初等中等教育分科会(第148回)・個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会(第7回)合同会議 議事録

1.日時

令和7年2月18日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省(※対面・WEB会議の併用)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 義務教育の在り方ワーキンググループ審議まとめ及び高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめについて
  2. 各部会等における審議状況について
  3. その他

4.議事録

【荒瀬分科会長】  皆さん、おはようございます。ただいまから第148回中央教育審議会初等中等教育分科会と第7回個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の合同会議を開催いたします。御多忙の中、本日も御出席いただきましてありがとうございます。
 会議の開催方式と資料につきまして、渡邉教育制度改革室長から御説明をよろしくお願いいたします。

【渡邉教育制度改革室長】  本会議は、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド方式にて開催をさせていただきます。
 会議を円滑に行う観点から、委員の皆様におかれましては、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含めて、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
 なお、本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をYouTubeにて配信をしておりますので、御承知おきください。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料1-1から資料6-5まで、加えて参考資料1及び参考資料2となってございます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日は初等中等教育分科会と個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の合同会議ということを先ほど申したとおりでございます。
 まずは議題1といたしまして、特別部会の下に設置されている2つのワーキンググループにおける審議の状況について、事務局から御報告をいただきたいと思います。その後、本日は第12期中央教育審議会としての初等中等教育分科会の最後の会議となっておりますことも踏まえまして、議題2としましては、第12期における各部会等の審議状況につきまして、事務局から、ちょっと時間の関係で簡潔にお願いすることになるんですけれども、御説明いただきたいと思います。そして、最後に議題3、その他ということなんですけれども、このその他が、ある意味今日の大変重要な内容でございまして、委員の皆様お一人お一人から、第12期を振り返ってのコメント、それから第13期に向けての注文というんでしょうか、期待というんでしょうか、そういったことも加えてお話しいただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、義務教育の在り方ワーキンググループ審議まとめ及び高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめにつきまして、御説明をいただきたいと思います。
 特別部会におけるこれまでの審議状況と、義務教育の在り方ワーキンググループ審議まとめにつきまして御説明をいただいて、その後、この義務教育の在り方ワーキンググループの主査である奈須分科会長代理から御発言をいただきたいと思っています。
 それでは、渡邉教育制度改革室長、よろしくお願いいたします。

【渡邉教育制度改革室長】  はい、承知しました。では、資料1-1を御覧いただければと思います。
 本分科会におきましては、令和4年1月に、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会を設置いたしまして、令和3年の答申を受けた、デジタル化などの社会変化が進む次世代の学校教育の在り方等について、検討を進めてきたというところでございます。
 下の3ポツ、審議経過にございますとおり、第11期におきましては、令和5年2月に、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について~審議経過報告~」を取りまとめいただいたところでございます。そして今期におきましては、義務教育の在り方ワーキンググループ及び高等学校教育の在り方ワーキンググループ、それぞれにつきまして、審議まとめを今回取りまとめたということで、報告をさせていただくものでございます。
 それでは、資料1-2に基づきまして、まず、義務教育の在り方ワーキンググループの審議まとめについて御報告申し上げたいと思います。
 このワーキンググループの中間まとめにつきましては、昨年1月の分科会、特別部会の合同会議におきまして報告をさせていただいたところでございますけれども、その後、広島県の小中学校、また、教育支援センターを特別部会、義務教育の在り方ワーキンググループとして視察をさせていただいて、そこで先生方や、児童生徒と直接意見交換を実施しました。そうしたことも踏まえまして、今般審議まとめとして取りまとめたというものでございます。改めてその概要について、資料に基づきまして報告をさせていただきます。
 この審議まとめにおきましては、目指すべき義務教育・学校教育の姿及び取組の方向性ということについて、丸1番から丸6番までの柱でまとめております。
 まず丸1番として、「義務教育の中核としての学校教育の役割」ということでございますけれども、社会の分断や格差を防ぎ、民主的で公正な社会を形成する基盤としての学校こそが、引き続き義務教育の中核を担うべきものであるということをまず確認してございます。
 次に丸2番、「公教育としての共通性の担保と多様性の包摂」ということで、公教育として必要な共通性を最低限担保しつつ、一人一人のよさを徹底的に伸ばすことに対応できる学校教育の実現を図る必要があるというようにしております。
 丸3番、「児童生徒と教師が集い、共に学び、生活する場としての価値の最大化」ということで、学ぶ楽しさや期待を感じながら、共に学びに向かうことができるよう、魅力ある学校づくり・授業づくりを推進していくことが必要であるというようにしております。
 丸4番は、「生涯学習社会を生き抜く自立した学習者の育成」ということでございますけれども、自立した学習者の育成のために、子供たちが好きや強みをいかしながら主体的に学べるよう、多様性を包摂する柔軟な教育課程の編成・実施を進めるための方策の検討も重要であるというようにしております。
 丸5番、「義務教育の目的を達成するための創意工夫の発揮」ということで、学校現場において創意工夫を凝らした教育活動が展開できるような環境整備を推進していくことが必要であるというようにしております。
 丸6番は、「公教育を支える学習基盤に係る一体的な検討・充実」ということで、働き方改革のさらなる加速化等を進めるとともに、各種制度等につきまして、学校現場における創意工夫を引き出し、子供たちの学習意欲や創造性を育むものとして、それぞれ専門的な見地から検討を深め、充実を図っていただきたいというようにしております。
 次の2枚目を御覧いただければと思います。
 審議まとめの後半部分におきましては、学びにおけるオンラインの活用についてまとめてございます。まず、その基本的な考え方として、赤枠囲みのところでございますけれども、オンラインは学びのツールの1つであり、教育の質の向上や子供たちの学びへのアクセスの保障を実現するための最適な手段は何かという観点から選択をし、活用することは適切であるというようにしております。
 下半分は必要な方策ということでまとめておりますけれども、まず丸1番にありますように、義務教育段階における活用方策として、1人1台端末の着実な更新を図ることでありますとか、丸2番、小中学校の連携・接続におけるオンラインを活用した方策といったことでありますとか、丸3番、中山間地域や離島等に立地する小規模校におけるオンラインの活用を進めていくことでありますとか、丸4番として、中学校において受信側の教室に相当免許状を有する者の配置を必ずしも要しないとする、遠隔教育特例制度の活用を進めていくことであるとかいうことをまとめてございます。
 右半分は、オンラインを活用した学びへのアクセスを保障するための取組ということでまとめておりますけれども、丸1番にありますように、不登校児童生徒への対応でありますとか、丸2番、義務教育未修了者・形式卒業者の夜間中学における学びにおける活用でありますとか、丸3番、病気療養児や日本語指導が必要な児童生徒へのオンラインの活用といった方策についてまとめているところでございます。
 (3)は、働き方や生活スタイルの多様化への対応ということで、二地域居住等に伴う場面におけるオンラインの活用ということにつきましても、具体的な課題や解消方策等の把握を進めていく必要があるというようにまとめているところでございます。
 私からは以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、義務教育の在り方ワーキンググループの主査をお務めいただきました奈須先生のほうから御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【奈須分科会長代理】  よろしくお願いいたします。今御説明いただいたようなことでの取りまとめをさせていただきました。委員の皆様には、本当に長く真摯な議論をいただいてありがたかったと思います。また、広島県にお邪魔して、出張中教審という形で、現場をみんなで見て議論するというようなことも、とてもよかったな、ありがたかったなと思います。広島県教委には、随分お世話になりました。ありがとうございました。
 今、お取りまとめのお話があったとおりなんですけれども、やはり今回はかなり大きな話、原理的な話をさせていただいたなと思っています。それもやはり1枚目の左にありますように、今日的な問題というのが、義務教育が成立して150年になるわけですけれども、これまでにないような事態に直面しているという認識があったかと思います。そこにあるとおりですが、児童生徒の指導上の様々な問題、34万人不登校ということに象徴されるような問題がある。一方で教師を取り巻く問題としての、教員不足というようなことがある。この2つの問題、表面的には違うようですけれども、根本において、日本の学校の魅力というか、存在意義のようなものが危機に瀕しているというぐらいに、やはり捉える必要があるだろうというふうなところから議論をしたように思います。でも議論する中で、御報告がありましたとおりに、学校こそが引き続き義務教育の中核を担うべきだと。ただ、どのように担っていくかということにおいて、これまでのような形をただただ続けていってはいかんのだろうということで、かなり原理的な議論をさせていただけたように思います。多様性に関する問題、そして民主的で公正な社会を実現する場としての学校というふうな意味づけもきちんと打ち出すことができたことで、改めて学校が何をすべき場所かということが確認できたように思いますし、さらに、少し具体的なことになりますが、オンラインに関わる議論をかなり具体的に丁寧にさせていただいて、もう既に施策として実施されているものも出てきているかと思います。またこれが、今始まっております次の学習指導要領の議論にもつながっていくことを期待したいなと思います。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】  奈須先生、ありがとうございました。
 それでは、御意見等もおありかもしれませんが、最後に皆さんお一人お一人から御発言をいただく際に、まとめてお願いをしたいと思います。
 それでは、引き続きまして、高等学校教育の在り方ワーキンググループの審議まとめにつきまして、度會参事官補佐から御説明をよろしくお願いいたします。

【度會参事官(高等学校担当)付参事官補佐】  よろしくお願いいたします。資料1-5、御覧いただければと思います。
 こちら高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめの概要になります。こちらの審議まとめにつきまして、大きく2つの章で構成されております。1つ目がローマ数字1、「これからの高等学校の在り方に係る基本的な考え方」といたしまして、高校教育の実態が地域・学校により非常に多様な状況にあるため、質の確保・向上に向けて、多様性への対応と共通性の確保を併せて進める必要があると御提言いただきました。具体的には、多様性への対応として、高校を取り巻く状況の変化だとか、多様な背景を有する生徒さん、こういった様々な状況に対応していくために、いずれの高等学校においても、多様な学習ニーズに対応し、潜在的なニーズに応える柔軟で質の高い学びを実現していくことが必要であると。併せて、共通性の確保といたしまして、生徒たちに、ここに記載させていただいているとおり、例えば自己を理解し、自己決定・自己調整ができる力、自ら問いを立て、多様な他者と協働しつつ、その問に対する自分なりの答えを導き出し、行動することのできる力、自己の在り方・生き方を考え、当事者として社会に主体的に参画する力、知・徳・体のバランスの取れた土台を育成、形成していくこと、こういったことに取り組むことが特に重要であると御提言いただいた次第でございます。
 次に、その下、ローマ数字2、「各論点に対する現状・課題認識と具体的方策」といたしまして、高校ワーキングでは大きく3つの軸に沿って議論を進めてまいりました。
 1つ目が「少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方」、2つ目が「全日制・定時制・通信制の望ましい在り方」、3つ目が「社会に開かれた教育課程、探究・文理横断・実践的な学びの推進」でございます。1つ目、「少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方」に対する、その具体的な方策でございますが、その下、オレンジ色のところを御覧いただければと思います。主に小規模校に焦点を当てて議論をさせていただいたところでございますけれども、その教育条件の改善に向けて、例えば、かねてから進めております遠隔授業の推進ですとか、あと全日制・定時制課程における通信教育の活用、こちらは今年度から制度改正をいたしまして、全日制・定時制課程においても、通信制課程で用いる通信教育、この手法を用いることを可能といたしました。ですが、まだノウハウの構築といった面が不十分であると認識しておりますので、実証研究を進めているところではあるんですけれども、ワーキンググループでもこういったところをしっかりと進めていくことが大事であると御提言いただいたところでございます。その下、配信センターとあるんですけれども、こちら遠隔授業に係る配信センターの体制・環境整備、学校間連携等の促進でございまして、都道府県によっては、既に体制を整えられている都道府県もございますが、こういったところを我々としても後押ししていくことが必要であると御提言いただいたところでございます。
 2つ目、「全日制・定時制・通信制の望ましい在り方」のところでございますが、オレンジ色のところ、生徒の多様な学習ニーズに応える柔軟で質の高い学びの実現に向けて、まず不登校生徒の学習機会の確保といたしまして、全日制・定時制において、なかなか不登校傾向があって学校に通うことができないといった場合に、自宅などから遠隔授業をすることができるだとか、先ほどと重なるんですけれども、通信教育の手法を用いて学びを継続する。要は学びを継続して、いずれは学校に戻ってくる、そういったところを可能とすることができればなと思っておるんですけれども、これも同じく、今年度から制度改正をさせていただいて実施可能となっておりますが、ノウハウの構築に引き続き努めてまいりたいと思いますので、実証研究を進めていくといったところが必要であると御提言いただいたところでございます。その他、その下、定時制・通信制課程における優良事例の創出というものも図っていかなければならないですし、どんどん増えていっている広域通信制、これの実態把握と、その一環として設置・認可等に係る状況の把握、こういったところも進めていくべきであるといったところを御提言いただいた次第でございます。
 最後3つ目、「社会に開かれた教育課程、探究・文理横断・実践的な学びの推進」でございますが、全ての生徒の学びの充実に向けて、普通科改革の促進やそのコーディネーターの配置支援による探究・文理横断・実践的な学びの推進、あとはグローバル人材育成に資する取組であるとか、留学をはじめ国際交流の促進、理数系教育のさらなる充実、また、専門高校、こちらも専門高校の振興を図ってまいりたいと思っておりまして、この審議まとめにおいても、産業界等と専門高校の連携・協働の強化、専門高校を拠点とした地域人材の育成、地方創生の支援、専門高校の魅力の発信について記載させていただいているところでございます。加えて、昨年度の補正予算から進めておりますDXハイスクール事業のさらなる推進、あとは学習指導要領の理解や着実な実施、定着、そして今後の継続的な課題として、教職員の配置を含む高校の指導体制の充実、こういったところについても御提言いただいたところでございます。
 御説明、以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。この高等学校教育の在り方ワーキンググループの主査は、私が務めさせていただいておりました。私のほうからも一言申し上げたいと思います。
 今、度會参事官補佐から御説明があったとおりなんですけれども、これまでの高等学校教育は、共通性と多様性をどのように担保して充実していくのかということが議論のスタートラインとしてありました。それを多様性というところからしっかりと見ていこうというのが、このワーキンググループでの非常に大きな変化であったと思っております。多様であるということの認識は、多様であることの価値を認めていくということですけれども、その中で、いかに共通性を確保していくのかということの議論について行っていました。
 印象に残っていることを申し上げたいと思います。実際に我々も高校生と話をする機会を得まして、宮崎県立宮崎東高等学校夜間定時制の生徒と話をいたしました。オンラインでありますけれども、話をいたしました。そのうちの1人は、小さい頃からずっと、なぜ普通のことができないのか、普通のことさえしてくれればいいんだと。何で普通でないのか、おまえはというような言い方をずっとされてきて、普通ということに対する、何かもう非常に嫌な思いを持ったということでありました。普通に対する忌避感みたいなのがあったみたいです。それで高校に入って、探究で自分の在り方、生き方に関わるようなテーマ設定をして、ずっと考えることができるという中で、この生徒が普通とは何なのかということをテーマにして、ずっと考え続けたということでありました。そのときに質問いたしましたけれども、彼はまだまだ普通については何かよく分からないと言っていました。とても印象的でありました。
 また、この審議まとめでありますけれども、これを高校生が読んでくれて、高校生自身が自分の学びについて考える、そして自分の学びをつくっていく、そういうところに働くようなものであってほしいし、その意味では、学習指導要領もまたそのようになるとよいといった期待もありました。
 以上でございます。ありがとうございました。
 それでは、この2つのワーキンググループの審議まとめにつきまして、先ほど申しましたように、御意見等がございましたら、最後にお一人ずつお話しいただく際にお願いをしたいと思います。
 では、次の議題に進みたいと思います。今期の初等中等教育分科会全体の審議の状況につきまして、事務局のほうから御報告をいただきまして、その後、各部会等から審議の状況についてさらに御報告を加えていただきたいと思っています。
 では、初等中等教育分科会全体の審議の状況につきまして、渡邉教育制度改革室長からお願いいたします。

【渡邉教育制度改革室長】  それでは、資料2を御覧いただければと思います。第12期の初等中等教育分科会の審議の状況についてというものでございます。本内容で、年度内に開催をされる予定の中央教育審議会総会において御報告をさせていただく予定としております。各部会や委員会の審議状況については、追って担当より詳細報告をさせていただきたいと思います。また、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会は、先ほど申し上げたとおりというところでございます。
 次の2ページを御覧いただければと思います。最後、2ポツのところでございますけれども、継続して審議を検討する事項ということでまとめております。先般2つの諮問があったところでございますけれども、その2つの諮問について引き続き検討を行うということでありますとか、3つ目の丸、この後御報告あるかと思いますが、デジタル教科書推進ワーキンググループの中間的な取りまとめに基づき、引き続き検討を行うということをまとめてございます。
 私からは以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございます。それでは、順に御説明を加えていただきたいと思います。
 まず、教育課程部会につきまして、武藤教育課程課長、よろしくお願いいたします。

【武藤教育課程課長】  教育課程課長の武藤です。資料3に基づきまして、御説明申し上げたいと思います。
 一度本分科会で御紹介を申し上げておりますので、ポイントだけと思いますが、1枚めくっていただいて、この中教審での学習指導要領の議論に先立って、2年間かけて有識者検討会で論点整理をしていただきました。これを基礎的な資料にしながら、次の次のページに移っていただいて、昨年12月25日に中教審の総会で諮問をさせていただいて、具体的な議論がスタートしたと、こういう立ち位置になっております。
 大きく左上、子供たちを取り巻くこれからの社会の状況と、右上の現在の学校現場の状況ということをレビューしながら、大きく3点、主体的に学びに向かえていない子供の存在があるということ、それから指導要領の理念と趣旨の浸透が道半ばであること、また、デジタルがまだまだ道半ばであると。こういう中で、右下ですけれども、こういった課題に真摯に向き合う上で、先生方に過度な依存はできないということで、負担への指摘に真摯に向き合いながら、次の教育課程を構想していくと、こういう建付けになっております。次のページ、よろしくお願いいたします。
 ここに主な審議事項が4点ございまして、今この審議事項に基づいて、教育課程部会の下に企画特別部会を設置して、既に2回議論をしているところでございます。非常に注目を浴びていまして、毎回1,000人を超える方々が傍聴登録をいただいて、非常に様々な反響がSNS等々でも見られると、こういう状況になっております。
 大きく審議事項一番上の、質の高い深い学びを実現して、分かりやすく使いやすい指導要領の在り方、ここを中心に今議論をしているところでありまして、知識の概念としての習得とか、深い意味理解とか、学ぶ意義とか、社会とのつながりとか、この辺りを踏まえて学習指導要領、抜本的に構造を見直していこうと、こういう議論をしております。
 その後ですけれども、例えば右上の多様な子供を包摂する柔軟な教育課程の在り方ということで、2つ目の丸ですが、先生方に余白を生んで、教育の質の向上に資する可能性も含めて、カリキュラム全体を柔軟にしていこうということ。あるいは、その次の次の丸ですけれども、不登校とか、特異な才能のある子供たち、なかなか今まで一つの教育課程では包摂が難しかったわけですが、教育課程上の特例をつくっていこうということ。
 さらに左下、丸の3でいえば、たくさんございますけれども、とりわけ情報活用能力の抜本的な向上ということで、AIへの対応、それからメディアリテラシーへの対応といったところですとか、その2つ下、デジタル・理数分野への学部転換を今やっておりますが、それに合わせて初等中等教育も見直していくことですとか、こういったことが盛り込まれております。
 また、4、右下になりますけれども、教育課程の実施に伴う過度な負担と負担感が生じにくい在り方ということで、指導要領と解説のみならず、教科書とか、入試とか、教師用の指導書も含め、トータルで見直していくという議論をしております。また、先ほどの情報活用能力に関わっていいますれば、4番の丸の4のように、情報技術、とりわけ生成AIのように変化が激しい分野で、10年に1回の改訂ではなかなか立ち行きませんので、そこをうまくやる方策も改めて検討していただくと、こういうことでございまして、これ以外にも様々なところに、働き方改革とか、先生方の負担、持続可能性というのは横串を刺しながら、トータルで働き方改革と新たな教育課程の両立ということを御検討いただくということでございます。
 私から以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 では、続きまして、教員養成部会について、後藤教育人材政策課長、御説明よろしくお願いいたします。

【後藤教育人材政策課長】  失礼いたします。教員養成部会の審議の状況につきまして、資料4でポイントを御説明させていただきたいと思います。
 教員養成部会につきましては、令和4年12月に、令和の日本型学校教育を担う教師の養成、採用、研修等の在り方について大きな答申をいただいておりまして、その答申の中で、子供たちの学びの転換に合わせた教師の新しい学びの姿、研修観の転換でありますとか、また、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成などなど、そういった改革の方向性をいただいておりまして、この改革の方向性に基づきながら、様々な取組を進めるべく、議論促進を図ってきたというところでございます。今画面で共有されておりますけれども、その中の例えば1つといたしましては、多様な分野の人材が、教員免許の取得にアクセスしやすいように、4年制大学において開設できる教職課程は、原則一種免許状だけであるところを、特定分野に強みや専門性を持つ学科等において、そういった強みや専門性との掛け合わせで教員養成を行っていきたいという場合には、特例といたしまして、4年制大学でも二種免許状の教職課程を設置することを可能とするといった制度改正を図ったところであります。
 それから2枚目にございますけれども、教師の学びの観点でいきますと、まず研修観の転換というところにおきましては、教職員支援機構におきまして、各地で行われる教員研修のこれまでの研修とは違う、新たなスタイルの教員研修の在り方について開発をいただいているところでございますが、それに加えまして、この教員免許更新制を発展的に解消した、新しい教師の資質保証システムとして、全国教員研修プラットフォーム、この構築、その運用ということに取り組んでいるというところがございます。こちらも今教職員支援機構に運用いただいているところでございますけれども、現在、この左下のところにございますが、2万5,000件以上の研修のコンテンツを掲載しており、また、全国72万人を超える教師の方に利用登録をいただいているというような状況でございまして、時間の都合で紹介できることには限りがありますが、こういった取組をはじめとして、様々令和4年答申でいただいた方向性を実現するべく、改革を進めるべく、教員養成部会で御議論いただきながら進めていただいたところでございます。
 3枚目でございますけれども、そういった状況も踏まえながら、さらにこの間も少子化が急進的に進んできているということですとか、あるいは新しい学びといったことも含めまして、教育課題が一層高度化してきている、また、多様化してきているという状況の中で、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成という、この改革の方向性を加速的に実現する必要性があるのではないかといった観点で、新しい諮問が12月に中教審になされたところでございます。この諮問を受けての議論が、今後、この第12期の中でも、一応この諮問を受けた議論についてもさせていただきましたけれども、引き続き、こうした諮問を受けた議論をしていく必要があるというふうに考えているところでございます。教師人材の質の向上と入職経路の拡幅という方向性の下に、この資料の下に3本柱で整理しておりますが、大学における教職課程の在り方や免許制度の在り方の見直し、また、丸2でございますが、教員の採用でありますとか、研修について、新しい仕組みについて考えていく必要があるのではないか。また、丸3でございますが、多様ないろいろな分野から、社会人をはじめ、そういった多様な人材が教職にもっと参入しやすくなるような新しい仕組みづくりというような観点での議論が引き続き必要と考えているところでございます。
 私からの報告は以上でございます。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、質の高い教師の確保特別部会につきまして、鈴木企画官から御説明をお願いしたいと思います。

【鈴木企画官】  失礼いたします。私のほうからは、質の高い教師の確保特別部会の審議状況等について御報告をさせていただきます。
 資料5-1を御覧ください。令和5年5月に文部科学大臣から中央教育審議会に対して諮問をさせていただきまして、1年以上にわたる御審議を特別部会のほうで行っていただきました。その上で、令和6年8月に中央教育審議会として答申を取りまとめいただきました。その概要が資料5-1になっております。
 何度も御報告しておりますので、ざっと御紹介いたしますが、第1章は現状ということで、学校教育の課題が複雑化・困難化する中で、結果として学校や教師の負担が増大してきている。教師不足の問題、教師のメンタルヘルスの問題、あるいは依然として時間外在校等時間が長い教師が存在するという現状を踏まえまして、我が国の教師を取り巻く環境の抜本的な改革が必要であるというのが第1章でございます。
 第2章、基本的な考え方でございますが、何か1つを取り出してということではなくて、3ポツにありますように、学校における働き方改革のさらなる加速化、指導・運営体制の充実、教師の処遇改善、これらを一体的・総合的に推進していくことが基本的な方向性として示されております。
 その上で、3章、4章、5章がそれぞれの改革の具体として整理をいただいております。例えば2ページ、働き方改革の加速化について申し上げれば、様々ございますが、1つは3ポツ(1)にありますように、全ての教育委員会における働き方改革の取組状況の見える化やPDCAサイクルの構築が不可欠であるといったような御提言、あるいは在校等時間の教育委員会ごとの公表も必要であるといったような御提言をいただいております。
 3ページ、第4章は学校の指導運営体制の充実であります。授業時数の軽減、あるいは学びの質の向上ということに向けて、小学校中学年においても教科担任制を推進する、あるいは、中学校においては不登校の急増等への対応のための生徒指導担当教師を配置、拡充をするといったような御提言となっております。
 第5章のほうが教師の処遇改善に参りまして、特に昭和49年人確法による処遇改善後の一般行政職への比較での優遇分の水準を確保することが必要といったようなことで、教職調整額を引き上げる必要があるといったような御提言等々をいただきました。
 こういったことを踏まえまして、答申を踏まえた上で資料5-3を御覧いただきますと、先般の特別部会でも御議論いただきましたけれども、教師の「働きやすさ」と「働きがい」実現プランということでお示しをしております。
 1ページが概要になってございますので、1ページで御説明いたします。この資料は令和7年度予算案に関することと、今月、通常国会のほうに給特法等改正法案を提出させていただいており、その内容に関することをまとめております。それらの中で、大きく働き方改革については、働き方改革実施計画の策定・公表、総合教育会議への報告、実施状況の公表を全ての教育委員会に義務づけるといったような法案となってございます。その上で、指導・運営体制の充実でございますが、これは令和7年度予算案で過去20年間で最多となる5,827人の教職員定数の改善ということで、来年度から新たに小学校教科担任制の拡充を4年生に導入すること、あるいは中学校の生徒指導担当教師の配置拡充等を実施していくこととしております。それから教師の処遇改善については、約50年ぶりとなる教職調整額の水準を、4%から令和12年度までに10%に引き上げるということで、法案を閣議決定、提出させていただいております。例えばですけれども、ここにありますように、教職10年目の先生が主務教諭かつ学級担任になった場合には、年収で約44万円の増となるということでございます。こういったことを一体的・総合的に進めることによって、長時間勤務の解消ということで、今後5年間で約3割、時間外在校等時間を縮減し、月30時間程度にまずは縮減を目指していくという目標をセットしております。
 詳細については割愛させていただきますが、特別部会の審議の状況としては以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、デジタル学習基盤特別委員会につきまして、御説明をお願いしたいと思います。デジタル教科書推進ワーキンググループの中間まとめにつきましては、初等中等教育分科会では初めての報告をしていただくということになりますので、少し時間を取って御説明をお願いしたいと思います。まず、寺島学校情報基盤・教材課長から御説明いただくと。その後、黄地教科書課長から御説明いただくという、この順でお願いしたいと思います。
 では寺島課長、よろしくお願いします。

【寺島学校情報基盤・教材課長】  ありがとうございます。それでは、デジタル学習基盤特別委員会の審議状況について、3件御報告を申し上げたいと思います。
 まず1件目、資料6-1を御覧いただければと思います。このデジタル学習基盤特別委員会は、今期の中教審で初めて設けられたものでございます。デジタル学習基盤に関わる様々な要素がありますけれども、それを俯瞰的に見て、横串を刺して推進をしていこうと、そういった趣旨で設けられた特別委員会でございまして、この資料6-1は、諮問に対する答申というよりは、このデジタル学習基盤特別委員会が発足して1年半ぐらいが経過した時点で、デジタル学習基盤に係る現状と課題を一旦整理しようということでまとめた資料でございます。
 資料の2ページ目が目次になっておりますけれども、この目次にございますように、第1章、第2章でGIGAスクール前後の状況を俯瞰した上で、第3章から個別のデジタル学習基盤を構成する要素について、それぞれ現状と課題をまとめております。そして4章以降で、情報活用能力の育成であるとか、あるいは現時点での学びの成果であるとか、あるいは学びに関連して校務DXに関する取組、こういったことを俯瞰的にまとめた資料でございます。その上で第7章、これまでの総括と今後ということでまとめておりますけれども、ここで少し御紹介をいたしますと、ずっと資料飛びまして、102ページのスライドまで少し飛んでいただきます。
 102ページのスライドの上の丸、太字のところでございますが、デジタル学習基盤の意義ということで、この特別委員会では以下3点まとめております。1つは、デジタル学習基盤というのは、1人1台端末やネットワーク、ソフトウェアなどの要素で構成される一連の学習基盤であり、多様で大量の情報を扱ったり、時間や空間を問わずに思考の過程や結果を共有したりするなど、情報活用の格段の充実を通じて、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を可能とするものである。そして、多様な子供たちにとって包摂的で、主体的で対話的で深い学びの一層の充実に資する学習環境を教師にとっても持続可能な形で実現するものであるというふうに整理をされております。その上で、この下の丸の一番下の2行でありますけれども、適切な指導計画や学習環境の設定、子供の丁寧な見取りと支援といった、学びの専門職としての教師の役割は極めて重要であり、不可欠であるということも併せて整理をされております。
 そして次のページ、103ページでありますけれども、2つ目の丸、「以上の通り」ということで、デジタル学習基盤の活用と学びの専門職である教師の役割が合わさることで、主体的・対話的で深い学びの実現を加速し、全ての子供たちを誰一人取り残すことなく、これからの社会を生きる資質・能力を育むことにつながっていくと、デジタル学習基盤の意義、そして学びの専門職である教師の役割ということを一旦ここで整理をしているところでございます。そして一番最後の丸でございますけれども、これまでも初中分科会での御議論、御紹介ありましたが、下から3行目にありますように、各種の教育課題に向き合う際には、デジタル学習基盤の存在を切り離して議論を行うことはできず、常にデジタル学習基盤からの視点を踏まえながら検討が行われるべきであるというふうに、現時点で取りまとめをいただいたところでございます。
 次に、資料6-2でございます。資料6-2は、次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループの取りまとめということでございますけれども、少し飛びまして18ページを一旦御覧いただければと思いますが、18ページがこの取りまとめの位置づけを少し示したものであります。下の右側であります文部科学省というところに、新たな方針を策定し新たな方針を踏まえた整備計画を策定するということで、文部科学省において学校のICT環境整備計画、これ具体的に申し上げますと、地方交付税を中心とした地方財政措置の計画をつくっておりますけれども、その計画を策定するに当たって基礎となる考え方をまとめていただいたのが、このワーキンググループの取りまとめということでございます。
 戻っていただきまして、2ページ目でございますけれども、3つ目の丸にございますように、GIGAスクール構想は学習観の変容を目指すものであり、機器等はそのためのツールであると。2行目、円滑なクラウド活用を前提とした1人1台端末をはじめとする学校のICT環境は、これまでどおりの指導や学習を単に効率化するための付加的な整備ではなく、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る上で必要不可欠な学習基盤である。これを学校のICT環境整備の基本方針とすべきということで御議論をいただきました。
 具体的には9ページ以降に、それぞれの項目について具体的な水準であるとか、留意事項であるとか、考え方ということを順次御提言をいただいたと。5の1からネットワークの整備、そして次のページ、5の2、学習者用端末、学習者用端末の利用環境等々、この後ずっと11ページ以降も続いていきますけれども、こういった各項目についてそれぞれお取りまとめいただきまして、先ほど申し上げたように、今般文部科学省として新たな整備計画を策定したと、こういった状況でございます。
 デジタル教科書に関しては教科書課長から説明をいたします。

【黄地教科書課長】  引き続きまして、教科書課長の黄地でございます。
 資料6-4、御覧ください。デジタル教科書につきましては、今御説明ございましたように、デジタル学習基盤の大きな一翼を担うものでございますが、このGIGAスクールの進展とともに、新たな学びということでいえば、次の学習指導要領を見据えて、デジタル教科書の在り方をどうあるべきかということで、昨年7月にワーキングを立ち上げていただいたということでございます。主査には堀田分科会長代理に御参画いただきまして、また、当分科会からも、奈須分科会長代理、坂本委員に御参画いただいております。7月の設置以来、これまで6回御議論いただきまして、前回の2月14日の会議で中間まとめを取りまとめいただいたところでございます。
 資料6-4はその概要でございますが、1ポツでは、社会におけるICTの急速な進展の中で、学びの在り方も変わってきたという趣旨を記載してございます。
 そうした中で、2ポツにございますように、デジタル教科書の現状としては、まず制度的な位置づけでございますが、現状は紙の教科書のページがそのまま端末で見られるというものでございまして、教科書に代えて使用できるという代替教材という位置づけでございます。したがって、本来の意味での教科用図書ではございませんので、使用義務、検定、採択、無償給与などの対象外となってございます。当面の間は紙と併用ということになっておりまして、その下の発行・活用状況にございますように、国からも、英語は100%の学校、算数・数学は約55%の学校に配布させていただいております。例えば英語は100%配布しているところでございますが、4回のうち1回、あるいは毎回の授業で活用されている学校は6割程度ということでございます。この辺りも、教員の使用歴や端末使用の歴に応じて、比例して年々増加しているという傾向が見られます。
 そういった中での活用の実態でございますが、お時間の関係もあるので細かくは御説明できませんけれども、おおむね聞いておりますのが、例えば子供たちが主体的に学びに向かうようになったと。そうした中で、先生の指導もより活性化する中で、主体的・対話的で深い学びなどが進んでいるという実態がございます。そうした中で、例えばその下の赤のところでございますが、子供たちにアンケートを取ってみますと、いつもデジタル教科書を使う子供は授業内容がよく分かったですとか、主体的・対話的で深い学びが取り組まれているといったようなデータが上がってきてございます。また、地域によっては、成績や学力が向上したという研究や自治体の例も多く見られるところでございます。一方、記憶定着につきましては、紙のほうが有利ではないかという研究成果もあるところでございますが、一方で、デジタル学習に慣れた子供たちを対象にした調査では、デジタル教科書と紙の教科書、それぞれ使って比較した結果、デジタル教科書は紙と同等の結果となったという研究もあるところでございます。一方、課題感として現場の先生から上がってきておりますのが、アカウント設定やフリーズ対応などの環境面に関すること、あるいはデジタル教科書をどのように効果的に活用すればいいのかといったような情報不足があるという課題が上がってきてございまして、この辺りは今後も引き続き取組を進めていくべき課題でございます。また、健康の影響について、例えば視力が低下するのではないかといったような御懸念もあるところでございますが、実際の授業では、例えば常に端末を40分なら40分張りついて見ているわけではございませんでして、実際は先生のほうを見たり、黒板を見たり、ほかの子供たちと議論したりですとか、そういった授業展開を図っているところでございますけれども、いずれにせよ、紙かデジタルかを問わず、長時間継続して近距離で注視することは避けるべきであるということが、これまでも専門家から御意見をいただいたところでございまして、それを踏まえてガイドラインで周知しているという状況でございます。
 以上のとおり、様々な効果がだんだん蓄積されている中で、今後のデジタル教科書の制度的な位置づけをどういうふうにすべきかということで、次のページを御覧ください。
 まず大前提として、基本的な方向性としては、新たな学びの実現には、教育現場の創意工夫を最大限満たす環境が重要であると。したがって、様々なニーズに対して、関係者の納得と共感を得ながら対応できる柔軟な制度設計が適当ではないかということを前提に、いろいろ御議論いただきました。
 その下の制度的位置づけを御覧いただければと思いますが、先ほど申し上げましたように、教科書代替教材ということでスタートする中で、様々な知見が蓄積してきたところでございます。もう既に制度化から6年たってございますが、前回、これまでのワーキンググループの中でいただいた意見としては、現在教材でございますので、無償給与の対象ではないということから、今後は教科用図書として位置づけて無償給与の対象とすべきだといった意見ですとか、紙の教科書と全く同じ内容が画面中そのまま見られるというのが現在のデジタル教科書でございますけれども、そういった要件がデジタルならではの可能性を狭めているのではないかと。例えば紙の教科書でいうと、同じページの中に問題と答えがそのまま両方とも書いていますが、これがデジタルの特性を生かすとすれば、少しずつページ内の情報が表示されるといったようなことも期待されるんじゃないかみたいな御意見も、ワーキングの中であったところでございます。そうした中で、教科書の形態としては、紙だけでなくデジタルも認められることを制度上明確化してはどうかと。その結果として、デジタルの場合であっても、検定、採択、無償給与の対象になるということでございますが、さらにはそれを全国一律に、例えば特定の教科でデジタルに一本化するといった全国一律の対応ではなく、様々な選択肢を用意するという方向で選べるようにしたらどうかといったようなことで、おまとめいただいているところでございます。こうした選択肢が用意されることによって、かえって教育格差が出てしまうのではないかといったような指摘もあり得るところでございますけれども、今回示された方向性につきましては、学力など教育格差が出ないようにするためにも、全国一律の対応ではなく、現場の関係者が納得感ある形で主体的な取組を促す中で、現場の実態を踏まえた多様な対応を可能とするための選択肢を設けようという方向であると理解しているところでございます。
 また、ともするとデジタル学習基盤を前提としながらも、デジタルだけで授業が行われてしまうのではないかといったような御懸念もあるところでございますが、このワーキングのまとめの中では、紙とデジタルのよさを取り入れた学習環境が大事であるということで、この赤のところでございますけれども、教育課程・授業全体としては、紙・デジタル・リアルを適切に組み合わせてデザインするということが重要であるということが指摘されております。すなわち、紙かデジタルかといった二項対立の陥穽に陥ることなく、どちらのよさも考慮しながら適切に取り入れていくという考え方に立つべきではないかと。また、そういった御議論をいただいている中で出てきたアイデアとしては、一部が紙、一部がデジタルで作られたような、言わばいいとこ取り、それぞれのいいとこ取りをしたようなハイブリッドな形態の教科書も認めてはどうかというアイデアもいただいたところでございます。そのイメージとしては、本文の中には記載させていただいておりますが、例えばそのワーキングの発表や意見で出てきたイメージとしては、教科書の内容のうち本文部分は紙部分に掲載して、例えば発展的な内容とか、コラムなどについてはデジタル部分に掲載してはどうか。あるいは、英語であれば長文は紙部分に掲載して、音声やチャンツなどはデジタル部分にする。算数・数学であれば、図形などのシミュレーションなどはデジタル部分にするといったようなイメージも御紹介いただいたところでございます。ただ、これらはあくまで一例であって、今後の新しい学習指導要領の議論なども踏まえて検討されるものであるという方向で整理されております。
 また、そうした中で、デジタル教科書の範囲はどの部分なんだろうということも御議論いただいたところでございます。すなわち、デジタル教科書の利点の1つとしては、様々なデジタル教材と端末上でつながり合うということが考えられるところでございますが、その場合、そのデジタル教科書とデジタルの学習教材の境目をどうすべきかということも論点となってございます。ここのまとめの中では、デジタル教科書の部分は、学習指導要領に基づく必須の内容が、活字や図表などによって系統的・組織的に記載されたものが該当するということで整理されております。また、教科書全体の分量の問題についても御議論がございました。これまでも様々な会議で御指摘いただいたところではございますが、現場の感覚として、教科書の内容を網羅的に教えないといけないという考えがあって、それが現場に負担感があるのではないかと。そうした中で、意識改革に向けた取組と併せて、指導要領の検討を踏まえながらも、教科書、ここでいう教科書というのは紙の教科書もデジタル教科書も入りますが、全体の内容や分量を精選することが望ましいということが示されてございます。また、その際、今の紙の教科書の多くにはQRコードがついてございます。そのQRコードの先のコンテンツのデジタルコンテンツは、教科書ではなくて、あくまで教材という位置づけになってございますが、これらが実際の採択の現場では大きな判断要素になっているような実態も見られるところでございます。その場合、先ほどのハイブリッドの教科書の議論にも関連しますが、今後はQRコード先のコンテンツは学習指導要領の指導事項が系統的・組織的に記載される、言わば教科書の一部として認められるものを掲載してもらおうということで考えがまとめられております。
 大まかには大体以上申し上げたとおりでございますが、実際どのような学年のどのような教科でやるべきかにつきましては、さらに今後の学習指導要領の議論を踏まえながら、教科特性、児童生徒の発達段階、学校の実態に応じた検討が重要であるということでまとめてございます。
 次のページ、御覧ください。今後の導入時期でございます。もともとのこのワーキングの経緯が、次の学習指導要領を見据えてということでございますので、遅くとも次期学習指導要領の実施に合わせて、それに対応したデジタル教科書、あるいは紙の教科書が配布されるようにということが今後のスケジュール感でございます。さらには今後の推進方策ということで、新しい教科書が実際現場に行き渡るまでは、「当面の間」ということで現在の併用を継続することになりますが、その間にも様々やるべき課題がございます。具体的には3ポツに書いてございますように、「当面の間」の推進方策としては、例えば教員の指導力向上ですとか、通信環境の改善など様々ございますので、こちらはしっかり進めなければいけないと。さらなる論点としては、その下にございますように、検定、採択、発行、供給、著作権、あるいは教科用特定図書、様々な論点もございますので、今後の最終まとめに向けてさらに御議論いただくことになっております。
 なお、この中間まとめの後にパブリックコメントなども行う予定でございますので、こうした様々な御意見、あるいは初等中等教育分科会でいただいた御意見なども参考にさせていただきながら、さらに御議論を進めていただければと考えております。
 説明は以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。それでは、最初に申しましたように、皆様からコメントを頂戴したいと思います。本日は25人の委員の皆様が御参加いただいています。予定どおりの時間に終わろうとしますと、お一人大体2分ぐらいということになるのですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 それで、名簿順にお願いしたいと思っているんですけれども、金丸委員が少し早めに御退室にならないといけないということですので、まず金丸委員から御発言いただいて、その後、名簿順でお願いをしたいと思います。
 金丸委員、よろしいでしょうか。

