令和8年2月17日(火曜日)9時30分~12時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【大坪主査】 定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループ第6回を開催いたします。
皆様、大変お忙しい中ご出席くださり、誠にありがとうございます。
それではまず、事務局より委員の出欠状況、配布資料の確認、その他留意事項があれば説明をお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】 事務局です。
本日は18名、全委員の皆様にご出席をいただいております。水戸委員におかれましては、ご用務の都合により11時頃に途中退席をされると伺っております。
資料についてでございます。議事次第に記載しておりますとおり、資料1、2-1から2-4と、参考資料がございます。そして前回までと同様、対面会議で言うところの机上配布資料として、前回会議資料とワーキンググループにおける審議のご参考として、学習指導要領本体や解説、関係する審議会の答申等をまとめた参考資料集を事前に別途お送りしております。
また、会議の運営に関して1点お願いでございます。ご発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してからご発言をお願いいたします。また、ご発言が終わりましたら再度ミュートにしていただきますようよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。
【大坪主査】 本日の論点1は、外部人材、学校外の文化施設等や地域との連携の改善、充実の在り方についてです。
本議題に際しまして、事務局からの説明の後、学校外の文化施設等や地域との連携事例について、佐藤委員からは文化施設等の観点から、原委員からは音楽科の観点から、藤井委員からは図画工作科、美術科の観点から、加藤眞太朗委員からは書道科の観点からご発表をいただき、議論を行いたいと思います。その後、5分間の休憩を挟み、論点2として、高等学校芸術科における学びの改善、充実の在り方についてご議論をいただく予定でおります。
それではまず、論点1について事務局より資料の説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 文化庁学校芸術教育室の堀内です。それでは、資料1につきましてご説明させていただきます。
資料1の2ページ目をご覧いただけたらと思います。本日、論点1といたしまして、生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質・能力を育成するための外部人材、学校外の文化施設等や地域との連携の充実・改善のあり方をどのように考えるかというものを設定させていただいております。
検討の視点例でございますけれども、下の点線枠で囲んでいるところに3点ほど挙げさせていただいております。1つ目といたしまして、外部人材や文化施設等、地域との連携においてどのような資質・能力の育成に繋がるかという、連携の意義の側面。2つ目といたしまして、外部人材や文化施設等、地域と連携してどのような学習が考えられるかといった内容の側面。3つ目といたしまして、外部人材や文化施設等、地域との連携をどのように実現できるかといった方法の側面。このような視点もご参考をいただきながら、本日はご意見を頂戴できればと思っております。
本日、事例発表いただきます委員の皆様方を下のほうに記載をさせていただいております。後ほど事例発表いただくこととしております。
5ページ目をご覧いただきたいと思います。現行学習指導要領における学校外との連携に関わる記述の抜粋となっております。5ページ目は小学校の平成29年3月告示の学習指導要領であります。総則におきましては、上の2つの黒丸になりますが、1つ目の黒丸で、例えば博物館、美術館、劇場、音楽堂等の施設の活用を積極的に図るということでありますとか、2つ目の黒丸で、教育活動の実施に必要な人的または物的な体制を家庭や地域の人々の協力を得ながら整えるといった記述がございます。
教科の学習指導要領の記述に関しましては、例えば音楽におきましては、公共施設などの学校外における音楽活動とのつながりを意識できるようにするという記述でありますとか、図画工作におきましては地域の美術館などを利用したり、連携を図ったりするといった記述があるところでございます。このような記述につきましては、例えば6ページにございますような中学校・高等学校の学習指導要領におきましても、発達の段階に即した形で記載がございます。
7ページ目でありますけれども、これ以降につきましては、小学校・中学校・高等学校の学習指導要領実施状況調査の結果につきまして、関連の部分を掲載させていただいております。
まず7ページ目、こちらは小学校の音楽科、教師に対して調査を行ったものでございます。音楽科の学習において外部の人々などの協力を得たり、学校外の施設等を活用した授業を行ったりしているかという質問に関しまして、肯定的な回答が、半数を下回るといった状況にとどまっているという状況でございます。
8ページ目には図画工作科につきまして、質問の仕方が多少異なっておりますけれども、全体として肯定的な回答が半数を下回っているという音楽と同様の状況となっております。
9ページ目は中学校の調査になりますけれども、音楽科の暫定値でありますが、肯定的な回答がさらに低く、4割を下回るといった状況になっております。美術科におきましても同様の状況であります。特にこの美術館や博物館を活用したりといった、文化施設等との連携の視点になりますと、肯定的な回答がさらに下がってくるというような状況が見受けられるところでございます。
11ページ目からは高等学校の調査結果となります。音楽、美術、工芸とございますけれども、基本的には肯定的な回答が低い状況にございます。ただし、工芸に関しましては、教育内容の特質に即した部分でもございますけれども、地域の材料や伝統的な工芸の表現などを取り入れた指導の工夫をしているという質問に関しましては、若干高い数値が見受けられるところでございます。しかし文化施設との連携の視点になりますと、やはり下がってくるといったような状況がございます。
このような状況の中ではございますけれども、文化庁におきまして、学校で本物の舞台芸術を体験する機会、あるいは鑑賞する機会を提供するということで、学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業を行っております。こちらの事業につきましても、これまで実施をしてまいりましたが、来年度も政府予算案として計上しているところでございます。
4ページ目へお戻りいただけましたらと思いますけれども、今回、地域との連携、あるいは文化施設等との連携ということで論点に設定させていただいております。今回の学習指導要領の芸術科における改訂の基本的な考え方が、右側のピンク色のところでありますが、いずれも連携の視点が関わってくる部分ではございます。とりわけ6に関しまして、生活や社会、文化などとの関わりでありますとか、意味や価値を見出したりつくりだしたりするなど豊かな社会の創造や幸福な人生につなげていくことに、この連携の視点がうまく繋がってくるような形で示すことができたらというところでございます。簡単ではございますけれども、私からの説明は以上でございます。
【大坪主査】 そうしましたら、ここからは委員の先生方より、学校外の文化施設等や地域との連携事例について、ご専門の見地からご発表をいただきます。
4名の委員の皆様から各事例のご発表をいただいた後に、まとめて質疑応答の時間を設けたいと思います。ではまず、地域における文化施設等との関連の視点から、佐藤委員よりご発表をお願いいたします。
