初等中等教育分科会(第152回) 議事録

1.日時

令和7年10月20日(月曜日)15時30分~18時00分

2.場所

文部科学省(※対面・WEB会議の併用)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する審議状況について(論点整理)
  2. 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する審議状況について(論点整理)
  3. デジタル教科書推進ワーキンググループの審議まとめについて
  4. 全国学力・学習状況調査の結果について
  5. その他

4.議事録

【貞広分科会長】  では、定刻を過ぎましたので、ただいまから第152回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。
 本日も御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 まずは、本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
 
【草野教育制度改革室長】  担当室長、草野でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 本会議は、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催させていただきます。会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、委員の皆様におかれましては、御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言のとき以外も含めて、会議中はオンにしていただきますようお願いします。
 なお、本日、報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 次に、資料の確認でございます。本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料1から資料4まで、また、加えて参考資料1から参考資料4までを御用意してございます。不備がございましたら、御指摘いただければと思います。
 以上でございます。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の議題に入ります。本日は、次第に記載していただいているとおり、議題四つでございます。時間の都合で御発言いただける委員に限りが生じてしまう場合もあるかと思います。その場合は、会議の後に事務局宛てにメール等で御連絡いただければ議事録に掲載することといたしたいと思いますので、あらかじめ御了承いただければと存じます。
 さて、議題(1)は、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する審議状況について、こちらは論点整理でございます。
 議題(2)は、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する審議状況について、こちらも同じく論点整理でございます。
 この二つにつきましては、前回の初等中等教育分科会においても御説明、御議論いただきましたが、その後の審議状況につきまして、事務局から追加で御説明をいただきたいと思います。
 議題(3)は、デジタル教科書推進ワーキンググループの審議まとめについてです。こちらは、デジタル学習基盤特別委員会の下に令和6年7月に設置されたデジタル教科書推進ワーキンググループにおいて、デジタル教科書の在り方や当面の推進方策などについて議論がなされ、本年9月24日に取りまとめました審議まとめになります。本日は、事務局から、この内容について御説明をいただきたいと思います。
 さらに、議題(4)でございます。議題(4)は、全国学力・学習状況調査の結果についてです。こちらは、本年4月に実施した令和7年度全国学力・学習状況調査の結果及び令和6年度全国学力・学習状況調査経年変化分析調査、保護者に対する調査の結果につきまして、事務局より御説明いただくものでございます。
 以上の四つの議題の内容については、相互に密接に関連するものと考えております。そこで、まずまとめて事務局から御説明いただいた後に、委員の皆様に御意見、議論をいただければと思います。
 それでは、事務局より、一括して御説明をお願いいたします。
 
【武藤教育課程課長】  教育課程課長の武藤でございます。まず、教育課程企画特別部会論点整理につきまして御説明申し上げたいと思います。
 先ほど主査からございましたように、このことについては、前回の初等中等教育分科会でも御説明をしております。その後、正式に論点整理として取りまとまりました。目次のとおりでございます。
 一章で、基本的な考え方、二章で、質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい指導要領の在り方、この中に、中核的な概念の話、「学びに向かう力」等の再整理の話、「見方・考え方」の再整理の話、また、デジタル学習基盤を前提とした学びの在り方の話、こういったものがございます。
 第三章として、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方ということで、義務教育段階、高等教育段階で、大幅な制度の柔軟化の提案をしているところでございます。加えて、個別の児童生徒に係る教育課程の編成・実施の仕組みということで、日本語指導が必要な子供たち、また、不登校あるいは特異な才能を有する子供たち、こういった子供たちに関する特別な教育課程の編成の仕組みの新設や拡充がございます。
 また、第四章、情報活用能力の抜本的向上と質の高い探究的な学びを重ね合わせてさらに発展させるような方向性、そして、「余白」の創出、豊かな学びに繋がる学習評価の在り方、その他多様な観点についてこれまで御議論いただきました。
 このうち、ほぼ二章から七章の主たるところについては前回の分科会で御説明申し上げておりますので、今日は、第一章の基本的な考え方と、第八章、今後の見通しについて、まとめて御説明したいと思います。
 まず、第一章でございます。ここが前回なかったところでございますが、基本的な考え方ということで、改訂論議を貫く三つの方向性をここで示しております。「主体的・対話的で深い学び」の実装、多様性の包摂、さらに実現可能性の確保、この三つの方向性を踏まえて議論を行っていくということをまず示した上で、一つ一つ御説明しております。
 一つ目、「主体的・対話的で深い学び」の実装ですが、これは現行の指導要領が目指している授業改善を通じた資質・能力の育成について、一層具現化・深化を図るものであります。こういった現行との継続性をさらに発展させていくということを明らかにしております。そのために、先ほども出てまいりました目標・内容の構造化・デジタル化、あるいは重要概念の整理をしながら、分かりやすく、使いやすい指導要領を目指していくという方向性でございます。
 少し背景を申し上げると、丸1のチェックの上から2行目ですけれども、思考力、判断力、表現力等を発揮する中で、概念の習得とか深い意味理解を促すとか、あるいは、他の場面でも活用できるような、生きて働く「確かな知識」の習得というのが大事であるということ、また、学びに向かう力、人間性等が一層重要になる中で、「主体的・対話的で深い学び」の実装を、次の指導要領に向けての第一の方向性というふうに位置付けているところでございます。
 そうした授業改善をしていく上で、デジタル学習基盤の効果的な活用というのは不可欠になりますけれども、まだまだ「深い学び」に繋がっていない事例もあるなど、道半ばであるという現状の評価をしております。さらに、社会のデジタル化がもたらしている負の側面への対応も含めて、情報活用能力の育成そのものにも様々な課題が見られる。こういう現状認識を述べた上で、具体策として、小学校の総合へ「情報の領域」の付加ですとか、中学校の「情報・技術科」の創設といった具体的方策を示しているところでございます。
 また、丸2です。多様性の包摂、これは様々な個性や特性、背景を有する子供たちが増えてきているという実態に向き合うとともに、こうした多様性を個人と社会の力に変える観点から、一人一人の意欲が高まり、可能性が開花し、個性が輝く教育の実現を目指すものということで、二つ目の方向性として位置付けているものでございます。
 具体策としては、「裁量的な時間」をはじめとする「調整授業時数制度」の創設、学年区分の取扱いの柔軟化、高校の単位制度の柔軟化、あるいは、先ほども出てまいりました特別の教育課程の仕組みの創設ということで、全体として教育課程が包摂的な仕組みになるように改めていくという方向性でございます。
 その上で、次のページに参りまして、三つ目、実現可能性の確保でございますけれども、第1、第2の方向性の両立を支えて、実現可能とする観点でございます。デジタル基盤の更なる充実と、教科書・教材、指導書の改善、必要な設備の整備、あるいは総合的な勤務環境整備、こういった様々なものとも相まって審議全体に通底させるべき第3の方向性というふうに位置付けてございます。
 具体策としては、教育課程の枠組みや教科横断的な事項、今後行われる教科等ワーキンググループを含む審議全般にわたって、過度な負担と負担感が生じないような、持続可能な在り方を追求して、教師と子供の双方に「余白」を創出する方向性を示しているところでございます。
 二つ目のポツになります。自らの人生を舵取りする力と民主的な社会の創り手の育成ということでございます。
 諮問文の中で、「正解主義」、「同調圧力」への偏りからの脱却とか、民主的かつ公正な社会の基盤として学校を機能させる必要性、こういったことが指摘されたわけでございますが、その背景として、社会全体の構造変化について記載をしております。生成AIなどのデジタル技術の発展が相まって、みんなと同じことができることも重要ですが、それ以上に独自の発想や視点に価値が置かれるようになってきております。また、現在の学校教育の中で主体的な学びに向かえていない子供たちも増えてきているところでございます。さらに、少子化に伴って入試の倍率も下がっております。入試による動機付けの変化、それから学習時間の減少、こういった全体を踏まえますと、子供たちの学びに関する動機付けをアップデートしていく必要があるという現状認識でございます。予測困難な時代に、労働市場の流動化、また、就業期間の長期化、マルチステージの人生モデルへの転換といったものが進む中で、しなやかに「自らの人生を舵取りできる力」が不可欠となっているという認識。また、内なる国際化で人口の多様性が増しておりますし、生成AIとかSNSの負の側面もありまして、社会の分断の可能性も指摘されています。こうした中で、「民主的な社会の創り手」の育成が喫緊の課題であるといったことを述べた上で、二つの方向性でございますが、全ての幼児児童生徒に育むべき資質・能力の具体化・深化と並行して、一人一人の「好き」を育み、「得意」を伸ばしながら、それらを原動力として学び全体への動機付けを図っていく取組、これが一つ。また、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、多様な他者と対話や合意を図る取組を同時に進めて、それらが有機的に関わり合って高まっていく教育課程に変革していく必要があるといった方向性を示していただきました。
 こうした問題意識の下で、学びに向かう力、人間性等の概念の再整理ですとか、質の高い探究的な学びの実現とか、負の側面への対応も含む情報活用能力の抜本的向上、さらに、特活を中心とした主体的な社会参画に関わる教育の改善、あるいは先ほども出てまいりました裁量的な時間の創設といったものが具体策として議論されてきたところでございます。
 今申し上げたことをイメージ図にしたものが二つ続いております。検討の基盤となる考え方で、丸1、丸2、丸3、これらを三位一体的に実現していくと。それを下支えするところとして、青いところでございますが、学びをデザインする高度専門職としての教師や、デジタル学習基盤、あるいは教育課程の余白や、総合的な勤務環境の整備、これらが相まって多様な子供たちの深い学びを確かなものにしていく、それが自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続的な社会の創り手を育んでいく、こういった方向でつなげていくことをまとめていただいたところでございます。
 特に、一番下のところをもう少し詳しく掲げているのが、こちらのイメージ図になります。おおよそ先ほど申し上げたところでございますが、「好き」を育み、「得意」を伸ばすということでありますと、例えば、総合的な学習の時間で、グループ探究に加えて個人探究の色合いというのも入れていくという方向ですとか、あるいは、その隣の各教科等の下から二つ目ですけれども、教科の中でも探究的な要素をもう少し充実させていく、そして、自分の意見を表現する活動もさらに充実させていく。さらに、その上ですが、興味や関心を広げるような教材とか学習方法の選択を促進していく。この辺りが左側の総合と有機的に連関をしていくようなイメージでございます。
 一方、その探究の基盤として、当然、生きて働く「確かな知識」の習得も大事になりますし、そのためには、教科のところの一番下ですけれども、家庭学習の内容を自律的に決められるような段階的な指導も、とりわけ今、家庭学習の時間がどんどん減ってきているという状況もあって、重視していきたいところです。
 また、右側、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができるというほうでございますが、特別活動の中で、児童生徒主体のルール形成とか、学校生活の改善、行事の創造といったことを、こども基本法が成立したことも踏まえながら、学校教育の中に実装していきたいということ。その際、納得解の形成とか、安易な多数決の回避、あるいは少数意見の吟味とか、まさに今後のデモクラシーを考えていった上で大事なことを、この特別活動を基盤としてさらに充実をさせていきたい。それと、その隣の、考え、議論する道徳というのがまた一体的に充実していくようなイメージでございます。
 さらにその下の下に青い帯が二つあります。下から二つ目のほうですけれども、例えば、左側、個別最適な学びと協働的な学びの充実という、今の指導要領に明確に位置付いていないものをきちんと位置付けていくとか、あるいは科学的な知見も生かした効果的な授業方法や学習方略の指導など、各教科の一番上の「確かな知識」の習得、あるいは家庭学習とうまく連関していくようなイメージでございます。
 また、その隣です。障害や認知特性、多様な実態を踏まえた調整、さらに、全ての活動の基盤としての心理的な安全性の確保、これは対話とか合意とか自分の意見といったことを言っていく場合に極めて重要ですので、この辺りがトータルで機能するような指導要領にするべく、これから各教科等のワーキンググループで議論をしていただきたいということでございます。
 こちらが検討の体制でございます。初中分科会の下に教育課程部会があり、その下に教育課程企画特別部会がございますけれども、さらにその下にたくさんのワーキンググループを設置して、今、大体1回目が始まっているところとまだのところがある状況でございます。
 最後でございます。今後の検討スケジュールということで、今、若干申し上げましたけれども、もう一度改めて申し上げますと、まず、1ポツ、今後のスケジュールということで、企画特別部会でこの「論点整理」が取りまとまった後、総則・評価特別部会や、今申し上げた各ワーキンググループで、この「論点整理」で出された方向性や内容、それから全国学調等の各種データで明らかになった教科ごとの課題を十分に踏まえて検討を進めて、遅くとも来年夏頃までに取りまとめを行う。その後、教育課程部会での「審議まとめ」を経た上で、令和8年度中に中教審として「答申」を取りまとめていただく。こういったスケジュール感でございます。
 当然、教育課程部会の上にあるのが本分科会でございます。毎回の分科会にうまく検討状況をお伝えできるように、事務局としても配意してまいりたいと思っております。
 また、本部会、企画特別部会でございますが、この本部会と各ワーキンググループの関係ということでございます。この「論点整理」を的確に踏まえて、各教科等固有の議論を加味したり、あるいは共有しつつ、さらに豊かなものにするということでございまして、それぞれのワーキンググループでの議論が教科や学校段階に閉じたものにならないよう、ぜひお願いしたいということです。
 また、そのために、企画特別部会が、各ワーキンググループの議論の状況を把握して、教育課程全体としてどのような資質・能力を育成するか、積極的に調整していくといった方向性も示しているところでございます。
 また、その他でございます。第四章において、先ほども出てまいりました小学校の総合に情報の領域を付加していく、また、中学校に情報・技術科(仮称)を創設するといった方向性を示しております。これに伴って、ある程度標準授業時数の増加が想定されるところでございますが、一方で、諮問文の中では、年間の時数はこれ以上増やさないとしており、キャップをはめて今回議論していることとの関係もございますので、教育課程企画特別部会等で教育課程全体を見通した観点で検討を行って、この時数問題については、令和8年の春頃を目途に一定の結論を得るという方向性でございます。
 また、中教審と文科省がこの「論点整理」の内容について、現行の法令も踏まえながら、あらゆる関係者がしっかりと理解できて、かつ浸透できるようにするとともに、教師、学校、教育委員会が今の時点から次の指導要領への見通しを持って取り組めるように、この改訂の論議と並行して、あらゆる方策を尽くしてほしいといったことも審議会のほうからいただいています。
 事務局としては、これを踏まえて、各ワーキンググループの調整、併せて趣旨の徹底・普及にも並行して取り組んでまいりたいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【大江教育職員政策課長】  教育職員政策課長の大江でございます。私のほうから、教員養成部会の論点整理について御説明をさせていただきたいと思います。
 前回の初中分科会での御報告の後も、秋田部会長の下で積極的に御議論いただきまして、昨年の12月の諮問以来、合計10回の会議を重ねていただいたところでございます。その間、有識者の先生方、それから委員の先生方、また、特にOECDの田熊美保教育スキル局シニア政策アナリストからも、OECDのティーチング・コンパスの内容についても御紹介いただくなど、世界的な動向についても踏まえながら御議論いただいて、深めていただいたところでございます。
 去る9月19日の教員養成部会におきまして論点整理案について御議論いただきまして、部会長一任とされた上で、先週になりますけれども、10月15日付で「論点整理」としておまとめいただいたものが資料2-1になります。こちらで御説明をさせていただきたいと思います。
 本「論点整理」でございますけれども、3部構成となっておりまして、はじめに、本論点整理の位置付け、各論点についてということで、三つから成っております。
 3ページをお開きいただければと思います。まず、本論点整理の位置付けでございますが、二つほど重要な観点がございまして、一つは、今回のテーマになっております多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策についてでございますけれども、まさにこちらは中教審のこれまでの累次の答申、特に近年での令和3年答申、令和4年答申、それから、令和6年答申の流れを踏まえたものとなっているということをはっきり記載したらどうかということで御示唆いただきまして、そのような記載がされているというところでございます。
 また、もう一点でございますが、4ページ目の上から3行目ほどからになりますけれども、まさに先ほど教育課程課長のほうから御説明のありました学習指導要領の御審議と併せて今回諮問されたわけでございますけれども、こちらと歩調を合わせて議論をしてきたということが記載されております。
 特に、上から9行目あたりでございますけれども、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な方向性として、先ほど御説明ありました「主体的・対話的で深い学び」の実装、多様性の包摂、実現可能性の確保の三つの提起があったということと、さらには、2段落目、教員養成部会の議論においてもというところでございますが、正にこれのそれぞれの3点に呼応した議論をしてきたということで、教育課程企画特別部会と軌を一にして議論を行ってきたということが記載されているところでございます。
 6ページ目以降が各論点の整理ということになっておりますけれども、まず、7ページ目をお開きいただきまして、一つ目の論点でございますが、一つ目は、社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方でございます。今回、非常に多岐にわたった記載がされておるところでございますが、本日は、時間の関係上、ポイントを絞って御説明させていただきたいと思います。御了承いただければと思います。
 1点目、7ページの(1)、丸の一つ目でございます。まさに中教審の累次の答申を踏まえた教員の質、それから、養成・採用・研修について御議論いただいたところですけれども、一方で、近年の教師不足の課題でありますとか、あるいは採用倍率の低下、こうしたものも議論に上がっておりまして、それを踏まえての記述になりますが、全ての教職課程で学ぶべき内容と、各大学等での独自の学び双方を保証することが重要ということで、後段でございますけれども、教師の質向上と量的確保の両立を目指す必要があるということで記載されております。
 また、二つ下の丸でございますが、現状の教職課程のことでございますけれども、大学、学生双方で自由度が少ないといった御議論がございました。学生が受け身の学修に陥りがちということで、各大学の特性を生かした教員養成や学生が自らの専門性を高めていく履修が困難ということで、教師の育成は、教職課程の中だけではなくて、各大学が育成する教師像を明確にした上で、大学全体の学びの中でされるべきだといったことが記載されておることでございます。
 少し飛ばせていただきまして、10ページをお願いしたいと思います。上から一つ目の丸でございます。まさに先ほど言及させていただきました学習指導要領の改訂の議論と深めるということと、さらには、教職課程の検討の際には、現在行っております教員養成フラッグシップ大学の先導的な取組の成果や知見を踏まえるべきだというようなことを御議論いただいたところでございます。
 少し飛ばせていただきまして、13ページになります。(2)の教員免許制度の在り方というところの丸の一つ目でございますけれども、現在の教員免許制度が担保している教師養成の質を落とすことなく、教職志望者の裾野を広げ云々というふうになっております。その際には、プログラムの質保証の在り方でありますとか、デジタルも活用した柔軟な学生の学びや成果確認など総合的に免許取得に至る学びをどう考えるかを検討する必要があるということでございます。
 さらには、このページの下から三つ目のところで、必要単位数の見直しというところがございます。一つ目の丸で、一人でも多くの優秀な者が教職を目指してくれるよう、単位数の見直しが必要だということと、そのもう一つ下でございますが、繰り返しになりますけれども、現状、教員免許を取得するためには単位数が多く、取らなければならない授業という形になってしまっているので、自ら選択・判断、意思決定するようなカリキュラムにしていくべきではないかといった記載がされているところでございます。
 それから、16ページ目になります。二つ目の諮問の柱でございます教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方ということで、一番下の丸になりますけれども、多くの方に教師を目指してもらうために、働き方改革、教師の魅力をいかに高めていくかを検討することが必要ということで、定数改善、スタッフ充実、それから環境整備、魅力向上につながる取組を社会的な理解も得ながら進めていくことが必要ということが記載されております。
 18ページ目に飛んでいただければと思います。今回、養成・採用・研修を通じたということで、ここでは採用のことが書かれておりますけれども、教員採用選考の一次試験の共同実施については、様々なメリットがあるということで、質の向上であるとか、二次面接も含めた人物・実践重視の選考ができる、あるいは、本来やるべき教育委員会の事務職員の方々が向けられる仕事に注力できる、こういったことがメリットがあるということで、進めるべきではないかということが記載されているところでございます。
 20ページに飛んでいただきまして、研修時間の確保でございます。上から二つ目の丸でございますけれども、養成段階を超えて、現職教師が学びたいときに学べる環境をつくることが必要だということで、例えば、サバティカルの話であるとか、経済的負担軽減の環境整備等が書かれているところでございます。
 二つ下になりますけれども、四つ目の丸でございますが、イギリスで行われているような「サプライティーチャー」の仕組みも今後研究・検討していくべきではないかといったことが議論されたところでございます。
 3点目の論点の多様な専門性、背景を有する社会人等の入職についてでございます。少し飛ばせていただきまして、23ページ目になります。(1)の丸の一つ目でございますけれども、教育は保護者も含めて社会全体で行っているということで、それぞれの方々に対する役割として、色々な自分の仕事の魅力を伝えていくというのが子供たちにも必要なのではないかということ。
 二つ下になります三つ目の丸でございますけれども、教育の質の向上のために、短期的には専科教員、ICTなどに関する教育など、社会人の専門性を生かせる分野について、優先的に教職に参入しやすい環境を整備していくことが考えられるのではないか。
 また、さらにその下でございます。留意点としては、社会人の入職を進めていく際には、服務倫理、教職への理解、新しい学びの姿や児童・生徒の多様性などの理解を、入職前後の学習プログラムで担保していく必要があるのではないかといったことが記載されております。
 最後になりますけれども、25ページ目でございます。大学院での新しいプログラムということで、教員免許がない状態で大学院に入った場合で、大学院の勉強をしながら、もう一度学部で教職課程を取らずに、大学院だけで免許が取れるような仕組みも検討すべきではないかということで、これは新しいプログラムということで、検討するべきということが記載されております。
 今後のスケジュールでございますが、資料2-2の概要のポンチ絵の一番下に記載されておりますけれども、今後、ワーキンググループ、作業部会で、それぞれ、これも多岐にわたる詳細な議論を行っていくべしということで、教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループをはじめとして、複数のワーキンググループや作業部会を立ち上げた上で、その後、またそれを基に教員養成部会の中で議論をしていただいて、来年夏から秋を目途に答申をおまとめいただくというようなスケジュールになっているところでございます。
 雑駁でございますけれども、以上でございます。
 
