初等中等教育分科会(第131回) 議事録

1.日時

令和3年7月8日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省(※WEB会議)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 第11期中央教育審議会における審議事項について
  2. 教育再生実行会議第12次提言について
  3. 「令和の日本型学校教育」の構築に向けた新たな方策の検討について
  4. その他

4.議事録

【荒瀬分科会長】 皆さん,こんにちは。荒瀬でございます。定刻となりましたので,ただいまから第131回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。
 本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。本会議は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。
 まず,会議に先立ちまして,先月28日に千葉県八街市において発生しました飲酒運転による交通事故により,あってはならないことでございますが,尊い生命を落とされましたお子様に深くお悔やみ申し上げますとともに,けがをなさったお子様方の一日も早い回復を心からお祈り申し上げたいと存じます。被害に遭われた児童の皆さんの御家族にも心からのお見舞いを申し上げたいと思います。
 また,静岡県熱海市など,大雨により大規模な災害も起きております。被災された方々が一日も早く平穏な生活を取り戻されることを心からお祈り申し上げたいと存じております。加えて,本日,山陰や広島も大変厳しい状況と聞いております。各地の皆様の御無事をお祈りいたしたいと存じます。
 では,議事を進めます。前回,4月19日に,第11期中央教育審議会発足と同時に任命されました委員のみで第130回初等中等教育分科会を開催いたしまして,分科会長の選任,分科会長代理の指名,部会の設置や運営規則の決定等を行いました。
 改めまして,分科会長に選任されました荒瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。また,分科会長代理といたしまして,堀田委員に御就任いただいております。今日は,こちら,文部科学省にも来ていただいております。
 本日は,新たに委員に任命された方々も含めた初めての会議でございます。後ほど,時間の許す限り皆様に御発言いただきたいと考えておりますが,今日は議題がたくさんありまして,時間の関係から難しい面があるやもしれません。誠に申し訳ございませんが,あらかじめ御了承願いたいと思います。
 では,事務局から委員の皆様を御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 本分科会の事務局を務めます,教育制度改革室長の白井と申します。よろしくお願いいたします。
 今回新たに本分科会に御就任をいただきました委員の先生方を御紹介いたします。お名前をお呼びいたしますので,適宜ミュートを解除いただきまして,簡単に御挨拶をいただければ幸いでございます。
 なお,本日は,資料1としまして,委員名簿をお配りしておりますので,併せて御覧いただければと存じます。
 それでは,順にお名前をお呼びいたします。最初に,荒瀬克己委員でいらっしゃいます。

【荒瀬分科会長】 荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 井坂秀一委員でいらっしゃいます。

【井坂委員】 井坂でございます。よろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 今村久美委員でいらっしゃいます。

【今村委員】 今村です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 加治佐哲也委員でいらっしゃいます。

【加治佐委員】 加治佐です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 清原慶子委員でいらっしゃいます。

【清原委員】 清原です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 小林真由美委員でいらっしゃいます。

【小林委員】 小林です。どうぞよろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 貞廣斎子委員でいらっしゃいます。

【貞廣委員】 貞廣です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 清水敬介委員でいらっしゃいます。

【清水委員】 清水です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 竹中ナミ委員でいらっしゃいます。

【竹中委員】 竹中です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 藤田裕司委員でいらっしゃいます。

【藤田委員】 藤田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 堀田龍也委員でいらっしゃいます。

【堀田分科会長代理】 堀田です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 吉田晋委員でいらっしゃいます。

【吉田(晋)委員】 吉田でございます。どうぞよろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 渡辺弘司委員でいらっしゃいます。

【渡辺(弘)委員】 渡辺弘司でございます。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 渡邉正樹委員でいらっしゃいます。

【渡邉(正)委員】 渡邉正樹です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 秋田喜代美委員でいらっしゃいます。

【秋田委員】 秋田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 安家周一委員でいらっしゃいます。

【安家委員】 安家周一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 市川裕二委員でいらっしゃいます。

【市川(裕)委員】 市川裕二でございます。よろしくどうぞお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 岩本悠委員でいらっしゃいます。

【岩本委員】 岩本です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 大字弘一郎委員でいらっしゃいます。

【大字委員】 大字でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 神部愛委員でいらっしゃいます。

【神部委員】 神部愛と申します。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 喜多好一委員でいらっしゃいます。

【喜多委員】 喜多と申します。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 黒木定藏委員でいらっしゃいます。

【黒木委員】 黒木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 坂越正樹委員でいらっしゃいます。

【坂越委員】 坂越です。よろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 神野元基委員でいらっしゃいます。

【神野委員】 神野です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 杉本悦郎委員でいらっしゃいます。

【杉本委員】 杉本と申します。よろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 田中宝紀委員でいらっしゃいますが,田中先生,いらっしゃいますでしょうか。後ほど御参加されることと存じます。
 戸ヶ﨑勤委員でいらっしゃいます。

【戸ヶ﨑委員】 戸ヶ﨑です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 細田眞由美委員でいらっしゃいます。

【細田委員】 細田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 松木健一委員でいらっしゃいます。

【松木委員】 松木です。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 宮澤一則委員でいらっしゃいます。

【宮澤委員】 宮澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 宮原京子委員でいらっしゃいます。

【宮原委員】 宮原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 八並光俊委員でいらっしゃいます。

【八並委員】 八並と申します。どうかよろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 吉田信解委員でいらっしゃいます。

【吉田(信)委員】 吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 若江眞紀委員でいらっしゃいます。

【若江委員】 若江でございます。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 なお,本日御欠席でございますが,市川伸一委員,奈須正裕委員が本分科会の委員にも就任されているところでございます。
 続いて,事務局の御紹介をさせていただきます。文部科学審議官の丸山でございます。すみません,これから遅れて参加ということでございます。総括審議官の串田も遅れて参加いたします。
 大臣官房審議官(総合教育政策局担当),出倉でございます。

【出倉大臣官房審議官】 出倉でございます。よろしくお願いします。

【白井教育制度改革室長】 初等中等教育局長,瀧本でございます。

【瀧本初等中等教育局長】 瀧本です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 学習基盤審議官,塩見でございます。

【塩見学習基盤審議官】 塩見と申します。よろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 文部科学戦略官,髙口でございます。

【髙口文部科学戦略官】 髙口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 初等中等教育企画課長,淵上でございます。

【淵上初等中等教育企画課長】 淵上です。どうぞよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 その他につきましては,事前にお送りしております出席者一覧をもって御紹介に代えさせていただきたいと存じます。
 事務局を代表いたしまして,初等中等教育局長の瀧本より,一言御挨拶を申し上げます。

【瀧本初等中等教育局長】 初等中等教育局の局長をしております,瀧本と申します。
 先生方には,本当にお忙しい中,この初等中等教育分科会に御参加を賜りまして,ありがとうございます。前期の中央教育審議会で「令和の日本型学校教育」ということで御答申をいただきましたけれども,まだまだ教育界,学校現場を含めて,このコロナ禍もございますけれども,様々な課題がございます。新たな委員の先生方のお力もいただきながら,さらなる子供たちの教育の充実に向けて,先生方のお力をお借りできたら幸いでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。第11期中教審初等中等教育分科会といたしましては,今も局長からお話がありましたように,1月26日の答申にありますように,一人一人の子供を主語にした学校教育が実現するよう,学習指導要領の着実な実施に向けて皆様と一緒に様々に検討を進めてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では,続きまして,本日の会議開催方式及び資料につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 本会議は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,Webexを用いたウェブ会議方式で開催しております。ウェブ会議を円滑に行う観点から,大変恐縮ではございますけれども,御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようにお願いいたします。また,カメラにつきましては,御発言時以外も含めて,会議中はオンにしていただきますようにお願いいたします。
 資料について確認を併せてさせていただきたいと存じます。本日の資料につきましては,議事次第にございますとおり,資料1から資料7-3まで,加えて,参考資料は1から6でございます。御確認をいただければと存じます。

【荒瀬分科会長】 白井室長,ありがとうございました。
 本日は盛りだくさんでありまして,議題は3件ございます。まず,議題1といたしまして,第11期中央教育審議会における審議事項について,議題2といたしまして,先般取りまとめられました教育再生実行会議第12次提言について御報告をいただきます。そして,議題3といたしまして,「令和の日本型学校教育」の構築に向けた新たな方策の検討について取り上げたいと思っております。意見交換につきましては最後にまとめて行いたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 なお,本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をWebex Eventsにて配信しております。御承知おきください。
 では,議題1,第11期中央教育審議会における審議事項についてということで,まず,「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方につきまして,小幡教育人材政策課長から御説明をお願いいたします。

【小幡教育人材政策課長】 小幡でございます。よろしくお願いいたします。
 早速ではございますが,資料2-1を御覧いただければと思います。これは,3月12日でございますが,中央教育審議会から諮問いただいた内容の概要の資料でございます。
 まず,上の欄でございます。これは前の中教審で1月に答申をいただいたものでございますが,2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」で目指す学びの姿ということでございましたが,この中で,「令和の日本型学校教育」において実現すべき教師を巡る理想的な姿についてもお示しをいただいたところでございます。ここにございますように,教職生涯を通じて学び続け,子供一人一人の学びを最大限に引き出し,主体的な学びを支援する伴走者としての役割を果たす。また,多様な人材の確保や教師の資質能力の向上には質の高い教職員集団の実現が必要と。また,教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され,志望者が増加し,誇りを持って働くことができると。こういった形でお示しをいただいたわけでございます。
 今後,「令和の日本型学校教育」を実現できるかどうかについては,時代の変化に応じた高い資質能力を身につけた教師を確保し,また,教師が生き生きと活躍できる環境を整備できるかどうかにかかっているということでございますが,一方で,現在,教師を取り巻く環境については,教師の長時間勤務,一部の学校における教師不足,教員採用選考試験の採用倍率の低下など,厳しい状況にもあるのは事実でございます。こうした背景もあり,魅力的な職業としての社会的認識も必ずしも十分ではないという現状にも対応しつつ,ICTの活用,さらには少人数学級を車の両輪として,「令和の日本型学校教育」を実現し,それを担う質の高い教師を確保するために,教師の養成・採用・研修等の在り方について,既存の在り方にとらわれることなく,基本的なところまで遡って検討を行い,必要な変革を行うことで,教師の魅力の一層の向上を図っていくことが必要になっていると,そういう状況でございます。
 下の段が,まさに具体的な諮問の内容になるわけでございます。
 第1に,「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師像と教師に求められる資質能力について,全ての教師に求められる基本的な資質能力を具体的に明らかにしていただくことです。
 2つ目に,多様で質の高い教職員集団の姿を明らかにしていただくとともに,優れた人材を確保できるような教師の採用等の在り方や,採用後の育成,キャリアパス,教職員集団を率いる管理職の在り方についても検討をお願いしております。
 第3に,教員免許制度について,第1の検討事項を踏まえた教職課程の見直しとともに,学校外で勤務してきた者などへの教員免許や免許状の区分などの在り方についてでございます。その際,教員免許更新制については,必要な教師数の確保とその資質能力の確保が両立できるような抜本的な見直しの方向について先行して結論を得ていただくことをお願いしております。
 4つ目でございます。多様化した教職員集団の中核となる教師を養成する教員養成大学・学部,教職大学院の機能強化・高度化についてでございます。
 最後,第5でございますが,教師が自らの人間性や創造性を高め,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができる環境整備についてでございます。
 以上が諮問事項でございます。現在,総会の下に設置されました,「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会,ここが中心になって御議論をいただいているところでございます。分科会のメンバーの方にも多くの方に参加していただいているところでございます。
 次に,資料2-2を御覧いただければと思います。こちらは6月28日に開催されました第2回の特別部会の資料で,1ページ目でございますが,当面の議論の進め方を確認したものでございます。様々な背景や経験を持った人材が学校現場に参画するという教職員集団の姿をイメージした上で,バックキャスト的に,そのために必要になってくる,「個人」としての教師に求められる共通的な資質能力,それから「組織」としての教職員集団の姿,これらを一体的に議論していくこと。その際に,「個人」「組織」それぞれを見通したビジョンを特別部会で共有し,そのビジョンに基づいて各論の専門的な議論を行っていくこと。組織の検討に当たっては,多様な教職員集団で構成される「学校」がレジリエンスを発揮して,社会の急激な変化に対応できるように,学校組織マネジメントやその持続的な成長を促す研修推進体制の観点から,学校管理職の在り方や教師の学び等の振り返りを支援する仕組みについても併せて検討していくこと。その際に,学校組織マネジメントや研修推進体制については,国内外の事例研究も参考に,「令和の日本型学校教育」にふさわしい在り方を議論すること。以上のような進め方で現在検討を進めていただいているところでございます。
 次に,教員免許更新制や研修をめぐる包括的な検証についての説明をさせていただきたいと思います。資料2-3でございます。こちらは諮問事項の中で先行して結論を得ることをお願いしているものでございます。
 簡単に審議状況を説明させていただきます。資料2-3についてでございますが,教員免許更新制については,特別部会の下に,加治佐委員に主査になっていただいております教員免許更新制小委員会が設けられ,これまで3回議論が行われているところでございます。前期の教員養成部会におきまして,教員免許更新制や研修をめぐる制度について包括的な検証を行っていただきました。その内容についてまとめたものがこの資料になります。
 1ポツ目と2ポツ目でございます。団体へのヒアリングを行った上で,御覧のように,教員免許更新制の評価,そして課題についてまとめております。
 3ポツ目でございますが,教員研修の状況についても整理しております。平成28年の教特法の改正を踏まえまして,見直し,または改善が進んでいること,また,教職員支援機構の行う研修についても,オンライン化の進展,見直しが進んでいるという内容でございます。
 これらを踏まえ,2ページ目でございますが,ここには次期部会となっていますけれども,こちらが今期の中教審というふうに置き換えていただければと思います。教員免許更新制,研修の在り方については,抜本的に検討を行い,資質能力の確保,負担の軽減,教師の確保を妨げない,このような観点がいずれも成立する解を見いだしていかなければいけないということが示されております。
 このような前期からの申し送り事項に基づき,現在,教員免許更新制小委員会で検討いただいているところでございます。この小委員会の第1回目でございますが,意見交換の総括として,主査から,社会的変化を踏まえ,教師の資質能力の維持向上を図る仕組みはどうあるべきか,教師の新しい学びの姿を構想していく必要があるのではないかという指摘がございました。
 そこで,資料2-4でございます。第1回,第2回小委員会において,「令和の日本型学校教育」を担う教師の学びの新たな姿をまとめたものでございます。詳細な説明は省略いたしますけれども,四角で囲んでいるところにありますように,教師はそもそも学び続ける存在であることが強く期待されていること。教師が自らの学びを主体的にマネジメントしていくことが重要であること。また,そのための環境の構築が必要であること。個別最適な教師の学びの実現のため,具体的な目標の達成に向け体系的・計画的な学びが必要であること。その目標については将来どのような知識技能を身につけていくのかという観点から,将来の姿,現在の姿の間を埋めていくという明確な問題意識に基づいて行われるべきであること。また,その設定に当たっては教師と任命権者や学校管理職等が積極的な対応を行うことが効果的であること。教師の学びの質保証が適切に機能していることや各コンテンツをワンストップ的に集約・提供するプラットフォームが存在していること。また,学校勤務未経験者が学ぶ上でも必要なコンテンツが存在していること。学びの成果が可視化され,個人の学ぶ意欲を喚起できることや,学びの成果が組織において前向きに活用されること。そういった内容を整理しているところでございます。引き続き,このような姿を実現できるよう議論を進めていただければと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。御意見がおありの方がいらっしゃると思うんですけれども,先ほども申しましたように,全部まとめて最後にお願いしたいと思います。
 続きまして,第3次学校安全の推進に関する計画の策定につきまして,朝倉安全教育推進室長から御説明をお願いいたします。

【朝倉安全教育推進室長】 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課安全教育推進室の朝倉と申します。よろしくお願いいたします。
 私からは,第3次学校安全の推進に関する計画の策定について御説明させていただきますが,その前に,先般,千葉県八街市の通学路において発生した交通事故につきまして,改めて謹んでお悔やみ申し上げます。事故の概要につきましては,皆様も既にニュース等で御承知のとおりでございますので,説明等は省略させていただきますが,文部科学省といたしましても,このたびの事故の発生を受けまして,関係省庁と連携を図りながら対応を進めているところでございます。また,学校における交通安全に関する取組につきましても,次回以降の学校安全部会の中で議論してまいりたいと,そのように思っております。
 それでは,資料に基づきまして説明させていただきます。資料は3-1から3-4までございますが,まず資料3-1を御覧ください。こちらは,3月12日の中央教育審議会総会におきまして文部科学大臣から諮問されました,第3次学校安全の推進に関する計画の策定についての内容でございます。3-2につきましては,その概要を一枚物にまとめたものでございますので,こちらのほうで御説明させていただきたいと思っております。
 まず,学校における教育活動は,安全な環境において実施され,児童生徒等の安全の確保が図られるよう,学校保健安全法第3条におきまして,国は,各学校における安全に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため,学校安全の推進に関する計画を策定することが規定されております。これに基づきまして,平成24年4月に「学校安全の推進に関する計画」が,また,平成29年3月には「第2次学校安全の推進に関する計画」が閣議決定されております。現行の「第2次学校安全の推進に関する計画」につきましては,平成29年度から令和3年度までの5年間にわたりまして,国と地方公共団体が相互に連携を図り,各学校において安全に関する取組が確実かつ効果的に実施されるようにするための重要な指針として策定されたところであります。
 現行計画に基づく取組の結果,先進的な取組が進められた地域や学校がある一方,いまだ十分と言えない地域や学校も見られます。また,現行計画の策定以降,安全に関する新たな問題も生じており,策定から5年が経過するに当たりまして,これまでの状況を踏まえた計画の見直しが必要となっているところであります。3月12日の中央教育審議会総会におきまして,文部科学大臣から,第3次学校安全の推進に関する計画の策定について諮問がなされました。
 第3次計画の策定に向けての論点は,大きく3つでございます。
 1つ目は,現行計画に基づくこれまでの取組状況を踏まえ,計画策定後の社会状況の変化に基づきまして,今後改善すべき点や新たに加えるべき点について,検討を求められております。甚大な被害をもたらしました東日本大震災から10年を迎え,時間の経過とともに震災の記憶が風化し,取組の優先順位が低下していることが危惧されております。今後発生が懸念されております首都直下型地震や南海トラフ巨大地震等に対しまして,児童生徒の命を守るための対策が喫緊の課題となっているところでございます。また,近年,豪雨災害が激甚化・頻発化しており,防災教育の充実は喫緊の課題となっているところでございます。さらに,今回の八街市の交通事故のように,児童生徒が登下校中に事件・事故に巻き込まれる事案も発生しており,家庭,地域,関係機関と連携した対策を着実に実施することが求められているところであります。また,スマートフォンやSNSの普及によりまして,児童生徒等を取り巻く安全に関する環境の変化や,学校を標的としました新たな危機事象も懸念されているところであります。さらに,新型コロナウイルス感染症が蔓延する中,マスクの着用による熱中症リスクの増加など新たな安全上の課題も懸念されておりまして,こうした新型コロナウイルスの感染症対策と安全対策の両立などについても検討をお願いしているところでございます。
 下の左の2つ目でございますが,学校安全に係る取組の全国的な質の向上に向けた方策について,検討をいただくこととしております。平成20年に学校保健法が改正されて,学校安全が法的に位置づけられたこと,学校安全の推進に関する計画が2次にわたって策定されたことなど,学校安全に関する取組の制度化が求められてまいりました。これを踏まえまして,国・地方の施策も進められてきておりますが,地域や学校における取組はまだまだ差が見られるところであります。学校における安全は学校教育の大前提でございまして,また,事件・事故,自然災害は全ての学校で発生し得ることから,学校における安全の取組の質を全国的に高めまして,実効的で持続的なものとすることが重要となっているところであります。そのためには,学校における組織体制の在り方や学校と関係機関の連携につきましても検討をしていくという必要がございます。国,地方公共団体,学校設置者,地域がそれぞれの立場から取り組むべき施策・連携の在り方について検討をお願いしているところでございます。
 続きまして,3つ目でございます。安全教育や安全管理に関しまして,教員養成段階で身につけるべきことや教員研修の在り方について,検討をいただくこととしております。令和元年度から,教職課程において学校安全について必ず学習することとされたところであります。自然災害や事件・事故が発生した際に,児童生徒等の命を守るためには,全ての教職員が協力し合って的確に対応していかなければなりません。また,児童生徒等に対する安全教育の充実を図るためには,教職員が自然災害等の安全に関する知見,指導すべき内容を明確に把握していることが重要です。学習指導要領に示されました,児童生徒や学校,地域の実態を適切に把握しまして,教育の目的や目標の実現に教育の内容を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,また,教育課程の実施状況を評価いたしまして,その改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的または物的な体制を確保するとともに,その改善を図っていくことなどを通しまして,教育課程に基づき組織的かつ計画的に学校の教育活動の質の向上を図っていくカリキュラム・マネジメントの中で体系的な安全教育を推進すること,また,児童生徒が安全上の課題につきまして自ら考え,主体的な行動につながるような工夫など,安全教育の効果を高めることが重要となっております。児童生徒がいかなる状況でありましても自らの命を守り抜き,安全で安心な生活や社会を実現するため,主体的に行動する態度を育成することが求められております。学校安全教育の充実及び教員研修における学校安全の在り方について検討をお願いしているところであります。
 このほか,今後の学校運営の推進を図る上で必要な取組について,検討をお願いしているところでございます。
 第3次学校安全の推進に関する計画の策定の諮問の概要につきましての説明は以上でございます。
 続きまして,資料3-3を御覧ください。第2次計画の取組状況を踏まえた検討課題といたしまして,下記のような事項を議論する必要があるというふうに考えております。ここにございますように,計画策定後,今後改善すべき点や新たに追加すべき点,また,学校安全に係る取組の全国的な質の向上に向けた方策,学校安全に関する教員養成や研修の在り方など,細かい項目を書いておりますが,省略させていただきます。
 また,次ページの資料3-4でございますが,こちらについては,現在,学校安全部会といたしましては,第1回を5月27日に開催いたしまして,第2回は6月23日に防災教育について審議いただいたところでございます。次回は7月14日に第3回を開催する予定です。今後,数回程度会議を開催いたしまして,12月に部会としての取りまとめを行えればと,そのように考えております。翌年4月頃までに中央教育審議会の答申,3月までにパブリックコメントを経て,第3次計画の閣議決定を目指して,現在取り組んでいるところでございます。
 文部科学省といたしましては,引き続き,学校における子供の安全確保に向けた関係省庁と連携し,取り組んでまいります。
 私からの説明は以上でございます。

【荒瀬分科会長】 朝倉室長,ありがとうございました。以上が議題1の御説明でございました。
 それでは,議題2に移ります。教育再生実行会議第12次提言につきまして,水田内閣官房教育再生実行会議担当室参事官から御説明をよろしくお願いいたします。

【水田教育再生実行会議担当室参事官】 内閣官房教育再生実行会議担当室参事官,水田と申します。去る6月3日に取りまとめられました教育再生実行会議第12次提言について御説明いたします。資料は4-1から4-3まででございます。
 まず,資料4-1を御覧ください。今回の第12次提言に向けましては,昨年7月に「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」というテーマで議論を開始いたしました。初等中等教育ワーキング,高等教育ワーキング,それに両ワーキング共通の事項を議論します合同ワーキング,さらに秋からは専門的な議論を深めるデジタル化タスクフォースも設置しまして,合計26回の会合を重ね,本提言がまとめられました。2枚目は本体会議の有識者,3枚目はワーキングの有識者を掲載しております。秋田委員には本体会議の有識者としても御参加いただいておりますほか,今村委員,貞廣委員,堀田委員には初等中等教育ワーキングの委員として御参加いただいております。この場をお借りしまして,御礼申し上げます。
 続きまして,資料4-2を御覧ください。まず,こちらの概要で提言の全体像を簡単に御説明させていただきます。
 今回の提言では,ニューノーマルにおける教育の姿としまして,一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せ(ウェルビーイング)の実現を目指した学習者主体の教育へ転換していくという大きな方向性を示しております。そして,そのための手段として,デジタル化を進め,データ駆動型の教育に転換し,学びのデータの活用を進めることの重要性を強調しているところでございます。
 具体的な提言は4つのパートから成っております。1ポツの初等中等教育につきましては,(1)で,1人1台端末の本格運用に係る環境整備など,データ駆動型の教育への転換による学びの推進や学びの多様化など。下のほうに行きまして,(2)では,それを支えるための少人数によるきめ細かな指導体制と教師の質の向上等について,こちらの内容はこの後,本体で説明させていただきます。それから,右側ですが,2ポツの高等教育については,(1)で遠隔・オンライン教育の推進など,下の(2)で,グローバルな視点での新たな高等教育の国際戦略等について。それから,次のページでございますが,3ポツの教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策について,こちらでは秋季入学への移行についてはまずは大学等の入学時期の多様化・柔軟化を推進するよう支援するとともに,産業界にも採用・雇用慣行の転換をお願いし,取組を進めていくということ。それから,最後,右側の4ポツ,データ駆動型の教育への転換については,様々な教育データを活用した現状把握と効果的な政策の立案,そのための基盤整備等について提言をしております。
 それでは,初等中等教育関係につきまして,資料4-3の本体のほうで簡単に御説明させていただきます。
 まず,3ページを御覧ください。こちらが,1ポツ,ニューノーマルにおける初等中等教育の姿と実現のための方策となっております。2段落目のところにございますように,「全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実する」としておりまして,こちらは「令和の日本型学校教育」の中教審答申と表現を合わせております。
 続いて,5ページを御覧ください。こちらはポストコロナ期における初等中等教育の在り方を考えるに当たっての3つの視点を示しております。第1に,学校は,教師と児童生徒,児童生徒同士の直接的な関わり合い,多様な体験を通して学ぶ場としての「集う機能」に特に存在意義があること,第2に,対面指導を基本とし,児童生徒の発達段階等に応じ遠隔・オンライン教育を取り入れ,双方の良さを最大限に生かすことが重要であること,第3に,遠隔・オンライン教育の効果等について,データによる現状把握や教育実践の検証・評価を通じて,知見を蓄積していく必要があることでございます。
 その下の段落に移りまして,ニューノーマルにおける初等中等教育の姿としまして,個人と社会全体のウェルビーイングの実現を念頭に,学習者主体の教育活動を展開するため,個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実すること,こうした学びを進めていくため,ICTの活用が効果的であること,6ページ上段にありますとおり,学習や生活・健康に関するデータ,教師の指導・支援等に関するデータを収集,活用すること,これらの取組と併せて,少人数によるきめ細かな指導体制,教師の質の向上等を推進する必要もあるとしております。
このページの中ほどからのマル1,1人1台端末の本格運用に係る環境整備では,囲みの中で具体的に実施すべき事項を記載しておりまして,例えば,1つ目のマルでは,安全・安心に端末を取り扱うための手引の策定,周知,5つ目のマルでは,個人情報保護制度の見直しを踏まえた学校教育上の取扱いの明示などについて記載しています。
 7ページに移ります。マル2,データ駆動型の教育への転換による学びの変革の推進では,1つ目のマルでは,学習状況のデータを管理するマネジメントシステムの活用の促進,8ページの2つ目のマルでは,デジタル教科書に関する検証の結果も踏まえ,紙の教科書との関係など,今後の在り方を明確にすること,4つ目のマルでは,同時双方向やオンデマンドによる授業モデルの展開などについて記載しています。
 9ページ,マル3,学びの継続・保障のための方策では,次のページに行きまして,10ページの囲みの中で,具体例でございますが,1つ目のマルでは,学校でも家庭でも継続して学習できるオンライン学習システムの全国展開,4つ目のマルでは,小学校との連続性を意識した幼児教育推進体制の充実・強化,それから5つ目のマルでは,不登校児童生徒の支援のため,ICTのさらなる活用,民間団体との連携推進など,機能強化策の検討などについて記載しています。
 11ページに移ります。マル4の学びの多様化等では,3つ目のマルで,高等学校と大学等が連携した先取り履修の推進,12ページに移りますが,1つ目のマルでは,大学への飛び入学者への卒業資格の付与。
 さらにめくっていただきまして,13ページからは,(2)新たな学びに対応した指導体制等の整備という柱を立てております。小学校35人学級については,本年度から5年間かけて実現することとなりました。
 マル1,少人数によるきめ細かな指導体制・施設設備の整備では,こうした改革と同時に,教師の質の向上,多様な人材の活用等を進めるとともに,その取組状況の検証等を踏まえ,中学校を含め,学校の望ましい指導体制の在り方について検討するとしております。また,14ページの上段では,加配定数は学校現場で極めて重要な固有の役割を担っていることを踏まえ,引き続き必要な教職員定数の確保に努めるとしております。施設設備の関係では,施設費国庫負担法に基づく新増築に対する支援や長寿命化改修の機会を活用した整備を行う際の支援などについて記載しています。
 次いで,マル2,教師の質の向上,多様な人材の活用等では,コロナ禍で大きく変化しつつある社会に柔軟に対応していくため,学校関係者にも変化に応じた意識改革が必要としています。15ページの囲みの中で,1つ目のマルでは,教員免許制度,教職課程,教員養成大学の総合的な見直し,16ページに移りまして,3つ目のマルでは,教員免許更新制や研修をめぐる制度の抜本的な改革,4つ目のマルでは,多様な人材が現場に柔軟に参画できるよう特別免許状を含む教員免許の見直し,小中学校の両方の免許状を取りやすくする制度的措置,一番最後のマルでは,スタッフ職の配置,小学校高学年の教科担任制の導入,それから,17ページ上段の1つ目のマルでは,統合型校務支援システムの全自治体における導入促進などについて記載をしております。
 それから,かなり飛びますが,35ページ,3ポツ,教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策について御紹介いたします。
 (1)について,今回の提言では,秋季入学の導入についての全学校種を通じた検討のまとめをしております。下のほうのマル2,今後の望ましい在り方では,大学等においては,学生,留学生にとって,多様な学び方が可能となるよう,一律に秋季に変更するのではなく,入学・卒業時期の多様化・柔軟化が重要としています。他方,36ページにありますとおり,初等中等教育につきましては,義務教育への就学時期を前倒しする場合について検討しましたけれども,その場合でも児童生徒の一時的急増による教師・施設の確保などの課題が生じるため,国民や社会の十分な理解と協力を得ることが不可欠としております。結論としましては,次の段落にありますように,全ての学校種で一律に秋季入学へと移行するのではなく,まずは大学等における入学・卒業時期の多様化・柔軟化について,産業界における採用・雇用慣行の改革と併せて取組を進めていくことが重要としています。こうした取組状況や検証等を踏まえ,将来的に,初等中等教育段階を含め,さらに議論することが適当としております。
 38ページの(2)子供の育ちを社会全体で支えるための取組では,デジタル化にも対応しつつ,学校のみならず,地域住民や保護者等も含めたネットワークを形成し,社会総がかりでの教育の実現を図ることが求められるとしています。その後の囲みの中で,1つ目のマルでは,コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の具体的推進,39ページ,4つ目のマルでは,図書館等の社会教育施設におけるICTの有効活用,次の40ページでは,新たな働き方やワーク・ライフ・バランスの推進などについて記載しております。
 最後,41ページからの4ポツ,データ駆動型の教育への転換につきましては,趣旨は口頭で御説明したとおりですが,様々な教育データを活用し,効果的な教育政策を立案するとともに,学びのデータを多様な場面で活用する必要があるとしております。また,国における組織の体制の強化等が必要としております。
 その後の囲みの中で,42ページの2つ目のマルでは,マイナンバー制度の活用を含むユニバーサルIDや認証基盤の検討,43ページの3つ目のマルでは,教育と福祉などの幅広い分野のデータの連携などについて記載しております。
 以上,駆け足になりましたけれども,教育再生実行会議第12次提言の概要を初等中等教育関係を中心に御説明させていただきました。今後,文部科学省においては,速やかに必要な検討や取組を行っていただきますようお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 水田参事官,ありがとうございました。今のが議題2でございます。
 続けて,進めさせていただきます。議題3でございます。「令和の日本型学校教育」の構築に向けた新たな方策の検討ということで,まず,今後の地方教育行政の在り方に係る検討の方向性について,淵上初等中等教育企画課長から御説明をいただき,その後,東京大学大学院の中村先生から資料6につきまして御説明をいただくということになっております。よろしくお願いいたします。
 
【淵上初等中等教育企画課長】 失礼いたします。7月1日付で初等中等教育企画課長を拝命いたしました,淵上でございます。委員の皆様方にはこれから大変お世話になると存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,私のほうから,資料5-1に基づきまして,「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた検討について御説明をさせていただきたいと思います。
 先生方に御審議いただきました「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」の答申の中で,四角の囲みにございますように,これからの教育委員会の在り方についてもしっかり検討するべしという提言がなされているところでございます。これを踏まえまして,今後の地方教育行政の充実に向けて,以下のような進め方で考えてはどうかというふうに考えているところでございます。
 ローマ数字の1に,検討の視点として,4つの視点を示させていただいております。1つ目は,社会の変化に素早く的確に対応するための方策といたしまして,ポツのところにございます事務局職員の育成・確保についてどうしていくか,また,外部人材を登用することについてどう考えるか,また,事務局の組織そのものの在り方の開発をどうしていくのかというふうな論点でございます。
 視点の2といたしましては,機動的・自立的な学校運営を支援するための方策について。具体的には,1ページの下のポツにございます学校のガバナンスの在り方,また,次のページでございますが,マネジメントの専門人材としての学校管理職の育成・確保の方策をどのようにしていけばよいか,また,学校の管理業務については誰がどのように担っていくことにしていくのかといったような視点でございます。
 視点の3につきましては,平成26年改正を踏まえました首長部局との効果的な連携のための方策についてどう考えていったらよいかということでございまして,3つポツがございますが,教育委員会会議そのものの活性化ですとか,総合教育会議の活用のさらなる在り方について,また,近年大きな課題となっております教育行政と児童福祉行政の一体的な推進についてどのように進めていくのか,また,公共施設の効果的・効率的な整備・管理の観点からの部局横断の取組の推進をどのように進めていったらよいかという点。
 それから,検討の視点の4点目といたしまして,年少人口減少あるいはデジタル化を踏まえた広域行政の推進のための方策といたしまして,例えば,遠隔地を結ぶ教育活動のための支援,また,広域的な教職員の確保,小規模自治体への支援,広域的な連携の推進といったような,こうした視点で検討を進めていってはどうかというふうに考えておりますけれども,また委員の先生方からの御意見を賜れればというふうに思っております。
 大きな2ポツで,今後の検討の方法でございますけれども,こうした論点の実証的な検討を進めるために,まずは文部科学省の中に有識者による調査研究協力者会議を設けまして,少し実務的な論点の整理ですとかデータの整理,方策案の検討を行ってはどうかと。その上で,その進捗状況に応じまして,適時,この分科会に検討状況を御報告させていただき,また,委員の皆様の御意見をいただきながらさらに検討を深めていくと,こういった進め方を考えているところでございますが,また御意見を賜れればというふうに思います。
 資料5-1の御説明は以上でございますけれども,引き続き,先ほど分科会長からもございました,本テーマに関連しましては文科省から委託調査をお願いしておりまして,東京大学の中村先生に本日御参加をいただいております。現時点での分析の結果について御説明を賜れればと存じますので,どうぞよろしくお願いいたします。

 【中村東京大学大学院教授】 東京大学の中村でございます。よろしくお願いいたします。
 資料の6番になりますので,御覧ください。今回,先ほどの御説明にありましたように,教育委員会のガバナンスに関連してデータ報告をということで報告させていただきます。「コロナ休校時における教育委員会の対応―地域差と階層差に注目して」という報告になりますけれども,本日,私と,早稲田の松岡先生,オックスフォードの苅谷先生に同席いただいております。
 では,めくっていただいて,次のスライドになりますが,今回御報告するデータは,ここにありますように,文部科学省委託調査に基づくものでありまして,教育委員会,学校,児童生徒,保護者の4主体に対しての2時点でのパネル調査。パネル調査というのは同じ内容を同じ人たちに,あるいは同じ組織に繰り返しやる調査ですけれども,そういった調査になっております。そのほか,政府の統計データとも接続を予定しておりまして,本日の報告も一部そういったデータに接続した分析もお見せする予定です。
 では,次のページに行ってください。こちらの調査の実施は浜銀総研のほうが受託しておりまして,研究メンバーはここに書いてある,本日の3名以外にも,香川先生,多喜先生,相澤先生,有海先生にも御協力いただいて研究を進めているという状況です。本日の報告では,教育委員会の調査と保護者調査について,98%の児童が公立校に通っているという状況もございますので,分かりやすいところで小学校のデータを用いて報告をさせていただきたいと思っております。ただ,本日お配りしている資料なんですけれども,全て速報値になっておりまして,まだデータが出来上がったばかりで,細部においてまた変化がある可能性がございます。確定値ではないので,十分御注意いただきたいと思います。
 次のページにお願いいたします。早速なんですけれども,時間がございませんので,内容の報告をいたします。まず,地域別の教育委員会の対応状況を御覧いただいていまして,文字が小さくて申し訳ございませんけれども,教育委員会の調査において,Q4という質問で,休業期間中に学習充実のために教育委員会が主導したもの,こちらを答えてもらっております。具体的な内容ですけれども,上から順番に,教科書に基づく学習内容の指示ですとか,学校で作成したプリント等々,紙媒体を使ったようなものが上の3項目。それから,独自に資料などを作って配ったりとか,あるいは動画を作って配信したなどの項目,教育委員会独自での作業というのが入っているのがその下の4項目になります。その下は,テレビですとか,動画のコンテンツですとか,民間のソフトやアプリケーションを推奨したかどうかというような形で,既存の教材などを推奨したというような項目になっております。その下のほうにありますのが,主にICT関係になりますけれども,同時双方向型オンライン指導ですとか,オンライン学習支援プラットフォーム等々の回答が書かれているという次第です。
 これは細かく全部紹介するお時間はありませんので,あえて色分けしてきたんですけれども,赤い色のところが高い比率のところでありまして,青い色が濃くなっているところは低い比率のところであります。御覧いただいたら分かると思いますけれども,上のほうが赤くなっておりまして,下のほうが青くなっているというようなことで,かなり内容に強弱があったと。上のほうの紙媒体活用に関してはかなりの教育委員会が頑張って対応していただいたというような解釈ができるかと思うんですけれども,真ん中辺りの項目になると,かなり斑模様といいますか,対応にはかなり差がある,バリエーションがあるということです。ICT関係に関してはやや少なめ,これも急に対応することになりましたので,難しい部分がきっとあったんだろうというふうに推測いたしますけれども,これもバリエーションがあるということです。しかも,これは地域ごとに集計しておりますけれども,地域間のバリエーションがあるということも御覧いただいたら分かるかと思います。横に比べていただければ色合いの違いがあるところが結構あるということが御覧いただけるかと思います。
 このように,内容にも強弱があり,しかも地域的なバリエーションもあるというようなところになっております。要するに,100%実施というわけではありませんので,やっているところもあれば,やっていないところもあるというようなことだと思うんですけれども,どういった条件でやったりやらなかったりするのかというのが気になるところでありまして,私どもの分析はまだ終わったわけではないんですけれども,差し当たり,ちょっと重要そうな要素があるということを見いだせましたので,それを報告したいと思います。それが次からお見せする大卒比率の違いというものです。
 では,ページをめくってください。こちらの図なんですけれども,先ほどと同じ14項目になっているんですけれども,これについて,大卒比率が高い地域の教育委員会か,それとも低い地域の教育委員会なのかというような分類をしまして,それで集計し直したものです。矢印を書いておいたのは見やすくするためなんですけれども,右に行くほど高くなっていると。これは何を意味しているかといいますと,大卒比率が高くなればなるほど反応した自治体が多かったと,こういうふうに読むことができるわけです。ただし,こちらのデータは一切ほかの要素は考慮しないで,ただベタに集計しただけですので,ある程度いろいろ条件をそろえて,こういう傾向が見られるかどうかも見ておく必要があるかと思っています。
 次のスライドへ行ってください。まず,政令指定都市を除きました。政令指定都市は教育委員会のガバナンスという点でもちょっと教育の扱いが特殊だと思いますので,まず外しました。それから,その上で,2020年5月の感染者100名以上の都道府県のみに限定して集計し直したのが次以降のグラフになります。こちらも細かくは御説明しませんけれども,見ていただければ分かるように,右側に行けば行くほど高くなっているということが分かるかと思います。これは先ほど申しました紙媒体等々中心の,従来からよくある項目ですけれども,こちらは右上がりになっています。
 次のスライドをお願いします。それから,独自に教育委員会のほうで教材を作ったりとか動画を作ったりというようなものに対する反応に関しても同じように見てみますと,右側が高くなっている項目が非常に多くなっているということが御覧いただけるかと思います。
 では,次のページに行ってください。こちらは先ほど言いました既存の教材コンテンツです。こういったものを利用していたかということなんですけれども,こちらに関しても同じ傾向でありまして,感染者100名以上の,ある程度感染が広がっていると思われる地域に限定しても,同じように大卒比率が高いところほど反応率が上がっていると,こういうようなことになっております。
 9ページに行ってください。9ページは,先ほど言いましたオンライン等々ICT関係,プラス携帯電話の項目が,最後,黄色い棒が1本ありますけれども,そういった機器を用いた指導ということになるんですけれども,こちらのほうも,反応率は低いんですけれども,低い中でも大卒率が高いところほど反応がよいというような傾向が見て取れるということになっております。
 では,10ページに行ってください。上記について特別な対応をしていないというグラフなんですけれども,これは先ほどの14項目ですね。これらが上にあって,一番最後についている項目なんですけれども,これは要するに,その14項目について反応していないというところのグラフなんです。こちらは,先ほどとは逆に,大卒比率が高いほど何らかの対応をしたので数値が低くなっている、というふうに読むことができるかと思います。
 では,次へ行ってください。以上の傾向をまとめますと,教育委員会のコロナ休校時の対応には,当該地域の大卒比率,これは私どもはよく社会経済的地位と言っておりますけれども,こういったものが関連している可能性があるということであります。こちらに関してはさらに少し分析を進めているんですけれども,いろいろ要因を考慮しても,その関係はある程度残ってくるということも一応確認はしております。ですので,ある程度そういった傾向があるというふうに読めるんですけれども,なぜそうなのかということでいいますと,大卒比率が高い地域や自治体においては,当該地域の保護者の高い教育への関心というか,関与があると予想されるわけでありまして,それに対して教育委員会のほうが対応している,あるいはもともとそういう風土があって動いているというようなことがある可能性があるんじゃないかなというふうに考えます。その点を一応確認するという意味でも,最後に,小学校の保護者調査のデータから,教育への関与・関心が学校間でかなり差があるということを示しておきたいと思います。こちらでガバナンスを議論する前提としても御理解いただく必要があるんじゃないかなと思って,お出しする次第です。
 では,次のページへ行ってください。こちらは保護者の調査のデータなんですけれども,同じコロナの2か月の休校があった時期,家庭でどんなことをしていましたかという項目なんですけれども,これは学校ごとに,保護者調査を1クラスまとめて取っていただくような形で調査をやっていますので,学校ごとの集計ができるんです。ですので,学校ごとに集計して,これらの項目,例えば一番上ですと,何を学んでいるのかを聞いたみたいな項目について,「よくあった」と答えた人がその学校のそのクラスでどれぐらいの割合いたのかというのを集計しますと,0の場合もあれば,100の場合もあるということで,学校によって非常にバリエーションが多いということが分かります。そのバリエーションは,ここにも書いておりますように,ランダムにばらついているわけではなくて,両親の大卒割合が高い学校ほど「よくあった」と回答した保護者の割合が高い学校になっている。それが表れているのが一番右列の相関係数ということになっております。
 では,次のページに行ってください。こちらも同じような質問項目なんですけれども,お子さんと学校の勉強のことについて話をしていたとか,計画的に勉強するようにお子さんに促していたとか,こういったような項目です。あるいは読書を勧めていたと。これも同じように,「いつもしていた」というふうに答えた保護者が0人の学校もあれば,全員という学校もあると。幅があります。全員というように多く答えるような学校の傾向として,両親の大卒割合が高い学校が「いつもしていた」と回答している割合が高い傾向があるというようなことが分かります。ですので,先ほどの話を踏まえても,教育委員会がそういう保護者の関与や関心を反映しているという可能性を言いましたけれども,実際に保護者のデータを見てみると,そういう傾向が,学校差,地域差という形であるだろうと言うことができます。
 では,次のページをお願いいたします。最後になりますけれども,もう1つだけグラフをお見せしておきたいと思います。といいますのは,コロナ禍での教育委員会の対応というのを考える大前提として,そもそもコロナの影響を受けている程度も親学歴によって異なっているということが今回の保護者調査で分かったということで,それもお知らせしておきたいと思います。つまり,親の大卒割合が学校によって異なります。そうすると,学校の対応も変わりますし,多様な対応をする学校を複数抱える教育委員会の対応も,それに応じていろいろ対応していかなきゃいけないというようなことで,この辺りの点も押さえていただけますと,ありがたいなと思う次第であります。
 では,最後のスライドになります。次に行ってください。まとめますと,教育委員会のコロナ休校時の対応には,内容の強弱があり,地域差があった。それから,教育委員会のコロナ休校時の対応には,当該地域の大卒割合が関連している可能性があった。それから,その背景には,保護者の関心・関与で階層差・学校差がある可能性が高い。それから,実際には,コロナ休校時の保護者の関心・関与には明確な階層差・学校差があることは今回も確認できた。というようなことで,これらを踏まえて申し上げられることがあるとすれば,公立中心の小学校のデータですけれども,様々な面でやはり社会経済的格差に留意する必要があるんだろうというふうに思います。今回のデータは小学校だけではなくて中学校も取っていますが,似たような傾向になっておりますので,中学校も同様です。それから,保護者の関心や関与(ニーズ)に合わせて,できるところからやるという対応,よくそういう言い方もあると思うんですけれども,これは社会的に恵まれた地域を結果的に優先することになる可能性があるという点には御留意いただきたいというふうに思う次第です。トータルに見まして,地域間・学校間の社会経済的な格差の問題は,教育委員会ガバナンスの議論の前提に置いていただいていいんじゃないかなというふうに思う次第です。
 あと,もう1つだけ付け加えれば,先ほどデータ駆動型という話が出ておりましたけれども,この実態調査は文部科学省及び浜銀総研と協力して,我々研究者と一緒にやってきて,こういったことがどんどん分かってくるというのは非常にいいことかなというふうに思いますので,ぜひそういった方向でもまた進められたらいいんじゃないかなというふうに思う次第です。
 ちょっと延びてすみません。以上,報告になります。

【荒瀬分科会長】 中村先生,ありがとうございました。
 もう1件,聞いていただくことがございます。「令和の日本型学校教育」を全ての子供に実現するための幼児教育の質的向上及び小学校教育との円滑な接続ということにつきまして,瀧本初等中等教育局長から御説明をよろしくお願いいたします。

【瀧本初等中等教育局長】 失礼いたします。初等中等教育局長の瀧本でございます。長い説明になりまして申し訳ございません。私と,あともう1人で終了しますので,手短に。
 資料7-1に基づいて御説明申し上げたいと思いますが,資料7-1でお伝えしたいことは,表題のところにございますとおり,この1月の「令和の日本型学校教育」の答申も踏まえた上で,全ての子供たちにこれを実現していくためには,とりわけ,幼児教育の質的向上,さらにはそこと小学校教育との円滑な接続を図っていく必要があるということで,この点に関しても,初等中等教育分科会に対しまして,私のほうから,ぜひ集中的な審議をお願いしたいという趣旨が7-1に書いている内容でございます。
 第1段落は今申し上げたような内容ですので,省略をさせていただきます。
 第2段落のところで,特に最大限の配慮が必要ということで書かせていただいているのが,4行目ほどですが,幼児教育と小学校から実施される義務教育を円滑につないでいくためにどうしたらいいのかというようなことで書かせていただいております。
 第3段落,平成29年でございますが,現行の幼稚園教育要領でございましたり,小学校学習指導要領も踏まえた上で,学校種,あるいは施設類型を超えて,子供の成長を支える手がかりが共通に整理されたわけでございますけれども,これを具現化していくということにおいてはまだまだ多くの課題がございますので,それらも踏まえて,今後どうしていくかということで,その次の段落で,今年の5月に,実は萩生田大臣が,経済財政諮問会議,骨太の方針を議論する諮問会議の場において,「幼児教育スタートプラン」のイメージというものを示させていただいたわけでございます。国際社会に目を向けてみますと,実は先進国で教育開始年齢の早期化という世界的な潮流がございますけれども,そうしたことは横目に見つつ,我が国において,どうやって幼児教育と小学校教育にしっかりとした架け橋を架けていくのかというための方策について,ぜひ専門的な見地からこの場で御議論いただきたいというのが,私からの審議の要請,お願いの趣旨となります。
 以下,ことばの力とか,情報を活用する力とか,こういった点を書かせていただいておりますけれども,私のほうからの説明については以上とさせていただきます。
 補足を幼児教育課長のほうからお願いします。

【大杉幼児教育課長】 幼児教育課長の大杉でございます架け橋特別委員会の設置についてという紙がございます。こちらのほうを本日御審議いただければというふうに思います。
 設置の目的でございますけれども,幼児教育の質的向上及び小学校教育との円滑な接続についての調査審議ということでお願いしたいと思います。
 委員は部会長の御指名でお願いできればと思います。
 3ポツの主な検討事項でございますけれども,生活・学習基盤を全ての5歳児に保障するための方策,各地域において幼児教育を着実に推進するための体制整備,保護者や地域の教育力を引き出すための方策,保育人材の資質・能力の向上といった幼児教育の質的向上及び小学校教育との円滑な接続を図る上で必要な事項,その他という形で御検討を賜ればということですので,御審議をよろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 ただいま瀧本局長と大杉幼児教育課長から御説明いただきました,この件でございますが,特別委員会を設置して議論していくということで考えていってはどうかと思いますが,皆様,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。今,こちらのほうには賛成というお声も聞こえてまいりました。

【若江委員】 1点質問をよろしいですか。

【荒瀬分科会長】 はい。若江委員,お願いいたします。

【若江委員】 若江でございます。ありがとうございます。
 今の最後の議題についてなんですけれども,幼児教育と小学校の連携は非常に重要なことだということは認識をしておりますが,ご説明の中にもちょっと出てきたように,教育の早期化として,5歳児からの教育をというようなところなんですが,今回この特別部会を設置されるにあたり,早期教育化の是非ではなく幼児期の特性をきちんとと重視した議論をお考えになっているのか,その辺りをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。

【荒瀬分科会長】 では,課長,よろしくお願いします。

【大杉幼児教育課長】 若江委員,ありがとうございます。
 やはり幼児期は五感を通じて学ぶという時期でございますので,こうした特性を踏まえて,議論においても,画一的なものではなくて,各園の創意工夫が後押しされるような,子供の体験の幅を広げていくために各園が抱える課題をどう乗り越えていくかといった工夫を後押しするようなものとして議論を進めていただくということを想定しております。全ての5歳児にということですけれども,一人一人の多様性に配慮しながら議論を進めていくことですとか,あとは幼保小連携で子供の発達に関する気付き早期の支援につなげていくことなどをしっかりと視野に入れて御議論いただければというふうに考えております。

【若江委員】 ありがとうございました。

【今村委員】 すみません,私も1つよろしいでしょうか。

【荒瀬分科会長】 ちょっとお待ちくださいね。今,こちらで,市川裕二委員と大字弘一郎委員から伺います。今村委員も,その後,お願いいたします。時間の関係で,今村委員までとさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。ほかにどなたかいらっしゃいますか。この件に限ってのみです。

【安家委員】 ちょっと私も1つ,後にお話ししたいことがありますので,お願いします。

【荒瀬分科会長】 安家委員ですね。了解いたしました。では,安家委員までとさせていただきます。
 では,市川裕二委員,お願いいたします。

【市川(裕)委員】 恐れ入ります。全国特別支援学校長会の市川でございます。
 幼児教育と小学校教育をつなぐということは大変重要な課題だと思っておりますので,ぜひ進めていただければと思っておりますが,特別支援学校の小学部については別途検討ということなのか,これの中に入るのかということが1点の御質問でございます。それと,この議題の中に入る,小学校との架け橋の中で,幼稚園教育の質的向上はいいんですけど,小学校教育との円滑な接続ということを考えると,障害があるなしに関わらず,就学相談ということが大きなテーマになると思うので,そのことも議題として御検討いただけると幸いでございます。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。後からまとめて大杉課長からお答えいただきたいと思います。
 それでは,大字委員,お願いいたします。

【大字委員】 全国連合小学校長会の大字です。よろしくお願いいたします。
 大変すばらしい委員会ができるなと思って,期待をしているところです。現在,小学校では,スタートカリキュラムをはじめ,就学期の円滑なスタートができるように,様々な取組を行っています。また,幼保小の連携ということでは近年かなり進んでいるのかなとは感じておりますが,まだまだ十分ではないというのが実感です。この委員会で活発に議論がなされることによって,幼保小の接続がより一層進むことを期待しております。この委員会の議論が実際どのような影響を今後の幼保小の接続に与えていくのかというようなイメージがあれば,具体的にお聞かせいただけるとありがたいです。お願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
それでは,今村委員,お願いいたします。

【今村委員】
 私も,1人の親として,この小学校の円滑な橋渡しはとても大切なことだと思っているんですけれども,何をもって質の高い幼児教育なのかということについてはもう宗教論争かと言ってもおかしくないぐらい,いろんな論があるので,今回どんな方を委員にされるのかということがとても重要になってくるのかなと思います。私は少なくとも,いただいた資料7-3の12ページから15ページを見て少し不安を感じたのは,エビデンスということで示されているOECDのデータなんですけれども,3歳児から4歳児の家庭教育がその後の成績にすごく影響しているという因果関係を示されているんですが,それはもしかしたら相関関係でしかないかもしれないということもある中で,これはともすると本当に就学前から英語をやらせましょうとか,就学前から公文式の詰め込み,公文を否定しているわけではないんですけれども,そういったことに親たちは今現状,走っているんですよね。本当にそれでいいのかということなどもあるので,何をもって質の高い教育を早くから提供するのかということ自体について,きちんと幅広い議論ができる委員を選んでいただけたらなと思いました。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 では,最後に,安家委員,お願いいたします。

【安家委員】 ありがとうございます。
 この委員会が設立されたこと,とても喜ばしく思っています。そして,この議論が今後大きな影響を及ぼすことを考えますと,忘れてはいけないことが幾つかあろうかと思いますが,過去から幼保小の接続はずっとテーマになってまいりました。ところが,質的に違った教育をつなげるという意味では,非常に難しいことが両方にあるように思っています。
 特に,乳幼児期の教育・保育の評価は,一人一人の子供のよさと可能性を評価することが評価対象になっておりますが,小学校以降の教育については学習指導要領の到達の目標がテーマになるということの大きな違いがあって,質的な違いをくっつけるときに,双方の理解が非常に必要なのですが,双方共に理解が薄いというのが現状としてあります。例えば,幼稚園の先生方が小学校の学習指導要領のことをあまりよく分かっていないということと同じように,小学校の先生方が幼稚園教育要領のことの御理解があまり進まない。こういう中でこの議論が進みますと,上滑って,制度だけが押し下げられたような形になる可能性がある。このことについては私どもは以前からずっと危惧をしております。そのことをよく理解が促進された上でこの議論が進むことを願っているということだけ申し上げておきたいというふうに思っています。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では,大杉課長,よろしくお願いいたします。

【大杉幼児教育課長】 ありがとうございます。一つ一つ非常に重要な御指摘をいただきました。
 まず,特別支援教育につきましては,分科会長と御相談になりますけれども,特別支援の御専門の方も委員としてお願いしたいと現在検討しているところでございます。特別委員会だけで閉じる議論となるのか,それとも,他の会議体とも連携しながらということになるのかというのは今後の議論の流れになりますけれども,その部分は視野に入れながら議論を進めさせていただきたいと思っているところでございます。
 また,幼保小連携をこれからどう具体化していくのかというところですけれども,先ほどもご指摘いただいたように幼児期に育ってほしい「10の姿」がまとめられたわけですけれども,必ずしもその理解が進んでいるというわけではない部分もある。幼児期にどのような学びや遊びを経験して小学校に入るのかということをお互いに理解しながら進めていただく,そのための手がかりとなるようなものを提供し、幼児教育側,それから小学校側それぞれの工夫を引き出すような学びに関する議論ということと,併せて,やはり幼児教育推進体制の整備,まだ都道府県は半分ぐらいですけれども,これを同時並行で議論させていただく必要があるかなと思っております。
 それから3番目は,委員の選定について,これが大事だということで御意見をいただきました。これも分科会長と御相談になりますけれども,今検討させていただいているメンバーは,むしろそういった,いわゆる早期教育や小学校教育の単なる前倒しに関しては否定的なスタンスを取られる方々になるのではないかなというふうに思います。幼児期の,五感を通じた,体験を重視した学びということ,これを重視しながら小学校の生活科などを中心とした学びにどうつないでいくか,どう理解を深めていくかということに非常に強い関心を持ってくださっている先生方になるのではないかなというふうに思っております。
 それから4点目,やはり非常に長い間議論されてきたテーマでございます。幼児教育と小学校教育以上の教育の違いと連続性ということを意識しながら,具体的な工夫を引き出す方策というものをまとめていけるように事務局としても議論をサポートしていきたいと思いますが,ぜひこの場でも様々御議論いただければと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 御質問いただきました委員の皆様,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは,特別委員会の設置につきましては,特段の反対はない,むしろいいことではないかということでございますので,決定をしたいと思いますが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。では,再びの確認になりますが,特別委員会を設置するということでよろしくお願いいたします。
 今,人選につきまして御意見も頂戴したわけでございますけれども,分科会長であります私のほうに御一任いただくということで,大変大きな責任を背負い込むことになるということで緊張いたしますが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【荒瀬分科会長】 では,いただきました御意見も十分に踏まえた上で,事務局と人選について検討してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,これで,事務局からの説明と,今ございました特別委員会の設置につきまして終わりました。
 それで,大変申し訳ないのでありますが,時間のほうがそんなに残っておりません。今日の議題は大きく3つあったわけですけれども,議題1として御説明いただきましたものは,1つは教員養成部会あるいは特別部会,小委員会等で現在議論をしていることで,これもまたいずれ初中分科会にも御報告をいただくことになろうかと思います。あるいはまた,学校安全に関しましても,こちらのほうも諮問がありまして,現在議論を重ねていただいているところでございます。さらには,教育再生実行会議のほうは第12次提言の御説明をいただいたということで,こちらのほうもちょっと今は置きまして,今の幼児教育と小学校教育に関することもそうですけれども,今日は,先ほど中村先生から御説明がありましたように,実はほかにもこの研究に関わってくださっていらっしゃる早稲田大学の松岡先生,それからオックスフォード大学の苅谷先生。苅谷先生におかれましては早朝からオックスフォードからの御参加ということでお願いをしているところです。最後に説明をいただいた資料6,これに関しまして,まず御質問とか御意見を頂戴できないかなと思いますが,いかがでしょうか。どなたからでも結構です。御発言をお考えの方は手を挙げるボタンを押していただきたいと思います。
 秋田委員,よろしくお願いいたします。

【秋田委員】 学習院大学の秋田です。
 大変貴重なデータでの,エビデンスに基づく御紹介をありがとうございます。2点,明確にしたいことと,1点は意見というか,教えていただきたいことです。
 これは昨年度と今年度の何月に実施されたものであるのかということと,資料の4ページを見ますと,地域差があると書かれていますが,これは8つに分けられた地域間で差があるという意味なのか,都道府県やいろいろデータを取っておられるので,その地域間差があるということを言おうとされているのかということを伺いたいというところです。
 また,意見としては,大卒の割合ということは納得ができる極めて重要なデータだと思う一方で,大卒比率は低いにも関わらず,多様な教育への対応がコロナでできた教育委員会はどういう対応をしたのかということが明らかになることによって,親の大卒比率が高いところが親の教育への関心も高いという話だけではなく,困難な御家庭というか,大卒比率が低くてもうまく政策が対応できたところはどういう自治体なのかというようなことを今後分析されていくことが,少し今後の見通しというのでしょうか,その辺りをぜひ伺いたいと思います。このデータだけが独り歩きするということへの,やや危惧もありまして,質問並びに意見となります。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。まとめて,後からお答えいただきたいと思います。
 今,手を挙げていただいていますのは,八並委員と貞廣委員でいらっしゃいます。ほかにはよろしいでしょうか。渡辺(弘)委員も。では,八並委員,貞廣委員,渡辺(弘)委員の順でよろしくお願いします。
 八並委員,お願いいたします。ミュートを外して御発言いただけますでしょうか。八並委員,申し訳ありません。ちょっと音声がこちらで処理できていないみたいで,皆さん聞こえないのではないかと思います。後からまた御発言いただけますか。ちょっとこちらで調整をさせていただきたいと思います。申し訳ありません。
 では,先に貞廣委員,お願いいたします。

【貞廣委員】 千葉大学の貞廣と申します。大変貴重な御報告をいただきまして,ありがとうございます。
 コロナ禍における対応に関わる諸情報や調査報告から見ますと,自ら対応の答えをきっちり出した自治体や学校と,答えを文科省や他のところで求めた,外に求めた自治体や学校,またはそもそも消極的な対応にとどまったところの大きく3種類の自治体や学校があったというふうに見ておりましたけれども,本日の中村先生からの御報告は,まさに親学歴が低い学校ほど,そこの家庭の生活が苦しく,子供の教育に親の関心がより向かなくなるにも関わらず,教育委員会等の対応はそうした学校でこそ消極的だったという御報告で,パンデミック下の教育の有り様に,社会的公正という観点からいったときに,二重の意味での望ましいバリエーション,望ましくないバリエーションが生み出されたということをデータから立証していただいた報告と伺いました。教育に対する意識,ある意味,これはリソースの一つであろうと思われますけれども,このリソースが地域によって偏在しており,教育委員会の対応力とその偏在が連動しているという知見でもあろうと思います。大変興味深く拝聴いたしました。
 そこで,期待も込めてという御質問なんですけれども,秋田先生の御質問とも少し重なる部分があるんですが,大卒率を高めて課題対応力を高めるというような政策変数は想定されにくいわけで,こちらの報告から導き出される政策変数ですね。どのような政策的な介入や資源的介入を行えば,対応力の低い,可能性の高い教育委員会の課題対応力が底上げされるというふうに考えればいいんでしょうか。この知見をどういう施策に結びつけていくということが想定できるのかというのを,仮説的な見通しでも結構ですので,教えていただければ大変ありがたいと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 では,渡辺(弘)委員,よろしくお願いします。

【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。
 3点,気になることがございます。さっき委員もおっしゃったように,このデータだけが解釈されて独り歩きするというのはあまりよろしくないような気がします。1つは,大学卒の定義というのが明確であって,短大とか四年制とかどういう形で御卒業になっておられるかということ。それから,要するに社会経済的格差ということになっていますけれども,保護者の方,お二人かお一人か分かりませんけれども,ダブルインカムかどうかという,年収への関係があるのかないのかということ。つまり,単なる学歴の問題なのか,それ以外のファクターが入っているかということを加えて分析しないと,単に学歴がいいとこういうふうな反応があるというふうに誤解を生むのではないかというふうに思いますので,そのほかのファクターも十分考慮して資料としてされる必要があるんじゃないかと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 八並委員,聞こえますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【八並委員】 今の質問とも関係しますが,これは大規模調査をされているわけですが,1つは,2ページに回収サンプル数というのは明記されていますが,サンプリングの方法は明記されていません。例えば,学校を抽出されていますが,学校が市部にあるのか,郡部にあるのか,その配分はどうなっているか。あるいは学校規模でも,大規模か,小規模か。それから,特に教育委員会の政策になってくると,例えば,先ほどからあったように,要保護家庭や準要保護家庭の割合がどうなっているか。サンプルの基本情報を少し明記していただくほうがいいのではと思います。数だけの問題ではなく,そこの中身の割合です。
 それからもう1つは,政令指定都市を除く2020年5月の感染者100名以上の都道府県のみとなっていますが,これに該当する都道府県が幾つあるかということです。私は今東京にいますけれども,1都3県や大阪などかなり大都市部ではないかと思っています。そうなると,地域が限定された中での分析になってくるので,そのあたりの限界性も必要ではないでしょうか。
 またもう1つは,先ほどからあったように,大卒という変数だけではなく,年間の所得です。年間の所得変数というのは,恐らくオンラインを使う場合,重要な変数になるだろうと。それが組み込まれていません。
 それから最後に,11ページで,「『大卒比率』と『実施した』の関連が認められた(2項ロジスティック回帰分析)」とありますが,恐らく一般の人には,この2項ロジスティック回帰分析とは一体何かと。そういう点では,一体この2項ロジスティック回帰分析での被説明変数と説明変数は何か,あるいは一体これは何をしようとしたか。もう少し一般の方に分かりやすく提示していただけると,この文が生きてくるかと思います。
 少し長くなりましたが,以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 中村先生,松岡先生,苅谷先生,今,御質問が幾つか出まして,御意見もございました。お答えいただくということでよろしいでしょうか。では,まず,中村先生,お願いできますでしょうか。中村先生のほうで,松岡先生,苅谷先生にやっていただくように御案内いただくというのでよろしいでしょうか。

【中村東京大学大学院教授】 はい。お願いいたします。こんなにたくさん御指摘いただいて,お答えする時間までいただけると思っていなかったので,ありがとうございます。
 まず,秋田先生からの,いつ頃の実施という話ですけれども,これは2021年の1月から,最後は3月ぐらいですかね,松岡先生。そのぐらいの間の,要は年度の後ろのほうに実施しております。ですので,コロナに関する対応は回顧的なデータになっているので,そこは一定の限界があると思います。 リアルタイムではもちろん取れませんでしたので。
 それから,地域の問題なんですけれども,これは8地域の話をしているんではなくて,それぞれの自治体にそれぞれの大卒比率ですとかそういうものを割り振って分析していますので,それぞれの教育委員会が地域みたいなイメージで自分の中では言葉を使っております。
 それから,あとは,いろんな変数を使わなきゃいけないという御指摘があったと思うんですけれども,今日は10分という時間があったので,もうその中で分かりやすいものを使っているという事情が正直言うとありまして,いろんな変数を使ってやる分析はもちろん予定しておりますけれども,取りあえず,今,データが上がってきたところ,急いで分析を回した中で,非常に使いやすい,分かりやすい変数だということで,大卒比率を使っています。その留保があったので,配布資料の中ではあえて社会経済的地位というのを大卒比率とイコールでつないで,括弧書きしております。
 それから,サンプル情報に関しては,もちろんちゃんとした報告で出させていただく予定なんですけれども,今回はちょっと説明する時間が全くないというふうに判断しまして,外しております。いずれ報告が出ますので,そちらを御覧いただければというふうに思います。
 それから,都市部限定のデータになっているというのは,おっしゃるとおりなんですけれども,一応そうじゃない地域のデータも見ておりますので。ただ,大都市部のところが一番焦点が当たると思ったんですね。感染が広がっているという意味で。ですので,そこを取り出しています。都市部はほかの地域よりもはっきり割合が出るのは確かですが,ほかの地域のデータもそれなりに大卒比率が影響を与える要素はかなり残るんです。ですので,そんなに都市の部分だけという話ではないということです。
 それから,分析方法の記載に関しましては,ちょっとこれは私の資料の出し方が悪いんですけれども,見て分かってくださる先生もいらっしゃると思ったので,そういう書き方をしてしまったんですが,もう少し分かりやすく書くべきだったかもしれません。
 それ以外の点に関しては,松岡先生,苅谷先生,お願いいたします。

【松岡早稲田大学准教授】 松岡と申します。『教育格差』という本をちくま新書として出している通り,教育格差の研究者です。
 今回の分析結果は,特定の教育委員会が対応できてなかったと非難するために出しているわけではありません。あの教育委員会は対応できていない,ここは対応できているという評価ではなく,対応の差に一定の系統性があり,そこに地域の社会階層が関係しているということを議論の大前提としていただきたいというのが,私たちの願いです。このような分析は公平性という観点だけではなく,実態を把握しないと,結果を出すための方策を決めることができないという点でも重要です。恵まれない地域を把握し,教員やICT支援員などを追加的に配置して,その効果を測定するといった対策を考える際の,基礎資料として今回の分析結果を活用していただきたいと思います。
 なぜ実態把握が重要だと強調するのかといいますと,私は教育再生実行会議の初等中等教育ワーキンググループの委員としてそちらでは結構発言したのですが,中教審の先日の答申の格差に関する記述は明らかに不十分ですし,不適切と思われる表現が散見されます。教育格差という実態を適切に踏まえている、研究に基づいた議論とは言い難いのです。特に,最近,コロナ禍で格差が拡大しているといった議論がありますが,もちろんそのご指摘は重要ですが,拡大を議論する以前に,戦後,1度として,この国は格差を克服してきたことがない点を忘れるべきではないかと思います。それは出身家庭の社会経済的地位あるいは社会階層による個人間の差であり,地域格差であり,性別による差です。今までの教育行政ではこれらを克服できてこなかったというデータと研究が示す実態を議論の前提にした上で,実際に格差を縮小するための政策の議論を皆様にしていただきたいと願います。
 私からは以上です。苅谷先生,お願いします。

【苅谷オックスフォード大学教授】 苅谷と申します。今約1万キロぐらい離れたところからしゃべっています。時差もあります。
 いろいろと御指摘があった点については,ごもっともだと思って拝聴しました。特に,社会経済的な要因をどのように見るのかという御指摘についてもそのとおりです。あくまでも大卒比率というのは一つの指標にすぎません。今後,より一層それの点を詳しく分析していきます。データの独り歩きをしてはいけないという点もごもっともな御指摘です。ただ,この調査がなかったら,コロナ禍で日本の学校や児童生徒や教育委員会がどうなっていたかということについては,実は分かっていなかったんです。つまり,このデータがなければ,全国的な傾向として,このような実態があったかどうかを今日この場で中村さんが詳しく発表するということ自体ができなかったんです。ということは何かというと,このデータがなかったら,皆さんはエビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングどころか,エビデンス・インフォームド・ポリシー・メイキングもできない。つまり,ほとんどエビデンスがなく,コロナ禍で何が起きたのかということについて,我々が発表したような社会・経済階層的な要因の影響ということは全く分からずに,つまり、データ・ゼロで皆さんは議論しなければいけなかった。
 もっと言うと,過去の中教審においても,残念ながら,こういうものはなかったです。私はもう三十年前から,教育における階層差の問題とか,教育における不平等の問題ということをずっと指摘してまいりました。今から十六年前には,中教審の臨時委員としてもこういう議論に参加したことがあります。義務教育特別部会です。そのときにもさんざん,本当にデータなしでこういう議論ができるのかということを主張してまいりました。社会経済的な要因が重要になったのは,そのときに比べたら現在の方がより一層重要になっています。というのは,社会全体の格差が広がっていること。しかもそれが今回のパンデミックでより拡大している可能性があること。そしてさらに,コロナ禍が収束したとしても,それが社会経済的にマクロな面で大きく影響し続けること。それは,ひいては,みんな日本の子供たちに影響するんです。そのときに,データなしでどうやって皆さんが中教審で政策決定をするんでしょうか。
 皆さんの御指摘になったことは非常にもっともなことです。ですから,このようなデータを活用してください。ぜひこのようなデータを集め続けてください。そして,それをベースにして政策を決定するのは難しいとしても,少なくてもそれをインフォームドして,つまり知識の一部として政策に役立ててください。そういった点では,今回,文部科学省と,こういう事業を私たちが引き受けて,我々研究者がやったというのは,実は戦後の教育行政の中で恐らく初めてだと思います。それくらい,今までこういうデータに基づく議論がなかった。後手後手の議論はありますよ。後でどうなったかを検証する。だけど,現在進行中の事態に対して,こうやって事態を見ながら調査をやっていくということ。これがとても重要なんです。
 もう1点だけ言わせていただくと,今回こういう調査をやっていましたが,今回この分科会がガバナンスのことを議論するということですが,残念ながら,協力していただけない教育委員会が幾つかありました。つまり,文科省の名前で調査をやったときも,全ての教育委員会が回答してくださったわけではありません。つまり,全国の数字を悉皆で捉えようとしても,文科省の名前で調査をしても,できないんです。こういう問題を皆さんがどう考えて,今後,中教審で議論していくか。もう世界ではエビデンス・ベースドというのは当然になっているんです。ただ,先進国の中で日本だけが遅れている。しかも,日本は格差の問題がだんだん広がっていて,それこそ松岡さんの研究が指摘したようなことがだんだん分かってきているのに,まだ残念ながら政策レベルでそれを生かす方法がありません。
 ですから,データが独り歩きするのは怖いですが,もっと怖いのはこういうデータが存在することが知られていないことです。ですから,我々がそれを注意深く分析して,それをきちんと間違いのないように報告していきますが,そのことを踏まえた上でも,こういうことを世の中が,日本社会が知っていくということは,極めて重要です。ですので,1万キロ離れているところからのお願いですが,どうぞ委員の皆さんには,このデータを活用しながら,今回だけではなくて,必要なときには,こういう分析をしてくれ,あるいはこういう結果が欲しい,あるいはさらにそれが必要だったら,もっとこういう調査をしてほしいということをですね。ちゃんとそれが実際にできる専門家が外部にいるんです。残念ながら,文科省の内部にはいないかもしれない。だけど,専門家を使いながら,ぜひそのような仕組みを作ってください。我々はサードパーティーですから,公正にやります。自分たちの専門性にもとるようなことはしません。しかも,政治的・経済的利害はどこにもありません。こういう第三者的な人々を使いながら,政策をより豊かにしていくデータを集めていただけることを,文科省の方々にも,委員の方々にもお願いして,私からの回答とします。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 大変厳しい御指摘もいただいたのだと思います。苅谷先生がおっしゃることも,もちろん松岡先生,中村先生も,3人の方の御指摘をしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。御承知かもしれませんが,先般,大学入試に関する検討会議が最後のまとめをいたしました。そこのところでも,エビデンスに基づくということと,利害関係のない第三者の意見をしっかりと,しかも専門家の意見をしっかりと聞くということがこれまで十分であったかどうかという指摘がなされています。我々もその点については,改めて私たち自身の取組を見直しつつ,本当にこの国の教育がちゃんと全ての子供たちに行き届いて,そして子供たちが自分たちで生きていく力をしっかりと身につけていく,そして社会がより幸せな社会になっていくという方向で,少しでも前に進んでいけるようにやっていきたいと思っておりますので,ぜひ今後ともよろしくお願いしたいと思います。先ほど委員からいろいろ出ました御指摘はそういったことにも基づいての御指摘であったというふうに思っております。それらにお答えいただきまして,ありがとうございました。とりわけ,苅谷先生,本当に早い時間から御準備いただきまして,ありがとうございました。
 あと,御意見,あるいは御質問がある方ということで,小林委員から,今,手を挙げていただいていますが,ほかにはいらっしゃいませんでしょうか。もしございましたら,この件に関わらず,全般で結構です。今,神野委員,戸ヶ﨑委員,松木委員,こちらの会場からも渡辺(弘)委員と堀田委員から手を挙げていただいております。これから後は時間との勝負ということになってしまうんですが,まず,小林委員,お願いいたします。大変申し訳ありません。皆さん,いつもいつもこういうことばかり言って本当に申し訳ないんですが,手短によろしくお願いをいたします。
 では,小林委員,お願いいたします。

【小林委員】 ありがとうございます。
 いろいろお話を聞かせていただいて,私,大変勉強になりました。ただ,1つ,私の学校の生徒たちに,休校中にどんな学習がためになりましたかというアンケートをしました。なので,私の言いたいのは,子供の声を聞いていただければと思うだけで,何か意図があるわけではないので,そのままお伝えします。
 福井県は県教委が一生懸命動画を作ってくれて,すてきな授業を動画で流してくれました。しかしながら,子供たちのアンケートを見ると,最初学校から出したドリル的なプリントと,県教委の動画と,それから,本校では,最後の最後に出した課題は,授業再開につながる課題をということで,例えば,新聞記事から考えたことを自分の理論とするとか,あるいは英語で休校中の様子を話すとか,そういう課題を出したんですけど,子供たちのアンケートの中では,やっぱり最終的に授業再開につながる課題が一番役に立ったという回答でした。あと,県教委の動画は,分かりづらい,伝わりづらいということで,やっぱり生で知っている先生が動画を作ったのとはちょっと違うような形で子供たちは受け取っていました。子供の意見だけ伝えておきます。
 あともう1つ,すみません。幼児教育についてなんですけど,先ほども出ていたんですが,小学校と幼稚園をつなぐこともすごく大事なんですが,福井県は18年教育ということで,その後の中学校,高校も全部つないで考えるということで,今ちょうど出てきた資質・能力の3つの柱というのは,幼児教育でも同じようにそこを柱として考えているので,中学校でも高校でももう一度その幼児教育の在り方みたいなことも一緒に学んでいけるといいのかなと,そんなふうに私は考えました。
 ごめんなさい。以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。
 神野委員,お願いいたします。

【神野委員】 よろしくお願いいたします。
 手短にお話しさせていただきますが,資料3-2,3-3のところで,学校安全部会みたいなものの審議ということが書いてありますが,その中で,ICTに関してのSNSの危機等と書いてありました。そこの議論の中で,例えばですが,今回のGIGA端末を1人1台持ち帰るとしたときに,その端末自体にすごく制限をかけて,そのようなSNS等々の危機が起こらないようにするということ自体の議論は確かに大切なんですけれども,一方で,そのようなことで対応したところで,子供たちにしてみれば,家の保護者のPCだったりとか買い与えられたスマホによって結局SNS上で危険な行為をしてしまうということも同時に起こると思っています。
 今,私は宮崎市の教育CIOという立場で教育委員会側でやっていますが,宮崎市においては,その中でモデル校において,1人1台タブレットを持ち帰る際にほぼ制限をかけずに,ですが,一方で保護者と一緒になってタブレットの勉強会みたいなものを開きながら,文部科学省がユーチューブ上に上げてくださっているICTの危険みたいなところの動画をみんなでちゃんと見ながら,子供たち自体のデジタル・シティズンシップみたいなものも育てつつ,保護者に対しての理解を求めるというようなことを始めようとしています。つまり,このような中で,学校の安全というような言葉だけで言えば,GIGA端末を制限していくというような議論になりがちかと思うんですけれども,一方で子供たちの安全を守るという視点から考えると,また新しい議論が生まれるかなと思いまして,そのようなことも審議の中でお願いできたらというふうに思っております。
 以上となります。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 戸ヶ﨑委員,お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 大きく2点申し上げます。
 まず,「地方教育行政の在り方」についてですが,答申の最終92ページの「今後更に検討を要する事項」で教育行政の主な課題として示されている5つの内容に沿って意見を述べます。
 1の学校支援は,教育委員会は地教行法などで示されている「管理」というイメージがどうしても強いので,今後は,自走する学校と伴走し支援するパートナーであるという意識改革が急務と考えます。
 2と5の社会変化への対応と連携については,従来の取組を廃止するなどして非難されることを避けるため,ディフェンスを重視する傾向があります。さらに,企業など外部から口出しされることを歓迎しない文化が定着しています。教育委員会こそ,子供たちが活躍する社会を展望し,社会の動きを教室の中に入れるために,外部人材や産業界とも積極的に連携して,まさに「社会に開かれた教育行政施策」の実現に努めるべきと思います。
 3の機能強化は,焦眉の課題として議論が必要と思うことを申し上げます。
 ①教育行政に長けた人材の育成と配置(教育行政のプロの育成),②学校管理職,指導主事や管理主事等の適正配置,キャリアパス,スキルアップ,③教育長のスキルアップやコラボレーティブ・リーダーシップの発揮,④小規模自治体の連携の在り方,⑤教育委員会のテーマコミュニティーづくり,⑥全国教育研究所連盟の活性化,⑦定例教育委員会会議の充実・活性化や透明性の確保です。
 特に,自治体間連携については,コロナ禍でオンライン化・遠隔化が急加速したことで,指導主事の交流,各種研修会などの共有化,様々なデータ利活用の共同研究などがしやすくなっています。
 以上ですが,これらの課題解決に向けては,国任せにすることなく,地方教育行政の担い手たる教育委員会,また,事務局自身が,あくまでも主役であるとの当事者意識をもち取り組んでいくべきと考えます。
 また,4の首長部局との連携の促進については,当然努めていくべきではありますが,今回は教育委員会事務局の機能強化などについて深堀するものであってほしいため、教育委員会制度改革には踏み込まないようにしてほしいと思います。
 次に,「幼小架け橋の特別部会」についてです。長年,幼保小連携の取組が推進されていますが,特に課題と思うことを5点申し上げます。まず,小学校の側ですが,幼児期に育まれた資質・能力を認識せず,1年生が,0からのスタートになってしまっている傾向があります。また,未だスタートカリキュラムを,小学校に適用させるためのものと思い込み,注入型や型にはめた指導を行う傾向があります。次に園の側ですが,小学校を意識し過ぎた保育により,「環境や遊びを通しての指導」を中心とした保育が後手に回っているところも見られます。次に,両者に関することとして,「幼児期に育む10の姿」は到達すべき目標ではないことや,個別に取り出されて指導されるものではないことへの理解が足りません。そして,行政側の課題として,これが最も大きな課題と考えますが,保育内容を指導できる人材や,幼稚園教諭の研修を担当できる指導主事等が,教育委員会や首長部局を含め極めて少ないことです。幼児教育・保育内容の質的向上への一体的取組に向け,専門職の行政への配置・参画等が急務であり,教育委員会と関係部局が本気になって連携していくことが不可欠です。今後に向けて「架け橋特別委員会」に大いに期待したいと思います。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 手を下げていただいた方が何人かいらっしゃいまして,大変申し訳ありません。あと3人の方が手を挙げていらっしゃいます。渡辺(弘)委員,堀田委員,清原委員です。この3人の方の御意見を承って,今日は終了とさせていただきたいと思います。大変申し訳ありませんが,少し延長させていただきます。
 では,渡辺(弘)委員,お願いいたします。

【渡辺(弘)委員】 すみません,時間がありませんので,簡単に申し上げます。先ほどお話をされた幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会に関して,4点,希望させていただきたいと思います。
 1点は,幼稚園就園状況というのは100%ではないと思いますので,一方,義務教育は100%に近いと思いますので,幼稚園教育を受けていない子供が小学校に入ってくるということを一応考慮していただきたいというふうに思います。
 もう1つは,「幼児教育スタートプラン」というのは,認定こども園,幼稚園,保育園等が対象になってプランが組まれているようでございますけれども,幼稚園教育要領というのがほかの施設と共有できないようであればいけませんので,もしそうでなければ,共有するような指針をつくっていただきたいと思います。それから,当然,幼稚園は幼稚園教諭,保育園は保育士が,異なった教育を受けた資格を持った者が存在するわけですので,共有認識を取れるような研修というのが必要だろうと思います。それから,医療的に申し上げますと,5歳児健診というのは発達障害児を最後にスクリーニングできる重要な年齢でございますので,ぜひそこをきっちりとしていただいて,障害がありそうな子供に対しては適切に対応ができるようなということをここのところで配慮していただきたいと思います。
 また,最後に,今,電子教科書でも問題になっておりますけれども,子供にデバイスを用いるということに関して,幼少期から保護者を介してちゃんと教育をしていただくような配慮をしていただければと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 堀田委員,お願いいたします。

