教育課程部会 特別活動ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和7年10月20日(月曜日)13時30分~15時30分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 特別活動に関する現状・課題と検討事項について
  2. その他

4.議事録

【堀川学校教育官】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別活動ワーキンググループを開催いたします。
 本日は、大変御多忙の中、御参加をいただき誠にありがとうございます。
 開会に当たり、文部科学省初等中等教育局教育課程課長、武藤久慶より御挨拶を申し上げます。
【武藤教育課程課長】  委員の先生方、こんにちは。教育課程課長の武藤でございます。
 本日、2027年の学習指導要領の改訂に向けまして、特別活動ワーキンググループの第1回の開催ということでございます。委員の先生方、大変御多忙の中、御参加をいただきましたことに、まず心より御礼を申し上げたいと思います。
 既に御説明して申し上げておりますけれども、先月末、改訂に向けた論点整理が中央教育審議会の教育課程企画特別部会でまとまったところでございます。この中では、特別活動に関しましても、子供の主体的な社会参画の文脈でかなり集中的な議論が行われました。また、生成AI時代の主権者として確かな民主主義の担い手を育むということ、それから、共生社会を実現していく上でも特別活動という領域は極めて重要であること、こういったことについても御議論いただいたところでございます。
 まさに、今、特別活動をめぐる状況として、生成AIをはじめ、様々なデジタルの進展が社会に様々な利益をもたらしている一方で分断をもたらしていると、あるいはもたらす可能性があると、こういった御指摘もあるところです。
 また、国内に目を転じると、こども基本法が成立して、子供の社会参画と、それから意見の表明と、こういったものが国内法制で明確に位置付けられた、その後、初めての学習指導要領の改訂ということでありまして、このワーキンググループは極めて重要な役割を担っていただくものと認識しております。
 企画特別部会のまとめを一つの土台といたしまして、その上に新しい特別活動の建物を築き上げていくということで、その柱をどう立ててどのように構造を組み立てていくか、委員の先生方の御知見もいただきながら進めてまいりたいと思います。長丁場となりますが、本日以降、どうぞよろしくお願いいたします。
【堀川学校教育官】  議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告をいたします。資料6の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理につきましては、奈須教育課程部会長に御相談の上、恒吉僚子委員を主査として、京免徹雄委員及び白松賢委員を主査代理として指名し、御承認をいただいておりますので、御報告を申し上げます。
 なお、本ワーキンググループの委員の皆様につきましては、資料8として委員名簿を配付させていただいておりますので、御覧ください。
 それでは、議事に入ります前に、恒吉主査から御挨拶をいただきますようよろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  本特別活動ワーキンググループの主査を務めさせていただきます恒吉でございます。今もお話がありましたように、AIとか、国際化とか、共生の問題とか、変化の多い時代の中で、特別活動の役割というものが問われている中で、いろいろ至らないところもあると思いますけれども、気を引き締めて務めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀川学校教育官】  ありがとうございました。
 それでは、本ワーキンググループの進行は、これより恒吉主査にお願いをいたします。
【恒吉主査】  では、これより議事に入ります。
 本日は、進行資料としてお配りしている流れに基づき議事を進めますので、委員の皆様におかれましては、適宜御参照くださいますようお願いいたします。
 なお、本ワーキンググループの審議などについては、資料6の教育課程部会運営規則第3条に基づき原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱いいたします。
 それでは、事務局より会議に関して注意事項を説明いただきたいと思います。
【堀川学校教育官】  本ワーキンググループはウェブ会議と対面を組み合わせた方式で開催をしております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言を願います。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただきますようよろしくお願い申し上げます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【恒吉主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題1に移ります。特別活動に関わる現状・課題と検討事項について、事務局より御説明をお願いいたします。
【堀川学校教育官】  事務局でございます。
 資料4-1、教育課程企画特別部会 論点整理を御覧ください。先ほど武藤課長からも言及がございましたけれども、9月25日に中央教育審議会教育課程企画特別部会において、論点整理がまとめられております。
 1ページでございます。この資料の位置付けでございますけれども、令和6年12月の文部科学大臣による諮問を受け、13回にわたる結果を暫定的に取りまとめ、今後の企画特別部会におけるさらなる検討の深化、そして、各ワーキング等での検討の前提として整理がされたものでございます。本ワーキンググループにおいても、この論点整理を前提として、その具体化に取り組んでいく形になります。
 特に第7章のうちの(6)「子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善」において、特に特別活動に関連した議論が行われたところでございます。
 5ページを御覧ください。次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方として、丸1、主体的・対話的で深い学びの実装、丸2、多様性の包摂、丸3、実現可能性の確保、この三つの方向性を三位一体で具現化していくということが示されております。
 また、これらを端的に表現したものとして、「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」と位置付けた上で、一番下でございますけれども、「自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」ということをお示ししております。
 6ページでございます。今、申し上げました、自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手の育成、このことに向けて、「『好き』を育み、『得意』を伸ばす」こと、そして、「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる」こと、このことに向けて、各教科等での検討イメージを、総合、各教科等、特別活動、道徳、その他についてお示しをしております。
 とりわけ特別活動に関しましては、児童生徒主体のルール形成や学校生活の改善、行事の創造等の明確化、具体的には、みんなが学びやすいルールや環境の構築を含むものでございます。また、納得解を形成しようとすることの重要性の明文化、具体的には、安易な多数決の回避や少数意見の吟味を含むものでございます。
 また、左側、幼小中高の矢印の部分に、キャリア教育とも関係をいたしまして、「好き・得意をベースとした主体的な進路選択の促進」ということが示されているところでございます。
 資料1を御覧ください。23ページでございます。こちらに企画特別部会の第7章(6)の内容を1枚にまとめさせていただいたものをお示しさせていただいております。「子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善」ということで、民主的かつ公正な社会の基盤としての機能を学校が果たしていく上で、子供の社会参画や意見表明の一層の具現化が求められる中、学級や学校という身近な社会の形成に当事者として参画し、対話や協働を通じて改善をすることにより、主体的・実践的に社会参画する力を育むことができるよう、特別活動を中核として見直しを図ることが重要である。
 また、これら以下に示す内容につきましては、全く新しい事柄ではなく、これまでの特別活動が目指してきたものと優れた実践の延長にあり、現行指導要領下でも実施可能なことである。既に全国各地に多様な好事例が生まれている中、改訂と並行して、優れた取組の普及を推進することが重要であるということが示されております。
 具体的には、丸1、児童会・生徒会活動については、学校運営に発達段階に応じて子供が関わる仕組みであることの明確化、丸2、学校行事については、子供たちが創造する活動であることの明確化、丸3、学級・ホームルーム活動については、納得解を形成しようとすることの重要性の明確化、各教科等につきましては、自分の意見の根拠を持った説明や、一方的な意見の主張にとどまらない対話を含む協働的な学びの一層の重視、丸4といたしまして、学校教育内にとどまらない地域社会を含めた参画、改善の仕組みとして、学校運営協議会においては、子供の社会参画や意見表明の推進を議題としたり、子供自身が協議会に参画するなどを促進すること、学校評価に関し、評価改善プロセスに子供が関わることの促進、教育委員会等において、地方公共団体の議論において子供の意見表明の機会を設けるなど、子供の社会参画を促進していくことなどが示されております。
 こうした整理が論点整理において行われ、記載をされている中、表紙にお戻りをいただければと思います。特別活動に関する現状・課題と検討事項でございます。こちらは先ほど申し上げました論点整理の具体化、具現化に当たり、本ワーキングにおける議論の全体像として整理をさせていただいて、お示しをさせていただいているものでございます。
 1ページ、特別活動に関する現状と検討課題でございます。1番、現行指導要領のポイントといたしまして、特別活動は集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ、よりよい集団や学校生活を目指して様々な活動に実践的に取り組むこととしております。
 とりわけ前回改訂時の議論におきましては、育むべき資質・能力が必ずしも意識されていなかったということ。また、各活動の役割等の整理が十分ではなかったということ。社会参画への意識の低さ、こうしたことを課題として捉えまして、人間関係形成、社会参画、自己実現の三つの視点の整理、内容の整理・充実、様々な集団活動に自主的・実践的に取り組む中で、等しく合意形成に関わる役割を担うようにすることや、自分たちで決まりをつくって守る活動などを充実することの明示などの改善を行ったところでございます。
 そんな中、学習指導要領の実施状況調査では、学級活動における合意形成について、89%の児童が、「みんなで話し合うことで学級や学校の生活を楽しくできる」、88%の生徒が、「少数意見を大切にしながら、お互いに認め合い、みんなで決めている」など、肯定的に回答しているところです。
 また、自分たちで決まりをつくって守る活動など、学級学校の生活をよりよくするために取り組んでいる生徒と、自己実現に関する認識との間には正の相関が見られるなどのデータが出ているところでございます。
 2番、改訂後の法整備、ガイドライン策定等の動きといたしましては、言うまでもございませんけれども、教育基本法の第1条において、社会の形成者として必要な資質を備えた国民の育成が規定されております。また、こども基本法が令和5年に施行されましたが、その基本理念として、子供の権利の保障、意見表明及び社会参画の機会の確保、子供の最善の利益の考慮等が規定されております。
 また、生徒指導提要は令和4年度に改訂されました。発達支持的生徒指導の考え方を示すとともに、校則について子供の意見を聴取した上で定めていくことが望ましいなどの規定がされ、こうした中で、校則の見直しやルール形成の取組が広がりを見せつつあるところでございます。
 18歳の社会参画の意識は改善傾向でありますが、諸外国と比べると改善の余地が大きく、10代、20代の投票率は約3割と低い中で、家庭や学校、地域でルール決めに関わった経験がある場合、ふだんから投票に行っている割合が高いなどの調査結果も出ているところでございます。
 2ページでございます。そんな中、特別活動に関する全般的な課題といたしまして、我が国の学校教育の長所であるところの協調性の涵養や規律の確保が、ともすれば集団性の過度な強調に陥り、同調圧力への偏りを生んでいる側面があるとの指摘があります。
 また、中高で校則見直しなどの取組が進む中で、子供の関わりがまだまだ十分ではない例、そして、小学校では教師主導の学級・学校運営になりがちな側面もある中で、子供の主体的な参画の余地が大きいということ、また、校種を通じてクラウド環境の活用が進んでいないといった課題がございます。
 こうしたことを踏まえ、特別活動全体として、当事者意識を持って自分の意見を形成し、対話と合意ができる力を育んでいく学校教育の実現に向けて、子供たちにとっての身近な社会である学級・学校をフィールドとして、意見表明の機会、合意形成の機会、参画の機会をより充実させていく余地があるとしております。
 それぞれの活動固有の課題といたしまして、まず、学級活動につきましては、どのように共生社会の実現に向けた納得解を形成しようとする姿につなげていくかということ。
 児童会・生徒会活動については、学校運営に発達段階に応じて子供が関わることで、主体的な社会参画につなげていく余地があるということ。
 クラブ活動については、自発的・自治的活動が形骸化しがちであるとの指摘があること。
 学校行事については、子供たち自身がより主体的に参画をし、つくり上げていく余地があるということ。
 生徒指導については、発達支持的生徒指導や課題未然防止教育を特別活動の関係でどう具体化していけばよいかが分かりにくいということ。
 キャリア教育については、平成23年の中教審答申において基礎的・汎用的能力がまとめられておりますけれども、進路選択やキャリア観をめぐる状況の変化等を踏まえ、より分かりやすく考え方を整理する余地があるということ。特にキャリア・パスポートについては、中長期的な振り返りや見通しを持つ活動の充実に寄与した面がある一方で、活用方法が分からない、個人情報管理を含む管理・運用負担が大きいとの指摘があること。
 その他、子供を社会の一員として受け止め、その意見を政策や社会の仕組みづくりに生かす地域・社会の受皿が不足していることなどが課題として挙げられているところでございます。
 3ページ、検討事項と論点についてでございます。
 まず、1番、企画特別部会の議論を踏まえた検討事項といたしまして、(1)資質・能力の在り方・示し方として、論点整理で、児童生徒が主体となってルール形成や学校生活の改善、学校行事など様々な活動に参画することにより、生成AI時代の主権者として、確かな民主主義の担い手を育み、共生社会を実現する基盤を提供する領域として、特別活動の位置付けを明確化すべきとされたことを踏まえ、それを具体化する観点から、以下の諸点を検討する必要、一つ目、目標の示し方、二つ目、内容の一層の構造化や精選の在り方、三つ目、表形式を活用した目標・内容の分かりやすい示し方、こうしたことについて御議論をいただければと考えております。
 (2)指導と評価の改善・充実の在り方といたしまして、当事者意識を持って自分の意見を形成し、他者の意見に耳を傾けつつ、対話に基づくよりよい合意形成を図る取組の充実方策、論点整理で示された学習評価の質を向上させるための合理化の検討とされたことを踏まえた、効果的かつ過度な負担が生じにくい評価の在り方、(3)柔軟な教育課程の在り方として、義務教育における調整授業時数制度や、高等学校における科目の柔軟な組替えを可能とする仕組みを前提とした場合に考えられる教育課程、学習指導の工夫の在り方、教育課程の柔軟化に伴って生じる課題と、それを防ぐための運用の在り方についても御議論いただければと考えております。
 2番、特別活動固有の検討事項でございます。(1)特別活動の位置付けや在り方といたしまして、総合や道徳との関係、各教科との関係、そして、同調圧力や正解主義の偏りからの脱却の必要性も踏まえ、見直すことが必要な用語の整理。
 (2)学級活動・ホームルーム活動については、意見表明や参画の機会をより充実させる具体的な方策。そして、外国人児童生徒等の増加を含め、教室内の多様性が顕在化する中にあって、障害への社会的障壁の低減、教育課程全体の包摂性の向上、こうしたことも見据えながら、安易な多数決の回避や少数意見の吟味、納得解の形成を含むよりよい合意形成に関わる重要な視点の示し方。
 (3)児童会・生徒会、クラブ活動につきましては、学校運営に発達段階に応じて子供が関わる仕組みであることを明確化する方向での児童会・生徒会活動の示し方。4ページに進みまして、クラブ活動の位置付けや目標の整理、形骸化しがちであるとの指摘も踏まえたクラブ活動の在り方。
 (4)生徒指導につきましては、特別活動と生徒指導との関係性の整理、また、発達支持的生徒指導や課題未然防止教育を、授業の中でよりよく実装していくための特別活動の在り方。
 (5)キャリア教育につきましては、学びに向かう力・人間性等の新たな整理や、労働市場の流動化、マルチステージの人生モデルへの転換を踏まえたキャリア教育で育む力の整理や、キャリア教育の重点の示し方、特別活動を要とした各教科等が担うキャリア教育における役割の整理、今後のキャリア・パスポートの在り方、そして、過度な負担が生じない条件整備の在り方について御議論いただければと思っております。
 また、(6)学校行事につきましては、過度な負担を生じさせない観点、また、保護者や地域との共通認識を育むことの必要性等を踏まえつつ、子供たちが創造する活動である旨の明確な示し方やその具体的な在り方、また、総則で総合的な学習の時間における学習活動をもって相当する各行事の実施に替えることができるとされている中で、総合と学校行事等の有用な連携や役割分担の在り方。
 (7)必要な条件整備等といたしまして、クラウドツールの活用方法を含めた意見表明を、過度な負担なく学校の様々な活動、運営につなげる好事例の提供の在り方、過度な負担なく児童生徒の声を聞く取組の充実の在り方、児童生徒の参画や意見を生かした学級・学校運営、授業づくりに関する研修の充実の在り方、少子化が進展する中での集団性の確保や、多様な他者との対話や協働の機会の確保の方策、内容の精選の在り方。
 その他、特別活動にとどまらない参画の推進の在り方として、学校運営協議会制度、学校評価、教育振興基本計画や教育大綱の策定など、学校を超えて子供の社会参画を促す具体的な方策の在り方。
 以上が本ワーキングにおける検討事項及び論点としてお示しをさせていただきました内容でございます。
 加えまして、5ページ以降、論点整理の抜粋、そして、9ページ以降に参考資料をつけさせていただいておりますので、併せて御覧をいただければと思います。
 事務局の説明は以上でございます。
【恒吉主査】  ありがとうございました。
 次に、事務局より私に対して、我が国の特別活動の概観について説明するよう要請がありましたので、ここでお時間を少しいただきたいと思います。
 位置付けということで、先ほど御説明いただいた内容ですので繰り返しませんけれども、どのような目標に向かっていくかということを大きな役割として捉えていけるかと思います。
 ここでは、幾つも論点がある中で大きな概観ということで、国際的な情勢の中で求められているような位置付け、日本の特別活動の位置付けの変化というものを視野に入れた話をしたいと思います。
 ポイントといたしましては、後で説明しますけれども、今まで日本の教育というのは、長年何かしらの国際的にも強いモデル、例えば近代化以降は西欧のモデル、ヨーロッパ、アメリカのモデルを参考にしてきたわけですけれども、今日非常に強く日本自身がモデルを出してくる、教育のモデル自身を自分で出してくることが国際的にも今まで以上に求められているようになっていると、そうした視点が必要だという話を少しさせていただければと思います。
 日本の特別活動は、少しはしょってしまいますが、Tokkatsuとして、今、国際的に注目されつつあります。Tokkatsuの特徴といたしましては、非認知的能力を再評価する中で、非認知的な能力を落とすことなく子供全体を育てようとしているという枠組みが、今、国際的な潮流の中で再評価されつつあって、それを実践している例として、やはり日本の教育、日本式の教育、また、その中の特に特別活動が、「特別活動」として知られているかどうかは別として、知られている、知られつつあるようになっているということです。
 この流れというのは、実は一時代前には全く逆で、非認知的な能力の領域、教科以外の領域というのは、従来は捉えどころがない、数値にもできないし、評価ができないということで、すごくうさんくさいものとして国際的にはあまり関心がなかったというべきか、学校の領域としては、特にアメリカとかは、もともとこの領域は家庭とか地域とかが強い、担うべきものとして、学校が干渉すべきでない領域として理解されてきました。
 ところが、近年徐々にですが、脱宗教とか脱共同体とか、理性とか合理的な個人とか、科学の優位とか、自然に対して科学的に支配していくとか、資本主義、特に統制されない資本主義、こうした近代の論理、西欧の論理を支えてきたそのものが、すごくいろいろな問題が見えるようになってきている、認識されるようになってきているという中で、日本のかつて後れたもの、前近代的なものを持っているとされた日本の特別活動が、ある意味、見直しされているということが、近年Tokkatsuという形で各国が評価する恐らく背景があるのではないかと思います。
 こうした中で、特別活動の領域みたいに、人間形成とか価値形成とか、そのようなものに関わらないものは、従来から例えばレッスンスタディー、授業研究ですけれども、日本のモデルを参考にしたり、シンガポールのモデルを参考にしたりというような動きはありました。しかし、こういったかなり価値教育的なものに近い領域がいま申し上げたような形で国際的に西欧モデル、近代モデルの行き詰まりを突破していく可能性のあるモデルとして見られるようになったというのは2000年代からだと思います。非常に新しく、また変化の深さを示していると思われます。
 先ほど申しました、日本が国際的にモデル消費国からモデル生成国へと転換していく時期に、この改訂というのは当たっていると思います。そこにありますように、西欧近代、日本もまたそれを学んできたわけですけれども、その行き詰まりの中で、日本の学校教育が育てる「共感」とかが再評価されています。実は例えば私が大学院生でアメリカで学んでいた頃でも、日本というのは共感社会だとか、タキエ・スギヤマ・リブラとか、あちらで日本社会論をやっていらしたような方々がよくそのような言い方をされていました。
 ただ、そのときの日本社会の共感能力の高さとか、教育で強調するとか、そのようなこと、あるいはしつけでも強調するというのは、ある種日本社会の特徴、アジアの離れた国(日本)の特徴としてやはり捉えられていたと思います。それが、先ほど申し上げたような、近代化の論理の行き詰まりの中で、ある種見直されるという形で、東アジアのある国の論理みたいな感じではなく、自分たちも学べる、西欧にとっても有用性がある、そうした論理として再評価されているということです。
 今、言ったような制御されない資本主義、経済格差の拡大とか、あるいはアイデンティティーの分断とか、AI、ICT新時代で、今、西欧においては人間の主体性をどうやって守るかとか、特定の職が失われるかもしれないとか、そのような議論がなされていますが、そうした中で日本がいかにAI時代でも豊かな人間性を実現できるかというような、対人関係を重視する教育の在り方として見直されているということだと思います。
 日本のこうした流れの中、国際的な流れの中で、今まで説明せずに済んでいたものが説明をより求められていくということと、いかに日本の教育の強さを生かして、その弊害とか、先ほど集団性の集団圧力とか、そのような話がありましたけれども、いかに弊害や弱点を理解してそれを乗り越えていけるか。そして、より広いモデル生成国として発信できるかということも、恐らくこの回の改訂では今まで以上に求められているだろうと思われます。
 論点整理のところから、幾つもありますけれども、例えば共生の論理の転換に関して、先ほど申し上げましたように、日本も学んできた権利とか個人主義的な解釈に、そうした従来の論理だけでは共生の実現に行き詰まりが出ている。そうした中で、集団の圧力とか、そのような負の面だと言われてきた日本の教育の在り方、その弱さを強さで、協働性とかの強さで乗り越えながら、共感と協働的な論理の中から多文化共生、共生のモデルを提示できるか。恐らくその中核的なところに特別活動は位置付いているということです。
 同じように、AIの話、クラウド環境の話が出てきましたけれども、AI時代だからこそ、ある意味、対面の役割が問われると。AIの時代においても、AIを用いながらも、AIを使うという形で、AIに使われるのではなくて、AIを使いながら豊かな対人関係と、それに向けた資質・能力を築くようなモデルを提示できるのかということです。
 これは実は西欧において、例えばコロナ禍にオンラインの授業に切り替わっていったときに、教科の部分においては切り替わりが早く、そして、特に豊かな私立などでは教科のオンライン化にすばやく対応したわけですけれども、オンラインになったり対面になったり、社会的距離を取って対面になったと思うとまたオンラインになってというような中で、結局対面的な対人関係をベースにした学校の役割というものが再評価されるようになりました。
 例えばアメリカを例にしますと、対人関係の中でこそ支えられるような子供の成長というものが何かが注目されました。例えば低所得者層の貧困対策として用いられてきた給食にコロナ禍の頃は低所得者層の子供たちがアクセスできなくなる、それがもたらす子供への弊害とかが指摘されたり、社会性の育成に対する悪影響についても問題になったりというような、いろいろな変化がありました。
 こうしたことがかなり流れとして、様々な社会で暴力の問題だとか、格差の問題だとかが出てくる中で、今までの近代化の論理だけでは恐らく不十分なのではないかというような議論がされるようになり、国際社会でずっと優位であった、優位というかほぼ独占していた時代が長かった、近代の西欧の論理による教育モデルが相対化されるようになっています。こうした中で、国際社会で日本はモデル生成国として独自の貢献をすることが今までで一番求められていると思います。
 実は日本は技術が非常に発達している国として知られていましたので、そのような領域では前からモデルになっていたわけですけれども、こうした価値とか、社会性だとか、そういったものに関してはモデルとしては必ずしも求められてこなかった。それが国際的な場でも、強い西欧モデルにおいてさえも、やはり対人関係が大事だと言われるようになって、社会情動教育とかが生まれてきたり、市民性教育が生まれてきたり、ライフスキルも必要だということで、日本の特別活動にも入ってきますが、ライフスキルの教育が必要だということで、国際社会にも発信されていったわけです。
 ところが、それぞれは教科のように別々に出てきて、しかも実践するかしないかはその学区だったり学校だったり、極端な話を言うと特定の学級の先生だったりに委ねられているので、あるクラスは実践していて隣りのクラスは実践していないみたいな感じのものになっている。そういった中で、全体の基礎教育として教科以外の部分を全体として取り入れて、それで教科と結びつけながら子供全体を育てていこうとしているとされる日本の教育モデル、その中核にあるとされる特別活動が再注目されていると。
 幾つか写真を貼り付けました。どれもどこかのホームページとかに載っているものですので、御覧いただければと思います。
 例えば、上のところは、授業研究というのが一番最初に日本から国際的に発信された総合的な教育モデルと言えましょう。それはどのような背景があるかというと、1980年代あたりにアメリカなどで学力危機があって、そのときに自分たちの貿易相手国で、自分たちが競争に負けていると認識したような国々の中に日本が入っていたのですが、そこで、競争相手の学力が高くなっていく秘訣を知ろうとした。つまり、学力と経済的な競争力というのは暗黙のうちに結びつけられて、それで、何が日本などの学力が高くなった原因かというところで授業研究が出てきたと。それをレッスンスタディーと訳された方がいまして、それが定着したと。それは今は世界的な学会WALSもできて、JICAもかなり長い間、それを開発途上国の国々に支援されていたという背景があります。
 その授業研究の次に出てきているのが、特別活動のTokkatsuです。それで、今、JICAはエジプトに支援をされていて、同時に民間でも研究者によっては支援をしています。そのような状況の中で、これは2022年ですけれども、マレーシアでWALSの世界大会がありTokkatsuの発信を求められ、それで企画して、Tokkatsuブースが出たりとか、日本の先生方がいらしてワークショップなさったりとか、シンポもやりました。
 去年はカザフスタンでこれがありまして、それも同じようなことが行われました。今年は広島のほうで京免先生がお出しになりますので、もし後で何か一言ありましたらおっしゃってください。
 あと、例えば横のほうにいきますと、エジプト日本学校というものができまして、海外はなぜかとても掃除が好きなのですけれども、それを入れていると。
 下のほうにいきますと、インドネシアなのですけれども、これは民間の努力でもってTokkatsuを入れられて、給食を配っていらしたりとか、異年齢の活動をされていたりとかされています。
 上のほうでも、受け入れ教員として受けましたが、JICAの全人的なというか、ホリスティックな、子供全体を教育する日本の教育モデルみたいな形で、多くの開発途上国からの研修の方が3年続けていらっしゃいました。課題別研修です。
 その下のほうでは、次々と研修というか視察団の方がいらっしゃるので、例えばこのような話をしています。ちょっと見えなくなっていますけれども、先ほども、何が資質で、どのようなことをやって、どういう役割があるとか、また、よく海外から聞かれるのは、どのように評価するのかとか、そのようなものは実は海外の方で日本の特別活動から学びたいと思われる方が必ず聞くようなものなのです。
 一つ感じたのは、意外に日本の先生方がぱっと答えられないということです。多分当たり前だからでしょうね。この辺りのことも恐らくこの論点のところとかにも出てきているのかなと思います。あまりにも当たり前なために、意識がしにくくなる、意識化されないまま、活動が繰り返されていくという状況が作られやすいのではないかと。
 今日、諸外国では、日本人が関わっているものだけではなく関わっていない特別活動の実践も、どんどん出てきています。要するに、Tokkatsuという名前の下に、日本の特別活動だという名前の下に自分たちで実践している場合も出てきています。
 そうすると、恐らく特別活動の先生方から見ると特別活動ではない場合もあるのです。ところが、トランスファーというか、いろいろなものが世界に出ていくときにはそうやって受入れ側のニーズによって元のモデルはどんどん変わるものなので、これからもそのようにになっていくと思います。
 そのときに、シンポとかやったときに先生方にお聞きしているのですが、これだけは日本の特別活動として譲れない部分だというのはどこなのですか、ということです。それだけは押さえて、ほかは変わっていいというものは何ですかと。こういう意識化がないと、何でも特別活動にされていくと。
 その兆候が実は掃除で出てきまして、掃除は見えやすいもので、みんなやりたがるのです。初めエジプトとかでもなされ始めて、広がるものの特別活動に見えない。要するに、論理が競争的だったりして。そのときにつくった、その頃東大の学校教育高度化・効果検証のセンターにいましたので、そのときセンターでつくったものです。掃除の話合いというのが、そこに、その真ん中辺のビデオなのですが、結局教科以外のものを話し合ったりとか、授業研究をしたりとか、そのような発想が実は新鮮であると、国際的には、ということです。ある意味、そのような目で見られているものを扱っているのだと、この時代のあり方というのを意識してできるといいなと思います。論点とかなり重なるものがあります。
 ということで、以上です。ありがとうございます。では、私の発表は以上となります。
 それでは、本日は第1回目でございますので、初めての顔合わせでもありますので、委員の皆様お一人ずつから、今後特に検討を進めるべきと考えている事柄などを含めて、自己紹介の御発言をいただきたいと思います。名簿順に私から御指名をさせていただきますので、今後発言される機会がありますので、すみませんが、今日はお一人様3分以内で御発言をよろしくお願いいたします。
 では、まず青木由美子委員より御発言お願いできますでしょうか。青木由美子委員、よろしくお願いします。
【青木委員】  青木でございます。インターネットが不安定と、今、表示されたので、もしかしたら途中で止まるかもしれませんが、3分以内で頑張ります。東京都小平市教育委員会の青木由美子でございます。よろしくお願いいたします。今後のというよりは、今、取り組んでいることについて御紹介させていただきたいと思います。
 小平市は東京都の多摩地区北部に位置する市で、人口約19万7,000人、学校数は小学校19校、中学校8校、計27校です。児童生徒数は約1万4,600人、小中学校の特別支援学級を含めて、現在514学級ございます。
 私は小平市の教育長として着任して3年目になりますけれども、着任後から市全体で特別活動の推進に力を入れてきました。本市に限らず、特別活動、特に学級活動の理解と実践には学校、学級、教員によって差があると感じてきました。さらに、不登校やいじめを生じさせない環境づくりが必要であり、また、コロナ禍においてコミュニケーションの減少も課題となっていると感じていました。
 それで、教育長に就任したことを受けて、自分自身の特別活動の研究経験を生かし、特別活動、とりわけ多数決でない合意形成ができる学級活動の話合い活動が、どこの学校、どの先生でもできるようにと重点を置いて推進しています。
 そして、市内の全学校でそろって取り組めるように、昨年度から、「こだいら特別活動の日」というのを設定して、午前には市内先ほど申し上げた514学級全学級で、全校全学級で学級活動の授業公開を行って、午後には各小中学校の代表児童生徒を集めて児童会・生徒会サミットを実施しています。
 この事業の狙いは、自分も人も大切にできる児童生徒の育成、児童生徒の自主的、実践的な態度の育成、合意形成や意思決定をする力の育成、異年齢交流による人間関係構築力の育成、そして、教師の特別活動の指導技術の向上などを目指しています。
 児童会・生徒会サミットでは、昨年は、「よりよい学級・学校づくりのために自分たちでできることを考えよう」、今年度は、「よりよいまちづくりのために自分たちにできることを考えよう」というように設定して行ってきました。
 市内の先生や校長先生からは、市内小中学校で同じベクトルで人権教育を推進することができる。ベテラン教員も改めて学級会のやり方を学べる機会になった。多数決で決めない、少数意見も大切にする、折り合いをつけるなどの指導を学び合えた。子供たちが意見することに抵抗感がなくなって、否定的な意見が減少し、相手の意見を受け止めるようになった。安定した学級経営ができるようになった。子供たちが主体的に活動できるようになったなどのお声をいただいています。
 今後も継続的な取組として実施して、教員の指導力、校長の学校経営力、児童生徒の話合い活動の力の更なる向上に努めていきたいと思っております。
 先ほど恒吉主査からお話もありましたが、先月、3週間ほど前に、タイ王国の教育省の皆様7名が小平市を訪問されて、小平市の特活の様子を紹介したり、小中学校の学級活動の様子を御覧になられたりしました。確かに国際的に注目されているんだなということを実感した次第です。
 こうした実践を踏まえて、学校の実態に合った実践に結びつく具体的で分かりやすい学習指導要領や解説の作成が必要ではないかというように考えております。今回のワーキンググループで少しでもお役に立てれば幸いです。以上でございます。ありがとうございました。
【恒吉主査】  ありがとうございました。また小平の事例から学ばせていただければと思います。ありがとうございます。
 続いて、今村久美委員より御発言いただければと思います。よろしくお願いします。
【今村委員】  ありがとうございます。今村です。私はNPOを運営していまして、その活動の中で、子供たちが地域の方や保護者そして学校の先生方と、学校のルールや学校の在り方をみんなで問い直していくというルールメーキングという取組をしてきました。そんな立場で今回早速参加させていただいているのかなと思っています。
 今日は初回なので、特活のことをどんなふうに議論していくのかの方向性的な議論だけなんですけれども、発言させていただきます。少し前なんですけれども、山崎エマさんという監督が、「小学校~それは小さな社会~」というドキュメンタリーを発表されまして、それが話題になったなということを覚えていらっしゃる、見た方もいらっしゃるかと思うんですけれども、小学校のクラスを一定期間追いかけて、子供たちがそこでまさに特活を中心にした映画の構成になっていて、実際に世田谷の小学校が題材にされていました。
 これを見た方が、すばらしい、泣けたという声もあれば、もう息苦しくて日本の学校はこれだから駄目なんだという違和感の声もあって、非常に議論を呼んだ象徴的な事例だったんですけれども。この反応がまさに特別活動という取組の社会的な評価の揺れといいますか、それの映し鏡のようだなと感じました。他者と関わりながら社会を学ぶ場としての価値と、同調圧力、形式化、つらさみたいな印象がある。この在り方をどう再定義しながら特活を位置付けていくのかというところが、すごくこの社会の中で今まさに大切なことだと思っています。
 個別最適化で、アダプティブ・ラーニング、AIの活用が進んで、教科の学びはどんどん効率的に分かることに大きくかじを切っていくということはよいことの側面がとても大きいんですけれども、特活だけはその対極の、非効率で手間がかかって、嫌な人たちともみんなで集って集団の中で合意形成をしていくという、その学びの機会としてとても重要なので、先ほど武藤さんのほうからお話があった、まさにこれを学びとしてきちんと位置付けて、その意義を資質・能力を含めて再定義していくというのはとても重要なことだと思っています。
 その意味で、2つなんですけれども、1つは育てるべき力の明確化のところなんですが、単なる活動の場という側面に今なってしまっているものを、何とか学校という小さな社会の構成員として子供たちを捉えて、そこの中の参画と対話を通じて社会を経験する場だということをきちんと定義して、今回の論点整理の中心にも特活がきちんと置かれていましたけれども、その意義をきちんと先生や、また社会にプロモーションしていきながら、PRしていきながら、共生力、意見表明力、合意形成力というものがいかに大切かということを、子供たちも経験し、そこに周りの大人たちも参加していき、その意義をきちんと伝えていくということが、まず特活の育てるべき力の明確化の目的そのものかと思っています。
 2つ目に、その理念を実現するための制度的な条件整備なんですけれども、どうしても理念が整っても時間と場が保障されてないと実現が難しくて、学歴が上がるほど削ってもよい時間になってしまっている。どうしても特別活動が教育課程上、必然的に守られる時間になっているかというと、今はそうなっていないので、何とか時間体制、評価の在り方まで含めた再設計に今回入るということがとても重要だと思っています。
 重ねますけれども、私はここからの自分の利己的な意思が反映、投票行為としてなってしまっているこの社会の中で、特活こそが学校がAI先行社会の中で最も重要な学び、最後まで残る学びの機会はまさにここなのではないかと思います。この議論に参加させていただくことをうれしく思います。よろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  ありがとうございました。すごく中核的な論点をいろいろ挙げていただきましてありがとうございました。
 続いて、大村龍太郎委員より、よろしくお願いいたします。
【大村委員】  大村と申します。教育方法学を専門としておりまして、特に初等教育におけるよりよい授業や学びの在り方とか、学校におけるよりよいコミュニティーの在り方について研究しております。