【後藤教科書課長】  続きまして、教科書課長の後藤でございます。9月24日に取りまとめをいただきましたデジタル教科書推進ワーキンググループの審議まとめについて御説明いたします。資料3-2が本体で、資料3-1が概要ということで配付されておりますが、主に今映していただいています資料3-1に基づいて、本日は御説明させていただきます。
 まず、1枚目のところでございますが、これはデジタル教科書の現状というところで整理をした部分でございます。
 中ほどにありますけれども、まず制度的位置付けといたしまして、現行では、紙の教科書のみが教科書でありまして、現在配布されているデジタル教科書は、紙の教科書の内容をそのままデジタル化した「教科書代替教材」の位置付けでありまして、したがいまして、検定とか、採択とか、また、無償給与といったことの対象外であるという制度的な位置付けを記載しております。
 そして、その活用状況に関しては、国から、小学校5年生から中学校3年生を対象として、英語は100%、算数・数学は55%の小中学校に提供しているところでありまして、年々その活用の状況が増加してきているという状況でございます。
 そうした活用の中で、例えば、英語の発音を自分のペースで何度も確認したり、算数の図形やグラフを動かして試行錯誤するといった、今までにはできなかった、しにくかった主体的・対話的で深い学び、また、個別最適な学びや協働的な学び、授業改善につながったという現場の声があるということ。
 それから、その下ですが、障害のある児童生徒にとっても、拡大、音声読み上げなどのアクセシビリティ機能によりまして、学習上の困難さを低減できて、理解を促進するという効果もあったといったことも記載させていただいております。
 こうしたデジタル教科書をよく使う児童生徒については、右下の部分ですが、授業内容の理解や、主体的な学び、対話的で深い学びといったことに取り組む割合が高いというデータも出ているということを記載させていただいているところでございます。
 そして、そうした状況を踏まえて、今後の在り方の方向性がまとめられているのが、2枚目の資料ということになります。
 今回のこの審議まとめでは、関係者の納得と共感を得ながら創意工夫を生み出す柔軟な制度設計が適当であるということで、紙かデジタルかの「二項対立」ではなくて、どちらの良さも考慮して、紙・デジタル・リアルを適切に組み合わせてデザインしていくことが重要というコンセプトの下、学校関係者や児童生徒の声、また、紙の教科書の内容をそのままデジタル化するという制約の下では、デジタルならではの可能性を狭めているのではないかといった御意見なども踏まえて、真ん中あたりですけれども、今後は、教科書の形態として紙だけでなくデジタルも、また、その一部が紙、一部がデジタルというハイブリッドな形も認めて、現場が選択できるようにすることを制度上位置付けて、検定や採択、無償給与の対象としていくという方向性が示されたところでございます。
 その上で、教科書の発行や採択、使用に当たっては、教科の特性や児童生徒の発達段階などに応じた検討が重要になるということを踏まえまして、そうした観点から、国が一定の指針(ガイドライン)を示すことが必要といったことも審議まとめの中でお示しをいただいたところでございます。
 また、こうした制度見直しを経た新たなデジタル教科書につきましては、次期学習指導要領の実施に合わせて導入していくべきといったことも盛り込まれておるところでございます。
 3枚目でございますけれども、こちらでは、新たなデジタル教科書の導入に伴います関係制度の方向性の部分を整理させていただいております。
 まず、一番上ですが、二次元コードの扱いについてでございます。教科書への二次元コードの掲載が近年増えている状況でありますが、現行では、この二次元コード先の内容は教材の扱いでございまして、教科書扱いではございませんので、検定の対象ともなっておりません。今後は、デジタルな形態の教科書を認めていく上で、二次元コード先も教科書として扱っていくことになりますが、その一方で、教科書の一部として位置付けられる内容のものに絞って認めるということとされておりまして、検定対象ともなることで、質の保証も併せてしていくという方向性が示されているところでございます。
 そもそも教科書の在り方につきましては、教育課程部会における指導要領の議論でも取り上げられておりますように、教科等の中核的な概念をつかみやすいものにして内容・分量を精選していくべきということが議論されておりますが、そうしたことも踏まえて、教科書と補助教材の適切な役割分担を図りながら、教科書に掲載する二次元コードの対象についても考えていくといった趣旨でございます。
 次に、検定についてでございますが、音声読み上げ、拡大、ルビ表示などのデジタル機能の作動につきましては、一定の確認を行うにとどまりますが、新たに教科書の要素として入ってまいります動画ですとか音声データなどの内容につきまして、どの範囲で認めて、どのように検定していくかについては、検定審議会において専門的に検討いただく必要があるといったことが盛り込まれております。
 また、発行・供給につきましては、教科書のデジタル部分の供給については、ライセンス期間などの定まった一定の期間、児童生徒が使用できるようにすることが必要であるということを踏まえまして、義務教育段階では少なくとも3年間以上、高校段階では4年以上が望ましいということ、また、使用期間後や供給が一時的にできなくなる場合に備えた印刷機能の実装なども重要だといったことが記載されております。
 また、教科書価格に関しましては、デジタルな形態の教科書も含めて、必要なコストに見合った適正な価格設定となるように国において検討すべきといったことが記載されているところでございます。
 最後、4枚目に移りまして、拡大教科書などの教科用特定図書等についてもデジタルな形態を認めて、無償給与の対象とするということ、また、新たなデジタル教科書の制度化に伴います著作権の権利制限の在り方について、これも今後文化審議会で御審議いただく必要があるといったことも記載されているところでございます。
 また、制度改正によりまして、新たな教科書が配布されるまでの当面の間の推進方策として、6点記載されております。
 小学校5年から中3を対象とした英語、算数・数学に加えまして、その他の教科・学年についても、効果・影響の検証の観点から配布を進めるということ。
 効果的な活用方法の発信や、教員研修、養成段階からの改善によりまして、教師の指導力の向上に取り組むということが必要であるということ。
 アカウント管理については、官民で負担軽減の取組を強化していく必要があるということ。
 健康影響に関しての専門家の御意見も踏まえて、長時間継続して近距離で注視することは避けるといったことなど、最新の知見も取り入れつつ、ガイドライン等でこうしたことを周知していく必要があるということ。
 ICT環境の改善としては、端末の着実な更新と「当面の推奨帯域」の早期達成に向けた支援を実施するということ。
 最後に、教育委員会や学校、教師、児童生徒、保護者といった関係者に対しては、デジタル活用そのものを自己目的化するということではなくて、児童生徒の学びの充実が最も重要な目的であるということの理解を図っていくことが大切であるといったことが記載されているところでございます。
 以上、デジタル教科書推進ワーキンググループ、9月24日に取りまとめいただいたものについて御説明させていただきました。
 ありがとうございます。以上です。
 
【相原学力調査室長】  続きまして、学力調査室の相原でございます。全国学力・学習状況調査について、本年度の悉皆調査及び昨年度の経年変化分析調査・保護者に対する調査の結果をまとめて、資料4により御報告します。
 3ページが、まず悉皆調査です。CBTの初年度としまして、中学校理科をCBTで実施したほか、夏休み前に児童生徒に結果返却が可能なスケジュールへの見直し、都道府県別結果について、分布や習熟度に着目した多面的なデータの充実などを図りました。
 各教科の平均正答率・スコアは下の表のとおりです。毎年度問題が異なり、単純な年度比較は難しいものの、基礎的な概念の理解定着が十分でない取りこぼしも散見され、多くの教科で過去最低水準となりました。
 なお、男女別の集計を公表段階で初めて行いまして、国語は女子が高く、理数教科は特に大きな男女差は見られませんでした。
 11ページに少し飛びます。平均ばかりでなく、分布や習熟度に着目するデータとして、2点御紹介したいと思います。
 11ページ、12ページは、都道府県別の箱ひげ図の一覧でございます。各都道府県の分布は、全国的な傾向と大きな差は見られませんでした。
 また、もう一つ、19ページに飛びますが、こちらは各教科の全国の分布をSES、社会経済的背景ごとに分けたものです。特に算数・数学でばらつきが大きく出ておりました。
 このような形式で整理・公表したのは今年度が初めてとなりますが、引き続き、義務教育における学力の下支えの状況をモニタリングできるように工夫をしてまいりたいと考えております。
 4ページをお願いします。初めてのCBT調査は、約0.5%の中学校が、ネットワークや実施準備の事情から予定日に実施できませんでしたけれども、いずれも後日実施により完了いただくことができました。また、後日実施は、オンラインの良さを生かして、教育支援センターなど学校外から4,500人以上が参加しました。初めて把握した不登校児童生徒等の状況も、今後更に分析をしてまいります。
 5ページから、教科調査の設問の一部を御紹介します。
 まず、小学校国語については、目的に応じて、文章と図表などから必要な情報を見つけることや、根拠を明確にして書くことに課題が見られました。
 右側の中学校国語では、美術展のチラシに昨年の参加者の感想を基に工夫したことを書き加える問題で、工夫と根拠を適切に結びつけた生徒は三割程度でした。
 6ページは算数・数学ですが、左の算数では、数直線上の位置を分数で捉える問題で、正答が3分の1、10%増量後の量が増量前の量の何倍かを問う選択問題で、正答が四割程度でした。
 右の数学は、書かれた証明の誤りを見付けて書き直す、証明の改善という易しめの形式の問題でしたけれども、正答は四割程度でした。
 7ページは小学校理科です。左の小学校では、電気を通すもの、電気回路の理解に課題が見られました。
 右の中学校理科は、動画を見て化学反応を原子・分子のモデルで表現するCBTらしい出題でした。正答は3分の1程度で、化学反応の概念、反応物質と生成物質の整理ができていない誤答が目立ちました。
 8ページ、CBT実施教科では、従来の正答率に代えて、5段階のIRTスコアバンドで結果を返却しております。報告書におきましては、正答・誤答の状況をバンドごとに表したG-P分析図、バンドの特徴に応じた授業アイディア例をお示ししています。各学級のバンド分布に照らして、個に応じた指導の授業改善に取り組みやすくなるものと期待をしております。
 9ページから質問調査の結果です。
 左側、主体的・対話的で深い学びに取り組んだ児童生徒ほど正答率・スコアが高い傾向が見られました。
 また、中央下、学校の授業でICT機器を活用した頻度が高い児童生徒の方が正答率・スコアが高い状況が見られました。
 右側ですが、プレゼンテーション、情報の整理など、ICT機器の活用の自信がある児童生徒ほど正答率・スコアが高く、探究的な学びにも取り組んでいました。
 10ページの右下ですけれども、小・中学生ともに、学校外の勉強時間の減少傾向が続いておるところです。
 続けて、14ページからは、昨年度の経年変化分析調査・保護者に対する調査の結果です。学力変化や家庭状況を把握するため、3年に一度行われる抽出調査でございます。
 グラフのとおり、中学校数学以外の4教科でスコアの低下が見られました。昨年度の小学校6年生・中学校3年生は、コロナ禍の際に小学校の低・中学年でした。例えば、英語については、話す活動を中心とする授業を理想的に展開できなかったというような影響も想定されているところです。
 15ページから保護者に対する調査の結果です。
 子供の学校外の平均的な過ごし方は、この3年で、勉強時間の減少、テレビゲーム・スマートフォンの使用時間の増加の方向で、大きく変化いたしました。
 右側ですが、ゲーム時間が長いほど、また、スマホ時間が一定時間を超えて長くなるほど学力スコアが低くなる負の相関が見られます。
 なお、先ほどの9ページでは、授業でのICT機器の活用頻度と正答率・スコアの正の相関を紹介いたしました。それぞれのファクトを正確に発信していく必要があると考えております。
 35ページになります。
 今回の結果は私どもも重く受け止めておるところですけれども、学力の状況は、トップレベルを維持してきております国際調査も併せて捉えていく必要がございます。
 経年変化分析調査については、レジリエンスを示した学校の取組も含めまして、この委託研究によりまして、さらに詳細な分析を進めてまいりたいと考えております。
 また、調査結果を踏まえて、国立教育政策研究所で指導改善策の説明会の資料・動画を公開しており、さらに、教育課程課におきましても、教科別のオンラインセミナーを企画しております。
 そのほか、8月8日付け総合教育政策局長通知では、結果返却の早期化を生かした振り返り、家庭学習の充実、学校運営協議会での学習支援方策の協議、高等学校との連携などを現場に依頼させていただきました。
 学習指導要領の議論をはじめとする教育施策の検証・改善と児童生徒一人一人の学習指導の改善という調査の目的の原点に立ちまして、引き続き、結果の分析・活用を進めてまいりたいと思います。
 報告は以上になります。よろしくお願いいたします。
 
【貞広分科会長】  皆様、ありがとうございました。
 ただいまの御説明に対して委員の皆様から御質問、御意見を承る前に、それぞれのおまとめに御尽力くださいました奈須教育課程部会長、秋田教員養成部会長、堀田デジタル教科書推進ワーキンググループ主査より、それぞれコメントをいただきたいと思います。
 まず、奈須委員、お願いいたします。
 
【奈須分科会長代理】  よろしくお願いいたします。
 今回の論点整理は教育課程企画特別部会でおまとめいただいたので、貞広先生が中心となって御尽力いただいたものですが、部会長という立場なので、少しお話を申し上げたいと思います。
 この論点整理が9月25日でしたけれども、もう既に総則・評価特別部会等で議論が進んでいまして、ここでは中核的な概念等と書いているものを、高次の資質・能力とした方が良いのではないかと、もう既に修正がかかっています。そのぐらい議論が迅速に着実に進んでいるということかと思います。
 先ほど課長から御説明あった第1章のところ、非常に分かりやすく取りまとめいただいたと思いますが、冒頭に出てくるExcellence、Equity、そしてFeasibilityということ、この三つを三位一体でやっていこうというのは非常に大事なことですし、もう既に教科等ワーキンググループが始まっていますけれども、各会議体でこれを引き受けて、真摯な議論をしていただいていること、本当にありがたいと思います。
 このExcellenceとEquityという英語になっている点、これは大事だと思います。Excellence(卓越)、Equity(公正)、教育学では普通、そう訳します。このExcellenceとEquityの両立を教育の目標にするというのは、2000年代の初頭にイングランドで言われ始めて、オーストラリア等でも近年も教育政策の基盤になっている。だから、割とグローバルに共有されている考え方だと思います。
 イングランドで言えば、そのときにパーソナライズドラーニングというのが動いていて、まさに個別最適な学びを必要とするという議論があったかと思うんです。だから、論点整理で最初にこれが並べられたときに、この二つが両立するんだろうかということをおっしゃる方もいたのですが、この辺の見方を正に今後変えていかなければいけない。ExcellenceとEquity、卓越と公正ということを同時に実現できるような学校のデザインを模索していくことが大事だということなのだろうなと思います。
 それから、もう既に各教科等のワーキンググループが立ち上がっていますけど、思えば、教育課程部会自体は、実は19名です。教育課程企画特別部会は、メンバーはかぶりますけど、24名で、考えれば、半年ほどそのメンバーを中心に議論してきたわけですけれども、今回、もう多分200人を超えるメンバーになっている。まさに教育課程部会がそれほどの大所帯に規模拡大をして、本当にたくさんの先生方のお力とお知恵をいただいて、今後力強く進んでいくのだなということで、本当にうれしく思っている次第です。
 前回、これはどういう数字か分からないのですけれども、延べ人数470名、総議論時間440時間という記録が前回改訂のときにあって、本当に多くの方々の莫大な議論によって教育課程というのをつくっていくのだな、それが今回も本格的に始まったのだなということを実感しております。
 各教科等のワーキンググループのアーカイブ動画は、私も全部拝見しております。まだ第1回なので、現状の課題を丁寧に整理してくださって、目指すべき方向性について、こんなことがあるのではないかということをそれぞれの御専門の立場から出していただいている段階だと思いますが、既に、このAI時代ということに向けて、何をどう変えなければいけないかということについて非常に踏み込んだ議論がなされていたり、それから、教科等横断ということについて、数多くの教科等の部会で議論がなされています。
 御自身の教科の立場でできることもあるけれども、いろんな教科等と結んで教育課程全体でやっていかないと、今回目指すような子供の姿に育てられないのではないか、学校のミッションを果たせないのではないかという御理解の下で議論がもう第1回から始まっていることは本当にうれしいことだと思います。もちろん各教科等の御専門の皆さんで、その各教科等の在り方に対して責任を持って議論し、創造的なものをおつくりいただくということが基本だと思うのですが、それが最終的には教育課程という一つの構造体になっていくという御認識を明確にお持ちになって議論を進めていただいているのだなということに非常に感銘を受けております。教育課程の在り方ということを各教科等の窓口から検討していただいているような議論になっているなと思っています。
 また、その各教科等が教育課程全体に対し、あるいは子供の発達に対しどんな貢献を独自になし得るのか、正にその教科等のミッション、教科等の任務についての真摯な議論がなされている。
 私自身は、戦後80年を経て、改めて各教科等、そして教育課程がどんなものであることが子供のためになるのかということが今回しっかり考えられるといいなと思っていますけれども、第1回からそういうことで進んでいますし、民主的な社会の創り手、自ら人生を舵取りすることができる、「好き」を育み、「得意」を伸ばすといったことについても、各教科等のお立場から、うちの教科等ではこういうことができるのではないか、こういうことこそやらなければいけないのではないかという御議論がなされていて、本当に有り難いなと思っています。
 その一方で、どうしてもその課題ということを引き受けるということになりますと、教育方法的なこと、教育方法は学びの質を左右しますので、当然それは議論してしかるべきなのですが。それから、教材、教科書の在り方、これももちろん全体でも議論していこうということに今回なっていますので、当然それは出てくると思います。それから、教員ですね。先ほどもありましたが、教員の質ということ、場合によっては教科によって教員が足りないといったこと、それから、環境整備の問題、こういったものももちろん出てきます。
 実装するということを考えると、それらは大事になってくるわけですけれども、同時に、やっぱり学習指導要領という法令文書の性格からして、何をどこまで最終的に記述するかということがなかなか悩ましい部分もあるのだろうなと思います。でも、まずは、どんな課題があるか、どんな目指すべき方向があるか、いい意味でどんな夢が描けるかということを御議論いただきながら、各教科等の可能性を闊達に広げていただいているのだなと思って、本当にうれしく思います。今後の議論に期待したいと思います。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございました。
 では、秋田教員養成部会長、お願いいたします。
 
