教育課程部会 特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和7年9月26日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループにおける主な検討事項について
  2. その他

4.議事録

【栗山教育課程企画室長】  教育課程企画室長の栗山でございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ第1回を開催いたします。本日は大変御多忙の中、御参加いただき、誠にありがとうございます。
 開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局教育課程課長の武藤より御挨拶を申し上げます。
【武藤教育課程課長】  皆さん、こんにちは。教育課程課長の武藤でございます。冒頭、私から一言御挨拶申し上げたいと思います。まずもって本当に御多忙中、この会議に御参画をいただいたことに、心より感謝を申し上げたいと思います。
 この、特異な才能のある子供たちの教育につきましては、これまで十分な取組がなされてこなかった経緯がございます。そんな中で研究者の先生方、あるいは学校現場の様々な実践が続いてきた中で、大きく2つの流れがあると認識しております。特別な才能の伸長の観点での御実践、あるいは御研究、それから特別支援教育、困難に着目した支援を充実させていくといった観点での実践やあるいは御研究と、2つの流れがあると認識をしております。
 この部会では、この2つの流れのどちらがどうとかいうことではなくて、この両方に共通するところもうまく丁寧に抽出をしながら、今回、この特別な教育課程の仕組みというのを丁寧に生み出していきたいと、このようなことを考えているところでございます。主査、主査代理をはじめ、今日お集まりの全ての先生方の御知見を最大限生かして、我が国がこれまで十分取り組めてこなかったこの分野に画期的な一歩を踏み出して、これらの子供たちの豊かな人生、それからこうした子供たちの多様性がその子だけではなくて社会の力にもなるような、そんな一歩を踏み出したいと考えております。
 事務局を代表しまして、格段のお力添えをお願いしまして、挨拶とさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告をいたします。参考資料3の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本ワーキングは教育課程部会の決定により設置をされています。主査及び主査代理につきましては奈須教育課程部会長より、隅田学委員を主査に、角谷詩織委員を主査代理に、それぞれ指名をいただいておりますので、御報告を申し上げます。
 なお、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループの委員の皆様につきましては、参考資料4のとおり委員名簿を配付しておりますので、御覧いただければと思います。
 本日の議事につきましては、事務局から本ワーキンググループにおける検討事項について御説明をした後、隅田主査から教育課程企画特別部会で御発表をいただきました経緯もございますので、その内容を中心に諸外国や国内の取組の概況等について御発表いただきまして、その後、先生方から御意見を頂戴するという流れで進行させていただきます。
 まず、議事に入ります前に、隅田主査から一言、御挨拶をお願いいたします。
【隅田主査】  愛媛大学の隅田でございます。私はこれまで主にSTEM領域を中心に才能教育に関わってまいりました。2010年からは、才能のある幼い子供を対象としたキッズアカデミアを立ち上げ、現在に至るまで継続して運営をしております。また、JSTのSTELLAプログラムやグローバルサイエンスキャンパス、ジュニアドクター育成塾の推進委員も務めさせていただきました。国際的なサイエンスキャンプやフォーラムにおいて生徒たちを引率し、世界の仲間と学び合う機会にも関わってまいりました。
 そうした機会を通じて、私は幾度となく子供たちの驚くべき資質や能力に触れ、また様々な経験を通して大きく成長していく姿を目の当たりにしてまいりました。その一方で、才能のある子供たちが特有の悩みや困難を抱えている現実にも直面いたしました。さらに関連して、学校の先生や保護者の方々とお話しする機会もございました。特別な教育プログラムを開発・提供していくためには支援体制の整備や持続的な運営が欠かせず、その難しさも日々実感しております。
 改めて申し上げますと、才能のある子供たちも決して完璧ではございません。自らの特性を理解し、可能性を引き出してくれる教師や仲間、そして社会の存在を必要としております。今回、この新しいワーキングが設置されましたこと、大変意義深く、また心強く感じております。設置に御尽力くださった関係各位の御理解と御支援に、心より感謝を申し上げます。今後、この場において皆様とともに議論を深め、我が国において実現可能な新しい展望を切り開いてまいりたいと思います。御協力を賜りますよう、どうかよろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  ありがとうございました。それでは、本ワーキングの進行はこれより隅田主査にお願いいたします。
【隅田主査】  それでは、これより議事に入ります。本ワーキングの審議等につきましては、参考資料3の教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱います。
 それでは、事務局より会議の留意事項を御説明願います。
【栗山教育課程企画室長】  本ワーキングは対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催をしております。御発言の際は挙手ボタンを押していただきまして、ミュートを解除してから御発言を願います。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただきますようにお願いをいたします。
【隅田主査】  ありがとうございました。それでは、議題1に移ります。本ワーキングにおける主な検討事項につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  よろしくお願いいたします。それでは、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程に関する現状と課題、検討事項について、事務局より御説明を申し上げます。
 まず、特定分野に特異な才能のある児童生徒の教育課程に関する現状と課題についてでございます。左上の1ポツ、令和6年度までの取組についてです。特異な才能のある児童生徒は、認知・発達の特性等から学習上・生活上の困難を抱えることがありますが、指導・支援の取組は、武藤課長の御挨拶にもありましたように未発達でございました。
 このため令和3年6月、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議を文部科学省に設置いたしまして、令和4年12月に審議のまとめを公表いたしました。何らかの特定の基準や数値によって才能を定義しないことや、学校現場の分断や特異な才能のある児童生徒への差別を生まないよう留意することを前提として、以下の基本的な考え方を提示しております。
 その一つは、多様な一人一人の児童生徒に応じて個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実の一環として支援策を考えるということ。また、特異な才能のある児童生徒が抱える学習上・生活上の困難に着目し、その解消を図るとともに、個性や才能を伸ばすということ。そして、国は次期学習指導要領や環境整備など制度的な改善についても必要に応じて進めるべきとされており、このワーキングはまさにこの点を受けたものと言えると考えております。その上で審議のまとめを踏まえまして、令和5年度以降、文部科学省事業を推進し、その中で学校の内外における教育プログラムの開発、イベントやアセスメントツールの整備や公表、教員研修パッケージの作成などに取り組んでまいりました。
 その上で2番、令和7年度予算事業等についてであります。本年度ということになります。昨年度までの事業成果を踏まえまして、地域レベルや全国レベルで保護者や児童生徒を対象とした相談体制の構築を特に推進しております。参考資料にもございますが、具体的には京都府教育委員会と京都教育大学に連携をいただきまして、京都府内全域の相談支援体制の構築をしているといったこと。あるいは愛媛大学におきまして、附属の才能教育センターでオンライン上での相談・メンタリングシステムの開発・実装や伴走支援等に伴う人材ネットワークの構築、支援に関するガイドラインの作成などの相談支援体制を、全国単位で構築を図る実証研究を実施いただいております。
 右側に参ります。次期学習指導要領に向けた議論を踏まえつつ、特異な才能のある児童生徒の特性に応じた学びを実現可能かつ持続可能な形で行うことができる方策を研究するため、相談体制以外にも学校外の団体と学校が連携した教育課程内での位置付けが可能な学習・支援プログラムの開発を推進していただいております。具体的には、愛媛大学附属小中学校、東京学芸大学附属小金井小学校、また長野県教育委員会で取り組んでいただいております。こうした取組、今回のワーキングの委員の皆様にも御関係をいただいている、お取り組みいただいているものにもなっております。
 以上申し上げた文部科学省事業で展開しているもののほか、特異な才能のある児童生徒を対象とした支援や教育プログラムを提供するNPO等の民間団体の取組や、高等教育段階、高等教育機関における理数系に優れた意欲・能力を持つ子供向けのプログラム、例えば次世代科学技術チャレンジプログラムのSTELLAなどがございますけれども、特異な才能のある児童生徒への支援が広がりつつある現状がございます。
 一方で3ポツ、生じている課題でございます。特異な才能のある児童生徒を対象とする教育課程内での位置付けが可能な学習・支援プログラムについては、通常の教育課程とは大幅に異なる高度な内容が想定されますけれども、現行制度におきましては、そうした場合において特別の教育課程を編成・実施することができる制度が存在しない状況がございます。加えまして、特異な才能のある児童生徒や、そうした児童生徒が在籍する学校や教育委員会を支援しつつ、児童生徒の特性に応じた適切な学びに繋げていくための相談支援体制につきましては、先ほど御説明したように文部科学省事業で実証を進めているものの、現状としては未確立といった状況があるわけでございます。
 こうしたこれまでの経緯や現状・課題を踏まえまして、本ワーキンググループにおける検討事項、そして論点について御説明をさせていただきたいと考えております。まず基本的な前提として、一番上の2行の部分でありますけれども、学校外の機関とも連携し、特性等に応じた高度な内容を取り扱う場合等において、特別の教育課程を必要に応じて編成・実施可能とする仕組みについて、教育課程企画特別部会で昨日取りまとめられました論点整理の内容を踏まえつつ、このワーキンググループでは具体的に検討をしていただきたいと考えております。
