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我が国の初等中等教育は、戦後、6・3・3制の施行などを通じて質的な面での大幅な改善と飛躍的な量的拡大を遂げてきた。学校教育の充実を通じた国民の教育水準の向上は、経済社会の成長・発展に大きく貢献し、生活に豊かな文化をもたらすとともに、我が国が国際社会に貢献し存在感を発揮する上でも大きな役割を果たし、諸外国からも高い評価を受けてきた。
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一方、近年、グローバル化、情報化、都市化、少子化など社会構造の急速かつ大きな変化や、国民の意識や価値観の多様化等に伴い、学校教育に対する要請がこれまでになく多様で高度なものになってきている。
例えば、グローバル化や情報化などの社会の変化に的確に対応する国際競争力のある教育の実現が求められている。個性や能力の伸長をより一層重視した教育を実現することが求められている。家庭や地域の教育力の低下を反映して、豊かな情操や社会規範意識をはぐくむ教育の充実が求められている。さらには、不登校状態にある児童生徒や、LD、ADHDなど特別な配慮を必要とする児童生徒に対するきめ細かな指導の充実も求められるようになっている。
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こうした学校教育に対する児童生徒や保護者の期待の高まりに対し、現在の学校教育、とりわけ公立学校における教育は十分に応えていないのではないかとの批判が、様々な方面から出てくるようになった。
これらの批判の具体的な内容や立場はそれぞれ異なるものの、全体を通じて、我が国の公立学校教育は硬直的で画一的であり、変化に対応する柔軟性や多様性に乏しいこと、自ら改革に取り組むインセンティブが働きにくく、効率性が十分に意識されていないこと、閉鎖性が強く、地域の一員としての意識や地域社会との連携を欠きがちであることなどが指摘されている。
その上で、学校教育をより質が高く、多様性と柔軟性に富むものとするために、例えば、多様な主体による学校教育の提供を認めることや、外部の人材や資源を学校教育に積極的に活用すること、公立学校の管理運営に保護者や地域住民を参画させる仕組みを構築すること、公立学校の包括的な運営を外部に委託することなど、学校の管理運営の在り方についての様々な見直しが提言されている。
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公立学校の管理運営の在り方に対する批判は、最近になって初めて起こったものではない。中央教育審議会においても、学校の管理運営の在り方の改善について、これまで様々な観点から提言を行ってきた。特に、平成10年の答申「今後の地方教育行政の在り方について」においては、各学校の自主性・自律性の確立と、自らの責任と判断による創意工夫を凝らした特色ある学校づくりの実現のために、人事や予算、教育課程の編成に関する学校の裁量権限を拡大することや、学校が保護者や地域住民に対してより一層開かれたものとなるよう「学校評議員制度」を導入することなどについて提言を行ったところである。教育委員会や学校においては、これらの提言を踏まえた様々な改善の取組が進められており、学校は着実に変化してきている。
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しかしながら、改善の取組の進捗状況やその内容は一様ではなく、また、時代や社会がますますその変化の速度を増し、社会の様々な分野で抜本的な構造改革が進められる中にあって、学校に対しても、社会の要請に応え、より良い教育の実現に向けた更なる改革を遂げることが求められている。このためには、学校教育として果たすべき役割の本質を見極めつつ、これまでの改革の取組を推進し、より深めていくことに加え、従来とは異なる角度から学校の管理運営の在り方に光を当て、新しい制度の導入の可能性も含めた検討を行うことが必要と考える。 |