【秋田委員】  教員養成部会長を拝命いたしております学習院大学の秋田喜代美でございます。
 今、奈須教育課程部会長が、夢を持ってというお話がございました。その夢を実現していくために、実際の授業や教育を担うのが教師でございます。教員養成部会のほうでは、教師が不足している、忙しいというような、現実に喫緊のことだけにとらわれるのではなく、まずは教育課程のほうにも書かれておりました、学びをデザインする高度な専門職としての教師の在り方、その質の高い教師をこれからも育成していくためにはどうしたらいいのか。そして、このように急激に変化する社会でありますから、養成課程で学んだもので一生生きるというのではなく、学び続けていくために、では、養成課程が何をし、採用、そして、実際に入職後の研修等で、どういう形で教師が生涯学び続けて、実際に次の社会の担い手となる子供たちを育成していくのかというところについて、質の議論というものがなされております。
 一部報道等で誤解がございまして、単なる時数の削減というようなところだけを私どもが議論しているのではありません。質の高い教師を育成していくためにはどうあったらいいのか、そのためには、学び方として、先ほど大江課長からもお話がありました、もういっぱいで全部詰め込まれるだけの教職課程の学びではなくて、学生自身が入った大学の強みや良さを生かす選択ができること、また、今教員養成フラッグシップ大学で試みていただいています、例えば、ICTの学習であったり、ダイバーシティ、インクルージョンの教育はどうあったらいいのか等の、そうした最先端のカリキュラムも今後教員養成の課程の中に入れながら、本質的に教員養成のコアとなるカリキュラムは何なのか。また、大学・短大等で全体として皆その教師を育てていくのだというような、教員養成の教職課程だけが教師を育てているのではなく、全体として大学の学士課程が教師を育てていくのであるというような発想に立って、もう一度教員養成の在り方、そしてそれが免許というものとどうつながっていくのがふさわしいのかということについての議論を慎重にしているところでございます。
 そしてまた、先ほどもお話がありましたが、養成は養成、採用は採用と、今まで中黒で書かれてはおりましたけれども、既に今、統一試験等も第一次の試験で多くの自治体で行われるようになってきているときに、そうした試験が質保証としてきちっと機能していくような形は今後どうあり得るのだろうか。
 また、それぞれの教育委員会で、入職後でございますけれども、そこの中でも学び続けられるためには、今までは、例えば、教職大学院に行ける人の数というのも限られているというようなところも現実でございますが、これから専修免許と言われるものがどのような形の習得やどのような形で学ぶことによってより可能になっていくのか、広く高度化していくためには何ができるのかというようなところを考えていくことによって、正にこれからの新しい教育課程を支えていく、その未来を創る教師をどうやっていくのかという問題を議論しようとしているところでございます。
 そのためにも、多様な入職経路でいろいろな経験をしている教師が生かされるような形に間口を広げていくこと、また、大学もいろいろ今コンソーシアム等の考え方も出てきていますので、これからの教職課程の在り方について、今、論点整理が出ましたけれども、さらにそれの具現化のためのワーキンググループが複数立ち上がっていきまして、これから、教職課程、教員免許のワーキンググループ、それから新しい大学院でのプログラムのワーキンググループ等で議論が進んでいくというところになります。
 そして、これは子供たちのデジタル学習基盤だけではなくて、養成のほうでもデジタルを使うことによって、より効果的な学びの在り方はどうあったらいいのかというようなことの議論とも併せ、また、より専門性を高めていって、ICTをもっと高めたいとか、多様な子供に対したり、特別支援の子供たちに特に専門性を高めたいとか、そういう学びを今後入職後学び続けていけるような在り方はどうあったらいいのかということの具体のデザインを、これから、今、議論しようとしているところであります。
 このような形で、教育課程と、教員養成、採用、研修が手を取り合って、やはり公教育の質の在り方を議論していくことができるということを楽しみにしておりますし、委員の方々も、いろいろな背景の方、また、民間や委員会の方も含めて、いろいろな方々のお声を伺いながら今やっているというところになります。ですので、これから来年に向けて、いろいろ具現化されて、またここで御報告をさせていただければと考えているところでございます。
 以上、現状を部会長のほうから御報告させていただきました。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  秋田先生、ありがとうございました。
 では、続きまして、堀田デジタル教科書推進ワーキンググループ主査よりコメントをお願いいたします。
 
【堀田分科会長代理】  東京学芸大学の堀田でございます。デジタル教科書推進ワーキンググループの主査を拝命しておりましたので、少しだけ付け足しの発言をしたいと思います。
 先ほど資料1から始まって、教育課程企画特別部会からの御報告をいただいたところでございます。
 現在、次期学習指導要領に向けて、これからの時代の学び方、学びの在り方について、例えば、主体的・対話的で深い学びをより確かなものにするための考え方、あるいは、中核的な概念等、また、それらを支える教科書や教材の在り方等につきましても検討が進められてまいりました。また、これらの学習指導の前提としてのデジタル学習基盤の考え方、あるいは用い方等についても話題になってまいりました。
 そんな中で、先ほど後藤教科書課長から御説明がありましたとおり、現行では、教科書というのは、教科用図書というように、紙であるということになっておりまして、現段階では、これを全て内容を変更せずにデジタル化したものをデジタル教科書と呼ぶということになっており、しかしながら、それは代替教材であって、無償給与の対象ではなく、ただし、それを用いて学んだ場合に教科書の使用義務を果たしたこととするという解釈になっております。
 今後、もしも教科書なるものが、紙の部分とデジタルの部分を持つものを認めるのだというふうになったとしたら、そのデジタルの部分も検定対象にするとなると、その検定はどうするのかとか、紙とデジタルの行き来の部分はどうするのかとか、デジタルの範囲はどこまでにするのかとか、あるいは、無償給与をどうするか、供給体制をどうするか、こういうことを先回りして検討しておく必要がありまして、これが私どもデジタル教科書推進ワーキンググループが検討してきたことでございます。
 一部マスコミ等では、デジタル教科書が正式な教科書になったとか、紙の方がいいのではないかとか、現行の枠組みでの報道が幾つか見られますけれども、私どもが検討してきたことは、これからの時代の教科書なるものが、これからの時代の学びに合わせて、紙とデジタルをどう組み合わせて、どう子供たちが学びやすくするのかというようなことの検討、そのための制度変更はどうあるべきかということの検討、そのための課題はどこにあるのかという検討をしてきたということでございます。
 今後は、もし法改正が必要だとすると、その準備が随分たくさんあるかと思いますが、これらは文部科学省の皆さんにお任せしつつ、教育課程企画特別部会では今後もどのような学習指導であるべきかという検討が進みますので、そうすると、これからの求められる教科書の形というのは、次第によりはっきりしていくものだと思っております。今後の議論にも期待してまいりたいと思います。
 発言は以上です。
 
【貞広分科会長】  それぞれ部会長、主査からコメントをいただきました。どうもありがとうございます。
 それでは、この後、挙手をいただいた方から、順次こちらから御指名を申し上げます。Zoomの「挙手をする」ボタンを押していただければと存じます。
 また、一部の時間帯しか参加できない委員の方もいらっしゃいますので、場合によっては、順番を入れ替えて、こちらから御指名させていただくことをあらかじめ御了解いただければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 では、渡辺弘司委員、お願いいたします。
 
【渡辺委員】  日本医師会の常任理事で、学校保健会の副会長を併任しております渡辺でございます。各資料で、簡単に1点ずつ御意見を述べさせていただきます。
 まず、資料1の部会の御報告でございますけれども、この度の学習指導要領の基本方針は三つに集約されると理解いたしました。一つは知識や技能の取得、二つは課題や指導力の向上、そして三つ目が学びを方向付ける人間性と考えました。その三つ目の目的を達成するために、初発の思考や行動を起こす力、好奇心、他者との対話や協働に関連して、学びの主体的な調整ができるようにすることが必要との考えが示されたと思っております。
 よって、自分の思考や行動を客観的に把握し、認識しながら学習を自己調整し、思考や行動を修正したり、次の思考や行動につなげたりする力が必要とされております。学校健康診断との関わりを考えますと、健康診断を健康教育に役立てるという目的がありますので、保健の授業の中で、学校健康診断の検査項目、その意義を学び、健康診断の結果を利活用する知識と能力を身に付け、継続的な自己管理を行うこと。つまり、児童生徒が健康診断結果を通じて自分の生活習慣を振り返り、健康の維持・改善に向けた選択肢を考える態度の形成を図ることが、継続的な健康維持に必要ではないかと思います。
 二つ目の資料、教職員の質に関してでございますけれども、教師の質の確保を検証するシステムが必要ではないかと思います。研修効果判定は、効率的な研修制度の実施に必要だと考えるからです。多様な専門性を持たせながら、基本的に質の高い教師を育成するということは、非常に困難なミッションと思います。質のよい教師を養成し、そこに多様性を持たせるのか、質のよい多様性を持った教師を育成するのかをもう少し分かりやすく示していただきたいと思います。
 最後に、資料3のデジタル教科書に関してでございます。効果に関しては、個人の感想ではなく、客観的な指標で効果を示していただくと、より説得性があるように思います。どうしてもネガティブな意見は表に出にくいからです。
 デジタル教科書の導入は、ICT社会や個別最適な学びに必須なツールだと思います。しかし、紙とデジタルの組合せを個々の教師や地域の教育委員会に委ねるのは、個人差や地域性が生じる可能性があるように思います。情報共有をしていただき、最適な活用の仕方が標準化されるよう、全国的な視野で調整できるのは文部科学省しかありません。管理システムや情報共有体制の整備には財源が必要と思われますが、健康教育や学習能力の向上にも資する情報共有及び効果検証の仕組みをぜひ構築していただきたいと思います。
 私のほうからは以上であります。ありがとうございます。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 秋田委員がもう一度手を挙げていらっしゃいますか。
 
【秋田委員】  すみません。今度は個人の委員として、1点だけ発言をさせていただければと思います。
 
【貞広分科会長】  どうぞ、お願いいたします。
 
【秋田委員】  ありがとうございます。機会をいただいて感謝申し上げます。
 資料4の学力調査の件でございます。今回、初めてのCBTであったり、経年変化の分析であったり、指導法であったり、いろいろな形で示してくださったことに感謝を申し上げたいと思います。
 その中で、このようなことを申し上げるのが妥当かどうか分かりませんが、1点目としては、今回から男女別を出されたというお話でございましたが、現在、多様な性の問題というものが子供たちの中でいろいろ起きております。男女に分けて指導するわけではありませんので、国際的なテスト等ではいまだ男女で分かれている分析もありますが、今後、男女で分けるということがどういう教育的な意味を持つのかということの分析をするなら、その説明とともにしていただく必要があるし、それが多様な性を持った子供たちを苦しめる可能性があるということも御理解いただけるとよろしいのではないかと思いました。
 また、小さなことで、2点目です。今回は散らばりを明らかにするために、都道府県が並べてこのような形で示されております。私は、今回は差がなかったということですので、よろしかったかとは思いますけれども、これで散らばりがあるところが大きい、あるところが小さいということが、ランキングではありませんが、比較のようになるということはどうであろうかと思います。このグラフの示し方に対して少しお考えいただいて、例えば、だんだんこの散らばりが小さくなって、政策を打つことによって全体の散らばりが小さくなったところがどうであったのかというような形での御報告をいただく方が今後よろしいのではないかと考えます。今回は初めてで、いろいろな試みをしてくださったことは有り難く思いますが、こうした都道府県別の値が出ることによって、先生たちがそれにセンシティブになるということに対しては、私は危惧を持ちます。
 以上、一個人としての発言でございました。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、戸ヶ﨑委員、どうぞ。
 
【戸ヶ﨑委員】  今更言うまでもないことではありますが、この次期学習指導要領、教師の育成・採用・研修の一体的な改革、教師を取り巻く環境整備、これらの三つのことについては、相互に有機的に、真に連関した議論が重要となるのではないかと思っています。
 次期学習指導要領を実装していくためには、当然、教師の質が重要であり、そのための体制整備も必要です。また、教師の資質・能力の向上には、次期学習指導要領で議論されている「余白」や、働き方改革の加速化も必要です。今後、木を見て森を見ずとならないように、お互いを意識しつつ、部分最適ではなくて全体最適を目指していく必要があると思っています。
 今後、カリキュラムの学校裁量の幅が広がれば広がるほど、それを実装する教師力の向上も求められます。学校裁量の拡大が真に教育の質の向上につながる仕組みづくりも、従来の教員養成や研修の視点にとどまらず、例えばよりよい授業づくりに資するコンテンツの開発や、生成AIの活用などによる効果的な授業準備の在り方など、働き方改革の観点も取り入れつつ検討していくことも考えられると思っています。それぞれの部会がそれぞれの事柄だけを追求した議論をするのではなくて、俯瞰した議論や連関した議論がより一層行われるようにお願いしたいと思っています。
 次に、教員養成部会の論点整理についてです。この点については、先に申し上げた点とも関係しますが、先般の働き方改革に関する中教審答申では、働きやすさと働きがいの両立を前面に出しています。この部会は、働きがいの部分を担っていく役割がありますが、この「働きがい」の位置付けがもっと前面に出てきていいのではないかと感じています。「教師にとっての働きがいとは一体何なのか」や、働きやすさを推進する施策との連携の視点、あるいは、働きがいの充実に向けてどういった点が課題で、補強する必要があるのかなど、学校や教員養成の現場の課題認識や状況等を踏まえながら、議論を深める必要があるのではないかと思っています。
 最後に、この広報戦略についても、やはり教職の魅力発信なども含めて、まだまだ訴求力が不足しているように感じます。これは他人事ではなく、自分自身も注力したいと思っていますが、これまでの日本型の教員養成・採用・研修について、国際的に見て優れているところもあると思いますし、逆に課題や弱みも明らかにしていきながら、今後、広報戦略を一層工夫する必要があると思っています。
 これまでも何度も述べてきましたが、最強最善の広報は、日々教師がやりがいを持って生き生きと勤務していることに尽きると考えています。そうした観点からも、全ての教育関係者が「今、何ができるのか」を主体に考え、働きやすさと働きがいが両立された学校現場を創出していくという共通理解とその実践が必要と考えています。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございました。
 続きまして、岩本委員にお願いしたいのですが、岩本委員、資料を提出くださっています。参考資料4として配付されていますので、御参照ください。
 では、岩本委員、お願いいたします。
 
