令和8年6月22日(月曜日)09時30分~12時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【大坪主査】 定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループ第10回を開催いたします。
皆様、大変お忙しい中ご出席くださり誠にありがとうございます。
それではまず、事務局より委員の出席状況、配付資料の確認、その他留意事項があれば説明をお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】 はい、失礼いたします。
本日は岡本委員がご欠席となっており、現在16名の委員にご出席いただいております。また、山内委員におかれましては、業務のご都合により11時頃からご参加と伺っております。
資料について議事次第に記載しておりますとおり、資料1と参考資料1から3までがございます。そして前回までと同様、対面会議で言うところの机上配付資料として、前回会議資料と、ワーキンググループにおける審議のご参考として学習指導要領本体や解説、関係する審議会の答申等をまとめた参考資料集を、事前に別途お送りしております。
また、会議の運営に関して一点お願いでございます。ご発言の際には、挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してからご発言をお願いいたします。また、ご発言が終わりましたら再度ミュートにしていただきますようお願いいたします。事務局からの説明は以上です。
【大坪主査】 今回は芸術ワーキンググループ取りまとめ案についてご審議をいただきます。まずは初めに、事務局より取りまとめ案について資料の説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 はい、文化庁学校芸術教育室長の堀内でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
本日の議題は芸術ワーキンググループの取りまとめ(案)となります。これまで9回にわたりまして委員の皆様方から頂戴いたしましたご意見を踏まえ、こちらの案としてまとめさせていただいております。
それでは1ページ目をご覧ください。
「1.現行の成果・課題を踏まえた改善の方向性」についてであります。
(1)現状の成果でありますけれども、2つ目のポツで、現行の学習指導要領においては、生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質・能力など、を規定しております。そして、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」、これらの3つの資質・能力の柱に基づきまして、目標や内容を整理しております。特に身体を通しまして、知性と感性を融合させながら対象や事象を捉えていくことを重視しているところでございます。それからこれまでの成果でありますけれども、音楽、図画工作、美術、工芸、書道、それぞれの教科の特性を踏まえ、授業改善の取組が着実に進められているところでございます。
(2)現状の課題でございます。
まず総論的なところでありますけれども、正解のない問いや、予測困難な課題に対処できる力、身体性を基本とする人間の本来的な能力としての技能につきまして、芸術系教科・科目での育成が一層求められているところであります。また、芸術系教科・科目を学ぶ意義につきまして、児童生徒が十分に実感できている状況には至っていないということが考えられるところであります。また、芸術系教科・科目におきましては、思いや考えを身体を用いて具現化し、新たなものやことをつくりだしていくという、児童生徒の学びの過程を一体的に捉えられるよう、目標等に明確に整理していくことが重要としております。
学習指導要領実施上の課題であります。教科の系統ごとに、整理をさせていただいております。学習指導要領実施状況調査の結果や学校現場における実態等から、以下の課題がございます。
例えば音楽におきましては、表現を工夫する場面で思いや意図を言語化することにとどまり、それを音楽で表現するための技能の習得が一体的に行われていない。このため技能を活用して思いや意図を歌唱・演奏などで表すことや、表現を深めていくことが十分にできていないのではないか、例えばこのような課題が見られるところであります。
また、図画工作、美術、工芸におきましては、2つ目の矢羽根のところでありますけれども、結果としての作品のみに着目するのではなく、発想や構想したり、意図に応じ創造的に表したりする過程を重視した指導への改善が課題ということが挙げられるところでございます。
そして書道でありますけれども、2ページ目、例えば2つ目の矢羽根をご覧いただければと思いますが、古典や名筆、名品を鑑賞する機会の一層の充実や、鑑賞を通して身につけた資質・能力を表現に関連付けることに課題が見られる。例えばこのような課題が見られるところでございます。
次に(3)改善の方向性の文化芸術教育への期待であります。
文化芸術は人と人との心のつながりを強め、心豊かで多様性と活力ある社会を形成する源泉となるというものでございます。その上で、矢羽根のところにありますけれども、多様性を尊重し、様々な文化を理解しながら芸術と自分との関わりを考えていくこと、感性と知性の両輪を働かせること、情操を涵養することでありますとか、感性や想像力を大切にしていくこと、このようなことが重要ではないかということであります。さらに、身体性を重視した体験的な学びということでありますとか、諸感覚を働かせて対象に向き合うということ、その下の矢羽根でありますが、一人一人の特性を生かした学び、このようなことから、多様性の包摂、あるいはウェルビーイングへとつなげていくということが重要ではないかということ。右上のところでありますが、異なる分野を連携・統合し、新しいものを創造したり、現在の課題解決にとどまらず未来に向かって意味や価値を創出したりと、このようなことを期待されることとして整理させていただいております。
総論でございます。
現行の成果や課題、文化芸術教育への期待を踏まえまして、芸術系教科・科目を学ぶ意義を実感しながら学ぶことができるようにするために、こちらの5つの点にお示ししておりますような基本的な方向性として整理させていただいているところでございます。
まず1つ目でありますが、捉えたり感じたりしたことを、要素や特徴、背景にある文化などとの関わりで理解したり、思考、判断、表現したりできるようにするということ。
2つ目でありますが、自分の思いや考えをもつことと、諸感覚を働かせつつ身体性を伴った技能により表現することを、一連の過程として重視するということ。
それから3つ目でありますが、唯一の答えに導くのではなく、児童生徒一人一人のありようが尊重されるようにしていくということ。
それから4つ目でありますが、他者に共感し、感じ方や考え方を深めたり、多様な視点で考えたりできるようにしていくということ。
5つ目でありますが、生活や社会の中の芸術や芸術文化などと関わり、意味や価値を見いだしたり、つくりだしたりすることなどを重視し、豊かな社会の創造や幸福な人生につなげていくことができるようにするということ。
このようなことを5つの基本的な方向性として、目標、見方・考え方、内容の改善を図っていくということを、こちらに整理させていただいております。
次に3ページ目でございます。ここからが「2.目標及び見方・考え方のあり方」になります。(1)目標のあり方でございます。
改善の方向性といたしまして、現行の目標に示されている趣旨は、引き続き重視していくということ。その上で、芸術系教科・科目の目標のあり方につきましては、1(3)改善の方向性を踏まえまして、以下の観点から整理するとさせていただいております。
1つ目が、文化芸術教育への期待や芸術系教科・科目の課題を踏まえ、学習指導要領の構造化による整理を勘案しつつ、現行の目標を基に改善すること。
それから「学びに向かう力、人間性等」につきましては、自ら進んで対象や事象などと関わり、他者と協働して活動に取り組むことや、よりよい社会や幸福な人生につなげていくことを重視すること。
また高等学校芸術科の教科目標につきましては、次の3つの観点から改善を図るとしております。
1つ目、「知識及び技能」につきましては、社会における芸術分野との関連を重視するとともに、幅広く芸術文化を捉えることができるようにするということ。
また「思考力、判断力、表現力等」につきましては、作品のメッセージ性や文化的・歴史的意義、社会への影響力等を意識できるようにするということ。
そして、「学びに向かう力、人間性等」につきましては、心豊かな生活や活力ある社会の創造において芸術が果たす意義を明確にすること。
このような改善を図ってはどうかというところを整理させていただいております。
次に、資質・能力の整理でございます。
「知識及び技能」と、「思考力、判断力、表現力等」の資質・能力につきましては、自分の思いや考えをもつことと、思いや考えを基に身体を用いて表現すること、これらが一連の流れとして捉えにくいという点に課題がございます。
その上で、音楽、図画工作、美術、工芸、書道、それぞれ学びの深まりにつなげていけるように、例えば音楽につきましては、習得した技能を生かして工夫して表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」として一体的に示すということ。図画工作、美術、工芸におきましては、児童生徒が発想や構想し、工夫して表現するまでのつながりを重視し、その過程を「思考力、判断力、表現力等」として示すということ。書道におきましては、構想・工夫して表現するプロセス全体を「思考力、判断力、表現力等」として一体的に示すということ、このように整理しております。
また、あわせまして、変化する状況等に応じて主体的に活用できる技能につきましても、習熟・熟達していくことを重視するとしております。
それから(2)見方・考え方のあり方であります。
改善の方向性でありますけれども、教師と児童生徒が卒業までを視野に入れつつ共通の認識をもつことができるよう、教科の系統ごとに小・中・高等学校を通して文言を統一して示してはどうかということ。また、方向性といたしましては、感性や想像力を働かせることを示すということでありますとか、文化に関する視点を共通に含めていくということ、創造性を重視し、意味や価値を追求することを示していく。このような方向性で、教科の系統ごとに整理をしてはどうかということを記しております。
次に4ページ目をご覧ください。
「3.資質・能力の構造化のポイント」であります。
資質・能力の構造化の考え方でありますけれども、現行では表現及び鑑賞の2つの領域で整理しておりますが、この整理を維持するということであります。その上で、音楽、図画工作、美術、工芸では、教科・科目の特質や現状における課題を踏まえまして、区分を設けていくとしております。
音楽につきましては従前の分野を踏襲しつつ、背景学問の系統を基に整理をするといたしまして、小学校では「歌唱・器楽」及び「音楽づくり」、これら2つの区分により整理をするということ。中学校、高等学校におきましては専門性の高まりを踏まえまして、「歌唱」、「器楽」、「創作」、これら3つの区分で整理をするとしております。
また、図画工作、美術、工芸につきましては、表現や鑑賞の活動自体が目的化していることから、学びの方向性を明確にする観点から整理をするということで、下の米印にございますような、区分を設けてはどうかとしております。
また、芸術系教科・科目における特徴を踏まえまして、「知識及び技能」が全体として「思考力、判断力、表現力等」の深まりを支えていくという構造に近いものとして、「並行パターン」で構造化するということも記しております。
それから高次の資質・能力につきましては、小・中学校は学校段階ごとに示していくということ。高等学校は音楽、美術、工芸、書道の科目の系統ごとに学習内容の深化を図ることができるよう、それぞれのI、II、IIIの科目を共通に示していくことを記しております。
右側に移りまして、高次の資質・能力の考え方であります。
高次の資質・能力のあり方につきましては、1(3)改善の方向性でありますとか、2(1)における資質・能力の整理を踏まえまして、授業改善に資するよう整理をしてはどうかとしております。
例えば音楽におきましては、知覚・感受したことをよりどころにして思考し、自分や他者にとっての表現や鑑賞の意味や価値を実感しながら、音楽表現や鑑賞を深められるようにするということ。また、図画工作、美術、工芸におきましては、例えばどのように思考、判断、表現していくのかを明確にしながら、自分や他者、生活や社会における造形の意味や価値について考え、自分の見方や感じ方を深めることができるようにすること。そして書道におきましては、線質を追求したり、空間を捉えたり、呼吸を感じ取ったりするなど、身体機能や感覚を駆使し、目的や状況に応じて自在に活用できるようにすること。このような考え方で、整理をしてはどうかとさせていただいております。
次に5ページ目をご覧ください。「4.内容の改善のあり方」(1)内容の充実であります。
こちらも1(3)改善の方向性を踏まえるとともに、教科共通の改善事項でありますけれども、児童生徒が思いや意図をもったり、発想や構想し工夫したりして表現する過程を一連のものとして捉えられるよう、「思考力、判断力、表現力等」を整理すること。それから、その際に活用する「知識及び技能」につきまして、知識は一人一人が感性などを働かせて様々なことを感じ取りながら考えることにつながるものであるということ。また、技能は諸感覚を働かせつつ身体性を伴って思いや考えを表現したり鑑賞したりすることにつながるものとして整理すること。このように共通に整理をしてはどうかということであります。
