教育課程部会 道徳ワーキンググループ(第5回) 議事録

1.日時

令和8年5月19日(火曜日)9時30分~11時30分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 道徳教育の充実に向けた方策等について
  2. その他

4.議事録

【頼住主査】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会道徳ワーキンググループを開催いたします。本日は大変御多忙の中、御参加いただき誠にありがとうございます。本日は進行資料としてお配りしている流れに基づき議事を進めますので、委員の皆様におかれましては適宜御参照ください。それでは早速ですが、議題(1)に移ります。道徳教育の充実に向けた方策等について、事務局より説明をお願いいたします。
【堀川学校教育官】  事務局でございます。資料を御覧ください。道徳教育の充実に向けた方策等についてでございます。本日御議論いただきたい事項は3点ございます。1点目が総則記載事項及び高校の道徳教育の改善、2番目に教科用図書及び教材の在り方、3番目に情報モラルと現代的な課題への対応の考え方でございます。
 まず1点目でございます。議論の前提でございますけれども、総則記載事項に関わる経緯ということで、総則においては前回改訂時に、道徳教育の目標と道徳科の目標が同一であることが分かりやすいように見直しを行いました。また、総則の第6を新設いたしまして、4点新たに明記をしたところでございます。
 1点目、全体計画について、小中学校においても総則に位置付けるということ。また、2点目、学校の道徳教育の重点目標を設定するということ。3点目、道徳教育推進教師を小学校から高校の総則に新たに位置付けるとともに、当該教師を中心として全教師が協力し、道徳教育を展開すること。そして4点目に、小学校から高校を通じて豊かな体験を充実するとともに、道徳教育の指導事項が児童の日常生活に生かされるようにすることや、いじめの防止や安全の確保等にも資することとなるよう留意すること。そうしたことが主な見直しの事項でございました。
 そのような中、高校の道徳教育に係る経緯といたしましては、上記に加えて、全体計画の作成に当たって、公民科の公共・倫理及び特別活動が人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であるということに配慮することを明記いたしました。また、小中学校と高校の接続に関しまして、4つの視点に関する道徳的諸価値についての理解を基にしながら、様々な体験や思索の機会等を通じて人間としての在り方生き方についての考えを深めるよう留意することが明記されました。
 こうしたことを踏まえた検討の方向性といたしまして、論点整理やこれまでの道徳教育の成果・課題を十分に踏まえつつ、『「考え、議論する道徳」への転換』のフェーズから実装のフェーズに移行するという今次改訂の考え方を踏まえまして、骨格は維持するという考え方に立ち、総則の記載については現行の記載を維持することを基本としつつ、具体の改善点を検討してはどうかという御提案であります。
 具体的な論点であります。1番、高校の道徳教育の改善に向けた見直しということで、中核的な指導の場面の「総合」の追加につきまして、補足イメージの1を御準備しております。平成30年の改訂のときに、公民科・公共・倫理及び特別活動が人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることが示されたところであります。また、総合の目標においても、自己の在り方生き方についての考えを深めるということを示している中で、道徳教育の全体計画で総合を実際に位置付けている学校も多いといった指摘もございます。さらに、道徳・総合・特活の各ワーキングにおいて、総合と特活をよりよく生きる基盤としての道徳性の発揮が期待される実践の場と考えることについても議論してまいりました。
 こうした現行の規定や実態、今回のワーキングの審議を踏まえまして、高校の総則で示している人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面について、公共、倫理に加え総合を新たに位置付けることとし、より一層実態に即した形で道徳教育を進めていくこととしてはどうかということが1つの御提案でございます。
 続いて全体計画についてでございますけれども、現行指導要領上、高校における全体計画の作成に当たりましては、指導の方針や重点を明らかにしてという形となっております。しかしながら、小・中学校においては重点目標としていることとの違いが必ずしも明確ではないという指摘や、高校の実態として、実際には全体計画における方針や重点を重点目標として、資質・能力を意識した記載としている学校も多いといった指摘もございます。こうしたことも踏まえまして、小学校から高校の道徳教育の接続、そして学校現場にとって分かりやすい改善という観点から、高校においても全体計画で重点目標を記載するなど、小・中・高の規定に連続性を持たせることとしてはどうかという御提案であります。
 2番、初等中等教育全体を通じた道徳教育の改善についてであります。まず道徳教育推進教師についてであります。推進教師につきましては、高校を含めて必ずしもその役割についての十分な共通理解が図れていない実態についての指摘もございます。そのような中、各学校における創意工夫による多様な実践を支える観点から、推進教師としての役割や取組、過度な負担なく取り組める優れた実践事例等について、国として参考となる資料等を提供することとしてはどうかという御提案であります。
 続いて道徳教育の要としての道徳科と各教科等との連携についてであります。道徳科は総則において「道徳教育の要」と位置付けられており、各教科等で行われる道徳教育を補ったり、深めたり、相互に関連させ統合させたりする役割を担っております。また、道徳科での学びをそれぞれの児童生徒が実生活の中で生かしていく視点も同様に重要であります。
 今次改訂で議論している複数時間の実践による道徳教育の要の時間の充実が、各教科等での道徳教育と意識的に連携されることで、学校教育全体を通じて一人一人が直面する様々な状況での判断や実践が、道徳科の学びと結び付く効果が期待できるのではないか。この点、現行の小中学校の学習指導要領では、「内容の取扱い」において、各教科において道徳科との関連を考慮しながら適切な指導をするとされている中にあって、こうした道徳教育に係る記載は維持をした上で、その趣旨を一層鮮明にするために解説でより具体的に示していくことが必要ではないか。こうしたことを通じて、各教科の教科書における一層の工夫というのも期待できるのではないかと考えております。
 次に、特に特別活動との関係について、補足イメージの2を御準備しております。各教科の中でも特別活動は、合意形成・意思決定のプロセスを通じて実社会・実生活をよりよいものに創り変えていくという特質を有しており、他者との協働を通じて内面的資質としての道徳性を養う道徳教育と深い関わりがあるところであります。
 また、「複数時間」とも相まって更なる充実が期待される「問題解決的な学習」では、「自己内葛藤」や「価値の対立」と向き合うことを例示しているところ、こうした学びが特活における「個人の意思決定」や「集団の合意形成」における道徳的実践に生かされるとともに、こうした実践が道徳的諸価値に係る考えの深まりにも資することが期待されるところであります。このため、現場の実践の改善に加えて研究の推進にも資する観点から、道徳科の学びと特別活動の学びとの有機的な関係性や優れた取組事例等を参考資料等の形で分かりやすく示してはどうかと考えております。
 こちらの図のほうでございますけれども、例えば「公正、公平、社会正義」の内容項目について考え、議論し、自分なりの答えを見いだすということを道徳科で学んだ、そのことを例えば学級活動の児童会・生徒会活動において、「公平、公正、社会正義」の観点からルール形成等の社会創造という視点が特別活動ワーキングでも議論されておりますけれども、そうしたことに繋げていく。そのことが複数時間の学びとも相まって、こうした問題解決的な学習、体験的な学習等の充実の中で、自分に引き付けて様々な課題を考えていく中で、特別活動との一層の連携というのも考えられるのではないかという趣旨でございます。
 戻らせていただきまして、ここまでが大きな論点の1でございます。その後ろに参考資料といたしまして、道徳科と各教科等との連携事例、以前のワーキングで御議論いただいた特別活動や総合と道徳科との関係、道徳教育との関係、また関連の指導要領の記載や推進教師等に関する調査結果、全体計画の全国の事例の一部など、さらに道徳教育推進教師の具体的な活用、実践事例等についてお示しをしておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 次に論点の2つ目、教科用図書及び教材の在り方についてでございます。具体的な論点の1点目、道徳科における「深い学び」の実現に向けた教科用図書の在り方ということで、補足イメージの1を御準備しております。
 冒頭の部分、こちらで御説明をさせていただきますけれども、本ワーキングでは、心情理解や登場人物の理解の整理で時間がかかってしまう、また考え・議論を深める時間の確保が難しいといった課題に向き合い、「考え、議論する道徳」の実装、「深い学び」の実現という観点から、「複数時間」、「深める教材」、「問題解決的・体験的な学習」の充実をはじめ、学校現場の創意工夫による多様な実践を促す方策について議論をいただいてまいりました。
 一方、以下の図で御説明をさせていただきますけれども、補足イメージ1、現行の教科書では各学年の教科書に35コマ分のいわゆる「読み物教材」が掲載されていることが基本となっている実態があり、こうした教科書の状況が「1時間に1つの読み物教材」という指導上の運用に繋がっていることや、授業時間分の読み物教材があることが、「量的確保」の面では着実な成果をもたらした反面、新たな教材開発の余地を狭めているといった指摘もあるところでございます。
 こうした中で、深い学びの実現の観点からは、教科書における教材間の繋がりを一層重視すること、また教科用図書においてこれまでの議論を具体化する多様な「深める教材」の開発を促すことが必要であると考えられる。その際、特に低学年では複数時間の運用は慎重であるべきといった意見も出されるなど、教科用図書の在り方については発達段階に応じて段階的に考えていくことが必要と考えられるところでございます。
 こうしたことを総合的に勘案いたしまして、教科書における教材の在り方として、「複数時間」の運用に関わる発達の段階に応じた教材の分量のイメージを国が示すこととし、これにより教科書に掲載する読み物教材の数について精選を図った上で、「深める教材」の充実を促し、「考え、議論する道徳」の実装を図っていくこととしてはどうか。その上で、発達の段階に応じた教材の具体的な分量についてどのように考えるか、本日御議論をいただければと考えております。
 こちらの図の中で、発達の段階に応じた35コマ分の教材構成の在り方について、国が一定のイメージを示すことについてどう考えるかということで、あくまでイメージではございますけれども、発達段階に応じて段階的に深める教材が多くなっていくようなイメージをお示しさせていただいているところでございます。
