令和7年10月2日(木曜日)9時30分~12時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【嶋田学校教育官】 定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会家庭ワーキンググループを開催させていただきます。
本日は大変御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局教育課程課長、武藤久慶より御挨拶申し上げます。
【武藤教育課程課長】 先生方、おはようございます。教育課程課長の武藤でございます。本日、このワーキンググループの第1回開催をいたしますところ、先生方には大変御多忙の中御参加、御参画いただきまして、心より感謝申し上げます。
委員の先生方に日頃から家庭科教育の充実に御尽力を賜っております中で、御案内のとおり、平成29年、30年改訂の学習指導要領に基づいて、今、全国の学校で教育実践の充実が図られているところでございますが、これから、次の学習指導要領に向けた改訂の議論、とりわけこの家庭科におきましては、少子高齢化が進んできております。また、社会のデジタル化も進んでおります。こうした中で、家庭生活の変化も大きなものがあると思っています。そんな中で、持続可能な社会の創り手として求められる力の育成をどう図っていくのか、そうした御審議をお願いしたいと思っているところでございます。
後ほど御説明させていただきますが、このワーキンググループのスタートに先立ちまして、教育課程企画特別部会において、次の学習指導要領の改訂に向けた論点整理がまとまったところでございます。この論点整理、大きく3つの方向性が示されております。1つ目が、主体的・対話的で深い学びの一層の実装ということ、それから、多様性の包摂ということ、また、実現可能性の確保と、この3つの方向性を示しています。
1点目は、主体的・対話的で深い学び、まさに現行の学習指導要領が示しているものの一層の具現化・深化を図っていこうということでございます。
2つ目の多様性の包摂は、多様な個性や特性や背景を有する子供たちが多くなっている実態に向き合うとともに、こうした多様性を包摂していくことによって、その子個人の力や、あるいは社会の力に変えると、こういう観点でございます。
3つ目の実現可能性の確保は、昨今の働き方改革の状況もございますが、教育課程の実施に伴って先生方に過度な負担と負担感が生じにくい持続可能な在り方を追求するということ、また、教師と子供の双方に余白を創出することで豊かな学びにつなげると、こういった方向性、この3点を基本的な考え方として、今後の各教科等のワーキンググループの議論にも通底をさせていくと、こういうお取りまとめをいただいたところでございます。
この3点にも留意をいただきながら、更に質の高い家庭科教育の実践が行われるように、ぜひ御審議をいただきたいというふうに思っています。
スケジュールとしては、来年夏頃までに審議のまとめをお出しいただくということでございます。
簡単ではございますが、先生方にぜひ御尽力をお願いして、私からの挨拶と代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【嶋田学校教育官】 それでは、議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告させていただきます。
資料2の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは、教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理につきましては、奈須教育課程部会長より、杉山久仁子委員を主査に、石島恵美子委員を主査代理にそれぞれ御指名いただいておりますので、御報告申し上げます。
なお、家庭ワーキンググループの委員の皆様につきましては、資料1、家庭ワーキンググループの委員名簿を御参照ください。
それでは、議事に入ります前に、杉山主査から一言御挨拶をお願いいたします。
【杉山主査】 おはようございます。ただいま御紹介いただきました横浜国立大学の杉山と申します。
学習指導要領の改訂には以前も関わらせていただいていますが、今回、また気持ちを新たにして、皆さんと充実した審議の中、進めていくことができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【嶋田学校教育官】 ありがとうございました。
それでは、本ワーキンググループの進行は、これより杉山主査にお願いいたします。
【杉山主査】 これより議事に入ります。本ワーキンググループの審議等につきましては、資料2の教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づき、議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱います。
それでは、事務局より、会議の留意事項を御説明願います。
【嶋田学校教育官】 本ワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言願います。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただくようお願いいたします。
事務局からの説明は以上でございます。
【杉山主査】 ありがとうございました。
それでは、議題(1)に移ります。家庭科の改善・充実について、事務局より説明をお願いします。
【髙見主任教育企画調整官】 主任教育企画調整官をしております髙見と申します。私からは、現行学習指導要領と今回の諮問事項、企画特別部会の論点整理の概要、本ワーキンググループにおける課題と検討事項について説明いたします。
初めに、資料7を御覧ください。2ページ目から5ページ目にかけてでございますけれども、現行学習指導要領の基本的な考え方や法的な位置付け、変遷などについて、6ページ目には、現行学習指導要領として改訂の大きな柱となった知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成、学びに向かう力・人間性の涵養といった資質・能力の明確化や、主体的・対話的で深い学びの視点からの学習課程の改善等について示しております。
また、7ページ目以降に、現行学習指導要領の構成や目標、内容項目の一覧を添付しておりますので、今後の審議に当たっての参考としていただければと存じます。
続きまして、資料3-2を御覧ください。昨年12月25日に、文部科学大臣より中央教育審議会に対して、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方についての諮問がなされました。
この中では、2ページ目にあるとおり、第一に、より質の高い深い学びを実現し、資質・能力の育成に繋がると同時に、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方、第二に、多様な個性や特性・背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方、第三に、これからの時代に育成すべき資質・能力等を踏まえた各教科等やその目標・内容の在り方、第四に、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む、学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策、こういったことを中心といたしまして、これらに関連する事項を含め、初等中等教育における教育課程の基準の在り方について幅広く検討することが諮問において求められております。
続きまして、資料5を御覧ください。先ほど説明しました諮問を受けまして、教育課程の枠組みに関する事項や教科横断的な事項を中心といたしまして、教育課程企画特別部会において、本年1月以降、13回にわたって集中的な審議が行われ、9月19日に論点整理として取りまとめられ、先週9月25日の教育課程部会で了承されました。
論点整理の詳細につきましては、先日、事務局より解説動画を委員の皆様に共有しておりますので、全体の説明は割愛させていただきますが、特に本ワーキンググループでの検討に当たって重要な点に絞って御説明させていただきます。
まず初めに、5ページ目を御覧ください。次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方といたしまして、深い学びの実装、多様性の包摂、実現可能性の確保という3つの視点を一体的に具現化していくことによって、多様な子供たちの深い学びを確かなものとし、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育むこと、こういったことをまず大前提として掲げております。
続いて、6ページ目を御覧ください。各教科等で検討するイメージが中ほどに示されておりますけれども、特に本ワーキンググループにおきましては、各教科等の欄にございますとおり、生きて働く「確かな知識」の習得、興味・関心が広がる教材・学習方法の選択の促進、自分の意見を表現する活動の充実、探究的な要素を持つ学習活動の充実、家庭学習の内容を自律的に決められるような段階的指導、こういった視点にも御留意いただきながら検討を進めていただければと存じます。
続いて、12ページ目を御覧ください。より深い学びを実現する授業のイメージを教師が持てるよう、前回改訂の構造化を更に発展させ、知識及び技能、思考力、判断力、表現力等の資質・能力の深まりを示す「タテ」の関係、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等の相互の関係を示す「ヨコ」の関係を教師がつかみ取りやすくする観点から、中核的な概念の深い理解と複雑な課題の解決の具体について、各教科等の特性を踏まえて検討していくこととされております。
具体のイメージといたしましては、現行の学習指導要領ベースでございますけれども、13ページ目に中学校の数学の例、14ページ目に中学校国語の例が示されております。今後、別途設けられております総則・評価特別部会での検討を踏まえまして、本ワーキンググループにおきましても具体的な中核的な概念に関する議論を行っていただくことになります。
続きまして、18ページ目を御覧ください。今次の改訂において新たに設けられた資質・能力の一つである学びに向かう力、人間性等について、主要な要素や要素間の関係を構造化し分かりやすくする観点から、図のように、「初発の思考や行動を起こす力・好奇心」、「学びの主体的な調整」、「他者との対話や協働」、「学びを方向付ける人間性」の四つの区分で内容の関係性の整理がされております。
これらの内容は各教科等においても反映していくことになりますので、今後、本ワーキンググループでも御審議いただければと存じます。
続きまして、21ページを御覧ください。見方・考え方のところでございますけれども、従前の見方・考え方の整理は、見方・考え方が資質・能力の一部と誤解される遠因となっていたといった指摘を踏まえまして、中核的な概念等といった資質・能力の育成を適切な方向に導くとともに、よりよい社会や幸福な人生に繋げていける学びの本質的な意義として整理することとされております。
なお、この具体の改善イメージにつきましては、右上の方に記載がございますけれども、各教科等を通しての全体の方針は、別途設けられている総則・評価特別部会での今後の検討を踏まえて、本ワーキンググループでも議論を行っていただく予定です。
