令和8年3月24日(火曜日)13時00分~15時30分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【大坪主査】 定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループ(第7回)を開催いたします。皆様、大変お忙しい中、御出席くださり、誠にありがとうございます。
それではまず、事務局より委員の出席状況、配付資料の確認、その他留意事項があれば、説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 失礼いたします。本日は佐藤委員が御欠席となっております。その他17名の委員の皆様に御出席いただいております。
資料につきまして、議事次第に記載をしておりますとおり、資料1と参考資料がございます。そして、前回までと同様、対面会議で言うところの机上配付資料といたしまして、前回までの配付資料と、ワーキンググループにおける審議の御参考といたしまして、学習指導要領の本体・解説、関係する審議会の答申等をまとめた参考資料集を事前に別途お送りをさせていただいております。
また、会議の運営に関しまして1点お願いがございます。御発言の際は、挙手ボタンを押していただきまして、ミュートを解除していただいてから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
事務局からの説明は以上となります。
【大坪主査】 ありがとうございます。
では続きまして、事務局より議題について説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 続きまして、失礼いたします。資料1を御覧ください。芸術系教科・科目の資質・能力の育成について今回の議題とさせていただいております。論点が二つ、論点1として資質・能力の整理について、論点2として「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査等についてとさせていただいております。
まず、論点の一つ目、資質・能力の整理についてであります。こちらは枠内にございますように芸術系教科・科目の資質・能力として、知識及び技能と、思考力、判断力、表現力等、この二つの資質・能力の在り方につきまして、身体性や創造性を重視しつつ、学習指導要領の構造化の趣旨を踏まえ、どのように整理をすることができるかとさせていただいております。
次のページを御覧ください。現行の学習指導要領の整理でございます。学校教育法の第30条第2項等にございますように、基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を育むとともに、主体的に学習に取り組む態度を養うということが三つの柱として明記されております。この規定も踏まえつつ、現行の学習指導要領におきましては、何ができるようになるかということを重視するため、目標及び内容を資質・能力の観点から再整理をされたところでございます。
また、学習指導要領解説の総則編にございますように、知識及び技能を活用して課題を解決する過程につきまして、こちら参考にございますような三つの学習過程に分類されておるところでありますけれども、特に芸術系教科との関わりでは、思いや考えを基に構想し、意味や価値を創造していく過程、この分類を踏まえた上で、思考力、判断力、表現力等の育成について整理をしていくとされたところでございます。
次のページを御覧ください。4ページ目でございます。以上を踏まえまして、現行の学習指導要領の目標でございますけれども、小学校の音楽、図画工作、高等学校の芸術科書道をそれぞれ並べさせていただいております。知識及び技能と思考力、判断力、表現力等の目標について、特に知識及び技能について、音楽科におきましては、表したい音楽表現をするために必要な技能を身に付けると整理がされております。また、図画工作におきましては、材料や用具を使い、表し方などを工夫して創造的につくったり表したりする。また、書道につきましては、効果的に表現するための基礎的な技能を身に付ける、といった形で知識及び技能の目標が整理をされております。
また、思考力、判断力、表現力等につきましては、音楽につきまして、音楽表現を工夫すること、図画工作では、造形的なよさや美しさ、表したいこと、表し方などについて考え、創造的に発想や構想をすること、また、書道につきましては、意図に基づいて構想し、表現を工夫するといった目標の記述がございます。
5ページを御覧いただければと思います。このように現行学習指導要領におきましては、各教科等に共通する資質・能力の全体の整理を踏まえた上で、芸術系教科・科目の特色であります、身体を通して知性と感性を融合させながら捉えていくといった特性も重視しながら資質・能力を整理しております。
具体的には、歌唱・演奏するとか、つくる、書くといった表現に関することに関しましては、実際に体あるいは楽器、用具などを用いながら表出されるというものでありますので、知識及び技能において整理がなされ、思いや意図、発想や構想など思考・判断した過程や結果を言語活動を通じて表出していることについては、思考力、判断力、表現力等の資質・能力で整理をしているという形になっております。
また、図画工作、美術、工芸につきましては、表し方を工夫して表すといったような工夫することと表すということが技能において示されております。これは材料や用具、表し方を選んだり組み合わせたりするなど工夫して表すときには思考が働いている、思考を伴っているということで、この思考が頭の中にとどまらず、材料や用具を使って表すということにつながっていることから、これを一連の過程として捉え技能において整理しております。
このことを踏まえました上で、次期学習指導要領の資質・能力の整理についてとなります。6ページ目でございます。これまで芸術ワーキンググループを6回開催してまいりましたけれども、それぞれ委員の皆様の御専門の見地から、芸術系教科・科目の特性について御意見を頂戴してまいりました。とりわけ身体性や創造性の重要性につきましても、御発言を多くの委員の皆様から頂戴したところでございます。
例えば一つ目のポツでありますけれども、芸術系教科では実際本物に触れる教科特性があるということで身体性が重要であるといったこととか、四つ目のところでありますけれども、思いや意図をもつことは当然だが、それをどのように形にできるかは技能が必要であるといったこと、あるいは創造性では、身体も使いながら自分自身にとっての意味や価値をつくりだすことが重要であるといった創造性に関することであります。
このように創造性をこれまで以上に豊かにしていくことは非常に重要なことでありまして、これからの社会を創り出す子供たちに必要な資質・能力ということで整理をしていくということが重要になってまいります。また、AIがより一層進化をしていくというこれからの時代におきましては、身体性を基本とする人間の本来的な能力としての技能の位置付けというものがより一層重要となってまいります。
こういった中におきまして、芸術系教科の特性でございます問いやテーマ、答えを自分でつくり出していくという学習、このようなことについて学校教育において芸術教育が大きな役割を担っているというところで、その役割がより一層重要になるという観点から、これからの学習指導要領におきましては資質・能力を整理していくということが重要ではないかと考えております。
なお、2月2日に開催されました教育課程企画特別部会の方からも、資質・能力の構造化を踏まえた更なる検討の方向性ということで、次のページに参りますけれども、こちら枠囲みにございますような、資質・能力の整理に関連しまして、本質的なところで共通している必要があるのではないかといったような指摘もいただいているところでございます。
次期学習指導要領におきましては、大きな方向性として示されております学習指導要領の構造化も踏まえまして、知識や技能、思考力、判断力、表現力等を育成するとともに、深い学びを授業で具現化をしていくことが求められてまいります。
このようなことも踏まえまして、今後の芸術系教科・科目における資質・能力の在り方といたしまして、現状の課題を踏まえ、基礎的・基本的な知識及び技能を確実に身に付けさせるようにすることと、それらを活用して思考力、判断力、表現力等を育んでいくこと、これは構造化の関係で言うと横の関係ということになりますけれども、それぞれ横の関係で往還しながら、縦の関係になってまいりますけれども、未知の状況に対応できる思考力、判断力、表現力等を育むということと、知識及び技能に関しましても、生きて働く知識及び技能を習得していくということが重要になってくるのではないかと考えております。
具体的には、今後の芸術系教科・科目における技能につきましては、一定の手順や段階を追って身に付く個別の技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能ということで習熟・熟達していくということが重要ではないかと考えております。また、児童生徒自身が自分の思いや考えをもつことができるということと、実際にその思いや考えを技能を活用して表現できるところまでもしっかり整理をしていくことが重要ではないかとも考えているところでございます。
以上を踏まえまして、今後の方向性の案といたしまして、8ページ目を御覧いただけたらと思います。まず、音楽でございます。現状の課題ということで、例えば、工夫する(思いや意図をもつ)場面と、思いや意図に合った表現をするための技能を習得する場面が本来一体的に行われるべきであるにもかかわらず、別々に位置付けられることが多く、学習の流れに即していないといった課題がございます。また、表現を工夫し思いや意図をもつ場面では、言語化はするものの実際の歌唱や演奏につながっていなかったり、学習が深まっていなかったりといった課題が見られるところでございます。
このようなことも踏まえつつ、改善の方向性といたしまして、習得した技能を生かして表現する、このプロセス全体を思考力、判断力、表現力等として一体化をするということで学びの深まりにつなげていけないかといったところでございます。具体的には、下の表の改善案の思考力、判断力、表現力等のところを御覧いただければと思います。音楽表現についての、思いや意図をもって表現したりといったような、例えばこのような目標の整理をしてはどうかというところでございます。
次のページ、9ページを御覧いただけたらと思います。図画工作、美術、工芸であります。現状の課題ということで、意味や価値を創造していく過程において、発想や構想することと工夫して表すことが別々の資質・能力に位置付けられており、学習過程(子供が思考しながら表現するまでの流れ)では連続をしておりますけれども、これらが異なる資質・能力として捉えられているというところがある意味課題としても考えられ得るのではないかというところでございます。
改善の方向性といたしまして、発想や構想したことを工夫して表現する、このプロセス全体を思考力、判断力、表現力等として一体的に示すということで学びの深まりにつなげていけるのではないかということ。また、今回資質・能力の構造化ということになってまいりますけれども、この構造化の中で、他の学習や生活の場面でも活用できる技能まで高めていけるような、そのような技能を習得できるように学習の深まりを示していくということと、技能を身に付けることと発想や構想したことを工夫して表現するということが別個に働くのではなくて、これも構造化の横の関係にはなろうかと思いますが、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等が往還しながら一体的に育成されるということを示していくことがあり得るのではないかというところです。
具体的な改善案といたしましては、この右下のところでありますけれども、思考力、判断力、表現力等といたしまして、造形的なよさや美しさ、表したいこと、表した方の工夫などについて考え、創造的に表現したりといったような形で整理をするということが考えられるのではないかというところでございます。
最後に、書道でございます。現状の課題であります。技能におきまして、身体性を伴う表現活動の中で発揮・育成される技能の成果である表現まで位置付けておりますけれども、一方で思考力、判断力、表現力等の表現力といいますのが、言語活動により表現される力ということで整理をされております。これらによりまして、思考力、判断力、表現力等と、それから身体性を伴う表現力の捉え方が不明瞭であるという点が課題として見られるというところでございます。
改善の方向性であります。構想・工夫して書作品として表現するプロセス全体を、思考力、判断力、表現力等として一体的に示すということと、技能につきましても、その位置付けがより高まって深められていくようなところまで明確に示していけたらというところで整理してはどうかというところでございます。
具体的には、改善案の思考力、判断力、表現力等のところを御覧いただきますと、書の伝統と文化の意味で価値について考え、構想し工夫することにより、効果的、創造的に表現したりといった整理はあり得るのではないかと御提案させていただくところでございます。
