令和8年2月27日(金曜日)13時00分~15時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【頼住主査】 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部会 道徳教育ワーキンググループを開催いたします。
本日は大変御多忙の中、御参加いただきまして誠にありがとうございます。
本日は進行資料としてお配りしている流れに基づき議事を進めますので、委員の皆様におかれましては適宜御参照ください。
それでは早速ですが、議題(1)に移ります。目標・内容の構造化、及び「考え、議論する道徳」の実装に向けた学びの在り方について、事務局より説明をお願いいたします。
【堀川学校教育官】 事務局でございます。
資料「目標・内容の構造化等及び『考え、議論する道徳』の実装に向けた学びの在り方について」ご説明を申し上げます。
まず一つ目の論点といたしまして、道徳科の評価の在り方についてでございます。
現状と経緯でございますけれども、まず経緯といたしまして、平成27年の3月に「特別の教科 道徳」が位置付けられました。また平成28年の8月に、「道徳科の評価の在り方に関する専門家会議」において、このグレーの網掛けのとおり整理がなされたところでございます。
そのような中、現状でございますけれども、指導要録の参考様式におきまして、学習状況及び道徳性に係る成長の様子につきまして、学年ごとに記述する欄を設けていて、また、行動の記録につきましては、内面的資質としての道徳性とは一線を画するものとして整理をされておるところでございます。
このようなこれまでの経緯を踏まえまして、検討の方向性でございますけれども、「考え、議論する道徳」への転換のフェーズから実装のフェーズに移行するものとして、道徳教育の質の向上の在り方を中心に検討することについて議論がされたこと、このことを踏まえまして、「考え、議論する道徳」の骨格については維持するという考え方に立ち、評価の在り方について現行の考え方を維持することとしてはどうか、という御提案でございます。
補足イメージの1でございますけれども、道徳科における資質・能力の構成について、人格そのものに働きかける特質から資質・能力を分節して観点別に取り扱うことには馴染まない。このことについては前回のワーキングのほうで、4ページの資料のとおり御議論をいただいたところでございます。
このことを踏まえまして、道徳科の評価では、引き続き、児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価として行うこととしてはどうかと考えております。
次に、2番、内容項目についてでございます。
現状と経緯でございますけれども、内容項目に関する経緯といたしまして、教科化以前には内容項目は「窓口」とされていたところを、現行の指導要領で、人間としての生き方についての考えを深めることができる「手掛かり」として位置付け直したところでございます。
また、教科化に当たっては、いじめ等の現代的諸課題への対応の充実、体系的・系統的な指導、主体的な態度や探究心の重視、そうしたことから内容項目の数について見直しを行うとともに、内容項目を端的に示す言葉を付記することとしたところでございます。
また、内容項目のまとまりを示す視点について、従前から四つの視点で構成すると、この考え方は維持しながら、順序の入れ替え等の見直しを行ったところでございます。
課題でございます。現行の内容項目について、例えば家族関係や友人関係の様々な実態に馴染まない部分があるとの指摘がございます。
米印のところに書いておりますけれども、児童養護施設への入所児童等の要保護児童数が4万人を超え、また、虐待件数が22万件を超えていて、いじめの認知件数も中学校で約14万件となっている中にあって、「父母、祖父母を敬愛し」という文言であったり、「友情、信頼」の中での「心から信頼できる友達をもち」といった表現について、少し辛い思いをしてしまう子供がいるのではないかといった指摘もあるところでございます。
こうしたところも踏まえまして、検討の方向性でございますけれども、前回のワーキングの中で実装のフェーズに移行していくということで議論をいただきました。そのことを踏まえまして、内容項目の枠組み全体については維持をすることとした上で、個別の見直し事項として以下を検討してはどうかということで、2点御提案でございます。
「家族愛、家庭生活の充実」における「父母、祖父母」については、例えば「父母、祖父母等の家族」とするなど、記載について見直しを検討してはどうか。
また、「友情、信頼」における「心から信頼できる友達をもち」については――この文言は、同じ内容項目の小学校の高学年の文言と同じでございますけれども――、例えば「友達と互いに信頼し合い」とするなど、記載については見直しを検討してはどうかという御提案でございます。
7ページの参考資料につきましては、平成20年改訂のときと現行の新旧の対照ということで、小学校低学年のところを例にその変遷をお示ししているものでございます。
3つ目の論点、「『考え、議論する道徳』の実装を図っていくための学びの在り方について」でございます。
まず、その中の検討項目の1つ目といたしまして、道徳科における深い学びと複数時間を通じた道徳科の指導の充実の在り方についてでございます。
まず、現状と経緯でございますけれども、道徳科の深い学びに係る現行の整理といたしまして、前回の答申で、道徳科における主体的・対話的で深い学びの実現について、以下のように整理されたということで、グレーの網掛けでございますけれども、「道徳科における主体的・対話的で深い学びの実現とは、」「『考え、議論する道徳』を実現することである」とした上で、「特に『深い学び』の視点からは、物事を多面的・多角的に捉え、自己の生き方について考える学習を通して、」「適切な行為を主体的に選択し実践できるような資質・能力を育てる学習とすることが求められる」といった記載がございます。
その上で、道徳的な問題を自分事として捉え、議論し、探究する過程、こうしたものを重視しながら、多様な指導方法の工夫として3点工夫例を示しているところでございます。
1つ目が登場人物への自我関与を中心とした学習、2つ目が様々な道徳的諸価値に関わる問題や課題を主体的に解決する学習、そして3つ目が道徳的行為に関する体験的な学習でございます。
また、同じく答申において、道徳的な問題場面について、こちらに記載のとおりの問題があると整理をした上で、こうした問題構造を踏まえた場面設定や学習活動の工夫を行っていくことが重要である、といったことを示しております。
また、評価に関する現行の解説でございますけれども、グレーの網掛けの部分について記載があるところでございます。こちらについて、後ろの参考資料でお示ししておりますので、そちらのほうで御覧いただければと思います。11ページでございます。
先ほどの解説の記載がこの画面の左下の部分に記載してある部分でございます。ここの記載を少し図的にイメージとして整理したものを右側に掲載しておりますけれども、道徳的価値等についての他者の考え方や議論、こうしたものに触れ、自己を見つめ、多面的・多角的に考える学習活動において、道徳的諸価値の理解、また自己の生き方についての考え、こうしたことを考え、関連付けることを通じて、深い理解、深い考えとなっていく。
その深い理解、深い考えとは何かといったときに、多面的・多角的な見方へと発展する、そして自身との関わりで道徳的価値の理解が深まる、そうしたことが記載されているところでございます。
この括弧書きのところは、解説の直接の記載ではないんですけれども、「多面化・多角化」「自我関与」というところで、事務局のほうで付記させていただいております。
こうした視点を見たときに、望ましくない指導例として、例えば平成28年の答申では、単なる生活経験の話合い、また読み物教材の登場人物の心情理解のみに終始する指導、望ましいと分かっていることを言わせたり書かせたりする指導、こうしたことは望ましくないと示されているわけですけれども、自我関与や多面化・多角化という視点からも、なぜこうした指導が望ましくないのかといったことも、見て取れるのかなとも考えております。
次に、検討の前提、第1回のワーキングでの委員の先生方からいただいた御発言等をまとめさせていただいております。
まず、上の部分が第1回道徳ワーキングでの全体の論点の記載ですけれども、道徳科の学びの在り方ということで、「考え、議論する道徳」の実装を図っていく上での学びの在り方、その中で、読み物教材の登場人物の心情理解に偏った授業になりがちである、また、型にはまった予定調和的な授業になりがちといった指摘を踏まえた学びの在り方や、複数の内容項目を関連付けた学びの在り方、そして指導の在り方、学校の実態に応じた重点的な指導の在り方、こうしたことを論点として挙げさせていただいていたところでございます。第1回ワーキングの中でも、一部だけ御紹介させていただきますと、委員の先生方の御指摘事項の中で、例えば1つ目、心情理解や登場人物の整理に時間がかかってしまうのが現状である、そうした中で教材に基づいて対話するためには理解の時間も必要であるといった御指摘や、3つ目ですけれども、定型的な授業になって盛り上がらなかったり、教材の解釈を中心とした展開になってしまって、多面的・多角的に考えて自己の生き方について考えるところまでたどり着かなかったりする。
