○ 高等学校教育においては、学習指導要領において、基本的に、学ぶ内容が定められており、特に必履修教科・科目は、全ての生徒が学ぶべき内容を定めている。
○ 学習指導要領では、必履修教科・科目をはじめとして、記載された内容について、求められる修得の程度まで示しているものではなく、学校が、学習指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき、地域や生徒の実態に即して設定した教科・科目の目標や内容に照らして評価を行うこととされており、単位の認定や卒業の認定は各学校の裁量に委ねられている。
○ また、学習指導要領に基づき編集される高等学校の教科書についても、民間の創意工夫により、生徒の実態に即して多様化しており、各学校では、これらの教科書を活用して授業が展開されている。
○ これらのことを踏まえ、各高等学校では、学習指導要領に示す各教科・科目の目標に基づき、学校が、地域や生徒の実態に即して設定した当該教科・科目の目標や内容に照らして当該教科・科目の実現状況を評価する「学習評価」と、自らの教育活動等について、目指すべき目標を設定し、その達成状況等を評価・公表し、適切な説明責任を果たす「学校評価」に取り組む必要がある。
○ 特に、公立高等学校の授業料無償化及び就学支援金制度が創設され、社会全体の負担により、全ての生徒の学びが支えられることとなったことに伴い、高等学校教育の成果が一層問われる状況となっている。
○ しかしながら、これらの取組が必ずしも十分ではなく、本来求められている高等学校教育の質の保証に関する機能を十分に果たしていないため、結果として、生徒が高等学校の学習において何をどの程度修得したのかが見えにくくなっており、中には、高等学校の学習成果として期待される資質や能力、態度を身に付けないまま卒業しているケースも見受けられる。
○ ともすれば、高等学校教育の成果が見えにくいゆえに、大学への進学実績でその成果を評価する風潮が見られるが、高等学校教育において何をどの程度修得したのかという成果を大学への進学実績という一側面で捉えるのは妥当とは言えない。
○ これらのことが高等学校教育に対する社会からの不信感につながっており、質の保証が求められる背景となっている。
○ 上記を踏まえ、高等学校における教育の質の保証にあたっては、以下のような点について議論することが必要である。
ア)全ての生徒に共通に修得を求めるコアとなる部分をどのように考えるか。
イ)コア以外の部分については、高等学校の多様な実態を踏まえると、全ての生徒に一律の内容を求めることは非現実的であり、学校教育法や学習指導要領を踏まえつつ、各学校が目標とする人間像に応じて考えることが基本ではないか。
ア)生徒全員が近い将来に主権者になるという考えに立つとき、そのような全ての生徒に共通するコアについての到達目標は国が設定することが考えられるが、それは指導内容として定めるか、身に付けるべき能力や態度として定めるか。教科・科目との関係についてどう考えるか。
イ)各学校が目標とする人間像に応じた多様な到達目標については、設置者又は各学校が設定することが考えられるか。また、この場合、国の役割をどう考えるか。
(例)
※1 中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月)において示された力。具体的には、「基礎的・基本的な知識・技能」、「基礎的・汎用的能力」、「論理的思考力・創造力」、「意欲・態度及び価値観」、「専門的な知識・技能」を指す。
(例)
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係
-- 登録:平成24年09月 --