【岩本委員】  よろしくお願いします。
 議題1の教育課程の基準等の在り方に関するところについて、何点か意見させていただけたらと思います。
 1点目が、自らの人生を舵取りする力の育成に向けてというところです。今これからの時代や子供の実態を考えれば、これは非常に重要な力だと考えております。今後、この力を「みんなで」育成していくというためには、この「自らの人生を舵取りすることができる」ということは、具体的に子供たちが何ができるということなのかということを、各段階において分かりやすい目標だとか子供の姿に落とし込んでいく必要があると考えます。
 ぜひ、今後の議論で、今回の改訂のコンセプトをしっかりと踏まえた、キャリア教育で育む力というところをしっかりと明確化、議論していただきたいなと思いますし、その上で、その目標を子供、保護者、教員などみんなで共有しながら、学校・家庭・地域の教育活動全体を通したキャリア教育等で「みんなで」育んでいくという方向性をしっかりと提示していただけると有り難いなと思います。
 2点目は、もう一つの、民主的な社会の創り手の育成というところです。正に非常に重要な民主的で持続可能な社会の創り手の育成に向けて、今後、子供のより主体的な社会参画に関わる教育の充実だとか改善、とりわけその中心となる特別活動の更なる充実・改善・見直し等の検討が非常に重要だと考えます。
 その際、今の教員の負担への配慮もしながら、特別活動及び社会参画に関わる教育をやっていこうとしたときに、教員や学校のみで充実させていこうということにはもう限界があるというふうに思いますので、今後は、学校内で完結する教育活動だけにとどまらず、こうしたところも地域・社会に開いて、地域・社会と連携・協働だとか役割分担を進めていく必要があるのではないかと思います。具体的には、PTAとか卒業生会とか、学校運営協議会、公民館、社会教育団体とか、そういったところとの連携・協働だとか、場合によっては、学校行事の地域連携とか地域展開、一部地域移行なんかも含めて、今後具体的な検討をしていっていただけるといいなと思っております。
 三つ目は、カリキュラム・マネジメントの在り方に関してです。今回の論点整理で挙げていただいている「質の高い探究的な学び」というところには、シラバスとか単元配列表の作成とか、こういった明示的なカリキュラムにとどまらず、学級・学校の風土の影響だとか、さらにはその風土の形成に影響を及ぼしています教員の指導観とか指導姿勢といった、いわゆる潜在的なカリキュラムの影響が大きいということはいろんなところで指摘されているところであります。
 今、文科省で進められているCOCOLOプランのほうも、三本柱の一つは、学校の風土の「見える化」を通した、学校を「みんなが安心して学べる」場所へということでやっていますけれども、今後、質の高い探究的な学びを実装していくカリキュラム・マネジメントを本気で求めるのであれば、こうした目に見える計画だとか表の作成のみにとどまらず、学級・学校の風土だとか、教員の指導観といった、いわゆるヒデュン・カリキュラムも含めたカリキュラム・マネジメントという、もう一段深いカリキュラム・マネジメントの概念というか、定義というところも一部深化させていく必要があるのではないかと思います。
 最後ですけれども、高等学校の入学者選抜の在り方についても、今回の論点整理で出されていました。これは非常に重要だと感じております。義務教育と高校教育を接続していく高等学校入学選抜においては、いわゆる学力検査のみにとどまらず、義務教育修了段階で育まれてきた子供たち一人一人の好きだとか得意、強み、もしくは、質の高い探究的な学びの成果、こういった資質・能力を多面的・多角的に評価できる多様な選抜方法の拡充というところも非常に重要でありますので、今後、現場の負担に配慮しながら、どのような形でこの高校入学者選抜の改革とか充実をさせていけるのかということを、都道府県教委を含めた協議なんかも始めていく必要があるかと思いますし、その際、今回出ていました教員採用試験の共同実施の話もありますけれども、こうしたところの共同実施の課題だとか過程なんかも踏まえながら、高校入試の共同実施についても併せて検討なんかもしていく必要があるのではないかと思いますので、またこの部分もぜひ深掘りをお願いできたらと思います。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 ちょうど岩本委員からカリキュラム・マネジメントについての御指摘があったうち、順番から言うと、カリキュラム・マネジメント研究の第一人者である田村委員の順番なんですが、ちょっと時間が限られている髙島委員が入られていますので、先に髙島委員に御発言をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【髙島委員】  本当にいつも申し訳ありません。ありがとうございます。
 芦屋市長の髙島です。教育課程企画特別部会と、そして、ワーキンググループでは外国語と特別活動にも参加しています。
 今回指導要領の改訂ということで、毎回同じことを言っていると思うのですが、改めて学校って本当に何のためにあるのかというのが問われる改訂だと思います。史上初めて生成AIが普通にある時代の学びを考える指導要領改訂ということで、知識や技能を身に付けるだけなら、AIと家で勉強した方が早いと。じゃあ、何を学校に求めるのかだと思います。
 生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育むということですが、この民主的で持続可能な社会の創り手という部分に大いに期待をしています。子供にとって最も身近な社会である学校だからこそできるのは、対話を通じて他者との違いを認め合い、学び合うことだと思います。学校の本質的な形を捉えた上で、今後の議論が進むことを期待したいし、私も尽力したいと思います。
 また、「みんな」で育むというところも注目すべきだと思います。教育の当事者は、文科省だけでも、教育委員会だけでも、先生だけでも、子供だけでもありません。国民みんなだと思います。これ、影響を受けるという観点で当事者と言いたいのではなく、全員がよりよい教育をつくる、よりよい社会をつくる当事者であり主体だということです。
 この間、自戒を込めて思うのは、目に見えやすいものだけに飛びつかないようにしなければいけないということです。目に見えやすいものは何かというと、全国学調の結果であり、あるいは無償化だと思います。言うまでもなく、教育は国家百年の計だと思います。中身、授業の中身であり、給食の中身が大事ということだと思います。目に見えやすいものだけに飛びついた結果、中身の質が下がるということのないように、骨太の議論をしなければならないと思っています。
 例えば、いわゆる学力についても、less is moreの議論が多々ありました。深い学びのため、教育の質を上げるための裁量的な時間の創出であり、教師と子供の双方への余白の創出です。余白が生まれると学力に悪影響が生まれるのではないかという懸念はありますけれども、この間の議論を追えば当たらないと理解していただけるのではないかと思いますが、引き続き、文科省には丁寧な発信を続けていただきたいと思います。
 無償化です。前回もお話ししましたので、あえて重ねては申しませんけれども、例えば、給食については、一斉の同一金額による無償化によって、自治体が積み重ねてきた質の向上が損なわれないような工夫、例えば、一部の保護者の負担を認めることによる質の担保などをぜひお願いしたいと思います。これは先週、芦屋市としても、文科省に要望書を提出したところです。指導要領の改訂でも、地方自治体の裁量を増やすという方向性で議論があるので、逆方向に動かないように重ねてお願いします。
 言うまでもなく、教育は子供にとって何が最も良いかを考えて政策を詰めるということが大事だと思います。あえて言うと、保護者ではなく子供にとって何が一番いいかだと思います。目に見えやすいものではなく、本質を捉えた発信のためには、多くの人を過程に巻き込むことが重要だと思います。結果だけとか、報道だけで目にする場合、ずれてしまうことはままあると思います。特に、ふだん議論の過程に関わっていないが大きな影響力のある、例えば、首長部局や政治家の皆さんに本質を理解していただくことがとてもとても大事だと思います。そのためにも、文科省の発信、そして、議論に関わっている我々の発信が重要だと思います。デザイナー等、専門家の力を活用しつつ、現場、そしてその他の方々にも、国民みんなに議論の過程が伝わるような発信を改めてお願いしたいと思います。
 よりよい社会をつくるため、みんなで取り組まなければならないのが教育だと思いますので、私も市長の立場から応援していきたいと思います。
 ありがとうございました。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、お待たせいたしました。田村委員、どうぞ。
 
【田村委員】  貞広分科会長、ありがとうございました。
 また、岩本委員から、カリキュラム・マネジメントにつきまして御提案いただきまして、ありがたく存じます。
 我々研究者としましては、実は、隠れたカリキュラムも含めて、教育課程、それから授業、指導の結果、児童生徒の学び、これをまずはしっかりと学習者の立場に立って見詰めること、そこから始めるということがカリキュラム・マネジメントにおいて大切であることをずっと主張してまいりました。
 それから、学校文化につきましても、研究上の定義におきましては、私自身の定義も含めまして、定義の中に含めてまいりました。ただ、学習指導要領の中で、どれだけそこに迫れるのかということは、一考の余地があるかと思いますので、しっかりと考えていきたいと思います。どうもありがとうございました。
 別途、私の意見を二つ述べさせていただきますけれども、1点目は、教員養成部会の御議論につきまして、私、高校ワーキンググループの議論に加わってきました経験上、高校の教員養成につきまして発言をさせてください。
 先日報道にもありましたが、今や9.6%の高校生が通信制に通っています。同時に、不適切な教育活動を運用している通信制高校の存在も指摘され続けておりまして、問題となっております。
 通信制で働いていらっしゃる教員の皆様には、添削指導や遠隔の授業といったような指導を行うことが多くなりますし、また、不登校経験者の生徒さんが多く在籍していますので、より生徒の困り感やニーズに寄り添った指導ということも行うことが必要であり、また、全日制や定時制とは異なる専門性というのが求められているかと存じます。
 そういった意味で、教員養成や研修につきまして、通信制高校で働くことも視野に入れた御議論をぜひお願いしたく存じます。教育実習も、例えば、通信制高校で行うその際、大学附属の通信制高校などが教育実習のハブになるといった工夫も考えられるかと思います。今後の議論の深まりに期待申し上げます。
 それから、2点目なのですけれども、全国学力・学習状況調査の発展というのが2007年に始まって20年近くたちまして、随分と進んできたというふうにまずは感想を持ちました。多面的・多角的に結果を分析していただき、結果の返却時期も早くなってまいりました。様々な課題も指摘されていたのですが、一つ一つの取組で、国の教育課程行政の改善、学校の実践の改善に資するようなデータや支援策が充実してきたものと感じております。
 まだまだ課題があるということは、専門家委員の一員として私も感じておりますし、また、そのことにつきましては、秋田委員の御指摘も含めて、自分自身も真摯に受け止め、その解決を一つ一つ議論できればと思っています。
 さて、その全国学力・学習状況調査の中の追加調査について、幾つか気になる結果が出ていました。
 その中の1点としまして、子供と勉強の話をする保護者の割合が減少している。学校生活が楽しければ、良い成績を取ることにこだわらない保護者の割合は増加しており、そのような保護者の子供の方が勉強時間が短いとのことです。学習に対する外発的な動機付けは難しい時代になってきたと、そういうことは以前から言われてきたことですが、それが端的に数値にも表れてきたものというように受け止めました。
 そうなっていきますと、もう外発的な動機付けではなく、学習課題を達成できてうれしいとか、学習の内容そのものが面白いとか、学んだことが役に立つといったような本質的なことで子供たちの動機付けをしていく必要がますます高まっていると感じます。そういった意味で、教育課程部会での議論、教科の部会の御議論によって、教科の本質、高次の資質・能力等が構造的に示されていくこと、それから、教科等横断的な教育課程の組立てについての御議論が本当に大切で、それを学校現場に分かりやすく伝えていく、こういった今後の議論が進んでいくことが非常に必要かと思います。
 ぜひともますますの議論が進んでいくことを期待しておりますということを表明して終わらせていただきます。ありがとうございました。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございました。
 では、続きまして、今村委員、お願いいたします。
 