また、予定調和的な授業よりも、オープンエンドで最後に問いが残るという形で終わるほうが、むしろその問いを考え続けていくことに繋がるのではないか。
また右下でございますけれども、読み物資料から学ぶ過程で教室の中で生まれた問いを扱うには45分や50分では時間が足りない状況が生じている。1つの内容項目を複数時間で行う実践、1つの教材を複数時間で扱う実践、あるいは1つの教材でも複数の内容項目を関連させて扱う実践など、あらゆる仕掛けを通して子供たちが考え、議論できるようにしていく必要があるのではないか、こうした御指摘をワーキングの中でもいただいたところでございます。
こうした御指摘も踏まえまして、具体的論点の案13ページでございますけれども、1番、道徳科における深い学びを実装する上での課題と考え方、こちら補足イメージ1でご説明をさせていただければと思いますけれども、1つの授業について1つの読み物教材を扱うことが多い道徳科の授業については、下記のような課題が指摘されているということで4つ挙げさせていただいております。先ほども先生方からの御意見の中でもございました、理解や登場人物の整理に時間がかかってしまう、また多面的・多角的に自己の生き方についての考えを深めるところまでなかなかたどり着かない、また1コマの中で読み物と向き合う時間と考え、議論を深める時間の双方の時間を十分に確保することが難しい、そして4点目として、体験的・問題解決的な学習を取り入れ自分自身との関わりを深める時間を確保することが難しい、こうした課題が指摘されておるところでございます。
そうした中で、現行指導要領でも内容の取扱いのところで「一つの内容項目を複数の時間で扱う指導を取り入れる」とされているところでございまして、発達の段階も踏まえながら、1教材を複数コマで取り扱うことでじっくりと深く学ぶ、そうした道徳科の学びを一層推進していくことについて検討してはどうかという御提案でございます。
図にございますけれども、1教材を1コマで取り扱う場合になかなか考え、議論する時間を確保することが難しいという中にあって、1教材を複数コマで取り扱うという取組を通じて、例えば体験的・問題解決的な学習、そして対立や葛藤を含む複数価値を関連付けた議論、こうしたことを含めて、考え、議論する時間をしっかりと確保していくと。そのことでじっくりと深く学ぶ道徳科の学びを一層推進していくことに繋げていけないかというものでございます。
米印に書かせていただいておりますけれども、これは指導の型を示すものではなくて、道徳科における具体的な学習の過程は多様であることが前提であることや、この複数コマについては連続した2コマを想定しているというものではないということ、また2コマ目について、読み物教材ではない深める教材ですね、この薄いグリーンの点線で書かせていただいておりますけれども、1コマ目の学びをさらに深めていくための深める教材を用いるといったことも想定できるのかなというふうにも考えているところでございます。
戻らせていただきまして、2番、1教材を複数コマで扱う場合の内容項目の取扱いについてでございます。補足イメージの2を用いましてご説明をさせていただきます。15ページでございます。
現行の指導要領の中でも、指導の工夫の例として「一つの内容項目を複数の時間で扱う指導」、そして「内容項目間の関連を密にした指導」、この両方が示されているところ、この2つの観点を組み合わせることも考えられます。
そうした中で、1つの教材を複数コマで取り扱うことにより、例えば「相互理解、寛容」と「規則の尊重」との葛藤、また「友情、信頼」と「公正、公平、社会正義」との葛藤など、内容項目同士が対立したり葛藤したりする場面を含めて、自分自身の問題として多面的・多角的に深めていくといったことも考えられます。
こうしたことを踏まえまして、1教材を複数コマで取り扱う場合の内容項目の取扱い、これにつきまして、同一の内容項目について取り扱う、このパターン1、左側の場合に加えて、複数の内容項目について取り扱う右側の場合、パターン2があり得ることを示した上で、両方がバランスよく含まれた教材になるように検討を進めてはどうかという御提案でございます。
米印に書かせていただいておりますけども、教科書や教材の在り方については別途検討を深めていただければと考えておるところでございます。
パターン2のところですけれども、現行の解説の中でも「必ずしも内容項目を一つずつ主題として設定をしなければならないということではない」とされている中で、同一時間に複数内容項目を取扱う学びの在り方、そうしたことについても今後検討を深めていただければと考えておるところでございます。
続いて、こちらのパターン1、パターン2に関する参考資料をいくつか付けさせていただいております。
16ページからでございますけれども、こちらパターン1、同一内容項目を2コマかけて深めていくような実践事例でございます。広島大学附属東雲小学校の事例でございますけれども、「生命の尊さ」の内容項目について2コマをかけて考えを深めている事例でございます。
群馬大学共同教育学部附属中学校の事例でございますけれども、こちらも「生命の尊さ」の事例でございます。1コマ目で教材を通じて「生命の尊さ」について自分なりに考えた上で、2コマ目で考え、議論し、さらに考えを深めていく、そうした授業の実践事例でございます。
また、パターン1、パターン2両方にですね、現行の教科書の中でも様々なこのような取扱いについての教材の事例がございます。
いくつかご用意をさせていただいておりますけれども、例えばこちらの教科書、小学校4年生の教科書で、1コマ目は「善悪の判断、自律、自由と責任」ということで、「いっしょになってわらっちゃだめだ」という教材を使って考え、議論する。それを2コマ目、「いじめに『NO』の空気をつくる」という2ページの深める教材を用いまして、2枚絵を見比べながら、いじめに「NO」の空気をつくることについて考えを一人一人が深めていくような、そうした授業に使える教材が今もあるというところでございます。
また、このパターン2の事例でございますけれども、複数内容項目を2コマかけて深めていくような授業の在り方、こちらも実際の実践事例でございますけれども、1コマ目の内容項目は「真理の探究」ということで、読み物教材を活用して、真理を探究するとはどういうことか、そのことについて話し合い、考え、議論すると。その上で自分たちが真理を探究したことはあるのだろうかという問いについて考えを深める。そして2コマ目には、同じ教材を異なる道徳的価値、すなわち「よりよく生きる喜び」という2つ目の内容項目との関わりで深める時間を設けて、自分にとってのよりよい人生とは、という問いについて考え、そして2時間を振り返るといった流れで指導をしているような事例でございます。
こちらについて、動画を本日ご準備させていただいておりますので、約5分の動画になりますけれども、ご覧いただければと思います。
(動画上映)
【堀川学校教育官】 資料に戻らせていただきます。
今、御覧いただいた授業の実践でございましたけれども、緑(教材理解の時間)の中でもこう黄色いところ、すなわち自我関与なども意識しながら指導をするわけですけど、どうしてもなかなか、考え、議論する時間を十分に確保することが難しい中で、2コマ活用することで、振り返りのノートを見てもですね、かなり子供たちの思考の深まりといったものが見て取れるような実践だったかなというふうに思っております。
続いて、現行の教科書の事例でございます。このパターン2、複数内容項目を2コマかけて深めていくという事例は、中学校2年生の教材ですけれども、「明日、みんなで着よう」という教材で、内容項目「公正、公平、社会正義」についてピンクシャツデーに関わる4ページの読み物教材を読み、考え、議論をする。そして2コマ目で、深める教材「まなびをプラス 『いじり』って」という教材を活用して、内容項目「友情、信頼」の観点から、自分の思う「いじり」について考え、議論をしていくと。そういった教材もあるところでございます。
また、その次の事例は、深める教材とは少し違うところではあるんですけれども、1コマ目で内容項目「自主、自律、自由と責任」について4ページの読み物教材を読んで考え、議論する。そして2コマ目は1コマ目の教材と同じストーリーの中で別の登場人物の視点から見るような4ページの教材を読んで、次は「友情、信頼」について考え、議論する。そうした事例でございます。こうしたことも、今回のパターン2の考え方と近しい考え方の事例と言えるのかなというふうに考えております。
戻らせていただきまして、13ページでございます。相当する学年における内容項目の取扱いについてでございます。道徳科においては、各学年の内容項目につきまして、相当する各学年で全て取り上げることとしております。今般の教育課程全体の改善として、複数学年をまとめて示すなどの柔軟な運用の可能性、こうしたことを検討している中にあって、道徳科において対応をどうしていくのか、その適否を検討する必要がございます。