 戻らせていただきまして、2番、「各学校において相当する内容項目の全てを取り上げる」取扱いとの関係ということと、こちらの第4回ワーキングのところでグレー網掛けの部分にございますけれども、価値の対立を取り上げる場合などに主題と関連して複数の内容項目を設定することが考えられること、また相当する学年における道徳科の学習の全体の中で内容項目に係る過度な偏りが生じないように、併せて解説等で取扱いを示すことを御議論いただきました。このことを踏まえまして、教科書における教材においても同様の考え方について解説等で取扱いを示すということでいかがかと考えております。
 続いて「深める教材」の考え方についてであります。第3回のワーキングでは、「複数時間」を活用した授業設計の導入ということで、議論を深めたり、体験的・問題解決的な学習を充実したりすることで学びの深まりに繋げることを示すとともに、2コマ目については読み物教材ではない「深める教材」を用いることも想定されることを御議論いただきました。
 こうした教材は現行の教科書の中でも様々存在しておりますけれども、あくまでも35の読み物教材があることを前提として、学校による重点化を含めまして、必要に応じて活用できるような取扱いとなっていると認識をしております。
 また、第4回のワーキングの中で、1教材を「複数時間」で取り扱う場合に生じる余白を、深める教材も活用しながら、「問題解決的・体験的な学習」をはじめとする様々な指導方法の工夫と適切に組み合わせることで、自分自身の問題として道徳的な課題を捉え、向き合う、「考え、議論する道徳」の実装に繋げていくことについて御議論をいただきました。
 こうしたことを踏まえまして、「深める教材」についての留意点について解説等で示すこととしてはどうかということで、6点お示しをしております。
 1点目及び2点目、1コマ目と完全に独立してということではなく、教材間の関連付けがなされ、道徳科における「深い学び」に資する運用、活用が期待されること。また、従前の読み物教材よりも量的には簡素なものとして、「問題解決的な学習、体験的な学習」を含む様々な指導方法の工夫に繋がることが期待されること。
 3点目、道徳的な課題を自分自身の問題として捉え、向き合う、「考え、議論する道徳」の実装に資するという観点から、登場人物についてではなくて、自分自身の文脈に引き付けて考えるなど、「深い学び」に寄与するような観点からの教材が検討されること。
 4点目、「複数時間」の運用が充実したものとなるよう、多様な教材の開発が期待されること。
 5点目、量的確保の観点から、多様な「深める教材」を含め、標準授業時数分の教材は確保するとともに、教材の総量が内容項目及び標準授業時数に対して過剰にならないようにすること。
 6点目、各学校の実態を踏まえた重点的な指導の充実といった観点から、家庭や地域の人々の積極的な参加や協力を得るなどの創意工夫も考えられること。こうしたことをお示しさせていただいております。
 次に4番、道徳科における多様な実践事例の共有についてでございます。こちら補足イメージの2でございますけれども、「複数時間」、「指導方法の工夫例」、「教材の活用」、「内容項目の取扱い」、「デジタル学習基盤の活用」といったこれまでの議論を踏まえますと、「考え、議論する道徳」の実装に当たっては、様々な実践の姿が考えられるところでございます。
 こうした中で、国が特定の枠に制限するのではなく、現場の実態に応じた教師の創意工夫により、道徳科の「深い学び」に向けた多様な授業の実践を豊かに実装していくことができるよう、学校現場の取組の参考となる多種多様な実践事例をアーカイブの充実などを通じて積極的に共有をしていくべきではないかということで、下にイメージをお示ししております。例えばこれまでにも1コマ扱いだけではなく、複数コマ、特別活動や各教科等との連携といったことも御議論いただいてまいりました。
 さらには、指導方法の工夫として問題解決的な学習や道徳的行為に関する体験的な学習、その中でも自己内葛藤や価値の対立、さらには様々な具体例についても御議論をいただいてまいりました。
 さらには教材の活用についても、「読み物教材」や多様な「深める教材」、自治体が作成する教材、内容項目の取扱いについてもケースによっては複数の内容項目、それも2つだけではなくて3つをということも御議論をいただいてまいりましたし、様々な場面でのデジタル学習基盤の効果的な活用についても御議論をいただいてきた中で、こうしたことの純粋な掛け算ではないかもしれませんけど、組み合わせの中で多種多様な実践事例が出ていくことを、積極的にアーカイブの充実等を通じて共有をしていくべきではないかという御提案でございます。
 戻らせていただきまして、ここまでが大きな2つ目の論点でございました。参考資料といたしまして、これまでのワーキングまでご議論いただきました、主要な補足イメージ、一部黄色マーカーで修正、補足をしてますけれども、これまでの議論に関わるスライドや学習指導要領の抜粋、教科書検定調査審議会の報告、検定基準、様々な教材の例等についてもお載せさせていただいておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 最後に情報モラルと現代的な課題への対応の考え方についてでございます。こちらは補足イメージはなく御説明になりますけれども、1番、情報モラルに関わる取扱いといたしまして、情報モラルにつきましては倫理的・道徳的な側面と深く関わるということで、道徳科の内容の取扱いにも明示的に位置付けられ、教科書の教材としても取り上げられているところでございます。
 また、論点整理では、「情報活用能力の抜本的な向上」を打ち出すとともに、情報・技術ワーキングにおいて、情報活用能力の3つの柱の1つである「情報技術の適切な取扱い」の一部として、「情報モラル」を位置付けておるところであります。
 こちらの後ろに参考で付けておりますけれども、「メディアリテラシー」に関する内容の考え方ということで、情報技術ワーキングの資料でございますが、情報活用能力の抜本的向上の3つの柱のうちの1つである情報技術の適切な取扱い、それが情報モラルとメディアリテラシーというものから構成されるような図が示されておるところでございます。
 こうしたことを捉えますと、道徳科においても小学校の総合の時間の「情報の領域(仮称)」、また中学校の情報・技術科(仮称)とは異なる道徳科の学びの文脈で必要な改善を図っていく必要があるだろうと。その検討に当たっては、10年前の状況と現在の状況を比べますと、以下のような変化が指摘されているということです。
 1点目、AIによる大量の情報の生成を含め、正しい情報と誤情報を見分けること自体が困難になっていることや、フィルターバブルやエコーチェンバーの影響により、価値観に偏りが生じやすいような分断にも繋がりかねない状況が生じていること。
 また、情報を消費する立場に加え、低年齢から発信したり拡散したりする立場になることが多くなっていること。
 こうした中で、簡単な操作で他者や社会に悪影響を与えたり、犯罪等に巻き込まれたりするリスクが大きくなっていること。
 こうしたことも踏まえますと、教科書、教材のアップデートを促す観点から、解説において以下の方向で記載の検討をしてはどうかということで、2点でございます。
 1点目、情報モラルについて取り扱うに当たっては、発達段階に応じて道徳的諸価値との関係で「してはならないこと」といった「何がよいかは分かっている問い」についても、なぜそのようなことをしてしまうのかといった心の弱さ等との関係で考え、議論すること。
 2点目に、複数の道徳的価値が関わり、単純な正誤だけでは判断しにくい問いと向き合う機会、例えば炎上している投稿へのリポストや匿名アカウントでの発信というところを例に挙げさせていただいておりますけれども、そうした場合の発達段階に応じた、いわゆるネガティブ・ケイパビリティ、曖昧さに耐えるといったことの関係も含めた議論を、解説において記載していく方向で検討していってはどうかという御提案であります。
 2番目、道徳科におけるAIとの向き合い方についてでございます。前回の会議の中で、道徳科の学びの中でどのようにデジタル学習基盤やAIを活用するかについては御議論をいただきました。
 その上で、前述の情報モラルとも相まって、特にAIについては急速に産業や社会に浸透をして構造的な変化を起こしている中にあって、「人間として生きること」、人間としての価値判断の責任が問い直され、自己を見つめ生き方についての考えを深める道徳教育が今だからこそ一層重要になっているといった指摘もございます。
 そうした中で、子供も日々AIとは切り離すことが容易ではない状況も生まれる中で、AIを巡る道徳的諸価値に関わる問いとして、例えば学習課題や作品づくりに取り組む上で何のためにどこまでAIを活用すべきか、また何のためにそもそも学ぶのかといった論点。
 また、AIの出力から得た情報をどのように受け止め、判断するべきかといった論点。
 こうした論点、あくまで一例でございますけれども、情報モラルの一環として取り扱うことが考えられる様々な題材の1つとして、AIが惹起する道徳的課題について、発達の段階を踏まえつつ道徳科の教材の中でも取り扱うことが考えられるということを解説で示すこととしてはどうか。
 また、こうしたAIに関わる技術的な変化の速さに鑑みて、解説の記述については、教科書の検定サイクルを念頭に必要に応じて見直しを行うこととしてはどうか。こちら情報・技術ワーキングでのAI等に関わる技術の進化の早い部分については、教科書の検定サイクルを念頭に解説の見直しを行うといったことも議論されている中で、そちらとの並びを取って道徳科においても見直しを行うこととしてはどうかという御提案であります。
 最後の論点でございますけれども、3番、「民主的で持続可能な社会の創り手の育成」や主権者教育等との関係でございます。
 論点整理におきまして、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方として、「民主的で持続可能な社会の創り手の育成」ということが示される中にあって、その背景として、「内なる国際化による人口の多様性」の拡大、また「SNSや生成AIの負の側面の影響による社会分断の可能性」、こうしたことが現代的な諸課題として示されている中で、例えばこうしたこととも「相互理解、寛容」、「公正、公平、社会正義」をはじめとする様々な道徳的諸価値との関わりが考えられるところでございます。
 また、「民主的で持続可能な社会の創り手の育成」に向けましては、「当事者意識を持って自分の意見を形成し、対話と合意を図る取組」の推進、そして「主体的な社会参画に関わる教育の改善」、こうしたことが今次改訂における大きな論点となっている中で、「考え、議論する道徳」の実装は、「自分の意見の形成」、また「対話と合意」、こうしたことを支え、改訂全体の方針の具現化に大きく寄与するものであると言えます。
 さらに、各教科等ワーキングにおいては、特別活動では「こども基本法」を踏まえた意見表明の機会の確保といった視点も踏まえまして、「児童生徒が主体となった学級におけるルール形成」であったり、教師の適切な指導の下での主体的な学校運営への関わりといった社会参画を超えて、「社会創造」といった視点を今次改訂の主要なテーマの1つとして議論をいただいているところであります。
 また、社会科においては、主権者教育につきまして社会との関わりを意識した課題の設定、また実践的な活動、外部機関との円滑な連携・協働といったことが議論をされております。
 こうした特別活動や社会科の改訂の方向性を踏まえますと、例えば「公正」に関わる問題の発見や「寛容」、さらには相互理解といった道徳的諸価値に関わって判断や実践等を行う場面がより一層多く次期学習指導要領の中で想定されるところであります。