続いて、34ページを御覧ください。義務教育段階において、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程編成を促進するため、児童生徒や地域の実態を踏まえて、必要に応じて柔軟な教育課程を編成することができる取組を進める予定です。
40ページを御覧ください。高等学校におきましても、より多様なニーズに対応できるようにするため、柔軟な教育課程の編成が可能となる方向で検討が進められております。
69ページを御覧ください。これまで述べてきた学習指導要領の構造化や柔軟な教育課程を契機とした教科書につきましても、中段の改善の方向性のところにございますとおり、中核的な概念等の獲得に資する内容への重点化や内容の精選、教科書「を」教えるから、教科書「で」教える方向に改善を促すとともに、デジタル学習基盤や図書館等の有効活用も進めることとしております。
105ページ目を御覧ください。1ポツの今後のスケジュールといたしまして、各ワーキンググループにおいて、本論点整理の方向性や内容等を踏まえて検討を進め、遅くとも令和8年の夏頃までに取りまとめを行うこと。
2ポツのところにございますが、教育課程企画特別部会と各ワーキンググループ、これは家庭科ワーキンググループを含めてでございますけれども、この関係といたしまして、各ワーキンググループにおける審議は、本論点整理を的確に踏まえ、各教科等の固有の議論を加味・共有しつつ、更に豊かなものとすることが極めて重要であり、各教科等や学校段階に閉じたものであってはならないこと。
さらに、3ポツ、その他といたしまして、情報の領域(仮称)あるいは情報・技術科(仮称)の創設に伴う標準授業時数の増加について、諮問で示されている年間標準総授業時数を現在以上に増加させないとの方針を前提としつつ、教育課程企画特別部会と総則・評価特別部会にて教育課程全体を見通した観点から検討を行い、令和8年の春頃を目途に一定の結論を得ること等が示されております。
論点整理の概要は以上となります。
続きまして、資料6を御覧ください。ここでは、本ワーキンググループの論点といたしまして、事務局において事前に整理した課題と検討事項を示しております。
初めに、2ページ目を御覧ください。1ポツ、現状と成果といたしまして、2点目にあるとおり、今次の学習指導要領では、小学校、中学校、高等学校での内容の系統性の明確化を図るとともに、問題解決的な学習について、計画、実践、評価・改善という一連の学習過程を重視する方向で改訂を行ったこと、3点目にあるとおり、日常生活の中から問題を見いだし、解決すべき課題を設定することに成果も見られることなどが挙げられております。
なお、資料7の16ページ目から18ページ目でございますけれども、先ほど申し上げた事項についての関連のデータを添付しておりますので、併せて御参照いただきたいと存じます。
続きまして、資料6の2ページ目にお戻りください。次に、右上の方になりますが、2ポツの検討課題の(1)小・中・高等学校における目標・内容・方法の体系的な整理に関する課題といたしまして、今次の改訂で整理された系統性を引き継ぎつつ、より一層内容の体系的な整理をする必要があること、学習指導要領で示された各項目について、教師主体の課題設定がなされているなどの課題があること、こういったことの課題を掲げているところでございます。
これらにつきましては、資料7の19ページ目におきまして、例えば、小・中学校における課題設定の主体として、教師主体で課題設定している自治体が、中学校を中心に多いこと、あるいは、20ページにおきまして、高等学校におけるホームプロジェクト、学校家庭クラブ活動について、様々な指導の困難さがあることなどについて関連データを掲載しているところでございます。
続きまして、資料6の3ページ目を御覧ください。(2)、少子高齢化や社会のDX化に伴う家庭生活の変化に関する課題として、社会の変化に伴い家庭生活も変化していることなどを踏まえ、家庭科として本質的な重要な学習内容について改めて整理していく必要があること、消費者教育、金融経済教育におけるライフステージに応じた指標については、学習指導要領との整合性を持続的に図る必要があること、利便性を優先した生活の普及により失われつつある家庭・地域の生活文化の継承も念頭に置いた教育内容の在り方を検討する必要があることなどを掲げております。
また、(3)高等学校家庭科における科目の整理に関する課題として、現在、「家庭基礎」「家庭総合」の中から選択必履修となっている中で、家庭科に期待される役割が高まる中、実態は「家庭基礎」に履修が偏り、最低限の学習にとどまっていること、本来、高等学校家庭科で学習すべき内容が十分に行われていない実態があることなどを掲げております。
資料7の21ページと22ページには、「家庭基礎」「家庭総合」の指導の実態について関連資料を添付しておりますので、併せて御覧いただければと存じます。
続いて、資料6の3ページ目にお戻りください。さらに、(4)デジタル学習基盤の活用に関する課題といたしまして、実践的・体験的な活動を通して目指す資質・能力を育成するために、ICTをより有効に活用する必要があること、(5)家庭科の指導上の環境整備に関する課題として、免許外教員が指導している割合が高いことを示しております。
また、資料7の23ページには、中高とも、家庭の免許外教科担任の許可件数が教科全体の中で他教科・科目に比べて高い実態があること、24ページには、自治体や学校において様々な指導体制に関する課題が見られることなどを掲げておりますので、併せて御覧ください。
資料6の4ページ目を御覧ください。ここでは本ワーキンググループの検討事項の案を掲げております。
まず、1点目、教育課程企画特別部会の議論を踏まえた検討事項です。(1)家庭科を通じて育成する資質・能力のあり方・示し方として、「学びに向かう力や人間性等」や「見方・考え方」の新しい整理を踏まえた目標の見直し、中核的な概念等に基づく内容の一層の構造化や必要に応じた精選、表形式を活用した目標・内容の分かりやすい表現への見直し、(2)家庭科の指導と評価の改善・充実のあり方として、「主体的・対話的で深い学び」の一層の充実を図るための方策の具体化、評価の見直し、(3)誰一人の取り残さず資質・能力を育成する柔軟な教育課程のあり方として、義務、高校、それぞれの柔軟化の仕組みを踏まえた教育課程・学習指導の工夫、課題やそれを防ぐための運用方策の検討などを掲げております。
次に、2ポツ、家庭科に関する課題を踏まえた固有の検討事項です。(1)小・中・高等学校における目標・内容・方法の体系的な整理に加え、(2)では、社会変化への対応と生活文化の継承の両立を踏まえた学習内容等のあり方として、衣食住の内容等の改善、少子高齢化や金融経済教育を含めた消費者教育の動向を踏まえた内容等の見直し、(3)高等学校家庭科における科目や指導のあり方として、「家庭基礎」に履修が偏り、最低限の履修にとどまっているという課題や、高等学校の教育課程の柔軟化を踏まえた科目の整理、小・中学校との連続性を踏まえた高等学校「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」の指導のあり方の整理などを検討の方向性として掲げております。
5ページ目を御覧ください。(4)デジタル学習基盤の活用として、実践的・体験的な活動を充実させるための活用方法の具体化、(5)には、これまで説明した(1)から(4)を実現する上での環境整備に関する課題といたしまして、小・中・高等学校における指導の充実に必要な質的・量的な環境の整備や、教育委員会における指導体制の整備のあり方の見直しを掲げております。
資料の説明は以上となりますが、これらはいずれも議論を円滑に進めていただくに当たっての事務局のたたき台でございますので、記載の内容に関わらず、より広範かつ深い視点から様々な御意見をいただければ幸いです。
私からの説明は以上となります。
【杉山主査】 ありがとうございました。
それでは、本日は第1回目で初めての顔合わせ回でもございます。委員の皆様お一人ずつから、今後特に検討を進めるべきと考えている事項や審議の進め方に対する御意見などについて御発言いただきたいと思います。順に私からお一人ずつ指名をさせていただきますので、五、六分程度で御発言をお願いいたします。
それでは、初めに、大久保委員より御発言をお願いいたします。
【大久保委員】 失礼いたします。田無第三中学校の校長の大久保と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
中学校で、東京都ですけれども、家庭科の教員の経験、そして、東京都の指導主事として教育行政の経験から、私の考えを述べさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
先ほど御説明いただいた論点整理を踏まえて、次期学習指導要領が、生きて働く知識及び技能、これを中核的な概念として習得して、そして複雑な課題解決に活用していく、そういった学びの過程がこれから具体的に示されるという方向性については、現場としては大いに賛同したいというふうに思っております。
しかし、実際の中学校の現場では、そこに到達していないような大きな課題もあると感じているところです。それはまず、第一に、授業が教科書を教えることにとどまりがちだということです。先ほど説明にもあったかというふうに思うんですけれども、本来なら、知識や技能を活用して自ら問題を発見し、課題を設定して、そして、解決方法を考え、実践して評価・改善する学びにつなげたいのですが、調理や裁縫などの作品づくりが中心となって、問題解決的な学習に至っていない、そういった授業も散見されるところでございます。
その背景には、家庭科専任の教員不足という問題もあるかというふうに思います。非常勤や、高齢の講師の先生にお願いせざるを得ない状況があったり、また、現行学習指導要領の理念の理解ということが十分に行き届いていないこともあるかなというふうに感じています。
加えて、授業時数に対して教えるべき内容が大変多うございまして、先生方は、題材の指導計画、これを構想する際に、何を主としたことが目標なのかちょっと見失ってしまう、そんな大変苦慮している状況もあるかなというふうに考えております。
それから、第2の点として、学習指導要領の解説に示されております生きて働く知識及び技能、これについて、概念は示されているものの、具体像が見えにくいという課題です。解説には、基礎的な理解ということで抽象的に表現されているかなというふうに思っておりまして、小・中・高それぞれの段階で何をどこまで習得させればいいのかということが現場で迷いやすい状況だと思います。
加えて、社会の変化に応じて新しい内容を取り入れる必要はあると感じているものの、家庭科としての本質から逸脱してしまわないかというような懸念もちょっとあります。家庭科教育において、生活の基盤となる知識及び技能を確実に身に付けさせることがまずもって大切であり、その本質を見失わない整理が必要なのではないかということも感じています。
最後に、3点目に、問題解決的な学習の形骸化についての課題があるというふうにも感じています。本来は、先ほど説明があったように、生徒が主体的に課題を見いだして、解決を図ることが期待されているわけですけれども、実際には、教師が一律に課題を提示する、あるいは、選択肢を与えるにとどまっているケースが多いのが現状かなと思っています。課題の設定や解決のプロセスについて具体的な事例が示されることで、複雑な課題の解決に迫る授業の質は大きく向上するというふうに考えています。
こうした3点課題ということで述べさせていただきましたけれども、こうした課題を乗り越えるためには、学習の内容、学習過程を中核的概念として整理・具体化していくことが現場にとってはとても大きな助けになるというふうに思います。同時に、専任教員の配置、そして非常勤講師の先生方の研修といった人的基盤の整備も不可欠かなとも思っております。
