学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成20年11月4日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3F1特別会議室

3.議題

  1. 学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会の設置等について
  2. 学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会において検討すべき事項等について
  3. その他

4.出席者

委員

小川主査、天笠副主査、石塚委員、植田委員、金井洋子委員、川田委員、小林委員、曽我委員、田村委員、角田委員、渡久山委員、根本委員、服部委員、若井田委員

文部科学省

玉井文部科学審議官、金森初等中等教育局長、合田総括審議官、前川審議官、久審議官、常盤初等中等教育企画課長、関財務課長、濱口企画官、他

5.議事録

(1)委員の互選により、主査に小川委員、副主査に天笠委員が選出された。

(2)事務局から、配付資料の説明があった後、自由討議となった。その概要は以下のとおり。

○ここで検討する内容が学校及び教職員に与える影響は非常に大きいと思います。実際の教育現場はどうなっているかといったようなことで、例えば学校で教員の勤務時間の管理とか、そういったことについて先導的に取り組んでおられるような事例があれば、そういったところの関係の方に来ていただいて、まずいろいろお話を伺うということからできればお願いしたいと思います。

○今日の検討すべき事項(案)の1の今後の学校の在り方というところにかかわってくるかと思うんですが、まず、学校の業務が増大しているということはきちんと把握しておく必要があるのではないか、これが話し合いの前提にあるのではないかと思っています。例えば小学校のことを考えますと、朝8時には子どもが学校に参ります。そして、お昼休みというのが現実にはないです。給食があって、今は食育の問題がありますから、給食指導も相当徹底して行わなければならない。かつては、先生は二、三分で食事をして、あとはマルつけをしたり、連絡帳を書いたりと、そういうことに充てていた部分があったんですが、かなり忙しい時間を過ごしてお昼をする。そして、低学年は2時ぐらいには帰りますが、高学年になると3時過ぎに帰ります。そして、この頃は放課後子どもプランがあって、放課後に、それは外部の人がボランティアのような形や、あるいは市の情勢によって違いがありますけれども、お手伝いの人が入るにしても、子どもが学校におり、その間には、先生方は安心して研修に打ち込むということはできないというのが現実です。そして、その3時半ぐらいから、学校では、研究会であるとか、あるいは新しい教育の課題、あるいは今回の学習指導要領の内容を浸透し、来年度以降の移行措置にどういうふうに臨んでいくかということを考えていくと、それこそあっという間に5時なんです。本当に5時の勤務時間までの中で先生の職務を全て終了させるということ自体が難しい状況にあるんだということです。この辺は、小学校がそういう状況、中学校は中学校でまた違う状況があると思いますけれども、特に小学校では学級担任制ということから、一時も子どもたちから目を離すことができない、それが5時までの時間なんです。そうすると、この教職調整額であれ、あるいは残業手当であれ、5時を過ぎなければ自分の仕事をする時間がないという現実は最初にきちんと把握しておく必要があると思うんです。そうでないと、学校の組織運営でこうやって工夫するとか、外部人材で手当するとかということがあっても、まず現状がそういうことなんだということをきちんと認識した上で、ではどうするのかという問題を話し合っていかなければいけないように感じます。まず、現状の業務が増大をしているし、学校の教師の仕事というのはそういう時間管理の中にあるんだということを認識した上でスタートをしていかなければいけないのではないかと思っています。

○小学校教員と中学教員・高校教員では、その気質がちょっと違うと思います。小学校の教員を選んだ教員に聞くと、土曜日、日曜日は地域で働きたいと言います。地域の消防団、地域のスポーツクラブなどです。ところが、中・高の教員になる教員たちは、クラブをやりたいと言います。そこでどうしても、土曜日、日曜日はこうですねと言っても、なじまない。説明の仕方が難しいという部分があると思います。方向としてはこれで進んでいくんだろうと思いますけど、いざ現場におろすときに、小学校教員への説明、中学校・高等学校教員への説明という部分は、少しニュアンスを変えないと受け取り方が随分違ってくるだろうと思います。ですから、高等学校の教員ですと、授業をしっかりやるために、教材研究などの授業の専門性を高めることを行う。中学校ですと、放課後、または今お話ありましたように5時過ぎに家庭との連絡をする。小学校教員ですと、家庭との連絡その他は平日の中で、土日は家庭に持ち込まない。学校の連絡も来ない。というよう働き方を想定して学校種を選び、就職していることがあります。最終的な説明の段階になるかと思いますけれども、教員の気質が随分違うということは実感しております。

○この「学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議」の「審議のまとめ」は非常によくまとまっていると思うのですが、出口のない結論みたいなものだと思います。よく読んでみると、どうしたらいいのかという形で提起されているわけですが、これは非常に当たり前のことのような気がします。給特法を変えるのか、変えないのか。給特法が今あることを前提にして議論をするというようにするのか、どうなのかについて考えなければならない。給特法を前提にするのであれば、自ずから限界があると思います。その限界とは何かというと、給特法では超勤を認めないという話になっていますから、超勤の多い少ないによって給与にメリハリをつけるということが理屈的にはできないはずです。そうであればその法律を変えるということがないと、超勤の大小によって、手当のメリハリといいますか、あるいは手当の大きい少ないを変えるというのは、なかなか困難ではないかというのが1つあると思います。
もう1つは、学校現場というのは非常に忙しくなってきておりますから、それを解決するためにどうするかというので、1つはここにあります学校の在り方というものについて真剣に考えたほうがいいと思います。ただ、学校は教員と職員の2つの職種があるだけで、ほとんど他に職種がないんです。そうしますと、これで学校の業務を消化するのは非常に難しいと思います。例えば、給食費の問題にしろ、あるいは修学旅行費にしろ、基本的には今、教員が集めることになっています。それを事務職員がやってもいいと事務職員の研究会からの提起もあったようですが、これをどう整理するかという問題等を含めて、いろいろな種類の業務が増えているのに、職員の種類は増えない。だから、教員だったら教員として、教えること、あるいは教えるものに付随した教材研究に専念できるようにして、欧米各国でもやっているように明確していく。そうであれば、教える業務以外のものについてはどういう形でどこに整理するのかという部分があると思うんです。ですから、まず、職員の構成・構造、それによって業務の分担・分散ができるかどうか。これは、例えば、今の学校事務が非常に多いから文部科学省からの調査を減らせという話もあって、少し減ったようですが、そういうようなものでは解決できないような学校の業務の構造的な問題というのがあると思いますから、それをちょっと抜本的に考えなくてはいけないのではないかと思います。
それが2の教職員の職務の在り方にも非常に関係してくるわけですが、例えば支援的職員の配置という、これは、教員でもない、事務職員でもない、新しい職種をつくって配置していくという、これぐらいのことができるかどうかです。こういうことも非常に大事な問題ではないかと思います。
教員の勤務時間管理は、ほとんどなされていなんです。ですから、今、学校の管理職は、教員の勤務時間の管理はしていない。勤務の内容については管理しているんだけれども、勤務時間の大小についての管理はほとんどできてない。ですから、もしもこれをやるとすれば、どういう形でやっていくのかという部分もある。
ただ、それでできない部分があるんです。例えば、子どもが何かの事件を起こして警察に捕まったということがあるんです。そのときに学校は執務時間外になっている。そのときに一番に連絡が来るのは、担任に来るんです。その際に、警察署に行く業務は勤務時間外の業務になります。そういうときは、校長先生に、行っていいですか、行ってよくないですかという話にはならないんです。そういう実態が勤務の実態としてあるんです。その場合には包括的に何らかの形で処理しないとできないような部分がありますから、このような勤務時間の管理の問題は、もっときめ細かに現場の実態、要するに学校現場の管理下における仕事の一環としてやっていく。例えば今のように警察から連絡があっても、これは保護者が第一義的な責任は持つべきです。しかし、保護者に何言っても連絡がつかないから、学校に来る。学校に来たら、担任に来る。私はこの辺の問題が非常にあると思います。
それから、勤務時間の弾力化の問題です。これは1年単位の変形労働時間制の導入だと思います。例えば6カ月の勤務時間の割り振り変更の期間の延長を今、東京で導入しています。しかし、これは果たしてどうなっているかという実態をもう少し調べたほうがいいと思うんです。一定程度成功しているものもあるんですが、ただ、ずっと積み残しておいて、いざといったときに土曜や日曜に対外試合があるんです、クラブの場合。対外試合があって、そのときに休暇をとろうと思っても、とれない、ということになったら、6カ月の勤務時間の割り振り変更の期間の延長の中でも消化できない。消化という言葉は悪いですが、できない実態があるんです。そういう実態がありますから、これで解決できるかどうかという問題は、非常に大きな問題だと思います。
次の教職調整額の見直しの問題は、先ほどの法的な問題と同時に、超勤がなくても、例えば病休なんかで休んで超勤をしない場合、そうすると今の教職調整額を削減しているというのを聞くことがあります。これは果たして妥当だろうか、どうだろうかという問題が、実は法的に見てあるんです。そうであれば、教職調整額以外の手当、その中でメリハリがつけられるものがないかどうかです。財源なり、考え方なり、あるいは何か手当なりがないだろうかということも視野に入れて審議したらどうかなと思います。 

○先ほど小学校の先生方のご苦労の話をいただきました。教員の役割ですが、特殊であるということを是非ご理解いただきたいと思います。先ほど、色々な事件等の話もありました。私が考える教員の役割は、7つあると思います。これは去年11月の初等中等教育分科会でも申し上げましたが、1つ目が学習指導者としての役割、2つ目が生徒指導者としての役割、3つ目が評価者としての役割、4つ目が学級経営者としての役割、5つ目が学習者・研究者としての役割、6つ目が校務の処理者としての役割、7つ目が部活の指導者としての役割。
特に、目の前の人間が違います。当然、学校の様子も違います。生徒指導に関わること、当然、学級経営にも関わりますが、それから部活も関連しまして、俗に言う、落ち着いた学校、荒れている学校では、教員の労力が全然違いますし、心の持ち方が違います。朝学校に行くときから、「今日は何かあるかもしれない」と思うと、それだけでもうプレッシャーです。警察に連絡をとる云々、これが土日にもかかわって、担任のところに連絡が入り、警察に行くことがあります。ですので、本当に俗に言う荒れた学校に勤めたときには、体が持つのかという気持ちになるという状況にあるのを耳にします。そういう場合には、とにかく勤務時間を超えた勤務になります。校長、教頭に当然連絡が行くのでしょうが、先に学級担任に来るため、学級担任の立場であれば、すぐ動きたいし、動かざるを得ないことになります。警察に生徒の身柄を確保に行くことをしなくてはならない。その後、校長、教頭への連絡になりますので、本当に大変です。もちろんそういう仕事を選んでいるわけですから、ある程度の覚悟はしています。ただ、一般の方々にはこの辺がご理解いただけないのではないかと感じています。色々な本には書いてありますが、実際にその特殊性というものを経験しております者からすれば、本当にここをご理解いただきたいと思います。その上で勤務云々についてのご議論をいただきたいと思います。

○私は、この資料9の5つの論点を見まして、これはそんなに大きく変えるべき点は特段思い当たりません。これらについて、実態、あるいは実情をよく確認しながら検討していけばいいのではないかと思っています。
その上で2点ほど、コメントというか、感想的なことですが、つけ加えておきたいんですが、1点目は、既に何名かの先生方から同趣旨のことを言われているかと思いますが、特に1点目、2点目あたりに関わる問題について、小学校、中学校、高校といった学校の種類ごとに大分状況が違うということ、これを強く感じまして、この場でも、今後進めていく上で、そこは議論の出発点としてある程度そういう認識を共有して進めていくといいのではないかと思っております。
それから2点目、ここはちょっと抽象的な話になってしまいますが、3から5あたりの点については、例えば資料7あたりでは、民間部門の状況と対比したような議論なんかが出てきております。ただ、民間部門の状況を見ましても、この1年、2年ぐらいの間、例えばホワイトカラー・エグゼンプション制度をめぐる問題であるとか、最近で言えばいわゆる「名ばかり管理職」の問題であるとか、民間部門における現行の制度における問題点とか課題も色々と出てきていますので、あまりにも民間部門における議論や問題状況とかけ離れた話をここで進めていくというのもまずいかと思います。また、民間部門の話を前提にして、それに合わせるような話をしていくという必要も必ずしもないのではないかと思います。ある程度、教員という状況の実情に合った説得的な議論ができれば、民間部門における一般的な話とは違うような結論が出てきてもいいのではないかと思います。

○保護者の目から見て本当に頑張っている先生とそうでない先生が見えるときに、同じ給与状況であることを耳にすると、それでいいのだろうかと思ってしまいます。今までのお話を聞いていて、それぞれの先生方が多岐に渡って様々なことをやっていることはよく分かります。ただ、学校の中で多岐に渡っているものを処理することを、それぞれの人が効率よく出来るのかということは、非常にやりにくくて、できてない構造的なものがある。本来やることがやれないということがあるだろうと思います。これは許された話かどうかわかりませんが、学校で給食問題があったり、様々なお金の問題があったりする中で、解決策として、お金のプロである事務職員にお願いをして、すべてのお金の管理を可能な限り事務職員にお願いをしたところ、先生方が不得意なお金のことをやらなくて済むだけで週に相当な時間を子どもに向ける、教員としての仕事ができるようになったという実態があり、また、給食費も全額入るようになりました。これは、努力というか、考え方一つで行っていくことができるというもので学校に取り入れることができれば、それは取り組めます。また、保護者としては頑張っている先生にはたくさんの給料を払って欲しいと思うし、あの先生はどうかという方が同じような給料をもらっているというのは疑問を感じる。ただ疑問を感じる先生が給料が増えることによって頑張ることで良くなるのであれば、これはとてもありがたいことで、教職員の質も向上することに実際つながるんじゃないかと思う部分があります。
そんな意味では、是非先生方の職務や職場をもっと務めやすい環境をつくってあげて欲しい。やはり頑張っている先生と頑張っていない先生に対して、この教職調整額が同じ額が出るというのは多分、保護者はほとんど知りません。そういう状況の中で金額の調整が出来る制度が設けられることはとてもありがたいし、設けられたとするならば、保護者は頑張っている先生を応援しやすくなる。また、社会環境の中で先生に対する信頼も高まってくる。是非そのような形でこの教職調整額の見直しが先生方に対する信頼の高まりにつながるような改正になれば大変ありがたいと思うし、今一番、学校が信頼を失っている部分はその辺ではないかと思います。頑張っている先生はたくさんいるので、その方を応援したいんですけど、そうではない先生が一緒についてくるという、ここが非常に疑問です。保護者が大変迷惑をかけているところ、これは認めますが、社会がそういう状況になったわけですから、逆に社会がそういう状況でなくなるような教育環境になっていけば、子どもも社会も変わってくるのではないかなと思い、この作業部会の中でお話をし、保護者が安心出来る方向性に進むのであれば、大変ありがたいと思っています。

○先ほどの資料の説明で、ずっと注目していた言葉の使い方というのが1点あります。それは、学校マネジメントという言葉で、ずっと説明をいただいたと思うのですが、この間を振り返ってみると、組織マネジメントという言葉がかなり教育の世界にも使われて、そして筑波を中心に大々的に研修が展開されて、それが各都道府県の教育センター等々の一つの柱になっているということがこの間経過しているのではないかと思います。学校にはマネジメントが無いという指摘が確か教育改革国民会議あたりであって、それ以降、学校にマネジメントをという取り組みや考え方、組織マネジメントという言葉が出てきた。そういう経過として私は認識していますが、そういった形で、私は決して、その時点で指摘された、学校にはマネジメントが無かったとは思わないんですが、そういうふれ込みでありました。その間、時間的にはそれほど長い時間ではない、あるいは結構な時間か、いろんな評価があるかと思いますが、それが学校の内側における組織運営にどういった効果をもたらしているのか、どうなのかというあたりのところもこの議論の過程の中では一度、押さえておいていいのかな、見ておいていいのかなと思うわけです。資料9の検討すべき事項についてというのは、この5年ないしその間の中でいろんな動きがあって現在に至っているのではないかと思います。色々な取り組みをしつつ、その一方において、まさに業務が増大するような社会的環境とか、そういうものが訪れて、指摘されるような、あるいは導入を図られようとしているような組織マネジメントというのがそういう状況にうまく対処し切れないという言い方になるのか、あるいは逆にそういう状況をもたらしているというふうな、そういう見方をすべきなのか、どうなのか。私は、このあたりのところを丁寧に見ていく必要があるのかなと思っております。
要するに、ここで申し上げたい点というのは、そういうそれぞれの学校における内部の、自律的と言うべきなんでしょうか、組織運営にかかわるそういう営みというのがこれらにおいて、例えば、勤務の弾力化ですとか、職務の在り方ですとか、学校のそれぞれの在り方について、それなりに様々な影響をもたらしているのではないかと思いますので、そういう内部におけるこの間のそれぞれの校長を中心とした営みということについての丁寧な見通しというんでしょうか、見取りというのも必要なのではないか。そういう意味で、先ほど委員の方からご意見がありましたように、学校の中でのそういう取り組みというのが、限られた時間であるのでそんなにたくさんというわけにはいかないと思うのですが、その種の事例ケースということもここで話題にしながら論議を深めていく必要があるんじゃないかなと思います。

○先ほど事務局からの説明や今、各先生方のお話を聞いて、改めて私が思うことは、この問題について相当深く議論がなされて、言い尽くしているのかなという思いを持ちました。
その上で、基本的に教員の勤務というのをどう捉えるかということを現場の実情も踏まえて論じるならば、いわゆる時間的管理、特に時間外勤務についての捉え方というのは、非常になじみにくいと思います。37年前の話ですが、昭和46年5月に給特法ができたときに、教員の勤務についての相当踏み込んだ議論がなされ、整理をされ、そして教職調整額ができたわけです。そのころの事情と今の事情は基本的に大きく、教員をめぐる状況、学校をめぐる状況が変わることはないのではないかと思っています。ただ、昨今いろいろ、保護者の問題だとか、地域の問題だとか、あるいは家庭の教育力の低下だとかというような問題があって、学校現場に多くの負荷がかかっているという状況は紛れもない事実ですけど、それがまさにこの前の教員の勤務実態調査をした中でもって、当時に比べれば3倍ないし4倍近く残業時間が増えているという数字に表れているんだと思うんです。昭和46年の教職調整額についての整理というのは、もう一回、私どもがしっかりと確認をした上で、教職調整額について、その額が適当であるのかどうか、それを増やしたらいいのか、そういう議論というのがあってしかるべきだと思いましたし、それから、概算要求の中で教職調整額の引き上げを図って取り組んでいったところ、法制的に勤務負荷に応じて差をつけることは難しいというお話なんですけど、一方で、今の時代の中でもって頑張っている教員が報われるという、そういうことはしっかりとしていかなければいけないので、全体の底上げを図るみたいな形でもってこれを対応していくというのは違うというふうに思いつつ、一方で、教職調整額の基本的な考え方、そこのことを踏まえてどう対応していくという、これが現実的な対応じゃないかと思います。
それから、学校現場の中で非常に遅れていると思うのは、学校業務の効率化とか、IT化の問題です。これは、それぞれ地域によって実情は相当違うかと思いますけど、非常に非効率的な運営がなされていると思います。これは日本のいわゆる非現業部門全体に言えるかもしれませんけど、そういうことはやはり考えるべきだと思います。
それからもう一つ、学校現場で教員の負担感が増しているという背景に学校週5日制の問題があると思います。学校週5日制により勤務時間は減っているわけですから、そのことと今の状況を比べれば、明らかに仕事の量は増えているにもかかわらず労働時間が減っているわけですから、こういった中でちょっと隘路にはまり込んでしまっているというような実態もある。その辺のこともやはり考え合わせていくことがとても必要なことではないかと思います。
何か結論を急ぐような話ですけど、教職調整額の在り方というか、そこのところでもって考えていくということと、それから、メリハリをつけるというか、努力をしたら報われるという、そこの2点、これで議論を進めていくことがとても大切なのではないかと思います。

○資料9の論点の整理につきましては、私もこの整理の仕方でいいと思っていますが、その上で何点かお話し申し上げたいと思います。
私が、校長先生方や保護者の方、地域の方によくお話しするのは、学校教育が学校の中で完結した時代はもう終わったということです。10年20年ぐらい前から、地域に開かれた学校ですとか、地域との連携とか言われておりますけれども、そういうような言葉ではもう遅い。やはり地域と一緒になって、地域と共に子どもを育てていくことが重要だと思います。そういう意味で、地域の方に参画していただく、それから、地域の方に学校を見ていただいて、評価していただくことが重要です。そのようにしていますと、教員と地域の方がコミュニケーションをとる中で、実は地域の方に学校の業務の大変さというのを非常によく分かっていただいて、色々な意味で手助けをしてくれることが多いのです。
それと同時に、やはり行政は行政なりに、例えば私の自治体では、学校支援コーディネーターを配置して、先生方が授業をするときに、外部との連携とか、そういうものを企画するようなコーディネーターを派遣したり、中学校で言いますと、部活動が管理顧問でもできるように、監督、それから部活動指導員、さらに顧問サポーターなど、5種類の方を派遣したりしております。それから、今、文部科学省の研究の後を引き継いで、中学校にはカウンセラーが入っておりますけれども、全小学校に区の単独費用でカウンセラーを派遣することも実施しております。そういう意味での学校支援も行いながら、地域とともに子どもを育てていくということが非常に大切な時期だということを申し上げたいと思います。
そのためにはやはり校長先生がリーダーシップを発揮して、校長先生が意識をかなり変えていただきませんと、先生方の組織としての活性化というのは難しいと思います。学校の中で企画を中心になってやっている方もいれば、そうでない方もいる。それから、授業力も様々な先生方がいる、学級経営力も様々な先生方がいる。そういう中で本当に頑張って下さる先生方に励みとなるような、そういう学校運営体制、また給与体制、そういうものを作っていかないといけないと思っております。
また、様々な、例えば忙しさ、業務が増大しているということは確かにありますけれども、年間を通して見ますと、例えば夏季休業日など、一般の企業の方では考えられないような、自分で使える、自分で企画できる自分自身の勤務時間というのが教員の中にはあるんです。ですから、年間を通してそういう勤務時間の活用ということも校長先生のリーダーシップの中でしっかり進めていかないといけないという意味で、論点は5つありますけれども、1、2に関係して、3点ほど述べさせていただきました。

○今回、検討すべき事項、この5つについては特に問題ないのかなと思っております。いいまとめ方なのではないかなと思っています。具体的に方策を考える中で必要なことというんですか、特に考えなくてはいけない2点があるかと思っています。
1つは、教員業務の特殊性、もしくは習慣です。そういうものは、本当にどういう形のものは特殊で、どういう習慣なのかというのを明らかにしていかないと、根本となるものがまず見えてこないというのがあると思います。例えば、1年に1回しか授業がない。小学校の場合であれば、その授業は1回しかないんです。恐らく次の年度には一般的には学年が変わりますから、そういう仕事の仕方をしているということです。一般の企業とはちょっと違うわけです。一般の企業は、今日やったことと同じことを明日もやっているかもしれませんし、1年経っても同じような部署にいますから、ずっと同じことをやっているかもしれませんけれども、教員の場合はちょっとそういうような特殊性があったりとか、習慣があったりとかしていますから、そういうものをきちんと見定めていかなくてはならない。それを明らかにしないと、具体的な方策というのはなかなか見えてこないかなと思っています。
もう1点は、環境の変化です。学校週5日制であったりとか、個人情報が入ってきたりとか、保護者の方の集金の関係であったりとか、色々な関係で環境はどんどん変わってきております。その環境自体をよく見定めないと、方策を実際に考えたときに、もしかしたら5年後に使える方策になっているかどうか、よくわからない。そういうのが出てくるわけです。
たとえば校外学習は、昔と違って増えており、実際に先生方にちょっと調べていただいたら、3年生や4年生だと年間6回か7回ぐらい行かれている。そういうものも実際には業務として増えている。何が変わってきているのか、また、環境としてこれから変わるものをきちんと、ある程度見えるものは予測しておくことが、方策を考える上では必要なことなのかと思います。
要は、教員の業務の特殊性や習慣についてきちっと明確にしていかなくてはいけないということと、環境の変化というのを考慮しなくてはいけない。その2点は是非ともこの検討すべき事項の中で考えていけたらと、そう考えております。

○先ほどから事務職員の活用について先生方からお話がありました。確かに、学校の中の校務分掌があまり変化していない状況だと思います。ということは、学校に色々な事務が来るのですが、なかなか事務職員に任せ切れない教員の体質もあるのかと思っています。子どもに関するものは全て教員がやるべきものだという意識がなかなか先生方は捨て切れないと思います。例えば事務職員が財務主任として位置づけられている学校では、先ほどの諸校費、給食費の未納とか、そういうものは、全て事務職員がしております。ただ、全国的に見ますと、財務主任として位置づけられている事務職員は少ないように思います。そういう組織運営体制の見直しが図られれば、先生方の校務処理にかかる時間というものが少し削減されると思います。是非この場で組織運営体制の整備についてお話をしていただければありがたいと思います。
2番目の教職員の適切な役割分担、それについても是非事務職員を活用していくべきだと思います。事務の共同実施というのが始まりまして、幾つかの学校の中の事務職員が、基本的には小・中学校の事務職員は1人で勤務しておりますけれども、共同実施組織というものができまして、中学校区、例えば5つ6つぐらいの学校の事務職員が1つの組織をつくって事務処理をするという体制が生まれてきています。そういうところに、校務に関わるような事務、例えば、財務、情報、管理などの仕事をしてもらえば適切な仕事ができると思いますし、先生方の職務の在り方も少し変わると思います。
それと、学校地域支援本部などでコーディネーターの方々が学校の中に入ってきています。その方々の活用方法がなかなか学校現場ではうまくいきません。色々な専門的・支援的職員を配置してもらうのですが、学校の先生方は、そういう方々が入った経験があまりないため、自分が今置かれている組織の中でうまく活用することがまだできずにいます。その活用方法をしっかりと明示していただいたり、こんなふうにするとこんな良さが出てきたという事例をいただけると、もっと学校の中の事務の在り方とか校務の在り方みたいなものが変わっていくのかと思っております。
3番目の勤務時間管理ですけれども、私どもの方で調査したところ一部の学校の校長先生方は、しっかりと自分は教職員の勤務時間の管理をしているというふうにお答えをいただきました。ただ、難しいと言っていらっしゃる校長もいましたけれども、しっかり管理できているというお答えがあった学校の校長先生方は、各教員の校務分掌をしっかりと把握しております。この人にはこんな仕事をしてもらっているから、これくらいの超過勤務が考えられるというようなことをはっきりとおっしゃっていました。それ以外に出てくるような仕事、例えば生徒指導に関するような仕事だとすれば、超過勤務というような形でまたプラスをつければいいのではないかというお話もいただいたことをここでお話しさせていただきます。

○今、この問題の話をしていく上で一番難しいのが部活の問題なんです。この問題が絡んでくると、なかなか答えが出にくいと思います。実際、土日の部活動は自主的な勤務とされていますので、それを加えたら、とても40時間ではおさまりません。そういうことを考えると、今、民間では名ばかり管理職という問題がありますけれども、この辺もちょっと似たような問題なのかなと思います。
今後議論をしていく中で、メリハリのある給与体系にするということは現場でも受け入れられると思います。これは時代の流れですので、当然のことだと思います。そういう前提で今後の議論では、どうすれば教育効果を下げずに教員の勤務の軽減が図れるのかを考えていくべきと思います。例えば、専門的・支援的職員の配置ということで、一部分業を進めていくことは効果的なのかと考えます。
2つ目は、今、特に時間外勤務については勤務の実態に合った給与になっていないわけですので、それをどうするのか。例えば、さっき教職調整額制度を残す前提で議論をするのかどうかという話がございましたけれども、これは当然、そういうことを考えれば、教職調整額制度の廃止も含めて議論をしていかないと答えは出てこないと思います。

○基本的には、事務局から提案していただいた資料9の検討すべき事項(案)、大体こういう柱で今後審議していくということについては、一応了解が得られたと思います。その上で、今日様々な論議の仕方やアプローチの仕方、色々な貴重なご意見を伺いましたので、今後の審議の際に活用させていただきたいと思います。

○先ほどから、各委員さんから様々なお話を伺いましたが、色々な会議でこういう議論をするとき、大変重たい内容なんです。そのときに私たちの心がけなければいけないのは、学校に今いる先生方だけでなくて、これから教職を目指す人たちにとっても、明るい見通しというか、学校教育現場はこんなに大変だというようなイメージ、例えば結論的に給与が下がるというような、ある意味では負のイメージということではなくて、学校というのは子どもたちに夢や希望を与える職場であること、そして、働きがいのある職場であるという、職場の改善につながるようなメッセージを与えられる内容にしていきたいと思っています。今、学校の教職員を目指すというのが全国的に、例えば教員養成大学へ志願する高校生が減っているというような状況もあるわけですから、明るい見通しというか、教育現場はこういうところだという改善につながるような方向をぜひ心がけていきたいと思っています。

