教育課程部会 生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和7年10月15日(水曜日)9時30分~11時30分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループにおける主な検討事項について
  2. その他

4.議事録

【荻野教育課程課課長補佐】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループを開催いたします。本日は、大変御多忙の中、御参加をいただきまして誠にありがとうございます。
 開会に当たりまして、文部科学省主任教育企画調整官、髙見英樹より御挨拶申し上げます。
【髙見主任教育企画調整官】  おはようございます。教育課程課主任教育企画調整官、髙見です。生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループの開催に当たり、委員の先生方には御多忙の中、御参加いただき、心から感謝を申し上げます。
 御案内のとおりでございますけれども、2017年に改訂した学習指導要領に基づき、全国の学校で多様な教育活動、精力的な授業改善が行われているところでございます。本日は次期改訂に向けた御審議をお願いするために、皆様にお集まりいただいたところでございます。
 後ほど御説明申し上げますように、先月末には改訂に向けた論点整理を中央教育審議会の教育課程企画特別部会においてまとめていただいたところです。論点整理におきましては、現行の学習指導要領が目指している主体的・対話的で深い学びの一層の具体化、深化を図る深い学びの実装、多様な個性や特性、背景を有する子供が多くなっている実態に向き合うとともに、こうした多様性を個人、社会の力に変える観点からの多様性の包摂、教育課程の実施に伴い、教師に過度な負担感が生じにくい持続可能な在り方を追求し、教師と子供の双方に余白を創出することで豊かな学びにつなげる方向を踏まえた実現可能性の確保、この3つの方向性を次期学習指導要領の改訂に向けた基本的な考え方として示しております。
 まさにこれを土台として、その上に新しい学習指導要領という建物を築き上げていただくことになります。今後、具体的な柱を立てて構造を組み立てていく作業を委員の皆様にお力添えいただきながら進めてまいりたいと存じます。スケジュールといたしましては、令和8年度の夏頃までに審議のまとめを出していただく予定としておりまして、ぜひ活発な御議論を賜り、学校現場で質の高い多様な教育活動が創発されるような新しい学習指導要領を築いてまいりたいと存じます。
 簡単ではございますが、御挨拶とさせていただきます。本日は、どうぞよろしくお願いします。
【荻野教育課程課課長補佐】  議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告をいたします。
 資料4の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理につきましては、奈須正裕教育課程部会長と御相談の上、黒上晴夫委員を主査として、久野弘幸委員を主査代理として御指名し、御就任いただいておりますので御報告いたします。
 なお、生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループの委員の皆様につきましては、資料6として委員名簿を配付させていただいておりますので御覧ください。
 それでは、議事に入ります前に、黒上主査から御挨拶いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【黒上主査】  おはようございます。お忙しい中、御参集いただきまして、ありがとうございます。この部会、いろいろな方からいろいろなことを言われていますけれども、とても重要な、まあ、全ての部会が重要だと思いますけれども、とりわけ重要だと思いますので、皆さん、しっかり御意見をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荻野教育課程課課長補佐】  ありがとうございました。
 それでは、本ワーキンググループの進行は、これより黒上主査にお願いいたします。
【黒上主査】
 それでは、本ワーキンググループ、今から議事に入りたいと思います。今日は進行資料としてお配りしている流れに基づいて議事を進めますので、委員の皆さんにおかれましては、適宜御参照ください。また、本ワーキンググループの審議等においては、資料4の教育課程部会運営規則第3条に基づいて原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づいて議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱います。
 それでは、事務局より会議の留意事項を御説明願います。
【荻野教育課程課課長補佐】  本ワーキンググループは、ウェブ会議と対面を組み合わせた方式で開催をしております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 事務局からの説明は以上でございます。
【黒上主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題1に移ります。生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループにおける主な検討事項について、事務局より説明をお願いいたします。
【荻野教育課程課課長補佐】  教育課程課課長補佐の荻野と申します。私からは現行学習指導要領と今回の諮問事項、また、企画特別部会の論点整理の概要、生活科における課題と検討事項について御説明をさせていただきます。
 初めに資料の1-3を御覧いただければと思います。2ページ目から6ページ目にかけて、基本的な考え方や法的な位置づけ、変遷などについて示しております。7ページ目から8ページ目には、現行学習指導要領として改訂の大きな柱になりました知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成、学びに向かう力・人間性等の涵養といった資質・能力の明確化や主体的・対話的で深い学びの視点からの学習課程の改善等について示しております。
 続いて資料3-2を御覧いただければと思います。昨年の12月25日に文部科学大臣より中央教育審議会に対して初等中等教育における教育課程の基準等の在り方についての諮問がなされました。この中では、2ページにございますとおり、第1により質の高い、深い学びを実現し、資質・能力の育成に繋がると同時に、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方、第2に多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方、第3にこれからの時代に育成すべき資質・能力等を踏まえた各教科等やその目標・内容の在り方、第4に教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策などを中心として、これらに関連する事項を含め、初等中等教育における教育課程の基準の在り方について、幅広く検討することが求められております。
 続いて、資料の2-1を御覧ください。先ほど御説明をいたしました諮問を受けまして、教育課程の枠組みに関する事項や、教科横断的な事項を中心として教育課程企画特別部会において、本年1月以降13回にわたって集中的な審議が行われております。先月19日には、その論点整理として取りまとめられておりまして、25日の教育課程部会で了承されたところでございます。論点整理の詳細につきましては、先日、事務局より解説動画を委員の皆様に共有をさせていただいておりますので、全体の説明は割愛させていただきますが、特に本ワーキンググループでの検討に当たって重要な点に絞って御説明をさせていただきます。
 まず5ページを御覧いただければと思います。次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方としまして、1番、深い学びの実装。2番、多様性の包摂。3番、実現可能性の確保という3つの視点を一体的に具現化していくことによって、多様な子供たちの深い学びを確かなものとし、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育むこととしております。
 6ページ目を御覧いただければと思います。さきに述べた人材を育成していくために各教科等で検討することが示されておりますけれども、特に生活科につきましては、各教科等の欄にございますとおり、生きて働く「確かな知識」の習得、興味・関心が広がる教材・学習方法の選択を促進。自分の意見を表現する活動の充実。探究的な要素を持つ学習活動の充実。家庭学習の内容を自律的に決められるような段階的指導といった視点にも留意しながら御検討いただければと思います。また、総合的な学習・探究の時間につきましては、ここにある総合の欄にございますとおり、課題設定の充実、また、個人探究、グループ探究といった在り方も含めて検討を進めていただければと存じます。
 続いて12ページ目を御覧ください。より深い学びを実現する授業のイメージを教師が持てるように、前回改訂の構造化をさらに発展させ、知識・技能、思考力・判断力・表現力の資質・能力の深まりを示すタテの関係、知識・技能と思考力、判断力、表現力の相互の関係を示すヨコの関係を教師がつかみ取りやすくする観点から、中核的な概念の深い理解と複雑な課題の解決の具体について、各教科等の特性を踏まえて検討していくこととされております。別途設けられております総則・評価特別部会での検討も踏まえて、本ワーキンググループにおいても具体的な、中核的な概念等に関する議論を行っていただくことになります。
 続いて18ページ目を御覧ください。今次の改訂において新たに設けられました資質・能力の1つでございます学びに向かう力・人間性等につきまして、主要な要素や要素間の関係を構造化して、分かりやすくする観点から、ここに示されております図のように初発の思考や行動を起こす力・好奇心、真ん中にあります学びの主体的な調整、右下にございます他者との対話や協働、そして一番上にございます学びを方向づける人間性の4つの区分で、内容、関係性の整理がなされております。これらの内容は、各教科等においても反映していくことになりますので、今後、本ワーキンググループでも御審議をいただければと思います。
 34ページ目を御覧ください。多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程編成を促進するため、児童生徒や地域の実態を踏まえて、必要に応じて柔軟な教育課程を編成することができる取組を進める予定でございます。