現場としては、今後の方向性には大いに賛同しつつも、実際に実現するためには、内容の精選、また本質の明確化、そして人材面での支援が重要かなということを強調させていただきたいというふうに思います。
私からは以上となります。
【杉山主査】 大久保委員、ありがとうございました。
続いて、大友委員より御発言をお願いいたします。
【大友委員】 ありがとうございます。金融経済教育推進機構、通称J-FLECの大友でございます。今回、このような場に参加をさせていただき、感謝を申し上げます。
私どもJ-FLECは、官民一体で金融経済教育の機会を全国的に拡充していくことを目的に、昨年4月に法律に基づき設立された認可法人です。中立・公正な立場から、一切の勧誘はなく、偏りのない金融経済教育を推進し、年齢層別に学校、企業、地域のコミュニティーへも講師派遣をしたり、イベントやセミナーを開催するなど、様々な取組をしております。
金融経済教育の推進に取り組む立場から、2点お話をさせていただきます。
1点目は、これまで以上に、小学校の早い段階から体系的・継続的な教育が必要だという点です。近年、キャッシュレス化や生成AI等デジタル技術が進展し、これらを活用していく年代の低年齢化に伴い、金融トラブルの低年齢化も見られるようになっております。そこで、論点整理の第2章(1)の構造化の議論にも関わってくることですが、早い段階から金融経済教育に触れる機会を持つことの重要性が一段と高まっていると感じています。
2点目は、これまで以上に高校でのより一段と踏み込んだ教育が必要だという点です。成年年齢の引下げにより、法的責任を伴う金融に関する判断を迫られる場面が増加する中、高校生でもお金のトラブルに巻き込まれる危険が増えています。ウェブ上には、お金に関する偽りの情報や偏った情報も多く見られております。こうした情報をうのみにしないようにするため、正しい知識に基づき判断する力を身に付けさせる必要があります。
また、生成AIが導き出した回答や情報を適切に評価し、自ら選択・判断するといった意思決定を行うためにも、最低限身に付けるべき金融リテラシーのような普遍的な知識や技術の習得が重要であると考えております。
さらに、これから社会に出る子供たちには、物価や金利の上昇などの経済環境の変化に対応していきながら経済的に自立していくことや、長寿化への準備をしていくことが求められています。そのため、インフレ時や金利上昇時の家計管理・資産形成の考え方や、資産形成における長期・積立・分散投資の効果といった一段と踏み込んだ金融経済教育の必要性が高まっていると感じております。
こうした学習には、論点整理の第4章、質の高い探究的な学びの実現に示されております教科横断的な取組や、第1章、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方に示されております、社会に開かれた教育課程として、外部知見の活用が進んでいくことが特に重要であると考えております。
なお、金融経済教育イコール投資教育であるとか、お金もうけの教育と誤解されることがあるのですが、決してそのようなことはありません。国民一人一人に金融やその背景となる経済についての基礎知識と日々の生活の中で、こうした知識をよりどころにしつつ、自立した個人として判断し意思決定する能力を育むための教育です。
こうした学習の充実は、私どもの思いだけではなく、子供たちからも求められております。J-FLEC設立前に金融広報中央委員会が実施した「15歳のお金と暮らしに関する知識・行動調査(2023年)」の結果では、学校の授業でお金のことについて教えてほしいかの問いに対して、「そう思う」と回答した生徒の割合は8割に上っています。
子供たちの日々の生活や将来の家計管理・生活設計に必要な体系的な金融や経済に関する学習内容について、教科横断的な学習も含めて検討していただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【杉山主査】 ありがとうございました。
それでは、次に、亀田委員、よろしくお願いいたします。
【亀田委員】 石川県能美市教育委員会の亀田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は現在、地方教育行政に携わり、これまで、県教委とかあるいは基礎自治体市町教育委員会を含めますと、通算12年目を迎えているところでございますが、もともとは小学校、そして中学校の教員でございます。
中学校技術・家庭科がかつては男女別学であった頃から、男女共修へという大きな時代の変化を学校現場で肌で感じてまいりました。また、このたびの次期学習指導要領改訂の方向性を踏まえますと、中学校情報・技術科という流れの中で、再び大きな変化を迎えることと思っておりまして、このワーキンググループに参画させていただくこと、大変光栄なことと感謝申し上げますとともに、責任の重みを感じているところでございます。
これまで私自身が注力し研究してきたこととしましては、調理実習における自己評価と相互評価の信憑性に関する授業分析、また、防災教育の視点を取り入れました住まいの工夫など実践を重ねてまいりました。現在、日本全国、いつどこでどんな災害が起こるか、近年の災害の頻発化・激甚化を踏まえましても、この防災の視点で生活を見直し創造することは非常に大切なことと考えている次第です。
また、私自身の生い立ちで恐縮ですが、中学校時代から実はプログラミングに触れるという環境の中で育ったこともありまして、石川という地方にいても、デジタル技術を使って学ぶ楽しさ、面白さ、そして世界観が広がる、といったことを感じ、デジタルの可能性を感じてまいりました。ですので、日々の授業実践においてもICTを積極的に取り入れ、家庭科における基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力の育成に資するよう、実践的・体験的な活動を重視する中でのICT活用を目指して実践を重ねてまいりました。
現在、GIGAスクール構想時代に入りまして、児童・生徒は1人1台端末をフルに活用した授業が全国各地で展開されていることと思っております。本市におきましても、文部科学省よりリーディングDXスクール事業や生成AIパイロット校事業の指定をいただく中で、授業改善や校務DXに取り組んでいるところでございます。
皆様も同じ思いかと思いますが、生成AIの進展は目覚ましく、児童・生徒たちはいつの間にか生活を営む中でも自然にAIに触れるということにもなっておりまして、デジタル学習基盤の活用と情報活用能力の抜本的向上は、我々消費者教育や金融教育を担う家庭科としましても、喫緊の課題と捉えているところでございます。
そのような立場あるいは経験を生かしながら、このワーキンググループに貢献できればと思っているところでございます。そこで、今日は、先ほどお示しいただきました検討事項や論点にもございました内容について、1点だけ、少し意見を申し上げたいと存じます。
このたびの論点整理にございます、中核的な概念等に基づく内容の一層の構造化、あるいは、表形式を活用した目標・内容の分かりやすい見直しについてでございます。論点整理で言いますと13ページから15ページに当たるところですが、このままお話ししてもよろしいでしょうか。ありがとうございます。
13ページの「タテ・ヨコの関係」の可視化についてでございます。この「タテ」の関係、「ヨコ」の関係について、実践的・体験的に学ぶことを重視する我々の家庭科としましても大変納得のいくもので、私たち現場の者にも分かりやすくおまとめいただいたものと感謝申し上げます。
そこで、学習指導要領の構造化・表形式化イメージとして、数学と国語の例が次の14、15ページにお示しされていたかと存じますが、家庭科としましては、数学のほうのようにまとめていくとよいのではないかなというふうに思っている次第です。
理由としましては、「タテ」の関係としての要素は縦に、「ヨコ」の関係としての要素は横にというふうに整理したほうが、直感的に理解しやすいのではないかと思うからでございます。教師にとって、構造が視覚的に理解しやすく分かりやすい記載の仕方としてまとめていくことができたらいいのではと思っております。
これから、皆様とともに意見を交換させていただきながら、よりよいものができますよう、微力ながら尽力してまいりたいと存じます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
私からは以上となります。
【杉山主査】 亀田委員、ありがとうございました。
それでは、鈴木委員は今日御欠席でいらっしゃいますので、髙木委員にお願いいたします。
【髙木委員】 皆さん、はじめまして。栃木県立宇都宮中央高等学校の校長をしております髙木と申します。また、全国高等学校長協会の家庭部会のほうで理事長を今年度からさせていただいております。よろしくお願いいたします。
私、初めに申し上げておきますが、家庭科の担当ではございません。もともと教員としては理科の中の物理の担当です。その後、教育行政の方にも、管理だったんですが、そちらに長くいまして、その後、今、校長という立場で何校かやっているというのが現状でございます。
そういった観点から、多分私に求められているところというのは、先ほど話のあった3つの考え方の中の実現可能性の確保というところが、現場としてこれはどうなのかというところが一番求められるところなのかなと考えております。そういった観点も含めながら発言させていただければと考えております。よろしくお願いいたします。
高校の場合、どうしても「家庭基礎」とか普通科の子たちが学ぶ部分と、あと専門学科の子たちが学ぶ部分という部分が大きくなって分かれてきますので、その辺りの観点、どちらかというと、普通科のほうが今資料等を見ている限りではメインのところかもしれませんが、専門学科というところについてもいろいろとまたお話しできればなと考えております。
そういった形で、先生方とかに、全国の校長先生方とかそういったところの話をいろいろ伺うことが多いんですが、そういったものを含めて考えていったときに、見ていますと、内容の精選というのはこの後どうしても必要となってくるのかなというところは感じているところです。
ちょうど私が教員になってすぐに男女共修が始まりまして、私は当時男子校にいたものですから、来年から家庭科が始まると、家庭科の先生が来年から配置されるというときにちょうどいまして、そういった変化というものをちょうど見てきたというときに、当時と今とでは大分、当然内容は変わるものですから仕方がない部分ですが、いろいろなところ、いろいろなものが入ってきているなと、改めて教科書なんかを眺めてみますと、本当にいろいろな分野の内容が入ってくるという状況があります。
ただ、結局、どんどん積み上げていく、必要だから必要だからと積み上げていくという部分、これも仕方ない面はあるんですが、じゃあ、そこのところで積み上げていくだけで本当にいいのかなというところ、実は学校の現場で一番難しいのは削ることなんです。新しいことをやるのは結構皆さん一生懸命やるんですが、それをやめるということは非常に難しい部分があります。
その辺りなんかも踏まえながら内容について見させていただければと思いますし、実習というものの位置付け、これについてもいろいろ御検討していただけるとありがたいなと思うところです。
なかなか、「家庭基礎」2単位という時間数が多いものですから、そちらのほうでの実習をどれぐらい入れるのかといった部分とか、なかなか難しい面があります。ただ、せっかくやるのであれば、そういった実習、知識として学ぶ以外の部分というんですかね、そちらをしっかり学んでほしいなという話をよく他の学校の家庭科の先生方からもお聞きしますので、そういった部分なんかも併せて考えていければなと思っております。
以上、そんな形ですので、私、いろいろ分からない不勉強な面等あるかもしれませんけれども、精一杯やっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
【杉山主査】 髙木委員、ありがとうございました。
それでは、次に、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】 滋賀大学の田中です。大学では住居学を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは、中学校技術・家庭科から家庭科が独立するのではという大きな変化がある中で、家庭科の授業時間数は小学校、中学校、高等学校でどのぐらいになるのかということが大変気になりました。
と申しますのも、資料6の4ページに書かれている検討の方向性の(1)小・中・高等学校における目標・内容・方法の体系的な整理、を行うに当たり、しかも、実践的・体験的な活動時間も含みながら整理することになるかと思いますけれども、家庭科をデザインするに当たり、大枠の時間数が分かると大変ありがたいと感じました。時間数はこれまでどおりを前提に今後検討していくということでよろしいでしょうか。確認したいと思ったところです。
あと、内容の体系的な整理に関わって、そして、少子高齢者化の動向を踏まえた内容等の見直しにも関わって、中学校、住生活の内容に、「家庭内の事故の防ぎ方」があります。幼児についてはおおむねできているのですが、高齢者についてはあまりできておりません。
一方で、内容Aの「家族・家庭生活」でも高齢者について学びます。この内容Aの「家族・家庭生活」で扱う高齢者は、地域で見かける高齢者についてであり、内容B「衣食住の生活」の住生活で求められる高齢者は、家庭で生活している高齢者です。「家庭内の事故の防ぎ方」の学習において、高齢者の特徴、事故の種類、事故が起きやすい場所、事故の対策、そういったものを関連付けて、根拠に基づいて考え、工夫することができるようにするには、今の元気な高齢者の扱いから、寝たきりまでにはいかないにしても不自由を来している高齢者まで範囲を広げないと、高齢者をイメージして事故の対策を考え工夫することは難しいと思われます。
各学校段階で高齢者の特徴をどこまで教えるのか、どこまで高齢者について扱うのかを明確にしていく必要があると思います。しかも、限られた授業時間の中で、それを行わなければならない。先ほど髙木委員が内容を削ることは難しいとおっしゃられたことと少し反するようなことになっておりますけれども、高齢者についての学習の整理が必要ではないかと思っております。
まだ住居に関しての課題はたくさんあるのですけれども、本日は、以上とさせていただきます。
【杉山主査】 田中委員、ありがとうございました。
それでは、次に、都甲委員、お願いします。
【都甲委員】 ありがとうございます。いろいろと委員の先生方のお話を伺いながら、これから新しい家庭科を更につくっていくということに携われることをとてもうれしく思っているところです。
先ほど村上委員から、小学生は作ったものを使わないんじゃなくて、作って喜ぶところまでしていますよという現状をお話しくださって、私の発言に対応した形で発言してくださったんですけれども、私が申し上げたのは、私の昔の拙い経験と、それから、大分県という随分日本の中心から離れたところでは、(状況が違うということも含んでいました。)村上先生は専任として、家庭科専科として教えていらしたり、東京での実践を御覧になることが多いのかなというふうにも思うんですが、大分であったり地方では、なかなか小学校に専科の先生を(配置する)ということが難しかったりですとか、それから、資料7の23ページにありますが、免許外教科担任の件数が中学校・高等学校でも多いというような話があります。
これは中央にいらっしゃるというか、関東なり都会にいらっしゃる先生方はあまり実感のないところかもしれないですけれども、大分におりますと、この市には中学校の家庭科の先生はいませんというような話を聞いたりすることもあります。それなら、どなたがやっているんですかと聞くと、技術・家庭なので、技術の先生を専任で置いて、免許外で家庭科を教えているですとか、それから、それは何かの資料で見ましたけれども、何の教科の先生がやっているかといえば、英語とか国語とか美術、音楽などの先生がなさっている、女性の多い教科の先生が家庭科をやっているというような現状がまだあるというのが実感としてあります。
そういう状況をどうすれば克服できるのかというのは、次の学習指導要領を議論するに当たって、どう繋がるかというのは私もまだ分からないところもあるんですけれども、中心の教育環境とそれから地方の教育環境が違うところもあるということは、先生方のお話を聞きながら感覚的な違いを感じるところがありました。
資料7の最後のところに、こういう問題提起もしていただいているところで、逆に言うと、免許がなくてもできるような形にしましょうという意味ではないとも思いながら、どういう方向に持っていくことができるのか。その辺りは私も分からないんですけれども、その辺り、ちょっと疑問に思ったりするところもありました。先生方からは、意見がすぐには出ないようでしたので、私が今、一巡したところで感じた違和感と疑問というところを、まとまりませんでしたけれども、お話しさせていただきました。ありがとうございます。
【杉山主査】 都甲先生、ありがとうございました。
それでは、次に、西原委員は御欠席ですので、村上委員、よろしくお願いします。
【村上委員】 皆様、こんにちは。文京区立青柳小学校長の村上です。よろしくお願いいたします。
私は、東京都の公立中学校の家庭科専科として20年、その後、同じく東京都の公立小学校の家庭科専科として11年、その後は、管理職として家庭科に関わらせていただいてきました。今は、全小家、都小家にも関わっております。そういった経験を生かしまして、小・中5年間での系統性というところについても、何かしら自分の経験を生かしていけたらと思っております。
さて、小学生ですが、小学校では5年生から始まる家庭科を非常に楽しみにしてくれています。得意・不得意ありますが、家庭科のよさは、作ったものを自分で使える、生活に生かせるというところではないかと感じております。
先ほど都甲先生の方から、なかなか被服で作ったものが家庭で使えないというようなお話もありましたが、小学生の場合は、まだまだ自分で作ったものが、作れてうれしい、それを自分で使おうという思いが強い子が多いです。ですので、自分が作ったエプロンを使って調理実習をするなど、自分が作ったものを実生活に生かしていることが多いなと感じています。
しかしながら、社会の変化に伴って、家庭生活も非常に変わってきているのを実感しています。例えば、お茶を入れる学習の後、学習したことを家で実践させようとしても、家に急須がない、ペットボトルのお茶しか家では飲んだことがないという児童もいます。また、お家がオール電化でガスコンロがないという児童もいます。また、みそ汁を作るときに、家族にどういった実が好きか聞いてきましょうと言ったときにも、粉末のインスタントみそ汁しか家では飲んだことがない、家族もそういうものしか飲んだことがないから、好きな実と言われてもピンと来ないという児童もいます。
そんな実態があるわけですが、だからこそ小学校での家庭科の重要性をひしひしと感じています。なかなか、日本の伝統文化にしても、行事にしても、今までであれば当然家庭で教わってきたことが教われないということが増えてきている中、小学校での家庭科教育の重要性というものを感じています。
先日、私自身が自動車の運転免許の更新に行ってまいりました。その中でDVDを見たのですが、自動運転の自動車が増えている中で、それでもドライバー自身が交通のルール・知識・技能を身に付けて運転席に乗るのと、そうでないのとでは大きな違いがあるということを言っていました。家庭科についても同じだなというふうにそのとき感じた次第です。
知っているけれどもそれを別にやらないのか、知らないでやらないのかというのは、大きな違いなのではないかと思っています。また、今後、未曽有の自然災害が起こり得る可能性が高いと言われています。そういった中で、カセットコンロでお湯が沸かせる、また、御飯がお鍋でちゃんと炊ける、夜寒いときに重ね着をすると温かく過ごせるなど、家庭科で教わる知識が大活躍するのではないか、そういった知識をしっかり身に付けさせておかなくてはいけないのではないかと感じております。家庭科は自ら考え、よりよく生き抜く力、ウェルビーイングを子供たちにつけてあげられる教科だと感じています。
先ほど、亀田先生からもお話がありましたが、私も「タテ・ヨコの関係」の可視化、「深い学び」の具現化ということに非常に関心をもっております。学習指導要領の構造化・表形式化をしっかりすることで、専門性のない担任などが教えるときにも、的確に子供たちが自ら学びたい、やりたいと思える教育が実現していくのではないかと感じております。
今回、このようなワーキンググループに参加させていただけることには、非常に感謝しつつ、また、非常に責任を感じております。全力で取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【杉山主査】 村上委員、ありがとうございました。
それでは、次に、吉川委員、お願いします。
【吉川委員】 こんにちは。吉川はる奈と申します。よろしくお願いいたします。
私は埼玉大学で教員養成に関わっています。小学校、中、高の家庭科の教員を養成するという立場から、どうしても、どういう教員を育てるかというところに関心を持ちながら、そして、どうやったら家庭科の教員として長く走れるか、卒業生が全国いろいろな場所で、家庭科教員、小学校の教員も含めて、家庭科を学習する授業を展開しているわけですけれども、どうしたら彼らが長く走れるのか、サポートできるのかということに関心を持ちながら、日々格闘している状況です。
私の専門は保育です。生涯発達を軸に、保育や、それから家族、社会との在り方について研究・教育をしてきました。その辺りも意識しながら、本日は幾つか気付いたところをお話ししたい、関心を持っているところをお話ししたいと思います。
まず一点目です。今回の新たな方針の中に、教員に寄り添った形の方針が明確に記載されているというところは、とてもうれしく思いました。時間の余白をというところは、教員が成長していく上ではとても大事なところかなというふうに思いますが、どう余白を生み出すかというところの難しさというのは、恐らくこれから様々議論があるところだと思いますが、それがよりよい形で教科の学習に生かせるように、余白をつくれるような全体像が示せるといいなというふうに思っています。
まず一点目は、私自身の専門からということもありますが、実践や体験をどのように行うかで、家庭科の学習そのものが変わってくるということはものすごく感じています。今回も、体験、実践というところを大切にするというところはきちんと明記されていると思いますが、時間が無尽蔵にあるわけではない中での実践、体験、実験というところ指摘があるところだと思いますが、その中で見て学ぶというところについての丁寧な議論といいますか、見て学ぶというところの重要性ということを丁寧に織り込んでいく必要はあると思います。