 このため、道徳科においては「複数時間」の取組とも相まって、各教科等、とりわけ特別活動や社会科の改訂の方向性とも連携を図りながら、道徳的諸価値やそれらの葛藤について取り扱っていくことを解説等で示すこととし、現代的な諸課題としてのより一層の社会参画や「民主的で持続可能な社会の創り手育成」に向けた教育の充実や主権者教育の充実を図ることとしてはどうかという御提案でございます。
 参考資料には学習指導要領の抜粋、こども基本法の関連部分、情報・技術ワーキングで主として議論をされている情報モラルとも関わる論点や背景となるデータ、いじめの認知件数をはじめとする現代的諸課題に関わるデータなどをお示しさせていただいておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 事務局からの説明は以上になります。
【頼住主査】  それでは委員の皆様から事務局資料について御発言をいただきたいと思いますので、御発言の準備が整い次第、挙手ボタンを押していただきますようにお願いいたします。なお、発言の際には事務局から説明があった資料に触れる場合は、資料の何ページかを明示いただければ事務局による画面投影も可能となりますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 岡﨑委員、お願いいたします。
【岡﨑委員】  岡﨑でございます。よろしくお願いいたします。今回の改訂で、基本的な考え方として、自らの人生をかじ取りする力と、民主的な社会の創り手の育成が挙げられております。
 4~5ページに示されております、義務教育における道徳教育と高等学校での道徳教育の接続性、そして全教育活動の中での中核的な指導の場面の位置付けを見直すということは、小学校、中学校から高校その先へと成長していく子供たちが、自らの人生を考え続けるという姿勢を養うためにも非常に重要なことであると捉えています。
 また、4ページに示されております道徳教育推進教師の役割についてですけれども、国として参考となる資料提供をして各学校の実践を底上げしようという狙いと捉えました。今回もご提案がありましたが、1つの教材や内容を複数コマでという指導の工夫や、教材間の関わりを意識した道徳教育の充実を実現していくためには、各学校の道徳教育の明確な方針とカリキュラム・マネジメントが重要になると私は考えています。そのためにも道徳教育推進教師の役割は非常に大きいと思っています。この資料提供は各学校の校長先生が道徳教育推進教師を命課する上での指針ともなり得ると考えておりますので、具現化を期待しています。
 続いて、8ページに示された道徳科と特別活動の連携についてです。昨年9月の論点整理において、道徳的実践の強調が示されました。一方で、道徳科の目標は現行のまま内面的資質を養うこととしています。
 これまで学校現場で道徳科の授業を拝見してきた中で、授業者が道徳的実践を重んじるあまり児童の意思決定を焦ってしまう、例えば授業の最後に「これから頑張ることや取り組んでいくことを考えましょう」といったことを考えさせる授業を何度か見てきました。道徳科で養うのは内面的資質であることを繰り返しお伝えしてきたにも関わらず、そういった事例も散見されました。
 13ページに示されているように、道徳科や特別活動、総合的な学習の時間など、それぞれの教科等の特質、そこで養うべき資質が曖昧になっている現状がありました。もちろん関連性は深いものと考えますが、それぞれの教科等で養うべきことを理解した上で連携しないと、児童の人格的な成長に働きかけることは難しいと感じておりました。
 よって、8ページでお示しいただいたように、ここで改めて意図的に道徳科、特別活動等の連携の在り方を示すことで、授業者に正しい理解を促すとともに、児童が実体験を伴いながら道徳的諸価値と自己との関わりをさらに深く考え、議論することに繋がると思います。今後特別活動等の部会との連携を期待しております。
 26ページの深める教材の考え方についてお話しします。今回、教科用図書の在り方として大きな変革となると、楽しみ半分、不安半分といったところになります。現行の学習指導要領の改訂で教科書が導入され、34時間ないし35時間分の教材が掲載されたことによって、量的確保に大きく影響したと実感しております。
 今回のこの御提案は思い切って教材に余白を作るというイメージであり、これは各学校での創意工夫、そして研究の推進が不可欠になると考えています。「考え、議論する道徳」の実装に向けて、道徳教育の研究や指導の工夫を楽しみに感じている学校や先生方は、研究の幅が広がることを好意的に受け止めることと思います。
 一方で、この深める教材の扱い方について、深める教材を導入した狙い、活用の留意点を分かりやすく示していくこと、そして道徳科で養うことについて改めて明示していくこと、そういった配慮がないと、時には道徳科の特質が失われてしまうこともあるのではないかという不安もあります。これについては前回の多様な指導の工夫についての議論でお話ししたことと重なります。また、様々な要因から指導方法等の研究に時間を割けない学校や先生方にとっては、この教材の余白を作ることで量的確保にマイナスの影響を与えてしまうのではないかという心配もしています。
 個人的にはですが、楽しみに感じていることは正直なところございます。28ページに例示されており、また前回の渡邉真魚委員、渡辺弥生委員の御提案もありましたけれども、「考え、議論する道徳」の実装に向けて多様な指導の工夫にチャレンジしてみたいと思う先生方もたくさんいらっしゃるのではないかと考えています。
 また27ページに、小学校の低学年の教科書には深める教材は置かないという御提案になっていますけれども、確かに1つの教材で複数時間といった指導は1、2年生には思考の継続性から考えても難しいという面もありますので、段階的に深める教材を増やすことについては賛成です。一方で自分の実践を振り返ってみますと、役割演技、動作化、あるいは構成的グループエンカウンター的な手法の工夫を取り入れた道徳科の学習は、低学年の児童も楽しみながら主体的に自己を見つめて考えることに繋がった経験もあります。児童が「もっともっと言いたい。」という時もあって、時間を使ってじっくり考えさせたいと思ったこともたくさんありました。よって、低学年でもぜひ複数教材での、または1教材複数時間での指導の工夫について各学校で研究を深められるとよいのではと思っているところでございます。
 そして細部になるのですけれども、27ページの中の「教材の活用」の1番下に、自治体が作成する教材を示していただいたことについてです。実は現行の小学校学習指導要領の実施状況調査において、地域教材などの多様な教材の活用についての項目は、肯定的回答が他の項目と比較して低かったという結果が出ました。ここで自治体が作成する教材を示していただいたことが、今後各自治体での教材開発や活用に有効に働くのではと期待しております。
 民主的で持続可能な社会の創り手を育むには、今生きている地域やその文化、歴史への敬愛または探究は非常に重要と捉えております。いずれにしましても、今後各学校の創意工夫がより一層求められると考えています。正直、一校長としては負担感もあります。道徳教育アーカイブを含めた参考資料のアピール、全国的な研究・研修を充実させていく必要があるのではと考えております。以上でございます。
【頼住主査】  それでは中島委員、お願いいたします。
【中島委員】  中島です。本日はよろしくお願いします。今回の資料を受け取った時に、大原点にあるんだなと思ったのは資料の後の方のページでした。実際に子供たちの今の状況を、52ページから55ページといった今の子供たちが直面している課題、これと向かい合って道徳の教育に取り組まなくちゃいけないなということを実感する意味で、ここに1つの原点があるという点では、きちっとした認識を持たなくちゃいけないんじゃないかと思ったところです。
 それでは、本日の課題ごとにいきたいと思いますが、最初に総則の記載事項及び高校の道徳教育の改善等についてということで、全体計画の作成、5ページをお願いします。御提案いただいているのが、まず高校教育の方で道徳教育をしっかりと先生方に認知していただく必要があるんじゃないかなと思います。
 かつて中学校の道徳教育がなかなか進まなかった実態としては、やはり道徳の時間が他のものに使われてしまうような状況がありました。実際には高校では要となる時間がないわけですね。ですけど、道徳教育をするということをまず高校の先生方が認識していただいているかということが、1つ課題としてあるんじゃないかなと思いまして、特別活動の時間、ロングホームルームですかね、そういったところや総合などで、どんな資料が使われるのかなと考えてみました。そういった時に、小・中学校で使っている資料にも高校でもう1度使える資料があるんじゃないのかなということで、ぜひ高校の先生方にはそんな認識を持っていただきたいと。
 そして、義務制の学校の先生方にお願いしているのが、道徳の時間に終末で教師がお話をする場面があるんですけれども、その時に今のままでいてほしいという教師の感想を子供たちにメッセージで伝えることも大事じゃないのかなと。道徳性というのは必ずしも年齢と共に発達して高くなるわけではありません。失われていくものとか、取り戻してほしいものというのがあると思います。
 特に高校生ぐらいになった時は、青年心理学的に言うと色々な葛藤があって、自分の道徳性を低めてしまうような言動があったりするわけですね。そういった子供たちに、大人だって絵本を見て自分の道徳性をもう一遍考えてみるとか、自分の生き方を考えることはあるわけですから、高校生にもそういった教材をもう1回子供たちに与えるということも考えていただければと思います。
 かつて「二人の弟子」というのが道徳の教材としてありましたが、中学校でやっている時非常に難しいと思いました。高校生ぐらいになってからこの「二人の弟子」を子供たちと勉強してみたいなと考えたことだってありますので、小・中学校の教材の中から高校の特別活動や総合の時間、色々な場面でぜひ取り扱うことも検討していただければと思います。
 もう1つ、全体計画をしっかりと作り上げていこうということでのお話ですけれども、私も当時はまだ道徳教育推進教師というのがありませんでしたので、道徳主任ということになって初めて全体計画を作りました。自分で作ってみて初めて知ることがいっぱいでした。
 いろんな教育活動の場面で、道徳的な視点で自分が取り扱う教材、私は例えば理科ですから、理科の教材を見た時に、ただの真理の追究だけじゃなくて、発見した人の人生のエピソードを話したり、法則を見つけるためにこんなことがあったというお話をしたりすることで、道徳教育が教科の時間にもできるんですね。高校の先生もそうですけれども、中学校の先生方も道徳教育の場面が全ての教育活動の中にあるという認識をしっかり位置付けてもらう意味で、全体計画をしっかり見直して自分のものにするということはとても大切なことじゃないかなと。それが小・中学校における道徳科が要の時間の補充・深化・統合の時間として生き返ってくると思いますので、このことについても大賛成をしたいと思っています。
 続きまして、教科用図書の在り方についてということで、25ページをお願いします。ここであります通り、今の小・中学校が35時間分の資料が全部教科書で用意されていることに関しては、量的な確保には寄与したと思います。ただ、以前のことを考えてみますと、教科用の図書がなかった時というのは、かつては文科省の読み物資料集というのがありました。そして「心のノート」、そして「私たちの道徳」というものができました。
 この時私が感じていたのは、日本に住む多様な子供たち、今はもう多国籍の子供たちもいると思います。その全ての子供たちが共通の教材、物語であったり出来事であったり人物と出会うことで、日本に住んでいく未来の国民がみんなで共通のアイデンティティを持つことに繋がっていたんじゃないかなと思うんですね。