 まず丸1、左側でありますけれども、その際の制度の構築の基本となる考え方や留意点についてであります。先ほど御紹介いたしました、令和4年有識者会議の審議のまとめの考え方や諸外国の多様な取組の実態を踏まえつつ、今回の特別の教育課程の仕組みをどのような趣旨・目的で創設するかについて、御検討をいただければと思っております。
 その際、論点整理における以下の記載、具体的には箱の中でありますけれども、その記載は、実態把握や支援ニーズの可視化も途上であることも踏まえ、新たな仕組みは対象を一定の範囲に限定した上で創設し、その後、運用状況を踏まえて拡充の適否等を検討する方向とすべきということが論点整理でまとめられましたが、この記載も踏まえまして、実現可能かつ持続可能な仕組みを創設するということを最優先し、制度創設後の運用上の成果・課題も踏まえて、創設後随時仕組みを改善していく、そうした前提で検討していくべきではないかと考えております。
 また、次のポツです。新たな仕組みについては、社会的な分断や関係者の忌避感を生じさせないように留意しつつ、着実に制度の設計と円滑な実施を図るために、論点整理で提起をされた丸2から丸4の検討事項、箱の中、特別な教育課程の内容・授業時数・指導計画等、また特別の教育課程が実施される場所、そして対象となる児童生徒、これらをこのワーキンググループにおける検討事項にすることに加えまして、相談支援体制の在り方についても検討すべきではないかと考えております。
 これらの検討に当たりましては、コメ(※)でございますように、論点整理におきましても基本的な考え方の一つとして「実現可能性の確保」が全体として掲げられていることを踏まえまして、教師、学校、教育委員会の負担や負担感に配意して具体の検討を進めることが前提ではないかと考えているところでございます。
 右側に行きまして、丸2であります。特別の教育課程の内容・授業時数・指導計画等についてであります。特別の教育課程の内容として、どのようなものを対象として、また対象となる教育活動に関わる授業時数の取扱いなどをどのようにすべきかということであります。箱の中が論点整理における記載であります。論点整理では、外部機関とも連携しつつ、過度な負担を生じさせないよう配意しながら個別の指導計画を作成する方向で検討すべき。学習評価は指導要録上明確に位置づける方向で検討すべき。入試対策などの単なる早修を助長しない運用とすべき。特性等に応じた高度な内容に係る部分以外は、基本的に通常の教育課程と同様であり、標準総授業時数も確保することとする方向で具体の運用を検討すべきと記載をされておりました。
 これを踏まえまして、本ワーキンググループにおける具体的な論点について、その下に記載をさせていただいているところであります。まず1つ目、具体的論点の1つ目として、特別の教育課程の対象教科等の考え方についてであります。また一方で、対象とならない教科等での教育活動については、先ほど申し上げたように、論点整理においても基本的に通常の教育課程と同様、すなわち他の児童生徒とともに通常の教育課程で学んでいくことを前提とすることで検討すべきと考えているところでございます。
 2つ目であります。具体的な対象となる教育活動の適否についてであります。特別の教育課程を編成し、実施する場合に、特別の教育課程として具体的に実施する教育活動はどのようなものがあり得るのかということでありますけれども、現時点で想定される例を記載させていただきました。例えば、部分的な上位学年や上位学校種の先取り学習、あるいは大学の科目履修、あるいは大学、そして大学のみならず民間等が実施する優れたプログラムへの参加、発展的な課題を対象とする個人探究、こうしたことが現時点において想定されるのではないかと考えているところでございます。
 その上で具体的な実施方法の適否についても御検討いただきたいと考えております。現時点で想定される例として、例えば夏季休業期間で集中実施をすること。あるいは、オンラインの活用によって課業期間中も受講するといったようなこと。あるいは、対象児童生徒が大学や研究機関に行くのみならず、指導者の方に対象児童生徒の在籍校に来校いただいて実施するといったこと。あるいは、授業日と夏季休業を含む休業日を組み合わせて実施をするといったこと。これも様々な実施方法が想定されるのではないかと考えているところでございます。
 そして、特別な教育課程の授業時数の取扱いについてであります。特別の教育課程に係る部分について授業時数をどのように考えるかということ。論点整理では標準授業時数を全体として確保した上で考えるとありましたけれども、この点も改めて御検討いただければと考えております。そして、個別の指導計画の目的や作成の主体、そして計画に記載をすべき要素、その上で、計画自体の作成が自己目的になってはならないという意味で効果的なものでなければいけませんし、学校現場にとって過度な負担が生じない作成の仕方、また運用の方法、そういったものも検討していかなければいけないと考えているところであります。
 また、学習評価についても論点整理では指導要録上明確に位置付けるとしておりましたが、その上で指導の記録、あるいは学習評価の方法や観点、指導要録における記載のイメージ、こういったことについて具体的に検討していくことができればと考えているところであります。
 次のページです。丸3として、特別の教育課程が実施される場所も検討事項であると考えています。学校外の機関と連携した取組が前提として考えられる中、特別の教育課程が実施される場所としてどのような場所を位置付けるべきかということであります。箱の中、論点整理ではこのように記載があります。特性等に応じた高度な内容は研究的・探究的なものが想定されるため、在籍校での指導のほか、一定の要件、例えば発達段階に応じた学習環境や体制の整備などがありますが、を満たした大学や研究機関等で実施される指導や学びを在籍校での学習とみなすこととする方向を踏まえつつ、具体の運用を検討すべきとありました。
 これを踏まえて、本ワーキンググループでさらに検討を深めていただきたい具体的な論点についてであります。一つは、特別の教育課程の対象となる教育活動を実施する場所として、在籍校はもちろんのこと、大学や公的研究機関等での指導を対象とする場合の要件についてであります。また、大学や公的研究機関に、特に授業日に児童生徒が移動する場合におきましては移動時間が発生いたしますので、対象となる教育活動の前後の移動時間等についてどのように取り扱うのかということについても、少し細かいことではございますけれども、非常に重要な論点ではないかと考えております。また、大学や公的研究機関等における指導者について、どのような要件を備えられた方が適切であるかということについても検討を深めていきたいと考えております。これが丸3であります。
 最後に丸4でありますけれども、対象となる児童生徒についてであります。特別の教育課程の対象となる児童生徒の考え方と、その対象者を判断するプロセスをどのようにすべきかということです。論点整理では箱の中のような記載でした。各教科の内容の一部、または全部について、特に優れた資質・能力を有し、かつ当該分野に強い興味・関心を有し、そして通常の教育課程では十分な支援が困難であると学校や教育委員会が認める者とする方向で、具体の運用を検討すべきとありました。
 これを踏まえた具体的な論点についてであります。対象となる児童生徒を判断する主体、その際の具体的な考え方、そして判断の方法についてであります。また、特別の教育課程の対象とするかどうかを判断する際の相談支援を含む体制やプロセス。丸1で相談支援体制についても検討をとありました。その点を踏まえた記載でございます。そして、専ら特別の教育課程について本ワーキンググループでは中心的に御検討いただきますが、実際の特異な才能を持つ子供たちへの支援という意味では、特別な教育課程以外の教育活動による支援も当然あるわけであります。そうした部分との役割分担や関係性というものについても、どのように考えていくかということも整理をしていく必要があるのではないか。その上で、特別の教育課程の対象となる児童生徒を整理していくことが必要ではないかと考えているところであります。
 コメ(※)の部分でありますけれども、丸2から丸4の内容などについて、創設後の仕組みを随時、運用実績を踏まえながら改善することを前提にと言いましたけれども、制度の運用に当たっては運用の手引、仮称でございますけれども、こうしたものも作成し手引を使って教育委員会や学校の皆様が制度を運用しやすいようにしていくという方向で検討できればと思っておりますし、この手引もまた制度と同様に、運用実績を見ながら、ある意味で改善・成長していけるものにしていきたいと考えております。
 そしてもう一つ、当該児童生徒に係る特別の教育課程の編成実施というものは、そのために必要な大学や公的研究機関等、御協力くださる機関が存在し、連携できることが前提であります。ある意味では当たり前のことではございますけれども、これを前提として、保護者のお求めがあれば学校や教育委員会に実施義務が発生するようなものではないということが前提であることには、留意が必要かと考えております。あくまで特別の教育課程につきましては、必要があればこれを編成実施可能とする仕組みであるという前提で、誤解がないように検討を進めていきたいと考えているところでございます。
 以上が現状と課題、そして今検討事項・論点について御説明を差し上げました。その上で、参考資料、データについてでございますけれども、まずこちらが特別部会の論点整理の抜粋について先ほど検討事項、論点で随時言及しましたけれども、改めて論点整理のほうで特異な才能のある児童生徒に関して記載している部分でございますので、御参照いただければと考えております。
 また、論点整理ではこのような資料も入っておりまして、少しだけ御説明させていただきますけれども、まず1階、2階とございます。下の1階というのは学校として編成する教育課程の柔軟化とあり、2階は個々の児童生徒に着目した特例の新設・拡充というふうにございます。1階、詳細については説明を割愛いたしますけれども、学校単位の教育課程につきましては、今般の論点整理におきまして、多様な個性や特性、背景を有する子供たちに対応していくために、調整授業時数制度という形で、各学校で授業時数をやりくりもしながら、裁量的な時間といった個々の児童生徒に対応する柔らかい学びを実現することも可能としつつ、より柔軟に教育課程を編成する仕組みについて方向性を打ち出しております。その上で、それだけでは対応できない場合について、2階という個々の児童生徒に着目した特例の新設・拡充について御提案をしております。
 御覧いただくと、既に現行制度がございます、通級が必要な児童生徒、あるいは日本語指導が必要な児童生徒についての制度の拡充・改善についても御提案しておりますし、今般、新設をすべき特例として、このワーキンググループに御担当いただく特定分野に特異な才能のある児童生徒について、また別途ワーキンググループを設けております校内外の教育支援センター等に通う不登校児童生徒について、この2つについての制度の創設を提案しているわけでございます。
 上の灰色の部分にございますように、多様な個性や特性、背景を有する子供たちに対応するため、この1階と2階、学校と個々の児童生徒の単位の柔軟化を組み合わせて、2階建てで複層的に包摂をしていくと、そういう柔軟な教育課程の仕組みの構築に向かうことが重要というふうに全体像を描いておりまして、本ワーキンググループにおける特例は、この全体像の中で非常に重要な部分を占める一部として位置付けがなされているわけでございます。
 その上で2つ目のパラグラフ、2階の特例の適用がある児童生徒につきましても、1階で他の児童生徒とともに学びやすくなるなど、全体として包摂性を高める方向で制度設計をする必要とされておりまして、決して1階と2階に振り分けるといった、全くこうしたことではないと。あくまで全体として1階、2階を組み合わせて包摂的な仕組みをつくっていくということが、既に方向性として確認をされておりますので、御報告を申し上げます。
 その上で、2階の中段部分に、点線の上に書いてありますけれども、教育委員会による支援を前提としつつ大学等の協力も得る。全体としてデジタル技術を積極的に活用して対応というふうに書いておりますが、本特例も含めまして、また指導計画の作成に当たっても含めまして、学校現場の過度な負担や負担感については配意しながら進めていくということを、改めて確認をしていきたいと思っております。
 ここ以降は特異な才能のある児童生徒に関する参考資料でございますので端的に御説明させていただきますが、この部分は才能を示す領域とその表出例につきまして参考資料としてまとめたものでございますので、御参照ください。幾つかのテーマや分野を並べております。また、このページについては、特性等、困難がどのようなものがあるかというイメージがわきやすいように、幾つかの特性の類型、またそれに伴う困難の事例について御紹介をしているものでございます。
 また冒頭、文部科学省での有識者会議について一部、御説明を申し上げました。こちらが有識者会議全体の審議のまとめの概要になっておりますので、別途、御参照をいただければと思っているところでございます。なお、この有識者会議の委員であられたという意味におきましては、大島委員が有識者会議でも委員となっておられましたので、念のため御報告申し上げます。
 また、こちらは既に御紹介しました令和6年度の文部科学省事業の詳細でございますので、また必要に応じ御参照いただければと思っております。また、こちらは令和7年度の文部科学省事業の具体でございまして、御紹介したように学習支援プログラムが愛媛大学、東京学芸大学と長野県教育委員会さんにおける取組、また相談支援体制について京都府教育委員会、京都教育大学が連携した取組、愛媛大学の取組について、御参考としてお示しをしております。こちら、文部科学省、独立行政法人JSTで実施しているSTELLAの事業の概要、また同じくスーパーサイエンスハイスクールの事業について御紹介しております。
 またこちら、諸外国における特異な才能のある児童生徒に係る対応について、過去の委託事業で調査をした概要についてお示しをしております。こちらは米国における実施割合が高い支援例について、概要をまとめたものでございます。また、こちらは同じく米国における児童生徒の定義、州により異なる様々な、多様な事例がある、多様な対応が進んでいるということを御覧いただける内容になっております。また、こちらも同じく米国で児童生徒の把握の状況が大きく異なると。様々な州でパーセンテージも随分違うということを御覧いただけると思っております。
 長らく御説明いたしましたけれども、事務局からの説明は以上でございます。
【隅田主査】  栗山室長、どうもありがとうございました。事務局から、教育課程企画特別部会でまとめられた論点整理を踏まえた検討事項をお示しいただきました。
 続いて、私から情報提供させていただくところではございますが、委員の御都合がございまして、1名、全体の委員の自己紹介と御意見は後からなのですが、小林りん委員につきまして最初にここで自己紹介と本議論、これからの議論につきまして、あと資料につきまして御意見や期待することなどを述べていただければと思います。小林委員、お願いいたします。
【小林委員】  隅田先生、ありがとうございます。皆様、こんにちは。日中は学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンという、軽井沢にある全寮制の高等学校を経営しております。今日は違う帽子をかぶってまいりまして、5年前に設立したEducation Beyondという非営利団体の教育団体がございまして、こちらの理事の1人として本日お邪魔をいたしております。
 私からは簡単に3つ、このEducation Beyondって何か片仮名ばかりで何なのとよく言われるんですが、が何をやっているのかということと、それから令和5年、6年に私どもが長野県でやらせていただいたことがどういったことだったか。そして3つ目に今年度、令和7年度の長野県での取組がどういったものかということを、御紹介させていただければと思います。よろしくお願いします。
 まず、1つ目にEducation Beyondの御紹介ですけれども、特定分野に特異な才能を持つ子供たちの教育にお詳しい方は御存じかと思いますが、ジョンズ・ホプキンズ大学の学Center for Talented Youthという、この分野では50年近くにわたって研究を進めているセンターがありますが、そちらのCTYのプログラムをもともとは日本に持ってくるということを目途に、5年前に設立された非営利団体でございます。
 ただ、設立してすぐにコロナがやってまいりまして、それが頓挫してしまったんです。そこでどうしようと思ったときに、そこで始めたのが、実は児童生徒、お子さんたちと大学院生、すごく特定分野に特異な才能がある子たちなので、その特定分野を専門とする大学院生たちと小中学生をマッチングするというプロジェクトを始めたのが、3年前になります。私を含めて全員ボランティアで今のところやっているんですが、チューターさんには、大学院生には幾ばくかの謝金をお支払いさせていただいていますが、全て全員ボランティアでやっている団体でございます。
 2点目の、では長野県で今までどういったことをしているかということを御紹介させてください。令和5年度、6年度は長野県の知事部局さんの御協力をいただいて、県立図書館で信州大学の大学院生と長野県内の小中学生をマッチングするということをやってきました。これを2年やらせていただいたというのが長野県さんとの御縁でございますし、私も当然長野県民でございますので、そんな形で長野県さんとやらせていただいてまいりました。この様子が、長野県では信濃毎日新聞さんとか信越放送さんとかで報道いただき、県の皆さんの目に止まるようになってきたのがこの2年間だったかと思います。
 3点目、今年は何をやっているかということで、今日、五味さんがいらっしゃっていますけれども、五味さん、こんにちは。長野県教委から五味さんにいらしていただいています。最近、本当に二人三脚で毎週のようにお話ししているパートナーですけれども、隅田先生にも角谷先生にもいろいろ御助力、御教示をいただきながら、今年、令和7年度は長野県教委さんと連携させていただいて、公立小中学校さんと取組をするということが始まっていると。ここは後ほど五味さんから御紹介があるかと思いますが、いよいよこれは公立の学校の小中学校の中に入っていくということは、本当に意義深いことになるといいと思いますし、私自身も使命感を新たにしているところでございます。
 結びになりますが、先ほど栗山さんから問題提起があった対象児童生徒をどうするのか、場所をどこでやるのか、それをどうやって包摂していくのかというところは、ぜひ現場でいろいろなことを実践しながら、幾つかパターンが出てくるのではないかと思うんですけれども、柔軟なやり方を何か模索してきたらいいなと思っております。この分野、本当に私も、現場の一実践者でしかないんですが、先生方にいろいろ教えていただきながら、現場での実践を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【隅田主査】  大変心強いです。どうか、引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは続きまして、私から教育課程企画特別部会で情報提供させていただいた内容を中心に、諸外国や国内の取組の概況を本ワーキンググループの委員の皆様に共有させていただければと思います。それでは、少しお待ちください。準備をいたします。
 それでは、始めさせていただきます。第1回ということで、このようなタイトルで状況を皆さんと共有させていただければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。時間は限られておりますが、このような内容を準備してまいりました。それでは、順に説明をさせていただきます。
 まず初めに、特異な才能のある児童生徒への教育や研究の歴史的な流れを踏まえまして、3つのパラダイムを御紹介したいと思います。最初は20世紀前半、ターマン先生による追跡研究がとても有名でございますが、才能というのは生まれつきに持っていて、固定的な特性であって、個人に内在する能力として存在するという前提に立つものでございました。実践的にも特定の子供をギフテッドと識別し、教育対象とするものであり、あとはトーランス先生の創造的研究なども加わっていったものでございます。
 これに対しまして、20世紀後半に台頭したのがタレント伸長のパラダイムです。あえてギフテッドとかタレンテッドと言葉が、違いが分かりやすいように片仮名で書いてみました。才能を発揮する領域の多様性とか、学校内と社会でのギフテッドと呼ばれる、どういう人が優れているかといったギャップなどが論点となりまして、発達理論を取り入れつつ、才能を開花させる教育実践と結びついたわけです。このパラダイムではギフテッドの範囲が拡張されて、多様で真正な活動が含まれるようになりました。重要なのは、ギフテッド的な特性を識別するだけではなくて、教育を通して育成することの意義が強調された点でございます。
 さらに続く形でインクルーシブ教育の観点からも推進が、ディファレンシエーションのパラダイムというものがございます。子供たちの多様性が増す中で、早熟で高度な学習者の特有なニーズに通常の学級内でどのように答えるかというのは、教育関係者にとって大きな課題となりました。児童生徒の能力と教育内容の適合性に継続的に注意を払う、そして調整を行う動的なモデルです。
 重要なことは、この論文を書かれているダイさんらは軸を出しながらまとめているんですが、今回、私がトライアングルな形でまとめたのは、これらの3つのパラダイムというのはいずれも歴史的に連続的なものであって、それぞれの立ち位置を踏まえて議論することが求められるという点です。ですから、断片的な情報とか個別の経験にとどまらず、包括的な議論へ発展させていくことが重要であると考えます。
 少し国際的なほかの、才能の定義や説明に関する内容を紹介できればと思います。才能のある児童生徒の定義は、書いてありますように世界中で様々でございます。先ほどの3つのパラダイムも、厳密に分けられるというよりは混ざって運用されているわけですから、IQをその基準の一つに含むことはもちろんございますし、そうは言っても多面的な評価や評価のプロセスが推奨されているというのは事実でございます。
