情報共有が円滑になるのではないか。

 また、地域コーディネーターとなる地域人材の確保は最も重要である。その際、現在あるいは過去にPTA活動を経験した人、地域の自治会等でネットワークを持っている人、社会教育も経験されている元教職員など、地域の実情に応じて様々な人が考えられるが、求められる資質等については、

  • 地域における学校との連携・協働による活動の推進に熱意と識見を有する
  • 地域における学校との連携・協働による活動への深い関心と理解がある
  • 地域住民や学校、行政の関係者とのコミュニケーション能力や、説得し、動かす力がある
  • 地域課題についての問題提起、整理、解決策の構築等を仲間とともに進めることができるファシリテート能力に長けている

 などの望ましい条件が挙げられるが、国や都道府県等での具体的な事例収集や分析、その情報提供が必要である。

(2)市町村単位での統括的なコーディネーター

 市町村単位で、各小学校区の地域コーディネーターについて、ネットワーク化の促進や資質の向上、また、それぞれの地域における学校と協働した活動内容の質の向上を図るとともに、地域における学校と協働した取組について未実施である地域の取組開始を促進するため、新たに、市町村全体の学校地域協働に関する統括的なコーディネーターが必要である。

 統括的なコーディネーターは、例えば、地域における学校と協働した取組をこれから開始する地域への新たな「地域学校協働本部(仮称)」の立ち上げの助言や先行事例の提供を進めながら、地域コーディネーターの確保や育成を行ったり、既に取組を行っている学校区の地域コーディネーターのリーダー的存在として、地域コーディネーター間の連絡調整や、それぞれの地域の定着の度合いの違いなど実情に応じた活動活性化の助言、モデル事例の紹介を行ったり、研修の企画・実施などによる地域コーディネーターの資質向上を進めるものである。

 また、各学校区で活躍する地域コーディネーターの確保と同じく、こうした市町村域を統括的にコーディネートする役割を担う地域人材の確保も重要である。その際、こうした役割を担う人材は、すでに地域コーディネーターを務めた経験のある人材などが考えられるが、求められる資質等については、上記の地域コーディネーターに求められる資質等に加えて、地域コーディネーターを含めた関係者等からの社会的信望が厚いことも求められる。

(3)統括的なコーディネーターと社会教育主事との連携

 都道府県及び市町村の教育委員会に置かれる社会教育主事は、社会教育を行う者に対して専門的技術的な助言・指導や、教育委員会主催の社会教育事業の企画・立案等の職務を担っており、地域と学校の協働活動が円滑に進むよう、統括的なコーディネーター等と積極的に情報共有を図る必要がある。また、社会教育主事は、その経験に基づき、統括的なコーディネーター等に対して必要に応じて助言等を行うことが期待される。

2.地域における学校との協働による活動の充実

(1)今後求められる活動内容等

 地域における学校と協働した活動の「内容」は、現状では、授業の補助として、大勢の地域人材の一斉支援によるドリルの丸付け補助や、地域人材の得意分野を生かした書道や家庭科の裁縫などの個別支援などが行われており、また、放課後や土曜日等では、例えば、読み聞かせ、昔遊び、実験・工作教室、自然体験活動、スポーツ・文化活動や地域の伝統芸能などのほか、宿題や基本的な学習習慣づくりなどが行われている。今後はさらに、活動に参加する子供の発達段階に応じつつ、例えば、より発展的な内容、自ら企画して行うもの、将来の職業に参考となるキャリア教育、地域の大人と協働する地域活動への参加など、豊富な内容としていくことが考えられる。

 なお、その活動「時間帯」は、学校の授業への協力のほか、平日の学校の放課後や登下校中等の時間帯、土曜日、日曜日、長期休業中等が挙げられる。

 活動に参画する「子供」については、幼稚園・保育所、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、高等専修学校などの幼児・児童・生徒が考えられ、これからの地域を担う一員としての観点からは、特に中学生や高校生等の参加が重要である。

 その際、例えば、共働きなどで留守家庭の子供、経済的な事情や家庭の事情などで家庭での学習が困難であったり、学習習慣が十分に身についていなかったりする子供への学習支援や体験活動の機会の充実も重要である。このことにより、子供の学習する環境が整い、学習習慣が身についていくことで、多くの子供を見守り、育てていくことにつながるとともに、孤立してしまう保護者も、「地域学校協働本部(仮称)」があることで、気軽に悩みを相談しやすくなるなど、家庭教育への重要な支援となる。

 活動に参画する「大人」については、保護者、社会教育団体、地域の自治会、NPO等や青年会議所、商工会等の団体、大学や専門学校などの高等教育機関、学校の元教職員や自治体の元職員等の協力を得ることが挙げられるが、幅広い人々で取り組むことが重要である。これからは、多様な職業体験、生活体験を経た60代後半以上の人々が増えていく時期でもあり、多くの人々が学び合いながら、地域の教育活動に参画していくことが望まれる。

 子供たちの教育に対する責任を社会的に分担する観点から、放課後の時間帯や土曜日、日曜日、長期休業中などに行われる地域における活動については、基本的には、地域が主体となって行っていくべきものである。教職員の多忙化が大きな課題となっている状況の中で、こうした活動について地域と学校が情報を共有することは重要であるが、教職員が子供と向き合う時間を確保する観点等からも、教職員が様々な地域活動に参加し地域課題の解決に取り組むことを過度に求めていくことのないよう十分に留意する必要がある。

(2)活動場所の確保等

 地域における学校との協働による活動の場所は、「放課後子供教室」など学校の教室やグラウンド等で実施する方が適当と考えらえるものの他、学校外で行うことが適当なものもあるが、いずれにしても、その趣旨、内容に応じて最も適切な活動場所を確保することが求められる。

 学校内の施設で活動を行う方が適当と考えられるものについては、1.施設整備面での工夫、2.余裕教室の活用など施設の有効利用を図ることによる工夫、3.施設管理面での管理責任などの課題の解決を図るための行政側でのモデル例の提示などの工夫について、積極的に教育委員会や学校と「地域学校協働本部(仮称)」が連携・協働して行うことが求められる。

 特に、上記3.については、既に活動を学校内の施設を利用して行う場合の管理責任を学校に委ねるのではなく、教育委員会の責任とすることを明確にするといった工夫を行っている実例も見られるところであり、こうした実例を他に情報提供することも有効であると考えられる。

 なお、学校外で活動を行う場合の活動の場所は、公民館などの社会教育施設や、児童館その他の公共施設、商店街など、地域との協力の下で様々な場合が考えられ、活動場所を広げることは、活動内容の充実にもつながるものである。

(3)幼稚園、高等学校、特別支援学校、高等専修学校の特性を踏まえた取組の推進

 高等学校や特別支援学校、高等専修学校については、小中学校と比べると地域の概念が格段に広いが、社会全体で子供たちを育むことの重要性はどの段階でも変わらないことから、学校種の特徴を生かしつつ、幼児・児童・生徒の発達段階等に応じて、地域における学校との協働体制を構築する必要がある。

 幼稚園については、地域との協働による幼児期の豊かな体験活動の充実、保護者も参加する小学校との円滑な接続に向けた取組の充実、近隣の地域との協働による保育所との円滑な連携の推進等が期待される。また、平成27年4月からは、幼児期の学校教育・保育の質の向上をはじめ、預かり保育や子育て相談などの地域の子供・子育て支援を総合的に推進する「子ども・子育て支援新制度」が開始されており、こうした新制度の取組を進め、幼児期の子供一人一人の健やかな成長を着実に支援するためにも、「地域学校協働本部(仮称)」における幼稚園等との連携・協働体制の構築を進めることが重要である。

 高等学校等については、今後望まれる学習活動である「(※2)アクティブ・ラーニング」の有効な展開の観点からも、「地域学校協働本部(仮称)」との連携・協働体制の構築を進めることが重要である。こうした体制構築が進むことにより、高校生等が地域の商店街や企業等と連携し、地域課題の解決に参画する取組が進めば、キャリア教育の推進や地域貢献にも繋がるとともに、地域に愛着を持ち、自分が学んだ地域で働きながらその地域を活性化していくことに繋がっていくことも期待される。

 特別支援学校については、当該学校に通う子供が自立し社会参加できる環境の充実には、保護者のみならず、地域、医療、福祉等の関係機関との連携が必要であり、ここでも「地域学校協働本部(仮称)」との連携・協働体制の構築を進めることが重要である。

