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第4章 人材確保法及び義務標準法の必要性

 学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(人材確保法)及び公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務標準法)は、義務教育の水準確保のため、それぞれ教職員の質及び教職員の量を確保することを目的とする法律である。これらの法律は、それ自体として都道府県により尊重されるべき規範として、義務教育の水準確保の機能を果たすとともに、義務教育費国庫負担金の算定の根拠となることによって、国による義務教育費の最低保障の基礎をなしている。

1. 人材確保法の必要性
 人材確保法は、教員の給与を一般の公務員より優遇することにより、教員に優れた人材を確保し、もって義務教育水準の維持向上を図ることを目的とする法律であり、学校が抱える課題がますます多様化、複雑化する中、教員に優れた人材を確保していくためには、今後とも必要な法律であると考えられる。
 教員の給与は給与負担者の財政状況の影響を受けやすく、放置しておくと、年々相対的な水準が逓減していく傾向を持っている。人材確保法による給与改善直後の昭和
 54(1979)年において、一般行政職の給与水準を100とした場合の教員の給与水準は122.2であったが、平成15(2003)年においては104.5まで低下している。その間警察職は昭和54(1979)年において121.3、平成15(2003)年においては119.3で相対的な水準に変化が見られない。
 特に、平成15(2003)年の公立学校教員給与の「国立学校準拠制」廃止の法改正に際し、人事院への勧告義務づけ規定が削除され、人材確保法はもはや理念のみの法律となっており、現実には教員の給与が一般公務員より下回らないようにするための最小限の歯止めとしての役割を果たしているに過ぎないといえる。仮にこの法律を廃止したとすると、教員の給与水準は一般公務員よりも低くなってしまうおそれがあり、そうなれば教職に優秀な人材が集まらなくなるであろう。
 アメリカやイギリスなど諸外国においては、教員の給与水準の低さが教員の人材不足の原因であるという問題意識の下、現在教員の給与改善に取り組んでいることは上述のとおりである。人材確保法の廃止は、こうした諸外国の努力の逆を行くことにほかならない。

2. 義務標準法の必要性
 義務標準法は、義務教育の水準維持のために必要な各都道府県ごとの教職員数の標準を示すものであり、各都道府県が教職員定数を設定する際の拠るべき根拠としての意義を有している。また、教職員定数の標準は国庫負担金の算定の基礎とされており、義務教育の機会均等と水準の維持向上のために必要な財源保障の基礎ともなっている。
 義務標準法が、我が国の義務教育の水準の向上のために果たしてきた役割はきわめて大きい。50人学級の実現からスタートした累次の教職員定数改善計画は、義務標準法によってその法的根拠を与えられ、義務教育における教職員配置に関するナショナルミニマムの設定とその改善を支えてきた。
 仮にこの法律を廃止したとすると、国庫負担金による財源保障の算定根拠が失われ、義務教育水準の確保に支障をきたすことになり、これまでの定数改善の成果が崩れ去るおそれが大きい。
 義務標準法については、現行の第7次定数改善計画後の在り方について、今後検討を進める必要があるが、その際には、最低基準性の明確化を図るとともに、1学級編制や教職員定数について市町村や学校の権限と責任をいかに拡大していくべきか、2定数加配制度について、一般定数への転換も含め、いかに地方の自由度を拡大していくべきか、3特別支援教育の在り方の検討とあわせて、特別支援教育に係る教職員定数についての地方の裁量をどのように拡大していくべきかなどの諸課題についても検討する必要があると考える。


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