【佐藤委員】 よろしくお願いいたします。佐藤です。私からは鳥取県立美術館の学校連携について発表させていただきます。
写真は教育普及で企画した展覧会場での子供たちの様子です。
こちらは特別支援学校の修学旅行として来館した子供たちです。作品を見上げながら手をバタバタとさせて楽しさを表現してくれていました。中央の方はこの展示をしてくださったアーティストの小松宏誠さんです。作品が子供たちにとっていい高さだった、ちょうどよかったということで満面の笑顔を見せてくださっています。
これも小松さんの作品です。子供たちは空間に身を置いて、しばらく眺めて、それから感じたことを言葉にしていきます。
鳥取県立美術館はその前身である鳥取県立博物館の美術分野の取り組みを引き継ぎ、発展させる形で昨年の3月30日に開館しました。教育普及の拠点、アートラーニングラボを美術館に設置し、館を挙げてアートを通じた学びのプログラムに力を入れていることが大きな特徴の1つです。
例えば鑑賞でもいろいろな方法で作品にアプローチできるよう、多様なプログラムを実施しています。
成果の青い帯の部分をご覧ください。ここにある「本物との出会い」「じっくりと見ること」「対話すること」「作品との出会い」「美術文化との出会い」の5つのキーワードで5つの事例をこれから発表したいと思います。それぞれのキーワードの右側にある文章については、個別の事例の中で触れたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
事例1はMUSEUM START BUSの取り組みです。ある研究によると、美術館を訪れた人は何を見たかより、誰と何をしたかを記憶していることが多いようです。そういったことから、子供たちが本物と出会い、自身の目でじっくりと見て、考えたことや感じたことを対話するプログラムを取り入れています。少人数のグループに1人ずつ、傾聴力とファシリテーション力をつけた大人がつき、鑑賞を深めるためのサポートをします。
鑑賞するとは、鑑賞者が自分の中に新しい意味や価値を作り出すことです。作品の見方は自由で、正解は1つではありません。だからこそ、アートは子供たちに他にはないたくさんの学びをもたらします。
ファシリテーターはそれぞれの子供の言葉を受け止め、つなぎ、整理しながら鑑賞を深めていきますが、1つにまとめることはしません。
対話を用いた鑑賞の流れは大きく、見る、話す、聴く、考えるの4つです。複数の鑑賞者が対話をしながら、これらの行為を繰り返し鑑賞を深めていきます。
対話を用いた鑑賞によって、子供たちは多くのことを学んでいます。好奇心を持って物事を詳細に見ること、問題や課題の発見をすること、目の前にある材料を取捨選択して発想を広げ、創造的に思考すること、他者に関心を持ち、異なる意見にも共感し、自らの思いや意見を発表すること、答えのない状態を受け入れ、判断を保留にしながら対象と向き合い続けること、様々な意見を認め合いながら自分にとっての納得解を大切にすること、自らの感性や思考を発見し、他者に認められることで自己肯定感を育むこと。対話を用いて鑑賞を深めながら、子供たちはたくさんの大切なことを実感を持って学んでいます。
右側の写真の子供たちは、作品の存在感を感じながら、細部を見る、角度を変えて見る、全体を捉えるなどして鑑賞しています。右側の写真の子供たちは、大きなフェルトの帯を見ながら、柔らかさや重さなどを自分の感覚で捉え、思考しています。「どういうこと?」というつぶやきを私たちは再々に耳にします。活動を終えた子供たちの感想からは、子供自身がよく見る力と、自分の意見を伝える力、考える力がついたと感じていることがわかります。
グループ鑑賞をした後は、個人で見る時間を作り、自分にとっての意味や価値を確認できる場とします。引率の先生方の感想には、図工だけでなく図工以外の場面でも細部まで見ることを意識する子が増えたとあります。自他を認め、作品を味わう姿があったというものもありました。
事例2です。中学校の教育研究大会をはじめとして、様々な研究会が開催され、本物を見て対話し、鑑賞を深める活動が行われました。美術館は先生方の学びの場でもあります。
事例3は館外での鑑賞の事例です。本物を持ち込めない場合に、デジタル鑑賞教育コンテンツを活用した鑑賞活動をすることもあります。このWalk Viewというシステムは、鑑賞者の体の動きに合わせて見たい部分が拡大され、細かなところに気づくことができます。鑑賞後の高校生の感想には、1枚の絵でもたくさんの情報を読み取ることを知ったとあります。
事例4は作家との出会いです。この写真は、この春廃校する小学校でのワークショップの様子です。廃棄される机や、もう使わない教材などを材料に、思い出となるオブジェを作家とともに制作しました。アーティストの着想の面白さに触れ、考えたことを形にする技に触れ、時にはアートと関わる人生にも触れられるため、キャリア教育の視点で依頼されることもあります。
事例5は美術文化との出会いです。当館のコレクションを学校に持ち込んで鑑賞するこの取り組みでは、学校の授業と関連した作品をと依頼されることがあります。上の写真は、「味わってみよう和の形」という鑑賞から、手ぬぐい作成へと繋がる授業のために絣を持ち込んで行った鑑賞授業の様子です。絣にそっと触って手触りをし、絣の生まれた時代や社会について説明を聞いた子供たちは、形に込められた願いと、願いや形の特徴をもとにつけられた文様の名前を知ります。ここから、子供たちが願いを込めて作り出した文様にも、子供たち自身で名前をつけることとなりました。伝統文化の学びを自分たちの生活に繋げていく、そんな実践となりました。
以上、5つの事例を発表させていただきました。最後に、美術館と学校の連携について課題となることを3つお話ししたいと思います。
1つ目は、美術館と学校をどう繋げるかについてです。アートを通じた子供たちの学びを中心に置き、美術館などの外部施設と学校がともに子供を育てるというスタンスで連携することが必要だと考えています。ともすると、美術館は来館者数の増加のために、学校側はたまには違うところで授業をといったことが動機となることもあるのではないかと思いますが、それでは意味のある連携にはならないと思っています。
2つ目は、学校との連携の作り方についてです。美術館のスタッフと学校の先生方が顔の見える関係となれるような機会を意識的に作り、学校のニーズを聞き取りながら協働できるようにしていくことが必要だと感じています。
そして3つ目ですが、プログラムの作成についてです。子供たちが思考し、判断し、学びを深めていけるようなプログラムを、美術館と学校が双方向のやり取りの中で作っていくことが一番大切なことではないかなと思っています。以上です。
【大坪主査】 それでは続いて、原委員より地域連携の事例について、音楽科の観点からご発表をお願いいたします。
【原委員】 私から地域との連携を図った音楽科の実践について、6つの事例を中心にお話をしていきたいと思います。
まずは小学校5学年の題材、「金立鉦浮立のおはやしの音楽をつくろう」の実践です。これは全日本音楽教育研究大会で公開された授業にもなります。
佐賀市の金立町に伝わる伝統芸能を教材とした学習になります。総合的な学習の時間に「金立鉦浮立」という伝統芸能と、その保存会の皆さんの取り組みに子供たちが出会いました。保存会の方から、皆さんがおはやしの音楽をつくってくれたら嬉しいなという声をかけられました。子供たちは自分たちでおはやしの音楽を作って喜んでもらいたいという思いを持って、ここから学習がスタートすることになりました。おはやしの音楽を作る活動への興味関心を持って、楽しみながら音楽づくりの活動に取り組み、自分たちの町の伝統芸能に親しむことができた事例です。
この写真は、自分たちの手で金立鉦浮立に使ってもらえる音楽をつくろうという全体の目当てを持って音楽づくりを行っている様子です。子供たち一人一人、吹き出しにあるような思いや意図を持って音楽づくりの活動に取り組んでいました。
自分たちの町の音楽を残していこうとする保存会の方々の思いを受け取り、一人一人が創造性を働かせながら、思いや意図に合ったおはやしになるように、何度も繰り返し音楽づくりに没頭する姿がありました。この姿は地域の音楽文化を受け継ぎ、創造していく過程を体験している姿であると考えられます。
続いて、中学校第2学年の題材、「感じ取ろう!福井神楽の魅力」の鑑賞の実践です。こちらも総合的な学習の時間との横断的な学習になっています。
子供たちは総合的な学習の時間で出会った地域で伝わっている福井神楽を聴いて、楽器の音色やリズムを感じ取っていきます。保存会の方々に舞い方、踊り方ですね、舞い方や演奏の仕方を教えていただいて、実際に篠笛を演奏したり、舞を踊ったりしながら福井神楽の魅力を探っていきました。最後には文化祭で神楽の舞と演奏を披露しています。それが下の方の写真になります。子供たち自身が文化を受け継ぎ、創造し伝えていく主体として文化祭で披露した後は、小学校に出向いて小学生に教えに行くという活動を行っています。
その中学校の校区にある小学校の子供たちも福井神楽を教材とした学習を行っています。ここでは「福井神楽の音楽を楽しもう」という鑑賞の学習になっています。中学生や保存会の方々に舞の仕方を教えていただき、音楽に合わせて一緒に舞う活動を通して、福井神楽の良さや楽しさを味わっていきました。体の動きを通して良さを味わうということになっています。学習の最後には保護者や地域の方々に舞を披露する場を設定しています。それが右側のお面をかぶっている写真になります。自分が地域の音楽を受け継ぐ一人であるということに、これらの活動を通して気づいていったということになりました。
続いて、中学校第2学年、「人々の思いとともに受け継がれる音楽の魅力を味わおう」の、これも鑑賞の実践です。地域の民謡である「黒田節」「炭鉱節」「いわいめでた」という3曲を教材として学習を進めました。ちなみにこの「いわいめでた」という曲は、博多山笠というお祭りや結婚式などのお祝いの席で歌われ、日常的に親しまれている民謡です。生活や社会に根ざした民謡の曲装と五音音階による旋律の特徴との関わりを捉えて、我が国の音楽の良さや美しさを味わって聴くようにすることを目指した学習になっています。学習の流れについてはスライドの左側を確認していただければと思います。3つの民謡を聴き比べる活動や、それぞれの特徴を歌って実感することを大切にして学習を行いました。音楽の良さや美しさを味わうことを、この歌う鑑賞の学習なのですが、歌うという体験を通して実感するようにしたということです。これらの活動を通して、自分自身と音楽文化との関わりを実感し、受け継がれてきた民謡の歴史や時代背景、その役割などを捉えることにも繋がっていったということです。
次のスライドをお願いします。
次は第6学年、鑑賞と歌唱を組み合わせた題材になっています。「聴いて、歌って、雅楽の世界を味わおう」の実践です。
雅楽の「越天楽」の鑑賞で、研究者である大学の先生の話を聞いたり、大学の法学部の学生さんの演奏を聴いたりする活動をしています。それが左側の写真です。雅楽「越天楽」の鑑賞曲、その理解を深めた後に、越天楽の曲装を生かして鑑賞教材である「越天楽今様」を歌う活動を行っています。
今様というのは、その当時の世相や時代背景、生活を表す流行り歌なのだということを説明で捉えた子供たちは、自分たちの生活を表す「新・越天楽今様」を作って歌おうということを考えました。歌詞については国語の時間に作っています。それが右側の歌詞になります。
この事例は、捉えた雅楽の特徴をもとに創造性を発揮しながら歌ったり、新越天楽今様を作ったりして音楽と関わった後に、次のような思いを持つことになりました。「学習の初めに聴いた時は、聴いたことある音楽だなという感じだったけれど、今日聴いてみたら雅楽越天楽のいいなと思うところがたくさん見つかりました」というものです。雅楽越天楽の良さや美しさをより一層味わっていく過程になったと考えています。
最後は北原白秋が通っていた小学校で受け継がれて大切にされている音楽活動の事例です。この学校では地域の行事として行われている白秋生誕祭や白秋祭記念式典に小学校5年生と6年生が出場する文化があります。この学校の近くには白秋記念館もあって、子供たちは北原白秋のことを白秋先生と呼んでいます。北原白秋の歌を各学年の実態に応じて教材として用い、子供たちは白秋先生に届くように歌おうという思いで学習を進めています。まさに生活や社会の中の音楽との関わりを深める姿であり、地域からしても子供たちが地域の音楽文化を継承して創造する大切な存在となっています。
以上、6つの事例、概要のみになっておりますけれども、紹介してまいりました。
地域との連携を図った音楽教育を進めることには、スライドに示したような大きく4点の価値があるのではないかと考えています。
1点目は、他世代と地域資源を生かした学びが可能となって、文化を創造する体験をすることで子供たちの学びが広がるということです。
2点目は、他教科等との関連した学習を通して具体的で実践的な学びが可能となり、学習意欲の向上に繋がるということです。
3点目は、地域の方々等との交流を通して音楽文化を実践するモデルとなる生き方に触れることができるということです。
4点目は、地域との繋がりが子供たちの社会性を育み、地域づくりや伝統文化を継承する一員としての自覚が芽生え、学びの意義、そして学ぶことの価値を見出すことに繋がるということです。
今回は主に地域の伝統音楽や伝統芸能を用いた題材についてお話ししてまいりましたが、他にも地域との連携を図った様々な音楽活動が展開されています。この後皆様と一緒にまた考えていきたいと思います。以上で私からのお話を終わります。ご清聴ありがとうございました。
【大坪主査】 続いて、藤井委員より地域連携の事例について、図画工作科、美術科の観点からご発表をお願いいたします。
【藤井委員】 藤井です。よろしくお願いします。私からは地域との連携を図った図画工作科、美術科の授業の充実というタイトルで発表させていただきます。
まず最初に考え方を示しました。教育には、なぜ地域と連携しなければいけないのかというところです。私は大学に所属しておりますが、学校現場や美術館、博物館など、それから地元の産業、地域の人々、そして教育委員会など、社会全体で文化を守り、文化をつくる子供たちを各位が協力して育てるということが重要、必要であると考えるからです。そして、そのことが社会全体のウェルビーイングの好循環に繋がっていくと考えております。
社会全体のウェルビーイングの好循環ということをお話ししましたが、このスライドでは図画工作科、美術科という授業の中でどのようにウェルビーイングを向上させていくという考えについて示しました。本スライドは「学校施設の在り方に関する調査研究者会議」の資料に基づいて作成したものです。目標はウェルビーイングの高まりと持続可能性ということです。
題材1、2、3というふうに記載していますが、これは3つの題材という考え方に加えて、年間を通してのウェルビーイングに向かって進んでいくという考え方を示しております。最初の方の題材1では個人のウェルビーイングということで、自分の将来の見通しを持って、将来何かを成し遂げることを願っている段階、その次に題材2で身の回りの人のウェルビーイングを願っているという段階、そして最後は社会全体、学校や地域、自分が暮らす地域をより良くしていきたい、そのためにはどういうことが必要であろうか、どういうアイデアがあるだろうかという考え方を持っている段階です。このような目標を持って年間のカリキュラムを構成していくということが大事であると考えております。