 60ページ目を御覧ください。質の高い探究的な学びの実現についてでございます。ここでのポイントは、情報活用能力を各教科等のみならず、探究的な学びを支え、駆動させる基盤と位置づけまして、探究、情報の双方の観点から大幅な改善を図ることとしておりまして、小学校の総合的な学習の時間に、仮称でございますけれども、情報の領域を付加すること。そして、中学校におきましても、情報技術に関連する内容を充実した、仮称でございますが、情報技術科を設けるとともに、高等学校では小、中を踏まえ、情報科の充実を図ることが大きなポイントとなります。
 続いて69ページ目を御覧ください。学習指導要領の構造化や柔軟な教育課程を契機とした教科書についても、中段の改善の方向性にありますとおり、中核的な概念等の獲得に資する内容への重点化であるとか、内容の精選、「教科書を教える」から「教科書で教える」方向に改善を促すとともに、デジタル学習基盤や図書館等の有効な活用も進めることといたしております。
 105ページを御覧ください。今後のスケジュールといたしまして、各ワーキンググループにおきまして、本論点整理の方向性や内容等を踏まえ検討を進めて、遅くとも令和8年の夏頃までに取りまとめを行うこと。教育課程企画特別部会と各ワーキンググループの関係としまして、各ワーキンググループにおける審議は、本論点整理を的確に踏まえて各教科等の固有の議論を加味、共有しつつ、さらに豊かなものとすることが極めて重要であり、各教科等や学校段階に閉じたものであってはならないことが示されております。その他といたしまして、情報の領域や情報・技術科の創設に伴う標準授業時数の増加について、諮問で示されております年間の標準総授業時数を現在以上に増加させないとの方針を前提としつつ、教育課程企画特別部会と総則・評価特別部会にて、教育課程全体を見通した観点から検討を行いまして、令和8年の春頃をめどに一定の結論を得ることなどが示されております。
 論点整理の概要は以上となります。
 続いて、私から続けて生活科に関する現状・課題と検討事項について御説明をさせていただきます。資料1-1を御覧いただければと思います。ここでは今後の本ワーキンググループにおける生活科の論点といたしまして、事務局にて事前に整理した課題と検討事項を示しております。初めに2ページ目を御覧いただければと思います。1ポツの現行学習指導要領のポイントと現状といたしまして、1つ目の黒ポツにございますとおり、学習内容を児童の生活圏としての環境に関する内容、低学年の時期に体験させておきたい活動に関する内容、自分自身の生活や成長に関する内容の3つに整理をしております。また、2つ目の黒ポツ、3つ目の矢印にございますとおり、他教科等との関連を図って、低学年教育全体の充実に加え、中学年以降の教育に円滑に移行することを明示しております。特に幼児教育における遊びを通した学びから、各教科等におけるより自覚的な学びへと円滑に移行できるよう、生活科を中心とした合科的・関連的な指導としてスタートカリキュラムを行うことを明示しております。
 続いて、右側にございます2ポツ、AI時代に求められる生活科の在り方に関する課題を御覧いただければと思います。(1)生活科の学びの本質でございます。生活科の学びで気づきの質をより高めるために、直接体験が重視されておりまして、体験を通して学習対象との関わりを深め、好奇心、そして探究心を育み、豊かな完成を養い、自立し、生活を豊かにしていくことが期待されておりますけれども、現状では、こうした体験の効果を十分に引き出せていないという課題がございます。(2)にございますように、これからのAI時代においては、児童が自身のよさであるとか可能性を実感して、身近な人々、そして社会及び自然との関わりを豊かに認識することが、これまで以上に求められ、直接体験を通じて身体で対象と関わることが一層重要であることがございます。(3)にありますように、インターネットやSNSなどを通じて得られる情報があふれている中、生活科では直接体験を通して言葉であるとか、絵、また、動作など多様な方法で表現し、気づきを高める、そういう活動が大切であるということを示しております。
 3ページ目を御覧いただければと思います。ここでは3ポツの学びの質、学びの意欲に関する課題を示しております。まず、1つ目の黒ポツにございますとおり、児童一人一人の思いや願いを生かした学習活動や深い学びを実現できていないという状況が見られるということ。また、2つ目の黒ポツにございます安全面への配慮や時間的制約から地域に出掛ける活動が減っており、地域の人々であるとか、また、社会及び自然と一体的に扱う学習が難しくなっているという、そういう状況が見られるということです。また、3つ目の黒ポツに掲げるとおり、学習意欲の低下が課題として指摘されておりまして、こういう状況を踏まえまして生活科では児童の「なぜ」や「やってみたい」という好奇心や探究心を高める学習活動を充実させていくことが重要であるということを示しております。
 これらの背景データにつきましては、参考資料1から3に示しておりまして、7ページ目から9ページ目にまとめておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 続きまして、4ポツでは幼保小・中学年以降との接続と教科横断性の課題を整理しております。1つ目の黒ポツにございますとおり、幼児教育と小学校生活科との接続に課題が見られるということ。2つ目の黒ポツにありますとおり、生活科の学びを中学年以降の社会科や理科、そして総合的な学習の時間などにつなげることが十分に実現できていない状況が見られるということ。右側の3つ目の黒ポツにございますとおり、他教科等と関連づけた活動が限定的であるということ。4つ目の黒ポツの算数、音楽、図工、体育など他教科との合科的・関連的な指導への広がりをより確保していくことが求められるということを示しております。
 これらの背景データにつきましては、参考資料の4から6に示しており、10ページ目から12ページ目にまとめておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 続きまして、3ページ目の最後でございます。5ポツの業務の適正化と安全管理に関する課題について示しております。働き方改革で業務の適正化が求められる中、学校での動物の飼育活動や、地域と関わる活動などでは十分な準備や配慮が必要とされるということ。また、安全管理の厳格化により体験活動の準備・責任が増すことも考えられるということ。さらには、必要な経験やスキルを持つ教師の確保が課題となっているということで、人材配置や、支援体制の充実が求められるということを示しております。
 関連するデータといたしましては、参考資料7で、学校での動物飼育についての困難さについての調査結果を示しておりますので、御覧いただければと思います。
 4ページ目を御覧いただければと思います。ここでは本ワーキンググループにおける検討事項、論点の案を掲げております。まず、1ポツ、教育課程企画特別部会の議論を踏まえた検討事項といたしまして、各教科等のワーキンググループにおいて横串を刺した議論をするという必要性があることから、ここで言う(1)から(3)までを課題として、論点として掲げております。
 まず(1)の生活科を通じて育成する資質・能力の在り方・示し方といたしまして、学びに向かう力・人間性等や見方・考え方の新しい整理を踏まえた目標の示し方。1つ目の黒ポツの中核的な概念等に基づく内容、また、各教科との関わりを含む一層の構造化の在り方、3つ目の黒ポツの生活科の特質を踏まえた表形式を活用した目標・内容の分かりやすい示し方。(2)生活科の指導と評価の改善・充実の在り方として、生活科における主体的・対話的で深い学びの一層の充実を図るための方策の具体化、生活科の評価の在り方。また、(3)誰一人取り残さず資質・能力を育成する柔軟な教育課程の在り方として、義務、高校、それぞれの柔軟化の仕組みを踏まえた教育課程・学習指導の工夫、課題や、それを防ぐための運用方策の検討などを掲げております。
 4ページ目の右側を御覧いただければと思います。ここからは生活科に関する課題を踏まえた固有の検討事項を掲げております。この中では、(1)AI時代における生活科の在り方に関する検討の方向性として、以下の黒ポツに生活科の本質と価値を問い直す必要性、身体性を重視した直接体験・多様な表現を行う機会の必要性を論点として挙げつつ、あくまでも一例ではございますけれども、今後の議論に当たっての検討の方向性の例を網かけ部分に示しております。
 5ページ目を御覧いただければと思います。続いて(2)学びの質と学びの意欲に関する課題と検討の方向性を示しております。ここでは1、学びの質保証といたしまして、「活動あって学びなし」を防ぐ方策について、2としまして学びの意欲醸成として学習対象と自分との関わりを重視しまして、児童の多様な興味・関心を生かした単元構成と柔軟な授業実践にしていく方策についてを論点として掲げております。続いて(3)幼保小・中学年以降との接続と教科横断性に関する課題と検討の方向性を示しております。1、幼保小・中学年以降との接続・発達の連続性といたしまして、幼児期から中学年以降の発達に応じた連続性ある学びを充実する方策。総合的な学習の時間をはじめとする中学年以降の探究的な学びとの関係性の整理、括弧で示しておりますが、情報活用能力の育成と身体性を重視した直接体験とのバランスの在り方を示しております。
 5ページ目の右側を御覧いただければと思います。2の教科横断性・年間指導計画の充実でございます。年間を通じて合科的・関連的な指導の工夫を計画的に行えるよう設計する方策について論点として掲げております。最後に(4)業務の適正化と安全管理に関する課題と検討の方向性としまして、飼育活動や地域と関わる活動などの準備負担や、リスクを軽減するための方策。働き方改革の流れに沿って持続可能な生活科の学習活動を再設計する方策を論点としていきたいと考えております。
 生活科に関する資料の説明は以上でございますけれども、これらは、いずれも議論を円滑に進めていくに当たっての事務局のたたき台でございますので、記載の内容にかかわらず、より広範かつ深い視点で様々な御意見をいただければ幸いでございます。生活科の説明は以上でございます。
 続いて、総合的な学習・探究の時間の説明をさせていただきます。
【堀川教育課程課学校教育官】  学校教育官の堀川でございます。私からは資料1-2、総合的な学習・探究の時間に関する現状・課題と検討事項につきまして御説明を申し上げます。
 先ほど荻野課長補佐から御説明がございましたけれども、総合に関しましては論点整理の第1章、第4章等に関連の記載がございます。本資料については、これら論点整理の記載を具体化するという観点から、本ワーキングにおける議論の全体像としてお示しをさせていただくものでございます。
