4.多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進

○ 多様な学びの場として、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校それぞれの環境整備の充実を図っていくことが必要である。

○ 通常の学級においては、少人数学級の実現に向けた取組や複数教員による指導など指導方法の工夫改善を進めるべきである。

○ 特別支援教育により多様な子どものニーズに的確に応えていくためには、教員だけの対応では限界がある。校長のリーダーシップの下、校内支援体制を確立し、学校全体で対応する必要があることは言うまでもないが、その上で、例えば、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に定める教職員に加えて、特別支援教育支援員の充実、さらには、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)等の専門家の活用を図ることにより、障害のある子どもへの支援を充実させることが必要である。

○ 医療的ケアの観点からの看護師等の専門家についても、必要に応じ確保していく必要がある。

○ 通級による指導を行うための教職員体制の充実が必要である。

○ 幼稚園、高等学校における環境整備の充実のため、特別支援学校のセンター的機能の活用等により教員の研修を行うなど、各都道府県教育委員会が環境を整えていくことが重要である。

○ 域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)により、域内のすべての子ども一人一人の教育的ニーズに応え、各地域におけるインクルーシブ教育システムを構築することが必要である。

○ 特別支援学校は、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育に関する相談・情報提供機能、障害のある児童生徒等への指導・支援機能、関係機関等との連絡・調整機能、小・中学校等の教員に対する研修協力機能、障害のある児童生徒等への施設設備等の提供機能といったセンター的機能を有している。今後、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)の中でコーディネーター機能を発揮し、通級による指導など発達障害をはじめとする障害のある児童生徒等への指導・支援機能を拡充するなど、インクルーシブ教育システムの中で重要な役割を果たすことが求められる。そのため、センター的機能の一層の充実を図るとともに、専門性の向上にも取り組む必要がある。

○ 域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)や特別支援学校のセンター的機能を効果的に発揮するため、各特別支援学校の役割分担を、地域別や機能別といった形で、明確化しておくことが望ましく、そのための特別支援学校ネットワークを構築することが必要である。

○ 特別支援学校と幼・小・中・高等学校等との間、また、特別支援学級と通常の学級との間でそれぞれ行われる交流及び共同学習は、特別支援学校や特別支援学級に在籍する障害のある児童生徒等にとっても、障害のない児童生徒等にとっても、共生社会の形成に向けて、経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有するとともに、多様性を尊重する心を育むことができる。

○ 特別支援学校と幼・小・中・高等学校等との間で行われる交流及び共同学習については、双方の学校における教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど交流及び共同学習の更なる計画的・組織的な推進が必要である。その際、関係する都道府県教育委員会、市町村教育委員会等との連携が重要である。また、特別支援学級と通常の学級との間で行われる交流及び共同学習についても、各学校において、ねらいを明確にし、教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど計画的・組織的な推進が必要である。

○ 医療、保健、福祉、労働等の関係機関等との適切な連携が重要である。このためには、関係行政機関等の相互連携の下で、広域的な地域支援のための有機的なネットワークが形成されることが有効である。

(1)多様な学びの場の整備と教職員の確保

1.多様な学びの場(通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校)における環境整備と教職員の確保

○ 多様な学びの場として、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校それぞれの環境整備の充実を図っていくことが必要である。

○ インクルーシブ教育システム構築のためには、特に、小・中学校における教育内容・方法を改善していく必要がある。教育内容の改善としては、障害者理解を進めるための交流及び共同学習の充実を図っていくことや通常の学級で学ぶ障害のある児童生徒一人一人に応じた指導・評価の在り方について検討する必要がある。また、教育方法の改善としては、障害のある児童生徒も障害のない児童生徒も、さらには、障害があることが周囲から認識されていないものの学習上又は生活上の困難のある児童生徒にも、効果的な指導の在り方を検討していく必要がある。

○ 平成23年4月には公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の改正により、小学校1年生については、学級編制の標準を40人から35人に引き下げたほか、教職員定数に関する加配事由として、「障害のある児童生徒に対する特別の指導が行われていることその他障害のある児童生徒に対する指導体制の整備を行うことについて特別の配慮を必要とする事情」が追加された。また、市町村教育委員会がより地域や学校の実情に応じた柔軟な学級編制ができるよう制度改正が行われた。

○ 通常の学級においては、少人数学級の実現に向けた取組や複数教員による指導など指導方法の工夫改善を進めるべきである。

○ 特別支援学級については、国の学級編制の標準は8人とされているが、現状としては、障害種別に学級を編制することや、都道府県教育委員会において国の標準を下回る学級編制基準を定めることが可能であることなどから、1学級当たりの在籍者は平均で3人程度となっている。今後、インクルーシブ教育システム構築の進展を踏まえつつ、その指導方法の工夫改善等について検討していく必要がある。

○ 特別支援教育により多様な子どものニーズに的確に応えていくためには、教員だけの対応では限界がある。校長のリーダーシップの下、校内支援体制を確立し、学校全体で対応する必要があることは言うまでもないが、その上で、例えば、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に定める教職員に加えて、特別支援教育支援員の充実、さらには、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)等の専門家の活用を図ることにより、障害のある子どもへの支援を充実させることが必要である。

○ 特別支援教育を推進するため、子どもの現代的な健康課題に対応した学校保健環境づくりが重要であり、学校においては、養護教諭を中心として、学級担任等、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、スクールカウンセラーなど学校内における連携を更に進めるとともに、医療関係者や福祉関係者など地域の関係機関との連携を推進することが必要である。また、医療的ケアの観点からの看護師等の専門家についても、必要に応じ確保していく必要がある。

○ インクルーシブ教育システム構築のため、特別支援学校の持てる機能を活用する観点から、寄宿舎の役割について検討していく必要がある。各特別支援学校の寄宿舎は、入居した障害のある児童生徒等が毎日の生活を営みながら、生活のリズムをつくるなど生活基盤を整え、自立し社会参加する力を養う貴重な場である。そうした意味から、一層の活用を期待し、例えば、学校がサマースクールを開催する際などに、その機能を活用することも考えられる。

2.通級による指導の一層の充実

○ 通級による指導については、教職員定数の改善等により、その対象者数は年々増加傾向にある。

○ 通級による指導については、自らの在籍している学校において行う「自校通級」、自らの在籍している学校以外の場で行う「他校通級」がある。しかし、「他校通級」では、児童生徒の移動による心身の負担や移動時の学習が保障されないなどの課題もある。これらを極力減らすため、教員の巡回による指導等を行うことにより自校で通級による指導を受けられる機会を増やす等の環境整備を図っていく必要がある。そのため、通級による指導を行うための教職員体制の充実が必要である。

3.幼稚園、高等学校段階における特別支援教育の充実について

○ 幼稚園、高等学校における環境整備の充実のため、特別支援学校のセンター的機能の活用等により教員の研修を行うなど、各都道府県教育委員会が環境を整えていくことが重要である。

○ 幼稚園における特別支援教育の充実は、保育所等における早期支援とともに、教育委員会等による就学期における教育相談・支援の充実の中で図られることが適当である。

○ 高等学校においては、入学者選抜における配慮を行うとともに、中学校、特別支援学校等との連携により、障害のある生徒に対する必要かつ適切な指導や支援につなげていくことが必要である。

○ 現行制度上、高等学校においては、教育課程の弾力的運用を行うことはできるが、小・中学校の通級による指導や特別支援学級のような特別な教育課程の編成を行うことができない。そのため、自立活動の内容を参考にした学校設定科目を設けて選択履修できるようにすることができるものの、自立活動として行うことはできない。このため、高等学校において、自立活動等を指導することができるよう、特別の教育課程の編成について検討する必要がある。

4.特別支援教室構想について

○ 特別支援教室構想は、小・中学校において、LD、ADHD、高機能自閉症等を含めた障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍し、教員の適切な配慮、ティーム・ティーチング、個別指導や学習内容の習熟に応じた指導等の工夫により通常の学級において指導を行いつつ、必要な時間に特別の場で障害に応じた教科指導や、障害に起因する困難の改善・克服のための指導を行う形態であり、平成15年3月の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議報告「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」の提言を受け、平成17年12月の中央教育審議会答申(特別支援教育を推進するための制度の在り方について)において構想として示されたものである。また、平成22年3月に出された特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議の報告では、児童生徒のニーズに応じて、指導時間においても連続性のある形で対応することが可能な制度にすべきとの意見や特別支援教室構想の制度化に当たっては、教職員配置の在り方を含め、総合的かつ慎重に検討すべきとの意見もあった、と整理されている。

○ 各地域においては、通級による指導と特別支援学級の活用を組み合わせることなどにより、特別支援教室構想についての実践が積み重ねられている。対象児童生徒については、個別的な指導・支援を受けたことにより、「学習に対する興味・関心、意欲が高まった」、「学習態度が身に付いた」、「学習への集中が持続するようになった」などの効果があった、との報告もなされている。また、小学校においては、教員が通常の学級での授業づくりや集団づくりの重要性に気付き、障害のある児童にとって学びやすい授業、生活しやすい学級がすべての児童によっても学びやすい授業、生活しやすい学級であることが実践的に確認できた、築かれた校内体制が、対象となる障害のある児童だけでなく、不登校にある児童、いじめや反社会的行動をしている児童、心的ストレスの大きかった児童などにも有効である、といった報告もされている。

○ 一方で、通級による指導や特別支援学級担当の教員の十分な配置がなければ特別支援教室構想に沿った学級の運営が困難となる、また、知的障害のある児童生徒については学年が上がるにつれて当該学年で求められる学習の理解が難しくなる、といった課題も挙げられている。

○ 特別支援教室構想を担うと考えられる特別支援学級の教員の専門性が課題となっている現状において、特別支援教室構想を進めることは、教員の専門性が担保されないままで十分に機能を果たすことができるかという点が課題である。そのため、第一に教員の専門性を担保するための方策が実施される必要がある。また、知的障害のある児童生徒の指導の在り方や各学校における特別支援教室構想における校内体制の構築等について実践的な研究を更に積み重ねていく中で、その実現を検討していく必要がある。

(2)学校間連携の推進

1.学校間連携による地域の教育資源の活用

○ 地域内の教育資源(幼・小・中・高等学校及び特別支援学校等、特別支援学級、通級指導教室)それぞれの単体だけでは、そこに住んでいる子ども一人一人の教育的ニーズに応えることは難しい。こうした域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)により域内のすべての子ども一人一人の教育的ニーズに応え、各地域におけるインクルーシブ教育システムを構築することが必要である。その際、交流及び共同学習の推進や特別支援学校のセンター的機能の活用が効果的である。さらに、特別支援学校は都道府県教育委員会に設置義務があり、小・中学校は市町村教育委員会に設置義務があることから、両者の連携の円滑化を図るための仕組みを検討していく必要がある。なお、通学の利便性の向上のため、特別支援学校の分教室を設置するなど、特別支援教育の地域化を推進している都道府県もある。今後こうした例を地域の状況等を考慮しながら広め、多様な学びの場の設定、域内の教育資源の組合せ、柔軟な「学びの場」の見直しなどの仕組みの構築を目指すことが重要である。(参考資料24:域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)のイメージ)

○ 特別支援学校の教員による巡回相談等、小・中学校等と特別支援学校との連携が重要である。特別支援学校も加えた形で地域の特別支援教育の支援体制を「面」として作っていくことが必要である。

○ 特別支援学校を分校、分教室の形で、小・中・高等学校内や小・中・高等学校に隣接又は併設して設置するなど、地域バランスを考慮して、都道府県内に特別支援学校を設置していくことも方策の一つとして考えられる。児童生徒の移動時間を考えると、分校、分教室の方が指導を充実できる可能性もある。また、交流及び共同学習も実施が容易になり、双方の児童生徒のみならず双方の教員にも良い影響を与える。さらに、小学校に設置している特別支援学校の分教室で、当該小学校のみならず周辺の学校に対して支援を行っている例もある。

○ 同じ障害のある者との交流を継続して体験するため、例えば、通常の学級や特別支援学級で教育を受ける視覚障害の児童生徒が、特別支援学校(視覚障害)の児童生徒と交流を定期的に実施するなどの仕組みづくりが考えられる。特別支援学級における教育や通級による指導を受けている児童生徒の場合には、特別支援学校の児童生徒と学習を共に行うことで一層専門的な自立活動の指導を受けることができるとの報告もあり、効果的な指導方法として考えられる。

○ 各市町村の小・中学校に設置されている特別支援学級をその市町村における特別支援教育のセンターとして、必要に応じ、特別支援学校のセンター的機能に類する役割を持たせることも考えられる。

○ 病院に入院した際は、病院に併設されている学校、あるいは、病院内に設けられた学校や学級に転校等をしなければ正式には、当該学校等の教育を受けることができない。退院すると以前在籍していた学校に戻ること、近年は入院が短期化してきていること、退院しても引き続き通院や経過観察等が必要なため、すぐに以前在籍していた学校に通学することができない子どもが増えていること等を踏まえ、現在の特別支援学校、病院内に設置された学級と在籍していた学校における転学手続の運用等を一層柔軟にしていくことを検討するべきである。

2.特別支援学校のセンター的機能の一層の活用

○ 特別支援学校は、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育に関する相談・情報提供機能、障害のある児童生徒等への指導・支援機能、関係機関等との連絡・調整機能、小・中学校等の教員に対する研修協力機能、障害のある児童生徒等への施設設備等の提供機能といったセンター的機能を有している。今後、域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)の中でコーディネーター機能を発揮し、通級による指導など発達障害をはじめとする障害のある児童生徒等への指導・支援機能を拡充するなど、インクルーシブ教育システムの中で重要な役割を果たすことが求められる。そのため、センター的機能の一層の充実を図るとともに、専門性の向上にも取り組む必要がある。その際に、市町村教育委員会との役割分担を念頭に、協力体制を構築することが重要である。加えて、特別支援学校のセンター的機能を支援する仕組みを各都道府県において整備することが必要である。

○ 各都道府県に設置されている、特別支援教育センターや教育センターの特別支援教育部門、各特別支援学校をネットワーク化し、域内の特別支援教育をバックアップする体制をつくりだすことが大切である。また、今後、義務教育段階に留まらず、幼稚園段階、高等学校段階における特別支援教育を推進するため、センター的機能の充実に資するような教員配置の在り方について、積極的に検討していく必要がある。

○ 特別支援学校がセンター的機能を果たすためには、域内のどこからでもアクセスしやすい場所に今後設置されることが望ましい。また、現存の特別支援学校についても、ICTの活用等により、センター的機能を一層発揮するための環境整備を実施していくことが望ましい。

3.特別支援学校ネットワークの構築

○ 域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)や特別支援学校のセンター的機能を効果的に発揮するため、各特別支援学校の役割分担を、地域別や機能別といった形で、明確化しておくことが望ましく、そのための特別支援学校ネットワークを構築することが必要である。

○ 特別支援学校における幼児児童生徒の障害の重度・重複化に対応した教育の一層の充実のため、教育内容・方法、教材・教具についての特別支援学校間の連携を強めることが必要である。

○ 視覚障害、聴覚障害等のための特別支援学校については、特に、一県当たりの設置している学校数が少ないことから、広域による連携が考えられる。

○ 特別支援学校ネットワークの構築に当たっては、例えば、特別支援教育のナショナルセンターである国立特別支援教育総合研究所が、教育内容・方法、教材・教具についての情報提供や専門性を有する人材の養成を行うことなどが考えられる。

(3) 交流及び共同学習の推進

○ 特別支援学校と幼・小・中・高等学校等との間、また、特別支援学級と通常の学級との間でそれぞれ行われる交流及び共同学習は、特別支援学校や特別支援学級に在籍する障害のある児童生徒等にとっても、障害のない児童生徒等にとっても、共生社会の形成に向けて、経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有するとともに、多様性を尊重する心を育むことができる。なお、特別支援学校や特別支援学級を設置している学校における交流及び共同学習は必ず実施していくべきであるが、特別支援学級を設置していない学校においても、交流及び共同学習以外の形であっても何らかの形で、共生社会の形成に向けた障害者理解を推進していく必要がある。

○ 交流及び共同学習については、学習指導要領に位置付けられ、その推進を図ることとしており、各地で様々な工夫がなされている。例えば、特別支援学校高等部生徒による小学校の児童に対する職業教育の実習、居住地校交流における副次的な籍の取扱い、居住地校交流に担任が付き添う際の教職員の補充やボランティアの育成・活用、分教室の設置による交流及び共同学習の推進などが行われている。今後、例えば、交流及び共同学習における「合理的配慮」の提供、交流校の理解啓発、教育課程上の位置付け、中学部、高等部における交流の在り方、異なる教科書等を用いている場合の取扱い等の課題について整理する必要がある。