実践事例1は小学校の内容です。この内容は小学校、それから地域と連携して芸術教育を核としたSTEAM型学習モデルカリキュラムを実践開発したものの紹介です。地域、ここでは大分県芸術文化スポーツ振興財団や地域振興局、それから地域の教育コーディネーターという方々と、それから産業や産業界と連携しながら、生活の中にある素材をテーマとして学校が積極的に推進する、体験活動と図画工作をハブとして各教科等に広がる体験的な学びを融合させた探究学習です。
紹介する地域ではかつて養蚕業がありましたので、蚕を育てる、飼育するというのがこの学校が推進している体験学習でした。蚕の飼育ということを中心としながら、それぞれの教科等に図画工作の学びを取り入れていきました。図画工作としては、絵に表す表現であったり、影絵であったり、そして、最後1年間のまとめとして絵本を作るというパフォーマンス課題を設定しました。
図画工作への教育効果ですが、蚕を育てる中から生まれた喜びや感動、それから蚕が死んでしまうということがありますので、悲しみなどの情動や経験が表現意欲の向上をもたらし、図画工作において、蚕への思いを表すための表現方法の探究に繋がりました。そして多様な表現が生まれていきました。さらに、他教科への相乗効果というのもありました。それは子供にとってリアリティのある学びになったということです。地域の資源を活用し、図画工作の学びを取り入れたことで、他教科においても非常に実感の持った現実的な主体的な学びが生まれました。
次に中学校での事例の紹介です。「アートと言葉」というテーマのもと、美術科と国語科を中心としながら各教科等に学びを繋げていく教科融合型学習を開発し実践したものです。こちらは教育委員会、それから大分県立美術館等と連携、途中から地域の産業とも連携しました。地域全体で学習を作っていきました。中心となるのは美術科の〔共通事項〕でもあります「色」です。この「色」を中心としながら各教科の学びを展開していきました。
真中にありますのが1年間の学びの流れです。補足ですが、これは1年間を超えることも、1年生から2年生という形で2年間で育んだこともございます。
最初は地域の作家の作品を鑑賞し、その作品をもとにして国語科で鑑賞文を作成し、そして、地域にある身の回りの石を用いてそれをパウダー状にして絵の具にしてみる、地域の美を魅力的に伝える文を考える、そして現地に実際に行き、網代島というところですが、そこで観察やスケッチを行ったりし、堆積岩のチャートというのがありますが、それを採取してパウダー状にして絵の具にするというような活動を積み重ねながら、時に応じて学校美術館というものも入り、最後はパフォーマンス課題として「津久見美事典」という様々な教科、美術科を中心としながら様々な教科の学びが一緒になった事典としての作品を作りました。
美術科への教育効果についてですが、地域の自然の色をテーマとしたことで美術科のより専門的な学びを一層展開することができました。具体的には材料学や日本の伝統色、美意識などと繋げながら、言語活動も重視し、子供たちの総合的な見方・考え方を育むことができました。また、子供たちが新たな視点を持って生まれ育った地域の魅力を発見したことで、ふるさと地域への思いや愛着が深まり、各学習における自己評価が非常に高いという傾向も見られました。
他教科への相乗効果もありました。美術の感動体験が生み出す、実感を伴った新たな学びの場を他教科に提供することができました。また、美術科を中心に授業改善を図ったことで、各教科に授業改善が広がり、それが学校全体に良い影響を与え、学校教育の中で美術科がリーダーシップを発揮することができました。
図画工作科、美術科からの繋がり、新たな学びをつくるという点では、地域の資源、文化や人、自然、素材、施設、産業などいろいろなものがあると思います。これらを学習の中で、授業の中で活用することにより、様々な学問分野や各機関をつなぎ学びを深めることができると考えます。
図画工作科、美術科には様々な教科の学びの要素が含まれております。その中で各教科等の知識・技能を活用したり、またその逆もあると思います。そこで地域と連携した学びを通して、様々な教科等の学びが子供の中で繋がっていく、そして、それがわかる、できるという成功体験となり、子供の中で自己肯定感、自信が高まっていく、そして最終的には教科の資質・能力を育んでいくことに繋がると考えています。そして、それらのことを地域全体で行っていくことが非常に大事であると考えます。
以上、地域を図画工作科、美術科の学びに生かすことの良さということについて4つの視点をお示ししました。
これは生活や社会の中の形や色、美術や美術文化と豊かに関わる資質・能力の育成という視点です。図画工作科、美術科を中心に発表いたしましたが、地域と連携することで教科間をつなぐ学びの展開が可能になります。また、地域の自然や作品、アーティストなどの本物に触れる感動体験が子供たちの主体的な学習の実現に繋がると考えます。そして、学習活動を通して地域の伝統文化に触れ理解を深め、子供たち自身がその後の文化をつくりだすことに繋がっていく、地域の伝統文化の継承、創造に繋がっていくと思います。
そしてこれらのことがウェルビーイングの向上につながっていく、具体的には、多様な世代や社会との交流というものが地域と連携することで生まれますが、その中で造形や美術の働きの実感的な理解を促進し、子供の自己有用感や自己肯定感を高めていくことに繋がると思います。加えて、子供だけではなく、一緒に学んでいく授業を行っていく教師自身のウェルビーイングにも繋がっていくと考えています。私からは以上です。
【大坪主査】 続いて加藤眞太朗委員より地域連携の事例について書道科の観点からご発表をお願いいたします。
【加藤眞太朗委員】 よろしくお願いいたします。私からは地域との連携を図った芸術教育の充実に向けた高等学校芸術科書道における実践事例についてご報告いたします。
地域や社会と繋がる場を設定することで書の学びがどのように深まり、生徒の意識や態度にどのような変化が見られたのかを3つの事例から整理してお話しします。
1つ目の事例は地域資源を生かした取り組みです。地域が抱える課題として商店街の活性化に向けて施設や設備の活用と地域住民の協働を図りたいという思いがある一方、従来の物販、販促中心の取り組みだけでは限界があり、人と人との繋がり、いわばコミュニティ原理を中心とした発想への転換が求められていました。また、地域住民の文化的、精神的所産としてのふるさと意識を醸成し、地域の活性化と歴史、文化の保護、保全を両立させたいという課題もありました。
そこで商店街の街路灯やシャッターを活用し、地域住民の思いを相互に伝え合うことで人と人との繋がりを生み出すこと、地域の特色を生かし、それを活用することで地域の歴史と文化の保護と保全に役立てようというところから取り組んだ事例です。
この課題を踏まえ、普通科書道I において地域資源を生かし、社会の中で書が果たす役割について考える学習を行っています。商店街から依頼された「見る人が元気になれる言葉」というテーマをもとに、街路灯やシャッターなど実際に作品が掲示される場を意識しながら作品制作を行いました。
その結果、生徒は誰にどのように思いを伝えるかを考えながら表現するようになり、毛筆による表現の方が活字よりも自分の思いや考えが強く伝わることを実感しました。また、地域の人々との関わりを通して自分も地域の一員であるという自覚が高まり、地域に貢献しようとする意識が生まれ、書を学ぶ意義を再認識することができました。
2つ目は伝統と文化を生かした事例です。地域には郷土の伝統や文化として語り継がれてきた言葉がある一方で、その背景にある伝統的な規範意識が弱まりつつあるという課題がありました。また、そうした規範意識が子供だけのものと捉えられがちであることへの懸念もあり、子供から大人までが共通の意識を持つことで地域全体で伝統と文化を継承していきたいという思いがありました。