ただただ体験をすれば、あるいは、ただただ手を動かせば、あるいは、ただ体を動かせば分かるということではなく、少子高齢化の時代において、彼らの、今の小・中・高校生の生活の中で実際に経験をしていくことを家庭科の中で取り扱うことは、なかなか難しい場面がすごく多いと思う中で、いきなり体験をする、手を動かす、何かを実践するということは、教科書に書いてあり、授業で説明があったにせよ、なかなか難しい。ましてや、家庭の中でそのような形で経験もしていない、生活経験が年々変わってきているところでの経験、実践というのは、本当に家庭科の先生方は苦労なさっているだろうなと思います。
保育においても、保育現場の中で子供と関わるというところは、体験的な学習があるわけですけれども、その保育のところでも、もちろんいきなり体験をするということはとても難しく、子供とどう関わっていいか分からないとか、大学生であっても、子供とどう向き合っていいか分からないということで立ち尽くしてしまうような学生が実際にいたりする。そういうような状況の中で、見て学ぶというのがとても大事だなということで取り入れています。
動画のようなデジタル教材といいますか、デジタル素材というのも、もちろんそこで力を発揮すると思います。コロナでなかなか体験が難しかったときに、実際にリアリティーあふれる動画の中で見て学ぶということはせざるを得ない状況の中で行う先生がたくさんいらしたと思いますけれど、そこで工夫次第で学ぶこともとても多いと思います。ただ、その体験と見ることのバランスといいますか、体験とデジタルで学ぶことのバランスというのも、またすごく難しい、丁寧に議論していかなければいけないところだなと思います。
デジタルの中で、デジタルネイティブの子供たちですので、絵本もデジタルで見る子供たち、あるいは学生も多い中で、改めて、その中で何を得ているのか、何をどう学んでいるのか、そして私たちは何をどう伝えなければいけないのかということの整理というのはとても大事になってくると思います。
見て学ぶというところでいうならば、少子高齢化の中で、ロールモデル的な人間の成長の姿、像というのが身近でないというところも影響しているかなというところで、2点目として、自分の成長・発達をイメージできるような家庭科の教員を育てていけるようにしたいというのは、視点として持っています。
将来に向かって自立を目指していく中で、自分自身もその中にあるというところは本当に大事なところかと思いますけれども、家庭科の教員自身が、また子供たち自身が、自分のこれから先というか、ちょっと先も含めて、これまでも含めて、今の自分になかなかつなげないという、本当に成長イメージというのが描けない、描きにくくなっているということは、人との人間関係の中でいうならば、相手の行動予測ができないので、けんかをすると加減できず、事故になる、あるいは同年齢同士の遊びが変わってきているとか、様々な形で影響が出ていると思っています。
最後に、3点目として、先生方の研修の機会、これはますます大事になってくると思います。先生方が育ってきた生活状況ももちろん、学んできた家庭科の内容というのも違ってきているというのもあります。何より全国に様々な形で研修の機会で、家庭の先生方の研修に参加させていただきますけれども、そういう中で、専門が保育なので、人の発達や保育や、現在の子供たちが抱える状況や社会の仕組み、変化、その中で子供たちがどんな遊びをしているのかという話もする中で、子供がこんなものを見て学んでいるんだねと、こんな家庭の状況になっているんだねという新たな変化を意識した内容について学ぶ機会がなかなかないということを先生方おっしゃいます。
新たな時代に即した学習を準備していくとともに、それを学んでいく先生方に寄り添った研修の機会、それの確保をぜひお願いしたいなと思います。
以上、3点お話しさせていただきました。
【杉山主査】 吉川先生、ありがとうございました。
それでは、次に、渡瀬委員、お願いします。
【渡瀬委員】 よろしくお願いします。東京学芸大学の渡瀬と申します。
大学では家庭科教育を担当しておりまして、教員養成に携わっています。私の研究のベースはカリキュラム研究、生活経営学、家族関係学です。
資料6の2.検討課題(5)や、2.家庭科に関する課題を踏まえた固有の検討の方向性(5)にも関連するかと思うんですが、「家庭科教育をめぐる環境整備」 、つまり「専任教員数と授業時間数を確保する」前提があった上で、学習指導要領の文言が活きる、ということを申し上げたいと思います。資料の中にもありましたように、高校の「家庭基礎」は、少ない授業時間のため、どうしてもトピック型の学習になりがちで、そうなると探究的な学習というのは物理的に困難になっていくように思われます。そのため、環境整備が大前提だということを申し上げた上で、5点ほど私の雑感を申し述べたいと思います。
まず、1つ目です。「各学校段階における系統性、構造化」についてです。小学校から高等学校という中で教科の目標と内容を概念的に捉えるという意味では、「時間軸・空間軸」などの今まで用いられた方法は大変イメージしやすい、と思う反面、資料にもあったように、調理や製作等の技術的側面は、なかなか時間軸・空間軸では捉え切れなと思います。今申し上げたのは資料7の13ページが相当します。このような、技術的な部分というか、実習的な部分をどういうふうにイメージしていくか。玉結び、玉留め、全ての糸、針を使う作業に共通しますけれども、これらについて困難を抱えながら小学校から高校まで、「できない」ままでいってしまう。この状況に対する対応を考えてみたいと思います。
2点目は、「直接体験の場と時間の確保」です。家庭科にとって、これらの要素はやはり必要です。そして、「学びの蓄積」を今まで以上に意識する。これは令和4年の「小学校学習指導要領実施状況調査」を見ましても、そのことが言えるのではないか、と思います。
1950年代以降、日本の家庭科のカリキュラムがどのように変わったのかを見たところ、被服製作に関してのギアチェンジは大きく2回ありました。ひとつは男女必修化があった約30年前ですね。もう一つは、「家庭基礎」の開設、が該当すると思います。これまでの「ギアチェンジ」をどう捉えるか、今後はどう考えていくか、を明確にすることが今回課せられたところかなと思います。
また、物を作るとか調理をするということについて、以前は、「(ものが)ないから技術として身に付けなくてはいけない」状況でしたが、今はそうではないとなったときに、授業の中で「ものづくり」をすることを、どう意味付ける/意義付けるかが重要です。例えばですが、1 ものづくりを通して生活を「科学的/実証的に捉える」こと、2 「自分の生活をクリエイトする技術を身に付ける」こと、3 「問題解決の手だてとしてものづくりの技術を身に付ける」、ということがあると思います。さらには、美術科、図工科でも、作品を見て「すごい」とか、「ここがすてきだね」ということがあると思うんですけれども、4 ほかの人や自分が調理したものや製作技術を見て、すごいな、あるいは、自分ならこうするといった「見る目を育てる」こともあるのかなと思います。
そして、3点目です。「教科家庭科でなければ学べない学び」をいま一度整理するということです。やはり教科活動として存在するからには、「学んだからこそ知った」とか、「分かった」、「できた」ことを意識したいところです。教科書の索引に関する研究を実施した際に、授業時数は減っているのに、索引語数は増えている。事実的知識を身に付けることも重要ですが、そればかりになるのは家庭科のよさを減じてしまうように思います。記号レベルでの単語の認識ということではなくて、何でそれを学ぶんだろう、生活にどう活かしていけるんだろう、ということを当たり前のことのように思われるかもしれませんが、いま一度立ち返って考える必要があるのかなと思います。
4点目は、「家庭科における探究的な学習」についてです。課題設定をすること自体がすごく難しいと思うんですけれども、そのためには、探究を始めるとき、その事象を知りたい、あるいは解決したいという「パッション」とか、それについて知る、解決するという「ミッション」をどう自覚化させるか。パッションとかミッションがないと、児童生徒は、なかなかやろうというふうに動いてかないと思います。ゼロベースでは課題設定は難しいなと思います。
事実関係に基づいて探究していく、いわゆるネット検索とかAIにお任せという形ではなくて、どう事実に迫って一次情報を得ていくかというところについて、家庭科を通して学べるといいのかなと思いますが、そのためには、ある程度の授業時間の確保が必要になる、セットになるということだと思います。
そして、最後に5点目「急激な高度情報化と高齢化への対応」です。私たちは多くの情報の中で生活していますが、押し寄せるちょっと偏ったような情報を含め、生活情報をどう見極め、付き合っていくか、が重要な課題になっています。また、高校では、生涯にわたる生活を見通す視点を育成するため、高齢期も視座に入れた生活設計に関する学習が取り組まれています。しかし、なかなか生徒が長期的視点を持ちにくいこと、教師が考えてほしいことと生徒の意識との乖離があることも耳にすることがあります。
どのようにすれば、この学校段階の子供たちに身近なものとしてその事象に迫れるか、さらには、現在の生活にどうつながってくるのだろうかという視点は大切だなと思いました。
それと、家庭科の学習の中で、ちょっと不安を煽るような言動や固定的イメージを与えてしまうこともひょっとしたらあるのかもしれません。
むしろ、こうしてみようとか、こうしていきたいな、につながる視点とかフックをつくっていくような、そういった教科学習になっていけるといいのかなと思います。
コロナ禍を経て、直接体験で学ぶ家庭科的な学びというのが世界的に評価されています。今こそ、教科家庭科の意義とか意味を深く考える段階に来ていると思います。ですので、今回の学習指導要領の改訂において、これらのことも、改めてかみしめながら、皆様といろいろ議論を重ねられたらなと思っています。
以上です。ありがとうございました。
【杉山主査】 渡瀬委員、ありがとうございました。
それでは、次に、石島主査代理より御発言をお願いします。
【石島主査代理】 皆さん、こんにちは。茨城大学の石島恵美子と申します。よろしくお願いいたします。
私は教育学部で家庭科教員を育てております。私の専門は家庭科教育で、その中でも実践的・体験的な学習ということで、特に家庭科独自の教育方法である調理実習や被服実習、保育実習などを問題解決的に学ぶようなカリキュラムデザインと、その教育効果を測定したりといったことを研究しております。
近年は、食品ロス削減などを代表とします食と環境といった具体的な生活課題を解決する実践型のモデルの開発をしております。単なる知識の伝達ではなくて、生徒の意識と行動変容を促すような最適な問題解決の学習の方法について検証しています。また、教員養成の立場として、産学官の連携などを通じて問題解決学習を探究的に行う、また、学校家庭クラブ活動やホームプロジェクトを指導できるような教員養成プログラムを実施しております。
本審議におきましては、私の専門である家庭科教育の視点から、2点述べさせていただきたいと思います。
1つ目は、実生活と結びついた持続可能な社会の担い手の育成です。論点整理で示された18歳意識のアンケートでは、日本の高校生は将来に対して悲観的で、自分が地域社会に役立つと考えていない傾向が示されています。このような社会風潮は看過できない状況だと思っています。生きる実感を得るということは、家庭科こそが今こそ担えることではないかと思います。家庭科では実感や達成感が得られ、やってみてできると自分を評価する実行可能性が最も感じられる教科でもあります。家庭科の学びを生かして自分の肯定感やウェルビーイングを向上させ、持続可能な社会の創り手を育成したいと考えています。