11ページ以降につきましては、小学校、中学校、高等学校の芸術系教科・科目の目標について、先ほど申し上げましたような整理の仕方で、それぞれ整理したときにどのような形になるかというものをお示ししております。
20ページ目からは、学習指導要領の内容の構造化で、今回縦横の表のようなものを整理しておりますけれども、その形に例えば高次の資質・能力と個別の資質・能力に芸術系教科・科目を当てはめてみた場合のイメージを掲載しております。先ほど申し上げたような形で基本的な形で整理した場合というところでございます。以上が論点の一つ目でございます。
続きまして、論点の二つ目に入らせていただきます。資料の34ページ目でございます。「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査等についてです。
1枚おめくりいただきまして、35ページ目、各ワーキンググループにおいて求められる資質・能力の構造化に関する更なる検討ということで、2月2日に開催されました教育課程企画特別部会から、更なる検討の方向性(案)が示されております。そこではこちらの7項目が示されております。本日のワーキンググループにおきましては、この上の三つのところを御検討いただけたらと存じます。
特に上の丸1、丸2に関しましては、後ろの43ページ以降の資料の方に掲載もしておりますけれども、これまで委員の皆様に御確認をいただいてまいりました目標と内容、見方・考え方、これらにつきまして、特にこの高次の資質・能力につきましては、教師にとってより分かりやすくシンプルに示すということと、個別の資質・能力の関わりで深まりをもって示していくということが求められております。そのような観点から、より分かりやすくという観点で記述の更新を加えさせていただき、黄色のマーカーでハイライトした部分としてお示ししております。現時点の最新版ということでございますけれども、こちらに関しまして御確認をいただきまして、何かございましたら御意見を頂戴できればと存じます。
それともう一つが、丸3に関連いたしましてでありますけれども、「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査でございます。こちらは今回新しい学習指導要領では、学習指導要領の構造化ということで、より深い学びを実現するということをその大きな方向性としてございますが、実際に学習指導要領の教える内容が多くなり過ぎた場合には、なかなか深まりのある指導まで行かないのではないかというところで、深い学びを実現するという観点でも、十分余白をもてるかどうかという観点からの内容の精選が今回各ワーキンググループの方に検討を要請されております。この観点が一つ目です。
もう一つが、多様性の包摂という観点から、新たに義務教育段階におきまして調整授業時数制度が創設される見通しとなっております。この調整授業時数制度では、特定の教科の授業時数を別の教科の時間に充てるというようなことが可能になってくるわけでありますけれども、その時数の調整が行われた後でも、学習指導要領に示す内容を全て取り扱うことができるように精選が必要ではないかということで検討の要請が参っております。
大きくこの二つの視点からというところになりますけれども、一方で芸術系教科の特性として、歌唱・器楽の活動、あるいは絵や立体・工作に表す活動、書道の活動という活動におきまして、題材を繰り返しながら資質・能力の確実な定着を図り深い学びを実現していくという、この題材を繰り返すというところが大きな特色となっております。その観点から、学校における指導計画の作成段階におきまして、児童生徒の実態を踏まえて目標の達成に支障のない範囲で、設定する題材における既習の内容を調整するといった形で、学校の実態に応じた題材構成の工夫を行うことが現状でも可能となっております。このような、学校の裁量で可能であるというところも踏まえつつも、新しい学習指導要領の内容の精査ということを考えていけたらともさせていただいているところでございます。
具体的な方向性といたしましては、次のページを御覧いただけたらと思います。精査の例ということであります。まず、音楽でございます。音楽科につきましては、今回小学校でありますけれども、歌唱と器楽、それぞれ分野が現状では別になっておりますけれども、これを歌唱・器楽で一つの区分に統合するという方向で現在進めていただいております。この歌唱・器楽を一つの区分にする中で指導事項も精査をするということで、例えば現状、歌唱と器楽で同一の曲を扱う場合にもそれぞれ別の指導を行うということも行われておるわけでありますけれども、このようなところを併せて指導することも、柔軟性をもたせた指導ということでこれから可能になってくるのではないかというところで、そういったところを通じて余白も生み出せるのではないかという、これが1点目であります。
それから2点目であります。知識及び技能ということで現在、指導事項を別々に示しておりますけれども、事項によっては親和性の高いものにつきましてはこれを一文で示すということで、焦点化した効果的な指導につながってくるものもあるのではないか。例えば実際に音を合わせるように演奏しながら、楽器の音色と演奏の仕方の関わりについて、これは知識の学習でありますけれども、この理解するという学習を併せて行うということで、限られた時間の中でも効果的に指導ができるのではないかといったようなところ。
あるいは、3点目でありますけれども、具体性の高い記述につきましては、内容の取扱いに移行することによりまして、学校の裁量の幅を広げていくといったことも余白につながっていくのではないか。例えばこのような方向性が考えられるのではないかというところでございます。
続きまして、図画工作、美術、工芸であります。図画工作の例でありますが、造形遊びの活動と、それから絵や立体、工作に表す活動ということで、現在活動に分かれてそれぞれ技能が示されているということになります。今後この技能につきましては、統一した文言で示すことができれば、例えば粘土を材料とした活動で身に付けた技能が造形遊びと絵や立体、工作、とりわけ工作の活動というところで共通する技能がある場合には、児童によっては個別最適な指導が可能になるような、そういったところで余白を生み出していけるのではないかというところであります。
2点目が観賞の技能というものを今回位置付けるというところであります。鑑賞の技能を明確に規定するということで、指導上、鑑賞指導全体を通じまして、焦点化した効果的な指導につなげられるのではないかといったところ。
最後に、書道であります。書道につきましては、漢字の書、漢字仮名交じりの書、仮名の書という三つの書、それから鑑賞ということで、それぞれ書と鑑賞と位置付いております。その中で字形とか文字の大きさとか全体の構成といった書を構成する要素が、それぞれの書ごとに現在示されているところでありますが、これらを〔共通事項〕として書を構成する要素の働きという形でまとめて示すことによって、それぞれの書の取扱い方のところに少し柔軟性をもたせることができるのではないかといったようなところ。
あるいは、鑑賞の技能につきましては、先ほどの図画工作、美術、工芸とも同様な考え方で観賞指導全体を通じて余白を生み出すということにもつながっていくのではないかといった、このような方向性で芸術系教科・科目、小・中・高等学校それぞれの精査のイメージというものを、59ページ以降のところにそれぞれお示しさせていただいています。こちらにつきましても、何らかこの構成につきましても、先生方の方から専門的な御知見などを頂戴できましたらと考えているところでございます。
私の方からの御説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
【大坪主査】 ありがとうございました。事務局からの説明のとおり、前回の芸術ワーキンググループで報告がありました教育課程企画特別部会で示された検討の方向性案を踏まえて、今回、芸術系教科・科目の資質・能力の整理並びに「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査等について検討してまいります。
それでは、論点1、2につきまして、委員の皆様に御議論いただければと思います。音楽、図画工作・美術・工芸、書道の順に区切らせていただき、先生方の御専門・御所属などの見地から御意見をいただきたいと考えております。途中、音楽に関わる意見交換の後、5分間の休憩を挟む予定です。
今回、教科の専門的・具体的な内容に関わることから、音楽に関わる意見交換の時間については、齊藤主査代理に進行をお願いしたいと思います。齊藤主査代理、よろしくお願いいたします。
【齊藤主査代理】 それでは、お願いいたします。音楽に関わる意見交換について、私の方で進行を務めさせていただきます。では、音楽に関わり、資質・能力の整理及び高次の資質・能力を踏まえた個別の資質・能力の精査等について、委員の皆様の御専門・御所属などの見地から御発言をいただければと思います。
御発言のある委員の先生方におかれましては、挙手ボタンを押して御発言をお願いいたします。御発言はお一人5分程度ということでお願いいたします。
それでは、音楽の関係は2時ぐらいを目標にということでありますので、活発に御意見いただけたらと思います。いかがでしょうか。山内先生、お願いします。
【山内委員】 ありがとうございます。それでは、私の方からお話をさせていただきます。まず、御説明ありがとうございました。大分整理をされてきたのかなと思っております。
8ページを御覧いただければと思うのですけれども、現状と課題と、あと、改善の方向性があるかと思います。この改善の方向性のポツの一つ目のところに、「習得した技能を生かして工夫するプロセス全体を思考力、判断力、表現力等として一体化することで」とお示しいただきました。これまでの議論を踏まえると、このような方向になるのだろうと思っています。
ただ、実際の授業の場面を考えてみますと、習得した知識・技能を生かして表現を工夫するということだけではなくて、表現を工夫することから必要となる知識・技能に子供たちが気付くというところもあるのではないかと思っております。まさにそこを横の関係として、思考力、判断力、表現力等と知識及び技能を往還していく授業が推進され、それで深い学び、学びの深まりにつなげていくということになるのだろうと認識をしているところでございます。
その際にポイントとなると思われるのが、この記載にある1段目の後段にある表現の工夫の具体化というところが非常に重要になるのではないかと思っています。音楽では、主に音を媒体として学習することから、表現を工夫したことが具体的にどのように音で表現されるのかというところが重要になるだろうと捉えています。
これまでの授業では、課題にもございましたけれども、児童生徒が思いや意図をもって工夫する場面を設けて考えても、どう表現したらよいかまでは指導されず、音として表出されるまでに至ってないという授業が見られることもございました。そういう点からも、表現の工夫の具体化というのがキーワードとしては重要になると考えているところでございます。
また、表現の工夫を具体化するためには、既習の知識や技能が必要となることから、この点を大切にすることで、音楽科における学習及び指導の課題でもありました、学習の積み上げということも期待できるのではないかと考えているところでございます。
なお、実際の授業では、思考力、判断力、表現力等の、いわゆる思いや意図をもつ場面とそれを表現する場面を、場合によっては段階的に指導・評価していくということも出てくるだろうと思われますので、これにつきましては今後、学習評価との関わりの中で検討していく必要があると考えております。
そういう点から考えますと、改善の方向性の「習得した技能を生かして」というところですが、今日の議論の中では流れとして技能についての整理をしていると思うのですが、これをぱっと見たときに、知識及び技能という知識の部分も最終的には入ってくるのかなというふうなところが印象としてはあるところでございます。
続きまして、12ページの中学校音楽科の目標の見直しについてです。高等学校の方も同じ部分があるのですけれども、12ページで御説明いたします。今回、右側の改善案のところに目標としてそれぞれお示しをしていただいて、ハイライトの部分を表記してもらいましたけれども、この三つにそれぞれに創造的というところが入ってございます。思考力、判断力、表現力等のところにも「創造的に」というものが入ってまいりましたので、この三つに全て入ったときに、この創造的という言葉はとても大事だとこれまで議論されてきたと思うのですが、そこが少しぼやけてしまわないかというふうな印象がございました。その点を今後改めて整理をしていく必要があるだろうと考えてございます。
私からは以上でございます。
【齊藤主査代理】 ありがとうございました。それでは続いて、水戸委員、お願いいたします。
【水戸委員】 よろしくお願いします。今回、音楽の文章の至るところに出てきている知覚と感受という言葉に関して、その意味をちょっと整理するという意味で発言させていただきたいと思います。