 1ページ、現状と課題でございます。1番、総合の特質と現行のポイントでございます。総合的な学習の時間は、横断的・総合的な学習を行うことを通じて、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていく資質・能力を育成することが目標であります。各学校が総合の目標・内容を定め、創意工夫を生かした特色ある教育活動の展開につなげる等の特質を持っております。また、現行では小中学校での成果を生かしつつ、より探究的な活動を重視するという観点から、高校における名称を「総合的な探究の時間」として位置づけを見直したところでございます。
 2番、総合がもたらした成果でございます。総合の創設から約30年が経過し、積極的に取り組む教師・児童生徒が増加傾向にあり、地域課題の解決や地方創生に寄与する例も生まれております。また、全国学調においても、様々なアンケート項目で肯定的な回答が見られます。具体的には、授業で課題の解決に向けて自分で考え自分から取り組んでいる、地域や社会をよくするために何かしてみたいと思う、といったアンケート項目への肯定的な回答が見られます。また、探究の成果を発表するステージが官民の双方で広範に展開をされる高校・大学入試で積極的に評価を行う例が増えているなど、社会全体で探究を応援する機運が醸成されてきているところでございます。
 右側3番、小中高に共通する課題でございます。目標や範囲に関わることとして、探究の質の考え方、目標の示し方を含め、探究の意味する範囲や発達段階に応じた学びの姿が十分に共通認識をされていない。総合の目標と学校教育目標との関連を図ることとしておりますけれども、具体の姿が必ずしも明確ではない。何をどのように評価をするのか、しなくてよいかなど目標に照らした評価の考え方や方法が必ずしも明確とは言えない。こうした中、インターネットから収集した情報を単に切り貼りをしている事例や、探究のプロセスを形式的に回し、学びが空洞化している事例も散見されるところでございます。
 デジタル学習基盤の活用についてでございます。いわゆるデジタル技術の民主化が進む中で、ICTが本来相性のよいはずの探究において、十分に活用をされていないという現状もあり、デジタル学習基盤を、探究を支える基盤としてさらに機能させる余地が大きいということがございます。また、このような中で生成AIを含むデジタル技術の活用について、具体的な考え方が示されていないといった課題がございます。教師の負担感に関わることでございます。カリキュラムの設計に困難を感じるなどの声、また、校務分掌や伴走支援、地域の支援体制等が十分に整備されていない中で、特定の教師に負担が偏る傾向がございます。
 2ページ目でございます。テーマ設定や各教科等との関連ということで、探究をテーマとして、ものづくりや科学技術のテーマが少ない。学校で設定した総括的なテーマが重視をされ、個人の興味関心が十分に考慮されていない例が多く見られる。教科等横断が過度に強調されることで、生き方、在り方と向き合うことにつながっていない事例や探究課題を児童生徒が各教科の題材から見いだす場合に、そのことを総合でより一層深める余地があるとの指摘もございます。また、各教科等で探究の位置づけや具体的なイメージが曖昧であったということもあり、総合と各教科等との連携には改善の余地が大きいところであります。また、自己の生き方、在り方に関わる領域という点で、共通性を有する特別活動や道徳との役割分担が明確ではない。総合における学習活動をもって行事の実施に替えることができる場合の整理が十分ではないなどの指摘もございます。
 3番、小学校固有の課題でございます。論点整理においては、小学校総合に情報の領域(仮称)を付加するに当たり、情報技術の学習自体が総合の目的との誤解を受けないよう、探究的な学びの特質を十分が発揮されるよう配慮しつつ、探究的な学びと一体的に指導する必要性を提起しております。これを踏まえ、具体的な位置づけや情報の領域での学びを基盤として、質の高い探究を実現していく学習の在り方を検討していく必要がございます。
 4番、中学校固有の課題でございます。総合の本来の趣旨とは距離のある様々な活動に総合の時数が充てられ、まとまった時間を割いて探究に取り組めていない事例があるとの指摘もございます。また、高校入試も控える中で、小学校、高校と比較をしても、精力的な実践が十分ではないとの指摘もあり、過度な負担なく実施ができる質の高い探究の在り方を検討する必要がございます。また、生徒の多様な興味関心に応じることが必ずしもできていないとの指摘がある中で、効果的・効率的な校内体制の整備を進める余地もございます。
 5番、高等学校固有の課題でございます。生徒が自ら課題を設定する取組が少しずつ定着しつつあるものの、総合の本来の趣旨とは距離のある活動が依然として残っております。定時制、通信制等といった課程や普通科、専門学科等といった学科の違いに加えて、統廃合等による生徒集団の多様性の拡大も相まって、目指す探究の姿を各学校が試行錯誤する必要があり、取組状況に大きなばらつきがございます。授業時間数には限りがある中で、カリキュラムが過密であることもあり、学校外をフィールドにした大胆な取組が行いにくい。校務分掌や伴走体制、地域資源の活用が必ずしも進んでいない中で、一部の担当教員に大きな負担がかかっている例もあるといった課題がございます。
 また、下の四角囲みでございますけれども、論点整理第4章、検討の方向性を抜き出したものでございます。探究の充実については、学びに向かう力・人間性等の涵養に大きな役割を果たす潜在性を有している。とりわけ生成AIが急速に発展をし、自己の考えや意思が一層重要になる時代に向け、思考や行動・好奇心の芽を一層、大切にするとともに、好きや得意を伸ばし、夢や希望を育み、自らの人生を舵取りする力につなげていく学びを一層重視する必要があるということが示されております。
 続いて3ページ、検討事項・論点でございます。1番、企画特別部会の議論を踏まえた検討事項として(1)育成する資質・能力の在り方・示し方として、学びに向かう力・人間性等や見方・考え方の新しい整理を踏まえた目標の示し方、中核的な概念に基づく内容や各教科との関わりを含む一層の構造化の在り方。表形式を活用した目標・内容の分かりやすい示し方について御提示をしております。(2)指導と評価の改善・充実の在り方でございます。情報活用能力の育成強化を基盤として、好きを育み、得意を伸ばすことに繋がる質の高い探究の充実のための方策、これは気づきや試行錯誤を促す適切な問いかけなど教師が適切に指導性を発揮し、基礎的・基本的な内容を踏まえつつ、探究の質を高める授業改善の在り方を含むものでございます。次に効果的かつ過度な負担が生じにくい総合の評価の在り方でございます。これは論述・レポート・プレゼン・作品製作等の学びの主体的な調整が求められる評価課題の重視の在り方を含むものでございます。
 右側、(3)柔軟な教育課程の在り方でございます。義務教育における調整授業時数制度、高等学校における科目の柔軟な組み替えを可能とする仕組みを前提とした場合に考えられる教育課程・学習指導の工夫の在り方、これには関連して学校教育目標やスクールポリシーと総合のカリキュラムとの関係性の考え方も論点でございます。また、研究開発学校で事例もございますけれども、裁量的な時間を活用して個人探究を伴う体験活動を行うと学校が判断する場合の総合との役割分担の在り方、教育課程の柔軟化に伴って生じる課題とそれを防ぐための運用の在り方についても御議論いただければと考えております。
 2番、固有の検討事項についてでございます。(1)小学校段階として情報の領域(仮称)の具体的な位置づけや学習の在り方、これは情報・技術ワーキングと合同で検討をいただくことを予定しております。まず、初等中等教育全体を通じて育むべき情報活用能力の体系性、そして系統性を踏まえた小学校段階で育むべき情報活用能力の在り方。そして、情報の領域において探究的な学びの特質が十分に発揮されるような学習の在り方、特に情報の領域と従来の総合における探究との関係性やその具体的な在り方。
 4ページ、また、技術の進展に伴い、教育内容が妥当性を失うことを防ぐとともに、教師の過度な負担を避けつつ、現場が手軽に使うことができる情報の領域の教材の提供など、必要な環境の整備の在り方についても御議論いただければと考えております。
 中学校・高校段階につきましては、その実情や発達段階を踏まえた質の向上の具体的な在り方、情報・技術科や情報科での学びの総合における探究への効果的な活用の在り方、そして小学校から高校を通じての論点でございますけれども、探究に関する考え方の整理、具体的には「探究」の意味する範囲や質の考え方。探究のプロセスの在り方、学校段階に応じた資質・能力の示し方、学びに向かう力・人間性等を育む上での探究の役割、問題発見・解決との関係、そして総合と各教科等との関係の示し方として具体的には生き方に関わる領域である道徳、特別活動との関係、これはキャリア教育における総合の役割や学校行事との関係を含むものでございます。また、総合の探究と各教科の探究との関係、総合の探究と各教科の学びとの関係、これにはとりわけ探究を適切に機能させるための基礎・基本の習得の重要性や、質の高い探究のプロセスが基礎・基本の習得の必要性を感じさせ、両者が往還をして高まっていくなどの関係を含むものでございます。
 右側でございます。また、総則で総合における学習活動をもって相当する学校行事に掲げる各行事の実施に替えることができるとされている中にあって、総合と行事との効果的な連携や役割分担の在り方、発達段階や情報活用能力の向上を踏まえたグループでの探究と個人探究のバランス、多様なテーマ設定、生成AIを含むデジタル技術の活用についても御議論をいただければと考えております。(4)その他条件整備等といたしまして、個々の児童生徒の思いや願い・好奇心に基づく探究の推進、カリキュラム設計の負担軽減、教職員の学びの機会の充実の在り方。また、一部の教員への過剰な負担がかからないような持続可能な校内体制の工夫やその示し方、地域人材や企業等との連携の一層の推進に向けた方策。探究のフィールドが外部に広がる中で、社会の理解を促進する観点からの外部に協力を求める場合の基本的な留意事項の必要性等も踏まえた、教員や児童生徒が自由に参照できるデジタル技術も活用した参考資料の在り方や示し方。探究の支援や成果の発表の場ともなる外部のイベント等についての国としての更なる振興の在り方、こうした論点について御議論をいただければということで、以上が総合に関する検討事項及び論点としてお示しをさせていただいたものでございます。
 加えまして、6ページから11ページに論点整理、第4章の抜粋、そして12ページから55ページに総合に関するこれまでの学習指導要領の変遷を含む参考資料もお示しさせていただいおりますので、併せて御覧いただければと思います。
 事務局からの説明は以上になります。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 今日は、第1回目ですので、初めての顔合わせでもあります。皆様お1人ずつから、今後特に検討を進めるべきとお考えになっている事項等について御発言をいただきたいと思います。基本的には名簿順に御指名させていただきますけれども、皆様、各人3分以内で御発言をお願いいたします。大変人数が多くなっておりますので、あまり後ろに延びないようにしたいと思います。