 アメリカにおいても政府と学会等で才能のある児童生徒の記述は異なりますし、定義を持たない州、あるいは持っていてもその地域や学校で柔軟に対応できる州も多い状況です。そして、アメリカでは公立学校において、平均して例えば6%程度の児童生徒が何かしらのプログラムに参加しているとされるようなデータもございますが、その割合は学校や地域の実情により大きく異なります。そして、質の高い教育プログラムを必要とする児童生徒はもっと多く、割合としていることが指摘されておりまして、その教育機会の拡大が重要な課題となっているわけです。
 韓国は2000年に英才教育振興法を制定しています。当時のアメリカの影響を強く受けているように見られます。韓国の才能教育につきましては、本ワーキンググループの石川委員がお詳しいので、またお話を聞く機会があればと思います。
 イギリスの場合はとてもシンプルで、一つ以上の能力が同学年の水準を著しく上回っている、またはそのような能力を伸長させる可能性を持つと、そういう定義をしたわけです。当時は5から10%ぐらいの児童生徒が対象にという話でしたが、現在は、これも地域によって違いますけれども、イングランドのほうでは縮小しておりまして、言葉の使い方もモアエイブルとかハイアビリティとか、違う表現がなされているわけでございます。
 才能のある児童生徒について画一的な定義はない。それを避けながら教育支援はどう広げることができるのかということですが、実際に広がっているわけであって、可能なのです。その一例として、ガイドラインを紹介してみたいと思います。左側に示しているのは全米の才能教育学会、NAGCによるスタンダードです。ここでは6つのスタンダードが提示されておりまして、その第1は学習と発達です。児童生徒の多様性に着目するという考え方は、まさに今回、私たちが議論する背景とも重なるものでございます。
 右側はWCGTCの世界才能教育協議会におけるグローバルな基本方針でございます。こちらは10の原則が、基本方針が示されておりまして、その第1は多層的な内容です。全ての教員が一定の関連知識を持つ必要があるということを訴えるとともに、その教員の役割に応じて多層的な研修とか、求められる内容を提案しているということでございます。
 このスライドは、アメリカの先ほどのNAGCにおいて、その下部組織、学会というのが研究活動だけではなくて下部組織として実践的な活動しているネットワークグループの分野を示しています。研究大会という限られた場だけではなくて、こうしたグループが定期的にオンラインで情報や意見交換をしています。ここでは、教科の教育もそうですし、特別支援教育、心理学、社会学、教育学、教師教育、幼児教育など、多様な背景を持つ研究者や実践者、行政関係者などが参加し、活発に議論を重ねているわけです。その中で方向性が模索され、幅広い研究や実践が展開されていることが御理解いただけるのではないかと思います。
 この図は、特異な才能のある児童生徒への支援について制度的な歴史がある、アメリカから作成したもので、全州を対象として定期的に調査をしているものでございます。選択率が上位、こういう取組を、工夫を制度的にしていますというのを、上位3つを挙げてみたわけですが、小学校段階は、今は通常クラスにおける柔軟化、ディファレンシエーションが、非常に割合が高いことがよく分かります。もちろんその次とすると教科別の早修とか、特別クラスをつくるような場合もありますが、今才能のある子供たちへの支援とは何かと一言で言うと多分、ディファレンシエーションという言葉が挙がると思います。それが、学年が上がりますと、専門性が高いこともありまして、大学の授業を先取りするAPでありますとか、あるいは大学との二重在籍とか、あるいは発展コースのようなものが上に上がってくるというのが実情でございます。
 それでは、我が国の状況に移りたいと思います。まず、改めて私が申し上げたいのは、こういう子供たちというのは私たちのすぐそばにいるということです。今から15年前、2010年に愛媛大学でキッズアカデミアというのをスタートしたわけですが、2020年にコロナ禍でオンラインに切り替えました。全国からメンバーを募ることができるようになったんです。現在は256名の子供が登録しておりまして、海外在住の子もいます。こういう子供たちは地域を問わず存在しています。
 実に多様な才能が見えてきまして、例えば小学校1年生、右上に書いていますが、小学校1年生ですが、もう高校の生物の内容である免疫細胞について独学で理解をして、自分の好きなアニメと組み合わせて自分の言葉でしっかりと論理的に説明したりする子供がいます。しかし、だからといってこの子がこのまま高校に進めばいいという、そういう単純な話ではないということも御理解いただけると思います。
 これは、今年の7月から8月にかけて開催いたしましたキッズアカデミアのサマースクールに参加した子供たちです。集中力とか知識量、抽象的な思考力、好奇心が見て取れると思います。オンラインで開催する一つの利点は、ここに書いていますように、東京、兵庫、広島、愛媛など離れた場所に住む子供たちが一緒に学んで、議論を交わすことができることでしょう。自分の興味関心について耳を傾けてもらって、時に質問を受ける経験、そして自分では思いも寄らなかった新しいアイデアを示してくれる仲間の存在、それらが全てこうした子供たちにとって大きな知的刺激となります。
 では、教育課程をどう考えるのかといったときに、既に制度的な整備がされている国では、才能に応じた学びを実践するための教育課程を柔軟化して対応しています。例えば先取り学習をして行う早修や、より深く幅広い学びに対応する拡充などはよく知られているところでございます。これは、単に先に進ませるということではなくて、子供のレディネスや学習歴に応じた個別最適な学びの取組でもあるわけです。
 才能のある児童生徒を包摂する授業となったときに、これは別の考え方が、先ほど出てきましたディファレンシエーションのような柔軟化の考え方が有効です。トムリンソンさんが示すように幾つかの観点、例えば扱う概念とか教材とか課題とか学習の計画とか学ぶペースなど、子供のレディネスや関心に応じて調整をする、この調整を続けることで個別最適化を進め、その子の才能を適応させていくと、これが重要な視点かと思います。
 とはいえ、子供たちの多様化、才能のある児童生徒を対象とした教育支援を教室の中で1人の教員が行うには限界があるでしょうということで、私たちのグループはもう少し類型化する、拡張する必要があるだろうと考えています。教室内で行えること、学校の中で行えること、そして学校の外で行われること、そして担当の先生が1人でも行えること、あるいは教員間、学校内の先生が連携して行うことができること、それと外部の専門家のサポートを受けながらできることと、こういうことでニーズとその対応を図ってみようではないかということで、少しずつ行っております。
 今年度よりその検証に関わる事業が開始されているところではございますが、令和5年度、令和6年度の関連事業から少し具体を考えてみたいと思います。例えば、これは担当教員が単独で教室内で行うことができる、可能なタイプのI-aと考えることができるわけですが、小学校低学年でも複雑な計算ができる子供の場合、通常の確認の練習問題では時間を持て余すことになろうかと思います。そうした場合、スペシャル問題を用意することが考えられるわけです。
 これは才能のある児童生徒だけではなくてクラスの全ての子供に用意しているという感覚を持つことが大事なわけです。先ほど少し紹介した免疫細胞について発表した子供、小学校1年生のときに学校へ少し行きづらくなっていた時期がございました。ただそれが、学校の先生が、毎回ではないのですがこうしたスペシャル問題を用意してくれるようになったことによって、学校へ足が向くようになった事例もございます。
 これは複数の教員が連携し、教室内で行うことが可能なタイプI-bの教室支援の例と考えることができます。教科横断的にパフォーマンス課題を出して、才能のある生徒は共同作業を行う中で各要素の関連性を整理したり、問題を効率的に構造化したり、解決策をより深く分析したりすることで、広い視野の洞察をしていました。こうしたメリット・デメリットが同時に存在するところを、問題を整理して判断し、評価すべきかを考えるなんていうのは、多面的にリスクを考えながら行動を含めて、現代社会を生きる市民に求められる資質・能力ではないかと思います。これは、リーダーシップ能力にも繋がるでしょう。
 ここで、実際のこの時の生徒の発表の様子、研修パッケージにも含めていますが、少しお聞きいただければと思います。
こういう複雑な情報を非常に上手に構造化して論理的にプレゼンを続けていきます。ですから、こうした今才能ある子供の評価といったときに、こうしたパフォーマンスとか成果をより積極的に使うべきだというのはよく分かって、この子供たちのプレゼンを見ることで、例えば一般的な検査では分からないその子供の能力というのが、比較的明確になるような場面はあると思います。
 これは、外部の専門家と連携して教室内で行った例です。そのトピックスについて知識、動物とか詳しい子がいた場合、教科書に出てくる動物の種類だけでは満足しない。そうした場合に、専門家である社会教育施設の方に協力を得たりとか、そして自分が好きな生き物を選んで学習した、そういう例でございます。研修パッケージの中では、こうした事例について実際に関わった先生のコメントも入れております。こういう関わった先生のコメントなども参考にしていただければありがたいです。
 外部の専門家から学ぶということで、高大連携は既に幾らか実践が全国的に広がっておりまして、高校生が課題研究として大学の先生からの指導を受けたり、あるいは大学の授業を受けてそれが単位認定される、愛媛大学の附属高校もその二重単位制度を導入しております。あと少し右に書いていますサイバーメンタリングのところは、今もうSSH校で少しずつ始めていますが、生徒がプレゼンをしたのを卒業生とか大学の教員が動画で指導することによって、時間とか距離の制約を越えて指導を受ける仕組みでございます。
 また、国際キャンプを昨年実施しました。ふだんとは違う国際的な、まさに異質な集団と一緒に作業する、活動することによって、子供たちの新しいというか、信頼できる仲間ができたとか、諦めずに頑張ることができたとか、ふだんとはまた違う成果が出るような事例もございます。
 ここで、才能と学習困難を併せ有するtwice-exceptional、2Eと呼ばれるような児童生徒の実態も存在することを忘れてはいけません。このテーマは文部科学省の研修パッケージにも取り上げさせていただきました。もちろん、才能が先に認められた後で学習困難傾向が見つかる場合もありますし、学習困難傾向が先に認められた後で才能の高さが見いだされるケースとか、両方が入り乱れてすごく特性が分かりづらいようなケースもあるでしょう。
 そういう特性、そして強い好奇心とか感受性とかがある一方で、過敏な五感とか発達の偏りなどから環境になじめずに、困難を抱えることもございます。そうした子供たち、あるいは学校の授業外、例えばほかの子供たちとの共通点よりも違いに着目されることで悩んでいる子供もいます。ですから、授業以外の場面における支援も大切であって、例えば係活動とか学校生活の中で、自分の好きな場所で時間を過ごすことで友達や学校に貢献できるのであれば、心の安らぎにつながったりするケースもあると思います。
