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1 小・中学校間の連携・接続に関する現状、課題認識

○ 学校における児童生徒の学習指導上、生徒指導上の様々な課題については、従前、教職員をはじめとした関係者の努力により、各学校単位で解決を図るとともに、複数の学校段階間で連携し、課題解決に当たる取組も行われてきた。少子化の進行や情報化、グローバル化の進展、地域コミュニティの弱体化や核家族化の進行等、児童生徒を取り巻く社会の状況が様々に変化する中、児童生徒に関する課題が多様化、複雑化してきていることも受け、学校においては、複数の学校段階間で連携して課題解決に当たることがより一層求められている。

○ こうした状況を受け、学校間連携の在り方については、児童生徒等の多様な状況等に対応した学校間の円滑な接続を図る観点から、これまでに幼児期の教育と小学校教育の接続(以下「幼小接続」という。)、中高一貫教育について検討がなされてきた。
 幼小接続については、平成22年に幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議の報告がなされており、そこでは、幼児期の教育と小学校教育は教育の目標を「学びの基礎力の育成」として捉えた上で互いの教育を理解し見通すことが必要といった、両者の関係を「連続性・一貫性」で捉える考え方等が示された。
 中高一貫教育については、子どもたちや保護者などの選択の幅を広げ、学校制度の複線化構造を進める観点から、生徒の個性や創造性を伸ばすことを目的として、平成11年度に中高一貫教育制度が選択的に導入された。平成23年に本作業部会において当該制度の成果と課題について検証を行い、中高一貫教育校が今後とも特色ある教育を展開することを促すため、教育課程の特例の拡充が必要等とされた。

○ いずれにおいても、児童生徒等に対する教育を施す上で、各学校段階内において完結するのではなく、学校間連携を推進することにより、教職員が異なる学校段階にわたって教育を見通し、学校が直面している課題の解決に資するとともに、学校教育の質的向上を図っていくことが望まれている。

○ 小中連携については、これまで全国的な取組の検証や支援の在り方等に関する検討はなされていない。
 児童が、小学校から中学校への進学において、新しい環境での学習や生活へ移行する段階で、不登校等が増加したりするいわゆる中1ギャップが指摘されている。各種調査によれば、「授業の理解度」「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」について、中学生になると肯定的回答をする生徒の割合が下がる傾向にある(※1)ことや、「学習上の悩み」として「上手な勉強の仕方がわからない」と回答する児童生徒数(※2)や、暴力行為の加害児童生徒数、いじめの認知件数、不登校児童生徒数(※3)が中学校1年生になったときに大幅に増える実態が明らかになっている。

○ その原因の一つとして、小学校から中学校に進学する際の接続が円滑なものとなっていないことが考えられる。
 その背景として考えられることとして、小・中学校間には、学習指導面に関して、

  1. 小学校では学級担任制であるのに対し、中学校では教科担任制(授業形態の違い)
  2. 各児童生徒の小学校時点における学習上の課題を中学校と十分共有されていない(学習上の課題の共有)

といった違い、課題があること、また、生徒指導面に関しては、

  1. 各児童生徒の小学校時点における生徒指導上の課題が中学校と十分に共有されていない(生徒指導上の課題の共有)
  2. 中学校では小学校と比較して生徒に課せられる規則が多く、中学校においては、小学校よりも規則に基づいたより厳しい生徒指導がなされる傾向(生徒指導の方法の違い)

 といった課題、違いがあること、また、上級生や教職員との人間関係も小・中学校間で違いがあること、といった多様な背景から、円滑な接続が確保されていない可能性があるものと考えられる。

○ 児童生徒の発達については、6-3制が導入された昭和20年代前半と比較すると、例えば、平成22年のある学年の児童生徒の平均身長は、昭和23年当時の2、3年上級学年の児童生徒の平均身長に相当するなど、身体的発達が2、3年早まっている傾向がある。また、「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」について、小学校4年から5年に上がる段階においても肯定的回答をする児童の割合が下がる傾向があることや、「自分が周りの人(家族や友達)から認められていると思いますか」との質問に対し、小学校5年生から急に否定的な回答が多くなるといった調査結果があること(※4)から、小学校4、5年生頃に児童生徒の発達上の段差がある可能性があることも考えられる。  

○ さらに、小学校と中学校における教育については、ともに義務教育の一環を形成するものであり、小・中学校は学習指導や生徒指導において互いに連携することが期待されるものである。

○ 以上のような背景から、本作業部会においては、平成23年10月より、小学校と中学校の連携、接続の在り方について改めて見直し、義務教育段階にある児童生徒の学習指導、生徒指導等における諸課題の解決に資することで、児童生徒のより良い学びを実現できるよう、検討を進めてきた(※5)。

○ 本報告においては、小中連携、一貫教育の取組が進められている学校、市町村における成果を踏まえ、小中連携、一貫教育に今後取り組む小・中学校においても同様の成果を上げることができるようその内容について普及し、また、既に取組が進められている市町村で課題と認識されている点については、当該課題の解決に資するよう、国としての支援も含めた改善方策に関する意見をまとめるものである。

○ 本作業部会においては、文部科学省が平成22年に実施した「小学校と中学校の連携についての実態調査」(以下「実態調査」という。)に加え、全国の市町村において行われている小中連携、一貫教育の取組をなるべく精緻に、具体的にみていく観点から、第8回~第12回作業部会において、学校や市町村教育委員会等からのヒアリングを実施することで、学校、市町村等における取組の内容や成果、課題等について把握してきた。
 本意見等の整理は、必要に応じ実態調査結果やヒアリングした内容等も紹介しながら、作業部会の審議において出された意見等をもとに構成するものである。


※1 「学校教育に関する意識調査」(平成15年文部科学省)「義務教育に関する意識調査」(平成17年文部科学省)より

※2 「第4回学習基本調査」(2007年Benesse教育研究開発センター)より

※3 「平成22年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より

※4 呉市教育委員会調査結果より(第8回作業部会呉市ヒアリング資料9ページ参照)

※5 小・中学校間の連携・接続に関する教育振興基本計画や中央教育審議会答申等における記述については、参考資料1参照

<小中連携、一貫教育の現状>

○ 小中連携、一貫教育については、制度的に位置付けられたものではなく、全国の学校、市町村において、小学校における教育と中学校における教育を円滑に接続させるために、独自に取組が進められてきているところである。その中には、「研究開発学校制度(※6)」や「教育課程特例校制度(※7)」の活用により、「独自の教科の新設等による小中連携の推進」に取り組むなど、教育課程の基準の特例を活用して推進される小中一貫教育がある一方で、そうした教育課程の基準の特例を活用せず、また、教育課程以外の点においても現行制度の範囲内で、各市町村の創意工夫により取り組まれている小中連携、一貫教育も多数存在する。

○ こうした状況を踏まえ、文部科学省において実態調査を行ったところ、以下のような結果となった。


※6 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、幼稚園及び特別支援学校の教育課程の改善に資する実証的資料を得るため、昭和51年から設けられている制度。学校における教育実践の中から提起されてくる教育上の課題や急激な社会の変化・発展に伴って生じた学校教育に対する多様な要請に対応するため、研究開発を行おうとする学校を「研究開発学校」として指定し、その学校には、学習指導要領等の現行の教育課程の基準によらない教育課程の編成・実施を認め、その実践研究を通して新しい教育課程・指導方法を開発していこうとするもの。

※7 小学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校において,各学校又は当該学校が設置されている地域の実態に照らし,より効果的な教育を実施するため,当該学校又は当該地域の特色を生かした特別の教育課程を編成して教育を実施することを認める制度で、平成15年度より実施していた構造改革特別区域研究開発学校制度が全国展開したもの。

小学校と中学校との連携についての実態調査(結果概略)

【調査対象】

 都道府県・市町村教育委員会 ※市町村教育委員会の回答数:1763

【主な調査項目】

 小・中学校等における取組(教育委員会による方針、乗り入れ授業、教科担任制等)、小・中連携のねらい、成果、課題

【調査時期】

 平成22年11月1日現在

(市町村教育委員会回答より)

教育委員会として小中連携を推進するための方針や計画を定めている 583(33.1%)
教育委員会として小中9年間を通じた教育課程編成の方針を定めている 58(3.3%)
異校種間の教員の乗り入れ授業を計画的、継続的に実施した学校がある 641(36.4%)
教科担任制を実施した小学校がある 380(21.6%)
小・中学校を一体的に運営するための組織(「○○学園」等)を設けている 47(2.7%)
小・中学校合同の委員会等を設けている学校がある 823(46.7%)
教職員の兼務発令を実施した学校がある 287(16.3%)
市町村主催で小・中学校教員が合同参加する授業研究のための会議等を恒常的に設けている 688(39.0%)
平成22年度又は過去2年間に市町村による研究指定事業を実施した 380(21.6%)
上記いずれかの取組を行っている市町村 1276(72.4%)

<小中連携を進めようとするねらい>

 学習指導上の成果を上げるため 95%
 生徒指導上の成果を上げるため 91%
 教職員の指導力の向上につなげるため 82%
 その他 23%

  【「その他」の例】

  • 問題を抱える子や特別な支援を要する子のスムーズな進学をサポートしていくため
  • 義務教育9年間を通して児童生徒を育成する、ということに対する教員の意識改革を図るため
  • 地域の核としての学校の機能を高め、家庭・地域の教育力の向上につなげるため

<小中連携の取組の成果>

 成果が認められる 96%
 学習指導上の成果があった 58%
 生徒指導上の成果があった 74%
 教職員の指導力の向上につながった 50%
 その他 26%

【「その他」の例】

  • 小・中学校間の情報交換等により問題行動の減少につながった
  • 小・中学校で、特別支援を必要とする児童生徒や家庭等に関する情報共有ができ、きめ細かい支援ができるようになった
  • 小・中学校の連携が図られることにより、それぞれのPTA活動や地域との行事が一体的に進められ、地域の連帯意識の高まりや、学校への協力体制の強化が見られるようになった

<小中連携の取組の課題>

 課題が認められる 87%
 指導計画の作成が困難 30%
 教材の開発が困難 13%
 時間割の編成が困難 34%
 小中の教職員間での打合せ時間の確保が困難 75%
 転入者への学習指導上、生徒指導上の対応が困難 2%
 その他 23%

【「その他」の例】

  • 小中教員による交換授業は、中学校からの出前授業が主なものとなっており、中学校側の負担が大きい
  • 所有免許の関係から、兼務発令を拡大できない
  • 児童生徒間の交流において、移動手段と移動に要する時間の確保が難しい
  • 専任の小中一貫教育コーディネーター(小中学校間の連携をコーディネートする教員)が必要

(都道府県教育委員会回答より)

<都道府県による研究指定事業>               

 実施した 38%

<小・中学校教員が合同で参加する授業研究のための会議等>

 設けている 19%

<独自の加配措置>

 行っている 15%

このほか、人事上の工夫として、

  • 小・中学校の両免許取得を推奨
  • 定期人事異動における小中間の教職員の交流の促進を人事異動方針として定めている
  • 小中連携コーディネーターの配置
  • 兼務発令
  • 全小・中学校に小中連携教育推進担当を配置(指定都市)

等の回答も得られた。

このほか、小中連携推進のための取組として、

  • 市町村が実施する小中連携事業に県が助成
  • 県の小中連携に関する研究事業の発表会を実施、指定校の成果の他の市町村への共有化
  • 小学校5・6年生において学力向上や小学校から中学校への円滑な接続を図る観点から、「教科担任制」と「少人数学習集団の編成」を組み合わせた県独自の教科担任制を段階的に実施
  • 小中連携に関する情報を、県教委のホームページに掲載し、その取組を広く紹介

等の回答も得られた。

○ 上記のとおり、小・中学校において、小中連携に関する何らかの取組を行っている市町村の数は1,276であり、全回答数1,763に占める割合は72.4%であり、多様な形態で小・中学校間の連携が進められている実態が明らかになった。それとともに、小中連携のねらいとしては、学習指導上、生徒指導上の成果を上げる、または教職員の指導力の向上につなげるためとの回答が多く、ほぼ全ての市町村において小中連携の取組の成果が見られると回答している一方、多くのところでは課題も認識している実態が見受けられる。また、小中連携を推進する市町村に対する支援を行う都道府県の割合は一部に限られる実態も見受けられる。

○ こうした実態を踏まえた上で、本作業部会としては、以下の7つの柱を中心に、小・中学校間の連携・接続の改善に資する小中連携、一貫教育の在り方について審議を行った。

  1. 目的、効果
  2. 教育課程
  3. 指導方法
  4. 推進体制
  5. 地域との連携等
  6. 教員人事、教員免許
  7. 校地・校舎等

○ その際、「小中連携」「小中一貫教育」については、

  •  「小中連携」は、小・中学校がそれぞれ別の学校であるとの前提の下、教育目標やカリキュラムの共通部分について協働する取組であり、「小中一貫教育」は、教育目標や目指す子ども像、カリキュラムをともに作り上げる取組
  • 「小中連携」は、小・中学校がそれぞれの課題解決のために小・中学校が連携して行う教育であり、児童生徒、教員の交流や合同の活動を通して小学校から中学校への円滑な接続を目指す教育、「小中一貫教育」は、小・中学校が目標を共有し、その達成に向け小・中学校9年間を通して系統的な活動の展開を要する教育

 と捉えて取り組んでいる事例があった。
 これらを踏まえつつ、本意見等の整理においては、
 「小中連携」…小・中学校が互いに情報交換、交流することを通じ、小学校教育から中学校教育への円滑な接続を目指す様々な教育
 「小中一貫教育」…小中連携のうち、小・中学校が9年間を通じた教育課程を編成し、それに基づき行う系統的な教育
 と捉えることとする。また、小中連携と小中一貫教育を併せて表現する場合には、「小中連携、一貫教育」とすることとする。

○ 以上の審議を経た上で、現行の小・中学校制度とは異なる、新たな学校制度としての義務教育学校制度(仮称)創設の是非に関する審議を行った。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --