初等中等教育分科会(第126回) 議事録

1.日時

令和2年7月2日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階特別会議室 ※WEB会議
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 初等中等教育分科会運営規則の改正について
  2. 学校における働き方改革(給特法改正を踏まえた休日の「まとめ取り」の推進)について
  3. 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等について
  4. 産業教育振興法施行規則の一部改正について
  5. その他

4.議事録

【荒瀬分科会長】皆さん,こんにちは。定刻となりましたので,ただいまから第126回中央教審議会初等中等教育分科会を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 本会議は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,ウェブ会議方式にて開催させていただきます。会議の公開につきましても同様に,報道関係者の皆さんと一般の方向けにYouTubeでライブ配信しております。御承知おきいただきますように,お願いいたします。
 議事に入ります前に,前回,4月27日以降で,委員の交代に伴い,新たな委員の任命があったとのことですので,事務局から御紹介をお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】事務局,教育制度改革室長,田中でございます。
 それでは,新たに本分科会委員に御就任いただきました委員の皆様を御紹介申し上げます。なお,今回,人数の多いウェブ会議という特性上,恐縮ですが,私の方からお名前の御紹介という形でさせていただきます。
 まず,臨時委員として2名でございますけれども,市川裕二委員,三田村裕委員に御就任いただきました。また,専門委員として,特に本日の議題でございます,学校の働き方改革の関係を御審議いただくためということで,3名の専門委員,相原康伸委員,川田琢之委員,善積康子委員に御就任いただいたところでございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございます。新たに委員になっていただきました5人の皆さん,どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて,ウェブ会議方式の留意点及び本日の資料につきまして,御説明をよろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】続きまして,事務局より失礼いたします。
 本日は,4月27日と同様にウェブ会議方式にて開催させていただきます。御不便をお掛けすることもあろうかと存じますが,何とぞ御理解のほど,よろしくお願い申し上げます。
 ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言に当たっては,インターネットでも聞き取りやすいよう,はっきり御発言いただくなど御配慮をいただく,御発言の都度,お名前をおっしゃっていただく,御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただく,御発言に当たっては「手を挙げる」ボタンを押していただくなどの御配慮をお願いいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,資料の確認をさせていただきます。本日の資料は,議事次第にございますとおり,資料の1から資料の4まで,加えて参考資料1から4となっております。御不明な点等ございましたら,お申し付けください。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 本日は4件の議題を予定しております。まず,初等中等教育分科会運営規則の改正につきまして,次に,学校における働き方改革(給特法改正を踏まえた休日の「まとめ取り」の推進)につきまして,そして,新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等につきまして,最後に,産業教育振興法施行規則の一部改正につきましてということで,この4件であります。
 それでは,最初の議題に入りたいと思います。初等中等分科会運営規則の改正については,今般の新型コロナウイルス感染症のような新たな感染症や大規模災害など,今後,不測の事態が生じることへの備えとして,書面審議の規定を設ける必要があると考え,今回,改正案をお諮りするものです。
 改正案の詳細については,事務局から御説明をいただきます。田中教育制度改革室長,よろしくお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】失礼いたします。
 今ほど荒瀬分科会長からお話のございました,初中分科会運営規則についてお諮りするものでございます。
 資料の1の3ページをご覧ください。
 このたび,第五条ということで,「書面による議決」という条文を新たに加えてはいかがかという御提案でございます。
 この書面による議決というのは,同じ中央教育審議会の中でも,大学分科会,それから生涯学習分科会の方にも,このような規定が設けられております。このたび新型コロナウイルス感染症の蔓延という状況がございます。このようにウェブ会議というやり方で開催させていただくこともできますけれども,その他自然災害等も含めて,今後,不測の事態が生じないとも限らないという状況でございます。そういった中におきまして,やむを得ず,どうしても対面での会議,また,あるいはウェブでの会議も難しいと,そのような場合,どうしても緊急に議決しなければならないようなこともあろうかと思います。そういった事態に備えまして,そういったことを可能とするために,この第五条というものを設けるという御提案でございます。
 規定ぶりにつきましては,他の分科会と同様の規定ぶりとしております。
 なお,第三項におきまして,「部会の議事について準用する。」とございますけれども,この規則に基づきまして,教育課程部会,それから教員養成部会につきましても,また,特別部会につきましても,今後は必要に応じて書面による議決も可能ということになります。
 また戻って第二項でございますけれども,このような議決を行った場合につきましては,分科会長は次の会議において報告することが必要となります。
 説明は以上でございます。

【荒瀬分科会長】ただいま事務局から御説明いただきました運営規則の改正につきまして,御説明のとおりとしたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(委員了承)

【荒瀬分科会長】ありがとうございます。それでは,運営規則は資料1のとおり改正することといたします。
 では,議題の2といたしまして,学校における働き方改革(給特法改正を踏まえた休日の「まとめ取り」の推進)について,事務局から御説明をいただきます。
 森友財務課長,よろしくお願いいたします。

【森友財務課長】失礼いたします。それでは御説明をさせていただきます。
 資料2-1を御覧ください。資料2-1は,これまでの働き方改革の関係の施策を取りまとめてお示しをしている資料でございます。
 中教審の委員の先生方の御意見も頂きながら,そちらに書いてあるような施策,例えば,学校・教師の業務の適正化ですとか,学校における条件整備などについて取組を進めてきているところでございますが,先般,臨時会におきまして給特法の改正が成立しまして,いわゆる変形労働時間制に係る制度が構築されたところでございます。本日は,その給特法の改正に係ります省令につきまして,御説明させていただければと思います。
 いわゆる在校等時間に関します時間外勤務の上限を定めるガイドライン,それをガイドラインから指針に格上げするということ,それから教員の休日のまとめ取りの選択的な導入を内容とします改正の給特法が,先ほど申し上げましたとおり,昨年の臨時国会で成立をしまして,休日のまとめ取りについては来年の4月からの施行ということになっております。この改正給特法におきまして,赤囲みの中の記述でございますが,一定の内容につきまして文部科学省令で定めるということとされているところでございます。
 黒丸のところをご覧になりながらお聞きいただければと思いますが,省令につきましては,例えば,変形労働時間制の対象期間における労働日数の上限ですとか,あるいは1日,そして1週間の労働時間の限度,連続して勤務させる日数の限度につきまして,省令で定めるということとされております。
 また,改正法案の附帯決議,様々内容として盛り込まれておりますけれども,その内容も併せて省令案に規定させていただいております。
 さらに,文部科学大臣の定める指針というものも規定をされているところでございますが,その指針におきましては,変形労働時間制を活用する場合に,教育委員会が遵守すべき事項などについて盛り込んでいるところでございます。
 具体的に省令の概要でございますが,資料2-2をご覧ください。A4の横置きの資料でございます。
 先ほど少し申し上げましたが,例えば,上の段の労働基準法施行規則に準じた内容とございますが,これは一般の民間企業における変形労働時間制についても適用されているものが,そのまま書かれているものでございます。
 例えば,白丸の3つ目で,割り振られる勤務時間の限度についてというのがございますが,そこの一番上のポツでございます。真ん中の下線のところですが,勤務時間が割り振られる日数の限度は1年当たり280日とすること。また,その下でございます。1日の勤務時間の限度は10時間。これは変形労働時間制を用いて増やすところについても10時間ということでございます。また,1週間の勤務時間の限度は52時間とする等々について,一般的なルールと同じようなルールが定められているところでございます。
 そして,その下の附帯決議を踏まえた内容というところがポイントになりますが,1つ目の白丸では,1年単位の   変形労働時間制を活用する場合の対象期間には長期休業期間等を含めるものということで,長期休業期間の中でまとめ取りをしていくという趣旨を明確にしております。
 さらに,その下の白丸の,特に「かつ」以下の後段ですが,長期休業期間等において,勤務時間が割り振られない日を連続して設定すると。ぽつぽつと飛び石とかではなくて,まとめて取って,そこで休養を取るということを明確にしているところでございます。
 さらに,白丸の3つ目でございますが,文部科学大臣が策定する指針において,変形労働時間制を活用する際に,服務監督をする教育委員会が講ずべき措置に関する事項を定めるということを規定するとともに,その下で,教育委員会は,変形労働時間制を活用する場合に,指針に定める措置を講ずるものということを併せて規定しているところでございます。
 この際,併せて指針の概要につきましても御説明させていただきます。資料の2-3,参考資料でございます。資料の2-3の13ページをご覧ください。
 指針の,これは第3章と書いておりますが,第2章,第1章は上限時間に係る内容でございまして,既に整備をされていたものでございます。今回,変形労働時間制ができたことによって設けるのが,この第3章でございます。ここで定められている指針を,定める措置を講じることで活用すると,変形労働時間制を活用するということの条件になるものでございます。
 まず,目的のところの「このため」以降ですが,「本制度は,長期休業期間において休日を集中して確保することを目的とする場合に限り適用すべきもの」ということを明確にしております。
 また,その下の服務監督教育委員会等が講ずべき措置というところの矢印の2つ目ですが,「本制度を適用するに当たっては,上限時間の範囲内であることが前提。」。つまり,その上の行にございますが,上限時間は,変形労働時間制を導入する場合に活用する場合には,42時間,320時間というのがございますが,これをきちっと守ると。前年度においては45時間,360時間を守られているんだということを前提としながら,変形労働時間制が活用できるということを明確にしているところでございます。
 さらに,矢印の3つ目でございます。本制度を適用するに当たっては,教育委員会,校長は,教育職員について,対象期間において,以下の全ての措置を講じるということで,例えば,イのところでは,タイムカードによる客観的な方法による在校等時間の把握を行うこと,ロのところで,部活動ガイドラインの範囲内とすること,ハのところでは,通常の正規の勤務時間を超える割り振り,勤務時間が増えるところですが,そこは対象期間のうち業務量が多い一部の時期に限り行うということ,さらに,ニのところでは,通常の正規の勤務時間を超えて割り振る日において,教育職員の業務を新たに付加することによって,在校等時間を増加させないようにするといったこと等々につきまして,附帯決議を踏まえて,網羅的に記述を盛り込んでいるところでございます。
 今後,省令につきまして,7月中旬に公示をし,教育委員会にも通知をし,しっかりとした説明をしていきたいというふうに考えているところでございます。
 御説明,以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 それでは,御意見を頂きたいと思います。この議題につきましては,3時50分頃までの30分余りで御意見を頂戴したいと思っております。御発言をお考えの方は,必ず「手を挙げる」のボタンを押していただきますようにお願いいたします。こちらから御指名させていただきますので,その際,ミュートを解除していただきまして,御発言をよろしくお願いしたいと思います。
 大変恐縮ですが,できるだけ多くの皆様から御意見を頂戴したいと思いますので,お一人大体2分程度でお話をいただきますようにということをお願いいたします。よろしくお願いいたします。
 では,まず喜名委員,そして清原委員,それから橋本委員,戸ヶ﨑委員,この4人の方に御発言をいただきたいと思います。
 喜名委員,お願いいたします。

【喜名委員】失礼いたします。全国連合小学校長会の喜名でございます。
 御説明ありがとうございました。学校における働き方改革,この話題になった頃から,1年単位の変形労働時間制の導入が話題になってきたところでございます。
 これまで余り情報がない中で,どうしても課題ばかりが指摘されることが多うございました。というのも,様々な課題を抱えた教員,事情を抱えた教員が多い中で,この制度をどう運用していくかということが心配をされておりました。
 本日の御説明,また事前に資料をお送りいただきましたけれども,その中で,省令改正のほかに,各自治体が制定する条例案を示されるということでございました。これについて,大変安心したところでございます。
 そして,給特法改正のときに,国会の附帯決議にもありますように,この制度の導入の前提として,教職員の長時間労働の実態改善を図ることについて政府に求められることについて,改めて確認しておきたいというふうに思います。
 そして,都道府県や政令指定都市等の条例制定に当たって,かなり複雑な条例・規則になることが予想されます。この点について,丁寧な説明とフォローを文科省にお願いしたいというふうに思います。
 また,御説明の中にもありましたけれども,この制度は第7条の上限設定の遵守を想定した上に成り立っているものであることについても,是非徹底していただきたいというふうに思います。その意味でも十分な説明が必要ではないかというふうに思います。
 また,この制度が学校における働き方改革の決定打でないことは御案内のとおりだというふうに思います。それでも,本制度が我々教職員の働き方を意識して変革をもたらすものになるということを期待しているものでございます。
 私からは以上です。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,清原委員,お願いいたします。

【清原委員】ありがとうございます。杏林大学及びルーテル学院大学客員教授の清原慶子です。
 御説明ありがとうございました。ただいま御説明いただきました給特法の改正につきましては,国会におきまして,衆参両院で,過労死の関係者の方,また現場の教育長,さらには,保護者の代表の方などを参考人として招致され,丁寧な議論がなされました。そして,多くの附帯決議,意見が付いているわけでございまして,ただいま御説明いただきました文部科学省令等につきましては,最大限,その附帯決議を反映して,きめ細かく対応されているものと受け止めました。
 特に中教審においては,平成31年の1月に,『学校における働き方改革に関する総合的な方策』を取りまとめたわけでございまして,その中で,ほとんど改正されることがなかった給特法につきましての,「1年単位の変形労働時間制」などを踏まえて改正の取組がなされたということは,学校における働き方改革をやはり本気で進めていかなければならないということの表れだと思います。しかし,このことを進めていくことは,学校だけの取組ではなくて,やはり教育委員会,さらには,それぞれの自治体が文部科学省と連携をしながら着実に進めていかなければなりません。そこで絞って,2点,意見を申し上げます。
 1点目は,何よりも教職員の労働時間を適切に把握していく必要があります。そのために具体的な指針の中でも,資料2-3の3でも示されておりますけれども,タイムカードですとか,あるいはICTを活用した時間管理ができる,そうした支援が重要と思います。これは教職員を(強権的に)管理するというのではなくて,教職員が自ら自分で時間を管理するための支援となるとともに,校長や教育委員会が適切に(教職員の在校時間を)管理をすることによって制度の運用を公正に行っていくために必要と考えるからです。
 2点目には,今回の取組を行う際には,自治体が条例あるいは規則を制定する必要がございます。来年の4月から施行するに当たりましては,今年の9月,あるいは12月の議会で条例等が制定され,広く住民の皆様にも流布されて,そのことが浸透する必要があります。したがいまして,この指針案や条例案につきましては,適切に各自治体に情報提供がなされる必要があります。
 しかしながら,新型コロナウイルス感染症の状況が不透明でございます。集合した会議等で文部科学省の方が説明するとか,実際に集まるというのも難しいと思われますので,本日のようなオンライン化の手法であるとか,あるいはホームページに分かりやすい手引きとともに,動画で簡単な説明をいつでもどこでも使えるようにしていただくなど,全国の自治体の中で条例を制定しようとする自治体におきまして,この趣旨がよく浸透するとともに,自主的・主体的に条例制定がなされますように文科省に支援をお願いしたいし,都道府県に支援をお願いしたいと思います。
 なお,附帯決議にもありますように,3年を目安に実態について検証をしていくということがございます。その検証を正しくしていくためにも,第1番目の提案と関連する意見でございますが,やはり時間管理の実態と運用の実態が適切に把握できますような検証のための支援も必要と思います。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】ありがとうございます。京都府の橋本です。
 1年単位の変形労働時間制の適用につきましては,教員の働き方改革の特効薬とまでは言えないものの,新たな取組の選択肢の一つですし,休日まとめ取りを可能にするということで,教職の魅力向上につながる一つの手立てになり得る,そんなふうに理解をしております。
 先ほど説明いただきました省令案については,労基法施行規則に準じた内容,あるいは国会の附帯決議を踏まえた趣旨が反映されておりますので,これについては全く異論はございません。
 一方で,指針案につきましては,業務の縮減をしっかり行うことを前提として,多くの条件が示されているわけでありまして,その趣旨はよく分かりますが,これを見た多くの管理職の皆さんは,まず,この前提条件のクリア自体が難しいな,それをクリアして,この制度を導入しても,夏休み等に5日休めるだけで,部活動指導もある中で本当に休めるのか,このように受け止められそうな気がしております。それだけに,この制度の活用を図っていくためには,こうした条件をまずクリアすること自体が現状では働き方改革の大きな前進であること,繁閑の差を生かして,無理のない内容で制度を導入した結果として,本当に長期のまとめ取りが実現する,このようなプラスイメージを教育委員会や管理職がうまく教員に伝える,このことが重要だろうというふうに考えます。
 また,その前提として,1つは,実際に夏に休める環境を整えることが大切だと思いますが,この間のコロナに伴う休業により長期の部活動休止も経験をした中で,例えば,夏の大会時期の見直しを含め,工夫できる余地が広がってきたようにも感じております。これを機に,一層見直しの取組を進めるべきであるというふうに考えております。
 また,指針の4章,文部科学省の取組についてにありますように,国の教育条件整備が大変重要だと考えます。この間,2次補正予算において,コロナ対策ということで,少人数編制が可能な教育の加配やスクール・サポート・スタッフの増員など,手厚い措置をいただいたところでありますが,できればコロナ後においても,一定,こうした人的措置の拡充を継続していただきたいと願うものです。教員定数の改善はもちろんとして,例えば,サポート・スタッフにつきましても,今回,未配置校に広く配置することで,恐らくその効果が理解され,コロナ後に学校から引き上げにくくなったり,強い配置の要望が寄せられたりする可能性が高いと思いますので,こちらの継続的な拡充も,是非お願いしたいなと思います。
 最後にもう1点だけ。学校では行事等との関連で,週休日の振替を行うケースがよくありますけれども,天候の影響で,その予定がさらに変わるなど,振替を柔軟に行えるようにしておく必要もあるかと思います。あらかじめ勤務日や勤務時間等を具体的に示しておく必要がある変形労働時間制との関係で,振替制度など学校の特性に応じた柔軟な運用がどこまで可能かなど,よく分からないところもあるわけですけれども,今後,具体的な運用に係るQ&Aの作成などについても,是非よろしくお願いをしたいと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 それでは,戸ヶ﨑委員,お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。
 これで働き方改革が1歩前進したわけですけれども,本来的にいえば,まとめ取りをしなくて済むような働き方改革を今後も推進していくべきであると考えます。
 また,大変細かいことですが,まとめ取りを設定するには,各学校で長期休業中の業務等も見直すとともに,日程に余裕が持てるように配慮するために,都道府県や市町村の教育委員会で実施する研修や部活等各種大会などの運営の工夫や精選も必要になってくると思います。
 さらに,長期休業中の研修や会議,大会などの日程については,各学校が年間の行事予定を作成する前,恐らく1月頃になるのかなと思いますが,この辺りには確定されてないと,まとめ取りができなくなる可能性も懸念されます。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 あとの御発言でありますけれども,三田村委員,相原委員,天笠委員,東川委員,川田委員,この5人の委員の御発言の御希望を聞いておりますが,ほかにはよろしいでしょうか。
 善積委員から「手を挙げる」のボタンがありました。ほかにはよろしいでしょうか。萩原委員。はい。では,萩原委員までとさせていただきたいと思います。
 では,三田村委員,相原委員,天笠委員,東川委員,川田委員,善積委員,萩原委員の順で,よろしくお願いいたします。
 では,三田村委員,お願いいたします。

【三田村委員】全日本中学校長会の三田村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは2点になります。
 1点は,全体的な方向性としては,とても有り難いというふうに捉えておりますが,実際にこれをシミュレートしたときに,中学校においては,この部分がきついなというのがございます。それは勤務時間の短縮ではなく,勤務時間を割り振らないというところです。
 それから,もう一つが,長期休業期間中に集中して設定するという,この部分になります。と申しますのは,先ほど橋本委員さんがおっしゃっていたとおり,中学校は部活動が大会,そして,それに向けた練習というものがございます。そうすると,ほぼガイドラインに示されたとおり,週に5日間は部活動に従事するということがあります。夏季休業中には夏季休暇を5日間取り,それから土曜授業の振替等で週休日の変更を充てていくと,実質,集中して割り振らない日を取ることができるんだろうかというところが最もきついところです。ですから,例えば,これが勤務時間の短縮という方法が取れれば,つまり7時間45分ではなくて,4時間45分で3時間早く,今日は帰っていいよとかいうことであれば,かなり消化できるんではないかなと思いますが,日単位というところがきついというのが1点でございます。
 それから,もう1点は,やはりこれはあくまでも超勤の部分を緩和するということで効果がありますけれども,教職調整額が現状4%でいいのかということが,やはり検討されていくことを願っております。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,相原委員,お願いいたします。

【相原委員】ありがとうございます。大きく2点ほど申し上げます。
 1点は,変形労働時間について,条件整備が大変重要である,という点です。条件整備を通じて,学校の働き方のクオリティーをより高めていく必要があります。
 ただし,文科省の調べでも,残念ながら,市町村におけるタイムカードの導入が47%台にとどまっています。客観的な勤務時間の管理が重要ですが,まだまだ環境が満たされていないのが現実です。
 もう1点は,この制度自体,勤務時間そのものを縮減するものではない,という点です。
 また,今回のコロナウイルス対策も含めて,学校現場は大変大きな変動の中に置かれています。来年以降の本制度の導入検討に際しては,休日のまとめ取り,いわゆる変形労働時間についても,働き方の変動が大きい昨今の状況との親和性を保つためにも,学校現場での詰めた議論が必要になってくると思います。
 コロナウイルスの広がりは地域差が大きい中,やはり労働時間の実績をしっかり管理し,慎重な検討を進めていくことも基本的な態度としては必要ではないかと思います。
 最後に,変形労働時間を導入する際には,上限時間や部活動のガイドラインを遵守していることが前提となります。これら条件の充足度を,教育委員会や校長はじめ,多くの皆さんが点検されることも,大変重要なプロセスだと思います。今回の附帯決議には,7つの前提条件が指針に明記されました。相当な期待値があることも関係者全員が承知しておく必要があります。また,協議事項にも入っているとおり,職員団体と交渉事項となっている位置付けの高さも,全体で共有した上での制度であります。
 私から以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 天笠委員,お願いいたします。

【天笠委員】どうも失礼いたします。
 先ほど御説明いただいた件は,私は言うならば一連の働き方改革の一つの流れというんでしょうか,一連の過程の通過点であり,到達点というより,むしろ,これから目指す,さらに進めていただくための一里塚という位置付けになるんじゃないかなと思っております。したがいまして,御説明いただいたことについて,どうぞ淡々と進めていただければということであり,この先,さらに働き方改革について,様々な手当てですとか,必要なことについての措置を講じていただきたいと,そういうふうにお願いしたいと思っております。
 その上で,この一連の取組ということについてなんですけれども,先ほどもありましたけれども,教職の魅力向上という視点からしたときに,この種のメッセージというのは,教員養成とか,あるいは教職を目指す学生ですとか,そういう人たちへのメッセージにもなると思います。ただ,話が専門的で細部に及びますので,これから教職を目指す人にとっての教職の魅力という一環といっても,うまくつながり切れないとか,あるいは,うまくその中に位置付け切れないということもまたあるんではないかと思っております。したがって,その辺りのところ,これから教職を目指す学生の橋渡しをしていただくというんでしょうか。あるいはこういうことについての働き掛けをしていただくとか。この種のことも,また必要なんじゃないかと思っております。
 例えば,教員養成課程において,この種の話とか中身をうまくつないでいただき,教職の在り方とも関連させた分かりやすい話をするなど,教職課程の内容や方法の開発が課題になると思います。教職を目指す学生へのメッセージとして,この話があることを,そして,その伝え方に工夫の余地があると受け止めていただいて,取り組んでいく必要があると思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 東川委員,お願いいたします。

【東川委員】失礼いたします。
 昨年の11月に,国会の参議院の文教科学委員会に参考人として登壇をさせていただきまして,その際には大変貴重な経験と御意見を頂く場を頂きましてありがとうございました。こちらでは相原先生とともに出席したことをよく覚えております。
 一昨年の学校における働き方改革の答申が中教審から出された折に,その後,学校の現場では,特に残業をなるべくしないということで,なるべく早く帰るんだ,残業しないで持ち帰るんだということのハレーションというのは,現場ではかなり起きたようでありますが,私事ではありますが,私の妻も小学校の一教員でありまして,かなり,その辺については,家庭内で不服も申しておりましたけれども,今となって見ると,当たり前のように早く帰ってくるといったところは,残業といいますか,仕事は残しつつも帰ってくるという意識付けというのは随分できてきたのかなというようなところであります。
 別の機会を頂きまして,ある大学の教職大学院の現場で教頭職等を経験されている先生方の前でお話をする機会を頂いたときに,昨年の答申で出た文書の中に,今回の働き方改革の目的を私たちは少し見誤っていたようだというようなお言葉を頂きまして,その先生のお話ですけれども,これまでの御自身の反省として,働き方改革をこのように捉えていたと。いかに長時間労働を是正するか,行事を精選するかという方向ばかりで見てしまっていて,目的を見ていなかったと。
 その答申の目的には,日々の生活の質や教職経験を豊かにすることで,自ら人間性や創造性を高めとあると。働き方改革における自助,共助を目指し,学校に合った改革をするための職員で生み出した時間を有効に活用させるためにも,この目的を職員と共有し,一人一人に改革の方法を考えさせることも大事にしたいというふうに思うようになったというふうにおっしゃっていただきました。
 今回出されております,この指針の3章の1年単位の変形労働制の目的にも,先般の答申等に書かれた目的と同様の文章が記載をされております。この下線の部分ですね。教職員の休息の時間等を確保し云々と書かれた中に,教育職員の職としての魅力の向上に資するというところがしっかりと記載をされているところにつきましては,今後,ここを更に強調してお伝えいただき,いわゆる今回の改革の目的と手段をしっかりとお伝えいただくような場が,もっともっと必要なのではないかなというふうに感じた次第でございます。
 私からは以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,川田委員,お願いいたします。

【川田委員】ありがとうございます。川田でございます。
 公立学校の教員などの公務員の勤務関係も含めた労働関係に関する法律を専門にしているという立場から述べさせていただくということになりますが,まず,今回の議題になっている,1年単位の変形労働時間制,給特法を改正して導入されることが予定されているものにつきましては,ガイドラインと関連する制度と組み合わせて適切に運用されることで,教員の働き過ぎに対する歯止め,あるいは教員の働き方の魅力を高める手段として機能することが期待できるものというふうに考えております。
 それから,今回,主として検討の対象になっております文部科学省令案につきましては,基本的に給特法の改正と,その際の附帯決議の内容を踏まえて考えると適切な内容と言えるのではないかというふうに基本的には考えております。
 資料の2-2の1ページ目のところでは,労働基準法の施行規則に準じた内容,これは労働基準法とも同じ内容に基本的になっているところ。それから,附帯決議を踏まえた内容というところが,教員の制度に特有な部分という色彩が強いものになっているのではないかと思います。
 このうち前半,労働基準法施行規則に即した部分につきましては,主たる趣旨は,変形制の下で,勤務時間が長い期間と短い期間ができて,長い期間のところに長時間の勤務が集中してしまうような形での変形による偏りに歯止めを掛けるということに主眼が置かれるものだと言えると思いますが,そういう観点から見た場合に,基本的には労働基準法と同じ内容になっているということと,あと制度全体として,長期休業期間等において,勤務時間が割り振られない日を連続して設定するという使い方が明確になっているというところからも併せると,一応,勤務時間の偏りに対する歯止めの内容として,適切といってよい内容になっていると思います。
 中長期的には,労働基準法に即した内容になっている部分も,教員に関する制度により適合的な形に見直していくということも考えられると思いますが,制度の出発点としては,このような内容でいいのではないかと思います。
 あと,もう1点,文部科学省令といった制度の大枠に関しては,そのように考えておりますが,同時にその先の部分,条例とか規則を定め,さらに学校で運用していくというところに,つまり具体的内容をこれから検討していく部分に重要な点がたくさんあるとも同時に考えております。
 他の委員の御発言と重複するところが多く,時間にも限りがありますので,簡単にだけ触れておきますと,1つは,やはりこの制度がうまく機能するためには,同時に定められるガイドラインと組み合わせる形で働き過ぎを適切に対応していくこと,働く時間をガイドラインが示すような範囲内に収めていくということを実効的に行うことが大切であろうと思いますし,それから学校,それから場合によっては個々の教員の状況に合わせて,うまく使えるような制度にしていくというのも,これからの条例・規則の制定とか現場での運用の段階で重要な課題になっていくのではないかというふうに考えております。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,善積委員,お願いいたします。

【善積委員】ありがとうございます。
 私は学校現場に業務改善で御支援をさせていただいているコンサルタントとしてお話をさせていただければと思っております。
 まず,今回のような制度が導入をされるときに,それがうまくいくかどうかというのは,現場がそれを正しく理解をして,運用が適切にできるかということに尽きる部分があると思っておりまして,こういう制度の導入初期をしっかりと動かしていくことがすごく大事だと思います。最初にうまくいかない状況が多発してしまうと,制度自体の評価が下がってしまうということになるので,そこを気を付けなければいけないと思っています。
 そういう意味では,試行的な要素はまだまだあると思っているので,課題をしっかりと収集をしていただきたいなと思います。必ず何か,制度として運用する中で出てくる不具合というのがあると思いますので,その内容と対策というものを,共有するような仕掛けをしていただきたいということと,あと介護や子育てでということでの配慮は書いてはあるんですけれども,それがどういうふうにというのが,結構,学校現場に任されているところもありますので,困ってしまった方が相談ができるような先ですね。そういうものを,できれば,どこかに記載をしておき,そういった困った情報を収集していけるような流れを作っておかれるといいかなと思います。
 それと,やはり皆さんがおっしゃっているように,この制度は時間の管理がきちんとできているかどうかが非常に大事でして,長くなった時間と短くなる時間の日というふうな使い分けが生じますので,そこの運用が曖昧になってしまうような状況は避けなければいけませんし,それが常態化,曖昧な状況が常態化するということは,そこの管理の問題,マネジメントに問題があるというふうに捉えられてしまいます。ペナルティーはないんですけれども,その辺り,管理職の方が管理しやすいような情報ですよね。勤務の時間データや,そこを分析をして,どういう指導をすればいいかを教育委員会もバックアップして,その対策を考えていくということも,各教育委員会にお伝えいただくことが大事かなと思いました。
 もう一つは,学校の中というのは,皆様もよく御存じだと思うんですが,いろいろな勤務文化みたいなものがあって,それぞれ,いろんな理由があったり,歴史,経緯があって,そういう空気ができているというところがあるんですけれども,こういう状況に来ているわけですから,1回,皆さんで話し合って見直すというカルチャーも取り入れていただいて,早く帰りたい方,帰らなきゃいけない方,あるいはいろいろなことでの価値がちょっと違うものを持っておられる方が居心地が悪いとか居場所がないということにならないように,その制度をこの学校で運用するときには,なぜそれをするのか,どこを削るのか,どこを大事にするのか,それをしっかり話し合うということも求めていただきたいなというふうに思います。事情のある方は,その事情がはっきり見える化するような形の方が,皆さん,その方を支えていくという職場環境を作っていけますので,制度が形骸化しないようにするためには,まず,そういう現場の運用の中でしやすくするようなエッセンスを,是非メッセージとして出していただきたい。そういう意味では,川田先生がおっしゃったようなガイドラインとセットでというのは,まさしくそのとおりだと思っています。
 あとは,上限時間の中で実施できているところだけが制度を運用できるというふうになっていましたので,果たしてどのぐらいのところがこれを導入するのかなというのは非常に関心がありますので,その辺りも是非フォローしていただいて,まず,足元の業務改善というところに力点をしっかり教育委員会がもてるように,そこも併せてお伝えいただければいいかと思いました。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,最後に萩原委員,お願いいたします。

【萩原委員】高等学校の方から出ています萩原です。
 なかなか休日のまとめ取りというのは,高等学校の現状からすると難しいという認識を持っています。
 先ほど中学校側の方からもお話がありましたように,やはり日々の勤務に関して,いかに弾力化ができるかです。
 例えば,今回のコロナに関して言いますと,夏季休業に当たるのは,平日でいえば10日間しかないという状況で,教職員に夏休みを取らせるという状況になっています。こういう特殊な状況であるということは事実なのかもしれませんが,まとめ取りをさせていくこと自体がなかなか難しい状況にあり,そういう点でも,日々の勤務の中で何とか帳尻を合わせていくことが必要と思います。
 今後のことを言えば,日々の働き方そのものの検証もきちんとしていくことが必要と思いますが,なかなか,高等学校で管理職としてうまく回していくことができるのかというところを,各教育委員会で条例を作っていく中で御配慮いただければと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 まだ御意見おありの方いらっしゃるかと思いますが,一旦,ここで皆様からの御意見は止めさせていただきます。
 今の,いろいろ御指摘ありましたが,森友財務課長,いかがでしょうか。

【森友財務課長】様々な御意見,ありがとうございます。
 今頂きました御意見踏まえながら取組を進めていきたいと思いますけれども,特に,なかなか分かりにくい制度であるということもございますので,複数の委員の先生方からも頂きましたけれども,丁寧に説明をしていく。Q&Aも含めて,また分かりやすいパンフレットなども作成しながら,まずは制度の趣旨について御理解いただけるよう,丁寧に対応していきたいと思います。
 特に今年の場合は,コロナという状況もございます。条例につきましては,各自治体において定めていただくもので当然ございますけれども,コロナウイルスの感染症の影響も地域によって異なって出ているところもございます。今年度の勤務実態もございますし,それに限らず,地域や学校の実情に応じまして,各地方公共団体において適切に判断いただきまして,条例の制定を検討していただきたいと思っております。
 引き続き,働き方改革については,しっかりと取組を進めていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 もともと中教審で議論していたことで,いよいよこういう形に一歩進むということでありますけれども,先ほど委員の御発言の中にもありましたが,これがゴールであるわけではもちろんありませんし,教職員の勤務条件,勤務実態がどのように具体的に動いていくかということは,子供たちの教育条件に大きく関わってくることでありますので,様々な観点から,よりよい学校の勤務環境というものを整えていくということで,皆さん,それぞれのお立場で御発言もいただきたいですし,また,御尽力もいただきたいということを思います。
 初中分科会としても,この後,どのようになっていくかをしっかりと見ていきたいというふうに思っております。ありがとうございました。
 それでは,議題の3に移りたいと思います。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等について,事務局から御説明をいただきます。浅野初等中等教育企画課長,よろしくお願いいたします。

【浅野初等中等教育企画課長】それでは,資料3-1に基づいて御説明させていただきます。
 これまで,特別部会で数度にわたって御検討いただいた新型コロナウイルス感染症を踏まえた初等中等教育における学びの在り方について,遠隔・オンライン教育を含むICT活用を中心としての説明をさせていただきます。
 まず,基本的な考え方として,初等中等教育の本質的な役割として,学習機会を保障する役割に加えて,社会の形成者としての全人的発達・成長を保障する役割や,身体的,精神的な健康を保障する安全・安心な居場所・セーフティネットとしての役割も初等中等教育が担っているということは,今回の感染症による臨時休業において,児童生徒が学校に登校できないという状況の中で重要性を再認識されたところでございます。これまでも日本型学校教育については,学習指導のみならず,生徒指導等の面でも主要な役割を担っており,児童生徒の状況を総合的に把握し,知・徳・体を一体的に育んでいる場所であります。特に初等中等教育は,学校という場や地域社会で様々な集団活動を行い,多様な他者と関わり対話する,それを通じて人を育てる営みであるということに留意する必要があるということであります。
 教師による対面指導や児童生徒同士による学び合い,地域社会での多様な学習体験,そういう重要性がより高まっていくわけでありまして,そのために,教師にはICTを活用しながら,児童生徒の対話的,協働的な学びを実現して,多様な他者とともに問題の発見や解決に挑むという資質・能力を育成することが求められていくわけです。
 (2)でございますが,今後の初等中等教育については,そういった協働的な学び合いの中で行われる特質を持つ健やかな学びの保障に取り組んでいくということでございまして,2ページ目になりますけれども,非常時の対応として,さらに遠隔・オンライン教育やICTを活用した家庭学習,地域社会の専門機関との連携,そういったあらゆる手段を通じて講じていく必要があるということでございます。
 2ポツのところで,まず,感染症が収束していない,必要に応じて臨時休業等が行われる段階,ウィズコロナの段階について整理をしております。マル1に書いてございますように,児童生徒の学習指導については,オンラインを含む家庭学習を授業と同様に評価することを明確化しております。それから,ICT機器の整備ということで,マル2のところでは早期整備について記載をさせていただいています。3番目では,ハードだけではなくソフト面でのデジタル教材や動画などの学習支援コンテンツの情報提供の充実,そして,4点目では教師のICT活用指導力の向上について,研修等の実施等が書かれてございます。5つ目の点では,ICTの専門の人材をGIGAスクールサポーターの配置などの支援により行っております。6番目では,今後,やはりこれまで休業中に,どのような学習指導が行われて,ICTはどういうふうに使われたのかということを把握して,また,必要に応じて臨時休業が行われる場合に備えて,マル1からマル5の改善を行うということでございます。
 4ページ目でございますが,臨時休業等の影響で,臨時休業前から学校再開後の児童生徒の状況を分析して,学校における指導改善につながる検証を行うということでございます。
 (2)では,ポストコロナ,収束した段階における新たな学びの実現ということで,基本的な方針で枠囲いに書いてございますように,教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育を使いこなすハイブリッド化で協働的な学びを展開する。ただし,全ての児童生徒に対して,社会において自立的に生きる基礎や,国家や社会の形成者としての基本的な資質を養うことを目的とする義務教育と,義務教育の基礎の上に高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする高等学校における教育の違いにも留意する必要があります。
 また,履修主義と修得主義等は,※印にも書いてございますように,現行制度でも組み合わせた形での考え方,それから,年齢主義や課程主義といったものが組み合わされておりますので,二項対立ではなくて,そういったものの組合せによって,多様な子供たちを誰一人取り残すことのないよう個別最適化された学びを実現していくということが書かれてございます。
 取組事項のところでございますが,まず,マル1は,学習履歴(スタディ・ログ)を活用して個別最適化された学びを充実していく。知識・技能等に関する学習計画やスタディ・ログ等を活用して,個々の状況に応じたきめ細かい指導の充実や学習の改善を図ると。
 マル2,5ページ目でございますが,教師の対面指導と遠隔授業等を融合した授業の実施について記載がございます。マル3では,高校における同時双方向型の遠隔授業の実施について,単位数の算定,対面により行う授業の実施などの要件の見直しを行って,柔軟な授業方法を可能とするということ。そして,マル4ではデジタル教科書について,有識者会議において,今後,その効果,影響等について検証を進めていく。マル5では,児童生徒の特性に応じて,不登校児童生徒や障害のある児童生徒,日本語指導が必要な児童生徒,こういった関係機関と児童生徒の状況を共有して支援しやすい環境をつくっていくということが書かれてございます。
 6ページ目でございますが,マル6で,山間・へき地や小規模校などの学校において,児童生徒間の多様な交流や専門家による対面での指導が困難な場合に遠隔授業を積極的に活用すること,高校段階では,複数の高等学校をネットワーク化して,同時双方向型の遠隔授業を実施して,科目の相互履修を可能とするような新たな仕組みの構築について記載されてございます。
 マル7以下は,特例的な措置や実証的な取組として,以下書かれてございます。マル7では,臨時休業期間,感染症や自然災害等により授業ができない場合に,しっかりと学校と児童生徒の関係を継続して,心のケアや虐待の防止を図るということ,学びの保障を着実に実施していくということのために制度的な措置について検討・整理すること。
 8番目では,学校で学びたくても学べない児童生徒,病気療養や不登校の生徒に対して,遠隔・オンライン教育を活用した学習について出席扱いとする制度の活用促進や好事例の周知を図っていくことについて書かれてございます。
 そして,最後に7ページ目でございますが,個々の才能を存分に伸ばせるような高度な学びの機会など新たな学びへの対応として,遠隔・オンライン教育による最先端のアカデミックの知見を用いて,特異な才能を持つ児童生徒に対する指導や,カリキュラム・マネジメントによる授業時数の弾力化に向けての検討,そして,特別な配慮を必要とする児童生徒等に多様なメディアを効果的に活用して遠隔教育を行うこと,また,やむを得ず学校に登校することができない児童生徒については,学校外における受講も認めるなど特別な措置を講じていくこと。そして,高等学校段階では,多様なメディアを活用して,家庭における同時双方向型オンデマンド型の学習を授業の一部として特例的に認めていくとことにより,対面指導と遠隔・オンライン教育とをベストミックスさせた指導方法の研究開発に向けた実証研究を実施していくことが記載されてございます。
 8ページ目の(3)では,環境整備について触れられております。資料3-2と併せて御覧いただければと思います。当然,新しい時代にICT等が入ってくれば,1人1台端末が机の上に置かれていくことになるが,今の机の大きさで端末とノートなどが置かれていくと狭くなってしまいます。1人1台端末時代の机の大きさであるとか,新しい生活様式を踏まえた学校の行動基準ということで,ある一定程度距離が置けるような児童生徒の配置が必要になる際の教室のスペースの問題であるとか,遠隔・オンライン教育と対面指導とのハイブリッド化により協働的な学びを展開していくために,少人数編成の新しい時代の環境整備が必要であるということが記載されてございます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,この件につきまして,また御意見を頂戴したいと思います。時間といたしましては,4時45分頃までの予定ということでお願いをしたいと思います。御発言いただけます方は,先ほどと同じように手を挙げていただきたいと思います。資料が委員から出ておりまして,参考資料2ということで,お手元にあるのではないかと思いますが,岩本委員からこういう資料を出していただいておりますので,岩本委員にまず御発言をいただきたいと思います。あと,ウェブで御参加の皆さんは,どうぞ「手を挙げる」ボタンを押していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【岩本委員】岩本です。
 先ほど御説明ありましたところについて,ずっと行われてきた特別部会での議論を踏まえて,全国の学校教育の関係者と協議をしてきたことをまとめたものを資料という形で今回出させていただきました。先ほどの説明のところで十分書き切れてないところについての意見を中心に述べさせていただけたらと思います。
 スライドの2ページ目ですけれども,コロナにおける臨時休業のときに子供たちはどうだったのかというところをデータでも見てみると,今までの初等中等教育を受けて育ってきた生徒の多くは,学校や教員からの指示や発信がなくなってしまうと,何をしていいか分からないという形で学びを止めてしまっているという生徒が非常に多くいたと。つまり,自立した学習者,高校生になれば,あと数年,1年,2年以内に学校を卒業して自立していくわけですけれども,この段階においてもまだ自立的に学んでいくというところまでいってなかったというようなことが明るみに出たりだとか,あとは,ICTの環境整備だけではなかなか学習時間にもつながっていない。やはりICTの整備に加えて,学習様式の転換だとか関係性ということの重要性が改めて浮き彫りになったということだと思います。
 次のスライドですけれども,一方で,臨時休校時においても,教員や学校からの指示がなくても自ら学びを継続した生徒たちや,自分のためだけではなく,地域や社会のためにというところで,ICTなんかも自ら活用して活動した,探究していったような生徒たちの姿もありました。こうした生徒たちの特徴だとか共通点というところを分析していくと,やはり地域や社会の課題解決に参画した経験だとか,そうしたものも含めて,周りに橋渡しや伴走してくれるような大人とのつながり,もしくは協働的な仲間とのつながりがあるとか,そういう経験だとかつながり,また,それを取り巻く土壌というものが非常に重要であり,共通しているということなんかも見えてきたところです。
 次,スライドの4枚目ですけれども,その中で改めて,今後,ポストコロナにおいても継承していくものとしては,教育の福祉的機能を土台にしながら,社会的機能,学習的機能,この3つの機能を,まさに知・徳・体一体的に育むために保障していくというのが今後も変わらない教育の本質的な部分であろうというところです。
 スライドの5枚目ですけれども,それを踏まえた上で,では,新しい時代の初等中等教育とはというところを考えるに当たって,まず,新しい時代,「Society5.0」という言葉,非常に多く出ていますけれども,これ,しっかりと見ていくと,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させながら,社会の課題解決や価値創造をしていくような社会であるという,こういう時代をつくり,そして生き抜いていくような子供たちを育てるというときの初等中等教育の方向性は,遠隔・オンライン教育だとか先端技術を活用した個別最適化された自立的な学びの充実とともに,対面指導や集団活動,そして地域社会の様々な資源を活用した社会とつながる協働的・探求的な真正な学びを実現していく,これを高度に融合させていく学びの中で,育てたい資質・能力としての持続可能な社会や幸福な人生のつくり手として,自立的に協働しながら社会の形成に創造的に参画するような資質・能力を育んでいくというのが大きい方向性。これが新しい学習指導要領における考え方の,その先にある姿というか,それとまさにつながっていることだと思います。
 そのために,スライドの6ページ目ですけれども,そういう時代を見据えた新しい学習様式においては,再三議論がありました。「どちらか」という二項対立的ではなく,「どちらも」,まさに二項往還していく,適切に組み合わせていくハイブリッド化というところが重要になってくるというようなところでありますが,これがまさに,分担と言いながら,それが分断にならないように,そして,ハイブリッドが混乱だとか,ばらばらにならないようにするためには,マネジメント,つまり,連携や調整,管理,それぞれつないで調整,管理をしていくような,この機能・人材・体制の強化なしには,これがちゃんとハイブリッドにならないというところです。
 その次のページに,さらに参考的に書いていますけれども,ネットだとかオンライン,情報社会の部分と,対面だとか学校,家庭,地域社会というところに紐づく要素だとか価値観を挙げていますけれども,考え方だとか価値観がそもそも違うものを内包しているものを,これをハイブリッド化するとかベストミックスで適切に組み合わせるというのは,口で言うのは簡単ですけれども,これをちゃんと子供たちに届ける形でやるには,高度なマネジメント機能・能力・体制が絶対的に必要であり,それを支える仕組みを含めて構築をしていかないと,ただデジタル機器を導入してやれば学力向上につながるかというと,そうではないというところで,ここも一体的に必要だというところであります。
 その次,スライド8ページ目ですけれども,そうした中で,今の学校の現状を考えた上で,今,これからすべきことというところにおいては,学校現場に何かをさせようとするのではなく,学校現場がまさにその力を存分に発揮できるように,学校や教員がすべき部分,内容,範囲を,減らすものは減らす,重点化するものは重点化する。その上で,増やすものは増やすということで,人的資源・物的資源を含めて,ここを供給していくことが教育行政に課せられた使命であるということだと思います。
 その次,最後,スライド9ページ目になりますけれども,こうしたポストコロナを見据えた新しい初等中等教育の実現に向けて国として取り組むべきことというところですけれども,左側の「教育のデジタル化の推進支援」,ここは今までさんざん議論されてきて,さらにこれからも必要だと思いますけれども,このデジタル化がただの形骸化にならずに,ちゃんと機能させていくために,右側に書いています「社会につながる教育環境」,ここを両輪のようにしっかりと基盤として,例えば,外部専門家等のデータベース化活用を支援するような制度の構築だとか,多核連携型の学校づくりとか,こういったところを併せて構築していく必要がある。その中で,さらに基盤になっている,学校マネジメント機能の充実支援,カリキュラム・マネジメントの中核となるような教職員をしっかりと配置するとか,管理職がリーダーシップを発揮できるような環境を構築していくとか,ここら辺をしっかりとやりながら,総合的にデジタル化を進めていく必要があるというところは,これからの初中教育の在り方を進めていく上で非常に重要であるというようなところであります。
 すみません,ちょっと長くなりましたけれども,以上で意見を終えたいと思います。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,篠原委員,お願いいたします。

【篠原委員】
 先ほど御説明があった流れは,私は基本的にこれでいいと思っています。ただ,今,岩本委員もおっしゃったように,対面授業,いわゆるリアルなやつですね。こういうものとデジタル,オンラインというものとのハイブリッド,ベストミックスをつくっていくというのは本当に大変だろうと思うんですよ。そこをどういうふうに工夫していくかというのが今後の1つの課題だと思います。
 それで,やはり私は教育の基本というのは対面授業にあり,アナログ的な要素のほうが依然として大事だと思っています。それをどう,こういうコロナの時代にデジタル,オンライン,遠隔で補っていくかということだと思います。そこの主客ははっきりさせておかないと,ただ組み合わせろ,組み合わせろと言うだけでは現場はなかなか大変じゃないかなと思っております。オンラインとか,ICTを使っていくというのは,教育の本質のものじゃなくて,あくまでツールだということをよくわきまえていく必要があると思います。特に教科書ですね。これは学習指導要領の中にもしっかりと,「紙の教科書をベースとしつつ」ときちんと盛り込まれておりますので,ベースはどちらにあるのかということを常にフィードバックして,思い起こしながら,このハイブリッド化,ベストミックス化を進めていっていただきたいなと思います。
 それと,これは文科省当局に質問なんですけれども,現在,ウィズコロナの時代ですよね。アフターコロナじゃなくてウィズコロナ。その中で小中高,公立,私立含めて,現在,ハイブリッド的な教育はどの程度の学校で行われているのか,現状はどうなのか,そういう事例とかをもしお持ちであれば,是非紹介をしていただきたい。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 今,御質問を頂きましたが,最後,まとめてということで,場合によりましては,実は手を挙げていらっしゃる方,大変たくさんいらっしゃいますので,時間の関係で,今回はお答えいただけるかどうか分からないということをお含みおきいただきたいと思います。今,手を挙げていただいています方が,道永委員,八並委員,喜名委員,岸田委員,牧野委員,橋本委員,堀田委員,鶴羽委員,清原委員,角田委員,二見委員,相原委員,貞広委員,戸ヶ﨑委員,奈須委員,渡邉委員,今申し上げた皆さんです。大変たくさんの御意見を頂きたいのでありますけれども,時間の関係がありますので,その点,御留意いただきますようにお願いいたします。それと,奈須委員,大変申し訳ありませんが,手が下がっているようなんですが,いいんでしょうか。

【奈須委員】はい,もう結構です。すみません。

【荒瀬分科会長】分かりました。ありがとうございます。
 では,今申し上げました順にお願いいたしたいと思います。これも,大変恐縮でありますけれども,重なる御意見は割愛していただきまして,御自身の今まで出ていない御意見をお願いしたいと思います。申し訳ありません。
 では,道永委員,よろしくお願いいたします。

【道永委員】日本学校保健会の道永と申します。
 資料3-1の6ページ,マル8について一言申し上げたいと思います。こういった学校で学びたくても学べない児童生徒に対する学びの保障という観点から,これについてはしっかり取り組んでいただければと思います。また,「病気療養,不登校など」と書かれていますが,現在,医療的ケアを必要とする児童生徒もおります。その子たちも書き入れていただければと思っています。また,これは全体に言えることなんですが,ICT機器,これからどんどん利用することが増えると思いますが,その際の健康面への配慮を怠らないでいただければと思っています。
 私としては意見,以上でございます。よろしくお願いします。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,八並委員,お願いいたします。

【八並委員】日本生徒指導学会会長の八並です。
 資料を拝読して,第一印象は教育課題をどの程度具体的に意識して組み立てられたかという点です。特に,学びの保障と生徒指導上の諸課題についての関連性が希薄だと思いました。また,キーワードとなっている「多様な子供たちを誰一人取り残さない」あるいは,「個別最適化された学び」の実現とも,関連することです。
 具体的に申し上げますと,
 5頁を御覧ください。「マル5児童生徒の特性に応じたきめ細かな対応について」において,「不登校児童生徒,障害のある児童生徒,日本語指導が必要な児童生徒について,」とあります。これは,小中の新学習指導要領の第一章総則の第4「児童生徒の発達の支援」2「特別な配慮を必要とする生徒への指導」での児童生徒です。
 生徒指導上の課題で,喫緊の課題だと思われるのは,いじめ自死を含むいじめ,不登校,高等学校中途退学だと思います。個人的には,不登校だけでなく,いじめや高等学校中途退学の文言を入れるのがよいと思います。
 「いじめ」で申し上げると,平成30年度の文科省調査では,いじめの認知件数は約54万4千件です。そのうち,深刻ないじめである「重大事態」に該当するものが,602件です。さらに,その内訳で不登校重大事態に該当するのが,420件と,重大事態の70%を占めます。また,いじめ自死件数は9人です。つまり,いじめを原因とする不登校の児童生徒の学びの保障やキャリア保障・進路保障,人権保障をどうするかというのは,重要です。
 次に,「不登校」は,小中高を合算すると,約22万人です。特徴的なことは,小中では,90日以上欠席している児童生徒が58%もおり,そのうち出席日数が10日以下とゼロを合わせると15%いるということです。したがって,非常に長期にわたって学校に行けず,家庭に引きこもる傾向にあります。また,無気力傾向や遊び・非行傾向の不登校の場合,学業の不振要因が3割程度あります。調査にはありませんが,当該児童生徒の中には,特別支援教育の対象になるケースもあると思います。
 では,不登校児童生徒がどの程度,学校外で相談・助言を受け,「出席扱い」になっているかというと,約2万3千人で,学校外で相談・助言をうけた児童生徒の41%に相当します。それに対して,自宅におけるIT等を活用して出席扱いになった児童生徒数は,小学校88人,中学校198人で総計286人しかいません。その意味では,6頁の「マル8学校で学びたくても学べない児童生徒への遠隔・オンライン教育の活用について」の「学校で学びたくても学べない児童生徒(病気療養,不登校など)に対し,遠隔・オンライン教育を活用した学習について出席扱いとする制度の活用促進」には,賛成です。
 今回取り上げられていませんが,高等学校中途退学者は,約4万9千人,中退理由の34%が「学校生活,学業不適応」です。これは,高校全入時代の大きな教育課題です。これに触れなくてよいのかと疑問に思います。この他,調査結果とは離れますが,定時制高等学校における学力低下や発達に課題のある生徒への対応も課題だと思います。
 個人的なことですが,1991年から92年にアメリカ・インディアナ大学におりました。当時,ブッシュ政権からクリントン政権に移行する時期でした。帰国後,クリントン政権下で全米に高速なコンピュータ・ネットワークを張り巡らす情報スーパーハイウェイ構想が立ち上がり,実現しました。その後,ブッシュ政権下で2002年に「どの子供も置き去りにしない,あるいは,どの子どもも落ちこぼさない」法律,No Child Left Behind Act-通称NCLBが成立しました。冒頭の「多様な子供たちを誰一人取り残さない」という理念は,NCLBを彷彿とさせますが,では,「多様な子供」の多様性とは何か。この多様性が,読み手にもう少し具体的にイメージできるような表現があるとよいのではと思います。
 最後に,現在大学で遠隔教育をやっていますが,ICT環境が整っても,教員の準備や評価活動は,膨大な時間とエネルギーを要します。果たして,先ほど示された働き方改革と矛盾しないか心配です。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 喜名委員,お願いいたします。

【喜名委員】全国連合小学校長会の喜名でございます。
 まず1点目は,るる御説明がございましたけれども,「オンライン教育」という言葉の定義が必要ではないかなと思っているところです。同時方向性が担保されたオンライン授業とかオンデマンド授業とか,教育  課程を基準に言葉の整理が必要ではないかなというのが1点でございます。
 2点目は,学校の現状ということでお話を申し上げたいと思いますが,全国連合小学校長会では,学校再開状況調査をいたしました。その中で多くの学校が,ほとんどの校長先生方が,GIGAスクール構想による1人1台端末の実現を強く望んでございます。これは,資料3-1の8ページにもございますけれども,まさに緊急時の対応としてということであります。もちろんそれだけではなくて,新しい学びを支えるツールとして,ランドセルに教科書やノートを入れるように,タブレットを入れて登校するということが普通になるようなことを願っているわけであります。授業中は発表ツールとして使ったり,また,調べ学習をしたり動画を見たりということで学び,授業改善が進んでいくのではないか。これはまさに御説明にもあった,学習指導要領が目指している主体的・対話的で深い学びの実現につながるものだと思っています。
 また,家庭に持ち帰って習熟を図るための学習に使ったり予習に使ったりということも可能ではないかと思っています。また,るる御説明があった中の不登校の子供たちとか,いろんな事情があって来られない子供たちの学びの機会をつくることにもなると思っています。今,そういう状況の中で,こんな学び方が実現される大きなチャンスになっているというところであります。
 実は昨日,いろんな地域の校長先生方とお話をしたところですけれども,地方の自治体の判断で,GIGAスクール構想の前倒しをやっているところが,今,かなり多くあるというのが実感でございました。一方で,まだ家庭のICT環境に頼って,それが叶わない家庭にはタブレットを貸し出すとか,そういうことで,逆に日常的な学校での活用に支障を来しているという本末転倒のような状況もあるということがございます。全連小としても,今後,各校長会を通して各自治体の首長さんに,この辺のことを是非訴えていくつもりでございます。
 一方で,昨日も実はその話になったんですけれども,多くの自治体が今,需要が多くあります。一方で供給が間に合わないという状況もあって,是非政府としても御対応いただきたいということもございます。それから,緊急時も含め,家庭学習での利用を考えると,学区域内でも地域的な通信インフラの整備も必要ではないかと思います。防災の視点からも重要でありますし,この辺も是非政府として考えていただけること,実現されることを強く望みます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 岸田委員,お願いいたします。

【岸田委員】
 重複するところがありましたので,ちょっと省くんですけれども,やはり新型コロナウイルスを機にオンライン教育というのは一気に進めなければいけないな,進める機会だなと思っていて,進めることで,誰一人取り残されることがない教育というのが実現できるんだと,これは実感しています。将来的に必ず,これ,広めていかなければいけないんですけれども,コロナウイルスというのは,第2波がもう間もなくというか,秋にはやってくるというところで,そういったところも踏まえると,本当に早く整備しなければいけないなと思います。
 ただ,やはり教師のICT活用能力の向上というところも,きっと課題になっているんだろうなということと,あと,インフラだけ整えても,そこの活用能力であったりとか,あと,マネジメントというところもすごく問題が 起きてくると思っていて,マネジメントできる人をどれだけ増やせるかというのも考えなければいけないなと思います。
 オンラインとオフラインのハイブリッドというところで,オンラインになることで,先生方も楽になることって必ずあると思うんですよね。なので,そういったことも含めて,マネジメントがより課題になってくるのかなと思いました。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 牧野委員,お願いいたします。

【牧野委員】飯田市長の牧野です。
 先ほど,喜名委員からお話のあったことを受けてということで,少し私から,2ページの必要な取組のウィズコロナの段階のところで,ちょっと思いを申し上げます。喜名委員からもお話があったように,GIGAスクール構想を進めていこうと,各自治体が今,その導入に向かって取り組んでいるのは御案内のとおりかと思います。コロナウイルス前に,GIGAスクール構想をこういった形で文科省がまとめて,全体でやっていこうと言ったことは,結果的に非常に時宜を得たものになっていると思っています。
 ただ,先ほどからお話が出ておりますように,今,各自治体がみんな,GIGAスクール構想にのっとって,これを入れようとしたときに,コロナの感染症の拡大という新たな要素が入ってきて,みんな前倒しできるところはしたいということになっています。飯田市におきましても,3年計画で全小中学校にICTを入れていこうとしていたのを全部前倒しして,秋口に,できるだけ早くというところまでは,今,コンセンサスを取ってやってきているんですね。自治体によって,恐らくそこら辺はかなり考え方に差が出てきているところでありまして,必要な取組として,そういったICTを全小中学校に一体,どこら辺の段階で入れていけるのか。そのときに,先ほどから出ているように,コロナの第2波とか第3波が来てしまったとしたとき,そのときに休校措置を取らざるを得なくなったとしたらどうするのか。言ってみれば,自分たちの地域がどういった段階にあって,そのときにこういうことが起きたときはどういった学びをやっていったらいいかというようなことは,申し訳ないんですけれども,この2ページから4ページのところまでかけて読んだときに,これだけ動態的に動いている中で,自分たちの地域がどの立ち位置にあって,それに対してどういうことをやっていったらいいかということについては,なかなか分かりにくいんじゃないかと。
 この文章を直せというよりは,文科省さんのほうが各自治体に対してきちっとモニタリングして,段階,段階において,こういったことを考えていくのがいいんじゃないかというアドバイスをすることで,ここは補っていかないと,先ほど岩本委員からあった,2か月間休校になったけど何をやったらいいか分からんということをまた繰り返しはしないかという,そんな懸念を感じるわけですね。是非ここは,まさにオンゴーイングの世界ですから,それも一斉にどうこうじゃなくて,みんな,ICTを入れる方向に走りながら,それぞれ違った段階に来ている。全国的に,みんな違ってしまっている状況の中で,文科省のきめ細かな,寄り添った対応が是非必要だということを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】京都府の教育長の橋本です。
 資料3-1の3ページ,マル5にICT活用のための人材の充実について記載されていますが,ハード環境の整備とともに,ここに書かれていますように,人材の充実が非常に大変だと考えております。その中で,補助事業として措置いただいていますGIGAスクールサポーターについてですが,これは,ICT関係企業等のICT技術に知見を有する人材が想定されています。私どものほうにも,市,町から結構問合せがあり,それで関連企業にも当たったりしておりますが,現在,こうした人材が引っ張りだこで,相当高報酬でないと,なかなか人材の確保が難しい状況だと聞いています。このため,難しいかもしれませんけども,補助単価の引上げやICT活用教育アドバイザーのように,一種のバンクのようなものを国で設けていただいて,派遣する方式なども考えていただけると有り難いなと思っております。
 それから,もう1点ですけど,ICT支援員については,既に交付税措置をしていただいているところでありますが,厳しい地方財政の状況から,端末整備と同様,なかなか配置が進んでいない状況にあります。端末の配備が今年度完了した後,来年度や再来年度あたりには特に支援員の需要が高まると思われますけども,そうした中で,我々としても教員の研修等には努めていきますが,それだけではなかなか当座の対応に十分と言えないわけでありまして,やはりこの支援員の充実というのは必要だと思っております。それだけに,時限的でもよいんですけども,これについても補助事業化というものが考えられないかなと思っております。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 堀田委員,お願いいたします。

【堀田委員】東北大学の堀田でございます。
 1点だけお伝えいたします。資料3-1の3ページの一番下のマル6に当たるところで,先ほど篠原委員からも御意見が出たように,この臨時休業中に,オンライン教育がどの程度行われたかということを正確に把握するということを今やっておかないといけないと私は思います。今日も東京では感染者が100人を超えており,学校の先生も感染しているという状況がございましたし,いずれ,どこの都道府県にも十分に起こり得ることかと思います。第2波,第3波は全国一斉に来るとも限りませんので,現状の段階において,危機的な状況だった3か月ほどの間に,幾つの学校の幾つの学年でどのようなオンライン授業の体制で学びを止めない努力をされたのか。プリントとの併用とかEテレの番組を見るとかということも含めて,どのような形の対応がどの程度されていたのかということを自治体ごとに調査して明確にされるべきかと思います。
 とりわけ,ICTの整備がある程度されている自治体が,それでもオンライン教育ができなかったという現実もございます。その理由は,学校に導入されているICTが,学校から取り出すと使えない設定になっているなど,そういう残念なケースもあったように思います。あるいは教育委員会の判断でやらなかったということもあろうかと思います。GIGAスクール構想での導入後のwithコロナ時代の学習環境にも関係しますので,教育委員会や管理職の意思決定とかマネジメントも含めて調査すべきだと思います。緊急を要すると思っております。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 鶴羽委員,お願いいたします。

【鶴羽委員】
 今回は,オンラインが進んでいる学校と,そうではない学校とに大きな差があったというふうに,北海道の元教育委員会委員をしておりますので,北海道の現場の先生方に聞いて分かりました。進んでいるところはいいんですけど,進んでないところの支援を今後どうしていくのかということが大事になってきます。実際,同じ学校,同じ学年であっても,頻繁にオンラインで生徒・児童に働きかけをした教員と,全くなかった教員がありました。ですので,学校単位じゃなくても,クラス単位でも,先生方の得意か不得意かという部分でも,この2か月間で大きく差が出たということは間違いありません。
 ですので,もし,ここがうまくできないのであれば,学校任せにしないで,オンラインですから,別に同じ学年,クラス,学校,関係ないと思いますので,地域単位でどういうふうに得意な人たちが集まってどう発信していくのか。担任の先生だけに任せていい話ではないと思いますので,今からそうした研修ができるかということなんですけど,学校は残された期間に行事をこなすのに精いっぱいです。先生方に,これからICTの研修を受ける時間はないという話も聞いています。そこの部分を先生方だけに任せるのではなくて,どういうふうに国としても支援をしていくのかというようなツールを早急につくっていただきたいなと思いました。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 清原委員,お願いいたします。

【清原委員】ありがとうございます。清原です。
 2点申し上げます。資料3-1の5ページでございますけれども,「④デジタル教科書・教材の普及促進について」,1点目に申し上げます。
 このたび,ウィズコロナ,ポストコロナを見通した初等中等教育の中で,対面のリアルな授業とオンライン・遠隔教育を上手に統合したハイブリッド型の授業による学習の協働化の推進が見えているわけですが,いずれにしましても,こうした取り組みによる教員による授業の質の向上,児童生徒による学習の質の向上は不可欠であります。デジタル教科書・教材につきましては,教員が授業の質の向上のために,子供たちが学びの質を向上させるために,対面指導であれ,オンライン教育であれ,必要な支援になると考えています。したがいまして,有識者会議におきましては,ウィズコロナ,ポストコロナの時代におけるデジタル教科書・教材の在り方について,やはり重要なテーマだと思いますので,重点的な御検討をいただければとお願いでございます。
 2点目,資料3-1の8ページ(及び資料3-2)についてでございます。学校の教育環境についてまとめていただいているところでございます。初等中等教育が学びを保障し,社会力を培い,心身の健康増進を図るうえで,学校環境の整備は不可欠です。ハイブリッド化を進めていくときに情報通信基盤は必要ですが,教室につきましても,従来とは異なる黒板・大型ディスプレイ・机・椅子等のレイアウトが必要です。分散登校の中で経験したことでございますが,教室の定員についても社会的距離確保の配慮が必要でございます。対面指導でもパソコン,タブレット等の端末を使った授業と,そうでない授業で教室の環境の在り方も違ってくることが考えられます。
 さらに,この感染症につきましては,床やトイレから感染するリスクが高いという医学的な報告もございます。感染症対策として,子供たちの心身の健康管理をするための教室の衛生管理についてはマニュアルも作っていただきましたが,やはりさらなる徹底が求められてくると思います。
 したがいまして,子供たちの学びを保障し,社会性を高めるとともに心身の健康を保障していくという初等中等教育の理念を実現するために,一方で,ソフト面ではデジタル教科書・教材の在り方,他方では,教室のレイアウト等環境整備につきましては,これまでは耐震化,長寿命化,トイレの洋式化が重点課題でしたが,ウィズコロナ,ポストコロナの時代には,さらなる衛生管理等を含めた提案が求められていると感じています。
 以上でございます。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,角田委員,お願いいたします。

【角田委員】角田です。よろしくお願いします。
 私からは,編集者として,少し違う視点のお話をしたいと思っています。私が携わる『キャリアガイダンス』という教育誌で,コロナ禍にある様々な取組を取材させていただいたんですけれども,そのときにオンライン学習をはじめとして,ピンチをチャンスにと新しいことに挑戦されている,すばらしい高校でさらにすばらしいと思ったのが,管理職の方々のスタンスなんです。文科省や教育委員会の言うことを待ってられないとか,あるいは聞かないとか,自分の学校でやれることをやるという決断をトップがされて,その上で,現場の先生方の個性が生きるようなマネジメントをされて,それでこの危機意識の下,学校が一体となったというようなすばらしいことが起きていました。
 今後は,コロナに限らずに,何が起きるか分からない常に非常時だと思うんですね。そのときに,リーダーはどうあるべきか。守りではなくて攻めていくマネジメントを,本当にトップの方たちに身につけていただきたいと思っていて,そういった視点,そういった研修の必要性を痛感しています。現場の先生方が幸せになるようにという,そういった視点を持った管理職がいなければ,働き方改革も進まないと思っています。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 二見委員,お願いいたします。

【二見委員】町村教育長会,二見です。よろしくお願いします。既に何人かお話しされましたので,省いていきます。
 GIGAスクールが12月に発表され,このコロナで,いきなり今年度内にとなりました。当初では,全ての学校で1人1台を,正常な状態の中でどう使うかということを令和5年度までにイメージ化していましたが,全ての子供たちが家庭にいたときにどう使うかというところまでいきなり求められてきた。今回,多くの学校では,いわゆる遠隔授業やオンライン授業はほとんどできていないと私は思っています。しかし,これから残された年度内の時間の中で,何としてもこの有事に備えた準備をしていく必要があると思います。そういう中で,やはり一番大事なのは,教職員の研修,また,それを支えるICT支援員等,こういう人事配置が必要だと思っています。
 もう一つは,デジタル教科書にも関係しますし学習コンテンツにも関わるわけですが,最先端技術を活用した学習活動あるいは授業づくり,評価,こういうものをより早く先進的な研究をお願いして,その研究結果を報告していただく,それを急いでいるところでございます。そういう点で,デジタル教科書での研究,在り方,最先端技術を活用した研究の報告,これを一刻も早くお示しいただければ有り難いと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 相原委員,お願いいたします。

【相原委員】ありがとうございます。
 1点目は,最初に篠原委員がおっしゃられた実績把握の点について,私も賛成します。その際には,教育の格差がどれぐらい広がっているのかという点も,実態把握の観点として大変重要と考えます。
 2点目は,今後は平常時と非常時を明確に区分できないという前提で,オンライン教育は学校教育現場におけるセーフティネット機能であるとの点をもっと強調されて良いと思います。パンデミックや天災,家庭環境などであろうと,学びたくても学べないという時間が一瞬でも起きないようにしていく形をつくるべきだと思います。
 学校の働き方改革への社会的合意は相当盛り上がってきて,今日の議論にもつながっています。その意味では,学校のICTの環境は遅れている,あるいは,このような学びの環境でいいのか,という応援団を世の中にどんどん作っていくことも大変重要です。教職員の働き方改革と,学びの質を高めるICTはセットで進めていく観点が必要です。
 最後に,企業における働き方は今後相当変化します。今の児童生徒が出ていく社会,未来は,社会課題を解決するという大きな期待があります。今の児童や生徒はその中核を担っていくと思います。ICTを駆使しながら多くの体験をして,視野が広まるような教育環境を作っていくことが重要です。ただし,一番大事なのは,手触りがある教育ですから,対面するところは絶対捨ててはいけないということを念頭に置いた上での議論が大切であると思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 では,貞広委員,お願いいたします。

【貞広委員】よろしくお願いいたします。千葉大学の貞広と申します。
 私,資料3-1にありますとおり,オンラインとオフライン,個別学習と協働学習または修得主義と履修主義を適切にベストミックスされたハイブリッドな教育システムを希求するという資料3-1の方向性に賛同いたします。その上で,若干の懸念として,これ,資料の特性ということもあるのかもしれませんけれども,学びの様式とか方式にちょっと記述が偏り過ぎているような懸念を持ちます。というのは,こうした様式や方式が適切に学校の中で活用されるためには,何よりも学習指導要領にのっとった適切なカリキュラム・マネジメントが行われているということがベースになると思われるのですが,その点についての記述が若干薄いのではないかということです。
 今回,新型コロナウイルス感染拡大を受けた休校または休校の再開というプロセスの中で,学校は時間的にも空間的にも条件を縛られた状態での対応を迫られたわけですけれども,その戸惑いが少なかったりとか子供たちの学びの継続が相対的に行われた学校というのは,恐らくそれ以前の段階でカリキュラム・マネジメントが十分に行われていたために,学びの選択であるとか集中であるとか,また,教科横断的な組合せというものが,当たり前とは言いませんけれども,それほど戸惑いなくできたからこそ,学びの継続が相対的になされたのだと思います。方式,様式も大変重要なんですけれども,その前段階の部分がより,そこが土台になるというところがちゃんと伝わるような記載の仕方を工夫していただければと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 戸ヶ﨑委員,お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。
 意見がたくさんありますので,事前に書面で出させていただきました。時間の関係で,1の(1)の3つ目の丸と1の(2)にのみ触れさせていただきたいと思います。
 まず,4ページの(2)マル1の内容とも重複するわけですけれども,この未来の教室像とか教師の役割のイメージの乖離というのが大きな問題だなと考えています。ある団体の方々の意見ですと,現在,スタディ・ログの活用で一人一人の進度だとか理解度をより精緻に把握することが可能になっていると。そのような認識ですとか,また,これまで途方もないマンパワーが必要だったけれども,テクノロジーの活用で,指導の個別化と子供たちの学びの効率化を図れ,一人一人に最適なカリキュラムをAIで導き出せるようになる,などと述べていますが,こういう現状への美しき誤解やEdTechへの過剰な期待,魔法のつえのような認識があるように思われてなりません。このことは,ある意味,極論すると,AIは教師の代わりも果たせるので,教師の数はもっと減らせるんじゃないかというような捉え方がされなくもないということを危惧しているところであります。
 一方で,では,現在の学校はどうかというと,このコロナ禍の影響もあってと信じたいわけですが,令和の学校から昭和の学校にタイムスリップしてしまったように,教科書を丁寧に教え込むといったオンライン授業のスタジオ型というんですかね,そういうものとか,教師主導のインプット重視の授業の再現が少なくないのが現状ではないかという危惧もございます。
 次に,1ページから2ページのかけての(2)の内容ですけど,先ほど,この用語についてのお話がありましたので,ここは飛ばしたいと思います。遠隔教育,遠隔授業,遠隔学習,遠隔・オンライン教育などの用語について整理や周知が改めて必要かと思います。
 それからもう一つは,2ページの上から2行目のところに,「非常時の対応」という言葉についても先ほど来御意見がありますので,短めに申し上げますと,先ほど貞広委員からもありましたけれども,私は重要なのは,対面授業とオンラインを意図的,計画的に位置づけて学習の効果を最大化する,こういうカリキュラム・マネジメントがいかにできるかということが何より重要なんだろうと思っています。ICTを使えばいいなどという方法論ばかりではなく,今後のことを鑑みて,カリキュラム・マネジメントの力をいかに育成していくかということをもっと深く議論すべきであると思います。因みに,本市では戸田型のハイブリッド学習と称して,通常授業の中でも対面授業と校内のサテライト,少人数とか合同授業などを組み合わせた授業の創意工夫を学校ごとに自走し始めているところであります。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。
 戸ヶ﨑委員,資料を事務局にお送りいただいたようですが,これ,委員の皆さんと共有させていただくということでよろしいでしょうか。では,事務局にお願いしまして,委員の皆様にも戸ヶ﨑委員からの資料をお送りするようにいたしますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,最後に,渡邉委員,お願いいたします。

【渡邉委員】東京学芸大の渡邉です。時間もありませんので,手短に2点ほどお話ししたいと思います。
 1つは資料3-1のマル7に載っています学校と児童生徒との関係の継続,または,学校の教育活動の継続です。今回,コロナでこういう話題が出てきていますけれど,東日本大震災のときも同様に,教育の継続という話が出ていたのですが,企業ですと,例えば事業継続計画,自治体でもやっていると思うのですけれど,そういった発想というのが学校はすごく希薄と思います。何が起きたときに対応するために,例えば危機管理マニュアルを作るというのは学校保健安全法でも決められていますけれど,事業継続計画のようなここに書いてある学校の教育活動を継続するための計画という発想が,これまで非常に弱かったと思うのです。ですから,こういったところはもっと目を向けていく必要があるんじゃないかと思います。この先,日本でまた大きな災害が起こるということは十分考えられるわけですので,そういうことも含めて,子供たちの教育を保障するという意味では,教育継続が可能な学校づくりということを考え,もっと強調していただくといいと思います。
 もう1点は,この議題と直接関係するわけではないのですけれど,今,コロナに関係して,先生方の非常に負担になっているのが消毒なんです。オンライン授業もやらなければいけないのに,消毒も毎日やらなければいけないような状況にある中で,やっぱり先生方の負担を軽減する必要があります。今,文科省のほうからは,非常にいい制度で,学校・子供応援サポーター人材バンクというのを進めていると思うのですけれども,これは,まさにICTのサポートもしてくれる,学習サポートもやるというようなこともあるんですが,その中にも消毒のサポートなども挙がっているのですね。ですから,これをもっと有効に使えるようにしていただくといいのですが,この学校・子供応援サポーター人材バンクというのは非常に手続が面倒といいますか,登録してからサポート開始まで時間がかかるというところなのですね。こういう人材というのは今すぐ必要なわけですので,もっと早く,迅速にそういう必要な人が学校に行けるようなシステムにしていただければと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。御協力いただきまして,ありがとうございました。ただ,少し時間がオーバーすることになってしまいました。申し訳ありません。
 最後の議題に参りたいと思います。産業教育振興法施行規則の一部改正につきまして,事務局から御説明をいただきます。塩川参事官,よろしくお願いいたします。

【塩川参事官】それでは,私から簡単に説明させていただきたいと思います。
 資料4でございます。こちらの,先日,6月30日の教育課程部会で御審議,御了解いただきました産業教育振興法施行規則の一部改正でございます。本改正でございますが,高等学校の学習指導要領の改訂に伴いまして,その都度都度行っておるものでございます。指導要領の改訂を踏まえて,高校の産業教育施設整備について,産業教育振興法に基づいて国庫補助を行っておるわけでございますが,その基準等についての改正を行うというものでございます。
 資料4の2ポツでございますが,主な改正の内容ということで掲げさせていただいておりますが,例えば(1)でございます。こちらのほう,例で書いておりますが,食品科学について,例えば農業のHACCPとして,食品の異常を発見する品質管理装置を補助対象として追加するといったことを内容としているものでございます。(2)(3)については,また御覧いただければと思います。
 3として,今後の予定でございます。高校の指導要領,令和4年度からの実施でございますので,学校設置者が次年度等に行う整備に向けて,その補助に適用できるよう,それに合わせて速やかに今後,省令化を図ってまいりたいと考えているところでございます。
 駆け足の説明になりましたが,以上でございます。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】ありがとうございました。この件に関しましては,御意見を頂く時間を取らないということにさせていただきたいと思います。この件に関しましても,あるいはまた,今日前段でありました議題につきましても,御意見がおありの方は事務局にメール等でお届けいただければと思います。大変申し訳ありませんが,よろしくお願いいたします。
 では,時間も過ぎてしまいました。今日はこのあたりにさせていただきたいと思います。
 最後に,次回の予定につきまして,事務局からお願いいたします。

【田中教育制度改革室長】御審議ありがとうございました。次回の本分科会につきましては,9月28日月曜日10時から12時で開催の予定としております。詳細につきましては,追って事務局から御連絡申し上げます。

【荒瀬分科会長】それでは,本日はこれで終了させていただきます。文部科学省の方からも,お答えを頂くとか御意見を頂く場面もあったかと思うんですけれども,大変申し訳ありませんでした。今日はこれで終了いたします。皆さん,ありがとうございました。

―― 了 ――

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