また、2つ目は、地域社会の資源を生かした質の高い学びの実現です。社会と学校との連携を社会の一員として感じられるような具体的な連携モデルを確立して、積極的に議論をしていきたいと思います。また、今回課題に挙げられています探究学習の困難さということなんですが、家庭科の学びというのは、地域や地域産物、生活文化など非常に身近なものを取り上げることが多いので、探究学習の入り口としてはとても効果のある題材になるかと思います。
また、中学校の方で教員が課題を設定しているということが1つの課題として挙げられていましたが、私はそれは一概には問題であるとは言えないと思います。生活経験の少ない子供たちが問題に気がつくということはなかなか難しいことではありますので、先生が示した問題に対して探究していく、いろいろな人と交流をしていったりインタビューやアンケートをもって問題を探究していくという過程を示すということで、そういうスモールステップで学んでいくというような視点も必要なのかなと思いますので、課題ということももう少し細かく精査しながら検討していきたいなと思います。
最後になりますが、学校教育全体のカリキュラム・マネジメントの中で、家庭科の独自性や可能性が最大限生きる家庭科のカリキュラムを皆様と検討していきたいと考えています。現場で1人教員配置が多い科目で懸命に家庭科教育に尽力している家庭科の先生方をエンパワーできるようなこと、微力ながらも、私も高校教員の経験がございます。このカリキュラム編成に関しては非常に苦労した思い出もあります。そういう経験と大学教員としての研究の知見を最大限に生かして、参加させていただきたいと思います。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
【杉山主査】 石島委員、ありがとうございました。
それでは、最後に、私から発言させていただきます。皆様の御意見をいろいろとお伺いしていながら、とてもこの会議の重要性をひしひしと感じて、何を話そうかなと考えてきたものも、これでいいのかみたいに思い始めました。
私は、横浜国立大学で、今日、このメンバーの中にもたくさん教員養成に関わってくださっている先生方がいらっしゃいますが、私も小・中・高の教員の養成をしております。専門は調理科学です。
私は実は小学校の教員になりたくて教員養成学部に入りました。実は、今でもできるのであれば小学校の教員になりたいと思っていますが、大学に入ったときに小学校教員を希望した理由は、教科ということよりも子供たちと関わりたいからでした。教科の中ではあまり家庭科を意識していなかったのですが、大学に入って家庭科専攻に所属し、そのときに教わった先生に「あなたたちは家庭科の何を知っているの」と言われ、大学で家庭科に向き合ったところ、自分が教わってきた家庭科ではない家庭科に出会い、本当の意味で家庭科の大切さを学び、その後、修士課程でさらに学びました。
今は教員養成をしながら、先月も来週も家庭科の先生方の研修にも関わらせていただいています。調理科学が専門ですので、食生活の分野についてお話をすることも多いのです。しかし、文科省で学習指導要領や学習指導要領実施状況調査などに携わらせていただくようになり、学習指導要領が求めているものを先生方にどう理解していただくか、そこの難しさを感じています。研修を通して実感として捉え、実際の授業にどう生かしてもらうことができるのか。
例を示してもよいのですが、例を示すとその通りになってしまうこともあります。とりわけ、私が家庭科が難しいと感じるのは、家庭生活の在り方はひとつではないからです。これを教えれば誰しもが豊かな家庭生活を営み、そのことが持続可能な社会をつくっていくようになるというものがあるわけではありません。また、ひとりの人間の中でも、ライフステージにおいて、様々な環境のもとで、よりよい生活の仕方を選択していかなくてはいけません。
今の家庭環境の中で食生活、衣生活、住生活、消費生活などがどうであるべきかを考えることはもちろん大事ですが、その時その時だけだとしたら、小・中・高等学校、その時で学習は終わってしまいます。家庭科で学ぶ家庭生活に関わる内容は、子供たちにとって、高校を卒業してさらに歳を取り死に至るまで、生涯ずっと続く基本的な内容だと考えるのであるとすれば、子供たちが将来自分がどういう環境の中で暮らしているか分からないけれども、その中でどう生活したらよいかを考えることのできるような力を身に付けることが大切だと考えます。それは単に知識を覚えることではなくて、知識や経験を通して考えることのできる力なのかなと思います。
小学校の学習指導要領実施状況調査のときにも、調理の仕方をどのくらい理解できているか、今回言われている「中核的な概念」に関わるものを取り上げました。何かを扱う方法として、これはA、それはBということを知っているだけではなく、何故そう扱うのかを理解することを通して、扱ったことのない他のことについても広げて考えることができるような力。そこをどのようにして評価するのかという、評価方法も含めて考えないといけないなと思いました。
今回、このワーキンググループの中には、それぞれ専門の違う先生方、それぞれの専門家にも入っていただいています。家庭科は内容がとても幅が広く、全て家庭生活に関することだと取り上げると、ほかの先生方もおっしゃっていましたが、内容はどんどん増えていくのです。
生活に関連する事実的な知識はどんどん増えていく中で、授業時数も増えていけばいいのですが、他の教科も同様で難しい状況です。どういう学びをしていくのがよいのか、何のためにそれを学習するのか児童生徒をどういう人に育てたいのか、そのためにどんな力を必要とするのか、先生方と共に知恵を絞ることができればと思います。基本的な学習指導要領の考え方は前回と大きくは変わらないようですので、そこをベースにしながら、特に中核的な概念、先ほどの「タテ・ヨコ」の関係という話もありましたが、家庭科を教えている先生方にもよく分かるよう整理していくことが非常に大事と思っています。
これから何回かの会議の中で、視点を絞りながら会議を進めていくことになると思いますので、またその時々にいろいろな御意見をお聞かせいただきながら議論を深めることができたらと考えております。
私の発言はこの程度にさせていただければと思いますが、最初の事務局からの御説明もすごく早く、短くしていただいたこともあり、時間的にはかなり余裕がある状態になっております。もし、皆さんの御意見を一通り今日お伺いしましたので、2回目にもう一度確認しておきたいこと、忘れていたことなどがございましたら、挙手ボタンをお願いいたします。いかがでございましょうか。
【髙見主任教育企画調整官】 その前に1点だけよろしいでしょうか。
【杉山主査】 いいですよ。
【髙見主任教育企画調整官】 事務局でございます。
先ほど田中先生のほうから、小・中・高等学校の体系的な整理を行うに当たってということでございますけれども、おおよその時間数が分かるとありがたいというお話があったかと存じます。こちらについて私の説明が十分ではなかったかもしれませんが、論点整理、資料5でございますが、論点整理のページで言いますと、今ちょうど画面が投映しているところですね。
今後の検討スケジュール、検討の在り方の3ポツのその他の欄がございます。この1つ目のところでございますけれども、小学校の総合的な学習の時間において情報の領域(仮称)が付加されること、あるいは、中学校で情報・技術科(仮称)が創設されることで、標準授業時数の増加ということもある程度考えられるわけでございますけれども、一方で、諮問の中では、年間の標準総授業時数を現在以上に増加させないという方針がございますので、こういったものを前提にしながら、このワーキンググループとはまた別途でございますけれども、教育課程企画特別部会あるいは総則・評価特別部会において、教育課程全体を見通した観点から検討を行って、来年の春頃を目途に一定の結論を得るということがこの中で記載されております。
そういった意味では、全体の授業時数の扱いについて、その中で議論を踏まえて、またこの家庭ワーキンググループで御審議いただくということになりますので、まずは、現行学習指導要領の時数ベースで基本的には御議論いただくというのが現時点での状況かというふうに捉えております。
若干補足になります。私からは以上でございます。
【杉山主査】 ありがとうございました。よく分かりました。
それでは、委員の皆さんの中で御発言御希望がありましたら、どうぞ挙手をしてください。特に先生方のほうからはおありではないでしょうか。都甲委員、お願いします。
【都甲委員】 ありがとうございます。本日は、貴重なお時間を頂戴いたしまして、ありがとうございます。大分大学教育学部初等中等教育コースで教員をしております都甲由紀子と申します。
専門は被服学で、小学校教員養成と中・高家庭科の教員養成に携わっております。髙木委員からの御発言にありましたけれども、家庭科の中で昨今ずっと最も削られてきた内容ではないかというふうには思っております。
初めての発言の機会ですので、私自身の経歴と家庭科に対する考えというのを兼ねてお話ししていきたいんですけれども。まだ女子だけ家庭科を履修していた時代に高校を卒業しましたので、家庭科では浴衣を縫ったことが印象的でした。私自身は理系で物理・化学を選択し、もともと家政学部被服学科理系コースが生活科学部生活環境学科生活工学講座に改組されてからの2期生として大学に入学をしました。本日御欠席の西原先生が1期生で1年先輩となります。
私は教員になるつもりはなかったんですけれども、いわゆる昔のお料理・裁縫中心の家庭科も好きでしたので、中・高の家庭科の教員免許の取得を目指しました。大学時代に、家庭科教育法の授業でアメリカの家庭科の教科書を先生が紹介してくださり、人が生きることを中心にしながら、今の形の家庭科という新しい形を示していただいたので、家庭科の教員を目指しました。
博士前期課程修了後に、20代の6年間、東京の私立の中・高で家庭科教員を務めていたんですけれども、その学校では、毎朝5分間、運針をするというのが日課の進学校でして、家庭科の教員に当時求められたのは、受験勉強を妨げない家庭科の授業と、確実な運針の指導だったんですね。
生徒に「家庭科は暗記科目」と言われてショックを受けたことも、今でも覚えています。当時は、家庭科に限らず、知識をテストすることが公平であるという文化の進学校でしたので、栄養素の種類やミシンの部分の名称に至るまでを問うようなテストをして、評価をしていました。
「家庭一般」から「家庭基礎」に移行した時期でもあり、時間は半分で、広く浅い知識を与えて試験で問うということしかできませんでしたし、その時期の学習指導要領には、随所に「深入りしないこと」という文言がありました。今とはとても対照的です。深入りしなくては面白くないはずですけれども、確かにそんな時間もないというジレンマをすごく抱えたことを深く胸に刻んでおります。
今は主体的・対話的で深い学びというものが家庭科にも求められていることにはとても共感するところですが、それこそ、本当に限られた時間の中でそれをどのように実現するかについては、課題が山積しているというふうに認識しています。
一方で、運針の指導をしていたという話をしましたけれども、限られた時間の中でも、針と糸を手にすることで生徒の呼吸が整って、手を動かすことで集中力が養われていくという様子を見せてもらっておりました。何かを作ることを目的にしなくても、古来、変わらない形をした人類の道具としての針ですね、針と糸を使う経験ということと指先を鍛えるということは、人間の成長過程で必須ではないかということもすごく実感しました。限られた時間の中でも、布を用いた製作実習の充実はすごくしていきたいというふうに考えます。
その後、博士課程に進学して、家庭科には染色は入っていないんですけれども、私の専門は天然染料による染色性の化学を研究するというテーマに取り組みながらも、附属小・中・高の家庭科の先生方の研究会に参加させていただいていて、当時すごく先進的な実践を見せていただきながら、やはり家庭科は重要だという認識を深めていたところです。