その上で、音楽につきましては、例えば1つ目の矢羽根でありますけれども、児童生徒が技能の必要性を感じたり、実感を伴って理解したりすることにつながるよう、知識と技能の関係性を明確にし、統合して一文で示すことや、3つ目の矢羽根でありますが、歌唱・器楽におきまして、様々な歌い方や楽器に適応できる技能として身体の使い方を重視するということ。このような形で整理をしてはどうかということであります。
また右側に移らせていただきまして、図画工作、美術、工芸でありますけれども、1つ目の矢羽根でありますが、鑑賞の活動の充実が図られるよう、美術作品などから特徴を見つけ出したり、情報を読み取ったりすることなどの鑑賞に関する技能を示すことでありますとか、3つ目の矢羽根でありますが、表現の活動において、創造的に表現することへつながる技能となるよう、材料や用具の特徴を生かして使うことや、表現方法を追求することを示すということ。
また書道におきましては、1つ目の矢羽根でありますが、「思考力、判断力、表現力等」において書の表現性を重視し、自らの環境や表現の意図に基づいて、構想し表現を工夫して効果的、創造的に表現することを示すということ。例えば、このような形で整理をしてはどうかということをお示ししております。
6ページ目をご覧いただければと思います。高等学校芸術科の内容のあり方であります。
現状、高等学校芸術科におきましては、音楽、美術、工芸、書道の中から生徒が選択して履修をすることとされておりますが、学習内容につきましては、それぞれの科目の専門に関する内容となっており、教科目標との関わりが意識されにくいという課題がございます。このことを踏まえ、芸術そのものについて共通に学ぶ機会を設けるということで、例えば学習の導入段階において芸術の全体像を捉えたり、学ぶことの意味や価値などについて考えたりする機会の設定、あるいは科目のまとめ段階におきまして、芸術分野に関わる探究的な学習の場面を設けるなどによりまして、各科目の学びと芸術についての学びと関連付け、教科目標を実質的に達成し、生涯にわたり生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わっていくということにつながるような改善を図ってはどうかとしております。
それから右側、伝統と文化に関する教育のあり方であります。
伝統と文化につきましては、現状では、教科の特質を踏まえ、教科等横断的な視点により地域の実態や学校の特色を生かした指導が行われているところでございます。しかしながら、生徒の興味や関心に関しまして、調査の結果からは一定の成果は見られるものの、否定的な回答が3割程度という状況になっております。児童生徒が伝統や文化の意義を感じられるようにすることについて、一層の充実が課題となっているところであります。
このことを踏まえまして、改善の方向性でありますけれども、伝統と文化に関する教育の充実を図るとして、例えば「目標」や「高次の資質・能力」を踏まえ、学習指導要領の構造化の中で伝統や文化がもつ意味や価値の追求を通して、「深い学び」を実現するということでありますとか、「見方・考え方」におきまして、「文化」の視点、あるいは「意味や価値を見いだす」ということを考え方の視点として明確化をしていくこと。このようなことを通しまして、伝統と文化を尊重しその意義を実感できるよう、改善充実を図ることとして方向性をお示ししております。
また2つ目の矢羽根のところでありますが、本物に触れ心を動かす体験を通して、深まりのある学びの実現に資するよう、地域社会や文化施設、専門的な人材等との連携や協働を一層充実していくということも重要でございます。また指導の充実改善に資するよう、学校現場への必要な支援を行うということもこちらに記しております。
次のページ、7ページをご覧いただけたらと思います。メディア芸術や舞台芸術などの多様な芸術や文化に関する学びの充実のあり方であります。
期待されることといたしまして、多様な芸術や文化に関する学びが、芸術系教科・科目の目標を実現する上で教科等に通底する「創造」の土壌となり、子供たちがワクワクしながら多様な発想を生み出すという深い学びにつなげていくということが必要であるとしております。またマンガ、ゲーム、演劇、舞踊などを含む多様な芸術や文化を学ぶことは、様々な表現に触れる機会となります。また自己の可能性に気づいたり、他者への共感を深めたりすることなどに資するものとなり得ます。またマンガ、ゲーム、演劇、舞踊などは子供たちにとって身近なものであり、興味・関心をもちやすく生活や社会の中の芸術や芸術文化との関わりを考える契機としやすいものであります。このような期待も踏まえつつ、現状では、様々な取組が学校現場の創意工夫を生かした取組として教科等横断的に行われているところでございます。
改善の方向性でありますけれども、多様な芸術や文化に関する学びの充実を図ることといたしまして、芸術系教科・科目における取組、そして教育課程全体で充実を図っていくこと、この2つが重要であると考えております。
右側に移らせていただきまして、芸術系教科・科目におきましては、例えば以下のような視点ということで、それぞれの教科の系統ごとにお示ししております。
音楽につきましては、児童生徒の表した音楽などの学習の成果について、教科等横断的な視点を含め、舞台芸術や多様なメディアと組み合わせたり、デジタル学習基盤を活用して発表や発信を行ったりする機会を充実させていくということでありますとか、図画工作、美術、工芸につきましては、デジタル学習基盤を活用し、漫画、アニメーション、映像などの多様なメディアによる創造的な表現や鑑賞の学習を、発達の段階に応じて充実させるとともに、発表や展示の機会を拡充し資質・能力を育成するということ。また書道におきましては、書道の表現の過程における時間性や運動性等の特質・特性を、異なる表現形式の芸術等と組み合わせた総合的な表現の中で生かしたり、多様なメディアの機能を生かして表現や発表、展示したりする機会の充実を図っていくということ。このような視点を改善の方向性として整理をさせていただいております。
またその際として、留意点を記させていただいておりますが、例えば、先ほど高等学校芸術科についての改善をお示ししたところでありますが、共通の学びとして位置づけ、芸術の全体像を捉えたり、芸術の意味や価値を追求したりすることなどとも関わらせていくことも重要ではないかということで記させていただいております。またその下の矢羽根でありますけれども、多様な芸術や文化に関わる指導の充実・支援や教育環境を整備することの2つ目のチェックのところでありますが、専門的な人材や文化施設・文化芸術団体等との連携や協働を支援する事業、例えばこのような支援も重要ということで記させていただいております。
次に8ページをご覧いただけたらと思います。(2)内容の精選についてであります。
精選の方向性でありますけれども、現状、学校における指導計画の作成段階におきまして、児童生徒の実態等を踏まえ、設定する題材において既習の内容をすべて扱うのではなく、目標の達成において支障のない範囲で精選するなど、学校の実態に応じた題材構成の工夫を行うことができることを考慮しつつ、内容を精査することが必要とのことを記させていただいております。
各教科等における内容の精選等につきまして、音楽につきましては、例えば、「歌唱」および「器楽」を「歌唱・器楽」の区分として統合し、内容事項を精査することにより、授業のねらいや子供の実態に応じて柔軟で効果的な指導を行うことができるように改善を図ってはどうかということ、これは小学校の場合であります。
また、図画工作、美術、工芸につきましては、表現領域において育成する技能について、各区分に共通する材料や用具の扱い、表現方法などを考慮して示し、題材関係の技能を相互に関連付け、指導内容の重点化を図ることができるよう改善を図ってはどうかということ。
また右側に移らせていただきますが、書道につきましては、表現の各分野、および鑑賞、それぞれの指導事項におきまして、字形や全体の構成など具体的に示しているものにつきまして、共通事項におきまして、書を構成する要素などの働き・関係として指導事項を精査することにより、学校等の実態に応じて柔軟な指導行うことができるように改善をしてはどうかなどの精選を図ってはどうかとしております。
またその下でありますが、創意工夫を生かした授業づくりに資する教科書の内容の精選等につきまして、高次の資質・能力などを踏まえながら、教科書に掲載されている教材等の中から教師が適切に選択したり参考にしたりして、指導することができることを、教師が読み取りやすい構成が期待されるとしております。
次に9ページをご覧いただけたらと思います。「5.学習・指導・評価の改善充実のあり方」について、外部人材、学校外の文化施設等や地域と連携した学習の充実であります。
期待されることや現状の課題の2つ目のでありますが、外部の人の協力や学校外の施設等を活用した授業につきましては、現状におきまして学校や地域の実態等に応じた取組が進められているところであります。しかしながら調査等におきまして、小・中・高等学校を通しまして教師の肯定的な回答が半数に満たない状況になっております。
このような状況を踏まえた改善の方向性として、外部人材、学校外の文化施設等や地域と連携した学習の充実を図ることとし、例えば1つ目の矢羽根にございますように、学びの場を地域に広げ、児童生徒が地域活動をより自分のこととして考え、学びの真正性を担保できるようにするなど、学校が地域と連携することの教育的な意義を明確化することなどをお示ししております。
右側に移らせていただきます。他教科等と連携した学習の充実であります。
芸術系教科・科目で育む資質・能力を他教科等の学びとつなげることによりまして、想像力、試行錯誤する力、自ら問いを立てる力、答えのない問いに最適解を見つけ出す力、多様な解を互いに認め合う力など、様々な資質・能力を育成する場面になり得ます。こうした学びは、芸術と他の分野とのつながりでありますとか、既存の枠組みを超える思考に生かされ得るという、STEAM教育の考え方にも通じるというところでございます。
このような期待を踏まえまして改善の方向性でありますけれども、例えば1つ目の矢羽根にございますが、芸術系教科・科目が育む感性や想像力などを生かし、創造的な活動を通して、社会と学校、他教科等とをつなげていけるようにすること。これにより教科等横断的な学習を通じて社会と学校との関係を深め、児童生徒の豊かな学びの実現を図っていくということ。このような方向性を整理させていただいているところであります。
最後10ページ目をご覧いただけたらと思います。デジタル学習基盤を活用した学習の充実であります。
デジタル学習基盤につきましては、GIGAスクール構想によりまして、1人1台端末が整備をされている状況であります。しかしながら、それを活用した取組につきまして、効果的な活用でありますとか、身体などを用いた表現活動との調和を図りながら、深い学びにつなげることにつきまして、課題が見られるというところであります。
このことを踏まえ改善の方向性といたしまして、身体性を基本とする人間の本来的な能力としての技能の重視を前提とした上で、デジタル学習基盤の適切な活用が、感性や創造性の涵養に資するとともに、学習指導要領の構造化を踏まえた深い学びの実現に寄与するものとして、今後の活用を図ることとしおります。
また2つ目の矢羽根のところでありますけれども、多様性の包摂に資するようにしていくことでありますとか、その下の知的財産の保護と活用などに関する指導を充実するということ。このようなことも合わせて、効果的な活用を図っていくことが重要とさせていただいております。
それから右側に移らせていただきます。学習評価の充実改善であります。
現状の課題でありますけれども、芸術系教科・科目におきましては、短時間の題材や単元を行う場合に、資質・能力の3つの柱すべてについて評価をしようとしますと、総括的な評価が優先をされ、記録に残す評価のみを行うといった実態が見受けられるところであります。
このような課題を踏まえた改善の方向性でありますけれども、題材や単元ごとにすべての観点で記録に残すという総括的評価を行う前提に立つのではなく、複数の題材、単元、区分、これらをまとめて総括的評価を行うことが可能であることを促していくことも重要ではないかということ。
またその下でありますが、児童生徒一人一人が着実に資質・能力を身につけることができるよう、学習の調整等を促す形成的評価を重視するということ、「思考・判断・表現」の総括的評価を行う場合には、学習の過程の中で児童生徒の姿を捉えていくということでありますとか、多様な子供たち一人一人の良さや成長を捉え、他者との比較ではなく肯定的に評価できるようにすることを重視するということ、このような方向性として、学習評価の改善・充実を図ってはどうかということを整理させていただいているところであります。
11ページ以降には、補足イメージ、あるいは参考資料を添付させていただいております。
私の方からの資料1につきましてのご説明は以上となります。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。
【大坪主査】 それでは芸術ワーキンググループの取りまとめ案につきまして、音楽、図画工作・美術・工芸、書道の順に区切らせていただき、先生方のご専門、ご所属などの見地からご意見をいただきたいと考えております。
今回、教科の専門的、具体的な内容に関わることから、音楽に関わる意見交換の時間については齊藤主査代理に進行をお願いしたいと思います。
では齊藤主査代理、よろしくお願いいたします。