 そうなった場合、今回の改訂の作業の中でありました一番最初の大枠のところは変えないということがあったと思います。ですから、教材の中にも変わらず残るものを明確にしてもらいたいなと。これから先も子供たちに残していきたい、伝えていきたいものについての教材を残す。それは「私たちの道徳」とか「心のノート」の中にあったと思いますので、そういったものはもう1度しっかりと残していただければと思います。
 そして郷土教材ということで、先ほど自治体の方で作っている資料というのがありましたけれども、今ちょっと持ってきましたけれども、こういうのがありまして、これは熊本で熊本地震が10年前に起こりました。その時の出来事を子供たちに伝えていきたいと。防災教育の視点もありますし、郷土教育のふるさと教育の大切にする心を育てるのにも繋がるんですけれども、そういったものはぜひ活用していきたいと。
 そのためにできれば、教科書の方ではある程度数を、35パンパンというわけではなくて、少し余裕を持っていただければこういったものの活用に繋がるんじゃないのかなと思います。例えば22の内容項目全てを網羅するというのは当然のことですけれども、その後の重点化をしていった時に、いくつかの余白がそこにはできて、25、26時間分ぐらいの教材があればいいのじゃないのかなと。その余白の部分が各学校で先生方が新たに取り組む部分、それからこれまで本当に残したいと思っていたのは何だったのかを見直す機会にもなるんじゃないかと思うんですね。先生方の中では「うちの学校ではこれを取り扱ったけど、これ教科書に載ってないよね」「私たちの道徳にあったよね」というようなことは復活してほしいと思いますし、そういうことができる見直しであればと思います。
 最後に、メディアリテラシーのところですけれども、情報技術が認知や行動に与えるリスクということで、少し私の方で感じましたのは、学校の色々な指導の場面は、生徒指導、それから子供たちが主体的に考える児童会・生徒会活動と、さらには家庭教育や地域教育との連携が最も重要だと思っています。整理していくと、子供たちが加害者にならないという要素と、子供たちが被害者にならないという要素がそこには含まれているんじゃないかなと思うんですね。
 道徳的に考えますと、子供たちは大体将来的なことを考えた時に、こうありたいという生き方を考えるのと、こうはなりたくないということを考える。特に加害者に子供たちがなってしまう場合の時は、なんでこういったことになってしまったんだろうと考えた時に、やはり自分はそうなりたくないという気持ちをしっかり根付かせることが必要だろうと思います。
 被害者側にならないと言った時に、子供たちはいじめの時もそうですけど、第三者として自分を考えてしまうんですけれども、第三者にならない。必ず自分はしてしまう側か、もしくはいろんな被害に遭ってしまうこともある。それでちゃんと対応を考えるような取組がぜひ必要となってくるんじゃないかなと。特に生徒指導や家庭教育との関係というのはとても大事になってくると思いますので、道徳の時間で勉強したことが家庭に持ち帰られて、家庭で保護者と一緒にそのことを考えるといった発展的な取扱いに取り組んでいただければと思います。
 最後にAIについての向き合い方なんですけれども、子供たちがAIをどう活用するかということでは、多角的・多面的に物事を考えていく時に必要だと思いますし、逆に自分の思った通りの回答をAIがしてくれなかった時にどんな要素が抜けているんだろうなと考えたりすることでは、これから先、子供たちが活用していってくれるんじゃないかなと思います。私からは以上です。
【頼住主査】  それでは、渡邊範道委員お願いいたします。
【渡邊範道委員】  よろしくお願いいたします。都立上野高等学校の渡邊範道です。先ほどの事務局からの御説明を踏まえまして、高等学校における道徳教育の改善について意見を述べさせていただきたいと思います。
 7ページをお願いいたします。高等学校における道徳教育は、学習指導要領の平成20年の改訂における全体計画の作成、そして前回平成30年の改訂における道徳教育推進教師の位置付けなどにより、各学校の生徒の実態を踏まえ、学校全体で組織的・計画的に進められてきていると思います。
 特にですが、道徳教育推進教師を中心に全教師が協力して展開することや、公民科の「公共」と「倫理」並びに「特別活動」が総則において人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることに配慮するということが示されました。これは大変大きなことだと思いますが、これを受けて、高校生という発達段階を踏まえ、公民科、特に「倫理」においては先哲の原典などを読ませ、考えたことを話し合わせる。また「公共」や一部「政治・経済」においてもそうですが、司法や国際情勢などの単元において、公正や正義などや現代的な諸課題の解決を目指すことについて、法や道徳、人権に関する様々な議論を踏まえた授業も数多く見られているところです。
 続いて8ページをお願いします。「特別活動」においても、学校やホームルームにおける課題の解決やルールの制定に向けて価値観の対立や葛藤を乗り越え、合意形成を図るべく話合いが行われています。このように、公民科や特別活動は道徳教育の実践の場としての役割を果たしていると考えています。
 この度、新たに事務局から示された人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面に、「総合的な探究の時間」を加えるということも、学習指導要領の「総合的な探究の時間」の目標に、自己の在り方生き方を考えながらよりよく課題を発見して解決していくための資質・能力を育成することや、実社会や実生活との自己との関わりから問いを見いだすこと、主体的・協働的に探究に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら新たな価値を創造することなどが示されていることからも、「総合」を人間としての在り方生き方を考える中核的な場面に加えるというのは自然な流れであると感じています。
 高等学校における「総合」は、現在各校の実態を踏まえて学校の特色化を目指す上でも大変活発に行われています。生徒が自ら解決したい社会的課題について問いを立て、調査活動を行ったり、地域や大学の研究者などに話を聞いたり、文献などを調べたりしながら探究活動を主体的・積極的に行っている学校が多くあります。特に地方の学校などでは地域調査が盛んで、地元自治体との連携、また大学進学者が多い学校では文理横断型の学際的な内容を目指すなど、様々な取組が行われているところです。
 学習指導要領にも、国際理解・情報・環境・福祉・健康など、様々な現代的な諸課題に対応する横断的で総合的な課題、また地域や学校の特色に応じた課題、生徒の興味・関心に基づく課題、職業や自己に関する課題などを踏まえて探究する課題を設定することが示されていることからも、適正かつ当初の想定以上に活発に行われているのではないかと思います。
 人間としての在り方生き方の中核的な場面に位置付けると、道徳教育を高等学校の「総合」にも広げていくということで、最初伺った時には、現状の「総合」の取組から考えると新しいことが加わるようで少し窮屈になるのではないかとも感じたのではありますが、「総合的な探究の時間」の目標に照らして、人間としての在り方生き方を考えたり、よりよい社会に向けての課題の解決に向けたり、話合いや議論したり、合意形成を目指す、こういった目標や方法に合致しているものと考え、妥当であると判断しています。
 高等学校の特徴というのは、地域や学校によって生徒の実態が様々であるといえると思います。先ほど御説明にありました全体計画の重点目標として高等学校もしっかり明記することも含めて、校長の判断、学校経営に係るカリキュラム・マネジメントというのは非常に重要になってくると思います。私も「探究」をはじめとして、「特別活動」にもいえるのですが、様々な体験を経た豊かな人間性の育成を目指しているところであり、こうしたことは道徳的心情の育成にも十分資するものであるし、小・中学校で学んだ道徳的価値を、高等学校においてよりよい社会を作るために実践するという趣旨として、中心的な課題・目標として位置付けていきたいと考えているところです。
 最後になりますが、今後の課題について触れたいと思います。22ページをお願いしたいと思います。先ほど中島委員からも御指摘いただきましたけれども、高等学校の道徳教育における課題は、小・中学校までの道徳教育を踏まえた成果・価値の育成を十分継続して連携できているかというところだと思います。
 道徳教育推進教育師の役割や内容の取扱いについて、各教科との連携を示すことなど文部科学省の参考資料の御提供がいただけるということで大変期待をしているところですし、さらに、高等学校における道徳教育の実践を地域や保護者に公開していくという取組も必要になってくると思います。22ページにあるような優れた取組を十分に生かしながら、今後高等学校でも道徳教育をなお一層推進していかねばならないと思っているところです。私からは以上です。
【頼住主査】  それでは、鈴木委員よろしくお願いいたします。
【鈴木委員】  私からは5点述べさせていただきます。1点目ですが、高校の道徳教育の全体計画に「総合」を入れるということについてです。5ページのところで、今まであった特別活動や公民科・公共に加えて、「総合」を新たに位置付けるということについては、基本的に賛成です。ただ、米印のところにもありますように、高校では総合的な探究の時間に課題研究を熱心にやっている学校もありますので、実際の指導に当たっては、例えば課題研究の一環として研究倫理を取り上げていく、研究の意義や問題を考えて議論するなど、柔軟な対応をしていただくということが望ましいかと思っています。
 2点目は、初等・中等教育全体を通じた道徳教育の改善についてということで、7ページの補足イメージの1をお願いします。ここで幼・小・中・高の発達段階が左のところに書いてありますが、道徳性は未分化から分化・統合へと進むと考えられています。幼稚園は未分化な段階ですけれども、小学校・中学校は分化のところですので、現行の学習指導要領にもありますように、4つの視点に分けて学習しています。ただ高校は統合の時期であり、統合というのは、様々な考え方を状況に合わせて判断して活用して行動していくという段階ですので、4つの視点にこだわることなく、グローバルな課題、例えば環境問題、平和問題とか、SDGsの問題など、大きな問題を取り上げていくというのが望ましいと思っています。
 次の8ページの補足イメージの2ですけれども、これはとても分かりやすい図になり、連携の意図がうまく表現されていると思います。特に中ほどに矢印があって、道徳科で考え・議論したことを実践に生かす、それから実践が考えの深まりに資するというこの矢印が、学びのサイクルをうまく表現していると思いました。道徳科で学んだことを活用するということで、特別活動、これは1つの例ですけれども、特別活動で何か意見を言ったりしてみても、うまくいかないということがあろうかと思います。そうするとそこで子供たちは立ち止まって葛藤して、なぜか考えて工夫して、道徳科で学んだことをさらに超えていく考え方を身に付けていくということがあろうかと思います。また逆に、実践を通して失敗や葛藤や成功や喜びを実際に感じたり経験したりすることで、次の道徳科の時間には教材を読んで理解して終わるということではなくて、自分の経験を付け加えて教材を超えて学びをお互いに深め合うことができると思います。そういう学びのサイクルがうまく表現できているということで、この補足イメージ2を皆さんで共有するということが大切かと思います。
