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米国におけるチャータースクール制度創設の背景について


1. 学区間の経済格差・地域的な教育環境格差の存在
米国においては、一般的に州が公教育に関する法令を定め、地域ごとの学区(school district)が公立学校を設置し、管理運営を行っている。公立学校の設置・管理運営に係る経費は、州によって異なるものの、平均すればおおよそ州と学区が折半して負担している。しかしながら、学区の教育予算は、一般的に所管地域の住民の財産税(property tax)で賄われており、地域的な格差が大きい。これが直接的に教育環境の地域格差に結びついている。(財政力が弱い地域では、教員給与圧縮のため、授業日数を削減したり、教員のレイオフを行うようなことがしばしば起こる)
特に、都市部においては、往々にしてマイノリティが多く住む地域と、財政的に困窮している地域が重複しており、そのような地域では、通常の公立学校では十分に対応しきれないような「危機に瀕した(at risk)」子どもたちがいる。

2. 政治的支持
政治的な観点からは、一般的に以下のような点が指摘されている。
保守派は、学校の選択の幅の拡大により、市場原理を通じた公教育の活性化を支持している。
リベラル派は、特に都市部の貧困地域における教育環境の改善の手段として、チャータースクールを支持している。

3. 学区教育委員会の運営上の課題
学区教育委員会は、市町村等の行政機関からは独立した存在であり、殆どの場合、教育委員は住民による直接選挙によって選ばれる。学区教育委員会は州が定めた教育に関する法令・規則に従いつつ、その地域における初等中等教育段階の公立学校の管理運営についての権限と責任を有している。
一方、教育委員の選挙における当落は、地域によっては教員組合の意向に強く影響されることがあり、そのような地域では、教育政策は教員組合の意向に沿ったものになりやすい。
一般的に学区教育委員会は教員組合と労働協約を締結する。学区によっては、この労働協約が、教員の処遇のみならず学校運営に関わる事項などを詳細に規定することがあり、そのような協約の存在が、学区教育委員会による教育改革の取組や、教員の発意による教育改革の試みを阻害しているとの指摘もある。


  上記以外にも、地域住民の教育参加についての伝統など、様々な要因が存在していると考えられる。



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