【齊藤主査代理】 それでは音楽に関わる意見交換については私のほうで進行を務めさせていただきます。
それでは音楽に関わり芸術ワーキンググループの取りまとめ案について、委員の皆様のご専門、ご所属などの見地からご発言をいただければと思います。
ご意見のある委員の先生方におかれましては挙手ボタンを押していただき、ご発言をお願いいたします。ご発言の時間ですけれども6分以内でお願いできたらと存じます。
それでは音楽の委員の皆様いかがでしょうか。
では原委員お願いします。
【原委員】 失礼いたします。
これまで9回のワーキングの内容を大きく5つの項目から限られた紙面の中で要点を落とすことなくまとめていただいていること、また説明していただきまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。
その中で、これまでワーキングを私自身も振り返って、やっぱり文化芸術が人と人との心のつながりを強めて、心豊かで多様性と活力ある社会を形成する源泉であるという本質を大切にするべきなんだということを改めて感じたところです。
私からは要望も含めまして4点から述べさせていただきたいと思います。
1点目は2ページの総論の部分でございますが、基本的な方向性の(1)から(5)について、四角囲みの部分が改善の根底または土台をなすものであると考えております。
11ページの補足イメージ1の資料と合わせて見てみますと、そちらのほうは文末に、隅括弧によって資質・能力等が示されています。そのことによってどの改善につながっていくのかということが分かりますので、可能であれば取りまとめ案についてもそのようにしていただければと思いました。
また、(1)から(5)のうち補足イメージでは(4)は学びに向かう力・人間性等とありますが、思考力、判断力、表現力等とも深く関わってくるのではないかということも考えられます。
合わせて(3)は児童生徒一人一人のありようが尊重されるようにと指導者側の基本的な姿勢を示しているものであって、音楽学習を進めていく上で、大きく捉えている印象を受けております。(2)や(4)などを進めていく際の、前提というか基本だとも取れるので、(3)の位置付けや順序がそこでいいのかなということをちょっと懸念しています。それが1点目です。
2点目については見方・考え方の在り方についてです。
目標については現行に示されている指針を引き続き重要としつつも、目標から見方・考え方を削除することとなっています。これまで現場は見方・考え方を拠り所に授業改善をしてきており、今次の改訂では授業にとどまらずに見方・考え方をもっと広い概念で示すことになっています。見方・考え方の捉え方が大きく変わることに対して、現場、今まで授業を作ってきた先生方が不安を感じていたり、戸惑ったりすることも考えられます。それらを解消できるようにする必要があると考えていまして、学習指導要領のどの部分でこの見方・考え方を説明するか、または何が変わるのかについての説明も検討が必要なのではないかと思いました。
3点目です。内容の改善の在り方についてです。8ページになります。
各教科等における内容の精選等の音楽の部分でございますが、1つ目のポツでは小学校のことが示されておりまして、中学校や高等学校の部分は書いてございません。
補足資料の32ページには2点目に中学校のことが示してありまして、内容の取扱いと重複している部分について事項から削除することにより、学校等の実態に応じて柔軟な指導ができる改善というものが示されております。(2)になります。そのことについても8ページには示す必要があるのではないかと考えています。
最後に4点目でございます。これは、取りまとめ案そのものというよりも、取りまとめ案に基づいて今後必要だと思うことについてお話ししたいと思います。
先ほどの8ページのところにもなりますけれども、小学校に関わって内容の区分を歌唱、器楽をまとめて示すことに合わせて、歌唱と器楽に共通する知識及び技能、そして思考力、判断力、表現力等を統合して示すことになっています。中・高等学校でも区分は変わらないのですが、知識及び技能はまとめて示すということになっています。この件については音楽を専門としない先生方にも分かるようにしたいなと考えています。
特に、技能の捉え方について、現行では文末に歌う技能であるとか、演奏する技能と示されています。それを捉えますと、音楽表現の技能という言葉が事項の中からなくなっていますので、音楽表現の技能というものがなくなるのかという戸惑いが生まれることが懸念されます。
今次改訂では技能の捉え方を単に1つの曲を最初から最後まで演奏できれば良いとか、合唱曲をハーモニー豊かに仕上げれば良いということではなく、32ページの改善のイメージ案に示されているように、(ア)から(エ)に示したことと関わる音楽表現の技能であるということを事項の示し方または解説等で事例も含めながら丁寧な説明について検討する必要があるのではないかと考えました。以上でございます。失礼いたしました。
【齊藤主査代理】 では続きましていかがでしょうか。音楽の委員の皆様、はい、稲委員お願いします。
【稲委員】 はい、稲でございます。よろしくお願いします。
まずこれまでの議論をこのようにまとめてくださりありがとうございます。この取りまとめを見ますと、これまでこの会議でどのようなことを大切にして議論してきたかということを再確認できたように思います。
今、原委員の意見で少し私も関係することを申し上げようと思っていたので、先にちょっと細かい部分なんですけれどもお話をいたします。
5ページの音楽科のところで、5ページの左側の音楽のところにある、内容の改善にあたって知識と技能の関係性を明確にするということが、子供たちが芸術を学ぶと何ができるようになるかということを教員と共有して進めていくことにあたってとても大切だなというふうに思っています。
そして、思考・判断・表現とこの知識・技能の関係というところなんですけれども、4ページの前のページの音楽のところの高次の資質・能力の考え方の技能のところなんですけど、思いや意図を持って表現するために必要な体の使い方などの技能を身につけるということは、現行の指導要領では指導内容になっています。
なので8ページにも示していただいている、教科書の内容の精選の方向性として、これを高次の資質・能力を踏まえて先生方が適切に指導計画を作成していくという方向性が示されていたと思うんですけれども、それがとても大事だなというふうに思います。その内容項目と指導内容、内容項目と言ったらいいですかね、と、高次の資質・能力の関係と、それをどのように、こうつなげて指導していくのかというのをどのように先生方に示していくかというところが大切かなというふうに思っています。
そして次に、この取りまとめには意義という言葉が多く出てきました。私はこの意義という言葉に着目して再度整理しながら読ませていただきました。
まず総論として2ページには、子供たちが芸術系教科科目を学ぶことの意義を実感しながら学ぶことができるようにするために目標および見方・考え方、内容を改善するとあります。この芸術系教科科目を学ぶことの意義には、整理すると2つあるというふうに考えておりまして、1点目は子供たち自身の豊かな人生のための意義。2点目は子供たちが豊かな社会の作り手となるための意義だと思います。
1点目の子供たち自身の豊かな人生のための意義は、感性と知性の両輪を働かせ、心が動く体験を基盤に自分にとっての意味や価値を見出したり作り出したりすることで豊かな創造性を育み、情操を涵養するということだと思います。
2点目の子供たちが豊かな社会の作り手となるための意義については、心豊かな生活や活力ある社会の創造において芸術が果たす意義や伝統や文化の意義などがこれまで委員の皆様や実践されてきた先生方からお話があったように思います。
そして今回整理された見方・考え方には、今回取りまとめられたこれらの意義が含まれているというふうに理解しています。新しい見方・考え方は、教科を学ぶ本質的な意義を示すものであり、教師が児童生徒の学習指導を構想する際に教科の本質を外していないかを確かめられるものと言われていますから、この見方・考え方の中にこれらの意義が含まれていることを今後国からの発信や学習指導要領の内容を通じて学校の先生方と共有することが大切だと考えています。
そしてまた少し初めに話が戻ってしまうんですけれども、もう少し具体的な子供たちに実感してほしいこととして、芸術を学ぶと何ができるようになるかということですが、これは5ページに示されている内容の充実の方向性のうち、共通点として挙げられている、児童生徒が思いや意図を持ったり、発想や構想をし工夫したりして表現する過程を一連のものとして捉えられるようという部分、学びのプロセスに関わる改善が重要だと思っております。
さらに生活や社会の中の芸術、カリキュラム・マネジメントという観点で考えると、特別活動や総合的な学習との関連、そして芸術科の探究的な学びとはなんなのかということにも、これまで以上に踏み込んで記載をしていくことが必要ではないかと思います。
【齊藤主査代理】 それでは続きまして水戸委員お願いいたします。
【水戸委員】 はい、よろしくお願いします。
私も今回の取りまとめ案を最初からずっと通して見させていただきまして、大変重要なことが随所に提案されていて、とても意義のある取りまとめ案だというふうに思いました。
今回の改訂においては、子供を取り巻く環境をこれまで以上に踏まえた上で音楽教育の在り方を提案していく必要があるのではないかと思っております。その意味で今回の取りまとめ案では非常に重要な点が提案されていると私は思いました。
ただ、これは私の個人的な印象となってしまうかもしれませんが、全体を通して読んでみると、最初の部分で明確に提案されている重要な点が、資質・能力の項目などの具体的な説明に落とし込んでいくところで、ちょっと薄まっていってしまう印象を持ちました。本日は、この点にフォーカスして、2つの点を述べたいと思います。
まず第一に、現代の子供たちが極めて豊かな音楽環境の中にいるということは、私もこの会議で何回か申し上げたのですが、このような状況の中で、学校で音楽を学ぶ意義というのは、子供が音楽を学習する価値を実感するという点につながる非常に重要な点だと思います。
この点に関しては、今回の取りまとめ案では、2ページにおいて「感性と知性の両輪を働かせ、心が動く体験を基盤に自分にとっての意味や価値を見出したり作り出したりすることや」というふうに示されており、子供たちが音楽の学習の意義を感じることの重要性を明確に示していると思います。それで、この文書の中で特に、「心が動く体験を基盤とする」という部分は極めて重要であるというふうに私は感じています。
また6ページにおいても、「本物に触れ心を動かす体験を通して深まりのある学びの実現に資するように」というように記されていますが、質の高い音楽に触れ、まず感動する体験を重視する姿勢は、学校における音楽の意義を明確にするものとして大変重要な提案であるというふうに考えています。
ただ、取りまとめ全体を見回すと、この心を動かす体験という重要な視点が、取りまとめ案の他の箇所にはあまり見られず、もう少し一貫してこの視点を主張しても良いのではないかと思いました。
例えば思考力、判断力、表現力等の欄では、「音や音楽について知覚・感受したことを拠り所に思考を巡らせ、発想を得たり思いや意図を持ったりし、自分や他者にとって創作による表現が持つ意味や価値を実感しながら」、となっているのですが、表現が持つ意味や価値を実感することに至る前提として心が動く体験というのをもっと明確に位置づけられても良いのではないかと思いました。
この事を思考力、判断力、表現力等の箇所に書けないまでも、音楽の意味や価値を実感するためには思考を巡らす前にまずは心が動く体験があり、それを基盤として音楽学習の価値づけが行われるという構造が、もっと取りまとめの案の他の箇所にも文言として明確に示すことができれば良いのではないかと思いました。
2点目です。音楽教育を取り巻く環境として考慮すべきもう1つの大きな柱として、生成AIの急速な発展というのがあると思います。生成AIは今後学校教育を大きく変える可能性を持っており、数年先の影響すら見通しにくい状況にあると思っています。AIへの対応は今後急激に難しくなると思います。
ただ、そのような中で芸術系教科はその特性を生かすことで、むしろ一層重要性を増すのではないかというふうに考えています。したがって、今回の提案において、技能の習得と表現の工夫のプロセス全体を思考力、判断力、表現力等として一体的に考えていくということが打ち出されたことは、大変意義深いものであるというふうに思いました。
これからは、生成AIの発展により、人が自ら身体を使い試行錯誤しながら考える過程が軽視されがちになる可能性が大きいと思います。その中で、音楽教育が身体性を伴った思考力、判断力、表現力等を重視するということは、教科の必要性を明確にする上でとても重要になると思います。
実践の場において、表現の工夫が表面的な工夫になってしまったり、表現を伴わない「話し合いのための話し合い」に陥らないようにするためにも、表現することと工夫することのプロセスの一体性を重視する視点は、音楽教育の本質を守ることにもなるのではないかと思います。
ただ、この「プロセスの一体性」という視点についても、資質・能力の具体的な記述において、「創意工夫の過程を実際の表現を交えて行わなくてはならないのだ」というメッセージをもっと強く含められれば良いのではないかと思います。
例えば20ページから続く内容項目の中の記述には一体的なプロセスであることを読み取ることはできるのですが、その重要性をより強く打ち出す文言の工夫も考えられるのではないかと思いました。どのような箇所にどのような文言で記述するのかということは今後の検討になると思いますが、技能の習得と、思考力、判断力、表現力が、連続的・循環的に結びつく過程であるということがより明確に伝わる記述が求められると思いました。以上となります。
