1.これからの社会と教員に求められる資質能力

 社会の大きな変動に対応し、国民の学校教育に対する期待に応えるためには、教員に対する揺るぎない信頼を確立し、国際的にも教員の資質能力がより一層高いものとなるようにすることが極めて重要である。
 変化の激しい時代だからこそ、教員に求められる資質能力を確実に身に付けることの重要性が高まっている。また、教員には、不断に最新の専門的知識や指導技術等を身に付けていくことが重要となっており、「学びの精神」がこれまで以上に強く求められている。

(1)これからの社会と国民の求める学校像

  • 近年、我が国の社会は、いわゆる「知識基盤社会」の到来や、グローバル化、情報化、少子化、高齢化、社会全体の高学歴化等を背景に、社会構造の大きな変動期を迎えており、変化のスピードもこれまでになく速くなっている。これからの社会は、政治・経済・文化等のあらゆる分野において、人材の質がその有り様を大きく左右する社会であり、教育の質が一層重要となる。特に我が国のように、天然資源に恵まれず、少子化や高齢化の進展が著しい国においては、生産性の高い知識集約型の産業構造に転換し、国際的な競争力を維持していく上で、既存知の継承だけでなく未来知を創造できる高い資質能力を有する人材を育成することは、極めて重要な課題である。
  • 一方、変化の激しいこれからの社会において、一人一人の子どもたちがそれぞれの可能性を伸ばし、一生を幸福に、かつ有意義に送ることができるようにするためには、一人一人が自らの頭で考え、行動していくことのできる自立した個人として、心豊かに、たくましく生き抜いていく基礎を培うことが重要となる。そのような力を教育を通じて育成する必要性が一段と高まっている。
  • 社会の大きな変動に伴い、保護者や国民の間に、学校に対して、必要な学力や体力、道徳性等を確実に育成する質の高い教育を求める声が高まっている。これからの学校は、子どもたちの知・徳・体にわたるバランスの取れた成長を目指し、高い資質能力を備えた教員が指導に当たり、保護者や地域住民との適切な役割分担を図りながら、活気ある教育活動を展開する場となる必要がある。また、これからの学校には、保護者や地域住民の意向を十分に反映する信頼される学校となるため、教育を提供する側からの発想だけではなく、教育を受ける側の子どもや保護者の声に応える教育の場となることが求められている。

(2)教員に求められる資質能力

  • このような社会の大きな変動に対応しつつ、国民の学校教育に対する期待に応えるためには、教育活動の直接の担い手である教員に対する揺るぎない信頼を確立し、国際的にも教員の資質能力がより一層高いものとなるようにすることが極めて重要である。
  • 教員に求められる資質能力については、これまでも本審議会等がしばしば提言を行っている。例えば、平成9年の教育職員養成審議会(以下「教養審」という。)第一次答申等においては、いつの時代にも求められる資質能力と、変化の激しい時代にあって、子どもたちに〔生きる力〕を育む観点から、今後特に求められる資質能力等について、それぞれ以下のように示している。
    1. いつの時代にも求められる資質能力
       教育者としての使命感、人間の成長・発達についての深い理解、幼児・児童・生徒に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、これらを基盤とした実践的指導力等
    2. 今後特に求められる資質能力
       地球的視野に立って行動するための資質能力(地球、国家、人間等に関する適切な理解、豊かな人間性、国際社会で必要とされる基本的資質能力)、変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力(課題探求能力等に関わるもの、人間関係に関わるもの、社会の変化に適応するための知識及び技術)、教員の職務から必然的に求められる資質能力(幼児・児童・生徒や教育の在り方に関する適切な理解、教職に対する愛着、誇り、一体感、教科指導、生徒指導等のための知識、技能及び態度)
    3. 得意分野を持つ個性豊かな教員
       画一的な教員像を求めることは避け、生涯にわたり資質能力の向上を図るという前提に立って、全教員に共通に求められる基礎的・基本的な資質能力を確保するとともに、積極的に各人の得意分野づくりや個性の伸長を図ることが大切であること
  • また、平成17年10月の本審議会の答申「新しい時代の義務教育を創造する」においては、優れた教師の条件について、大きく集約すると以下の3つの要素が重要であるとしている。
    1. 教職に対する強い情熱
       教師の仕事に対する使命感や誇り、子どもに対する愛情や責任感など
    2. 教育の専門家としての確かな力量
       子ども理解力、児童・生徒指導力、集団指導の力、学級づくりの力、学習指導・授業づくりの力、教材解釈の力など
    3. 総合的な人間力
       豊かな人間性や社会性、常識と教養、礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション能力などの人格的資質、教職員全体と同僚として協力していくこと
  • これらの答申の文言や具体的な例示には若干の違いはあるものの、これからの社会の進展や、国民の学校教育に対する期待等を考えた時、これらの答申で示した基本的な考え方は、今後とも尊重していくことが適当である。むしろ、変化の激しい時代だからこそ、変化に適切に対応した教育活動を行っていく上で、これらの資質能力を確実に身に付けることの重要性が高まっているものと考える。
  • また、教職は、日々変化する子どもの教育に携わり、子どもの可能性を開く創造的な職業であり、このため、教員には、常に研究と修養に努め、専門性の向上を図ることが求められている。教員を取り巻く社会状況が急速に変化し、学校教育が抱える課題も複雑・多様化する現在、教員には、不断に最新の専門的知識や指導技術等を身に付けていくことが重要となっており、「学びの精神」がこれまで以上に強く求められている。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成21年以前 --