そこで、地域に伝統的に受け継がれる精神性を再認識することで、伝統と文化、歴史の視点から地域の特性を理解し、愛着と誇りを持てるようになること、さらに言葉の背景にある自主的な行動意識を理解することで、自らの在り方や生き方について考え、自主的な行動変容を促したいという思いがありました。
そこで総合学科書道Iにおいて、地域に語り継がれる言葉の背景にある価値観や考え方を伝統と文化として理解し、それをもとに自己の在り方や生き方について考え、書で表現する学習を行っています。生徒は書の表現の素材となる言葉を自ら考える活動を通して、先人の生き方と自分自身とを重ね合わせながら思考を深めていきました。
その結果、言葉を通して地域の先人との繋がりを実感するとともに、自己を客観的に捉えることができるようになりました。また、方言を取り入れた作品を制作するなど無形の文化にも目を向け、地域の伝統と文化を生かして自らの考えを発信しようとする姿が見られました。
3つ目は地域産業との連携です。地域では商品の魅力が分かりやすく、目を引くキャッチフレーズを求める声がある一方、地域産業への関心の希薄化から、若い世代に地域産業の良さを理解してもらい、将来的に地域に貢献する人材を育成したいという課題がありました。また、地域にはのれんや石碑など毛筆による表現が多く存在しているにもかかわらず、高校生がそれらに目を向け、その価値を味わう機会が少ないという現状もありました。
そこから、地域の特産を理解し、魅力を発信する活動を通して地元産業の魅力を幅広い世代に伝えながら地域全体を盛り上げること、生産者との関わりの中で地域産業を理解し、貢献しようとする人材を育成すること、そして書が果たす役割や価値を地域の特性を踏まえながら理解することに取り組んだ事例です。
ここでは商業科書道Iにおいて、社会の中で書が果たす役割や価値に気づきながら、より効果的な表現方法について考えることを狙いとして学習を行っています。生徒は商品のキャッチフレーズを素材とした商品パッケージや看板等の作品制作を行うために、企業の担当者との打ち合わせを通して商品の魅力を理解し、それをどのように表現すれば消費者に伝わるのかを考えました。
その過程で生徒は他者の意見を踏まえながら自らの表現の意図や構想を見直すようになりました。結果として地域や店の雰囲気に合わせた表現の工夫が見られ、地域の特性に合わせた表現がより効果的であることから、書が地域や社会と結びつく文化的価値を持つことに気づくとともに、社会課題の解決のために多様な立場から物事を捉える重要性を実感しました。
これらの3つの事例から考えられることをまとめとして述べさせていただきます。
1つ目の事例からは、書が社会に働きかける力を実感させることの必要性と、作品を通して他者に思いや考えを伝える場として地域や社会と連携した場を構築することの必要性がポイントとして挙げられます。
2つ目の事例からは、書の表現の素材となる言葉による書の表現が、過去や未来の自己や他者も含めた人と社会をつなぐ関係性を持つことを理解させることの必要性、そして文字を美しく表現するにとどまらず文化としての意味を読み解き、自己の解釈を通して表現すること、さらに書を文化資源として捉え、生徒自身と生活、地域、社会とを結びつけることの重要性がポイントとして挙げられます。
3つ目の事例からは、地域の特性に応じて書が社会で生きる場を設けながら、社会と関連した課題解決能力の育成に繋げることの必要性が挙げられます。
こうしたことから、書を通して伝統や文化の中の自分や社会や文化を創造していく自分を認識したり、自分の価値を自ら見出したりすることで、書や芸術を学ぶ意義や芸術の意味や価値に気づくことができるようになると考えます。私からの発表は以上になります。
【大坪主査】 それでは、4名の委員の方々の発表が終わりましたので、これから質疑応答の時間とさせていただきます。時間は15分程度を予定しております。ご質問等のある委員におかれましては、挙手ボタンにおいてお知らせいただけたらと思います。いかがでしょうか。
はい、それではまず廣田委員、お願いをいたします。
【廣田委員】 発表の方、ありがとうございました。お2人の委員の方にお聞きしたいのですが、1つはまず原委員にお伺いしたいのですが、小学校3年生の鑑賞のこの福井神楽の実践のところなのですが、写真を見せていただきますとお面も作ってやられているっていうような話があったのですが、子供たち一人ひとりが多様なお面を作っているのかなというふうに思うのですが、これは何か図画工作科との関連というものが授業の中であったりしたのかというところをお伺いできればなというふうに思っています。
もう一つは藤井委員にお伺いしたいのですが、2つの実践をご発表いただきましたが、この2つの実践と先生がおっしゃられていたウェルビーイングの高まり、特にこの授業を通した子供のウェルビーイングの高まりの関係性というのを、実践を通してウェルビーイングがどうだったのかなというところをお伺いできればなと思いました。以上でございます。
【大坪主査】 それではまず原委員、いかがでしょうか。
【原委員】 はい、お答えさせていただきます。この学校では結果から申し上げると図画工作としては作成していないということになります。総合的な学習の時間で、真ん中の写真が本物のお面をかぶる体験をしてるのですが、それをもとにじゃあ自分たちも作ってみたいということで、形や色を工夫するとか素材を選ぶとかというよりも、とにかく作るということが目的になっていたので、今のところ総合的な学習の時間で作っているということです。
【大坪主査】 では藤井委員、いかがでしょうか。
【藤井委員】 小学校、中学校の事例発表させていただいたのですが、ここでは小学校であれば蚕で、中学校であれば地域の岩石を用いました。最初は子供自身が明確に何か目的意識を持って取り組むというよりは教員がテーマを与えたり、子供自身がその与えられたテーマをどう解釈して自己表現するかというようなところが小学校、中学校において共通していたと思います。
これらの事例は年間を通して取り組んできた活動というのが特徴だと思います。年間を通して地域と連携することで、地域の人の暮らし、それから歴史や文化というものを知ることによって地域の中の自分、自分を見つめる視点というのが育ってくる、他の視点からみるということが生まれてきます。そして最後は小学校、中学校ともに、例えば小学校での蚕の事例であればこの取り組みをどうやって持続していこうか、この取り組みをどうやって地域に広げていこうか、私たち(子供たち)のやってきたことをどのように伝えていこうかというような、地域へ発信するということが自然の流れでなっていきました。中学校では地域産業において今まで続いてきたことが今後も同じように続いていくかどうかわからないといった、人口減や様々な課題がある中で自分自身の人生をどのようにつくっていくか、地域の中でどう生きていくか等、そういった視点、客観的な視点や俯瞰的な視点が育まれてきたということであろうと思います。
【大坪主査】 ご意見の方は後ほどまた伺う時間を取っておりますので、ご質問のお答えとしてはよろしいでしょうか。
はい、それでは次に新井委員、お願いをいたします。
【新井委員】 4人の発表の皆さん、大変ありがとうございました。とても学びになる発表でした。
日本と同じように芸術に対して結構保守的な英国では、2002年にクリエイティブ・パートナーシップという制度を始めまして、参加生徒の創造性が上がって、さらに母国語、数学、理科が成績が上がっているという、そういった報告があるのですけれども、佐藤委員にお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか。
