教育課程部会 道徳ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

令和8年4月28日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 「考え、議論する道徳」の実装に向けた学びの在り方について(2)
  2. その他

4.議事録

【頼住主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会道徳ワーキンググループを開催いたします。
 本日は大変御多忙の中、御参加いただき、誠にありがとうございます。
 本日は進行資料としてお配りしている流れに基づき議事を進めますので、委員の皆様におかれましては適宜御参照ください。それでは、早速ですが、議題1に移ります。
 「考え、議論する道徳の実装に向けた学びの在り方について」に関連して、お二人の委員から事例発表をいただきます。大変恐縮ながら、事前に御相談させていただいたとおり、お一人当たり8分以内でお願いいたします。それではまず、渡辺弥生委員、よろしくお願いいたします。
【渡辺弥生委員】  それでは発表させていただきます。法政大学の渡辺弥生と申します。今日は、4つの柱を基にして御説明したいと思います。最初に、今現在生じています様々な問題行動の未然防止のために、「道徳」を一層パワフルにしていきたいと思っております。
 多くの子供たちが様々な心理的・社会的困難に直面しています。特に、いじめの取組については道徳の教科化を通じた質的な転換が図られ、既に大臣の発言や各種施策文書にも記載されているところです。
 しかしながら、スライドの右のグラフにありますように、重大ないじめ事案の発生や、学校内における暴力、それから自殺の発生件数も年々増加しており、引き続き注視が求められる状況にあります。こういう現状を踏まえますと、教科としての道徳がより一層実効性を高めていくということが期待されるかと思います。こうした課題は我が国に限らず、他の国々でも国際的にも共有されていますが、学校危機予防の観点から、「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング」(SEL)といった教育のあり方が普及されております。次のスライドに参ります。
 それでは、このソーシャル・エモーショナル・ラーニングというのは何だということですが、スライドの黄緑のところに示している内容が定義になっております。定義は「子供と大人が感情を理解し調整し、前向きな目標を設定して、他者への共感を示し、良好な関係を築き、責任ある意思決定を行うために必要な知識、スキル、態度を身に付け、実践するプロセス」であるということです。この教育のあり方については既に2022年度の生徒指導提要にも紹介されております。プログラムの名前ではなく、子供の健全な発達や学びを支える教育の在り方、すなわち枠組みのことです。
 OECDやUNICEFなどの国際機関でもソーシャル・アンド・エモーショナル・スキル(社会情動的スキル)といったような言葉で同じようなことが報告されております。スライドの右の囲みにありますように、質の高いこうした実践が可能になると、子供たちの態度や行動も変化し、学業成績も向上すること、さらにはウェルビーイングとかハピネスにも繋がっていくことが、いくつもの先行研究によって紹介されております。
 新しい研究を一つ紹介させていただきます。3枚目のスライドになります。いじめ等の未然防止に資するエビデンスを紹介します。黄土色の囲みが社会情動的な資質です。この社会情動スキルといじめの関係のところを見ていただくと、社会情動的スキルが高まることによっていじめが減るということが分かります。また、いじめを減らす別のパスも2つありまして、一つは生徒の社会情動的スキルが上がると、教員の社会情動的な資質が高まり、それが子供たちの友達関係を良くして、結果的にいじめが減るということが明らかです。また、子供たちの社会情動的なスキルが子供たちの友達関係を良くすることに繋がり、仲間関係が良くなるといじめが減少するというパスも見られます。したがって、社会情動的なスキルを高めることがいじめを未然防止することになると報告されております。
 次のスライドでは、個々の子どもの心のプロセスについてお話ししたいと思います。子供を含めて私たちは、何か出来事に直面したときに、どうしようという気持ちが昂り混乱します。考え方は冷静でなくなることがあり、例えば、みんな私を嫌っているんじゃないかみたいな思考の歪みが生じる場合があります。その場合には、適切な判断や行為を選び取れずに結果として暴力を行ったり、暴言を吐いたりというようなことが起きたりします。こうした行動をとってしまうと、さらに自己嫌悪に陥ったり、自己肯定感を低くしたりしまうというような悪循環を招くことが多々あります。いじめの未然の防止には、こうした個々の心のプロセスを理解した上で、どのように対応してやれば良いかを考えて教育していくということが大切になるかと思います。
 2番目の柱ですが、「発達段階」や個人差を考慮した指導の工夫が必要かと思います。
 ここでは発達の中でも例として「思いやり」と「考える力」の発達について説明させていただきたいと思います。
「思いやり」の発達というのは、スライドを見ていただくと良いのですが、左の丸1の自己中心的から丸2、丸3、丸4、丸5というふうに、右へと人によってスピードは異なっても順序を持って発達しているということが明らかになっております。言葉で説明しますと、小学校低学年のときは、自分と親しい友達の気持ちを思いやることはできますが、まだ笑っていると楽しい、泣いていると悲しいといった表情などから予想した浅い思いやりにとどまります。
それが小学校中学年になりますと、笑っているけど実は心の中では悲しいんじゃないかといった、心の奥、内面の深いところまで思いやることができるようになります。さらに、小学校高学年になりますと、親しい友達だけではなくて、彼とか彼女とか第三者の立場の気持ちを思いやることができるようになります。中学生以降になりますと、会ったことのない見知らぬ人たちの気持ちも情報があれば想像ができるようになります。例えば時代を超えた江戸時代の人たちとか、あるいは行ったこともない国に住む人の気持ちでも情報が与えられれば思いやることができるようになります。もちろんこれは個人差があります。
 次に考える力の認知的側面の発達について御説明いたします。
 これは小学校中学年前後に大きく変化するところがあると考えられています。スライドにありますように、左の方に小学校低学年の特徴があげられています。小学校低学年はいわゆる生活中心の学習を行っています。話し言葉が中心で、具体的な「もの」や「こと」について考えることが特徴です。また、自分が直接経験したことによって良いことだとか悪いことを学ぶようなところがあります。また考えるためには心の中で言葉を持つ必要があるわけですけれども、その言葉自体を覚えている学習期間と考えられます。
 小学校中学年を過ぎてきますと、話し言葉とは別の書き言葉の世界を持つことになります。例えば、友達Aさんと仲良くするにはどうしたら良いかと具体的に考えていたのが、一体友情とは何かとか、自分って何だろうというような抽象的な思考ができるようになります。自分が直接経験しなくても友達が経験したことを基にいろいろなことを学ぶことができるようにもなります。またそれまでに獲得した言語でものを考える学習が深まっていきます。
 このように思いやりや考える力の発達は小学校から中高へとしだいに発達していくので、道徳教育においてはこうした心の発達を理解しておくと、発問の仕方や対応が子どもの理解を深める働きをします。
さらに現代の問題として、自分の気持ちや感情についての理解が未熟なところがありますので、子供たちの自己理解を向上させる必要があります。例えば、自分や他人の気持ちを聞かれたときに、「わからない」とか、「モヤモヤする」とか、「やばい」といった、こうした表現にとどまる傾向が少なくありません。
 より良く生きていくためには、自分の考えとともに自分の感情を理解するということが必要です。そのためにはある程度の「感情語彙」を持つことや、多くの場合、いろいろな気持ちが入り混じっているなどの「感情についてのリテラシー」(感情理解、感情表現、感情調節、感情活用)が必要であると指摘されています。スライドのように、二つしか感情語彙がなければそれでしか自分を理解できないわけですが、感情語彙が増えることによって、自分の気持ちを多面的に理解することができるようになります。
 イラストの右の方には、「気持ちの氷山というワーク」を紹介していまが、心を氷山に見立てた場合に、海上はみんなに見せてる気持ちになりますが、それは怒りと捉えられやすいかもしれませんが、実は海底の心の奥では、「悔しさ」であるとか「悲しみ」であるとか「惨めさ」であるとか、いろいろな気持ちが入り混じっていることが視覚的に伝えられます。こうしたツールを活用することによって自分の感情や他者の感情について気付かせることができます。
 このように子供の心の実態を適切に把握し内面の発達を支える観点から、実態に応じた具体的な指導内容や支援の在り方を検討することが必要になってくるかと思います。そこでこれまでの発達や感情などに気づかせる工夫をした教材例をご紹介したいと思いまう。今回は一つのイメージですけれども、時間の関係から小学校高学年を対象に価値と価値が葛藤する場合、すなわち複数の価値が葛藤する指導案を考えてみました。2コマで考える例です。
 最初の1時間目の「導入」を見ていただくと分かりますが、嘘をついちゃいけない、正直であることが大事だという価値観を持っている子供が、良かれと思って友達に対して正直に意見を言うわけですが、正直に言われた友達がどんどん心が傷ついてしまい、最終的には自分の心も傷つくというような文脈を扱いました。正直という価値と思いやりの価値の葛藤ということになります。「展開」の20分のところでは、小学校高学年なので親しい友達だけじゃなくて第三者の立場も思いやれるようになっていると発達的に考えられますから、登場人物を4人設定しています。それぞれの言葉だとか気持ちがどうであるかを想像させるように、吹き出しを視覚的に入れて考えやすいような活動を考えています。そして「終末」として、判断を巡るこの葛藤について自分の考えに向き合いながらまとめられるようにして考えました。