ここのところ、音楽のほかの委員の意見も聞きつつ、この知覚・感受というのがいわゆるどういう認知的な過程なのかというのを考える機会に恵まれました。それで、特にこれを技能の中に位置付けるに当たっては、かなり明確にこの知覚・感受という言葉を定義しなくてはいけないと思いましたので、ちょっと細かい話になりますが、この点について述べさせていただきたいと思います。
まず、知覚・感受を技能の中に位置付けるに当たって、技能とは何かということについて考えてみたいと思いました。技能というのは、やはり「深まる」「上達する」「熟達する」、「発達する」「洗練する」といったレベルの変化が見られるということがまずは前提になるのではないかと考えています。したがって、知覚や感受を技能として捉えるのであれば、これらの認知的な活動における熟達や発達の姿が明確に見える必要があります。言葉を換えれば、明確に見えるような定義がちゃんと我々の中になければいけないのではないかと思います。
そういったことを前提として、音楽における知覚と感受の認知プロセスを考えると、音楽の聴き方というのは、まず要素を感覚として聴き取るということ。それからその次に、それに基づいて意味や働きを解釈して、それをベースとして情動反応が起こるというような連続的な過程として説明できるのではないかと思っています。この前半部分を知覚と位置付けて、後半部分を感受として位置付けることができるのではないかと思います。
このように整理すると、まず知覚に関しては、音を適切に聴き取る能力というふうに、ちょっと狭いかもしれないですが、そういうふうに考えると、その精度や範囲が学習によって向上することから、熟達とか発達といったレベルの変化を見いだすことができると思います。
次に感受についてですが、この言葉を、知覚した情報を自分の過去の経験と結び付けて、音の働きを直観的に解釈することというふうに位置付けると、これもまた、経験の蓄積によって深まる能力として、技能として捉えることができるのではないかと思います。ただし、この感受という言葉は、情動の喚起といった情動の側面も含むため、どうしても主観的な感覚というイメージが拭えないので、技能として扱うことに違和感を覚える場合もあるかもしれません。しかし、これを過去の経験に基づいて音の働きを解釈する能力というふうに再整理することで、様々な様式の音楽を深く聴き込む経験によって発達していく力と捉えることもできるのではないかと思いました。
一方で、感受に伴う情動反動をどの範囲まで含めて考えるかというのは、慎重に検討する必要があると思います。例えば音楽の分野ではよく使う言葉ですが、ある音が緊張関係を生んで、それが解決するとか、ある音の出現が意外性を持って感じられるとかといった、音そのものの構造の中に内在する意味に限定するのか、それとも、ある音の動きから悲しみを感じるとか、喜びを感じるとか、怒りを感じるとかというような関連的意味まで広げるのかによって、感受を技能として説明できるかどうかということの難易度は変わってくるのではないかと思います。
最後に、知覚と感受というのは、切離しが難しい連続的な認知プロセスとして今まで説明したのですが、音の物理的特性を聴き取る知覚とそれから生じる情動反応(感受)は、実際には時間的に明確に分離して起こるものではなくて一体として生起するので、両者を理論的に余り整理し過ぎると、実際の音楽の聴き方からは離れてしまう危険性もあることを意識していかないといけないと思いました。
以上です。
【齊藤主査代理】 ありがとうございました。では続いて、山下委員、お願いいたします。
【山下委員】 山下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日お示しいただいている資料1には黄色いハイライトが多く付けられていて、企画特別部会での御議論を受けて高次の資質・能力と個別の資質・能力との関係を丁寧に再整理してくださったことがひしひしと伝わってまいりました。従前のものと比べますとかなり思い切った変更点もあると承知しておりますが、御説明を受けまして、全体的に合理的な変更になっているという印象を持っております。本日私からは、論点1と論点2それぞれについて1点ずつ意見を申し上げたいと思います。
まず、1点目は、論点2の個別の資質・能力についてです。資料1の59ページを御共有いただけますでしょうか。ここでは、左側に小学校音楽科の現行の構成が、右側に改善案が示されております。下の方の〔共通事項〕の部分を比較していただくとお分かりのとおり、今回初めて〔共通事項〕の技能として、音楽を形づくっている要素を知覚し、それらの働きを感受することが示されております。これは鑑賞領域にも技能の事項が示されたということを意味しておりまして、画期的な変更であると考えております。
他方、60ページに示された中学校の改善案には、これに対応する〔共通事項〕として、音楽を形づくっている要素やその働きを諸感覚で捉えることが示されています。ここではこれまでに定着してきた「知覚・感受」という言葉が消えておりまして、小学校との不一致が生じております。このことについて私は最初戸惑いましたけれども、熟考の結果、これを前向きに捉えたいと考えるに至りましたので、その経緯をお話しできればと思います。
学習指導要領では、これまで聴覚を中心とした感覚器官を通して音や音楽を判別し意識することを知覚と称し、音や音楽の特質や雰囲気など感じ受け入れることを感受と称してきました。そして、知覚と感受は本来一体的な関係にありますが、両者の関わりを理解することが重要であると説明されてきました。例えば音楽を聴いて「何だか追い掛けられているような感じがしたのは、だんだん強くなるのと同時にだんだん速くなっているから」というように、音楽とそこから生じた情動とを結び付けることが大切とされてきたわけです。
しかし、音楽活動、特に鑑賞活動に伴って生じる情動には、これとは異なる種類のものもあり得ます。先ほど水戸委員もおっしゃいましたが、音楽の構造の中に情動を感じるということです。例えば人は音楽を聴くときに、意識的であれ無意識的であれ、次に来る音や音楽を期待しながら聴いていることがあるわけですが、往々にして実際の展開はそれとずれが起こります。その結果として、聴き手の内部に満足あるいは不満足といった情動が生じます。音楽鑑賞においてこの種の情動が生じるには、既に身に付けた知識を呼び起こし、音楽を予期しながら聴くという高度な鑑賞の技能が必要になりますが、これは音楽の構造と情動とを結び付ける意味で重要な資質・能力の一つであると言えると思います。
話を〔共通事項〕の技能に戻して考えますと、小学校では音楽を形づくっている要素の働きや情動を音楽外的なものになぞらえて意味付けるというような活動が多く行われてきていますので、知覚・感受という言葉が適していると思われます。これに対して中学校では、音楽を予期しながら聴くというような、音楽の構造から生じる情動を視野に入れて技能を再整理するのであれば、「音楽を形づくっている要素やその働きを諸感覚で捉えること」という文言が適しているとも思われ、今回の御提案にある文言の不一致は、発達を考慮したことによる結果であると考えるに至りました。以上のことから、今回お示しいただいた音楽科における〔共通事項〕の議論の改善案は、まだ検討の余地はあると思うものの、前向きに支持したいと考えております。
それから2点目として、順序が逆になって恐縮ですが、論点1に関することを述べさせていただきます。資料1の16ページを御共有いただけますでしょうか。高等学校芸術科音楽Iにおける思考力、判断力、表現力等の目標、「自己のイメージに基づいた音楽表現について考え」についてです。高校生ともなりますと既に豊かなイメージが身に付いていると考えられますが、自己のイメージというものは本来固定的なものではなくて、音楽活動に伴ってその都度形成されるものであると思われます。そのため、自己のイメージありきで考えるというよりも、考えることとイメージを持つことが並行して生じるような文言にしていただけるとより分かりやすくなるように思いました。
以上です。よろしくお願いいたします。
【齊藤主査代理】 ありがとうございました。では続きまして、いかがでしょうか。
稲委員、お願いいたします。
【稲委員】 稲でございます。よろしくお願いします。私は本日の資料を拝見して、教科の目標や高次の資質・能力の示し方など、分かりやすさ、シンプルさに御配慮いただいているというふうに感じました。ありがとうございます。
特に20ページからの資質・能力の一体的育成の可視化の図が、これまでの同じ意味の図に比べてとても分かりやすくなったと私は感じています。このように個別の知識や技能の1階部分と高次の資質・能力の2階部分を同じ線の太さで同じようにつないでいただいた方が、ここに示された全体を授業で私たちは取り扱うのだということを視覚的に理解できたように思います。
私から2点お話しさせていただきます。初めに、論点1の目標と、そして育成すべき資質・能力の関係についてです。資料1の11ページの目標の見直しのところを映していただけますでしょうか。現在示されている目標の案については、分かりやすさ、シンプルさという点で大変考えられていると思うのですが、分かりやすさという意味で、高次の資質・能力で示している内容を表現というか文言として目標に含めなくてよいのかということを考えました。
気になったのは、今映していただいている小学校の思考力、判断力、表現力等の目標です。思考力、判断力、表現力等の方の目標には、音楽表現についての思いや意図を持って表現したり、音楽を味わって聴いたりすることができるようにするというふうになっていて、これは、このページじゃないんですけれども、個別の知識や技能で示されている内容とほぼ同じに見えます。一方、知識及び技能を見ると、目標に「発想豊かに」というものが入っていて、これは個別の資質・能力に示されている内容からは読み取れないので、この部分が高次の資質・能力に当たるのかな、深い学びに当たるのかなと考えました。
同様に、中学校や高等学校の思考力、判断力、表現力等を見ていくと、中学校の目標には、先ほどもお話がありましたが、「創造的に表現したり、価値を見いだしながら」という文言が入っていて、高校の音楽Iの目標には「創造的に表現すること」という文言が入っており、この部分が高次の資質・能力に対応するのかなというふうに読み取りました。よって、小学校の思考力、判断力、表現力等の目標にも、高次の資質・能力として示されている「音楽が持つ価値を考え」を入れた方がよいのではないかと考えました。もちろん発達段階は考慮しなくてはならないと思うので、中学校は「価値を見いだし」なので、小学校は「価値を考え」ではどうかという意見です。
次に、論点2の方向性として、37ページに工夫のための余白を作るということと精査の方向性を示していただいています。38ページに示されている精査の例は、直接的に余白を作るということよりも、これは当然なのですけれども、指導が効果的に行われるように内容を整理し、かつ指導すべき内容が先生方にとって分かりやすく示されることにより、結果、限られた時間の中でも効果的に柔軟に指導ができるようになるということを目指していると思います。このページが改善される課題もセットで示していただいて、本当に分かりやすいと思いました。
この点について、余白に繋がるかという点については、今後全体を見渡して、きちんと余白を作ることに繋がっているかどうか確認したいと思いました。指導事項の量を減らしてほしいというわけでもないですし、実際の教科書がどうなるかということも影響が大きいところですけれども、特に小中学校では音楽科を全員学びますので、今回の改訂においても、子供たちにとって音楽科を学ぶことの意味がどこにあるのか、何を目指すのかという視点からぶれずに、きちんと余白が生まれる精査を行う必要があると考えています。後半、ちょっと印象のようなお話になって失礼しました。
以上です。
【齊藤主査代理】 ありがとうございました。では続きまして、原委員、お願いいたします。
【原委員】 失礼いたします。原でございます。よろしくお願いいたします。
今、委員の皆様がおっしゃったように、随分改善を進めていただいて大変ありがたいなと思っています。私は、学校現場で実践を頑張っておられる先生方の授業がどう変わるかとか、授業がどう変わればいいかということを捉えていただくにはどうしたらいいのかなということを中心にお話をしていきたいなと思っています。
まず、論点1に関してです。資料の6ページと7ページを踏まえた上で、これまでの委員の皆様、私も含めた皆様の様々な意見がございましたけれども、それを取り入れていただいて改善が進んでいるなと思っています。特に7ページの二つ目と三つ目の点については、随分論議をしてきたので、その点が特に深まっているのではないかなと思っています。三つ目の技能についてというところで、本日も先ほど委員の皆様からも御意見がありましたけれども、技能をどう捉えていくかということについては、これからも丁寧に説明をしけなればならないと思っています。ただ、自分の思いや考えを持つということにとどまらずに、それを表現に生かしていくというような知識及び技能と、それから思考力、判断力、表現力等を一体的に捉えるということについては随分論議をしてきているので、そこの点は私も賛同いたします。