【金丸部会長代理】  ありがとうございます。この後、先約があって、退室いたしますので、先に発言させていただきます。
 まずは全ての委員の皆様の活発で真摯な御議論をしてくださったことに感謝申し上げたいと思います。今日の御説明は、全体としておおむね違和感もなく、納得感も高かったわけでございますが、私はICT回りが専門ですので、そのことと、それから今日多様性と共通性とかという言葉、それから普通とは何かみたいな話があったので、ちょっとその辺りに触れたいと思います。基本的に社会に出たら、平凡では付加価値が取れませんので、本当なら普通というのは最悪とは言わないまでも、特徴のない人物像をつくっていくようなことにもなるので、普通という言葉はあまりよくないなと。我々ビジネスの中で普通という言葉は使わず、付加価値と言いますから、多様性という定義も多様な個性だと思います。
 ICTに関しても、これも共通と、多様な工夫みたいなものが、キーワードになるんじゃないかなと思って聞いていました。といいますのも、先ほど創意工夫をそれぞれが自由に行ったら、何か格差が広がることになるんじゃないかという懸念もあるのではというようなことですけれども、基本的にICTというのは、最低のレベルというか、最低クリアしなきゃいけないスタンダードレベルをアップするというのが一番貢献できることだと思います。全国津々浦々で、日々教育で格闘なさっておられる先生方の働き方とか、負荷を軽減するという意味でも、このスタンダードのレベルアップをするというのが、まずファーストプライオリティー。その後は、ポジティブに言うと、現場力を信じて、現場の創意工夫が自由自在に出てくるようにしたほうがいいと。これはトップレベルがさらに上がるので、ボトムアップとトップレベルをアップするということを両立をさせるということがICTの一番の威力だと思います。今後の2025年以降の在り方にも、そういう発想でぜひ御検討いただければと思いました。
 それから学習指導要領が10年に一度というのは、要するに普遍的な分野と、それから変化の激しい分野と、やっぱり大別をする必要が私はあるんじゃないかなと思います。変化が激しいと定義をされた分野については、適切なプロセスを経ながら、タイムリーに、随時に、極論を言えばリアルタイムに近い形で、その変更をしていくべきじゃないかと思います。特にICTの環境を利用すればするほど、セキュリティー分野というのはリアルタイムでリスクが変わってまいりますので、そういう意味では普遍的な分野と、それから変化の激しい分野というのを分けるべきではないかと思います。
 以上でございます。先に発言させていただきましてありがとうございます。御配慮に感謝します。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。金丸委員、お世話になりました。ありがとうございました。

【金丸部会長代理】  この後、もう少ししたら退室しますので、申し訳ございません。

【荒瀬分科会長】  どうぞ。ありがとうございました。
 青海委員、お願いいたします。

【青海委員】  全日中の青海でございます。12期には後半から仲間入りさせていただきました。各委員の皆様には、真摯に多くの時間を費やした、熱いご議論に感謝申し上げます。お疲れさまでございました。
 今後の審議の前提で、大切にしてもらいたいことは、審議のプロセス、進捗状況が見えること、子供たちの意見を踏まえられること、12期の取りまとめ、それから有識者検討会による、論点整理を大いに活用させていただくことでございます。
 さらに、今後の審議の議論に当たっては、分かりやすく使いやすい、また多様な子供を包摂する学習指導要領、デジタル基盤を前提とした学びの考え方、教育課程の実施に伴う負担感が生じる全体構造を整理し、教師の余白を生み出す手だて、学習評価、特別支援教育、幼児教育の充実など、また教員の養成・採用・研修のさらなる充実、優秀な人材の確保など、特に重要なことだと考え大切にしたいと思っていることです。
 今後このようなことを踏まえ、私自身も教員養成部会ですとか、教育課程企画特別部会などの議論に関わらせていただきたいと思っております。12期の皆様の御尽力、中学校現場の状況を踏まえながら、私に課せられた役割を精いっぱい努めていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。

【荒瀬分科会長】  青海委員、ありがとうございました。
 それでは秋田委員、お願いいたします。

【秋田委員】  学習院大学の秋田喜代美でございます。第12期の委員の皆様には大変お世話になりまして、こうした議論に参加させていただいたことをありがたく思います。と同時に、これほどコロナ後の新たな学習観や教育観の転換で、具体的に実現の施策というものがこれほど明確に具現化されてきた期はあっただろうかと思うほど、充実した内容が展開されてきたと思います。このことを御関係の事務局の皆様に、心から感謝を申し上げたいと思います。
 そして私自身が考えますのは、やはり公教育の中で、今日も義務教育ワーキングや高等学校の教育ワーキングが発言をされているんですけれども、その中には、幼小のつながりであったり、それから、義務教育のほうでも高等学校のほうでも、その間のつながり、また高等学校のほうでも、高大接続の視点も入っていまして、今後さらに、そのワーキングが個別ではなくて一貫した形で、この議論がなされていくことが、極めて1つの同じ方向性の教育の哲学を打ち出していくという上で重要だろうと思います。特に今期は多様性ということが議論され、それは一人一人の子供や教師が自分を生かしていくという点が、明確に様々な政策で打たれたところが大きなところだと考えております。
 私自身は教員養成部会のほうに関わらせていただき、養成・採用・研修のほうでも新たな議論が進んでいるところです。今日デジタル教科書のお話を初めてここでは伺っているんですけれども、これが実際に養成・採用・研修の今の変革の議論と、ここにさらにデジタル教科書がこういうふうに入っていくということを考えますと、かなり先生方にとっては負担感が大きくなっていく部分もあるかもしれないと思います。この辺りを急速なピッチでアイデアが出されていくと同時に、現場でもう追いつけないよというようなことがないように、慎重に納得感や共感を得られるような形で分かりやすく提示をしていただくこと、ステークホルダー皆で考えていくということが、これから早く動く時代に重要なことなのではないかと考えております。
 そして最後に、義務教育ワーキングのほうでも、実際に学校に行って子供の声や教師の声を聞くことができました。この12期の間にこども基本法が成立しています。今後さらに子供や当事者の声を大事にした審議ということが、第13期におきましてはさらに充実していくことを願っているところでございます。
 大変お世話になりまして、誠にありがとうございます。私からは以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは阿部委員、お願いいたします。

【阿部委員】  全国公立小中学校事務職員研究会の阿部です。これまで2年間、第12期の皆様には大変お世話になりました。そして、このような貴重な機会をいただきましたことに、本当に心から感謝いたします。ありがとうございました。
 私からは、今日御報告のありました義務教育の在り方ワーキンググループの審議のまとめについての感想を述べさせていただきながら、今期の振り返りとさせていただきたいなと思っているところです。
 釈迦に説法ではありますけれども、教育の担い手の中心は確かに教師ではありますが、学校は子供と教師だけがいれば成り立つものではなく、チーム学校の推進が言われているように、よりよい学校教育のためには、教師以外の職種が担っている役割も重要と考えています。
 今回の義務教育の在り方の審議のまとめを読ませていただきましたが、チーム学校という文言は、私の確認できたところでは、残念ながら1回出てきたのかなということで、教師という表現が多く感じた次第です。学校がチーム一丸となって子供たちを育てていくという意味で、教職員という表現を今後は使ってみたらどうかなと思っているところです。
 まとめの中でも言われているように、教材教具、施設設備、保健管理、安全管理など、様々な側面からその質が法的に担保されなければならないことや、学校教育の本質的な役割として安全安心な居場所づくりであること、それからまとめの「おわりに」では、全ての子供たちが安心して学べる学校づくりというのが記述されておりまして、教師による指導のほかに、学校の諸条件整備が重要であることが確認されております。そういった業務を行っているのが、私はじめ学校の事務職員でありますが、ICTや教材教具の整備、それから安全で快適な学校の施設整備の確保、様々なスタッフ職などの任用管理と調整、学校と地域との連携・協働の推進、様々な情報管理と提供、適正な学校予算の執行や管理の会計など、人、もの、金、情報等が必要となりますけれども、こうした教育の条件整備を担っているのが学校の事務職員です。
 一方で、まとめの9ページから10ページにかけて、統合型校務支援システムにおいては90%以上の整備率とありましたけれども、事務職員が担っている校務系や、自治体との連携が重要となる学籍や教科書事務、就学援助といった業務のICTの整備はまだまだ不十分であり、自治体の財政力での格差も出てきていると感じておりますし、まとめの6ページの丸3つのところでは、コロナ対応で学校教育の現場を担う教師や教育委員会等々とありますが、GIGAスクール構想を含めて、感染症対策における諸条件整備に学校の事務職員もかなり奔走いたしましたけれども、教師というくくりで表現されますと、学校事務職員のモチベーションにも大きく影響するかなと感じているところです。
 また、学校の働き方改革の推進のために、日々創意工夫の下業務改善を行い、先生方が働きやすい環境づくりに励んでいる事務職員が数多くおります。こうした事務職員が担っている学校の諸条件整備は、子供たちの学びの条件整備へと直結するものでありますので、その重要性についても必要だったかなというのが、ちょっと率直な感想を持っているところです。
 私たち事務職員も学校への貢献度を高めていきたいという思いでこれまで述べさせていただいておりますし、ほかにも多くのスタッフが学校にはおり、様々な業務を行い、学校を先生方と一緒につくり、子供の学びを支えたいと思っております。ぜひ今後、具体の施策を行う際には、学校で条件整備を行っている事務職員の重要性や、人材育成などにも御配慮や御検討をいただきたいと思っているところです。
 私からは以上となります。本当に2年間お世話になりました。力不足ではありましたが、大変貴重な機会でした。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは石川委員、お願いいたします。