博士取得後に大分大学に着任してきましたけれども、染色の教材開発もしているんですが、染色に限定せず、小学校から大学まで、衣生活を軸にして、STEAM教育や環境教育も意識した授業デザインや動画教材の制作にも取り組んでいるところです。
中・高教員の時代にもう一つ、被服製作の授業では、「作っても着ない」と言われたことも記憶に刻まれているところです。現在の学習指導要領では、布を用いた製作実習は、作り方や裁縫技術を教えるのではなくて、児童・生徒が必要だと感じるものを作って、児童・生徒自身がその評価をする一連の活動が掲げられて、プロジェクト・ベースド・ラーニングとして位置付けられているのはすごくよく分かるんですけれども、実際のところは、現状はキットを使って作って終わらせるというようなことが多く行われているということも聞きます。今回の改訂で実現可能性というのが論点にもなっているところですが、その辺りについては考えていきたいというふうに感じております。
「布」というのは、委員の皆様に釈迦に説法だとは思うんですが、英語で「textile」、「文章」という言葉は「text」という言葉になると思います。そのいずれも、語源となるラテン語は「texere」という「織る」とか「編む」という意味なんだそうですけれども、日本語でも文書を編集する「編」というのは「編む」ですよね。抽象で概念を具体物に例えて表現されるというのは常だと思うんですが、「文章」という言葉が例えられる具体物の「布」を学ぶ内容が家庭科の中に位置付けられていることには、とても大きな意味があると考えております。
最後になりましたが、家庭科は、自分の手を使って生活を整える小さな実践をしながら、主体的・対話的で深い学びを実現する基盤となるような教科なんだというふうに考えております。次期学習指導要領では、小さな実践を学齢に応じて確実に積み上げて、子どもたちが自らの手で生活をつくり直す力を育む道筋を皆様と一緒につくり上げていきたいと考えております。
それから、学問分野の文理を問わず、課題解決や価値創造をしていくことを目指すという観点では、最近よく聞く「総合知」の理念とも通じる教科であると考えています。社会に出る前に、他教科も含めた学習経験を総合して自分たちの生活をよりよくしていくにはどうすればよいのかというのを考えて、実践することのできる子どもたちを育てる家庭科をつくっていくために、皆様と議論できることを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。
【杉山主査】 都甲委員、ありがとうございました。何かありますか。
【髙見主任教育企画調整官】 ありがとうございます。今の時点では、まず、現家庭科をめぐる課題ということで、教育課程に限らず、幅広く環境整備という視点からも課題を挙げているところでございます。具体的にどうやっていくかということについては、審議を踏まえてということになりますし、また、実際に予算的な話、あるいは人的な確保の話でもろもろ課題が出てきますので、その辺りはまた追って政策的にも整理していく必要があると思いますけれども、いずれにしましても、今後の先生方の御意見を踏まえながら、しっかりと考えてまいりたいと思っております。ありがとうございます。
【杉山主査】 ありがとうございます。
渡瀬委員、お願いします。
【渡瀬委員】 2つ質問があります。先ほど髙木委員から、高校での専門教科家庭の扱いについてもいろいろ議論が必要という御発言がありました。もうちょっと先になるのかもしれないですけれども、産業教育のワーキンググループとの連携・情報共有の場があるのでしょうか、というのが1点目です。
2点目は、先ほど資料5のところで出していただいていた中核的な概念に基づく表の例の拘束力についてお伺いしたいということです。
私の捉えですが、これはあくまで例であって、教科によっては多少アレンジがあり得るだろうと見ているんですが、この点についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
【髙見主任教育企画調整官】 ありがとうございます。
まず、1点目の専門教科としての家庭としての連携ということでございますけれども、高校の専門教科の部分については、別途また、先ほど先生がおっしゃったように、産業教育ワーキンググループのほうで御審議いただくことになっております。なかなか、日程上、例えば同時に会議を開催するところまでは難しいと思いますけれども、実態上、例えば、我々が資料を作成するときには、当然、横の連携もしっかり図っていきたいと思いますし、また、お互いの会議の検討状況についても、必要に応じて随時御紹介するような形、あるいは、またその中で御意見いただくような形で、会議として進めていきたいというふうに考えております。
それから、2点目の中核的な概念に基づく、こちらの図の拘束力ということでございますが、これはあくまでイメージでございまして、先ほど13ページと14ページの中でも、数学と国語でかなり特性が違うということで、今、13ページは数学の例ですが、14ページ、国語の例は、「タテ」と「ヨコ」をこのような形で示しているという実態もございます。これは家庭科の特質を踏まえて御審議いただくという意味では、これは特段強い拘束がないというふうに捉えておりますので、家庭科としてどういった形が望ましいかということについては、次回以降、しっかりと先生方の方で御審議いただければというふうに考えております。
以上でございます。
【渡瀬委員】 ありがとうございます。
最初の質問について、「家庭基礎」2単位は、必修として学ばなければいけないことに絞られていて、その上で、更に学びたい人や専門性を身に付けたい人が専門教科を履修するという建て付けだったと思うんですけれども。その場合、専門教科の内容の深まりと共に、共通教科とのつながりを今回更に意識したほうがいいのかなと思いました。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。少しだけ補足させていただいてもよろしいでしょうか。教育課程企画室長の栗山でございます。
先ほど構造化についてお尋ねをいただきましたが、先ほど髙見が申し上げたように、こちらについてはあくまで例示のイメージでございますけれども、構造化・表形式化については、もちろん各教科等の特性を踏まえて検討することが必要である一方で、当然、教師が授業づくりに使いやすくしていくという意味からは、一定の共通性、これも大変重要であるというふうに考えております。
そうした観点からは、総則・評価特別部会におきまして、比較的近い段階で一定の共通的な考え方を整理した上で、各教科等のワーキンググループにおいて、共通性の上で御検討いただきやすいように整理をしていきたいというふうに考えております。ゼロからということではございませんで、一定の整理をした上で、その上で、先ほどの委員からも、こちら並列で並べるほうがいいんじゃないかという御意見も早速いただきましたけれども、基盤の上で御検討を深めていただきやすいようにしていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
失礼いたします。
【渡瀬委員】 ありがとうございました。以上です。
【杉山主査】 ありがとうございます。このワーキンググループの検討をしながら、同時並行で幾つかの会議が開催されていますので、随時いろいろな情報をいただきながら検討していくということで理解させていただきます。ありがとうございました。
ほかにいかがですか。村上委員、よろしくお願いします。
【村上委員】 村上です。先ほど、都甲先生からもまた新たな御意見いただきまして。すいません。東京都の小学校家庭科がそんなすごくできているわけでは決してなくて、とにかく出だしのところで子供たちは新しい教科家庭科を楽しみにしていますので、そのわくわく感で、いろいろな物を作って使うということがあるのですが、おっしゃるとおり、みんながみんな、それができているわけではありませんし、本当にそれは地域によってもすごく違うのかなというふうに思っています。
東京におきましても非常に専科の教員が減りまして、御年配の講師の先生や担任が教える中での苦しさみたいなものも非常に出てきております。そんな中で、いかに出だしの子供たちのわくわく感を潰さずに、子供たちが自ら学べる家庭科をつくっていくのか、そこが課題だなというふうに思っております。
また、非常に子供たちは多様性が出てきていまして、昔よりもずっと一人一人の多様性を尊重するという時代になっているなというふうに感じる中で、子供の多様性や家庭の多様性、そういったところにどう対応して、今回の検討の基盤となる考え方にもありますように、多様性の包摂、そこをどのようにしていったらいいのかなというところを、また皆様のいろいろな御意見も聞いていきたいなと思っております。
以上です。
【杉山主査】 ありがとうございました。
亀田委員、お願いします。
【亀田委員】 ありがとうございます。先ほどからの御意見を少しお聞きしていたら事例が思い浮かびましたので、布を用いた製作の、製作した後の用途といいますか、子供が使うのか使わないのかという先ほどのご意見につなげて発言させていただきたいと思います。
現行の学習指導要領にも明記されているかと思いますが、布を用いた製作は生活を豊かにするものというところで、様々な内容との連携が図られていると承知しているところです。
ただ、全ての教員が免許を保有している状況ではない中で、そこがしっかりと意識化されてない課題があるのかと思います。例えば、単なるトートバッグを作るとかエプロンを作るだけではなくて、何のためにエプロンを作っていくのかという、次なるできた後の使用目的といいますか、あるいは、トートバッグを作るにしても、何のための、そして誰のために、生活のどの場面を豊かにするためのトートバッグなのか、ここの目的意識を授業の設計の中でしっかりと子供たちに常に意識化させていくというところが指導上とても大事なのかなというふうに思っており、私自身も心がけて実践してまいりました。
具体例を申し上げますと、例えばトートバッグ、小・中ともに、布を用いた製作はスパイラルに向上し製作物が高度になっていくと思うんですが、それを技能の向上をさせていく中で、単なる作業にしてしまうと、これはよろしくないというふうに思っています。先ほど申し上げたように、目的とかどんな場面でどのような生活が豊かになるかということを願いながら子供が作り上げていくか。つまり、その製作過程のプロセス自体に思いが乗っかる。思いが乗っかっていくと完成したときの喜びは人一倍ですし、さあ、このエプロンで調理実習ができるよとか、お家でも料理をやってみようとか思えるし。
トートバッグでは、例えば、高齢者の問題が、委員の中からも御意見が出ていましたが、高齢化している社会の中で、おばあちゃんのお薬、病院に通ったときにお薬をもらってくるときに、おばあちゃんにプレゼントして、お薬バッグにしてほしいからというトートバッグを作る場合もあれば、はたまた、お母さんがあるいはお父さんが犬の散歩に行く。犬の散歩に行くときにちょっと持っていってもらいたいんだと。だから母の日、父の日のプレゼントにするよとか、あるいは敬老の日のプレゼントでもいいですが、こういう目的です。あるいは自分のため、自分の生活を豊かにしたいんだということで、お弁当を入れるためのトートバッグ作りなんだと、この辺りのどんな場面で使うかの目的意識をしっかり持たせることによって、単なる作業ではなくなる。技能の習得、技能の鍛錬、そして、単なる物を作るというものではなくなるので、そこに思いが宿り、そして、手作りのよさを味わい、それを使っていくときの生活の豊かさ、作っているプロセスも思い出しながら使う、あるいは、家族が使ってくれるというところで、思いの籠もった製作となり、それが生活を豊かにするんじゃないかなと思います。
