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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 中央教育審議会初等中等教育分科会 > (第16回)及び教育行財政部会(第14回)議事録・配付資料 > 資料1


2章 地域が参画する新しいタイプの公立学校運営の在り方について

 地域が公立学校の運営に参画することの意義について

 我が国の公立学校の運営は、関係法令に基づき、教育委員会及び学校長の権限と責任の下で行われている。こうした学校の運営の在り方は、学校運営に関する責任の所在を明確にするとともに、一定の教育条件・教育内容を確実かつ均等に保障する上で重要な役割を果たすものであるが、一方で、学校の運営の状況が保護者や地域住民等にわかりにくく、学校の閉鎖性や画一性などにつながりがちであるとの指摘もなされてきた。

 学校は地域社会を基盤として存在するものであり、充実した学校教育の実現には、学校・家庭・地域社会の連携・協力が不可欠である。
 これまでも、地域に開かれた信頼される学校づくりを目指して、全国の学校で様々な取組が進められてきた。例えば、平成12年に導入された学校評議員制度は、すでに半数以上の学校で導入されている。また、学校側からの動きだけでなく、保護者や地域社会からの学校への働きかけも活発化してきた。例えば、学校支援のための様々なボランティア活動などの取組も各地で進みつつある。

 このような中で、近年、学校と地域社会との連携・協力を更に一段階進め、地域の力を学校運営そのものに生かすという発想が出てくるようになった。平成12年の教育改革国民会議報告においては、「新しいタイプの学校(“コミュニティ・スクール等”)の設置を促進する」という提言が行われ、文部科学省では、平成14年度から、モデル校を指定して、新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究を実施している。
 また、政府の規制改革推進3か年計画(再改定)においては、「コミュニティ・スクール導入のための制度整備」に関して、法令上の規定を設けることについて平成15年中に検討し結論を出すことが決定されているところである。

 経済・社会の大きな構造改革の中で、可能な限り地方分権を進め、権限と責任を「現場」に近いところに移していこうとする流れが急速に進んでいる。また、従来は公的部門が単独で担ってきた分野についても、住民等に参画を求め、その力を生かすことによってより良い成果を実現していこうとする動きが顕著となりつつある。公立学校の運営に保護者や地域住民の参画を求めることにより、学校を内部から改革しようという考え方は、このような社会全体の大きな改革の流れの中に位置付けられるものである。

 都市化の進行等に伴い、多くの地域でかつての地縁に基づく地域社会が変容し、「地域の学校」という考え方が次第に失われてきた。しかし、その一方で、地域住民や保護者の側に、自らが学校の運営に積極的に参画することによって、自分たちの力で学校をより良いものにしていこうとする意識が生まれつつある。こうした意識の高まりを的確に受け止め、学校と地域住民・保護者が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となるような仕組みを構築していくことが求められている。

 各学校の運営に保護者や地域住民が参画することを通じて、学校の教育方針の決定や教育活動の実践に、地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるとともに、地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりが進むことが期待される。学校においては、保護者や地域に対する説明責任の意識が高まり、また、保護者や地域住民においては、学校教育の成果について自分たち一人一人も責任を負っているという自覚と意識が高まるなどの効果も期待される。さらには、相互のコミュニケーションの活発化を通じた学校と地域との連携・協力の促進により、学校を核とした新しい地域社会づくりが広がっていくことも期待される。

 地域の参画による学校運営は、これまでの実践研究の成果等にも示されるとおり、現行においても制度の柔軟な活用によって、かなりの程度実現することが可能であり、今後ともすべての学校において、地域に開かれた学校づくりを目指した取組を推進することが求められる。
 一方で、公立学校をより多様で魅力的なものとするためには、これまでの取組を更に発展させるとともに、新たに保護者や地域住民が一定の権限と責任をもって学校運営に参加する仕組みを制度的に確立し、新しい学校運営の選択肢の一つとして提供することも求められている。このためには、今後、こうした新しい学校運営の在り方について更に詳細な制度設計を行った上で、明確な法令上の根拠を与える必要がある。

 制度化に当たっての基本的な考え方について

(1) 制度導入の対象

 保護者や地域住民が一定の権限をもって運営に参画する新しいタイプの公立学校(以下便宜上「地域運営学校」という。)に関する制度の導入の対象としては、地域とのつながりが特に深い小学校や中学校が中心になると考えられるが、地域の実情に応じ、設置者の判断で、幼稚園や高等学校などを対象とすることも考えられる。

 地域運営学校は、学校運営の在り方の選択肢を拡大するための手段の一つとして新たに制度化すべきものである。したがって、その導入は、すべての公立学校に一律に求められるものではなく、地域の特色や保護者・地域住民の意向などを十分に踏まえて、設置者の適切な判断により行われる必要がある。

(2) 基本的な制度の内容

 学校運営協議会の設置

 学校の運営への保護者や地域住民の参画を制度的に保障するための仕組みとして、地域運営学校には、保護者や地域住民も含めた学校運営に関する協議組織(以下便宜上「学校運営協議会」という。)を設置することが必要と考えられる。
 学校運営協議会の委員は、設置者である教育委員会において委嘱することが適当であり、委員の数、構成、委員の委嘱の手続きについては、教育委員会規則において定めることになると考えられるが、その構成員としては、校長、教職員、保護者、地域住民、教育委員会関係者などが考えられる。なお、教育の中立性や公正性を確保する観点から、例えば学校運営協議会の委員の委嘱に当たり守秘義務を課すことなども検討されるべきである。

 学校運営協議会の役割

 学校運営協議会は、当該学校の教育目標の設定とその達成について校長と責任を共有する立場から、教育計画、人事、予算等に関する方針案について承認を行うなど、学校における基本的な意思決定に関与する役割を果たすことが期待される。校長は、承認された基本的な方針に基づき、学校運営の最終的な責任者として具体的な事務を行うこととなる。このように、両者は当該学校の運営に関し、協同して役割を果たすことが求められる。
 また、学校運営協議会には、学校に対する保護者の要望や地域ニーズを幅広く把握・集約し、学校運営に反映させることや、基本的な方針に照らした学校の教育活動の実施状況について絶えず目を配り、評価を行い、必要があれば改善を求めるなどの働きかけを行うことなども期待される。
 このような権限を有する学校運営協議会には、自らの活動に関して、保護者や地域住民、教職員等の学校関係者に対して説明を行う責任が生じる。また、当該学校において所期の教育目標が十分に達成されないなどの場合には、その役割を十全に果たしているかどうかについての責任が問われることとなる。

 学校にどのような校長や教職員を得るかということは、地域の意向を踏まえた特色ある学校運営の成否に特に重要な影響を与える問題である。このため、実践研究校のこれまでの研究においても、校長を公募し、その選考に学校運営協議会が関与したり、教職員の人事について要望を行うなどの取組が試みられてきたところである。
 こうしたことを踏まえ、地域運営学校においては、現在の校長による意見具申や市町村教育委員会による内申に加えて、学校運営協議会が校長や教職員の人事について具体的に関与することができるようにするとともに、人事に関し最終的な権限を持つ教育委員会においては、地域運営学校制度の趣旨にかんがみ、校長や学校運営協議会の要望等を具体的に実現するよう努めることとする必要があると考えられる。

 なお、市町村教育委員会が市町村立小学校又は中学校を地域運営学校に指定する場合、当該学校における教職員は県費負担教職員であることから、教職員の任命権者である都道府県教育委員会に対し事前に協議を行うなどの手続きが必要と考えられる。

 保護者や地域住民に学校運営に当たっての一定の権限を与えること、すなわち、学校運営協議会に具体的にどのような権限を与えるか、その際、学校長や教育委員会との関係をどのように位置付けるかなどについて法令上規定することは、現在の地方教育行政制度に全く新しい視点に立った仕組みを導入するものである。このため、その制度化に当たっては、地方教育行政全体の在り方にも照らしつつ、十分な検討を行う必要がある。

 校長の裁量権の拡大等

 地域運営学校の運営をより効果的なものとするためには、学校の創意工夫を生かした様々な取組が可能となるよう、学校運営の最終的な責任者である校長の裁量権を拡大することが重要である。先に述べたように、教職員人事については、学校運営協議会の関与の下、校長の権限の拡大を図る等の制度上の措置を講じることも必要であるが、これに加えて、例えば、地域運営学校の校長に係る裁量経費を増額することや、学校の判断に基づき非常勤講師の採用を可能にすることなど、現行制度の運用の改善等による対応が可能な事柄については、各学校の設置者において積極的な検討を行うことが求められる。

(3) 点検・評価等

 地域運営学校は、これまで行政内部で完結していた学校運営の権限の一部を保護者や地域住民に委譲するものである。権限には常に責任が伴う。各学校が、公立学校として担うべき公共性や公平性・公正性を担保しつつ、その特色を生かした教育を実践していくためには、当該学校による自己評価が重要である。さらに、設置者において、学校運営協議会の活動も含め、地域運営学校の教育活動を不断に点検・評価するとともに、結果を情報公開し、その成果を他の学校の教育活動にも生かしていく必要がある。

 設置者が行う点検・評価においては、例えば、学校運営協議会が期待される機能を十分に果たしているか、公立学校としての公共性・公平性・中立性の確保等は適切に図られているか、地域の信頼に応える学校づくりに具体的な成果が挙がっているかといった観点から、それぞれの地域運営学校の特色に応じた評価項目を定め、適切に実施していくことが求められる。保護者や地域住民に広く意見を求めることなども有効であろう。点検・評価の結果によっては、地域運営学校に教育活動の改善を求めたり、その指定を取り消すなどの措置を講じる必要も生じるものと考えられる。

 地域運営学校の円滑な運営を実現し、所期の目的が達成されるよう、地域運営学校を設置する教育委員会においては、あらかじめその指定や取り消しに関する手続き等必要な事項を教育委員会規則において定めるとともに、地域運営学校の運営に関するコーディネートや評価などを行う組織を明確にするなどの十分な体制整備を図ることなどが求められる。また、国においても、地域運営学校に関する情報の収集・提供や評価方法に関する研究開発等を通じて、新しいタイプの学校運営を積極的に支援していく必要がある。


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