6.各種の振興方策(検討事項例)

 以上を踏まえた具体的な振興方策については、

  • 国が制度的仕組み等を構築することにより実施する事項、学校の設置者又は各学校の判断の下に実施する事項、
  • 速やかに実施する事項、今後、具体的な検討を行う事項、

に分けて議論することが必要である。
 このため、以下に記載した具体的な検討事項例について、上記2つの観点から、別紙のとおり整理している。

(1)高等学校教育全体の振興のためには、例えば、次のようなことが考えられる。

1. 質保証に関する取組

(ア)近い将来主権者となる全ての生徒に共通に最低限修得させるべき内容(=コア)に関する指導の充実

  • 社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に必要な力(※1)

(例)教育課程にキャリア教育を行うための中核となる時間を明確に位置付ける(「産業社会と人間」又はそれに類する教科・科目等)

  • 社会の一員として参画し貢献する意識などの市民性等

(イ)各学校における修得状況の明確化

  • 各学校の目標とする人間像に応じて修得すべき内容を明らかにし、その内容を修得させることを徹底し、それを前提として修得の状況を明らかにする様々な仕組み(学校評価や学習評価を充実する取組や各学校で客観的に修得の状況を把握するための多様な測定指標例の開発)等

※1 中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月)において示された力。具体的には、「基礎的・基本的な知識・技能」、「基礎的・汎用的能力」、「論理的思考力・創造力」、「意欲・態度及び価値観」、「専門的な知識・技能」を指す。

2.教育方法の改善・充実

  • 学校間連携の促進や生徒の進路に則した学校外の教育機関等との連携促進(大学等の上級教育機関や企業等との教育活動上の協力、ハローワークや地域若者サポートステーション等との協力)
  • 一斉講義型の授業に加えて、ICT 等の活用による対話型・協働型・グループワークを取り入れた新たな学びを実施したり、地域の人材を活用したりするなどの授業の改善
  • 少子化時代に対応した教育課程の編成・指導体制の在り方(複数の学校群によるカリキュラムの提供、全日制課程におけるICT を活用した遠隔教育の実施)

3.教育内容に関する取組

  • コアとして身に付けるべき能力と教科・科目の指導内容との関係や学習指導要領の在り方
  • 教科・科目の大綱化・グループ化など生徒の実態を踏まえた指導内容の改善
  • 学習指導要領における各教科の科目ごとの標準単位数について、各学校において、生徒の実態を踏まえ、単位数を増加させるなど柔軟な扱いが可能であることを周知する等

4.指導力のある教員の育成と学校の組織運営体制の改善と充実

  • 21世紀を生き抜く力を育成する新たな学びや各学校の目標とする人間像に対応した指導力及び高等学校教育における諸課題に対応可能な力量を確実に身に付けるため、教員養成の修士レベル化や教育委員会と大学との連携・協働等による研修の充実をはじめ、教員の資質能力の総合的向上方策の推進
  • 教職員の負担を軽減し、校務の効率化等の推進や授業の改善等の教育内容・方法の充実に取り組むための研修の充実
  • 校長裁量予算の導入やマネジメント力を身に付けるための管理職としての職能開発のシステム化の推進等を通じ、思い切った学校運営を可能とするための管理職のマネジメント能力の向上
  • 理数系の人材や英語力のある人材等、様々な分野から適性のある優秀な人材の登用を促進する仕組みの構築
  • 本人の適性や学校の特性に応じ、長期的な方針に基づく学校運営が可能となるような柔軟な人事配置等

(2)(1)のほか、2.で述べた課題を解決するため、各学校の目標とする人間像に応じて、生徒の実態を踏まえつつ、以下のような資質・能力を育成するための振興方策を推進することが必要である。
 なお、各学校の目標とする人間像は、以下のいずれかに該当する場合もあれば、生徒の実態が多様であることを踏まえ、複数が組み合わさっている場合もあると考えられる。

● 社会経済活動の基盤を担うために必要な資質・能力の育成

【振興方策(例)】
  • 学習達成度の指標とするとともに指導内容を定着させるための高等学校卒業程度認定試験の問題等の活用。
  • 普通科において、義務教育段階の学習内容の学び直しや職業教育を行うため、より柔軟な教育課程の編成を可能とするための制度の見直しや先進的な取組の推進。
    (例)学校設定教科・科目の在り方

● 専門的職業人に必要な資質・能力の育成

【振興方策(例)】
  • 社会のニーズと専門教科・科目のミスマッチを解消するための取組の実施。
  • 地域・産業界等との連携・交流を通じた実践的な学習活動や就業体験の導入、社会人講師の活用による職業教育の充実。
  • 職業に関する資格等の取得に必要な学習内容と教科・科目との関連性の可視化・明確化を図る取組の充実。
  • 高等学校専攻科における学修の大学における単位認定制度の創設、大学への編入学の制度化。

● 社会においてリーダーシップを発揮し、また、グローバル社会において国際的に活躍するために必要な資質・能力の育成

【振興方策(例)】
  • 意欲と能力ある生徒に対して、大学等の協力により高度な内容の授業を受ける機会を提供するとともに、そこでの学習の成果を適切に評価するなど、高大連携の推進。
  • 優れた才能や個性を有する生徒に対する学校外活動の単位認定制度の拡大。
    (例)国際科学オリンピックや科学の甲子園等における活動、国際バカロレア認定校における学修
  • 単位制をより重視することにより、高等学校段階において、厳格な成績評価の下で通常の生徒よりも優れた成績で単位を修得した者について、早期の卒業を認める制度の創設。
  • 英語を使う機会の拡充、外国語教育に関し拠点となる学校の形成及びその成果の把握検証に基づく指導改善の実施。
  • 高校生の海外留学や国際的視野の涵養と留学機運の醸成に資する取組の促進。
  • 国際バカロレアの趣旨を活かした指導方法等の開発。

● 自立して社会生活・職業生活を営むための基礎的な資質・能力の育成

【振興方策(例)】
  • コアとなる内容により重点を置き、その内容を確実に身に付けさせる取組の充実。
  • 個々の生徒の状況に応じた生徒指導を行うための教員の資質向上やスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー等の専門スタッフの充実。
  • 課題を抱える生徒を受け入れる学校と学校外の社会資源の連携。
  • 不登校の生徒を積極的に受け入れる学校の配置の促進。
  • 多様な入学動機・学習歴を持つ生徒に対して、多様な形態の履修を提供している
  • 定時制・通信制課程の意義・役割の評価とそれにふさわしい教育環境の整備・充実。
  • 広域の通信制課程における教育の質の確保と情報通信技術の発達を踏まえた教育方法の充実。
  • 特別支援教育支援員等の専門スタッフの充実。
  • 発達障害に関する教職員に対する研修の充実。
  • 専門性のある指導体制の確保・教員支援員等の人的配置。
  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --