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資料4




イギリスの学校の管理運営


(1)学校の権限
   学校は,1教育課程(カリキュラム),2教職員の任用及び3学校予算の運用の主に3つの事項に関する権限・責任をもっている。
1教育課程(カリキュラム)
   学校は,国の教育課程基準である全国共通カリキュラム,宗教教育を含む当該地方の教育課程に関する基準に基づいて教育課程を編成する。各教科への時間配当は定めらておらず,学校が時間配分を決定する。ただし,全国共通カリキュラムの必修教科は,教育段階や地域により異なるが,授業時間全体の8割以上を占めている。
2教職員の任用・校長の選考
   教職員の規模は学校が決め,採用の募集,選考あるいは解雇の決定を行う。校長及び副校長の選考に当たっても学校が独自に行う(地方教育当局は形式上の任命者)。ただし,地方教育当局はこうした人事に関して協議を受けたり,助言を行う。
3学校予算の運用
   学校予算額は,主に生徒の数と年齢を基に地方教育当局により総額が決められ,その具体的な運用は学校の裁量に任される。
   ただし,予算の大半を占める教員給与は,国が定める全国教員給与表に従うため,実際の学校の裁量の余地は大きくない。

(2)管理運営組織
1学校理事会の構成
   学校には学校理事会(school governing body)が置かれ,上記の学校の権限を中心に管理運営上の意思決定機関の役割を果たしている。実際の管理運営は,学校理事会による学校の管理運営規則を定めた学校管理規則(articles of government)と理事会規程(instrument of government)に基づいて行われる。
   学校理事会は,親,地方教育当局,教員,地域の代表及び校長などからなる。公立学校(community school。従前はcounty schoolと呼ばれた[注])の学校理事会構成は,表1のように定められている。従来理事の構成は,生徒数を基準とした学校規模により決まっていたが,「2003年学校管理(理事会構成)規則」により,生徒数による区別,初等学校と中等学校の区別は廃止された。(新しい理事会構成の導入には2006年までの移行期間が設けられている。)

注:    公財政により設置・維持される初等中等学校(maintained school)には,公立学校(community school 従前はcounty schoolと呼ばれた)のほか,宗教団体等の民間団体により設立された有志団体立補助学校(voluntary aided school)や地方補助学校(foundation school)などがある。学校の管理運営の枠組みや学校理事会の構成はほぼ共通している。


表1   公立学校の学校理事会の構成
表1公立学校の学校理事会の構成

表注: 理事の任期は原則4年間(校長は除外)。各理事は以下のようになっている。
   親の代表(Parent governor):当該校の生徒の親により選出される。候補者の条件は,選出時に子どもが在籍していること。立候補者がいない場合理事会による任命も可能。
   地方教育当局の代表(LEA governor):地方教育当局により任命される。
   教職員の代表(Staff governor):教職員の中から互選される。校長のほか,教員及び職員を必ず含むが,教職員代表が2名の理事会の場合は,校長と教員とする。従前は教員代表と職員代表は別れていた。
   地域の代表(Community governor):理事会により,地域の利益代表として任命する。従前はCo-opted governorと呼ばれた。
   後援理事(Sponsor governor):理事会により,後援理事の設置の可否を含み,任命する。
   校長は理事になるかならないかを選択する。空席の場合他者により埋めることは出来ない。

   学校理事会の開催については,全体会のほかに,権限・責任の内容に応じて担当委員会を設けている。全体会は学期に一度開かれるが,担当委員会は,委員会により学期に一度程度開かれるものや毎月開かれるものもある。


2学校の管理運営における校長と学校理事会の責任分担
   公立学校は,学校理事会の監督(direction)の下に運営されるが,実際の管理運営を進める上で,校長と学校理事会の関係は,どちらか一方が上に立つというものではなく,両者は管理運営の主要領域において意思決定機関(理事会)と執行機関(校長)としてそれぞれが相補って(close partnership)責任分担するとされている。両者の主な役割は表2のようである。

表2   管理運営における校長と学校理事会の役割

区   分 校   長 学 校 理 事 会
教育課程
法令及び学校の方針の枠内で教育課程を策定
教育課程の編成,実施
校長と協議の上,法令の定める範囲で,性教育を含む幅の広い均衡のとれた方針の決定
宗教教育を含む全国共通カリキュラムに基づく教育課程の保証
児童生徒の学習到達度に関する達成目標の設定
監査と校長からの報告による教育成果の確認
人   事
教職員の配置計画
理事会の委任に基づく教職員の選考
教職員の指導・管理
規律の維持,苦情・不満の処理(理事会あるいは人事担当委員会の求めに応じて報告)
理事会に代わって教職員及び団体と協議
教職員規模の決定
教職員の任用手続きの決定
校長及び副校長の選考。その他の教職員の選考に関しては校長に委任も可能
関係法令に則り,勤務条件,規律,停職及び解雇の手続き策定
全国教員給与表に基づく校長及び副校長の給与の決定及びその他の教職員の給与方針の策定・実施
解雇の決定
財   政
学校予算案の作成
予算の執行
理事会(あるいは財務担当委員会)に定期的に会計報告
予算についての最終的な責任
予算の検討及び承認
予算執行の監査及び結果の評価
以上の点は,予算の承認を除いて校長を含む財務担当委員会に委任可能




英国の学校理事会と校長、地方教育行政当局との関係について
(学校理事への手引−2001’英国教育訓練省より)


1. 校長との関係
   教職員の服務監督も理事会の権能であるが、校長に委任することも可能。
   校長の固有の権能については、理事会がこれを取り上げることはできない。
   校長は、学校の内部組織、運営、管理に責任を負う。理事会は、学校運営に関する日常的な意志決定には関与しない。
   理事会は、学校の教育水準の向上と目標の達成に責任を負う。
   理事会は、学校運営に関する全般的責任を負い−大きな戦略(基本方針目標など)、その範囲内で校長が教育活動を実施する。
   
2. 地方教育行政当局との関係
   学校に関する保護者等からの不満について、一義的には、理事会が対応すべきだが、解決できない場合には、地方教育行政当局に委ねられる。
   教員の任命権者は、あくまでも地方教育行政当局。地方教育行政当局は、教職員の採用、解雇に関する理事会の意志決定に意見を述べることができる。
   校長、教頭については、理事会内にパネルを設置し、全国公募することが必要。地方教育行政当局は、パネルで選考された候補者について不適当と考える場合には、意見を述べることができ、パネルは、理事会に校長候補の推薦を行う場合、この意見を考慮しなければならない。資格要件などを満たさないと判断される候補者について、地方教育行政当局は、任命をしないことができる。
   教員について、地方教育行政当局は、理事会に対して候補者を提示することができる。理事会において、提示された候補者を採用しないこととした場合には、公募することになる。
   地方教育行政当局は、免許状等の資格要件を欠く場合以外に、候補者の身体、メンタル上の事由により任命しないことができる。




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