 愛媛大学では、この4月から教育学部附属に才能教育センターを設置いたしました。各教科、そして特別支援の先生、それだけではなくて附属幼・小・中・高・特別支援学校の先生方も兼任していただいて、客員教授も国内外から関わっていただいております。たくさんの悩みが寄せられていまして、そこに教員から寄せられたケース、保護者から寄せられたケースを一つずつ掲載しておりますが、本当に実感しているのは教員も保護者も子供たちの才能に気づき、悩みを抱え、信頼性のある情報や意見交換の場を求めているということでございます。
 その上に書いた教員からの相談があった、小学校低学年でプログラミングに強い関心がある子供のケースですが、これは定期的にミーティングを行なっています。1度では解決できないのです。今も定期的にグループで議論を継続していまして、つい先日、その子供にオンラインでセンターの技術教育の教員がプログラミングの特別講義を行いました。
 これは令和5年度、6年度の文科省事業の、特異な才能のある児童生徒の特性を把握するツールや、特異な才能のある児童生徒の支援に関するプログラムのデータ収集・整理におきまして、株式会社ユーミックスさんが報告したレポートでございます。こうして、我が国においても、特異な才能のある子供たちのニーズに対してできることから実践している研究機関とか民間団体が存在するわけです。大島委員もこの次世代科学技術チャレンジプログラムの実施運営を担当されています。こうした才能のある児童生徒とリソースをつないでいく相談支援体制の構築は、一つの論点となるかと思います。
 そこでこれらをまとめまして、このグループの検討へ向けまして、私のほうで次の4つを整理してみました。1つ目が、特定分野に特異な才能を有する児童生徒は全国に存在いたします。その事実をきちんと私たちは直面しつつ、実現可能な支援の手だてを具体的に共有していく必要がある、それが重要だと。議論だけで何も進まないというわけではなくて、具体的に進めていくと同時に、広く社会の理解促進を図ることが重要であると思っています。
 2つ目、才能がある子は放っておいても大丈夫というわけでは決してありませんで、才能をどう伸ばすかと同時に、困難に着目した両面からの側面の検討が大事であるだろうということ。それと3つ目は、全部を子供一人一人にテーラーメードでやるというわけではなくて、通常の学級でもできることはある。そして、学校の教育課程の柔軟化による対応でできることもある。そして、今度はそれを超えて学校外の専門家とつなぐこともあると。こういう複層的な手だてのすみ分けを意識しながら検討を進めていくことが、現実的な手だてを出していく上で重要だろうと思っています。
 最後は、先ほどお話ししましたが、子供は全国にいて、もう待ったなしで成長しているわけですが、そうした子供の学びの受皿とか相談支援のリソースは偏在しているわけでございます。ですから、広域的な相談支援体制の在り方も論点であろうかと思っております。すみません、少し長くなりましたが、私からの説明とさせていただければと思います。
 それでは、本日は第1回でございまして、初めての顔合わせの会でございますので、委員の皆様お一人ずつから自己紹介と、今後の特に検討を進めるべきと考えている事項等につきまして、御意見を発言いただきたいと思います。名簿の上から順に私からお一人ずつ指名させていただきますので、5分程度で御発言をお願いできればと思います。
 それでは、初めに石川委員より御発言をお願いいたします。
【石川委員】  失礼します。京都女子大学の石川です。どうぞ、よろしくお願いいたします。私は韓国を主なフィールドに才能教育について研究をしておりまして、特に政策・制度面に注目して研究しております。今回、こういったワーキンググループが立ち上がったこと、非常に意義深く感じておりますし、特に東アジアの事例とかその辺りを参照にして、何かこのワーキンググループの議論のお役に立てればと思っております。
 特に、韓国についても、才能教育が40年、実践の歴史がありますので、また機会がありましたら御紹介できればと思っております。韓国を見ていて思うこと、また先ほど栗山室長、また隅田主査からの御報告、御発表を聞いていても思うのが、今回こういった特別な教育課程をつくっていくと同時に、保護者にその趣旨をどう正確に伝えるのかという部分、これをもうスタート段階から並行して考えていく必要があるかと思います。
 ギフテッドという言葉とか、あるいは今回の、特異な才能のある児童生徒という言葉とか、人によって意味内容や捉え方が異なってくる可能性のあるものですので、その点、何のためにやるのかという部分をしっかり知らせていくための仕組みづくり、そういったものが必要になるかというふうにも思いました。以上です。
【隅田主査】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
続いて、伊藤駿委員より御発言をお願いいたします。
【伊藤委員】  よろしくお願いいたします。京都教育大学の総合教育臨床センターで教員をしております、伊藤駿と申します。専門は特異な才能児も含めた全ての子供たちの教育権を保障するインクルーシブ教育というところで、特に国際比較研究、日本も含めて、先ほど隅田委員からもありましたけれどもイギリスであったりとかアメリカであったりとかオーストラリアの、研究を進めているところです。また、大学という組織だけはなかなか機動的に対応できないことも非常に多いですので、自身でNPO法人ROJEという法人を運営しておりまして、そちらで実践・研究もさせていただいているところです。
 私は専門柄、特定分野に特異な才能がありながらも特に困っているお子さん、御家庭であったりとか、あと学校の先生方の御相談に乗ることが非常に多いです。この会議に先立ちまして昨日、ふと数えてみようと思って数えてみたんですけれども、大きくこの活動を始めて3年ほどになりますが、今、700家庭を超える御家庭とお話をさせていただいておりまして、現状200家庭ぐらいは継続して支援をさせていただいているところです。
 ちなみにというところですが、先ほど申し上げた700家庭のうち半分以上が不登校のお子さんでして、どれだけ学校現場で困っているお子さんがいるのかということも考えているところですし、こういう現状を受けまして今、東京都の渋谷区でフリースクールのようなものも運営しながら活動をしています。
 この会議に期待することなども少しだけお話しをさせていただきますが、海外の事例でもよく聞く話なんですけれども、特に日本において特異な才能がある、もしくはギフテッドであったりとかタレンテッドだと言われるようなお子さんについては、なかなか現状の学校教育のシステムだと支援することができないんだというようなことが、考えられていることが非常に多いのではないかと思っています。支援を求めても、こうしたことを理由に断られたという話は本当によく相談で受けるところです。
 実際、文科省では学習指導要領の柔軟な対応を求める通知なども出されているということも承知していますし、そういったことも御紹介しているところではあるんですけれども、なかなか実現可能性、今回の改訂のキーワードの一つだと思いますけれども、十分に担保されていないと感じています。そうした中で今回、このようなワーキンググループが設置されまして、さらにはそこで御一緒できること、とてもうれしく、またこれまでお話しをしてきた皆様の思いをどのように反映させていくのかということについて、非常に重責を感じているところです。改訂のもう一つの基盤である多様性の包摂というものを、どこまで広げていくことができるのかということも、しっかり考えていきたいと考えています。
 ちなみに、私は毎月大体新規で20家庭ずつ、数を制限しないともうできないので、御相談を受けるようにしていまして、最初に簡単な勉強会をしています。その中で、日本における特異な才能のある子供たちの支援の現時点とか到達点というようなことをお話しすることも多いですけれども、正直この1年間は毎回、資料を更新しないといけないようなぐらい、この国でも動きがあると思っています。また、こうした動きがあるんですというふうに御紹介をすると、御家庭の期待は非常に高いんです。なので、ここにしっかり応えていきたいと思っています。
 またそうした中で、先ほど隅田座長からも御紹介があった国外の事例もありましたが、国外も同時に非常に動いている状況だと思います。先ほど御紹介いただいたイギリスの通知なんかもその後、結構、動きがあると思っていますので、他国の反省点というところもしっかりこのワーキングで生かしていければと思っているところです。大学の総合教育臨床センターの中に学びサポート室というものを3年ほど前に設置いただきまして、その当時は全国でも類例を見ない形で知的ギフテッド教育支援部門というものも設置していただきました。学校への支援に行かせていただくことも多いんですけれども、学校の先生方も決して支援をしたくないということではなくて、どのようにしたらよいか分からないということであったりとか、働き方改革の中でなかなか言い出せないというようなことをよく耳にします。
 支援をしてほしい家庭とそれを断る学校というような二項対立的に捉えるのではなく、両者の落としどころを探る、そしてその落としどころを探る際に言わば羅針盤のような形で、今回の学習指導要領改訂が進んでいけばいいと思っているところです。その点において、一昨日、総則のワーキンググループを拝見していた際にも御発言がありましたけれども、何か新しいことをしていくというよりも、引き算の発想で対応できることも多いかと考えています。
 時間の関係で具体的な点まではお話しできませんけれども、学校現場にとって負担が増えるというようなことであったりとか、学校が駄目なら外に行けばいいじゃないかというような、ある種、包摂の逆方向を志向していくような動きにはならないように、私自身は注意していきたいと思っているところです。特別部会でたくさんの議論をしていただきまして、2階建ての構想の議論でもありましたけれども、今回の私たちの議論、2階建ての2階部分のほうかと思いますが、それが1階部分の包摂性を高める、そうした取組にできるように尽力できればと思っています。
 きっと長いようで短い期間でのワーキンググループになると思いますが、しっかりやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【隅田主査】  ありがとうございました。どうか、よろしくお願いいたします。
 それでは、続いて大島まり委員より御発言をお願いいたします。
【大島委員】  隅田先生、ありがとうございます。皆様、こんにちは。東京大学の大島でございます。私、東京大学情報学環、そして生産技術研究所に所属しております。バックグラウンドは工学系の機械工学になります。私自身の研究はバイオメカニクスの分野で、血流の研究を行っています。
 どうしてこのような形で教育に携わっているかというと、私自身、研究に根差しながら、それをいかに初等中等教育にトランスファーするかという観点から、今、STEAM教育にも力を入れております。特に今、2つのことに力を入れており、いわゆる主体的、対話的で深い学びをどのような形で、総合的な探究の時間を通して深めることができるかということで、様々な研究を活かした教材をつくったりしております。
 もう一つは、隅田主査からも御紹介がありましたように、グローバルサイエンスキャンパス、そしてJSTの次世代科学技術チャレンジ、いわゆるSTELLAにも携わっております。このSTELLAでは小学校の高学年から中学校、高校の生徒さんを対象に、理数系に特化、非常に才能及び優秀な成績を持っているお子様をいかに伸ばしていくか。それを東京大学の場を利用して行っていくという、そのようなプログラムを行っています。したがって、このワーキンググループでは特に2を中心に、いろいろな形で貢献していくことができればと思っています。
 具体的には、隅田先生が本日の資料でまとめていただいた24ページ、ここで具体的にどのような形で私たち東京大学が貢献できるかということと、また、ぜひこのワーキンググループを通していろいろと議論を深めていけるといいと思っています。一番としては、先生がおっしゃっているように全国に受講生が存在していて、私たちの今展開しているSTELLAでは北は北海道、そして南は沖縄からということで、もう本当に全国から、主に高校生が集まっております。オンラインであったりとか、あと実際にちょうど私の今バーチャルに映っている東大の生研に来ていただいて、そこでワークショップしたりとか、そういうことをやっております。
 こういうことを通して、非常に特異な才能のある生徒さんもいれば、いわゆる通常の学校の勉強から一歩進んでいる、ただ学校の勉強では少し物足りないという、そういう生徒さんもいらっしゃいます。そういう方々を見ながら、今議論があったようにディファレンシエーションなのか、または別途するのか、そういうのを私たちは実践側なので、ぜひ理論の先生方とも議論しながら、ここに書いてございますように架橋しながらどうやって、適材適所という点から、生徒さんに応じた教育を行っていければと思います。それが恐らく2番目と関係しているのかと思っています。
 3番目は、大学という場なので、そういうところをいかに利用していただけるか、そういうところをサードプレイスであったりとかしながら、こういう形でディファレンシエーションであったりとか、どうやっていくかということも、また議論させていただけたらと思います。恐らく東京大学だけではなく、もちろん愛媛大学、いろいろなところでこのような取組を行っていると思います.それが今、点の状態になっているのをどうやって線に結びつけて、そして面として展開していくかということも、一つでやれるところは限られておりますので、このワーキンググループを通して皆様と情報交換しながら、具体的に議論だけではなくてそれをアクションにつなげていくということで、ぜひワーキンググループを通してやっていけるといいと思います。よろしくお願いいたします。
【隅田主査】  大島先生、どうもありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。
 では続きまして、五味和高委員より御発言をお願いいたします。
【五味委員】  長野県教育委員会指導主事の五味和高と申します。長野県の本事業の担当をしております。先ほど小林りん委員からも紹介があったとおり、Education Beyondさんと連携しながら進めていっているところです。現在の取組状況を報告しつつ、検討事項について考えたことを少し話させていただければと思います。
 本事業に取り組むに当たって協力校を募集したところ、1つの自治体と8つの学校が手を挙げてくれました。協力校と子供の様子を具体的に1例挙げますと、小学校低学年で既に素数や因数分解を理解していて、さらに算数・数学を学びたいと願っている児童がおります。この児童は小学校の勉強を楽しみに入学してきたんですけれども、内容が簡単過ぎてつまらないという感じで、登校をためらうようになりました。先ほど隅田主査から御紹介いただいた話と本当に一緒だなと思ってびっくりしているんですけれども、そこで学校のほうでは中間教室で担当の先生と一緒に算数オリンピックの問題に挑戦する等の工夫をしたんです。そしたら再び登校できるようになって、現在、学校で元気よく学習に取り組んでいる、そんな様子を先日見てまいりました。
 しかし、先生はこの子の学びへの興味をさらに伸ばしたいと思っている一方で、教えられる内容や授業準備に難しさを感じている。これは事務局から出していただいた資料1枚目の現状と課題に書かれているとおり、授業の内容が簡単で充実感が得られなくて困難を抱えている子供の姿とか、こうした子供たちへの適切な支援の方法について先生方は困り感を伝えているという姿が、リアルに見えてきているところであります。
 こうした課題の解決に向けて、Education Beyondさんと連携して子供たちを支援するプログラム、Beyondスクールと呼んでいるんですけれども、この構築を進めていっています。プログラムの概要としては、Beyondスクールに参加する子供の興味に合わせて伴走支援できるチューターをマッチングして、子供はチューターと一緒に自分の興味を持つ分野をとことん、主にオンラインなんですけれども、追求をしていきます。学校が子供の実態に応じて教室での授業中や中間教室で学ぶ時間等に実施できるように、今、調整をしているところです。
 プログラムでの学びの様子や成果は学校に共有して、教科への生かし方や教育課程での位置づけについて検討していくということを考えておりますので、事務局からの資料2~3ページにあるとおり、特別な教育課程の仕組みについて検討していくという方向性はまさに長野県で今、やろうとしている方向性と、もちろんこの事業を受けてやっているので当然なのかもしれないんですけれども、一致しており、賛同させていただきたいと思っています。
 また、その計画指導や、実施される場所、対象となる子供の見い出し方については、話を聞いていると、協力校の先生方もその部分で悩まれているということが挙がってきています。ここら辺も、この点の検討項目としてやっていくということは、方向性も一致しているのではないかと思っているところであります。あまり専門性とかは高くないんですけれども、現場の先生方とつながって、そこの話をリアルにこのワーキンググループで共有して、皆さんのお知恵を借りながら進めていきたいと思っております。これからもよろしくお願いいたします。以上になります。
【隅田主査】  ありがとうございました。もう現在進行形で自治体と学校との取組が始まっているということで、ぜひまた共有いただければと思います。ありがとうございました。
 続きまして、坂本卓委員より御発言をお願いいたします。
【坂本委員】  鎌倉市教育委員会の坂本卓といいます。もともと私は英語科の中学校の教員を     長年していまして、その後、指導主事を経て、今度は小学校で教頭を3年ほどやっていました。それから、令和5年度からもう一度、教育委員会に戻って、そこでかまくらULTLA(※)プログラムであったり、学びの多様化学校の由比ガ浜中学校の開校準備に携わってきました。かまくらULTLAプログラムというのは不登校の子供たちを対象として、自然だったり歴史文化、人など、鎌倉の持つ教育資源をフル活用しながら、子供たちが自分らしく学ぶ方策を知るきっかけとなるような、そういった探究学習プログラムになります。
 令和5年度、6年度は文部科学省の採択を得て、特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業として実施をしてきました。また、由比ガ浜中学校のほうは今年4月に無事開校して、今、もともと不登校だった子供たちが元気に通ってきてくれています。そういったULTLAプログラムであったり由比ガ浜中学校に携わってきた経験であったりと、あとは小学校、中学校両方の現場を知る教員の立場として、何かお役に立てればと思いますので、よろしくお願いします。自分自身も教員を長年やってきて、どうしても学校の学びの枠に当てはめるような、そういった教育を自分自身もやってきたなと反省する日々ではあるんですけれども、昨今、不登校の子供たちの数がどんどん増えてきていて、学校の枠に当てはめる学びというのが本当に限界に来ているのかなというのを感じているところです。
 私がこのULTLAプログラムであったり由比ガ浜中学校で出会った子供たちの中には、例えば小学校の低学年からもう全然不登校で学校に来られていないような子供なんだけれども、プログラミングにものすごく興味関心を持っていて、自分でプログラムをして、もう既に幾つものゲームをつくり上げたなんていう子供がいたり、また非常に繊細な感覚の持ち主で、それゆえに集団での学びが合わずに不登校になってしまっているんですけれども、ものづくりであったりアートであったり、そういった分野に非常に没頭して見事な作品をつくり上げる、そういったお子さんに会ってきました。
 そういった既存の学校のシステムや学びに合わなくて、学校に行くのがつらいと感じている子供たちも、自分らしく学べる環境があれば本当に生き生きと学ぶことができる、そういった姿を多く見てきて、こういった子供たちを見ていると学校の学びに合わせることができないというのが、その子が悪いとかその子の責任ということでは全くなくて、そういった多様な子供たちを包摂できる学習環境を整えていく必要性というのを強く感じているところです。
 そういった意味でも、今回の新しい学習指導要領は今まで以上に多様性の包摂というのを打ち出していて、本当にいい方向に進んでいると感じています。いわゆる1階部分でも今まで以上に柔軟な教育課程を編成することが可能になりますので、この1階の部分でどれだけ多様な子供たちを包摂できるかというのが一つ、重要になるのかと思っているところです。
 由比ガ浜中学校では学びの多様化学校としての特別な教育課程を編成しているんですけれども、自分らしく学ぶということをどう実現するか、ここに本当にこだわって教育課程を編成しました。4月の開校以降、今回の論点整理にもあるような、好きを育み得意を伸ばすという、そういった学びを先生たちが頑張って日々実践しているところなんですけれども、今まで不登校だった子供たちが元気に学んでいる姿を見ると、特異な才能のある子供たちの大部分はこの1階部分の柔軟な教育課程で包摂することが可能ではないかと考えています。
 その上で、極めて特異な才能のある子供や同時に困難さを抱えているような子への、特別な教育課程というのをしっかりつくり上げて適応していくことがいいのではないかと考えています。それを実現するときにいかに学校の負担を増やさずに実現するのかであったり、その教育課程を誰が編成するのかとか、どういった対象とするのかとか、それは誰が判断するのかとか、費用は等々、検討すべき課題はたくさんあると思うんですけれども、実現可能な形になるように皆さんと一緒に検討していきたいと思っているところです。どうぞ、よろしくお願いいたします。以上になります。
※ULTLA=Uniqueness Liberation Through Learning optimization and Assessment(学びの最適化と評価による個性の解放)の略。