 私からは3点、感じていることをお伝えさせていただきます。まず1点目ですが、今回の論点整理とか、本日の最初の御説明からも、特別活動の重要な理念は変わっていなくて、むしろその理念を徹底しましょうというふうに取れました。総合的な学習でも、探究の中で自己の生き方を考えたりであるとか、社会科でも、平和で民主的な社会の形成者としての資質・能力を育むものなんだけれども、特別活動は日々生活する学校という社会の、まさに自分たちの生活現実をリアルに対象とした問題見つけとか、問題解決とか、自己実現を集団生活の中で図っていくという活動であることにその特質があると思います。
 その中で、平和で民主的な学校生活をつくり出そうとするということです。外国に繋がる児童生徒がどんどん増えているとか、いろいろな背景の子供たちがいて、各学校の実態、文脈に応じた学校生活の中でそれをやっていくということがその特質だと思います。
 ルールづくりやその遵守もそうで、意味を理解して納得し、遵守する態度を実践的に身につけていく。そのように、なすことによって主体的な社会参画に関わる資質・能力を図っていくものなんだということが明確に伝わるような指導要領にすることが大切なのだろうなと思いました。それが1点目です。
 2点目が、今村委員もおっしゃいましたが、実際の学校生活では、仲間との協働的な関係というのは集団主義的な同調圧力と紙一重のところが現実には見られます。本当は違うのだけれども、日本社会や学校はそれが混ざるような状況になる傾向があります。だからこそ、個、一人一人を尊重しつつ、自他を含む社会全体の需要とか幸せをどう合意形成していくか。民主的な社会の創り手としてどうしていくかを現実の問題として取り上げていくということを、幼稚園や小学校1年生から中学、高校まで、段階的、継続的に問い続ける生活を送っていくことが重要になると思います。その核になるのが特別活動だと思いますので、そういう視点が貫かれるような指導要領づくりが重要かと思いました。
 最後3点目ですが、具体的な活動としての形骸化の懸念です。例えば学級活動において話合い活動というのが内容1とかでよく行われますが、形式的な話合いになっていないかということを私たちはいま一度問い直す必要があると思います。形式を学ぶことは大切ではあるけれども、整った形で話し合うことそのものが目的化したような活動にならないように留意していく必要があると思います。その意味で、柔軟な実践であるとか、そういうのは学校現場でも行われていると思うので、演繹的に考えるだけではなくて、そのような実践からボトムアップで帰納的に考えていくことが大切になるのだろうなとも思いました。
 以上3点です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。まさにポイントで、私も国際的に発信するときには勝手にいろいろ造語を作っております。例えば「生活」、分からないので「School is life」とか、「なすことによって」というのは「Learning by doing」とかいって勝手に、すいません、パワーポイントの小さくなって見えなくなっている中に入っていて、どなたかが拡大するとそれが見えるので、なぜああなっているかというのを説明をいただいたようでありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
 では、川本和孝委員、お願いいたします。
【川本委員】  皆さん、こんにちは。玉川大学TAPセンターの川本和孝と申します。どうぞよろしくお願いいたします。玉川大学のTAPセンターの「TAP」とは、「Tamagawa Adventure Program」の頭文字で、玉川大学の教育理念である全人教育をベースとして、アドベンチャー教育の手法を取り入れた体験学習プログラムのことです。
 私は、このプログラムを通じて、参加者が互いに違いや強みを尊重しつつ、共通の課題に取り組んでいくことで、信頼関係を築き、役割を認識し合い、協働する力を育んでいくことを目的に、日々取り組んでいます。そのプロセスを通じて、一人一人が自らの声を持ち、他者との関係性の中で意思を表明し、共に意思決定を形づくっていくという民主的な関わり方を重視しています。そして、そうした民主的な関わりを学校教育の中で学ぶことの重要性を、日々感じています。TAPを通じて、企業研修やプロスポーツチームの研修、教員研修、さらには幼稚園から大学生までの授業において、私は教師としてだけでなく、ファシリテーターとしても長年携わってきました。近年では、その経験と自身の実践を基盤に、対話的な学びを引き出すための教師のファシリテーターとしての役割や在り方について、研究と実践を積み重ねています。
一方で、私はこれまで長く学級活動の研究を主に行ってきましたが、その過程で様々な実践に触れる機会をいただきました。先生方と子供たちが積み上げてきた成果を数多く目の当たりにしてきた一方で、配付資料に示されていた「特別活動に関する現状と検討課題」に挙げられていたような課題についても、強く実感しているところです。特に、子供たちにとって最も身近な社会である学級において、共生社会の実現に向けて納得解を形成しようとする姿につなげていくことは、まさに重要だと考えています。先ほど大村委員から、話合いが形骸化しているのではないかという指摘がありましたが、形式的なものにとどまらず、いかに実質的なものへと変えていけるかが課題だと感じています。
特別活動では、話合いを通じて意思決定や合意形成を行い、体験していく、という学習過程を通じて、児童生徒が身近な社会である学級や学校の中で協働し、よりよい集団を形成していくことを重視してきました。こうした体験的、実践的な学びは、子供たちの社会性や他者理解、公共心を培う上で大きな意義を有してきたと考えていいます。しかし一方で、社会の急速な変化や情報環境の多様化が進む中で、体験を単なる出来事として終わらせるのではなく、そこからどのような気付きや学びを抽出し、価値として再構成していくか、という「ふり返り」の在り方について、見直しが求められていると感じています。
 今後、こうした実体験に基づく子供たちの学びを、情報の分析や価値の対話、さらには社会への適応へとつなげていくためには、「構造化されたリフレクション」という視点が非常に重要であると感じています。こうした多様な議論を、皆様と共に積み重ねていきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  ありがとうございました。まさに実質的なところまで切り込むような議論ができればと思います。ありがとうございました。
 次、副主査の京免委員、よろしくお願いいたします。京免徹雄委員、よろしくお願いいたします。
【京免委員】  皆さん、こんにちは。筑波大学の京免と申します。私自身の専門は特別活動学になります。ただ、その中でも、研究テーマとしては教科外の活動の国際比較をずっとやってきました。特に近年は日本型教育としての特活、先ほど恒吉主査のほうからも御説明がありましたけれども、その動向のほうをずっと調査してまいりました。
 その中で非常に常に実感しているのが、国際的に見たときの日本の特別活動の強みと課題の両方です。
 まず、強みとしては、活動への全員参加というものを原則として、一部のエリートを育てるということではなく、集団の一員としての役割を果たす機会を全ての子供に幅広く提供してきたことだと思います。また、情緒的につながった仲間集団である学級を中心としながら、子供たちが助け合う集団をつくって、生活をつくることを通してウエルビーイングの要素とも言える非認知能力を育成してきた、まさにここにあると思います。
 一方で、課題もいろいろと感じてまいりました。児童生徒の自主的な活動の範囲、つまり、子供たちが教師と対話をしながら決めることができる範囲が狭いというのは非常に大きな課題だと思います。だからこそ、やはり民主主義の学習という点からは弱さを抱えていて、社会とか集団を変えていく、変革していくというよりも、適応するというところが優先されてきた面があるのではないでしょうか。また、同質性を前提とするような話合いが多様性を認めない閉鎖的な集団づくりにつながっていることもあり得ると思います。
 さらには、こちらも先ほどお話がありましたが、日常的に埋め込まれた学校の文化である特別活動というのは、ともすれば日本の教師にとっても、あるいは子供たちにとっても当たり前であって、何のための活動なのかというのが少し忘れがちになることも課題だと認識しています。
 非常に重要だと私が思っているのは、さきに述べたような現在の特別活動の強みというのを失うことなく、これらの課題を解決していくことかなと、今、思っています。あくまで個人的な意見ということになりますけれども、そのために重要だと思っていることを3つほど述べさせていただきたいと思います。
 まず1つ目は、学校行事を含めて特別活動全体を児童生徒の自主的な生活づくりとして位置付ける必要があるのではないかということです。これは言葉にこだわっているというわけではなくて、子供中心、子供主体ということをもっと前面に押し出す必要があるのではないかという意味です。かつて自治、民主主義、あるいは公民的資質といった文言が学習指導要領の特別活動の部分に入っていた時代がございます。自主的な活動というのを前面に出すことで、何のための活動なのかという目的がもう一度意識されるのではないのでしょうか。
 もう1つは、現在の学校行事は学校が計画し実施する活動ということになっていて、そこに児童生徒が協力するという形式になっています。こちらも自主的な活動に仮に含めることができれば、その意義が明確になります。あるいは、所属感、連帯感という、やや社会性、協調性、こういったところの育成に寄っている目標も、主体性とか創造性を重視したものに変わるのではないかなと考えているところです。
 2つ目は、児童会活動、生徒会活動の内容に、やはり児童生徒の声を学校、教師に届ける、そういった意見表明の機会を入れていく、保障していくということだと思います。多くの国がこうした子供の教育参加を制度化しています。特別活動では子供同士の話合いというのが重視されてきました。学校を子供にとってよりよい学びと生活場にしていくためには、それに加えて子供と教師の対話の場というものも、もちろん先生方の負担にも配慮しながら、でも、やはりつくっていくべきだと考えています。