 2時間目は「導入」として一コマ目を振り返ることにより、より自己理解と他者理解を深め、正直と思いやりの価値が葛藤する場合への自我関与を深める展開にします。そのために、自分がもしそういうことを言われたらとか、自分が言ったらどんな気持ちになるかというような他人の視点に立つ活動も入れています。スライドの右にあるような「気持ちの温度計」のようなツールを使って、複数の気持ちが入り混じっていることや、その気持ちがそれぞれ強さ弱さがあるということについて気付かせます。さらに時間の余裕があれば応用となるほかの教材を用意して、より多面的多角的に道徳的行為を考えさせながら主体的関与を促し、引き続きその価値の理解を深めていくということも考えられると思います。「終末」はこうした体験学習も踏まえて、「行動」の背景にある「感情」や「考え」などについてまとめ、それが生き方や価値観とつながることに気付かせたいと思います。
 まとめになりますが、いじめや暴力、そうした未然防止のために道徳の教科は一層の役割を果たす必要があると考えます。特に、今回はこれまであまり着目されていなかった感情の理解や調整などを含め、ソーシャルエモーショナルの学びが問題行動の未然防止に資するものとして国際的に注目されていることを御説明いたしました。これまでの取り組みにさらにこうした視点をうまく取り入れることは、今までの道徳的心情や実践意欲とも関連し、道徳科の目標に迫ることができると考えます。また、複数時間の取扱いやいろいろな体験的な活動を工夫することによって道徳的実践がより深まっていくと考えられます。
 最後に、こうした発達段階を踏まえて授業や教材が設計されることによって、個々の子供達の心に届く教材の開発や指導案の作成が期待できるのではないかと考えました。以上、早口になりましたが、これで発表を終わりたいと思います。
【頼住主査】  続いて渡邉真魚委員、よろしくお願いいたします。
【渡邉真魚委員】  委員の渡邉真魚でございます。
 私はこれまでの実践から道徳的行為に関する体験的な学習、役割演技の学びと可能性についてお話ししたいと思います。お願いします。
 はじめにということで、2枚目のスライドになります。「考え、議論する道徳」の実装に向けて、私自身は2点、多様な学びの在り方を知る、多様な考え方に至る過程を体感させたいと考えており、したがって道徳科の授業づくりにおいては今後ますます様々な工夫、実践が想定されると考えております。お願いします。
 そこで、道徳的行為に関する体験学習の中でも、本日は役割演技の活用について考えてみたいと思います。学習指導要領には御覧のとおりの記載がございます。私が非常に共感しているのは、即興的に演技して考える役割演技という部分でございます。これにより疑似体験ではあるものの、即興的に行うことで、日常生活で培われた感覚が出るところに魅力と言いますか、学びがいを感じているところでございます。そもそも役割演技はモレノが考案した心理劇の技法の一つであり、具体的に演じることで思考、感情、行動に働きかけることが可能と言われております。私自身は授業で効果的な実践により自我関与、多面化、多角化を通じた深い理解、深い考えに繋がることが期待できると考えております。例えば、判断に迷い、葛藤が生じる場面、どう振る舞ったら良いのか迷う場面、相手の立場になって考える場面などを例示しましたが、もちろんこれまで役割演技を活用した授業実践は多数あり、様々な形で見聞きしているところでございます。
 一方、課題もございます。例えば、子供の課題としていじめの場面などを演じることで演じた役割が解除されず現実世界に引き継いでしまう可能性があること、学級の実態として安心して自分を表現できない環境であると役割演技をすることそのものが難しいということ、授業者の立場として演技の巧拙で終わってしまうと深い学びに至らないということでございます。ここで役割演技の流れをお伝えしますと、例えば大きく三段階、準備、演技、振り返りとなります。
 私の場合は準備の段階でペア活動でウォーミングアップをしたり、演技の段階で役割を入れ替えたり、振り返りの段階で演者も観客も巻き込んで全員で場面についての話合いを行っております。また、集団が成長すると、準備の段階が簡略できたりと、学級の実態に応じて流れは多様になるかと思います。留意点としまして、演技の巧拙ではなく、演じた場面から気付いたこと、感じたこと、考えさせられたことなどを洗い出すことを大切にしております。
 さらに活動に目的を持たせるために、子供たちには、ここを再現してみたらどうかとか、みんなで解決してみようなどと意欲を喚起させながら取り組んでおります。決して長いプレーが良いとは限らない役割演技ですが、一コマで実施すると振り返りの時間がどうしても短くなってしまい、時間的な課題を感じていたところでもありました。
 次に中学校の実践を二つ紹介したいと思います。
 一つ目は経験のある出来事を考える事例です。教材は中学生が満員電車で4人掛けの座席を二人で占有しており、立っている男性から席を空けてもらえないかと声をかけられますが、中学生は無言で立ち上がると荷物を持って別の車両に移動したという場面です。写真左は役割演技でこの場面を再現しているところです。次に見ていた生徒も交えて全員で教材の問題場面を洗い出します。このとき中学生役の生徒が男性役をやりたいと発言して役割を交換して再度行ったのが三枚目の写真です。ここでは中学生役の生徒から「今日は剣道の大会で疲れて頭が回りませんでした。すみません」という言葉が出た場面が成立しました。もちろん、男性役の生徒の公共の場ではこうありたいという思いが中学生役の生徒に伝わったからこその場面だったと考えております。また、中学生役の生徒はこのまま座り続けることは自分としてはいたたまれなかったと発言しており、現実の自分と役割の自分が重なって発言する姿も見られました。
 続いて、経験のない出来事を考える事例です。
 教材は、東日本大震災で避難先から転校した中学校でふるさとのためにできることを考え、より良く生きる喜びを見出していく中学生二人の姿を描いた教材です。写真左ではまず導入の段階で補助資料、この時間は写真や地図などを使いましたが、登場人物の多様な背景を事前に伝えます。次に間接的ではありますが、文中で再会する二人の登場人物へ自我関与させるために、小学校時代の友人に再会するという役割演技を全員で行いました。その後、教材の範読を行い、道徳的価値について考えを深めていきます。本時のこの学級では、生きるとは生きる意味を見つけること、不安、悲しみ、苦しみを繰り返して成長すること、それでも人間は大切な人のため、そばにいてくれる人と共に希望や新しい発見を見出すことなど、より良く生きる喜びについて考える時間となりました。
 さて、前回ワーキング配付資料には体験的、問題解決的な学習を取り入れ、自分との関わりで考える時間を確保することが難しいと課題についての指摘がございました。先ほど、指導方法の工夫の一つである役割演技を取り入れることにより深い理解、深い考えを目指す実践事例を二つほど紹介しましたが、一コマで実施すると振り返りの時間がどうしても短くなってしまいます。
 そこで私も複数内容項目で複数授業を想定してみました。例えば、一コマ目で決まりを守ることについて役割演技で体感しながら道徳的価値について実感する授業を行い、二コマ目で決まりを守るためには善悪の判断も必要だし、何より自分のことだけでなくみんなのためを思えば、思いやり、感謝にも繋がり、改めて道徳心を実感することに繋がるのではないか。つまり、自分との関わりで道徳的価値の理解を深めたり、道徳的価値の実現の視点に繋がるように、多面的多角的な見方へと発展させたりすることが可能なのではないかと考えました。
 また、例えば一コマ目で、公平であることの難しさ、好き嫌いの感情から他者に対する偏見に気付くことを考えさせ、二コマ目で、相互理解、寛容を関連させながら深める教材で役割演技を活用し、道徳的価値について実感させることで人間理解、他者理解を含め改めて道徳的諸価値の理解について考えることができる。価値と価値が繋がり、あるいは教材と教材が繋がって子供が学ぶ教室が現実に生きる社会に繋がるのではないか。私は子供の立場で道徳的価値を理解し、多様な考え方に至る過程を体感することで道徳的価値の実現に繋がると考え、このような想定を試みてみました。
 まとめとして役割演技について三点申し上げます。
 道徳科の特質を生かした指導方法の一つであること、疑似体験的な表現活動を通じて思考のみならず感情や行動にも働きかけられること、実感を伴って道徳的価値と向き合い深い学びに繋がることが期待できること。そのための留意すべきポイントとして三点ほど、演技の巧拙ではなく道徳的な価値を見出すこと、多様な背景を持つ子供には配慮が必要であり、つまり役割を担うことで心に傷を負うことは絶対にしないこと。そして、子供が主体的に道徳性について考えるきっかけとして深い学びをもたらす仕掛けには学習活動にメリハリが必要であり、何より三十五時間の学びの在り方にも変化のあるデザインが必要なのではないか。これを実装としてイメージしておりますことをお伝えして私の発表とさせていただきます。引用、参考文献は御覧のとおりです。以上となります。
【頼住主査】ありがとうございました。それでは続いて事務局より説明をお願いいたします。
【堀川学校教育官】  学校教育官の堀川でございます。
 私の方から資料1に基づきまして、今しがた2名の委員の先生方から御発表いただいたことも関連をいたしまして、「考え、議論する道徳」の実装に向けた学びの在り方について2ということで御説明を申し上げます。
 本日御議論いただきたい事項は2点、1番、問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習について、2番、デジタル学習基盤の活用についてでございます。
 まず1番目の論点でございますけれども、議論の前提といたしまして、問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習を適切に取り入れるなど指導方法を工夫するということが、指導要領の内容の取扱いに記載をされております。また、解説におきましては、効果があると判断をした場合に問題解決的な学習や体験的な学習など多様な方法を活用して授業を構想するとした上で、問題解決的な学習、そして体験的な学習について、解説がされておるところでございます。その上で現状と全体的課題でございますけれども、指導の工夫をしているという調査の問いの項目に関しては、問題解決的な学習、体験的な学習を各学年の約80%が肯定的に回答しているという調査結果もございます。
 一方で、問題解決的な学習、体験的な学習が「考え、議論する道徳」をさせる指導方法の工夫として位置付けられている中にあって、課題といたしましては、相互の関係や狙い、具体的なイメージ、学びの深まりとの関係性が必ずしも明らかではなく、指導方法の工夫自体が目的化しているような事例が散見される。また、限られた授業時間内に体験的な学習を効果的に導入をし、かつ学びの深まりまで繋げるという指導を行うことが難しいといった課題が指摘されているところでございます。
 このような中、具体的な論点につきましてですけれども、まず1番、問題解決的な学習、体験的な学習の位置付けや複数時間との関係ということで、こちらの補足イメージの1で御説明を申し上げます。
 道徳科の学びをいじめをはじめとする現実の課題への対応に繋げていくということは教科化の契機の一つである。また、いじめの認知件数や重大事態の件数、また暴力行為の発生件数、こうしたことが過去最多となっている中にあって、問題解決的な学習や体験的な学習を生かして道徳科の学びを道徳的な実践に繋げていくということが期待をされるところであります。
 一方、先ほどもございました限られた時間内でなかなか深まりまで繋げていく指導を行うことが容易ではないといった指摘もある中で、前回ワーキングで御議論をいただきました、一教材を複数時間で取り扱う場合に生じます余白を、問題解決的な学習や体験的な学習等と適切に組み合わせ、深める教材も活用することで、個人が人生において直面する様々な状況での判断や実践と関連を付け、道徳的な課題を自分自身の問題として考え、捉え、向き合うといった、考え、議論する道徳の実装に繋げていくということが考えられるのではないかという御提案であります。
 図でございますけれども、この道徳科の学びは道徳的諸価値の理解を基にするということが前提でありますけれども、その中で問題解決的な学習や体験的な学習を、いじめをはじめとする現実の課題との円滑な関連付けに資するという位置付けとして、複数時間の学びとも適切に組み合わせる中で、取り扱っていくということが考えられるのではないかという御提案でございます。
 次に戻らせていただきまして、2番、問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習の考え方ということで、こちら補足イメージの2で御説明をさせていただきます。補足イメージの2でございますけれども、これらの学習のイメージが湧きにくいといった指摘や、これらの活動を行うこと自体が目的化している事例が散見されるといった指摘もある中で、参考として趣旨や具体例を示しつつ、これらによらないものも含めて多様な実践を推奨することを明確にしてはどうかということで、この表で御準備させていただいております。
 両方に共通する背景といたしましては、登場人物の心情の理解や分かりきったことを言わせたり書かせたりするといったことにとどまるといった、課題が指摘されている中で、道徳科の学びが実生活における道徳的実践となかなか繋がっていかないというところがあります。そのような中で、問題解決的な学習については、その趣旨は具体的な道徳的問題に対し、解決のために取り入れる行動を考える活動を通じて道徳性の諸要素を育てていくということとして、関連する要素としては、問題がある状況や問題状況に対する自分なりの答えを見出すこととしています。
 具体例としては、教材の中の道徳的問題を見出す活動であったり、また道徳的問題について考え、議論して自分なりの答えを見出す活動であったりということが言えるのではないかということ。また、一方で体験的な学習の方については、趣旨としては道徳的行為に関する実体験や実感を伴う活動を通して道徳性の諸要素を育てていくということ。
 関連する諸要素として、道徳的諸価値の実現に関わる行為や実体験や実感を伴う活動というものが挙げられ、具体例としては、役割演技、動作化、内容項目に関わる活動、また教材と関わる実物に触れたり当事者に会ったりする活動といったものが挙げられるのではないかというふうに整理をさせていただいております。
 戻らせていただきまして、ここまでがこの2番まででございますけれども、3番、問題解決的な学習における問題の考え方であります。
 こちらの補足イメージの3でございますけれども、問題解決的な学習における問題について、平成28年の報告では左側に記載をしています4項目例示をしてきましたところ、項目同士の関係性が分かりにくく、授業との関連付けは必ずしも容易ではないといった指摘がございます。
 このような中で、道徳的諸価値についての理解というものを前提として、考え、議論する道徳の実装の視点で焦点化をして、より分かりやすく整理する観点から、自己内葛藤、そして価値の対立という2項目を解説で例示することとしてはどうかという御提案でございます。
 この4点の中で、例えば道徳的諸価値が実現されていないことに起因する問題というのはかなり幅広いものを指しているといったところもあって、なかなか授業との関連付けが容易ではないといった議論がある中で、自己内葛藤、価値の対立、こちらは丸3と丸4を特に注目した整理でございますけれども、(1)の部分については、何が良いか、望ましいかは分かっているが、どう向き合い、行動するかが難しい。すなわち実践が難しく、一方で価値の対立というところについては、一方の立場や考え方を取ると他方が損なわれる判断が難しいということで、例えば(1)の例としては、自分で判断すべきだが周囲に流されてしまうといったことや、また思いやりというのを誰にどのように形にするかということで迷うといったこととしてはどうか。また価値の対立については、相互理解、寛容等、規則の尊重、そうした複数の価値の間の葛藤、こうしたことが挙げられるのではないか、というふうに整理をさせていただいております。
 戻らせていただきまして、ここまでが(2)までの部分ですけれども、また以下でございます。
 従前、複数の価値の対立を取り扱う場合にも、どちらか一つの内容項目を主とする取扱いというのが主として行われてきたところでございますが、特定の道徳的価値に集結させる取扱いが予定調和的な授業につながり易い側面があるといった指摘があります。また、現行の指導要領の中でも、「内容項目間の関連を密にした指導」を取り入れる、こうしたことが内容の取扱いの中で明示をされているほか、解説でも「必ずしも各内容項目を一つずつ主題として設定をしなければいけない」ということではないということが明示をされております。
 こうしたことを踏まえますと、「問題解決的な学習」において「道徳的価値の対立」を取り上げる場合等に、主題と関連して複数の内容項目を設定することが考えられるということを解説で明確化してはどうか。また、このような場合の学年段階の内容項目を相当する各学年において全て取り上げるといった取扱いについて、本則の方で内容の取扱いで示されておりますけれども、この関係につきましては、相当する学年における道徳科の学習の全体の中で、内容項目に関わる過度な偏りが生じないように併せて解説等で取扱いを示すこととしてはどうかというふうに考えております。
 次に4番、道徳科の学びと感情との関係でございます。
 道徳科で育む道徳性の諸要素の一つである道徳的心情については、より良い生き方や善を志向する感情というふうに解説で整理をされているなど、人格的特性としての道徳性と感情というのは密接に関連するものとして、現行の整理もされておるところでございます。
 また、感情をうまく表現をできない子供は、困り事を周囲に伝えられず、またいじめや暴力行為等に繋がるリスクが高まる可能性、こうしたことも指摘されておりまして、こうした感情の認識や調整にかかる要素を持つ学びが、道徳的実践への接続、そして自我関与の土台を形成することなどを通じて道徳科の学びに寄与するといった指摘もございます。
 一方、感情の認識や調整それ自体が目的化してしまった場合には、内面的資質としての道徳性を養うという道徳科の目標の趣旨が没却されたような授業となってしまう恐れもありまして、こうした要素を取り入れる場合には、道徳科の目標に沿った形で行われることが前提となるというところであります。
 以上に加えまして、こうした要素が現行の教科書の中でも体験的な文脈で取り扱われているということも踏まえまして、感情の認識や調整に関わる内容については、体験的な学習の多様な在り方の一例として解説で示すとともに、一教材を複数コマで取り扱う学びと適切に組み合わせる中で、道徳科の目標を踏まえた道徳科の学びと道徳的実践との一層の接続を図っていくことができるということを併せて示してはどうかという御提案でございます。
 以上が大きな1番の論点についてでございまして、参考資料といたしまして、調査結果であったり、また現行教科書の中で感情の認識や調整に関わるような教材について御紹介をさせていただいたり、また問題解決的な学習、また体験的な学習の実践事例ということで、小中学校の多様な実践、また自己内葛藤や価値の対立といった視点や、1コマで行う場合もあれば複数コマで行うものも含めて、様々お示しをさせていただいておりますので、併せて御覧をいただければというふうに思います。