【隅田主査】  どうもありがとうございました。もう大変具体的な、教室が目に浮かぶような御発言で、これからもぜひ御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 続きまして、角谷詩織主査代理より御発言をお願いいたします。
【角谷主査代理】  上越教育大学の角谷詩織です。日頃は発達心理学、教育心理学の立場から、子供たちの幼稚園、保育所や小中学校での適応に必要な環境について考えております。特定分野に特異な才能のある児童生徒に関係しましては、今年度は週1回ほど学校に通わせていただきまして、先生方と具体的なこの子をどう育てていったらいいかという辺りを、毎日考えているところです。
 やっぱり子供が変わるとうれしいですね。それに伴い先生も喜ぶ、ちょっとした工夫でこんなに大きく変わるというのはこのことだったんだと、先生たちのなかにストンと落ちてくれる、こういった様子を見るととてもうれしくなります。子供は改善を大きくしますがそれがなかなか続かないという部分も、難しいところもあるなというのを日々感じさせられるのですけれども、そういったときに、でも先生方がもう一度、あの子のあの目を見たいということで、最初のときよりも随分意欲が上がる様子を見せていただいています。
 このワーキングに関しまして、最初に質問を一つ、そのあと自己紹介も兼ねまして本日までの時点で私自身が大切に考えている点、あるいはもう随分ちりばめられていますが、忘れずにこのワーキングで取り組んでいきたいと思っている点、2点、共有させていただこうと思います。
 まず、確認のような質問ですが、1階と2階という資料もございますし、隅田先生の御発表資料24ページにも複層的な手だてというお話が出てまいりました。このワーキングの担う部分を、少し理解が追いついていないところもございまして、隅田先生の24ページの言葉を借りますと、丸3の個々の子供への特別な教育課程の編成といった部分をこのワーキングが担うのか、それとも1から3を全て担うのか、1階、2階という話ですと1階も2階もこのワーキングでいろいろと考えることができるのか、それとも2階に特化した話なのかという点を少し教えていただけたらと思っております。
 本日まで私が非常に大事にしたいと思っている2点としましては、1点目は最も必要としている子供たちに届くようにしたいというところ、そして2点目は日常的な協働的な学び、あるいは対話的な学びの支援に繋がる仲間との出会いに繋がるようにしていけたらと、その将来構想でしょうか、その2点です。検討事項にございます具体的な対象となる教育活動とか、対象となる児童生徒にも関係する点なのかとも思っております。
 1点目の最もそれを必要としている子供たちに届くようにという点に関してですが、先ほど諸外国の先進事例の成果の資料などもいただき、伊藤委員からも他国の反省点にも目を向けるというお話がございましたが、確かに先進事例の成果と課題を冷静に見つめて参考とすることも有意義かと思っております。例えばアメリカは例によく私も挙げさせていただくことがありますが、州にもよりますが、古くから才能のある児童生徒のための教育が推進されている国の一つです。そこに見られる大きな課題の一つに、特に学校の先生はアメリカで言うギフティッドプログラムにどの生徒を推薦するかという点において、学校で既に力を発揮していて優秀な子供、あるいは何らかの分野に秀でていることの芽生えが端から見える子供たちを推薦する傾向にあるということが、研究から示されています。
 もちろんそのような子供たちにとっても現存の標準的なカリキュラムでは物足りないところもあって、ギフティッドプログラムのほうが彼らの本当の良さとか才能をどんどん伸ばすことができるというような、よりよい環境が必要と言うことはできるのですが、ただその陰に、成績も決してよいとは言えない、それどころか授業態度なんかも褒められたものではなくて、才能があるなど想像できなくなってしまった特異な才能のある児童生徒が、多く埋もれているということが課題となっています。州や学校にもよりますけれども、No Child Left Behindという掛け声のもとに置き去りにされ続けている特異な才能のある児童生徒がいるという課題を、日本で同じように課題として生じさせることがないようにすることが大切かと思いました。
 そのように感じているなか、特定分野に特異な才能のある子供への支援を考える入り口で、学校の先生方の中から、この子には何の才能がどのぐらいあるのかという視点が真っ先に出てきまして、人様に言えるというのでしょうか、人前に出せるほどの才能ではないから該当しないとしてしまう現象が日本でも既に生じているということが、私の耳にも入ってまいります。こういう、どこが得意かとかどこの分野で秀でているかという視点にとらわれてしまいますと、陰に潜んで埋もれた才能が救出されて育まれるということ、そのことを通してその子の全人的な発達を支援できる可能性というのは、極めて低くなってしまいます。
 ですので、現状、課題と検討事項にもございます、認知発達の特性等から学習上、生活上の困難を抱えることがあるという点を見失わずに、常に才能だけでなくその背後にある認知・発達特性も並列で考慮する必要があるということが、教育実践の場においてもすとんと落ちるように、運用の手引も作成予定ということですけれども、実践の場においてもそこからぶれないで継続できるように、そんな形で届けられたらと思っています。
 隅田先生からの御発表に、教育支援の方策は児童生徒の成長や環境に伴い変化するとございましたが、アンダーアチーブメントの予防的観点からは低学年までが非常に重要であることが示されています。そして、この年代の子供たちはどの分野にどれほどの才能があるか、何ができるかという分野限定の視点というよりもうちょっと広く、例えば日常的な言葉の操り方なども含めて、世界の捉え方や考え方のユニークさなど特異な知的、あるいは発達的特性が見られるかどうかの観点が特に重要になると思われます。以上が1点目の最も必要としている子供に届くようにという点に関してです。
 2点目は簡単に、複層的な手だてのすみ分けとして、本ワーキングで担うことができるのかどうか分からない部分もあるのですけれども、単純に該当する児童生徒1人を個別に取り出せばよいというのではなくて、冒頭にも前提として御説明を受けましたけれども、それがきっかけで日常的に過ごす学校生活の中で、少なくとも分かち合える仲間との出会いを可能とするシステムにつなげることができればとも考えております。これは異質な、あるいは多様な他者を受け入れることのできる人間に成長するためには、子供時代にその子自身が真に受け入れられる経験が必要だということからも、大切だと思っております。以上となります。よろしくお願いいたします。
【隅田主査】  角谷先生、ありがとうございました。
 それでは、最初に御質問があった1階の話なのか2階の話なのか、全部含めてなのかということですが、何か事務局から補足等ございますでしょうか。
【栗山教育課程企画室長】  失礼いたします。教育課程企画室長の栗山でございます。資料を投影させていただきます。
 お尋ねの点でございますけれども、私どものこの検討事項、論点の資料で申しますと3ページの丸4の部分、具体的論点の3つ目の部分に関わるお尋ねであったかと思います。これは、特別の教育課程以外の教育活動による支援との役割分担や関係性ということを、論点として挙げているところでございます。したがいまして、ワーキングの主要な検討事項自体は、もちろん特別の教育課程の仕組みの制度設計を中心的に担うということであることは確かでございますけれども、一方で隅田主査の御発表でも通常の学習指導での工夫、あるいは学校の教育課程の柔軟化による対応という御提案も、御提案といいましょうかそういうところでの対応も当然あるということがありました。また、坂本委員からも、1階部分で多くの子供たちを包摂することができるのではないかといったような御示唆も既にいただいたところでございます。
 当然、特別の教育課程以外の教育活動でも対応するものがあると思いますので、そうした部分についても、あるいはそことの関係性も含めて御議論も当然出てくるんだと思っています。最終的なワーキングのまとめの中でも、役割分担も含めて当然記述していくということだと思っていますので、そういった混乱しないように交通整理はしつつ、どちらのことを議論しているのかということが曖昧にならないようにうまく整理をしながら、御議論いただくんだろうと思っておりました。
 なお、調整授業時数制度そのものの制度設計につきましては、この詳細については総則評価特別部会で議論をしていくという、例えば裁量的な時間がどういった具体的なものなのか、あるいは調整授業時数はどのくらいまで調整できるのかといったことでありますけれども、検討いたしますので、そうした総則評価特別部会での検討内容も見えてくる中で、例えばこういった可能性があるのではないかとか、そういった御示唆も出てくるんだろうと思っています。そうした捉え方で御議論を進めていくことができれば大変ありがたく思っておりました。以上でございます。
【隅田主査】  よろしいでしょうか。ありがとうございます。先ほど栗山室長もおっしゃられましたように、実は私も資料の中の6ページ目等で、いかにこういう議論が広範なところに関わるかというところで、ワーキング、この部会を含め17あるんですよね。内容によっては総則・評価の特別部会に関わるものもあるかもしれません。その内容に応じましてほかのワーキングの状況とかも共有していただきながら議論を進めると、より強くなるのかと思った次第です。どうか、よろしくお願いいたします。
 あと、もう一つ質問というか御意見があった領域のこととか、そこら辺は多分最初の私の発表の資料でいくと2つ目と、3つ目のパラダイムがどう関わるかみたいな話が少し関わりますけれども、お話を聞くと多分、アメリカだとさっきのだとディファレンシエーションに近い、別にラベルづけしなくてもその子の今の状況に応じて一番いいものをやればいいじゃないかという、しかも学校教育にある程度焦点化しているという点ではディファレンシエーションがかなり近いのではないかとは思います。
 伊藤委員からも少しお話があったイギリスの状況で、私は今日、2000年代の当初の例を出しましたけれども、現在はああいう表現を使わなくなっていたりとか、むしろそういうのをなくしながらより多くの人に届けるのかと、そういう工夫をされている事例もございます。ぜひ新しい委員会でございますから、自分たちのスタンスを確かめながら前に向けて、そして具体的に進めるということが大事かと思いますので、主査代理としてどうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは続きまして、藤田修史委員より御発言をお願いいたします。
【藤田委員】  皆さん、こんにちは。東京都教育委員会で事務局をしております藤田と申します。私は今、こちらに勤務しておりますけれども、もともとは都内の公立中学校で勤務を19年間ほどしておりまして、その後、指導主事としてこの東京都教育委員会のほうで奉職しております。私の今の業務といたしましては、主に都内の公立学校の教育課題、不登校の問題であるとかいじめの問題、それから子供の自死の問題、様々なそういった教育課題の解決に資する担当の課長として勤務しておりまして、特に昨年度からは都内の公立中学校に不登校の東京都独自のチャレンジクラスなるものを設置いたしまして、今そちらを研究開発学校として研究の基礎に立っているというところで、その担当をしているところでございます。