【齊藤主査代理】 では続きまして山下委員お願いいたします。
【山下委員】 山下でございます。よろしくお願いいたします。
昨年10月の第1回芸術ワーキングから本日まで、様々な専門性をお持ちの先生方からお話を伺い、高い視座から芸術教育について考えることの大切さを学ばせていただきました。本日お示しいただいた芸術ワーキングの取りまとめ案には、これまでの充実した議論の内容が的確に整理されているのを確認することができました。
私からはこの取りまとめ案に対する印象やその捉え方など3点について申し述べさせていただきます。
第一に、この取りまとめ案には、学校教育を取り巻く現状と背景学問の成果を踏まえて、芸術系教科科目の果たすべき役割や意義が明確に示されているということです。
まず資料の2ページには、身体性を重視することや諸感覚を働かせて対象に向き合うことの重要性が示されています。また音楽科と芸術科(音楽)の見方・考え方はその位置づけが従前と大きく変わり、資料12ページのように「感性や想像力を働かせ、対象や事象を、音や音楽、文化などの視点で捉え、意味や価値を見いだすこと」とされています。ここには、音や音楽が生活や社会の中でどのような意味を持つかという視点に加えて、森羅万象がどのように音楽的・文化的たり得るかという新たな視点が含まれていると考えられます。
さらに他教科等との連携について、資料9ページには「想像力、試行錯誤する力」や「答えのない問いに最適解を見つけ出す力」などが明記され、単なる活動ベースでの連携にとどまらず、資質・能力ベースで連携することの意義が示されました。これらにより音楽科の存在意義を明確に再確認することができたと感じております。
第二に、今回構造化された資質・能力の捉え方についてです。
芸術ワーキングでは教育課程の上位部会で設定された高次の資質・能力に基づいて、芸術系教科等に固有の深い学びの在り方が検討されてきました。その結果、個別の資質・能力と高次の資質・能力との往還関係が示されるとともに、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等との関係が複数の点において変更になっています。
例えば改善の方向性として、資料の2ページには、「自分の思いや考えをもつことと、諸感覚を働かせつつ身体性を伴った技能により表現することを、一連の過程として重視する」ことが示されて、思考力、判断力、表現力等の事項に技能の内容が含まれることとなりました。
また資料31ページ、個別の資質・能力の精査のイメージでは、音楽科の〔共通事項〕に新しく技能の事項が示されたのに加えて、現行ではA表現・B鑑賞の両方に示されていた「曲想と音楽の構造との関わりについて理解すること」が後者のみとなり、2領域の関係に変化が生じています。
ここで確認したいのは、構造化された資質・能力が不動の建造物のようなものではなく、長期の見通しに基づいた動的な概念であるということです。児童生徒はすでに何らかの資質・能力を身につけた存在であり、新たな対象や事象と出会う時にはそれらを活用したり、抽象化したり、さらなる資質・能力を習得したりしていきます。そしてその資質・能力が、ある時は教科等の枠を超え、またある時は学校と生活や社会との枠を超えて働くようになることが求められます。児童生徒が自らの学習を動的な連続体として捉えるようになれば、芸術系教科科目を学ぶ意義もこれまで以上に実感できるようになると考えます。
最後に今後の教員養成に求められる視野の広さと考え方の柔軟さについて述べたいと思います。
資料9ページには「外部人材、学校外の文化施設等や地域との連携」、「他教科等との連携」による学習の充実が示されています。これらを実現するにはカリキュラム・マネジメントに加えて、より広い視野から文化芸術の営みを位置づけてしていくことが必要になるでしょう。
初等中等教育の新たな展開に向けて一つの歯車が静かに動き出そうとしている今、重要なのは様々な背景を持って教職に就かれる先生方がご自身の専門性を深めるのと同時に、好奇心を持って音楽文化や文化芸術に対する視野を広げながら、児童生徒と共にその意味や価値を見出していってくださることだと思っております。
私は芸術ワーキングで幾度となく知的な触発を受け、その度に視界が開ける喜びの感覚を覚えました。この感覚を芸術教育に関わる全ての先生方に味わっていただくために、今後ますます教員養成や教師教育の在り方が問われることになると思われます。教員養成に携わる身として、芸術ワーキングで学んだことを少しでも社会に還元できるよう努めてまいりたいという決意を新たにしております。ありがとうございました。
【齊藤主査代理】 山内委員につきましては、11時からということですので、後ほどご発言の時間を取らせていただきたいと思います。
それでは、私の方からお話をさせていただきます。
まずはワーキングの方の取りまとめ案、丁寧にまとめていただきましてありがとうございました。重要なところを適切にまとめていただいているように思います。
それで私から2点ほど、1つはちょっと細かいところと申しますか、具体的な内容でありますけども、20ページをご覧ください。20、21、22と続く高次の資質・能力ですね。高次の資質・能力の考え方、まとめるところが難しいところではあるんですけれども、そこの思考力、判断力、表現力等、今小学校の方出していただいてますが、思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮のところですね。
その1番上の最初のところに「音や音楽について知覚・感受したことをよりどころに思考を巡らせ」というふうに書かれておりまして、これが繰り返しその次の音楽づくりのところにも鑑賞のところにも入ります。これ中高にも続きますが、ここの「思考を巡らせ」が、以前もちょっと申したかもしれませんが気になっていて、知覚・感受という言葉そのものの中にすでに思考という過程が入り込んでいるわけですよね。それと感受ということがある意味で重要なところで、先ほど水戸委員からもお話がありましたように心が動くっていうことですよね。この心が動くということが感受と関係してくると思うんですが、その知覚・感受ということを、知覚・感受したことを拠り所に思考を巡らせという、「思考を巡らせ」という一文が入ることにより、知覚・感受は思考なのかなというこういう捉えをする可能性もあるかなと。そうするとちょっとイメージが変わってしまうので、音や音楽について知覚・感受したことを拠り所にし、で繋げちゃってもいいのかなと私は個人的に考えたりもします。この辺りまた細かい文言についてはまたさらに整理をしていただく必要があるように思います。
2点目は、全体に関わる内容でありますけれども、芸術の特性として、正解がないとか多様性とか、こういう言葉について学習の中では大切だということを繰り返し述べています。この言葉というのは、これからの時代にさらに大切な言葉になるような気がしていて、学習指導要領や、あとこれから始まる解説書も含めて、ある程度その考え方と言いますか、そこに多様性が入り込んだり、あとは柔軟性と言いますか、あとは余白と言いますかね、そういうところも大事になってくるんじゃないかなと思うんですね。
様々な子供たちがいるので、学習指導要領を元に指導はするものの、やはりそれぞれの子供たちの実態に合わせて先生方の工夫が必要ですよね。学校現場でそれぞれの工夫ができるような柔軟性というものが学習指導要領や解説書にも残っていることが大事だと思います。
あと先ほど水戸委員からもお話がありました、これから生成AIの進展で、我々が想像できないほど教育が変わるかもしれません。その時に柔軟性があることが非常に重要だと思っていて、そこに、ある意味で余白を持たせておくことも大事だと思います。
具体的に申しますと、この学び方についてはこうだというふうに断定するだけじゃなくて、「何々など」というふうに文末に入れることによっても、ある意味で余白が残せるような気がしていて、芸術系ならではの、先生方がそれぞれに想像する世界も残していただけるとありがたいかなと思います。
私もこれまで繰り返し述べてきた学習指導要領の分かりやすさ、シンプルさですね。そして芸術教科ならではの美しいというキーワードも大事にしていきますが、余白というものも美しく残しながら、この学習指導要領というものが先生方、保護者の方にとっても、そしてその先に子供がいるということで学習指導要領がより身近なものになるようになるとありがたいなというふうに思っております。ぜひ私たちもそんな努力をさせていただきたいと思っております。
それでは、音楽系の委員の皆様よろしいですかね。
はい、ちょうどこれで予定としていた時間ぐらいになりますので、それでは、音楽系の方以上とさせていただきます。
ここで5分間の休憩を挟みまして、進行を大坪主査にお戻しした上で、図画工作・美術・工芸をご専門とする委員の皆様の意見交換の時間へと進みたいと思います。それでは今ちょうど10時半ですから、10時35分から再開とさせていただきます。よろしくお願いします。
(休憩)
【大坪主査】 それでは、議事を再開いたします。
続いて図画工作・美術・工芸に関わり芸術ワーキンググループ取りまとめ案について、委員の皆様のご専門、ご所属などの見地からご発言をいただければと思います。ご意見のある委員の先生方におかれましては、挙手ボタンを押してご発言をお願いいたします。ご発言はお一人6分以内におまとめいただきましたら幸いです。
なお、道越委員がご公務のご都合によって11時頃退出される可能性があるということでございますので、最初にご指名をさせていただきたいのですが、道越委員よろしいでしょうか。
【道越委員】 はい、申し訳ありません。退出する可能性もあるということで、先にというふうにご配慮いただきありがとうございます。
私の方からですけれども、この9回のワーキングの皆様の議論をこのような形で簡潔にまとめていただいて、私はこれを読ませていただきまして、これまで芸術や美術というのは、自分自身の中に課題を見つけて、美しいとは何か、自分自身に問い続けることが大事な教科だともちろん思ってまいりました。今回、その内側だけではなくて、外側にも社会に向けて開いていく、開かれていく、繋げていく教科であるという強いメッセージを感じることができて、本当にありがたく思っております。
これまで取り組んできたことが、これからの未来の子供たちにとってすごく大切なのだ、それこそ芸術を学ぶ意義、何人もの委員の先生がおっしゃってますけれども、学ぶ意義を子供も教師もそこをまず実感できるような授業改善を進めていきたいなと思いました。
3つほどよろしくお願いいたします。
まず2ページでございますけれども、今回の話し合いの中で何度も出てまいりました身体性を重視するということ、人間としての感情や感覚を働かせていくのだ、それは主体的に働かせるのであって、子供も教師も自分の体を使ってという意味があるのだと思いました。その直後の文章のところに矢羽根で言うと3つ目の矢羽根のところ「デジタル活用と合わせて体験を重視し」とありましたけれども、少しここに違和感を感じました。
10ページにも同じようなことが書かれておりまして、10ページの方では身体性を基本とする人間の本来的な能力としての技能の重視を前提とした上でデジタル学習基盤の適切な活用がとなっております。体験を重視するが先に来れば、体験を重視して合わせてデジタル活用を効果的に利用するというような順序の違いだと思うのですけれども、そこのところを少し自分としては気になったところです。
次に6ページをお願いいたします。
今回、伝統、それから文化、芸術文化に関するところが非常に重視をされているなと思います。体験を通して本物に触れ、というところ、6ページの「本物に触れ心を動かす体験を通して」というところですけれども、一般的な表現ですと、ここを本物に出会わせれば良いのかというふうに安易な捉え方をされないようにしないいけないなというふうに自分は思いました。
本物というのは作品の本物ということだけではなくて、人・物・事に出会ったり触れ合ったりする直接の体験が本物だと思います。極端なことを申し上げれば、例え教師が作成したコピーを子供と一緒に鑑賞する場面であっても、それが画面越しではなくて直接の対話で心を動かした鑑賞の指導であれば、私は本物ではないかなというふうに考えた次第でございます。
それから8ページをお願いいたします。
ここのところで図画工作・美術・工芸、内容の精選のところ、2つポツがありますけれども、技能のところが今回大きなところになるなというふうに思いました。そして鑑賞の技能を明確にするというところでございますけれども、丁寧に学校の方に伝えていかねばいけないところだと思います。最後の3行のところ「鑑賞の技能を明確にするなど鑑賞活動を通して育成する資質・能力を整理することにより、焦点化された効果的な指導を行うことができるように」。この焦点化すると効果的な指導、2つ合わさってみると、少し狭まってしまうような感覚を受けました。
子供一人一人の多様な見方や感じ方を深めることについて、効果的な指導を行うことが大切かなと思います。そうなってくると、鑑賞の技能を焦点化して絞り込んでいくというイメージは、そこが難しいかな、この文章の表現としては難しいかなと思います。同じようなところが、次の書道のところにも同じようなことが書かれておりまして、焦点化した効果的な指導というところですけれども、ここの捉え方が、先ほどありましたように、保護者の方や一般の方が目にした時に、こういうことを指導すればいいのだというふうに捉えられやしないかなということは少し気になりました。