 続いて、大きな論点の2、デジタル学習基盤の活用についてでございます。まず、道徳科におけるデジタル学習基盤の活用の考え方ということで、補足イメージ1でございます。総則・評価特別部会の中で、デジタル学習基盤を適切に活用した学習活動の充実を図るということが検討されている中で、道徳科の特質を踏まえた効果的な活用の在り方を検討する必要がございます。そのような中で、道徳科における深い学びのイメージとして、多面化、多角化、そして自我関与の要素について議論をいただいてきました。また、リーディングDXスクールをはじめとする様々な実践の蓄積、こうしたことを踏まえまして、道徳科において効果的と考えられるデジタル学習基盤の活用イメージと、その際の留意事項について、解説等で以下のとおり示してはどうかという御提案であります。
 活用イメージとしては大きくは3つで、1番、意見の可視化、2番、振り返り等の蓄積、3番、その他とさせていただいておりますけれども、1番の例としては、例えばアンケート等で全員の意見を可視化して共有をすること。そして2番の振り返りの蓄積としては、例えば導入、展開における振り返りの蓄積や、導入と終末時での考えを比較すること。また、その他のところでは、例えばAIに異なる立場の意見を示させるといった扱いや、オンラインで当事者の話を聞くということ。また、動画を含むデジタル教材で文字だけでは得られない情報と向き合うといった活用の在り方があり得るのではないかということでございます。
 また、留意事項として、1、2、3、それぞれでございますけれども、1番に関しては必要な配慮、例えばいじめや人権に関することや、共有することを前提にすることで、子供が本心をなかなか表出しにくくなるとか、求められる正解探しに繋がりやすくなるといったことに留意が必要であるということ。また、2番に関しては、入力作業そのものが目的化せずに深める時間を十分に確保できているか。AIの活用の関係では、AIの回答を正解として扱うのではなくて、批判的に吟味ができているか。また、自分が考えた後で補助的に活用するなど、子供自身が考える機会というのをしっかりと確保できているか。そういった留意事項があるのではないかということでございます。
 戻らせていただきまして、2番、デジタルの活用に関わる内容項目固有の留意点ということで、こちら補足イメージの2でございますけれども、道徳科の内容項目AからDの4つの視点で整理をされておりますが、内容項目によって特にデジタルの活用に当たっての留意が必要な場面も考えられるのではないかということで、必要な内容項目の例や具体的な留意事項について整理をして、解説等で示してはどうかという御提案でございます。
 まずAに関しては、留意事項として、自分自身に関することということで、自己の内面の開示への圧力に繋がったり、また共有を前提としては建前の記述に繋がりやすいといったことに配慮が必要ではないか。またB、主として人との関わりに関することでは、いじめられた経験を思い出したり、身近な友達の氏名を出しながら振り返りを行ったりする可能性があることへの配慮。またC、集団や社会との関わりとの関係では、多様な家族構成や家庭状況があることや、宗教との関係での配慮が必要なのではないか。またDとの関係では、家族の病気、自分の健康等を含め、思い出したくなかったり、不安を感じたりする可能性について配慮が必要ではないかということをまとめさせていただいております。
 戻らせていただきまして、ここまでが2番でございますけれども、3番、道徳科におけるAIの活用についてでございます。AIに関する検討課題といたしまして、情報・技術ワーキングの方で、各教科における教科書からAIの活用例を含む具体的な利活用のポイントにつきましては、教科等ワーキングで検討し、その検討を踏まえつつ、指導要領改訂を待たずしてガイドライン等で対応するというふうにされております。その上で、AIに関しても道徳科の中で異なる立場の意見を示させるといった実践事例もある中で、多面化、多角化を促進する上での一定の効果の期待などができるというふうに考えられるところであります。
 その上で、先ほども留意事項のところにもございましたけれども、AIの活用に当たりましては、正解としてAIの回答を扱うのではなくて、諸価値との関わりで批判的に吟味ができているか。また、補助的にAIを活用するなど、子供自身が考える機会をしっかりと確保することができるかといった留意点があると考えられることから、こうした留意点を含むAIの活用については、各教科の検討状況も踏まえながら柔軟に更新できる形で、国が示すことを検討すべきではないかという御提案であります。
 以上が2番の論点になります。参考資料といたしまして、道徳科におけるデジタル学習基盤の活用事例ということで、一般的な学習指導過程として整理をされております導入、展開、終末の様々な場面において、どのようなデジタル学習基盤の活用が考えられるかということを、具体的な事例で幅広い学年で示させていただいておりますので、併せて御覧をいただければというふうに思います。
 最後の方にまたAIの活用についても事例をリーディングDXスクールのパイロット校での事例等をお示しをしておりますので、併せて御覧ください。事務局からの説明は以上でございます。
【頼住主査】  それでは、委員の皆様から事務局の資料について御発言をいただきたいと思いますので、御発言の準備が整い次第、挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。
 なお、発言の際に事務局から説明があった資料に触れる場合は、資料の何ページかを明示いただければ、事務局による画面投影も可能となりますので、御協力をよろしくお願いいたします。準備が整いましたら、挙手ボタンを押していただければと思います。それでは、鈴木委員、よろしくお願いいたします。
【鈴木委員】  今回は、先ほどの渡辺弥生先生や渡邉真魚先生の御発表もありまして、改訂で目指すところが授業レベルで具体的になってきたというのが率直な印象です。
 私からは3点ほど意見を申し上げたいと思います。
 1点目は、「問題解決的な学習」についてです。 9ページの補足イメージの3です。この中で、「自己内の葛藤」というのがあります。「自己内の葛藤」を引き出すことで、子供の中にある、そうありたいと思う考え方と、それができない悩みとか弱さ、この2つの側面を引き出すことができる深みのある授業になるのではというふうに考えています。
 特に、弱い自分、悩んでいる自分の気持ちを引きだすことが大切です。自分自身のそういう気持ちを、主人公の葛藤に寄り添いながら出せるところに、「自己内の葛藤」に着目した授業のメリットがあると考えます。道徳の授業では、正しいこと、良いことしか言ってはいけないのではないかというふうに思っている子供さんもおられると思います。そういう子供さんが、主人公に寄り添いながら迷い、悩む、自分の気持ち、本音というものを出すことができるのではと思います。
 人間とは面白いもので、そういうふうに弱さや悩みを出し合っていると、共感しつつも、それではいけないのではないかと思うようになります。もっと良いこと、もっと良心に基づいて考えないといけないのではないかという意見が出てきます。そうすると、学級の中に弱さに共感しつつも、より良い自分になろうとする意見が出てきて、それに共感するような雰囲気、道徳的雰囲気ができてきます。学級の道徳的雰囲気というものは道徳教育において大変重要とされていまして、道徳的雰囲気ができてくると、道徳的行為をするのが当たり前になっていきます。学級や学校全体において道徳的雰囲気が醸成されることで道徳的行為が促され、実装化に繋がると思います。
 同じく、補足イメージ3の「価値の対立」についてですけれども、この価値葛藤を含む授業で大事なことは、価値葛藤を克服する第三の考え方、より高次の考え方に気付かせるということです。そのためには、自分が直接経験したことや、読書など間接体験を通して学んだこと、知っていることをみんなで出し合っていく、そして問題点を解決する考え方を、みんなで吟味し共有するということが必要になります。この点で、道徳以外の各教科等での学びや、学校行事や社会体験活動などを通した多様な学びが活きていく授業になるというふうに考えています。「価値の対立」を解消する議論の中で、自分たちは何を大切にしているか考えると、そこから道徳性の高まりや深まりのある授業が展開できます。「問題解決的な学習」による授業のねらいがより明確になったという点で、大変評価したいと思います。
 2点目は、「道徳的行為に関する体験的な学習」についてです。8ページの補足イメージ2です。ここで、先ほどの説明ありましたように、役割演技、動作化、内容項目に関わる活動、教材と関わる実物に触れたり、当事者に会ったりする活動など、具体例が示されたということで、先生方が授業内で何をすればいいのかが明確になり、分かりやすくなったと思います。ただ、1点目とも関連するのですけれども、こうした学習活動というのが、ただ活動して終わったにならないようにするために、事前事後でアンケートとかワークシートを書くなどして、子供たちの道徳性が高まったということを確認する必要があるのではないかと思います。
 例えば、授業の前後でアンケート、ワークシートの記述を求めるということも可能かと思いますし、二コマで行う授業の場合には、一コマ目の始めと二コマ目の終わりというところで比較をしますと、この学習活動が道徳性を高めるのに効果的だったかどうかというのが分かりますので、道徳性の諸要素を育てるという学習活動の目的がはっきりとして、学習活動が目的の実現へと繋がるというふうに思っています。
 3点目は、デジタル学習基盤の活用についてです。特に有効だと思ったのが、37ページにある遠隔合同授業の活用というところです。ここでは少人数学校を取り上げていますが、県内の環境の違う学校とか、県外の学校、県境を超えての合同授業とか、国を超えての合同授業なども、可能性としてありますので、これからの展開に非常に関心が持てるものであります。デジタル学習基盤の活用によって、同じ教材を読んでも、学校が違えば考え方、価値観が違うということに気付くということを推進でき、違いへの理解を通して道徳性の高まりや深まりへと繋がっていくように、うまく使えるのではないかと思いました。