 名簿順と言いましたけれども、今日、成田委員が途中で御退席予定と伺っておりますので、まず成田委員から御発言をお願いしたいと思います。
【成田委員】  成田奈緒子と申します。皆さん、よろしくお願いいたします。私、もともとが小児科医でして、いろいろな研究生活をした後に、今、20年前から文教大学の教育学部におりますので、実は教育に関しては本当に門前の小僧でよく分かっていないところが多いので、皆様から学びを得ながら、私ができることを貢献したいと思っています。
 私自身は、家庭教育といいますか、家庭生活の中で子供の脳が発達すること、特に睡眠、その他、食事、そういった本当に基本的な生活の重要性に関して長く提言をしたり、研究をしたりしてまいりましたので、この幼児期の生活に基づく脳の発達がないと、教育にうまく接続しないと考えております。生活の中には、家庭生活の中には体験と称されるものがたくさんあるし、そこが本当に教育に接続するものであると考えているので、そういったところをもし何かお役に立てれば、お話しできたらと思います。どうぞよろしくお願いします。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、続いて伊藤委員より御発言、お願いいたします。
【伊藤委員】  伊藤と申します。小学校の校長をしております。日々学校現場にいる立場でお話しさせていただきます。よろしくお願いします。資料の1-1、生活科に関する検討事項から2点、思うところを述べさせていただきます。
 まず1点目は、資料の2ページの2の部分です。2ポツの部分のAI時代に求められる生活科の在り方に関する課題というところについてです。ここに示されている課題が、生活科の学びの本質に関わる内容であるということを非常に重く受け止めているところです。生活科では身近な対象に直接関わる具体的な体験、具体的な活動や体験を前提、特質としています。その重視している直接体験を深い学びに結びつけ切れていないという現状が非常に大きな課題であると捉えています。また、深い学びに至らない原因がどこにあるのか、例えば体験の質なのか、振り返りの在り方なのか、子供が活動しているときの教師の見取りにあるのか、適切なフィードバックの問題なのか、あるいはこの体験活動を通して、こういう資質・能力を育むのだという教師の狙いが明確になっていないところにあるのか、その辺も気になるところです。 
参考資料1の児童の思いや願いを意識した深い学びの実施状況を見てみると、深い学びに対する教師の意識の高さは伺えるのですけれども、その一方で、なかなか活動や体験が深い学びに繋がるイメージを持ちにくいというギャップが見られます。ここにどう向き合っていくか、分かりやすい指導要領という話も出ていますけれども、この点について検討を進めていく必要性を感じました。
 2点目ですが、それは幼保小接続についてです。これまで国からもいろいろ接続を進めるための具体的な資料が学校に示されていて、多くの学校で授業や行事レベルでの園との交流が進んできているなというのは実感しているところです。一方で、参考資料4を見たときに、接続を見通した教育課程の編成、実施がまだ進んでいないということ、そして、この傾向が、自分の知る限り長年変わっていないと、捉えているのですが、ステップ3への移行の難しさをとても感じています。
 学校側で言えば、接続に関する取組が、例えば学年裁量に任されていて、学校体制として全体の教育計画に位置づけ切れていないという状況も耳にします。それゆえ、持続可能、発展可能な取組に至っていないという現状があるのかもしれないなと思っています。論点整理でも、柔軟な教育課程実施の方向性が出ているので、幼保小の接続の取組についても、教育課程レベルでの前進が望まれるところではないかなと考えています。
 以上です。
【黒上主査】  どうもありがとうございます。
 続いて、岩本委員より御発言をお願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。どうぞよろしくお願いいたします。私からは、今後のこのワーキングが、情報やデータを活用した議論がしっかりとできるように、今後あるとありがたいなという情報について3点ほど述べさせていただけたらと思います。
 1つ目が、子供の声についてです。子供に影響を及ぼす規則等については、子供の声を聞いて定めることが望ましいという、こども基本法とかの趣旨など考えれば、今のこの生活、また、特に総合に関して、児童生徒が実際どのように感じて、どのような思いや願いをこの総合だとか、こういった探究自体に持っているのかというところを、定量、定性ともに、また、よい声も悪い声も含めて、やっぱり子供の声がさらに見えてきていると、議論がより促進されるかなと思いますので、あればぜひまた今後とも御提供いただけたらと思います。
 2つ目が学級や学校風土と教師の在り方とこの探究に関しての情報です。質の高い探究的な学びの実現には、この明示的な指導計画とか指導プロセスだけではなくて、学級の風土の影響だとか、さらには、その風土の形成に大きな影響を及ぼしている教員の指導観だとか指導姿勢というのが非常に関係しているというような指摘もされています。こうした探究的な学びと学級風土だとか、教員の指導観だとか指導姿勢というところの関係性を示すような研究やデータ、エビデンスといったものがあれば、分かる範囲でまた共有いただけるとありがたい。表面的なやり方論だけではない深い議論ができていくかなと思いますので、お願いできたらと。
 最後、3点目は、高校入試に関しての情報です。高校段階の総合的な探究の時間が大きくここ近年変わってきた。そこの大きな要因の1つはやっぱり、大学入試の変化であるということは、現場の実感からしても、また、多くの声からしても否めないと思います。今後、中学校だとか小学校の総合ということも考えると、多面的な資質・能力をしっかりと評価する高校入試の改革だとかが、今現状どうなっているのかとか、総合等で身につけた資質・能力も適切に評価されるような高校入試とか選抜方法って、今具体的にどういったものがどの程度できているのかとか、そういったところも、やっぱりリアルな情報としても情報提供していただきながら、しっかりと高校の入試だとか、そういったところにもつながっていくような、しっかりとした設計をしていかないと上滑りの改革議論になってしまったりとかしてしまいますので、そういったところの情報もあれば、また今後ぜひ御提供いただけたらと思います。
 以上です。どうぞ、これからよろしくお願いいたします。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 続いて、川越委員、よろしくお願いいたします。
【川越委員】  ありがとうございます。東京大学生産技術研究所の川越至桜でございます。今回はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。私は科学技術教育やSTEAM教育といった教科等横断的な教育に向けた実践研究を行っております。バックグラウンドは、宇宙物理学のため、物理教育や天文教育といった観点でも研究活動を進めているところでございます。私からは、総合的な探究の時間など探究的な学びについて2点、お話しさせていただければと思います。
 資料1-2の3ページ、4ページ目と関係するところになりますが、探究的な学びについては、現場の先生方とお話しさせていただく際に、指導が難しいというお声を聞く機会も多いなと感じております。このような探究学習は、これが探究ですという型にはめるようなものではないとは思いますが、まだまだ指導が難しいという先生方に向けては具体例であったり、基本的な探究学習としてのデザインというものが提示でき、ICTの活用も含めて明確になると、より多くの先生が取り組みやすくなるようになるのかなと思っております。
 特に各教科での学習を統合して探究学習を実施し、そしてまた探究学習を深めるために各教科に立ち返るという、各教科と探究とのつながり、循環する学びというのをどのように実現させるのかというところも、探究学習を深めるために非常に大切な観点かと思いますので、今後議論が必要ではないかと思います。こういった探究的な学びは、STEAM教育との親和性も非常に高いですので、STEAM教育を通した探究といった実践例も何かヒントになるのではないかと考えております。
 2点目は、こういった学習については、評価が難しいところかと思っています。どういった観点で、どのように評価したらいいかというのも、型にはめたり、絶対的な指標というものがあるわけではないですが、評価するために必要な要素や、基本的な観点、また、そういった評価をしていくために、どういう手順を踏んでいけばいいのかといったところが、より明確になり、具体例としても挙げられるといいのではないかと考えております。ぜひこういったところ、先生方と議論させていただければと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、木曽原委員、よろしくお願いいたします。
【木曽原委員】  木曽原と申します。よろしくお願いいたします。私は民間の立場から、探究の教材を作らせていただいたり、あとは地域、自治体からお声がけいただきまして、地域×探究という形のカリキュラムというのを10地域以上、作らせていただいて、各地域で展開していただいているというようなことをやらせていただいています。
 また、併せて「自由すぎる研究EXPO」という中学生、高校生の探究を称賛する場を企画させていただいておりまして、今年ですと企業様、団体様、約35団体ぐらいにそれぞれ独自の賞を設定していただいて、様々な立場から称賛していただくというような場を運営させていただいております。今回、私自身がまた学んでアップデートしないといけないなと思っているんですけれども、特に行事との接続ですとか、あとは企業様と協力していくときの、お互いにとってどう整理すると企業様とか地域とか団体様も教育を支援しやすいのかというような部分で、何らか少しでもお役に立てればと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、久野主査代理より御発言をお願いいたします。
【久野主査代理】  よろしくお願いいたします。今日は時間もありませんので、私からは生活科に焦点化してお話しさせていただきたいと思っています。生活科の方の資料の16ページに、生活科の変遷が記載されていますけれども、比較的生活科は、ある意味、無風というか、大きな議論にならずに、特段大きな課題というよりも、現状維持的な傾向が強かったかなと思っています。ただ、今回、前回の改訂で資質・能力、今回の改訂で情報通信技術と、これに関連してやはり生活科も大きな変更というか、重要な局面に差しかかっているのかなと捉えています。これは総論ということで、この後、各論3つとして捉えています。
 1つ目は、後半のピンク色の検討事項・論点1の(1)(2)、それから、2の(2)、この辺り生活科の本質的な議論のところになります。生活科の本質は、やはり気づきということだろうと思うのですが、この現行の指導要領になって、生活科の、いわゆる旧来の観点から、気づきという言葉が消えたというか、当然、統一していますので、気づきは知識に相当するものですけれども、この辺のやっぱりギャップもありますし、それ以前は気づき、そして気づきの質を高める。一時、知的な気づきという少し、若干ミスリード的な傾向もあって、それはまたうまく戻して、気づきの質を高めるというふうに積み上げてきたものが、ここ最近、その気づきという議論が後退することによって、生活科の本質的な議論が少し弱くなっているかなと感じています。
 検討課題の2の3ページになりますけれども、そのところにもありますように、学びの質に関する議論の中に記載されている深い学びを実現できていない状況が見られるという指摘があります。やはり教師の子供の活動に対する見取りが子供の活動やそこで学んでいる姿が全然見えていなかったり、タイミングよくその気づきを引き出す例をためらったりしていないかと思われるところがあります。つまり、子供の活動していることに触ってはいけないのではないかとか、あまり教師のほうで出過ぎてはいけないのではないか、そういうのがあると思いますが、これはやはり、先ほども少し議論が出ました生活科の専門性を持つ教員が不足している関係で、総合も同様かもしれませんが、低学年教育の専門性というようなところは、やはり重要な点かなと思っています。これが1点目です。
 2点目として、AI時代の生活科の在り方、4ページのところにある論点1の2の(1)辺りです。企画特別部会の前の議論となる「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の第3回で安宅和人先生が、AI時代こそ、経験が物を言うのだというような主張をされていたと思います。詳しくは省略しますけれども、幼児教育や小学校低年期からやはり実物に触れたり、体を使ったという表現、幾つもありますけれども、経験的な活動を行う中で、やはり物事の判別のデータが体の中に蓄積されているというか、物事を、例えばよい、悪い、おいしい、まずい、これはいいのか、いかんのか、そういう判断も体を通して経験の中から蓄積されている。
 そういう意味では、情報活用能力が端末の利用ということ以上に、そういう身体性を持った経験、体験、ここにやはり生活科の本質と情報との結節点があるのではないかなと考えています。このことは、生活科の今までの経過目標の最初に、具体的な経験や活動を通すということがついてきていますけれども、ここはやはり生活科の本質に近いところかなと。そこから繰り返し活動を行って身体性を発揮する。この辺が生活科の本質、そこに情報、あるいはAIをどうつなげていくかということが重要だと思います。
 3点目です。中学年以降の接続ということで、論点の2の(3)になります。教員の間に、実は生活科が原理的に総合的な学習に繋がるとか、学習課題として、あるいは内容としても、理科や社会と接続しているという意識が実は乏しいのではないか。生活科は生活科でやるけれども、総合側は総合として新しく3年生になるとスタートするような意識がどこかにあるのではないかなと。原理的に子供の思いや願い、経験、体験を通す、実社会、実生活と関わる。そのスマートな生活科から総合への接続、これはやはり意識的にまず切れているのではないかなということを考えています。
 探究の力とか問題解決力の源にあるのは、身体性のある経験活動で生まれるのではないか。そこによって生まれるのが、最初にお話しした気づきではないかと思っています。気づきという文言が少し後ろに下がってしまっていること、これは少し生活科の実践が気になるところの源流になっているかなと思っています。総合的な学習の出発点にある探究課題、これはやはり身近な環境の変化とか、環境の様子へ、いわゆる気づくことから始まり、気づきの力を育てることで課題設定の基になる主題に対するこだわりとか、対象に対する思いとか、そういったものを生み出すのではないかなと。資料の文章の中にも、子供の、児童の思いや願いを出発点としてとありますけれども、実はその前にやはり経験や活動があって、それがあるからこそ、思いや願いが生まれてくる。この視点が大事ではないかなと思っています。
 最後におまけですけれども、生活科としては、飼育、栽培の点と、それから、家族単元、これ、過去二、三回の改訂で、少し継続審議的な位置づけになりますので、ここ、気をつけたいなと思っています。また、先ほど資料の中にもありました直接、人、社会、自然と関わる活動や飼育、栽培、これはやはりコロナ禍で関わりが少し切れている傾向もありますので、この辺り、今だから取り戻すべきものがあるのではないかなと考えております。よろしくお願いいたします。
 以上です。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、小見委員より御発言、お願いいたします。
【小見委員】  小見まいこと申します。よろしくお願いします。私はコミュニティスクール推進員、CSマイスターとして地域と学校をつなぎ、協働による教育活動のコーディネートやカリキュラムの共同開発などに携わっております。本ワーキンググループにおいて、大きく3つ議論したい点があります。1つ目が特に生活科や総合的な学習の時間では、地域の人と関わり、地域を学びの舞台にするということが求められていると思うのですけれども、まさに生活、総合は、社会に開かれた教育課程への入り口になると感じています。
 実際、子供たちが探究を深めていこうとすると、もっとやりたいと、どんどん地域に出ていきます。そこにおいて伴走する大人の存在は欠かせないと考えています。しかし、先生方だけで全て支えるのは負担が非常に大きく、結果的に社会と関わる探究を進めにくくしてしまうという側面もあると思っています。ですので、学校運営協議会の場などで生活科や総合を含めた教育課程全体で育てたい資質・能力を共有しながら、地域学校共同活動をさらに充実させたり、社会教育と役割分担を明確にしていくということが大切だと考えています。その上での方策や留意事項などを検討していきたいです。
 2つ目は、現場においてまだまだ総合や探究の時間がイベント的になってしまっていたり、前年踏襲で目の前の子供たちや、地域の実態に即した探究になっていないという実践も散見されています。特に中学校や高校では、総合学習や総合探究において職場体験やインターンシップ、職業講話、進路講話などキャリア教育の取組というのがなされていますが、キャリア教育と総合学習の整理がうまくなされていないと感じています。また、論点整理にもあったように、小学校では情報の領域が加わり、調整授業時数制度も導入される予定です。そのような総合における変化の中で、探究をする時数が減ったり、調整して逆に増えていくなどの学校もあると思います。いま一度総合の意義を問い直し、整理をしていくということが必要だと感じています。
 3つ目ですが、生活科や総合の学びは正解がないので、総合学習、生活科が好きな先生方はどんどんやるけれども、苦手な先生や経験が少ない先生は受け身になりがちだと感じています。先生たちが楽しみながら生活や総合の授業を構想したり、実践できるようにするということが必要だと感じています。そのためには、先生方自身の学びの機会や教員養成段階での育成の在り方についても改めて検討していく必要があると考えています。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【黒上主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして酒井委員、よろしくお願いいたします。
【酒井委員】  立命館宇治中高の酒井と申します。よろしくお願いします。私は中高で数学の教員をしています。現在は主に高校のキャリア教育や探究に関わっています。私学にいますけれども、高校を中心に多くの学校の先生方からもいろいろなお声も聞いています。そのことも踏まえて3点、申し上げたいと思っています。
 1点目が、総合的な学習・探究の時間と教科及び特活やキャリア教育との往還についてです。先ほどから何度か議題になっていますが、やはり総探と教科が行き来することでこそ、学びは深まりますし、探究が生徒の成長に繋がると思っています。特に高校では総探が定着しつつある今だからこそ、往還の仕組みを議論するときではないかと思っています。同時にキャリア教育の視点を重ねることで、学びが自分と社会をつなぐ探究として機能する気がしています。総探とキャリア教育が学校の核として整理されたら、次の教育が見えてくるような気がしています。
 2点目が、教員が育つ総探、総合の在り方です。よく総合の負担は言われますが、担当者任せにせず、教科を超えて協働できる機会になりますので、教員自身が学び、成長する機会にもなります。教員が自身の指導の在り方を問う機会にもなります。教員の学びと生徒の学びは相似形と言われています。教員が探究的に育つ学校づくりをどう実現するか、この条件とか仕組みも含めて、今後議論を深めたいと思っています。
 第3に学校や教員を支える外部の人たちの在り方についてです。今既に地域おこし協力隊、コーディネーター、キャリアコンサルタントなどいろいろな方が学校を支えています。こうした方たちが学校を理解しながら、ともに探究をつくっていく、その仕組みをどう整えていくか。これが大事な時期ではないかと考えています。制度の整備はもちろんですが、学校現場と社会が学び合う関係を築ければ、より持続可能な総探になるのではないかと思っています。今日は、それぞれ簡単にしか触れられませんが、ワーキングの中で議論を深めたいと思っています。よろしくお願いします。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  ありがとうございます。信州大学教育学の佐藤と申します。私は、元小学校教諭でございまして、専門分野は教育工学や情報教育というところでございます。最近ではGIGAスクール構想や生成AI等を中心に小学校と関わっている者でございます。こうした立場から3つ意見を述べさせていただきます。
 1つ目でございますけれども、探究と情報活用能力の関係性についてです。今の課題として、探究的な学習の過程が形式的に行われていることや、インターネットから収集した情報を単に切り貼りするというような事例というのも見られていて、学びが空洞化しているというようなことも指摘されていると思っております。先ほどお話がありましたように、こういった状況というのは、情報活用能力の指導が不足しているからこそ起きるものと考えておりまして、活動あって学びなしというような状況になっているのではないかと考えております。こうした観点から言えば、質の高い探究を実現していくための基盤として、大臣諮問で言われているとおり、情報活用能力の抜本的な向上というのは欠かせないのではないかと捉えております。情報の領域(仮称)を付加する方向性というのは、探究と情報活用能力を一体的かつ重点的に指導していくという意味で非常に重要と捉えております。