いずれにしても、こちらの取りまとめの文章で、やはり心を動かすということが入っておりまして、血が通った、心のこもった取りまとめ、これが学校現場にストレートに伝わってほしいなというふうに思います。
【大坪主査】 それでは次に新井委員、お願いいたします。
【新井委員】 皆様、10回のワーキング、大変お疲れ様でした。委員の皆さんから出た意見集約については、要点が取りまとめ案に反映されていると考えますので、私からは取りまとめの整理の仕方について課題を指摘したいと思います。また、今後に期待する点として、私の専門である彫刻の分野からお話をしたいと思います。
まず1ページの課題、そして2ページの期待と右側にまとめられた総論の対応関係について、盛り込まれた内容については委員の皆さんの意見が反映されていると理解できるのですが、総論の(1)から(5)の区分けに課題があると感じました。特に1、2ページに本文として書かれた課題・期待・総論と、11ページにまとめられた表の課題・期待・総論を照らし合わせると、より一層整理が必要と考えます。
11ページの方ですけれども、その総論の中に、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力・人間性等」、「見方・考え方」という入れ物に対して、課題と期待に盛り込まれたキーとなる内容を、一旦ばらしてシャッフルして入れ物に入れ直したという印象があって、関係性がより一層分かる整理が必要と感じました。
「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力・人間性等」、「見方・考え方」の割合の不均衡が生じている点が1つ。
また、例えば「知識及び技能」が総論の(1)と(2)にまたがっていますが、総論の(1)の方が扱う対象を記していると読めますし、(2)については扱うべき学習によって身につけられるコンピテンシーと読めるなど、この部分はうまくまとめられていると思います。同様に他の項目も項目ごとに扱う内容を精査して分けると良いのではないかなと考えています。
それから、ワーキングで出された課題に対しては、それを解決すべく今日的なアイデアが皆さんから出されたと思うのですが、ワーキングに課題として出されていない点を私からは指摘して、今後の期待としてお話ししたいと思います。
私の専門は彫刻分野でありまして、美術教育をコンテンツと捉えた場合に、表現するのに最も制作時間を要する分野です。一方で美術教育をコンピテンシーとして捉えた場合、少なくとも3つの点で資質・能力を育てうるアドバンテージを持っていると考えます。
1つは、物理的に360度の視点から表現と向き合える点。例えば前後左右上下の基本的な6面から見た場合でも、脳内ではそれぞれの視点から見える形を統合的に捉える必要があります。これは物事を意識的に観察する体験不足が指摘される今日において、空間認識力を育成し、ひいてはメタ認知の獲得につなげる上で最も有効だと考えられます。
2つ目は、物質との対話が表現の中心となる点です。自分の思い通りにならない木や針金や粘土と相向き合って、時には時間をかけて思いを実現する、あるいは時には歩み寄って妥当な形態にまとめていくという過程は、人が生活や社会の中で生きていく過程と相似形です。かつ創造していく過程や協働して何かを成し遂げる過程の雛形となるものです。ボタン一つで汗をかくことなしに処理が進むこれからの社会では、こうした物質との対話は幼年期から初等中等教育の期間になくてはならない大切な学びと考えます。
3つ目はやり直しができる素材とやり直しが難しい材料があって、やり直しができる材料である粘土や針金は創造性を阻害する「失敗したらどうしよう」という恐怖を軽減できる材料である点です。「思考力、判断力、表現力等」を発揮していく際に重要とされる心理的安全性を担保できる点が、「学びに向かう力・人間性等」を支える力になります。またフィンランドの手工教育で大切とされる「思考より先に手を動かす活動」が担保されている点も見逃せません。偶然できた形が目の前にあることで新たな思考を導くことができるという点で、拡散的思考を育む効果があります。
以上、教育に資する3つの大きなアドバンテージを持つ彫刻分野ですが、少ない授業時間の中で準備と後片付けに時間を取りますので、敬遠されがちです。芸術教科の授業時数を増やすことが何よりですけれども、現状では弾力的な授業運営の運用の中で2コマ連続の授業を設定できるようにすることが大切だと思います。
最後になりますけれども、全体としてコンテンツとしての芸術教科本来の学習だけでなく、コンピテンシー重視の教育課程では、身体性を基本とした学び、創造性育成、レジリエンスを高める情操教育など、ますます教育全体に波及できる教育効果が期待されていますので、保護者や地域の皆さんの理解につながるよう、教育課程の編成や先生方への研修が重要と考える次第です。私から以上です。
【大坪主査】 それでは次に小池委員、お願いいたします。
【小池委員】 まずは取りまとめ案、非常に丁寧にこれまでの議論をまとめていただきありがとうございます。大変分かりやすくまとめていただいたなと思います。
私からはまず、文化芸術教育への期待についてということで、2ページのところを見てほしいなと思っております。今回、文化芸術教育が学びの中での立ち位置がどこなのか、さらに言えば文化芸術教育の意義、重要性をしっかり示していくことがこの改訂で期待されているのだということを考えています。
芸術や文化が生活をしていく中での人間固有の本質的営みなのだということを改めて明確に捉え直すこと、つまり人々が豊かに生きていくためには必要な要素であり、そのことを学校教育の中で明確に示し取り扱っていくことが大きな意味を持ってくると考えています。これまでの学校教育では芸術教科の意義が必ずしも明確に児童や生徒に伝わっていなかった面があるのは事実だと思われます。それは例えば「美術が生活に役立つと思うか」という調査結果が決して高い値を出していないということからも言えると思います。
そうした中で芸術が生まれてくる背景や歴史にはその元となる文化や社会があることを示していくことは、芸術が決して社会から切り離されたものではなく、私たちの社会と密接につながっているということを子供たちが理解していくことにつながると考えます。
つまり、芸術を学ぶ上での文化的背景や社会的背景、文化的・社会的文脈を捉えることも必要であるとすれば、それらの関係性を必然的に考えることになります。さらに芸術が他教科の学びとも密接に関わり、しかも従属的なものではなくて芸術が重要な学びの分野なのだということを改めて捉え直すことにもつながります。さらにグローバル化する世界において、グローバルな視点から文化を理解すること、多様性を尊重することは、これからの社会を生きていくためには必要なことと考えます。そのためにも文化を取り扱う芸術という教科が極めて重要であることが改めて確認できると思いました。
それが6ページの「伝統と文化に関する教育の在り方」ということで、伝統や文化を学んでいくことについては、児童や生徒が興味関心を持てることが大きな意味を持ってくると思います。教員サイドから一方的に表面的な知識を教え込むような学びではなく、主体的に活動を通して学んでいくことが重要と考えます。小中高それぞれの発達を考えて自分ごととして学べるような内容の工夫、精選は重要ですが、それは現場の教員だけではなかなか難しいのが実態と思います。外部機関との連携、研修の充実等、その橋渡しとなるような教育委員会、国、自治体等のバックアップは必要だと考えています。
次に10ページですが、デジタル学習基盤の活用についても、芸術教科では重要なツールとして位置づけることが重要だと考えます。美術であれば絵の具や紙、筆、先ほどの新井先生のあった粘土等々、実際の材料や用具を使って手や感覚器官等、体全体を使って表現することは当然大切なことですけれども、デジタルをどのように創造活動に使っていくかを美術教育の中で示していくことは必要だと考えます。デジタルによる表現は児童や生徒が新たな表現を生み出す可能性を秘めており、教科の中で扱う意義は十分にあると思います。
次に今回の改訂の重要な点として、やはり見方・考え方、高次の資質・能力の扱いがあると考えます。3ページの改善の方向性で、見方・考え方を「より良い社会や幸福な人生につなげていける学びの本質的な意義」とあるとおり、生涯にわたって身につけるべき重要な視点を捉えることができると考えます。教科で目指すべき教科目標が学習での到達点を示し、見方・考え方はより良い人生を送るために身につけるべき、さらにその先を目指すもの、より本質的なもの、コアになるようなもの、教科性はあるもののより一層生きていくための重要な視点と捉えることができるのではないかと考えています。
一方、4ページの高次の資質・能力ですけれども、高次の資質・能力は当然、当初示されていた中核的な概念という意味合いがやはりあると思います。美術の学びにおいて教師にとっては育成すべき、児童にとっては身につけるべき資質・能力はどのようなものなのかを示したものだと考えられます。例えば中学校美術では24ページに示してありますとおり、すでに大方決まってきていると思いまして、十分分かりやすいとは思いますが、私としてはさらにより一層簡略化していっても良いのかなと思っております。
最後になりますけれども、本ワーキングで常に議論してきました「創造性」ということですが、芸術教科とは何なのかとしたとき、基本的な重要なことだと考えます。創造性とは何かを具体的に定義はできなかったとは思いますが、それでも学習の内容を考えていく上で創造性を1つの鍵として考えることが重要だと思います。さらに創造性を考える上で外せないのが感性や情操の育成であり、これらは今後もこの教科では外すことはできないと考えております。私からは以上です。
【大坪主査】 それでは次に廣田委員、お願いをいたします。
【廣田委員】 はい、失礼いたします。
まず、この前の9回にわたるワーキングの議論を取りまとめていただきましてありがとうございます。感謝申し上げます。これまでの議論が10ページに凝縮されていて、今後の芸術系教科の指針となるものが出来上がったのかなというふうに感じております。
私からは大きく3点、お話をさせていただければと思います。今までの委員の皆様と重なる部分も多々あるかと思いますが、ご容赦いただければと思います。
まず2ページ目の部分でございます。文化芸術教育への期待という部分が記されておりますが、ここに「文化芸術は人と人との心のつながりを強め、心豊かで多様性と活力ある社会を形成する源泉となるものである」と、このように明記をしていただいております。先行き不透明なこれからの時代に、文化芸術がなくてはならないものであるということを明確にしていただいたのかなというふうに考えております。
またその下の部分に出てきています、例えば感性と知性の両輪を働かせ、心が動く体験を基盤に自分にとっての意味や価値を見出したり、作り出したりすることや、情操を涵養すること、身体性を重視した体験的な学びが中核であるということ、それから異なる分野を連携統合し新しいものを創造したり、現在の課題にとどまらず未来に向かって意味や価値を創出したり、生活や社会を豊かにすることなど、今後の芸術教科の学ぶ意義といったもの、これまで何度も議論を重ねてきた内容をしっかりと明記していただいて、まさに今後の芸術系教科の意義というものを示していただいている、こちらも大変意義あることかなというふうに考えております。
その隣の総論の部分では、その芸術系教科科目を学ぶ意義を実感しながら学ぶことができるようにするために、今後の改善を基本的な方向性として書かれております。1から5番まで書かれておりますが、ここは他の委員の皆様からもあったように、ここに書かれていることがこのあとのページの様々な改善にどうつながっていっているのかというところが、例えば技能でしたら分かりやすく、文化については分かりやすく書かれているんですが、それだけでなく、このあとのページにどうつながっていくのか分かりにくい部分もあるのかなというふうに感じました。例えばデジタル学習基盤といったところは、こことどうつながりがあるのかと、そういったところも感じました。これが大きな1点目でございます。
大きな2点目については、3ページの右側のところになります。図画工作、美術、工芸のところの部分にあります、児童生徒が発想や構想し、工夫して表現するまでのつながりを重視し、その過程を思考力、判断力、表現力等として示すこと、ここでございます。これについては、これまでのワーキンググループについても意見を述べさせてもらいましたが、現場の先生方にとっては大きな変更になる部分かと思います。「工夫する」ということを思考力、判断力、表現力等で見取っていく、ここについては、以前も申し上げましたが、先生方に伝わりやすいように具体的な姿を示しながら、どのように子供たちに資質・能力を育成していくのか、どのように評価をしていくのかといったところを、具体例を挙げながら丁寧に説明をしていかなければ、混乱を招く部分かなというふうに思いますので、私自身もここについては、具体的な子供たちの姿で、どう指導、改善につなげていくのか考えていきたいなというふうに感じた次第です。
最後、3点目ですが、5ページの部分になります。5ページ、右側のところの1番上の段「鑑賞に関する技能を示す」といったところでございます。こちらも技能に工夫の部分と重なりますが、なぜ今回この鑑賞に関する技能を示すのか。それはここに書かれているとおり、鑑賞の活動の充実が図られるように、子供たちのために、また先生方が資質・能力を育成しやすいように、この新たに技能を示すことになると思いますので、ここもやはり、先ほどと重なりますが、丁寧に、どのようにこれを技能というものを捉えて指導、それから評価していくのか、具体的な姿を先生方に説明、丁寧に説明していく必要があるかなというふうに考えました。