 最後に、25ページにある、道徳科におけるAIの活用についてです。26ページの補足イメージにもありましたが、特に道徳的価値との関わりで批判的に吟味できているかというのが、非常に重要ではないかと私は思います。
 道徳授業の中で、AIが正しいとは限らないという批判的な見方を身に付けるということは、道徳にとどまらず、他教科へも良い影響を与えるのではないかと思いまして、道徳科でもさらに進めていっていただければというふうに思いました。
【頼住主査】  それでは、佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  信州大学の佐藤でございます。
 私からは主にデジタル学習基盤の生成AIの活用について4点申し上げます。1つ目が29ページです。
29ページのところに,学習過程やプロセス,デジタル学習基盤のイメージが示されているかと思います。この深い学びのイメージと多面的・多角的な見方へ発展すること,それから自分との関わりの中で道徳的な価値の理解が深まること,これらを前提とした上で,デジタル学習基盤を活用していくべきだと考えております。事務局案にあります「振り返り等の蓄積」をさらに一歩進めていくという考え方に立ちますと,授業の導入における「目当ての可視化」などもできるのではないかと思った次第です。
今日の授業で自分は何を考えていきたいかというような目当てをデジタルで蓄積し,そしてまとめの段階で自己評価する。そういった繋がりを持たせることで,道徳的な価値の理解がどう変容していったかを捉えることは,デジタル学習基盤で非常にやりやすいことではないかと思っております。先ほど鈴木委員からワークシートに関する御発言がありましたが,それらに近い考え方をしております。
 2点目は,学習の連続性という観点です。今の発言は1時間の授業内での連続性でしたが,もう少し中長期的な連続性の話になります。デジタル学習基盤というのは,データを中長期的に蓄積していけることが一つの強みであると捉えております。これを1学期から3学期まで活用し,自分の振り返りや目当ての振り返りが蓄積されていくことで,それらがどう変容していくか。さらに,生成AIも活用しながら整理や分析を行うことによって,自分の考えが時系列でどう客観的になり,どう捉えられていくかということも可能になるのではないかと考えております。
このように自分の考えを生成AIを用いて整理していく点においても,生成AIが思考を代替する道具ではなく,思考を助けるものであるということに子供たちが気付くような,そんな営みにもなっていくのではないかと捉えております。これまで授業を「点」として捉えがちだったかもしれませんが,それらを「線」として繋げていくことで,次の授業へ,そして他教科へ,さらには数年にわたって成長の記録を蓄積していくような,そんなイメージの中でデジタル学習基盤を使えないかと考えた次第です。
 3つ目ですが,27ページの留意点についてです。意見の可視化というのは当然不可欠な場合もありますが,事務局案の留意事項にあるとおり,教師には「何を共有して,何を共有してはいけないか」というような,高い感度が求められると考えております。
特に「自分自身や他者との関わり」の観点においては,個人の内面やデリケートな経験の部分が含まれていくことがあります。そうした場合には,無記名で共有するなどの配慮がなければいけないと捉えております。子供が本心を出すことを躊躇するようなことがあれば,たとえデジタル学習基盤を使おうとも,クラスの中で適切な共有はなされなくなっていきます。安心・安全な心理的環境を作っていくという意味でも,デジタル学習基盤がそこに関わってきます。したがって,デジタル学習基盤を使うからといって,そうした環境が自動的に担保されるわけではないということを,先生方がきちんと留意していく必要があると考えております。
 4点目は,25ページの生成AIの件です。事務局案では,補助的な活用と批判的な活用という両面が書かれており,その方向性を支持したいと思っております。
その上で,AIを単なるツールとしての方法にとどめず,この「AIと生きる社会」そのものが学習内容としても位置付くような方向性が望ましいと考えています。AIとの対話を通じて,AIにはない人間固有の迷いや葛藤を再認識するプロセスも,道徳の中で重要になってくると考えております。同時に,そうした人間固有の迷いや葛藤を正しく理解するためには,情報活用能力として,情報技術の特性の理解も併せて深めていかないと難しいのではないでしょうか。AIを擬人化するような感覚がどうしても出てくるかと思いますが,それはテクノロジーの特性を理解していないと脱却できません。ですから,情報活用能力としての「活用方法」と「学習内容」の両面からアプローチしていくような,そんな取組として捉えているところでございます。
私からは以上となります。よろしくお願いいたします。
【頼住主査】  それでは、岡﨑委員、よろしくお願いいたします。
【岡﨑委員】  東所沢小学校校長の岡﨑でございます。今回のご提案を伺いまして、様々な学習イメージが明らかになってきましたので、考え、議論する道徳の実装にアプローチする内容を前回より一層考えていくことにあると思いました。
 特に今回は、学習指導要領の改訂に向けた基本的な考え方の一つ、当事者意識と深く関わってくると思いました。現行学習指導要領の道徳科の指導として記載されている、体験的な活動など多様な指導方法を工夫するという内容については、改訂時にも大きな話題となりました。
 しかしながら、道徳性を養うということを狙いとする道徳科の指導の一つの手立てであるはずのこれらが、目的化されてしまったという部分があったように思います。さらには、問題解決的な学習の具体化として、道徳科の授業では必ず学習問題や学習課題を明示すべきであるといったような形式的な指導に陥ってしまったり、解決策を求めることが重視されてしまったりして、内面的な部分がおろそかになってしまったりすることがありました。
 また、体験的な活動の具現化として、私が驚いたのは、道徳科の学習を地域清掃や自然体験などで代替してもよいのではといったような考え方をしていることもありましたので、それでは道徳性を養うということにはほど遠いと思ったことがありました。
 そこで、今回のご提案を伺って思ったことは、この示し方が誤解を生まないようにすることが大事ではないかということです。4ページの下にもお示しいただきましたけれども、手段を導入すること、活動をすること自体が目的化することなく、道徳科における深い学びを通じて内面的資質としての道徳性を養うことに繋げることが重要ということを明確に示す必要があると思っています。
 この御提案では、まず道徳的諸価値の理解を基に自己を見つめて考え、話し合うことを大前提として、例えば一教材を複数時間で扱う場合の余白などを、今挙げた二つの指導方法を含めた様々な工夫を組み合わせるということですので、その理解を十分図れるよう配慮しなければいけないと思っております。それから、これまでも申し上げてきましたけれども、道徳科では何を考え、何を議論するのか、そして何を学ぶのかということを全教員が理解した上で、その上での指導方法の工夫であるということを十分に押さえていくべきかと思います。
 続いて、今日御提案をいただいた先生方の内容がありましたので、それについて少し考えを述べさせていただきます。まず、渡辺弥生委員の御提案にありました学びのイメージですが、これを伺って私は非常にイメージが幅広くなったなと思いました。
 例えば、発達支援、ソーシャルスキルトレーニングのようなものや、心理教育に関わるもの、構成的グループエンカウンターのようなもの、こういったものについても、道徳的行為に関する体験的な学びとして、道徳性を養うことに結びつくのであれば、チャレンジしたい指導方法だと考えております。
 例えば、スキルの向上というと、いわゆる技能ありきというイメージが強いので、内面的資質を育てる道徳科にはそぐわないというところはもちろんあると思います。構成的グループエンカウンターについても、自己開示や自他の理解など、道徳科の学びと重なる部分もあるかと思いますけれども、狙いは全く違います。しかし、それらの手法の一部を活用して指導方法の工夫に取り入れることは、私は不適切ではないと考えています。
 私も担任の頃に構成的グループエンカウンター的な手法を取り入れたことが何回かありましたけれども、子供たちが実に生き生きと対話して、自分の心の弱さ、相手の道徳性への尊敬をのびのび表現することができました。また、今、特別支援教育への理解とニーズが大変高くなっています。
 学校種、学級種別に関わらず、発達的な特性についてはまさに多様で、例えば、ほかの児童とのコミュニケーションが苦手だったり、人の思いをおもんぱかることが難しかったり、渡辺弥生委員のおっしゃるとおり、自分の感情の理解が難しいといったこともあるかと思います。そこで、こういった発達支援や心理教育の手法を取り入れてみるということは、効果的な部分もあるのではないかなと私は考えています。
 あと、渡邉真魚委員のおっしゃるとおり、役割演技、これも小学生では大変人気です。私もお面を作って臨んだりすると、このお面の取り合いになってしまうことがあります。
こちらは発達段階によって取扱いが難しいので、真魚委員の御提案のような工夫を取り入れて、子供たちが自己の生き方を見つめながら学ぶ方法としては非常に重要ではないかなと思っております。
 まとまりませんが、以上でございます。失礼します。
【頼住主査】  それでは、古屋委員、よろしくお願いいたします。
【古屋委員】  発言された皆さんと重複する部分もあるかと思いますが、お許しいただけたらと思っております。まず、問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習についてでございますけれども、道徳の教科化を検討した際に、質の高い多様な指導法として取り上げられた三つの指導方法のうちの二つの指導方法に焦点を当てて、考え、議論する道徳の実装、深い学びを実現しようということで、充実改善を図っていく、そういう方向性については、やはりこれまでの流れに沿ったものであって、現場の実践、課題等を踏まえた考え方であるというふうに思っております。