 3点目は、特に高校の道徳教育推進教師の役割についてです。22ページを開けていただけますでしょうか。実践事例です。左のところにもありますように、教員研修を企画している、あるいは道徳教育推進委員会を設置しているといったところがあるかと思います。高校の授業というのは基本的には教科で行うということが多いので、研修も教科で行うことが多いのですけれども、道徳教育は全体研修となりますので、教科を超えて生徒理解、人間観、職業観など、先生同士も語り合い、また子供を見る目というのも培われますので、教員としての資質・能力の向上にもプラスに作用すると思っています。
 それから次のページを御覧ください。これも実践事例ですが、ここに地域住民や町内会との関わりをしているという実践事例が出ているかと思います。高校は広域になりますので、なかなか地域との連携が難しいところがありますけれども、地域の方々から応援をしていただくというのも重要なことです。このような交流を、道徳教育推進教師を通して実現できるということは、高校側にとってもプラスになると思いますが、今の子供たち、若い人たちというのは何か役に立ちたいという思いを強く持っていますので、地域のために何かしたいと思っている高校生の実践意欲の醸成にもプラスになるように思います。高校の道徳教育推進教師がどのようなことをされているのかといった、実践事例を共有することがプラスに作用すると思っておりますので、これらの実践事例の共有を進めていただければと思います。
 4点目です。これは「深める教材」、あるいは教材全体についてのことです。27ページになろうかと思います。ここで、発達に応じた「深める教材」の分量をどうするのかというのは、今回の改訂において大変重要なことだと思いますので、私からの意見を申し上げたいと思います。以前のワーキングで、年間35単位時間の中で最大22の内容項目を全て取り上げることにしたことを考えますと、最大22の内容項目は「読み物教材」を使って学習することで、内容項目を押さえた上で、残り13時間分を「深める教材」として複数コマでの学習を柔軟に進められるようにしてはどうかと思っています。22の内容項目については押さえ、残り13ということですので、量的な分量は確保できると考えます。このように量的な分量を確保しながら、複数コマの組み合わせを「読み物教材」プラス「深める教材」、あるいは「読み物教材」プラス「読み物教材」、「深める教材」プラス「深める教材」など、柔軟に組み合わせるということも可能かと思いますし、また地域教材など教師が柔軟にその教材を使って学習を進めることができるのではないかと思います。
 次の28ページの補足イメージ2なんですけれども、これはとてもよい図だと思ったのですが、このように多様な授業実践、先ほど説明にもありましたように、全てをかけ合わせるということではなくて、柔軟に組み合わせるということかと思いますが、こうした多様な授業実践事例のイメージを皆さんと共有し、共通理解しておくということが大事かと思います。そのことを通して教師のカリキュラム・マネジメント力もつくと思いますし、教材開発の力もついていくと思います。また、子供の実態に、より合わせた授業実践ができると思いますので、道徳で学んだことを実践する、今回の私たちのねらいでもある実装化というのが一層推進できると思います。
 最後に5点目です。これは情報モラル等についてということで、43ページです。情報教育においても行われているわけですが、やはり道徳科だからこそできることは何かということを取り上げて、子供たちが情報をうまく活用できるようにしていくことが肝要かと思います。その点で、道徳科におけるAIとの向き合い方のところにも書かれているんですけれども、何のために使うのか、何のために活用するのかという目的に着目することで、情報活用に関して道徳的判断の基準を考えさせることができるかと思いますので、この点を大切にしていただければと思っています。情報分野というのは急速に発展し続けていますので、次の改訂を待たずに教科書改訂のサイクルなどで早めに見直すという方針は、これでよいと思います。
 次の44ページをご覧ください。次期学習指導要領の基本的な考え方として「民主的な持続可能な社会の創り手育成」が目指されることが記載されていますが、その全体的な方向性における道徳科の貢献についてもあげられています。特に特別活動と社会科との関連で、「公正」、「寛容」、「相互理解」といった道徳的諸価値が示されています。このことは、改訂全体への道徳教育の意義を示すことにも繋がっていて、要としての道徳科の実装が一層進むのではないかと期待しています。最後に主権者教育のところがあるんですけれども、学校の中で児童会・生徒会活動の経験を積み上げて、主権者としての考え方や行動を学んでいくということも大事なんですけれども、やはり社会で生きている大人との関わりも必要ではないかと思います。地域社会との関わりを柔軟に取り上げながら、現実の課題に対しても主権者意識を持った児童・生徒を育てていくということが期待されると思っております。以上となります。
【頼住主査】  それでは古屋委員、よろしくお願いいたします。
【古屋委員】  よろしくお願いいたします。もう既に多くの先生から御発言された内容と重複することをお許しいただきたいと思います。順にお話をさせていただきます。
 まず、高校の道徳教育の改善に向けた見直しというところでございますけれども、高校は成人となり、また社会に巣立つための道徳性を育むまとめの時期であると考えますし、小・中学校で道徳科を要として行われてきた道徳教育を基盤に、様々な道徳的な問題や課題を各教科等の中で総合的に学ぶ段階であると捉えております。その中で、特に総合的な学習の時間におきましては、先ほど渡邊委員からお話があったような現代的な課題に関する探究的な学びを行う中で、在り方生き方についての考えを深める場面がたくさんあるというところで、当然今も在り方生き方に関する中核的な指導場面がたくさんあると言えるかと思っています。なので、御提案された内容に同意するところでございます。
 また、小・中学校のように特別の教科 道徳を特設するということではなくて、やはり公民科や特別活動、そして総合を中核的な指導場面としながら、道徳性が発揮される実践の場面として学びを深め、道徳性を育成していくというところが、高等学校の特色ではないかと思っています。また、全体計画の在りようでありますけれども、重点目標を記載するということで、小・中学校との連続性、系統性が担保できるというところは大切にしていきたいなと思っております。
 それから続きまして、道徳教育推進教師の話でありますけれども、各学校にはもう既に校務分掌として位置付けられているわけでありますが、その機能が十分に果たされているかというと、少し疑問が残るところでございます。特に最近現場で見られるのが、経験の浅い先生方が担当しているケースも多いように感じられます。東京都の場合には、道徳授業地区公開講座というものを実施しておりまして、地域と共に道徳授業について考える場面があるわけですけれども、その企画運営のみを担っているような状況もあります。やはり、さらに指導計画の作成ですとか、校内研修の充実、また家庭や地域との連携の充実なども期待されるところであると思いますので、推進教師には教員としての一定の経験が必要ではないかと思います。各学校の実態もあろうかと思いますが、できる限り主幹教諭が担うような位置付けも必要ではないかと思います。また、さらに小・中・高の系統性、連続性を踏まえますと、推進教師同士の連携というような在り方も今後提案する必要があろうかと思っています。
 続きまして、5ページの方に移らせていただきます。道徳科が道徳教育の要であることを確認することは、とても大切だなと思いますし、また、各教科等との往還の充実を図ることが重要であって、複数時間の実践など、今後充実する道徳科の学びと、各教科等での道徳教育との連携を深めることによって、全教育活動を通して児童・生徒の道徳性を一層育むことになる。さらには、道徳的実践の充実にも繋がると考えております。そして、各教科等の教科書にも道徳教育の視点が工夫されるという方向性、これは私は大いに期待したいと思っております。
 また、さらに道徳科と特別活動との連携、今回ワーキンググループでも議論が深まったと思いますけれども、道徳科と特別活動との学びの往還によって相乗効果が期待されること、そしてそのことを学校現場に分かりやすく取組事例を紹介していく必要もあるのではないかと思います。そして、さらに今後優れた実践研究が行われることを期待したいと思っています。
 続きまして、2点目の教科用図書及び教材の在り方についてというところで、25ページですね。教科書における教材間の繋がりを一層重視することが書かれております。やはり教師も児童・生徒にとっても教科書というものは学びの中心になるわけですので、その1年間の学びのストーリーがしっかりとイメージできるような編集をぜひ工夫してほしいと思います。そして、読み物教材をはじめとして、深い学びを実現するための多様な教材開発が求められると思いますし、その1つが今回取り上げられている深める教材であると思います。
 先ほどから、出ているように、発達段階に応じて適切な教材を教科書に掲載することは基本であります。特に小学校低学年においては、登場人物への自我関与を通して道徳的諸価値について学ぶ、そういう教材が中心になろうかと思いますが、深める教材も若干取り入れながら学びを新たなものにしていったらどうかと思います。
 また、教材の具体的な分量というところでありますが、私は十分な根拠を持ってはなかなか発言できないところでありますが、少なくとも35コマの道徳科の学習が成り立つ教材数はなくてはならないと思います。また、読み物教材については、少なくとも内容項目の数である22のものが必要かなと、先ほど鈴木委員もおっしゃっていたようなことを考えているところでございます。「考え、議論する道徳」の実装を実現する教材というところでありますので、読み物教材、そして深める教材と、様々な工夫をしながら、新たな道徳を展開できたらと思っております。
 そして、26ページに深める教材についての留意点が書かれております。このことを解説書で示すということは、とても必要であって必須であると考えております。これを手掛かりに、教員は新たな教材開発にも取り組んでいくと考えております。
 そして、皆さんからお話があったように、27ページ、多様な実践事例の共有というところでございますけれども、これは非常に分かりやすいなと思っております。そのための道徳教育アーカイブの充実ということは、ぜひ進めていただきたいと思っております。このようなイメージを持ちながら、様々な指導の在り方を意識しながら1時間の授業を構想していくということがこれからは重要でありまして、今まではどちらかというと、読み物教材の解釈を中心とした研究が学校現場では多かったようにも感じます。これからは、「考え、議論する道徳」の実装、深い学びに視点を当てた研究というものが重視されていくのではないかと大いに期待したいと思っております。
 最後に、情報モラルに関するところでございます。現代におきましては、情報モラルについて学ぶということは必要不可欠でありまして、その学ぶ内容も日々刻々と変化していると思っています。東京都が昨年度実施した調査においても、家庭学習でAIを活用している児童・生徒の割合ですけれども、小学校では30%近くになる。中学校では50%を超え、高校では60%を超えているという実態もございます。従いまして、AIについての学びということも必要。AIそのものについて考えるということも必要ですし、AIをいかに活用していくかということについても考える必要があろうかと思います。その切り口として、道徳的な内容については、善悪の判断ですとか、自由と責任、真理の探究といったものが充実していくのかなと期待していきたいと思っております。道徳が教科化になった1つの要因ともなっているいじめと、SNSを利用されたいじめというものも未だなお残されている課題でありますので、そういった解決にも道徳教育の充実が資するものになることを大いに期待したいと思っております。私からは以上でございます。