ただ、目標を見てみますと、11ページに小学校、それから12ページに中学校をお示しいただいておりまして、稲委員からもありましたけれども、義務教育9年間を考えたときに、ここのつながりをどう先生方が捉えていくかということを危惧します。例えば思考力、判断力、表現力等の点になりますと、音楽表現について、中学校は「考え」になっていますが、小学校は「音楽表現についての思いや意図をもって」となっています。恐らく「思いや意図をもって」の中にもということが含まれている表記になっている、示し方になっていると思います。また、次に進んでいきますと、小学校は「表現したり」なのですが、中学校になると「創造的に表現したり」となっておりまして、そこのつながりを義務教育9年間でどう捉えていけばいいのかということが分かるようにしていきたいなと思ったところです。そのためには、どこまでを目標に示して、どこからを事項に移すのか、また、内容的には内容の取扱いに移すということもございますので、そこをどう今から整理していくかということが大事になってくるかなというのが論点1に対する意見です。
続きまして、論点2について述べたいと思います。論点2についても随分進んできたなと考えているのですけれども、38ページをお示しいただいてよろしいでしょうか。38ページに示されました精査の例を見ると、現在、様々な学校で実践を積み上げられていらっしゃる先生方の課題又は状況を踏まえたものとして示されているなと感じています。その点からすると、現場での授業実践に寄せて説明や言葉の用い方等をしていく必要もあるのではないかと考えています。
様々な学問体系から、先ほど出ました知覚・感受についても、認知心理学とか脳科学という学問体系からすると様々な捉えがあるかと思いますけれども、それらを踏まえた上で、現行の学習指導要領でも定義をしているのではないかと思っています。知覚・感受ということを学習指導要領でどう定義付けしていくのか、現場の先生方が実践されていることからも考えていく必要があるのかなと思っていますが、理解がなかなか進んでいない不十分な点があるのであれば今後も丁寧に説明していく必要があります。こういう実践をしていくことが大事ですよねというような具体例を示しながらの説明も必要になってくるのではないかなと思っています。
38ページに示してある一番下の方、改善例で「範唱を聴いたり、ハ長調及びイ短調の楽譜を見たりして」という部分を技能として捉えていくのですけれども、内容の取扱いに「ハ長調及びイ短調の楽譜を見たりして」というのは移していきましょうというような、こういうことも大変分かりやすい説明になっているので、実践を思い浮かべながら示していくことが必要になってくるのではないかと思っています。
43ページをお示しいただいてよろしいでしょうか。43ページ、小学校に知覚・感受という言葉が出てきました。これまで聴き取り・感じ取りということを知覚・感受にしていただいています。これはやはり中学校とのつながり、義務教育9年間ということを考えて、今実践されている先生方もこの知覚・感受ということを大事にされていますので、その点を入れていただいたのは大変ありがたいなと思っています。また、整理の仕方が、1行目に「音や音楽について知覚し感受したことをよりどころにして思考を巡らせ」ということが、どの領域、項目にも入っています。さらに、文末、音楽作りも「音楽表現を深めることができる」、鑑賞にも「音楽を聴き深める」という、このような文章の形態、取り入れ方、構成についても大変分かりやすく伝わっていくのではないかなと思っています。
あとは、右側にお示ししています資質・能力については、これからも実践とつなげながら精査していきたいなと考えています。
以上でございます。失礼しました。
【齊藤主査代理】 ありがとうございました。音楽の先生方、まだ補足等がありましたら、いかがでしょう。若干時間がありますが、よろしいでしょうか。
それでは、私の方から少しお話をさせていただきます。今回事務局の方で御提案いただきました内容につきまして、丁寧にまとめていただきまして、また、現行とは少し違う点なども含めて、よりよい音楽科の授業の在り方について展望していただきまして、ありがたいなと思っております。
論点1の7ページのところを御覧ください。これは今、原委員からも前半の方でお話しいただきましたが、特にこの黒丸の3点目の「具体的には」というところ、技能についての考え方について、思考力、判断力、表現力等のところにおいての表現という文言が入ってくるわけですが、この点につきましては、今、音楽系の委員の皆様からは、この方向でということで肯定的な御発言が多かったように思います。私も、新しい方向性として、今回のこの方向性につきましては、是非丁寧にこれを説明できるようにして進めていただくことがありがたいかなと思っております。
続いて、論点2につきましてですが、38ページを御覧ください。38ページの音楽の黒丸のところの二つ目、下線を引いていただいていますが、「技能と知識を統合して一文で示すことにより、焦点化した効果的な指導を行うことができるよう」ということで、今回スリム化ということでこういう方法でお示しいただくとともに、技能と知識は一体であるということも強調できるような気がいたします。
ただ、具体的に、今度は59ページ、60ページを御覧ください。小学校の改善案、そして中学校の改善案の方を御覧いただきまして、中学校の改善の方でお話をしますと、そこで知識及び技能の項目を見ますと、文末が「理解すること」とまとめてあります。前半の方が技能ということで、後半の方が理解、知識の方になっているのですが、これをぱっと見たときに、「理解すること」という文言が多くなっていますので、今までの学習指導要領と比べると、知的なところに焦点化されているような印象を受けることやら、あと、高次の資質・能力のところの理解ということとは異なります。もうちょっと音楽科としてすっきりとまとめることができないかなと思ったりもします。
例えば、知識及び技能のところを一体で考えていくということになるならば、知識及び技能を関連付けながら、具体的に次の事項というのは例えばアとかイとかで示して、現行の学習指導要領の(ア)、(イ)がありますけれども、こういうものを示して、技能と知識を一体化して整理したらどうかなということも考えられるかもしれないと思っておりますが、これは一つのアイデアとしてお話をさせていただきました。
最後にもう1点ですけれども、知覚と感受につきましては、今日最初に水戸委員からお話をいただき、そして続いて山下委員からもお話をいただき、皆様からもお話をいただきましたが、なかなかこの知覚・感受は、考えれば考えるほど難しい内容も含むかなと思います。
それで今回の59ページ、そして60ページのところに、知覚・感受のところ、これもぱっと見た改善案のところを拝見させていただいたときに、59ページ、小学校のところでは〔共通事項〕に知覚と感受という言葉が出てきます。そして60ページのところでは、今度はそれに該当するところは、それらの働きを諸感覚で捉えることということで、これにつきましては、山下委員からも、子供たちの発達の段階からこのように中学校では変えることもあり得るかなということでお話をいただきました。
確かにそうだなと思いつつ、これを例えば小学校の先生、中学校の先生がぱっと並べて見たときに、印象で申し訳ないのですが、中学校の方がひょっとしたら分かりやすさが出て、諸感覚で捉えることというのはある意味ではかなり広い概念としても捉えられます。小学校の先生は、特に担任の先生が音楽の授業を担当することも多い状況もありますので、諸感覚で捉えることというふうに書いていただいてありますと何となくイメージしやすいんですが、知覚と感受という言葉を今度小学校の担任の先生にも御理解いただきながらというところになりますと、ある意味で難しさも出てくるかもしれないなという印象を受けました。したがいまして、知覚・感受につきましては更に論議を重ねて、特に知識・技能ということで位置付けるならばどういう方法があるかなと、更に私自身も考えてまいりたいなと思いました。
ということで、様々まだ課題はあるかと思いますけれども、音楽系のところにつきまして、取りあえずよろしいでしょうか。では、ありがとうございました。
それでは、ここで5分間の休憩を挟むということになっております。現在14時1分ですので、14時6分まで、5分間ですが、休憩を挟みたいと思います。その後、大坪主査に進行をお戻ししたいと思います。
( 休憩 )
【大坪主査】 それでは、議事を再開いたします。続きまして、図画工作、美術、工芸に関わり、資質・能力の整理並びに「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査について、委員の皆様の御専門・御所属などの見地から御発言をいただければと思います。
御意見のある方は、挙手ボタンを押して、お一人5分程度を目安に御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
まず、新井委員、お願いをいたします。
【新井委員】 委員の新井浩です。よろしくお願いします。
14ページをお願いします。今回、論点1の資質・能力の整理について、主に技能と表現に関する案を御提示いただいたわけですが、整理が進んですっきりとしてよくなったと感じています。しかしながら、14ページにありますように、目標を短い文章で表わさなければならないことから、必要なことが十分に表せない、あるいは一面的に解釈されるなどの懸念もあると思います。
例えば目標の知識及び技能の項目ですが、下段にある「創造的に表現したり観賞をしたりするために必要な技能を身に付ける」という点で、この技能は、創造性との関係で捉えなくてはならない、他の場面にも生きて働く技能として広く捉えなければならないと思います。例えば材料や用具の扱いの技能にとどまらず、例えばハーバード大学のプロジェクト・ゼロでは、美術教育に期待できる学びの技という言い方で、例えば持続的な取組を生み出せる、豊かにイメージできる、見通しを持つことができる、解像度高く観察することができる、振り返り省察することができる、探究的に学んでいくことができるなどを挙げています。この学びの技は、もともとはHabits of Mindの日本語訳ですから、必ずしも技能の枠にとどまるわけではないのですが、この短い目標の中では表すとすれば、例えば「表現したり鑑賞したりなどするために」などと「など」を入れることが考えられますし、構造的に表している中で意識すべき項目だと考えます。
次に、49ページをお願いします。論点2の「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査等についてです。この表は図画工作の思考力、判断力、表現力等に関する表になっていますが、この中で造形遊びと絵や立体、工作を「活動の過程で感じたことや考えたことを生かして表現する」と統一した文言で表わされている点は、教育現場の先生方が受け止めやすく、よいと感じましたし、私も習得したものが後の単元で生かせることが大切だと考えています。また、造形遊びの項で、「自ら」という言葉や、絵や立体、工作の中に「夢や願いをもって」という言葉が入った点は、どのような学びを導くかを現場の先生方に意識させるという点で、正解の提示者から学びの伴走者、ファシリテーターに転換させる働きがあると思いました。
先生方への分かりやすさを追求する中で文言がシンプルになっていくのは大変よいと考える一方で、ここで大切なのは、社会が子供に要求する社会軸としての学びに対して、図工・美術は自分軸の学びを大切にしているという点を意識することだと思います。その点で51ページをお願いします。ここでは区分の中に既に自分軸と社会軸が分けられています。自分軸の学びと社会軸の学びを調和させることが主体的な学びを担保して、一つはクリエイティビティーを導くとともに、もう一つはストレス耐久力を高めて心身の健全な状況を保って情操を豊かに安定させる働きを導くという、双方にとって重要な鍵になるのが自分軸だと思います。
52ページをお願いします。ここの表し方も同様なのですが、表現の項目にある状況に応じて活用できる技能について三つ申し上げます。技能の一つは、表現に最低限必要な基礎・基本を教えるべき技能ですし、二つ目は、用具や材料の扱いにとどまらない、先ほど申し上げたような、創造性の観点から見て他の場面でも活用できるような技能だと思います。そして、この二つ目の技能は、子供たちが自ら見いだしていけるように、題材や展開が工夫できるよう目標や内容が示されることが大切だと思います。その点でこの表はしっかりとその路線が表わされているように感じますし、さらにその路線に沿って意見を出し合って精査していくことが重要と感じました。
以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは次に、廣田委員、お願いをいたします。
