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我が国の公立学校の運営は、関係法令に基づき、教育委員会及び学校長の権限と責任の下で行われている。こうした学校の運営の在り方は、学校運営に関する責任の所在を明確にするとともに、一定の教育条件・教育内容を確実かつ均等に保障する上で重要な役割を果たすものであるが、一方で、学校の運営の状況が保護者や地域住民等にわかりにくく、学校の閉鎖性や画一性などにつながりがちであるとの指摘もなされてきた。
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学校は地域社会を基盤として存在するものであり、充実した学校教育の実現には、学校・家庭・地域社会の連携・協力が不可欠である。
これまでも、地域に開かれた信頼される学校づくりを目指して、全国の学校で様々な取組が進められてきた。例えば、平成12年に導入された学校評議員制度は、すでに半数以上の学校で導入されている。また、学校側からの動きだけでなく、保護者や地域社会からの学校への働きかけも活発化してきた。例えば、学校支援のための様々なボランティア活動などの取組も各地で進みつつある。
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このような中で、近年、学校と地域社会との連携・協力を更に一段階進め、地域の力を学校運営そのものに生かすという発想が出てくるようになった。平成12年の教育改革国民会議報告においては、「新しいタイプの学校(“コミュニティ・スクール等”)の設置を促進する」という提言が行われ、文部科学省では、平成14年度から、モデル校を指定して、新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究を実施している。
また、政府の規制改革推進3か年計画(再改定)においては、「コミュニティ・スクール導入のための制度整備」に関して、法令上の規定を設けることについて平成15年中に検討し結論を出すことが決定されているところである。
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経済・社会の大きな構造改革の中で、可能な限り地方分権を進め、権限と責任を「現場」に近いところに移していこうとする流れが急速に進んでいる。また、従来は公的部門が単独で担ってきた分野についても、住民等に参画を求め、その力を生かすことによってより良い成果を実現していこうとする動きが顕著となりつつある。公立学校の運営に保護者や地域住民の参画を求めることにより、学校を内部から改革しようという考え方は、このような社会全体の大きな改革の流れの中に位置付けられるものである。
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都市化の進行等に伴い、多くの地域でかつての地縁に基づく地域社会が変容し、「地域の学校」という考え方が次第に失われてきた。しかし、その一方で、地域住民や保護者の側に、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をより良いものにしていこうとする意識が生まれつつある。こうした意識の高まりを的確に受け止め、学校と地域住民・保護者が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となるような仕組みを構築していくことが求められている。
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各学校の運営に保護者や地域住民が参画することを通じて、学校の教育方針の決定や教育活動の実践に、地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるとともに、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりが進むことが期待される。学校においては、保護者や地域に対する説明責任の意識が高まり、また、保護者や地域住民においては、学校教育の成果について自分たち一人一人も責任を負っているという自覚と意識が高まるなどの効果も期待される。さらには、相互のコミュニケーションの活発化を通じた学校と地域との連携・協力の促進により、学校を核とした新しい地域社会づくりが広がっていくことも期待される。
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地域の参画による学校運営は、これまでの実践研究の成果等にも示されるとおり、現行においても制度の柔軟な活用によって、かなりの程度実現することが可能であり、今後ともすべての学校において、地域に開かれた学校づくりを目指した取組を推進することが求められる。
一方で、公立学校をより多様で魅力的なものとするためには、これまでの取組を更に発展させるとともに、新たに保護者や地域住民が一定の権限と責任をもって学校運営に参加する仕組みを制度的に確立し、新しい学校運営の選択肢の一つとして提供することも求められている。このためには、今後、こうした新しい学校運営の在り方について更に詳細な制度設計を行った上で、明確な法令上の根拠を与える必要がある。 |