【今村委員】  発言させていただきます。デジタル教科書の議論について発言させていただきます。
 堀田先生からも詳しく補足いただきまして、大変議論の内容がよく分かりました。その中で、特に子供一人一人の多様な特性に応じた学びづらさを補うことができるようなこと、インクルーシブに子供たちの多様性に対してどう学びの保障をしていくのかというところに大変思いを込めた工夫がなされるような補助線が引かれるということが、とてもいい方針だなというふうに思いました。
 特に、読み上げがあるとか、ルビが打たれるというところもそうなのですけど、デジタルにすることによって、例えば、何らかの障害特性なんかが見られなかったとしても、学びの、この内容だとまだ自分にとっては難しい、だけど、何か書いてあるから読まなきゃいけないと思っている子にとっては、例えば、難易度調整みたいなことを自分でできるようになるかもしれないみたいなことの可能性も感じて、やっぱり学びが楽しいと思えるような補助線としての教科書にするためのチャンス、可能性が上がるのではないかということを感じて、とても良いなと思いました。
 その一方で、1点だけ、本当にどうなのかなと思いながら、懸念というか不安なのですけれども、私が運営しているNPOで関わる、経済的に困窮している家庭の子供たちであればあるほど、今この時点でもやっぱり家庭に、例えば、文庫本みたいなものを保護者が持っていなかったりとか、読み聞かせみたいなことも、保育園に通っているときはしてもらっていたけれども、家でそういった本自体がないみたいな子も中にはいるということがあります。そのときに、やっぱり小学校に上がって、自分でプロアクティブに文字を読むということを始める子供にとって、1年生とか2年生とか、ちょっと縛りをかけていいかと思うのですけれども、紙と併用しなければいけない教科というのもつくってもいいのではないかと思います。完全に選択するということだけではなくて、例えば、国語とか、道徳とか、そういった教科に関しては、少なくともデジタルのみではなくて、必ず紙と併用しなければいけないというようなことだとか、そういった適切なハイブリッドを縛りとして、縛りと言うとちょっと強いのですけれども、そこも検討しないと、本当に紙の本、ページを自分でめくるということを人生の中で何回もせずに大人になっていくという子も出てきてもおかしくないぐらいの時代の流れかなというふうに思っていまして、そこをちょっと不安には感じました。なので、これからまだ詳しく議論していくところかと思うのですけれども、そういったことも御検討に入れていただければと思います。
 私からは以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、この後、藤田委員、阿部委員、内田委員の順番で御指名申し上げます。
 まず、藤田委員、どうぞ。
 
【藤田委員】  御指名ありがとうございます。大阪教育大学の藤田です。私からは、議題(1)と議題(2)に関わって、2点要望を述べさせていただきたいと思います。
 まず、議題(1)につきましては、御説明いただいた、社会に開かれた教育課程や、個人と社会のウェルビーイングの実現に関わって、学習指導要領の特別活動には、現在及び生涯にわたって心身の健康を保持・増進することや、事件・事故・災害等から身を守り、安全に行動することが求められております。
 学校教師が担う業務に係る3分類において、基本的には学校以外が担うべき業務として、登下校に関する対応が明記されていることを受け止めつつ、次期学習指導要領では、学校が家庭・地域・関係機関と連携・協働して、児童生徒等の登下校を含めた安全確保の充実を図ることが促されるコミュニティスクールの学校運営協議会等での協議を踏まえた地域・学校協働活動の一環として、児童生徒の登下校を含めた安全かつ充実を目指すことなどを含め、よりよい学校教育を通じて、よりよい社会への移行を促すことを目指した、児童生徒が主体的に参加・協働する取組についても、関係するワーキンググループで御検討いただきたいと思っております。
 次に、御説明いただいた議題(2)の教職課程の在り方の中の身に付けるべき資質・能力として記載いただいていた危機管理能力に関する学習について、要望を申し上げたいと思います。
 我が国では、2019年の教員免許法の改正において、学校の管理下で事件・事故や災害が発生しても、学校に子供たちや教職員の命を守る能力を確保することを目的として、教職課程コアカリキュラムとして、学校安全について必ず修得することと位置付けられているところですが、いまだ十分な成果が得られていないと懸念される状況があります。
 そこで、今後の教職課程の在り方に関わる件としては、学校における事故対応に関する指針にも示されておりますように、重大事故やヒヤリハット事例の共有と活用を通じて、類似した事件・事故や災害等の発生や再発を防止する能力を高めるとともに、事件・事故や災害が発生した際には、教職員として、その場にいる児童生徒や他の教職員の命を守るとともに、被害を最小化することにつながる初動対応能力となる、AEDの使用を含む普通救命講習やエピペンの使用法などの実践的な学習、また、教育実習中における避難訓練等への参加の在り方についても、ぜひ関係するワーキンググループで御検討いただきたいと思っております。
 私のほうからは以上でございます。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 今の藤田委員をはじめ、御要望のような御意見をいただいている委員がいらっしゃいますけれども、もし最後に時間がありましたら事務局のほうにお返しできるかもしれませんが、時間がなければ、そのまま事務局に引き取って御検討いただくということでお許しいただければと思います。申し訳ありません。
 それでは、次、阿部委員、お願いいたします。
 
【阿部委員】  全事研の阿部でございます。よろしくお願いいたします。
 次期学習指導要領に向けた三つの方向性に特に異論はないのですけれども、特に三つ目の先生方の余白を創出することで、豊かな学びにつなげる方向性を踏まえた検討を行うことが必要であるとしたことや、みんなで、社会全体で社会に開かれた教育課程や個人と社会のウェルビーイングを実現するという理念について、さらに議論を深めていくとした部分、現場の一人として期待を申し上げたいと思っているところです。
 そう考えたときに、やはり働き方改革はより重要性が増していくものと思っています。3分類の見直しなども示されておりますが、例えば、様々な関連団体の事務局を先生方が担っているというケースなどもまだまだあり、先生方の余白を生み出すために着手しなければならないことは、これからもできることがたくさんあると思っているところです。そういった意味でも、今後の検討スケジュールや検討の在り方についてにもありますように、教師や学校、教育委員会が、現時点から次期学習指導要領へ見通しを持って取り組めるように、あらゆる方策を尽くすという部分に期待をしています。どうぞよろしくお願いいたします。
 そういった中で、ちょっと具体的なことで恐縮ですが、調整授業時数制度の実施に当たっては、より創意工夫を凝らした教育プログラムの立案や組織的な研究・研修のための実効性を増すためにも、財源の確保は必要ではないかと思っているところです。そういったところも言及していただきたいと思っていることと、教育委員会が学校に対して計画や結果の報告を求めることで、学校に対して過度な負担がかからないような配慮をよろしくお願いしたいと思います。ただ、その分、学校は自律を高めていくことが求められますし、そのための学校のマネジメント力の向上がより一層必要だと思いますので、カリキュラム・マネジメントの実効性と併せて議論を深めていただければありがたいと思っています。
 それから、「教育委員会や文科省としての教育課程編成状況把握の仕組み」については、学校が簡潔に回答できるような入力システムなどを構築していただければと思っているところです。
 あと、もう1点、質の高い教職員集団の形成を加速するための方策の論点整理のほうなんですけれども、これまで校長先生方の御尽力によって、学校のマネジメント力というのは保たれてきていると思うのですが、より質の高い教職員集団の形成を加速させる、つまり学校力を高めていくためには、より一層、主幹教諭や事務長等を含めたミドルリーダーや管理職のマネジメント力の向上が必要だと思います。
 余談ではありますが、私も地元の研修で管理監督者としてのマネジメント研修や人材育成についての研修を受ける機会があったのですけれども、本校の校長に復命をしたところ、校長にはこういう研修がないんだよなというようなことを言っておりました。これは本校の校長に限ったことではなくて、全国全てとは言いませんが、多くの校長先生方が同じような感想を持たれることではないかと思っているところです。
 質の高い教職員集団をまとめていく校長先生方、管理職等のマネジメント力の向上を一層議論に加えていただければいいのではないかなと思っておりますし、学校力の向上の大きな鍵となるのが、事務職員の質の向上ではないかと思っています。もともとの法的根拠が先生方とは違いますけれども、同じ教職員集団ということで、事務職員の人材育成についても言及していただくような中身になっていけばありがたいと思っているところです。
 以上です。
 1点忘れました。もう一つだけ、いいでしょうか。
 
【貞広分科会長】  はい。
 
【阿部委員】  デジタル教科書のところですが、採択に関わるシステムについての構築のお話がありましたけれども、学校で行っている教科書給与事務のシステムについても、煩雑にならないようなスリムな仕組みを構築していただけたらと思っているところです。
 以上です。よろしくお願いいたします。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、内田委員、お願いいたします。
 
【内田委員】  ありがとうございます。
 論点整理及び審議のまとめにつきまして、詳細かつ分かりやすい資料、ありがとうございました。
 まず、教員養成のところですけれども、実は先週、全国普通科の校長会の総会がありまして、そこで出た意見の一つとして、モチベーションが高く能力がある教員が、最終的にやはり生徒の育成に大きな成果を上げるということがございました。現場の状況を踏まえたキャッチボールをした養成、それから養成課程の検討をぜひしていただいて、より質の担保を確保するというところが必要になると思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 2点目、教育課程に関する内容になりますけれども、高校も含めて、小学校、中学校、カリキュラムオーバーロードの状態があり、それを解決する一つの方策として、余白の時間を生み出すというところが今回検討され、実現に向けて走り出しているわけですけれども、情報は、今、小学校、中学校、高校を通して非常に重要な科目である反面、新しい教科・科目ができて、それが現場の負担になっているということも継続してあるわけで、内容について精査をして、いずれ現行の教科・科目の中身を統合・整理するような方向も、今の時期ではありませんけれども、いずれ考えなければいけないのかなと。例えば、高校においては、情報科目を数学の一部として組み込むなど、そういったことを取り入れることにより、教員養成にも好影響が出るのではないかなと考える部分もございまして、いずれは検討していただきたいなと思います。
 それから、こういった教員養成であるとか、あるいはカリキュラムの面におきましては、現行のところでは、なかなか教室が少なかったり、教員が確保できなかったりというところがあります。先ほどもお話として出ましたけれども、ぜひ財源を確保して、余白が活用できた柔軟なカリキュラムが実現できるよう、頑張っていただければと思っております。
 3点目でございます。デジタル教科書に関してですが、いつでも学べるということは、裏を返しますと、いつでも学べないという状況につながりかねない。特に、家庭学習のところの取組が年々減っているというところが、我々の一つの悩みであると感じております。デジタル教科書ならではの仕掛けというところについて、より一層工夫する必要があると思いますし、また、現行で児童生徒がスマホ依存、あるいはデジタル依存になっている部分もあるかと思います。家庭学習、デジタル教科書が、そういったゲームとか映像コンテンツとライバル関係になるようなことも想定されますので、より一層の工夫を我々は取り組んでいかなければいけないなというふうに感じております。
 私からは以上になります。よろしくお願いいたします。
 
【貞広分科会長】  では、次に、野口委員、お願いいたします。
 
【野口委員】  一般社団法人UNIVAの野口です。すみません。遅れて参加をしたので説明をまるっと聞けなかったのですが、資料を拝見した上で、意見を幾つかお伝えしたいと思います。
 まず1点目として、次期学習指導要領についてです。既に様々な部会でもお話ししていることではありますが、多様性の包摂が通常の教育における柱として示されたのは初めてのことかと思います。公教育をよりインクルーシブにしていく上で、私は、歴史的な大きな一歩であると思っています。ぜひ、これを絵に描いた餅にするのではなく、どうやったら実現できるのかということを各部会やワーキンググループで議論していただきたいです。
 具体的には、総則・評価部会においては、障害者差別解消法において義務付けられている合理的配慮の基盤となる社会モデルの考え方を明記することに加えて、各教科等のワーキンググループにおいては、多様性を包摂するためにどのように障壁を解消するかなど、基礎的環境整備について明記することを検討していただきたいです。例えば、数学や国語などの教科において多様性を包摂する授業ってどんな授業なのか、そのために何ができるのか、先生たちが学習指導要領を見て、多様性を包摂するための授業についてイメージが持てるような学習指導要領になるよう御議論いただきたいです。
 2点目です。質の高い教職員集団について、多様性の包摂を土台に据えた教職員集団をどうつくっていくかというところがポイントかと思います。
 18ページに、現職教師の能力向上について、「教師には多様な力が必要とされており、このような複合的な専門性を修得するためには、個々の問題を並列的に取り扱うのではなく、多様性に関する教育など、中核的な考え方を基盤にして、養成段階、大学院段階、現職研修段階を貫く体系的な教育を整備することが必要ではないか」との記載があります。大賛成です。
 多様性を包摂する教育について、全ての教師に共通する土台の整理と、あとは、多様なマイノリティ性のある子供たち、カテゴリーごとの子供たちが共通する部分があります。私は今日本語指導が必要な子供たちの有識者会議と特別支援教育ワーキンググループと特異な才能のある子供たちのワーキンググループの三つの異なるマイノリティ性の会議の委員をしておりますが、その中で共通する部分というのがあるので、共通部分の整理、さらに、その上で、各カテゴリーごとのスペシャルなスキルということで、そのジェネラルな部分とスペシャルな部分をより明確にしていくことが重要だと思います。ぜひそういった形でご議論していただきたいです。
 いろんなところで専門性が足りない、専門性が足りないと言われるのですが、議論に出てくる専門性って具体的に何なのというところがそれぞれ異なったりしています。スペシャルな専門性が必要だと思われていることも、実はジェネラルな部分で結構解決できるのではないかということが多いです。
 最後で、特にこの多様性を踏まえた管理職の研修の在り方というのをぜひ検討していただきたいと思います。管理職の先生方の認識で、大分この多様性の包摂というのは変わってきます。特別支援学級は通常の学級で授業が持てない先生を配置するべきだと思っている管理職がいまだにいます。そういう管理職の学校経営では、特別支援学級や通級は通常学級の下であるという隠れたカリキュラムが存在してしまっているのですよね。現状そういう状況なので、是非改善していきたいと思っています。
 また、特別支援学級の担任を望んでいても、力があるから通常の学級に配置されることも結構あったりして、是非、数少ない専門性を持っている教師が活躍して、その知見がより広がっていくような方向性で管理職研修の在り方も議論していただきたいなと思います。
 また、前回も伝えたのですが、障害のある教師の雇用の推進についても是非御議論ください。
 最後に、デジタル教科書、非常に有り難いです。やっぱり今の教科書だと、そもそもアクセスできない子供たちがたくさんいますので、多様な情報の提示方法やアウトプットの方法などが当たり前になっていく、アクセシビリティが保障されるというのは非常に有り難いことです。
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【貞広分科会長】  急がせてしまって、申し訳ありませんでした。
 澤田委員、どうぞ。
 