【頼住主査】  それでは、渡辺弥生委員、よろしくお願いいたします。
【渡辺弥生委員】  渡辺です。よろしくお願いします。先生方のおっしゃるように、よりよく生きる力を育むことが求められています。その視点から、今高校生を取り巻く問題行動をみると、いじめの問題は、グラフ上は小学生に比べて低いんですけれど、依然として深刻で、いろいろな形でいじめが背景になっていることが多いかと思います。SNS上での誹謗中傷とかネットいじめは学校外にも広がる大きな課題ですし、今も報道を賑わせている闇バイト等の犯罪に巻き込まれてしまうケースもあって、責任ある判断力を育てるってことは、すごく重要になっているかと思います。
 不登校は退学に繋がることもあります。この資料には退学者数が減少していると示されていますが、一方で子どもの数も減っていますので、このグラフが何を表しているのかは少し分かりにくいところがあります。ただ、退学者が減っているから大丈夫ということでは決してありません。退学によって、社会に出ていく上で、誰とも繋がりがなくなってしまうという危機があります。他にネット依存や、飲酒、薬物とか性に関する問題行動、そして今回のデータにも入れていただいていますけれども、自殺が非常に高校生に大きいというのはとても深刻なことです。よりよく生きる力を育てる教育の根本にこうしたデータを注視するのは重要な課題だと考えています。
 こうした現代的な課題に対応していくためには、従来の道徳的価値をさらに増やすという意味ではないのですが、それに加えて、責任ある意思決定、冷静に判断する力、そして長期的な見通しをもつ力が重要になってくると思います。今は、何事もコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが重視される時代です。そのため「この行動をとったら将来どのような結果につながるのか」という長期的な展望がやや弱くなっているように感じます。また、誘惑や仲間からの誘いを上手に断るスキル、自分からSOSを出すスキル、さらに情報リテラシーにも関わることですが、「イライラする」とか「やる気がない」といった感情を理解するなど感情リテラシーも重要です。こうしたスキルは、既存の道徳的価値と深く結び付けながら教材や授業を考えていくことが重要なのではないかと思っています。
 最近見た新聞の「声」という欄で、高校生が自分で投稿した文章を読みました。その中で、自分の口から「やばっ」という言葉しか出てこないので、なんとか封印しようとするんだけど封印できないということが書かれていました。この文章を読んで、高校生自身ももっと自分の気持ちを的確に伝えたいという気持ちが強いことを感じ、そうした力をどのように育てていけば良いか改めて考えているところです。今のところは、いただいている資料の右下の「4」のところに関わる内容ですが、現代的な課題を、道徳教育の中核にどのように位置付けていくかが大切になるのではなるかと思っています。
 それでは二点目です。右下に25ページと書いてある資料ですが、まず高校生の発達段階についてです。私は発達心理学を専門にしていますので、発達という視点から考えてみたいと思います。高校生は、まさにアイデンティティの形成が本格化する時期です。発達が後退しているから悩むのではなくて、むしろ発達しているからこそ、「自分は何者なのか」「これからどういうふうに生きていきたいのか」ということを真剣に考え始めます。そのため、それまで「これでいい」と思っていた価値観や信念が揺れ動き、生きづらさを感じる時期なのではないかと思うんですね。
同時に周囲からどう見られているかということをすごく強く意識する時期です。恋愛とか友情、また自分への劣等感とか将来への不安など、感情の揺れが非常に大きくなります。という意味でも、高校生を考える上では、こうした発達の特徴を念頭に置く必要があるかなと思います。仲間関係についても、本当にそれを「仲間」と呼べるのだろうかと思うような繋がりであっても、孤独でいるよりはいいと、自分を承認してほしい、誰かと繋がっていたいという気持ちが強くあります。つまりこの時期は、自立したいという気持ちと、誰かに支えてほしいという気持ちの間で揺れ動くことが、この時期の大きな特徴なのだと思います。ですから、先生方にも、こうした発達段階の特徴を十分に理解していただいた上で、どのような教材を選ぶのか、そしてその内容をどうすれば子どもたちの心に響くように届けられるのかを、みんなで楽しく、ある意味ワクワクしながら考えていけるといいなと思っています。
三点目です。こうした高校生の発達段階を踏まえ、さらに問題行動を未然に防止していくという観点から、子どもたちがよりよく生きる力を育くんでいくことを考えますと、少し広い視点が必要になるのではないかと思います。以前の自分のプレゼンテーションでもお話ししましたように、学力やウェルビーイングと深く関連するソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)についてです。この言葉を前面に出すかどうかはさておき、大切な考え方であると思います。子どもたちが学ぶことを楽しいと感じ、ほかの教科での学びにも意欲を持ち、それがウェルビーイングにも繋がっていく、その教育全体の基盤として道徳が中核的な役割を果たすという視点は大事なのではないかと思います。
 道徳では価値を内面的な資質として理解し、それをどのような実践行為に繋げていくかを深く考えるという点については、これまでのワーキングでもだいぶ方向性が収束してきたと思います。
一方、特別活動では、集団生活の中で、それを実際の行動として実践し、生きる力を身につけていく場であること、さらに総合的な探究の時間では、発達段階に応じて、自分らしい生き方とは何か、社会とどのように関わっていくのかを探究していくことが求められる時間であるという理解をしつつあります。このように考えると、道徳、特別活動、総合的な探究の時間の三つが、それぞれ役割をもちながら相互に関連しあい、子どもたちの成長を支えていくという構造が見えてきて、とても分かりやすいのではないかと思います。先ほど他の委員がおっしゃっていましたけど、これらは非常に相互的な関係にあると思います。そして、その土台、いわばインフラとして、ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)の基盤があることをさらに強調できると良いのではないかと思います。
四番目になります。「深い学び」ということで、25ページや26ページに係る内容です。他の委員もおっしゃっていましたけれども、「深い学び」を実現することはとても難しいことだと思います。私は、深い学びは、同じ価値内容を繰り返し扱うことで単純に実現できるものではないと考えています。むしろ大切なのは、子どもたちの発達段階や、現在目の前にいる生徒たちがどのような実態にあるのかをまずよく捉えることが必要だと思います。例えばいつもけんかが絶えないクラスであれば、価値項目を順番に全て扱うことだけが大切なのではなく、そのクラスの雰囲気とか、その子たちの状況に応じてまず必要な価値は何かを考え、教材や学習内容を柔軟、弾力的に組み立てられるようにすることが大切だと思います。
 価値の理解というのは、量が増えていくことではなく、質的に深まっていくことが大切に思います。例えば、小学校の段階は、まず価値を具体的に感じることが中心になってくると思います。「人に優しくすると相手もうれしいんだ」「約束を守ると信頼されるんだ」といったことを、具体的な体験を通して理解されていくことが基本になると思います。私自身も実践したことがありますが、幼稚園でも、一つのテーマを二週間にわたって扱うことで、子どもたちはしっかり記憶し、実際の行動に繋げることができいました。ですから、必ずしも単純に一コマで完結させなければならないということではないと思います。まずは価値に具体的に気付き、それを実感することが、この段階では大切なのではないと思っています。
 中学校になると、抽象的思考が発達してきますので、「なぜその価値が大切なのか」「価値同士がぶつかったときにどう考えればよいのか」「多様な価値観を持つ人たちがいる中で、どのように調整することができるのか」といったことを議論できるようにしていくことが大切だと思います。
そして、高校では、その価値を自分自身の生き方として統合していくことが重要になってきます。先ほど申し上げたように、自分探しをしている時期でもありますので、「自分はどのような人として生きたいのか」「社会の中で何を大切にして生きていけばいいのか」といった問いに向き合うことが、より重要になってくるかと思います。このように考えると、「深い学び」というのは、単に価値を学ぶ量の問題ではなく、目の前にいる子どもたちの状態や発達段階に応じて、その価値の理解を質的に深めていくことが必要です。そのためには、カリキュラム全体の工夫ももちろん必要ですが、発問の工夫であるとか、どういう教材を選ぶかといったことが大切になります。まさに、これこそが、先生方が専門性を発揮し、弾力的に柔軟的に工夫できる余白として大事にしていくべきところではないかと思います。
 最後に、情報モラルについてです。情報モラルの指導はもちろん重要ですが、子どもたちが日常的に接しているデジタル情報そのものを教材として工夫し、授業の中に取り入れていくこともできるのではないかと思っています。情報モラルについて知識として理解していても、批判的に考える力が十分に育っていない場合には、その場のイライラといった感情に流されてしまったり、認知のゆがみが生じたりして、本来であれば取らなくてよかった行動をとってしまうことがあります。その結果、トラブルが大きな問題になることが少なくないかと思います。特に子どもたちは、「自分は大丈夫」と考えがちですし、将来を見通す力もまだ発達の途中にあります。そのため、そうしたちょっとしたことで大きなことになってしまうということ自体を、実感を持って伝えていく必要があるかなと思います。
私の研究の立場から申し上げますと、物語ですと読解力が関わってきますで、相手の気持ちに立つということが難しい子もいると思います。そうした場合には、動画教材などを活用することも一つの方法ではないかと思います。例えば、「メンタルローテーション」という考え方があります。「もし自分がほかの人の立場に立ったらどう感じるだろう」と言ったことを、動画を通してより具体的に体験できる教材も考えられるのではないでしょうか。また、特別支援教育や発達の個人差を考えますと、デジタル教材にはアクセシビリティという大きな利点があります。障害の有無に関わらず、すべての子どもが学習活動にうまくアクセスしやすくなるという視点は重要だと思います。もちろん、導入にあたっては慎重であるべきですが、工夫して取り入れていく余地は、まだ十分に残されているのではないかと思いますし、今後さらに工夫していきたいというところだと考えています。
 最後になりますが、先ほど他の先生方もおっしゃっていましたが、こうした内容は、委員や学校で道徳教育に関わる先生方だけで共有するのではなく、家庭であるとか地域の方々にも広く共有されていくことが大切だと思います。