【石川委員】  石川でございます。私はこども教育宝仙大学の教員で、それから臨床心理士、公認心理士という立場から参加をさせていただきました。後半からの参加で、先ほどの御説明を伺っていて、本当にたくさんの議題が扱われ、また現代的なテーマがもう本当に盛りだくさんであるということを改めて理解いたしましたし、それに関わらせていただいて、大変ありがたい機会をいただいたと思っております。
 それで、やはり共通性、多様性ということがございました。困難化・複雑化ということもございました。それから、主体的な学びとか、また、そういったことの中で、やはり幼児教育から小学校への接続とかといういろいろなテーマもありますけれども、本当に、やはり主体的な学びができる子供に育てていくためには、幼児教育時に非認知能力とか、そういうものをしっかり育てて学ぶとか、人と関わるとか、少し我慢して頑張るとか、いろいろなことをして、そして環境に働きかけて、その中で本当にそういう姿勢を学びながら、またいろいろなことに、学業に関わっていく、そういうことがすごく大事なんだろうなと思いますから、やはりこの教育を縦軸に見ていくということの重要だなと改めて思ったところでございます。
 また、私は心理の立場ですので、この多様な専門性を有する質の高い教員集団ということで、本当にそう思います。今、会議の中でも発言させていただきましたが、いろいろ不登校の問題、いじめの問題、いろいろなところで、もう本当に各先生方は様々な、いろいろなことをこなす中でも苦労されていて、そしてそれが早期退職につながるなんていうこともあるわけです。ですから、チーム学校、そしてまた、情報共有はするんだけれども、その後の行動連携といいますか、役割分担というのが、まだまだちょっとそのチームとして難しかったかなみたいな例もありますので、そういったところを、やはりさらにそういったことが進むように、教職課程の在り方であるとか、それから強み、専門性をまた醸成していくということがすごく大事だろうなと思っております。
 ICTとか、そういうことが進む中で、また一方で本当に非常に地道な活動というのもございますので、私も今後、特に教員養成に関して、少し自分なりに役割が果たせればと思っております。本当にこの2年間ありがとうございました。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは岩本委員、お願いいたします。

【岩本委員】  岩本です。ここまで本当にありがとうございました。12期を振り返って、13期に向けて引継ぎということで、3点ほど簡潔にと思います。
 1点目は審議のプロセスのところですが、ほかの委員の方ももう言われていましたけれども、審議において、やっぱり議論のプロセスの見通しを持ちながらの見える化というところだとか、あとは今回もオンラインで参加させていただいていますが、デジタル基盤というところを、この審議のプロセスにおいてもより徹底的に効果的に活用していくという点、それと、現場に行って、特に当事者の子供や生徒の声を聞くと。私自身も不登校になっている生徒さんたちの声を、オンラインも含めて直接聞くというような機会というのは、非常に審議の中でも有益な機会だったと思いますし、そういったところは引き続き13期においても、設計、デザインしていただけるといいのかなと思ったというところはプロセスに関してです。
 2つ目が、審議をする際に、やっぱり接続を意識するということが非常に重要だなというのは振り返って改めて思います。例えばですが、中高、中学校、高校の接続の部分、高大の接続、あとは市町村と都道府県の接続とか、学校教育と社会教育とか、こういう、どうしても中身の議論に入っていけばその中へ中へと行くんですけれども、その回りにあるものとの接続を議論において常に意識できるような審議のありようというところが、非常に重要な議論設計のポイントになるなというところが、12期やらせていただいて見えたところですので、13期もそういった視点持ちながらの議論設計されるといいのかなと思います。
 最後3点目が、ちょっと大きな話になるかもしれませんが、12期になくて13期に持ったほうがいいのではないかと思う論点というか、今まだ出ていない観点というところでありますと、公私の役割をどう考えていくのかと。日本の公立と私立の関係性のところです。特に昨今、高校においての無償化というような話が出ています。審議されている中で、高校自体が準義務教育のようになっていくというか、そういった中で、公立、私立、公私のこれからの役割だとか、関係性をどう考えていくのかというのは、非常にこのタイミングで重要なポイントになってくるかと思います。これ公立高校はやっぱり生徒数が多い、しかも学校が集まっている都市部だけではなくて、私立高校がないような離島、中山間とか、過疎地域、条件不利地域とか、そういったところにおいての教育機会の確保とかやっていますし、例えば農林水産とか、工業といった産業人材の育成だとか、そういった、公立高校がやっぱりこの日本の中で担っている役割というところ強くあるかと思います。一方で公立高校、校舎も設備も古いですし、教職員定数の改善も長らく現場においては改善されていない。使える学校の運営費も非常に乏しいというひどい状態の中で、教職員の獅子奮迅の献身的な努力で支えてきているというのが、もう公立高校の限界に来ているところでありますが、こうした中で、やっぱり今後イコールフッティング、双方が対等の立場で切磋琢磨とか、健全な競争ができるように基盤や条件を同一にするという、このイコールフッティングの考え方なんかも、今後就学支援金の議論を受けて、やっぱり改めて考えていく必要あるのではないかと。
 例えば公立高校、年間11万8,800円の授業料とか、支援金に対して、これ私立が今後45万とか、4倍近くになったときに、例えば公立高校の授業料なぜ11万が上限なんでしょうかと。私立と同じように45万程度まで授業料とか、上限額が同等にできるのであれば、公立高校の施設設備だとか、人的配置だとか、そういったところも質を大きく改善して、私立と切磋琢磨しながら、日本全体の教育の質の改善にというところにもなるかと思いますし、こういった、公私の格差が、今非常に起きてきていますけれども、そういったところを改めて考えていく。
 最後ですけれども、公立・私立は健全な競争ということだけではなくて、やっぱり今後であれば役割分担やすみ分けとか、もっと言うと連携・協働ということを考えていく必要があるのではないかと。少子化が加速する中で生徒を奪い合うという発想だけではなくて、公立・私立がその強みを生かし合いながら、力を合わせて日本の教育をよくしていくというような方向性に向けて、今回の高校無償化の議論が一過性の政治的な話で終わらせるのではなくて、このせっかくの機会に、今後、本質的な高校教育の在り方とか、公私の在り方というところで、令和の時代に向けたアップデートというところ、次の13期、本当にいいタイミングだと思いますので、こういった論点なんかも踏まえて議論していただけるといいのかなと思います。
 すみません。長くなりました。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございます。
 それでは植村委員、お願いいたします。

【植村委員】  失礼しました。全連小の植村でございます。まずは大変お世話になり、ありがとうございました。
 さて、この12期は、日本の教育がスピード感を持って大きく動いた、極めて大きな節目、転換点となったというふうに全連小としては価値づけております。その中で、全連小を代表して、全国約1万8,000を超える小学校長、また現場の生の声を国に届けることができ、本当によかったなというふうに感謝申し上げます。加えて、そういった様々な校長の声や現場の声を皆様にしっかりと受け止めていただき、答申であるとか、施策、また予算に反映していただき、改めて心より感謝申し上げます。
 最後に、今後に向けてということで2点お話をさせていただきます。
 1点目です。引き続き学校が元気になるように、例えば、教師の働きやすさと働きがいを大事にするなど、さらなる推進、強化をお願いしたいと考えております。
 2点目です。今、学校現場、社会全体が一番関心を寄せているのは、次期学習指導要領改訂でございます。次代の学校教育の夢や希望につながるようなものになるよう期待しております。
 2年間本当にありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 では内田委員、お願いいたします。

【内田委員】  全国高等学校長協会、都立三田高校の内田でございます。本日もありがとうございます。12期の委員の皆様の活発な御議論に対して感謝申し上げるとともに、将来像を明確に取りまとめていただいた文部科学省の事務局の皆様に感謝申し上げます。
 さて、多様性の中で他者を認め、自らを伸ばすことにより、自己実現を図ることの大切さ、そして、ポストコロナの中での共感を実現するために、コミュニケーションを今後とも大切にすることの大切さを改めて感じたところでございます。引き続き、生徒を主語にした学校教育の充実に、学校として、また教員として取り組んでまいりたいと思っております。
 ぜひ今後とも、教育に対する、そして学校に対する財政的な御支援と、社会からの投資を期待しております。どうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは続きまして、大関委員、お願いいたします。

【大関委員】  全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の大関でございます。この間、2年間弱になりますが、子供たちの多様性への対応をしっかりと踏まえながら共通性を検討されるという方向で、皆様方、様々な部会等も進めていただいていることに非常に感謝申し上げます。
 引き続きまして、特別の教育課程についての在り方ですとか、あるいは、さらなる充実への環境整備に向けた工夫が今後とも深められることを強く望んでおりますので、特別支援教育の充実を望む特別支援学級や通級指導教室、そういった現場の考えが取り残されてしまうことがないよう、何らかの形で、また現場の声をお届けできればと考えております。どうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは岡本委員、お願いいたします。

【岡本委員】  青森県にございます千葉幼稚園の園長をしております岡本でございます。
 初めに、文部科学省の皆様には、日頃から資料の御準備から会議の運営に関しまして、大変丁寧にしていただきましたことに感謝を申し上げたいと思っております。また、このたびの資料の中には、初等中等教育分科会の機構図も加えていただきましたので、全体が見えまして、大変ありがたく思いました。
 今思っておりますことは、未来の日本の教育を考えるに当たって、これまで以上に教育現場では、デジタル社会の中で生き抜く子供たちの健全な生活を守ることの重要性を感じております。人間の基礎を培う幼児教育の中では、直接体験を多くして、様々な体験をしながら人と人とが関わることを通して、その楽しさや喜びを通して心を育てること、また同時に、デジタル社会を生きる子供たちを支える親、家庭教育、家庭をしっかり育てること、いわゆる家庭教育と地域社会教育が、これまで以上に何か目に見える形で多くの方にお示しできるような、そんなことをしなければならないと強く思った次第でございます。
 いろいろお世話になります。ありがとうございました。以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは柿沼委員、お願いいたします。

【柿沼委員】  学校法人柿沼学園、柿沼です。12期、本当にどうもありがとうございました。このような発言の機会をいただいて、大変感謝しています。
 その上で13期に向けてということで、大きく2点、まず1つ目は、幼児教育現場に携わる立場から1点、今回義務教育の課題等出てきましたけれども、前回の会議でもあったように、この重大事案の低年齢化などは、学校教育、義務教育のスタートとして始まっているわけではなくて、その前の生活、幼児教育現場であったり、家庭や保育所等の保育現場での課題がそのまま上がってきているものであるということだと思っています。その上で、やはりここというのは社会課題を地域と学校という横の関係だけではなくて、子供の発達を考えた縦の関係、幼児教育現場や家庭、その前の家庭と関わる関係者との連携やその強化、また課題の意識の共有化などを図っていかなくちゃいけないのかなと思っています。
 また、子供の力や主体的な力ということからも考えていくと、やはり幼稚園の教育要領や保育所保育指針といった中で重要とされている集団での関わりの中で育つ力を大切にし、その周知とその力を育むための連携というのを深く考える必要があります。そして教育行政を中心に、幼稚園、こども園や保育所といった幼児期の育成と、児童期の育成というものが繋がっていることを意識して、その両者が連携協働して行うとともに、その共通認識を図っていくということが必要なのかなというふうに考えています。
 ここでの義務教育の中核である学校の役割にもあるように、学校生活において他者と関わりながら共に学び、人間性を涵養するという言葉は、多分自他をはっきりした幼児期のところから重要になってくると思いますので、この辺りを深めていくことが、今の学校現場における課題の解決には近いのかなというふうに、まず1つ考えます。
 一方で、児童育成支援拠点や学習支援等、私自身の難病を抱えて不登校になった子供を持つ親の立場からいいますと、学校外のところの配慮というのは非常に今回の会議でもありまして、ICTだったり、オンラインであったりということで、ここは13期に向けて強く望みたいかなと思っています。やはりそこで生活する子たちが、どうしても学校に通えない子たちに、今学校現場における様々な質の高い教育が行き渡ることが、この国の社会における子供たちの育成には重要かと思っていますので、学校現場と同じように、それ以外で生活する子供たちの生活を安定させるような配慮が今後必要かなと思いますので、そこは強くお願いしたいと思います。
 以上2点です。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは貞広委員、お願いいたします。

【貞広委員】  千葉大学の貞広と申します。大幅に遅参いたしまして、大変失礼いたしました。第12期、大変お世話になりました。
 今日、第12期の中央教育審議会の機構図がお示しされていますけれども、もうどれも非常に重要な部会で、それぞれ非常に重量感のある御報告を出してくださっているんですが、私はやっぱり個人的には、今期は質の高い教師の確保特別部会と、それに先立つ論点整理の部会に、自分のリソースは最大限注力していたと思っていまして、ここを非常に重要だと思っています。昨日の教育課程企画特別部会で、石井委員が今後の教育課程は公正と質とフィージビリティー、このトライアングルをどのように実現するかということが大事だとおっしゃっていたんですけれども、まさにこのフィージビリティーに当たる部分が、質の高い教師確保特別部会で最終の答申としてお出ししたものになります。とかくこの物事は、文部科学省さんが人を増やしてくれないからとか、学校がちゃんとやらないからとか、教育委員会がサポートしてくれないからだとか、誰かがやってくれないからできないというような議論にもなりがちですけれども、御承知のとおり、今回文部科学省さんのほうで投げてくださっているボールは、恐らく現状最大限のものを投げてくださっていると思います。ぜひ現状最大限御努力いただいて投げていただいているこのボールを教育委員会や学校で生かしていただいて、フィージビリティーの土台を今の学習指導要領、さらに次の学習指導要領の定着に向けて生かしていただきたいと強く思います。
 今後に向けてですけれども、ちょっとぼんやりしたというか、抽象的な話になりますが、2つこういうことあったらいいなと思うことをお話ししたいと思います。それは議論のスタンスとか、トーンとして、今これが足りないから何か追加しなきゃという欠損モデル的な考え方とか、量をたくさんすればいい、網羅すればいい、それによって質が担保されるという、こういう思考をぜひ脱却した議論にしていただきたいなと思っています。それによって余白や柔軟性や包摂が生まれてくると思います。
 また、そもそも確かにいろいろな問題もありますし、特に学校に行かない子供たちがこれだけたくさんいるということは、一刻も早く何らかの状況の改善というか、情報の転換が必要だとは思うんですけれども、世界的に見ると、これだけの公財政支出で一定以上の学力達成を上げて、これだけ格差が少ないという、日本の教育はそういう意味を持っているということを、もっとこういう教育村の我々だけではなくて、社会にももっと知っていただいて、これだけうまくやっているんだから、じゃあもっとうまくいくには私たちも何ができるかという思考を持っていただければと強く思っているところです。そういう意味でも、欠損とか、量と網羅とか、そういう議論の思考は控えて、もう少し元気が出るような、植村先生、元気が出るとおっしゃいましたけれども、新しいいいものをつくれるような、元気が出るような議論をしていただければと思ったところです。
 雑駁ですが、以上とさせていただきます。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは澤田委員、お願いいたします。

【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田です。約2年間、本当にありがとうございました。私自身は初参加でしたが、審議の内容は、元教員としての希望を持てるものや世論とともに考えたいようなことが本当に多くて、先生たちや世の中にしっかり届けばなと願うことがとても多かったです。
 その意味で、次回中教審への提案としては、現在教育課程企画特別部会、参加させていただいていますが、そちらでもやっているような、例えば先ほど出ましたように、先の日程まで公表して傍聴を盛り上げ、共に考えるような、盛り上げるようなことをしていただけたらと思っています。教育課程企画部会はまだ2回目ですけれども、先生や保護者の反応からは、既に私も効果を感じているところです。議事録は出るんですけれども、それにとどまらずに積極的に開いていくようなことをお願いしたいなと思います。
 もう1件です。義務教育の在り方ワーキンググループ審議まとめにもある、日本型学校教育の強みと弱みについてです。強みは、全人的教育が国際的に評価されているとか、教師による価値づけで資質・能力を育成しているといったことで、弱みは、過度な同調圧力とか、学習の自立を損なっているんじゃないかとか、統制や管理、子供の幸福度の低さとなっています。強みと弱みは入れ替わるということも記載してありましたが、それも含めて、元教員としても思い当たることばかりでした。特に教師による価値づけで資質・能力を育成しているという点において、強みが弱みになるという現象が起きているのが全国的なことだと感じています。全国の保護者の方々からは、このことについて我が子に関する悩みの声を多く聞きますし、また先生方からも葛藤の声を多く聞いています。また、普通学校の教員を辞めた人たちから少なからず出てくる意見として、教員当時は自覚していなかったけれども、当時は成長ばかりに注力して、まずは一人一人の違いを受け入れるという当たり前のことを後回しにしていたというようなものもあります。日本型学校教育の弱みを人権の観点で改めて見てみると、どれも子供の尊厳に関わるような重大なことだと思います。強みも転じれば人の尊厳に関わるようなことになるという認識が極めて重要です。その上での指導や制度であるということを常に意識しながらの審議と、そして、そうした現場の意識も醸成するような開かれた審議会を進めていただければと強く願っています。
 2年間、大変ありがとうございました。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 では白井委員、お願いいたします。

【白井委員】  12期の充実した議論に参加させていただいて、本当にありがとうございました。
 不登校児童生徒が34万人に達したという状況の中で、例えば多様な学びの場やホームスクーリングの学習内容を成績に反映することが可能になるとか、具体的な方策がこの間においても進んだということについて意義が大きかったと考えています。部会とか、ワーキンググループでの議論を含めて、あらゆる議論が教育機会を得られない子供をゼロにするというところにつながる重要な議論だったと感じています。
 また、その議論を裏づけるものとして、現場に伺って子供たちの意見を聞くという機会を得られたこと、大変意義深い機会でした。関係各位の御尽力に心から御礼申し上げます。
 次の段階としては、これらの施策をいかに速やかに現場に実装するかが肝要という点においては、皆様異論は極めて少ないところかと捉えています。特に、第146回の分科会でも言及しましたように、経済的理由によって就学困難となっている児童生徒の保護者に対する就学援助制度の対象に、フリースクール等の民間施設における学習も加えるということで、経済的な背景にかかわらずに不登校児童生徒の自立支援を担保することが大変重要だというふうに考えています。2016年に成立した教育機会確保法の内容、理念がなかなか現場にも社会にも浸透しないということに関しては、現状、この法律が理念法にとどまっていて、予算化されなかったということが非常にクリティカルな原因としてあるというふうに考えております。そこから10年たとうとしている。また、20万人以上不登校児童生徒の数が増えているという現状の中で、次のフェーズの議論が行われるべきというふうに考えます。
 13期への引継ぎという点に関してまとめますと、義務教育段階における不登校児童生徒の経済的支援は国の責務であるというふうに考えられる中で、それが果たし切れていない現状について早急に打開策を講ずべきと考えておりますし、それが全ての子供への教育機会を担保するということにつながることを期待しております。何とぞよろしくお願いいたします。
 以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 では神野委員、お願いいたします。

【神野委員】  よろしくお願いします。私は2019年から中央教育審議会のほうに携わらせていただいていまして、今思い返すと当時33歳とか34歳でして、何と今年40歳ということになりまして、若者が若者じゃない年齢になってきたなと思っているところであります。ほかの特別部会のほうでは芦屋の高島市長が参加されていて、彼が28歳だったりしますから、私の最年少記録なんていうのも夢のまた夢ぐらいに若い方がいらっしゃいますが、そこで今日参加の委員の方々を見渡してみますと、いまだ私が最年少なのかなという気もしております。そういった意味で、少し若返りを図っていただきたいなというところを思っているところであります。
 というのも、ちょっと私、今から生成AIの話をいつもどおりするんですが、私たち世代が直面している生成AIって、ちょっと社会的なインパクトでか過ぎるんだという話を少し皆さんにしてみたいなと思うんです。というのも、皆さんも見られたかもしれませんが、例えば大きな会社でいえば、DeNAという野球球団を持っている会社ありますけれども、あそこがAIにもとにかくオールインする、人員を半分にするなんていう発表を南場会長がされていたりします。そのDeNAに限らず、私の周りの会社、私自身がそれこそ経営していた会社とかも含めてですが、この生成AIというものがもたらすインパクトによって、今までやっていたエンジニアの仕事というものがどんどんAIができちゃう。10人分の仕事ぐらいを1人でできるというようなぐらいに、物すごいインパクトが今起きています。これぐらい、実はもう今年中、来年中ぐらいには、そのデジタル領域から我々働き方が一気に変わっていくわけです。これくらいラジカルに社会が変化していっているという中において、当然これ教育から考え直さなければいけないというのは、私もちょっと手前みそながら、人工知能時代を生き抜く子供の育て方というテーマに私はずっと活動していますけれども、まさにその時代が今やってきているというふうにも言えると思うんです。そういう中において、次の学習指導要領をどうするのか、また、その中で子供たちにどういう資質・能力を渡していかなければいけないのかということは、議論も当然そうですし、またもう一つ、学校の設備環境というところに関しても、我々は本当に急がなければいけないんじゃないかなとも思っている次第です。
 例えばですけれども、確かにGIGAスクール構想というものはある意味、私が中央教育審議会に入れていただいて一番最初に御審議に携わらせていただいた非常に大きな施策だったわけなんですが、あれが施行されたのが2019年とか2020年だとしますよね。だけれども、インターネットって世の中に一気に普及したのって、1995年のWindows95とかじゃないですか。そう考えると、本当の意味で子供たちに1人1台の情報端末が届いたまで25年かかっているとも言えると思うんです。もしそれくらいの時間をかけて今回の生成AIのインパクトに向かおうとしているのであれば、これは明らかに社会とギャップが出てしまうと思うんです。私たちは今直面している社会というものを感じながらも、今、次の学校教育どうするのかというところを、この5年で本気で考え切らないといけないんじゃないかと私自身はちょっと思っています。
 最後になりますが、岩本委員もおっしゃっていました。私、私立学校の経営を始めて、今3年ちょうど過ぎました。3年を過ぎようとしているところです。私自身、実はこの私立の学校を経営する中で、校長としてやっている中で何を目指しているかといいますと、これは皆さんと一緒になってずっと議論させていただいてきた学習指導要領や令和答申、こういうものが目指している学校の姿をど真ん中で私立で実現しようというつもりでずっと経営しています。ですので、私たちの学校をそのような形で実現していくと同時に、九州地区の公教育の先生方にどんどん来ていただいて、昨年度も10自治体30校ぐらいの先生方に来ていただいて、それでこの個別最適な学びへの考え方とか、それでどんなチャレンジをしているかとか、あとは協働的な学び、探究的な学びというのはどういうものなのかなんていうことを見ていただいています。とはいえ、全然できていない部分もありますから、できている部分と全然できていない部分全部見てもらって、産みの苦しみみたいなところも含めて、みんなと一緒になって感じているところであります。
 それでも、やっぱり人事異動が全く存在しない私立という特異な場所だからこそ、何というか、本当の意味で学校の先生方と合意することができれば、同じメンバーでずっと走っていけるという特性を持っていますので、そういった意味でいうと、やはり公教育よりも、そういう我々が目指す、我が国が目指す教育というのを実現しやすい環境であることがまず1つ言えると思うんです。だからこそ私たちは、公教育の先生方のショールームとなっていく、そういうことで、この私立の新たな存在意義というものが何かできないかなという形で、今私たちも取り組んでいる真っ最中になります。ぜひ皆さんにも私たちの取組、本当にできている部分もできていない部分もたくさんあるんですけれども、見に来ていただいたらすごくうれしいなと思っています。今年度もどうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】  それでは、まず12期を振り返ってということで、つい先日、給特法など教師を取り巻く環境整備に関する法案が閣議決定されました。教職調整額の段階的な引上げに特に注目が集まるわけですけれども、ほかにも先ほど御説明ありました教師の業務量管理や健康の確保のための計画の策定・公表等の教育委員会への義務づけ、また、主務教諭という新たな職の新設、学級担任への手当の加算といった内容も盛り込まれております。約50年ぶりの教職調整額の引上げ、また直近20年間で最大の定数改善など、日本の教育史に残るであろう大きな前進となりました。ここに至るまでの、文科省の並々ならぬ御労苦、御尽力に改めて感謝を申し上げます。これらの法案は、学校教育の質の向上に向けて、教師として優れた人材を確保するための処遇等の改善や働き方の推進など、教職を取り巻く環境整備を行うものですが、こうした勤務環境整備と整合する、持続可能な形で継承・発展可能な質の高い学びの在り方とはどのようなものなのかを、今後国も教育委員会も学校も、それぞれの立場で自分ごととして考えていく必要があると思っています。
 また、13期に向けて期待したいこととしては、昨年末の2つの諮問に向けた議論の深まりに尽きると思っています。教育課程の諮問では、デジタルか紙かなどの二項対立論がある中で、「デジタルの力でリアルな学びを支える」という視点が明確に示されたり、ワーク・オーバーロードとカリキュラム・オーバーロードを混合せずに指導と管理の行政を一体的に捉えられたりという、トータルバランスが明確に保たれてきています。振り返ってみると、教育界はこれまでも二項対立の陥穽に陥ってきた傾向があると思っております。マクロの視点でこうあるべきというべき論が優先すると、内容が膨らみがちになります。また一方で、ミクロの視点でばかり議論していると、教育村でしか通用しない教育論に陥って、社会の変化と同期できなくなる可能性もあります。授業という営みは、子供と教師の二項間にある、三項目の教材との対話が大切です。二項対立を超えて融合を生み出したり、その間にある三項目の存在にも光を当てて吟味したりするのが大切だろうと思います。
 なお、諮問文にもあったように、「現行学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ば」であります。学習指導要領が示す教育内容は、未来を担う子供たちに必要不可欠なものでございます。それを支えるのは、まさに学校現場の教師です。学びに関する高度専門職である「質の高い教師」が指導することによって、その理念や趣旨が「徹底」されて、質の高い学びが実現されます。その教師が不足していたり、また、質が伴わなかったりという状況では、いくら優れた教育内容が示されても、その実現は困難です。老婆心ながら、この質の高い教育の両輪である「質の高い教師と質の高い学びの在り方」に向けた一層の議論が必要だろうと感じております。
 2年間ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは冨塚委員、お願いいたします。

【冨塚委員】  千葉県教育長、冨塚です。大変お世話になりました。ありがとうございました。
 高等学校の在り方ワーキングに所属をしておりました。この間いろいろな議論いただき、報告書をまとめていただいたのですが、先ほどの岩本委員の御発言とかなりかぶってしまうんですけれども、報告書そのものの内容とちょっとずれてしまうのですが、やはり今般の高校無償化の議論、あの中で公立高校の在り方とか、今後の公私のそれぞれの存在、役割とかってどういうふうに考えていらっしゃるのかなというのは非常に疑問です。文科省の予算、たしか7兆円と伺ったと思います。もし記憶違いだったらごめんなさい。100兆円を超える国家予算の中でたった7兆円です。その貴重な文科省の予算の一部を、高校無償化の所得制限も全部なくして、そこで教育費の負担軽減だけのために投資をするということを私はすごく疑問に思います。福祉施策であれば厚生労働省の予算でやられたらよろしいと思います。もっとほかに文科省の貴重な予算を費やすべきところはあります。多様化する生徒を受け入れている公立高校、そして農業、工業、福祉などの専門学科を有する学校、今かなり倍率落ちてはいますけれども、都道府県としてその専門学科の高校の魅力向上に非常に力を入れようとしているときに、何となく足を引っ張られているように感じてしまうのは、少し被害者意識が強いのかもしれませんが、これからの社会を支えていく上で、ホワイトカラーはどんどん、先ほどもありましたように生成AIに取って代わられる部分があるかもしれませんけれども、いわゆるエッセンシャルワーカー、エッセンシャルワーカーというのは決して3Kとか、そういう意味ではなくて、我々の生活を支える、我々の生活になくてはならないお仕事です。そこを支える人材を輩出していくというのは、公立高校の大きな役割だと思っています。もちろん先ほど神野さんおっしゃったように、私立の高校との役割分担であるとか、競争ではなく共存を目指すというところはもちろん忘れてはならないですが、その中で、やっぱり公立として、先ほど岩本先生おっしゃったように、公立しか存在し得ない地域というのもあります。そういうところで役割をしっかり果たしていけるような、もう少し投資というものをいただいてもいいのだと思っています。
 すみません。大変失礼いたしました。2年間勉強させていただきありがとうございました。以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 では中谷委員、お願いいたします。

【中谷委員】  廿日市市立廿日市小学校校長の中谷でございます。私は、一校長として参加をさせていただきました。最初の年には前任校である宮園小学校の報告をさせていただき、また、昨年は宮園小学校の視察までしていただき、本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。
 急いで話をさせていただきます。校長として、今現場で一番切実なことは、やはり人材不足です。教職員定数、本校も教科担任制を行っていますけれども、来年度、教科担任制の定数が埋まるのかどうかと心配しておりまして、教職員定数はあるけれどもそれを埋める人材が不足している状況です。この12期で示した方向性、その学びを支えるのは教職員です。人材確保に向け本当に努力していただいているのは重々承知しておりますが、引き続き、若い人たちが夢と希望を持って教職に就き、子供と伸びようとする教職員を支える環境づくりに向け、よろしくお願いしたいと思っております。
 今後に向けて、簡潔に私から3つ申し上げます。1つは、今後学習指導要領の改訂に向けた検討がありますけれども、万能な教育方法はありません。教育方法を論議する場合は、そのメリットとデメリットをしっかり考えていただいて、とりわけデメリットについてもしっかり注目して、丁寧に議論をしていただき、そしてその議論も発信していただきたいと思っております。
 2点目です。この間議論したのは、最終的には子供たち、これからの社会を生きる子供たちがどんな資質・能力を身につければいいかということだったと思います。コンテンツの話はあまりなかったと思います。どういった力が育てばいいのか、そのために学校はどうあるべきかという議論をしてきたと私は理解しております。そういった意味でいいますと、情報活用能力等々の資質・能力について、今後、学習指導要領の中で位置づけをより明確にする、その点をしっかり記載していただきたいと思っております。
 それからもう一つ、小学校に入学する段階から、子供たちの状況は、これまで以上に多様になっています。生活経験、コミュニケーションの力等の学びの基盤ともいうべき力が多様化、もっと言いますと、その差が大きくなっている、不足している子が多くなっていると思うことが多々あります。小学校に入ってからではなくて、今の幼児期の実態をしっかりと踏まえて、今後の教育課程等を検討していただくということが非常に大事だと思っています。小学校は、とても多様な子供たちに、教育を通じてある程度の共通性を持たせていくという側面もあります。今までは、もしかしたらもっと共通的なものを身に付けて入学していた子供たちが、入学の段階でこれまで以上に多様になっていると思いますので、幼児期と小学校の接続というところも更に意識しておく必要があるのではないかと、今一校長として思っています。
 駆け足で話をさせていただきました。本当に2年間ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 皆さん、申し訳ありません。時間になりましたが、まだ6人の方が残っていらっしゃいます。それと私も、最後にちょっとだけお話ししたいと思っています。それから、国会等で大変忙しい中、局長にも来ていただいておりますので、少し延長させていただくということをお許しいただきたいと思います。ただ、時間の関係で退室をしなければならない方は、どうぞそのようになさってください。
 では、引き続き御発言をいただきたいと思います。奈須先生、どうぞお願いいたします。

【奈須分科会長代理】  よろしくお願いいたします。2年間、本当にありがとうございました。スピード感を持って、規模感がある、そして抜本的な議論が今期進んだと思います。とはいえ、まだまだ考えなければいけないことはたくさんあって、先ほど神野委員から、GIGAの整備までWindowsから数えると25年かかったというお話がありました。同じようなことはほかにもあって、例えば今期は多様性というふうなことが主題化されて、随分進んだと思いますけれども、これもいつ本格的な提起がなされたかというと、私が承知しているところでは、1971年の中教審答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」の中で実はもう出ております。いわゆる四六答申ですね。そこに「国民の教育として不可欠なものを共通に修得させるとともに、豊かな個性を伸ばすことが重視されなければならない」という文言があり、さらに、そのために「個人の特性に応じた教育方法によって指導できるよう改善されなければならない」という文言はもうそこにあるんです。すると、今回多様性に関して本当にしっかりした議論がなされたと思いますけれども、50年かかっていると。今後もスピード感と規模感を持って、次の13期も御議論をしていただければありがたいなと思いました。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。奈須先生、ちょっと途中で音声が切れたところがありますので、議事録のほうで補っていただきますようによろしくお願いいたします。すみません。時間の関係で申し訳ありません。
 では堀田先生、お願いいたします。

【堀田分科会長代理】  堀田でございます。申し上げたいことはたくさんありますが、1つだけに絞ってお話をいたします。
 先ほどデジタル教科書の推進ワーキングの報告の中間まとめがございました。これについては様々な報道もあるところでございます。これは考え方としては、これまでの紙の教科書や教材等に加えて、これからもっとデジタルのよさも加えていくということが認められていくべきだろうと。その際にどのように組み合わされていくべきかということについて、これから検討をもっと深めていくときの論点の議論をしております。検定対象にデジタル部分がもし入ってくるとすれば、これ恐らく早晩避けられなくなるわけですけれども、どういうふうに対応すべきかという議論がされているところでございます。
 これについて、教科書というのはそもそも長い間、各地域で採択されてきた歴史があります。高等学校では、もう学校ごとに近い形かと思います。これは児童生徒の実態や教師の実態、あるいは教育の重点との関係でこのようになっているわけですけれども、つまり現状においても、もう長い間、国で一律に何かを決めているということではないという、そういう方式になっているということをなかなか御理解いただけていないのかなと思うところがございます。これからデジタル部分が教科書に組み込まれていくとしても、それをどれぐらい取り入れていくべきか、それは校種や教科や地域によって考え方はいろいろだと思いますので、やっぱり現場の指導意思、これを尊重できるような形にしていくことが望ましいと私は考えております。
 逆に言えば、これはビジョンや意思を持って意思決定できるような、そういう自治体や管理職の役割は、今日ますます重要になるところだと思いますし、これは教員の資質向上との関係で重要になるところかと思っております。こういうことが、第13期にたくさん議論されるとよろしいかなと思っております。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは森田委員、お願いいたします。

【森田委員】  よろしくお願いいたします。森田でございます。今期から参加させていただきまして、本当に様々な議論を拝聴させていただきまして、大変勉強させていただきました。誠にありがとうございました。
 時間の関係もございますので、二点だけ申し上げたいと存じます。まず、やはり様々な御議論聞いておりますと、日本の学校、それから教師、教師をめぐる環境など、様々な論点において、大きく転換をせざるを得ない時期に来ていることを実感いたしましたし、これからの数年間の議論が今後の日本の教育を基礎づけていく、重要な時期であることを実感いたしました。その中で、特に私の場合は教員養成に関わっておりますので、力のある教師をどうやって確保していくのか、どうやって教師の力を育成していくのかというところが、今後、大きな論点になるだろうと思っています。この点について、今次の諮問の中にも、両諮問に関わる議論を連動させながら審議を進めていくということが書かれていましたが、ぜひ,教育課程に関わる議論と教師に関わる議論との連動を図りながら審議を進めていただければと思っています。
 それから最後になりますが、様々な議論が行われていく中で、どうしても、私たちといいますか、私もそうなってしまいがちなのですが、自分たちがやっていること、自分の専門分野がやはり大事なんだという議論になりがちだと思うのです。しかし、それらの全部について、じゃあ現場の先生に全てやってくださいということなったら現場の先生たちも大変になると思いますので、やはり現場の先生たちの負担がこれ以上増えないような形での全体の整合性やバランスを取りながら審議を進めていただければというふうに感じた次第でございます。
 簡単ですけれども、以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 では八並委員、お願いいたします。

【八並委員】  私は日本生徒指導学会会長の八並です。また、東京理科大学で教員養成にも携わっています。委員の中では恐らく唯一、生徒指導、スクールカウンセリングの専門なので、その観点から述べさせていただきたいと思います。
 現在の生徒指導に関しては、学校を核としたチーム学校に基づく多職種多機関等の連携協働による地域社会総がかりのチーム支援が主流です。その意味では、本分科会でいろいろな分野の皆さんの多様な御意見を伺って、本当に勉強になりました。この点に関しては感謝しております。
 今後に関しては3点あります。
 第1点は、学習指導要領における児童・生徒の発達の支援を吟味していただきたいと思っています。平成29年版学習指導要領と現行の学習指導要領の大きな特徴は、第1章「総則」に、小学校では児童の発達の支援、中高では生徒の発達の支援が新設されました。その中で、生徒の発達を支える指導の充実では、学級・ホームルーム活動の充実、生徒指導の充実、キャリア教育の充実、個に応じた教育の充実の4本柱が、小中高と貫徹されています。
 また、特別な配慮を必要とする生徒への指導では、障害のある生徒などへの指導、海外から帰国した生徒などの学校生活への適応や日本語の習得に困難のある生徒に対する日本語指導、不登校生徒への配慮、学齢を経過した者への配慮が明記されています。この児童・生徒の発達の支援は、教育課程編成上も、また、授業を行う上でも基盤となります。次期学習指導要領においても、児童・生徒の発達の支援に関して吟味していただければと思います。
 第2点目は、学習指導と生徒指導の関連性について議論を深めていただければなと思います。文部科学省としても、教員の資質向上で、学習指導の力と生徒指導の力は挙げいます。それらの知識の基盤は何かというと、学習指導に関しては学習指導要領です。生徒指導に関しては法的拘束力はありませんが、令和4年に公表した『生徒指導提要』です。学習指導要領での議論の基礎資料として『生徒指導提要』を参照しながら議論していただければと思います。
 二項対立という話が出ましたけれども、皆さんに理解していただきたいのは、学習指導対生徒指導ではないということです。両者は円環的な関係を持っていて、私は授業改善なき生徒指導はないと思っています。つまり、学習指導と生徒指導は、表裏一体であるわけです。
 特に義務教育段階では、小学校のいじめや暴力行為は最多であり、小学校の生徒指導体制の議論が重要だと思っています。『生徒指導提要』では、児童生徒自らが個性を発見したり、よさや可能性を伸長するというプロアクティブな生徒指導、あるいは発達主義的な生徒指導を推進していくことが重要だと思っています。これに関しては、第4期の教育振興基本計画において、発達主義的な生徒指導の推進が明記されていますので、ぜひ両者の観点からご検討いただきたいと思います。
 第3点目は、教員のメンタルヘルスと服務の議論をしていただきたいと思います。教員のメンタルヘルスに関しては、非常に深刻で、令和5年度 公立学校教職員の人事行政状況調査では、教職員の精神疾患による病気休職者は7千人を超えています。過去最高です。要因としては、児童生徒に対する指導そのものが27%で最多であり、推測ですが、この中には保護者対応が含まれていると思います。教員のメンタルヘルスに大きな影響を与えているのは、生徒指導だと言えます。生徒指導の物理的・心理的な負荷を、どのように軽減していくのかも、今後の大きな課題であると思います。
 他方、教員は学びに関する高度専門職と定義づけていますが、信用・信頼を大きく損なう非違行為が多発しています。教員としてのイロハのイである服務の遵守です。先ほどの人事行政状況調査の懲戒処分の内訳では、体罰が約270件で前年よりやや減少、不適切指導は460件と増加、性犯罪・性暴力が31件と増加しています。特に、教職員の性暴力等に関しては、法律が施行されたにもかかわらず、現在も多数報道されています。私は学校における心理的・物理的な安全性の確保という観点から、教員の服務は重要なテーマになると思っています。
 以上です。どうも2年間、誠にありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは吉田晋先生、お願いします。

【吉田(晋)委員】  ありがとうございます。2年間、本当お世話になりました。
 今回のこの会議というのは非常に難しかったというか、ちょうどコロナ禍で、子供と学校、それから家庭と学校、学校の立場というものが大きく変わってきた2年間だったのではないかと思います。そういう中でも、この中央教育審議会の中では、令和の日本型教育というものを基本に置いて、本当に様々な協議がなされて答申が出され、やはり私は一番大きかったのは、働き方改革であって給特法の改定、それから定数改善ですか、というようなことがなされたというのは、非常に大きかったのではないかと思います。
 これから、次期については、やはり教育課程の問題が出てくると思います。そういう中で、今、前々回のときから、例えば英語は英語で教えるという中高の教育課程が全く成り立っていなかった。でも、今回の改訂によってというか、世の中の流れの中で、今小中高の英語って大きく変わって、4技能が非常に進んできていますけれども、大学がやはりここで入試制度、高大接続をもう1回考え直していただいて、変えていっていただかないと、特に理工系を増やすというようなSTEAMをやるとかいう話もありますが、今の教育課程のままでは、高2から理系、文系分かれないで大学受験に臨むことは、私は基本的にあり得ないと思います。ですから、そういう部分も含めて、いい意味で大きく教育課程を変えていくことをぜひお願いしたいなというふうに考えております。
 本当に2年間ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは渡辺委員、お願いいたします。

【渡辺委員】  渡辺でございます。まず、荒瀬会長には、これまで多くの発言の機会を与えていただき、大変感謝いたします。また、事務局におかれましては、毎回非常に多くの資料を作成、準備され、大変お疲れさまでございました。とはいえ、このような資料を二、三日で読み切るというのはなかなか大変なので、できましたら準備ができた資料から、五月雨式で結構ですので配信していただけると、次期の委員が助かるのではないかと思います。
 本日の議題に関連して、2点だけ発言させてください。個別最適な学びを行うのは、児童生徒でありますけれども、それを指導するのは誰かという視点が明確じゃない気がします。学校の先生ではあるんですけれども、個別最適な学びを児童生徒が受ける、または行うには、単なる知識の供与だけではなくて、児童生徒の個性を判断する技量と、その個性に見合った指示が出せる能力と知識を持つ指導者が必要だと思います。教師の働く環境整備や、参入資格の拡張とか、質の担保という抽象的な表現だけではなくて、今後の教育環境等、新たな教育体制において、教師の負担を軽減しつつ、教師がどのような技量と能力を身につけるべきかを明確にしていただきたいと思います。大学の教職課程に組み込むのか、就業中の教師にどのような研修を行って、どのような技量と能力を持っていただくかという具体的な方策が国として示されないのは、多少残念に思います。また、そのための財源確保や定数改善は、国の責務であるのではないかと思います。先ほどから話が出ています生成AIは、この個性の判別に有益となる可能性がありますので、ぜひ利活用を模索していただきたいと思います。
 2点目はデジタル教科書に関してでございますけれども、教科書として認定していただくことは反対ではございません。しかし、どのような活用の仕方が児童生徒に効率的であり、かつ健康やその他の弊害が本当に生じていないのか、長期的な視点も含めて、一定の基準で検証しつつ進めるべきではないかと思います。ちょっとやってみてからというのでは、その対象となった児童生徒がかわいそうです。ハイブリッドな使用とは何がどうか、どれをどう組み合わせるかというようなことを含めて、慎重に対応していただきたいと思います。現場にある程度の裁量権を与えることはよいですけれども、責任を委ねるような方針には賛成をしかねます。
 私からは以上でございます。2年間ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。皆様から本当に多様な御意見を頂戴しまして、ありがとうございました。いただきました御意見につきましては、事務局のほうで受け止めていただいて、次期中央教育審議会の審議に引き継いでくださるようにお願いいたします。
 それでは、時間も過ぎてしまいました。随分延長してしまっておりまして、申し訳ございません。この辺りにいたしたいと思います。
 第12期初等中等教育分科会の締めくくりでありますので、先ほども申しましたが、望月初等中等教育局長に来ていただいております。御挨拶をいただきたいと思います。お願いいたします。

【望月局長】  皆様、本日は大変お忙しい中、貴重な御意見をありがとうございました。
 この第12期は、先ほど吉田委員からもございましたように、まさにコロナが明ける少し前ぐらいから、学校のありようをコロナ明けでどうやって回復して充実していくかというところからスタートいたしました。この間、教育政策というのは、もう第10期も、それから11期も、そしてこの12期も、ずっと続いていく中で、新たな課題を踏まえつつも、さらにどうしていけば学びの充実につながるのか、あるいは学びの基盤を形成できるのかという観点から、これからもその検討は続きますけれども、とりわけ教師を取り巻く環境整備については、行政としても、これから国会審議もございますが、1つ大きな形として結実をさせていただきました。また、新しい学びについて、昨年末に諮問のあった教育課程、あるいは教員養成というところでは、次代を担う子供たちの環境を整備するという観点から、多面的・多角的な検討が必要かと思っております。
 また、学習基盤という観点では、ICT機器整備というのは一段終わってはおりますけれども、さらにそれをどう活用して、それが子供たちの学びの充実にどう生かしていくのか、あるいは健康の観点も含めて、今も渡辺委員からもございましたが、デジタル教科書の活用について、まだこれオンゴーイングでございます。多様な政策について、これまで大きな答申を累次いただいてございます。我々としては、それをできる限り具体化をして、これは国だけができるものというのは本当に方針を示す、あるいはその基準をつくる、環境整備をしていくということでございますが、それを具体的に実現していく段には、地方公共団体、それぞれの学校法人、公立学校については各地域、それから首長部局の、そして関係者、専門家の多様な関係者の御理解、御協力と、それから、今チーム学校ということで我々も推進しておりますけれども、皆同じ方向を向きながら、将来を担っていく学校や教師や、あるいは子供たちの姿を考えていかなきゃいけないというふうに考えてございます。
 大変御多忙なところ、多面的・多角的な観点から御議論いただきました。荒瀬分科会長におかれましては、議論を取りまとめ、また、リードしていただきまして、どうもありがとうございました。それぞれの委員の皆様方におかれましても、貴重なお時間を毎回毎回割いていただきまして、本当に多面的な御意見いただきました。
 また13期、引き続いて審議もあるところもございますけれども、また御支援、御協力、そして御指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  望月局長、ありがとうございました。
 それでは最後に、いい場面で登場して申し訳ありません。時間がもうとっくに過ぎているのに。申し上げたいこといろいろございますけれども、皆さんがおっしゃってくださったことと重なりますので、それらはやめまして、ただし1つだけ、これも重なることなのですが、申し上げたいと思います。やっぱり私、広島に行ったことは大変思い出として残っております。それから、昨年の1月に京都で中教審を開催したということも非常に大きな思い出として残っております。文科省の外に行きたいと言って事務局がその願いを聞いてくださったことに、深く感謝しております。しかし、これは本当に大変なことでありまして、例えばマイクの配線1つをどうするのかというのも、文科省の会議室でやるのとは全く違うことでありますので、非常に御苦労がありましたけれども、そういうことを一切おっしゃらずに、本当に熱心に取り組んでくださったことに心から感謝しております。
 にもかかわらず、この間私、会議の進行に関しましては、とりわけ時間管理のまずさがあって、今日もそうなんですけれども、それを棚に上げるようで申し訳ないのですが、こういったことについては、ちょっと今後、本当にどうしていくのかを全体で考えていく必要があるんじゃないかなと思います。事務局と進行役の会長だけではもうどうにもいかない部分があるので、人数をどんなふうにしていくのかとか、あるいは分科会の中でさらに分けて話をするのかとか、そういったようなこととか、あるいは必ず集合してやるような会もつくるとか、いろいろな方法を考えていくことが大事ではないかなと思います。皆さんの御意見を時間で制限するというのは、これちょっとやっぱりなかなかしづらい面がありますので、その点も考えて、今後13期では御議論いただければと思います。
 先ほど神野さんが初めて初中分科会に来たのはとおっしゃっていましたけれども、私は2005年に初めて教育課程部会に参加させていただきまして、それから20年間、中教審に大変お世話になりました。まだもう少し、ひょっとしたら関わりを持たせていただくことになるのかもしれませんが、基本的にはこの会議に出ることは多分もうないんだろうなというふうなことを想像しております。本当にこの間、皆さんにお世話になりました。事務局の皆さんにも大変お世話になりました。
 最後にもう1つだけ申し上げると、児童生徒課長からの御発言の中で、不登校の生徒とか問題行動を起こしてしまった生徒、これが中黒でつないでいるのは、これはもう全く便宜的につないでいますけれども違いますということを明確におっしゃったことと、それからその生徒の数を1人の単位まで丁寧におっしゃった。一人一人にしっかりと思いを寄せて考えることが大事だということを文科省は思っていらっしゃるんだなということを、その御発言からも強く感じました。本当にそういったところは今後も引き継いでいただきたいと思います。
 今後の我が国の初等中等教育が、本当の意味で子供を主語にして、よりよい展開を重ねて、多様な子供一人一人が自立した学習者に育っていってくれることを心から願っておりますし、期待もしております。本当にありがとうございました。
 それでは、これをもちまして第12期中央教育審議会初等中等教育分科会を閉会いたします。お世話になりました。本当にありがとうございました。
 
―― 了 ――

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