初等中等教育分科会(第138回)議事録

1.日時

令和5年1月18日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(※WEB会議)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について(答申)
  2. 主な調査の結果について(令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果/新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究)
  3. 学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行について
  4. 「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議の審議経過について
  5. その他

4.議事録

【荒瀬分科会長】 皆さん、こんにちは。荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 定刻を少し過ぎました。皆さん、まだおそろいではないようですけれども、この後、来ていただけるということで、ただいまから、第138回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局、前田教育制度改革室長から御説明をよろしくお願いいたします。
 
【前田教育制度改革室長】 教育制度改革室長の前田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 今回は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、ウェブ会議で開催していただいております。会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。また、カメラにつきましては、発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますよう、お願いいたします。委員の皆様には御不便をおかけすることもあるかと存じますが、御理解のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料1-1から資料4-2まで、参考資料が1から6となっております。参考資料4は、昨年末、閣議決定されました令和5年度予算案のうち初等中等教育に関するもの、また、参考資料5は、12月に策定しました学校教育情報化推進計画で、学校教育の情報化推進に向けて、今後の国の施策の方向性やロードマップをお示ししたものでございます。加えまして、参考資料6は、送迎用バスへの園児置き去り死亡事案を受けまして、児童生徒の所在確認や送迎用バスへの安全装置を義務づけるための関係法令について、改正を行ったものでございます。なお、参考資料2については議題2において、参考資料3は議題3において、追って御紹介いたします。
 以上でございます。
 
【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、議題に移りたいと思います。本日は議題が大きく4つございまして、まず、議題1、「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について、これは昨年末に出されました答申についてであります。議題2は2つございまして、主な調査の結果ということですが、令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査、もう一つが、新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究の結果でございます。議題3といたしまして、学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行について、最後、議題4といたしまして、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議の審議経過について、以上でございます。今日もまたこのように議題の数が大変多くなっておりまして、時間の都合で御発言いただける委員に限りが生じてしまう可能性もあるかと思います。その場合は、申し訳ありませんが、会議の後に事務局宛てにメールをいただければ議事録に掲載したいと思いますので、あらかじめ御了承いただけますと幸いでございます。なお、本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をユーチューブで配信しておりますので御承知おきください。
 それでは、議題1に入りたいと思います。「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方についてということで、昨年12月に中央教育審議会においてまとめられました答申につきまして、小幡教育人材政策課長から御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
 
【小幡教育人材政策課長】 教育人材政策課長の小幡でございます。
 ただいま荒瀬分科会長から話がございましたが、昨年の12月19日に中央教育審議会の総会が開催されまして、「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方についての答申がまとめられまして、渡邉会長から大臣に手交されたところでございます。
 この答申につきましては、この初中分科会におきましても、昨年11月7日に答申素案を説明させていただき、御意見を頂戴いたしました。その後、11月11日より12月1日までパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえ、補正予算等の内容も盛り込んだ形で、答申としてまとめられたものでございます。本日は答申の中身については簡単に御説明させていただきまして、この答申を受けて、文部科学省、また、教育委員会、大学等、関係者がどのようにこの具体的中身を実現していくかという工程表を作成してございますので、そちらを中心に説明させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日は資料1-1から1-3まで関係の資料でございますが、まず、資料1-1の概要を御覧いただければと思います。
 ここにございますように、諮問があったのは令和3年3月でございますが、もともとの経緯としては、この初中分科会を中心に議論いただいておりました「令和の日本型学校教育の構築を目指して」という令和3年1月にまとめていただいた答申を受けて、その教育を担う教師はどうあるべきかということで、包括的な養成・採用・研修等の全体の諮問がなされたところでございます。
 その間、1年9か月、昨年12月まで審議し、答申をまとめていただいたわけでございますけれども、総論としては、ここにございますような子供たちの多様化、社会の変化、さらには教師の養成、免許、採用、研修等に関する制度や実態がまずあるわけでございますけれども、今回の答申の全体の改革の方向性ということでは3つにまとめられているものでございます。
 下にその3つがまとめられているところでございますが、1つが「新たな教師の学びの姿」の実現ということで、子供たちの学び(授業観・学習観)が転換する中、教師自身の学びも転換して、新たな教師の学びの姿を実現していくことが必要であるということ。また、養成段階におきましても「理論と実践の往還」、学校現場と大学での学びを行ったり来たりしながら教職課程を進んでいく、これが大事であろうということが示されたところでございます。
 2つ目でございます。多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成ということで、一人一人の教員の専門性を高めるとともに、多様な専門性・背景を有する人材を取り込んで、教職員集団の多様性を確保していくことが必要である。また、学校の中におきましては、学校管理職のリーダーシップの下、心理的安全性を確保することとか働き方改革を推進していくことが必要であるということが示されました。
 3つ目でございますけれども、教職志望者が多様化していること、また、教師のライフサイクル自体も変化している中、育成と安定的な確保を進めていくことが必要であるということが方向性として示されたものでございます。
 次のページは、それぞれの具体的な改革の提言をいただいたものでございます。1から5が諮問に沿った形でまとめられているものでございますが、それぞれ養成、免許、採用、研修、多くの事柄について様々御提言をいただいたところでございますので、文部科学省としても、これをしっかり教育委員会、大学と連携しながら、今後、実現を進めていくことが必要であると考えております。
 そちらについては、資料1-3の改革工程表を御覧いただければと思います。
 まず1ページ目でございますが、「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師像と教師に求められる資質能力ということでございます。
 (1)にございますように、教師に求められる資質能力の再整理につきましては、既に昨年の8月に、公立小学校の校長、また、教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針を文部科学省として改定したところでございますので、今後、この五本柱に基づきまして、各教育委員会において、改正指針を参酌しながら、教員育成指標を見直していくということになります。
 また、(2)にありますように、教職課程を設置する大学においては、今回、指針で示された事柄について、自己点検・評価をしながら、改革・改善を図っていただくことになります。
 (3)でございますが、理論と実践の往還を重視した教職課程への転換ということでは、特に教育実習、学校体験活動が現行制度も対応可能なものになっておりますので、こういった内容について本年度中に周知し、規則等の改正が必要なものについては、令和5年当初に実施することを考えているところでございます。
 次に、2ページから4ページまでが、2の多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成ということでございます。
 (1)の教職課程における多様な専門性を有する教師の養成については、強みや専門性との両立、また、専科指導に対応した小学校教員養成、こういったことについて、令和5年度の前半に教職課程認定基準等を改正し、令和7年度より新課程が実施できるように進めていきたいと考えております。
 また、(2)の優れた人材を確保できるような教員採用等の在り方については、教員採用選考試験の早期化または複数回実施などについて、現在、文部科学省と教育委員会、大学等による協議会を実施しているところでございます。こちらについて、今年の6月ぐらいまでには一定の結論を示したいと考えておりますが、その結果を踏まえ、自治体においては、早ければ令和6年度に実施する試験、つまり、令和7年4月採用になるところから早期化等が実施されるということを考えているところでございます。
 続いて、3ページでございます。特別免許状の関係については、令和4年度末から令和5年度当初にかけて国の授与指針を改正したいと思っておりますが、それを受けて、特別免許状や特別非常勤講師の円滑な入職に向けた研修等についても、令和4年度補正予算を活用しながら進めてまいりたいと考えております。
 続いて、4ページでございます。教員資格認定試験についてでございますが、令和6年度から、新たに高校の「情報」を実施する方向で検討を進めてまいります。
 最後、新任校長等の研修についても、令和4年度から3年間、国において実施した上で、その後は各自治体で独自に実施してもらうような形で進めてまいりたいと考えております。
 次に、5ページでございます。教員免許の在り方についてということで、免許更新制の発展的解消については、既に昨年5月に法改正がなされたところでございます。現在、新たな教師の学びの姿の実現に向けて、国としても、研修高度化とともに、研修受講履歴記録システムまたは教員研修プラットフォームの構築を進めてまいりたいと考えております。
 次に、6ページ、7ページが教員養成大学・学部、教職大学院の在り方についてでございます。こちらについては、好事例の収集・周知は全般的に進めてまいりますが、制度改正を伴うものとして、(2)の2番目にある先取り履修者についての教職大学院の在学年限の短縮、また、(4)の教員養成大学・学部の学部段階での実務家教員登用のための具体的な基準の設定がございます。こちらについては、それぞれ大学設置基準等を令和5年前半に改正する方向で検討を進めてまいります。実務家教員登用の基準については、経過措置を経て、令和7年度より適用する方向で考えております。
 最後に8ページ、教師を支える環境整備でございます。
 (1)は教員研修の高度化についてですが、具体的には、喫緊の教育課題について、成果確認も合わせた研修コンテンツの充実や研修の成果確認、評価モデルの開発、さらには校内研修や授業研究の高度化、そういったことを令和4年度補正予算を活用しながら進めてまいります。
 (2)の丸1については、教員免許更新制の発展的解消を踏まえ、失効・休眠免許状を有する者に対する研修の実施を進めていきます。また、丸2の働き方改革につきましては、答申に掲げられている取組を進めるとともに、現在実施している教員勤務実態調査の結果も踏まえ、給特法等の法制的な枠組みも含めた教師の処遇の在り方等を検討してまいりたいと考えております。
 答申については、こういった形で工程表を作成いたしまして、文部科学省、教職員支援機構、大学または教育委員会等と連携しながら、具体化に向けて進めてまいりたいと考えているところでございます。
 答申の中で、おわりに、本体の資料1-2の最後の56ページの真ん中でございますが、今回の答申は、教師の養成・採用・研修の一体的な改革を通じ、教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、志望者が増加し、教師自身も志気を高め、誇りを持って働くことができる将来を実現するための提言である。環境の変化を前向きに受け止め、教職生涯を通じて学び続け、子供一人一人の学びを最大限に引き出す役割を果たし、子供の主体的な学びを支援する伴走者としての能力も備えている教師が、一人でも多く教壇に立つことを期待する。そして、ひいては時代や社会の変化に対応しつつ、誰一人取り残されず、誰もが自分らしさを大切にしながら学ぶことができ、一人一人の可能性が最大限に引き出される教育を実現することを期するものである。ということでまとめていただいておりますので、全体として、採用段階、養成段階、研修段階、それらの段階で具体的なことをしっかり取り組んでいくとともに、引き続き、また、中教審におきましても、様々な振興基本計画や先ほどの処遇の改善なども含めて取り組んでまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 私からは以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。本件につきましては、これまでも本分科会で御報告がありまして、その際、委員の皆様からいただいた御意見も踏まえた内容となっているかと思います。
 今回取りまとめられました答申を今後の文部科学行政にどう生かしていくかという観点から、特段の御意見がございましたら頂戴したいと思います。御発言いただく場合は、手を挙げるのボタンを押していただきますように、よろしくお願いいたします。御指名申し上げましたら、ミュートを解除して御発言いただきたいと思います。
 それでは、今3名の方が挙げていらっしゃいますので、順に戸ヶ﨑委員、小林委員、渡辺委員、よろしくお願いいたします。
 戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ﨑です。
 この答申は全国の教育関係の方々に、ぜひ目を通してもらうべきだと考えております。個人的にも末席で関わらせていただきましたが、非常に多岐にわたるテーマで、まさに学校教育の成否を担う教師について、令和の時代を踏まえた在り方や方策が示されています。広汎な意見をまとめていただいた方々、さらには事務局の教人課の皆様方の御尽力に、改めて感謝を申し上げます。
 今後、文部科学省には、この答申を踏まえた取組について、先ほどの改革工程表に従って、スピード感を持って進めていただくことを御期待申し上げます。その際、大事なことは、答申の随所に出てきますように、国のみでやるのではなく、教育委員会や教員養成大学等が当事者意識をしっかり持って、連携して取組を進めることが極めて重要になると思っています。例えば養成については、地元の教員養成大学と教育委員会が連携して、早くから現場の教師が教職のやりがいを生き生きと語る機会を設けることは、学生の教職志望の動機を高めることのみならず、今、ブラックとの声もある一方で、その実態について、学生一人一人がじっくりと考える機会にもつながるのかなと思います。
 また、研修についても、理論と実践の往還を意識して、教師の日々の実践を、理論を基に価値づけすることは大変有益だと思いますし、教師のさらなるモチベーションにもつながると考えています。
 また、免許の関係では、多様な専門性を有する教職員集団を形成するために、特別免許状等の一層の活用が進むように、繰り返し申し上げていますが、都道府県教育委員会等において、待ったなしの積極的取組を強く期待いたします。 なお、この答申で言及されている教員研修高度化については、今年の補正予算で、研修のコンテンツやモデル開発等が行われていることを承知しておりますが、この補正予算の内容の説明については、先ほど小幡課長御自身が熱く語っている説明動画がアップロードされています。私も拝見しましたが、こちらもぜひ教育関係者の方々に御覧いただいて、積極的に活用すべきだと思いました。
 私自身も、この答申の取組の推進はもちろん、本答申内容の周知、広報にも、自らの立場で訴求に努めていきたいと考えています。ぜひとも、学校教育の成否を担う教師の在り方について、国、教育委員会、大学等が連携して、実効的改革が進むことを期待申し上げます。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 大変、力強い御発言をいただきました。ありがとうございました。
 先ほどの3人の方に加えまして、井坂委員も手を挙げていただいております。井坂委員までとさせていただきます。申し訳ありません、よろしくお願いいたします。
 では、小林委員、お願いいたします。