本当にこの10回にわたるワーキングで、本当に様々な先生方の意見をお聞きして私自身も大変勉強になりました。本当にありがとうございました。以上でございます。
【大坪主査】 それでは次に藤井委員、お願いいをいたします。
【藤井委員】 はい、藤井です。本日まで、芸術ワーキング取りまとめ資料をご作成くださいまして、誠にありがとうございます。私自身も大変勉強になりましたし、また先生方の様々な意見も取り入れられた、新たな時代の教育への転換を感じさせるような充実した内容の資料であると思います。感謝申し上げます。
本日の資料11ページに示されている、芸術系教科科目の改善の基本的な方向性の5つの観点は、どの内容も非常に重要であると思います。その中でも、(2)の表現に対する自分の思いや考えを持つことと、諸感覚を働かせつつ身体性を伴った技能により表現することを、一連の過程として重視するという方向性が示されたことは、創造性の変容と、創造における身体性の役割を再定義するような内容であり、重要であると思います。
デジタル技術やAIの進展によって、身体を介さない創造が可能となっている現代において、身体性を基本とする人間の本来的な能力としての技能と、グローバルな観点も含め、他者との共有が可能な創造との関係性を問い直すことは、芸術教育の新たな枠組みを考えることにつながるのではないかと思います。また、技能は、再現性や経験の必要性などから、他者との共有が容易には難しいという測面があると思いますが、デジタル技術の活用によって、その可能性が広がることへの理解を子供たちに促し、新たな意味や価値を作り出していく創造へとつながっていくと思います。
これは、過去の創造物、創作物について振り返り、将来の制作方法を考えていくといった、子供たちが主体的にアイデアや素材、技法を探求し、表現の広がりや深まりを生み出すための制作者としての観点を育むことになると思います。
また、(4)に、言語活動等や他者との協調性、共感力、多面的・多角的思考に関する方向性が示されていることも非常に重要であると思います。子供たちが授業の中で、現在、そして将来にわたって意義ある経験を積み重ね、芸術系教科科目を学ぶ意義をより明確に感じ取ることができる、そのような授業の充実が今後より一層図られていくのではないかと思います。そのためにも、資料9ページの改善の方向性に示されているように、1つの授業というだけではなく、長期的なスパンで、また他教科等や社会ともつながるようなカリキュラム・マネジメントの重要性がさらに増していくと思います。
これまで先生方もおっしゃっておりましたが、今回、鑑賞に関する技能が新たに設定されたことは、大変意義深いことであると思います。授業の中で、子供たちが、文化に関する視点も含めながら造形的な特徴を捉え、作品を創造的に鑑賞する学びが今後さらに推進されることで、作品の表面的な記述にとどまらない、その本質を深く探究する批評者としての観点を養う機会となると思います。今後の美術教育における学びの在り方を変えていくことにもつながっていくのではないかと思います。
今回、これまでにない様々な観点が導入されたことで、子供たちが主体的に学べる授業を大切にしつつ、明確な目標に基づいた授業展開が可能となり、評価の観点もより明確になってさらなる授業改善へとつながることが期待できます。
ただ、先ほど廣田委員もおっしゃっていましたが、具体的な指導や評価の在り方については、本日の資料8ページに教科書の内容の精選等の方向性が示されておりますが、資料29ページのような具体的な事例も用いたきめ細やかな説明が求められると思います。
芸術の視点から新しい知識やスキルを獲得することに加え、意味や価値の再構築といった創造、表現活動にさらなる広がりと深まりをもたらすような観点が含まれていることがとても有意義であると思いました。子供たちが芸術系教科・科目の授業を通して自分自身の人生や社会全体の豊かさ、そして幸福とは何かということについて主体的に考えるような授業の充実が図られていくのではないかと思いました。本当にありがとうございました。
【大坪主査】 それでは次に大泉委員、お願いをいたします。
【大泉委員】 はい、よろしくお願いいたします。
これまでのワーキングでの議論を、内容的にも文脈的にも明快に取りまとめいただきまして、本当にありがとうございます。これからの芸術文化に関する教育の方向性について,改めてよく理解できました。
今回は,初めに内容に関して細かなことを2点申し上げたいと思います。今日まで気づかずに申し訳ありません。ご検討いただければ幸いでございます。
まず、資料の2ページの右の欄、総論の丸1に「捉えたり感じたりしたことを要素や特徴、背景にある文化などとの関わりで」と書いてあるんですが、以前発言させていただきましたとおり、小学校のとりわけ低・中学年の発達の段階においては、一足飛びに文化との関わりで理解するということには無理があると考えられますので、可能であるならば、背景にある文化の前に「自分たちの生活や」というような文言を加える必要はないかということをご検討いただければと思います。
続きまして、先ほど道越委員、廣田委員からもご指摘がありましたが、資料の8ページの図画工作、美術、工芸のいわゆる鑑賞の技能を明確にするというところでございますが、ここに「焦点化された効果的な指導を行うことができるよう改善」とありますが、この焦点化された効果的な指導というものがどのような指導を意味しているのかが、やはり現場の先生に分からないと、逆に不安になってしまうのではないかなと思いますので、検討が必要かなと思いました。おそらく大まかな文意としては、単に見て味わわせるというのではなくて、育てたい資質・能力を明確にして指導するということかと思うんですが、今後細かく検討していく必要があるかなと思いました。
続きまして、今回お取りまとめいただいたことを受けまして、今後の検討に向けて大切にしていただきたいことを2点ほど述べさせていただきます。
1つ目は、これはここにいらっしゃる皆様もお考えかと思うのですが、芸術系教科にとっての創造性の位置づけについてでございます。
資料2ページの右の欄の1番上の文化芸術教育への期待のところに「現在の課題解決にとどまらず、未来に向かって意味や価値を創出したりし、生活や社会を豊かにすることにつながる価値を実感できる」とありますが、これこそが芸術教科の果たす大事な社会的役割であると思っています。
そのことを受けて、次のページの3ページの右欄、最下段に、見方・考え方の在り方において「芸術の本質的意義である創造性を重視する」と書いてありまして、ここにおいて芸術系教科の役割には創造性の発揮が不可欠であるということが示されています。
ここで1つ検討が必要だと思われることは、この創造性とは、あらゆる学習の基盤をなすものを指しているのか、それとも芸術教科に対して独自の機能を持つものなのかということであります。ちなみに、今ご覧いただいている創造性、3ページに示されている創造性とは、後者、すなわち芸術教科独自なものとしての位置づけだと思われます。しかしながら皆さんご存知のとおりに、意味や価値を追求すること自体は、探究学習を見れば分かるように、現在の全ての学習に求められていることでもあります。
そのように考えますと、例えば6ページの高等学校芸術科の内容の在り方に、科目のまとめの段階において探究的な学習を設定するというふうにありますが、この探究的な学習において扱われる創造性の役割には、学習の基盤となる位置づけと、芸術教科独自の位置づけの両方が存在しているということになるかと思います。ですので、本ワーキングで何回か申し上げてきましたが、創造性の持つ「問題解決的な側面」と「問題提起的な側面」の両面から、創造性というものを考えていく必要があるかなというふうに思いました。
問題解決的な側面とは、あらゆる学習の基盤として創造性が位置づくのに対して、問題提起的な側面とは、芸術教科、とりわけ図画工作、美術、工芸に独自な位置づけになるものとも考えられます。例えば、子供たちの「こうなったらいいな」ということを大切にするということは、芸術教科の重要な創造性の役割の1つなのではないかなと思います。このような創造性の位置づけの検討が必要と思っております。
続いて、全体的なことに関わることですが、今後の検討において忘れたくないこととして、今こそハーバート・リードが言う教育の目的について共有しておきたいと思います。これは資料の2ページの総論の丸5番に示されております芸術教育の根本的な目的や意義に関連することと思います。
ご存知のとおり、リードは教育の目的には2つの方向性があると言っています。1つはその人自身となるよう教育するという方向性と、その人自身ではないものになるよう教育するという方向性であります。このうち、その人自身となるよう教育することとは、子供が生きる社会の中で自分らしく自己を形成していくことを支える教育の目的であります。それに対して、その人自身でないものになるよう教育するとは、自分が持ち得ていない社会的・文化的な資質・能力を身につけて、自身を変容させていくことを目指す教育の側面であると考えられます。
ですので、芸術教育において大事なのは、今申し上げた2つ双方を十分に育てるのだということと、特にそれら双方において、本日の議論にも出ていました、子供たちの心が動く、感性や創造力を働かせることが非常に大事と思っております。これからも子供の芸術文化が大切に考えられていく社会となることを願っています。これまでありがとうございました。
【大坪主査】 それでは次に佐藤委員、お願いをいたします。
【佐藤委員】 これまでのワーキングに対して丁寧におまとめいただきありがとうございます。
私からは二つお話しさせていただきたいとければと思います。1つ目は8ページの教科の内容の精選等のところの1番下のポチ、鑑賞の技能について、2つ目は、9ページの外部の人材、学校外の文化施設等や地域と連携した学習についてです。
1つ目ですが、今回の改訂において小学校図工、中学校美術、高等学校美術、高等学校工芸で、まず区分が設けられたこと、そしてその中に鑑賞の技能というのが入ってきていることでとても分かりやすくなったなと感じます。
鑑賞の技能を、補足イメージの5のところ、高次の資質・能力の内容のイメージと照らしてみますと、例えば中学校では作品などの特徴や表現方法などを読み取る技能」、高等学校の美術の1では「美術作品などの特徴や表現技法、背景などを幅広く読み取る技能」となっています。
「特徴や表現技法などを」というところが、少し説明しすぎではないか、誤解を生じるのではないかと懸念します。この読み取る技能の中には「特徴や表現技法など」だけではなくて、たくさんの子供たちのそれぞれの気づきから出発する「何を読み取ったか」という幅広い内容が含まれると思いますので、ここをあまり狭めないような表現にすることも考えられるのではないかと思いました。
一方で小学校の鑑賞では、「作品などに応じて活用できる技能」という言葉になっていて、この「応じて活用できる技能」という表現が少し分かりにくいと感じました。ここのところは、逆にもう少し説明がいるのではないかと思います。
2点目は、8ページの外部施設のことについてなのですが、課題にあるように「外部の人との協力や学校外の施設等を活用した授業」については、現状あまり肯定的に受け入れておられない先生方が多いということ、美術館側も連携について困難だと感じ、苦慮している館が少なくないと思います。
このことに関して、2ページの文化芸術教育への期待にある「感性と知性の両輪を働かせ心が動く体験」を担う場所として、例えば文化施設や美術館、博物館は機能できると思います。
このワーキングが始まった際の1番最初のご説明として「学校外の人が読んでも分かりやすい学習指導要領を目指す」という言葉がありました。例えば保護者の方々、あるいは子供たちに関わる外部施設の方々、人材の方々に広く伝わることを願います。
美術館、博物館の学芸員、あるいは教育普及を担う者にも届き、学校が子供たちをどんなふうに育てようとしているのかということを理解した上での連携ができるということを望みます。
今までは学校の先生方が美術館をどう活用するのかというような研修等々がずっと長年続いてきていて、そこで学ぶ機会があったと思いますが、美術館や博物館の学芸員が、この学習指導要領に込められた思い、あるいは目標、子供たちがこの先変化の大きな社会の中でどんなふうに育っていけばいいのかということなどを学ぶための研修も必要だと感じます。
美術館が研修を組み、学校と、外部施設が本当の意味で協働して、作品の本物が見られるということだけではなく、子供を育てる施設として連携できればと思っています。
より分かりやすく学習指導要領をまとめていただき、それがたくさんの人の手に渡り、社会全体で子供たちを育てていく必要があると思います。私からは以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは、森委員お願いをいたします。
【森委員】 はい、よろしくお願いいたします。
まず初めに、昨年の10月の第1回ワーキングから大体9か月ぐらいですか、皆様のご努力によって、これまでの議論が、特に重要な論点がコンパクトかつ丁寧にまとめられているというふうに思っております。大変ご苦労様でした。
私の方からは、全体の感想と検討いただきたい点について3つほど述べさせていただきたいと思います。
まず1つ目ですけども、2ページ目の右の総論に記載されている、1から5までの基本的な方向性に関してですが、何人かの先生方からも指摘があったように、もう少し記載内容について、あるいは順序を整理できるかもしれないと感じています。全体として芸術教育というのが児童生徒が表現や鑑賞を通して世界と出会い、そこで意味を発見したり新たな価値を創造する、そういう経験の教育であるということが、全体として示されていると思います。こうした経験こそが豊かな社会の創造だとか幸福な人生につながるというところまで指摘されていて、芸術教育が本当に未来への希望をもたらす有意義な取組であることが、そういう意義を持つことが改めて示唆されていて、大変嬉しく感じています。同時にこの方向性を大切にして、将来に向けて引き継いでほしいなと心より感じました。
