もどる



1. 学校教育(特に義務教育)に関する主な提言事項

1− 1 義務教育(学校教育)の意義・目的に関する提言

 学校教育は、すべての国民に対して、その一生を通ずる人間形成の基礎として必要なものを共通に修得させるとともに、個人の特性の分化に応じて豊かな個性と社会性の発達を助長する、もっとも組織的・計画的な教育の制度であり、国民教育として普遍的な性格をもち、他の領域では期待できない教育条件と専門的な指導能力を必要とする教育を担当するものである。

 初等・中等教育は、人間の一生を通じての成長と発達の基礎づくりとして、国民の教育として不可欠なものを共通に修得させるとともに、豊かな個性を伸ばすことを重視しなければならない。そのためには、人間の発達過程に応じた学校体系において、精選された教育内容を人間の発達段階に応じ、また、個人の特性に応じた教育方法によって、指導できるように改善されなければならない。

 公教育の内容・程度について水準の維持向上をはかり、教育の機会均等を徹底し、国民的要請に即応して学校教育の普及充実に努めることは政府の任務であって、そのためには広く国民の理解と支持を得て、長期にわたる見通しのもとに計画的に適切な施策の推進をはからなければならない。
【中教審答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」S46.6】

 これからの義務教育は一人一人の能力・適性、興味・関心等に応じた柔軟な教育であることが求められる。特に、中学校段階は、小学校段階と比べ、個人の能力・適性などの分化が一層進展するとともに、内面的な成熟へと進む青年前期に当たっている。中学校教育の在り方はそのような心身発達の特徴に対応した中等教育の視点からとらえ直す必要がある。

 今日、わが国では、中学校卒業生のほとんどの者が高等学校へ進学し、専修学校等への進学者を含めると、当該年齢層のほとんどすべての者が中学校卒業後も引き続き何らかの学習活動を行っている実態にある。このような状況は生涯教育の機会の拡充が図られていく動きの中で、今後とも続いていくものと思われる。そうであるとすれば、今や義務教育において教育内容の完結性を求めることの意味は変化しており、義務教育の在り方はこの視点からも見直しを要する。

 これからの義務教育では、基礎的・基本的な知識・技能を確実に修得させることとともに、一人一人の能力・適性、興味・関心等に応じた教育を行い、自ら学ぶ力や創造的な能力などを育成することが必要である。

 なお、義務教育については、一律の就学強制ということ自体について疑義が出され、場合によっては就学を強制しないなどもっと柔軟なものにしたらどうかとの意見や、情報化社会の進展、生涯教育の普及などによって学習の機会や方法が多様にかつ豊富に用意されていく状況からみて、義務教育の役割を縮小すべきではないかという意見がある。しかし。この点については義務教育制度の本質にかかわる問題があるので、慎重に検討する必要がある。

 我が国の初等教育は、児童期の子どもに対して、将来、社会生活を営む上で、共通に必要とされる知識・技能や態度、さらには、国民としての意識や個人の人格形成の基礎を培う学校段階として位置付けられている。
【中教審経過報告「教育内容等小委員会審議経過報告」S58.11】

 学校の目指す教育としては、(a)[生きる力]の育成を基本とし、知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、子供たちが、自ら学び、自ら考える教育への転換を目指す。そして、知・徳・体のバランスのとれた教育を展開し、豊かな人間性とたくましい体を育んでいく。(b)生涯学習社会を見据えつつ、学校で全ての教育を完結するという考え方を採らずに、自ら学び、自ら考える力などの[生きる力]という生涯学習の基礎的な質の育成を重視する。
【中教審答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」H8.7】

 生涯にわたる豊かなスポーツライフ及び健康の保持増進の基礎を培う。

 児童生徒の発達段階に応じて運動を一層選択して履修することや基礎的な体力の向上を図る。
【中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」H10.7】

 高等学校段階までの初等中等教育は、人間として、また、家族の一員、社会の一員として、更には国民として共通に身に付けるべき基礎・基本を習得した上で、生徒が各自の興味・関心、能力・適性、進路等に応じて選択した分野の基礎的能力を習得し、その後の学習や職業・社会生活の基盤を形成することを役割としている。