 問題解決的な学習については、先ほど示されたように、調査の結果によるとおおむね実施しているというような状況でございますけれども、ただ、学校現場ではまだまだ積極的にというよりも、これでよいのかと悩んでいる様子ですとか、また、改善の余地があるというふうな認識を持っているものが多いように感じているところでございます。
 道徳の授業における問題とは何かという整理や、まず形から入ろうとか、指導方法として位置付けようというような流れが強いように感じておりました。このような学校現場の課題や状況を改善する方策として、本日示されたような形で推進していくことは極めて重要であるというふうに思っております。
 特に問題解決的な学習を進めるに当たって、問題の二項目、自己内葛藤、そして価値の対立というところは有効であろうというふうに思っています。
 価値の対立については、資料でもですね、小さく書かれておりますとおり、価値の対立というところでは、5ページになりますかね、米印の3で、価値の対立に関して三つの道徳的価値が対立することもあり得るというふうに書いてあるように、二つに絞らないということも必要かというふうに思っております。ただ、幾つでもよいということではなくて、複数の価値の対立を考えていくというところであって、それが安易な流れで、あれもこれもそれもというような形にはならないように注意をすべきことではないかなというふうに思っております。
 それから、道徳的行為に関する体験的な学びにつきましては、こちらも体験的な活動をすることが目的にならないように留意する必要があろうかというふうに思います。ぜひ、体験的な活動をさらに一層深めながら、道徳的実践に繋げていくということを考えていただきたいと思っております。
 特に、先ほど御発表いただきました渡邉真魚先生の役割演技、非常に有効であるということを再認識させていただきました。私の感覚で言いますと、小学校のほうは比較的豊富に役割演技を活用しているように思いますが、中学校ではどうなんだろうか、少し恥ずかしい思いをしたり、先生方も少し引いてしまったりするところもあったのではないか、そんなふうに感じているところでありましたけれども、実践事例を御紹介いただく中で、中学校での可能性を大いに感じたところでございますし、また、中学校ならではの、複数時間で深めていく、複数内容項目で深めていく、そういった可能性にも繋がってまいりました。
 お示しいただいたように、思考のみならず、役割演技が感情や行為にも働きかけられるものである、その辺りは強調していっていいのではないかなと、そんなふうに思ったところでございます。
 それから、道徳科の学びと感情についてでございますけれども、子供たちがより豊かに生活していくためには、やはり自身の感情を見つめたり、振り返ったりしながら、あるいは認識したりしながらですね、よりよい生き方を考えていくということが必要ですし、また、場面や状況等に応じて調整するということも極めて必要なことだろうというふうに思っております。ただ、資料にございますように、感情のコントロールのスキルを高めることをもって道徳科の授業にするということには抵抗がございます。
 やはり、自己の生き方について考えを深める学習でありますので、考えを深めるための体験的な学習の一つとして活用するということが有効であると思っています。
 渡辺弥生先生の御発表にあったソーシャル・エモーショナル・ラーニング、私も大いに学ばせていただき、参考になりました。
 いじめの未然防止に有意な影響を及ぼすといった検証があり、それも関心を持ったところでございます。この学びをどのように道徳科の授業に活用できるのか。また、これまでの道徳の実践にもですね、児童生徒の話し合い、語り合いにも感情の理解とか調整に近いものがあったようにも思うんですね。それらを意図的に行い、考え、議論する道徳の実装、深い学びに繋げていくというものであろうかなというふうに思っております。多様な実践の推奨ということで紹介していくこともいいのではないかなと、そんなふうに思ったわけでございます。
 続いて、デジタル学習基盤の活用について若干お話をさせていただきますが、資料としては、24ページになりますか。24ページの1の1、意見の可視化のあとに比較という言葉がついているんですが、それがそのあとの補足イメージのところになりますと、意見の可視化というところで止まっているんですが、この辺りは何か違いがあるのかなということで、また教えていただきたいというふうに思っています。
 可視化をするとともに、比較したり、様々な見方、考え方をしていくということは、極めて重要なことかなというふうに思っています。
 1についても、その可視化についても、振り返りの蓄積についても、その他、特に生成AIに関することについては、これからの教育には極めて重要であり、ICTの活用がですね、どの教科でも日常的に当たり前になっている現状の中では、道徳科においてもより一層の活用が必要であるというふうに思っております。ただ、活用すればいいというわけではなくて、やはり道徳の授業としてどう成り立たせていくのかということが重要であります。
 AIについては、批判的に、補助的にというお話がございましたけれども、現場実践はまだまだ開発途上でありますので、より一層の実践を整理していく必要があろうかなというふうに感じているところでございます。
 また、佐藤先生からお話があったように、AIそのものをどう学んでいくかという視点も、今後必要になってくると思いますので、どのような内容の中で取り扱うのかということを、しっかりと道徳としても考えていく、そんな必要があろうかと思います。善悪の判断とか自由責任とか真理の探究といった内容において、学びの対象となるのではないかなと、そんなふうに思っているところでございます。私からは以上でございます。
【頼住主査】  それでは、渡邊範道委員、よろしくお願いいたします。
【渡邊範道委員】  上野高校、渡邊でございます。よろしくお願いします。私からは2点お願いします。
 1点目は、問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学びについてというところで、4ページに整理されておりますが、このような問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的学習、こういった授業の中での心情の理解や問題解決のための話し合い、議論、発表など、授業内での活動や体験を実際の生活での活動や道徳的行為に繋げるための様々な工夫について、今日、両先生からも御発表があった感情への着目や役割演技の重要性、そして本日示された様々な事例も大変勉強になったところです。
 その上で、9ページのところで、今回の改善案として、自己内の問題解決的な学習における問題の例として、自己内葛藤と価値の対立が整理されているわけですけども、これは複数時間をかけて目指すものとして非常に分かりやすく重要であると評価させていただきたいと思います。従来ずっとこの委員会でも言われておりますが、予定調和にならない、考え、議論する道徳に向けて、この葛藤とか価値の対立というのは非常に重要なポイントであると思います。
 もう1点、デジタル学習基盤の活用についてですが、資料後半に示されていますが、基本的な考え方や活用のイメージ、その効果など非常に分かりやすいと思います。特に27ページに示されている留意点ですが、先ほど佐藤先生からもありましたがこういった留意点が示されたことは意義があると思います。しかし、発表や意見の表明と違って、子供たちが匿名性というものを意識して活用するときに相手を傷つけたり、言うべきことだけを言って終わりにならないように現場の先生方の留意が必要であるということは強く思ったところです。今後、AIの活用も含めて教科書や教材の開発、様々になされていくと思います。学校現場での創意工夫など、大変期待できると思います。私からは以上です。
【頼住主査】  それでは中島委員、よろしくお願いいたします。
【中島委員】  失礼いたします。中島です。
 今日はですね、なんかよりものすごく具体的に授業がイメージできるようになったかなというふうな気がします。前回の改訂のときですね、いろんなところで道徳の授業についてお話をしていくときに、問題解決的な学習、それから道徳教育に関する体験的な学習の「的な」という言葉がなぜついているかという御質問が多かったです。
 そこで、要するに、じゃあ「的な」を外したらどうなってしまいますかというと、内面的な資質であったり、道徳的な心情や判断力とは違うものになっていってしまうというようなことでお話をしたりとか説明していったんですけども、今回出していただいてる8ページの補足イメージの2ですね、それから補足イメージの3の9ページは、まだあまり道徳に関してですね、それほど経験のない先生方から見ていただいても、こういった取組ができるんだということではですね、参考にしていただけるのかなというふうに感じました。
 あとですね、ちょっと問題解決的な学習のことで2つ、3つ例をお話ししますと、以前ですね、こういった取組をして子供たちと授業していく中で、教師の意図を超えるような子供たちの意見とかいうのがあります。
 例えば、今回どこかの資料にありましたけど、二通の手紙という、入園係の方が時間を過ぎていたけども、決まりを破って子供を入れてしまったというようなことがあったんですけど、そういった中で子供たちがですね、問題解決的な意見として、なぜ源さんは自分が休みを取って子供たちと一緒に入らなかったんだろうかというように、問題を解決してさらに質の高い道徳的な行為を求めたりすることがあるんですね。
 そしたら、君すごいこと考えたねということで、ほかの子供たちもですね、やっぱり簡単じゃないなって、優しい気持ちでルールを守る、破ることではやっぱりだめだよねということで、授業が深まったりしたことがありました。
 それから手品師という小学校の授業では、手品師が有名な劇場に誘われたけども、子供の約束を守って公園でやった。これも問題解決的なところで子供たちの意見としてですね、私が体験したのは、手品師はなぜ子供を連れて劇場に行かなかったんだろうって。そしたら両方とも解決できるのにって。