【小林委員】 福井大学の小林です。よろしくお願いします。
 12月19日にこの答申が総会で出された後に、幾つかの新聞には「教員採用試験の前倒しが決定」という大きな見出しで書かれておりましたが、このときの総会では、採用試験の早期化については検討に入っていると御説明いただいて、それほど議論は交わすことはなかったかなと思っておりますので、答申を実現に向けてさらに深めていくという意味で、改めて少し意見を述べさせていただきます。
 新聞では7月の試験時期が早まると書かれていましたけれども、大学で学生の様子を見ておりますと、今の7月の試験を年度が改まったばかりの慌ただしい4月、5月にするよりも、私はむしろ7月の試験時期を変えるのではなくて、対象学生を4年制だけではなく3年生に広げて、学生側の早期化を図ったほうがよいのではないかなと思っています。3年生で採用試験に合格すれば、教員になる意思をはっきりとさせて、その後の大学生活を有意義に過ごすことができたり、あるいは、学生側にとっても、3年生のときと4年生のときと採用試験を受験する2回のチャンスを得ることができたり、いろいろメリットはあるのではないかなと思います。3年生にとっては実習を受けていない時期ではありますけれども、適性の欠如があった場合には合格を辞退するなどの制度設計をすれば問題はないかなと思います。また、この点につきましても、ぜひ協議会でも御検討いただければと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。具体的なお話もいただきました。後ほどまた、小幡課長からコメントを頂戴できればと思います。
 では、渡辺弘司委員、お願いいたします。

【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。
 資料1-3の2ページに関して、2点、意見を述べさせていただきたいと思います。
 1つは(1)多様な専門性を要する教師の養成というところでございます。答申の33ページに、9つの専門性の履修をするという記載がございます。確かに全部やっていただくのは理想だと思いますが、全部できるかなという危惧があります。これは選択制にされるのか、それとも9つの科目は全て履修されるように工程表で考えられるのかというのが危惧したところでございますので、後でお教えいただければ、と思います。 
 もう1点は、(2)優れた人材を確保できるような教員採用等の在り方ですが、個別最適な学びを実践するには、マンパワーと幅広いスキルと知識を有する人が要ると考えますけれども、1人の教員ができないというのは誰が見ても分かることであります。それゆえ、多様な専門性、背景を持つ人材を教師として取り入れるというタスクシフトは必須だと考えます。この場合、質の担保を考慮する必要がありますので、常勤での採用というのは困難かもしれませんけれども、能力のある方に就業していただくには、就業環境の整備をぜひ御検討いただければと希望いたします。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 この件も、後ほど小幡課長からお答えいただきたいと思います。
 では、井坂委員、お願いいたします。

【井坂委員】 神奈川県で県立高校の校長をしています井坂でございます。
 私、今日パソコンを変えたもので、手を挙げるのが遅くなったり、チャイムが入ったりして、大変失礼しました。
 私からは、今、御説明の最後に今回の答申の最後のところをお読みいただいて、当初から一番気になっていた部分、ある意味、この答申の肝の部分だと思っておりますが、「教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され」の部分について、この再認識の認識の主語は誰なんだろうと思っております。当然、まずは、我々教員自身が再認識すべきことでしょうし、広く社会の皆さんが主語となり、教師という仕事について再認識してくれることが一番ありがたいことですし、実際、令和の日本型教育を担う教師の存在がそういう認識として位置付けられることにこそ、この答申の意義だということを理解しているところです。  
 最初に戸ヶ﨑委員から「当事者意識」という言葉をご指摘いただきました。私も全くそのとおりだと思いました。そもそも、今回の答申については、教育に携わる人はもとより、広く国民の皆さんが、教育を考える際には、当事者として、この答申を読んでいただきたいと思うばかりです。自分自身も40年も学校に務めており、このような答申のダイジェスト版などを読んで分かったような気になっていた次第ですが、今回、議論に参加することで、あらためて、この答申の素晴らしさを認識し、広く皆さんに読んでほしいと思っております。
 その中で、現場感覚で1つだけ申し上げたいのは、今回、「総論に示す3つの方向性」の5つの改革が占められている中の、最後の部分、教師を支える環境整備について、研修履歴の記録・管理を自己目的化しないとある部分については触れておきたいことです。これは令和5年度の実施に向けて、本県でも既に県教委や我々も含めて検討しているところですが、或いは、これを実際4月に学校現場に落としていくと、どうしても現場というのは、一生懸命に取り組むとなると、自己目的化してしまう部分があるんです。これはまさに今申し上げたように、前回も小林真由美委員が仰っていましたが、是非ともこの答申をしっかりと読ませ、理解していただくような、普及するような方法があるといいと思います。
 学校現場にいると、何をすればいいのか、何をやればいいのと、どうしても受け身になってしまい、具体のところを迫ってしまう傾向があって、ややもすると、どうしても自己目的化してしまう傾向がなきにしもあらずというのが現実であります。 
 次に、前回の総会の際も少し話題になっていたことですが、大学生が教育実習などに3年生、4年生の時だけではなくて、早い段階から現場へどんどん行くのがいいのではないかという考え方もあり、これは総論としては、いわゆる早めに現場感覚を身につけてもらうために学生さんに学校に入ってもらうことは大いに賛成なんですけれども、ただ、現実に実際に入ってもらうときはどうであろうかと考えると、いろいろな意味で、大学と学校の現場が、本当に調整というか、連携というか、理解した上でやらないと、様々な懸念を持つものです。現在の教育実習の状況であっても、高校の場合だと、教育実習生の授業行なった後に、時には、その部分の授業をやり直さなければいけない部分も決して少なくないんです。その意味でも、この答申の方向性は大切にしながらも、これまた自己目的化しないといいましょうか、この答申が、すぐできることはどんどん進めていただきたいし、また、一方、実際に現場感覚で考えたときには、調整や一定の手だてが必要なことについては、実際やるのは県教委レベルになると思いますが、よく調整していただいて、ここにあるように、何とか教員の仕事、存在が再認識されるような方向に向かって進めていけるとうれしいと思っております。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 研修履歴システムが自己目的化しないというのは非常に重要なことであると思っております。
 今、4人の委員の御発言がありました。全体を通じて、また、具体的に御質問も出ておりますので、小幡課長からお願いしたいと思います。

【小幡教育人材政策課長】 4人の委員の皆様、ありがとうございました。
 幾つかいただきましたので、回答させていただければと思います。
 まず、小林委員からいただいた採用試験についてでございます。今、協議会で、各教育委員会からもいろいろな意見をいただき、また、いろいろな課題も提示され、早期化するとしても、いろいろなことをクリアしていかなければいけないということで議論を進めているところでございます。小林委員からも御提言がありました3年次の試験、こういったことを具体的に考えている自治体も、東京都をはじめ、出てきているところでもございますので、協議会の場では、こういったことも含めて、採用時期のスケジュールだけではなくて、3年次はもちろんですが、作問の仕方とか、様々な意見を出してもらっていますので、これから5月、6月に向けて方向性をまとめていきたいと思っていますが、3年次の試験なども含めて、幅広く方向性を示していかなければいけないと思っております。
 あと、渡辺委員からいただいた御意見でございます。強み、専門性で9のカテゴリーを御提示させていただいていますが、これを全て学ぶということではなくて、9個ごとのそれぞれの強みを持った教師が育っていくようなことも必要ではないかということで、この例示をいただいているものでございます。ですので、STEAMが強い教師、心理が強い教師、外国語が強い教師、そういったそれぞれの教師に合った強みを伸ばしていけるような育成が必要ではないかということで、その全てをやるということではございませんので、御理解いただきたいと思います。あと、就業環境も大変大事なことでございますので、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。
 また、井坂委員からいただいた広く社会で共有すべきということとか、履歴が自己目的化しないということは非常に大事でございます。戸ヶ﨑委員からもいただいた当事者意識を持ってということもございますので、今後、私ども、この答申を教師の皆さんにも読んでもらう、見てもらう、知ってもらう、今、こういった動画等の取組も準備しているところでございますので、答申の内容を教師の方にもしっかり読んでもらえるような努力をしていきたいと思っております。また、履歴に関して、4月からスタートするということで、今、各教育委員会、悩みながらやっていると思っております。我々も、履歴をすることが目的ではなくて、大事なことは教師の新たな学びが個別最適、主体的、協働的、こういった学びにつながることがこの履歴の手段です、この履歴はあくまでも手段ですということは何回も説明しているところでございますけれども、来年度、制度がスタートした後も、しっかりフォローしながら、運用で目的化するようなことがないように進めていきたいと考えております。引き続き、よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 小幡課長から御発言いただきました。この件は一応ここまでとしたいと思うんですけれども、私からも一言だけ。私が今おります教職員支援機構NITSといたしましても、この答申を受けまして、教職員の学びを支える取組を来年度しっかりと展開していくべく、今、準備しております。また、皆さんと御相談しながら進めてまいりたいと思っておりまして、教職大学院や県の教育委員会、市町村の教育委員会とも、様々な形でお話を聞きながら、御指導いただきながらやってまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。教師一人一人が主体的、対話的で深い学びを通して、誇りを持って子供たちの指導に当たれるようにしていきたいと思っております。それでは、この件は以上とさせていただきます。
 次に2つ目の議題でございますが、2つございまして、調査結果といたしましては、まず、令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果につきまして、村尾財務課長から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【村尾財務課長】 財務課長の村尾でございます。
 昨年末に、令和4年度の教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査を公表しました。目的のところにありますように、教育委員会を対象に働き方改革の取組状況を毎年調査いたしまして、教育委員会が把握している学校の情報から、全体のトレンドを把握しているものでございます。
 市区町村別の公表や取組事例の展開を通じて働き方改革の取組を推進しておりますけれども、文部科学省のホームページにおきましても、都道府県ごとに整理して公表しているところでございます。都道府県ごとの概要は、必要に応じて、ホームページで御確認いただければありがたいと考えております。
 教職員の勤務実態については、時間外勤務の月45時間以下の割合を4月から7月で平均してデータを出しており、令和元年度を見ますと、45時間以下の割合が小学校については51.5%になっており、令和4年度では63.2%となっています。中学校では、令和元年度の36.1%が令和4年度では46.3%となっておりまして、新型コロナウイルスの影響で、特に令和3年度から令和4年度にかけては行事などの活動の制限等も緩められているというような状況もございますけれども、そういった中で、全体としては改善の傾向にあるということは言えるのではないかと思っております。
 一方で、依然として長時間勤務の教職員も多い状況ということも注意が必要であろうかと思っております。
 また、客観的な勤務実態の把握についてですが、ICカードやタイムカード等を活用して把握を行っている自治体は、都道府県、政令市が100%となっており、市区町村も、前回調査の86%から93%になっておりまして、全国的に適正な現状把握が進んできているということは言えようかと考えております。
 なお、未実施の市町村について、これまで開始予定なしと回答していたところもありましたが、今回の調査ではゼロになっておりまして、令和5年度以降に実施する予定になっているところでございます。
 また、令和元年の給特法改正に基づきまして、在校等時間の上限の指針が定められておりますが、1か月の時間外在校等時間について45時間以内とするといった指針に係る条例や規則については、多くの自治体で整備されているという状況でございます。なお、選択的に活用できる制度として、1年単位の変形労働時間制というものが条例を整備すればできることになっており、この条例については、都道府県の4分の1で整備がなされているという状況でございます。
 具体的な取組の実施状況でございますけれども、これは平成31年の中教審の答申において、役割分担・適正化のための「3分類」を示しております。「基本的には学校以外が担うべき業務」として、登下校に関する対応などがあり、「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」として調査・統計等への回答などがあります。そして一番右が「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」として、例えば、授業準備や、学校行事の準備といったことが分類されております。こういった項目に基づきまして、実施状況を聞いておりますが、全体としては、実施状況が改善されているところでございます。
 その中で特に改善されているものとしては、学校と保護者間における連絡手段のデジタル化であり、都道府県、政令市において90%以上、市区町村においても昨年度から大きく伸びて80%以上となり、取組が進んでいることがうかがえます。
 学校あるいは教育委員会だけでできる業務、事柄については取組が進んでいるわけですけれども、地域住民や保護者、学校以外の主体の協力を得る、学校単独ではできないような事柄については、実施率に依然として課題があり、さらに推進していく必要があると考えております。
 今後の取組として、小学校における35人学級の計画的整備や小学校高学年の教科担任制の推進のための教職員定数の改善として令和5年度の予算案に盛り込んでいるところでございます。さらに、教員業務支援員などの支援スタッフについても令和5年度の予算案で拡充をしております。引き続き、学校DXの推進なども含めて、取組を推進するための措置を講じていく必要があると思っております。
 このほか、教員業務支援員の補助金交付の際に取組状況を勘案するといった取組や、令和5年度からの新しい取組として、働き方改革の推進によって勤務状況の改善が見込まれるような学校を指定して、民間事業者の知見も借りながら、伴走型の支援を実施し、それを全国に展開していくといった事業もスタートさせたいと考えております。
 また、本年度に勤務実態調査を実施しておりまして、この速報値が今年の春頃に出る予定です。最終的な分析結果については、令和5年度中ということになろうかと思いますけれども、これらも踏まえながら、給特法等の法制的な枠組みを含めて、処遇も含めて検討していく必要があると考えております。
 このために、昨年12月に論点を整理するための調査研究会を立ち上げております。本分科会の委員でもいらっしゃる貞広先生に座長をしていただいて、戸ヶ﨑教育長にも委員として御参加いただいております。ここでの論点整理、勤務実態調査の速報値なども踏まえながら中央教育審議会等で御検討いただくことになろうかと考えております。
 私からの説明は以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では、少し中身は違うんですけれども、引き続いて、新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究についても、お願いしたいと思います。御質問等につきましては、まとめてお願いいたします。
 この調査研究でありますけれども、東京大学の中村先生、龍谷大学の松岡先生、大東文化大学の香川先生に御出席いただいております。御説明は中村先生からお願いするということでよろしいでしょうか。

【中村東京大学大学院教授】 よろしいでしょうか。

【荒瀬分科会長】 よろしくお願いいたします。

【中村東京大学大学院教授】 東京大学の中村でございます。
 既にこの分科会におきまして、この調査プロジェクトは過去2回ほど報告させていただいておりますけれども、本日、最後の報告となります。時間がありませんので、早速ですが、報告させていただきます。次のページをお願いいたします。
 既に本分科会で報告させていただいておりますので、調査の詳細は省略いたしますけれども、コロナ禍で教育現場に生じたことを実証的に捉え、記録するために、教委、学校、児童生徒、保護者、この4者に2時点でのパネル調査、つまり、同一対象への繰り返し調査を実施してまいりました。
 私どもの分析班はこのスライドの右に書いてあるメンバーですけれども、分析内容といたしましては、教育委員会や学校の対応とかICTの問題、児童生徒の心理の問題、学習行動、家庭環境、社会的格差の問題等々を多面的に分析しております。次のページをお願いいたします。
 実施時期は、ちょうど第3波の直後辺りと第6波に入る直前辺りを中心に実施しておりまして、あと、この赤い字で書いてあるところですけれども、緊張感のある時期から少し緊張が解けてきた時期に調査をしておりまして、その変化を見ることができる形の調査になっております。本日は時間の関係で、学校行事や部活動関連の部分を中心に報告したいと思っております。次のページをお願いします。
 御存じのように、コロナ禍において、多くの学校行事や活動が抑制されて、学校現場に様々な影響が及んだことはまだ記憶に新しいわけですけれども、その実態は十分に把握されておりませんでしたので、検討してみました。この表は学校調査のデータを示したものですけれども、多くの行事が中止されたことがここから確認できます。中止率というのがあるんですけれども、令和3年度には、押しなべて減少しております。右の列で「変化」と書いてあるところですが、この赤い網掛けが変化の大きいところで、それだけ部活を中止した割合が大きく減少している、こういう形になっております。私たちの調査は、同じ学校に同じ質問を2時点で尋ねているパネル調査になっておりますので、どういう学校がどういう変化を起こしたのかということが分かる設計になっておりまして、その点を分析したのが次の結果になります。次のページをお願いします。
 今、一番上に黒丸が3つ書いてあります。これは分析の結果洗い出された要因ですけれども、教職員や児童生徒の状況は当然影響がありますが、コロナ感染状況なども、1回目の調査では影響があるという結果が出ております。同時に、保護者、地域住民の学校参加の状況が中止率に有意に影響を与えていたという結果が得られております。これは下にも書いておりますけれども、教職員のマンパワーの不足を保護者や地域が補っている可能性とか、保護者やコミュニティーとの関係がコロナ流行前から構築されていたことで、状況の変化に即応した臨機応変の対応ができるようになった可能性もあるのかもしれません。次のページをお願いいたします。
 そこで、児童生徒への直接的影響を運動会、学芸会、遠足に絞って、児童生徒調査データで検討したのが左の表になります。結果だけ申し上げますけれども、他の諸要因をコントロールした上でも、この表は小学生ですけれども、運動会と遠足の中止が「この1年間の学校生活はつまらなかった」という意識に影響していることが示されております。これは全ての行事で当てはまるわけではないんですけれども、やはり、行事の中止は影響があるという結果が部分的に出てまいります。また、右の表は成績別に見たんですけれども、学校行事の中止率が学校生活の不満につながっているのは成績の下位層において、やや目立つという結果になっております。次のページをお願いいたします。
 以上は小学生の学校行事の分析ですけれども、中学生においては、部活動も同様に大きな影響があったと考えるために分析してみました。その結果の一部がこの資料であります。7割ほどが部活の縮小を「残念」と考えていたことが分かりますけれども、もともと部活に熱心だった層で、そうした回答が際立っているというのが、この右のグラフになります。逆に言いますと、もともと熱心でなければ「残念」というばかりでもないという様子もかいま見えるということになっております。次のページをお願いいたします。
 ここはまとめなので、繰り返しになりますので読みませんけれども、このほかに、教師の多忙化とかICTの社会格差の分析も参考資料としてつけましたので、こちらについても、ちょっとだけ触れさせていただきたいと思います。次のページをお願いします。
 教師の多忙化は左のグラフにもありますとおり、休業中よりもその後が多忙になっていて、その後、多忙状況が継続しているような感じのグラフになっております。全国学調のデータと突き合わせることで信頼度が高そうだということが分かっておりまして、また、文部科学省の情報化調査とも対応させることで、コロナ禍初期にICT環境が整備されていなかった学校ほど多忙化していたということも分析結果で見いだされたりしております。次のページをお願いします。
 ICTの活用ですけれども、やはり、格差についても配慮が必要な面があります。ICT活用について、社会経済的地位の平均が高い学校ほど困難を感じていない形になるなど、これまでの私たちの報告同様に、社会的格差はここでも影響を与えています。学校のICT活用格差の背景の少なくとも一部は、児童生徒の出身家庭のSES(社会経済的地位)だったと考えられます。学校内の整備を進めるだけでは、実質的な学校内外におけるICT活用が同じになるわけではないことを示唆しておりまして、政策を議論する際、教育格差という実態に自覚的になる必要性があることを意味すると思われます。次のページをお願いいたします。
 以上が本日の報告になりますけれども、最後に、今回、調査研究の総括を書いたスライドをつけさせていただきました。分析結果の詳細は、別途、まとめの報告書を御覧いただければと思います。スライド全てを説明する時間もないんですけれども、赤字で書かせていただいた点、今後の教育政策においても、ぜひ踏まえていただきたいと思って書いております。まず、継続してデータを取り続けることが大事だということ、社会的背景も含めて調査していただきたいということ、多くの研究者にデータを簡便に提供していただくということ、これは恐らく政策立案とか修正には基本的なことだろうと思いますので、今後とも、ぜひ御尽力をお願いしたいと思います。
 簡単になりますが、以上で御報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 中村先生、ありがとうございました。大変貴重なデータに関しまして、非常にまとめた形でお話をいただきました。今の御報告と、先ほど村尾課長から御説明いただきました教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果、この2つをまとめて、今から15分程度で質疑応答をさせていただきたいと思います。先ほどと同じように、御発言の方は手を挙げていただきたいと思います。
 では、八並委員と渡辺弘司委員、そして若江委員、秋田委員、この4人の方の順でお願いいたします。
 八並委員、どうぞ。