お金を出せば、バッグはすぐに安価なものも含めて手に入ります。その中で、どうして家庭科の中で手作りをしていくのかというところの意義をしっかり持たせながら、教員自身が明確に持ちながら、思いを込めて授業することが大事じゃないかなというふうに感じた次第です。
また、「タテ・ヨコの関係」ですが、そういう意味において、衣食住の衣生活の布を用いた製作をするにおいても、環境に優しい布の素材を選んで、環境に優しく作るんだとか、あるいは、さっきも申し上げておりますように、家族のためにつくるんだとか、あるいは、保育、幼児の教育と関連しながら、保育園バッグの延長で、ここにポケットをつけてあげると便利かなとか、そういう目的意識に思いをはせながら作ること、つまり、内容にも横串を刺していくというような指導を心がけることで、これが解決の糸口が見えるんじゃないかなと思います。
講師の問題に関しては、さっきキットを使うことはいかがかなというようなお話もありましたが、キットを使うことが駄目だとなると、恐らく免許をお持ちではない方が本当に苦労されるのではないかなということを現状では思っております。そうなると、先ほど、キットを使ったとしても、しっかりといろいろな内容の横串を刺しながら目的意識を持って作ることによって、それは単なるキットの製作ではなくなるのではないかと、思いの籠もった、生活を豊かにする作品になるというふうに私は現状の中では考えております。
以上になります。
【杉山主査】 ありがとうございました。
ほかにございますか。石島委員、お願いします。
【石島主査代理】 石島でございます。
時間数、単位数のことなんですけれども、「家庭一般」から「家庭基礎」になったとき、4単位から2単位になったときの話なんですが、4単位やっていたものが2単位になるということで、十分な家庭科の内容ができないのではないかということで、かなり論議がありました。
それで、そのときに文科省へ来ていろいろ御相談をさせていただいたんですけれども、文科省としては2単位にするとは言っていないですと、学校現場が選べば2単位になりますよというようなお話だったんです。御存じのように、ジェンダーギャップが非常に反映していて、女性の多い家庭科に関しては、すごく管理職が少ないということもありますし、学校でも1人教員配置なので、教育課程を決めるときには全く家庭科の意見が反映されないという現状があります。
そういった中で、今後、少子化もありまして各学校でクラス数も減っていくと、より一層、正採用の正規教員を置くというのが難しくなってくると思うので、そういったところでの配慮といいますか、お願いしたいというのと。
あとは、教員の余白をつくるということを、子供たちの余白をつくるということはとてもすばらしいと思うんですけれども、それで一体減ずる教科は何になっていくんだろうかとか、そういうちょっと家庭科の立場から見るとちょっと不安定なんじゃないかなという心配がありまして、今後そちらのワーキンググループで決めるときに、少ない単位数のものは授業時間数を減じないとか、何か科目に対して配慮をいただけるとありがたいなと思っています。
これは家庭科のワーキンググループの話す検討事項ではないですけれども、そちらのほうで決まってしまうと、時間数があれば解決できる、学習内容を入れられるということもありますし、実現可能なこともたくさんあると思うので、その辺りも連動してくると思うので、ぜひ検討する際には入れていただけたらと思います。よろしくお願いします。
【杉山主査】 ありがとうございます。
【髙見主任教育企画調整官】 ありがとうございます。今、先生がおっしゃっていた視点というのも非常に大事な観点だと思います。家庭ワーキンググループでこういった御意見があったということもしっかり踏まえながら、また総則・評価特別部会のほうでも御審議いただくべきものと考えております。ありがとうございます。
【杉山主査】 ありがとうございます。
田中委員、お願いします。
【田中委員】 先ほどの、製作プロセスに思いや目的意識を乗せるというのは非常に重要だと思います。家庭ワーキンググループに関する現状・課題と検討事項の4ページの(2)社会変化への対応と生活文化の継承の両立を踏まえた内容等のあり方で、衣食住の内容等の改善・充実というようなことが挙がっています。中核的な概念に関わって、生活文化の継承について、少し思うところをお話しさせていただこうと思います。
文化は、自然環境それから社会環境などの影響を受けて変化していくものとすると、これまでの日本文化もかなり変化してきていますし、これからも変化し続けていく。そういった状況で、何を生活文化として取り上げるのか整理しないといけないと思っています。
その際衣食住と生活を分けて考えるのではなく、統合して学ぶ意味もあるのではないかと思っております。
例えば、「自然を生活に取り入れる」というような、これは衣生活でも食生活でも住生活でも見られるわけですけれども、価値観、行動の仕方、思考の仕方などからも整理をして、大人が子供たちに何を感じさせて、彼らが何を伝えていこうとするのかを支援するという観点も大事ではないと思っています。この(2)生活文化の継承の両立を踏まえた内容等のあり方、について少しお話させていただきました。
以上です。
【杉山主査】 田中委員、ありがとうございました。
それでは、大久保委員、お願いします。
【大久保委員】
私も最初に冒頭お話しさせていただいて、中学校の現状をちょっとお話しさせていただいたところなんですけれども、私、先ほど杉山先生からお話があったように、今回の家庭科の学びの根っこは何なのかなというふうに考えたときに、生活をよりよくする態度、工夫する態度ということがこれまでも言われているわけなんですけれども、どうやったら生活をよりよくしていけばいいのかということが子供たちにしっかり入っていかなくてはいけないかなと。
だから、よりよい生活の仕方を選択していくわけなので、そこの一人一人、先ほどお話があったように、家庭生活は1つではないと。私ここに落ちましたけれども、そうだよねと。だからこそ、自分の生活のよりよいって何なのか、それを追求して、それを選択していく力こそ、これから必要になっていくことかなと。
そう考えたときに、中核的概念、私の最初の冒頭にもあるんですけれども、中核的概念ってすごく大事だなというふうに思っています。これは見方・考え方といったところにもつながっていくことだと思うんですが、この中核的な概念の捉え方を小・中・高でどう膨らましていくのかというか。膨らますというか、見方・考え方をどううまく、見方・考え方は具体的に授業をどういうふうなレンズで考えるかということだと思うんですけれども、中核的概念の小・中・高の体系化、そういうことを考えると、この中核的概念の捉え方、先ほど田中先生からもお話があったように、衣食住を総合的に学ぶとおっしゃっていました。そういったことも必要なのかなということも思うと、中核的概念をどう捉えていくか。
生活文化とは何かとか、高齢者のお話も先ほどあったんですけれども、ここも踏まえると、中核的概念を小・中・高でどう捉えていくかということがとても大事かなと思っていますし、それが示されることによって、免許外の先生や、うちもそうですけれども、講師の先生方が非常に分かりやすくなると思うんですよね。
東京でも本当に中学校の教員は、家庭科の教員は少なくて、非常に大変です。
私の市は9校ですけれども、中学校9校のうち6校しか配置されていないです。ですので、3人は講師対応ということになるんです。場合によっては大変高齢な方にやっていただかざるを得ない状況もございます。このような方々に、現行の学習指導要領の理念をお話ししても、なかなか授業づくりに生かされていかないというのが現状です。
なので、この中核的な理念を明確にすることによって、そして、分かりやすい学習指導要領になっていけば、さらに、免許外の方にも、研修はもちろん必要だと思っていますけれども、分かりやすいものにしていけばいいなということはすごく先生方のお話を聞いて思いました。
また、やはり整理も必要だと思っていまして、内容のあれこれ、製作のこともあるんですけれども、製作のところで、何のために、誰のためにという目的意識をするというのはもちろんなんですが、例えば、中学校なんか、リサイクルみたいな、再利用みたいなところの製作についても、かなりこれが苦慮する原因にもなっているところもあって。もっと子供たちが自分の生活にどういうふうにすれば豊かになるのかという視点だったら、様々あっていいと思うんですけれども、それになかなか先生方が挑戦できないような苦慮する場面もちょっとあるのかななんていうふうに考えます。
なので、私たちの今後の体系的な整理というところと併せて整理をして、家庭科としての本質をずれないような整理が必要だなということをすごく感じました。微力ながら尽力できるようにしていきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いします。
以上です。
【杉山主査】 ありがとうございました。
では、吉川委員、お願いできますか。
【吉川委員】 今のお話に続く形での話になると思うのですけれど、先ほど免外の先生なども、分かりやすくなれば、などいろいろな形で授業の中に生かせること、期待が増えるんじゃないかというお話にあったように、分かりやすくするということ、内容を厳選しながら分かりやすくしていく作業、難しいことだと思いますが、家庭科の以外の教科の方たちに理解をしていただくためにも、とても重要なことと思っています。
今日出席されている方は、みんな家庭科に関して非常に理解もあって、日々家庭科に関連するところで仕事をされている方ばかりだと思いますが、実際に学校で先生方が学校の中での1人教科として家庭科の授業をしていく上では、他の教科の先生方の理解と協力も得ながらやっていく、授業展開していく必要性があるかなと思うのですが、そういう中で、他教科の先生方に家庭科とのつながり内容を分かっていただくためにも、分かりやすさというか、ある意味、明確に分かりやすく伝えていくということはとても大事だなと思っています。
卒業生が新任で学校に家庭科の教員として着任していくときに、一番最初に手掛かりにするのは、前任の方の資料だったり手法だったりというのが手掛かり、教えになるというふうに彼らは言うんですけれども、ただ、時間が限られる中で、それを新米の先生たちが理解し、応用していくことはとても難しい。
大量の時間があるわけではない中で、これから厳選して必要な部分を選んで子供たちに伝えていくという作業はいろいろな意味で大事になってくる。大事な部分を落としてはいけないけれども、そういう議論というのがいろいろな意味で大事になってくるかなと思いました。
以上です。
【杉山主査】 ありがとうございました。
他にいかがでしょう。
それでは、1回一巡してご意見をお聞かせていただき、その後も幾つか御意見をいただくことができましたので、次回以降の議論の中でも、それを基に審議を進めさせていただければと思います。
それでは、予定をしている時間よりは若干早いですけれども、本日の議事は以上とさせていただければと思います。
最後に、次回以降の予定につきまして、事務局よりお願いします。
【嶋田学校教育官】 それでは、次回以降についてお話しさせていただきます。次回につきましては、10月29日水曜日15時30分から18時を予定しておりますが、正式には、後日、事務局より御連絡させていただきます。
【杉山主査】 それでは、以上をもちまして、本日の家庭ワーキンググループを閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――