 それから、2つ目でございますが、情報活用能力の指導についてです。この情報活用能力は、論点整理の中では情報技術の活用、情報技術の適切な取扱い、情報技術の特性の理解の3つで構成されております。特にこの活用するという力を発揮するためには、適切な取扱いや特性の理解が必須と捉えております。それから、取り組んでいく上では、技能の習得も必要となると捉えています。技能は繰り返し練習したり,意図的に活用していく場面をバランス良く教育課程で設定したりすることも大切だと捉えております。これらが積み上がっていくことを通して、デジタル学習基盤や生成AIが適切に活用されていくということに繋がっていくと捉えております。それから、併せて情報活用能力は学習の基盤であり、各教科の資質・能力の育成に際しては、情報活用能力が発揮されるかどうかで大きく影響しますので、情報活用能力を探究とともにきちんと指導していく、発揮していくということが必要と捉えております。
 最後になりますが、生活科の話も先ほどありましたように、身体を使って実物に触れる、そして具体的でリアルな体験を通して学ぶことを注視しつつ、こうした体験が豊かに拡張されていくためにデジタル学習基盤をどう活用していくのかという話と、中学校の情報・技術科や高等学校情報で学んだことが総合的な学習や探究の時間においても発揮されていくためにはどのような方略や方策、カリキュラムマネジメントが必要なのかに関しても議論していく必要があると捉えております。
 私からは以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、西岡委員より御発言をお願いいたします。
【西岡委員】  京都大学の西岡と申します。教育法学が専門で、カリキュラムや評価に関して研究をしております。よろしくお願いいたします。私からは総合的な学習・探究の時間に関して、次の3点の検討が重要ではないかと考えております。
 第1に、カリキュラムにおける総合的な学習・探究の時間の位置づけを明確にすることです。現行の学習指導要領では、資質・能力の3つの柱をカリキュラム全体に均等に位置づける整理になっております。実は、私自身、現行の学習指導要領改訂の議論の出発点となった検討会の委員を務めていたのですが、実を申しますと、当時は時間切れで、教科と総合的な学習の時間等との違いについて十分に整理することができませんでした。しかし、本来であれば、教科においては各教科の本質的な内容を効果的に学べるようにパフォーマンス課題なども持ちつつ学習を組織することが求められるのに対して、総合的な学習・探究の時間では、子供たち自身が自分なりの問いを立て、課題を設定して探究していく力を培う役割が求められるだろうと考えます。つまり、総合的な学習・探究の時間は、資質・能力の3つの柱の中でも特に学びに向かう力・人間性等の育成を中心的に担う時間として位置づけることが重要であろうと考えます。
 第2に、総合的な学習・探究の時間において、探究力を育成するためには、学校のカリキュラムづくりにおいて、探究に値するテーマをどう設定すればよいか、また、子供たちの問題意識を育むにはどうすればよいのかについての知見を共通理解しておくことが重要であろうと考えます。総合的な学習・探究の時間については、もとより各学校がそれぞれの特色を生かしたカリキュラムづくりを行うことに大きな意義があると思います。しかしながら、先ほど他の委員の御意見もあったように、なかなか効果的な指導ができないといった悩みも聞きますので、その点に関しての一定の共通理解を図ることにも意義があろうかと思います。私としては、リアルな自然に触れて、例えば食べ物の栽培に関わるような体験を深めてみたり、現代社会における重要な課題と格闘して、自分でも何かを変え得るという自己効力感を得るような体験が子供たちの人間形成において大きな意義を持つことを確認しておきたいと思います。
 第3に、評価に関しては、子供たちの成長を長期的に捉えるポートフォリオ評価法が重要だと考えています。ポートフォリオは資料をためっぱなしにする単なるファイルやデータベースではありません。探究のプロセスで蓄積した様々な資料を子供たち自身が振り返って編集をしたり、それらを用いつつ、検討会を行ったりといったことが重要です。なお、昨今では探究の評価にルーブリックが用いられる例もあるんですけれども、総合的な学習・探究の時間においては、ルーブリックを用いること以上に、まずは子供たち一人一人の探究の道筋に即した対話の中で評価を行うことが重要です。また、もしルーブリックを用いるのであれば、年間を通して成長を捉えるような長期的ルーブリックを用いることが重要だと考えています。どうぞこれからよろしくお願いいたします。
【黒上主査】  よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
 次は、廣瀬委員、よろしくお願いいたします。
【廣瀬委員】  山梨県立笛吹高等学校の廣瀬です。よろしくお願いいたします。現場の実践者であり、15年ほど全国の高校の総合の実践を取材し、学ばせていただいております。高等学校は総合的な探究の時間となって、ここ数年、探究が大きなうねりとともに広がったと感じております。そんな中、質の高い探究の充実、学校教育目標などと総合のカリキュラムとの関連や探究の質を高める授業改善を進めていく必要性というのを強く感じております。
 先ほど検討事項として示されました発達段階を踏まえた探究の質の向上につきましても、生活科から総合的な学習、そして探究へと繋がる学びの連続性を意識し、どのようにこれまでの学習経験や成果を十分に踏まえてカリキュラムデザインするのがよいか検討していきたいと考えています。どのように探究の質の向上を図るのか。それを各学校段階でどのように目指すのかなど分かりやすく提示することにより、連続性が生まれるのではないかと考えております。
 さらに、それぞれの学校種でも学校間の取組にばらつきがあるという課題も挙げられましたが、教員の指導力の向上も目指したいところです。探究的な学びを支えるためには、教員自身が探究的な姿勢で生徒と関わり、ファシリテーターや時にはジェネレーターとなる場面や他教科との連携で教科横断的な視点を持つこと、外部との協働を積極的に行うなど多くの役割が求められています。そう言えば最近、現場では生徒の探究が自分事になると自走できるというふうによく言われています。自分事として捉えることで、主体性が育まれ、自ら学ぶ姿勢が生まれます。興味、関心を起点にした学びが探究の質を高める鍵となっています。そのためには、問いかけの工夫や環境づくりが重要となってきます。教員研修の充実ですとか、校内のカリキュラムマネジメントの体制整備も不可欠ではないかと考えております。
 また、他教科との連携で教科横断的な視点ということを申し上げましたけれども、高等学校では教科、科目が細分化しており、どのように教科と総合を往還するかという点、情報の授業との関連も修学形態ですとか、学科の多様さなどある中で、どのように越えていけるかというのを考えていきたいと思っております。高等学校の総合的な探究の時間は、生徒の将来や生き方と深く結びつく時間となっております。生徒が自分の人生や社会との関わりを深く考える時間となり、探究の高度化が図れますよう、小中高と連続した探究の構造化の中での制度設計等を検討していけたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【黒上主査】  よろしくお願いします。
 続きまして、細田委員より御発言、お願いいたします。
【細田委員】  東北大学情報科学研究科の細田と申します。脳科学の観点から、非認知能力の発達について研究をいたしておりますので、その視点も踏まえながらお話しさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 現在の学習指導要領では、知識、技能と思考力、判断力、表現力、学びに向かう力といったものが示されておりまして、教科ごとにその体系的に縦割りで学べるようになっておりますが、それだけではなくて、子供たちがどのように身につけた力を実生活の中で結びつけて発揮していくことができるのかということが重要であるようにも思っております。例えば認知科学の研究などでは、学びは本来、統合的な営みであって、いろいろな文脈で得た知識やスキルというのを関連づけることで深い理解や創造性、思考が生まれるということが明らかになっておりますし、また、その知識を複数の文脈に接続していくことが学びの定義とか抽象化というふうな言い方をしますけれども、そういったことを促すということも分かっております。
 これらの定義とか抽象化というのは、実は前頭前野のネットワークというところが関わっていて、具体的な経験を概念にして、それを再構成するというようなプロセスになるのですけれども、実はこの前頭葉というのは、ほかの領域に比べて成長が非常にゆっくりで、小学校とか中学校から成人期にかけて成熟、発達していくということが明らかになっているところです。なので、生物学的な背景も考えたときに、学んだことを横展開していくような力が伸びるというのは、教育設計でも非常に重要なのではないかと思っています。こういった知見を踏まえると、特に低学年においては、生活科を核とした教科横断型のカリキュラムというのが一層重要なのだというふうに思っております。
 生活科は子供の実生活とすごく近い教科でもありますし、そこに国語や算数、理科、社会の要素と組み合わせることで、学びの接点を作ることが非常にできるところだと思っています。なので、生活科で養われる体験的な知識や理解ということができると思います。さらに、変化が激しい社会だからこそ、一層、子供自身が自分の学びを計画して実行して振り返って、改善するというようなサイクルを自然に回せるようになることが大切だと思いますし、生活科のように体験を中心とした教科では、日常の気づきから計画を立てて、実際に試して結果を比べるというような流れが構造的に取りやすいと思っております。このプロセスそのものは横断的知識としても生きてくると思います。
 こういった子供の学び自体が見える化することが、自己調整をする力につながっていくと思いますし、それ自体が3年生以降の総合における学びにもつながっていくものと考えております。ですので、生活から養われる資質・能力というのが、1、2年生にとどまらず、3年生以降の各教科や中高の学びの基礎として機能していくために、総合的な学習の時間とか、総合的な探究の時間へ連続的に接続していくことを明示していくことが重要だと考えておりますし、その意味でも評価の在り方の議論と併せて、教科横断的な学びの接続を意図的、計画的に実施していくことが非常に重要になってくるのではないかと思っていまして、これらを生活科や総合的な学習の時間が主に担っていくことというのが期待されるのではないかなと考えております。
 以上です。
【黒上主査】  ありがとうございました。
 次は堀田委員より、御発言、お願いいたします。