【八並委員】 日本生徒指導学会の八並です。
 先ほどのコロナの調査に関して質問ですけれども、コロナの調査の5ページ目で、コロナ禍における行事の中止の影響というのがありますね。これは恐らくこの調査研究の非常に重要な柱だと思うわけですけれども、質問が3つあって、1つは、ここで使っている分析名ですね。もう一つは、このモデル、つまり、何が目的変数で、説明変数は何かということ。それから、2つ表があって、表の下にR2(R二乗)というのがあります。このR2というのは一体何であって、今示されているR2(R二乗)をどういうふうに解釈されているかという3つの点、後でお答えいただければなと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 中村先生、順にお答えいただいてよろしいでしょうか。

【中村東京大学大学院教授】 では、御質問に簡単にお答えしたいと思います。
 分析名は、ここに書いてある固定効果モデルというのが分析名でありまして、一種の重回帰分析と思っていただいたらいいんですけど、パネルデータに特化した重回帰分析のやり方で、回帰分析の回帰係数が書いてある、そういう言い方で皆さんに十分納得いただけるかどうか分からないですけど、そういうものです。値が大きいほうが効果がある、そういうふうに読んでいくものでありまして、この分析モデルですけれども、表の上に書いてあるのが説明される被説明変数ですね、「学校生活不満」と書いてありますけど、これに対して各学校行事がどう影響しているのか、左の表ですと、運動会、学芸会、遠足、右ですと学校行事の中止率、ここが注目する変数ですね。そこを見ていただいて、先ほどの説明も、そこだけしました。あとの変数に関してはコントロールするための変数として入れてあるので、今回の解釈ではそんなに深入りしなくていいと判断しています。
 R2の意味ですけれども、全体の学校生活不満のデータの分散のどれぐらいをこのモデルが説明しているのかという値を示す数値でありますので、この値自体はそんなに大きくない値ですね。ただ、ここで見たかったのは、全体の説明力を上げるモデルを探すのではなくて、個別の変数、つまり、学校行事が中止になったかどうかというのが影響を与えていたのかというところが見たかったので、ここは全体説明力というよりは、個々の変数の回帰係数サイズであったり、有意かどうかであったりというのを見た解釈をして、先ほど御説明した次第です。
 以上です。

【八並委員】 これ、いわゆる決定係数ですよね。

【中村東京大学大学院教授】 そうです。

【八並委員】 そうですよね。無視していいと言われますが、ほぼ、説明力ないですよね。

【中村東京大学大学院教授】 これはある程度数が大きいサンプルなので、モデルとして説明力が小さくても、有意になったりすることはあると思います。

【八並委員】 ほぼゼロでも意味があるということですか。

【中村東京大学大学院教授】 いや、どこまでを認めるかというところはあるんですけど、人間関係のデータというのは、間々、決定係数が低く出ることが多いし、特に今回のように、意識であったり、それから4段階評定の尺度になっていますので、非常に感度が悪いですよね。ですので、決定係数が低いから一切見ないという形ではやっておりません。

【八並委員】 運動会だけの単回帰とか、やられているんですか。行事の中止に対する不満が、目的変数ですよね。

【中村東京大学大学院教授】 はい。

【八並委員】 それに対して運動会だけの変数を入れ込んで、単回帰とかやられたんですかね。

【中村東京大学大学院教授】 分析したのが私ではなくて研究メンバーの一人なものですから、ちょっと今、手元にそのデータはないんですけれども、研究会においてはやっていたと思います。

【八並委員】 これは公開データになるので、報告書では、一般の人も分かるように、データの解釈部分は丁寧に書かれるとは思いますが。

【中村東京大学大学院教授】 申し訳ありません。ちょっと時間がなかったんで、早口で分かりにくかったですね。失礼いたしました。

【八並委員】 私は、統計学を教えているので大体分かりますが、プレゼンや報告書の書き方に関しては、国民への公開データなので、少し丁寧に解説してもらうとよろしいのではないかと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 中村先生、毎回、十分時間が取れないまま、いろいろと御不満もおありかと思います。本当に申し訳ありません。
 では、渡辺弘司委員、お願いいたします。

【渡辺(弘)委員】 医師会の渡辺です。
 資料2-1で2つと資料2-2で1つ質問させてください。
 資料2-1の10ページに、働き方改革の結果、経年的な比較がございます。教師の働き方改革に関して、学校医の健康管理医の立場からすると、結果のエンドポイントというのは単に勤務時間の短縮ではなくて、他の職種と比べても高い精神疾患の罹患率の改善や休職率の低下ではないかと考えるわけです。どのようなトライアルをされても、結局、PDCAサイクルを回して効果を検証する必要があるのではないかと思います。時間短縮を目的にするのではなくて、やはりその効果を見るべきではないかと思いますので、事務局でそのようなお考えがあるのかないのかをお教えいただければというのが1点でございます。
 もう1点は、資料2-1の15ページに校内清掃民間委託ということが示されておりますが、これは財源が必要な案件ではないかと思います。やはり財源が潤沢な政令市が高くて、市町村が低いのはそのためではないかと推測されますが、国としては、地財措置などの財政的な支援はお考えになっておられるかどうかをお教えいただければと思います。
 それから資料2-2で、これは中村先生にお教えいただきたいのですが、8ページに、結果として、教師の多忙化はやや増加していると示されておられますけれども、資料2-1では、勤務時間の短縮が図られたということになっております。この違いというのは母集団の違いなのか、それとも、勤務時間が短くなっても多忙化はかえって悪化したと考えるべきなのかという点の解釈の仕方を教えてください。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では、まず村尾課長、いかがでしょうか。

【村尾財務課長】 ありがとうございます。
 まず1点目の精神疾患については、別途、人事行政の調査でその分析自体はされているかと思います。教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査は、最終的には働き方改革のトレンドを把握するために実施しておりますが、今、勤務実態調査も実施しておりますので、その分析も踏まえて、政策に反映させていく必要があると考えております。
 それから2点目の校内清掃の民間委託の件ですけれども、民間委託そのものということではないですが、例えば学校の用務員がやっているような仕事であれば、地方財政措置が講じられております。人を雇う形にするのか、委託をするのかというのは、自治体の判断によりますが、学校の先生の仕事をサポートしていくということで言えば、先ほど申し上げましたように教員業務支援員の配置について、国の補助という形で、サポートしております。これらの結果も踏まえて、さらに、できることを検討していく必要があると考えます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。続いて、中村先生、お答えいただけます範囲でお願いいたします。

【中村東京大学大学院教授】 すみません、これも私の分析ではないので、もしよろしかったら松岡先生も後でフォローしていただければと思いますけれども、まず、勤務実態の調査とこのデータで、データの取り方が全然違うのではないかと。勤務実態の調査は私よく存じ上げないんですけど、先ほど教育委員会なんかが調査対象だと書かれて、個人でデータを取っているんですかね。その辺りもよく分からないというのが一つと、我々の場合は、そうではない形で取っているということだと思います。それが1つの原因として考えられるのと、もう一つは、何でしょうね、すみません、言おうと思っていたのを忘れてしまった。取りあえず、私がまず思いついたのはそれです。
 あと、指標の違いですね。指標はこの下にも書かれておりますように、業務量とか人員の不足とかも含めての指標になっていますので、そこが違うというのは一つだと思います。
 松岡先生、何かあれば。

【松岡龍谷大学准教授】 調査単位が学校ですので学校長の認識というのがそちらと私たちの調査の最大の違いかと思います。また、先ほど中村先生もおっしゃったように、労働時間を加えて業務量とか、心身の不調とか、人員不足に合わせた指標なので、そういう指標の違いがあります。そのうち業務量は、全国学力・学習状況調査の結果でもコロナ以前より増えています。それと、今回の報告データは2021年までの結果です。これらの違いがあるので違った形が見えるのかなと思います。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 渡辺先生、よろしいでしょうか。また、具体に詳しい御質問等がございましたら、事務局に頂戴いたしましたら、事務局でやり取りしていただくことにしたいと思います。

【渡辺(弘)委員】 そうですか。はい、ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 では、若江委員、お願いいたします。

【若江委員】 若江でございます、よろしくお願いします。
 先ほど、学校の働き方改革のための教職員に対する調査をお聞きしたんですが、それに派生しまして、指導主事を対象としたこのような調査というのは全くされていないのでしょうか。といいますのは、やはり今、教育改革を進めるに当たって、教育委員会の組織そのものの役割は非常に重要で、そこで業務を担ってくださっている指導主事の方々が激務であるということを承知しております。指導主事の方々というのは、行政職員とは別に基本的に教員がある期間任命され、教育委員会でその職に就かれるということですが、これまで求められていた行政職的な能力に加えて、指導主事に求められる能力がどんどん拡大、高度化しているように思いますので、ぜひ一度、指導主事についても実態をお調べいただいているのかどうか、そうでないなら調べる必要があるのではないかなと思いました。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 村尾課長、いかがでしょうか。

【村尾財務課長】 ありがとうございます。
 今、指導主事を対象とした調査はないと理解しておりますけれども、指導主事も行政の職員ですので、各都道府県の教育委員会であれば、行政職員の勤務実態の把握はやっているかと思いますので、いくつかの自治体に聞くことなどが可能かということは少し検討させていただきたいと思います。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 ちょっとお待ちください。堀野課長、今の件、いかがですか。

【堀野初等中等教育企画課長】 村尾課長から言ったとおりですけれども、文部科学省として、これまで指導主事の勤務実態について調べたりはしておりません。今日の最後の議題で教育委員会の在り方について有識者会議で議論しておりますけれども、その中で教育委員会事務局の在り方ということも議論しております。今後、勤務実態について、こういったところで取り上げるか、我々としてどういう形で把握するか、少し考えさせていただきたいと思います。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 若江委員、よろしいでしょうか。