【廣田委員】 失礼いたします。まず、論点1についてです。先ほど資質・能力の整理について御説明を聞かせていただきました。経緯については十分分かりましたが、資料1の5ページにもありますとおり、図画工作科は、これまでずっと工夫することについては技能として整理してきました。これはこれまでの学習指導要領においても、児童が自分の思いを基に表し方を工夫するということを重視してきた経緯があるのではないかなと考えております。私自身も授業を今までしてきた中で、子供たちが様々な工夫をして表すということを大事に、大切にしてきました。今回の整理でこれを思考力、判断力、表現力等に入れるというところは、大きな混乱を招くのではないかと感じています。
技能はこれまでも材料や用具を活用する側面と、表し方を工夫して表す側面で育成を図ってきましたが、平成29年の学習指導要領の図画工作科の解説においても、材料や用具を活用することは、表し方を工夫して創造的に表す中で身に付くものであるという視点を持ち、指導を工夫することが大切と述べられています。表し方を工夫することが、思考力、判断力、表現力等に入ることで、技能が単なる材料や用具を扱うだけにとどまってしまわないか危惧しております。今回のこの変更は大きなものになりますので、私たちは現場の先生方に丁寧にその趣旨を、なぜ思考力、判断力、表現力等に入るのか、また、技能がどのようになるのかという説明を十分にしておかなければ、指導の改善や分かりやすい学習指導要領にはつながっていかないのかなと感じております。
続いて、論点2についてです。図画工作科の方が資料1の49ページにございますが、こちらも先ほどの整理で、資質・能力(概略)のところに、工夫して活動するという言葉で整理をされています。しかし、高次の資質・能力には、工夫して表現するという意味合いがあまり入っていないように読み取れます。これはこれまで大事にしてきた創造的に工夫するということがなくなってしまったように誤解を招く可能性があるのではないかなと感じております。
また、次のページ、50ページの知識及び技能の技能については、資質・能力の概略と高次の資質・能力がともに同じ内容となっています。39ページのところで共通する技能について効果的な指導ができるようにとありますが、もちろん共通の部分もあると思いますが、全てが果たして造形遊びと絵や立体、工作が技能として同じなのかどうかは、今後も検討する必要があるのではないかと感じました。また、同じ技能であるということから、安易に造形遊びはやらなくてもいいのではないかというような誤解を生まないようにしっかり説明していかなければならないのではないかなと感じた次第でございます。
私からは以上でございます。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは続きまして、大泉委員、お願いをいたします。
【大泉委員】 よろしくお願いいたします。これまで企画特別部会との調整を相当精密に行われてきているかと思いますが、そのことに敬意と感謝を申し上げたいと思います。
私からはまず、論点1について、多分2にも含んでくるかと思うのですけれども、一つ目の大きな話題として、先ほどの廣田委員の御発言と重なるところがあるかと思いますが、いわゆる思考力、判断力、表現力等における表現力と、領域としての表現の関係から技能についてお話ししたいと思います。
お示しいただいた資料の7ページの上方にある四角囲みには、思考力、判断力、表現力等とは、「これまでに習得した知識や技能を活用して、実社会・実生活などの場面を想定した課題解決に近い形で」というようなことで示されています。一方、領域としての表現は、御存じのとおり、とりわけ図画工作・美術科では学習活動そのものを指しています。すなわち、思考力、判断力、表現力等と知識及び技能の双方を含めた学びの総体であるということであります。例えば子供が絵の具という実在に触れて心地よさを味わったり、くぎを打つという行為を通して、材料や用具の手応えを感じたりするなどのように、知識及び技能を通して、自分の感情とか自分という存在を実感している。このことはもう既に表現であって、子供の育ちにとって意味があるのではないかと考えられます。
こうしたことは小学校低中学年によく見られると受け取られがちですけれども、思春期の子供にとっても大切な表現の意味であると考えられます。ですので、9ページに示されております改善の方向性にありますような、学びの深まりにおける技能というのは、ほかの学習や生活の場面でも活用できること、つまり、活用できる資質・能力ということだけではなくて、技能そのもの、あるいはそれと結び付いた総体としての表現でもあるのだということに注意を払う必要があるのかなと思いました。
このことは事務局の冒頭の御説明にもあったとおり、身体性を基本とする人間の本来的な能力としての技能の位置付け、これは6ページにありましたけれども、このことを意味していて、芸術系教科の学習の特性を指しているものと思います。すごく一般的な言い方をするならば、やってみること自体が大切だということであります。日本語で言うところの技とか、あるいは会得、あるいはブリコラージュという言葉がありますけれども、即興性であったりするような,やってみるということ自体が、図画工作・美術科の表現にとって重要なのではないかと思っています。そうした意味で、26ページ以降に図画工作・美術科の知識・技能の高次の資質・能力には、「場面に応じて活用できる技能」と文言が書いてありますが、この「活用できる」というところについて一考する必要があるのではないかなと思っています。
次に、同じく高次の資質・能力の技能についてです。28ページになるかと思います。図画工作・美術科では技能は身に付けるものとされていますが、音楽科では体の使い方を調整するなどとされています。この違いについて芸術教科の視点から説明が必要なのではないかなと思いました。
続いて、高次の質能力の思考力、判断力、表現力等について、27ページになるかと思います。絵、立体、工作の思考力、判断力、表現力等に示されている、「夢や願いをもって」の夢とか願いには、先ほど新井委員もおっしゃっていましたが、子供が自分の気持ちを素直に表わそうとする姿とか、あるいは生活や社会に対してこうなってほしいと問題提起する姿、その双方が含まれていることが分かりますので、この文言によって絵、立体、工作の学びの方向性を言い得ているかなと思いました。ただ一方で悩ましいのが、28ページの造形遊びの思考力、判断力、表現力等が、以前も申し上げましたけれども、造形遊びの本質を言い切れているかどうかが非常に悩ましいというところであります。今後、一考を要するかと思います。
同じく49ページになりますが、高次の資質・能力の思考力、判断力、表現力等のうちの鑑賞についてです。ここの箇所で「自分や他者、生活における造形の意味や価値について考え」と示されているのですが、これは図画工作科の学習が、あくまでも自分から始まってそれが友人に広がり、更には地域社会へと開いていく様子を示しているので、適切であると思いました。この考え方は、中学校美術、高等学校美術の区分でもあります、自分と美術、身近な生活や社会と美術に繋がる考え方だと思いました。
足早にもう少しだけ論点2についてお話しさせていただきます。まず、精査の方向性全般についてなのですが、資料の36ページには、深い学びを具現化するための余白が十分にあるかとか、多様な子供たちを包摂するとありますけれども、図画工作・美術科の学習指導要領では既にこれまでも内容をコンピテンシーベースで示してきているということもあるので、恐らく単純に内容の量で精査する必要はそれほどないと個人的には思っております。
その前提を踏まえまして、39ページの図画工作科・美術科における資質・能力の精査の例において、一つ目の黒ポチのところ、これも先ほど廣田委員がおっしゃっていましたけれども、共通する技能として統一的に示すということなのですが、この「表し方」という文言であると、造形遊びの技能を、表したいことが先にあってそれを実現するための資質・能力としての技能という面だけに受け止められてしまって、造形遊びが正しく理解されない方向性に行くのではないかという危惧を持っております。一方で、その下にあります観賞の技能を明確にするということは、これは鑑賞が表現と同等の創造活動としての意味を有するということを指しているので、非常に大事なことだなと思いました。
その上で、最後ですが、個別の資質・能力において「見いだす方法」と記されているのですが、「見いだす」となりますと思考力、判断力、表現力等が中心になっていくので、ここでは「見る」とか「見付ける」の方がふさわしいのではないかと思います。ちなみに、小学校音楽の思考力、判断力、表現力等には「見いだし」という言葉があるので、御確認いただければと思います。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは次に、小池委員、お願いをいたします。
【小池委員】 どうもありがとうございます。いろいろまとめていただき、大分分かりやすくなってきたかなと思っております。
私からはまず、論点1の資質・能力の整理につきましてです。6ページにあります身体性・創造性ということ、それを大切にした学習についてこのワーキングではずっと考えてきましたけれども、改めて現時点でもそれは揺るぎないものと考えております。実際に体を使って材料・用具を扱って創造していくことは、デジタル機器の活用が今後発達していくであろうと思われる世の中でも、図画工作・美術などの表現教科では今後も重要なところと考えております。単にいわゆるスキル的な側面を身に付けさせる教科ではなく、実際に活動する中で創造性を発揮しながら学んでいくこと、これが改めて重要かなと考えております。そして同じく6ページにあります、問いを考え答えを自分で創り出していく教科であるということを、これをより一層考えていくことは非常に大事なことなのかなと考えております。
その上で、7ページにあります技能について、3ポチですかね、自分の思いや考えを持つこと、その思いや考えを技能を活用して表現できること、この思いや考えと一体的になった技能というようなことに考えられます。
さらに、9ページでしょうか、技能を他の学習や生活の場面でも活用できる学びと捉えること、技能を身に付けることと、それから発想や構想したことを工夫して表現することが一体的に育成されること、これが非常に大事なことだと考えております。つまり、技能は、いわゆる表面的に身に付けるものではなくて、やはり追求していく学びなのであろうと思います。
そうなりますと、例えば52ページや63ページのところで「表現方法を追求する」というようなことが出てきますが、こういう表現は非常に意味があるのかなと考えております。つまり、図工・美術の技能というのは、いわゆる思考が頭の中だけにとどまらないで、材料や用具を使って表すことにつながっていて、工夫して表すことが一連の過程として捉えていること、それが非常に意味があることなのかなと考えております。
続きまして、論点2の「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査等についてです。高次の資質・能力は、学び全体を通して達成されるものであると考えております。それで、今後生きていく中で使えるような総合的・統合的な資質・能力と捉えられると思います。
一方の個別の資質・能力は具体的な資質・能力になるのかなと考えられますが、その資質・能力の中で、先ほども他の委員の方もおっしゃっておりましたけれども、36ページの余白というところだと思うのですけれども、やはりそれが、私としては、その余白が十分にあるかというような余白というのは、この点は柔軟性とか柔らかさとかそういうような意味なのかなと思っております。学びをしていく中で、多様な子供たちがいること、いろいろな学びがあること、それについて十分に対応できるところがそういう意味で大事な、それが余白があるというように捉えてもよいのかなと思っております。それから、見方・考え方、教科目標と関連させながらその辺は考えていく必要があるのかなと思っております。
次に個別の資質・能力、例えば63ページを見ていただきたいのですが、これは整理の一段階なのだと思いますけれども、今、いわゆる個別の資質・能力も整理というような話が出ていましたけれども、見せ方に関しても、例えば、これは中学校のB鑑賞の技能のところも同じようなことが、A表現とB鑑賞のところが同じような表現が記されており,表の見せ方として,その辺も整理をするなど工夫しても良いのかなと思っています。
39ページ、鑑賞の技能ということが今回示されました。鑑賞の技能を明確にするというようなことで、深く鑑賞する、味わって鑑賞するためにはどうすればよいのか、どのような視点でどのような知識を使って鑑賞していくべきか。それを多分言葉を使って言語活動をしながらできるような、造形を示す言葉を表していくような必要もあるのかなと思っております。具体的には、例えば〔共通事項〕や内容の取扱い等で示してあるような造形の特徴や働きを示す用語などをはっきりと示す、鑑賞の技能なんかもその辺りを示していければよいのかなと思っております。
私からは以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは、この後、藤井委員、岡本委員、道越委員の順番で手が挙がっておりますので、よろしくお願いいたします。まず、藤井委員、お願いをいたします。