 ちょっと話がずれてしまうかもしれないんですけれども、先日、私、都内のある都立高校の文化的行事を見る機会がありまして、その都立高校、実は定時制・通信制併置の学校でございまして、小学校・中学校時代はなかなか学校に通うことが難しく感じていたお子さんが多く在籍する学校の文化的行事を拝見させていただいたんですけれども、非常に質が高いことを再認識した部分がございました。それぞれ様々な要因というんですかね、小学校・中学校時代になかなか学校に通いづらかった要因は様々あるかと思うんですけれども、それが今、現状の通信制・定時制という課程の中では子供たちが自分のやりたいことを見つけ、自己実現を果たしている。また、そういった姿を見ることができて、非常に感銘を受けたというところです。それを逆に捉えてみますと、小学校・中学校でのこれまでの教育活動が果たしてその子たちにとって、本当にその子たちにとっての教育活動であったのかというのは、改めて振り返ってみると私自身もいろいろと感じたところでございまして、その辺はしっかりと考えていかなければいけないということを痛感したところでございます。
 東京都教育委員会では目指す教育として、誰一人取り残さず全ての子供が将来希望を持って自ら学び育つ教育、これを掲げて今、教育政策を行っているところなんですけれども、これまでの学校が果たして本当に誰にとって実現可能で持続可能な学校であったのか。先ほど冒頭でお話があったように、今後の仕組みづくりとしては実現可能であり、かつ持続可能な仕組みをつくっていく、これなんですけれども、それは子供にとって有益な仕組みにならなければいけないということを私、今日のお話を伺って改めて思ったところでございまして、主な検討事項4点ございましたけれども、その中で実際にどういったところを進めて、実現させていくにはどういったところに課題があるのかというのを、また私どものほうでもしっかりと整理しながら、今後、こちらのワーキングに参加させていただけたらと思っているところでございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
【隅田主査】  ありがとうございました。もう既に取組をされているご経験からの御発言で、子供を中心に教育を考えてきたというのは私も理科で、教育ですが、我が国の教育の根本というか特色のいいところだったと思います。それを今回の多様化を踏まえてさらにもう一歩進めるといったときに、子供中心というのはもう外せない部分だと思いますので、ぜひ引き続き御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは続きまして、野口晃菜委員より御発言をお願いいたします。
【野口委員】  皆さん、こんにちは。一般社団法人UNIVA理事の野口晃菜と申します。私は様々な自治体とともに、多様な子供たちがいることを前提としたインクルーシブ教育を推進しております。外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議の委員も務めております。プライベートでは2歳の子供の親でして、実は2030年に小学校1年生にちょうど上がります。よろしくお願いします。これまで御一緒したことのある先生方、また論文や著書など拝見したことのある先生方、また御一緒したことのある自治体の先生方と、このような形でまた御一緒できることをとてもうれしく思います。
 私から3点ほどお伝えできたらと思っております。既に先生方がお話しされたことと重なる部分もございます。まず、1点目です。次期学習指導要領に当たっては、多様性の包摂が初めてこのメインストリームの教育の柱となった、大変大きな一歩だと思っております。教育課程企画特別部会においても、この多様性の包摂をいかに通常の教育プラスアルファと捉えるのではなく、通常の教育の土台、OSとして据えていく、そこに置いていく重要性について発言をさせていただいたところです。
 論点整理にも、民主的で持続可能な社会の担い手をみんなで育てると強調されていますが、民主的な社会、そして多様な人が共に生きる共生社会を実現するためには、学校で自分と異なる事情や背景のある他者とどう折り合いをつけながら共存していくか、それをどう学んでいくかということが非常に重要だと思っています。改めて学校の機能、役割という一つの大きな重要な部分がここにあるということを、この場で共通認識しておきたいと思いました。
 2つ目は、今回の特例制度を排除や分断に繋がる制度にしてはならないということです。私のもともとの専門の特別支援教育においては、特別な教育課程を編成する場合、通常の学級とは異なる特別な場で学ぶという制度設計がなされてきました。現在、少子化にもかかわらず特別支援学級や特別支援学校、また通級による指導の対象者は年々増加しています。現場を回っていると、少しでも通常の学級で困難さが見られたらすぐに、この子は別の場で学んだほうがいい、この子は通常の学級にいないほうがいいというような、そういうケースが多々見られます。
 また、一回特別支援学級や特別支援学校に行くと、通常の学級の子供とともに学ぶ機会というのはどうしても限定的になってしまっています。現在の学校が多様な他者とともに生きる方法を学ぶ、そういう機会を十分につくれているかというと、そこはまだまだ課題があると思っています。もちろんその背景には学校現場の教員不足や忙しさも十分にあるため、条件整備は必須だと思っています。
 このような状況を踏まえて、あえて分かりやすくお伝えしたいと思います。私は将来、ギフテッドの子供とギフテッドじゃない子供の交流及び共同学習というような言葉が生まれないようにしたいと思います。これは不登校も同じです。そういうふうな形で別々にいることが当たり前ということを避けていく、そうじゃない制度設計をしていく必要があると思っています。そのためにも、基本的に通常の学級と別の場で学ぶのではなく、通常の学級に在籍し、まずは土台である通常の学級において包摂性の高い学級づくり、授業づくりをしていく、ここは皆さんからのお話もあり隅田先生からもお話のあったディファレンシエーションが肝になってくると思っています。
 その上で、通常の学級の中でできる個別的な工夫もたくさんあると思います。その上で、必要に応じて別の場での学びを選択肢として準備していく、こういった多層型支援のシステムを実装していくということが重要だと思っています。その際、伊藤委員や坂本委員、角谷委員もおっしゃっていたとおり、この1階部分をいかに充実させるか、ここでいかに柔軟にできるかというところがポイントになってくるかと思います。
 最後です。その際、ほかのマイノリティ性との複合性、例えば不登校であって特定分野に特異な才能があるとか、あるいは発達障害があるとか、複合性がとてもあると思うんです。また、限られたリソースの中での実行可能性ということを考えたときに、カテゴリーごとの縦割りではない仕組みを検討するということも考えていきたいと思っています。私のもともとの専門は障害のある子供のインクルーシブ教育ですが、現在、外国人等児童生徒の有識者会議に参加していると、例えば通常の学級の中でできる工夫だったりとか、校内支援体制の整備、また外部機関との連携方法など、共通性がとてもあります。ここの部分を別々でやっていくと負担も増えますし、大変です。例えば研修も一緒にやっていける部分がとてもたくさんあると思っています。この分野についても同じかと思いますので、縦割りで考えるのではなく、ほかのマイノリティ性との共通性を踏まえた仕組みを検討していきたいと思います。
 基本的に在籍は通常学級ということもありますので、各教科等において具体的に通常の学級でどのような工夫ができるのか、それを検討してこのワーキングとしても提案していけると、とてもいいのではないかと思っています。個人的に自分の役割はそこの共通性を明確にしていくことなのかと思っておりますので、皆さんと一緒に議論していくことをとても楽しみにしております。以上です。ありがとうございました。
【隅田主査】  ありがとうございました。もうまさにその点は私、今日は栗山室長もお話していただきましたし、プレゼンの参考資料でもつけておいたんですが、実はもう2022年に有識者会議が出した審議のまとめが、もうかなりその方向性を明確に出していまして、特定の基準で選抜し、特別なプログラム等を提供するのを目指すのではなくて、才能のある児童生徒を含む全ての子供たちが多様性を認め合い、高め合える指導や支援の在り方を考えていくことを基本的な考えとすると、これは先ほど3つパラダイムを出しましたけれども、今議論する上では重要なポイントかと私も思っているところでございます。その上で、子供にとってメリットがありつつ現実的でできること、それを一緒に考えていければと思いますので、本当にぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは、一通り委員の皆様に御発言いただきまして、既にこれまでの各種政策に関する振り返りもできるような御発言があったかと思います。本当にありがとうございました。もしもうひとつ、ほかの委員からの御意見を聞いてこれを言っておきたいというようなことがございましたらと思いますが、ございますか。よろしいでしょうか。
 本当に断片的な情報であったりとか経験とかが飛び交う中で、委員の先生方の御専門性に沿った御発言をいただきまして、これは一致点を見いだして前に進めるのではないかと私、主査で今日、第1回目ですが、直感的に感じました。私も精いっぱい頑張りますので、どうか引き続きお力添えも、忌憚のない御意見をいただいて、まさに委員の皆さんのお考えを包摂しながら前に進めればと思っております。それでは、時間になりましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降の予定につきまして、事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  次回以降の予定でございますけれども、今少し画面投影をいたします。参考資料5でございますけれども、次回はまず10月16日の15時半から17時半です。検討事項について、ヒアリングなども含めてさらに深めていくことを考えております。その上で、第3回については11月13日の13時半から15時半を予定しておりまして、具体には特別の教育課程の対象等となる教育活動の在り方等、すなわち検討事項で言うと丸2の一部分について、具体的に御検討を御議論いただけるように準備をしていきたいと考えております。正式には後日、御連絡を改めて差し上げます。
【隅田主査】  ありがとうございました。皆さん、御予定のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは以上をもちまして、本日の特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程ワーキング第1回を閉会といたします。どうも、ありがとうございました。
 
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