【若江委員】 はい、ありがとうございます。指導主事の方々の激務の様子を拝見しておりますので、ぜひ、そこを調べていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 はい、ありがとうございました。
 では、細田委員、お願いいたします。

【細田委員】 働き方改革のところで、漠然と感じていることとですけれども、さいたま市でも平成30年から毎年同じ時期に、仕事のやりがい、満足度、負担や多忙感、時間外在校時間の調査を定点でやっておりまして、その結果を見ますと、今日お示しいただいた結果同様、時間外在校時間の推移は経年で随分減っております。数字としても30%くらい、もしくは、もう少し数字が減っているわけです。その背景には、自治体として、とにかく、できる限りの働き方改革にチャレンジしてきた結果だと、そんな分析をしているんですけれども、一方で、負担や多忙感を感じていますかという結果については微増となっております。ここで私が近頃感じているのは、量的な働き方改革の限界といいますか、これから質的な働き方改革についてどう取り組んでいったらいいかということを教育委員会内でも議論しているところでございます。
 2点目は、コロナ禍が学校、児童生徒に及ぼした影響、資料2-2でございます。我々が漠然と感じていたことについて、こうやって歴然と数字で示されています。このようにエビデンスで示されることで、教員が学校で漠然と感じていることが裏づけされているというところでございますが、ただ、私どものような基礎自治体の教育委員会は、経済的な援助について、行政的にやっていくこともさることながら、一方で、学校現場、また、家庭でSESを凌駕するような教育活動といいますか、そういう子供たちへのアプローチが大変重要だと考えておりまして、こういったことについても、今後、それぞれの自治体でしっかり議論して、それぞれがアプローチしていくことが大切ではないかと感じているところです。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 今のことについて、もし、中村先生あるいは村尾課長、何かございましたら。よろしいでしょうかね。

【中村東京大学大学院教授】 SESに関しては松岡先生が御専門なので、もしあれば。

【荒瀬分科会長】 松岡先生、もし何かございましたらお願いします。

【松岡龍谷大学准教授】 ありがとうございます、松岡です。教育格差を専門にしています。
 実際に社会経済的に恵まれない学校に追加支援をして、学力だけではなく行動や健康など多面的な指標に関して、実際にどういう児童生徒に対してどの程度の効果があったのか、半年や1年といった短期だけではなくて中長期な結果も含めて調べるべきで、今後、委託研究含めて文部科学省が主導する形で調査研究を進める必要があると思います。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 これは事務局で受け止めて、また、御検討いただければと思います。
 村尾課長、よろしいでしょうか。

【村尾財務課長】 先ほど細田教育長がおっしゃったような実際の負担と負担感の違い、あるいはやりがいという部分も大事な部分だと思っておりますので、先ほど申し上げました勤務実態調査の結果も含めて、併せて検討材料にしていきたいと考えています。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、中村先生、松岡先生、香川先生、本当にありがとうございました。また、村尾課長もありがとうございました。この件はここまでとさせていただきたいと思います。
 中村先生、まとめていただいたもの、ぜひ拝見したいと思っております。ありがとうございました。

【中村東京大学大学院教授】 よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 それでは、議題3に移りたいと思います。学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行についてということで、橋田地域スポーツ課長から御説明いただきます。よろしくお願いいたします。

【橋田地域スポーツ課長】 橋田でございます。
 昨年7月の初中分科会でも状況報告させていただきましたが、改めて、本日は最新状況を中心に御説明させていただければと思います。
 それでは、まず資料の1ページ目を御覧ください。こちらは部活動改革の必要性を改めて確認的に整理しているところでございます。
 部活動の意義といたしましては、これまで、生徒のスポーツ・文化芸術に親しむ機会の確保とか、自主的・主体的な参加による活動を通じた責任感・連帯感の涵養等の意義があったわけですけれども、課題といたしましては、少子化の進展によりまして、従来と同様の学校単位での体制が困難になっています。また、学校や地域によっては存続が厳しくなっています。さらに、必ずしも専門性や意思に関わらず教師が顧問を務める指導体制の継続は、学校の働き方改革が進む中、より困難になっているという状況がございます。
 そこで、少子化が進む中でも、将来にわたって生徒がスポーツ・文化芸術活動に継続して親しむ機会を確保するため、「地域の子供たちは、地域で育てる」という意識の下、多様で豊かな活動を実現していく必要があります。このことは生徒のみならず、地域住民にとってもより良い環境整備につながるという中で、まちづくりにもつながることになります。
 続いて、2ページ目を御覧ください。これは昨年6月の検討会議提言等を踏まえた経緯を整理したものでございます。11月には事例集を公表、その後、ガイドラインや予算の動きがございますので、特に本日は、この点を中心に説明させていただきます。
 資料の3ページ目を御覧ください。「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」でございます。平成30年に策定しておりました運動部、文化部のガイドラインを統合した上で、全面的に改定する内容になっております。大きく4つのパートに分かれておりまして、ローマ数字の1は、学校部活動の内容でございます。基本的には従前の内容を踏襲するものになっております。主な内容といたしましては、教師の部活動への関与について業務改善・勤務管理に留意する、部活動指導員等を確保する、週当たり2日以上の休養日を設定する、部活動に強制的に加入させることがないようにする、学校と地域が協働・融合した形での環境整備を進めるといった内容を盛り込んでいます。
 ローマ数字の2から4が新しい要素でございます。公立中学校の生徒を主な対象にしながら、高校や私学は実情に応じて取り組むことが望ましいという内容でございます。まず、ローマ数字2の新たな地域クラブ活動に関わりまして、地域クラブ活動の運営団体・実施主体の整備のほか、地域のスポーツ・文化振興担当部署、学校担当部署、関係団体等による協議会などの体制整備、質の高い指導者の確保、意欲ある教師等の円滑な兼職兼業、競技志向の活動だけではなく、生徒の志向等に適したプログラムの確保について盛り込んでいます。さらには休日のみ活動する場合も、原則として1日の休業日の設定、困窮家庭への支援といった内容も盛り込んでおります。
 続いて、資料の4ページ目、ローマ数字3の学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行に向けた方向性に関わる内容でございますけれども、まずは休日の地域環境の整備を着実に推進していくこととしています。平日の環境整備はできるところから取り組んでいただくことが考えられますけれども、休日の取組の進捗状況を検証しながら、さらなる改革を推進していくこととしています。その次の内容につきましては、5ページ目の資料を基に説明させていただきます。右側にございますように、休日の地域クラブ活動ということで、地方公共団体や多様な組織・団体の体制の整備を進めていくことになりますが、こちらは法律上は社会教育、スポーツ・文化芸術の一環でございます。子供を相手にしているという中で、学校と活動方針の情報共有等を通じて連携いただくという整理になっております。その上で、右側のクラブ活動の整備が難しいところは、左側、学校活動の地域連携ということで、合同部活動あるいは部活動指導員の配置等により御対応いただくという内容で整理しております。
 その上で、4ページにお戻りください。ローマ数字3の下から2つ目にございますように、令和5年度から7年度までの3年間を改革推進期間として、地域連携・地域移行に取り組みつつ、可能な限り早期の実現を目指すこと、都道府県、市町村は、方針・取組内容・スケジュール等を周知するという内容を盛り込んでおります。ガイドライン案の時点では、達成時期として、国としては令和5年度から3年後の令和7年度末を目途として想定し、支援に取り組んでいくという内容にしておりました。しかしながら、この間、自治体の取組状況や、首長団体の御意見のほか、まずは地域連携から取り組みたいという御意見を踏まえ、国としての達成時期は明記しておりませんけれども、令和5年度から取組をスタートするということや、3年間を改革推進期間として位置づけつつ、可能な限り早期の実現を目指していくという形で整理しております。
 右側、ローマ数字4、大会等の在り方の見直しでございます。大会の参加資格に関わりまして、地域のクラブ活動の参加ができるようにということで、既に日本中体連では令和5年度からの大会への参加を承認しているところでございます。その着実な実施を求める内容になっております。
 続いて、資料の9ページに飛んでいただければと思います。令和4年度補正予算でございます。休日の地域移行の体制構築に関する支援ということで、コーディネーターの研修会とか、自治体の方針策定等に係る協議会あるいは説明会、都道府県の人材バンクの設置に係る経費を補助事業として計上しております。
 続いて、10ページでございますけれども、令和5年度予算案ということで28億円計上しておりまして、方向性の右側にございますように、地域の実情に応じ、スポーツ・文化芸術活動の最適化を図っていく、そのことを通じて体験格差を解消していくこととしています。事業内容は、まず1つ目といたしまして、ローマ数字1、部活動の地域移行等に向けた実証事業ということで、関係者との連絡調整の体制、運営団体の整備、指導者確保、参加費用負担支援に関する実証事業に取り組みつつ、その成果を全国的に広めていくという内容で計上しております。
 続いてローマ数字2、中学校における部活動指導員の配置支援ということで、学校部活動の地域連携の一環として、部活動指導員の配置の充実の経費も計上しております。
 その他、ローマ数字3、公立中学校の施設の整備ということで、地域クラブに関わる用具の保管等のための倉庫の設置等の経費を計上しているところでございます。
 以上、最近の動向ということで説明させていただきました。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 ただいま橋田課長から御説明いただきました学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行につきまして御質問、御意見がございます方は、お手をお挙げいただきたいと思います。
 吉田信解委員、渡邉正樹委員、佐川委員、戸ヶ﨑委員、細田委員、現在5人の方が手を挙げていらっしゃいます。順にお願いします。
 では、吉田信解委員、お願いいたします。

