小中連携、一貫教育に関する主な意見等の整理【概要】

1 小・中学校間の連携・接続に関する現状、課題認識

 「小中連携」…小・中学校が互いに情報交換、交流することを通じ、小学校教育から中学校教育への円滑な接続を目指す様々な教育
 「小中一貫教育」…小中連携のうち、小・中学校が9年間を通じた教育課程を編成し、それに基づき行う系統的な教育

2 小中連携、一貫教育の推進について

1.目的、効果

(1)目的

  • 小・中学校教職員が義務教育9年間の教育活動を理解することで、9年間の系統性を確保し、教育基本法、学校教育法に新たに規定された、義務教育の目的、目標に掲げる資質、能力、態度等をよりよく養えるようにしていくことは、すべての小中連携、一貫教育に共通する基本的な目的

(2)効果

  • 現行の取組における中学生の不登校出現率の減少、学力調査における平均正答率の上昇、児童生徒や教職員の意識面の変化等の成果を普及していく観点から、小中連携、一貫教育の効果検証の在り方、評価指標について国において検討することが必要

2.教育課程

(1)教育課程の編成

  • 小・中学校の教育課程の系統性確保のため教職員が互いの教育課程を理解することが必要

(2)教育課程上の区分

  • 「4・3・2」等の学年区分については、児童生徒の実態に合わせた柔軟な教育課程の在り方を工夫する観点から今後も多様な取組が進められ、その成果が蓄積されることが期待

(3)学習指導要領の範囲を超えた教育課程の基準の特例の必要性

  • 新学習指導要領は校種間の円滑な接続・連携の観点が特に重視され改善が図られており、この趣旨を十分に踏まえつつ小・中学校は9年間を見通した教育課程を編成することが必要
  • 教育課程特例校制度等を活用した取組について、国、学校、市町村等が内容や成果を対外的に周知することにより多様な取組が蓄積されることが期待
  • 学校、市町村において積極的に小中一貫教育を推進できるよう、設置者の判断に基づき、一定の教育課程の基準の特例を活用できるようにすべき。
     制度化に当たっては、義務教育の全国的な教育の機会均等や教育水準の担保、転入学児童生徒への配慮、中学校進学に当たっての継続性の確保、小・中学校入学に当たっての選択性が十分にないこと等を勘案するとともに、義務教育、小・中学校教育の目的・目標が確実に達成することができるよう、学習指導要領に規定する各学校・学年の各教科等の内容等を適切に取り扱い、学習指導要領で定める目標を確実に達成することが必要
  • 具体的制度としては、小・中学校が9年間を通じた特色ある教育を実現できるよう、小・中学校の教育課程の基準の特例として、一定の範囲内で、各学年の各教科等の授業時数を減じ、その内容を代替できる内容の学校設定教科の授業時数に充てることができるようにするのが望ましい。また、設置者の判断で小・中学校における指導内容に関する学校間又は学年間での入替えや移行を可能とすることについては、義務教育における全国的な教育の機会均等等の観点から十分な検討を経て取り組むこととするのが望ましい
  • 中高一貫教育制度との関係について、小中一貫教育を実施する小・中学校の設置者と中高一貫教育校の設置者が互いに連携し、双方の趣旨・目的も踏まえた上で地域において児童生徒の育ちを一貫して支援するような教育の在り方を検討することが必要

3.指導方法

(1)乗り入れ指導の実施

  • 小・中学校教育の変化に円滑に対応できるよう、小・中学校教職員間で指導の在り方についてよく相談し、認識を共有しておくことが重要
  • 乗り入れ指導は児童生徒の不安感の軽減、それによる中1ギャップの解消、教員の他校種に対する理解増進等を図る仕組みとして、導入を積極的に図ることが期待
  • 乗り入れ指導や小・中学校教職員合同研修等実施の際、ICTの活用による、校舎間の移動距離・時間の短縮
  • 都道府県や市町村における指導技術ごとの研修の開講

(2)複数学年での合同授業や活動の実施

  • 複数学年の合同授業や活動の実施により学習への動機付けの明確化等の教育的効果が期待

4.推進体制

(1)校内体制

  • 小中連携の主担当や小中一貫教育の教育課程編成の主担当の校務分掌としての位置付け
  • 小・中学校間の連絡調整機能をコーディネーターとして小・中学校の校務分掌として位置付け

(2)学校間の連携・協力体制

  • 小・中学校教職員が互いに授業を見合ったり、合同研修を実施したりすることにより9年間の教育課程及び指導方法の理解に資することが第一歩、それに加え、適切な情報交換・交流が重要
  • スクールカウンセラーや学校支援ボランティア等多様な関係者の関わりが期待
  • 校長が兼務する場合には、迅速な意思決定が可能となる等の良い面がある一方で、校長の事務量の増加等の課題も生じることから、兼務せずに両校長の連携強化による体制整備も考えられる
  • 校務の効率化等により、教職員の過度な負担を解消することが必要

(3)市町村教育委員会の関与

  • 小中一貫教育推進担当の指導主事の配置
  • 指導主事がコーディネーターの役割を担い、小・中学校間の連絡調整を実施
  • 兼務発令された教職員の後補充の講師等の配置
  • 公開フォーラム、調査研究事業、モデル事業の実施 等

(4)都道府県教育委員会の関与

  • 小・中学校の両免許取得の推奨
  • 人事異動方針として小・中学校教職員の交流促進を位置付け
  • 教職員の兼務発令
  • 小学校における専科指導に対する教職員定数の加配措置の十分な活用 等

5.地域との連携等

(1)「地域とともにある学校」づくりとの関係

  • 小中連携、一貫教育と地域連携に併せて取り組むことで大きな効果が期待、その際学校運営協議会制度や学校支援地域本部等の仕組みの導入も考えられる
  • 「学園」等の呼称を設けることは、地域の協力を得る観点から効果的
  • 小・中学校の統合に併せて小中一貫教育を導入する場合には、各地域の歴史、自負、誇りへの配慮とともに、統合後の小・中学校における教育理念や教育課程の充実への配慮が必要

(2)通学区域等

  • 市町村内に多様な通学区域がある中で小中一貫教育を実施する場合は、連携する小・中学校ごとに教育課程の在り方を共通化することによる9年間の系統的な教育活動の展開が考えられる
  • 市町村教育委員会は児童生徒の通学手段に配慮しながら通学区域の設定の仕方について工夫することが期待

6.教員人事、教員免許

(1)教員人事

  • 新規採用教員や経験年数が長い教員の、他校種の教員との人事交流の促進
  • 小学校等の専科担任制度の更なる活用のため、都道府県や市町村における小学校児童に対する指導に関する研修等の実施

(2)教員免許

  • 現職教員の隣接校種免許状取得を更に促進するため、既に都道府県教育委員会等が開設している免許法認定講習を免許状更新講習としても位置付け
  • 「義務教育免許状」については、要修得単位数の増加の課題等もあり、中長期的な検討課題とされているが、複数免許状を取得する場合の最低修得単位数の設定の在り方について検討することが期待
  • 専科担任制度について、道徳及び特別活動については学校種を問わず指導を可能とすることについて検討することが必要

7.校地・校舎等

  • 小中連携、一貫教育の効果的な実施に資する学校施設の在り方について国として検討することが必要
  • 校舎や屋内運動場の一体化に当たり小・中学校を改築する場合、小学校同士又は中学校同士と同等程度の補助を行うことや共用部分の在り方について国として検討することが必要

3 義務教育学校制度(仮称)創設の是非について

1.義務教育学校制度(仮称)に関するこれまでの指摘等

  • 『新しい時代の義務教育を創造する』(平成17年10月26日中央教育審議会答申)等において義務教育学校制度(仮称)創設の可能性等について検討する必要性が指摘

2.諸外国の義務教育制度等

  • アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、フィンランド、シンガポールにおいては、一般的に初等教育段階から学校制度を複線化している国はなく、初等教育段階と中等教育段階では学校種が異なるのが一般的

3.義務教育学校制度(仮称)創設の是非

  • 義務教育学校制度(仮称)の創設には慎重な検討が必要
  • 義務教育学校制度(仮称)に期待されていることとして、義務教育の継続性の確保、教育課程に関する柔軟な対応、教員の他校種の児童生徒に対する指導力向上、校地・校舎の一体的運用等があり得るが、これらは現行制度において対応可能な面が多い
  • 教育課程について設置者の判断で一定の教育課程の基準の特例を活用できるようにすること、校舎や屋内運動場の一体化に当たっての国庫補助率の引上げ等により、義務教育学校制度(仮称)に期待されているが現行制度で十分対応できていない点について、一定の改善が図られるものと考えられる。よって設置者の判断で一定の教育課程の基準の特例を活用できるようにし、校舎や屋内運動場の一体化に当たり小学校同士又は中学校同士の統合と同等程度の補助を行うこと等について検討することが望ましい。
  • 当該措置の実施により、小中一貫教育の豊富な実践が蓄積され、将来的に義務教育学校制度(仮称)の創設について検討する場合には、教育課程の基準の特例を活用した学校、設置者の取組、ニーズ等を把握し、初等教育段階から複線化することに対する考え方等について十分な検討を進めることが必要

4 まとめ

  • 国、都道府県、市町村においては、本意見等の整理において提案した事項も念頭に置きつつ、小・中学校への支援に努める必要があり、それにより、今後より多くの小・中学校において、小中連携、一貫教育が導入されることが期待

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --