令和8年5月21日(木曜日)09時30分~12時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【大坪主査】 定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループ第9回を開催いたします。皆様、大変お忙しい中ご出席くださり、誠にありがとうございます。
それではまず、事務局より委員の出席状況、配布資料の確認、その他留意事項があれば説明をお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】 本日は稲委員がご欠席となっておりまして、現在17名の委員にご出席いただいております。
資料について、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から4と参考資料がございます。また、前回までと同様、対面会議で言いますところの机上配布資料として、前回会議資料とワーキンググループにおける審議のご参考として、学習指導要領本体や解説、関係する審議会の答申等をまとめた参考資料集を事前に別途お送りしております。
また、会議の運営に関して一点お願いでございます。ご発言の際は挙手ボタンを押していただきまして、ミュートを解除してからご発言をお願いいたします。また、ご発言が終わりましたら再度ミュートにしていただきますようお願いいたします。
事務局からの説明は以上です。
【大坪主査】 今回は議題1においては論点1として、芸術系教科・科目における伝統と文化に関する教育の充実の在り方について、論点2として多様な芸術や文化に関する学びの充実についての二つの論点がございます。
論点1では、事務局より資料について説明の後、3名の方々にご専門の見地からご発表をいただきます。その後、質疑応答と意見交換を行った後、5分間の休憩を挟み、論点2に関わる事務局説明へと移る予定です。
それでは、事務局より論点1についての資料の説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 学校芸術教育室長の堀内です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。それでは論点の1つ目につきまして、資料を基にご説明させていただきます。
本日の議題は芸術系教科・科目の資質・能力の育成等につきまして、論点1を、芸術系教科・科目における伝統と文化に関する教育の充実の在り方についてとしております。本日、事例発表をこの後、静岡大学の長谷川慎教授、道越洋美委員、それから大東文化大学の髙橋利郎教授、それぞれからご発表いただくこととしております。
3ページをご覧いただきたいと思います。伝統と文化に関する教育の位置付けにつきまして、現状、教育基本法や学校教育法等において教育の目標として位置付けられております。このことを踏まえまして、現行学習指導要領におきましては、各教科等の特質に応じて伝統や文化に関する内容が位置付けられております。教科横断的な視点によりまして、それぞれの学校の特色を生かした教育課程の編成を図っていくということとなっております。
4ページをご覧いただきたいと思います。それぞれの芸術系教科・科目におきましても、例えば音楽では唱歌、民謡、和楽器等に関すること、美術では我が国の美術作品、美術文化、工芸の伝統文化に関すること、書道では書の伝統や文化に関することというように、それぞれの教科の特質に合わせて指導が行われているというところでございます。
7ページをご覧いただけたらと思いますけれども、学習指導要領実施状況調査の結果でございます。小学校の音楽でありますけれども、日本の音楽や地域の音楽に興味や親しみをもつようになったかという問いに対しまして、一定の成果は見られるものの、3割程度が否定的な回答という状況がございます。また、教師に聞いた質問になりますけれども、我が国の音楽や郷土の音楽に親しみ、よさを味わったり、愛着をもったりするというところ、質問の内容につきましては、中学校・高等学校と若干異なるところはございますけれども、学校段階が進むにつれて興味・関心のもちやすさに関しまして否定的な回答が増加しているといった傾向がございます。
また、図画工作・美術についてでありますけれども、日本の伝統や文化を感じる作品に興味があるかという問いに対しまして、小学校図画工作では3割程度が否定的な回答。また、中学校の美術につきましても3割程度が否定的な回答。さらに書道につきまして、書の伝統と文化に親しみ、書を通して心豊かな生活・社会を創造していきたいという意識や態度が養われたかという問いに関しまして、約3割程度が否定的な回答。これらについては一定の成果は見られるものの、このような状況となってございます。
資料4ページに戻らせていただきますが、このような状況の中で児童生徒が伝統と文化を学ぶ意義が感じられるようにしていくことについて、一層充実が望まれるのではないかとさせていただいております。
なお、一昨年の令和6年12月に文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議の審議のまとめが出されておりまして、その中でも我が国の文化を継承し、新たな価値や文化を積極的に創造していく意識付けがより一層重要ということでありますとか、子供たちの身の回りにない雅楽等を扱う際には、子供たちがその意味や価値を見いだすことができるようにすることが重要、といった提言がなされております。
次のページに参ります。改善の方向性(案)でありますけれども、伝統や文化に関する教育の充実につきまして、例えば以下の方向性を取ることとしてはどうかとしております。
1つ目でありますが、国際社会で活躍する日本人の育成を図るため、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、そのよさを継承・発展させるための教育を充実するということ、これが前提になるのではないかと考えております。その上で、発達の段階に応じまして、音楽、美術、工芸、書の伝統や文化を尊重し、その意味や価値を見いだせるようにすることで、学ぶ意義を実感できるようにしていくことが重要と考えております。特に今回の改訂におきましては、学習指導要領の構造化の中で深い学びを実現していくという方向性が示されております。このこととも関わらせながら、伝統と文化がもつ意味や価値の追求を通して深い学びを実現していくということ、そして見方・考え方につきましては、卒業後も見通して働かせていく視点という形で今後設定していくことも踏まえまして、物事を捉える視点としての「文化」、教科固有の考え方・判断の仕方として「意味や価値を見いだすこと」などを明確化していくことが重要と考えております。
その上で、芸術系教科・科目の特質に応じまして、例えば、以下に示しております学習の充実を図ることとしております。例えば音楽に関しましては、自分や他者にとっての音楽文化の意味や価値を考え、我が国や郷土の伝統文化を学ぶ意義を実感できる学習の充実を図ること。図画工作・美術・工芸に関しましては、豊かに発想や構想をし、表現を追求したり、美術文化などの意味や価値を考えたりすることにつなげ、自分と伝統や文化との関係を深める学習の充実を図ること。書道におきましては、書の文化の視点を通して、作品から書の美を読み取ったり、それを表現に生かしたりするなど、表現と鑑賞を関連させた学習の充実を図っていくこと。このような学習の充実を図っていくことが重要ではないかと考えております。
それから6ページに移らせていただきます。先ほど申しましたような改善や充実を図っていくために、重要なことといたしまして地域社会との連携、あるいは文化施設、専門的な人材等との連携、このようなことを一層深めていくことが重要と考えております。また、伝統や文化に関する各教科の特質を生かし、相互の適切な関連を図りながら教科横断的に教育課程を編成することも引き続き重要と考えております。
また、伝統や文化に関する教育課程の編成、指導の改善・充実につながるように、学習指導要領の解説や教師用指導資料に具体例を提示する、あるいは教師の指導力向上のための研修機会等を確保するということ、このような形で学校における指導の改善につなげていくための支援も重要と考えております。
9ページ以降に関しましては、現行学習指導要領の抜粋を参考として掲載させていただいております。
以上が論点の1つ目のご説明でございます。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。
【大坪主査】 それでは、論点1の伝統文化に関する教育の充実に関わり、静岡大学の長谷川慎教授、藤枝市教育委員会の道越洋美主席指導主事、大東文化大学の髙橋利郎教授の3名にご専門の見地からご発表をいただきます。なお、質疑応答や意見交換の時間については、3名のご発表が全て終わった後に時間を設けさせていただきます。
それではまず長谷川教授より音楽科の観点からご発表をお願いいたします。
【長谷川氏】 長谷川慎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それではスライド1に移ってください。本日は音楽科における伝統や文化に関する教育の充実について、特に意味や価値を実感する学びという視点からお話をします。
現在、芸術ワーキンググループでは高次の資質・能力として、自分や他者にとって音楽表現や鑑賞が持つ意味や価値を実感する姿が示されています。本発表では、意味や価値を見いだすことを児童生徒が自分の経験として実感する学びとして捉え、論を進めます。
一方で、学校現場では我が国や郷土の伝統音楽の学習が弾いて終わる、聴いて終わるといった単発的な活動になりやすく、技能習得そのものが目的化しやすいという課題もあります。そこで本日は、地域と連携した実践や身体的・体感的な学びを通して、我が国や郷土の伝統音楽を文化として体験する学びへどう深めることができるかについて考えたいと思います。
吉川英史はその著書『日本音楽の性格の中で、日本音楽は一つの統一的な様式ではなく、それぞれ異なる音色や美意識を持つ多様な文化の集合として存在していると指摘しています。そのため重要なことは、知識や技能を身につけることを通して、多様な我が国や郷土の伝統音楽の良さを感じ取り、その背景にある文化の意味や価値を見いだしていくと考えています。
私は身体を通して日本音楽を学ぶことを重視しています。大学では口唱歌を取り入れた箏指導を行い、学生が学んだことを基に中学校での器楽授業実践にもつなげています。我が国や郷土の伝統音楽は楽譜だけでなく、聴いて真似る、身体で感じる、呼吸を合わせるといった学び方が重視されます。
一方で、学校現場では教師自身が我が国や郷土の伝統音楽を専門的に学ぶ機会が十分ではなく、模倣を中心とした学習を行いたくても、実際のお手本を示すことが難しい場合もあります。そのため、動画や音源などのICT教材を活用し、演奏者の身体動作や音色、間の取り方などを共有することは、我が国や郷土の伝統音楽学習において重要な役割を果たすと考えられます。特に我が国や郷土の伝統音楽では楽譜だけでは伝わりにくい身体的・体感的な要素が多いため、ICTは教師の専門性を補完しながら身体知を伝える教材として有効であると考えられます。つまり、音を理解するだけでなく、身体を通して音楽文化について理解することが重要であると考えています。
左上のイラストは大学生が中学校で能の学習を行った様子です。能楽師から学んだ能『羽衣』の小鼓の手、キリの謡の成果を生かし、大学生が中学校での能の学習を考えました。伝統的な歌唱としての謡を学ぶだけでなく、エア鼓を打つことを通して日本の伝統音楽に特徴的な間の感覚を学ぶことを目的とした授業になります。
左下は小学校での箏合奏指導の様子です。箏のペア学習は、弾いている児童は箏の演奏に集中、待っている児童はその様子を口唱歌を歌いながら待つことで、交代した際にすぐに演奏に取りかかることができる学習の利点があります。
右側は箏講習会用の動画のスクリーンショットです。調弦の仕方や基本的な奏法を短い映像で手元の端末で確認できるようにし、主体的に学習に取り組めることを目的として私が作成したものです。学生だけでなく教員が授業する際にも活用できる実技指導を補助する教材として位置づけて活用しております。
こうした私の考えの背景には、我が国や郷土の伝統音楽特有の美意識があります。吉川英史は前述の『日本音楽の性格』の中で、他の民族に見られない日本人の独特な音楽的美意識として音色尊重主義を挙げています。私は地歌箏曲演奏家としての経験を通して、吉川の言う日本音楽の特徴を身体的に実感してきました。中学校音楽科教科書のコラムの中で、尺八演奏家が西洋音楽の3要素に対する要素として音色、間、節を挙げていますが、私はこれに加えて型に通じる概念でもある手を加えて、これを我が国や郷土の伝統音楽に通底する美意識として身体的・体感的に学ぶことが重要であると考えています。
旋律やリズムだけでなく、音色、間、節、手そのものが文化を規定しているとも言えます。そのため、こうした微細な差異を感じるためにも、模倣や口唱歌など身体的・体感的な学びが重要になると考えられます。
私は地域と連携した学びも重視しています。指導学生とともに富山県五箇山を訪れ、こきりこ節のフィールドワークを行い、歌だけでなく踊りや地域の方々との交流も含めて学んでいます。また、静岡市の小学校と連携し、大学生が静岡市に伝わる民謡「駿河地搗き歌」を発表し、小学生に伝承する実践も行ってきました。この実践では、大学生自身が地域文化を学び直し、それを次世代へ伝える経験をしてきました。小学生にとっても地域に受け継がれてきた音楽を身近なものとして感じる機会となっていました。こうした学びを通して、音楽を単なる教材ではなく、人々の生活や地域と結びついた生きた文化として理解することができ、地域への愛着や誇りにもつながっていくと考えます。
左側のイラストはこきりこ祭りに指導学生が参加したときの様子です。右のイラストは駿河地搗きを大学生が小学生に伝授している様子です。
このような学びを深めるためには、系統性のあるカリキュラムや教科等横断的な視点も重要です。小学校ではわらべ歌や民謡、中学校では箏曲、長唄、歌舞伎などへとつなげながら、表現と鑑賞を往還する学びを構成していく必要があると考えます。また、社会科と雅楽、総合的な学習の時間と地域文化など、他教科等との関連も重要です。
さらに、伝統文化の保存会や地域の演奏家との連携によって、学校外の文化との接点を作ることも意義深いと考えます。こうした学びは道徳教育とも深く関わります。学習指導要領でも、伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度、国際理解などが示されています。伝統音楽を身体的・文化的に体験することは、自国の文化への理解を深めるとともに、他国の文化等の異なる文化を尊重する態度にもつながっていくと考えられます。
最後にまとめになります。我が国や郷土の伝統音楽の学びは、最初から分かったりできたりするものではありません。むしろできないことを体感することにも意義があります。しかし、真似をし、間や呼吸を感じ、文化的背景を知る中で、子供たちは少しずつその音楽の意味や価値を感じ取っていくでしょう。そして、その経験は自国の文化への理解を深めるだけでなく、他国の文化を尊重する態度にもつながっていくでしょう。
そのため、我が国や郷土の伝統音楽の学習では、知識や技能の習得を基盤としながら、音色、間、節、手という我が国や郷土の伝統音楽の美意識を身体的・体感的に学ぶことが重要であると考えています。また、地域と連携した学びや教科等横断的なカリキュラムを通して、音楽を文化として実感する学びへ深めていくことが、今後ますます求められるのではないかと考えています。
私の発表は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。
【大坪主査】 興味深いご発表ありがとうございました。
続いて、道越委員より図画工作、美術科の観点からご発表をお願いいたします。
【道越委員】 道越でございます。よろしくお願いいたします。私からは、これまで取り組んでまいりました伝統文化の充実について発表をさせていただきます。
伝統文化の授業研究の始まりは、屏風を立てて授業を行いたいという思いからでした。屏風は私たちの生活の中でほとんど使われることがありません。その良さや美しさを子供が実感的に理解するためには、目の前に屏風を立てる鑑賞の授業を行う必要があると思ったからです。
尾形光琳の屏風を鑑賞し、屏風が生活の中でどのように使われていたのかを理解します。また、子供が日本美術の造形的な特徴に気づき、語り、そして次に造形的な見方・考え方を働かせて作品を制作するという授業の流れでした。
こういった授業を行う際には、できるだけ美術館に足を運んだり、地域の方と関わったりして人から学ぶという機会を持つようにしています。写真は私たちが地域で体験をさせていただいたときのものになります。
伝統文化の授業実践は、人・物・ことをつなげ、私の授業観や子供観を広げてくれたと感じております。いくつかの実践を紹介させてください。
1つ目の実践です。静岡県の伝統工芸品である駿河竹千筋細工を題材の中心に据えて、地域の伝統的な素材である竹に着目して題材を構想しました。
左上の写真ですけれども、職人の方の技を目の前で見ている子供の様子です。その後、竹を削って箸を制作し、プラスチックの食器と竹の食器がどのように違っているのかを比較して鑑賞しました。季節感や自然が生活に取り入れられている日本の文化の良さに子供が気づくことができました。題材の最後には、竹細工の花器に自分で花を選んで生けるという活動を行いました。写真は竹細工の作品を大事に扱っている子供の様子です。体の諸感覚を働かせて実感的に理解することに大変価値があると感じております。
次の実践に移ります。日本の総合芸術と言われている茶の湯を授業で扱いました。こちらのスライドは生徒が抹茶茶碗を鑑賞している場面です。
地域の陶芸センターの力を借りて、実際に抹茶茶碗を制作した様子です。また、千利休の美意識について考えることを通して、日本の文化の精神性の高さを学びました。生徒の見方や感じ方から疑問や意見がたくさん生まれるのですけれども、それらをみんなで共有し合うことで価値観の変容があり、子供が新たな意味や価値を作り出せると感じております。
藤枝市はお茶どころですので、お茶やお菓子のパッケージデザインを鑑賞して、私たちの身近な生活の中にも伝統や文化が受け継がれていることに気づいてきました。さらに、お茶のお点前を鑑賞し、自分で制作した茶碗に藤枝産のお抹茶を点てていただく体験を行いました。先ほども申し上げましたけれども、私は味覚や嗅覚も非常に大事な美を捉える感覚であると考えております。
最後は、子供がデザインした和菓子や自分の茶碗をしつらえるという授業を行いました。自分が作ったものを自分が使う、最初はこれで十分であると私は考えておりましたけれども、お茶は相手のために点てるものであると教えてもらいまして、題材の最後にこのように相手のためにしつらえるという形で締めくくりました。
このような時間と手間のかかる授業は毎回できるとは限りません。しかし、伝統文化の良さを伝える題材は少しずつ形を変えながら地域と学校を結ぶ大事な実践になっております。
こちらのスライドですけれども、藤枝市立朝比奈第一小学校で行われた図画工作科の授業です。地域の方の力を借りて大量の竹の輪っかを準備し、それを子供が自由に組み合わせてランプシェードを制作いたしました。さらに、この学区で長年行われているあかり展に出品をし、多くの方々に喜んでいただきました。
私は花を生ける授業はとても大事にしているのですけれども、粘土で花器を制作して自分で花を生ける。子供は命ある花を大事に分け合って使い、お互いの生けた花の美しさを口々に語り合います。全員が自分なりの美しさを生み出すことができる場面にとても感動をいたします。
伝統文化を学ぶことで知識を生きて働くものにすること、そして自らの生活を自らの手で豊かにすること、これまで気づかなかったものに目を向けていくこと、美術で育成を目指す資質・能力はもちろんですけれども、子供の心も豊かにすることができると考えております。
これまでのスライドにもありましたように、作品そのものではなく伝統文化を継承する方々の姿を鑑賞することも作品とともに行ってまいりました。
どの学校で行っても子供は人としての美しさを感じ取ってくれます。例えば自然への敬意、素材を生かしきる技と心など、子供たちの柔らかな感性に毎回私たちが驚かされています。スライドの子供の感想はお読み取りください。教員である私にとってもそれは同じことであって、子供の命と向き合い、子供の良さや可能性を生かすのだということを強く感じております。 伝統文化は多くの人・物・ことがつながって成り立っております。子供が地域の素材や地域の伝統と出会い、それを大事に継承する人々の生き方に触れる、そして自らの体の諸感覚を働かせて学び共有することは、まさに主体的・対話的で深い学びそのものだと感じております。
最後になりますけれども、単に知識や情報を得るだけではなくて、高次の資質・能力の協議にもありましたように、美術の授業を通して私たちが子供をどんな人間に育てたいのかということをさらに明確にしなければならないと思います。このような時代であるからこそ、子供を多くの人・物・こととつなげ、日本の伝統や文化の良さや素晴らしさを授業で学ぶ価値があると思っております。
以上で私の発表を終わらせていただきます。
【大坪主査】 多彩な実践の様子を紹介していただきまして、本当にありがとうございました。
続きまして、髙橋教授より書道科の観点からご発表をお願いいたします。
【髙橋氏】 よろしくお願いいたします。髙橋でございます。
今日は「今日に息づく書のすがた~書の伝統と文化~」ということで、現代社会に書がどのように定着しているのかということを確認してまいりたいと思います。
まず初めに、日常の生活の中で言語文化あるいは生活文化という視点で書がどのようにあるかということを確認してまいりたいと思います。
1つ目は言語文化の底流としての書の存在です。私たちは音声言語に感情、喜怒哀楽の感情が現れるということは敏感に感じ取っているかと思いますが、同時に文字言語としての書にもその表現的な意味合いというのが現れているというふうに思います。現代の意思というのは、音声、また書の中にも同様に現れているのではないかというふうに考えています。
2つ目、人々の生活の中には時代の節目、人生の節目、あるいは季節の節目、いろいろな節目があります。こうした節目の中に毛筆の書というのが生きているということを想像していただけるのではないかと思います。近いところでは令和の元号ですね。また平成の元号のときも毛筆を掲げることで始まりました。また人が誕生すると命名書であるとか、お祝い事、あるいは不祝儀のときには不祝儀の袋など、また婚姻や葬送、そして1年を振り返ってみると書き初めであるとか、七夕、あるいはお中元、お歳暮ののし、あるいは年賀状といった様々な場面で毛筆の書が私たちの目に入ってくるわけです。
3点目、日本文化あるいは中国文化の象徴としての書というのも私たちは日常生活の中でたくさん目にしております。各種のパッケージですね。特に、和のイメージ、中国イメージを持ったもの、食料品なんかに象徴的なのではないかと思いますが、こういった各種のパッケージ、商標、看板ですね。また武道や伝統芸能との相性というのも書は非常に良いものがあるかと思います。そしてさらに紙幣であるとか、近頃では目にすることがなくなった株券などの各種の証書、企業名といった信用を重んずる場面、これでも毛筆の書が使われております。
私たちはそれぞれ強く意識することはありませんが、これらの書の背景には古典、書の古典が存在しています。ただ気ままに書いた単なる毛筆の文字というのではなくて、古典を背景とした書字が基盤となって存在しています。こうした生活や社会との関わりの中から文化的な価値や意味というのが理解できるのではないかというふうに思っています。
もう一方、書の伝統と美の価値、芸術文化といった視点からの考え方です。古い話のようですが、8世紀頃に王羲之の書法というのが日本では受容されています。これが文字を持たなかった日本の書における価値観の起点になっています。中国書道と大きく違う点はここかと思います。この価値観というのは8世紀に受容されてそのままというのではなくて、その後の日本の書の基盤となって、今日でもなおその根拠をなしているわけです。
そうした日本の書の活期というのはいくつか挙げられると思いますが、ここでは8つにまとめてみました。1つ目が王羲之書法受容の時代です。8世紀頃の時代です。そしてその次、9世紀頃にかけて空海らが出てきて書の日本化が始まっていきます。そして10世紀から11世紀にかけて、平安文学とともに仮名が最盛期を迎えてまいります。さらに禅宗の渡来などとともに、宋の書と墨跡が出現してまいります。戦国の世が終わった桃山、江戸初期の書、本阿弥光悦らを中心とする時代ですけれども、17世紀の頃にかけても大きな変化がありました。また文化文政期、江戸の唐様の時代には中国書法が体系的に入ってきています。さらに、明治期、開国の時代を迎えて、それまで直接的な交流が叶わなかった中国との間に交流ができたことによって、リアルタイムで清朝書法が入ってきます。そして近いところでは戦後、大規模展覧会が書の世界でも一般的になってまいります。今日、その時代の流れにあると思いますが、ここでも大きな価値観の変化が生まれています。
しかし、変わらない書の伝統と美の価値というのは、それぞれの時代にも存在しています。そこには、書の古典の存在が欠かせません。古典というのは、固定的な意味合いで存在するものではなく、その意味合いというのは変わっていきます。時代時代によって、古典を再評価したり、新たな古典が見出されたりしています。
例えば、時代の進歩、開発とともに新出土の書が出てきたりすると、その書が新たな古典としての位置を獲得していくこともあります。また、それまでは振り返られることの少なかった近世の墨跡、近年ですと例えば白隠の墨跡なんかがそれにあたるかと思いますが、そういったものも新たな古典として位置づけられていきます。伝西行の古筆というのは今日、高校の書道などでも盛んに用いられますが、江戸時代、明治時代というのはそれほどの評価、価値観ではなかった。それが、今日の感覚に合わせて新たな古典として浮上してくるというようなこともあります。
書の伝統と美の理解から、古典の生活への活用、あるいは今日の芸術としての評価ということが繰り返し行われているというふうに思います。
またこの書の古典というのは、単に制作の場面でだけ誕生してくるものではなくて、鑑賞と一体的に出現してくるものであるというふうに考えます。つまり、表現と鑑賞というのはそれぞれ独立して成立するものではなく、補完的な関係にあるもので、どちらかだけということでは成り立たない。そうした一体的な理解というのが、好みや直感ということだけではなく、多様で、分析的な鑑賞活動というのが必要な根拠であろうというふうに思っております。それによって、新たな価値が創出されるものと考えています。
まとめです。表現に加えて執筆者や書写内容の優れた書というのは、評価の積み重ねによって古典化されていきます。中でも王羲之の書や初唐の楷書などは規範性を帯びて、書の基礎学習材として普遍的な意味合いを持ち、時代を超えて日常的な書字および芸術活動の基盤となっています。書の伝統を形作ってまいりました。
また書の古典の臨書による身体性や感覚を伴う動きや感触などの習得は、書を鑑賞するための大切な要素でもあります。
さらに時代や環境、目的などに応じて新たな書が古典化されたり再評価されたりしてまいります。これを背景に新たな表現や美が生み出され、書の文化として社会で共有され、私たちの生活を豊かに支えてきました。戦後の日本の書もまたそれまでにはない領域というのを切り開き、新たな芸術文化として広く社会で共有されています。
書およびその美の価値というのは時代や環境、鑑賞するもの、鑑賞の観点等によって多様です。書の伝統と文化を踏まえながら自らの価値意識を持って表現や鑑賞の活動に取組、書のみならず幅広い芸術とそこにある美に対して自分にとっての意味や価値を見出していくことが、書並びに芸術を学ぶ意義であるというふうに考えられます。
書の伝統と文化を踏まえ、日常的な書字活動、学校教育における書の古典の学び、学校教育および社会生活の中での創造的な活動、表現活動や多様で分析的な鑑賞活動に、自らの価値意識を形成しながら臨み、新たな価値を創出することこそが、書の伝統を継承し、書の文化を未来につなぎ、文化財としての書の意味や価値を尊重する姿勢を育むというふうに考えております。
以上で私の発表を終わりにさせていただきたいと思います。
【大坪主査】 お三方の発表を聞きまして、改めて我々が身体性や生活をベースにしたものを次第に芸術へと昇華させていったことを再認識するとともに、今の不安な状態にある社会において子供たちがきちんとこれらを学ぶことによって、新たな価値観を創出していくことの重要性を改めて認識させられました。
それでは、お三方のご発表が終わりましたので、これから質疑応答の時間とさせていただきます。時間は15分程度予定しております。この後、意見交換の時間もございますので、ご意見についてはそちらでご発言をお願いできればと思います。
それでは、ご質問のある委員におかれましては挙手ボタンにてお知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ご質問がないようでしたら、意見交換の方に進めたいと思います。
それでは、お三方のご発表内容も踏まえつつ、伝統と文化に関する教育の充実の在り方に関する意見交換の時間とさせていただきます。音楽、図画工作、美術、工芸、書道とご専門の分野ごとに、お一人2分程度でご意見を伺えればと思います。ご意見のある委員におかれましては挙手ボタンにてお知らせください。
それではまず音楽をご専門とされる委員よりご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
では最初に水戸委員、お願いいたします。
【水戸委員】 3人の先生方のご発表を聞いておりまして、私のこれから申し上げる意見というのはそれをなぞるだけみたいになってしまうのですが、非常に意義深いお話を聞かせていただいてありがとうございました。
私の場合は音楽なので、音楽のことに沿ってお話したいと思います。今回の目標の中に「音楽の文化の価値やそれを学ぶ意義を理解して実感できるようになる」ということが教育目標として極めて重要だということが掲げられていますが、私もその通りだと思います。ただ、今回の長谷川先生のご発表を聞いていまして、その達成には長期的な視点が必要なのだなということをつくづく感じました。特に日本の伝統音楽というのは、日常的に親しんでいる西洋音楽をベースとした音楽とは性質がかなり異なるので、その価値を実感するところまで行くのが非常に難しいのではないか思いました。
今回、長谷川先生のご発表で伝統音楽に通底する特徴を「音色」、「節」、それから「手」というふうに非常に分かりやすく説明してくださいましたが、こうしたものが子供たちが日常的に触れている音楽とは大きく異なるので、まだ子供たちの身体感覚には十分に根付いているとは言い難いと思います。ですのでこのような状況を踏まえると、学習の初期段階から一気に意義の理解というのを求めるのではなく、自分の慣れ親しんでいる音楽とは異なる音楽があるののだということを、体感的というか身体的に学ぶという経験をまず重視するということが大事ではないかなと思いました。自分たちが慣れ親しんできた音楽とは異なる音楽が我が国には存在するのだという違いを実感すること自体が、この学びの出発点になるのではないかと思います。
この点に関して私自身も今日気づかされたのですが、ただ違うよねというのではなく、今日長谷川先生の方からご提案のあったいろんな「間」とか「節」とかそういう視点に沿って違うということを体感的に学べるということが、本当に深い違いがあるということを深く学べるので、それが今後の学びの発展になるのではないかと思いました。そのためには、今回もご提案があったように、長期的な視点で伝統音楽の価値や意義の醸成に向かえるような、小・中・高を通したカリキュラム・マネジメントが必要ではないかと思いました。
【大坪主査】 それでは次に山下委員、お願いいたします。
【山下委員】 ただいまお三方の示唆に富むご発表を伺いまして、伝統に関わるお話でありながらどこかみずみずしさを感じまして、改めて伝統文化の奥深さを実感することができました。
私からは長谷川教授より資料10ページにお示しいただいた「学びの深まり」とご提案に関連して、我が国の伝統音楽の学習で身につけた資質・能力が、高次の資質・能力としてどのような意味や価値を見出しうるかについて、1点だけ付け加えさせていただきたく存じます。
それは、伝統音楽の音の意味が体の使い方や息遣いといった振る舞いと不可分な形で立ち上がるということについてです。西洋音楽では、五線譜の仕組みがそうであるように、音の高さや長さなどの属性ごとに一旦分けた上で再構築するということが一般に行われます。他方、伝統音楽の口唱歌では、音色や音の高さ、長さ、そして奏法までもが一体的に表されて、一つの唱歌が複数の意味を同時に担っています。つまり、口唱歌を体験する過程では、音楽の形に関する側面と質感の側面を同時に感じ取り表現することが要求されることになります。このように、音楽や音楽文化をどこまで分解して考えることができるかは、その音楽の種類によって異なります。したがってこうした問いを立てることは、思考・判断の拠り所となる要素が音楽の種類によって異なることを理解するにとどまらず、音への向き合い方や美意識の差異にまで踏み込んだ本質的な理解へ導くと考えております。
以上です。
【大坪主査】 それでは次に山内委員、お願いいたします。
【山内委員】 まず初めに、3人の先生方から大変示唆に富むお話をいただきまして本当にありがとうございました。私も改めて先生方のお話を伺いながら、授業の中で伝統文化について取り上げる、取り扱う意味というのを整理できたところです。特に長谷川先生からお話いただきました、我が国や郷土の伝統音楽について文化として体験的に学びへと深めるというところにつきましては、大変意義があることだと改めて考えたところです。
その中で、感想と事務局からご説明していただいた資料について1つずつお話をさせていただきたいと思います。
まず感想的なところですけれども、私もこれまで授業で伝統音楽を取り扱いながら、例えば、箏の授業で平調子の音階を弾くという活動を行った際、生徒は実際に音を鳴らしただけで日本の文化的な雰囲気を感じ取るというところを何度も経験したことがございます。音楽の授業でそれを取り扱う場合においては、その文化的な側面を、音を通して子供たちが再認識をするということが大事だと感じています。そのような中で伝統音楽を取り扱う授業を行った際、我々は指導事項をベースに授業を構想していくのですけれども、歌唱であるとか鑑賞であるとか器楽であるとかということではなくて、領域や分野を一体的というか、横断的というか、関連付けながら子供たちが学べるという特質があるのではないかとも感じています。そのような点から、指導者としては学習活動と指導事項をきちんと整理をしながら題材としてどのように授業を構想していくかという力も必要になってくると考えているところでございます。
もう一点、意見になりますが、資料5ページの改善の方向性(案)の、ポツの下の1つ目の矢羽根の中頃に、「我が国や郷土の伝統や文化を受け止め」とありますが、この「受け止め」という言葉が私としては若干違和感があって、「受け止め」というと外にあるものを引き受けるような印象が持たれないかというふうに思っています。これまでお話があったとおり、自分たちの内面にすでにあるものということであれば、「内面化し」であるとか「価値を再認識し」というようにするなど、この辺を少し吟味して発信していくことも必要なのではないかと思っています。自分たちの生活や社会に内在化している文化的な側面を授業を通して浮かび上がらせ、意識化させることで、我が国や郷土の文化そのものの価値を体験的に学んでいくことが大切になるのだろうと改めて感じたところでございます。
ご検討どうぞよろしくお願いいたします。
【大坪主査】 では原委員、お願いいたします。
【原委員】 3名の先生方、私自身が美というものをもう一度考え直すというか、自分の美意識、また美に関する概念等をもう一度再認識するような機会を与えていただいたなと思っています。美意識もそうですが、長谷川先生のご発表で、やはり音楽を文化として学ぶということを私どもも考えていかないといけないなと思ったところでございます。
これまでワーキングの中でも幾度となく出てきました「身体性」であるとか「体験する」ということの大切さを、また再認識したところかなと思っています。キーワードとしては、子供たちが美もそうですし、芸術の意味や価値、あるいは学ぶ意義を実感するという、この「実感する」ということがキーワードになってくるかなと思っています。資料にありました高次の資質・能力のところでも「実感しながら」ということが網掛けされています。この「実感しながら」の中に本日ご発表いただいたものが直につながっているなというふうに感じたところです。この方向性というのは、大変意義ある改善になっているのではないかというふうに思っています。
そのことを捉えますと、今日資料にありましたいくつかのデータが出てるのですけれども、例えば29ページの子供たちの調査結果を見ますと、「伝統や文化について音楽の学習を通して理解する上で必要だ」に関して、音楽を学ぶ意義については必要だと言っている子供たちが9割近くいるわけで、このことを捉えても、またそのデータは8割近くの子供たちが「楽しい」と感じるとかあるのですが、これまでの現行の学習指導要領で示してきたことをもとに、先生方が授業を改善しながら努力してこられた結果がそこに現れているのかなというふうに感じているところです。
さらに、その2割や3割の子たちがまだ肯定的な回答ができていないという部分については、本日お示ししていただきました「実感する」という部分を大事にした授業作りが必要になってくるだろうというふうに思っているところです。そこでキーワードが「身体性」「体験」ということになると思いますし、また新しい音楽を作り出す、再現するだけではなくて創造するという部分も強くなってくるのではないかというふうに思っています。現行の学習指導要領で示している教材の取り扱い、それから指導方法、楽器の取り扱いに関する事項等についても、再度この点を含めて検討していく必要があるのではないかと思っています。
最後になりますが、最初に申し上げました「実感する」の中身なのですが、音楽が持っている意味や価値、芸術が持っている意味や価値を実感することと、学ぶ意義を実感することは若干ニュアンスが違うので、そこを私たちも整理し、きちんと把握、整理しながら使っていきたいなと思っています。
以上でございます。
【大坪主査】 それでは次に、図画工作、美術、工芸を専門とされる委員の皆様からご意見をいただきたいと思います。それでは最初に新井委員、お願いいたします。
【新井委員】 論点1に関してですけれども、5ページあたりを参照しながら網羅的にちょっとお話をしたいと思うのですけれども、日本の伝統文化については、写実性の高い西洋美術に比べて象徴性だとかデザイン性、そして領域横断性が非常に高くて、理解し味わっていくには工夫が必要だと考えています。そのため、この学習には他の委員の方もおっしゃっていたように、比較することや実感を持った学びというのが大事になってきて、具体的に言えば、西洋美術との比較で特徴を明らかにしたり、美的要素の実感を持った理解があったり、実際の制作現場の見学があったり、他の教科、言語や風土や音楽とのクロス学習が有効と考えています。
具体的に象徴性の高さと今申し上げましたけれども、例えば『源氏物語絵巻』の鑑賞で、人物が「引目鉤鼻」という非常に簡略な描き方なんですね。にもかかわらず絵巻物の良さを味わえているというのは、背景に言語による濃密な物語世界が横たわっているからなんですね。そのため、絵巻の一部に象徴される事柄でも、十分に絵巻物世界を奥行きを持って味わえているということが言えます。
それと同様なのが、現代の日本文化でアニメの主題曲がヒットチャートの上位に並ぶという現象があって、それも同様なことが言えるのだと思います。日本文化の象徴的で領域横断的な特色が、時代を超えて残っていることが理解されるということが重要なのだろうなと思っています。他の分野では、例えば能楽での能面の付け方だとか所作というのもかなり象徴的なのですね。これも同様です。
時間数の限られた美術の分野では、今回の「柔軟な教育課程の編成」という提案に示されているように、他教科と関連させる校外学習を行って授業時数の配分に応じた時間数を計上することで、他の教科の学習と合わせて学習の進捗を期待することもできるかなと思います。しかしながら、授業時数の少なさという点で、よりよく学ぶことには限界があるように思います。
【大坪主査】 それでは次に小池委員、お願いいたします。
【小池委員】 まず、3名の先生方、興味深いご発表ありがとうございました。やはり表現と鑑賞一体で、自分として考えていくというのは改めて大事かなと思いました。私は美術なので、特に道越先生の地域とのつながり、それから非常に感銘を受けたのは「相手のためにしつらえる」という、そこまで学んでいくというのはまさに文化を学んでいくのだなということを改めて思いました。
私からは資料の5ページ、矢印の1つ目ですけれども、「国際社会で活躍する日本人の育成」ということにおいて、国際化・多様化が一層進むこれからの社会で生きていく児童生徒にとって、この伝統文化を学んでいくというのは非常に大きな意味があると考えています。伝統や文化を学んでいくことは自分とは何かを考えることであり、国際化された社会の中でのコミュニケーションでは、これから一層重要になると考えます。また、日本の文化を理解することは、同時に多様な国や地域の文化を理解し多様性を尊重する児童生徒を育成することにつながると考えています。このことは、教育基本法、学校教育法にある教育目標にもあるように、非常に意義深いものと考えております。
もう一つ、その下の矢印の2つ目ですが、発達の段階に応じて伝統や文化を尊重し、実感できるようにするため、その意味や価値を見出し、自分なりに創造しようとしていくことというのも、非常に大切なことと考えます。美術などの芸術教科で伝統や文化を学んでいくことは、思考や表現の幅を広げ、新たな視点を確認するという面において子供たちの表現や創造性を豊かにするもので、そのことを目標、見方・考え方、高次の資質・能力においてしっかりと位置づけていくことが大切であると考えます。芸術や文化を学ぶことが、単なる表面的な知識を得るための学習に終わらないことが大切だと考えます。
先ほどの先生方の素晴らしい実践例からも、実践を通して伝統や文化とは何かを学んでいくことにより、文化の継承者、当事者として自分の問題として捉えることができ、これらの学びは創造活動なのだということを示していく必要があると考えます。
私からは以上です。
【大坪主査】 それでは次に、廣田委員、お願いいたします。
【廣田委員】 まず3名の発表者の皆様、貴重な発表ありがとうございました。特に図工美術ですので、道越委員の発表を聞かせていただきまして、大変参考になりました。
本当に感想になってしまいますが、私自身も日頃から伝統と文化に関する教育の充実において重要なのは、単に技術や形式とか歴史をなぞるだけではなくて、今日の発表でもありましたように、本物に触れる機会を充実させるということ、それからその背景にある歴史や人々の思いを考えるということ、また地域や外部の講師の方々とつながるということ、そして児童生徒がその良さや美しさを感じて意味や価値を実感して、伝統の継承と発展をさせていくということ、そういったことが学びを深めるために大切なのではないかというふうに、日頃から考えております。
今日、道越委員の発表にありました、附属島田中学校様の伝統的な茶碗の題材ですけれども、まさに伝統的な茶碗の鑑賞や利休について考えること、またそこにある歴史や人々の思いを感じたり、ゲストの方に来ていただいて茶碗の制作をすること、それから地域の特産品のパッケージデザインの鑑賞も行って地域とのつながりを持ったり、さらに自分で制作した茶碗でお茶を点てて、まさに相手のためにしつらえるという、そういった伝統や文化を継承して発展していく姿というのは大変素晴らしかったなというふうに感じました。
こういった豊かな体験、授業を全国の各学校でどのように実現していくのかというところが、これから考えていかなければいけないところかなというふうにも感じました。資料1の6ページにも書かれておりましたが、解説や教師用指導資料における具体例の提示だったり、教師の指導力向上のための研修機会等を確保する、こういったことも今後非常に大切になっていくのではないかというふうに感じました。そして、これだけではなくその地域の人材だったり材料だったり、そういったものを各それぞれの学校や地域が見つけていくということも、必要になるのではないかなと考えました。そういったところも今後検討していかなければいけないところだと感じました。
本市さいたま市でも、毎年夏休みに教員を対象とした研修会を行っておりまして、毎年美術館に実際に行って研修を行っています。今年度もさいたま市にある岩槻人形博物館に行きまして、人形を実際に制作する研修を実施する予定でいます。教師が実際に実物に触れて、教師自身も感動するということも大切ではないかと考えております。今日皆様の発表をお聞きして、伝統と文化を固定的なものとして捉えるのではなくて、未来へつながる創造的な営みとして捉えて、学びの質を高めていくことが大切なのではないかと改めて感じさせていただきました。
【大坪主査】 それでは次に大泉委員、お願いいたします。
【大泉委員】 まずご発表いただいた先生方、大変示唆に富んだ、また素敵なご発表ありがとうございました。特に私の専門からは、道越委員のご発表にもありました、本物に触れるということで、その本物とは命あるものに触れることなのだということについて、強い共感を覚えましたし、芸術教科として大切にしなければならない感性の存在を改めて確認することができました。
私からの意見なのですが、3名の先生方のご発表に位置づいていた大事なことについて、改めて取り上げたり強調したりするつもりで申し上げたいと思います。
まず資料1の5ページの2つ目の矢印に「発達の段階に応じて」とございますが、やはり伝統と文化と子供の発達の段階を考えていくことは大事なことなのだろうなと考えました。以前も似たようなことを申し上げましたが、例えば中学生は物事を対象化して捉えることができるので、知的好奇心であるとか批評力を伴わせて伝統や文化との関わりを学習することが可能であると考えられます。一方で小学生、とりわけ低・中学年にとっての伝統や文化というのは、子供たちの生活と一体化しているものであると考えられます。そこには対象化される作品だけではなくて、生活の中での所作や振る舞いと一体化していると考えられます。このように、発達の段階に応じた子供との関係から、伝統や文化を位置づけていくことが必要と改めて考えています。
2つ目は、同じく5ページの2つ目の矢印に示されておりますが、伝統や文化の意味や価値を見出すようにするためには,子供たちの日々の生活や生活様式と関係づけて伝統や文化を学ぶ必要があると考えています。例えば器を作るという制作活動は、その形や色などを見るということだけではなくて、お椀を持って食べるという日本の文化ならではの所作や振る舞い、ここでは食生活における生活様式になりますが、それについて実感している機会でもあるということです。
ほかにも日本の伝統文化には、例えば障子によって家の外と内を柔らかく分けるという造形の意味がありますけれども、そこには自然との共生の思想に基づいた空間の捉え方などがあるかと思います。こうした子供たちが実は日々の生活で行っている所作や振る舞い、あるいは生活様式と伝統文化とを関係づけること、例えば自分たちの日々の生活を伝統文化の学習から捉え直すということ、このことについて、ご発表にもありました子供の身体性や体験、実感を通じて伝統や文化を学ぶ機会というようになぞらえて考えていく必要があると思っています。
ですので、その指導を思い切ってまとめて言うならば、伝統や文化を対象にする指導を考える際、一つの側面としてはスペシャルなこととして捉えるのではなくて、授業や学校と子供たちの生活を関係づけた指導が一層重要なのではないかというふうに考えることもできると思いました。以上です。
【大坪主査】 それでは次に藤井委員、お願いいたします。
【藤井委員】 まず、ご発表いただいた3名の先生方、貴重な学びの機会をいただきありがとうございます。本日の資料35ページから38ページに示されておりますが、日本の伝統や文化に関する学びについて、子供と教師の両方が、項目によって違いがありますが、否定的な回答が約2割から4割見られるということが、課題として上がっています。資料5ページから6ページに論点1の改善の方向性を示してくださっておりますが、本日の先生方のご発表も拝聴して、やはり今後は地域と学校が連携しながら行う様々な体験をどのように学びの深まりへとつなげていくかがとても重要であると思います。
そのために、学校現場では教科等横断的なカリキュラム・マネジメントがより一層求められるのではないか、そして学校と地域をつなぐ様々なサポート、支援が欠かせないと強く感じました。学校現場ではこのような活動を行う教職員の存在が重要であり、何よりも教職員自身が日本の伝統や文化を取り上げることの意義や価値を深く理解し、授業の中に効果的に取り入れていく必要があります。そのためにも他教科等との横断的な視点は重要ではないかと思った次第です。
また、学校内や教育委員会との連絡、調整、運営や企画面のサポートを行う人材の配置、制度面、財政面のバックアップについても、今後さらに必要になってくるのではないかと思います。
【大坪主査】 ほかに図工、美術、工芸を専門となさる委員の方からのご発言ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは次に、書道を専門となさる委員の先生の方から、ご発言いかがでしょうか。それでは加藤眞太朗委員、お願いいたします。
【加藤眞太朗委員】 よろしくお願いいたします。まずは本日ご発表いただきました3名の先生方におかれましては、誠にありがとうございます。私の方からは書道という視点で、先ほどの髙橋教授のお話とも重なりますけれども、少しお話をさせていただければと思っております。
本日の資料1、5ページをお願いいたします。書道に関して一番下に示されていますように、文字は書く目的や用途、あるいは筆記具の発達とともに関連しながら様々な書体が生まれ、さらに日常生活の中で活用されることで文字文化が発達してきました。その中で、現在では日常世界で生きる実用的な表現と、非日常世界の中で生きる芸術的な表現が存在します。
そのような中で、現在では昔と比べて生活様式が変化し多様化している中で、書の伝統と文化を生活や社会の中でいかに実感的に理解させていくかということが大きな課題になるかと思います。このことから、高校生にとって最も身近な生活や社会である学校という場所が、書の伝統と文化を教える場であるという意識が大切だと考えています。
授業中における表現活動だけでなく、校内の行事や施設を活用して展示し、鑑賞することで表現と鑑賞の関連を図ることができますし、学校の作法室には和室があり床の間がありますので、茶道や華道との関連の中で日本の伝統文化を理解させることもできます。また、水の違いによる味の違いから地域の食文化を理解させる取組があることも聞きました。この水の違いは、墨を磨った際の発色にも影響しますので、墨を磨ることの意味を理解させることができるだけでなく、総合的な探究の時間や家庭科の授業との関連を図りながら、日本の伝統と文化について理解させることもできるのではないかと考えています。
つまり、高等学校には高校生にとって伝統と文化を実感的に理解させることのできる資源と環境が整っていると考えています。そして、書道の授業にとらわれない教科横断的な取組の中で、6ページにあります地域社会や文化施設、専門的な人材等との連携や協働が図られることを期待しています。
書の伝統と文化は文字文化だけではなく、生活文化や社会との関わりの中で生まれてきたものですから、そうした視点で日本の伝統と文化を広く理解させるという意識が必要なのではないかと考えています。私からは以上になります。
【大坪主査】 それでは次に加藤泰弘委員、お願いいたします。
【加藤泰弘委員】 3人の先生方、ご発表ありがとうございました。また、書の方では髙橋先生から生活文化と芸術文化の視点から「今日に息づく書のすがた~伝統と文化~」について、貴重な事例等をご発表いただきました。改めて生徒が書の文化的な価値や意味を理解し、新たな価値意識を形成することの重要性を認識したところでございます。
ここで一点申し上げます。5ページの(3)の改善の方向性に、先ほど何度も取り上げられているところでございますけれども、「国際社会で活躍する日本人の育成を図るために、我が国や郷土の伝統や文化を受け止め」というフレーズがございます。書という表現は、東アジア漢字文化圏において発展した芸術でありますが、書の伝統と文化といったときに、書で学ぶ対象である古典はすべて書の伝統と文化と捉えられると言えると思います。
また、特に漢字の書においては中国の書というものが学習の中心となっております。それは歴史的な厚みであるとか、書体の変遷なども踏まえればそういうふうになっていくわけでございますけれども、書の伝統と文化といったとき、やはり書というのは、これまでずっと言葉を書いたり刻したり、書写をしてきた芸術表現でございます。先ほど髙橋先生のご発表にもありましたけれども、中国から漢字を受容して、それを日本人がどう捉えていたのか、あるいはどう日本化させ、日本文化に融合させていったのか、あるいはそのひらがな、片仮名の生成、やがて漢字仮名交じり文で日本語を表記してきた、いわゆるその日本語の書というか、かなの書、あるいはその漢字仮名交じりの書の学習の充実を図っていく視点が、今後一層重要ではないかと考えている次第でございます。
また、髙橋先生のまとめに言及があったところでございますけれども、戦後日本の書も新たな領域を切り開いたことを述べられておりました。そういった日本で新たに花開いた、漢字の書やかなの書、漢字仮名交じりの書という、そういう区別ではなかなか括り切れない、書の伝統と文化を踏まえた新たな表現に視点を当てることも重要ではないかというふうに考えております。そのことが書道の学びを通して日本人としての日本の文化を理解し、国際社会で活躍する人材の育成にもつながっていくのではないかと考えている次第でございます。以上でございます。
【大坪主査】 これで一応、ご発言が全員終わったかと思うのですが、まだご発言いただいてない委員の方で何かここでご発言ということはございませんでしょうか。いかがでしょうか。佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】 ありがとうございます。3人の委員のみなさま、今日は実践を聞かせていただいてありがとうございました。私は美術が専門ですので、道越委員さんの発表について感想のようなことになってしまいますが、お話ししたいと思います。
ご発表いただいた実践例の、「人の姿を鑑賞する」という内容がとても新鮮に感じられました。実感を伴って学ぶ、体感、身体性などという言葉がずっと出てきていますけれども、鑑賞対象として、伝統文化を受け継ぐ人の姿を鑑賞するということはとても大事なことだと感じました。
美術館として何ができるかということも考えながら、聞かせていただいていたのですが、このような鑑賞は、伝統文化以外のいろいろな作品の鑑賞の深まりにもつながっていくのだろうと思います。これまでのWGで、作品の向こう側にある作家の姿であるとか、筆遣い、息遣いといったもの感じ取ることで鑑賞が深くなるのではないかとお話しさせていただいていたのですが、伝統文化を受け継ぐ人の姿を、活動の導入などとして見るのではなく、その姿や息遣いといったものをじっくりと鑑賞するということがとても大切だということを改めて感じさせていただきました。私からは以上です。
【大坪主査】 その他いかがでしょうか。それでは、論点1についてはここまでとしたいと思います。
私の方から、最後に申し上げます。今回特に伝統文化を学ぶことの意味、価値が、我々芸術系教科の中では現行学習指導要領よりもさらに重たくなってきていると思います。ですから、伝統や文化を学ぶということはもうマストであるとしても、もう一つやはり伝統文化で学ぶことの意味、価値をしっかりと考えていく必要があると言えます。先ほど何人かの委員の先生方からご意見ございましたけれども、高次の資質・能力に照らして、一体伝統文化から何を学ぶのか、どういうことを子供たちに身に付けさせるのかということをより一層明確にしておく必要があると思います。
その点では、改善の方向性のところにございますように、その第1番目に専門的な人材等との連携や協働がございますけれども、そのためにはやはり先生がきちんとした学習としての視点を持っていることが第一にないといけないと考えます。そうなってきますと、最後の3つ目のところに示してございますけれども、やはり教師の指導力向上のための研修機会というのが、ますますこの伝統文化においては重要になってくるのではないかと考えております。そのあたりもぜひ、事務局におかれましてはご考慮いただければありがたいと思っております。
それでは、ここで5分間の休憩を挟み、論点2へ進みたいと思います。現在49分になろうとしております。50分と考えて、55分から再開をいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
( 休 憩 )
【大坪主査】 それでは、議事を再開いたします。続いて、論点2としまして、多様な芸術や文化に関する学びの充実について、まず事務局より資料の説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 それでは論点2につきまして、資料1に基づきご説明をさせていただきます。資料14ページの多様な芸術や文化に関する学びの充実についてでございます。
15ページでございます。文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議における提言でありますが、令和6年12月に文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議におきまして、多様な文化芸術に関わりまして言及がなされております。
例えば1つ目のポツのところでございますけれども、世界中の多様な文化的・社会的背景をもつ人々が多くの作品を通して交流し、多様な価値観の尊重、共感、相互作用をもたらすということの重要性。あるいはその下のポツでありますけれども、ICTや多様なメディアを活用すること、自身の身体を用いること、このようなことを通して効果的に資質・能力を育成することが可能であるといったことであります。あるいは一番下のポツでございますけれども、AIが一層進化をしていくこれからの時代におきまして、人間が感性を働かせていくということがより重要となることから、子供たちに豊かな感性や創造性等を育んでいくため、様々な本物に実際に触れる機会が必要であるといった、このような提言がなされているところでございます。
次のページの現状や課題でございます。まず1つ目のポツで、多様な芸術や文化関する学びの取組に関しまして、次のような取組が行われております。例えば音楽科では、オペラや映画、バレエなどの一場面を鑑賞したり、あるいはオペラのアリアやミュージカルのナンバーなどを歌唱する。このことを通して音楽科としての資質・能力の育成につなげていく実践。あるいは図画工作、美術ではデジタル学習基盤を活用して、想像したことや伝えたいことなどを映像やアニメーション、漫画などに表すといった活動によりまして資質・能力の育成につなげていくといった実践。このような教科単独の実践の蓄積などを踏まえまして、地域の実態等に応じまして学校が創意工夫を生かした教科等横断的な取組ということが重要になってまいります。
また、国や自治体の支援事業を活用しながらアーティストと連携して創造したり、本物の舞台芸術を鑑賞したりといった体験も行われているという状況にございます。
19ページをご覧いただけたらと思います。メディア芸術に関連いたしまして、教科等横断的な取組事例を掲載しております。例えば左上の小学校の事例は、音楽科と総合的な学習の時間が連携した取組であります。総合的な学習の時間におきまして、校章に込められた意味を知り、オリジナルの4秒以内のロゴデザインの動画を作成する。音楽科におきましては、学校の歴史・伝統を感じ取り、イメージしたことを試行錯誤しながら動画に合わせてサウンドロゴをつくるという取組がなされております。
また右上は中学校の事例になりますけれども、美術科におきまして、中学校の行事や部活動、生活等の様子を分かりやすく楽しく伝えるための漫画を制作し、その漫画を活用しながら中学校に翌年度入学をしてくる小学校6年生に対して、生徒会活動において中学校の魅力を発信したという取組が行われているところでございます。
また舞台芸術関連で教科横断的な取組事例といたしまして、21ページの例えば左下の事例でありますけれども、地域の温泉の良さを伝えるため地域の温泉をテーマにした音楽劇を制作しようということで、音楽科におきましては、例えば4年生が地域の温泉にまつわる民謡の歌詞を学習したり、あるいはオリジナルの曲を作ったりし、また図画工作では伝説の生き物を想像して、表し方を工夫してお面に表したり、こうした取組を踏まえながら児童会活動におきまして、子供たちが温泉を紹介するスライド画面の制作や演出を担当し、全校集会で地域の人たちに披露したりと、このような取組が行われているところでございます。
16ページに戻らせていただきますけれども、このような取組を通じまして多様な芸術や文化に関する学びが、すべての教科等において通底する創造の土壌となるようにしていくことが重要だ考えております。このため、子供たちがワクワクしながら多様な発想を生み出せるような、そういった深い学びにつなげていくことが重要と考えております。
また合わせまして、GIGAスクール構想によりまして1人1台端末の整備が進められている状況にございます。今後は特別なソフトウェアを利用せずとも基本的な機能を用いて端末を有効活用した、そのような実践がさらに進められていくということが望まれると考えております。
次のページの改善の方向性(案)であります。このような現状や課題を踏まえ、次期学習指導要領における多様な芸術や文化に関する学びの充実につきまして、基本的な方向性として、以下のようなことを検討してはどうかとさせていただいております。
1つ目でありますけれども、芸術系教科・科目において育んだ感性や創造性を基に、教科等横断的に舞台芸術やメディア芸術などに関わり、表現の多様性を実感する機会を今後充実させていくことによりまして、文化の継承・発展・創造につなげていくことが重要ではないか。また芸術系教科・科目におきましては、枠囲いにございますように、舞台芸術、あるいは多様なメディアと組み合わせて教科の特性を踏まえ取り組んでいくということが重要と考えております。
具体的には18ページのところに参りますけれども、芸術系教科・科目におきまして、教科・科目における取組や、教科横断的な取組を通して多様な芸術表現につなげていく視点から、例えば音楽科におきましては、多様な芸術との組み合わせを視野に入れた、伝える相手を意識した音楽づくり、創作の学習活動の充実。あるいはダンスなどの芸術表現等への活用を視野に入れた、音楽を形づくっている要素や音楽の特徴について実感を伴って捉える学習活動の充実。図画工作、美術、工芸に関しましては、多様な芸術等との組み合わせを視野に入れた創造活動の充実。デジタル学習基盤を活用して発表や展示を行う機会の充実。
また小学校の図画工作につきましては、地域や学校の実態に応じ、デジタル学習基盤を活用して豊かに発想や構想をし、映像やアニメーションなどに表す活動の充実。また中学校の美術に関しましては、多様なメディアを活用した表現活動、鑑賞活動をさらに充実をしていくこと。高等学校の芸術科美術におきましては、多様なメディアと関わらせ豊かに主題を生成すること、夢のある発想につなげる学習の充実。あるいは技能に関しましては、メディア機器等の特性を生かして表現するための技能を明確化した学習の充実。多様なメディアを活用して発信、交流しながら創造的に表現する学習、このようなことを充実させてはどうかさせていただいております。
また書道科におきましては、総合的な探究の時間等に生かすことができるような、書道の表現の過程での時間性や運動性等の特質・特性に係る学習活動の充実。また映像などのメディアの機能を生かした様々な芸術表現に生かすことができる、書道の特質・特性に焦点を当てた表現、発表、展示の方法を工夫する学習活動の充実。このような内容をさらに充実していくことが重要ではないかと考えております。
この点に関わりまして、学習指導要領や解説、教師用指導資料等における記載を充実すること、専門的な人材、文化施設、文化芸術団体等との連携や協働、教師の研修機会等の充実をさらに図っていくことも重要ではないかとさせていただいているところでございます。
論点2に関しましてのご説明は以上になります。ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。
【大坪主査】 それでは論点2について意見交換を行いたいと思います。論点2についても、音楽、図画工作・美術・工芸、書道とご専門の分野ごとにお一人2分程度でご意見を伺えればと存じます。ご意見のある委員の先生方におかれましては、挙手ボタンを押してお知らせください。まずは音楽をご専門とされる委員の先生方、いかがでしょうか。
それでは原委員、お願いいたします。
【原委員】 改善の方向性として示されている点については、概ね17、18ページ、そのとおりでいいのかなと賛同いたします。音楽科で授業を行っていくときに、他教科であるとか他領域と関連した横断的な学習をしていく場合に、そちらに書いてあるように発表や発信を行ったりする機会の充実ということで、例えばが示してあるのですが、音楽科で学んだことを発表する場として他教科の場であるとか舞台芸術をつなげていくというのはよくありますけれども、子供たちの生活の中にある音楽を取り出して、生活からアプローチして音楽の学習が発動するということも機会がありますので、そういう視点も必要なのではないかなというふうに思っています。
例えば雅楽の『越天楽』というのは、お正月になると神社に行って今まで聞いてきていた、それを音楽の学習の時間に改めてもう一度聴いたら「あ、こんな音楽なんだ」と気づいたりするという、例えばそういうこともあるかなと。また、地域のお祭りに参加しているときの音楽が「あ、他の地域の民謡とも何か似てるところがあるな」とか、そういうこともあるので、子供の生活または経験と結びつけた中で音楽科の学習が発進する。そして、例えば総合的な学習の時間とつなげていくのであれば、往還するような形というのもあるのではないかと思うので、その視点が入るといいなと思ったのが1点です。
そうなると教科等の横断ということを考えると、その教科の本質であるとか、その教科の役割、音楽科の役割、または音楽科の内容がより一層重視され、各学校の先生方が理解をしておかないといけないと思っています。ですので、高次の資質・能力の部分は大変重要になってくるのではないかなというふうに思ったところです。
また、先ほど藤井委員や主査もおっしゃっていましたが、教材とする伝統文化であるとか、それから地域の祭りの音楽もそうですけれども、教師自身がその音楽が持っている価値や意義、また良さを実感しておかなければ子供たちには伝わらないだろうというふうに思います。そういう事例も提示していくことが必要なのではないかなと思っています。
【大坪主査】 それでは次に齊藤主査代理、お願いいたします。
【齊藤主査代理】 今回の事務局でご提案いただきました方向性につきまして、さらにこれから芸術教育の広がりも入っておりまして、非常に示唆に富む内容でありがたいなと思っております。
先ほど発言の方を控えさせていただいたので、前半のご発表の3人の先生方の内容からも、非常に多くの示唆をいただきましてありがとうございました。このような形で芸術教育はさらに可能性、広がりを持っていく教科であろうというふうに思うのですが、いよいよこの芸術ワーキングも最終段階になってきていますので、ちょっと私からは全体的なことについて一つお話をさせていただきたいとい思っております。
今日のお話にもありましたような多様な伝統文化、そして多様な芸術の教育の内容を受け止めることができるような次期学習指導要領の方向性となっているかどうかをちょうど再確認するタイミングで、今日のこのワーキングが位置づけられているというふうに思います。そう考えたときに、もう一度この学習指導要領に示される方向性について、全体的な雰囲気というと曖昧すぎるのですが、全体的なものがどういうことになっているか。例えば、49ページをご覧いただきまして、まだこれ検討中の内容であろうかと思いますが、この高次の資質・能力のイメージということで中学校音楽のページとなっています。これをぱっと見たときにどちらかというと、何かちょっと難しいことを言っているなというようなイメージがまだあるような気がするんですよね。どちらかというと西洋的な考え方というか、西洋的な分析的なイメージが強いと。
例えばこれをもう少しこの東洋的な発想も含めて、伝統文化の話も今日ありましたが、東洋的な発想も含めて考えるとどういうことになるのかなと思ったりするわけです。東洋と西洋の発想というのは基本的に違うところがあって、その比較は簡単にはできないのですけれども、例えば今日「美」という話がありましたけれども、その東洋の美には不完全の美も含めて、今日のお話にもちょっとありましたが、侘び寂びの世界とか。でも西洋の美はどちらかというと整っている美がメインになることがあるような気がします。
考え方も、西洋的な発想でいくとやっぱり分析的ですね。なので分けて、音楽を形作っている要素があったら要素に分けて分析して、それを捉えていくという発想なのですけれども、そこに東洋的な発想の視点で見ると「いや、これは分けることができないよね」という発想になっていくと思うんですよね。なので東洋的な発想はすべて分析ではなくてつながっている、つながっているからこそ魅力なのだという発想だと思うのですよね。
あと、東洋的な発想でいくと感覚的にこの良さを捉える。でもそれだけでは学習として不十分だということは分かるのですが、でもそれが東洋的な1番の原点で、あとは西洋的に捉えるとやっぱり分析した部分も大事になろうかと思いますが。
なので、その両方のバランスをこの学習指導要領そのものにうまく表記することができるのかということを考える最終の段階に来ているのではないかなというふうに思います。私も以前から繰り返しになりますが、とにかくシンプルにというお話をさせていただいていますが、シンプルで分かりやすさ。その大きな括りの中に様々な発想で、それぞれの学校の現場の先生方がそれぞれ子供たちの実態に合わせて考えることができるのだというような学習指導要領の方向性が示されるとありがたいなと思ったりもしております。長くなりました。
【大坪主査】 それでは次に水戸委員、お願いいたします。
【水戸委員】 私は一言だけ、表現の多様性を実感する機会の充実ということに関して申し上げたいと思います。表現の多様性を実感する機会を今後充実させていくということは、とても大事だと思います。今回示されているように、舞台芸術等の総合芸術を通してこのような表現の多様性を学ぶという視点も、とても大事だと思います。
ただ、ここでちょっと考え方を少し転換して、様々な分野の芸術が統合されて多様な表現や総合芸術が生まれるというような考え方だけではなくて、元々芸術というのは総合的なものであって切り離すことはできないというような視点を持つことも大事であるのかというふうに思いました。
どういうことかと申しますと、現代では芸術を音楽、美術、演劇、舞踏などに分けて学んだり研究したりしますけど、そもそもこれは便宜上の区分みたいな見方もできると思います。例えばある文化においては音楽という概念そのものが明確ではなくて、音楽と舞踏とが一体となったものが一つの芸術分野と考えているところもあります。つまり踊りのないところに音楽はなくて、音楽のないところに踊りはないというような考え方なのですが、このようにそもそも芸術とは総合的に結びついていて、そこに多様な表現があるという考え方も必要ではないかと思いました。特に高等学校においては教科が「芸術」となっているので、まず諸芸術の分野ありきという考え方ではなくて、このように諸芸術横断的な視点が最初にあるというような、そういう考え方も必要ではないかというふうに思いました。
【大坪主査】 それでは次に山下委員、お願いいたします。
【山下委員】 今事務局からのご説明を伺いまして、日頃自分の慣れ親しんでいるメディアがいかに古く限られたものであるかを思い知るとともに、これからも続々と新しいメディアが誕生し続けるであろうことに期待と一抹の不安を覚えているところでございます。
お示しいただきました改善の方向性については基本的に賛同しているところですが、私からは新しいメディアの潮流の中で主体的に舵取りのできる児童生徒を育成するために、音楽学習の特質の中でも特にパフォーミングアーツとしての視点を提示させていただきたいと思います。
演奏やダンス、演劇などのパフォーミングアーツは、身体を使い、時間が一方向に流れ、やり直しが効かないという条件の下で実践されます。これは途中で止めることができず、不可逆的な時間の中で一定の集中を保ちながら思考・判断し続け、ときには思いどおりにならなかったという感覚を抱えたまま前に進む、いわば一期一会の経験となります。他方、動画編集や生成AIなどのメディアが急速に発展した現代にあって、私たちは時間を巻き戻したり、切り取ってつなぎ合わせたりして表現することが可能になりました。これらの技術が創造の可能性を大きく広げたことは紛れもない事実です。他方で、可逆的で編集可能な環境に慣れるほど、失敗を避けようとするあまり、新しいメディアに頼りがちになることも危惧されます。
こうした時代だからこそ、授業という守られた環境の中で児童生徒が音楽や書道、美術などのパフォーミングアーツとしての活動を経験することが、創造性を支える根源的な能力の基盤を築き、多方面への発展の可能性を開くと考えております。
【大坪主査】 それでは次に山内委員、お願いをいたします。
【山内委員】 私のほうからは、まず事務局からご説明いただいた点につきましては、概ね賛同するところでございます。音楽の中でも、このような活動を充実させていくということが今後重要になるだろうと思っているところでございます。
実際、学校現場におりますと、高校生は様々なメディアを駆使しながら自分たちの思いや考え、イメージを表現しているという場面に遭遇することがございます。今、山下委員からもお話がありましたが、今後もメディアは進展していくとは思うのですけれども、教科で学んだことをそのようなものに表現としてつなげていくということも一つ利点としてはあるのだろうと思っているところです。
あともう一つ、ここに入れてほしいということではないのですけれども、この「多様な芸術や文化に関する学びの充実」という論点につきまして、私の経験上、特別支援学校におりましたところを踏まえて、多様な子供たちがいる中で、芸術教科で学んだことが学習全般にわたって非常に生きてくるという経験がございました。知的障害の特別支援学校では「各教科等を合わせた指導」として学習することがあるのですけれども、その中で芸術教科である、音楽、図画工作、美術、書道が他の教科と結びついて一体的に子供たちが学んでいく姿を様々目にしてまいりました。
そのような多様性の観点からも、この多様な芸術や文化に関する学びというのは、これからも子供たちにとって必要になるだろうと思った次第でございます。ここに入れるということよりは、そのような点も頭に置いていただきながら、今後進めていただければと感じたところでございます。以上でございます。
【大坪主査】 それでは続いて、図画工作、美術、工芸をご専門とされる委員の先生方にご意見をお伺いします。冒頭、論点2の分野において特に専門的なご知見をお持ちの岡本委員、森委員にまずそれぞれ5分程度でご意見を伺い、その後他の委員にご意見を伺ってまいります。
それでは早速ですが、岡本委員、ご専門の知見からのご意見をぜひお願いをいたします。
【岡本委員】 本日は私からこちらの資料に関して二つの論点、複合芸術教育とその各論としてメディア芸術教育の在り方について個人的なお話をさせていただきたいと思っております。
まず、事務局の資料につきまして、論点2のタイトルとして「メディア芸術と舞台芸術を合わせて多様な芸術や文化」とされているのですけれども、個人的にはこの二つの分野を統合する言葉としては、もう少し積極的な焦点を絞った言葉を当てはめたほうが良いのではないかなと思っています。
このメディア芸術と舞台芸術という二つの分野は違うように考えられていますけれども、その共通性を考えてみると「複合芸術」という言葉に行き着きます。この複合芸術という言葉、あまり耳慣れない言葉かと思いますが、メディア芸術、舞台芸術、それぞれは委員の先生たちもおっしゃっておられるように、もはや単一の芸術分野ではないわけですね。映像や音楽、美術、デザイン、身体表現、テクノロジー、様々な分野が複合して成立しているものなんですね。
例えばゲームなどは絵画的表現、音楽、物語、プログラミング、インタラクション設計などが一体となったものですし、アニメーションも同様、また舞台芸術もしかりです。これは言わずもがなだと思いますが、つまり、今後美術、音楽、書道や工芸といった従来の区分だけで芸術を捉えるのではなくて、それらを横断、統合する複合芸術という視点が必要なのではないかと思います。そういう意味では事務局の改善の方向性、横断的な取組というところに関しては非常に賛同するところです。
なお、誤解してほしくないのは分野の優劣を述べているものではなくて、例えば音楽科が優れた音ゲームを作っているように、複合芸術においては各分野の専門性がさらに重要であり、そこに深く根ざしているということは言うまでもありません。
現在の資料を見ると、多様な芸術や文化に関する学びの充実という大きな枠組みが設定された上で、そこから各ジャンルへブレイクダウンして整理する方向にまとめられている印象を受けるのですが、むしろこれから必要なのはその逆のベクトルで、それぞれの領域の専門性をどのようにインテグレートして新しい表現や学びを生み出すかという視点だと思います。
なお複合芸術という言葉なのですが、諸外国、特に英語圏ではIntegrated Artsとか、Performing & Media Arts、あるいは現代美術分野だとTransmediate artsなどと表現されていると思うのですけれども、これを一つの芸術分野として教育を行っている国も見られます。ちょっと引いた視点で言うと、芸術だけではなくて、これからのAI時代の教育の在り方そのものにも関わってくるというふうに考えます。
冒頭に紹介していただきました令和6年度の文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議ですけれども、私もその座長として加わっていたのですが、そこで最も議論されたのはやっぱりSTEAM教育との関係だったんですね。そこでは芸術は科学、数学、工学、テクノロジーと並ぶ一分野というふうに位置づけられてきたんですが、しかし今AIの進展によってさらにこれが変わってきていて、AIはもっと言うとジャンルを超えて1人で何でもできるわけですね。でも人間に必要な能力というのはそれを統合してさらに新しいものを生み出す能力ということで、一分野ではなく、特に芸術に関しては異なる知をつなぐための方法論ということで、最も統合にふさわしい分野になりつつあるのではないかというふうに考えております。個人的にSTEAMをさらに一段階、次の世代にフィットさせる必要があるのではというふうに思っています。
諸外国の例ですと、オーストラリアやフィンランド、アメリカなどでは、総合的な科目といった形で芸術を飛び越えた形での総合的、横断的な教育が進んでいるということもありまして、やっぱり複合芸術または複合科目というこの試み自体が、これらのAI時代の教育そのものを牽引するということに本格的に検討していく必要があるんじゃないかなと個人的には思っています。
最後に短く、私の専門のメディア芸術教育についてです。
複合芸術の中の一つの分野としてメディア芸術教育を位置づけたとすると、メディア芸術教育にもそれぞれの課題がありまして、現在子供たちは生まれたときから映像とかゲームとかSNSなどに囲まれて育っているので、最初からもう消費者なんですよね。浴びるほどすでに作品を見ていると。これからはメディア芸術教育で必要なのは、むしろ消費者から制作者や批評者というものに転換していくという教育が、メディア芸術教育については固有に必要かなと思っています。ただ見る、ただ遊ぶだけじゃなくて、なぜおもしろいのか、どのように作られているかなどの価値観とか、そこにどのようなリスクがあるのかといったところを自ら考えて表現するということが必要かなと思います。
そのためには発達段階に応じた教育設計が必要で、詳しくはまた時間があればですけれども、小学校というのは作ることを知る、楽しむということが中心になるでしょうし、中学校ではどうしたらもっとおもしろくなるのかとか、なぜ人は惹きつけられるのかといったこと、または反社に巻き込まれないためのメディアリテラシーなども身につける必要があり、高校ではさらにプロフェッショナルな視点からの産業界とのつながりやプロデュース的な視点までも必要になってくると思われます。
こういったメディア芸術教育の中も非常に発達段階に応じた教育が必要であり、これらのカリキュラムというものを既存の美術、音楽、書道という芸術教育の中に分散して入れ込むというのは大変難しいと思われますので、個人的にはそれぞれの教育分野の教育と並行しまして、複合芸術という分野を体系的に教える分野を新たに設置することが必要なのではないかと、今の時代思います。ただし、現在の芸術教科の時間数の不足などを考えると、現行の芸術分野でないところからの時間数の確保ができればと理想的には思っています。
一方で、教育者や教育環境の整備が不可欠であることは言うまでもないですけれども、他教科や他芸術分野の先生方がメディア芸術教育を行うということには大きなハードルがあり、環境にも大きなハードルがあります。専門的な知識や制作経験が必要となる部分も多いため、専門人材の確保や教育研修の制度などの充実など、新しい教育体制も構築していく必要があると考えまして、いろんな理想論を述べさせてもらいましたが、実際今の芸術、インテグレートした芸術教育というのは芸術分野に限らず必要であるということを何かの形で声を上げられればと思ってご発言させていただきました。
【大坪主査】 それでは次に森委員よりご専門の見地からご意見をお願いいたします。
【森委員】 私のほうからは、まず前半のご発表に関するところで、伝統音楽や工芸、書道などの伝統芸術や文化について、古典を学ぶということの重要性を、身体や体験を通じて実感するという点で改めて確認でき、非常に有意義な発表だったと感じています。こうした伝統的な芸術のエッセンスというのが実は古典の学びとして完結するだけではなくて、美の様式や素材、所作、しつらえも含めて、それぞれの観点において新しい表現へのヒントになるのではないか、とりわけメディア系の芸術についてこれからお話ししますけれども、そことも切断するのではなくて、むしろ新たな創作につながるような刺激に満ちた領域としてリンクさせていくべきだろうというふうに感じました。
岡本委員が指摘されていましたこれからのメディア教育に関して、今の生徒たちは消費者ではなく制作者として、批評者としての活動がこれから重要になってくるというご指摘は本当に全くそのとおりだと思いますし、私も大学の現場でそれを意識して強く進めているところではあります。
こういった観点を含めつつ、私からはひとまず論点2の「多様な芸術や文化に関する学びの充実」のあり方について、メディア系の芸術について述べさせていただきます。15ページの文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議における言及につきまして、ここで注目したい点が、現在のメディア芸術の教育の可能性やニーズは高まっており機材環境も整いつつあるけれども、指導すべき内容が十分に用意されていない状況であるというネガティブな指摘がありました。こうした状況を踏まえながら、メディア系の芸術教育の内容について全体を整理しながら提案をさせていただきたいと思っております。 私の知るところでは、メディア系芸術教育の取組のルーツは、2008年に中学校美術の学習指導要領の改訂において、絵画、彫刻、デザイン、工芸に加えて、映像メディア表現という分野が一つの独立した領域として加えられたところから始まっていると考えられます。この映像メディア表現という用語に関して、現在のメディア系芸術の状況を踏まえた上で、一定の整理が必要なのではないかというふうに感じます。
映像メディア表現という語は、ひとまずそこだけ見れば、映像関連の装置ないしツールを用いた表現と受け取れます。ただし、この「映像」という語がかなり曖昧であって、一体何を学ばせるべきか判然としません。ひとまずカメラだとか編集ソフトを使わせるという技術依存に陥りやすい状況になっているのではないかと推察します。
そうした観点から言えば、この映像という曖昧な語を用いずにもう少しより具体的な表現ジャンルの名前にすべきではないか。例えば、映画、ドラマとかドキュメンタリー、アニメーション、CM、ビデオプロモーションなどというふうに特定をすれば、各分野に特有の表現の特性とか、あるいは表現の言語について系統的な学びを提供できる可能性が開かれることになります。
例えば映画、ドラマの表現においては、前回のICTの活用に関する授業においても指摘させていただきましたけれども、制作プロセスの各段階において、映画、ドラマに固有の学びのエッセンスが含まれます。脚本を執筆する、撮影をする、編集をする、それぞれに獲得すべき知識、技能があって、それらが有機的に結びつくことで一つの総合的な作品として成立するわけです。こうした映画、ドラマ表現固有の形式の探究というのは、映画、ドラマ的な時間を生成させるための創造の核心であって、作り手の思考とか感性を育む重要な契機になるわけです。つまり、映画、ドラマという表現ジャンルを特定することによって、映像という言葉の曖昧さによる弊害を解消して、学びの具体的な内容が設定できると思います。
なお、メディア系の表現に関しては、今例示させていただいた映像系の表現以外にも、漫画とかゲーム、2D、3Dのコンピューターグラフィックス、バーチャルリアリティ、メディアアートやサイエンスアートなど、本当に多様な広がりがあります。こうした多様なジャンルの表現を包括するためには、先ほど岡本委員は総合的な芸術を一つの大きな括りとして語るべきだろうというお話がありましたけれども、私も同じように思うのですが、言葉としては、メディア技術を前提とする表現領域全体を「メディア表現」というふうに言ってもいいのではないか。そこに各ジャンルが入っていて、各ジャンルの形式性が明らかになる。そういう位置づけが考えられるのではないかと思います。
あともう1点ですが、メディア表現において分野横断というのがいろんなところで語られています。また協働的な学びということについても非常に重要だと思います。例えば、漫画、アニメーション、ドラマ、RPGゲーム、それぞれ表現の形式性は異なるわけですけれども、いずれもフィクショナルな物語を表現するジャンルです。作品制作の第1段階に、ストーリーのある創作、あるいはストーリーに基づくシナリオが必要になります。先ほど新井委員も指摘されていましたけれども、絵巻物とも関連が深いそういうジャンルです。こういう物語を生む段階というのは美術だけではなくて、やはり国語科と連携することによってより豊かな表現が実現するということが想像できますし、それ以外にも、例えばフィクショナルな物語の表現とは異なる、事実を扱う表現ジャンルとしてのドキュメンタリーがあります。現実の出来事に基づきながら、制作者の解釈や思いを表現する。ドキュメンタリーにおいては、扱いたいテーマに応じて、地理、歴史とか公民、理科、保健体育など多様な分野との連携が必須になってくると思います。他にも、映像系作品においては音楽・効果音などの素材作りにおいて音楽科と連携したり、RPGゲームにおいてはプレイヤーとのインタラクションを実現するプログラミングを情報科と連携したり、そういう分野横断的な取組が必要になってくるし、それこそが大きな学びになっていくだろうというふうに思います。
さらにそういう学びの中で、1人がすべてを行うわけではなくて、複数の児童生徒がそれぞれの得意分野において役割を分担して、意見交換しながら協働的に創作を行うことになるのだろうと思います。メディア表現の多くは、こうした多様な知識や技能を分担しながら互いに支え合って総合化することで、一つの作品として成立させる取組を体験することが可能です。メディア表現の創作のプロセスには、こうした協働性とか統合性、総合性が組み込まれている、ここが特色だと考えるわけです。
現場の先生は本当に大変だと思うのですけれども、こういうプロジェクトの全体を取りまとめてマネジメントすること、それが必須になってくると思います。ただ、小さな作品、短時間の作品であっても、こういう協働的で総合的な創作に参加するというのは、本当によい学び、優れた学びにつながると思います。すでに一部の学校では取り組まれているようですけれども、より多くの学校において先生方に挑戦いただきたいと思いますし、そのためにも、以前も話題になった学外の協力者とのネットワークを構築することなど、メディア表現の活動を支える仕組み作りが必要かなというふうに改めて感じました。
【大坪主査】 それでは引き続き、他の図画工作・美術・工芸をご専門とされる委員の先生方からご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。新井委員、お願いいたします。
【新井委員】 それでは論点2について、17ページあたりを中心にお話ししたいと思います。
17ページのいくつかの箇所で、「多様なメディア」とその領域を広めに考えているということは、とてもいいことと受け止めています。これからの社会を作るような、いわゆる「Big-C」と言われている大きな創造は、学齢期に「Mini-c」だとか「Small-c」と呼ばれる小さな創造が周りから受容されて何度も積み重ねられることで、Big-Cを生み出すための態度や力量が養われます。
新たな創造は全く思いがけないものの結びつきから推論されて生まれていくことは、教育課程部会企画特別部会での今井むつみ委員のアブダクション推論のご説明からも理解できると思われますので、その点で、今回のようにジャンルを特定せずに多様なメディア表現と広げて考えることは、子供たちの伸びやかな発想を後押しして大変重要な働きをするものと思います。私も国内コンペ等でタイトルを複数回取ったことありますけれども、ビッグCが理解されるまでには、必ず助走期間、知られていない期間というのが必要になってきます。
現在、SNSツールやVRツール、そしてAIが盛んに活用されていますが、それらを凌いで世界を変えていくBig-Cは、間違いなくすでに助走が始まっているはずですので、ここではさらに将来のことを考えて領域を広く取ったり、伝統文化の特色を生かせるような教育課程の設計が求められると思います。具体的なメディアに関する説明は、学習指導要領の「内容の取扱い等」でしっかりと触れていくということでいいのではないかなと思っています。
もう一つ、論点1とも関係しますけれども、労働力だとか内需拡大の論点で語られるグローバル化ですが、むしろ日本国民としての文化への理解だとか、それから日本と他国との相互理解という観点で、多様な芸術や文化を学ぶことが大事だろうと思っています。自国の文化芸術、伝統文化を学ぶことは、今後に予想される日本社会の変革期を乗り越える上でも、国際交流の中で自他の理解を促す上でも、大変重要なツールとして必ず必要になってくると考えられるからです。
【大坪主査】 それでは次に小池委員、お願いいたします。
【小池委員】 多様な芸術や文化に関する学びの充実の在り方ということで、教科横断的な取組について、まず意見を述べさせていただきたいと思います。
17ページの1つ目の矢印ですけれども、各教科・科目において学んだ感性、創造性を基に教科横断的に舞台芸術やメディア芸術などに関わり、多様な芸術表現の学びにつなげること、文化を継承・発展・創造する機会を今後充実させていくことについては、これは児童生徒に文化や芸術とは何かを体験を通して考えさせていくということだと考えています。
学校教育においては、どうしても教科、学問分野で分割して学習が行われることが多いのですが、先ほどの先生のご意見にもありましたとおり、芸術教科及び各教科の学習を通して多様な芸術を捉えることは、芸術や文化の本質とはどのようなことなのかを実感を伴いながら自分ごととして考えていくことになり、これからの社会に生きる児童生徒にとっては大切なことだと考えております。
一方、この17ページの1番下、米印の多様なメディアにあるとおり、漫画、アニメーション、映像等は、今の子供たちにとって身近であり親和性は高いと考えます。これらのメディアは教科横断的な学習においては有効であり、しかも抵抗なく学習活動ができるのではないかと考えます。そして、豊かな創造性を育む上でも効果的であると考えます。
一方、何のために多様なメディアを使うのか、何のための学習なのかを常に考えることがやはり大切であり、その意味でも教科目標はもとより、高次の資質・能力、見方・考え方をしっかりと位置づけていくことが重要になってくるのではないかなと考えています。
それから18ページですけれども、これは論点1にも関連すると思いますけれども、そこにある教育委員会、美術館、博物館、地域の作家等の地域社会や文化施設、専門的な人材等との連携や協働を深めること、そして教師の指導力向上のための研修会等の確保については、非常に大事なことだと考えています。学校現場の先生方が、ここの資料にもある、あるいは先ほど先生方のご発表にある活動をするといっても、なかなか難しいという面もあります。やはり、教育委員会等が仲介役となって、美術館やそれらの文化施設、地域の作家などの人材とつなげていくこと、そのようなシステムができていくことが非常に大切なのではないかなと思います。
最後に、55ページ等の高次の資質・能力の中学校美術の区分のところですけれども、これまで「身近な生活や社会と美術」となっていたところが「生活や社会と美術」となっており、中学校3年間の学びを考えると内容的にも合っているのかなと思っております。私からは以上です。
【大坪主査】 それでは次に道越委員、お願いいたします。
【道越委員】 私も17ページのご提案にあります多様な芸術や文化に関する学びの充実というところで、子供たちがやはり表現の多様性を実感する機会を充実させるというところが、すごく今後必要になってくると思います。もう当たり前のように、子供たちは先ほど「浴びるように」というお言葉がありましたけれども、今の子供たちは学んでいる、体感しているところだと思います。
ただ、学校に来て子供たちが授業の中で学ぶといったときに、多様なメディアに出会うことそのものが目的ではありませんし、伝統文化を学んでいくというよりも、先ほど先生がおっしゃってくださった、多様なメディアでどう学んでいくか、伝統文化でどう学んでいくかということがすごく重要になっていくのではないかなと思います。
現場の教員の目線で申し訳ないですけれども、やはり目の前に何十人といる子供たちがどういう子供たちであって、そこには地域の良さとか学校が抱える課題があると思うのですけれども、学校全体で目指している子供の姿ということがあると思います。逆に35時間しかない美術ではなくて、いろんな総合的な学習の時間など、いろんな教科横断的な中で、その子供たちがどういった地域社会の中で、あるいは日本の中でどういった人間になって活躍をしていくのか。そこを見ながら、メディアに出会わせたり、伝統文化に出会わせることによって子供たちが成長していく、そういったところまで教員が考えることが重要なのではないかなと思います。
そこが今回、高次の資質・能力というところで、一つ方向が示せたらいいなというふうに思いますし、表現することは生きることだと思いますので、子供たちがやはり「自分はどう生きたいのか」とか、「自分にとっての表現とは何をしたいのか、どう生きたいのか」ということを自分に問うような授業ができたらいいなというふうに思っております。
【大坪主査】 それでは次に大泉委員、お願いいたします。
【大泉委員】 私からはまず、資料の19ページ以降にお示しいただきました、教科等横断的な取組事例についてお話しします。具体的にお示しいただいて、実践をイメージすることができました。このことに関しまして、内容というよりも事例の示し方について少しお伝えしておきたいと思います。
特にこうした新しいことの事例を先生方が見る際、おそらく欠かせない視点としては二つのことがあるのではないかなと思います。
1つ目は、教科等横断をどのように教員がマネジメントしたのかという視点です。扱われた教科等の内容のみならずに、横断にあたって、例えば教員間の連携であるとか、授業時数の編成はどういうふうにマネジメントされたのかということが気になるかと思います。
2つ目は、さらにこちらのほうがより重大だと思いますし、すでに先生方もおっしゃっていますけれども、事例といういわばコンテンツを通して、どんな資質・能力、つまりコンピテンシーが育ったのかという視点であります。限られた紙面であることは承知していますし、今後こうした事例がどのように示されるか分かりませんが、今申し上げた2点も共に示す必要があり、かつて総合的な学習の時間の事例においても誤解が生じて、「それをすればよい」という状態になりがちになってしまうことは避けたいなと思いました。
2つ目ですが、16ページに現状や課題が示されていまして、中黒の2つ目に「すべての教科等において通底する創造の土壌となるよう」とあります。ここで言われている創造というのは、他教科等にも通底して存在する創造を意味しているかのように読み取れます。ここにおいて改めて、芸術教科が創造を目指す教科であることは確認済みなのですが、芸術教科が独自に育成する創造性とはどのようなものなのかを考えていきたいと思いました。
以前の会議でも発言しましたが、私見では、創造が持つとりわけ現代的な意味においては、問題解決と問題提起があると考えられます。問題解決としての創造は、他教科等でも例えば「探究」という考え方の下ですでに求められています。一方で、問題提起としての創造とは、必ずしも解決に直結しなくてもよい創造の側面でもありまして、ここが芸術教科、特に図画工作・美術科の教科性には必要な創造の意味、別の言い方をするならば、イノベーションであるとか創発を伴う創造であるということを、明確に位置づけていく必要があると思いました。
そのことによって、今論点になっている多様な芸術や文化に関する学びが、資料でも示されております子供たちがワクワクしながら多様な発想を生み出す深い学びを実現するための手段として機能するのではないかと考えました。
【大坪主査】 それでは次に藤井委員、お願いいたします。
【藤井委員】 これまで、委員の先生方が様々なご意見をおっしゃっておりましたが、私も多様な芸術や文化に関する学びの充実の方針に対し、全面的に賛同いたします。
岡本委員、森委員がおっしゃっていましたが、多様な芸術や文化の学びを通して子供に視点の転換を促し、視点を変える力、具体的には制作者、批評者の両方の視点を育むことが大切です。そのため、多様なメディアを通して何を学ぶのかについては発達段階を考慮する必要があり、授業の中では「問いの設定」が重要になると考えます。
表現方法として伝統的なメディアと現代のデジタル技術の活用、またそれらを組み合わせる方法もありますが、表現と鑑賞の授業の中で「造形的な見方・考え方を促す問い」を設定し、それぞれの特性や魅力、表現としての未来の可能性を追究していくことが求められると思います。
具体的には、授業の中で様々なアーティストの作品や表現を取り上げながら、美術の学びを生活や社会と繋げ、その作品や表現から何が見えるのか、作品がどのように構成されているのか、作品や表現が何を語っているのか等について学び、自ら考えるプロセスがが深い学びへとつながっていくのではないかと思います。
子供たちが様々なメディアの特性を捉え、それらが相互に補完し合って豊かな表現の世界を形成しているということを理解するためには、感覚的な気づきや表現のテクニックを育むとともに、表現に内包された意味を読み解くための「足がかり」を提供することも、具体的な指導内容や方法として有効であると考えます。
【大坪主査】 それではほかに図工・美術・工芸のご専門の先生方からご意見ございませんでしょうか。
それでは続きまして書道をご専門とされる委員の先生方、いかがでしょうか。加藤眞太朗委員、お願いいたします。
【加藤眞太朗委員】 よろしくお願いいたします。私は17ページに関することをまずお話しさせていただきます。
先ほど音楽で「不可逆性」という言葉を出していただきましたけれども、ここに関わる「一回性」という書の特質が紙面に定着した状態で鑑賞する、そして制作者が文字を書き進める過程を追体験しながら、自らの感性を働かせることで生じる感動が、書作品を鑑賞する際には存在すると考えています。
また18ページに示していただきました、時間性や運動性等の特質、特性に係る学習活動の充実、あるいは書道の特質、特性に焦点を当てた表現や発表、展示の方法を工夫する学習活動の充実、これにつきましては、これらを多様なメディアの機能を生かすという点で考えますと、美術教育ですでに行われているメタバースを活用した新しい鑑賞方法が効果的ではないかと考えています。
美術教育では、メタバース空間という仮想の美術館を作成し、そこに自らの作品を展示し、制作の意図を表示するだけでなく、鑑賞者が自由に感想を書き込めるスペースを作成したり、音楽や動画と組み合わせた展示が行われたりしています。書道教育においては、これまで作品を展示するだけにとどまっていたものを、その作品が制作される過程で生じる筆の動きや身体の動きを動画によって展示することにより、作品から感じる表現性、表現効果や風趣を、時間性や運動性の視点からより深く理解することが可能になると思われます。
また、どのような空間を作成するか、どのような順序で作品を展示し、展示全体でどのようなメッセージを伝えようとするのかについて考えさせることは、美術教育で行われているアートゲームをよりリアリティを持って実現できるのではないかと考えています。さらに、そうした活動にこそ論点1で示された地域社会や文化施設、専門的な人材等との連携や協働が効果的に発揮される学習場面になるのではないかと考えています。私からは以上になります。
【大坪主査】 では続いて加藤泰弘委員、お願いいたします。
【加藤泰弘委員】 私のほうからは2点、手短に申し上げます。
1つ目のほうは、本日も様々な美術や図画工作、音楽などから事例の報告がされておりますけれども、書という表現がやっぱり言葉や文字を扱うということがありますので、そういう総合的な芸術表現の中において、書の表現を生かしたり、他の芸術科目や国語科との連携を図ったりして、教科・科目を横断する取組の可能性というのが十分あるのではないかなというふうに思っております。また、様々な芸術、多様な芸術に学ぶということは、高等学校段階において芸術の広がりであるとか、それを学ぶことの意義や価値を考えることにもつながっていくという点があるかなというふうに思っています。
2つ目は、資料1の18ページに示されているとおり、今、加藤眞太朗委員からもお話があったところですけれども、書そのものの作品は造形芸術ですので、作品は美術と同じような姿として現れてまいりますけれども、その制作の過程というものは音楽のような運動性、時間性、一回性、そういったものを伴っているというところがございます。先ほどの加藤眞太朗委員と重なりますけれども、やはり筆が紙に接触する運筆の現場、そういったところを示していったり、身体の動きということもありますが、そういったことを合わせて作品とともに展示や発表をしていくというような取組の充実が、このメディアの機能を生かした活用として考えられるのではないかというふうに考えているところでございます。以上でございます。
【大坪主査】 本日予定されていた論点に関する議論につきましては以上となりますが、ここで事務局より、先日4月27日に開催された総則・評価特別部会を踏まえた報告事項があるとのことです。それでは事務局より報告をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 では、資料3をご覧いただけたらと思います。4月27日に開催されました総則・評価特別部会で議論をいただいております、学習指導要領総則における部活動、地域クラブ活動の取扱いにつきまして、こちらの資料でご説明をさせていただきます。
現行の中学校学習指導要領の記載でございますけれども、学校部活動につきましては、学校教育の一環として教育課程との関連が図られるように留意することといった記載がございます。次期学習指導要領におきましては、学校部活動の地域展開として、令和13年度までに原則として休日において学校部活動を地域クラブ活動に展開をしていく状況になっております。このような中で中学校におきまして、次期学習指導要領の実施要領の実施後は部活動と地域クラブ活動が併存する形でになることが想定されています。
このことを踏まえまして、改訂におきましては、部活動と部活動の地域展開により実施されます地域クラブ活動の双方について総則に記載をするということ、それから部活動につきましては意義、位置づけなどについて記載を維持しつつ、体罰や暴言、事故等の防止に関すること、また学校における働き方改革の推進に関する記載を充実していく。また、地域クラブ活動につきましては、新たにその位置づけや、学校との適切な連携等について記載するという方向性が議論され、了承されているという状況でございますので、ご報告を申し上げます。
それからもう1点でございます。資料の4でございます。芸術ワーキンググループも終盤に差し掛かってまいりました。芸術ワーキンググループの取りまとめ骨子案イメージとして、これまでの8回、本日も含めまして第9回までに概ねご意見をいただいている内容を踏まえまして、骨子案の中に記載をさせていただいているところでございます。今後より内容を充実させながら、次回の会議でより詳細にご議論いただきたいと考えております。
こちらのほうは資料のご提示のみで失礼させていただきます。ご報告については以上でございます。
【大坪主査】 それでは、本日予定された時間も迫ってまいりました。限られた時間でのご発言となりましたので、会議中に言い言い尽くせなかったことや追加のご意見などございましたら、5月28日木曜日頃までに事務局までメールにてお送りいただければと存じます。
なお、それから室長のほうから最後にございましたように、本ワーキンググループも回数があと1回となりまして、まとめを作成する段階におきましては、室長からご紹介ございましたようなまとめのイメージを基にして、そこの中に加えるべきことがございましたら、ぜひぜひ委員の皆様のご意見をいただきたいと願っております。最終的に主査が取りまとめるといたしましても、委員の皆様方のご意見を最大限いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは最後に次回の予定について、事務局よりお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】 次回は6月22日月曜日9時半からを予定しておりますが、正式には後日改めて事務局よりご連絡いたします。
【大坪主査】 それでは以上をもちまして、本日の芸術ワーキンググループを閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(代表)