【藤井委員】 藤井でございます。本日の資料の御作成、御送付いただき、誠にありがとうございます。多くの変更点がありまして、大変な作業であると思い、感謝申し上げます。
私は、まず論点1の方では、図工の目標見直しにつきまして、13ページをお願いいたします。ありがとうございます。ここでの知識及び技能の内容につきまして少し意見を述べさせていただけたらと思います。第5回WGからの変更点が黄色いハイライトで示されておりますが、「材料や用具を使い、表し方を身に付けることができるようにする」ということが示されております。「技能」という表現ではなく「表し方」という表現はよいと思いました。
それで、ここでの技能が、26ページ、27ページの図にも示されております知識及び技能に関する統合的な理解に繋がる内容であるということを踏まえますと、材料や用具を用いた表し方ということにとどまらず、具体的には描いたり作ったりということに加えて観察することや調べること、経験について話し合うといったことも含まれてくるのではないかと思います。この部分では、例えば図工ですけれども、図工を通して身の回りの世界をどのように理解し意味付けを行うかということについて子供自身が学び、考えることで新たな視点を獲得していくということから、この「表し方」という表現をもう少し広く捉えることもできるのではないかと思います。
また、26ページをお願いいたします。ありがとうございます。こちらの造形遊びの図につきまして、「絵や立体、工作」や観賞、中学校美術、高等学校芸術科(美術Ⅰ)、(工芸Ⅰ)も同様ですが、図の中央に位置する「資質・能力の『一体的育成』の可視化」という部分に重なるように斜めの矢印が、「個別の知識や技能」と「思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮」との双方向的なイメージを示す矢印、「個別の思考力、判断力、表現力等」と「知識及び技能に関する統合的な理解」との双方向的なイメージを示す矢印もあるとよりよいのではないかと思います。
図工・美術の授業では、他の先生方もおっしゃっていたように「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」が分かち難く、一体的に働く場面が多々あります。子供自身が授業の中でそれらの新たなつながりを創り出し、技能面や理解、独自のアイデアを発展させることができるように、そしてその先にはウェルビーイングがあるというような、そういったイメージを伝えることができるとよいのではないかと思いました。
また、個別の知識や技能の例に示されている内容につきまして、28ページをお示しいただけますと幸いです。ありがとうございます。こちらは中学校美術科の「自分と美術」についての資質・能力の図ですけれども、先ほどの双方向の矢印のイメージに加えまして、「身近な生活や社会と美術」、高等学校の美術と工芸も同様ですが、「個別の知識や技能」の例には造形的な美しさに気付く視点、知覚の内容が含まれるとよいのではないかと思います。
また、「個別の思考力、判断力、表現力等」の例として示されている3つの内容については観賞の内容が含まれるとよいのではないかと思います。一例として、作品がどのように構成されているかを分析する、作品について解釈する視点や振り返りの視点が入ってくると、過去や現在の私たちの生活における美術の役割について考える内容につながりやすいのではないかと思いました。
続きまして、論点2の「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査等についてですが、資料の49ページをお示しいただけますと幸いです。ありがとうございます。図工・美術・工芸の「思考力、判断力、表現力等」の内容を49、51、53、55ページに示してくださっておりますが、「鑑賞」領域の資質・能力(概略)の中に他教科等との横断、つながりの視点が加わるとよりよいのではないかと思います。美術は、教育課程全体の中で独特かつ重要な部分を占めていると思います。美術の学習が他教科等の学習の理解を豊かにしたり深めたりするように、他教科等の学習を図工・美術・工芸の学習に結び付けて考えることは、子供にとって新たな視点を獲得することにつながっていくのではないかと思います。教科等横断型学習の展開ということも見据えて、ここにつながりの視点を入れるということも考えられるのではないかと思います。
以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは続きまして、岡本委員、お願いをいたします。
【岡本委員】 岡本です。9ページの改善の方向性というところを出していただければと思います。真ん中ぐらいの改善の方向性の2ポツの所について、資質・能力の構造化の中で、「他の学習や生活の場面でも活用できる「技能」が習得されるよう、学習の深まりを示す」とあり、芸術教育の他の分野での活用がうたわれているのですけれども、私はその逆も考慮した表現にした方がよいのではと思います。
芸術作品の制作というのは、単に美術や映像の技能だけで成立するものではありません。むしろ国語、理科、社会、それから数学、英語といった他教科で学んだ知識や技能を総合的に活用する営みでもあると言えます。これは言わずもがなですけれども、社会的テーマを扱う場合には歴史や社会の理解が必要となり、物語構成においては国語的な読解力や表現力、自然現象ですと理科的な知識が必要になりますし、国際的な発信を考えれば英語でのコミュニケーションが必要になります。このように芸術は、美術にしても映像にしても、各教科で得た知識を横断的に結び付け、新しい意味や価値を生みだす行為です。言い換えれば、知識を個別に持つこと、特に美術系の知識だけにフォーカスしてそれを個別に持つことではなく、ほかの教科も含めて統合して考える力こそが創造性の核心であると言えます。
したがって、芸術教育におきましては、技能習得にとどまらず、他教科との接続を意識した表現をしていく必要があると思います。芸術を通して、知識を統合する経験を積むということがこれからの時代に求められる総合的な思考力と表現力を育てる鍵になると考えます。そのニュアンスをもう少しこの9ページの最初に、冒頭に申し上げた2ポツの部分や、26ページ以降の資質・能力の構造化の表の中の高次の資質・能力などにそのニュアンスを反映できないものかなというところでございます。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは続きまして、道越委員、お願いをいたします。
【道越委員】 道越です。よろしくお願いいたします。
私は、論点1の資質・能力の整理について、皆様がもうお話をしてくださった部分ですけれども、今回学習指導要領の改訂の方向性でやはり分かりやすくとかシンプルにということがキーワードでありますけれども、私は本日の資料の中で申し上げますと、もう何度も出てきています28ページ、それから29ページ辺りが中学校の美術ですけれども、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等、縦と横の関係が自分としては大変この図が分かりやすいと思っておりますし、このように整理をしていただいて大変ありがたく思います。子供の学びが深まっていくということや、それから知識及び技能、思考力、判断力、表現力等を一体的に育成していくのだというところがこちらのページから読み取れます。高次の資質・能力をもし私が学校現場に説明するとしたら、こういった図で説明ができるのではないかなと考えました。
引き続き、28ページを例にお話をさせていただきますと、今回、やはり意図に応じて工夫して表現することが思考力、判断力、表現力等の方に移動しておりました。ちょうど太字の部分にすぐ私、目が行ってしまったのですけれども、このことは、廣田先生もおっしゃってくださっていましたが、学校の現場の先生方にとっては大きな変更になると思います。工夫して表現することが生徒の思考の方に入ることは私としては納得できるところでございますけれども、そうなってくると、技能というのは一体何なのだろうということをもう一度私たち現場の教員が考えていかなくてはならないと思っております。ただ単に材料や用具を生かすだけでしたら、それは中学校で目指す技能ではないのではないかなと思います。
もう少し具体的な子供の姿をイメージできるようにちょっと事例を申し上げますと、以前、木彫でドアプレートを製作する授業を行ったときに、子供が自分の使いたい場所とか、自分の使う目的に合わせてドアプレートをデザインして、糸鋸や彫刻刀といった用具を使って、形を工夫したりとか、そこに描きたいものを彫刻等で彫ったりして制作したのですけれども、子供にはそれぞれ、こうやってこんな形にしたいとか、この部屋の雰囲気に合うプレートはなどとそれぞれの表現の意図がありまして、私たちはそういった子供の主題を基に、その子の表現の過程をすごく注意深く見取って指導や支援を行うことが重要だと考えております。
作品として完成するまでのその過程の中に意味があると思っておりまして、子供の工夫している姿だけではなくて、そこには必ずその子自身の技能の高まりというものがあると思いました。その様子も私たちはきちんと過程の中で見取っていかなければならないと、思います。例えばすごく小さい視点なのですけれども、彫刻刀で彫っているときに、うまく使えるようになっているなというのはもちろん分かるのですけれども、それぞれ子供が持っている木というものが、素材の特性とか硬さとか軟らかさとか加工のしやすさとかいろいろあると思うのです。そういった具体的な子供の瞬間、困難な場面に向かい合って、用具を使いこなすことができるようになっていく。そこには当然個別の子供の技能の高まりがあると思いますし、習得していく過程でもあると思いますし、そこで教師私たちがこの瞬間に価値付けて、今やっているよねということで、子供の力は一層確かなものになっていくと思っております。
こういった毎回の授業の中で私たちが、子供が資質・能力を発揮して力を高めているということをもっと注意深く意識して見ていく必要があると常々思っておりますので、そういった意味で今回、技能というところですが、こういう書き方になっておるところは、それが子供の技能の高まりを引き出すことができるような題材を構想しなければなりませんし、子供自身が自分の技能が高まったということを体感できるような素材、先ほどちょっと木という素材で話をしましたけれども、素材との出会わせ方というのも私たちはデザインをしなければならない、授業をデザインしなければならないと思っております。出来上がった作品だけを見て、技能が身に付いていますね、A・Bということではなくて、このような整理をされたということを授業改善に繋がるものとして私どもは前向きに受け止めなくてはならないなと感じております。
今回の改訂はみんなにとって分かりやすいもの、それはとてもよいことであると私も思います。ただ、それは単に言葉がシンプルになるとか、表で表わされて見やすくなったということで学校で授業を行う先生方は理解が深まるのではなくて、そもそもなぜこのように変えたのかというところ、それが子供の力を高めるためとか、私たち教師がより一層子供の資質・能力を引き出して高める、それを見取るためなのだということ、その目的というものをしっかりと私たちが理解をして、現場に説明をしていくこと、それが大事、だから変わったんだよというところが大事なのではないかな、納得に繋がるのではないかなということを感じました。
すみません、ちょっと長くなってしまいました。ありがとうございます。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは次に、森委員、お願いをいたします。
【森委員】 森でございます。よろしくお願いいたします。これまで先生方から御指摘いただいたこととかなり重複する部分も多々あろうかと思いますけれども、私なりに意見を述べさせていただきたいと思います。
一つに絞って、まず、論点1の資質・能力に関することで、特に知識及び技能、それから思考力、判断力、表現力等、この二つの関係性について集中して述べさせていただきたいなと思います。まず、資料の9ページ目のところですけれども、ここの中段のところに改善の方向性がございまして、その3行目に示されているのが、「また、技能を身に付けることと、発想や構想をしたことを工夫して表現することは、別個に働くのではなく関連し合って一体的に育成されることを示す」という点に関しまして、この点は本当に重要な、非常に重要な点だと思われますので、やや踏み込んで補足的な意見を述べさせていただきたいと思っております。
具体的なところでは、29ページあるいは30ページ、31ページのところ、中学校美術とか高等学校美術における資質・能力の位置付けが整理されて図示されています。多くの先生方が御指摘のように、非常に丁寧に分かりやすく図示されていて、御努力に感謝をするわけですけれども、ちょっと私の方ではこれに対して新たな解釈を付け足していきたいと実は考えております。
いずれも左側に知識・技能が置かれていて、右側に思考力、判断力、表現力が配置されています。中心に、資質・能力の「一体的育成」の可視化という課題が示されています。とりわけ30ページを例にとって私なりの理解を申し上げると、ひとまず、左側の知識及び技能を、学習者の外側から与えられる外的な要素と一旦位置付けたいと思います。一方で右側の思考力、判断力、表現力等を、学習者の内部において生成する内的プロセスと位置付けたいと、便宜的に一旦そう置きました。
ただ、この構造というのは、当然固定的な関係ではなくて、両者は相互に影響し、変化する動的な構造であると、ここが重要だと思います。創造のプロセスの多くは、まずは外部の知識に基づいて思考をしたり、あるいは外部の技能を試すことによって外部を内部化する、内面化するというところから恐らく始まるのだろうと思うのです。思考や判断など内部的なプロセスを経て、次に作品が作り上げられていって、最終的に発表を通じて作品が外部化する。外部と内部の往還関係によって創造のプロセスというのはあるのだろうと思うわけです。
実際アーティストが作品を生み出そうとする創造の現場においても、まず、外部の知識や技能に基づいて、自らの問いだとか課題を発見することから始まると思います。そして、企画・構想の内的なプロセスを経て、作品を制作し、他者に開かれた展示とか発表へと続くわけです。ただし、知識及び技能の獲得から企画、構想を経て作品の完成へと至るプロセスというのは決して単線的なものではない。言うまでもないことでしょうけれども、まず、問いや課題の発見、あるいは企画・構想において繰り返し知識の獲得に戻ったり、問いや課題、企画・構想の内容において繰り返し知識の獲得をすることで変化している。企画内容も構想も問いも変化していくことがある。実際、作品制作においては、企画・構想の内容にふさわしい技能をまた模索をするということで戻るわけです。内部から外部に戻っていく、そういう実験的な試みが何度も行われる、繰り返し行われるわけです。こうした内部での葛藤と外部への接続が繰り返し行われることで、作り手独自の創造的な表現が生み出されるのだと考えています。
一方、芸術教育においてですけれども、学習者をこういう創造する主体として位置付けて、学習者の内部と外部の相互往還、行ったり来たりを伴う創造的なプロセスを体験させることが高次の資質・能力の獲得へと繋がるんだろうと思うわけです。学習者にとって知識及び技能は単に外から与えられるだけではなくて、とりわけ知識については、自身との関わりの中で内面化されるわけですし、技能は、内面化も含め身体化されるものだろうと思います。また、思考力、判断力、表現力等に関わる問いだとか企画・構想の内容というのも、外部との関係において変化するものだと言えるわけです。
以上のような観点から、単に外的な知識や技能を教えることに専念したりとか、反対に知識や技能を無視して、内的な自由に任せて自由に作らせるというのではなくて、外部と内部の往還を繰り返し経験させること、また、この往還の経験を通じて自らが変化することをメタ認知させること、この辺りが非常に教育の現場では重要ではないかと感じます。こうしたプロセスが結果として深い学びに繋がるわけで、外部と内部の往還なしに、外部単独あるいは内部単独で深い学びというのは実現しないのではないかと思います。
以上のような観点から捉えると、現在ここで図示されている、提示されている資質・能力に関わる図について、左と右、外部と内部の往還を繰り返し経験させること、あるいは往還の繰り返しによって学びが深まるということについては、ちょっと物足りないといいますか、十分に表現できていないのではないかと感じる次第でございます。
ちょっと抽象的な大ざっぱな指摘で申し訳ありませんけれども、私なりに作り手の立場も踏まえながら実感を持った意見を述べさせていただきました。
私からは以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。図工・美術関係の委員の皆様から全員御発言をいただきました。後ほど、全体を通して補足等の御意見をいただくような時間も設定しておりますので、補足や言い足りなかったことがあるという委員の方はそちらでお願いをしたいと思います。
では、次の段階といたしまして、書道の方に移りたいと思います。それでは、書道に関わる資質・能力の整理並びに「高次の資質・能力」を踏まえた個別の資質・能力の精査について、委員の皆様の御専門・御所属などの見地から御発言いただければと思います。
御意見のある方は、挙手ボタンを押して、お一人5分程度を目安に御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
加藤眞太朗委員、それから次に、加藤泰弘委員の順番でお願いをいたします。加藤眞太朗委員、お願いいたします。
【加藤(眞)委員】 よろしくお願いいたします。私の方からは、まず論点1についてお話をさせていただきます。10ページをお示しいただいていますので、ここから始めさせていただきます。中ほどにある改善の方向性、2行目ですけれども、「成果物から「表現力」の習得状況を見取ることができるようにする」ということについては承知しました。上段の現状の課題にも触れられておりますけれども、現行の学習指導要領では、生徒が制作した作品は技能の観点から評価しており、作品制作の過程の中で生徒が思考し判断したことを言語化していく中で、思考力、判断力、表現力等の観点から評価を行っております。その成果の中に作品という成果物を含めて考えていくということについて異論はありません。
そこで、表現に関して改善案を見ますと、知識及び技能では、効果的、創造的に表現するために必要な技能とあります。この技能を身に付けているかを評価するためには、やはり作品という成果物から見取らなければならないと思いますので、ある単元において、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等を評価する際には、一つの作品から両方の観点で評価することになると思います。この一つの作品から二つの観点で評価していく際に、現場の先生方にとってその違いが不明瞭にならないよう、具体的な方法や事例を分かりやすく提示していくことは必要だろうと考えています。
32ページをお願いします。この縦横の関係図で、左上の知識及び技能に関する統合的な理解において、「身体の機能や感覚を駆使して目的や状況に応じて自在に活用できる技能」としていただきました。現行の学習指導要領では、〔共通事項〕として線質、字形、構成、墨色、余白の五つの要素が示されており、それらをどの単元でどのように扱うかを考えながら授業を行っています。この単元で扱う複数の〔共通事項〕の特性が、作品を制作する際にどのような関わりを持って作品として表現されたものの中に発揮されているかを高次の資質・能力として考えるということになるのではないかと思っています。
書には、文字や言葉を書き始めてから書き終わるまでに、線質をはじめとする書を構成する要素が様々に変化しながら紙面に定着していく一回性という特性があります。例えば、一文字を書く際にも筆順が存在し、その順序に従いながら複数の点画によって文字が形成され、さらに、文字が言葉となって作品として表現されていきます。ここでは後戻りのできない一回性の中で、文字の前後関係や紙面の余白等も考えながら、瞬時に様々なことを判断し身体性をもって表現していく活動があるわけですので、生徒は個別に学んだ書を構成する要素の特性を一回性という書の特質の中で作品としてどのように発揮できているかが知識及び技能における高次の資質・能力として捉えられるだろうと考えています。
そのように考えますと、高次の資質・能力は、書を構成する要素の特性が全て発揮されるということを目標としながらも、単元や学習段階においてはもう少し低次の資質・能力として知識及び技能が統合的に発揮される学習場面もあるのだろうと考えています。
続いて、論点2についてお話をさせていただきます。40ページをお願いします。ここにありますように、書を構成する要素などの働き・関係は、〔共通事項〕としてまとめて示されることについては好意的に受け止めております。先ほど申し上げました知識及び技能における高次の資質・能力をどのように考えるかということと併せまして、学校や生徒の実態に合わせながら〔共通事項〕を柔軟に取り扱うことができるのは、現場の先生方にとっても理解しやすいものになるのではないかと考えております。
私からは以上になります。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは次に、加藤泰弘委員、お願いいたします。
【加藤(泰)委員】 よろしくお願いいたします。
まず、論点1について申し上げます。これまでの議論を踏まえ、全体としてとても分かりやすく整理をしていただき、ありがとうございます。また、現行学習指導要領において、芸術教科の中で改めて各科目等における技能の捉え方の違いというものを考えさせられたところでございます。10ページを示していただいておりますけれども、ここの現状の課題に示されているとおり、「思考力、判断力、表現力等」については、表現力ということについて間違った理解が散見されていたということがあったかもしれません。
下の改善の方向性に示されているとおり、思考力、判断力、表現力等について、「意図に基づいて構想し工夫」するというところまでをこれまでは示していたわけですけれども、そこを、構想を工夫し表現するという、作品を表現するプロセス全体を扱うという整理は、明確化が図られるのではないかなと考えているところでございます。作品という成果物から、技能に加えて表現力の習得状況を見取るという、これは一つの方向性としてよいと考えております。ただ、これは大きな転換にもなりますので、これまでワークシート等から見取っていたことと関連させて、現場で混乱が起きないような明確な説明が必要になってくるのではないかと考えているところでございます。
次に、19ページをお願いいたします。これは細かなところですけれども、ここではIからIIIまでの芸術科書道の目標が示されております。こちらの「学びに向かう力、人間性等」の感性については、I・II科目めで「高め」、III科目めで「磨き」と示していて、伝統と文化についても、I科目で「親しみ」、II・III科目めで「尊重し」と整理されています。この段階をこのままでよいか、統一した方がよいのかという検討もしてよいのかなと考えております。
また、「思考力、判断力、表現力等」の表現領域を表す部分につきましては、I科目は「効果的」、II・III科目は「個性的」という形で段階を追って示しているのですけれども、後段の鑑賞領域を示す「価値意識をもって書のよさや美しさを味わい捉えたりする」という部分については、I・II・III科目が同じとなっているので、ここはII・III科目あたり検討が必要かと思いますが、「深く捉えたり」というような文言を加えるなども可能かなと考えているところでございます。これは細かな点でございました。
次に、32ページをお願いしたいと思います。32ページにつきまして、ここに示されている縦横の関係については特に異論はございません。深い学びを実現するために、高次の資質・能力としてうまく整理されていると思います。
1点だけ申し上げますと、他の芸術科目との比較の中で、書道は「美」という用語を積極的に用いているところでございます。美の構造とか作品や書の美などと示しているわけでございます。これらについては、個人的には高等学校芸術科で美というものを考えるということが重要であるという考えを持っていますので、肯定的な立場であるわけですけれども、その上で「思考力、判断力、表現力等」の創造的・個性的に美を表現するという、この美についてはやや抽象的な感じがするので、この点については検討の余地があるのではないか思いました。他の芸術科目との比較の中でそのように感じた次第でございます。
続きまして、次に論点2についてでございます。論点2につきましては、40ページをお願いしたいと思います。芸術科書道では、下段に示されているとおり、鑑賞の技能を位置付けるということは一貫して私も賛成の立場であります。それによって単純には内容が増えるように見えるわけなのですけれども、上段に示されているように、これまでの各領域・分野で個別に示してきた字形、文字の大きさ、全体の構成等を〔共通事項〕の書を構成する要素の働きで整理するという方向性は、とても分かりやすく、よい方向性であるのではないかと思います。
〔共通事項〕は、現行学習指導要領で高等学校芸術科において初めて示されたものであり、現場の実践においても、〔共通事項〕は書を捉える視点とか、あるいは構想・工夫の見の見直しの観点として定着しているという実態もありますので、この方向性はとてもいい方向性ではないのかなと考えている次第でございます。
次に、58ページをお願いしたいと思います。こちらについて特段の意見があるわけではないのですけれども、右側の資質・能力の中に〔共通事項〕が示されております。66ページの新旧の方を開けていただいた方がいいかもしれません。66ページには新旧の部分が示されていますけれども、新旧を比較したときに、新の方ではアの書を構成する要素の働きと、イの書の美の構造、また、書の美を捉える視点、これについては、それぞれ示す内容をより具体化した上で指導事項との関係性をもう一度明確にし、精査を図っていく方向性もあるのではないかと思います。現行の〔共通事項〕においては、用筆・運筆が示されていて、今回それが表には出なくなるのですけれども、先ほど加藤眞太朗委員からもありましたように、書の一回性とか運動性、身体性という視点が表には出ない形になっていますので、そういった点でそれをどのようにして〔共通事項〕の中に組み込んでいくのか、あるいは技能とどう関係させていくのかなどについて、その整理の必要性があるのではないかなと感じている次第でございます。
以上となります。ありがとうございました。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは最後に、全体を通しまして、追加の御意見や各教科の時間枠の中で御発言がかなわなかった内容などございましたら、お一人3分程度で御発言をいただければと思います。15分ほど全体として予定をしておりますので、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
岡本委員、お願いをいたします。
【岡本委員】 ありがとうございます。手短に行きます。
今回のテーマ、本日のテーマの中で発言するのがふさわしいかどうか分からないのですけれども、映像とかメディア芸術教育についてどこかで触れておく必要があるのではないかなと思っております。先日、高校生が作った自らのうつ病をテーマとしたVR作品に非常に心を打たれたのですけれども、この分野への若年層の関心と教育の可能性について非常に感じています。
私を含めて他の委員の方からも過去の委員会において発言があったかと思いますけれども、既存の芸術分野のリソースの中で、映像やメディア芸術教育を検討していくにはどうしても限界があります。また、これまでの非常に積み上げてきた芸術教育の時間数を奪うということにもなりかねませんので、非常に危惧しています。
本日の資料の42ページの中に調整授業時間数制度の資料がありまして、非常にこれに大いに賛同するものですけれども、私がさきに述べた他教科との統合的教育の出口としても、映像やメディア芸術教育を位置付けてもよいのではないかなと思います。恐らく全教科の中で映像メディア教育に言及できるのはこの委員会だけだと思いますので、申し上げておきました。
以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
大泉委員、お願いをいたします。
【大泉委員】 ありがとうございます。全体に関してかなり抽象的なお話になるかと思うのですが、今日お示しいただいた資料の35ページになりますが、四角囲みに示されています資質・能力の構造化に関する7つの観点が企画特別部会から示されて、それに応じて検討してきているということなのですが、この丸1、丸2、丸3の中で、まず丸2の分かりやすさ、シンプルさの一層の追究ということについて、本日の議論の中でも度々出てきた個別具体の技能に関連することとして、この分かりやすさ、シンプルさの追究によって、もしかしたら教科間の平準化がもたらされるのならば、その際に芸術系教科の本質が損なわれないように注意をする必要があるかなと今日の議論を拝聴していて思いました。
その上で思ったことが、分かりやすさとシンプルさは別物であるということであります。シンプルにすることでかえって分かりにくくなったり、あるいはシンプルにして分かりやすくはなったけれども、実はその分かりやすさが本質からずれていたりするということがないようにしたいと今日お話を聞いていて切に願います。
それと、直接関連がないのかもしれませんが、丸5の用語の一層の整理・検討についてというところで、これは全体に関わることかと思うのですが、やはり芸術系教科の議論からすると、高次の資質・能力の「高次」という言葉が高低という二元論を想起させるので、非常にそぐわないなと思っている次第であります。さらに、芸術系教科の用語のことで言うならば、宿題になっている区分と本日議論した資質・能力との関係を明らかにしていく必要があるのだということを思い出しました。
最後に、これももっと先の話題になるかもしれないのですが、丸7に示されておりますデジタル化についてです。今回の学習指導要領では、これまでの冊子形態からデジタル化が図られると聞いております。そのときに、先ほど申し上げました丸2の分かりやすさの追究という観点は、このデジタル化という要件によっても対応可能ではないかなと思いました。とりわけ今回の学習指導要領が大事なターゲットとして想定している若手の先生方、これからキャリアを積んでいく先生方に対する分かりやすさは、このデジタル化という手段と合致しているのではないかなと思っております。恐らくそのことは承知されているかと思うのですが、文言をシンプルに分かりやすくすること以外でも、デジタル化という分かりやすさの追求はあるのだということを忘れずにいたいなと思った次第です。
以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。では続いて、新井委員、お願いをいたします。
【新井委員】 先ほど岡本委員からあったように、他分野で美術で学んだことが活用されるというだけではなくて、その逆方向があってよいというのは私もすごく同感です。私が作品制作をしていたり、あるいはこういった話合いの場で何を話すかといったときに、社会の中で学んだことだとか、いろいろな教科で学んだことをフルに活用しているのですね。
そういう意味でいうと、藤井委員がおっしゃったように、技術の学習というのは教育課程の中ですごく特有の地位を占めていて、他の分野で活用できる特有な資質・能力を形成できるところがあると私も思っています。そういう意味でいうと、美術を専門に学んでいる人以外の方々が、生活や社会の場面で美術で培われる能力を自分の中に入れていただけると、より調和の取れた社会になるんじゃないかなと強く思った次第です。
また、森委員のおっしゃった創造的な往還が大切、重要であるということと、自らの変化をメタ認知させることが大切というのは、とても大切な指摘だなと感じた次第です。
以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。もう少しお時間があるようで、あと1人か2人御意見が可能かと思いますが、いかがでしょうか。
道越委員、お願いをいたします。
【道越委員】 お願いいたします。先ほど個別の知識や技能のところで、29から31ページのところで、材料や用語を生かし、表現方法を追求すること。ツイキュウのキュウは私たちは「求」を使いますけれども、子供が自分の技を追求しているところというのは、やはり実感を伴いながら、肌で感じながら、やはり技能教科である私たちが、その中で自分自身が体感的に高まっているということを理解できる。それはすごく大事なことじゃないかなと思います。
生かすだけではなくて、先ほど申し上げたのは技能の高まりと申し上げたのですけれども、この表現方法を追求するというところは、技能の方に書かれていますけれども、こちらの言葉があることで、皆さんがおっしゃっているようなところが、ほかの場面や、ほかの生きていくところで活用できるというところはそういう力を活用していくのではないかなというふうに私は思ったので、先ほどちょっと申し上げることができなかったので、すみません、追加で話させていただきました。
ありがとうございます。
【大坪主査】 ありがとうございました。ほかいかがでしょうか。
小池委員、お願いをいたします。
【小池委員】 すみません、では、手短に話したいと思います。ここで話すかどうかちょっと迷ったのですけれども。
例えば14ページで目標の見直しがあって、改めて、今は知識及び技能、思考力、判断力、表現力等で我々はずっと議論しているのですけれども、一つ、この芸術教科、創造性を豊かにする教科では、やはり学びに向かう力、人間性を常に考えていく必要があるのかなと思っています。豊かな情操を培うというようなところを常に考えて、今回はそれが具体的に議論に加わってないのですけれども、それを考えながら、知識及び技能、思考力、判断力、表現力等を考えていく必要があるかなと改めて感じました。
以上です。
【大坪主査】 ありがとうございました。それでは、予定された時間に近付いておりますので、ここで皆様からの御意見は一旦止めたいと思います。
最後に私の方から、今日の御議論を踏まえて意見を述べさせていただきたいと思います。今回の資料の中に2回ほど取り上げていただいておりますけれども、本年の2月2日に開催されました第14回の教育課程企画特別部会で、各教科ワーキンググループに対しての検討の方向性・整理についての案が示されており、実質的には7ページにそれが最初に出てきているかと思います。
その中で、「資質・能力の整理は本質的なところで共通している必要。特に「思考力・判断力・表現力等」については、これまでに習得した知識や技能を活用して、実社会・実生活などの場面を想定した課題解決に近い形で資質・能力を発揮するという性質の柱であり」というふうに書かれています。今日の御意見をお聞きしていますと、やはり「知識や技能を活用して」の「活用」に様々な教科ごとの幅があるし、考え方があるということが分かってきました。一言で活用と書いてありますけれども、ここには相当な幅があるし、場合によれば学習の本体もあるかもしれないというところも踏まえて、今後は整理をしていく必要があると考えております。
それから最後に、小池委員の方からございましたけれども、学びに向かう力、人間性等は、同じくそこのところに思考力、判断力、表現力等の中で見るというふうに企画特別部会の方では示されております。ということは、今回の改訂の中で、思考力、判断力、表現力等がやはり学習の中のかなり本体を占めてくる。それに活用できる知識及び技能であり、それからその中で見取ることのできる学びに向かう力、人間性等であるという考え方が、私はこの一文の中から読み取れるような気がしております。
そう考えたときに、小池委員からございましたように、学びに向かう力、人間性等が、高次の資質・能力等では扱っておりませんが、やはり重要であるということは変わりない。これは実際のA・B・Cの評定などには関わらないとしても、芸術教科として教育課程全般の中に果たすべき役割がこの学びに向かう力、人間性等の中に端的に示されてよいし、場合によっては、音楽、図工・美術、工芸、書道全てをある程度通底するような芸術に向かう態度というのがそれぞれの学校種ごとに示されてよいのではないかと感じた次第でございます。
それからもう1点、個別の資質・能力を整理するというその整理の観点につきまして、資料としては37ページになるかと思います。二つ目のポチのところで「目標の達成に支障のない範囲で、設定する題材における既習の内容等を調整するなど」という文がございます。この背景には、冒頭の説明にございましたように、調整授業時数制度、それを生かして各学校の特色ある教育課程を構成していくのだという考え方があるのはもちろんでございますけれども、もう一つ、その次の部分、「学校の実態に応じた題材構成の工夫」というところは、単に時間数の調整だけではなくて、我々芸術教科は音楽、図工・美術、書道にかかわらず、やはりその学校の地域性・特性に強く反映されると思います。
山間部の学校であるのか、都市部の学校であるのか、それから都市部では、特に東京辺りでは、外国籍の子供たちが増えてきており、多様性などが重要になってきているというときに、学校の実態に応じた題材構成が可能になるような、ある意味で、先ほどシンプルであることと分かりやすさは別だという御意見もあって重要だなと思っておりますけれども、そこも踏まえて、多様な題材や単元の開発を先生方がしやすいというところも重要な視点として今後考えていくべきであり、整理を進める上で重視していくべきであろうと思っております。
特にお若い先生方に若干危惧を感じておりますのは、新たな題材の開発や単元の設定に余り積極的でない、今までの題材をそのまま自分の授業としているというような傾向も強いということをお聞きしております。先生方が目の前にいる子供たちにとって最適な授業、題材を開発するという、そこを後押ししていけるような学習指導案になることを期待しているところでございます。
私の方からは以上でございます。
それでは、本日予定された時間も迫ってまいりました。限られた時間での御発言となりましたので、会議中に言い尽くせなかったことや、追加の御意見などございましたら、3月31日火曜日頃までに事務局までメールをお送りいただければと存じます。
それでは最後に、次回の予定について事務局よりお願いをいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 失礼いたします。次回は、4月20日月曜日9時30分からを予定しております。正式には、後日また改めて事務局より御連絡いたします。
【大坪主査】 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして、本日の芸術ワーキンググループを閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(代表)