2点目ですけれども、美術における教育ジャンルの多様性の記述に関して、とりわけメディア関連の芸術教育に関わる記述に関して申し上げます。
5ページ目ですけれども、内容の改善の在り方、丸1の(1)内容の充実において、図画工作、美術、工芸の5つ目の項目のところに、「多様なメディアと関わらせて発想や構想をすることやメディア機器の特性を生かすことができる技能を示すこと」や、7ページの右の方には、やはり図画工作、美術、工芸の項目において「漫画、アニメーション、映像などの多様なメディアによる創造的な表現や鑑賞の学習への積極的な取組が推奨されていること」など、メディア関連の芸術教育に関してかなり踏み込んだ具体的な提案が行われているように感じます。
こうした取組は、現代におけるメディア系表現分野の広がりと表現のためのテクノロジーの一般化を前提として、社会のニーズに対応した重要な取組であるというふうに考えます。
初めに申し上げた「世界と出会う経験の教育」という観点から申し上げると、身体性や物質性に関わる世界の経験とは異なるもう1つの世界、すなわち仮想的な世界との出会い、あるいは経験であって、これらの分野においても意味を発見したり、あるいは新たな価値を創造したりすることへと開かれているというふうに考えることができます。
ただし、表現や鑑賞の領域が多様になるということは教育の現場において選択の幅が広がるということであって、歓迎すべきことではありますが、一方で限られた時間の中で取捨選択しなければならないというジレンマが生じることになると想像します。美術教育においては、最も重要な身体性や物質性、その関係性に関わる表現、そこをおろそかにすることなく、もう1つの選択肢としてメディア系の表現教育と鑑賞教育、これらがバランスよく取り入れられることができればというふうに考えております。
3点目ですけども、15ページの高等学校芸術(美術)の目標等についての改善案につきまして、ここの柱書きにある記述に関して申し上げたいと思います。
ここでは美術1、2、3それぞれに「美的体験を重ね」「美的体験を深め」「美的体験を豊かにし」と、美的体験という語が繰り返し使われています。美的体験ということそのものを否定するわけではありませんけれども、美術教育における学びの経験があたかも美的体験のみに集約されているような、言い方を変えると美的体験以外の多様な経験を排除するような限定的な印象を受けます。
そもそも「美術」という語は英語の「アート」を漢字に訳すときに「美」という文字を当てたという経緯もあって、表現や鑑賞において美的情操を育てるということが当然のように求められてきました。しかしながら現代の美術教育において表現や鑑賞の対象を美的経験だけに限定することは無理があるのではないかと考えます。
例えば現代美術において、不快なものだとか社会的な矛盾だとか、人間の死や喪失だとか環境問題、他者との葛藤、概念そのものだとか、必ずしも美的であるとは限らない内容が表現や鑑賞の対象となります。現代の美術教育においては、世界のこういう多様な在り方に対して感覚を開いて意味を問い価値を作る力を育てることがやはり重要であって、美的体験だけに限定するのではなく、多様な経験を推奨すべきではないかというふうに考えます。
私の方からは以上になります。
【大坪主査】 私からは、後ほどまとめとして総括をさせていただきますので、ここでの発言は控えさせていただきたいと思います。
続いて書道をご専門とされる先生方からのご発言をいただく前に、途中からご参加いただきました山内委員より、音楽に関わり、芸術ワーキンググループの取りまとめ案についてご専門、ご所属などの見地からご発言をいただければと思います。ご発言は6分以内におまとめいただけたら幸いです。山内委員よろしいでしょうか。
【山内委員】
ではよろしくお願いします。遅くなりまして申し訳ございませんでした。
それでは私の方からは、音楽及び高等学校の現場の立場から、大きく3点についてお話をさせていただきたいと思います。
まず初めに、このような取りまとめ案をおまとめいただきまして本当にありがとうございました。全体的に拝見をいたしまして、学校で芸術教科を学ぶ意義、または何を学ぶのかということが、より一層明確になったのではないか、示されているのではないかなと感じたところでございます。
その中で、取りまとめ案全体のところについてまず1つ目、申し上げたいと思います。
まず2ページ目についてですが、2ページ目の左の1番下の矢羽根の部分、あとは総論の右側の箱囲みの丸3の部分についてですけれども、芸術教科の特性である「正解が1つではない」ということを踏まえまして、子供たちが自ら学習課題と向き合って、質的な高まりを求めて学習に取り組むという活動自体が、そのほかの教科も含めた様々な学び方を学ぶことにもつながるというふうにも考えるところです。
また芸術教科の学習は、自分の内面と向き合うということが大切となることから、自己理解や自己肯定感を育むことにもなります。特に、生活や学びに困難さを抱える子供たちにとっては、芸術教科の学習に取り組む、またはその活動に没頭することそのものが、将来にわたって生きる意味を感覚的に捉えるということにもつながるというふうに考えております。このように、このような授業を今後学校で実践することで、子供たちがこれからの社会を生きていく力を育むことにもつながっていくと捉えます。
正解が1つではないからこそ、互いの表現や考え、感じ方を認め合うことができる教科でありますし、音や絵、あとは書などのそれぞれの特性を踏まえながら、必ずしも言葉では表現できない感情的なものを表出することができる。このことは他者を尊重することにもつながって、多様性の包摂、ひいては共生社会の実現にもつながるものと考えますので、この丸3のところについてはとても大事にしていきたいというふうに感じております。
続きまして、4ページになります。資質・能力の構造化の考え方の、3つ目のポツの左側、矢羽根の1つ目になりますが、ここに記述されていることについて、これからの授業でとても重要な視点となるというふうに思います。
授業を通して子供たちにどのような力を育むかという点から、高次の資質・能力を見据えながら、個別の資質・能力における知識及び技能と、思考力、判断力、表現力等を往還させながら、例えばスパイラル的に資質・能力の育成を図ることが重要になってくるというふうに思います。そのためには、授業者が題材や年間指導計画全体をどのようにデザインをしていくかという視点を持って、1つ1つの授業を組み立ててしていくことが一層求められるのではないかなというふうに思っています。今後、学校現場での現職教育、または研修等の1つのポイントにもなるのではないかなというふうに感じております。
続きまして10ページになります。右側、学習評価の改善・充実のところになりますけれども、今回の議論においては、この改善の方向性について、皆さんからお話もあったとおり、学校現場にとっては結構大きな変更と捉えられることが想定されます。指導と評価の一体化の観点からも、この具体的な評価の在り方については、できるだけ速やかに示していければというふうに思っています。今回のワーキングでの議論であるとか、学習指導要領の告示と、あまり時期をずらさず示すことがもし可能なのであれば、一体的に学校現場では捉えられるというふうに思いますので、その点、今後ご検討いただければと思います。
続きまして、2点目ですが、高等学校芸術科についてです。6、7ページに関わってくるんですけれども、一番右側の下の「学校現場への必要な支援を行う」というところで特には記述されていないんですけども、ぜひ今後ご検討いただければというふうに思うことです。
以前のワーキングでもお話をしましたが、高等学校等の現状も踏まえて考えますと、芸術科の教員は多くの学校で1人いるかいないか、また、各教育委員会においても、必ずしも専門教科の指導主事を置いてないというところもあることから、ぜひこのあたりは充実していただきたいというふうに思いながら、加えて、国における支援策として、これまで取り組んできた教育課程実践検証協力校の取組を充実させることであるとか、または、文化庁におけるいわゆるCBXと関連付けながら、パイロット的に予算を入れて、芸術教科の研究指定校などを指定することによって、先進的な事例を開発していただき、文化芸術の人材育成に取り組むことも今後期待をしたいところでございます。
それでは最後になりますが、全体としてですが、今回のワーキングの議論で、私自身もかなり勉強をさせていただきました。そして改めて思うことは、芸術教科において大切なことは子供たちがやはり楽しんで学習に取り組むことだろうというふうに思っています。ある意味、学習対象にのめり込んで、没頭することが大事になってくるんだろうというふうに思っています。そういうような活動を通して、1人1人の好きになるということの質が深まり、自分の中のエネルギーとなり、生きる意味や価値を見出すことにつながっていく、ということが重要になると思います。
学習というと、とかく直接的、即時的に何かを得る、学ぶことをイメージしがちだと思うのですが、芸術教科における学びというのはもちろん教室の中で学びを得るということもあるとは思うのですが、感性が豊かな時期に学校で学んだことが卒業してから数年後、あるいは数十年後に、「あのときの学びはこういうことだったのか」と気づいたり、改めて意識化されたりすることもあると思います。このような視点も大事にしながら、芸術教科の学びをデザインしていければというふうに考えているところでございます。これまで大変ありがとうございました。以上でございます。
【大坪主査】 山内委員ありがとうございました。
それでは次に、書道に関わり芸術ワーキンググループ取りまとめ案について、委員の皆様のご専門、ご所属などの見地からご発言いただければと思います。ご意見のある委員の先生方におかれましては、挙手ボタンを押してご発言をお願いいたします。ご発言はお一人6分以内におまとめいただけたら幸いです。いかがでしょうか。
あ、それでは、加藤眞太朗委員のほうからお願いいたします。
【加藤眞太朗委員】 よろしくお願いいたします。まずはこれまでの議論を踏まえ、このように取りまとめ案を作成していただいたことに感謝いたします。私からは、この取りまとめ案を見させていただいた上で気づいたことを2点お話しさせていただきます。
1点目は高次の資質・能力と教科・科目の目標との関係です。27ページをお願いします。
高次の資質・能力については、個別の知識及び技能と、個別の思考力、判断力、表現力等が総合的に理解されたり、あるいは統合的に発揮されたりした姿として示されています。このことを17ページに示されている目標の改善案と対応させたときに、初見の人にはその関係性がよく分からないように思われます。
今回の議論では目標の中で使われる用語が各資質・能力に対応して示され、知識及び技能では「理解する」「身に付ける」、思考力、判断力、表現力等では「表現する」「深く味わう」とされました。このうち「理解する」「身に付ける」「表現する」という表現については、それぞれの個別の資質・能力を確実に育成することが想定されているように読み取れます。そうした視点で考えますと、各教科科目で示された目標よりも高次の資質・能力のほうが上位の概念であるかのように感じられてしまうように思います。
確かに高次の資質・能力は内容の中で示されていますから、教科の目標にある「育成する」という言葉の中に高次の資質・能力を育成することが含まれているとも考えられます。また、「思考力、判断力、表現力等」の「深く味わう」という言葉にも、高次の資質・能力を育成することを見据えた内容が含まれているとも考えられます。しかし、先ほど申し上げました「理解する」や「身に付ける」、「表現する」という言葉に高次の資質・能力の育成が含まれているということは、一読しただけでは現場に伝わらないのではないかと危惧されます。
そこで、例えば教科目標の柱書きの中に「総合的に育成することを目指す」という表現を入れるだけでも、高次の資質・能力を育成していくことが意識されるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
また、現行の学習指導要領で進められた構造化をさらに進めるという方向性で議論が進められている次期改訂では、この各教科・科目の目標と育成すべき資質・能力、見方・考え方、そして新しく示される高次の資質・能力との関係性が、学校現場や家庭、社会に分かりやすく提示され、理解されるべきであると考えています。
以前、「今後の見方・考え方の役割の改善イメージ」の図が示されました。ここでは「学びの深まり」として示されていた「中核的な概念の深い理解」や「複雑な課題の解決」が、高次の資質・能力として現在は議論されていますけれども、改善イメージの目標に示された「本質的意義」と領域や区分ごとに設定された高次の資質・能力との関係性とともに、「その学びの成果」として資質・能力が身に付のだという関係性がより分かりやすくなるような図や資料が本取りまとめ、あるいは今後何らかの資料にて示されることを期待しています。
さらに評価についても今後検討が必要になると考えております。先ほど山内委員も触れられていましたけれども、第7回の芸術ワーキンググループにおいて高次の資質・能力に対する評価は「一律に直接的な評価を行うことは求めず」、「単元構想を含む指導評価の計画や実施の質を構造的に支える役割を果たすもの」として示されました。また、第8回の芸術ワーキンググループでは学びに向かう力・人間性等の評価について「見取る姿」が示されました。