子どもたちは学校だけで育つわけではなく、地域の中で生活し、成長していきます。そう考えますと、道徳教育が目指していることを、家庭・学校・地域が共通理解を持ち、子どもたちの健やかな発達をより持続可能なものにしていくためにも、こういう情報や考え方を広くみんなが共有していく工夫ができると良いのではないかと思いました。
【頼住主査】  それでは渡邉真魚委員、よろしくお願いいたします。
【渡邉真魚委員】  渡邉真魚でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日の検討項目について三点ほどお伝えしたいと思います。
 一点目は、高校の道徳教育についてでございます。中学校道徳科の現代的な課題の中でも、例えば防災教育を取り上げた際に、生命の尊さで自他の命の尊さの視点、それから社会参画・公共の精神や勤労で相互扶助の視点から考え、道徳教育に展開していった際に、自助・共助まで思いを馳せても、公助をどこで扱うかと考えますと、中学校だと社会科の教科書、特に公民に繋がって知識として学ぶ機会がございます。これがさらに高校の総合的な探究の時間を加え、特別活動・公民科・公共倫理に繋がるテーマだと考えられたとき、道徳教育の系統的な学びが見えてくるのではないか、民主的で持続可能な社会の創り手の育成に繋がるのではないかと考えております。
 道徳教育として小・中・高等学校が繋がるような仕掛けとして、高等学校の道徳教育が様々な形で可視化されることにつきましては、高校の道徳教育の充実はもとより、小・中学校にとっても子供たちのその後の学びがより明確にイメージすることにも繋がるのではないか。現行学習指導要領の解説の課題を自分との関係で捉え、その解決に向けて考え続けようとする意欲や態度を育てることに繋がるのではないかと考えております。こうしたことを鑑みますと、本日の渡邊範道委員の価値の育成の連携であるとか、ただいま渡辺弥生委員の長期的な見通す力などにも通じて、非常に共感を持って聞いていたところでございます。
 また、スライド8枚目の補足イメージの2につきましては、考え・議論することで納得感や合意形成を得るというプロセスをより丁寧に理解できる図になっていると感じました。すでに多くの委員の皆様からも御意見がありましたが、道徳教育の実践の場としてこれまで以上に特別活動と連携することで、考え・議論したことを実践に生かすベクトルと、実践が考えの深まりに資するというベクトルが往還しながら道徳性が養われていくことの関係性が整理されて示されており、この関係を理解することでさらに道徳科の特質を生かした教育活動が展開できるのではないか。その意味で、道徳科で公正・公平・社会正義について考え、特別活動で学級や学校のルール形成といった合意形成、価値観に照らして行動を選択する意思決定に繋げていくことが考えられる例示が非常によく理解できたところでございます。テーマや場面が変わっても、子供たちにしっかり考え・議論することの意味を実感させることが大切だと考えている次第です。
 二点目は、教科用図書および教材の在り方についてでございます。スライド27枚目の補足イメージ1の部分について、発達段階に応じて35コマ分の段差についてでございますが、今回内容項目自体は変わらないので、やはり学習指導要領に記載されている中学校であれば22の内容項目、当該学年の内容項目は基本としてしっかり学ぶことを考えていきたいと思います。
 その上で、余白の部分と申し上げましょうか。これまで同一内容項目を複数時間設定しまして、重点として実施してきた時間で、中学校の上限は概ね13時間になります。これを根拠にこれまで発言してまいりましたが、小学校高学年・中学年が13時間を超えることはないにしても、深める教材を扱う時数としての段差に対する根拠が、現段階では私自身が少々見当たらないところでございます。そこでもし可能であれば、幅を持たせて時数を検討いただくことも一考ではないかと考えております。
 というのも、教科書会社が35時間の配列を検討する際、その教材が公正と不公平を考える教材なのか、それとも正義の実現を考えさせるのに資する教材なのか。一つの内容項目でも教材によって軽重を持たせながら、しっかりと道徳的諸価値の理解に繋がるように、二つの教材を駆使して一年間の学びの中で実現していくように作られているものも見受けられるからでございます。こうした教材を二つ並べて複数時間扱いと考えるのも一案でしょうが、これまでには一学期に正義の実現の意味を考え、二学期に公平と不公平がなぜ生じるのかを一年間の中でも発達段階を考えて配列しながら取り組んできたという経緯もございます。
 こうしたことは中学校の教材でもあり得るわけで、例えば深める教材の開発と必要時数については幅を持たせた例示として、例えば概ね何時間から何時間程度などお示しいただき、教科書の作り手にも強みを打ち出せる余白があってもよいのではないか。そして使い手である授業者の先生方にも、自己の子供たちの実態を踏まえて取り組むことが可能である教材に資するべきなのではないかと考えました。
 最後、三点目が情報モラルと現代的な課題への対応の考え方についてでございます。AIが急速に産業や社会に浸透し、共に生きることがすでに始まっている現代においては、AIに関わる解説の記述について必要に応じて見直しを図る、アップデートをしていくことで変化の激しい時代に対応した学習指導要領になるとのこと、承知いたしました。これまで以上に人間として生きること、人間としての価値判断と責任が問い直されていることを念頭に置き、新たな教材が必要であるということを認識しております。私からは以上です。
【頼住主査】 それでは佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】 信州大学の佐藤でございます。本日もありがとうございます。私からは、細かい点や大まかな点を含めて5点ございます。
 1点目は、教科書の発行者の裁量と目安の提示についてでございます。教材の構成割合についてですが、教科書の発行者の自由度を担保するために一定の幅を持たせるというアプローチは、先ほどもご発言があったように、各社の創意工夫を促すという観点から魅力的に思える部分もあると考えております。一方で、運用上の下限に張り付いてしまうような懸念や、基準設定の難しさなども考えられます。そのように考えていくと、幅を持たせることで混乱を招く可能性もあるのではないかと思いますし、目安を示すことが、結果として教科書全体の質の向上にも繋がるのではないかと捉えているところでございます。
 具体的に申し上げますと、学校現場の安心感という観点から言えば、中学校段階の内容項目数である22という枠を共通の基盤として確保した上で、中学年以降を4、8、12、あるいは13といった段階的なグラデーションで示し、これによって各社が複数の価値の並列などを通して自律的に余白を生み出すような、柔軟な開発を導くことが現実的な着地点ではないかと考えております。
 2点目は、教科書の肥大化についても考えていかなければならないと捉えております。実践上の選択肢を増やすという意味で、深めるための教材の掲載を過剰に認めるようなことが起きると、教科書を薄く洗練させていくという考え方と逆行し、教科書が厚くなってしまう恐れもあるのではないかと捉えております。そこで、教材数を35ぴったりとはいかないまでも、26ページの5番目のチェックにあるように、教材が時間数や内容項目に対して過剰にならないような留意点を付記していくことは必要だと捉えております。
 3点目は、それに伴うものですが、内容項目の細分化と学年間のバランスは担保していく必要があると考えております。例えば、親切・思いやりといった単一の価値項目や、節度・節制に内包されるような個別の要素があると思いますが、複数の教材を機械的に割り当てるような取り扱いをすると、実質的に学校現場の負担を増やし、消化しきれなくなってしまうのではないかと捉えております。結果として、教科書の教材を適切に扱わないことが、後々の様々な課題に繋がっていくと考えられます。そうならないようにすることが非常に重要であるため、22の項目はあくまでも学年間でそれぞれ触れるという原則を保ちながら、詳細な指導のウェイトは学年間でバランスを取って緩やかに調整していくといった旨が、解説に書き込まれる必要があると捉えております。
 4点目は、情報モラルや生成AIに関する道徳的な価値の追求についてになります。これについては、これまでも指摘されているように、禁止事項や技術的な知識の伝達に終始するのではなく、探究や情報の領域で培った基盤を発揮・相互作用させながら、何のためにどこまで活用し、そこにおける道徳的価値は何なのかという本質的な問いに向き合っていく必要があると捉えております。
 また、技術革新に遅れないためのガイドライン(生成AIガイドラインなど)や、4年周期の教科書改訂サイクルを通じたアップデートの方向性には非常に賛成しております。昨日は情報技術ワーキンググループでもこのあたりの議論が進められておりましたが、そこではメディアリテラシーという言葉が使われておりました。本審議会でもそれに該当する内容が含まれておりますので、情報モラルのほかにメディアリテラシーという言葉を明記したほうが、情報技術ワーキンググループとの間で誤解が生じないのではないかと感じているところでございます。
 最後に、28ページの図についてですが、皆様がおっしゃっているように非常にイメージしやすいものとなっております。ワーキンググループの議論で用いられている図は、分かりやすいものがたくさんございますので、学習指導要領の作成に向けて、こうした図も有効に活用されてほしいと個人的には感じているところでございます。私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【頼住主査】  それでは山﨑委員、お願いいたします。
【山﨑委員】  山﨑です。どうぞよろしくお願いいたします。全部で3点お願いいたします。
 まず4ページのところからお願いします。小・中と高校の接続について、大変よい形で明記されることになり、よいと思っています。小・中の接続については比較的意識されるようになってきていたと思うのですが、高校との接続ということがあまり意識されてこなかったと思っています。昨今の精神的な面での子供たちの低年齢化を考慮すると、特にコロナ禍以降、児童生徒間でのトラブルなどを見ても、小学校で経験するようなトラブルを中学校で、また中学校で経験するようなものを高校でというようなことが起こっているということを実感しています。この低年齢化や経験不足が不登校やいじめの問題と関連していると思わざるを得ないと思っています。
 人としての在り方生き方、自己の在り方を実態とともに考える場として、総合・特活を実践の場と位置付けることがさらに道徳科においては有効であるとも思っています。また、今後具体的に連携事項がイメージしやすい大変多くの資料を載せていただきよく分かりました。
 今後ですね、13ページのところにあります両者の境目、ここについての理解が大きな点であると強調していただきたいと思っているところです。やはり先ほどもお話のところにありましたけれども、あなただったらそういう場合どうするみたいな接続の仕方をしてしまうと、上手に境目が見つけられなくなるようなこともあるかと思いますので、このあたりの理解が大切かなと思っております。
 また2点目です。27ページの教科用図書、教材の在り方についてのところをお願いいたします。道徳科においての深い学びについては、教科書ができたことで道徳の価値項目がきちんと意識されるようになったと実感をしています。一方で、白か黒か、正しいか正しくないかというような判断が非常に多くて、どちらかというとジレンマ教材が減ったように感じてきていました。正しいとは言えないけれども状況を考えるとか、正しいけどそれだけでよいのかといったグレーゾーンというのが実は道徳科の授業の中では大事ではないかなと感じています。