【吉田(信)委員】 お世話になります、吉田でございます。
 この間、全国市長会社会文教委員の皆様方、また、私をはじめ委員長、副委員長と、橋田課長におかれましても、いろいろと議論させていただく中で、地域の実情に合った非常にきめ細かいスキームづくり等にも御尽力いただいてきたかなと思っております。
 私が申し上げたいのは、端的に言ってしまうと、理想形の押しつけになってはいけないということなのかなと思っています。地域の実情となると、それぞれの地域において、いろいろな実態がございます。それぞれの地域において、いろいろな悩みがございます。実は私、先日、地域におけるあるスポーツ団体が、地元の中学校のサッカーチーム、サッカー部の監督、コーチ、お子さんを集めて、元日本代表選手をお招きして、休日、サッカー指導をやっていただくという、そんな地域のクラブというか、スポーツ団体が企画していただいた催しに参加したんですけれども、実は地域の企業の皆さん方に協賛していただいて行ったイベントでございました。各学校のサッカー部の部員等が少なくなって、合同でチームをつくって大会等に臨むような状況が実際生まれている中で、非常に地元の状況に合った形で地域のスポーツ団体が行っていただいた極めて有効な事業だったと思っているんですけれども、さはさりながら、そういったスポーツ団体が皆さんの受皿をすぐつくれるか、これは無理でございます。それぞれがそれぞれの知恵を出し合いながら、それぞれの今置かれている困難な事案に対してどう立ち向かって、子供たちに対して、平日であれば最適な放課後、休日であれば所属しているスポーツなり芸術なりの技術をもっと磨いていけるような体制をつくるかということで、各地域が非常に暗中模索していると思っています。文部科学省から都道府県にいろいろな話が下りてきて、都道府県から基礎自治体にいろいろと話が来るという仕組みになっておりますので、こうしなければならないというような理想像みたいなものが出てきますと、本来、地域において特に手を加えなくてもいいものまで変えなければいけないのではないかという強迫観念が教育委員会等に働いてくることになってはいけないなと私は思っております。やはり、地元の現場における先生方あるいはお子さん方が置かれている状況の中で何が問題なのか、そこに適宜対応して、フィットするような施策の展開が必要で、国から理想形のようなものが出されますと、都道府県教委はそっちに動いていってしまう。そうすると市町村教員あるいは市町村のスポーツの現場にとっては、要するに屋上屋を重ねるような政策制度をやろうとして、また、そこに無理がかかるということになってはいけないと私は思っています。
 少し抽象的な意見になりましたけれども、要するに、国と都道府県と市町村という3層構造の中で部活動の地域移行が進められていく中で、ともすれば、基礎自治体の現場における地域の実情に合った課題、問題への解決が難しい方向に行ってしまうことがないように、我々としてもこれからも注視していきたいですし、引き続き、地元は地元における問題の抽出、どういうふうに改善していけばいいのかということに取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 この後、渡邉正樹委員、佐川委員、戸ヶ﨑委員、細田委員、岩本委員に御発言いただきます。岩本委員までとさせていただきます。冒頭申し上げませんでしたけれども、40分頃までしか時間を取ることができません。大変申し訳ありませんが、可能な限り手短にお話しいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
 では、渡邉正樹委員、お願いいたします。

【渡邉(正)委員】 東京学芸大学の渡邉です。
 私からは1点です。資料3の5ページ目、イメージ図の中に書いてあるんですけれど、部活動における、例えば事故が発生したときの補償の点ですね。現在、学校では、部活も含めて学校管理下の負傷などに関しては、災害共済給付センターの災害共済規約があるわけですけれど、今後の活動を見ていきますと、これが地域のクラブ活動になりますと、学校の管理下ではないということになりますから、このイメージ図の中では、災害共済規約ではなく各種保険となっていると思うんですね。部活動におけるけがというのは、スポーツ振興センターのデータを見ますと、毎年、中高で災害共済給付金を給付した件数の約半数、一番新しい令和3年度データだと、中学校だと45.8%、高校だと58.1%が部活動なんですね。となりますと、今後も同じような状況が続くと思います。
 ところが、災害共済給付は掛金は非常に少ないですし、それに対して支給される金額も結構、手厚いんですね。今後、これが民間の保険に入るということなのかなと思うんですけれど、参考資料のガイドラインの中に保険の加入という内容が書かれていまして、そうしますと、それは指導者、参加者全てに対して保険に加入するように促すとなっているんですけれど、これまでは、学校にいれば、授業での事故も部活の事故も全部、災害共済給付が賄っていた部分が、言ってみれば本人の判断で入らなければいけない。そうしますと、外の保険というのは掛金も高くなりますし、活動の種類によってはさらに高額になるわけです。金額も高くなってくるということで、ここにきちんと参加する生徒、保護者が加入するかどうか。費用の問題のところではこのことは触れられていないんですけれど、これは非常に重大だと思うんですね。毎年、部活動では、軽微なけがだけではなくて死亡事故も起きていますし、障害が残るような事故もあります。そういった中で、保障に関する議論が少し薄いと私は感じています。これは起きてしまった後で気がついても遅いですし、移行したらすぐに起こる問題なので、ここのところはもっと慎重に議論していただきたいと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。後ほど、橋田課長からお答えいただきたいと思います。
 では、佐川委員、お願いいたします。

【佐川委員】 全国町村会の基礎自治体として意見を述べさせていただきたいと思います。愛媛県の砥部町の佐川と申します。
 教職員の負担軽減や、少子化の影響に対するためという観点から、学校部活動の地域移行を進める必要があることにつきましては理解できますけれども、町村にとっては、指導者の確保や受皿の整備など、移行に際していろいろな障害があることから都市部と地域の間ではかなり格差が生じるのではないかという懸念もありますので、国の人的支援や財政支援が不可欠なことだと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 また、重要なことでございますけれども、学校の部活動につきましては、生徒の人間的成長を促す場ということで、学校運営に大きく寄与してきたということがございます。今後、部活動に参加しない生徒が増えるのではないかと想像しており、子供たちが放課後いかにして過ごすかということ、これらのことなどが学校運営で負の効果をもたらすことがあるのではないかといったことに関しましても危惧しておるところでございます。
 併せまして、部活動を地域移行した場合に、今まで学校部活動が果たしてきた人間教育の役割を地域のスポーツクラブの指導者が担っていくことができるのかどうかを懸念しておるところでございます。
 また、部活動の地域スポーツクラブの状況でございますが、都市部では地域スポーツクラブは多くありますが、私ども地方では地域連携がなかなか難しいこともございますので、そういったことも懸念しております。
 いずれにいたしましても、国におきましては、地域のニーズを十分勘案した上で、将来にわたり部活動の教育的意義が守られ、子供たちの心身の成長につながり、部活動の機会を確保できるような取組につきまして、慎重に検討していただきたいと考えております。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。この件も後ほどということでお願いします。
 では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 これまで私が述べてきたことと一部重複しますが、何点か意見を述べさせていただきます。
 1つ目は、以前にも申し上げました、学校部活動の持っている学習との両立や多様な人間関係、また今お話がありましたが、生徒指導などの総合的教育機能をどう維持していくのか、部活動が切り離された中学校教育の今後の在り方についても、関係省庁に加えて、各自治体、教育委員会、教職員、保護者や地域を巻き込んで、改めて熟議されていく必要があると考えます。
 2つ目は、中期的な視点になりますが、サスティナブルな学校部活動、地域クラブ活動とするためのエコシステムの構築という視点が非常に重要だと思います。要は、学校部活動や地域クラブ活動で指導を受けた生徒が、数年後、地元地域の子供たちを育成する指導者という立場になって、そこで指導を受けた子供が、将来、指導者にという仕組みづくりです。そのためには、自治体だけではなくて、大型の地域スポーツクラブやプロチーム、民間の事業者、大学、文化芸術団体など、多様な関係団体との連携を図ることも重要だと思います。そういう連携が点という不連続な連携になってしまうのではなく、線になる連続した切れ目のない連携を今後構築することが重要だと思います。
 3つ目、休日の地域移行でこれから構築していく運営主体や実施主体が、平日の部活動にも対応できるかを非常に危惧しています。特に教師の兼職兼業に期待する計画では、はっきり申し上げて、地域移行の道筋は非常に険しくなると思っています。学校から切り離された平日の部活動に当たる教師の服務はどうするのか。また、放課後の生徒たちの行き場や、どういった場を用意すべきかなど、そこまで丁寧に考えていく必要があると思います。
 4つ目にまた、本市の状況で考えますと、これまで中学校3年間を通じて大会への出場がない生徒ができるだけ出ないように、種目によって、多様なニーズやスキルに応じた大会の開催の工夫もしています。競技の特性もありますが、地域移行に伴って、3年間の経験に偏りが出ることがないような配慮ができるのか。地域のクラブ活動ではついていく自信はないが、このレベルだったらと部活を選ぶ生徒がいること。また、インクルーシブの視点に配慮した部活動や、マイナースポーツなど様々な実態があって、これを地域にあるクラブ活動のみに絞られて、取り残されるような生徒が出るようなことは避けなければいけないことなども課題だと思います。
 5つ目に、学校部活動の地域連携や地域スポーツ・文化クラブ活動移行は大きな改革になります。あくまでもその活動を支える財源は、地域間格差が生じることのないように、継続的な国庫補助を前提としていただくようにお願い申し上げます。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では、細田委員、お願いいたします。

【細田委員】 よろしくお願いいたします。
 昨年の6月に運動部活動の地域移行に関する検討会議からの提言があったことを皮切りに、その後も文化部等、それから、今回もこのように様々な提言、ガイドライン等が出ている中、振り返って、これまで部活動改革というのは少子化への対応とか教員の働き方改革という視点で語られることが多かったんですけれども、今回いよいよ、やはり子供たちがスポーツや文化活動を生涯にわたって楽しむために、地域に新しいスポーツや文化の環境を創造する必要があるという考え方が加わってきたことで、私は大変重要な視点が入ったなと思っているわけです。
 そこで、例えば、残念ながら日本は人口減少で、だんだんシュリンクしていってしまっているという現状の中で、日本全国を見渡したときに、義務教育段階の学校施設が3万校くらいあるわけです。その3万の学校施設を、地域の人たちも含めて、大人も、子供も、障害のあるなしにかかわらず、豊かなスポーツや文化活動ができる場所に移行していく、その最初の一歩をこの部活動改革で踏み出せるのではないか、そして踏み出していかなくてはならないのではないかという思いを持っています。
 今まで委員の皆様がそれぞれおっしゃっていただいているように、課題山積だということは痛いほど分かっております。とにかく一つ一つ解決しながら、各自治体によって状況が違いますので、自治体の数だけ仕組みづくりがあるくらいの大きな課題だと思っておりますが、とにかく前に踏み出さなくてはいけないという思いを強くしております。
 2つ目は、この改革の最大の課題は、戸ヶ﨑先生もおっしゃっていたんですけれども、中学校教育において、これまで部活動の果たしてきた教育的効果を、私たちは実は教育課程の中でいかに獲得できるか、教育課程、教育の営みの中で、本来は、子供たちの連携や何かをやり抜いていったり、主体的な活動とか、そういったものを獲得できるような教育活動を提供していかなくてはならないと思うわけです。ですから、例えばGIGAスクール構想で義務教育段階の全ての子供たちに情報端末が配られて、デジタルの優位性を使ってどうやって授業改革していくかということを、小学校と中学校、それぞれの学校現場をたくさん見せていただいて、自分の自治体ですけれども、学校訪問して、その実態を見てみますと、デジタルを使った授業改革へのエネルギーが高いのは、やはり小学校の先生方、小学校のほうが高い状況があります。決して、中学校の先生方、中学校がこういった授業改革が重要でないと考えているわけではありませんけれども、やはり、エネルギー不足を感じる。そのエネルギー基礎不足は、部活動がやはりエネルギーのかなりの部分を消費しているという、教員側ですけれども、そういった実態もあるので、肥大化した部活動から脱却して、教育改革に向かっていくエネルギーを中学校教育の中でも担保していく必要があるのではないかと思いまして、1つは、地域で豊かにスポーツや文化活動を子供たちが謳歌できるような仕組みづくり。それから、本来、学校教育の持つ教育課程の中で、いかに優れた教育的効果を獲得できるかを、やはり我々は考えていかなくてはいけない。非常に困難な道のりではあるけれども、一歩を踏み出さなくてはいけないということを痛感しています。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では最後に、岩本委員、お願いいたします。