【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田です。
 全体を通じて、改めて学校において教員が資本だなというふうに強く感じました。教員ももちろん人間ですので、見えやすい資質・能力とか直線的なスキルだけではなくて、目には見えない先生たちのモチベーションというのも欠かせないピースだなということを改めて感じています。その上で、幾つかお伝えします。
 まず、議題(1)の次期学習指導要領の論点整理について、特別部会の議論に関わらせていただきました。次期は、現行学習指導要領の成熟を目指すものではありますが、これまで長らく当たり前だった学校の姿ががらっと転換するような令和の大改革になるのではと思っています。包摂と民主的を明確に掲げたというのは、学校の存在意義について、先生たちにも非常に分かりやすい大きなメッセージだと思っています。
 これらについて、学校の負担への懸念も聞きますが、おおむね学校現場からは歓迎の声があって、既に自分たちも今からできることをやっていこうとか、何なら中教審や文科省から託された願いに応えたいというような声も多数聞いています。なので、そのモチベーションの高さにしっかり応えられるように、丁寧に議論していきたいなと思っているところです。
 議題(2)の質の高い教職員集団についてです。資料2-1では、現職教師の学びについて、経済的負担の軽減とか経済的支援と書いてもらっています。これについては、先生たちからは、もっと学びたいのだけど、お金の不安で踏み出せないとか、学び始めたけど、お金の不安が実は付きまとっているのだとか、かなり切実な相談を受けることもあります。が、どうも自治体ごとに大きく違うようなので、どの自治体においても環境が整うようにすることは、ぜひ国から積極的にやっていっていただきたいなと思います。先生たちが学びたいときに学び続けられる経済的支援が充実するということは、先生たちが大切な資本なのだという国からの大きなメッセージになりますし、先生たちの学びへのモチベーションを高めやすいことだと思っています。
 次に、教師の質を語る際に気になることについてです。現場を見ていると、先生たちは日頃からバランスよく資質を伸ばそうと学んでくださっていますが、理想の教師像に追われてモチベーションを落としていないだろうかと心配になることも実はあります。公式な書類ではわざわざあまり言及されにくいように思うのですが、日々子供と過ごす大人として重要なのは、愛情を持って子供と接する人間らしさであり、私自身の教員時代を振り返っても、特に小学校段階においては、すごい先生というよりも、凸凹が多少あったとしても、御機嫌だったり、おおらかな先生という価値観も重要ではと思っています。教員にもプレッシャーのかかる今の時代に、陽も極まれば陰となるというようなことがないように、こうしたことも強調しておけないだろうかと思いました。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、緒方委員、どうぞ。
 
【緒方委員】  まず、私からは、資料1と資料2についてお話をさせていただきたいと思います。現在、ワーキンググループが立ち上がって具体的な議論が始まったところですが、第1回においての感想も含めて、お話をしたいと思います。
 以前の話だと思いますが、まず検討の基盤となる考え方の中でも、やはり現場の校長としては、実現可能性の確保を十分に踏まえた議論を期待したいと思っています。さらに、各ワーキンググループでの議論では、論点整理に示されている各章の内容を独立的に捉えるのではなくて、各章間の関連性などを踏まえて議論して、そして、総則・評価特別支援部会などで取りまとめることで、政策の一貫性を図ることがやはり重要だと感じた次第でございます。
 次に、今回は説明で出てこなかったのですけれども、分かりやすい学習指導要領について、実は先だって特別支援教育ワーキンググループにおいて、障害のある子供を持つ保護者の団体の方から、保護者にも分かりやすい学習指導要領になることを希望する発言がありました。特に特別支援教育においては、通常の学級の教育課程と比べて、自立活動とか、教科等を合わせた指導だとか、なかなか小中学校の先生方でも内容的に分かりにくいこともあります。そういったところでは、やはり保護者も分かりやすい学習指導要領、保護者と学校が連携して教育を行う上では、極めて大切にしていかなければいけない視点だというふうに感じたところです。
 次に、資料2の教員集団の形成についてですが、社会人の教職員の参入の拡充については、ICTであるとか福祉などの分野で活躍する社会人が教育現場に参入する仕組みが整備されることは、特別支援教育においても大きな可能性を秘めていると感じています。特に医療的ケアや心理支援など専門性の高い支援が求められる場面で、外部人材の活用は、教育の質を高める有効な手段であるというふうに考えます。
 ただし、地域を問わず、そういった社会人が安定的に参入し確保できる、そういった施策を、単なる予算をつけました、学校で探してくださいというのではなく、そういった課題であるとか、また、いろんな職種の方が連携して行う教育、特別支援教育の中では行われていますが、やはり多職種連携の難しさもあります。それぞれの専門性を理解するところから始まって、その中で連携を構築していくという段階が必要ですから、そういったところも具体的な課題も含めて検討する必要があると考えました。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、松原委員、どうぞ。
 
【松原委員】  ありがとうございます。全国連合小学校長会の松原でございます。
 今日御報告いただいた内容を拝見しながら、現代の教師に求められる力、力量はますます高度で専門的になっているということを痛感したところでございます。そうした中で、質の向上、あるいは量的確保をいかに両立させるかということは、大変ハードルの高い課題であると認識しているところでございます。先ほど戸ヶ﨑委員のほうから全体最適というような御発言があったかと思いますけれども、私も、まさに今議論されている各施策が有機的に組み合わさって、総合的な解決策として機能していくことが重要であると考えているところです。
 もう一つ、参考資料3の中にある学校と教師の業務の3分類について、先ほど御発言もありましたので、少し私からも発言したいと思います。
 この新しい整理は大変意義深いと思う一方で、実際に担い手がいないという課題も懸念されております。さらに、予算措置ができる自治体とそうでない自治体との間で格差が拡大するという可能性も危惧されているところです。どうしても必要な業務については国としての支援や財政措置を検討していただくとともに、逆に、この業務は学校ではもう行わないと明確に整理する改革も必要であると考えております。また、地域や保護者の皆様への丁寧な広報・説明も、是非お願いしたいと思います。
 最後に、少し気の早い話なのですが、令和11年度までに教育職員の1箇月時間外在校等時間を平均30時間程度に削減するという目標が示されているわけですが、新しい学習指導要領に向けて、令和9年度、10年度というのは、小学校にとって最も準備が集中し、多忙化が懸念される時期と考えられます。この時期に負荷が集中し、目標の達成が困難とならないよう、全体的な視野を持って、今から対策を講じていく必要があると考えております。その実現を心より願っているところです。
 私からは以上となります。
 
【貞広分科会長】  では、植阪委員、どうぞ。
 
【植阪委員】  よろしくお願いします。
 東京大学の植阪です。よろしくお願いいたします。初心に返って、20年以上にわたって授業を一緒につくってきたり、子供の学びを見てきた立場からコメントしようと思います。四つの資料について1点ずつ、論点に入っていない点、もしくは、論点に入っているが必ずしも十分に議論はできていなかった点について言及したいと思います。
 まず、1点、論点整理についてです。膨大な資料についておまとめいただき、本当にありがとうございます。改めてこれを見てみまして、子供は深い学び、理解を大切にする、そういう態度、発想を持つ、そのことの必要性というのを改めて感じた次第です。
 深い学びというのは非常に重要なのですけれども、先生が提示しただけでは、必ずしも子供のところまで届きません。日本の先生はかなり深い理解を重視して教えていても、実際には子供のところまで届いていないという実態は非常に多く見え隠れします。企画特別部会の今井委員からも、なかなか深い理解に届いていないという実態を見ていますし、私自身も、例えば、反比例の意味と具体例を書いてと中学2年生に言ってみると、珍回答、誤回答が続出するといったようなことも出てきているというのを見ています。高校段階においても、単位円を渡して、コサイン、サインを図に書き込んでと聞いても、書けないというようなことは示される実態もあります。これは学校の先生が教えていないという問題よりも、子供がそれを大事にして勉強していないということの方が大きいと思っています。主体的に学ぶ態度・発想の重要な一側面と思いますので、先生の教え方の努力だけでなく、子供たちがそれをつかむべきものとして重視する。実はパターンばっかりになって応用が効かなくなっている現実もありますので、そこを何とかしていく、そこら辺が大事かなと改めて思った点です。
 第2点目は、教員養成ですが、これは第1点目の論点整理とも関わります。学習指導方略の指導についてです。今回改めてうれしいなと思いましたのは、論点整理の補足イメージ1-2の図でございます。こちらをちょっと出していただけるとうれしいかなと思うのですけれども、こちらの下の部分に、効果的な指導計画・授業方法、児童生徒の学習方略の指導という言葉が明記されています。学習方略というのは、一言で言えば子供たちの学び方で、諸外国ではこれをかなり意識して教えている学校が多いわけですけれども、これが日本においても共有されたのはとてもうれしいと思っています。
 ただ、これが小学校からできるのかという判断もあるかと思いますし、実はこの点については企画特別部会でも十分に議論できていない点だと思いますので、1点だけ、実際の学校の小学校2年生でこういうことを大事にした事例というのを、追加での補足資料で申し訳ないんですが、出させていただきましたので、共有させていただきます。私が出させていただいた資料の3枚目を出していただけますでしょうか。
 例えば、今、教育課程で重視されているメタ認知というのを、小学校2年生では失敗活用ということで、「なぜ間違えたか、なぜ失敗したか、なぜ負けてしまったのか考えてみる」ですとか、その次のページをめくっていただいて、理解度チェック、「ちゃんとおぼえているか、テストする」というような分かりやすい言葉で子供に働きかけています。
 これを実践されたのは調布大塚小学校の小学校2年生を担当されている宮下先生という先生なのですけれども、この先生からいただいたものでは、授業でこれを取り上げていく中で、問題練習の意欲や丸つけに対して真剣さが向上し、丸つけをする際に一問一答にガッツポーズをするような子もいましたですとか、授業中に取り上げた筆算を書き、自分が間違えやすい部分を示す子もいました。子供たちが学習の仕方を知り、意識することで、意欲も変化したように感じますというふうにおっしゃっています。
 ですので、学び方ということが実は意欲にもつながっているというのは非常に重要であって、やることが多くて大変というのは分かっているのですが、教員養成課程からこうした点についても取り上げていけるといいかなと思っております。
 第3点目は、デジタル教科書についてです。実は、教科書が効果的に使われていないという、デジタル教科書の前に教科書の問題がございます。公開研究授業で教科書を最初から机に出して開いているケースは、実はほとんどありません。深い理解が記載されている点は非常に良いとされているのですが、その後の問題集の部分を主に使うような形になってしまっている実態もあります。教科書で教えるということが書かれておりましたけれども、深い理解をどのような学力層の子供にも届けるという目的を考えますと、教科書は非常に重要な資源です。どのように使ってほしいのか、デジタルと紙があるのであれば、それをどのように授業の中で使っていくのかという具体的なイメージをこちらから使わなければ、どういうふうにこの二つを両立するのというのは、現場ではかなり混乱するのではないかと思っています。
 一方で、学力が低い子が教科書を事前に読んで活用することで、授業中も発表でき、算数が好きになったというような事例もございます。教科書を自己調整の核として活用していく方法や、好事例というのを社会と共有していく必要もあると思います。
 最後、簡単にです。学習状況調査、ありがとうございます。これは深い理解が定着しているのかを検証して、日々の指導を見返す非常に重要な機会と思います。
 一方で、それが定着しているのかどうかということが分かるのかと言われれば、フィードバックを見ると、かなり厳しいと思っています。かなり具体的な内容の、ここができないよということだったり記述が難しいというのは分かるのですが、じゃ深い理解はどうなのということに対しては、はっきりと答えが出ないので、どうしても点数競争になりがちです。質問紙では、深い学びに取り組めたかというようなことを子供に聞いていますが、子供は客観的に評価できるというのはなかなか厳しいと思います。深い学び、つまり深い学びを測定しているような課題の上位概念に当たるものの達成状況を分析するというような方法も現在できるようになっていますので、もう少し客観的に捉えて、学校現場が実際の授業改善に資するようなフィードバックの在り方というのを考えることが必要ではないかと感じています。
 長くなりました。以上です。失礼いたします。
 