 なお、今後このような学校種との連携・協働による地域活動を充実していくにあたり、地域においては、「地域学校協働本部(仮称)」の活動を通じて、幼稚園、小中学校、高等学校等、特別支援学校の各段階の学習を全体的に理解する視点を持つことが重要である。

 こうした視点を持つことにより、例えば、「高等学校でこのような学習が成り立つためには、小中学校段階で、このような活動が必要であり、また、地域と連携・協働した支援活動は、子供たちが地域に目を向けるようになり、将来的に必ず自分たち地域に返ってくるものである」という関連性が理解されるようになり、地域住民のモチベーションが高まるとともに、活動の充実に結びつくものである。


※2 中央教育審議会教育課程企画特別部会の論点整理では、アクティブ・ラーニングの意義として、「思考力・判断力・表現力等は、学習の中で(中略)思考・判断・表現が発揮される主体的・協働的な問題発見・解決の場面を経験することによって磨かれていく。身に付けた個別の知識や技能も、そうした学習経験の中で活用することにより定着し構造化されていき、ひいては生涯にわたり活用できるような物事の深い理解や方法の熟達に至ることが期待される」などが挙げられている。

(4)子供たちの抱える課題への対応や、家庭教育支援の充実等のための地域における  学校、福祉等との連携

 地域が学校との連携を深める中で、地域は、子供にとって、学校や家庭ではない第三の 場所として安心な居場所になることが考えられる。

 地域における学校との「地域学校協働本部(仮称)」には、直面する子供たちの課題等にもよるが、教育関係者のみならず福祉、医療の関係者との連携強化や、孤立しがちな保護者の支援という観点からも、地域の人材で構成する家庭教育支援チームと連携していくことが重要である。「地域学校協働本部(仮称)」の中に家庭教育支援の機能も組み込むことで、家庭教育支援の充実を図るとともに、学校支援の観点からも、困難を抱える保護者への対応の充実を図ることが可能となる。また、孤立しがちな保護者が学校支援などの地域と学校が連携・協働した活動に参画するよう促し、実際に活動に関わることで、こうした保護者が前向きになり、家庭教育の充実につながることも期待される。

 家庭教育支援チームによる取組としては、保護者が主体的な家庭教育ができるよう、家庭教育支援チームによる学習機会や情報の提供、様々な相談への対応、地域における居場所づくり、さらに訪問型の家庭教育支援等の取組を推進することが重要である。

第5節 国、都道府県、市町村による推進方策について

 本章第3節において述べた今後の方向性に基づき、第4節に記載した地域における学校との協働活動を推進していくためには、地域住民、保護者等が様々な学校支援活動、放課後や土曜日の学習支援活動、地域の行事や文化・スポーツ活動等の地域活動に自ら積極的に参加していくことが何よりも重要である。これらの住民等の地域における学校との協働活動への参加を促し、活動を推進していくためには、国や都道府県・市町村により、それぞれの役割を踏まえつつ、コミュニティ・スクールの推進とも連携しながら、「地域学校協働本部(仮称)」の整備を図っていくことが重要である。 

 「地域学校協働本部(仮称)」を整備し、地域における学校との協働活動を充実していくため推進方策として、有効と考えられる方策は以下のとおりであり、国は、以下の推進方策を着実に実行する。各都道府県・市町村は、地域における学校との協働活動の促進に向けて、それぞれの地域の特色や方針を踏まえつつ、「地域学校協働本部(仮称)」の整備その他の必要な施策を講じ、各地域において積極的な取組が進められることが期待される。

1.国の役割と推進方策

 今回の提言を踏まえ、国は、地域における学校との協働活動の全国的な推進を図るため、以下のように、財政的支援を含めた条件整備やこれらの活動の質の向上に向けた方策を総合的に推進していくことが必要である。

(1)基本的な枠組みの整備

 地域における学校との協働活動の推進のため、第4節で述べた「地域学校協働本部(仮称)」を全国的に整備していくことが重要である。国は、「地域学校協働本部(仮称)」の全国的な整備の推進のため、同体制の整備の基本的な目的、方向性について明確化し、その趣旨を広く普及していくことが必要である。

 第2期教育振興基本計画において、学校支援地域本部や放課後子供教室などの取り組みを充実するための体制を全国の小・中学校区に構築することが施策目標とされているが、国はこの着実な実施を通じて、「地域学校協働本部(仮称)」の整備を推進していくことが必要である。また継続的な整備を図るため、第3期以降の教育振興基本計画において、「地域学校協働本部(仮称)」の推進目標を掲げることを検討すべきである。