【堀田委員】  よろしくお願いいたします。ワーキンググループにおける検討事項・論点の中から幾つかを抽出してお話ししたいと思うのですが、私、幼児教育とか初等中等教育でのICT活用とか探究のことを研究させていただいています。
 まず、情報の領域の具体的な位置づけとかの考え方なのですが、生活科と、生活科の中で情報活用能力も育成されるわけですし、各教科の中で情報活用能力ももちろん育成されるわけです。今回、新たに情報の領域(仮称)ができるわけなのですが、生活科からの発展が総合的な学習の時間にも寄与しますし、情報の領域にも寄与するという、そういう少し往還的なところ、各教科との往還的なところがやはり図の中に示されていき、かつ具体的に先生方に伝わるような表現が必要になるのかなというのが1つです。
 さらに、個人探究とグループ探究というところなのですが、ここでも探究のプロセスの理解を児童生徒がしっかりとするという、そのプロセスを理解することによって、子供たち自身が学びに向かう力の育成を自発的にできるような、そういう教科横断性がある年間指導計画をやはり検討していく必要があるのかなと思います。
 生活科のほうに戻って、生活科の学習課程、「思い、願いを持つ」、この辺りの学習課程を意識した授業設計において、子供たちが見方・考え方を働かせることができていくのかなと思うので、こういうふうな学習課程の意識を教師側、教員側に非常に意識させる授業設計をできるプロセスみたいなものを何か検討していく必要性があるかなと思います。
 さらに、AI時代における生活科の在り方に関する検討の方向性のところで、身体性を伴う直接体験というふうに出ているのですが、僕は、ここは生活科の中でもカメラで写真を撮るというふうなところなどが、すごくたくさん出てきていますので、直接体験を支えるICT活用の気づきみたいなものを子供たちが認識する必要性があるのかなと思うので、ここはあえて生活科の中でICTを分離するというふうな考え方ではなく、直接体験とICTを離すということではなく、その気づきを持たせるような何か方策を考えていく必要性があるかなと思います。そういう意味で、総合的な学習の時間、情報の領域へと繋がる学びの連続性の必要性があると思います。
 業務の適正化と安全管理に関する課題と検討の方向性のところで、いろいろと環境のことが言われているわけなのですが、幼児期には自然などの環境との関わりで身についた遊びからの学びを発揮する場面が必要になっていたわけなんです。そこが生き物の飼育であったりするわけなので、ここは生活科の中でも同じようなことが言えるので、さらに家庭学習とも接続、関連していくという観点からは、非常に業務が多様化していくわけなのですが、企業さんに力を借りるとかしながら、飼育であるとか、そういう自然と生き物との関わりというのを子供たちの学びを発揮する場面として、やはり維持する必要性があるかなと思いました。
 さらに、幼保小・中学年以降との接続と、教科横断性に関する課題と検討の方向性なのですが、幼児教育では比べる、関連づける、総合するという思考の芽生えを意識して、保育者は教育、保育をしているわけなのですが、その諸感覚を使った活動とその言語化が、幼児教育でなされている。それが生活科の中では、その思考場面が多重化していくというふうに私は考えています。その多重化していくということの原点が幼児教育の中にあって、ある程度、子供たちの中に、小学校1年生の中には、そういう思考の芽生えが育っているのだという前提で生活科の授業が設計されていく、そういうふうな意図を持たないといけないかなと思います。
 最後に、幼児教育の探究のプロセスの一例としての最初が、問いかけるであるとか、観察するであるとか、疑問を持つとかみたいなところが入ってくるわけなんですね。もちろん、それが生活科の学習課程の思い、願いを持つというところと非常に言葉としては包括されるか分かりませんが、何かそういうふうな意識を、僕は生活科の中でも持てるような表示ができたらいいのではないかなとも考えています。
 以上です。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、次、水川委員、よろしくお願いいたします。
【水川委員】  よろしくお願いいたします。岐阜市の教育長、水川です。論点整理、資料2-1の6ページがすごく面白くて注目しているので、そのことを中心に、子供を主役にする教育、子供を主語にする教育への転換ということで、少しお話を2点からしたいと思います。
 論点整理の中に「好きを育み、得意を伸ばす教育」というキーワードがあって、これ、すごく文科省の論議というのは大変難しいのですが、これ、国民なら子供でも分かる。そういう表現になっていて、これが全てのページにニュアンスとして広がっていくといいなと思っています。教育というのは2つのミッションがあって、1つは文字どおり民主的で持続可能な社会の創り手を育てることだろうし、でも、もう一つは自分らしい人生を豊かに生きていくための子供自身の好きとか、願いを得意やよさに変えて、自分自身の人生を拓く力を育てることだと思っているんです。この後者の力をどうやって育てていくのか、学校というのが、これをデザインしていくのかというのがすごく難しくて、実際は英知の伝達作業とか、次世代の国民育成ということにやっぱりシフトしがちなんだなということへの反省と新たな展望というのが見えるような気がしています。
 そう考えると、学びというのはインプットではなくて、選択と行動を基軸とする主体的な学びに変容していくわけだと思うので、そういう意味でのデザインにすごく期待したいなと思っています。ただ、この文言って、好きと得意というのはすごく難しくて、現行の学習指導要領の中にこの好きを育み、得意を伸ばすということがどのぐらい保証されているかというと、教育全体のグランドデザインの中でやっぱり弱いなということを強く思っているので、総合的な学習の時間などは、特にこれ、中核として育てることができると思うので、それに期待をしたいと思っています。
 2点目は、「探究」というキーワードですが、学校の教育目標の具現に向けて、実は総合的な学習の時間を中核として、教育をグランドデザインをしてはどうかという、そういう段階に僕は入っているなと思っています。総合が施行されてから、動き出してから30年という話が先ほどありましたけれども、結局、質の高い探究にならないということの要因は幾つかあって、1つは体験の質の吟味不足、2つ目が安易な結論づけ、それから、3つ目が生き方への接続ということだなというふうに、僕は30年ずっと見て感じているんです。つまり、探究というものに対してのビジョンとストーリーと人の出会いというのをきちんとデザインしていかないと、質は高まらない、深まらないのではないのかなと思っています。
 そういう意味で、学校現場の教育のグランドデザインを描いていこうと思うと、教科学習はICTを使いながら、入り口と出口のところはもっとダイナミズムを発揮するのだろうと思いますので、教科はもっと焦点的にICTを使ってやるだろうし、生活、総合は、ここにもあるように個人テーマなのか、グループテーマなのか、マクロ課題なのか、ミクロの現実的な問題なのかということになると思うので、もっと科学するという視点から探究が組織されるべきだろうなと思っています。特活においてはやっぱり、子供が自ら創り出す日常活動とか行事というのもやっぱり積極的に生み出していくことだろうなと思っています。いずれにしても、子供たちが何のために学校に通うんですか、僕は何のために学校に通うんですかといったときに、将来のための礎の力と言っても、子供たちには学ぶ目的にならないので、そこを整理してデザインすることが必要だなと思っています。
 先ほどから体験の話はたくさん出ていますが、結局、リアルとデジタルとの絡み合い、それから、知ることと働きかけることの絡み合い、人、物、事をどうデザインするのかということと、もう一つは学び全体の構造化、総合化ということに帰着するんだろうと私は思っています。それによって学校にワクワクとか探究というのを創り出して、子供が主語になる、明日もまた行きたい学校が生まれるのだろうなと思っています。
 以上です。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、山田委員より御発言をお願いいたします。
【山田委員】  山田です。京都市教育委員会に勤めております。3年前までは中学校のほうの学校長をしておりましたので、中学校現場の課題という部分でお話ししていきたいと思います。今回、資料1-2の2ページのほうに中学校固有の課題ということで掲載していただいていますけれども、まさにこのことに、私は委員会の事務局の立場として取り組んでいる真っ最中であります。自分が中学校現場にいるときには、授業改善の研究など一生懸命やっていたのですけれども、その授業改善の研究をする中で学んだことを活用する場である総合的な学習の時間にしっかり取り組まなければ授業改善にも効果が出ないというようなことを感じて総合的な学習の時間にも取り組むようにしていたのですけれども、実際、委員会に入ってみて、京都市全体、中学校、72校ありますけれども、見たときに、なかなか総合的な学習の時間に取り組んでいる学校が少ないということを感じております。
 その中で、ここに掲げています中学校固有の課題に本当に当てはまることですけれども、1つは高校入試、先ほど岩本委員からも御発言がありましたけれども、中学校の教員の一番の最終ゴールとしてついつい考えてしまうのは高校入試のことで、そこでしっかりした進路保証をしなければいけないという中で、総合的な学習の時間が高校入試に役に立つのかというような思いを持っている教員がまだまだ多いと思います。9教科ありますけれども、9教科の次に総合が来るような、もうおまけという言い方ではおかしいですけれども、そういうような捉え方をしている教員もまだまだいると思います。総合的な学習の時間の主任という立場が、大概、中学校のほうには校務分掌として設けられていますけれども、いろいろな分掌を決めていく中で、残った方の中でその主任を選んでいるというような現状などもあります。
 そういった中でなかなか取組が進まないということで、今、委員会として力を入れているところですけれども、あと高校入試以外にもう一つ、中学校としては行事を重要視しているというところがすごくあります。先ほどのページの一番上のところに中学校固有の課題の1つ目のポツのところにあります「総合の本来の趣旨とは距離のある」という部分で、本当に合唱コンクールであったりとか、体育大会であったりとか、そういったことにすごく力を入れるために、そこに時間が必要なので総合的な学習の時間を取ることができないというようなことを考えている学校がまだまだあるというので、そこの改善をする必要があるのかなと思っています。そのために、本当に意識改革ということで、今、委員会としては取り組んでいるところです。
