初等中等教育分科会(第117回) 議事録

1.日時

平成30年5月15日(火曜日)15時~17時

2.場所

東海大学校友会館 朝日・東海・三保の間 

3.議題

  1. 高等学校学習指導要領の改訂について
  2. 「SNS等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)」について
  3. 第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」について

4.議事録

【小川分科会長】  定刻になりましたので、ただいまから117回中教審初等中等教育分科会を開催したいと思います。
 本会議は、本分科会規則第5条によりまして、公開を原則としており、また、第6条により、会議を撮影、録画、録音する場合には、申請に基づき、分科会長の許可を受ける必要があります。会議の進行や他の傍聴を妨げる行為を行った場合には退場を命ずることもありますので、御了承ください。なお、個人を特定するような撮影及び録画は御遠慮ください。
 まず、本日の議事に入る前に、配付資料について、事務局から説明をお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】  事務局でございます。本日の配付資料につきましては、お配りの議事次第にありますとおり、資料1から3と参考資料1をお配りしております。資料の不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
【小川分科会長】  それでは、早速最初の議題に入ります。1つ目の議題は、「高等学校学習指導要領の改訂について」です。これは淵上教育課程課長から御説明をお願いいたします。
【淵上教育課程課長】  失礼いたします。資料1-1、1-2、1-3の〇1、〇2が高等学校の学習指導要領関係の資料になります。主に資料1-1と1-2を基に御説明をさせていただきます。
 去る3月30日に公示をさせていただきました高等学校学習指導要領の改訂についてでございます。これは、本初中分科会も含めまして御審議を頂きまして、平成28年12月に中教審の答申を頂いたところでございます。この答申に基づきまして、昨年の小中学校に引き続いて、今回高等学校の学習指導要領を改訂したというものでございます。
 それでは、資料1-1を御覧いただければと思います。今回の改訂の基本的な考え方、1番、あるいは2番の、知識の理解の質を高め、資質・能力を育む主体的・対話的で深い学びと、こういったあたりは、小学校、中学校の学習指導要領の改訂の基本的な考え方と同様でございます。社会に開かれた教育課程の必要性、知識の理解の質を高めること、あるいは、資質・能力を3つの柱で再整理するといったようなことでございます。
 また、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業の改善ですとか、カリキュラム・マネジメントの確立といったようなことも小中学校と同様の考え方で改訂をしてございます。
 これに加えまして、このページの4番でございますけれども、高等学校におきましては、教科・科目の構成の改善を図ってございます。これは後ほどまた御説明をさせていただきます。
 具体的な教育内容の改善事項につきましては、次のページを御覧いただければと思います。まず言語能力の確実な育成ということでございますけれども、高校生を取り巻く言語・情報に関する関係が大きく変化をする中で、これも小中学校の国語科で重視しておりますこととの連続性でございますが、科目の特性に応じた語彙の確実な習得、あるいは主張と論拠の関係、推論の仕方など、情報を正確に理解し、効果的に表現する力の育成など、全ての学習の基盤となる言語能力の確実な育成を図るということにしてございます。
 次の理数教育の充実に関しましては、日常生活や社会との関連を重視をいたしますとともに、観察、実験を通じて科学的に探求する学習活動の充実によりまして学習の質の向上を図るということにしてございます。
 また、次のポツにございます、データに関する統計教育の充実も図るということにしてございます。
 3つ目のポツでございますが、将来の知の創出をもたらすことができる創造性豊かな人材の育成を目指しまして、新科目、「理数探究」などを新設するということにしてございます。
 伝統・文化に関する教育につきましては、国語科に必履修科目の「言語文化」というものを新設いたしますほか、武道の充実、和食、和服、和室など、日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関する内容を充実してございます。
 道徳教育につきましては、校長のリーダーシップの下、道徳教育推進教師を中心に指導体制の充実を図るということを、新たに規定いたしました。
 また、新設科目の「公共」、あるいは「倫理」、特別活動、これらが人間としての在り方、生き方に関する中核的な指導の場面であるということを明記いたしまして、道徳教育の充実を図るということにしてございます。
 外国語教育につきましては、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことといった力をバランスよく育成するための科目、「英語コミュニケーション」の新設、発信力の強化に特化した科目、「論理・表現」の新設など、その充実を図ってございます。
 職業教育については、持続可能な社会の構築、情報化の一層の進展、グローバル化など、社会や産業の変化の状況などを踏まえまして、各職業教科の教育内容を改善してございます。
 更に、「船舶工学」、「観光ビジネス」などの科目を新設いたしまして、産業界で求められる人材の育成に努めてまいります。
 次に3ページ目でございます。その他の重要事項ということでございますが、初等中等教育の一貫した学びの充実ということで、中学校との接続、あるいは、高等学校卒業以降の教育、職業との接続について明記をしてございます。
 2つ目の○でございます。今回の改訂は、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから初めての改訂でもございまして、主権者教育を充実することにしてございます。具体的には、公民科におきまして、政治参加と公正な世論の形成、主権者としての政治参加の在り方に関する考察に関する学習を充実をしてございます。
 このほか、次のポツでございますが、財政、租税の役割、少子高齢化社会における社会保障、起業、労働保護立法、金融などに関する学習の充実を図ってございます。
 3つ目のポツでございますが、成年年齢の引き下げの議論における消費者被害の拡大の懸念などが指摘されます中で、消費者として主体的に判断し、責任を持って行動ができるようにすることが重要になっておりますことから、消費者の権利と責任、契約の重要性、消費者保護の仕組みに関する学習など、消費者教育の充実も図っているところでございます。
 また、大規模な災害が頻発する中で、防災・安全に関する教育を充実することとしてございまして、例えば公民科では防災と安全・安心な社会の実現、家庭科では防災・安全や環境に配慮した住生活の環境などについて指導することにしてございます。
 オリンピック・パラリンピックに関する教育に関しては、オリンピックが国際親善や世界平和に大きな役割を果たしていることなど、スポーツの意義や役割の理解を図ることとしてございます。
 また、我が国の領土に関する指導につきましては、昨年の小中学校の指導要領と同様に、指導の充実を図るということにしてございます。
 情報教育につきましては、情報科の科目を再編いたしまして、全ての生徒が履修をする「情報Ⅰ」を新設いたしまして、プログラミング、ネットワークやデータベースの基礎に関する内容を必修化してございます。
 部活動につきましては、中学校と同様に、学校教育活動として教育課程との関連の留意、社会教育関係団体等との連携を重視するということにしてございます。
 子供たちの発達の支援につきましては、障害に応じた指導、日本語の能力などに応じた指導、不登校などの生徒への対応など、教育課程との関連で留意すべき点を明確にしているところでございます。
 特に通級による指導を受ける児童・生徒には、個別の指導計画等を全員作成するなど、一人一人の子供たちの実態に応じた指導を充実することにしてございます。
 次の4ページ目が高等学校の共通教科・科目の構成を比較した表でございます。左側が改訂後のものでございまして、右側が現行のものになります。お手元の資料の1-2の1ページ目と併せて御覧いただければと存じます。
 資料1-2の方では、改訂後の共通教科等の科目構成をお示しした図となってございますけれども、黒枠の囲みで示しているのが新設の科目、27科目ということになります。黄色が必履修科目、青色が選択必履修科目ということでございます。
 1-1の4ページ目でいいますと、左側のアンダーラインを引いている科目が新設の科目、27科目ということになります。
 今回の科目再編に関しましては、幾つかの教科で大幅な再編をしてございます。まず国語科でございますけれども、これまでの中教審で御審議いただいた課題としましては、指導の中心が教材の読み取りに偏りがちで、論述をしたり、議論をしたりする学習が十分に行われていないのではないかということ。また、古典に関しましては、日本人として大切にしてきた言語文化を享受し、生かしていくという観点が弱く、学習意欲が高まらないといったことなどが指摘されてございました。それぞれの課題に対応する観点から、「現代の国語」、それから「言語文化」、この2科目を創設いたしまして、共に必履修科目といたしてございます。更に、その上の選択科目として、「論理国語」、「文学国語」、「国語表現」、「古典探求」というものを新設しているところでございます。
 またもう一つ、地理歴史科・公民科の中でも大きな再編をしてございます。資料1-1の4ページの右側の現行で御覧いただきますと、地歴科の必修は世界史を必修といたしまして、日本史、地理のいずれかを選択必修ということにしてございます。現行の学習指導要領では中学校までの歴史教育が日本史を中心に行っていることを踏まえまして、高等学校では世界史を必修ということでしてきておりますが、この点につきましては、高等学校でも日本史を必修とすべきとの御意見が従来からあったところでございます。
 また、歴史教育を通史で行った場合には、古代、中世、近世などを詳しく学びまして、近現代史がどうしても不十分となってしまうと、こういう指摘もございました。こうしたことから、今回の改訂では、近現代史につきまして、日本史と世界史を広く相互的に捉えるという新科目として「歴史総合」という科目を創設するということにしてございます。新しい地歴科におきましては、この「歴史総合」と「地理総合」と、この2科目が共に必履修科目ということになるわけでございます。
 新設科目の主なものにつきましては、資料1-2の2ページ目以降に概略を関係資料として載せてございますので、また御覧いただければと思いますけれども、時間の関係上、「歴史総合」と「公共」についてのみ少し御紹介をさせていただきます。
 めくっていただきまして、3枚目の表に「歴史総合」の横表があるかと思います。今申し上げましたように、高校における日本史必履修化の課題、あるいは近現代の指導の充実という観点から、この科目の新設をするものでございます。この「歴史総合」では、上にございます科目の特徴にございますように、近現代の歴史を理解するに当たりまして、世界とその中における日本を広く総合的な視野から捉えるということ、課題の解決を視野に入れて現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察するということ、また、歴史の大きな変化に着目し、単元の基軸となる問いを設けまして、諸資料を活用しながら歴史の学び方を習得するといったことが科目の特徴になります。
 また、内容につきましては、Bにございますけれども、18世紀以降の近現代史につきまして、まずBといたしましては、18世紀から1910年頃までを近代化という観点から歴史を総合的に見ていく。また、Cでは、1910年頃から1950年代までを国際秩序の変化や大衆化という観点から見ていく。また、1950年代以降は、グローバル化という観点から、ここにございますような内容を学ぶということにしてございます。これによりまして、生徒が歴史を現代的な諸課題との関連で学ぶというふうな工夫をしているところでございます。
 次のページをおめくりいただきますと、新設科目の「公共」についてでございます。冒頭御説明をいたしましたように、この科目は高等学校における道徳教育の中核ということにもなるわけでございます。社会に参画をする自立した主体とはどういうものかということを学んでいくわけでございます。自分自身と社会との関わりという視点から現代社会の諸課題を捉えまして、その解決に向けて社会に参画する主体として自立すること、あるいは、他者と協働してよりよい社会を形成することについて考察をしたり、選択・判断する力を育むというふうにしているわけでございます。
 Bのこの内容の部分につきましては、先ほど申し上げた主権者教育や消費者教育などを実践する場というふうなことが予定されているわけでございますけれども、具体的な中身は、法に関すること、あるいは政治・経済などに関わる主題を基に学ぶということになりますけれども、この科目では抽象的な内容を受動的に学ぶということではなくて、日常の社会生活と関連付けながら具体的な事柄を取り上げて学ぶことにしてございます。右下の方にございますように、様々な学習活動の工夫をしながら、討論、ディベート、模擬的な授業などを行ったり、あるいは、関係する専門家、機関の方々の御参加を得ながら、実りある体験的な学びで実感を持って社会との関わりを学ぶということにしているわけでございます。
 このほか、幾つかの新設科目についての紹介を載せてございますけれども、時間の関係上、また後ほど御覧いただければと存じます。
 今御説明申し上げました高等学校の新しい学習指導要領につきましては、平成34年度から全面実施ということになるわけでございますけれども、今後、まず移行措置などを検討した上で、早めに実施できる部分については実施をしていくということになります。
 小中学校につきましては32年度以降の本格実施でございますけれども、例えば主体的・対話的で深い学びですとか、あるいは、カリキュラム・マネジメントといった総則の規定は既に今年度から実施をしてございますので、高等学校につきましても、そういったことを踏まえまして、早めにできる部分については先行実施をした上で34年度から全面実施ということになってまいるわけでございます。
 今後、私どもといたしましては、各都道府県の教育委員会関係の方々、あるいは、私立学校関係の方々、教科書関係の方々などに十分な御説明、周知をお諮りした上で、平成34年度からの学年進行による実施に遺漏なきを期してまいりたいと考えているところでございます。
 私からの御説明は以上でございます。
【小川分科会長】  ありがとうございました。それでは、今の事務局からの説明の内容について、皆さんの方から御意見、御質問がございましたら、御発言いただきたいと思います。恐縮ですが、御発言の際には机上の名札を立てていただければと思います。どなたからでも。いかがでしょうか。それでは、最初、清原委員、よろしくお願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原です。最初に失礼いたします。ただいま御説明いただきました高等学校学習指導要領の改訂のポイント、資料1-1の3ページ目に重要事項の2点目として、「主権者教育、消費者教育、防災・安全教育などの充実」とございます。そして、公民の新しい必履修科目として「公共」についても御説明を頂きました。
 三鷹市の事例で申し上げますと、公立高校、私立高校問わず、18歳から選挙権が取得できたということは大きな影響がございまして、三鷹市の選挙管理委員会が連携をして主権者教育についても「模擬選挙」の支援などを通して協力をさせていただいているようでございます。
 また、防災訓練につきましても、市内の私立の高等学校の生徒さんが多数参加されまして、地域の警察、消防、消防団や自主防災組織の皆様と一緒に実践的な訓練に加わっており、市内の大学の大学生とも連携をしながら取組を進めている事例がございます。
 したがいまして、今後、ただいま御説明いただきました新しい学習指導要領の実施の段階におきましては、もちろん授業を通して教科書を中心とした取組も重要かと思いますけれども、地域の自治体、あるいは関係の選挙管理委員会等と連携をしていただきながら、より現実社会に近い授業の運営をしていただくことが更に有益になるのではないかなと御説明を聞いていて思いました。今後の具体化の中で、自治体等との連携についても更に推進していただければありがたいと思います。
 以上でございます。
【小川分科会長】  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。吉田委員、どうぞ。
【吉田委員】  ありがとうございます。ちょっと質問をさせていただきたいのですけれども、まず資料1-1の外国語教育の充実、2番のところなのですが、ここで発信力の強化というもの、そして外国語能力の向上を図るということで、外国語でコミュニケーションを図る力を着実に育成するということですよね。前の改訂のときから、例えば中学校でも英語で英語の授業をするというようなことが言われてきたはずですが、先般、昨年暮れの生徒の英語力の調査結果が出て、まず中学校1年生が発話の半分以上を英語で行っている授業が70%、中2が68.4、中3が67.5と下がっていき、高等学校に行くと、「コミュニケーション英語1」が60.4、「2」が54.8、「3」が42.0と、どんどん下がっているわけですよね。今回の英語教育の改革、そして、特に高校3年生で外部4技能試験を入試に利用する云々という話を考えたときに、具体的にこのことについては、英語で授業をするとか、4技能の養成というのは、私、まだよく読んでいないので申し訳ないのですけれども、学習指導要領の中にどの辺まで細かく入れられているのかどうかということが1点。
 それから、もう1点は、ICTのことですが、3ページの情報教育、プログラミング教育を含むということで入っているわけですけれども、資料2の方にも入っていますが、この場合に、これをやるだけのバックグラウンドというか、ハード面での整備とか、そういうことは学習指導要領でうたうだけではできないのではないかと。そういう意味で、しっかりとした予算化というか、そこまでのことを34年度にはできるようになっているのかどうか、その2点をお尋ねさせていただきたいと思います。
【小川分科会長】  では、2点について、よろしいですか。
【淵上教育課程課長】  十分な御回答になるかどうかでございますか、外国語教育の充実、高等学校の英語教育につきましては、今回の学習指導要領の中では、聞くこと、読むこと、話すこと、話すことはやりとりと発表、それから書くこと、この5つの領域に分けてございまして、この領域別の目標を設定してございます。そして、外国語を使って何ができるようになるかということを明確化しているところでございまして、現在の学習の課題なども踏まえまして、今回のような改訂で、目標の設定、あるいは内容の明確化ということで実践的な英語力を身に付けることができるよう学習指導要領上の工夫を図っているところでございます。
 今後、更に34年度からの実施に向けまして取組を進めてまいります。
 
【安彦情報教育振興室長】  情報教育課でございます。ICTの環境整備についてでございますが、こちら、小中高と、それぞれ情報活用能力の育成を図るという観点で、ICTの環境整備も同じく、2018年、今年度から拡充を図るということで、ICT化に向けた環境整備5カ年計画というのを立てさせていただきまして、これまで単年度、1,678億円の財政措置だったものを1,805億円まで拡充しまして、学習者用、生徒用のコンピューターにつきましては、3クラスに1クラス分程度は整備を最低限しましょうというような計画を立てまして、そういった整備をすることによって、授業で1人1台で授業ができると、そういったような環境整備ができるというような計画の方をスタートさせたところでございまして、これは2022年度までの計画で達成したいと考えておりますので、そういった高校の授業の方にも、こういった財源を活用しながら導入していただければと思っております。
【小川分科会長】  吉田委員、どうぞ。
【吉田委員】  まず1点目の英語ですけれども、実際そう書いたとして、今教育課程課として、中学校から高校に向けて、特に高3に向けて英語で英語を教えるという部分が減っている原因はどういうふうに捉えていらっしゃるのか。それから、ICT化、今、3人に1台というお話ですけれど、それは私立学校も同様にやっていただけるのかどうか。相変わらず2分の1なのかどうか、そこも含めてお願いします。
【小川分科会長】  再度事務局の方、何かございますか、今の時点でお答えできる範囲で構いませんけど。
【淵上教育課程課長】  すいません。外国語教育につきましては、国際教育課と連携しながらやっておりますので、また内容を確認いたしまして、御報告をさせていただきたいと思います。
【安彦情報教育振興室長】  ICT環境整備の方ですが、私立の学校につきましても、今年度の私学助成の方で、公立学校の動向を踏まえて整備の方の補助金を拡充するという形での予算措置をしておりますが、補助率の方はこれまでどおりというような形になっております。
【吉田委員】  ということは、私立学校は半分は親に出させなくてはできないということですよね。公立はできるけど。
【安彦情報教育振興室長】  そういった形です。
【小川分科会長】  よろしいですか。では、この後、帯野委員、善本委員、天笠委員、荒瀬委員の順でお願いします。
【帯野委員】  今外国語教育のことで質問がありましたので、続けて私の方も外国語教育について、質問というよりは意見を申し上げたいと思います。今、文科省の掲げている中学校卒業段階で英検3級程度、50%という目標がいまだ達成されないという状況の中で、6割の子供が中学校の基礎を学ばずして高校に入学してくるわけです。ですから、このすばらしい指導要領も残り4割の子供に可能な教育であって、我々としては6割の子供をどうするかということを真剣に考えないといけないと思うのですね。
 私は今大学でリメディアル教育に少し力を入れているのですが、リメディアル、既に国立含めて700校のうち、30%、3割が実施しています。ほとんど品詞も分からないような、中学レベルの英語で脱落しているかわいそうな子供たちが多いわけですが、ここは大学に限らず、高校でも中学校の学びをもう一度おさらいするというリメディアルが必要なのではないかと思います。アクティブラーニングであるとか、あるいは、英語で英語を学ぶにしても、その目標に到達する第一歩として、高校でもリメディアル教育を真剣に考えた方がよいのではないかなというのが私の意見です。
 それからもう一つ、グローバル教育について、ちょうど地理・歴史、地理総合ですか、そこの国際理解・国際協力というところでグローバルと特出してございましたので、ざっと読んでみたのですが、様々なところに出てくる「生活文化の多様性」という表現。なぜ文化の前に生活と付いているのか、ちょっと分からなくて、また教えていただきたいと思います。生活文化というと、身近なところから世界の多様性を見るといったことをイメージさせますが、その視点はもう中学校でよいのではないかと思います。未だ半数近い、5割近い学生がそのまま社会に出るわけですので、高校では、もう少し論理的に、客観的に深く世界を学ぶ、高度な学びがあってもよいのではないかなと。例えば宗教でいうと、初等中等であれば、イスラムは豚は食べない、このような生活文化でよいと思うのですが、高校であれば、イスラム教の教義であるとか、その宗教が出来た社会的背景であるとか、文化であるとか、そういうところをしっかり教えなければ、世界が見えてこないのではないかと思います。
 そういう点で、歴史の方でも、地理総合の方でも、あまり宗教というものを捉えたところが見当たりません。例えばグローバル化と私たち、63ページですね、この中でもグローバル化の問いの中で、世界秩序の変遷、冷戦、アジアの植民地化が解消されて、冷戦終結して、そして世界秩序の変容というところに来るわけですが、宗教というのはありません。今の世界秩序の一番の問題は民族と宗教です。民族と宗教を見ずして世界は語れないし、そこをスキップしてしまうと世界と真剣に向き合ってないということになります。グローバル教育が生まれたのが2010年頃とすれば、この指導要領が実際の高校で使われる2020年、その10年の間で世界は随分変わりました。やはりここでもう一度現実的に世界を見るというところで、宗教。宗教を教えるということは信仰にいざなうということではなくて、その文化的背景を知るために必要なことではあると思いますし、同時に、グローバル人材としての教養の基礎・基本として大切なことであると思いますので、もう一度そこのところを考えていただけたらというお願いです。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございました。文部科学省に対する要望等も幾つか意見の中に入っていましたけれども、もう少し御意見を伺った上で、一括してお答えいただける範囲でお答えいただくというふうにしたいと思います。
 善本委員、どうぞ。
【善本委員】  ありがとうございます。大変な御苦労を頂いて大改訂を頂いたことと思います。その中でも先ほど御説明があったように、最も大きな劇的な改訂があった教科の1つが国語だと思います。先ほど御説明いただいた中でも、資料1-2を拝見しておりますと、国語の説明というのは、国語科の科目構成というふうになっていまして、全く新しくできる6つの科目についてそれぞれ簡単にこういう科目であると書いてあって、例が幾つか挙げられているという資料になっています。それと比べると、ほかの、例えば地歴、公民であるとか、外国語、英語であるとかは、今何が課題になっていて、そしてどのような能力を目指すために、それぞれの教科全体としてどのような改訂されたかという理念の部分がきちんと書き込まれているのですが、率直に申し上げて、国語は6つの科目の中身を並べただけで、その部分が、先ほど御説明の中にもありましたよね、論述とか議論の部分が弱いとか、言語文化の観点からの古典学習ができていないので興味が引けていないというような、そういったお話が今口頭では御説明があったのですけれども、実は、私は現場の立場で申し上げると、この国語の改訂を実施していくのに現場はものすごく苦労するだろうと思っているのです。私はもともと国語の教師でしたので、先ほど御説明があったような国語の教科の課題も十分理解しているつもりですけれども、これをきちんと、現場で目指しているものを実施していくためには、なぜこの改訂が必要であったかについての説明がもう少し丁寧になされないと、一読して分かるとおり、ほかの教科と比べて、この資料からはそれが非常に読み取りづらくなっていると思います。
 ですので、学校の立場では、今、私どもの学校でも新カリに向けて議論をしているのですけれども、どのような配置をしていって、このコンセプトにのっとって3年間どう国語教育を大きく変えていくかということを非常に苦労しています。それを全ての高校の現場に理解させるために、もう少し資料に工夫が今後必要ではないかなと思いますので、要望したいと思います。
【小川分科会長】  ありがとうございました。今の件も後で文科省の方の御見解を伺いたいと思います。では、天笠委員、どうぞ。
【天笠委員】  失礼いたします。2つ申し上げたいと思います。まず1つ目、資料1-1についてなのですけれども、これはこの枠組みというか、このパターンというのは、小学校以来、小学校、中学校等々のときも大体このスタイルでお示しいただいたのではないかと思うのですけれども、小中高というふうに比較してみた場合に、今回の高等学校としてのこの資料というのが、学校種別に見るとこれが一番高等学校のときに必要な、また重要なのではないかなと受け止めさせていただきました。
 それはどういうことかといいますと、言語能力の確実な育成以下、職業教育の充実、それから主権者教育云々とか、それぞれ並んでいるわけですけれども、これから高等学校の各学校にお願いすることの1つは、ここに示されている、これを柱にして、これにどう向き合っていただきますかというふうな、そういう問いとして、この柱にそれぞれ意味を持たせるようにしていくというのも1つの在り方ではないか。要するに、言語活動の能力の確実な育成についてはうちの学校はかくかくしかじかですよとか、理数教育についてはうちの学校はこう対応していますよ、対応しようとしていますよ。以下、そういうことについての学校の説明のときにこれが意味持ってくるのではないかということなのです。
 基本的にはこういう記されているようなスタイルでいいのかな。どういうスタイルかというと、例えば言語活動の能力については、「各教科等」とか、あるいは理数教育については云々とかって、それぞれここに教科のそれぞれが散りばめられていくという、こういうスタイルをとっているということが大切なのではないか。とりわけ高等学校においてはそのことが求められているのではないかというふうな、その課題認識の共有というのでしょうか。
 既に何となく、先ほどの御説明以来、感じていることも1つあるのですけれども、教育課程の話ではなくて教科の話になっちゃっているというのが、とりわけ小中高になれば、学校種からいくとそうならざるを得ないことも含めて、ということで、それを公共という教科で説明するのか、教育課程で説明していただくのかどうなのかというようなことになったときは、高等学校の学校とか先生方の立場からすると、教科で語っていただいた方が、それは中身的なことを含めて発信される、それもあるというのはよく分かるのですけれども、それぞれの教科がそれぞれ、言語能力なら言語能力云々とか、主権者教育なら主権者教育でそれに関わっていくのだとか、というふうな、いうならばこの資料1-2のこの教科の構成等々というのは、この学習指導要領の改訂の話が出てきたスタートの時点での1つのたたき台として出てきた。それがようやくここに来てこういう成案を得たということだと思うのですけれども、その成案を得たというのはどういうことかというと、高等学校における教科の構成をこうなさりたいのだというふうなことというのは出ていたと思うのですけれども、その当時から出てきたのは、教科は教科としてそういう工夫は大いにありだと思うのですけれども、教育課程として高等学校のそれのところに視点とか、そのところにどれほど実質化できるかどうかということが問いなのではないかという意味において、当初からの課題は今もって課題であると思いますし、また、この先も課題になり得るのではないかと思うのですけれども、教科ごとで事柄を対応するということよりも、教育課程として懸案、課題に応じる対応をするという、こういう方向性、こういうスタイルというのでしょうか、ということをどう高等学校のそれぞれの学校に受け止めていただいて、具体化していただくかという、そこのところが課題であって、そこのところがどれほど応答できるかどうか、受け止めていただくかどうかって、今回の改訂の帰趨を決すると言っても、やや大げさかもしれませんけれども、大きなポイントになってくるのではないかと思います。
 ですから、教科ごとで、教科ごとの枠の中で議論を始めちゃうという、そういうときには、やっぱり教育課程に引き戻していただいて、教育課程としてどう向き合っていただくかどうかというところの方向に、是非、具体を含めて方向性を示していただくということをお願いしたいなと思います。これがまず1点であります。
 もう一つは、その趣旨の徹底に当たって、どういうスケジュール感、あるいはどういう具体的なやり方をお持ちなのかということですけれども、1つだけ具体を申し上げますと、解説書の作成と、それから、そのプロセスをどういうふうに考えられているのかどうなのか。高等学校はまだ、今この状態、現在の段階ですけれども、私は小中学校の現状を見たときに、伝え方について、もう既に出てから1年以上経過するのですけれども、どうなのだろうと思うことを時々感じるときがあります。例えば解説書が現場に果たして届いているというふうにとられるのかどうなのか。確かにダウンロードしてもらえれば、それで伝えていますよという言い方も1つかもしれませんけれども、紙媒体の解説書というのがそれぞれ届くような環境に今あるのかどうなのか。しかも、1年以上経過しているというような、そういう状況からしたときに、そこら辺どうなのか。併せて、高等学校のその種のこれからの伝え方ということについて、どうぞいろいろと御検討いただければと思います。
 その上で最後になりますけれども、高等学校としてこういうふうにまとまったわけですので、改めて小中高一体としてこの趣旨の具体化ということをお願いしたいと思って、高等学校だけを切り離してこの話を進めるのではなくて、小学校、中学校を常に一緒に連動させてお話を進めていただきたいということをお願いしたいと思います。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございました。ここで一旦切っていただいて、今までの帯野委員、善本委員、天笠委員の発言の中に文科省に対する御要望等々もありましたので、お答えできる範囲でよろしくお願いいたします。
【淵上教育課程課長】  ありがとうございます。まず総論としまして御要望を踏まえてしっかりと対応いたします。その上で、まず帯野先生から外国語についてのリメディアルの必要性のお話がございました。今回、先ほど簡単にちょっと触れましたけれども、中学校教育との接続という観点を重視してございます。総則で申し上げますと、15ページの方に、今回、学校段階間。資料1-3の○1の15ページになります。学校段階等間の接続ということで、中学校からの学びの連続性と、また必要がある場合には、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図るようにするというふうな規定を設けてございまして、学びについてしっかり子供の実情に応じて補助しながら次の段階に進んでいけるような、こういうふうな取組を進めていく必要があると考えてございます。
 それから、2点目のグローバル化の中での地歴科の生活文化のお話がございました。これは具体的には、今の資料の48ページ以降にございます。新しい必履修科目であります「地理総合」につきましては、様々な地理情報システムへの扱い方などを学んだ上で、自然環境、あるいは人文的な環境の地理的な環境がどのように人々の生活文化に影響を与えて、世界の中でどのような多様性が図られているのかということを学んだ上で、更に多様な生活文化をバックボーンとする人たちがどのように地球的課題に向かっていくのかと、このような構造にしてございます。
 その中の生活文化という表現につきましては、中学校でも生活文化を取り扱うわけでございますが、中学校ではどちらかといいますと衣食住を中心としました事実認識レベルの指導を中心に行います。高等学校になりますと、今帯野委員がおっしゃいましたように、慣習ですとか、特定の文化も含む、そういう生活や文化を学んでいくということで、多文化理解や、それを尊重するような態度を含めて、単なる事実認識にとどまらずに、深みを持って学んでいくということにしてございます。
 加えて、宗教的な問題についても、幾つかの場所で少し盛り込んでいるところでございますが、例えば歴史総合の65ページを御覧いただきますと、歴史総合でA、B、C、Dと学んでいくわけでございますけれども、3番の「内容の取扱い」の(1)のウというところがございます。この内容の取扱いの(1)のウは、時代区分を問わず、近現代全般に関してかかっていくところでございますけれども、「近現代の歴史と現代的な諸課題との関わりを考察する際には、政治、経済、社会、文化、宗教、生活などの観点から諸事象を取り上げ」て見ていくというふうなことにしてございます。
 また、例えば68ページを御覧いただきますと、上の方に主題について、(4)については、1つあるいは複数の観点について取り上げて、主題を設定して学んでいくわけでございますが、その主題を設定をした上で、自由・制限ですとか、平等・格差、開発・保全、統合・分化、対立・協調などの観点からそのテーマは一体どのように考えていったらいいのだろうかと。こういうことを複眼的に学ぶことにしてございますけれども、その中の対立・協調などの背景としては、当然宗教的なものも出てくると。こういうふうな扱いになっていきますので、御指摘いただいたようなことも含めて、今回の新学習指導要領の中でも、そういう視点も含めて学んでいけるようにしているというところでございます。更に、その内容の説明は十分にしてまいりたいと思います。
 それから、善本委員から国語科についての資料の説明が不十分だという御指摘がございました。おっしゃるとおりだと思いますので、しっかりこれから説明する際の資料の作り方、説明の仕方で工夫をしてまいりたいと思います。
 資料1-2の2枚目で簡単に構造を御説明いたしますと、先ほど申し上げました、現代の国語と言語文化というのは、先ほど申し上げましたような問題意識で必履修科目として構成をしてございます。この上に更に国語の持っております大きく3つの機能と言われる部分がございます。1つには、思考の基盤となるということ。もう一つには、感性や情緒の基盤となるということ。またもう一つには、コミュニケーションの基盤となると。こういう国語の持っている本質的な機能があるというふうに中教審で整理をしていただきましたので、この機能に即しまして、一つ一つの科目を構成をして、「論理国語」、「文学国語」、「国語表現」という、こういう科目を構成してございます。更に、「言語文化」から発展する科目といたしまして、「古典探究」というものの4つの構成になっているということでございますので、今申し上げましたような理念的なことを含めまして、しっかり資料と共に説明ができるような工夫をしてまいりたいと思います。
 また、天笠委員から御指摘がございました1点目の、教科の説明なのか、教育課程の説明かということでございます。学習指導要領そのものは基本的には教科をベースにどのようなことを学んでいくのかということで設計をしてございますけれども、併せまして、教科横断的にどのようなことを学んでいくのかというふうなことも設けてございます。御指摘いただきましたようなことは、カリキュラム・マネジメントとして各学校でしっかり意識しなから取り組んでいけるような工夫も今回盛り込んでいるところでございますので、そのあたりもしっかり御説明を申し上げたいと思います。
 また、趣旨の徹底ということでございますが、高等学校学習指導要領の解説につきましては、-小中学校の解説につきましては、非常に発行が遅れましたけれども、昨年度内、2月、3月にかけて発行をさせていただいたところでございますが-7月に中央説明会を予定してございますので、そこに間に合うべく、準備作業を今進めているというところでございます。できるだけスムーズに各学校、各地域にまで解説が届くような工夫も併せて考えてまいりたいと思います。
 また、小中高、これで全てが出そろいましたので、今回の学習指導要領が全体としてどのようなことを目指しているのか。小学校、中学校、高等学校、連続の中でどのような力を子供たちに付けようとしているのかということを丁寧に説明をしてまいりたいと思っています。
【小川分科会長】  ありがとうございました。時間が予定よりもちょっとオーバーしているのですが、重要なテーマですので、今名札の上がっている、5名の方の発言は受けたいと思います。順番ですけれども、荒瀬委員、寺本委員、竹中委員、八並委員、そして最後、吉田委員という順でお願いします。時間も限られていますので、発言の際、御留意いただければと思います。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。今のお話を聞いていまして、ちょっと感想のようなことになって大変申し訳ありませんが、前回でしたか、この初中分科会で幼稚園の指導要録について資料を出していただいて御説明いただいたと思うのですけれども、あそこを読んで、大変感銘を受けまして、それで、幼稚園教育要領を読みました。読みましたと今言っているのは大変恥ずかしいのでありますが、読みました。
 それで驚きましたのは、今回の学習指導要領改訂が幼稚園教育要領から高等学校の学習指導要領まで一貫して目指すべき姿というのが極めて明確に描かれていると。先日幼稚園教育要領で最終段階でどんな姿を目指しているかというのを高等学校の先生方に御覧いただきまして、「これ、どこの指導要領だと思いますか」とお尋ねしても、「幼稚園」とすっと出てこないぐらい、幼稚園教育要領の目指すものというのは非常に高く描かれているわけです。ですから、ずっと幼稚園から始まって、高等学校卒業段階までにどんな姿を描くのかというのは、それはさっき天笠先生がおっしゃいました教科なのか、教育課程なのかということで、教育課程であるということがはっきり言えるわけだと思います。
 今回特に新たに付けられた前文、今日頂きました資料では資料1-3の○1の1ページの真ん中あたりに教育課程の定義が明快に示されていると思っております。この中で、ちょっと時間の関係で申し訳ないのですけれども、「一人一人の生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに」と。一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識するというのは、これは中教審の議論の中でも自己肯定感の低さということに対する様々な形で懸念が出されていたわけですが、それに対してどう応えていくのかということを教育課程としてしっかり考えていきましょうということを言っていて、その最後の部分には、「各学校において教育の内容等を組織的かつ計画的に組み立てた教育課程」なのだということで、各学校がしっかりと生徒の現状を把握して、それに基づいてどんな卒業時点での姿を描くのかという、そこにつながっていかなければだめなのだということを言っているわけでありまして、これは本当によく読んでいくということが、これから現場はもちろんのこと、教育委員会にも求められていくのだろうということを思う次第です。
 それに関わって、さっき帯野委員もリメディアル教育ということについておっしゃいましたけれども、ここに書かれている、一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識するためには何が必要かというと、やっぱりこれ、基礎学力をきちっと付けていくということだと思うのですね。ところが、今現在付いていない状態で、しかしながら、先生が、これはあえて申し上げますが、先生が何を教えるのかという姿勢は、まだやっぱりなかなかぬぐい切れないといいますか、そういう姿勢で動いている。先生が、という視点は大事なのですけれども、その先生が、の先に生徒が何を学んでどのような力を付けるのかというのがもっとはっきりと表れてこなければだめだと思うのですね。それを具体化していきましょうという手だての1つを今回は講じられて、高校生のための学びの基礎診断というのが具体的に動こうとしています。
 そういった様々な取組でありますとか、あるいは、教育課程そのものをどうしていくのかというようなことについて具体的に今後広報していただく、説明会をやっていただくとか、あるいは、各県の教育委員会に言っていただくとかいうときに、是非重視をしていただきたいと思います。
 それともう一つ、今回、いっぱい書いていただいているのですけれども、今後解説とかでどうなっていくのかというのは非常に注目しておりますのがキャリア教育という言葉であります。キャリア教育というのは随分古くから使われておりまして、若干いろいろな幅のある理解がされていますけれども、一人一人の生徒が自分のよさや可能性を認識して、よりよく生きていって、社会の構成員として自分の責任を果たしていくということを考えたときには、キャリア教育というのは非常に重要だと思うのですね。改めて、キャリア教育というものも、教育課程を各学校が作っていく上で重視していくのだということを是非強く様々な形でおっしゃっていただきたいと思います。
 もう一度言いますが、そのときにも、学びの基礎診断は大変重要な役割を果たすということを確信しておりますので、是非その点も併せてよろしくお願いします。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございます。寺本委員、どうぞ。
【寺本委員】  寺本です。先ほど、私が申し上げたいところのポイント、天笠委員がおっしゃっていただいた、しっかりと広報を、ということですが、おっしゃるとおり、中学校、小学校のときの出す時点でもしっかりとしたPR、広報をお願いして、文科省としてもやっていきたいというお話がありました。これは高校についても、より強力にしっかりやっていかないと、実は受け手の方が、小中学校に比べるとあまりアンテナが高くなくなってしまっている保護者が多いのですね。そうすると、学校関係者が一生懸命やっても、なかなかアンテナが高くなくなってしまっているところに伝えようとすると、小中学校と同じレベルの広報量では足らないということになりますので、この点は御留意を頂いて、しっかりと広報をしていただきたいというのと、先ほど荒瀬委員からお話があったとおり、幼稚園から小中、高校、大学に至るまで、一貫した中身を理解をまずしていただいた上で、高校はこの部分をこうして取り扱っていきますという理解をしていただかないと、実は往々にして、入試があるからとか、制度が変わったからとかという言葉が先に出てしまうのですね。そのためにやっているわけではないので、入試やアジャストするために学校の教育があるわけではなくて、もともとあるのは、学習指導要領が目指すべき子供、また大人に向かっていく、この流れがあるということを、どうしても薄まったり、忘れられがちなっていくので、口酸っぱく言いますけども、しっかりとした広報をお願いしたいと思っています。
 それから、その広報に当たり、どうしても学校現場の、校長先生はじめ、先生方が担う役割が大きくなってくると思います。なかなか教育委員会さんも、PRの冊子だとか、いろいろなものをお出し頂いたりして、文科省さんのデータを基にした活動をしていただいてはいますが、やはり身近なところにいる学校現場、校長先生はじめ、教職員の皆様方の役割も非常に大きくなると思いますので、それが今言われている多忙化解消とは逆行しないようなことも併せて、一生懸命御協力いただける体制を構築いただけたらありがたいと思います。
 もう一つ、部活動のことが非常にさらっと書いてあります。社会教育関係団体との連携による持続可能な運営体制というふうに書いてありますが、総則を見ていくと、確かに書いてあります。その中に、地域の人々の協力、そして社会教育施設や社会教育関係団体との連携と書いておりますが、実は部活はもちろんこういった関係との協力は大事なのですが、通常の教育課程の中においても、地域との協力ということがないと、教育課程外のところだけお願いしてもなかなか難しいということがあるものですから、日常的な地域の方々もしくは社会教育関係の方々との協力を築いていく、もしくは、それぞれを念頭に置いた動きをしていくということをしていくような体制作りを学校現場にいろいろと御示唆を頂けたらありがたいと思っています。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございます。竹中委員、どうぞ。
【竹中委員】  ありがとうございます。私は自分がしている活動から、1-1の3枚目のところの最後の、子供たちの発達の支援の中の、通級による指導における個別の指導計画の全員作成というところに目が留まりましたので、これについて発言させてください。
 障害のある子供たちのお母さんたちからよく聞く悩みが、義務教育の間は地域の学校へ兄弟と一緒に行ったり、その子が単独でも行けたのだけれども、高校になると特別支援学校の方へ行かなければならないというような悩みをよく聞いておりましたけれども、本年度からは高校でも通級が可能になったということで、私はすごくこの全体の中でも大きなヒットなのかなと今思いながら拝見しました。ただ、これを実施するに当たっては、教員の配置だとか、自治体の協力とか、様々なものが欠かせないと思うのですね。実際にはどのようにそれを広げていかれるかとか、そういうことに関しての先進的な事例があったりしたら、それを教えていただけたらうれしいなと思います。よろしくお願いします。
【小川分科会長】  ありがとうございます。八並委員、どうぞ。
【八並委員】  今回の学習指導要領もそうですが、現行においても理数教育の充実ということが踏襲されています。今回、高校の理数で、「理数探究基礎」と「理数探究」が新設されています。この基本的な考え方で、探求の過程を通して課題を解決するために必要な資質・能力を育成する、となっています。これは子供の側にとってはいいですが、教える側はどうか、ということです。これを達成しようと思うと、教える側がそういった経験、知識、スキルがないと難しいと思います。端的に言えば、最低限修士課程の専修免許取得が必要ではないでしょうか。修士課程の中でアカデミックな研究経験をしておかなければ、おそらく子どもたちにこれをやろうといったときに、非常に難しいのではないでしょうか。
 そういう意味では、学習指導要領の内容だけでなく、実際に展開していくときに、現場の教員の資質能力をどのように担保するのか。例えば、教職大学院も全国の国立大学にできています。私がいる東京理科大の研究科は理数教育に特化して、専修免許状を取得して現場に出ていっています。学習指導要領の内容と、現場の教員の資質能力が同期しないと、斬新でよい教育内容を教えようと思っても、実現は難しいのではないでしょうか。やはり大学院教育を受けた教員がある程度リードティーチャーになって、カリキュラムを運用していくなど工夫が必要だと思います。また、理数教員の養成も、今回の学習指導要領と連動させていかないと理数教育の充実は、バランスを欠くのではと思っています。これは僕の意見です。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございました。最後、吉田委員、よろしくお願いします。
【吉田委員】  時間がないところ申し訳ございません。今気が付いたのですけれども、資料1-3の○1の方の15ページの一番下に「通信制の課程における教育課程の特例」というのが出ていたので、私、これが一緒になっているのを気が付いていませんで失礼をしたのですけれども、例の三重県の方の学校の問題で、通信制課程というものが非常に問題が大きいということで、かなりその内容的なものもしっかりと文科省として確認していくというお話だったと思うのですが、今回のこの改訂に伴って、単位数その他がかなり変わったのかどうか。それから、例えば16ページの下にあります、テレビ放送とかで、その成果が満足できると認められるときは、その各教科・科目の面接指導の時間数又は特別活動の時間数のうち、10分の6以内の時間数を免除することができるとか、メディアによるものも10分の6できるとか、トータルで10分の8だと。それから、ホームルームについては30単位が指導すべきだけど、特別な事情がある場合にはホームルーム活動及び生徒会活動の内容の一部を行わないものとすることができると。これははっきり言ってやらなくていいよという形になるのかどうか。そして、そういう中で、通信制課程で私がいまだに理解できていませんのは、通信制課程、通学制というのが今たくさんできています。そういうのとこういう教育課程というのはどういう関係になるのか、教えていただければと思って、それだけ最後付け加えさせていただきました。
【小川分科会長】  委員からいろいろ御質問が出ていますけれども、全てに丁寧にお答えしていただくには時間があまりありませんので、今頂いた意見について、後で御質問頂いた委員の方にお答えいただくということも含めて、時間、数分しかないので、その範囲でお答えできるものがございましたら、事務局の方でお願いしたいのですけれども、よろしいでしょうか。
【淵上教育課程課長】  では、簡潔に。荒瀬委員から、幼稚園からの一体としての教育課程のお話を頂きました。先ほど小学校からと申し上げましたが、幼稚園から小中高と一貫した教育課程に今回してございますので十分説明をしてまいりたいと思います。併せて、キャリア教育ですとか、学びの基礎診断についても十分併せる形で周知徹底してまいります。
 それから、寺本委員から、広報についてのお話をいただきました。十分受け止めさせていただきまして、説明に遺漏がないようにしてまいりたいと思います。文科省としても、学校の先生方に十分御理解いただけるような学習指導要領の解説動画を教職員支援機構の協力なども得ながら、配信していただくような工夫もしてございますので、そういう発信も併せて更に強めてまいりたいと思います。
 それから、八並先生から理数探究のお話ございました。これはもともとSSH校での先行事例などもございますので、そういう先行事例などの情報提供も丁寧にさせていただきたいと思いますし、また、各地域によりましては、先生方のみならず、大学の先生、あるいは、大学院生などの協力も得ながら、地域の方々の様々な資源を一体としてやっているというふうな工夫もございますので、そういうふうなこともやってまいりたいと思いますし、特に理数探究基礎につきましては、教科書を作っていただくことを念頭に置いておりますので、こういう工夫もしながら行えるようにしてまいりたいと思います。
 通信制課程のお話は、また少し担当の方からも詳しく御説明をさせていただきたいと思いますが、昨年までの事案も踏まえて、今回の学習指導要領の中では幾つかの内容面の強化を図っているところでございますので、また併せて御説明させていただければと思います。
 以上でございます。
【小川分科会長】  時間がありませんので、そういう処理の仕方をさせていただきたいと思います。特に吉田委員と竹中委員から出された御質問等々については、また事務局の方で委員の方に直接御回答をよろしくお願いいたします。
 あと2つ重要な議題が残されていますので、まだまだ委員の方から学習指導要領に関わっての御発言、御要望あるかと思いますけれども、一旦ここで切らせていただきまして、次の議題に移らせていただければと思います。次の議題は、「SNS等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)について」です。松林生徒指導室長の方から御説明をお願いいたします。
【松林生徒指導室長】  児童生徒課の松林でございます。お手元の資料2-1、資料2-2を御覧いただければと思います。最終報告の本体が資料2-2でございますが、今回は資料2-1を中心に御説明したいと思ってございます。
 背景でございますが、実は最近の子供たちはほとんど有線通話、音声通話を使わない。メールもしないと。ほとんどSNSをコミュニケーション手段として使っていると。また先般座間において、SNSで助けを求めて、結果として悪い男性につかまりまして殺害された残忍な事件も発生してございます。あと、いわゆるSNS上のいじめも大きな問題となってございます。
 そういうことから、文科省の方で有識者会議におきまして、SNS等を活用した相談体制の構築について議論を重ねてまいりまして、先般の3月28日に最終報告を取りまとめたところでございます。
 2番、最終報告の概要でございます。この報告書は、基本的に30年以降、今年以降、各地方公共団体、あるいは教育委員会が実際にSNS等を活用して行う相談についての留意点を示して、今後全国展開を図っていくという性質のものでございます。
 (2)相談体制の在り方でございます。相談の対象者につきましては、まずはSNS等を用いた相談技法というのは、現在のところ、まだ十分に確立されていないことを踏まえまして、将来的には保護者からの相談も受け付けることが考えられますが、現時点においては子供たちからの相談を受け付けることが考えられるとしてございます。
 それから、相談受付時間でございます。今、文科省で、ほかにも、スクールカウンセラーを充実させたりとか、あるいは24時間子供SOSダイヤル、これは24時間365日やってございます。一方でSNS等の相談体制につきましては、まだリソースが十分でないということもございまして、24時間365日が理想でございますが、現段階では子供が相談しやすい平日の夕方、あるいは気持ちが落ち込みやすい長期休業明け前等々、あるいは日曜日等々が考えられるということを示してございます。
 続きまして、SNS相談のメリットは、気楽に相談できる、敷居が低いということでございますが、一方で、子供の表情とか、口調とか、そういうことが全く分からない。男性か女性かも分からないということがございますので、音声通話による状況確認が必要なときには、相談者の理解、了解を得て音声通話や面接の相談につなげるということが考えられるということでございます。
 それから、相談員の体制。今の教育相談担当の方、ベテランの方というのは、やっぱり対面の面接に慣れている方が多くいらっしゃいまして、なかなかSNS等に慣れていらっしゃらない方が多いので、こういうベテランの方と大学生等の若年層、SNS等についてよく分かるといった方がペアで相談に当たれば好ましいということを示してございます。
 それから、プライバシーを確実に守りますということ。子供から来た相談は、子供の了解なしに、教育委員会、学校現場を含めまして無断で下ろすことはしないことにしてございますが、ただ、命に関わる等の緊急時につきましては、学校、児童相談所、警察等に情報提供するということがあり得るということは示すということでございます。
 それから、1枚おめくりいただいて(3)でございます。相談者が自殺をほのめかす等の緊急の場合、こちらについては、とにかく早く音声通話による相談へ切り換えを図るとともに、可能な限り、氏名や所在地を聞き出しまして、場合によっては学校、警察にも深夜でも連絡しまして、所在確認をするということが考えられると思ってございます。
 それから、時間外に相談が来た場合には、自動応答機能や利用案内等で分かりやすく、今、時間外ですということを示すと。
 それから、同時に複数の相談が来る場合もございます。電話と違いまして、SNSは話し中という概念がございませんので、同時に一方的に多数の相談が来ることがございますので、そういう場合はすぐ対応できないことがありますということを実際に周知したり、あるいは、緊急の場合は電話相談の方にしてほしいということを自動応答機能等で分かりやすく示すということにしてございます。
 それから、ほかの自治体の子供から来た場合は、緊急時を除きまして、24時間子供SOSダイヤル等を紹介することが考えられると書いてございます。
 (4)相談システムでございます。SNS等のアプリの選定でございますが、SNS等はいろいろございますが、特に文科省としてはこれというのを指定しておらず、児童・生徒への普及の度合い、あるいは、実現可能性、子供の活用しやすさ等を踏まえて、それぞれの自治体等で適切に選んでくださいということをお願いしてございます。
 それから、いじめを見ました、あるいは友達がいじめに悩んでいますということを一方向でスマホのアプリを使って通報するという仕組みも、これはこれで十分効果があるのではないかと考えてございます。
 (5)は民間団体等の連携・協力でございます。教育現場と民間団体、相談事業者、あるいはSNS等の事業者、こうした関係者間の連携・協力が一番大事だと考えてございます。
 それから、(6)につきましては、情報管理の徹底。それから、SNSというのは情報発信にも使えますよと。それから、スマートフォンを持たない子供に対する適切な配慮を行うべきである等といったことの留意点が記載されてございます。
 資料には書いてございませんが、現在の状況を申し上げますと、29年度の補正予算と30年度の当初予算で2億5,000万円の予算措置を講じていただきまして、既に全国27の自治体、具体的には18の都道府県、それから、6の政令指定都市、それから、3つのその他の市におきまして、既に30年度にSNS等を活用した相談を開始することが決定してございます。文科省としましては、ノウハウを蓄積した上で横展開してまいりまして、全国の子供たちが、スクールカウンセラーでも、あるいは電話相談でも、あるいはSNS等でも、本当にいろいろなツールで全国の子供が気軽に相談できる体制をできるだけ整備してまいりたいと考えてございますので、引き続き先生方の御指導をお願いします。
 以上でございます。
【小川分科会長】  ありがとうございました。今の事務局からの説明について、何か御質問、御要望等々がございましたら、よろしくお願いします。米田委員、お願いいたします。