(2)地域コーディネーターをはじめとする人材の確保と資質の向上

 第4節でも述べたとおり、「地域学校協働本部(仮称)」の整備のためには、それぞれの地域において学校との協働活動を実施する住民等の活動を支援し、連絡調整する地域コーディネーター等によるコーディネート機能が非常に重要である。このため、国は、地域コーディネーター等の主な役割、求められる資質等について明確化することが必要である。

 コーディネート機能の充実には、その人材の資質の維持・向上が重要であり、国は、都道府県・市町村や社会教育関係団体等と協力しつつ、コーディネーターの研修プログラムの開発・普及等のコーディネーターの育成施策を支援することが必要である。

(3)体制面・財政面における支援の充実

 「地域学校協働本部(仮称)」の整備に伴う体制面・財政面において、国は以下の取組を支援していくことが重要である。

  1. 全国各地域において、地域住民等による学校との協働活動が推進され、各地域の子供たちがその活動を経験することができるよう、各地域へのコーディネーターの配置及び「地域学校協働本部(仮称)」の整備の支援
  2. それぞれの地域における学校間の協働活動の連携の促進や未実施地域における取組促進に向けた統括的なコーディネーター配置への支援
  3. 地域コーディネーターをはじめとする人材の確保と資質の向上に向けた研修・育成等の支援
  4. 「地域学校協働本部(仮称)」における放課後や土曜日等における学習、体験活動等の支援活動の充実への支援

(4)コーディネーター間の情報共有、ネットワーク支援等

 国は、「地域学校協働本部(仮称)」の全国的な整備・充実に向けて、都道府県・市町村、コーディネーター間における情報共有、ネットワーク化を支援するため、以下の取組を支援する。

  1. 「地域学校協働本部(仮称)」の整備の促進に向けたグッドプラクティスの収集・普及
  2. 統括コーディネーター、地域コーディネーター間の研修・ネットワークを目的とした全国集会等の支援

2.都道府県・市町村の役割と推進方策

 都道府県・市町村(特別区を含む。以下、本項目において「市町村」という。)の教育委員会は、地域における学校との協働活動の促進に向けて、それぞれの地域の特色や方針を踏まえつつ、「地域学校協働本部(仮称)」の整備その他の必要な施策を講じ、各地域において積極的な取組が進められることが求められる。

 「地域学校協働本部(仮称)」を整備し、それぞれの地域における学校との協働活動を一層推進していくためには、都道府県、市町村における社会教育部局と学校教育部局の連携強化が不可欠であり、両者の連携・協働による取組が必要となるとともに、総合教育会議の活用等を通じた首長部局とのパートナーシップを構築していくことも重要である。

 都道府県・市町村は、計画的・継続的に地域における学校との協働活動に取り組んでいくため、それぞれの地域の実情や特色を踏まえつつ、教育振興基本計画等に、「地域学校協働本部(仮称)」の整備をはじめとする地域における学校との協働活動の推進について基本的な方針を掲げることが期待される。

(1)都道府県の役割と推進方策

 都道府県は、各都道府県内全域での地域と学校との協働活動を推進するため、域内の市町村や学校・家庭・地域住民等の関係者に対し、広く地域と学校との協働活動への理解促進を図るとともに、域内での「地域学校協働本部(仮称)」の整備の促進等の施策を講ずることが求められる。また、域内の都道府県及び市町村の地域コーディネーター等への研修会・交流会等の企画・実施などが求められる。

 また、都道府県は域内の高等学校等の都道府県立学校と当該地域との協働活動を積極的に支援することが求められる。

(2)市町村の役割と推進方策

 市町村は、域内全域での地域と学校との協働活動を推進するため、域内の学校・家庭・地域住民等の関係者に対し、広く地域と学校との協働活動への理解促進を図るとともに、地域コーディネーターの配置をはじめとする「地域学校協働本部(仮称)」の整備を講ずることが求められる。

 地域と学校との協働活動が進んでいない地域においては、統括的なコーディネーターを活用して、当該地域の地域と学校との協働活動を担う人材の確保・育成、好事例の提供、企画・立案の助言等を通じて、地域と学校との協働活動が展開されるよう措置を講ずることが求められる。

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(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成27年12月 --