この論点につきまして、例えば内容項目を複数学年で取り上げてよいといった変更を加える場合には、以下の懸念や留意すべき点が考えられるということで3点でございます。
1つ目、各学年で取り扱う内容項目に偏りが出る可能性が生じる。2つ目、年度を越えて内容項目の引継ぎや管理が必要となり、担任が変わった場合等に大きな負担につながる。3点目、道徳科においては、発達段階に応じた内容項目を毎年繰り返し深めていくことが重要といえる。
そうしたことを踏まえ、また、年間35単位時間の中で最大で22の内容項目を全て取り上げるとした上で、複数年を見通した重点的な指導を含めて、学校の実態に応じた柔軟な取扱いを併せて示しているということも踏まえれば、各学年において相当する内容項目を全て取り上げるという現行の取扱いについては引き続き維持することとしてはどうかという御提案でございます。
続きまして、検討項目丸2、「指導体制の工夫の在り方」についてでございます。
まず検討の前提、第1回のワーキングの資料からでございますけれども、指導の在り方ということで、学校の実情等に応じて教師が交代で学年を回って授業を行う方策の在り方や留意点についての考え方、また教材の吟味や授業構想のための時間の確保が難しい、こうした課題を踏まえた教師の指導力の向上の在り方、こうしたことが論点として挙げさせていただいている中で、第1回のワーキングの先生方からの御意見の中にも、道徳科の時間が様々な出会いをコーディネートする時間であるということから、あるクラスで複数の教師が授業することが大切である、複数の教師がチームを組んで道徳科の時間に指導に当たる取組を実践しているといった御紹介であったり、1教材を複数回実施する過程で授業者の強みが生かせ、質的改善に資する運用も可能でありつつ、一番の成果はその学級の子供理解に資することであると実感しているといった御意見、また教師の指導力の個人差が大きいといった御指摘や、同じ学年を担当する教師が一体となって道徳科の授業を進める、学級の枠を超えて指導する取組が増えてきていると。また、若手が増えてきている中にあって不安が大きい中での校内体制や研修体制の確立が重要である、そうした御指摘をいただいているところでございます。
こうしたことも踏まえてですけれども、24ページでございます。教師が交代で学年を回って授業を行う方策、「チームで行う道徳授業」と括弧書きで書かせていただいておりますけれども、こちらに係る現状ということで、現行の指導要領上、中学校において指導を「学級担任が行うことを原則」とした上で、解説においては、「教師が交代で学年の全学級を回って道徳の授業を行うといった取組も効果的」とした上で、何度も同じ教材で授業を行うことにより指導力の向上につながるといったことが指摘をされているところであります。
また、小学校を含めた取組の事例の中では、教師の力量形成や指導の質の向上とともに、教師の負担の軽減にもつながる側面があるといったことや、特に小学校において担任以外の学級を互いに指導することで、学年全体で児童理解を深めようとする姿勢につながるといったメリットについての指摘がある一方で、児童生徒の道徳性に係る成長を適切に見取ることが難しい、また特に低学年において、同じ教師が信頼関係のもとで指導をすることで安心して子供たちが発言できる、そうした側面もあるといったデメリットや留意点についての指摘もあるところでございます。
こうしたことを踏まえまして検討の方向性でございますけれども、「考え、議論する道徳」の実装に向け、教師の指導力の向上が課題となっている中で、「じっくりと深く学ぶ」という道徳科の学びを一層推進していく場合、深める教材を用いた複数時間での授業の在り方、こうしたことを含め、同じ教材で繰り返し授業を行っていくことで、経験の浅い教師も含めた指導力及び授業の質の向上が期待できるということ。米印で書かせていただいておりますけれども、チームで行う道徳授業を導入する場合にも、教師の負担軽減のみが目的化することなく、あくまで「考え、議論する道徳」のよりよい実装のために行うことが必要であること。この観点から例えば、小学校の専科教員や、中学校では学年に所属する担任外の教員等を含めたチームで行う道徳授業を構想することで、例えばT2運用を行う等の工夫も考えられることを記載させていただいております。
また、道徳科では授業同士の前提関係が各教科に比して弱く、教師が交代で指導する場合にも学習が成立しやすいといった側面があるほか、複数の教師の授業に触れることが、先ほど委員の先生からの御意見にもございましたけれども、道徳科の学びにおいては視点の広がりにつながる可能性もあること。こうしたことを踏まえますと、児童生徒の発達段階や担任の役割、教師間の連携体制など、導入する場合の留意点を明らかにした上で、学校の実態に応じて教師が交代で学年を回って授業を行う方策の導入が可能である旨を明確化してはどうか、という御提案でございます。
補足イメージでございます。こちらの図の部分のみご説明をさせていただきますけれども、小学校のイメージであれば、例えば1組の先生が、ある週は1組、次の週は2組、さらに次の週は3組といった形で指導をする。
また、中学校のイメージであれば、同様に、これは複数コマの場合も同じですけれども、1組で授業をした先生が、次の週は違うクラスというふうに回っていく中で、例えば中学校であれば学校の実態を踏まえ、担任外の、例えば副担任等の先生が加わることによってさらなる指導の充実が考えられる。例えば学年の教員全員で分担したり、T2を設けて若手がベテラン教員から学ぶといった運用も可能であることや、小学校においても、教科担任等の教員を含めることによる指導の充実といったことも考えられるかなというふうに思っております。
いずれにせよ、負担軽減のみを目的とすることなく、あくまでも「考え、議論する道徳」のよりよい実装のために行われる必要があるということに留意が必要であると考えておるところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。御議論のほどよろしくお願いいたします。
【頼住主査】 それでは委員の皆様から事務局資料について御発言をいただきたいと思いますので、御発言の準備が整い次第、挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。
なお、発言の際に事務局から説明があった資料に触れる場合は、資料の何ページかを明示いただければ、事務局による画面投影も可能となりますので、御協力をどうぞよろしくお願いいたします。
はい、岡﨑先生、お願いいたします。
【岡﨑委員】 ご説明ありがとうございました。今回はいよいよ指導の充実についてということで、「考え、議論する道徳」の実装に向けて議論を煮詰めていくことになると思っています。では私の考えを簡単に述べさせていただきます。
まず、今回目玉になるのが「1つの教材を複数の時間で」というところになると思いますが、まず13ページの具体的論点のところにあるように、1つの教材で2時間を扱うということの意図として、1つの授業であると心情理解や登場人物の整理で時間がかかってしまうというようなところがあるということでした。これについて、個人的にはですが、教師が道徳科の授業で何を養うのかや、何のために議論をするのかということについての理解が乏しいことが一番の課題ではないかなと思っています。
例えば、その話合いのための導入の在り方とか、発問の仕方などがうまくいかなくて、問題解決的な学びにならなかったり、児童生徒の自己関与が不十分になってしまったりということが起きているのではないかというのが私の個人的な考えです。
登場人物の整理に時間がかかることについては、教材の工夫も必要ではないかとは思います。道徳の教材は長文になりすぎないようにすることが大事ではないかなと考えているところです。登場人物の数も抑えて、子供たちが整理しやすいようにする工夫が必要ではないかというところです。
ただ、自分も多少教材づくりに関わったことがありますので、何を削って何を残すかというのは非常に多面的な検討が必要であり、やはり名作と呼ばれるものは非常に長いものもありますので、それも難しいところもあるのかなとは思っています。
一方で、1教材を複数コマで扱うということについては、多少の懸念はありながらも、私は前向きに捉えたいと思っています。先ほど御紹介もありましたけれども、今までも先進的な取組の中で、1つの教材を複数コマの学習で扱う授業を見たことがありますが、やはり児童生徒がのびのびと話し合っていたなと感じています。
道徳科の授業の中で、子供たちが自己との関わりでねらいとする道徳的価値について思いがあふれ出してくると、確かに自分でもやっていて1時間で収まらないことが多々あったと思っています。結局最後まで行き着かず、子供たちも話合いが続いていたところでチャイムが鳴ってしまうので、「もっと話し合いたかった」と言われたことも何度もあります。
教師側も、もっと話合いで繋げていけたら多様な考え方が出たのではないかとか、もっと自己の生き方について関わりを持って探究できたのではないかということも、多分によくあるのではないかなと思います。
よって今回の「考え、議論する道徳」の実装ということに向けてとなりますと、この1教材複数の時間ということは、1つの方策として非常に効果的なものではないかと私は思っています。先生たちの研究もこうやって広がっていくのではないかという期待があります。
ただ懸念点は2つあります。1つはこの1教材複数の時間という考え方が指導方法の1つであるということを忘れてはいけないと思っています。やはり道徳科で何を養うのか、何を議論させるのかということが一番最初に考えられなくてはいけない。素晴らしい方法ではあると思いますが、指導方法の1つということを忘れてはいけない。「こうあるべき」となってしまうと指導の形骸化に結びつくのではないかという懸念は持っております。
2つ目は、これは先ほど12ページの留意点にも書いてありましたが、私が懸念しているのは、教員が非常に多忙な中で教材研究を行ったり、その上で授業実践を行ったりしているので、この1教材複数時間が行き当たりばったりにならないといいなと考えております。
安易に「1時間で終わらなかったから、もう1時間やろう」というようにはなってほしくないと思います。やはり1年間できちんと、35時間で内容項目を子供たちが学習できるような方法を作っていかなければいけない。
そのために考えるのは、我々校長の方針がさらに重要になってくるかと。校長の学校経営方針を基に道徳教育の方針をしっかり立てて、それを教職員に十分理解してもらった上で、指導計画を作っていくこと、これが大事になってくるのではないかなと私は思っています。
また、先ほどチームで行う道徳の話も出ましたが、24ページです。これについても少しお話をさせていただきますと、私も道徳をこれまでやってきて、「道徳科は担任がやるもんだ」と思ってやってきましたが、最近校長になって、担任を持ってないクラスで時々道徳をやらせていただくと非常に楽しいんです。
というのは、教師も子供に対して多面的に見られると感じました。複数の教師が学級を交互に持つということで、教師の多面的な見方が子供たちに対してできるのではないかと思います。または先ほどからお話があったように、教師が腕を磨くという上でもこれは必要であると思っています。
ただ、これまで担任が行うことを原則としてきたのはなぜかということを忘れてはいけないと思っています。特に小学校は、担任が日頃の道徳教育を担うことが非常に多いので、その要である道徳科であること、または担任が一番学級の児童を理解してるというところで道徳科を行っているということ、この担任が行う良さというものも忘れてはいけない。
こういったことが生かされつつも、いわゆる「チームで行う道徳」を実施していかなければいけないのではないかなと思っています。よって、学年内でしっかり、道徳教育をどう進めていくのかを話し合い、さらに道徳性に係る児童の成長の様子をよく情報共有していくことが大切ではないかと思っています。
1つの指導案で複数の学級の授業をおこなっているのを見ることがありますが、それは違うのではないかなと。子供の実態に合わせた授業の在り方が必要なので、持ち回って道徳する際もやはり学級の実態、児童の実態に応じて方法は少しずつ変えていくことを理解して、このチームで行う道徳を行う必要があると思っております。長くなりましたが以上でございます。
【頼住主査】 佐藤先生、手が上がってらっしゃいますのでよろしくお願いいたします。
【佐藤委員】 信州大学の佐藤でございます。私からは子供の主体性をどう引き出すかという視点から、3点申し上げたいと思います。
1点目、2コマ連続、複数時間の取扱いの中身と教材開発についてです。4分の3が教材の読み上げとか心情理解に消えてしまう現状の45分の限界を考えれば、2コマ扱いの導入に関しては賛成です。
しかし、単に授業を倍にするだけでは意味がないと捉えておりまして、重要なのは2コマ目に多面的な見方や自我関与をどう起こすかというような、深い学びの実装の部分だと捉えております。
1コマ目の教材の理解・内容については、2コマ目では異なる立場から問い直したりとか、実生活に引き寄せたりするような、そんな仕掛けが不可欠と考えております。ここは学校の努力だけではなくて、教科書のほうでどのように見せていくかも腕の見せどころなのかなと捉えておりまして、2コマ目こそ深い学びに誘えるような、そんな教材開発を強く期待したいです。
2点目、内容項目の「節度、節制」の捉え直しについてです。小学校の低学年の内容項目の「節度、節制」には「わがままをしない」や「規則正しい生活をすること」という文言がありますが、この「わがままをしないで」というような表現は、時として子供の主体性を一方的に否定するかのような、抑制するようなニュアンスに捉えられかねないと捉えております。
これからの道徳教育の議論の中では、単に自己抑制するのではなく、お互いの主体性を尊重し合うような視点が不可欠と考えております。例えば、1年生の教材の「かぼちゃのつる」ですと、わがままに伸びたつるがトラックにひかれてしまうという結末の中で、節度の重要性を説く話ですが、多様性の包摂が重視される時代においては、こういった物語が、自分が伸びたい方向に進む意欲を萎縮させないようなことが必要だと捉えています。
ですから、単にわがままを抑え込むのではなくて、お互いの伸びたい方向を尊重する、誰もが気持ちよく過ごせるということをいかに両立して、双方向の視点で転換すべきかなと考えております。従いまして、内容項目の文言についても、「お互いの気持ちを大切にしながら、他者との関係性の中で自己を律する」というような、そんな表現の修正も考えられると考えております。
どこまでが主体性で、どこからがわがままなのかっていうような、これは一人一人の価値観にもよってしまうわけですけれども、一方的に決めるではなくて、子供たちが対話を通してそのバランスを自ら探究できるような指導性の在り方を目指す必要性もあると捉えています。
3点目、指導体制としてのチームで行う道徳授業についてです。これは単なる教員の負担軽減策でなくて、教師の指導力の向上やOJTと捉えていくと価値として注目できると考えております。複数のクラスで同じ教材を扱うことで、授業の質を磨くことも可能かなと考えております。
ただし、その際に重要になることは、担任外の先生が見た子供の姿を、担任がいかに把握して評価につなげるか、子供との関係性につなげるかだと捉えておりまして、こういった場面でも、デジタル学習基盤によって指導の記録の共有も取り組んでいくことが大事だと考えております。
負担が減るからやるというような考えだけではなくて、子供を多面的・多角的に見守って深い学びを実現するために学年チームで取り組むというような、そんな目的意識を明確に打ち出していくとことが大事だと捉えています。以上、よろしくお願いいたします。
【頼住主査】 それでは鈴木先生、よろしくお願いいたします。
【鈴木委員】 私から3点ほどお話しさせていただきます。
最初は、11ページにあります深い学びのイメージについてです。これまでも道徳授業の深い学びのイメージというのは言われていましたが、なかなかみんなで共有できていなかったように思います。ここで深い学びというのが、道徳科の目標である多面化・多角化に言葉を足して、多面的になる、多角化するという方向性として見えやすくなり、それから自我関与、自分との関わりで考えることがこういうふうに見えやすく図で示されたので、授業の検討会などで今日の授業はどうであったかというのを見るときの基準がみんなで共有できるようになると思います。これが授業の良さ、授業の質的向上につながっていくと思います。図示したことで、深い学びのイメージが共有できるのではないかと思いまして、これはぜひ広めていけたらと思っています。
次に2点目なんですけども、今まで議論になっていたところですが、1教材を複数コマで取り扱うということの効果についてです。16ページ以降に、授業も取り上げながら図が示されていると思います。
今までも、道徳の時間、もう少し深めたいと思っても時間が来るとかですね、特に小学校などで書くのが遅い子がいると、書き切らないうちに時間が来てしまって、先生としてももう少ししっかり書かせたいと思っても次に進まなければいけないというようなところがありました。それがなくなって、今日の時間はしっかり書かせたいとか、しっかり議論させたいということができるようになるということです。
それに加えて、私がこのやり方がよいと思うのは、1コマ目と2コマ目の間に1週間あるということです。2コマ目までの間に、1週間取れるということです。そうすると、その間に、特別活動もありますし、総合的な学習の時間や教科の時間、あるいは行事もあると思うんですね。
そうすると子供たちは、この例を見て考えれば、日野原さんの生き方で「生命って大事だな、日野原さんは次世代に繋げるっていうふうな思いを持ってるんだな」というのを習った後、日常のなにげない自分の経験の中で、あの日野原さんの言葉を思い出したり、家族との会話の中で「これは繋げることを言ってるんだな、家族も日野原さんの思いと同じことを言ってるんだな」と思ったり、地域の方もそうなんだなというような経験をして、次の時間に話合いをするときには、そういう自分の実体験に基づいた言葉が出ると思うんですね。
先ほどの授業、5分間だけビデオ録画を見ましても、1コマ目はやはり授業ですが、2コマ目は自分の言葉を使って、自分が経験したことを生き生きと話してるんですね。こういうふうに自分の経験を元にしながら話すということが自我関与に繋がっていきますので、このように1コマと2コマの間に子供たちがたくさんの普通の経験をする、日常的な経験をしていることを生かすことで、道徳の実装化に繋がっていくんじゃないかと思いまして、この試みは大変よいというふうに思っています。
それから3点目ですけども、チームで行う道徳授業についてです。学級の担任が道徳の授業を担当するというのが一般的だということにはもちろん意味があって、小学校では担任が授業しますので子供の様子がよく見えるということもあります。中学校の場合は、道徳の目標と学級目標を重ねることによって、担任が学級づくりに生かしていけるというようなところもあると思います。
ただ、今回チームで行う道徳授業を提案することで、他の学級、自分の担任ではない学級の授業を行うということで、とてもよい点があると思っています。2つの点でよい点があると思っているのですが、1つ目は、これは実際にそういう経験をした先生を見たわけですけども、自分のクラスの児童生徒のために、自分のクラスの児童生徒がどういう発言をするかといったことを思い浮かべながら学習指導案を作りますけども、その学習指導案と同じ教材を使って違うクラスの授業をするとうまくいかないことがあるんですね。
うまくいかないということは、やはり子供の見る目が大事と言いますか、子供がどのように考えるかということを思い浮かべながら、道徳授業を作るものなんだということに先生が気付くというところがあると思います。これは道徳の授業の指導力にも重なると思います。学習指導案があって授業をすればいいわけじゃなくて、子供の反応、子供の経験、自分が伝えたいことは何かということを重ね合わせながら授業を作っていかなくてはいけないんだっていうことに先生自身気が付いて、先生の授業の力が向上していくと思います。
授業がうまく進むときもあると思います。うまくいかなくて立ち止まったりすることもあります。その中で「授業って何なんだろう」「子供のため、子供が分かりやすい道徳授業、子供の力になる道徳授業」、今で言う実装になりますけども、「そのためにはこの教材研究、子供の理解、こういうものが必要なんだ」ということがよく分かって、教師の指導力の向上に繋がるように思います。
2つ目というのは、教師の集団としての指導力と言いますか、チームとしての力がつくということです。担任の先生が見るとしても、全てを見ることはなかなかできないところに複数の先生の目が入るということで、担任の先生も分からなかったような、気付かなかったようなクラスの子供たちの特徴や学級集団の課題と言いますか、そういったものにも、複数の先生方の目を通して気が付くことがあるのではないかと思います。
子供の実態ということを考えますと、自分のクラスだけを見るわけではありませんので、学年団の全部の子供たちが、自分が教える対象となります。そうなると教師同士で情報を共有し、学級集団を学年集団として見て育てていこうというふうな目も育っていくと思います。
私が経験したところでは、中学校の先生が特に職員室での会話が増えるように思います。「あの教材を使ってみたらどうだった」「こうやってみたら良かったよ」「じゃあこの貼り物してみたらどう」っていうふうな話題がすごく盛り上がるんですね。そういう意味で先生方の愛情とか熱意とか、教師が授業を良くしていこうというような思いが共有できて、先生方の指導力、それから学年団としての団結力みたいなものも育っていくのではないかと思います。
また、道徳は教科化するときにいじめの問題が大きく取り上げられてたところなんですけれども、こういうチームとして子供を見るという道徳授業をすることで、複数の先生の目が入りますので、いじめの早期発見とか予防にも繋がっていくのではないかと期待できるというふうに思っています。以上です。
【頼住主査】 それでは中島先生、よろしくお願いいたします。
【中島委員】 お世話になります。私も皆さんの御意見を聞いてるんですけども、いくつか本当に全くそのとおりだなと思うことが多くて、順番に行きたいと思います。
まず、2ページの評価の在り方についてですが、現行の維持で私も賛成です。根拠となるのが、「考え、議論する」の「議論」という言葉に、私は当初からこだわりがあった点です。これは論議とか討議ではなく、みんなのいろんなものを多角的に受け入れるために、全てを受け入れるような取組をしようということでしたし、道徳の時間は子供たちの内面的資質を直視していたという点で、現行の維持に賛成です。
少しずれますが、28ページを出していただいてよろしいでしょうか。指導要録の中に文章で書く欄があり、その横に行動の記録があります。先生方がどんなことを考えてここに記録するのかなと思います。私は一つの活用として、子供たちにも自分で書かせてみたりしていました。
自分がこうありたいと思っているのか、例えば自分自身が工夫をもって生きていきたいとか、基本的な生活習慣を身に付けていきたいと思っているのかということも、内面的な要素も見て、そして、例えばパーセントで少しいつもよりできるようになったなど、そんな自己評価を子供たちができるようにする。さらに、道徳の時間にどんな取組をして、実際の学校の教育活動の場面で子供たちがこれを発揮してきたかというのを、子供たちも伝える場面がぜひあってほしいと思っています。
ですから、評価の在り方は今と同じようにして、先ほどから出ている自我関与という点で言えば、子供たち自身も自分の内面的な資質について考えてみることも取り入れながら進めていったらどうかな、と思っております。
続いて、6ページをお願いします。内容の検討の方向性で、家族についての記述に「等」を加えることが入っており、とてもありがたいと思いました。御存じのとおり熊本県では「こうのとりのゆりかご」をはじめとして、今の子供たちには様々な家族の構成が存在しています。ですから、家族愛を子供たちと一緒に考えるときも、その様々な家族の構成をあるがままに受け入れて、何を大切にしたいのか、自分が例えば家族に対して何ができるのかを考えさせることが大事だろうと思います。こういった変更は、今の現実の多様性に対応していくことが大事だと思っています。
続いて、学びの在り方についてです。12ページをお願いします。ここで指摘があった、私たちのほうから指摘してきた「オープンエンドで終わる」ということです。これは13ページを出していただいてもよろしいですか。ここで具体的論点案となっている複数時間の取扱いにとても関係していると思います。
1時間の中である程度きっちり終わってしまう形をオープンエンドとは言わないと思います。大切なのは、授業が終わった後もそのことについて、仮の納得感は得たとしても次の段階の納得感を子供たちが探そうとしていたり、「自分はこんなふうに考えていたんだけど、もう少しやりたい」と子供たち自身がもう少し深めたいと思ったり、「これをもう一つ別の側面から考えてみよう」と思ったりすることです。これが例示されているパターン1とパターン2ではないかと解釈しました。
14ページ以降の補足イメージは一例として認識してもらうことが大切です。子供たちが主体となって考え、さらにこの内容項目を深めたいと感じているならパターン1でいけるでしょうし、この問題を別の側面から考えてみたいと子供たちが思うような仕掛けが必要になると思います。
これとは別に、道徳の時間だけではなく、様々な特別活動との関連を図っていくことが現実にはあると思います。例えば命を大切にする教育、いじめ・自死防止の取組などは、あらゆる教育活動と連携強化を図らなければいけません。ですから、道徳の時間の前に全校集会があったり、命についてのアンケート調査の結果が得られていたり、そういったものとの関連性をもう一回明確にしていく。これはかつてから言われているとおり、道徳教育の全体計画、関連計画、年間計画の見直し等もしっかり意識付けして、先生方と一緒に取り組むことが、子供たちにとってさらに効果を上げていくのではないかと思います。
それから、3点目ですが、25ページをお願いします。チームで行う道徳授業は、積極的に取り入れていただきたいと思っている一方、心配している点もあります。若い先生方は視点1、視点2は得意だけれども、視点4となると苦手意識を持つこともある。教師自身もバランスよく内容項目を扱う必要があります。
終末の在り方として、若い先生方に提案しているのは、終末にもし教師が説話をするなら、自分が失敗したことや後悔したことを子供たちに話してみたらどうか、ということです。すると、子供たちも「先生たちがこういう人なんだな」「先生も失敗した、みんなにはしてほしくないと思って一生懸命この授業をしていたんだな」ということが伝わります。現実に年間35時間をきちんとやっている先生の、道徳の授業の効果は、子供たちとの信頼関係づくりという側面もあります。
ですから、チームでやっていくとしても、担任の先生がしっかり関連を持っていく、作っていくことが大事です。それと同時に、担任の先生とうまくいかないときに他の先生と出会って、いざという時にはいろんな先生にも相談ができる、という環境づくりも重要です。私どものところでは、教育相談は担任以外の先生ともできますよ、ということで子供たちにも保護者にも伝えて取り組んでいます。そういったことも、道徳の授業だけではなく他の教育活動も通した中で、子供たちの育ちを確保できるのではないかと思います。
この例にはなかったのですが、小学校で、例えば単学級の学校があります。本校にも1校あるのですが、そこでは1年から3年、4年から6年の先生方がチームを組んで授業に行く取組も試しています。子供たちからの評価もとても高いです。いろんな先生の話を聞ける、学校の中で出会った時に名前と顔が分かって挨拶ができ、言葉をかけられる人がいることは、学校の教育活動の活性化にも繋がると思います。
もう一つ、言い忘れましたが、複数時間で取り扱うときに、同一学年ではなく、同じ教材を1年後、2年後に取り扱ってみるのも効果的だと思います。時間は子供たちの中にも必要です。その時どんなに詰めて考えさせようとしても、その時は分からない。しかし、しばらく時間を置いて考えたり、1年経って考えた時に、「もう一回自分の中にこんなものもあった」という自己発見が起きたり、その時は耳に入らなかった他者の考え方が入ってきたりもします。そういった多様性も認めるような表現ができたらと思います。以上です。
【頼住主査】 古屋先生、よろしくお願いいたします。
【古屋委員】 古屋でございます。よろしくお願いいたします。私も資料に沿ってお話しさせていただきます。
まず、道徳科の評価の在り方についてですが、教科化となって方向性や内容が示され、一定程度充実が図られてきたと認識しております。ただ、定着が一層図られるには、まだ時間がかかるとも思っています。さらなる研究が必要です。
また、今回、道徳の目標を維持していく方向で議論を進めているかと思いますので、目標と評価は一体的なものとして考えなくてはいけないと思います。そういった意味で、道徳科の評価については、御提案のとおり現行の考え方を維持することが妥当ではないかと思っています。
続いて6ページの内容項目についてです。まず四つの視点、そして内容項目の枠組み全体について維持することは賛成です。「特別の教科 道徳」となって、学校現場においてやっとこの構成が定着してきたところであり、その定着に基づいて授業の改善・充実に繋げていく必要があると思います。
ただ、内容項目の文言については、「家族愛、家庭生活の充実」、「友情、信頼」の提案のように、現代の情勢や児童生徒の置かれている状況を踏まえ、必要に応じて見直しておくことが必要だと思います。「家族愛、家庭生活の充実」について、児童自立支援施設が併設されている学校の取組などを伺いますと、様々な複雑な家庭環境の中で教科書が使えず、自作教材を作成して授業を行っている話も伺っております。こうした点からも、限定的ではない表記にすることは必要不可欠だと思っています。
「友情、信頼」についても、子供たちは様々な友達観・友情観を持っていますので、子供たちの受け止めへの配慮も一定程度必要だと思います。
また、「友情、信頼」には、小学校5・6年生及び中学生で「異性についての理解」という文言がありますが、多様な性への理解が求められる時代において、異性に限定することがどうなのかは考える必要があるのではないかと思います。
その他、「国際理解、国際親善」の「他国」という表現についても、国だけではなく地域も含めて「他の国や地域」とするなど、現代の状況や児童生徒の受け止め方を踏まえ、もう少し詳細に見ていく必要があると思います。
続いて、複数時間の取扱いについてです。まず、10~11ページの道徳科の深い学びについて、これまでの議論を整理していただき、大変分かりやすくイメージ図をお示しいただいたと思っております。道徳を専門に研究している現場の先生には確認の契機になり、一般の教員には、この考えに基づいて自信を持って授業を構成していける根拠にもなると思います。ぜひ広げていただきたいです。
また、11ページのイメージ図は「深い理解、深い考え」までで止まっていますが、その先に、適切な行為を主体的に選択して実践できるような資質・能力への繋がりもあるのではないかと思います。道徳の目的に関わる点ですので、その点を記述するかどうかも考えていく必要があると思います。
複数時間扱いの推進は、じっくり深く学ぶ道徳科の充実に繋がり、「考え、議論する道徳」の実装に繋がると思います。ただ、全ての授業を複数時間扱いにするのは無理であり、これまでの1内容項目を1単位時間で指導する授業は基本に置く必要があります。発達段階を踏まえて充実させていくことが必要です。
実施に当たっては、校長の経営方針に基づき、各学級・学年の実態、学校の実態や特色を生かして、全体計画、年間指導計画に基づいて実施することが重要です。何でもかんでも複数時間扱いというわけにはいきません。
ただ、複数時間扱いの推進は、教科化の際に示された問題解決的な学習や体験的な学習を一層充実させる切り札になると期待しております。具体的な授業も提案いただきありがとうございます。様々なバリエーションが広がることを期待しています。
また、複数時間の扱いが連続授業ではなく、1週間後の授業を想定している点も、生活を通して経験を通して考えを深める契機になると思います。
最後に指導体制の工夫の在り方についてです。今回、チームで行う道徳授業が示され、素晴らしいと思いましたし、ぜひ導入していきたいと思っています。小学校でも教科担任制や副担任制が広まりつつありますので、特に小学校5・6年生では十分に導入できると思います。ただ、発達段階を十分に配慮した上で、低学年では安心感への配慮も必要だと思いました。
メリットとしては、学年全体で児童生徒理解が深まるだけではなく、児童生徒が教師理解を深める相乗効果も期待できます。教員同士の学び合い・高め合いは若手教員の育成にも寄与すると思いますし、授業準備が絞られることは、授業のブラッシュアップにも繋がると思います。
デメリットはあまりないように思いますが、担任が児童生徒の授業の様子を把握する機会が減る点は、ICTの活用を進めることが重要です。また、時間割の調整には手がかかると思います。
改訂では「みんなで育む」という文言が示されておりますので、チームで行う道徳授業は重視していく必要があると思います。チームですので、T2なども導入して充実を図る方策も各学校で考えられると思います。私からは以上です。
【頼住主査】 それでは、渡邊範道先生、よろしくお願いいたします。
【渡邊範道委員】 上野高校の渡邊でございます。よろしくお願いします。
本日ご説明いただいた内容は、高校の教員である私からしても、何のために何をどうやっていくのか、どこが今までと違うのかが非常に分かりやすく、よく理解できました。このまま「考え、議論する道徳」の実装に向けて具体的な取組が進んでいけばと思います。
その上で気付いた点を大きく3点申し上げます。
1点目は、14~15ページの深める教材です。深める教材がキーポイントになることは明らかだと思います。動画やスライドの中で優れた取組が多々あり勉強になりましたが、深める教材をどういう視点でどう作成・選択するのか、それに向けてどういった議論を促すポイントになるのかを示していく必要があると感じました。教科書会社が素晴らしいものを示すことは期待できますが、2コマ目冒頭で考え、議論を促す時のポイントについて、留意事項を分かりやすく簡潔に示していく必要があると思います。
2点目は、予定調和的に結論や答えを出す授業ではなく、オープンエンドで最後に問いが残る形で終わるという点です。これはまさにそのとおりだと思います。
しかし、オープンエンド的なまとめのポイントについて、14~15ページの図では、まとめの重要さがやや薄い印象を受けました。議論の結果まとまらなかった場合も含め、オープンエンドであっても次に繋がるまとめになるような示し方が必要だと思います。
補足として、内容項目についても、たくさん扱った上でどちらも深まらないことがないように、また「負担軽減のみが目的化することなく」という点も触れておく必要があると思いました。
最後に3点目、チームで行う道徳授業についてです。「チームで行う道徳授業」というネーミングは非常に良いと思います。ただ、25ページの図などを見ると、ある程度クラス数の多い学校を想定したイメージに見えますが、1クラスしかない小規模校も地方にはたくさんあります。小規模校を想定したイメージも必要だと思います。また、小学校のデメリットのところで懸念される課題も、チームの中での協議が非常に重要であることを、もう少し強調してもよいと感じました。さらに、2コマの授業とチームで行う授業がセットになった時の現実性、内容項目の取扱いも踏まえて、学校全体がチームになり、校長の計画、道徳の年間指導計画も含めた学校全体の計画が重要だということも、強調されるべきだと思いました。以上です。
【頼住主査】 それでは、渡邉真魚先生、よろしくお願いいたします。
【渡邉真魚委員】 渡邉でございます。よろしくお願いいたします。
