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チャータースクール制度が抱える課題について


   米国においてチャータースクール制度が最初に創設されてから10年余りが経過しているが、これまで各州で様々な制度改正が行われている。これは、そもそもチャータースクール制度が州や学区の法令・規則の適用を免除することを前提としていたものが、この10年余りの間に様々な課題・懸念が明らかになってきたためである。
   今回の調査においても、複数の関係者から、チャータースクール制度にはまだまだ改善の余地があり、絶えず変化している旨の指摘があった。

   今回の調査において、チャータースクール制度が抱える主な課題・懸念として、関係者から以下のような指摘があった。

コストニュートラル(追加財政支出がないこと)に対する疑念
小規模校の増加や行政側の監督体制整備のため、全体としての支出が増加
学校事故についての不明確な責任の所在
チャータースクールにおいて重大な事故が発生した場合の責任関係が不明確
営利企業等によるCounseling out(学業不振者等の追い出し)の懸念
利潤確保のためのコスト削減や、州統一テストの成績向上のための手段としての濫用の懸念
人種分離/社会経済的格差による差別発生の懸念
マイノリティや貧困地区に住む子どもたちを排除するような学校の設置
評価の在り方・中立性についての課題
州統一テストの成績中心の評価についての課題、評価の公平性についての懸念
教育内容の中立性についての懸念
特定の人種・思想・宗教等に偏った教育が実施された事例が発生
組織管理能力・予算の適正執行に関する懸念
組織の空中分解、予算の不適正な執行により、閉鎖された事例が発生
不適切な教育環境
教育の場に相応しい校地校舎が確保できず、劣悪な環境で教育が行われる懸念
学校閉鎖時の混乱
教育機会の損失についての懸念
営利目的等での制度の悪用
いわゆるホームスクーリングを受けてきた子どもたちを利用した、制度の悪用等


   上記に加えて、仮に我が国において同様の制度を創設しようとする場合、文化的・社会的背景の違いから、米国では想定されないような問題が生じる可能性がある。


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