 特に管理職の意識を変えなければ、総合的な学習の時間は変わっていかないと考えていますので、そのためにできることは何なのかということで、今いろいろな方の、委員会の委員のお話などもありましたけれども、キャリア教育との関連をしっかりすることであるとか、教科との往還ということをしっかり示すことであるとか、キャリアマネジメントの中で学校教育目標としっかり関連づけた総合的な学習の時間を確立することが重要であるということであるとか、そういうことをしっかり管理職が分かった上で学校経営をしていく必要があるのかなと思っています。
 実際、子供たちのほうは、中学生ですけれども、総合的な学習の時間は楽しいと感じている子はたくさんおります。そのたくさん感じている理由としては、自分の興味、関心のある学びができるということ。あと、学校外の企業の方であったりとか、そういうつながりを持って、本当に学びが広がっていくという部分、そういう実感を持っているということで、子供たちはこの時間をすごく楽しみにしているということもあるので、その子供たちの思いと意識の乖離がなかなか難しいところではあるのですけれども、そこを埋めていく中で、学びの充実に繋げていけばと思っていますし、このページの最後に書かれていますこの探究の充実というのが、学びに向かう力・人間性に大きな役割を果たすというふうに中学校のほうは特に考えていますので、今回の指導要領の改訂の中で、総合的学習の時間がより中学校にとっても現実味のあるものになればと思っています。
 以上です。
【黒上主査】  ありがとうございました。
 続きまして、山本委員より御発言をお願いいたします。
【山本委員】  横浜国立大学の山本です。どうぞよろしくお願いします。現在、附属小学校の校長もやっておりますけれども、今、道半ばと言われている学びの深まりについて、私からも2点、お話しさせていただければと思っています。
 1つは、AI時代の生活、総合というお話が今日もありましたけれども、今現在、AIがものすごい勢いでたくさんの言語を紡ぎ出している中で、生活、総合が担っている直接体験から生まれる言語、これの価値をしっかりこれから打ち出していく必要があるのではないかと思っています。学びを深めていく意味でも、教師が指導性を発揮して本質に迫る問いであるとか、または子供たちが紡ぎ出す直接体験からの言語を価値づけまたはそれを学びにつなげていく、そうした教師の指導性といったものも今回の学習指導要領の中で示していくことが、教師にとっての方向性を示すことにもなるのではないかと思っています。
 2点目は、学びのプロセスの可視化と評価ということになります。約2万人近くの教員の育成にこの前職では教育委員会という立場で携わっていました。そうすると、総合学習を考えていくときに、活動がまだされていない中で評価計画というものをやはり教師は先に考えがちで、例えば成果物であるとか作品であるとか、発表会の日取りであるとか、また、そこが逆に目標になってしまって、学びのプロセスといったものにどのぐらい着目できるかといったところが課題になっていると思っています。今回、進んできたICTなどを活用することで学びのプロセスを可視化して、さらに、そのプロセスをしっかりと評価していく、そういったことを今回、指導要領の中でも打ち出していくことが、教師にとって試行錯誤的な、またはダイナミックな学びを実現することにもつながっていくのではないかと考えております。これからこういったことを踏まえて、また学ばせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
【黒上主査】  どうもありがとうございました。
 皆様から最初の言葉をいただきました。それぞれの御専門の、あるいはお立場からとても興味深いことがいろいろ聞けたかなと思います。最後に私から、お話を伺いながらとか、ここに来るまでにいろいろ考えてきたこと、普段考えていることなどを少しお話ししたいと思います。
 文科省からの説明を聞いていると、必ず教師の働き方が付随してくるわけです。物理的な負担はもちろん何とか軽減させたいのですけれども、負担という意味では、メンタルの負担というのがあって、気持ちの上で軽くなるためには、先生方の意識が変わるということがとても重要で、この件はそういう方向でも考える必要があるかなと思います。
 あと、生活科に関しては、私が学生のときに梶田叡一先生から、生活科の教科構成概念というのがあって、それは自然認識、社会認識、自己認識という、この3つだというふうなことを聞かされました。ちょうど創成期ですよね。もう一度、そういうことに立ち返って、そういう認識がベースになった上での体験というのがある。その中で気づきがどう大事にされるかということを再認識していくことが大事かなと思います。それとも関わって、今回、探究的な学び、質の高い探究的な学びという話がどこでも出てくるわけですね。水川委員もおっしゃっていましたけれども、この「質」とは何かということについて、1つは体験とかの学習活動そのものが、よりダイナミックになるとか、よりアカデミックになるとかいう意味だと思うのですけれども、どういう成果が出るか。つまり、子供たちにどんな力がつくかということも重要で、これが一筋縄ではいかないんですよね。とてもいろいろなことが身につく可能性があって、もちろん知識・技能もすごくたくさん身につく可能性もあるし、学びに向かう力とか、非認知能力とか、そういうところにも直接つながっていくということがあるので、この辺をどういうふうに整理していくかということは、とても大事かなと思っています。そういうのを今回、表にして表すという方針が、全教科でたてられているわけですよね。総合では内容が規定できない中で、一体、どのような表ができ上がっていくのかをイメージするのがなかなか難しいのです。その中で中核概念というのが話題になるけれども、総合における中核概念は、内容を捨象したところで一体どういうふうに示せるのかというところが、本当に大変難しいかなということです。
 もちろん、その資質・能力をどう示すか、内容を捨象して資質・能力をどう示すかということも重要だし、この辺、今後いろいろ議論されていくのですけれども、皆様、いろいろ考えていることをお話しいただければと思います。一方で、それらをどう評価するかという話もありましたけれども、特に学びに向かう力とか、エージェンシーとか、こういったものをどういうふうに評価するのか。西岡委員からはポートフォリオとか対話というふうな話もありました。僕はずっとルーブリックのことを研究してきましたけれども、どうよいルーブリックをつくって児童生徒にそれを目標化させるかということは、大事だと思っていて、この辺もこれから議論をさせていただければいいかなということですね。
 総合的な学習・探究の評価に関しては、教科の評価、評定とは少し違うのですけれども、根拠のある評価ということは絶対しないといけないので、それをどう実現するかということですね。それから、生活科では学びの意欲ということについての論点の説明がありました。総合では学びの主体的な調整という話もありました。これに関しては、意欲を持つ、持たせるという話だけではなくて、自分自身の学びの意欲をコントロールするとか、その学習内容の重要性を吟味して、それをもとにして自分自身の学習活動をコントロールするという、いわゆる自己調整にも繋がることを目標として捉えるという考え方があって、これはマルザーノが言う自律システム(黒上の訳語)がそれに当たりますが、こういったことも総合において子供が回していく探究の中では、大事にしていくべきかなと思います。こんな話も、いずれしていきたいなと思います。
 それから、「情報の領域」ですね。早く仮称を取って言いやすくなったらいいなと思っているのですけれども、ここでは当然、一定の情報活用能力のスキル育成は大事で、そのための時間は、一定程度は必要ですよね。ただ、それを探究のプロセスに載せていくということも考えないと、いわゆる音楽で言うと、ずっとバイエルをやっているとか、ハノンばっかりやっているということになってしまうと面白くないので、それをどういうふうに実現するかですよね。ただ、その情報活用能力を育てるということと、恐らくそれは探究のスキルを育てるということが同時並行で進むということになるのだと思うのですね。つまり、情報の領域は実は探究の土台にもなる。さらに言うと、教科の土台にもなっていく。これは佐藤委員がおっしゃっていましたけれども、そういう意識を持って、この領域の名前をどうつけるか、そんなことも考えていけたらなと思います。
 生成AIに関しては、もう本当に学生の動きを見ていて、いろいろ悩むことが多いのですけれども、これはやはり学習者自身の言葉を、いわゆる今井(むつみ)先生の言葉で言うと記号接地させる必要があって、そのためにはとても体験が大事ですよね。総合に関しては地域と関わって議論する場面もあるし、友達と議論する場面もあるので、そこではAIを使うことは基本できないわけですよね。そういう場面をとても大事にしながら、「言葉を紡いでいく」なんて表現もありますが、言葉をしっかり子供たちが使えるようにしていって、その実感を持って生成AIと触れ合っていくという流れを作っていく必要があるかなと思います。
 こういういろいろな論点があって、もちろんいろいろなことが出てくるのは大事なのですけれども、最終的には指導要領で扱えることと、それから、解説に送り込んだほうがいいようなことと、それから、その他の、「今求められる…」などの資料に送り込んだほうがいいことと、いろいろあると思います。今日は、とりあえずは1回、皆さんで店を広げてみたわけですが、その中で構造化していったり、より分けをしていったり、価値づけをしていったりというようなことをこれから一緒にやっていければいいかなと思っています。本当に皆さん、貴重な御意見、どうもありがとうございました。今日は、この辺で一応、議論は終わりたいと思いますけれども、今後のスケジュール等につきまして、事務局からよろしくお願いいたします。
【荻野教育課程課課長補佐】  次回については、小学校の総合的な学習の時間に新たに、情報の領域(仮称)を設けることの関係から、情報・技術ワーキンググループと本ワーキンググループの合同開催を11月10日の月曜日、9時半から予定をしておりますけれども、正式には後日、連絡をいたします。
 また、これに先立ちまして10月20日、月曜日、18時から第2回情報・技術ワーキンググループが開催される予定となっておりまして、既に委員の皆様には御案内をさせていただいておりますけれども、生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループの委員の皆様はオブザーバー参加が可能となっております。この点について御不明点等ございましたら、事務局までお問合わせをいただければと思います。
 以上でございます。
【黒上主査】  ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、今日は閉会といたします。皆さん、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。
 
―― 了 ――
 

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