 そのときに私もちょっと困ったんですけど、かえってですね、分かっていたけども手品師はあえて劇場に行かなかったとしたら、なぜだろうかというふうにすると、さらに道徳的な価値というものを子供たちが深く勉強していくことができると思います。
 子供たちなりにそうやって問題解決をしたりとか、納得解を見つけたりとかしていっても、さらにそれを深めることも授業ではできてくると思うんですよね。ですから、方法としてこの問題解決的な学習、それから道徳的な行為に関する体験的な学習に少しこだわりを持った今回の御提案ということに関しては、私は大賛成をしていきたいというふうに思っています。
 それとデジタル教材について少しお話をしておきますと、資料提示で読み物資料で読むときに、小学校の先生方とてもお上手でですね、セリフの中に感情移入ができる先生となかなかそれが難しい先生があります。デジタル教材だと、ある程度それを抑えた形でこうやっていって、先ほどの体験的な学習なんかでの動作化がありましたけど、このセリフを気持ちを込めてちょっとこのセリフを言ってみようというのはよく動作化で使ったりするんですよね。
 そのため、デジタル教材で一番最初の教材提示というのはすっとやっていって、そしてそのあとの実際の授業の中では、そのセリフをどう言うんだとか、そのときの動作をどんなふうな動作にするのかということにこだわっていくというのは、授業の中でとても深まるんじゃないかというふうに私も感じました。
 最後にですね、デジタル教材の中の可視化ということで出ているわけですけども、この可視化についてはですね、子供たちの心情理解というわけではありませんけど、自分の自己理解という点で考えたときにですね、全体はどちらの意見を持っていますかということで、イエス、ノーで可視化していくといいと思うんですよね。
 でも自分の気持ちというのはやっぱり私はパーセントで可視化する方向、例えば何割ぐらいというか、何パーセントぐらいはできると思っているけど、ちょっとこっちは難しいと思っている自分がいるとかですね、こっちがいいと思っているけどそうじゃないかもしれないって、例えば半分半分思っているとかいうのも、なんか自分の中でのデジタルを使った可視化、そして自分のそういう複雑な考えというか気持ちをですね、ほかの皆にも見てもらっていくような可視化にもこだわったらどうなのかなというふうに感じました。
 あとAIについては私がまだ十分使いこなせていないので分からないんですけど、なんか子供たち自身がAIをどんなふうに理解してどう使うかということと、やっぱり常に相談をしなければいけないのかなと。
 十分に育ってきたときに、子供たちがこんな使い方をしたらというときに、私たち大人のほうがそれについて助言ができるようにちゃんと勉強しとかなくちゃいけないのかなというのをちょっと感じたところです。私は以上です。
【頼住主査】  それでは山﨑委員、よろしくお願いいたします。
【山﨑委員】  はい、よろしくお願いいたします。
 まず本日の渡辺弥生委員、渡邉真魚委員の御発表、大変分かりやすい学び方を具体的にお示しいただいて、大変参考になりました。さて、体験的な学習について、先ほど岡﨑委員の発言にもありましたけれども、私も常々同じような感じを持っております。何をすれば体験なんだというような質問をされることが今まで多々ありました。
 道徳科の学びと体験的な道徳というのが別々なものと考えられてるのではないかという、まさにそういう質問であると思われるんですけれども、実際にはこれが現場の困りごとであるんだなというふうに思ってきました。
 本日、ちょうど資料の6ページ、7ページの複数時間での道徳を取り扱うというようなところとの関連、補足イメージ1の資料ですね。ここに関わるところなんですけれども、私のほうで資料を事務局にお送りするのが間に合わなくて、資料掲載が間に合ってなくて、発言だけで申し訳ないんですけれども、特別活動とか総合などの関連で例を御紹介させていただきたいというふうに思っています。
 以前、道徳の授業と次の道徳の授業の間の1週間の活用というのが、すべてそこも道徳なんじゃないかというお話があったかと思うんですけれども、実は相模原市では小中学校と教育課程研究会という市全体の組織で、各教科領域等を中心とした研究を行っています。
 本日、提示させていただきますのは、令和5年度の特別の教科道徳部会で発表を行ったものなんですけれども、令和5年度より関連的指導の研究を継続してきております。6年度は小学校における行事等の関連、7年度は中学校の学校教育目標を柱とした関連的指導の発表等を行ってきました。8年度も小学校の関連的指導を発表する予定でおります。
 この研究会の研究発表会は小中1名の参加で、提案発表後、中学校区のグループで協議を行って、関連的指導の計画案作り等を行っています。
 特別活動と道徳科の関連的指導の例をちょっとお話しさせていただきたいのですが、中学校3年生の後期に設定したもので、1か月、2か月ほどにわたっての関連的指導になります。
まず関連的授業のテーマを優しさというふうに設定しました。学校祭等の行事で育んだ3年生のクラスの力を卒業期に向けて、進路決定とか学級の仲間とともに高め合う進路、集団についてじっくりと考えられるように、優しさというテーマに結びつく内容項目を洗い出し、様々な内容項目から三つの資料でアプローチをする道徳の関連的授業を組みました。
 このような取組で重要なことというのは、やはり目の前の生徒の発達段階を適切に分析して、生徒たちへの思いや願いを込めた関連的指導が組まれることが、何より効果を生むと思いますし、そうでなくてはならないかなというふうに感じています。
 今回7ページの図に、まさにこの困りごとに答えるものになってるかなというふうに思いますので、特別活動や総合的な学習の時間との関連を現場によく理解をしてもらうということが、今後大切になってくるかと思います。また、各校のグランドデザインの子供たちの育ちの願い、これらがきちんと関わる位置付けがされることが望ましいと、私自身はずっと思ってきておりますが、今回それが具体的に記載されているということが、とてもありがたいなというふうに感じていますので、これをいかに広めていかれるかという実装になるのかなと感じております。本日はどうもありがとうございました。
【頼住主査】  これで委員の先生方の御意見を頂戴することが一巡いたしました。本日は最初に、渡辺弥生先生と渡邉真魚先生から御発表をいただきましたので、お二人の先生から、他の委員のコメントを聞いて、リアクションをいただければと思います。
 まず渡辺弥生先生、いかがでしょうか。
【渡辺弥生委員】 先生方のご意見を伺い、また自分の発表内容も踏まえて考えますと、まずは道徳科の目標そのものを、すべての方と共有し、その意義を十分に理解することが重要だと感じました。
その上で、現代の子どもたちが抱える多様な課題や社会的背景をふまえながら授業を構想していく必要があります。その際、そうした課題に応えることのできる教材をどのように開発・活用していくかが、今後の重要なテーマになるのではないかと思います。読解力があまり求められず、どの子供達もすぐコミットメントできるような教材を考えるということが大切に思います。また、道徳の授業の時間自体が安心安全な場であり、何を誰が言っても責められないというような、そういう雰囲気や風土が重要だと思いました。
道徳的行為に対する体験活動については、私自身も20年以上、SSTなどいろいろな取り組みをしてきましたが、先生方がおっしゃったように、それ自体が目標化してしまうことには慎重であるべきだと思います。重要なのは、道徳科の目標との関連を明確にしながら、どのような活動がどのような教育的効果をもつのかを整理することです。その上で、活用の考え方や留意点を示したガイドラインを整備し、先生方が目的を理解して効果的に活用できるようにすることが必要だと思います。
 また、役割演技についてですが、ロールプレイングという言葉で説明されることもあります。現在のいじめの問題を考えると、いじめた経験といじめられた経験の両方をもっている子どもが少なくありません。そのため、一つの役割だけを固定的に演じるだけでなく、役割を入れ替えて体験するような方法も考えられるのではないかと思います。
実際に、いじめる側といじめられる側の両方の立場を体験してみると、自分の中に矛盾や葛藤が生じ、対人関係を深く考えるきっかけになります。私自身もそのような実践を行ったことがありますが、子どもたちが人間関係の複雑さや多面的な側面について深く考える機会になりました。
 デジタルについてはいろいろな議論があると思いますが、ハイブリッドでできればいいなと思っています。一つは、デジタル活用とコミュニケーションの関係です。「考え、議論する道徳」では、言葉だけでなく、声の調子や表情、ジェスチャーなどのノンバーバル・コミュニケーションも重要な役割を果たしています。そのため、デジタル活用においても、こうした側面に目を向けられるような工夫があってよいのではないかと思います。
また、デジタルの利点として、四つほどあげます。一つに、これまで見取りきれなかった全ての子どもの考えや回答を把握できることがあります。二つ目に、子ども同士を比較するのではなく、一人一人の変化や成長を継続的に蓄積・可視化できることも大きな意義だと思います。そのことは、子どもの成長をより的確に見取ることにつながるだけでなく、教材や授業の改善を検討する上でも有効な資料になるのではないかと考えます。
 三つ目に、フィードバックができることです。正しいとか正しくないというフィードバックではなく、「よく考えましたね」と言ったポジティブなフィードバックの機能を使うということも大事だと思います。
 四つ目は、発達の観点です。相手の気持ちや立場に立って考えることがまだ難しい発達段階の子どもに対しては、視点の転換を促す支援(メンタルローテーション)が重要になります。デジタル技術を活用することで、「もし自分がその立場だったらどう感じるか」をより具体的にイメージしやすくなり、他者理解を深めるきっかけになる可能性があります。
 AIについては、利用者の関心や行動履歴に基づいて情報が提示されるため、ときには偏った情報や望ましくない内容に接する可能性もあります。そのため、AIの仕組みについて理解することは重要だと思います。それ自体を道徳科で扱うかどうかは別として、AIの活用に伴う倫理的課題や、人間としてどのように判断すべきかといったテーマは、今後の道徳教育の内容として検討できるのではないかと思います。
【頼住主査】  渡邉真魚先生、いかがでしょうか。
【渡邉真魚委員】  では4点ほど。
 1点目が弥生先生の御発表の中にありました子供の困りごとに寄り添って、その感情と向き合う授業実践に大変共感しております。特に私は御提案いただいた小学校高学年の2コマ目の例えばという実践の二つ目、短い場面をさらに提示して子供たちに考えさせるというところが一つ発展的な扱いになっていて、前の時間の学んだことと2コマ目、次の時間で学ぶことに接続する非常によい仕掛けなのではないかと考えて拝見しておりました。今後、私もますますアイデアを練って授業作り考えてみたいと思います。
 2点目が事務局からの御提案で余白の部分という表現をされておりましたけれども、これによりこれまで授業者が道徳の授業作りにおいて悩んだり困ったり、あるいは少し窮屈に感じていたところが、授業者に委ねられた分多様なアイデアで授業作りが進むのではないかと思い拝聴しておりました。特にこうあらねばならないというところよりは、目の前の子供の実態に即して授業作りをするということの必然性に改めて気付く機会に資するのではないかなと考えております。
 それからもう1点目、事務局説明の中で3点目になります。問題解決的な学習のところの問題が、この度、自己内葛藤であるとか価値の対立であるとか、さらに問題の形が輪郭がはっきりしていくことにより、これもまた授業者が目の前の子供の実態を踏まえながらの授業作りに資することになるのではないか。子供の問題が自己の中に葛藤を生じているから、道徳的な実践欲に繋がらない、あるいは価値と価値がぶつかったときにどんなふうに考え、向き合っていったらいいのかというところをまでをきちんと見取る授業者の視点にも繋がるのではないかと思い、拝聴しておりました。
 最後に4点目、生成AIについてですが、やはりAIと共生していく社会においては、外からAIについて見聞きして覚えることではなくて、実際に使いながらと言いますか、活用しながらと言いますか、その中で学んでいくことも多いのではないか。そのためには十分な配慮事項、留意事項を踏まえながら、これから授業の中でどのように活用していくかということを学ぶこと自体が学びになるのではないかと考えました。
【頼住主査】  それではまだ時間がございますので、もし追加でコメントしたいという先生方がおられましたら、どうぞ挙手をお願いいたします。
 特に出ないようでしたら、毛内委員のほうからよろしくお願いいたします。
【毛内主査代理】  はい、それでは委員の皆様の御発言を踏まえてお話しさせていただきます。
 論点1についてです。7ページをお願いいたします。
 この補足イメージ1は、いじめをはじめとする現実の課題との接続、すなわち道徳的実践と道徳科の学びとの関係をどのように捉えるかという重要な論点を示しています。
 道徳科の学びは、目標に示す内面的資質としての道徳性を養うことですが、その上で問題解決的な学習や道徳的行為に関する体験的な学習が、道徳科の学びと現実的課題へとつなぐことを明確化したことの意味は、二つの側面において大きいと言えます。
 一つには「道徳的諸価値の理解を基に」という目標との関係です。この部分は道徳科の目標の基本的な考え方を示しています。道徳的諸価値の理解を土台として位置付け、その上に問題解決的な学習や体験的な学習といった指導方法の工夫例を配置することで、これらを応用的に活用しながら深い学びへと繋げるとともに、道徳科を現実の課題とも接続させていく役割を持たせていこうということで、こうした位置付けが学校現場の理解に資するのではないかと期待しています。
 もう一つには、前回議論された複数時間の取組がここで重要な意味を持つということです。複数時間の活用により、様々なバリエーションを持った道徳科の学びが展開されることが期待されます。こうした複数時間で学びを深めていくための方策としても、こうした指導方法の工夫例が位置付けられることに大きな意味があります。前回、深める教材の提案もありましたが、こうした考え方を踏まえた多様で質の高い教科書の教材開発が進んでいくことを強く期待しています。
 また、現在全国で実践されている地域教材についても、複数時間と組み合わせて活用することで、より効果的な活用が期待できると思います。さらに資料では、特別活動等との接続は次回以降とされていますが、複数時間を通じて自分自身に引きつけて考え、議論することが可能になる中で、特別活動等における実践との接続も一層図りやすくなることを強調したいです。また、感情との関係については、他の委員の皆様からも意見が出されていましたが、感情を調整するスキルを身に付けることそのものが重要なのではなく、あくまでも道徳科の目標に沿った形で行われる必要があることを申し添えたいし、解説等でもしっかりと明記すべきであると考えています。
 重要なのは、手段を導入することや活動すること自体が目的化することなく、道徳科における深い学びを通して内面的資質としての道徳性が養われるかどうかです。
 続いて論点2についてです。29ページをお願いいたします。デジタル学習基盤の活用については、この29ページのように現場の実践を踏まえ、多様な活用について一定の類型化を試みていることは、情報を不得手としている教員も多くいる中で一定の評価ができると考えます。
 一方で、例えば可視化や蓄積といった手段が過度に強調されることで、そうした実践があたかも正解であるかのような取扱いがされることは避けなければなりません。指導方法の工夫と同様、デジタル学習基盤の活用についても、当然に学校現場の多様な創意工夫が求められるところです。大前提として、子供の見取り、子供の実態に基づいて適切に工夫すべきことが前提です。その上でAIの取扱いについては、AIそのものが人間とは何かといった問題を引き起こしている側面があるため、活用しながら道徳的な問題について考えるような授業もあり得ます。
 現代的な諸課題は次回予定されていますが、本日の議論との橋渡しという意味でも、ぜひそうした視点での取扱いについても検討してほしいです。
【頼住主査】  それでは私のほうから最後に総括をさせていただきたいと思います。
 本日は、渡辺弥生先生、渡邉真魚先生、大変貴重な研究成果に基づく御発表ありがとうございました。
 体験的な学習というものが非常に有効であるということ、また複数コマにもよく馴染むものであるということを、事例等を紹介していただくことによって、よく理解することができました。ただ、多くの先生方からも出していただきましたように、これはあくまでも一つの事例であり、道徳の目標があってこそこのような実践も生きてくるのであって、こういう工夫をすること、こういう方法を取ることが手段ではなくて目的化してしまい、これさえやっていれば道徳の授業として充実するというような誤解が生じないように十分注意しながら、紹介していく必要があると思いました。
 そして今、毛内先生からもまたほかの先生方からも繰り返してご指摘いただいたかと思いますけれども、やはり道徳の授業の一番コアになるのは、道徳的な諸価値を理解して内面的な道徳性を養っていくことだということは、ぜひ共有しておきたいと思います。そこから問題解決的な学習が展開していくわけですね。そして、それについては、今回、自己内の葛藤と価値の対立にフォーカスして示していただいたのは非常に重要だったと思います。
 委員の先生方からもそのような御意見が出ていたかと思いますけれども、複数の価値を扱う、そしてその価値同士が対立しているとか、自分の中でも様々な葛藤がある、要するにすぐに判断がつかないとか、また決めきれない問いに自分が耐えていくとか、ルールだけでは決まらない、断定できない、自分だけではなくて他者の立場があるのだというようなことを道徳の学習の様々な場面で学んでいくことが、道徳の時間の中のコアになっていくわけです。このようなことを前面に出して、これから実装化していくことが、我が国の道徳教育にとって非常に重要なことだと思っております。
 それから二つ目のデジタル学習基盤の活用という問題でございますけれども、先ほど毛内先生も御指摘くださったように、さまざまな活用事例を今回集めてくださって、こういう留意点があると打ち出してくださっていることは、貴重な御指摘だと思われます。
 また、デジタル学習基盤を活用することで線として蓄積できるというのは、まさにそのとおりであり、道徳性の深まりとその蓄積とがリンクするようになっていけばいいなと思いながら聞いておりました。
 それから生成AIについては、委員の先生方のほうからも出ておりましたように、あくまでも補助的、また批判的な吟味の上で使っていくという基本的な態度を道徳においても堅持することが必要ではないかと思いながら御議論を伺っていました。
 私からは以上になります。
 ほかに先生方のほうから何か、追加のコメント等ございましたら、まだ少しお時間ございますので、頂戴できればと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降の予定について事務局よりお願いいたします。
【堀川学校教育官】  事務局でございます。
 次回は5月19日9時半からの開催を予定しておりますが、正式には後日連絡をいたします。
【頼住主査】  それでは以上を持ちまして閉会といたします。
 

―― 了 ――
山﨑委員提出資料(PDF:1.87MB)

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程第一係

電話番号:03-5253-4111(代表)

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