本日の検討項目で、道徳教育及び道徳科の目標を具現化するために現段階で考えていることをお伝えします。評価と内容項目については、先に御発言された委員の皆様と同意見ですので、学びの在り方から2点申し上げます。
まず、複数時間をどう考えるかについてです。14ページで、パターン1に加えパターン2があり得ることが示され、両方がバランスよく含まれた教材になるよう検討することが、イメージ図により理解できました。2時間目の冒頭の深める教材がポイントになると思います。深める教材を活用し授業を展開することは、「考え、議論する」道徳だけでなく、「考え続ける」子供の育成に繋がるのではないかと考えています。
一方で、2時間目がかえって間延びするのではないか、集中力が途切れるのではないかと心配する授業者もいるのではないかと推察します。主となる教材と深める教材の関連を議論し、よりじっくりと学ぶ、学びの在り方を考えることで、読み物資料の理解にとどまる授業から、道徳的諸価値の理解と自己の生き方についての考えが繋がる授業が期待できると考えます。
また、鈴木委員の「1週間空けることが考える時間に繋がる」「体験を共有する時間を生む」という点に共感しました。私自身がこれまで参観した授業でも、前の時間の学びやこれまでの学びの足跡を教室内に掲示し、道徳的な思考が途切れないように工夫している学級や、授業中に既習教材の名前を挙げて発言する子供たちに出会うことがあります。こうした「繋げて考える時間」を実効的に確保することで、道徳的な思考の継続が期待できると思います。
さらに、深める教材に資するものは、既に多くの教科書に入っているように思います。教材の特徴を生かし、読み物教材の後の「学習の手引き」等のページを利用して、様々に立ち止まって考えさせる工夫がなされているのではないかと思います。
例えば、2時間目の導入にふさわしい短い教材として、写真、詩、場面絵、動画、歌詞、先人の言葉などを活用しながら実現可能なのではないかと考えます。いじめ問題など、難しいと言われる現代的な課題を取り上げる際にも、複数時間で授業づくりを構築することは、授業者と子供たちが課題に向き合い考える時間の確保に繋がるのではないかと思います。
懸念として、パターン1、パターン2という表現が型と捉えられないか心配しましたが、14ページの注記に「型を示すものではなく、具体的な学習過程は多様であることにも留意」とありましたので、例示として認識した次第です。バリエーションとして捉えれば、多様な授業展開に資する期待も生まれると思います。
次に、指導体制の工夫の在り方についてです。「チームで行う道徳授業」の留意点を明らかにした上で、学級の実態に応じて、校長のビジョン等も踏まえ、教師が交代で学年を回って学年団として授業を行う可能性を議論していくことは意義があると考えます。
学校教育全体を通じて道徳教育には全ての教師が関わるわけで、その要となる道徳科の授業にも全ての教師が参画する多様な機会があることは必要だと考えます。
私自身、今年度だけでも3校の「チームで行う道徳授業」の実践を拝見しましたが、いずれの学校も自校の教育資源を活用し、意義ある授業展開が模索されていました。年間指導計画に管理職も入れて運用している学校は、全員参加の「チーム学校型道徳授業」とも言える取組でしたし、英語科の先生が「国際理解、国際貢献」を、社会科の先生が「遵法精神、公徳心」を扱うといった「教材専科型」もありました。「思いやり、感謝」の内容項目にこだわって授業をしたいという先生がいる「価値専科型」、学級の特徴に合わせて授業スタイルを改善していく「学級支援型」など、学校独自の取組で教育資源を活用し、道徳教育を推進していることを実感しました。
ただし、こうした実践も年間全てで行うわけではなく、重点月間などを設定して取り組むなど、35時間に変化を付けながら意図的に実施することで、授業者が学習の視点を学ぶ機会、学級や発達段階の違いを知る機会、同僚の授業を見て学ぶ授業力向上に資する機会の確保に繋がり、学校全体で道徳教育を推進する可能性を実感しました。私からは以上です。
【頼住主査】 それでは、渡辺弥生先生、よろしくお願いいたします。
【渡辺弥生委員】 渡辺です。よろしくお願いいたします。細かい形式的なところを3つと、内容について考えを述べます。
まず4ページの形式面ですが、「観点別に取り扱うことには馴染まない」という表現は内容的には賛成です。ただ、せっかくの大きなイメージの中に否定形を含むよりは、肯定的な表現のほうがイメージとしてよいのではないかと思いました。例えば「統合的な人間形成のプロセスを包括的に捉える」など、「馴染まない」だけでなく「だからどうする」を示すポジティブな文章が入るとよいのではないかと思います。
次に6ページの「友情、信頼」の「異性についての理解」についてです。思春期以降の「友情、信頼」という観点で、異性への関心など二次成長を踏まえ触れていくことも大事だと思いますが、近年は性の多様性に関する認識も広がっています。異性だけではなく、障害の有無や文化的背景など多様な特性を持つ人々が共に学ぶ環境が重視されていることを考えると、「異性についての理解」だけを取り上げるのは限定的に受け止められる可能性があります。「多様性についての理解」など、表現への修正を検討することも一案だと思いました。
11ページの深い学びのイメージについてです。反対意見があるわけではありませんが、平易な表現がもっと入ったほうがよいのではないかと思います。例えば目標に「心情」という言葉がありますが、一般的には感情や気持ちを使うことが多い。心情は、単純な怒りや悲しみではなく、価値に向けられた感情を指しているのではないかと思いますので、そうであれば注釈などがあってもよいと思います。
また、せっかく「実装」という言葉が出てきたので、態度だけでなく、もう少し実践的な行動に関わる文言が入るとよいという希望があります。さらに、左側が「多面的・多角的に考える」で、右側が「多面化・多角化」となっており、用語の使い分けが分かりにくいので、文言の検討も必要だと思います。
内容面では、15ページの2時間構成の必要性について2点あります。1点目は、価値観同士が葛藤する場面が多いということです。例えばいじめでは、いじめは悪いと思っていても仲間に言いにくい、SNSでも自分らしい意見を述べたいが炎上が不安など、自分らしさを伸ばす価値と社会の中での調和が葛藤する。こうした価値と価値の葛藤に気付かせ、どう考え、どう行動して解決していくかを考えるには、2コマあると深まると思います。
2点目は発達段階です。例えば相手の気持ち理解も、低学年では表情や声など表面的な理解が多いが、中学年、高学年になると内面を推し量る理解ができるようになる。公正という価値観も、低学年は均等がよいと考えがちですが、中学年では努力や貢献への配慮、高学年では必要としている人への配慮など、発達に伴う変化のエビデンスがあります。こうした発達段階を踏まえると、2コマあることで柔軟に構成できると思います。
1コマ目で価値の理解や内面の省察まで深め、2時間目で問題解決のワークなどを通して実践へ結び付けることができれば、大きな効果が期待できます。子供たちは日常生活でどう行動すればよいか迷っているので、「こうすべき」と押し付けるのではなく、行動の選択肢まで考えさせる内容が入るとよいと思います。
また、読み物教材にこだわる必要はないと思います。ICTで短めのデジタルコンテンツもありますし、特別支援学校などでは先生方が寸劇で引き込む実践もあります。教材は多様に選択できるようになるとよいと思います。
最後に、図の見え方についてです。実践が点線で区切られている点が気になりました。いじめ防止対策推進法の定義でも「行為」という言葉が使われ、対象となった児童が「心身の苦痛を感じている」ことが捉えられています。闇バイトなどでも、行動して初めて悪いと分かる場合がある。行動にも様々な選択肢があり、その選択肢まで見せて考えることが「考え、議論する」に含まれるとよいと思います。つまり、実践力や行為が薄くなるイメージにならないよう、行動の選択肢まで考えて話し合う意味合いが伝わるとよいと思っています。以上です。
【頼住主査】 それでは、山﨑先生、よろしくお願いいたします。
【山﨑委員】 山﨑です。よろしくお願いいたします。
まず、今回の内容について、「何のためにこれを行っていくのか」という点が丁寧で、心の育成が考えられるものになっていると感じました。この後、これを先生方に幅広く理解して、深めてもらうためにどんな方法が取られていくのか、また、道徳は学校全体に関わる部分が大きいので、校長先生方の方針などとも関わりますので、アプローチの仕方も大切だと思います。
私から3点です。
1点目は10ページ、深い学びの自我関与についてです。読み物教材を扱うと、「あなただったらどうする」という問いに簡単になってしまっている現状が見受けられます。自我関与をどんなふうに捉えていったらよいのか、その方策がもう少し提示されるとよいと思います。