小松宏誠さんの作品であったり、あるいは鳥取県立美術館はブリロボックスをお持ちだと思うのですけれども、例えば伝統的な作品の鑑賞と小松さんやブリロボックスであったりするオープンエンドな鑑賞が読み解きが可能な対象、それについてですね、やっぱり子供たちの反応というのはだいぶ違うものがあるのでしょうか。
【大坪主査】 佐藤委員いかがでしょうか。
【佐藤委員】 結論から言いますと、子供たちはあまり抵抗感を持たずに両方ともに向かってよく見ようとします。
これまでのワーキングの中でも少しお話しさせていただいていたのですけど、見るだけではたどり着けないのが例えばブリロボックスの鑑賞かなというふうに思っていて、見る子供の年齢とか発達段階にもよるのですが、特に中学校、高校ぐらいになるとやはりその見てこう感じただけでは不十分ではないかというふうに考えています。
ブリロボックスは、開館前の教員研修などでもどのよう鑑賞授業を組み立てるかというようなことを、本物を見ながら対話をする機会がありました。子供たちの第一印象は大だと思うので、頭から説明はしませんが、鑑賞を深めるためにどういう流れでこれがアートになったのかいうようなところを年齢に合わせて話すようなこともあります。
【大坪主査】 それでは次に大泉委員、お願いをいたします。
【大泉委員】 よろしくお願いいたします。貴重なご発表ありがとうございました。
皆様の発表から様々な人や組織との連携から芸術教科の学びがより豊かになるということが非常によくわかりました。
その中で少し観点が変わるかもしれないのですけれども、お聞きしながら個人的に特に大事だなと思ったのは、連携をすることによって子供たちにはもちろん学校の先生方にももたらされるものがあるのだということを示していくことであります。
現在、社会に開かれた教育課程を実践している先生から私がお聞きした言葉の中に、連携にかけたコスト以上に子供が育って、また自分自身も楽しかったっていう言葉が印象に残っています。ですので、先生方が連携は大変そう、とおじけづいてしまうよりも、こんなに子供が育つのだとか楽しいというような、藤井委員からは教師のウェルビーイングという話もありましたけれども、先生方にとって連携の意義や意味を実感することが社会に開かれた教育課程の実装のため、あるいは芸術教科の理解のためには必要だと思ったのです。どなたかで結構なのですので、ご実践を通してそうした先生方の様子は何か見られたかどうかっていうことを教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
【大坪主査】 はい、どなたかいかがでしょう。今お名前が出ました藤井委員、いかがでしょうか。先生方のウェルビーイングという点ではいかがですか。
【藤井委員】 今回、図工と美術両方の事例をお話しさせていただいたので、たくさんありますが、例えば、小学校では図工の授業を苦手とする、指導するのを苦手とする先生も多いのですが、子供たちが自分でテーマを見つけ、自ら進んで表現していくということに繋がりましたので、先生が図工の授業が楽しくなったということがありました。また、先生も大学教員や美術館や美術関係者、アーティストと繋がることで、いろんなアイデアなどを得ることができたというようなことが図工に関してはございました。美術も同様です。美術だけでなく他の教科の先生方にとってもいろいろ考える多様な視点を得ることができたというところが大きかったと思いますし、学校全体で取り組んでいると、学校を理由なく休む子がそれなりの割合でいますが、その数が少なくなったであるとか、これはこの取り組みの効果ではないかもしれませんが、学校や授業が楽しくなったという点では影響を与えられたのではないかと考えています。
【大坪主査】 他のご発表された先生方でいかがでしょうか。先生方の学び、先生方の変化、先生方の成長というような視点での連携という点では、何かご意見がございましたら発表の先生方からいただきたいのですが、いかがでしょうか。原先生、お願いをいたします。
【原委員】 はい、失礼します。見てきた授業もそうなのですが、自分自身も地域の方々と一緒に学びを作る、授業を作っていく上では二通りあって、1つは自分自身がその教材に対しての理解が深まったり、味わい深かったり、詳しくなるので、自分のフィルターを通って子供たちに伝えることができるという、とてもそこは喜びだなと思いますし、教師自身が芸術そのものの良さを本当に実感した話をしていく上で、授業の以前に打ち合わせをしたり、地域の人と一緒に話をして授業作りをするので、そこの喜びはあるなと思います。もう一つはおっしゃったように、子供の目の輝きが違っていて、やっぱり本物に出会うということで、本物の人の思いに触れるということで、子供が成長していく、子供の変容に対する喜びというのはあるなと感じています。
【大坪主査】 それでは他の方の委員の質問も上がっておりますので、そちらの方に移りたいと思います。では山下委員お願いをいたします。
【山下委員】 はい、山下でございます。委員の皆様のご発表を伺いまして、学校と外部の人材や施設との連携が多様に、そして豊かに実現していることに感銘を受けました。一点、言葉のニュアンスについて伺いたく思っております。日頃、特に美術に関わる方々とお話をしておりますと、「本物」という言葉をよく耳にいたします。もちろん皆様多様な意味で用いられていると思うのですが、佐藤委員はどのような思いを込めて使われていらっしゃるかお聞かせいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
【大坪主査】 佐藤委員いかがでしょうか。
【佐藤委員】 そうですね、子供たちの鑑賞の様子から感じる「本物」の良さということでお答えしてもよろしいですか。発表の中でも触れさせていただいたのですが、子供たちが見方を発見していくという場面がとてもたくさんあって、スライドの中にも逆さから見てみるとか、下にしゃがんで見てみるとか、そんな写真があったのですが、子供たち自身が作品を前にしたときに、その全体像をパッと捕まえると同時に細かいところも見ていく、近寄ったり離れたり、それから角度を変えたり裏に回ったりということをしながら鑑賞していますを捉える捉え方を子供たち自身が発見していくという姿があります。それがやっぱり「本物」と出会うことの一番大きな点かなと思っています。
【大坪主査】 はい、それでは次に道越委員お願いをいたします。
【道越委員】 はい、よろしくお願いいたします。先生方のご発表、どれもダイナミックで本当に圧倒されました。私は加藤先生の街と書道の実践に質問をさせていただきたいのですが、街を元気にする言葉を子供たちがまず考えるというところを素晴らしいなと思ったのですけれども、加藤先生、この実践は実際に先にアプローチを行ったのは商店街だったのか、それとも学校だったのか、あるいは両方だったのか、そのあたりを教えていただきたいなと思います。
【大坪主査】 はい、加藤眞太朗委員いかがでしょうか。
【加藤眞太朗委員】 結論から申し上げますと、地域です。高等学校だけではなくて小学校、中学校、様々な学校、あるいは団体にお声がけをしていく中で、この学校にも声をかけていただいて実践したというのが実情です。
【大坪主査】 それでは質問としてはこれを最後にしたいと思いますけども、小池委員お願いいたします。
【小池委員】 すごく興味深い発表ばかりで大変感銘を受けました。1つ聞きたいのですけれども、なかなか学校で他と連携をするというのは結構難しいと思うのですね。その中で、例えば行政であったり、教育委員会であったりとかがバックアップをするとか、どういうふうに協力をしていくとか、もしくは他の専門機関等がうまくバックアップをするとか、何かそのようなバックアップ等をしていただいてありがたかったなというようなこと、こういうようなことが結構大事なのではないかとかとおもうのですが、どなたか先生に伺いたいのですがいかがでしょうか。よろしくお願いいたします。
【大坪主査】 はい、行政からのバックアップ、連絡調整もあるかもしれませんけども、そこあたりのことについて何か発表された委員の方でお答えできる方ありましたらお願いします。佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】 事例1のMUSEUM START BUSの例でお話しさせてください。この取り組みは毎年小学4年生を美術館に呼ぶという、10年以上続けるという取り組みなのですけれども、3回教育委員会に説明に行きました。県内の全ての市町村教育委員会を巡りましたし、教育委員会の事務局とかも巡りました。一番最初の突破口だと感じたのは、アートを通じた学びが他にはない学びであるということを、指導主事さんが集まられる会でお話ししたときに、他教科の先生方がすごくうなずきながら聞いてくださって、今の時代だからこその大事な学びがあるということを伝え、理解していただいたところからだったと思います。今、この活動は鳥取県の教育委員会、それから行政の方も後押しをしてくれている、そんな事業になりました。
【大坪主査】 はい、ありがとうございます。他のご発表の方で何か行政との関係においてお答えいただける方、原委員お願いをいたします。
【原委員】 はい、福岡県教育委員会に所属していますので、県の事業として、例えばオーケストラを各学校に派遣するような補助事業をしていたり、なので学校で子供たちがオーケストラの鑑賞ができる場を準備するということや美術館や博物館については移動、アウトリーチで、何か教材を貸し出したり、移動の美術館、美術作品を持って行って鑑賞の場を準備するとかですね、子供たちが移動するためのバス代の補助をして、子供たちを美術館に見学に行くような事業を立ち上げたりということは行政の方でしていますので、行政の方がどれだけその芸術に関わるような場を作るかということというのは大事なことだなと思っています。
【大坪主査】 他はよろしいでしょうか。はい、それではこれ以降に続きまして、4名の委員の方々からご発表をいただいた事例も踏まえつつ、学校と地域等の連携に関する意見交換の時間とさせていただきます。ご意見につきまして、1人あたり3分程度におまとめいただければと存じます。ご意見のある委員におかれましては、挙手ボタンでお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。早速、水戸委員お願いをいたします。
【水戸委員】 今日は途中で退出しなくてはいけないので、最初によろしくお願いいたします。4人の委員の方のご発表をお聞きして、やはり芸術文化に関わる資質・能力を育成するためには、地域連携は本当に必須なことだということを強く感じました。ただ、4人の委員の方々は、様々なコミュニティにおける連携についてご発表いただいたので、それを聞きながら、現代ではそのコミュニティの構造そのものが過去とは大きく異なることをあらためて感じました。また、今日では、地域によってそのコミュニティの規模とか密度が多様化しているので、地域連携の在り方というのを一律に示すことはなかなか難しいなというのも同時に感じました。ただ、そうは言っても学習指導要領の中では、ある程度方向性を示すということは必要ではないかと思いました。
私として、音楽の観点から地域連携の方向性がどのように学習指導要領に反映できるのかと言うことを整理してみました。芸術分野における地域連携の大きな強みの1つは、皆さんの発表の中にもありましたように、学校だけでは得難い技能や経験を持つ人を招くことができる点にあると思います。これによって子供たちは質の高い音楽を直接体験することができます。例えば初めて触れる音楽でも、子供はその良さを感じることができるので、できるだけ優れた芸術に触れさせることは非常に重要だと思っています。学校では多様な様式の音楽を扱う必要があるのですが、教師が全ての分野で「本物」の体験を提供するということにはどうしても限界があると思います。そうした意味で地域の人材は非常に貴重な存在で、地域連携は大きな成果をあげると思っております。
ただ、注意すべき点としては、音楽にはどのように学ぶかということ、いわゆる学習の文脈ですね、それも含めて考えなくてはいけない側面があると思います。学校での授業だけでは様々な音楽本来の学び方や背景を十分に再現することは難しく、音だけが切り離されて扱われがちです。音楽には学習の方法そのものにもそれぞれの国や地域の伝統が息づいているので、これを継承していくためにも、地域連携の果たす役割は大きいのではないかと思いました。
この学習の文脈を学校へ持ち込むという視点で理想的なのが、学校の中に音楽などの伝承のシステムを構築していくということではないかと思います。これは決して新しい考え方ではなくて、全国で成功例もいくつか見られるのですが、学習方法を地域の文化として継承するという観点からは、学校が地域と連携しつつ、自律的に伝統を受け継ぐ仕組みを持つことが、指導要領の中でも示されると良いのではないかと思いました。
地域に学校を開く、地域の力を借りるという発想だけだと、どうしても地域の人材に依存しがちで、外から学校への一方通行となって発展性の乏しい地域連携に陥る恐れがあるのではないかと思いました。連携という名のもとに丸投げになってしまう例も残念ながら見られます。ですので、自律性を持ちながら地域の文化を継承していくというような伝承システムを学校の中に作るということを、学習指導要領の中にも方向性として示すことができたら良いのではないかと考えました。
【大坪主査】 それでは次に道越委員お願いをいたします。
【道越委員】 はい、よろしくお願いいたします。私も伝統文化ですとか、それから地域との連携という授業を研究したり実践したり積み重ねてくる中で、先ほど先生方おっしゃっていた非常にエネルギーを要する、それから人や物、お金、時間、そういった調整をしなければいけない、それが楽しいところであって、教員が人と人をつなぐ、ファシリテーターのような役割、そういった力を伸ばすためにも、こういった学習は非常に大事だと思っております。
視点を変えまして、子供の成長というお話を今日させていただきたいと思います。2年前勤めていた中学校では生徒指導が非常に大変で、言葉がなかなか通じない、指導が通じない、席にもつけない、そういった生徒さんもいる中で苦労したのですけれども、やっぱり子供が変わったのは授業だったと思うのですね。和紙でランプシェードを作る実践で、地域の方々から、町内の灯り展というお祭りで飾らせてもらいたいという依頼がありました。驚いたのですけれども、いいですよということで屋外展示をさせていただきました。地域を元気づけている、それから地域に貢献できたというその成功体験が、子供たちにとっては大人が考える以上に大きな経験だったと思います。
次に、シンボルマークをデザインして、公民館に全員分展示するいということをやりましたら、今度は国道とかバイパスの、道の駅というところの方からお話がありまして、道の駅のスタンプにしてみたいという依頼がありました。生徒はどんな願いや思いを持ってそのデザインを考えたのか、地域の方に向けてプレゼンを行いまして、実際に1つスタンプにしていただいたのですけれども、そこで改めて思ったのが、子供は私たちが考えている以上に自分の住む街のことを大切に思っているのだなということ、そして地域と学校が互いにWin-Winの関係になっていると実感しましたし、先ほど加藤先生に書道のところで私質問をさせていただいたのですが、要はどちらからのアプローチが先ですかと言った時に、地域の方々もやっぱりコミュニティ作りたい、その中で街を盛り上げたいという思いを常に持ってらっしゃる。で、これまで学校教育の中だけでは見えてこなかった、そういった表に現れてこなかった子供たちの街を思う思いですとか、もちろん地域の方々が子供のことを思う、これからの未来のことを思う、大人の思いというものも目に見える形にしてくれた実践、今日の先生方の実践もそうですし、自分も実際に実践をして感じた、見えてこなかったものを見えるようにするのが、芸術のアートの役割だったのかなと思いました。