 不登校傾向の生徒と話をする中で、登校できない理由が昨今あまり明確にならない子供が増えてきているように感じています。理由の中で、居づらさであるとか、同じようにみんなとできないからといったような理由が、またはなんとなく疲れてしまうからというようなものが増えてきているように特に中学生では感じています。こういうときにやはりグレーゾーンが許容範囲であったり、容認するというような仲間同士の思いがあったり、そういう受容の力に繋がっていくような気がしています。なので、あまり正しい正しくないということだけではなくて、グレーなことを議論し合うような道徳というのがあってもいいし、あるべきではないかなと感じています。これらは各学校での現状を見取って、生徒の様子を見て適する教材を対応していくということが非常に有効だと思っています。
 読み物教材との繋がりの中で、この深める教材の範囲を上手に活用するということが各学校にこれから求められる学校としての力であると感じています。それらを考えると、やはり読み物教材の内容項目、22の内容項目はまず必須として考えていくと、繋がりの中でやはり3分の1程度の深める教材の適用がよいのではないかと私は考えています。
 この深める教材が現場での選択範囲の広がりを持てる部分であるということをうまく伝えていくことが、先ほども岡﨑委員の不安の中にもありましたけれども、この深める教材が安易に活用できるというような形にならない、独り歩きしてしまわないように私たちも現場に伝えていかなければいけないなと思っています。それこそ安易な時間に使われてしまうと、35時間読み物教材のほうが有効であったみたいなことになってしまうといけないので、やはりこの深める教材の扱い方というところがこれから上手に伝えていく必要があるかなと思っています。
 そして深める教材の有効な活用が推進されるためには、道徳教育推進教師の各校での取組が重要になってくるかなと感じています。先ほども経験年数の少ない先生方が推進教師になるような場合も見られるというお話もありましたけれども、私もそれはとても感じていて、各校1人で推進教師をやっていくわけですから、やはり学校運営の視点で物事を判断できるような先生をきちっと役割として配置していただけるということが大変大事だと思っています。また、各校1人ですので、自治体で情報共有ができるような仕組みも進めていくということが必要になってくるかなと思います。
 次に3点目、43ページの情報モラルについてのところです。現状の情報モラル教育では、どちらかというと被害者にならないためとか加害者にならないためといったものが中心になってしまっていると思うのですけれども、渡辺委員からもありましたけれども、やはり先の見通しを持ってこういうことをするとどうなるのかというような想像力を持って、正しいとか正しくないということだけの判断ではなくて、物事を総合的に価値を判断するというような力、またその価値を議論して共有することが道徳科としても十分扱い、深めていけるような学びとなると思っています。ここで注意すべき点としては、どんどん変化をしていく領域でありますので、それに対応していく教師側の力も求められていくものであるということも私たちは認識していかなければいけないかなと感じています。以上3点です。
【頼住主査】  それでは毛内主査代理、お願いいたします。
【毛内主査代理】  毛内です。よろしくお願いいたします。本日の議題は、いずれも今後の道徳教育の方向性に大きく関わる重要な論点であると受け止めています。委員の皆様の御発言を踏まえて、今回2点について申し上げます。
 まず論点1についてです。7ページをお願いいたします。この図は各学校段階を通じた道徳教育の全体像を共有する上で大変重要な意味を持つと考えています。特に高校の総則において示されている人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面について、特別活動、公民科、公共、倫理に加え、総合を新たに位置付けることは、今日の学校の実態を踏まえた上でも極めて意義深いことと考えます。
 総合の目標でも自己の在り方生き方についての考えを深めることが示されていますが、実態としても多くの高校において道徳教育の全体計画の中に総合を位置付けながら実践が進められています。その意味で、中核的な指導の場面に総合を加えることは、理念上の整理にとどまらず、高校における道徳教育の実装を前進させる上でも大きな意義を有するものと考えています。
 続いて論点2です。これは本ワーキングにおいて積み重ねてきた議論の1つの集大成に関わる論点であると受け止めております。まずは複数時間の運用に関わって、読み物教材の分量のイメージを国が示すことについては、これまで重ねてきた議論を絵に描いた餅とせず、「考え、議論する道徳」を現場で実装していく上で不可欠であると考えます。その上で、今回論点となっているのは、教材構成の在り方であって、実際の授業は現場の創意工夫に任されているということです。
 その上で、今回論点となっているのはあくまでも教材構成の在り方であり、個々の授業実践そのものを画一化するものではないという点は確認しておく必要があると思います。すなわち、内容項目をしっかりと適切に取り扱うことを前提としつつ、実際の授業においては子供の実態や地域の特色等に応じて深める教材の数よりも多くの複数時間の授業を実践したり、あるいは少なく実践したりしても構わないということです。
 例えば、低学年では中学年以降を見据えた複数時間の挑戦もあり得ますし、中・高学年においては教科書の深める教材ではなく、地域教材を活用して学びを深める実践も考えられます。また、授業公開等と組み合わせながら、地域と一緒に考えを深める実践なども十分想定されるところです。
 改めて申し上げるわけでもないですが、複数時間は手段であり、目的ではありません。重要なのは、内容項目に照らして子供たち一人一人の深い学びが成立しているかどうかです。その上で、教材構成の具体についてですが、一方では現場の理解が得られる数であることが必要です。「考え、議論する道徳」の実装を謳っている以上、現行の構造をガラッと置き換えることになると誤ったイメージになりかねません。
 一方、やはりこの論点が今回の改訂の集大成であり、「考え、議論する道徳」の実装のための鍵であることから、道徳科が変わるという感覚を関係者が共有できる、踏み込んだチャレンジングな数であることも必要だと考えます。今、27ページについてまたお話ししますけれども、こうしたバランスを鑑みれば、またこれまでの委員の皆様の御意見も踏まえれば、22という数字を踏まえ、中学校で13、小学校段階については階段型の構成として、高学年で8、中学年で4という整理が、これまでのワーキングの議論の帰結としては一定の妥当性を持つのではないかと考えます。
 その上で、教科書発行者の皆様には、質の高い多様な深める教材の開発をぜひ期待したいと思います。また、前回資料に余白という言葉も示されておりましたが、事務局資料で深める教材として示されている複数時間運用の枠を一定数確保することが、「考え、議論する道徳」の実装のため、また現場にとっては創意工夫や重点化のための余白やのりしろを生み出すことにも繋がると考えています。27ページに図で示されていますが、こうした余白が深い学びの実装に向けた学校現場の多様な実践に繋がり、多様な研究が全国の学校で盛り上がっていくことを心から期待しております。以上で終わらせていただきたいと思います。
【頼住主査】  それでは、最後に私、頼住のほうから簡単な総括をさせていただきたいと思います。
 まず、今日の論点の第1点、総則記載事項及び高校の道徳教育の改善について、多くの先生方から、私の聞いた限りでは全ての先生方と思っておりますけれども、今回、小・中にさらに高校の系統性ということで、高校の道徳教育の改善を図るという方向性に賛同の意を表していただきました。また、これまでの特活とか公民科だけではなくて、今回、総合も高校の道徳教育の場とすることは、大きな意味を持っているという御意見が多数ございました。実践と考察を往還していく、つまり、学びの往還をしていくことを高校段階において創意工夫をしながら行っていくべきだという御意見が多かったかと思います。さらに、道徳教育推進教師につきましても、今まで以上に大きな役割を担っていくことが期待されるということでした。
 第2番目の教科用図書や教材の在り方については、特に教材を具体的にどのような形で今後「考え、議論する道徳」の実装化のために開発していくのかが、大きな議論になったかと思います。多くの先生方から、今までのように、まず読み物教材が35時間分あるということでは、やはり今回の複数時間などの意図が生かされないので、そこは何らか深める教材を入れていかなければいけないという意見が出されました。もちろん、読み物教材は持続するとしても、そこに深める教材を入れていく、その必要性については意見が一致したのではと思います。
 そうなると具体的な数をどうするかという問題が次に出て参ります。これについては一定の目安を示さないと、現場の先生方の安心感に繋がらないということが指摘されました。数を具体的に示すことが必要だという御意見を多数頂戴したかと思います。
 具体的な数につきましては、まず中学の価値の内容項目が22ありますので、その22は読み物教材として確保するとなると、深める教材としては13というのが中学段階の1つの目安になるだろうということになります。そうなりますと、小学校の高学年、中学年において、段階的に少しずつ深める教材を増やしていくイメージになってくるかと思います。小学校中学年段階で4、高学年段階で8、中学で13というように深める教材を増やすという方向性に今回の議論が収束してきたのではないかと先生方のご議論から強く感じた次第でございます。
 もちろんこの深める教材については、これから考えていかなければいけない、また、教材開発にしても、またそれをどう使うかについても今後考えていかなければいけない、アーカイブなどを充実させ、研修を充実させなければならない、というご意見が多数出されました。また、自治体による地域教材などを開発・活用していくというような、様々な創意工夫がそれぞれの学校の強みを生かす形で考えられなければならない、ということについても、先生方から多くご示唆を頂戴いたしました。
 そして、3番目は情報モラルと現代的な課題への対応の考え方についてということでございます。これについては情報科だけではなくて、「考え、議論する道徳」ということで、どう価値判断していくのか、またどう責任を取っていくのかを実際に対話し議論し、その中で情報モラル、また情報リテラシーを身に付ける、そういう必要があるのだというご意見が多く出されました。また、教科書の検定サイクルに従って、実態に即して今後、変えていく必要もあるだろうというご意見も多くの先生方から出てまいりました。
 今日は、「考え、議論する道徳」の実装化の推進にあたって、先ほど毛内先生もおっしゃっていましたように、重要な問題について、先生方から前向きな建設的なかたちでご意見を伺うことができました。それによって1つの方向性がはっきり見えてきたと思います。
 それでは予定の時間も少し過ぎておりますので、本日の議事は以上とさせていただきます。最後に、次回以降の予定について事務局よりお願いいたします。
【堀川学校教育官】  次回の開催予定につきましては、後日連絡をさせていただきます。以上でございます。
【頼住主査】  それでは、以上をもちまして閉会といたします。
 

―― 了 ――
 

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