○ 特別支援学校と幼・小・中・高等学校等との間で行われる交流及び共同学習については、双方の学校における教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど交流及び共同学習の更なる計画的・組織的な推進が必要である。その際、関係する都道府県教育委員会、市町村教育委員会等との連携が重要である。また、特別支援学級と通常の学級との間で行われる交流及び共同学習についても、各学校において、ねらいを明確にし、教育課程に位置付けたり、年間指導計画を作成したりするなど計画的・組織的な推進が必要である。

○ 特別支援学校における、居住地校との交流及び共同学習は、障害のある児童生徒が、居住地の小・中学校等の児童生徒等とともに学習し交流することで地域とのつながりを持つことができることから、引き続きこれを進めていく必要がある。一部の自治体で実施している居住地校に副次的な籍を置くことについては、居住地域との結びつきを強め、居住地校との交流及び共同学習を推進する上で意義がある。この場合、児童生徒の付添いや時間割の調整などが現実的課題であり、それらについて検討していく必要がある。(参考資料25:副次的な籍について)

(4)関係機関等との連携

○ インクルーシブ教育システムを構築する上では、医療、保健、福祉、労働等の関係機関等との適切な連携が重要である。このためには、関係行政機関等の相互連携の下で、広域的な地域支援のための有機的なネットワークが形成されることが有効であり、既に各都道府県レベルでは、県全域を見通した「広域特別支援連携協議会」が設けられるとともに、「障害保健福祉圏域」や教育事務所単位での支援地域の設定などが行われている。それら支援地域内の有機的なネットワークを十分機能させるためには、保護者支援を行うこと、連絡協議会を設置すること、個別の教育支援計画を相互に連携して作成・活用することが重要である。今後、課題が多面的になっていることを踏まえて、関係機関に予防的な役割としての警察や司法も加えた支援を検討していく必要がある。

○ 各地域において、同じ場で共に学ぶことを具体的に実現していくためには、基礎自治体の取組が大きく影響する。その際、教育委員会だけではなく、財政、福祉等の観点から首長部局との連携も重要である。例えば、特別支援教育コーディネーター、福祉事務所、民生委員・児童委員が連絡会を年に数回必ず開催するといった連携も考えられる。その際に、既存の特別支援連携協議会、地域自立支援協議会等の活用が考えられる。

○ インクルーシブ教育システムの構築に当たり、障害のある子どもの地域における生活を支援する観点から、地域における社会福祉施策や障害者雇用施策と特別支援教育との一層の連携強化に取り組む必要がある。また、卒業後の就労・自立・社会参加も含めた共生社会の構築を考える必要がある。

○ 例えば、重度の障害がある児童生徒等に適切な教育を提供するためには、施設・整備等の基礎的環境整備、十分な知識と技量を備えた教育スタッフチームの育成・配置、看護師と教員が連携した医療的ケアの実施体制の整備等が必要であるが、これらの環境整備を地域で計画的に進めていく必要がある。また、キャリア教育の観点からは、ソーシャルワーク(人々の生活を社会的な視点から捉え、その解決を支援すること)が非常に重要であるが、それを学校、教員だけで行うことは困難であり、地域の中で、ソーシャルワークの機能を確保していくことが重要である。

○ 同じ障害のある者との交流を継続して体験するため、例えば、中学校・高等学校に通っている視覚障害の生徒と特別支援学校(視覚障害)の生徒の両方を対象とし、サマーキャンプ等で学習体験をする実践もある。その実践においては、先輩であり現役の企業等で働いている視覚障害の技術者、教員等が講師となり、それを支えているのが特別支援学校(視覚障害)の教員や大学の視覚障害教育の関係者である。

○ 親の会等の障害者関係団体、NPO等の中には、地域で効果的な活動の実践を続けているところがあり、このような民間の力と連携・協働した保護者・本人支援が考えられる。一方、親の会等の障害者関係団体、NPO等の中には組織力や企画力が十分でない場合もあることから、これらを国や地方自治体が支援し育成していくことが重要である。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --