1. | 全額一般財源化の問題点 税源移譲による場合であれ、地方交付税交付金による場合であれ、義務教育費国庫負担金を一般財源化する場合には、これまで義務教育の教職員給与費に充てることとされていた財源が、どのような経費に充ててもよい財源になる。すなわち、義務教育教職員給与費のための財源保障が無くなることを意味する。 このような一般財源化は、都道府県の財政上の自由度を高めることにはなるが、それは結局のところ義務教育費を減らす自由でしかない。したがって、一般財源化は、必ず義務教育の水準を下げる方向に作用するであろう。特に現在都道府県が膨大な地方債残高を抱え、歳出予算に占める公債費の比率が年々増加している現状において、義務教育費国庫負担金の一般財源化は、結果として義務教育費の減額によって公債費を賄うということになる可能性が高い。他の分野の補助金削減による税源移譲が進まない場合には、その危険性はさらに高まるであろう。(教育費、公債費の割合等について、図3参照(PDF:19KB)) また、地方財政の深刻の度は都道府県ごとに大きく異なるから、一般財源化した場合には、都道府県間で義務教育の水準に大きな格差が生じる危険性も高い。 先にも述べたとおり、シャウプ勧告による義務教育費国庫負担金の地方財政平衡交付金への吸収から昭和28(1953)年の制度復活に至る歴史は、地方間の一般的な財源調整制度によっては義務教育費を確保することが困難であり、義務教育の水準確保と地域間の機会均等を保障するためには義務教育費に目的を特定した国による財源保障制度が必要であったという事実を示している。 義務教育費国庫負担制度は、地方財政の状況の如何を問わず、義務教育のための安定した財源を制度的に保障することを目的とする制度である。地方の財政状況が深刻の度を増している今日こそ、過去の教訓に十分学ぶ必要があるであろう。 一般財源化を、税源移譲と地方交付税交付金に分けて検討した場合、それぞれ以下のような問題があると考えられる。
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2. | 義務教育と高校教育の違い 全額一般財源化論の論拠として、公立高校に係る経費については全額一般財源に依っているのであるから、義務教育費を全額一般財源化しても支障は生じないはずだとの主張がある。しかし、これは義務教育の本質をわきまえない議論である。 義務教育と高校教育との間には、憲法に由来する次のような決定的な違いがある。
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3. | 義務教育費国庫負担金を一般財源化したらどうなるか これまでの検討から導かれる結論として、義務教育費国庫負担金を一般財源化した場合には、次のような重大な問題が生じるだろうと考えられる。
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