この評価についても形成的評価をしつつ、それが特に表出した場合に思考力、判断力、表現力等の評価に反映させること、そして「見取る姿」に即した行動が徐々に増え、様々な学習場面で安定して表出するようになった「継続的な発揮」を見取るものとされています。教師が単元や授業を構想し、評価・改善するまでの一連の流れの中で、どのようなタイミングや段階で評価を行い、総括的な評価を行うのかについても、今後学校現場が分かりやすいように丁寧に説明していく必要があるだろうと感じています。
2点目は伝統と文化に関する扱いについてです。17ページをお願いします。
真ん中の芸術の思考力、判断力、表現力等にのみ「文化」という言葉が出てこないことが気になりました。伝統と文化については6ページにありますように、その充実が求められています。このことが反映されて17ページでは書道ⅠからⅢの科目の思考力、判断力、表現力等では伝統と文化という言葉が入っているかと思いますが、芸術科のほうに芸術文化という言葉が入っていないことに違和感といいますか、このままで大丈夫なのかと感じます。
「芸術のよさ」という言葉の中に伝統や文化も含まれるとも考えられますが、他科目を見ますと思考力、判断力、表現力等の観点に伝統なり文化なりの言葉は出てきていません。このことは教科の目標に伝統と文化は触れられているものの、それは知識及び技能の観点でのみ扱うものであるというふうに読み取られないかということを危惧しています。私からは以上になります。
【大坪主査】 それでは次に加藤泰弘委員、お願いいたします。
【加藤泰弘委員】 はい、よろしくお願いします。
本芸術ワーキング取りまとめ案ですが、これまでの9回にわたる議論が適切に、しっかり具体的に提示されております。全体的な方向性についての特段の修正意見はございません。文言の提案などを少しさせていただけたらと思います。
6ページをお願いいたします。
6ページに高等学校芸術科の内容の在り方について示されました。芸術そのものについて学ぶ機会を設けること、教科目標を実質的に達成するという記載がなされており、ワーキングの序盤で私から述べてきたことがここに明確に示され、Iを付した科目、またIIやIIIを付した科目の学習も視野に入れながら、「科目のまとめ段階」などで探究的な学習を設定、示していただきましたことは、全体的に賛同できる記述となっております。
あわせて、28ページの補足イメージ6に、幅広い芸術のジャンルを加えながら、具体例を分かりやすくしていただきました。8ページの右側に教科書の精選として教科書の内容の構成まで言及していただいたこと、個々に示された方向性を実現する上で極めて重要であると考えております。
その上で恐縮ですが、28ページの改善のイメージに戻っていただきたいのですけれども、右側の「芸術そのものについて学ぶ」に出てきた授業における取組や例の説明です。「人間にとって芸術がなぜ必要か」「生活や社会の中で芸術が果たす役割を考える」というような具体例がございますが、このような内容を、右側の「◆芸術と社会」の中に「芸術が生活や社会の中で果たす役割」というのを追記していただくのはどうかなというふうに思いました。左側のほうではそういった記述が見られませんので、一番下に「自分にとっての芸術」というのがあるんですけれども、「生活や社会の中で芸術が果たす役割」を追記するのはどうかと感じた次第でございます。
2つ目です。こちらは鑑賞の技能に関する記載です。5ページをお願いできればと思います。
5ページの「内容の改善の在り方(1)」の右下に「書道」が示されております。この2つ目に鑑賞の技能について言及されています。次期改訂において鑑賞の技能は、非常にこれは分かりやすい改善点であり、大いに賛同するところです。書というものはどう鑑賞してよいか分からない、どう鑑賞の方法や技能があるかが分かりますので、授業の改善が大きく期待できるような内容になっております。
ここで「作品など」という記載があるんですけれども、この作品などという部分、これまで「表現された作品や書から読み取った情報」というような記載もどうかなというふうに思いました。ご検討をお願いできればと思います。
3つ目でございます。ちょっと最初のほうに戻るのですけれども、1ページをお願いしたいと思います。
1ページの右下の学習指導要領実施状況調査の書道の1つ目。「身体性を伴いながら表現活動の中で発揮したり」という記述があるわけですけれども、この部分、その発揮したりということで何を発揮するのかということが、今1つはっきりしていないように思います。現行の学習指導要領上の表現ですので、発揮という言葉をここでは使用しないで、例えば「諸感覚を働かせ、身体性を伴った技能により表現したり」のほうが分かりやすいのかなというふうに思いますので、ご検討をお願いしたいと思います。
4つ目、4ページをお願いしたいと思います。
4ページ右下に書道の記載があります。ここのところですけれども、細かな点ですが、「作品の書の良さや美しさを読み取り、豊かに味わうこと」に記載したほうが、27ページの補足イメージ5の芸術科書道の高次の資質・能力のイメージと比べたときにより良い構成かなと感じた次第です。
最後になりますけれども、「論点整理」やその後の教育課程企画特別部会等の議論で示されているところでございますけれども、「目標」、「見方・考え方」、「高次の資質・能力」、「個別の資質・能力」が示されておりますけれども、この「見方・考え方」が示す内容も少々変わってきて、この4つがどういうことを示しているのか、あるいはその4つがどのような関係性にあるのかなど、例えば分かりやすく整理された図などを今後提示していただければと考えているところでございます。
現場ではやはり「高次の資質・能力」というのは、理解するのにすぐ頭に入ってこないようにも感じますので、ご検討をお願いできればと思います。また、思考力、判断力、表現力等の方向性は、芸術系教科科目として、また「書道」でもその考え方が変わっており、その点については、「一連のものと捉える」という記述は見られるものの、この「取りまとめ」(案)をだけでは、一般の教員は、理解ができないと思われますので、今後、改訂にあたって、ていねいな説明がなされるとよいと考えております。
以上、WGでは大変お世話になりました。
【大坪主査】 最後に、私より一言申し上げさせていただきます。
まず、これまでの10回のワーキンググループの会議を通しまして、委員の皆様には示唆に富んだ多方面からのご意見をいただき、心より御礼申し上げます。また、多様な意見を整理し、他の部署との調整を重ねられ、このような取りまとめ案を作成していただきました事務局に対しては、心より敬意を表させていただきます。
最後に、主査のまとめとして次の2点について意見を述べさせていただきます。
第1回のご挨拶の折にも申し上げましたが、芸術系教科科目の学びに対する社会的期待は、2つの創造性、先ほど大泉委員のほうから、これは芸術における創造性か、一般の学びにおいても必要な創造性かというお話がございましたけれども、やはり2つの創造性、クリエイティビティとイマジネーション、そしてそれを司る、土台になる感性が子供たちに育まれること、文化芸術への親しみが醸成されることというふうに認識をしております。これは色々なアンケートでも出てきているところでございます。
資料2ページに、その根底にあるものとして、文化芸術教育への期待として「文化芸術は人と人との心のつながりを強め、心豊かで多様性と活力ある社会を形成する源泉となるものである」との一文が示されております。これは文化芸術基本計画と連動しております。
今回、この芸術ワーキンググループの所管は文化庁参事官(芸術文化担当)付学校芸術教育室であります。この芸術ワーキンググループの議論も当然のことながら、これまでと同じく教育関連法規に基づいて芸術系教科科目の在り方を論議してまいったわけでありますが、これに加えて文化芸術基本法や文化芸術基本計画などの趣旨をこれまで以上に意識したものとなりました。その結果の1つが、資料7ページに示されております「メディア芸術や舞台芸術などの多様な文化芸術に関する学びの充実の在り方」にあるといえます。
ここでは、多様な芸術や文化に関する学びとして、文化芸術基本法に示された芸術、メディア芸術(映画、漫画、アニメーションおよびコンピューター等を利用した芸術)、伝統芸能、芸能などを含むものが示され、様々な表現に触れることで自己の可能性に気づいたり、他者への共感を深めたりすることに資するとなっています。
音楽、図画工作、美術、工芸、書道の教科・科目は、明治期の学校教育草創期より様々な変遷を経て今日まで発展をしてまいりました。今回の芸術ワーキンググループの議論では、ここに新たに芸術系教科科目の学びはそれぞれの領域に限られたものではなく、これからの社会の多様な文化芸術に関する学びにも責任を負うものであり、結果として委員の皆様からのご意見にもありましたけれども、芸術系教科科目の学びは広がりと可能性のあるものとしての性格付けが一層明確になったといえます。
また、資料6ページの高等学校芸術科の内容の在り方では、高等学校芸術科は音楽、美術、工芸、書道を選択履修するため、芸術科としての教科目標との関わりが認識されにくいとの課題に対して、科目の導入段階において芸術の全体像を捉えたり、芸術を学ぶことの意味や価値などを考えたりする機会を設定するなどと示されています。これもまた、心豊かで多様性と活力ある社会を形成する源泉を育む文化芸術教育の方向性を具体化するものといえます。
2点目として、今回の学習指導要領改訂の全体の議論では、資質・能力の3つの柱が思考力、判断力、表現力等を中心にして再構造化されつつあります。その中で、芸術系教科科目は2ページの括弧3、改善の方向性において「身体を重視した体験的な学びは芸術系教科科目の中核であり、諸感覚を働かせて対象に向き合うことで感情や感覚と結びついた深い理解となる」と示されております。今日の議論の中でも多くの委員の中からここの部分を取り上げていただきました。
さらに4ページ、資質・能力の構造化の考え方では、芸術系教科科目の特性として「身体を用いながら対象や事象と関わり、知識や技能を自分のものとすることで考え方や捉え方の豊かさにつながり、学びの深まりが生まれる」となっています。身体性や感性を前提とした資質・能力を芸術系教科科目の特質として提示することは、デジタル学習基盤の活用が課題となる教育課程全体において一層その重要性を増すと考えられます。
このデジタル学習基盤の活用については、先ほど取り上げました2ページの括弧3、改善の方向性において「デジタル活用と併せて体験を重視し、教科等横断的な学びにも位置づけることで、自分と芸術との関わりを感じながら学ぶことができるようにすること」とも示されています。これらを考えるとき、現代の様々なフェーズでのAIの浸透と併せて、人間本来の能力とは何かを問い直す時代にあるといえます。そのような時代を生きる子供たちに対して、今回の芸術ワーキンググループでの議論と取りまとめは、身体性を基盤とする創造性や感性、そしてそこから始まる資質・能力、さらに文化芸術の学びの大切さを伝えるものであると確信をしております。
これまでの委員の皆様の貴重なご意見に対して改めて御礼を申し上げますとともに、主査としてのまとめとさせていただきます。
本日はお一人お一人から芸術ワーキンググループの取りまとめ案についてご意見をいただき、議論をしてまいりましたが、本日の先生方のご意見を踏まえ、取りまとめ案に修正がある場合は、主査である私のほうに一任をいただくという形で進めさせていただいてよろしいでしょうか。
よろしくお願いいたします。
それでは最後に、事務局よりご挨拶があるとのことですので、進行をお渡しいたします。
【奈雲参事官補佐】 事務局でございます。今回第10回が芸術ワーキンググループとしましては最後の開催回となります。閉会にあたりまして、これまでの審議にご尽力いただきました芸術ワーキンググループ委員の皆様への御礼も含め、文化庁次長の日向よりご挨拶申し上げます。
【日向文化庁次長】 文化庁次長の日向でございます。本日、芸術ワーキンググループが議論の1つの区切りを迎えるにあたりまして、一言御礼を申し上げます。
主査の大坪先生をはじめ、委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中、昨年の10月より精力的かつ丁寧にご審議をいただきましたことに対しまして、心より感謝を申し上げます。
今後につきましては、取りまとめ案で示された方向性を踏まえつつ、教育課程企画特別部会等におきまして全体の議論が行われ、答申へと進んでまいる予定でございます。本日をもちまして、芸術ワーキンググループとしてのご審議は1つの区切りを迎えるわけでございますが、委員の皆様方にお示しをいただきました方向性を踏まえつつ、学校現場に今回のご議論の趣旨がしっかりと浸透するように、今後学習指導要領の告示、解説の作成、学習評価の在り方の検討など、学習指導要領の改訂に取り組んでまいりたいと、このように考えております。
また、ワーキンググループでいただきました様々なご意見や文化芸術教育に対する委員の皆様方の思いや願いは、この取りまとめ案のみならず、今後の文化芸術教育の推進のため、行政運営においても生かしてまいりたいというふうに考えております。今回委員としてご参画いただきました先生方におかれましては、引き続きご指導賜ればというふうに思います。本日はどうもありがとうございました。
【大坪主査】 それでは、以上をもちまして、芸術ワーキンググループを閉会といたします。
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