【岩本委員】 岩本です、よろしくお願いします。
 私からは質問と意見、1つずつですけれども、質問としては、高校における部活動の地域移行の今後の見通しとか方向性というのは、どの時期に、どういう方向性なんでしょうかということです。
 併せて意見としては、地域における地域クラブの規模とか今後の展開を考えたときに、中学生だけなのか、高校生はどうなっていくのか、時期としてはどうなのかということが、ある程度見通しが分かると考えやすい部分もありますし、都道府県の教育委員会とか高校側も、自分たちと関係ないことだと見ていいものなのか。これから、3年の改革の集中期間が中学校で行われた後に、高校もすぐに来るということであれば、早い段階から、モデルづくりとか、いろいろな調査研究とか、中学校と高校は違う部分ありますので、そういったことも少しずつ始めていく必要もあるかもしれませんし、場合によっては、国でされるモデル事業というか、指定して進めていくものも、最初は中学校だと思うんですけれども、今後、高校ということもあるのであれば、そういったところも今のうちからいろいろ検証を進めていくことも必要になるかもしれないと思いますので、高校における部活動の地域移行の見通しみたいなところを伺えたらと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは橋田課長に御発言いただきたいと思いますが、全体の時間があと僅かになってまいりました。御指摘いただいた点、非常に重要なことがたくさんありますので、橋田課長にお答えいただきたいと思うんですけれども、できるだけ簡単にお答えいただくということをお願いするのと、若干時間を延長させていただくことになろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では橋田課長、どうぞお願いいたします。

【橋田地域スポーツ課長】 御質問、御意見、ありがとうございました。
 まず吉田委員の御意見に対しましては、当然、地域の実情に応じて多様なやり方がございますので、地域の実情に応じたスポーツ・文化芸術活動の最適化という観点で、国・都道府県・市町村が連携して、取り組んでいきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 2点目、渡邉委員の御意見、御質問でございますけれども、検討会議でもかなり議論になったところでございます。地域のクラブ活動に移行したとき、例えばスポーツ安全保険等の対象になるわけですけれども、スポーツ安全保険は、従来、補償額が災害共済給付より低いところがございましたので、長官から団体に要請いたしまして、補償額の見直しが図られているところでございます。
 その上で、例えば年間800円の追加の保険料の負担を生じるところがございますけれども、実践研究の中では、保護者の理解も得ながら負担いただいているところもございます。また、今後の実証事業の中でも、困窮世帯向けの支援として、そういった経費に充当することも可能な形で考えております。その成果は、また広げていきたいと思っております。
 また、教育的意義に関する御意見が佐川委員、戸ヶ﨑委員、細田委員からございました。この点については、部活動の教育的意義が地域のクラブ活動でも継承、発展させた上で、さらに地域での多様な体験や様々な世代との豊かな交流という新しい意義が生み出されるように、この点についての対応もしっかりしていきたいと思います。今回、まずは休日の地域連携・地域移行という中で、3年間の取組をしっかり検証しながら、改めて部活動の在り方というのは、次の学習指導要領の改訂に向けた議論の中で、全体の中での丁寧な検討が必要になるものと思っております。
 財政支援につきましては、今回の令和5年度の予算案は、このような形になっておりますけれども、この取組はだんだん広がっていきますので、関係団体、関係者の御意見も踏まえつつ、令和6年度の施策、それ以降の施策の充実につなげていきたいと思っております。
 最後、岩本委員の御指摘でございますけれども、高校の取扱いについては、今回、義務教育段階終了後、多様な活動が行われているという中で、学校の実情に応じて改革に取り組むことが望ましいという整理になっております。3年間の中学校段階の取組の検証をする中で、改めて次のステップとして、高校の在り方は、論点になってくるものと思っております。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 重ねての御発言もあるかもしれませんが、その場合は、事務局にメール等でお願いしたいと思います。申し訳ありませんが、次に進ませていただきます。
 最後の議題に移ります。議題4といたしまして、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議の審議経過についてであります。
 令和答申において、今後さらに検討を要する事項として示された地方教育行政に関する課題について検討を重ねていただいていまして、その審議経過について御報告いただきます。
 本日は、まず座長を務めていただいております清原委員からコメントを頂戴し、続いて、堀野初等中等教育企画課長から御説明いただきたいと思います。
 では、清原委員、お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます、清原です。
 荒瀬分科会長御紹介のように、令和3年1月の中央教育審議会の答申『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して』の中で、今後さらに検討を要する事項として、教育委員会の在り方、特に教育委員会事務局のさらなる機能強化や首長部局との連携の促進、教育行政の推進体制の在り方などが挙げられました。
 これを踏まえて、令和3年12月に本調査研究協力者会議が発足し、私は座長を務めています。この間、現職の首長や教育長を含む委員の皆様から、教育長、教育委員にとどまらず、先ほど議題2で注目された指導主事を含む教育行政に関わる職員の役割や課題に関する内容等について情報提供を受け、地方教育行政関係者からもヒアリングをいただきまして、それらに基づく質疑応答、意見交換を行うといった10回にわたる会議を通して熱心に検討を進めています。
 この会議ではこれまで、(1)教育委員会の機能強化・活性化のための方策、(2)首長部局との効果的な連携の在り方、(3)小規模自治体への対応、広域行政の推進のための方策の3つのテーマについて議論を進めてきました。
 本日は、これまでの議論の経過と主な内容について説明させていただき、本分科会に係る諸課題の御検討に役立てていただきたいと思います。時間の関係もありまして、事務局の初等中等教育企画課の堀野課長に簡潔な説明をお願いしておりますので、どうぞお聞き取りいただきますようにお願いいたします。
 以上です。

【堀野初等中等教育企画課長】 初等中等教育企画課長の堀野でございます。
 今、座長から御説明がありましたとおり、資料4-1の1枚目、3つの議題、これまで議論してきまして、(4)として学校運営の支援のために果たすべき役割については、今後、議論していくこととしております。
 2枚目を映していただきたいと思いますが、これまでの議論についてです。
 1番目の教育委員会の機能強化につきまして、まず第一に事務局の機能強化として、赤い文字の2つ目にありますとおり、先ほども指導主事という声が出ておりましたけれども、教育委員会事務局には教員出身の指導主事と一般行政出身の方がいます。教員出身で来た指導主事の方々が行政の事務処理に慣れていないということで、なかなか学校現場の指導に割く時間がないということにならないように、しっかり役割分担をする必要がある。
 一方で、一般行政職の方も教員の指導に関わる業務にもう少し関わりを持っていただいたほうが、どういう事業を打ち立てて予算執行したらいいか、お互いにいい分担ができるのではないかということを議論しております。
 また、その下にありますように、教育行政職、専ら市町村一括採用ということで教育委員会に来る方も多いわけですけれども、教育行政専門の雇い方といったこともあり得るのではないかということ。
 その下の教育委員会会議そのものの活性化ということで、事務局提案の承認ということばかりではなく、教育委員自らの問題意識に基づく課題設定をして議論していただくといったようなことも議論に入れております。
 また、その左下、教育長及び教育委員、何よりも人選が重要でございまして、これは首長さんが任命して、議会が同意するわけですので、しっかりとした人選をしていただくということ。人選した後に、教育委員の方々というのは、ただのアドバイザーということではなくて、執行機関としての責任者ですので、そういった立場をしっかり理解していただいた上で御判断いただくよう、事務局もお膳立てをしなければいけないということでございます。
 右側、(2)として首長部局との効果的な連携ですけれども、これは現在、総合教育会議として首長が主催する教育委員会との会議という制度ができておりますけれども、これを本当に有効に使っていただくために、いじめの重大事態とか緊急事態、こういった場合に、しっかり総合教育会議を活用していただくということ。また、年に数回、定例会だけということだと形骸化しがちとなりますので、何か大きなことが起きたら、首長さんは総合教育会議を開く必要があるのではないかという考え方をいろいろ取っていただく必要があるのではないかということ。
 また、国ではこの4月にこども家庭庁が発足しますけれども、地方自治体においても、福祉部局や子育て関係部局との連携が重要ということで、そういった専門家を教育委員会に配置するとか、あるいは人事交流、併任発令、様々な形で連携を進めていく必要があるということ。
 それから(3)として、小規模な市町村においては事務体制が脆弱ということがありますので、1つ目に、まず、都道府県がしっかり支援していただくということ。また、教育事務所も、支援が必要な状況に応じて、体制を随時、見直していくということ。
 また、下から2つ目ですけれども、教育長、教育委員さんは、小さいところで適材を見つけるのはなかなか難しいという場合には、他の自治体で活躍された方とか、いろいろな方がいるかと思いますので、都道府県の情報も得ながら、しっかり人材を確保していくということ。
 また、実際の学校現場の指導については、デジタル、オンラインを活用して、授業参観をして指導するようなことも進めていったらいいのではないか。
 これまでこういった議論をしてきたところでございまして、引き続き、今後、数か月間、議論を続けていきますので、また適宜、御報告させていただければと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、今のお話でありますけれども、答申の92ページでしたか、最後のところに書いてあった懸案の一つが教育委員会についてということでありますが、今の件に関しまして御質問、御意見がございます方は、手を挙げていただきたいと思います。
 今村委員、井坂委員、松木委員、お願いいたします。

【今村委員】 では、発言させていただきます。
 時間があまりないと思うので、簡単ですけれども、まず、理想とする姿がどうあるべきかを描いていくということは、これまでも、これからも、ずっとやっていただきたいんですが、それに対してリソースがない地域、学ぶ機会がない地方の行政職員の方々に対して、国としてどんな支援ができるのかというところをもう少し明確にお示しいただけると、結局、自助努力といいますか、そこに集まった人たちの努力、専門性が地域間格差になっていくと思いますし、教育行政も高度化していって、新しいものもどんどん取り入れなければいけない、アジェンダも増えていくという状況ですので、それに対して国は何ができるのかというところまで、ぜひ審議を深めていただきたいなと思いました。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では、井坂委員、お願いいたします。

【井坂委員】 お願いします。
 まず、今回の教員の養成・採用・研修等の在り方の答申の内容をいかに社会全体に、特に学校現場、教育関係者に対して、どうやってうまく周知していくか、については、文部科学省では、いろいろな媒体を作っていただくというようにお聞きしましたが、その答申の内容の具現化に向けては、やはり、教育委員会がどういうふうに理解して、どういうふうに現場と一緒にやっていくかというスタンスが大切だと思います。当然ですが、教育委員会の存在は大きいと思います。
 かつては、20年前になりますか、地方教育行政の在り方についての中教審答申が出まし
て、あのときは学校の自主性、自立性等が大きく取り上げられました。今回の調査研究協
力者会議で議論されている内容とは、今後どんな形で、つまり法整備等がなさられるか気になっているところです。
 内容については、御指摘があったように、主な議論の内容の1番、教育委員会事務局の機能強化というのは、私はまさにそうだと思っています。個人的なことを言いますと、教育委員会に延べ10年おりまして、指導主事としてとは日々様々な仕事を経験して、校長としても教育委員会との直接の関係する立場で10年おりますので、両者のスタンスが理解できる気もしております。この1番の項目にある、教育委員会事務局の機能強化、活性化等が実現できることが、大切なことと思っております。その中で、国の方は、各県に出向という形で、課長になったりしております。例えば教育委員会の事務職の方も、もっと民間人校長というシステムがあるんであれば、私なんかは、将来的なことを考えても、行政の方が校長になっていいと思うんですね。民間の方も入ってもらうし、そういう意味では行政系の方も学校に入ってもらう、あるいは特別免許なんてこともまた考えていくにおいては、どんどん学校現場に入ってくるような形、まさに理論と実践の往還ではありませんけれども、施策と現場の往還みたいなものがどんどんできる形になっていくのが望ましいなと思っています。
 その中で、国の方は、各県に出向という形で、教育委員会の課長になったりしております。例えば、都道府県単位の教育委員会の事務職の方も、民間人校長というシステムもしり、将来、再び教育委員会に戻ることを考えても、行政事務職の方が校長になっていいと思っております。民間の方も入ってもらうし、そういう意味では行政系の方も学校に入ってもらう、あるいは特別免許なども考えていく上においても、どんどん学校現場に、 実際に管理職として、入ってくるような形、まさに理論と実践の往還ではありませんが、施策と現場の往還みたいなものができる形になっていくのが望ましいなと思っています。
 また、ここに書いてある教育委員会事務局でキャリアパスという、この考えも大変納得いくものでございまして、やはり教育委員会に所属したときにも思いましたが、教育行政の方の中には、教育に造詣の深い方と、なかなかそうでない方と二分されます。それはそれで、いろいろな立場があって議論が深まるという意味ではいいところはあるのでしょうけれども、やはり一定程度、キャリアパスという在り方も、早く導入してもらえれば機能的であると思っています。
 全体として申し上げたいのは、ぜひこの議論を進めていただいて、一刻も早くこの形が実現するといいという気持ちを述べさせてもらいました。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では、松木委員、お願いいたします。

【松木委員】 松木です、よろしくお願いいたします。
 今回の調査研究協力者会議で取り上げていただいているテーマは、どれも本当に、ぜひ深めていただきたいと思うような項目であって、今後とも、継続して検討していただきたいと思うんですが、お伺いしたいのは、「令和の日本型学校教育」を推進するということを冠したわけですね。「令和の日本型学校教育」ということについて、教育委員会の在り方を論議するときに、どう位置づけて考えていらっしゃるのかなということについて、今後議論を深めていただきたいなという気がいたしています。
 特に、今回、「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修の在り方についての答申が出たわけです。この中を見ますと、質の高い教職集団をどうやって育成するかという話やら、教師に求められる資質や能力のこと、あるいは教員養成、教職大学院と教育委員会との連携の話、特に教員研修のところに関して見ますと、教育委員会と大学を絡めて検討していく話でもありますよね。こちらの答申で、教育委員会にかなりラブコールをしているようにも思います。答申等の関係の在り方を深めていく意味でも、ぜひとも養成・採用・研修の在り方についての答申を受けていただいて、教育委員会の部会でも御検討いただければなと思います。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 今、吉田信解委員からお手が挙がりました。時間を過ぎておりますので、最後に堀田分科会長代理にも御発言いただきたいと思っておりますので、すみません、手短にお願いいたします。

【吉田(信)委員】 申し訳ございません。では、私から2点、簡単に申し上げます。
 総合教育会議をしっかりと開催していこうということがいろいろと盛り込まれたことは大変よかったと思っております。それが1点。
 もう1点でございますけれども、危機管理という点について、やはり、しっかりと教育委員会部局、首長部局が連携して対応するための支援というか、応援というか、そういったところにしっかり意を用いていくのがこれから非常に大事ではないかと常々思っておりますので、その点、ぜひ今後、入れていっていただきたいなと感じておるとこございます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。お気遣いいただきまして申し訳ございません。
 では、堀田分科会長代理、よろしくお願いいたします。

【堀田分科会長代理】 堀田でございます。
 私からは1点だけ、(3)の一番最後にあるデジタル技術の活用のところについて述べたいと思います。GIGAスクール構想の関係もありまして、とりわけ、これから設置者としての教育委員会のお役目が非常に重要になっているかと思います。特に義務教育においては区市町村が設置者ですので、1,700以上ある基礎自治体がどのようにICTを活用していけばいいか、ビジョンや研修を施す側になっていらっしゃるわけでございます。
 ところが、現実には、GIGAと同じ端末を教育委員会の指導主事が使ったことがない例とか、学校に与えられているGIGAの端末のクラウド環境が役所からは使えない例とかがありまして、かつ、 GIGA の端末が入ってきてまだ2年くらいですが、その頃、指導主事になっていた方は授業経験もないわけで、そんな中、一生懸命、現場の御指導をされているところでございます。
 学校現場の情報化をもっと推進し、それが校務の支援とか働き方改革につながるとか、そういうような形につながっていくことを考えますと、その指導をされる教育委員会の指導主事の方々にICT環境、クラウド感覚のようなことをきちんと身につけていただくようなことを、この審議の中により一層加えていただければと思うところです。
 今、デジタル技術の活用のところにそれに近いことが書いてございますが、設置者は1,700もありますが、自分の地域で常識だと思っていることが、ほかの地域では突破していたりするところがいっぱいありますので、他地域の教育委員会の指導主事と情報共有したり、連携した研修とか参観とかをぜひやれるといいなと思います。今日、調査の報告もありましたが、東大の中村先生たちの調査の中にも、SESによっていろいろな差が出ているという話もありますが、これも自治体レベルだけではあまりぴんとこないけど、ほかのところを見てみると、既にそういうところにケアしているという例もあるかと思いますので、そういう意味で、教育委員会の指導主事の方が外を見る仕組みを、お忙しいですから、できるだけデジタルで提供できるような環境整備等を御検討いただければと思うところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、時間は過ぎているんですけれども、清原座長、堀野課長から何か。
 では、清原座長、お願いいたします。

【清原委員】 一言申し上げます。皆様、大変重要な視点を短時間に列挙していただき、ありがとうございます。
 私たちとしては、例えば、さきの答申の教員の養成・採用・研修の内容とも連携していきたいと思っておりますし、何よりも地域格差や学校間格差がないように、適切なデジタル化についても基盤整備を進めながら臨んでいく必要があると、これまでの検討で確認しているところでございます。
 特に「令和の日本型学校教育」というのは、新型コロナウイルス感染症の中で、いい意味でデジタル化のメリットも確認されておりますし、適切な対話あるいはアクティブラーニングなども進めながら臨んでいくためには、全国の教育環境に一定の標準化が確保されていかなければならないと思っております。その担い手としての教育委員会の適切な在り方を、現実の課題を直視しながら、今村さんがおっしゃったように、もちろん理念、理想は掲げながらも、実態に即した解決の方法について事例を共有して、とりわけ成功例だけではなくて失敗例も共有していきながら、皆様に適切にお示しして、現場の取組が円滑に進むように、さらに検討を、委員の皆様と進めていきたいと思います。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。
 堀野課長は、よろしいでしょうか。

【堀野初等中等教育企画課長】 たくさんの御指摘ありがとうございました。今後の議論に生かしていきたいと思います。まさに教育委員会、「令和の日本型」という話もありましたけれども、やはり国が何か政策の方向性を出したときに、地方がみんな同じようにぱっと深く理解するわけではありません。現場、現場の経験によって受け取り方も変わりますので、まさにそこを仲介するのが教育委員会の役割だと思います。そういったことができるような体制をどう組んでいくか、どういう人材を集めて、どういう力をつけていくかを引き続き議論させていただければと思います。どうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 加えて時間を取って申し訳ありませんが、我々教職員支援機構は、これまでもセミナーといった形で教育委員会の皆さんとやり取りをする機会を持っておりますけれども、来年度に向けて、教育委員会の事務局の皆さんを対象にした新たな研修を現在模索しているところであります。こういったこともまた活用いただきながら、教育委員会と学校が一緒になって、よりよい豊かな学校をつくっていく、子供たちの教育に資する学校にしていくということを、ぜひ考えていきたいと思っております。
 そうしましたら、毎回のことで本当に申し訳ありません。十分御発言いただけなかった委員の方もいらっしゃるかと思います。ぜひ、メール等で御意見を頂戴でできればと思います。
 では、本日はここまでとしたいと思います。
 最後に、次回の予定につきまして、前田室長、よろしくお願いいたします。

【前田教育制度改革室長】 ありがとうございました。次回の初等中等教育分科会は、3月8日水曜日10時から12時を予定させていただいております。詳細はまた追って事務局から御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 次回が最終回になるかと思います。議題の関係もございますけれども、短時間になるかもしれませんが、全員の委員の皆様から御発言を頂戴したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日は大変延長してしまいまして申し訳ありませんでした。これで終了といたします。ありがとうございました。 

―― 了 ――

<以下、会議終了後に事務局に頂戴したご意見>
【小林委員】
○ 議題2 主な調査の結果について(令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査)
勤務時間実態調査に関しては、具体的にそうした例があるというわけではないが、あまりにも委員会や管理職から勤務時間削減を強制されると、いったんタイムカードを打って、そのあと、もう一度戻って仕事をするなど、本末転倒の手立てが行われることもあり、数字だけで改善したとは言えない。実際、中学校の今の現場では 45 時間以下の超過勤務時間はほとんど不可能で、そうしたことも行われることが危惧される。数字を減らすということより、細田委員が言われたように、量より質の改革が必要で、答申の「おわりに」にあるように、教員が誇りをもって業務にあたり、それによって教員の多忙感を減らすことが、数値を減らすより大切であると考える。ICT を取り入れることや学校にかかわる人を増やすことはとても良いと思うが、それについてもぜひ、直接、現場の教員の声を拾って、進めてもらいたいと思う。
 
【田中委員】
○ 議題3 学校部活動の地域連携や地域クラブ活動への移行について
子どもたちの心身の安全確保について「部活」は子どもの成長にとって重要な活動ですが、一方で部活内の上下関係、いじめなどが学校生活において決定的なトラウマ体験となり、退部だけでなく、学校自体から足が遠のく要因の一つとなっています。また、いわゆる部活顧問による厳しすぎる指導が問題となることもあります。今後地域人材がここに参画する場合に、その質の確保および事故防止等を仕組み的にできるようにするなど、子どもたちの心理的、身体的安心・安全の確保がなされるようにしていただけたらと思います。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)