 小学校教育段階及び中学校教育段階
社会的自立に向けて、人間として、また、家族の一員、社会の一員として、更には国民として共通に身に付けるべき基礎・基本を着実に学習し定着させる。

a.  小学校教育段階では日常生活に必要な各般の能力を養うことにより、社会生活を営むため必要な資質・能力の基礎を身に付けるとともに、自分の個性を発見する素地を育てる。
b.  中学校教育段階では社会的自立のために必要な資質・能力の育成を図るとともに、生徒の興味・関心、能力・適性等の多様化に対応して、選択による学習を行う。
 特に進学や職業選択の準備のため、自らの生き方を考えて行動する能力や態度及び主体的に進路を選択する能力を身に付けるとともに、その後の学習や職業生活を通じて一層伸張されるべき自己の個性を見いだしておくことが重要である。

 義務教育の役割は、人間として、また、家族の一員、社会の一員として、更には国民として共通に身に付けるべき基礎・基本を習得させるための教育について、国民の誰もがこれを等しく享受し得るように制度的に保証すること。

 初等中等教育の役割は、人間として、また、家族の一員・社会の一員として、更には国民として共通に身に付けるべき基礎・基本を習得した上で生徒が各自の興味・関心、能力・適性、進路等に応じて選択した分野の基礎的能力を習得し、その後の学習や職業・社会生活の基盤を形成すること。

 初等中等教育においては、個人として国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要な基礎・基本の習得を一層徹底するとともに、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることが肝要
【中教審答申「初等中等教育と高等教育の接続の改善について」H11.12】

 古典や歴史なども含めた文化・芸術や、様々なスポーツ等を体験させ、豊かな感性や、たくましく生きるための体力や精神力など、知・徳・体の調和の取れた人格を育てることが重要である。

 学校教育全体にわたる道徳教育を充実し、人間として生きて行く上で必要な基本的態度や情緒を育てる必要がある。
【中教審答申「新しい時代における教養教育の在り方について」H14.2】

 これからの学校教育においては、一人一人の個性に応じて、基礎的・基本的な知識・技能や学ぶ意欲をしっかりと身に付けさせるとともに、道徳や芸術など情操を豊かにする教育や、健やかな体をはぐくむ教育を行い、これらによりその能力を最大限に伸ばしていくことが重要であり、その視点を明確にする。その際には、グローバル化や情報化、地球環境問題への対応など、時代や社会の変化に的確に対応したものとなることが重要である。

 義務教育は、近代国家における基本的な教育制度として憲法に基づき設けられている制度であり、普通教育が民主国家の存立のために必要であるという国家・社会の要請とともに、親が本来有している子を教育すべき義務を国として全うさせるために設けられているものである。このように、国民に教育を受けさせる義務を課す一方、国及び地方公共団体は共同して良質の教育を保障する責任を有しており、義務教育の充実を図っていく必要がある。

 教育の目的を実現する上で、今後とも学校教育は中心的な役割を果たすことが期待されている。特に、今後の学校には、基礎・基本の徹底を通じて生涯にわたる学習の基盤をつくり、共同生活を通じて社会性を身に付けていくこととともに、社会人の再教育など多様なニーズに対応した学習機会の充実を図ることが強く求められている。
【中教審答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」H15.3】

 これから未曾有の激しい変化が予想される社会においては、一人一人が困難な状況に立ち向かうことが求められるが、そのために教育は、個性を発揮し、主体的・創造的に生き、未来を切り拓くたくましい人間の育成を目指し、直面する課題を乗り越えて生涯にわたり学び続ける力をはぐくむことが必要である。このために子どもたちに求められる学力としての[確かな学力]とは、知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力等までを含めたものであり、これを個性を生かす教育の中ではぐくむことが肝要である。
【中教審答申「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」H15.10】

 とくに小学校段階においては、その後の学校生活、社会生活において必要とされる読・書・算の基礎を確実に修得させることや、基本的な生活習慣の形成・定着、ひろい心や自由・自律と公共の精神、社会性などの徳性と豊かな情操の涵養を図ることが必要である。

 中学校教育については、基礎的・共通的な内容をより深く修得させながら、個々の生徒の個性に応じた教育の推進について配慮しなければならない。したがって、生徒の能力・適性の把握。進路に関する意識の確立に資する観点から、高等学校教育との関連にも留意して、選択教科の種類と時間数を拡大する。
【臨教審「教育改革に関する第二次答申」S61.4】

 初等中等教育は、生涯学習の基礎となるものであり、人間形成の基礎として必要な資質を養うとともに、豊かな個性や社会性を培うための基礎的・基本的事項を修得させ、真の学力とすこやかな体、ひろい心、さらに、自らが主体的に学習する意思・態度を育てるという重要な役割を担っている。
【臨教審「教育改革に関する第四次答申」S62.8】

 学校は、子どもの社会的自律を促す場であり、社会性の育成を重視し、自由と規律のバランスの回復を図ることが重要である。

 小学校に「道徳」、中学校に「人間科」、高校に「人生科」などの教科を設け、専門の教師や人生経験豊かな社会人が教えられるようにする。そこでは、死とは何か、生とは何かを含め、人間として生きていくうえでの基本の型を教え、自らの人生を切り拓く高い精神と志を持たせる。

 学校教育においては、伝統や文化を尊重するとともに、古典、哲学、歴史などの学習を重視する。また、音楽、美術、演劇などの芸術・文化活動、体育活動を教育の大きな柱に位置付ける。
【国民会議報告「教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−」H12.12】

 広義の教育における国の役割は二つある。一つは、主権者や社会の構成員として生活していく上で必要な知識や能力を身につけることを義務づけるものであり、もう一つは、自由な個人が自己実現の手段を身につけることへのサービスである。つまり、「義務として強制する教育」と「サービスとして行う教育」である。
 現在の日本の教育では、この二つの教育が混同され、授業内容についていけない子どもには過大な負担を与えながら、それを消化してより広く好奇心を満たしたい子どもには足踏みを強いる結果を招いている。そこで、21世紀にあっては、これまで混同されてきた二つの教育を峻別し、「義務としての教育」は最小限のものとして厳正かつ強力に行う一方、「サービスとしての教育」は市場の役割にゆだね、国はあくまでも間接的な支援を行うことにすべきである。
 例えば、初等中等教育では、教育の内容を精選して現在の5分の3程度まで圧縮し、週3日を「義務としての教育」にあて、残りの2日は、「義務としての教育」の修得が十分でない子どもには補習をし、修得した子どもには、学術、芸術、スポーツなどの教養、専門的な職業教育などを自由に選ばせ、国が給付するクーポンで、学校でもそれ以外の民間の機関でも履修できるようにすることが考えられる。
【「21世紀日本の構想」懇談会報告書「日本のフロンティアは日本の中にある」H12.1】

 学校の役割は1地域コミュニティの中核としての役割2子どもに市民となるための基礎・規律を習得させる役割
【青少年問題審議会答申「「戦後」を越えて−青少年の自立と大人の責任−」H11.7】

 与えられた知識だけに頼るのではなく、ものごとの本質をつかみ、課題を設定し、自ら行動することによってその課題を解決していける人材を育成することが急がれる。また、教養を備えた各界におけるリーダーの養成も必要である。
【日本経団連提言「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」H16.4】

 初等中等教育段階の学校の基本的な役割は、将来一人前の社会人として生きていくために最低限必要な「基礎学力と社会ルール」を、子どもたちがしっかりと習得できるようにすることである。そのうえで、これからの学校には、子どもたちがそれぞれ好きなことや得意なことを見つけ、自らの個性を自覚し、それをもとに自分の将来について考えていくための手助けをしてほしい。
【経済同友会提言「学校と企業の一層の相互交流を目指して」H13.4】

 高校卒業時までに、社会人としての力を身に付けることを教育の目標として、明確に掲げる必要がある。現在でも「生きる力」という言葉が大まかにその方向を指し示してはいるが、具体的な項目や育成方法まで整備されているとは言い難い。義務教育修了時には、生きていくために必要な、「確かな基礎学力と社会ルール」を身に付け、その上に多様な個性、発想力、創造力を発揮できるためのプログラムを創っていくことが必要である。特に、個々人の違いや多様性を認めた上で、自ら自分の価値や存在意義を発見し、「なぜ学ぶのか」「なぜ働くのか」「自分は一体何がしたいのか」といったことを突き詰めて、深く考えさせる教育の場を用意する必要がある。そのためには、予め答えがあることを前提として、選択肢の中から答えを選ばせるような問題形式を改め、答えを自分で書かせるものに改めていく必要がある。
【経済同友会提言「若者が自立できる日本へ」H15.4】

 21世紀の学校教育の最終的な目標
1日本という国、日本に住む一人ひとりが、世界の多様な文化や歴史に目をひらき、理解し、受け入れること。2それができる「個人」の意識・能力・倫理をうみ育てていくこと。このふたつのことが、21世紀の学校教育の最終的な目標となろう。

 グローバライゼーションの時代の、教育の基本目標

1「社会性」の形成…… 社会性《互いによく知らない人々(市民)が集まっても、きちんと社会を運営していける能力》は、単に知識として教えるだけでなく、学校生活全体のなかで、教育の制度、仕組みや学校文化を通して、日常的に体得していくべきものである。
2「知/技能」の形成… 将来役に立つ知識や技能の教授は、学校教育の基本的な課題である。しかし、近代の学校教育は、同時に、巨大な制度や共同性の権威に「従順に従属する人間」を作り出す傾向があった。これからの教育は、子どもたちを自由な主体とし、一人ひとりの個人としての尊厳を守るようなシステムを形成しなければならない。
3「表現力」の形成…… 自分の考えていることや、意図や感情を、正確に、効果的に表現する能力を形成することは、もっとも重要な教育の目標である。また、会話や討論、交渉の能力、文書表現やデザインの能力、美的な感受性、礼儀やマナー、公共的なことがらに対する配慮など、他者とかかわる社会的な「表現の様式」を培うことも必要である。

 小中学校は「基礎教育」と位置づける
 小中学校は「基礎教育」、すなわち、《人間が人間らしく生きていく、市民生活の基礎を築く教育の場》と考え、これまでどおり公教育のかたちで行なう。学校に通い、授業に出席すれば卒業資格が得られる。小中学校をもっと自由に設置できるようにして、親の選択の幅を広げる。

 高等学校は「基本教育」と位置づける
 高等学校は、「基本教育」、すなわち、《日本社会の産業・経済・制度・科学技術・文化の基本学力を与える教育》と考え、これまでの教育形態に加えて、「高等学校学力検定試験(高検)」を実施する。親の義務は、「子どもを小中学校に通わせて卒業させること、または高検をパスさせること」である。
【社会経済生産性本部「選択・責任・連帯の教育改革〜学校の機能回復をめざして〜」H11.7】

 子どもの「生きる力」と社会性を育む
18歳までに、社会人としての「自立した個人」を確立することを学校教育の目標とする。
 そのため、学校で基礎学力を重視した教育を進めるとともに、総合学習や地域・社会との関わりを重視した体験活動等を通じて学ぶ意欲を高め、「生きる力」を育み、集団や社会のルールづくりを学ぶことを重視する。そして、そのことを通じて職業生活や市民生活に円滑に移行できる学校教育に結びつける。
【日本労働組合総連合会「教育が未来を創る:連合・教育改革12の提言」H14.12】


1− 2 義務教育制度の改革に関する提言

[学校制度と発達段階との関係]
 初等中等教育は、人間の発達過程に応じた学校体系において、精選された教育内容を人間の発達段階に応じ、また、個人の特性に応じた教育方法によって、指導できるように改善されなければならない。
【中教審答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」S46.6】

[教育課程の区切り方、学校間連携の在り方]
 人間の発達段階に対応した漸進的な学制改革を推進するため、幼・小一貫教育、中・高一貫教育、または小・中・高の区切り方を変えることによって各学校段階の教育を効果的に行うことを試行的に行う。

 現在の学校体系について指摘されている問題の的確な解決をはかる方法を究明し、漸進的な学制改革を推進するため、その第一歩として次のようなねらいをもった先導的な試行に着手する必要がある。
4、5歳児から小学校の低学年の児童までを同じ教育機関で一貫した教育を行うことによって、幼年期の教育効果を高める
小学校と中学校、中学校と高等学校のくぎり方を変えることによって、各学校段階の教育を効果的に行なう
幼年期のいわゆる早熟化に対応する就学の始期の再検討
【中教審答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」S46.6】

 まず、幼稚園・小学校の接続についてである。幼稚園年長児と小学校低学年の児童は、例えば興味を示す対象、基本的な運動能力など心身発達の面で共通性が高いといわれており、このような心身の発達の状況からみて、幼稚園と小学校低学年で教育内容の構成の仕方や指導の方法に大きな差異がみられることは問題があるので、その接続の在り方について検討する必要がある。

 次に、中学校・高等学校の接続についてである。中学校の教育内容については、これまでは、義務教育の最終段階という観点から、中学校修了時点で完結することが強く意識されていたが、今日の高等学校への進学状況及び中学校教育を中等教育としてとらえ直す視点にかんがみ、高等学校の教育内容とのより一層の一貫性をもたせる必要がある。
【中教審経過報告「教育内容等小委員会審議経過報告」S58.11】

 幼児期から初等中等教育を一貫してとらえて各学校段階間の連携を一層強化するため、カリキュラムの一貫性、系統性をより一層確立するとともに、学校段階間のより望ましい連携や接続の在り方について総合的かつ多角的な観点から検討する必要がある。
【中教審答申「初等中等教育と高等教育の接続の改善について」H11.12】

 幼稚園・保育所と小学校との接続については、就学前教育の普及状況、心身の発達の連続性、幼児期および児童期の発達の特性を踏まえて、幼稚園・保育所と小学校の教育内容、指導方法の継続性を強化する。小学校と中学校の接続については、小学校から中学校への移行を円滑にするため、小学校高学年においては、教科担任の比重を高めるようにする。中学校と高等学校との接続については、義務教育の最終段階としての中学校の教育内容の完結性を見直し、青年期の教育としての連続性を重視する観点から、高等学校教育との内容の一貫性を強化する。
【臨教審答申「教育改革に関する第二次答申」S61.4】
 学校間の縦の連携
小学生なら中学校、中学生なら高等学校、高校生なら大学というように子どもが次のステップでの学習の場を体験することは、今後の自分の進路について真剣に考える良い機会となる。よって、上級の学校に児童・生徒が出かけて行って授業を受けたり、上級の学校から教員が来て授業をするなどといった、学校間の縦の連携を図っていくことが重要である。
【経済産業研究所・子どもの幸せと自立を考える研究会報告書H14.9】

[学校以外の教育との関係]
 インターナショナルスクールの卒業者の進学機会の拡大
【総合規制改革会議答申「規制改革の推進に関する第1次答申」H13.12】

 教育改革は一日にしてならず。教育改革の過渡期においても、子どもたちは適性な教育を受ける権利がある。しかし、過渡期の現在、既存の学校システムに背を向ける不登校の子どもたちが増えていることや、多くの子どもたちが学校外活動(フリースクール、ホームスクール、学習塾などを含む)に費用と時間をかけている現実がある。これらの動きを前向きにとらえ、二つ目のコンセプトとして「学校外教育を、学校教育と同じように考え、大切にしていこう」を掲げる。これは、既存の学校を相対化することで、学校教育の分野にオルタナティブな考えを導入するものである。
【経済産業研究所・子どもの幸せと自立を考える研究会報告書H14.9】

[選択機会の拡大]
 教育においても、国民の教育に対する要求の高度化、多様化に柔軟に対応し、これまでの教育の画一性、閉鎖性の弊害を打破する上で、「選択の機会の拡大」を図ることが極めて重要である。このためには、教育行政や制度もまた柔軟で分権的でなければならず、関連する諸規制の緩和が必要である。
【臨教審答申「教育改革に関する第四次答申」S62.8】

 多様な選択機会の確立(教育側における競争原理の導入)
学生がその目的や意欲、能力にふさわしい教育機関を主体的に選択できるよう、多くの峰を持つ教育体系を構築すべきである。そのためには、教育界側の自由裁量の余地を拡大して競争原理を導入し、各教育機関が自己責任の原則に基づいて創意工夫を凝らし、学生のニーズに即し多様性に富んだ特徴ある教育が実施できるようにすべきである。

 通学区域を弾力化する自治体が出始め、公立小・中学校に通う生徒は、同一ブロック内であれば自由に学校を選択できるようになった。それにより、保護者側にも学校を選ぶ責任が生じ、学校教育に対する意識の向上が図られる。また、教育側においても、競争原理が働くことにより、各学校による創意を生かした特色ある教育を推進できる。
【経団連提言「グローバル化時代の人材育成について」H12.3】

 学校選択制度を各地で積極的に導入する。学校間の切磋琢磨により、より質の高い教育の提供を目指す各校の努力を促す。教育の受け手である子どもや保護者の希望に合った学校を選択できるようにする。
【経済同友会提言「学校と企業の一層の相互交流を目指して」H13.4】

 子供達に多様な学習機会を用意し、生徒本人や保護者の責任のもと、自らトライするチャンスを選択させ、自らの人生・キャリアを考えさせるような仕組みを創る。 2002年4月に小・中学校の設置基準が明確化されたが、今後、多彩な教育理念に基づく私立の学校が設置されたり、多様な主体による学校設置を認めたりして、学校間の競争を促進すべきである。例えば、教育改革国民会議で提唱された「コミュニティー・スクール」(市町村が設置した学校を民間団体が運営し、柔軟なカリキュラムの策定や地域住民の運営への参加、学校長の公募などを特徴とする学校)や、アメリカの「ボーディングスクール」(スポーツ・文化・芸術・社会奉仕・リーダーシップ教育に重点をおく少人数クラスでの個別教育を行う全寮制の学校)、インターナショナルスクールのようなものが考えられる。その際、学んでいる途中で自分の志向が選択したものと異なってきた場合は、他の進路選択が可能になるような柔軟な仕組みも用意する。
【経済同友会提言「若者が自立できる日本へ」H15.4】

 学区制を廃止して、学校を連帯の場に
・・・学区制の廃止は、学校を連帯の場に生まれ変わらせる
 小・中学校の学区制は、家庭(親・子ども)から、学校を選択する自由を奪っている。学校にも生徒を選ぶ権限がない。学区制を廃止することにより、学校は行政が与えた枠にすぎない運命共同体から、学校と家庭、生徒と教師が、互いに選びあった「連帯の場」に生まれ変わる。学校に自由に通う生徒と親たちのネットワークができあがり、これが学校を核とした地域社会(コミュニティ)再建の出発点となろう。
【社会経済生産性本部「選択・責任・連帯の教育改革〜学校の機能回復をめざして〜」H11.7】

[競争的環境の重視]
 義務教育から大学までの教育の質を高めるため、競争環境の一層の整備、地方の自主性の尊重等を通じた教育改革を推進する。初等中等教育については、今まで以上に児童生徒に対する教育投資の向上を図り、投資効果を高めることを目指す。地方の自主性を一層尊重するとともに、学校や教員の個性と競争を重視する。
【経済財政諮問会議・経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003)H15.6】

 「均質性からの転換」「外部の人材やノウハウを活用」という考え方に立ち教育現場を改革するために、教育行政に対して、「多様性」「競争」「評価」を基本とした取り組みを求めたい。
【日本経団連提言「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」H16.4】

 今や、学校も好むと好まざるとにかかわらず、グローバルな市場社会に向かう変革の中にある。学校の裁量を拡大し、主体的活動が行える改革が徐々に進みつつあるが、子供達に直に接する教員の質と意欲を、より高めていく必要がある。学校をさらに開かれた競争社会にすることで、学校の特色を活かした学校間の競争や、生徒間の個性を活かした競争が行われるようにする。
【経済同友会提言「若者が自立できる日本へ」H15.4】

[個に応じた教育システム]
 中等教育段階においては、とりわけ一人一人の生徒の能力・適性等に応じた学習指導が適切に行われるよう配慮しなければならない。生徒の学習意欲を高め、教育内容を確実に身に付けさせるためには、生徒の実態等に応じ、多様な指導方法の工夫が必要である。学習の遅れがちな生徒については補充指導の機会を設けるなど特別な指導を行ったり、また、中学校段階においても、教科によっては生徒の学習内容の習熟程度に応じた指導を行うなど、一斉指導のみでなく、個々の生徒の特性を配慮した多様な指導方法を弾力的に進めていく必要がある。
【中教審経過報告「教育内容等小委員会審議経過報告」S58.11】


 小・中学校においては、子供たちの発達段階に即し、ティーム・ティーチング、グループ学習、個別学習など指導方法の改善を図りつつ、個に応じた指導の充実をはかる。
【中教審答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」H8.7】

 教育において機会均等を確保するための努力を引き続き行うとともに、一人一人の能力・適性に応じた教育を展開していくことが必要。

 小・中・高の各段階における飛び級については、実施しないことが適当。

 学校制度の複線化構造を進める観点から、中高一貫教育の選択的導入を図る。

 稀有な才能を持った子どもたちのための教育上の例外措置として、大学入学年齢の特例を設け、学校制度の弾力化を図ることや、同時に、学習の進度の遅い子どもたちに対して十分な配慮を行う。
【中教審答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第二次答申)」H9.6】

 この中等教育の段階については、中学校と高等学校に分割することなく、カリキュラムや生徒指導に一貫性を持たせ、青年前期の内面的な成熟を促進し、十分な観察による一貫した学習指導・進路指導を行う必要性が従来から指摘されており、研究・実践も積み重ねられて、平成11年度から中高一貫教育を実施するための制度が導入されたところである。この中高一貫教育を実施する学校が全国の生徒や保護者にとって実質的に選択が可能となるよう、できるだけ速やかに高等学校の通学範囲に少なくとも1校は設置されていることが必要であり、このための整備を促進していく必要がある。
【中教審答申「初等中等教育と高等教育の接続の改善について」H11.12】

 一人ひとりの資質や才能を引き出し、独創性、創造性に富んだ人間を育てることができるような教育システムに変えていくことが必要である。

 一人ひとりの資質や才能を生かすために、これまでの一律的な教育を改め、基礎的な知識を確実に身に付けさせるとともに、それぞれが持って生まれた才能を発見し伸ばし、考える力を養う学習を可能にすべき。(具体的には、少人数教育、習熟度別学習、学年の枠を越えて特定の教科を学べるシステム、中高一貫教育の推進、飛び入学)
【国民会議報告「教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−」H12.12】

 児童や生徒の能力・適性に応じた教育機会の提供の推進
【総合規制改革会議答申「規制改革の推進に関する第1次答申」H13.12】

 義務教育面では、時代や社会の要請に応え、基礎・基本の十分な定着を図るとともに、コミュニティ・スクール導入に向けた制度整備や習熟度別少人数指導等、地域の実情や子どもの個性に応じた多様な教育・指導方法の工夫を進め、子どもの学習意欲の向上も含め「確かな学力」の向上を目指す。この一環として、教員の一律処遇からやる気と能力に応じて処遇するシステムへの転換を進める。
【経済財政諮問会議・経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003)H15.6】

 飛び入学制度についての検討等(平成16年度から検討開始)
 個人が年齢に過度にとらわれることなく、能力に応じた教育機会を与えられ、自らの能力を伸ばすことができるよう、国民的な理解を得つつ、学校教育制度における年齢の取扱いを含めた検討を進めることは重要である。
 このため、18歳未満での大学入学を可能とする飛び入学制度については、飛び入学制度の実施状況や課題等を調査し、その結果に基づき、飛び入学制度の更なる弾力化などその解決策について検討を開始すべきである。
 また、高等学校以下で、異なる学年の児童生徒による学習集団を編成し行う習熟度別指導の可能性について、検討を進めるとともに、学校教育における年齢の取扱いも含めた学校教育制度の弾力化について検討を進めるべきである。
【総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第3次答申」H15.12】

 個に応じた柔軟な進級、進学の在り方を検討
【青少年問題審議会「戦後」を越えて−青少年の自立と大人の責任−」H11.7】

 現行の初等中等教育は、伸びる子に対してより高度な学習機会を与えて能力を伸ばすことや、自律的かつ継続的に粘り強く学習する姿勢を身に付けさせるという点で、不十分である。教育行政、学校・教員には、これまでの教育制度で重視してきた学習到達度の全体の底上げに加えて、トップ層の強化に向けた取り組みを期待したい。
【日本経団連提言「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」H16.4】

 学び直しのできる学校教育・職業教育に改革する
日本は過度の年齢主義による入学・就職システムが根強いため、学校教育のやり直しや職業生活の再チャレンジができくい状況にある。また、資源のない日本が、世界に通用する技術開発力を高め、かつ世界をリードしていくためには、多様な能力を導き出す高等教育、職業能力開発が必要である。
 そのため、入試制度や入社制度等の改革を通じて、「学歴社会」から「学習歴社会」へ転換し、過度の年齢主義による入学・就職システムから脱却しなければならない。そして、多様な経験を積んでから、再び学校等で学び直しができ、それらが入学や就職等で正当に評価される社会のしくみ作りを進めるなど、“学びの場”の多様性を拡げる必要がある。
【日本労働組合総連合会「教育が未来を創る−連合・教育改革12の提言−」H14.12】

[教育成果の出口管理]
 高等学校卒業時点で全国で一斉に試験を行って到達度評価を行うべきであるという考え方もあるが、高等学校の場合は、生徒の発達段階や約97%の進学率という実態から生徒の能力・適性、興味・関心に応じた多様な教育が求められるため、教育の一環である評価も多様になる。したがって、大学進学を希望しない者まで含めて全国レベル等の共通試験を実施して、卒業を認定するようなことは適切ではない。
【中教審答申「初等中等教育と高等教育の接続の改善について」H11.12】