○この教職調整額が構想されて実現に移された当時と今とを比較してみますと、確かに、それを取り巻く環境は大きく変化したというか、色々な要因が登場したということは、間違いないのではないかと思います。その一方において、これは見解が分かれるところかもしれませんけど、学校の中の内部組織の組み立て方とか、そこで仕事をしている先生方の考え方とか、あるいは組織文化というのは、そう大きくは変化してないと言えるのではないかと思います。その内と外との間の隔たりがこの問題の今日的状況を作り出しているという一つの要因かもしれません。
また、その中で明らかに当時と今とで大きく変わったというのは、学校の組織運営を進めるに当たって、学校のマネジメントを求めていくということだと思います。それぞれの学校で自主的・自律的に学校を1つの単位にして、そこで組織運営を求めていくという意見や主張が随分大きく今日に占めるようになってきたということは、言えるのではないかと思います。それが例えば、特色ある学校づくりという言葉になったりですとか、学校の裁量という言葉になったりですとか、あるいは学校の自主性・自律性という言葉につながっていくのではないかと思います。言うならば、それぞれの学校においていかに創意工夫を凝らして、まさにマネジメントをしていただけるかどうか。公の教育の中でというところとのすり合わせが問われてくるかと思いますが、そういう意味では、私は、この1の今後の学校の在り方ということについて、とりわけ学校のマネジメントの在り方ということに関心を持ちたいと思っています。当然この話がそれぞれの学校における学校のマネジメントの在り方に随分大きな影響をもたらすことはまず間違いないわけでして、これからの新しい学校のマネジメントの在り方を開いていくような方向としてまた議論ができればいいと思っております。

○今、様々なご意見の中で、現実の状況と、それから今抱えている問題というお話がございましたけれども、この1の今後の学校の在り方、やはり「今後の」ということが私は非常に重要だと思うんです。いろんな現実問題はありますけれども、今後どういうふうにしていったらいいか。例えば部活問題一つとっても、部活は今後どういうふうにしていったらいいのかというような今後の視点がないと、いつも現実とその話の循環の中で行き詰まってしまうと思いますので、その点について考えていく必要があると考えます。

○今後の学校の在り方という場合、今後というのはどこまで見るかというのです。例えば、学校はフランスのように授業しかしないとし、あとのクラブ活動などについては外部に全部お任せするというような形までいけるかどうかという、学校教育法の改正まで含めて議論をするというか、理屈をつけていくというのも一つの方法だと思うんです。そういう展望を持ちながら、今どうするのかということもあると思います。それが1つです。
もう1つは、この話をしていく場合、どうしても財政的な問題が出てくると思います。財政は今のままという形で、財政を増やすような話には一切言及しない形で議論をすることもあるが、それでいいのかどうかという問題もありますから、その辺の問題は委員の私たちで議論をしていいのかどうか、そういうものも一つ課題としてあるのではないかと思います。

○今日皆さんからいただいたご意見でほぼ共通することは、委員の大半は学校現場や教育行政の現場でお仕事されて、そういう現場の実情をかなり熟知されている委員の方が多いんですけれども、この作業部会として審議していく共通の土俵を皆さんで確認するという意味で、まず最初は実態についてきちっと皆さんで確認するというのと、あと、特に1、2、3あたりに関わるような問題について、特に業務改善について先進的ないろんな取り組みをされている学校・自治体というようなこともありますので、その辺も含めてヒアリングを少し先行させながらこの作業部会の共通の土俵というのを数回の審議の中で固めて、それ以降、それぞれ個別的な論点について深めていくような審議を進めていきたいと思っています。
次回以降どういう形でそういう現場の実態についての、ないしはその取り組みのヒアリングをするかということについては、これも事務方と相談をして、どういう方にお願いするか、どういう自治体・学校にお願いするかということについて皆さんに連絡していきたいと思いますので、そのように進めさせていただければと思います。

 

お問合せ先

初等中等教育局学校マネジメントプロジェクトチーム

(初等中等教育局学校マネジメントプロジェクトチーム)