資料1‐4 (資料1‐1)教育課程企画特別部会 論点整理(平成27年9月14日)を踏まえた意見

平成27年9月14日
中央教育審議会
初等中等教育分科会

東北大学大学院情報科学研究科・教授・堀田龍也

1 新教育課程を十全に実施するためのICT環境の整備について

  • ICT活用については、1.電子黒板などの大型提示装置や実物投影機等の「教員による指導のツール」(授業環境)、2.グループ1台や1人1台のタブレットPC等の「児童生徒による学習のツール」(学習環境)の2つの側面から検討されてきた。
  • 「4.(2)学習指導要領等の理念の実現に向けて必要な支援方策等」には(環境の整備)において、「新たな学習・指導方法等に対応するため(中略)ICTも含めた必要なインフラ環境の整備を図ることも重要である」「教科書を含めて必要な教材や情報機器についても(中略)改善を図り、新たな学びや多様な学習ニーズに対応したものとしていく必要がある」と示されているところであり、これらは上記1.2.の側面が意識された記述だと考えることができる。
  • とりわけ小学校高学年の教科としての英語教育においては、「5.(1)各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続」の2.小学校において、「高学年においては知識・技能の定着等を図るため、ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う効果的な短時間学習として実施する可能性も含めた専門的な検討が必要となる」と示されているところである。また中学校段階においても、「5.(2)各教科・科目等の内容の見直し」の12.外国語において、「小学校で学んだ語彙や表現などの学習内容は中学校で繰り返し言語活動において活用し定着を図るとともに(中略)ICT等を活用した効果的な言語活動を行うよう工夫が求められる」と示されているところであり、この観点からもICT環境の整備の充実が求められていることが読み取れる。
  • しかしながら、これまで「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)等でも示されてきたにも関わらず、設置者によってはICT環境を十分に整備できていない実態が見られる。新教育課程を十全に実施するためには、ICT環境の整備が確実に行われるようなさらなる推進策の充実の検討、および新教育課程に適応できる教員のICT活用指導力とはどのようなものかという見直しその教員研修モデルの提供等が求められる。

2 情報活用能力の確実な育成について

  • 「2.(2)育成すべき資質・能力について(資質・能力の要素)」には、2)知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)として、「必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定」「伝える相手や状況に応じた表現」と示されているところであり、これらはいわゆる情報活用能力にあたるものである。
  • 今回の論点整理においては、「5.(2)各教科・科目等の内容の見直し」において、2.国語では「情報活用能力の育成」、3.社会、地理歴史、公民では「資料から読み取った情報を基にして社会的事象について考察し表現すること」、4.算数、数学では「必要なデータを収集して分析し、その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすること」、10.家庭、技術・家庭では「技術分野においては、技術と社会・環境との関わりの理解や、プログラミングや情報セキュリティ等も含めた情報活用能力の育成等」、11.体育、保健体育では「健康情報を分析し活用する学習」等、情報活用能力の育成につながる記述が示されている。また、13.情報では「小・中・高等学校の各教科等を通じた情報活用能力の育成について、三つの柱に沿って明確化」するとされ、高等学校の「情報科においては(中略)情報と情報技術を問題の発見と解決に活用するための科学的な考え方等を育成する共通必履修科目の設置を検討すること」と示されている。さらに、1.総則では「学校の教育活動全体を通じて実施することが求められる事項」の例示として「情報機器やネットワーク等の活用」が挙げられ、「既存の記載事項を踏まえつつ、総則において、育成すべき資質・能力や各教科等との関係性をより明確に示していくことが求められる」と示されているところである。
  • しかしながら、平成27年3月24日に文部科学省が公表した「情報活用能力調査」の結果においては、小学校5年生・中学校2年生ともに「整理された情報を読み取ることはできるが複数のウェブページから目的に応じて、特定の情報を見つけ出し、関連付けること」「受け手の状況に応じて情報発信すること」等に課題があることが指摘されている。また、キーボードからの文字入力については、小学校5年生の平均が1分間に5.9字、中学校2年生の平均が1分間に17.4字に留まっているという実態が報告され、キーボードからの文字入力などのICTの基本的な操作に大きな課題があることが明らかになっている。なお、情報活用能力の平均得点が上位10%に入る学校群の児童生徒は、下位の学校群と比べ、学校で「情報を収集すること」「表やグラフを作成すること」「発表するためのスライドや資料を作成すること」などのICT活用をしている頻度が高い傾向にあることも明らかになっている。
  • 一方、高大接続システム改革会議「中間まとめ」(案)によれば、「平成36年度から始まると想定される次期学習指導要領の下でのテストからCBT(Computer‐Based Testing;コンピュータ上で実施する試験)を実施すること」と示されており、「テキスト入力を利用した記述式問題の導入」も検討されているところである。
  • 以上より、キーボードからの文字入力などのICTの基本的な操作を確実に習得させるとともに、各教科等に示されている情報活用能力が体系的かつ確実に育成されることを新教育課程においてどのように実現するかが課題である。現行学習指導要領においては総則に示されているにも関わらず達成度が十分ではない現状を鑑み、新学習指導要領においては、下記にも述べるカリキュラム・マネジメントを各学校が実施する中で、これらの指導事項がしっかりと確保されるよう、総則における示し方の工夫が強く求められる。

3 その他

  • 論点整理においては、カリキュラム・マネジメントの重要性が強く打ち出されている。児童生徒の日々の姿、各教科等を越えた学習指導の成果や課題等の各種データによるエビデンスに基づいたPDCAサイクルの確立のためには、校務支援システムの整備の充実、カリキュラム・マネジメントにおける校務支援システム活用の好事例の提供が期待される。

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(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成27年11月 --