参考資料2 |
これからの教育を語る懇談会は、河村文部科学大臣から「人間力向上のための教育改革を進めるための課題について大所高所から幅広く議論し、必要な改革の方向性を骨太に示して欲しい」との要請を受け、本年4月に発足し、「国民から信頼される学校」の実現について議論を重ねてきた。
本懇談会では、教育改革の推進に当たっては、教員の専門性・地位の向上を図ることと、権限・責任をより現場に近いところへ移していくということを基本とすることが重要であると考えている。
その際、サプライサイド(供給者)である教育の提供者側中心の視点でなく、受け手である一人一人の子どもや保護者側の視点に十分留意し、現在の社会環境に学校、家庭、地域社会が柔軟に対応し、それぞれの能力が最大限に発揮されるよう、制度や政策を大胆に見直していく取組が必要である。加えて、地域住民が当事者意識を持って、地域の学校を理解し、子どもたちと積極的にかかわっていくことが何よりも求められるものである。
また、この改革の実現に当たっては、地方の創意工夫に富んだ取組を活かしつつ、国が義務教育の水準を全国的に保障することが必要であり、その責任と役割を明確にすることが不可欠である。
このような考え方に立脚し、「高い使命感と指導力を持つ教員を養成し」、「学校が権限と責任をしっかり持って教育できるようにし」、「確かな学力を備えた心豊かでたくましい日本人に育てる」ことによって世界最高水準の初等中等教育を実現すべきと考えた。
このたび、これまでの議論で多くの委員の一致をみた教員や学校運営システムについての論点をとりまとめたので、当面、第一次まとめとして提言する。速やかにその政策の実施のための取組がなされることを強く希望する。
なお、今後、残された課題のとりまとめに向けては、引き続き議論していきたい。
具体的方策 |
◎高い使命感と指導力を持つ教員を養成する
企業も含め、組織はまず人であり、信頼される学校づくりのためには、優れた教員が不可欠である。これまで採用後の研修制度の充実など様々な工夫がされてきているが、必ずしも十分だったとは言えない。
したがって、現行の教員養成システムを改革し、専門的な知識と豊かな識見・人格の双方における教員全体の資質を向上させるため、次の方策を実現すべきである。
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(1) | 教員養成の専門職大学院(教員版プロフェッショナル・スクール)の設置促進 | |
学校教育の直接の担い手である教員の資質能力や、校長等の管理職のマネジメント能力などの飛躍的な向上を図るため、教育現場の様々な課題に正面から取り組む、高度な専門性と実践的な指導力を備えた教員を養成する専門職大学院の設置を進める。 その場合、教育実習などの教職専門科目の重点的履修、指導力に優れた現職教員や教育行政の実務家等の大学教員への積極的登用など、高度専門職業人養成を目指したものを検討するとともに、高い使命感や幅広い社会性の育成にも十分留意すべきである。また、校長等の管理職や教育行政のプロの養成の場としての役割等についても検討する必要がある。 専門職大学院については、教員の養成、研修、評価等において社会的に主導的な地位と役割を果たし、その修了者が採用、処遇等における優遇措置を講じられることを希望する。 |
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(2) | 教員免許の「更新制」の導入 | |
教員免許状取得者が教員として必要な資質能力を身に付けていることを確実に保証するよう、教員免許状に一定の有効期限を付し、更新時に教員としての適格性や専門性の向上を評価することにより、更新の可否を決定する制度を創設するなど、教員免許制度を抜本的に改革すべきである。 その場合、教員に必要な適格性や専門性を備えていることを適切かつ十分に判断した上で授与するとともに、教職課程の認定の厳格化や、大学教員としての小・中学校教員の積極的な活用による実践的な講義の実施など、学部段階をはじめとした教育内容・方法の改善方策についても検討することを期待する。 |
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(3) | 優秀な教員の評価と処遇の改善 | |
教員の主体的・自発的な取組や切磋琢磨を促し、その意欲や努力に報いるため、模範となる若手・中堅教員、いわゆる荒れた学校の建て直しなどに実績を挙げた校長等を対象とした顕彰の実施や、顕彰を受けたことを処遇に反映する仕組みづくりなどを進める。 |
◎学校が権限と責任を持ってしっかり教育できるようにする
公教育に対する信頼を取り戻し、安全・安心な環境の下、子どもが毎日楽しく通学でき、学力の向上や人格の陶冶(とうや)が図れる、保護者や子どもにとって「信頼される学校」づくりを進めるため、次の方策を実現すべきである。
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(1) | 住民の学校運営への参画促進−学校評議員・学校運営協議会の全国化 | |
地域住民の意見を学校運営に反映させる学校評議員制度や、保護者や地域住民が、公立学校における基本方針の決定や教職員人事に一定の権限を持って関与することができる学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)が全国的に導入されるよう国も支援を行う。 その場合、学校がしっかりと運営されるとともに、このような活動に地域の大人たち、学校の卒業生、研究者、大学院生、学生などが積極的にかかわることが当然と受け止められる社会環境の醸成に向けて、経済団体や労働団体、PTAや「おやじの会」などの社会教育関係団体やNPOとも積極的に連携しつつ、全国的な普及・広報活動を展開し、地域によって支えられる学校づくりを推進すべきである。 |
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(2) | 学校評価システムの確立と教員評価の徹底 | |
すべての学校が、児童生徒の学力をはじめ教育活動や学校運営の成果について適切な評価基準に基づき、外部からの評価を受け、その結果が保護者や地域住民に公表され、適切に学校教育活動に反映されるような学校評価システムを構築する。 また、教員の評価については、その能力や実績等を適正に評価し、処遇や教員の指導力の向上に結び付ける教員評価システムの構築を促すとともに、指導力不足教員等に対する人事管理システムが有効に機能するよう、国も積極的に支援を行う。 |
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(3) | 教員人事や学級編制など市町村・校長の権限の強化 | |
現在の県費負担教職員制度を改革して、一定規模以上の市(当面、中核市程度)には教員の人事権や学級編制権を移譲する。 また、学校(校長又は学校運営協議会)の人事権をより強化し、できる限り学校の意向に即した人事を行うことができるよう、公募制やFA制の積極的な活用を促す。さらに、学校の改革には時間がかかることなどを踏まえ、校長が戦略と計画を持って教育方針を立てられるよう、任期の長期化や予算の裁量権の拡充を全国的に推進する。 さらに、教育委員会が教育行政の責任ある担い手として地域の課題に主体的に取り組むことができるよう、また学校の改革を推進する校長を支援できるよう、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の関係、教育委員会と学校の関係について、検討を進めることを期待する。 (了) |
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