 最後3点目になりますが、多様な児童生徒を包摂して、学校あるいは学級という小さな社会で共に生きていくために、差異、お互い違うというところから何か新しい価値を生み出せるような話合いというのが大事だと思っています。自分と同じ意見を持つ人に対する共感、いわゆるシンパシーと言われるもの、それに基づくような合意形成だけではなくて、意図的に他者の立場に立って、自分と異なる意見の根拠とか理由を推論するような、エンパシーに基づくような合意形成が求められているかなと思います。異なる意見を比べ合って、そして生かし合って、そしてアイデアを練り上げていくことで創造性も鍛えられますし、同時に一人一人の心理的安全性が保障されて、開かれた学級とか学校風土が形成されるきっかけにもなるのではないかなということを考えています。
 このワーキングにおきまして、きちんと自分の役割を果たして、いい学習指導要領ができるように一生懸命取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  ありがとうございました。まさに差異が生み出す生産的な力を生かすのが日本の教育は下手だと言われてきまして、実は、異文化間の教育分野などではそういうふうに言われ、差異があるところには葛藤がある、その葛藤をいかに生産的に使うかというような議論もされまして。いずれにしましても、国際的にも特別活動の意義が再評価される中で、強さをいかにして伸ばし、そして弱さをいかに克服していくかということがすごく重要だと思われます。ありがとうございました。
 続いて、また副主査でいらっしゃる白松賢委員、よろしくお願いいたします。
【白松委員】  皆さん、こんにちは。お世話になります。愛媛大学教育学部の白松と申します。私自身は今回の論点整理を読ませていただいて、特別活動に期待されている、自分の人生を舵取りする力や、民主的な社会の創り手という、そういう期待は、特別活動のこれまで行ってきた伝統的な実践の連続性の上にあるということを読み取りながらいました。
 私自身はずっと特別活動に関わってきているのは、子供も私たちと変わらない基本的人権を持った主体であるという、それを一番実践的に体現できる場所で、教育基本法の話が今日もありましたけれども、そこの出口として最も重要なポイントだと思って今まで関わってきました。
 しかしながら、にもかかわらず、今村委員がおっしゃられたように、特別活動には賛否両論あるというのは非常に大きな課題だと、それもずっと思ってきています。大きくは課題が3つあるかなと思っておりまして、制度的なレベルでの教師のマインドセットの変容が必要という課題が2つと、実践レベルの変容として1つあるかと思っています。
 1つ目の問題は何かというと、同調圧力、正解主義というのは今回の論点整理でもかなり問題となってきていますが、私もずっとこれが特別活動がなかなかうまくいかない理由の一つと思ってきていました。
 その中でいろいろなことを研究したり調べたりしてきていたんですけれども、1年間の担任という制度、学校というのは大体1年間を単位に動いているので、1年間の学級経営や生徒指導という捉え方では管理主義的になりやすい。その結果、同調圧力や正解主義で動いたほうが先生方はやりやすいという構造的な問題があるだろうと思います。
 これはアメリカのパットナムの研究とかを読んでいると、多様性が短期的には大体閉鎖主義に陥りやすいというのがよく言われていて、いわゆる対立であったり、分断、ひきこもりという現象に近づきやすくなるけれども、長期的な取組であると創造性につながっていくことが多いと。
 このことは、私たちも新しいものが入ってきたときにはちょっと拒否感があるけれども、しばらくしていくとそれによって化学反応でいろいろなものが生まれていくということを意味しています。そういう意味では、生徒指導のほうでも、発達支持的生徒指導と言われる、長期にわたった子供を見る目線というのが特別活動とリンクしていくというのが、一つの鍵として、ここが新しい学習指導で変えていけるものにならないかという期待を私は持っているというのが1つ目ということになります。
 2つ目は、特別活動のカリキュラムの問題が、先ほど今村委員が言われたのは、いわゆるコインの表裏問題とか、いわゆる特別活動はもろ刃の剣だという表現がされるんですけれども、例えば民主主義というのは必ずしもオートクラシーの対極にあるものではなくて、民主主義とオートクラシーというのは入れ子構造になりやすい、いわゆるハイブリッドレジームというような表現もされるんですけれども。例えば特活で言うと、みんなで決めた、だからやらなきゃいけないという強制が入ったときに、どうしても同調主義になっていくと。これが特別活動のみんなで決めるというプロセスが手続的知識になってしまって、決めるというタームでみんなでやるということではなくて、やっぱりプロセスの連続性として、みんなで決めたということを延々よりよくしていくという、そこのプロセスをどう保障していくかということ。
 もう1点は、学級活動の(2)の適応という言葉にもあるんですけれども、日本の包摂という先生方の概念は、適応させることで包摂していくという考え方が非常に近くて、逆に多様性に学校側が適応していく、これこそが子供の意見を表明されるものに対して学校側も変革して子供たちに近づいていくと、そういうようなプロセスも必要になってくるだろうと思うんですけれども。残念ながら包摂、適応させなければいけない、適応できない子が排除されるというように、包摂と排除が入れ子構造のようにまたこれが出てきてしまうと。
 これについては、恐らく社会科等中心に進んでいくだろうGCED、Global Citizenship Educationという言葉があると思うんですけれども、それと関連づけたキャリア教育によって、多様性の中で私たちはどんなキャリアを身につけていくのかということを考えていく大きなポイントがあるかなと思っております。
 3点目は、実践レベルのものでは、デジタルテクノロジーというのをなぜか特別活動の伝統的な方々は結構嫌うところがあるんですけれども、やはりSNS等を通じたエコーチェンバー問題のように、デジタルテクノロジーというのは民主主義では分断につながりやすいという危惧がすごくされておりますので、そういったデジタルテクノロジーの中で使いながら子供たちが学んでいって、簡単な空気感に流されない子供たちというのをいかに育成していくのかというのは非常に大きなポイントだと思っております。
 そういう意味では、日本の強みというのは、今日恒吉主査も京免委員もおっしゃられたんですけれども、やはり多様な集団活動の実践というところが全員参加で行われているというところは非常に大きいので、一人も取り残さない社会をつくっていくという上では、その強みをどういうふうに弱みではなくて強みにしていけるかというところが今回の学習指導の改訂には期待されているかなと思っています。
 その中で私は、最近はリレーショナル・エシックスとか、リレーショナル・マナーという言葉が民主主義教育のほうで使われるんですけれども、関係的な作法というのを自分たちでつくり上げながら実践していく特別活動というのを、学級という小さい単位から学校というふうに広げていけるような特別活動になっていくことを期待して、今回の学習指導要領には関わりたいと思っております。
 私の今までの経験から感じていることは以上のことです。
【恒吉主査】  ありがとうございました。一人も取り残さないをいかに弱みでなく強みに、まさにそうだと思います。ありがとうございました。
 では続いて、野村佐智夫委員より、御発言よろしくお願いいたします。
【野村委員】  皆様、こんにちは。野村と申します。私は現在は埼玉県の小学校で校長をしております。埼玉県特別活動研究会という研究団体の事務局長も併せてしております。
 担任時代から私は特活がとても好きで、実践を子供たちと一緒にしてきました。その中で子供たちからいろいろなことを学ぶことができて、その経験を基に他校の授業研究会また研究協議会等で助言等をさせていただく機会もここ10年ほどで多くいただいております。自分が取り組んできた、また、他校の授業実践等に関わらせていただいたという中で、やはり学活の大切さというものは肌で感じてきております。 校長になって5年目になりますが、2年目から幸い学校研究として学級活動に取り組むことができました。自分の得意な分野、好きな分野であるということ、また、自分の失敗経験もあるということから、前任校それから現任校の先生たちにはその経験も伝えながら、また、見通しが立てられるような関わりをしているところです。学校研究に取り組んでみて感じることは、職員によって学活、特活の取り組み方が大きく異なるということです。本来はあってはいけないことですが、他校から異動してきた職員の中には、「学活は、正直なところあまりしたことありません」という者もいました。そのような実態があるのが正直なところかなと思っております。だから、そういう職員にも分かるように、できるようにということを指導で意識して取り組んでまいりました。
 特活的な考え方に基づいて指導をしていくということが、学級活動に力を入れた指導を行う学級担任の共通した状況として見られます。集団指導と個別指導を分けて考えることができるとか、一人一人ができることを頑張ることが大事であり、だからこそ教師は見通しを立て、段階に応じた指導をすることが大事であるとか、そのような指導観の転換を目の当たりにすることができたということが、学校研究で学活に取り組んできた成果としてとても感じているところです。
 その取組方は様々ありますので、今回の論点整理でも示されているとおり、改訂だからいろいろな内容を見直して新たなことを取り入れるということは当然必要であると思います。ただ、盛り込み過ぎて実践が中途半端にならないよう、整理された内容、示された内容がどの学校、学級でも確実に実践できるようにということを私は大事にしていきたいなと思っています。 自らの人生を舵取りする、好きを育み、得意を伸ばす、そういったことをすることができるようになるのが、やはり特活ならではの取組だと思っています。これは学活の中で、また、特に児童会活動やクラブ活動でもこういうことは積み重ねていく中でそういった力を育むことができる、また伸ばしていくことができるというふうに考えております。ですから、現行の枠組みをそのまま継続するという中だけではなく、よりよいものに発展的につなげられるような協議をしていけたらいいなと思っております。 やはり子供たちがこの学校でよかった、この学級でよかった、この仲間でよかった、この先生でよかったというふうに、「~~でよかった」が集まっているものが学校であってほしいと思います。そのような経験が、社会に出たときにも、自分たちでそうのような集団をつくっていこうという思いにつながって、よりよい社会の形成者として役割を果たしていくことができるのではないかなと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  どうもありがとうございました。今、すごく大切なことをおっしゃったと思います。どの学校でも実践できる、どの教師でも助けがあればおそらく実践できる、それがどの子供も取り残さないというところにつながっていくと思われます。今後ともよろしくお願いいたします。
 次に、秦計代委員、御発言よろしくお願いいたします。
【秦委員】  よろしくお願いいたします。福井県教育総合研究所の秦です。3月までは中学校の校長をしておりましたので、そのときの子供たちの様子などを中心にお話しさせていただきます。
 福井大学は実はエジプトジャパンスクールといろいろ連携といいますか、関わっておりまして、一昨年かな、エジプトジャパンスクールの先生方の視察を受け入れたことがありまして、恒吉主査がおっしゃったことが非常にそれとつながりました。掃除の時間をぜひ見せてほしいと大学の先生に言われまして、そうしたら、中には子供たちが使っているほうきを貸してくれとおっしゃる方がいて、一緒に子供たちと掃除をしたりされる先生もいたりとか。あと、実は授業研究というものも体験させてほしいということで、授業を3つ公開したんですけれども、その中で一緒に通訳の方も交えながら、本校の教員と授業者と授業研究を行うなんていうこともやったことも今日お話を聞きながら思い出しました。
 そこで、3月までいた中学校の子供たちの様子で今日のお話と繋がる部分ということで、資料1の3ページに、特別活動の指導と評価の改善・充実の在り方、デジタル学習基盤の活用というところで、1人1台端末が特別活動にどういうふうに入ってきて、子供たちがどんなふうに活用していたかという部分を、本当に難しい話はできないんですが、子供たちの様子をお聞かせいたそうかなと思っております。
 それから、実はクラウドツールの活用方法というのも4ページのほうに出ていましたが、そういうところも子供たちは非常に上手に使ったりしていましたので、その辺のところをお伝えしようかなと思います。
 たしか年度初めの時期だったかと思うんですけれども、部活動が終わって、子供たちが帰宅してからの実は遅い時間帯で、働き方改革という点では先生方がまだそんな時間に学校にいるというのは駄目なんですけれども、たまたま私が職員室の中に用事があって入りまして、生徒会担当の教員の机の横を通ったんですけれども、そのときに、「校長先生、ちょっと見てください」と、生徒会の担当の先生が言いまして、何という感じで、その先生のパソコンの画面をのぞきますと、プレゼンテーションのスライドが次々と書き換えられていくという様子があったんです。実はそれは生徒会の中央委員会というのが中心メンバーで、その中心メンバーの子たちが、次の全校集会で説明するスライドを共同編集していたと。別に生徒会担当の先生が作っておいてと言ったわけじゃないんですけれども、子供たちは連絡を取り合って、自主的に主体的に編集を夜にやっていたという場面を目の当たりにしました。
 生徒会担当も実は非常に堪能な教員で、そんなことを子供たちがやっているというのに非常にびっくりしましたし、それまでに本当に教科とか総合の時間にスライドを共同編集していくという活動を子供たちは何度もやっていたので、1人1台端末がこういうふうに生徒会活動にも広がって、子供たちが自分たちで主体的にやれるようになってきたという姿を私は見て、私も本当に、「こんなこと、あの子らやってるんか」みたいな感じでびっくりしましたし、うれしくも思いました。
 要するに、学校で作っていたスライドが、時間が来て、もう時間がなくなってしまったから、その続きを作って全校生徒にやはり伝えたいという中央委員会の子たちの思いとか。各家庭という、もちろん離れた場所での対話を、タブレット端末という道具が可能にしてくれた。やはりタブレットが入ってきたからこそできるような活動だったなと思います。
 それからそのほかにも、いろいろな生徒会の活動の中で、アンケートを取ったりとか、いろいろなコンクールなんかをやるわけなんですけれども、そういうアンケート調査とか、コンクールの投票にも、タブレットを子供たちはどんどん使っていきました。集計作業があっという間にできる。それから、もちろんコンテストで1位、2位なんていうのもあっという間に結果が出るということで、いろいろな行事の中で、教師の代表だけが審査していたというような活動も、全校生徒によって投票する、そして、すぐ表彰式ができると。そういうようなこともタブレットが入ってきたおかげでできたので、行事の進行とか内容も少し変わっていったなと思います。
 それから、もちろん生徒総会の資料なんかも400人ぐらいの生徒がおりましたので、400部印刷するということも必要がなくなりまして、1人1台端末に配信すると。それを子供たちは自分のタブレットを見て、生徒総会とかいろいろな話合い活動に参加するということもできるようになりました。ただ、選挙は紙でやるべきじゃないかというお考えの先生もいたのは間違いないです。
 こんなふうに特別活動にICTが入ってきたことで、生徒たちも教師もいろいろな形で物理的、時間的に余白が生まれてきたかなと思うので、その余白の時間をまた、それがより深い対話を生み出すことに繋がったり、よりよい合意形成を図ることにつながっていくんじゃないかなと思っています。
 そういう部分がこれの4ページにあったクラウドツールのところで、好事例等の提供の在り方というところで、ICTとか、学習指導要領が実際実施になるともっと、あと5年でICTの活用、生成AIなんかもどう特別活動にというとこら辺とかもいろいろあると思うんですが、そういう部分を何か学習指導要領の解説等の中に事例とかが入ってくると、またもっと活用が進むのかな、そして、余白が生まれるのかなと思っています。以上です。
【恒吉主査】  ありがとうございました。デジタルもそうですけれども、よい事例、特にこれから変化していく領域ですので、それを支える仕組みとか、自信を持って先生方がそれを使えるような学習機会とか、そのようなものがすごく大事になると思います。少し前までOECDの調査とかで、日本の先生方はデジタルのあれとかを使う機会もなければ学習機会もないような結果が出ていましたけれども、本当にここのところかなり変わってきたと思います。ありがとうございました。
 続いて、二木信輔委員、よろしくお願いいたします。
【二木委員】  ありがとうございます。岡山県は岡山市から参加しております、岡山県立岡山東商業高校校長をしております二木と申します。皆さん、よろしくお願いいたします。
 今回の改訂の大きな項目の一つ、子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善という中に、特別活動を中核として見直し、いわゆる再定義だと思っておりますけれども、そういった項目が特出しされるというところ、それに参画できるということは非常にワクワクしております。私も管理職の間にコロナ禍というものを経験して、学校が止まっているものと、学校が活発に動いているというものを如実に感じてきた一人であります。そういった中で、改めて学校が学校である部分ということを、この特活を通じて本当に実感するところが多いと思っております。
 その中では、今、必要とされている、人と人が触れ合いながら、なして学ぶという、この特別活動の一つの考え方、これは今それぞれの教科科目の中でも求められている探究活動にも非常に親和性が高いものとして、あらゆる学校でも受け入れられるのではないかなというところを感じております。
 私は研究者ではなくて、学校現場を実践してきた経験から、皆さんにある程度学校の実情を伝えられたらと思っております。私は本来は教員籍でありまして、キャリア教育が日本で皆さんがどういうものかということを知り始めた頃、平成18年に岡山県の教育委員会に配属となり、県内でいかに普及させるかという仕事にずっと邁進してきていました。その後、学校現場に戻って、管理職で戻って5校を経験したんですけれども、そのうち後半の3校で特別活動に大きく踏み入れることになりました。
 1校目は4クラス規模の小さな学校ではあったんですけれども、学校の中で中心活動として取り組めるものが確立している中で、その中にカリキュラムマネジメントとしていかに様々な学びがそこに収れんされるかというところに、先生方の理解を求めながら進めるということを行ってきました。
 次の学校では、同じ4クラス規模の中規模な学校でありましたけれども、いわゆる多くの学校でそうだと思いますが、様々な学校行事は行っているんだけれども、その一つ一つの関連性というものがなかなか見えてこないというところに、いかに中心活動をそこに据えて、皆さんの意識をそこに収れんさせていくかということ、ここは一番長かったんですが、4年間かけて確立したという経験があります。
 そして、今、進行中の取組としては、大規模校、8クラス規模の学校に現在勤めております。大規模校というのは、皆さん御存じのように、かじ取りというのが難しい、大きな船がなかなか進行方向を変えられないというようなところがあるかと思っております。けれども、中心活動がある中で、何かできるものがあるのではないかと。例えば委員会活動であるとか、自己の成長の見取りや評価方法というものに大きく踏み込んでみようと、最後の教員生活をそこに踏み込んでみようというところを、今、実践しようとしているところであります。
 このたびのワーキンググループで自分の経験がどこまで生かされるかというところは、まだまだ自分の中では心配なところがあるんですけれども、小学校、中学校で様々な取組をしているものを高校で受け止めながら、何とか形にしたいというところに力を注げたらと思っております。どうかよろしくお願いいたします。
【恒吉主査】  ありがとうございました。数学とか親学問があるようなものと違って、やはりさらに特別活動は実践される方々の声が届くことがすごく重要だと思います。その意味でも、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 では、次、望月由起委員、よろしくお願いいたします。
【望月委員】  日本大学文理学部教育学科におります望月由起と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私はこちらの特別活動ワーキンググループとともに、総則・評価特別部会にも委員として参加しておりまして教科・科目とは違う特別活動の評価の難しさをあらためて感じています。このワーキンググループでの議論をふまえながら、総則・評価特別部会でも、発言をしていきたいと思っています。
 私は、主に青年期のキャリア形成と教育支援について、個人に対する直接的・意図的な働きかけだけでなく、学校、家庭、地域社会といった個人を取り巻く背景や環境にも目を向けながら、研究や実践に当たっています。こうした立場から、3点意見をお伝えし、1点問題提起もさせていただきます。
 まず1点目の意見ですが、近年のキャリア教育では、職業的自立だけでなく、社会的自立も重要視されており、そのために必要な能力や態度に着目しています。2022年に改訂された生徒指導提要では、生徒指導との連関として、その第一にキャリア教育との連関が挙げられています。こうしたことからも、学校教育において、将来どのように働きたいのかといったキャリアだけではなく、むしろ、子供たちにとっての現在のキャリア、つまり学校社会の中でどのように立ち振る舞っていくのかにも目を向けていくべきだと思います。これは、ソーシャルジャスティスの議論とも重なります。
 特別活動には、こうした場としての役割も期待されており、教科書がないことをいかしながら、指導というよりも支援をする貴重な場として、先生方に展開していただく必要があると思います。そのためにも、学習指導要領と言いながらも学習支援要領のような内容をいかに提示していくのかといった観点が重要ではないかと思います。
 2点目ですが、特別活動は現行の学習指導要領からキャリア教育の要として位置付けられています。こうした中で、各教科等といかに連携していくか、特に総合的な学習/探究の時間とどのように連携していくのか。キャリア教育の要として、子供たちの学習者としての自立、社会的な自立に向けて、学校でのさまざまな働きかけの成果を特別活動がいかに束ねていくのかを考えなければいけないと思います。
 3点目ですが、論点整理のスライド6や、恒吉先生にご準備いただいた資料でも、「好き・得意をベースとした主体的な進路選択の促進」と示されており、事務局からも、縦の「高中小幼」の箇所で読み上げていただきました。
 現実的に言えば、「好きや得意という意識を持つこと」と、「それをベースに進路選択ができること、実現できること」は必ずしも一致しません。今回お示しいただいたスライドでは、「自らの人生を舵取りする力」と、「持続可能な社会の担い手」が、and(「と」)で結ばれています。これは「キャリア上の自己実現」と「社会参画」を両立させること、そのバランスを取ることを求めているようにも見えます。簡単なことではないですが、「子供たち自身がやりたいと思うこと」「学校や学級という社会の中で自分が期待をされていること」「社会の中ですべきこと」などを実感し、それに向き合ながら過ごせるような学校生活を送れるよう、特別活動には期待をしています。
 最後に問題提起ですが、特別活動の系統性をどう捉えていくのか。特別活動にいかに系統性を持たせるべきなのか。特別活動の系統性をどのように描くのか、それを学校現場の先生方にいかに意識していただくのか。
 いずれにしても、特別活動は、教師が人間であるからこその領域であり、AIに取って代わることが難しい領域であると私は考えています。そのような領域について、私も一人の人間として、責任を持って関わっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【恒吉主査】ありがとうございました。望月委員とはほかの場でも御一緒して、いろいろなところに入ってらっしゃるので、つなぐというお役目、今後ともよろしくお願いいたします。
 それから、系統性という話がここで出ましたけれども、前の自己紹介のポイント紹介のところでも継続性というのはかなり出ていたと思います。私も実は海外の方々に説明するときに、就学前から高校までみんな特活があるけれども、就学前はちょっと遊びも入れて特活っぽいものがありますが、どう発達段階に合わせて発展していって、どう変わっているのかみたいなことを言われて非常に困るところがありました。パワーポイントから写真を実は抜かしてしまったのですけれども、最後のところに、例年はいつも、例年はというか、海外からの方がいらっしゃるときは、就学前からこうやってTokkatsuは発展的に継続しますと、写真で感覚的に感じていただくような構成をしておりました。そういうようなところも多分言語化できるとよいのだろうというのはすごく感じております。本当に核心を突いた御発言ありがとうございました。
 では、今日いらしている委員ですと最後になると思いますけれども、八並光俊委員、よろしくお願いいたします。
【八並委員】  よろしくお願います。東京理科大学の八並です。学術団体日本生徒指導学会の会長をしております。専門は生徒指導、スクールカウンセリングです。本ワーキング以外では、中央教育審議会初等中等教育分科会の臨時委員、あるいは、国いじめ防止対策協議会委員、こども家庭庁のいじめ調査アドバイザーなどを拝命しています。
 他の大学の先生と違って、私はこれまで長く生徒指導を専門にしてきたので、若いときから文部科学省や内閣府のいじめ、不登校、暴力行為、あるいは少年非行、薬物乱用などの有識者委員を多数経験してきました。
 私事ですが、先ほどもあった令和4年12月に文部科学省から『生徒指導提要』が刊行されました。その作成責任者で、デジタルテキストの作成者です。現行の学校教育における指導あるいは支援の知識基盤というのは、学習指導要領と生徒指導提要です。生徒指導提要には法的拘束力はありませんが、今の非常に高い異質性と多様性を前提とした子どもの成長、発達の支援に関する国家基準、つまりナショナルスタンダードだと言えます。
 既に御紹介いただいていますが、生徒指導提要の中の新しい概念として、発達支持的生徒指導があります。用語の説明は省きますが、令和5年に公表された教育振興基本計画において、発達支持的生徒指導の推進が明記されました。次期学習指導要領においても発達支持的生徒指導は、中核的概念になると個人的には思っています。
 望月委員も言われましたが、要は伝統的なやらせる生徒指導ではなく、子どもを主語にして、彼らの成長、発達や社会的自己実現を支える生徒指導、やらせる生徒指導から支える生徒指導へのシフトチェンジが今回の大きな特徴になっています。
 個人的には、大胆な発言をしますが、この発達支持的生徒指導の実践の要が特別活動だと思っています。この点は白松委員の御予想というか、御指摘のとおりです。特別活動は自治的能力、人間関係形成能力、問題解決能力の育成だけではなく、個人的には創造性教育です。すなわち、特別活動は、創造性教育に繋がる総合的で創造的な教育活動だと思っています。
 私は昔、アメリカのインディアナ大学でスクールカウンセリングの研究をしていて、外から日本の教育を見ると、やはり日本の教育の全般的な弱みというのは、子どもちの創造性の育成ではないかと思います。今回の検討事項や現行の学習指導要領において、なぜか特別活動では「創造性」の文言が出ていません。私は今後の日本を考えたときに、子どもたちの創造性なくして日本の未来はないと思っています。
 生徒指導提要の第2章が生徒指導と教育課程、その第5節に特別活動における生徒指導を設定しています。また、現行の学習指導要領の第1章総則の児童の発達の支援、あるいは生徒の発達の支援というのは、新設されています。これは非常に画期的です。望月委員にお頼みしたいのですが、やはりその中で発達支持的生徒指導の明記が必要になるのではないかと思っています。現行ではキャリア教育の充実で特別活動が記載されていますが、特別活動がキャリア教育との関連だけで記載されていいのか、検討課題のような気がしています。
 さらに、生徒指導では、児童生徒が、深い自己理解に基づき、「何をしたいのか」、「何をするべきか」、主体的に問題や課題を発見し、自己の目標を選択・設定して、この目標の達成のため、自発的、自律的、かつ、他者の主体性を尊重しながら、自らの行動を決断し、実行する力、すなわち自己指導能力の獲得を明記しています。
 この自己指導能力は、現行の学習指導要領の育成したい資質・能力の一つである、学びに向かう力、人間性等の涵養や、特別活動の視点である人間関係形成、あるいは社会参画、自己実現と整合性があると思っています。
 さらに自己指導能力は、次期学習指導要領の方向性である、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手の必須のコンピテンシーではないかと思います。
 今後特別活動の議論の過程において、私は生徒指導が専門なので、皆様とは異質な立場から参画しますが、生徒指導提要の読み込みが必要となるので、既に読まれている方も多いと思いますが、ぜひ文部科学省からダウンロードしていただき、読んでいただければ思います。
 今後ともよろしくお願いいたします。以上です。ありがとうございました。
【恒吉主査】  ありがとうございました。まさに非常に世界的にも重要な生徒指導の分野ですので、今後とも御指導よろしくお願いいたします。
 では、いらしている方のうち、高島崚輔委員におかれましては、冒頭のみの御出席でしたが、御発言いただく予定であった内容については、後日、議事録に掲載させていただく予定となっておりますことを申し添えます。
 以上、委員の方々から自己紹介とポイント、これからおそらく各回でもってテーマに沿っていろいろな展開をするときに組み入れていく、より詳しい形で組み入れていくポイントがいろいろ出てきたと思います。同時に、かなり共通した展望みたいなものも見えたのではないかと思います。今日は本当にありがとうございます。
 それで、実は10分ぐらい早いですか。ですが、もしよろしければ閉じさせていただきたいと思うのですけれども、意外と時間どおりいきまして、では、本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降の予定について、事務局よりお願いいたします。よろしくお願いします。
【堀川学校教育官】  事務局でございます。
 次回は11月17日月曜日、13時からを予定しておりますけれども、正式には後日連絡をいたします。
【恒吉主査】  それでは、以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。

 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程第一係

電話番号:03-5253-4111(代表)