 入口管理から出口管理への移行
教員には、本当の能力を備えた学生を社会に送り出す責任がある。従って、学生にどのような教育を行ない、どのような成果をあげたのか、広く社会に開示すべきである。このため、入試を重視した入口管理の教育を是正して出口管理を行なう必要がある。これによって、まず基礎的な学力をしっかりと身につけた上で、個性を伸ばすことができる。

  小・中・高校、大学の各卒業段階における到達度評価の実施
小・中・高校、大学の各卒業段階で、学習した教科の基本的な内容の理解度を判断するために各学校が学習到達度試験を実施し、生徒の学力評価を行なうとともに、これを学校・教員の教育成果の評価としても活用すべきである。その際、学習到達度試験における問題策定基準が全国レベルで策定されることが望ましい。

【経団連提言「グローバル化時代の人材育成について」H12.3】

[国と地方の役割]
 教育は国の基盤であり、その行政責任は重い。重い故に、時代に即した国と地方の適切な役割分担と連携協力が常に求められる分野である。現在の制度見直しの中で掲げられている「評価と公開」という方針を、当議会としても支持する。価値観が多様化する中で、教育も多様化せざるを得ないが、市町村をはじめとするそれぞれの主体が責任を分担しつつ積極的に取り組み、国は、そうした取り組みを支援し、評価と公開を継続することを通じて、我が国全体の教育とその水準に対する責任を果たしていくべきものと考える。
【地方分権改革推進会議「事務・事業の在り方に関する中間報告」H14.6】

 初等中等教育、就中、義務教育に関して、制度の根幹を維持することについての国の役割の重要性は否定しないが、しかし、教育が実施されるのはあくまでもそれぞれの地域、それぞれの学校であり、我が国としての教育の枠組みの中で、地域が十分にその教育力を発揮できるようにすることが重要である。
【地方分権改革推進会議「事務・事業の在り方に関する意見」H14.10】

[その他]
 現行の4月入学制は、長年にわたり、国民の間に定着してきた制度であるが、秋季入学制は、今後の我が国の教育にとって、以下のとおり、大きな意義が認められる。
 このため、今後の社会全体の変化を踏まえ、国民世論の動向に配慮しつつ、将来、我が国の学校教育を秋季入学制に移行すべく、関連する諸条件の整備に努めるべきである。
【臨教審答申「教育改革に関する第四次答申」S62.8】


ページの先頭へ


出典)

中央教育審議会
 答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」(S46.6)
 経過報告「教育内容等小委員会審議経過報告」(S58.11)
 答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」(H8.7)
 答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第二次答申)」(H9.6)
 答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」(H10.7)
 答申「新しい時代を拓く心を育てるために−次世代を育てる心を失う危機」(H10.9)
 答申「初等中等教育と高等教育の接続の改善について」(H11.12)
 答申「新しい時代における教養教育の在り方について」(H14.2)
 答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(H15.3)
 答申「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」(H15.10)

臨時教育審議会
 答申「教育改革に関する第二次答申」(S61.4)
 答申「教育改革に関する第四次答申」(S62.8)

教育改革国民会議
 「教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−」(H12.12)

経済財政諮問会議(閣議決定)
 「構造改革と経済財政の中期展望」(H14.1)
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003)」(H15.6)

総合規制改革会議(閣議決定)
 「規制改革の推進に関する第1次答申」(H13.12)
 「規制改革の推進に関する第3次答申」(H15.12)

地方分権改革推進会議
 「事務・事業の在り方に関する中間報告」(H14.6)
 「事務・事業の在り方に関する意見」(H14.10)

「21世紀日本の構想」懇談会
 報告書「日本のフロンティアは日本の中にある」(H12.1)

青少年問題審議会
 答申「「戦後」を越えて−青少年の自立と大人の責任−」(H11.7)

独立行政法人 経済産業研究所
 「子どもの幸せと自立を考える研究会報告書」(H14.9)

経済団体連合会(経団連)提言
 「グローバル化時代の人材育成について」(H12.3)

社団法人 日本経済団体連合会
 「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」(H16.4)

経済同友会提言
 「学校と企業の一層の相互交流を目指して」(H13.4)
 「若者が自立できる日本へ」(H15.4)

財団法人 社会経済生産性本部
 「選択・責任・連帯の教育改革〜学校の機能回復をめざして〜」(H11.7)

日本労働組合総連合会
 「教育が未来を創る−連合・教育改革12の提言−」(H14.12)


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