【米田委員】  1つ御質問なのですが、おとといの新聞に自殺相談SNSに関する大きな見出しで記事が出ておりました。その調査の結果、都道府県関係では、22の自治体が、今やっている、あるいはこれからやる予定だというような記事が出ていました。
 実は教育委員会の方と知事部局と一緒に調査していて、多分教育委員会も含むというふうなことで出ていた数字なので、実際、私、秋田県の方で、教育委員会の担当の方に、どうなっているか聞いたら、教育委員会の方では2月に1回調べに来たときに、市町村等に調査かけたら、希望はなかったと。部局の方でどうもやるというふうなことで、自治体の中の1つに秋田県も入っていたようなのですが、基本的にSNS利用であれば、むしろ若者、あるいは高校生も含むというふうなこと。それから、いじめと自殺というのは結構関連がありますので、その辺、部局も教育委員会も関係なく一体化して本来やるべきものかなと思ったのですが、私、それで部局の方の動きを見て、一緒にやるところは一緒にやっていきましょうというふうな話はしているのですけれども、その辺、どういうふうにしてこの後やっていけばいいのかなと思って、教えていただければありがたいです。
【小川分科会長】  松林室長でよろしいですか。よろしくお願いします。
【松林生徒指導室長】  御指摘の記事、私も読んでおりまして、あの数字は今私が申し上げた数字より多いのですが、今私が申し上げた27の自治体というのは、文科省の補助金を使うことになっている自治体でございまして、それ以外にも、知事部局等が行っているケースもあるのではないかと考えています。文科省の補助事業の方は、教育委員会ではなくて、自治体の首長部局の方で実施する場合も、申請いただければ、要件に入ってございますので、来年度以降、教育委員会でも、首長部局でも、あるいは合同でもいいので、もしまた補助事業を実施するということになれば、ご申請頂ければ幸いであると考えてございます。
【小川分科会長】  米田委員、よろしいですか。
【米田委員】  はい。
【小川分科会長】  この後、清原委員、堀田委員、八並委員、そして伊藤委員の順でお願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原です。私は内閣府に設置されております「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」の構成員を務めておりまして、これは内閣府に設置されていますが、警察庁、そして文部科学省、総務省、経済産業省、法務省、厚生労働省等が、議員立法に基づき、健全なインターネットの利用環境整備に対して具体的に取り組んでいる組織です。本日、文部科学省におかれまして、大変重要なテーマであります「SNS等を活用した相談体制の構築」について最終報告をまとめていただいたということで、心強く思っています。
 何よりも青少年がインターネットを活用することによって、犯罪の被害者にも加害者にもなってはいけないわけですが、実際に内閣府が実施した『平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査』では、何と16歳になると女性では93%以上、男性でも90%近くスマートフォンを所有しているということと、用途が、小学生はゲームが1位だったのが、中学生、高校生になるとコミュニケーションとしての用途が8割、9割以上で、しかも今御説明ありましたように、声によるコミュニケーションではなくて、文字による瞬時のコミュニケーションが主であるということと、座間市における事件、すなわちSNSを利用して被害者を誘い出したと見られる殺人死体遺棄事件の発生を受けて、大変大きな動きがあったと思います。
 そこで、具体的な自治体の現場から幾つか課題を申し上げたいと思います。まず第一義的に、先ほどの高校の教育課程でも紹介されました「情報モラル教育」というのはまず不可欠であると思います。三鷹市でも臨時委員をお務めの奈須先生に御指導いただきながら、この3月に『三鷹市小・中一貫教育のカリキュラム』の暫定版をまとめましたが、小学校1年生から中学校3年生までの系統的な「情報モラル教育」を明示しているところです。
 これは第一義的な取組だと思うのですが、併せて、保護者に対する啓発も必要ですので、市独自のリーフレット、『ネット社会を生きる力を育むために』とか、いろいろな取組をしていて、秋田県でも同様な取組を先駆的にしていただいています。
 しかしながら、それでもいろいろな事例が、いじめや、あるいは児童ポルノ等の状況を起こしているので、課題として、最終報告書に沿って4点申し上げたいと思います。
 1点目は、「SNSを活用した相談体制の整備」については、児童・生徒のカウンセリング機能や自殺防止、いじめの早期発見に効果はあると考えますが、受付時間に係る組織体制の構築などは、どうしても時間対応の課題があると思います。例えば日曜日や午後5時から午後10時の時間帯は大変このようなSNSの相談時間帯として有効だと思うのですけれども、一方で学校における働き方改革というのを進めている初等中等教育分科会の一員としては、時間的な対応の現実性と、それから人員の対応をどうしたらよいかというのが最初の課題だと思います。
 2点目には、「相談員の確保」に係る課題です。先ほど相談力のある方と、それからSNSにたけた方とペアで相談をするということが有効ではないかというお話がありましたが、SNSにたけている子供たちに適切な支援をSNSを使ってするためには、相談員の力量というのは非常に多元的なものがあると思います。一方でカウンセリング能力は極めて重要だと思いますし、短い言葉で適切に支援できるための能力の育成についてはどうしたらいいのかということが課題だと思います。
 3点目に、「相談件数が増大」することが見込まれます。相談者のプライバシーを保護しつつ、重大事態を守るためにはどのようにしたらいいかというときに、このような仕事は指導主事の皆様はたけていらっしゃるとは思うのですが、しかし、第三者的な相談員がすることが有効であるかもしれません。相談件数の増大を見越したどのような組織が望ましいのかということについて、更に最終報告書の先の検討をしていただければ心強いと思います。
 4点目に、御提案なのですが、三鷹市のような小さな自治体ではなかなかSNSを活用した相談まで対応ができないのが事実で、都道府県、あるいは政令市等でまず先行的に進めていただいたのはありがたいことだと思っています。しかし、例えば通年では無理でも、一定時期、長期休業明け前とか、入試時期の前後であるとか、そうしたときに少し強力なPRをしながらSNSを使った相談体制を充実していくということを、例えば都道府県と市区町村が連携しながら事例を持っていくということが未来に向けては有効ではないかなと思います。
 当初とてもすぐれた取組だなと思いながら、人員体制の問題やら、専門性の問題やら、戸惑っている自治体の1つ、三鷹市ではございますけれども、でも、一歩が踏み出されたわけで、文部科学省の補助事業等を活用した事例を共有していただき、前へ進むことができたらなと思いますし、少しでも犯罪が予防され、尊い命が守られればありがたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【小川分科会長】  ありがとうございました。堀田委員、よろしくお願いします。
【堀田委員】  堀田でございます。いじめられて困っているけど、人になかなか相談しにくい、特に身近な人にはできないというような、そういうお子さんたちに対してSNSで相談を行うというのは非常に望ましいことかなと感じております。
 一方で、座間の事件のみならず、中高で起こっているいろいろな大小の生徒指導事案では、いじめているとか、いじめられているとか、あるいは無意識だとかいう、そういう関係を、SNSなどの情報技術が増幅してしまっているということが多いように思います。したがって、心の教育のみならず、情報技術がこういうことを起こすのだよとか、ネットワークを介した文字のコミュニケーションってこういうことがよく起こるのだよみたいな、情報技術に関するある意味の知識がきちんとないがために、そのままエスカレートしてしまっている。場合によってはよかれと思ってそういうふうに広げてしまっているみたいなこともあるかなと思います。
 ちょうど先ほどの高等学校の学習指導要領でも、情報に関する学びが必修化されているところですけれども、小学校、中学校のこういう情報技術に関する知識の学習を学習指導として行うと同時に、生徒指導が行われるということの両輪が、きちんとつながることが重要だと考えます。地方自治体においては、場合によっては生徒指導と学習指導を担当する部局が別だというようなことがあります。青少年健全育成もまた別だったりすることがありますけれども、連携が何より重要であると思います。
 最後に、プライバシーの確保はもちろん当然厳格に行われるべきですけど、よくある悩みの事例みたいなことについては、匿名化を十分に図った上でのことですけれども、何らかの形で公表することによって、場合によっては例えば児童・生徒に直接的にほっとしてもらう仕組みが作れるのではないかとか、あるいは地方自治体や学校が指導するときに参考になるのではないか。そういうケースの情報の匿名化による再利用というのも積極的に考えていくことが大事かなと思います。
 以上でございます。
【小川分科会長】  ありがとうございます。八並委員、よろしくお願いします。
【八並委員】  この体制の概要で、「(6)その他の留意点」とありますが、実はこれが非常に重要なことです。確かにSNSを使うと、相談のハードルは低くなりますが、その分情報管理に関しては、かなりハイリスクになります。
 特に教育委員会とある事業者が組んだときに、そこで構築されたシステムのセキュリティがしっかりしているということを、自治体だけに任せるのではなくて、第三者の認証評価を受けるようなシステムを作っておく方が、より安全性が高いのではないかと思います。これは今後の課題だと思います。
 それからもう一つ、先ほどいじめの問題が出てきました。専門的になりますが、いじめ防止対策推進法の第28条で重大事態が規定されています。生命心身財産重大事態と、不登校重大事態があります。SNSで仮に最悪の事態を想定したときに、SNSでいじめられていて死にたいと書かれた直後にやりとりが切れてしまった。つまり、テキストから電話相談に切り替える前に切れてしまったとします。当然自死遺族の方は、そこでの通信記録を知りたいと要望します。あるいは、調査委員会が設置されるので、自死遺族の方から調査委員会の方に通信記録を調べてほしいと要望された場合に、通信ログを自死遺族や調査委員会に情報提供できるかは微妙だと思います。たとえば、LINEでは開示請求の規定があり、捜査機関であってもなかなか難しいようです。そうすると、教育委員会側の方針と事業者側の開示請求の規定に食い違いが生じます。特に、いじめの重大事態で、通信ログの開示請求があったときの情報提供をどうするかなど細かいガイドラインを作っていかないと対応が難しいと思います。
 今後の課題ですが、今年から実施された事業成果を受けて、文部科学省の方でももう少し具体的な事例も含めたガイドラインを作成していく必要性があるだろうと思います。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございます。時間もありませんけれども、あと2人の発言で終わらせていただきたいと思います。伊藤委員、そして柏谷委員、お願いします。
【伊藤委員】  ありがとうございます。SNSによる相談体制ですけれども、私もセーフティーネットの構築という点では非常に有効な手段であろうかと思っています。
 運用に当たって2点ほど述べさせていただきたいと思います。今スマートフォンについては、先ほどもSNS上のいじめ等の問題ということがありましたけれども、スマホによる人間関係のトラブルであるとか、スマホ依存など、スマホに関わる問題というのは年々深刻化しているように感じています。本校でもスマホ利用は夜9時までにしようとか、あるいは、10日、20日、30日といった0の付く日はスマホの使用を0にしようといったようなことを、生徒会が自分たちで考えてルールを作っていたり、保護者が自ら保護者を対象とした学びの場を設けたりといった取組が始まっているわけです。