【堀田分科会長代理】 堀田でございます。教員の資質向上について一言申し上げます。
 学校現場では,GIGAスクール構想で,いわゆる学習基盤の整備が進んだわけです。そこでは,求められているのは個別最適な学びと協働的な学びという2つのシンボリックな学びを提言しているところでございます。教員研修についても,多分この個別最適な研修と協働的な研修という考え方で進めるのがいいのではないかと思っております。個別最適な研修というのは,デジタル化によって,研修カルテみたいなことがうまくつくれれば,それをそれでいいと認めるかどうかは任命権者の判断でできると考えれば,教員免許更新制度に代わるものがつくれる可能性があるということです。そのためには,学校のネットワークインフラ,特に高速ネットワークの敷設は不可欠だと思っております。これは職場環境としてのインフラ整備として重要かと思っています。
 2つ目の協働的な研修という観点から言えば,やっぱり現場は,今,学ぶ余裕がほとんどないという,そこがつらいところだと思います。これは現場の先生が一番御存じですけれども,教員定数のさらなる改善とともにですが,管理職のリーダーシップによって,それはやらなくていいということをどんどん決めていただきたいと。そういう管理職,あるいは教育委員会経営であってほしいというふうに願います。なぜならば,格差の問題とはまたちょっと別に,全ての学校が満足するようなことを全ての学校でやるという考え方が恐らくもう飽和していて,無理なんだと思います。うちの学校はこういう特性があるから,こういうふうに判断してこういうふうにやりますという自立的な学校経営と教育委員会経営,これを進めていくということができるリーダーシップの開発,そこが重要かと思っております。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 では,最後,清原委員,お願いいたします。

【清原委員】 お時間のない中,すみません。ありがとうございます。清原でございます。私は,幼児教育,そして小学校の架け橋特別委員会の御活躍,本当に期待しています。よろしくお願いします。
 それとともに,今日まさに設置が提案されました,資料5-1,地方教育行政の充実に向けた検討(案)で検討の視点として示されている点について意見を申し上げます。1と2の視点を解決していくためにも,私は,3の視点,すなわち,首長部局との効果的な連携のための方策が検討課題とされていることが有意義と受け止めています。私は4期16年,東京都三鷹市長を務めまして,そのときの経験から,このことが有効だと考えています。
 1つ目の事例として紹介したいのは,総合教育会議を生かして,特にコミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育の推進,幼児教育,保育園,こども園,小学校の連携,特別支援教育の拡充,生涯学習,社会教育,芸術文化活動,スポーツ振興などについて推進しましたが,効果があったと思ったのは,いじめ,虐待,貧困等の状況を踏まえて,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを拡充し,児童福祉,ひとり親支援,障害者福祉,生活保護等との連携を図った経験から,教育行政と,特に社会福祉行政の一体的推進が不可欠と考えます。
 2つ目の事例ですが,私は,耐震化・豪雨対策等のために,公共施設の効果的・効率的な整備の観点から,部局横断の公共施設の整備推進を進めまして,例えば,公共施設の一元的な管理を行う組織として,首長部局と教育委員会の公共施設担当部署を統合して,首長部局に公共施設課を創設しました。したがって,学校の建て替えの説明会には,市長として教育長と一緒に出席して,保護者,地域の人に説明をしました。さらに,エアコン整備,トイレの改修,電力の競争入札によるコスト低減等,施設マネジメントに関する効率的な取組,また,学校施設,通学路や児童公園等の交通安全,防犯,防災力確保も連結して推進しました。
 3つ目の事例は教育委員会の人事についてですが,私の時代は,教育長と協議して,教育委員には,複数の女性と若い保護者に就任をお願いしたりしました。教育委員会事務局にも適性のある女性の課長職と管理職を配置しました。全国的には,学校管理職や教育委員会に若い人や女性が少ない傾向がありますけれども,ぜひ今後,校長,副校長を務めるような,そうした管理職も,年功序列ではなくて,若い人や女性管理職が就けるようになればなと思います。
 ただ,このように首長部局と教育委員会との連携の経験を御紹介した上で,あくまでも地方教育行政については,教育委員会が自主的・主体的に改革していくことが必要であると考えます。特に,新型コロナウイルス感染症対策やGIGAスクール構想の推進に当たって,教育委員会が直面している課題を考えるとき,教育委員会制度の目的が,民主化,分権化,自立性の確保であったことを忘れてはならないと思います。すなわち,様々なガイドラインを文部科学省に出してもらえないと決断できない,そんなことになっていないか,あるいは休校措置やICT環境の整備は首長の理解がないと意思決定できない組織になっていないかなど,検証が必要です。
 でも,これらの傾向がコロナ禍であるとしても,絶対にネガティブに捉えるのではなくて,公正で対等な教育委員会と首長部局の連携の在り方につなげていく必要があると考えます。特に今回,中村先生,苅谷先生等に御説明いただきました資料6「コロナ休校時における教育委員会の対応-地域差と階層差に注目して」のまとめにおいて,「地域間・学校間の社会経済的な格差は,教育委員会ガバナンスの議論の前提にすべき」との御提言は,実証的な調査に基づいているがゆえに,重いものだと受け止めています。ぜひコロナ禍の厳しい現状を見詰め,学校教育の質の地域格差の解消を図る方策の一つとして,視点の4番目に書いてありました,市町村単位の分権に固執するのではない,有意義で適切な広域化の検討も課題解決の可能性の一つだと思います。
 以上,経験から申し上げましたが,ぜひ今回資料5で提案されました地方教育行政の充実に向けた検討が効果を現場にもたらすような検討として進みますことを心から期待して,発言をさせていただきました。どうもありがとうございます。以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 大変時間の配分が十分でなく,申し訳ありませんでした。御発言いただけていない委員の皆さんもいらっしゃるんですけれども,今日はこれで打ち切らせていただきたいと思います。御発言いただけなかった御意見につきましては,メール等で事務局までお寄せいただければと思います。また,次回以降につきましては,できる限り各委員の御発言を十分にやっていただけるように運営をしてまいりたいと思っております。今日は大変申し訳ありませんでした。
 最後に,次回の予定につきまして,事務局からお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 次回の予定につきましては,また日程調整の上で御連絡申し上げます。

【荒瀬分科会長】 それでは,本日の議事はこれで終了いたします。遅い時間まで大変申し訳ありませんでした。どうぞ皆さん御健康に御留意の上,また次回よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
―― 了 ――

(会議終了後,書面で提出のあった意見は以下の通り)

【岩本委員】
・資料5-1(「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた検討(案))に関する意見
1. 学校マネジメントの専門人材としての学校管理職の育成・確保について
 まだ配置が充分に進んでいない(資料5-2.P21)指導教諭、主幹教諭、副校長等の職のより一層の配置及び効果的な活用を促進し、教員・管理職のマネジメント能力を段階的に育成していくための具体方策を検討する必要があるのではないか。
 またその際、OECD参加国や私立学校に対して著しく満足度が低い国公立校長の給与及び雇用条件(資料5-2.P32)について、校長に加え上記の指導教諭、主幹教諭、副校長等の職の処遇の改善も併せて検討する必要があるのではないか。

2. 教育委員会事務局職員の育成・確保について
 指導主事・社会教育主事等の教育委員会事務局職員は、学校現場の教職員とは異なる業務を遂行するため、当然教職員とは異なる資質・能力が求められる。
 教育委員会事務局職員の育成・確保を議論するにあたっては、新しい時代の教育委員会事務局職員に求められる資質・能力を明確化したうえで、評価・育成(場合によっては育成指標等の策定・活用も検討)、採用・登用、キャリアパスの再構築の方策を検討していく必要があるのではないか。

3. 教育委員会事務局の組織開発について
 教育委員会事務局の組織開発や人材・組織能力の向上という視点は、今まで光が当たってこなかった重要な視点である。学校の組織風土や教員の人材育成に関しては多くの調査研究が今まで行われてきており国際比較も含めてデータもある程度あるが、教育委員会事務局の組織開発や人材・組織能力の向上という視点は、今まで注目されてこなかったゆえに、調査研究やデータが少ない。
 今後議論・検討するにあたっては、その議論の土台となる、例えば職員の業務実態、働き方、意識、組織風土等の実態のデータ収集や国内外の事例の収集、調査研究等が更に必要ではないか。

【松木委員】
 本日の報告に関し2点意見を述べたいと思います。
 1点目は、地方教育行政の充実に向けて行われた調査(中村高康氏等)についてです。この調査の中でコロナ休校時の対応に関し、大卒比率の高い地域では、ICT活用等を含めた積極的な対応がなされているという結果が示され、加えて、苅谷剛彦氏からは、教育行政においては「格差」の自覚がまずもって必要だと意見が述べられました。
 しかし、「格差」の自覚として大卒比率を取り上げることに、些かの違和感を覚えました。地方教育行政の改革に向け、「格差」の自覚が重要であることは確かだと思いつつもその顕在化として、大卒比率を取り上げることが、問題解決の直球であるとは思えないからです。コロナで休校が始まった頃、何人かの教務主任クラスの教員から悲嘆した声が寄せられました。その教員がICT等を活用した対応を校長に申し出たところ、設備が充分に整わない段階で、対応を実施することは、子どもたちに「不平等」をもたらすので実施しないとのことでした。学校現場は、どの学校でも「格差」には敏感です。そして、「平等に行動する」こと(裏を返せば何もしないことに繋がる)になったわけです。
 「格差」を自覚した際、今求められているのは、教師が子どもに対し「平等に行動する」ことではなく、教師が子どもに対し「平等になるように行動する」ことではないでしょうか。
 管理職を含む教育行政が「格差」をどのように自覚し立ち向かうかというときに必要になるのは、子どもに対し「平等に振るまう」のではなく、「平等になるように振るまう」ことへの政策観の転換なのではないでしょうか。調査の中で、果敢に取り組んだ教育行政機関がありましたら、ぜひお教え願いたいです。
 2点目は幼児教育と小学校教育を繋ぐ特別委員会の設置についてです。こども庁の設置が計画されておりますので、幼児教育と小学校教育の懸け橋は、省庁を跨ぐ課題となり、今まで以上にしっかりとした認識が必要になると思います。世界的にも学習観がコンテンツベースからコンピテンシーベースに転換しつつある今日ですが、幼児教育は当初からコンピテンシーを中心とした保育を行ってきました。小中学校教育におけるコンピテンシーの教育の重要性が指摘される今だからこそ、幼小連携の必要性が高まっている時機なのです。また、発達障害児とその保護者が直面する障壁は、幼児期から学童期にかけて非常に大きなものがあります。子どもにかかわる教員が一貫してそのことを認識できることが重要です。
 これらを考えると是非とも、特別委員会を設け、論議していただきたいと思います。

【宮澤委員】
・資料3-1(第3次学校安全の推進に関する計画の策定について(諮問))について
 スマートフォンやSNSによる安全についての記述がありましたが、視力だけでなく精神面への影響も心配しております。「スマホ脳」という本を読みましたが、現場では起立性調節障害の生徒が増えている現象と一致しており、生徒たちの脳や精神に与える影響も危惧しています。睡眠時間が減少したり、自己肯定感が低下したり、SNSとの因果関係があるといわれています。この点も含めて、児童生徒の安全対策を検討する必要があると思います。

・資料7(幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会の設置)について
 幼小の接続を円滑に行うことは賛成です。しかし、幼児教育で理論的なことや知識的な学習というよりも、体験活動や疑問を感じさせたり、驚きを大切にしたりするカリキュラムが望ましいと思います。小学校や中学校など、その後の学習活動の基礎となる「学び方」を身に付けるような内容を期待しています。また、幼稚園だけでなく、保育園や幼児教育を受けない家庭もあるので、配慮が必要だと思います。幼稚園教育要領を変えるのであれば、保育指針との整合性も図るべきと考えます。
 

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