2点目は13ページ、複数コマで扱うことについてです。複数コマにすることだけが目的にならないよう、どこに取り入れるのか効果的か、何を目的に取り入れるのかが大事だと思います。目の前の子供たちのどういう力を育てたいのか、校長の教育方針や子供たちの分析にも関わってきます。オープンエンドでモヤモヤさせ、その間に行事や他教科などいろいろな出来事があることを生かす点が非常に大事だと思います。
ユニットという形で、行事を挟んで道徳や学級活動を複数回行うなど、2か月ぐらいの期間でユニットを組む取組も見てきました。担任だけではなく多くの職員が関わることで、チームで道徳教育ができる一つの方策にもなると思います。
また、生活目標と絡めて、教育活動全般と連動させる取組もありました。12か月の間で5つの生活目標を設定している学校で、4~5月の生活目標は「我慢」でした。一瞬「我慢ってどういうこと」と思うのですが、我慢にもいろんな種類があり、2か月間の学校行事や生活の中で学んでいきます。それに合わせて道徳の教材も我慢に分類されるものを2か月に集める。そうすると、2か月の間で子供たちの我慢に対する考え方が大きく変わる。集中的に学校全体で考えていくことは、多くの職員を巻き込み、子供も一緒に考えていくよい方法だと思いました。
3点目は26ページ、チームで行う道徳授業についてです。行う目的、それをやることによってどういう効果があるのかを明確にすることが必要だと思います。私の地域では「ローテーション道徳」と言うのですが、教員が持ち回って教材研究の負担を軽減するという印象が先行しがちです。そうではなく、この方式を取ることによる明確な狙いを教職員が理解することで、複数の目で子供を見るメリット、教師の指導力向上、同じ教材でも複数教員で協力して考えるといったメリットが生きると思います。その狙いを明確にして取り組むこと、負担減の取組ではないことを今後どう発信し、理解していただくかが大切だと思いました。
【頼住主査】 佐藤委員、お願いいたします。時間の都合がございますので、少しおまとめになって御発言ください。
【佐藤委員】 佐藤です。2回目で申し訳ございません。委員の皆様の複数コマに関するポジティブなコメントや懸念を受け、デジタル学習基盤の観点からコメントいたします。
まず、14ページの補足イメージ1にある「教材の解釈を中心とした展開になってしまい、多面的・多角的に自己の生き方について考えを深めるところまで辿り着かない」という指摘についてです。子供一人一人が何を考え何を感じているかが把握できず、挙手発言ができる子供の考えのみにフォーカスされてしまうことは、これまでもあったと思います。
しかしGIGAスクール以降、デジタル学習基盤を活用し、例えばチャットツールで児童生徒が今思うこと、感じていることをリアルタイムに書き込む実践が見られるようになってきました。リアルタイムで多様な意見に触れて揺さぶられる姿も見てまいりました。これまで見えてこなかった一人一人の思考が可視化され、少数意見も可視化できますので、より豊かに進んでいくのではないかと捉えております。
また、複数コマを取り扱う場合についてです。クラウド上で非同期の議論が緩やかにでもされることが想定されれば、1コマ目から2コマ目が繋がりやすくなると思います。1コマ目と2コマ目の間に、NHK for School等の教材を、見られる子は自宅で見てくるといった使い方もありますし、そのことで2コマ目の深い学びの実装の実現可能性が高まるのではないかと考えています。以上です。
【頼住主査】 それでは、毛内主査代理より御発言をお願いいたします。
【毛内主査代理】 毛内です。委員の皆様の御発言を踏まえてコメントいたします。
まず評価についてです。教科化を経て各学校において実践を重ねる中で、道徳の評価は定着しつつあります。資質・能力を分けず、個人内評価という現行の考え方を維持することが適切であると考えています。
続いて内容項目についてです。委員の皆様からもありましたが、家族愛や「友情、信頼」について、家族の在り方が多様になっていること、学校における友人関係の様々な実態を踏まえて見直しを行うことは、多様性の包摂という点からも妥当だと考えます。本日委員から様々な御意見がありましたので、それらを踏まえながら事務局で検討していただきたいと思います。
続いて複数時間についてです。深い学びの整理で、多面化・多角化、自我関与といった視点がイメージとして示されたことは、とても重要だと考えます。その上で、3点申し上げます。
1点目は、複数時間で授業すること自体が目的になってはならないということです。2コマ実施すれば深まるということではなく、手段が目的化しないように十分注意すべきだと考えます。例えば、例示されている教科書の教材についても、多面化・多角化や自我関与といった視点で見たときに本当に深まるものになっているのかは議論の余地があると思います。特に2コマ目で扱う深める教材をどのようなものとしていくかについては、教科書発行者の創意工夫にも期待したいと思います。
2点目は、複数時間といったときに、2コマだけにこだわる必要はないのではないかということです。学校のカリキュラム・マネジメントの一環として、2コマ目をどうするかはもちろん、場合によっては3コマ目をどうするかも含めて、学校が実態に応じて生き生きと主体性を発揮していく姿に繋げていけるとよいと考えます。
3点目は、複数時間で取り扱う教材の数です。複数時間は「考え、議論する道徳」の実装に向けた重要な一歩になることが期待できますが、全ての教材を複数時間で扱えばよいとは思いません。「発達段階を踏まえつつ」と資料にも書かれていますが、例えば小学校低学年に複数時間が馴染むのかという懸念もあると思います。発達段階を十分に踏まえながら、段階的に複数時間の取扱いを増やしていくような、バランスある導入の在り方も考えていくべきだと思います。
最後に、チームで行う道徳授業についてです。チームで行う道徳授業を明確にしていくことについては賛成です。その上で大切にすべき点は、チームで行う道徳授業が働き方改革のみを目的とするものであってはならないということです。現場では、働き方改革を目的に導入しているケースも見受けられます。その意味で、専科の先生、学年の先生でT2運用を行うことが資料に例示されていることは、とても重要だと思います。
また、このチームで行う道徳授業の取組を通じて、教師同士が道徳について対話し、学び合うことは、指導と評価の一体化、カリキュラム・マネジメントの点からも重要なポイントだと思います。あくまでも「深い学び」のためであり、「考え、議論する道徳の実装」のためであることを、強調していってほしいです。
【頼住主査】 それでは最後に、頼住から発言をさせていただきたいと思います。 先生方から出たことを、もう一回、自分なりにまとめるという形になりますけれども、まず評価につきましては、先生方がおっしゃってくださったように、これはもう個人内評価で評定はしないという方向性が妥当だと思います。道徳の場合にはこうならざるを得ないと思っております。
また、内容項目につきましては、今回出してくださった家庭のところと友情のところは、実態に即した有効な変更であると思っております。異性については、これは色々な問題が関わってくると思いますので、慎重に議論して参りたいと思います。ここのところは今後のひとつのポイントになってくるかなと思いました。
それから、充実の在り方についてですが、これは多くの先生がおっしゃってくださったように、11ページの図というのは本当に分かりやすく、今後の方向性とか今回の改訂の意図というものを説明していると思います。この図については、基本的なイメージとして今後、示していくということが必要かと思います。
複数コマということについても、私自身は、葛藤とか対立というところに、きちんと向き合うということが必要だと常々思っておりましたので、「考え、議論する道徳」ということで複数コマにしていくことによって、オープンエンドであったり、葛藤とか対立であったり、これまであまり議論されておらず、注目されていなかったところを、さらに注目していくことができるのではないかと思っております。
また、指導の工夫の在り方ですけれども、これもチームで行うとか、持ち回りで学年を交代で回るとか、そういうやり方はたいへんに有効ではないかと思いました。ただ、毛内先生をはじめ多くの先生方がご指摘くださったように、これが一人歩きをして、負担軽減ばかりが言われてしまうと、一番やりたかったことができなくなって、非常に薄い道徳の授業になりかねない、そういう懸念もありますので、その辺りは十分、そうならないように、こちらのほうから「そうではないんですよ」ということを発信していく必要があるのではないかなと思いました。
私からは以上になります。
それでは、そろそろ時間のほうも参りましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。最後に次回以降の予定につきまして、事務局よりお願いいたします。
【堀川学校教育官】 事務局でございます。次回は3月18日水曜日、13時からを予定しておりますが、正式には後日連絡をいたします。以上でございます。
【頼住主査】 それでは以上を持ちまして、閉会といたします。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(代表)