【貞広分科会長】  では、続きまして、青海委員、お願いいたします。
 
【青海委員】  ありがとうございます。私からは二つほどお話しします。
 一つ目は、デジタル教科書ワーキンググループの審議についてです。
 現行のデジタル教科書は、紙と同じ内容を端末の画面に表示する、いわゆる代替教材にとどまり、デジタルならではの可能性を狭めていると思っています。デジタルでは、二次元コードで飛ぶインターネット上のデジタル教材も教科書の一部として扱います。新たなデジタル、また、ハイブリッドの形態に大変期待しています。
 今後、新たなデジタル教科書の導入を目指すに当たり、デジタル教科書に残る課題や、デジタル化そのものが目的となっているなどの意見に対し、例えば、デジタル教科書のポスト、検定、デジタルを取り入れる学年、それからデジタル漬け、安全性など、子供へのリスクなど、懸念されている事項について慎重に検討し、関係者に対して丁寧に説明し、十分な理解を促すことが成功につながるのかなと思います。
 二つ目は、改訂議論のYouTube公開についてです。
 部会の同時公開により、検討の進捗状況、それから、即座に教育関係者の皆様にお伝えしてきていただきました。視聴者は毎回1,000名を超えており、アーカイブ視聴も含めれば、その何倍にもなるのかなと思います。いわゆるこういった仕掛けは、学習指導要領の誤った理解、それから、解釈、一部のみの切取りの活用などをかなり回避できるのではないかなと思います。また、その読みぶりとかスピード等にも影響があるのかなと思います。今後とも審議状況をタイムリーにお伝えする、そういった努力は大切なのかなと思います。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、岡本委員、どうぞ。
 
【岡本委員】  申し訳ありません。最後に挙げさせていただいて失礼いたしました。
 いろいろおまとめ、ありがとうございました。
 また、委員の皆様の様々な御発言を聞きまして、これから新しい時代の教育ということを考える大きな転換期だということも十分認識しながら、お話を聞かせていただいた際に、学校というのが幼稚園からやはり始まっていて、どうしても幼児教育が最後のページになってしまうというのが、どうもちょっと発達段階を考える上で多くの方々に見えづらいのではないかなというふうには常々感じていたことではありますけれども、最後にお話をさせていただきたいなとやはり思いました。
 それは、分かりづらいというのは、教科学習、いわゆる科目がないということや、教科書がない、幼児期からデジタルというようなこと、なかなかそこにすぽっと入っていかないのは、それは十分に理解して、だからこそ、それが幼児教育だということ、まずそれを基本に、一番最初に置いていただいて、それから、そのような幼児期を過ごした子供たちが小学校、中学校、高等学校に行く、それが日本の教育を支えるものであるということを、文部科学省として示すときには、やはり1ページの目次の下のところに、本論点整理において「学習指導要領」という際、第一章から第二章においては「幼稚園教育要領」を含むという書きぶりではなく、やはり学習指導要領・幼稚園教育要領と書いていただくなど、それが言葉が違いますので、多くの皆様にとっては分かりづらいかもしれませんが、そのようなことをしていただくと、やはり幼児教育というものに対して、それが日本の教育、一番最初の教育だということを理解していただけるかな、それを基に学校教育全体を考えていただけるかなと思いまして、大変僭越ではありますけれども、お話をさせていただきまして、今後ワーキンググループ等で、さらにこの辺り、言葉も分かりづらいですし、表形式にするようなことがなかなかできにくい、それが幼児教育ですけれども、それを分かりやすく示して、見えやすくさせていただいて、日本の教育に幼児教育が貢献していることを示させていただければ有り難いなと思いました。
 すみません。最後に手を挙げさせていただいて、失礼いたしました。ありがとうございます。
 
【貞広分科会長】  とんでもありません。まだ時間ありますので、御発言いただきましてありがとうございます。
 こちらで挙手が発言できた委員の方々には一通り御発言をいただいたところでございます。もろもろの御事情で御発言できない場合もあろうかと思いますので、私のほうで見落としている方がいらしたら、もう一度挙手をしていただくなりしていただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、あとお一方かお二方ぐらい、もう一回おかわりができそうなのですけれども、どなたかいらっしゃいますか。よろしいでしょうか。
 では、田名部委員、どうぞ。
 
【田名部委員】  それでは、PTAと保護者の立場から御発言させていただきます。
 本日の取りまとめで、それぞれの取組が非常によく分かりました。私も様々参加させていただいておりますので、進捗状況は理解しているつもりです。
 それで、それぞれがきちんと進んでいるということは理解できて、すばらしいなということは感じておりますが、例えば、先生方の人材の質の向上だとか、生涯学習だとか、先生方の働き方改革等々というようなこともしっかり進めていただいている。また、デジタル教科書などのことも前向きに進められているということで、非常に保護者としては頼もしいなと思っているのですが。家庭は家庭、学校は学校、先生方の質が向上すればするほど、今、家庭のほうではこの議論にはなっていませんので、家庭と先生方、また、学校と家庭、保護者の間でどんどん差が開いていく可能性があるなということを感じます。
 そうしますと、学校だけで、先生方だけで子供を教育しているわけではありませんし、先生方の質を一生懸命向上して、先生方の働き方を改革したとしても、例えば、モンスターペアレンツだとか、そういうものへの対応、先生が孤立するということについて、先生方だけで対応できるかと言ったら、そうではない。例えば、地域と学校、そして保護者が、モンスターペアレンツに対して学校の味方をしていく、先生の味方をしていくというようなことも交えてやっていかなければ、片方だけが進んでしまうということであれば、こういうルールの中ではうまくいくのでしょうけれども、実際運用してみると、うまくいかない、トラブルが発生するということになってくるので。
 最近は、PTAが任意であるとか不要論とかということに対して全く手を打てていないような状況です。それはそれでPTAが頑張ればいいというようなことになっているのですけれども、もう少しPTAの役割と、もしくは保護者の役割と、先生方、学校との連携をうまくしていかなければ、これは本当に生涯学習にもつながっていきませんし、結果、先生方を守ることもできないのかなというふうに思いますので、ぜひぜひ、それぞれの中ではプロフェッショナルに今、完成に向かって非常に頼もしく思っておりますけれども、完成に向かっていくときに、地域だとか保護者というところもひも付けしていただければ、完成度がもっと高くなるのではないのかな、運用段階では成功に結びつくのではないのかなというふうに思いましたので、発言させていただきました。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。保護者のお立場から御発言をいただきました。
 先ほど、緒方委員からでしたでしょうか、保護者の方にも分かりやすい学習指導要領という御提案もございましたけれども、学校と保護者、地域の方々のモチベーションや理解度のギャップをいかに埋めていくか、埋めていくことによって、社会全体でみんなで子供の育ちを支援していく、育んでいくということができるという趣旨の御発言だったかと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、今、全体の御意見、御質問、御要望等を受けまして、4人の事務局の方々で、特に応答しておきたいという方がいらっしゃいましたらお願いできればと思いますが、本日はいかがでしょうか。
 では、武藤教育課程課長、お願いいたします。
 
【武藤教育課程課長】  教育課程課長の武藤でございます。
 今日、学習指導要領の議論について本当に多岐にわたる御意見をいただきました。一つ一つ応答していると時間が足りなくなってしまいますが、いただいた御意見は整理をして、ワーキンググループも相当多岐にわたるので、事務局として責任を持って、それぞれのワーキンググループにお伝えして、議論の参考になるようにしてまいりたいと思っております。
 以上です。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、後藤課長、お願いいたします。
 
【後藤教科書課長】  失礼いたします。教科書課長の後藤です。
 デジタル教科書に関してもいろいろ御意見いただきましたが、複数の委員の方から、デジタル教科書の活用に向けて、あまり個々に委ね過ぎると、いろいろ格差ということにもつながりかねないのではないか、場合によっては何らか縛りというか、そういったことも考えてはどうかであるとか、あるいは、それとつながると思いますが、どのように使っていくのがいいかというのは、そのイメージといいますか、そういったことの共有が必要だとか、また、不安視される要素に対しての考え方を示していくというようなことについて御質問いただきまして、いずれも非常に重要な、大切な御指摘であると受け止めておりまして。
 実は、説明をやや短くしてしまいましたけれども、審議まとめの中でも、これからデジタル教科書の制度化に向けて、国としてもガイドラインをつくるということを検討するべきというようなことを御提言いただいておりまして、この辺り、我々文部科学省の中だけでなくて、いろんな方の有識者であるとか現場の方の知見をいただきながら、今御指摘いただいたような点をガイドラインの中でうまく整理して、また情報発信していくというふうなことを考えてまいりたいと考えております。
 まずは以上でございます。
 
【貞広分科会長】  運用の段階で引き取っていただけるということ、ありがとうございます。
 では、大江教育職員政策課長、お願いいたします。
 
【大江教育職員政策課長】  ありがとうございます。
 お時間の関係もございますので。本当に、本日、委員の皆様方から貴重な御示唆をいただいたと思っております。それぞれ、まさに学習指導要領の改訂の議論とともに行っているという中で、教員養成課程の中で行うべきこと、研修の中で行うべきことを様々御示唆いただきました。
 先ほど秋田部会長もおっしゃっておりましたように、養成だけではなくて、まさに養成・採用・研修の中で、それぞれどういったものが必要かということについて、またワーキンググループでも御議論いただくことになると思います。論点整理の中での方向性では、正に教職課程は厳選をしながら、量的にも確保しながらということで、非常に難しい課題を扱うということで、今日御示唆もいただきましたけれども、今日いただきました御意見をしっかり養成部会の先生方とかワーキンググループの先生方にもお伝えさせていただきまして、それを踏まえた上で御議論していただくように、事務局としてもしっかり対応してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
 
【貞広分科会長】  ありがとうございます。
 では、相原室長、どうぞ。
 
【相原学力調査室長】  ありがとうございます。
 秋田委員から、男女別の結果、都道府県別の結果等についても御指摘いただきましたけれども、私どもとしても、どの児童生徒にも、教科にかかわらず、資質・能力に応じた進路選択をしていただきたい、そのような思いから一歩一歩取組を始めたというところですが、解答(回答)の取り方、あるいは結果の出し方というところも、更に改善、配慮をしていきたいと考えております。
 また、都道府県別の結果については、平均でもって学力を語って、順位を競争するような風潮を打破するということに努めて、このような改善をしておりますけれども、今後は、IRT分析に基づきまして、国際調査同様、5段階の習熟度の分布について、その改善を経年で評価していくというようなところが、メインになっていくのではないかと考えておりまして、これも引き続き工夫したいと思います。
 また、植阪委員から、深い理解の客観的な分析というところでも御指摘賜りました。学力調査の専門家会議で、貞広先生、それから田村委員にも御参画いただいておりますが、専門家の御知見もお借りして、この辺りしっかり深めていきたいというふうに考えております。
 ありがとうございました。
 
【貞広分科会長】  事務局から丁寧な応答いただきまして、ありがとうございます。
 今日いただいた御意見、御要望、とりわけ議題(1)と(2)につきましては、まだ論点整理の段階でございますので、本日の各委員からの御発言も踏まえて、それぞれ教育課程部会、そして教員養成部会の両部会を中心に、さらに議論を深めていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では、皆さんに御発言をいただきまして、あらあら時間も参りましたので、本日はこの辺りにさせていただきます。
 最後は、次回の御予定につきまして、事務局より御連絡をお願いいたします。
 
【草野教育制度改革室長】  事務局、草野でございます。
 次回の会議日程につきましては、追ってまた事務局から御連絡をさせていただければと思っております。
 以上でございます。
 
【貞広分科会長】  それでは、本日予定した議事は全て終了いたしました。これで閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
■会議終了後に頂戴した御意見
 
【阿部委員】
 参考資料3にかかわって、発言させていただきます。
 教員が担っている事務業務について、事務職員の専門性を活かしながら精選、効率化を図っていくことは働き方改革の観点からも有効なことと思います。ぜひ、全国の自治体で共同学校事務室の設置を進めてほしいと思いますし、文科省の支援も引き続きお願いしたいと思っています。
 それと合わせてですが、いま事務職員が担っている事務業務に単純に教員の事務業務を上乗せするのでは、事務職員の負担・負担感が増すだけ、という心配があります。給与・旅費・財務のシステム化が進んでいない自治体も多くありますし、学校徴収金システムも学校任せというケースもあります。こういった業務のDX化の進展化を促すような働きかけや取り組みをぜひお願いしたいということ、そして、指針にもありますように、学校徴収金の公会計化を自治体ではぜひ進めていただきたいと思います。そのことで、事務職員の「余白」が生まれ、校務運営への参画がより一層進むことにつながり、学校のマネジメント力の向上にもつながることと思います。事務職員の定数改善や共同学校事務室への加配の必置と合わせて、引き続き、今後の審議に加えていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
 
【宮原委員】
 1.初等中等教育における教育課程の基準等の在り方に関する審議状況について(論点整理)について:全体としてはこれまで議論してきた内容であり、追加の意見ではないが、メディアの報道など見ていると、情報科の追加など、科目の追加が特別関心をもって取り上げられていることには、懸念があります。今回改訂される教育課程の狙いや考え方についてメディアを含む社会の理解をより深めるための、しっかりとした広報戦略、実行が必要と感じます。
 2.多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策に関する審 議状況について(論点整理):今後の採用のパスの多様化、バックグラウンドや背景・経験の多様化は、今後の教育課程を支えるものとして議論の方向性には賛同いたします。少し議論が薄いと感じたのは、現在教職である現役教員への支援の充実の観点で、研修の時間を画するだけではない支援の体制が必要だと感じます。変化の激しい現代において、教員といえどもいわゆるリスキングが求められていくと思われるので、研修や時間の創出にとどまらない、手厚い現職教員のスキル・知識向上と意識変革を促す支援についても、引き続き厚めに議論いただきたいです。
 3.デジタル教科書:方向性として推進していくことには賛同します。一方、使い方については、実際の使い手の児童・生徒の視点、学ぶ主体者の視点を取り入れて、推進していただくことを希望します。

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