 そのような中で、これは地域や学校によっても差があるのかもしれませんけれども、中学校でも高校生になるまではスマホを買わないとか、家庭でのルールをしっかりと決めてからでないとスマホを持たせないといったような方針を持っておられる御家庭も多くあるのではないかと思っています。
 SNSによる相談体制の構築は大変意味のあることですけれども、スマホを持っていることが推奨されるかのような受け止めをされたり、あるいは、全員の所有が当然であるといったような周知の仕方とならないような御配慮を頂くことがひとつ必要であるように思っています。これが1点目です。
 それからもう1点は対応の在り方です。気軽にアクセスができるという利点があるだけに、多種多様な相談が入ってくることが予想されます。それら一つ一つに対してどう対応していくかという見きわめが重要になってくるかと思いますし、これはSNSに限ったことではありませんが、特にいじめの問題は学校が動かなければ根本的な解決は図りにくいのではないかと思っています。直接相談しにくいので、あるいは、直接の相談を避けてSNSなどを通じて相談があるわけですけれども、最終的には教育委員会や学校との連携がなくては解決ができないケースも多いと思います。そのあたり、この報告書は、緊急の対応が必要になる場合にはということで、学校や教育委員会との連携ということが記述してあるのですけれども、学校と、あるいは教育委員会との連携というのは、なくては解決ができない問題もたくさんあるかと思いますけれども、その辺の考え方をもう少し聞きたいと思っております。この辺はいかがでございましょうか。
【小川分科会長】  後でお答えできる範囲でお答えいただければと思います。最後、柏谷委員。
【柏谷委員】  ありがとうございます。ただいまの伊藤委員の意見とダブるところもあるのですけれども、うちの横浜町というところなのですけれども、議会と教育委員会と町を挙げて、要らない宣言をいたしております。家庭に責任があるということをはっきりと申し述べて、そして、喫緊の脳生理学分野の知見、データも常に公表するようにというか、新聞に出る程度のものですけれども、脳にいかに影響があるかということをはっきりと町の広報で打ち出しております。そういうふうな人体に対する影響等もきちっと記して、世界的な今、情報のこういういろいろな危機が、とめることはできないわけですけれども、マイナス部分についてのこともきっちりと私は公表していくべきと考えますので、要望として挙げておきます。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございました。多くの委員から、短時間でしたけれども、これからの取組上の課題や要望が幾つか出されました。全てにはお答えいただく時間がありませんので、数分の範囲で、ポイントだけでもよろしくお願いいたします。
【松林生徒指導室長】  時間の関係上簡潔にお答えさせていただきたいと思います。まず清原委員からの御質問でございますが、受付時間につきまして、働き方改革ということがございましたが、基本的に深夜等は民間事業者の方に委託しますので、学校の先生が夜中まで相談をSNS等で受け付けるということは想定してございません。
 それから、相談員の確保、相談員の育成についてもしっかり取り組んでいるところでございますし、相談事業者に委託するケースが多くございますので、そういう方々が相談を受け付けるということになろうかと思います。
 それから、市町村につきましては、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
 それから、続きまして、堀田委員からの御質問でございますが、プライバシーの確保につきましては、基本的に匿名化していろいろなケースを再利用すればいいのではないかとおっしゃったと思いますが、SNSの特徴としましては、相談ログを蓄積したりとか、データベースに蓄積された情報が、同じようなケースでいろいろ使えるという利点がございますので、何回も質問があった同じような相談パターンについては蓄積することで、効率的な相談ができるかと考えてございます。
 それから、八並先生の御質問でございますが、セキュリティについては、大事でございますので、しっかり指導してまいりたいと思ってございます。
 それからあと、基本的には通信ログでございますが、今教育委員会等で行っているSNS相談につきましては、いざとなったら通信ログは出さなきゃいけないという、そういう前提で相談をして、SNSを入力していると聞いてございます。
 それから、伊藤委員からの御質問でございます。SNS相談によってスマホを持っていることを推奨しないようにということでございます。それにつきましては、今回、座間市の事件を受けて、SNS相談と共に、子供に対する適切な支援・指導がなされるように、情報モラル教育、また、経産省、総務省としっかり連携して、スクールカウンセラーを含む教職員に対するインターネットの安全利用に関する研修の実施を行うことが決まってございますので、しっかりやってまいりたいと思ってございます。
 それから、いじめにつきまして、先ほど申し上げたのは、緊急の場合は深夜でもすぐ警察や児童相談所に連絡するということでございますが、普通のいじめでも、当然子供の了解を得た上で教育委員会から学校に下ろしまして、しっかりいじめの対処をしていくということでございます。ただ、子供が要望しないにもかかわらず、そのまま知らないうちに担任の先生が知っていたということにはならないような制度設計にしてございます。
 それから、柏谷委員からの御質問でございますが、こちらもマイナス部分も含めて、当課と、情報モラル教育を担当する課、関係省庁と連携しまして、スマホの適正利用についてもしっかり教育してまいりたいと思ってございます。
【小川分科会長】  ありがとうございます。時間も押し迫ってまいりましたので、議題2について、この辺で終わらせていただきたいと思います。残りの時間で、議題3の第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」について審議したいと思います。これは土肥青少年教育課長の方から御説明をお願いいたします。
【土肥青少年教育課長】  青少年教育課長の土肥でございます。私の方から第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」、いわゆる子供の読書計画でございますけれども、これについて御説明いたします。資料の方は資料3-1と3-2で、3-2が本体でございますけれども、3-1の概要の方で御説明いたします。
 この計画なのですけれども、2001年、平成13年に子供の読書活動の推進に関する法律という議員立法が成立いたしまして、この法律の中でおおむね5年間にわたる子供の読書活動の推進に関する基本方針と具体的方策を明らかにする計画を作るということになっておりまして、今年度に出来たものは第四次ということで、今後の5年間を規定する計画になってございます。
 次に第三次基本計画期間における子供の読書活動に関する状況等でございます。平成25年から平成29年の間の状況でございますけれども、下の主な現状というところかございますけれども、児童用図書の貸出冊数については増加している。右に行きますと、全国の一斉読書活動を行う学校の割合についても、微増ではありますけれども、増加しているということでございます。
 情勢の変化といたしましては、学校図書館法の改正が平成26年にございまして、学校司書の法制化などの規定がされているところでございます。
 また、学習指導要領の改訂が29年、30年の公示でありまして、読書活動の充実を規定されているということがございます。
 あと、先ほど来お話がありますけれども、情報化社会の進展ということで、スマートフォンの普及、コミュニケーションツールの多様化など、こういったことも読書活動に影響を与えているのではないかと思われます。
 右の方に行っていただきまして、主な課題でございますけれども、小中学生の不読率。不読率というのは1カ月に1冊も本を読まない子供の割合ということでございます。中長期的には、下の方にグラフがありますとおり、改善傾向にはございますけれども、高校生の不読率は依然として高い。平成29年でいいますと50.4%ということでございます。
 いずれの世代においても、第三次計画で目標とした進度、一番端の平成34年が目標年次なのですけれども、それには届いていないという状況でございます。
 以上のような状況を鑑みて、我々の方でも分析をいたしました。主として高校生なのですけれども、要するに高校生がなぜ本を読まないかということについて分析した結果が真ん中あたりの左の方でございます。分析した結果として、主として2つのグループに分けられるのではないかと思っております。1つは、そもそも中学生までの読書習慣の形成が不十分、そもそも読む習慣がないというグループと、もう一つは、中学生までは読んでいたものの、高校生になり読書の関心度合いの低下ということで、主として忙しくなるということなのだろうと思うのですが、相対的に読書の比重が下がっているというグループに分けられるかと思います。あと、これは今後の話なのですけれども、スマートフォンの普及等による読書環境への影響の可能性があるのではないかということを分析いたしました。
 これらを踏まえて、計画改正の主なポイントでございます。1つ目は、そもそも読書習慣がないという子供たちに対しては、乳幼児期から発達段階ごとに効果的な取組を推進していく必要があるのではないかというのが1点ございます。
 2点目が、高校生になり読書の関心度合いが低下したグループにつきましては、これもアンケートとかで分析をしているのですけれども、やはり友達から薦められているものというのはわりと比較的読もうかという気持ちになるというデータがありますし、現場現場でそういうような取組が現在進められているということで、友達同士で本を薦め合うなど、読書への関心を高める、そういった取組を進めていく必要があるのではないかというのが2番目でございます。
 3番目が情報環境の変化が子供の読書環境に与える影響に関する実態把握・分析をやろうかと思っております。スマートフォンの利用につきましては、先ほど清原委員からもお話ありましたけれども、高校生のほとんどが持っている。大体1日3時間ぐらい使っているということで、いろんなマイナスの影響などもあろうかと思いますけれども、読書の世界におきましては、最近だと電子書籍というものも普及し始めておりますので、わりと気軽に手にとれるというプラスの側面もあろうかと思いますので、そういったマイナスの側面、プラスの側面含めて、今一体どういうふうになっていて、どうしていくべきかということについて今後国として検討したいというのが3点目でございます。
 その下に参りまして推進体制でございますけれども、子供の読書環境を充実させるため、国、都道府県、市町村がやっていくということなのですけれども、今回の計画におきましては、学校図書館が中心ではあるのですけれども、やはり民間団体、民間企業、また地方自治体の中でも、教育委員会だけではなくて知事部局などとも連携して取組を推進していくことが重要ではないかというのが基本的なところでございます。
 市町村につきましては、我々としては、市町村が子供たちの一番身近な自治体でありますので、市町村に頑張っていただきたいと思っているのですけれども、計画を未策定の自治体については、策定していただく。策定済みの自治体についても、今回の国の計画をベースとしてまた見直しをしていただくということをやっていただきたいと思っております。
 都道府県につきましては、高校を所管する立場から高校生をどうするかということを考えていただきたいということと、市町村と一口に言っても様々な規模がありますので、小さなところは自分のところでやるのは難しいということが市町村の声としても上がっておりますので、そういったところを都道府県がバックアップしていくということが重要なのではないかということが計画に記載されております。
 また、国におきましては、都道府県の取組をバックアップしていくということで、先ほど申し上げた調査・分析などもありますし、地財措置、優良事例の紹介等、そういったようなことを進めていくということでございます。
 めくっていただいて裏に主な方策がございますけれども、ポイントは、先ほど申し上げたところでございます。学校、家庭、地域で取組を進めていくということで、家庭については、小さな頃から読書習慣付けということで、最近一千を超える自治体でブックスタートという、子供が生まれたときなどに保護者の方に本をお渡しするようなサービスなども進んでおります。また、子供を中心に家族で同じ本を読むような家読という活動も進んでおりますので、こういう家庭で本を読むという活動を進めていくことが重要ではないかというのが家庭の部分でございます。
 学校におきましては、基本的には学習指導要領がございますので、それを踏まえた読書活動を推進していくこと、一斉読書活動をすること、また、学校図書館の整備・充実につきましては、学校図書館図書整備5カ年計画が29年、改定されましたので、これに基づいて学校の蔵書の充実、司書教諭・学校司書の人的配置の推進をしていく、促進をしていくということでございます。
 地域におきましては、右の方でございますけれども、図書館未設置市町村における設置を進めていく。市はほとんどございますけれども、町村はなかなか難しいというのが現状でございます。
 また、図書館の資料、施設等の整備・充実。読み聞かせなど、子供や保護者を対象とした取組の充実。司書・司書補の適切な配置。学校図書館との連携といったようなことを進めていくということでございます。
 その下、子供の読書への関心を高める取組につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
 その他、民間団体の活動への支援。普及啓発活動などを規定しております。
 今後、国の方の読書計画が出来ましたので、また都道府県、市町村が見直しをされるということで、全体として子供の読書が進むように我々としても努力していきたいと思います。
 私からの説明は以上でございます。
【小川分科会長】  ありがとうございます。残り10分ほどしかないのですけれども、御意見を頂ければと思います。それでは、篠原委員、米田委員、そして田中委員、清原委員。時間がありませんので、御発言の時間について御配慮をお願いします。
【篠原委員】  時間のないところですみません。私は、スマホに時間をとられ過ぎて本を読む時間がぐんと減っているということが最大の元凶ではないかと思っているのですね。だから、これをどういうふうにうまく両立をさせていくのかです。電子書籍ということもありますから、スマホ自体の効用を全部否定するわけではないのですけれども、やっぱりそこが一番ポイントではないかなと。スマホにのめり込んで、読書だけでなく、全体として活字離れが子供たちの間に起きている。活字を拾って読もうという意欲が非常に低下しているということを、私、大変危機感を持っております。
 そういう意味で、本だけではなくて、活字にどう触れさせるかという視点でとらえるべきです。新聞を教材にする教育、NIEというムーブメントがありますが、そういうものをもっと展開をしていくとか、活字離れをどう食い止めるかという観点から取り組むべきです。活字をしっかり読むことがものを考えることにつながると思うし、新しい学習指導要領で重点を置いている主権者教育にもつながってくる話だと思いますので、まずスマホと本を読む、あるいは新聞を読む、そういうもののを1日の生活の中でどううまく回していくのかというところへもっと注力をしていくということと、活字にどうやって触れさせていくかという、そういう大きな構えを持ってやっていく必要があるのではないでしょうか。
【小川分科会長】  ありがとうございます。米田委員、どうぞ。
【米田委員】  平成29年度の子供の読書活動推進計画に関する調査研究の冊子、私、今持っているのですが、これ、29年度調査研究をしたので、事例、実は12載っておるのですが、考えるに、全国で様々な取組を、読書活動推進のための取組をやっているのではないかなと思っております。せっかくこうやって調査研究という、厚い紙を使って冊子作っていらっしゃるのですが、12の事例しか載っていない。よく見たら秋田県のが2つあって、これはバランス悪いのではないかなと思ったのですが、座長を含めて委員の中の1人に秋田県の生涯学習課長が入っていたというのもあるのですが、いずれ都道府県、市町村その他で様々な取組をなさっているということをもっといろいろな形で紹介して、お互い共有できればいいかなと思っております。
 実は今日の地元の新聞に読書通帳というのが出てきまして、これ、秋田市で今度進めるのですが、読書の記録を銀行の通帳のようなものに記録していくと。多分利子はないだろうと思います。マイナス金利でもないと思いますが、いずれ、記録していくということで、お互い、それをまた見比べ合って、では、私・僕は次こんなのを読もうというふうな刺激になるかもしれない。これも他県で先行実施しているところがあって、その情報を得て秋田市もやることになったということが新聞に書いてありました。
 ですから、まだまだいろんなことがなされていると思っております。こちらが求めていくことで解決できるかもしれませんが、いろいろなものをもっともっと紹介していただければありがたいということが1つです。
 それから、高校生の不読率、非常に高いということで、各県、都道府県が悩んでいると思います。県立図書館で私たち、とにかく子供たち、あるいは県民が来るのを待っているのではとても遅いと。図書館自ら出ていくべきだということで、高等学校並びに市町村の図書館にセットで、数十冊セットでどんどん貸出をするという取組をここ数年ずっと続けております。高校生もいろいろな研究に使う場合もあるし、あるテーマに非常に興味があって、いろいろな本を読みたいという希望があります。いろいろなのを全部セットにして学校に貸し出すという方法もいいかなと思います。それは各市町村の図書館でも小学校、中学校にやってできることかなと思います。
 それから、私、今県立学校を全部回って、図書館を見ているのですが、学校の図書館でも、子供たちが図書館に来るのを待っていてはやっぱりだめだということで、図書館にあるものをまた学級文庫みたいな形で、常に子供たちの目に触れられる、あるいは手にとることができるような状態、そういう環境を作るのも必要ではないかなということで、そういうふうな図書館というものの在り方、考え方の発想をもっともっと柔軟に変えて捉えていくということが必要かなと思っております。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございます。田中委員、そして最後に清原委員ということでお願いします。
【田中委員】  田中です。幼児教育とか家庭教育についても書いていただいているのでありがたく思っておりますが、子供たち、幼児教育の現場としての感覚でいいますと、保護者の人が文字で絵本が読めるようになると、親子の関わりではなくて、自分で読まそうとするという部分がどうしてもあるのですね。だけれど、実感として、0、1歳か2歳ぐらいのときに本当に好きな絵本ができて、覚えるぐらいまで同じ絵本を何度も読んで、その言語情報が、いわゆる言語としての聴覚情報と視覚としての情報が頭の中で0、1のところで一体化している子供というのが、幼稚園に来て、3歳、4歳のときに先生が読んでもらった話を非常に映像化しやすく、その子供というのが非常に大きな力を持っていくと思っているのですね。
 そうすると、読み聞かせという言葉だけではなくて、読み聞かせるという。それも本当に眠たくなったときに親子が1対1で同じ本でもいいから何度も読んであげるということの本当の意味は何なのかというのが、もう少し、私もそれが子供の生涯に、思考力にどれだけ影響あるかというのは、調べたようなものを文献的には見たことがないので、世界的にそれがあるのかどうかは分かりませんが、実感としてはそういうようなことを、非常に積み重ねている子供の方が、幼稚園の中で絵本を読んでも映像化し、自分の中のイメージ化をできている。そのことは大きくなってから、本を読んだときに、文字化として入った情報が視覚情報と一緒になって思考力を高めていくという、この作業の非常に大きなものだと思いますので、家庭のよさというものをもう少し丁寧に。十分書いていただいているのはよく分かるのですが、もう少し深くならないかなという思いを持ちました。
【小川分科会長】  ありがとうございます。最後、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。第四次『子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」のポイントの2つについて、是非、教育委員会だけではなくて、市長部局と連携しながら進めていただければということで申し上げます。
 1点目の「発達段階に応じた取組により読書習慣を形成」というところですが、私は今、田中委員もおっしゃいましたけど、乳幼児のときも大事ですが、胎児のときも大事だと思っていて、母親学級や両親学級でも読書が与える胎児への影響のメリットについて、保健師、助産師等、「妊婦全員面接」をしているので、お伝えしています。そして、図書館の場所や、あるいは移動図書館の巡回場所についてもお知らせしています。赤ちゃんが生まれましたら、3カ月ぐらいまでの間に民生・児童委員さんに乳児家庭全戸訪問の一環として、「ブックファースト」として、最初の絵本をお届けしています。
 先頃私も「1日民生・児童委員」として、2人の、1カ月余りの赤ちゃんのいらっしゃるお宅をお尋ねしました。お母さんが、生後1カ月でも、2カ月でも、小さなお子さんに読み聞かせすることから始めていただきたいとお願いをしました。お母さんの多くも、今スマホばかり利用している時代なので、「お母さんも赤ちゃんも一緒に絵本を」ということで取り組んでいます。これは教育委員会だけではなくて、市長部局と連携する中で進められることです。私たちは「星と森と絵本の家」という施設を市内の国立天文台の中に置いていますが、そこでも人気はお父さんの読み聞かせグループです。是非お父さんも巻き込んで、発達段階というときに、是非胎児の時期から含んだ取組が進めばいいなというのが1点目です。
 2点目、簡潔に申し上げます。「友人同士で行う活動等を通じた取組」についてです。三鷹市は、学校のクラブ活動とは別に、公立図書館が「図書部」の児童・生徒を募集して、中学、高校、大学生が図書部活動の中でビブリオバトルなどをしてくれています。大事なのは、読書だけではなく、友人たちとの交流を通した自己肯定感の獲得です。
 是非今回の2つのポイントが有意義なものとなりますよう、先ほど米田委員もおっしゃいましたけれども、様々な事例が共有される中で、幅広くこの取組が、計画ではなく、推進されていくことを、市長部局の1人として、市長としても協力したいと思っています。
 以上です。ありがとうございます。
【小川分科会長】  ありがとうございました。これで終わりたいと思うのですけれども、最後土肥課長の方から何かございますか。一、二分で何かあれば。
【土肥青少年教育課長】  貴重な御意見たくさん頂きました。特に秋田県さんには、計画を作る際の有識者会議などにも御参加いただきまして、ありがとうございました。
 優良事例みたいなものは我々ももっと提供していかなくちゃいけないという認識は持っておりまして、そういうところは頑張っていきたいと思いますし、そのほかの委員の方々の貴重な御意見についても、心に踏まえながら計画がちゃんと実のあるものになるよう頑張っていきたいと思います。
 以上です。
【小川分科会長】  ありがとうございました。これで時間が参りましたので、この辺にしたいと思います。最後に次回以降の予定について事務局から御説明をお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】  次回の初等中等教育分科会の日程につきましては、分科会長と御相談の上、追って御連絡をさせていただきます。
 また、本日の資料につきましては、机上にお残しいただけましたら、後日郵送させていただきます。
【小川分科会長】  ありがとうございます。これで閉会といたします。ありがとうございました。


―― 了 ――

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