この中学校の学校教育目標が、先にそれがあるべきなのですけど、自立、共生、郷土愛だったのですね。つまり自分たちの住む地域に貢献する、地域を愛することは学校が目指す姿でもあったと思います。私はカリキュラムマネジメントの渦の中心に美術科があるのではないかと非常に誇らしく思いました。大変だった子供たちは少しずつ自己肯定感を高めて、いつの間にかかっこいい先輩に成長していました。美術でどんな教科を育てるのか、学校教育目標に向かってそれぞれの教科がやれることは何かを改めて考えることが大事だと思います。連携の前にですね。それも、もちろんこんなことをしてみたいとか、こういう作品を作りたいという教師の一方的な願いだけではなくて、目の前の子供たちがこうだからこういうふうにしたいのだ、なんとか子供に力をつけたい、幸せにしたい、そういった子供を思う、まず子供ありきというところから生み出された、よしやってやろうという教師のエネルギーであったり、大人のエネルギーであったり、実際に子供の力が地域を活性化させて、大人をも動かすと思いました。だからこそ地域の良さや課題に教員や学校がまず目を向けて、総合的な学習などとも連携を図りながら、美術科こそ社会に開かれた教育課程を牽引すべきだなと思っています。皆さんの実践もそうだったと思います。私から以上でございます。
【大坪主査】 それでは続きまして、加藤泰弘委員お願いをいたします。
【加藤泰弘委員】 先ほどは、美術館、学校との連携、教科横断型学習、地域の魅力を再発見し、文化資源として活用していく取り組みなど、先進的な四つの取り組みを紹介していただきありがとうございました。私は書道が担当ですけれども、加藤眞太朗委員から、書というのがその言葉で豊かに伝えるということと、その地域連携を組合わせたですね、書を文化資源として捉えるというような新たな視点を示していただいたのは非常に感銘を受けたところでございます。
これらはまさしく、芸術によって心豊かな生活や社会を創造していく態度を養うということに繋がっていく活動であるというふうに思います。今後芸術における伝統と文化の学習の充実などについては、別途議論があるのかもしれませんが、この地域連携を図るにあたっては、文化というのが非常に重要なキーワードになってくるのではないかなと考えております。特に我が国の文化、日本文化と言っても良いかもしれませんが、我が国には、郷土にはですね、多様な文化や芸術の広がりがあり、これまで伝承され発展し、これを将来に受け継いでいくということが重要であるとは思います。その中で、地域連携を通してその郷土愛を育む、これ何度も出てきましたけれども、我が国の文化芸術の豊かさに触れ、その実感的な体験活動を通して、いわゆるそのグローバル化が進展する中で、郷土の文化や自国の文化について語ったりですね、紹介したりすることができる、伝えるというのですかね、そういった力を身につけるという視点も重要であるのではないかと考えております。
もう一つ挙げますと、美術館・博物館との連携について、書道でもこれまで様々な実践事例がございますけれども、その連携の在り方に割と課題があったと感じているところです。重要なのは、生涯にわたり芸術を愛好する心情を育むということが目標にもございますので、そういった視点から、表現するということに加えて、鑑賞者という、書道では鑑賞者を育てるということがなかなか十分に行われていないということもありますので、鑑賞の技能なども議論されておりますけれども、作品をどのように見たらいいのかというようなことについてですね、実際の博物館・美術館との連携を図ったり美術館・博物館というものがどこにでもあるわけではございませんので、美術館・博物館のホームページ、サイトなどを効果的に活用したりしながら、次の段階で、生徒が自ら美術館・博物館に出かけていくことができる素地を養うということも重要であるのではないかと考える次第です。以上でございます。
【大坪主査】 それでは続きまして、廣田委員お願いをいたします。
【廣田委員】 今日本当に先生方の素晴らしい発表を聞かせていただきまして、改めて連携をしていくことの大切さというのを感じさせていただきました。その中で私の方で考えたのは2つ感じたことがございます。まず1つは、やはりこの連携をしていくということが、子供たちにとって本当にかけがえのない良い体験になるということです。佐藤委員からもありましたが、この見方を発見していくというような、そういった子供たちの姿というのは、やはりこう美術館であったり様々な地域との連携で見えるところなのかなというふうに思いました。これは今後検討していくと思うのですが、鑑賞の技能にも繋がっていくことになるのではないのかなというふうに考えました。
あともう1点は、この連携していくということで、藤井委員からもご意見がありましたが、学校だけではなくて地域だったり行政だったり、そういったところが連携していくというところで、本市さいたま市にはうらわ美術館という美術館がありますが、そこには教育委員会の指導主事が所属しておりまして、そことの連携を図って学校は、美術館で鑑賞授業をするということもできますし、また美術館のその指導主事が学校の方に出向いて出前授業をしてくれたりとか、そういったことも可能になっています。先ほど話もありましたが、さいたま市でも近い学校ばかりではありませんので、そういった美術館から離れている学校がどのように利用できるのか、そういったところをいろいろな行政であったり地域の方であったり、そういった方々がうまく連携を図って、子供たちにそういった体験を味わえるような環境を作っていくということが大事なのかなというふうに感じさせていただきました。ありがとうございました。以上でございます。
【大坪主査】 それでは続きまして小池委員、お願いをいたします。
【小池委員】 非常に興味深い、ご発表で感銘を受けました。私も先ほどの質問もあったのですけど、やはり実物、リアリティ、あと実体験、それから教科を超えた学びですね、これらが大切なことだと改めて思いました。それからさらに異年齢、子供と地域の人というのが繋がっていくというのは素晴らしい活動なのかなと思いました。で、思っていたのはですね、3ページにあったその地域との連携を図った芸術教育の充実について、どのように改善を図ることができるか、あと外部人材や学校外の文化施設等の連携の在り方について、どのような改善ができるかということですけれども、ただ地域と一言に言いましても、やはり各学校の立地状況によって大きな違いがあると思います。古くから歴史がある地域であったり、新しく開発された地域であったり、あと外国に繋がる児童生徒が多く集まる地域など、各学校、校種により一言に論じるのはやはり難しいなと考える面もあるかと思います。
そのような中で、各学校の現状に沿って考えられることが、まずもって大切なのかなと思います。そしてその上であえて言うのならば、鍵となるのは、改めて捉え直すことは、やはり開かれた教育課程ということをもう一度考えて、そこに戻ることが大事かなと思っております。多様な状況にある学校での地域連携については、基本に立ち返って地域の人的物的資源の活用について考えることが大切なのかなと思います。身近なところでは、保護者やPTAとの連携、地元町会との連携、その連携をもとに芸術資源を探し出すこと、そこからたどっていき、芸術につながっていくようなことは可能なのかなと考えること、保護者から芸術や文化に関係のある民間企業等へ繋がるというようなことも考えられるかなと思っております。
外部人材や文化施設等との連携と考えると、どうしてもいきなり文化人とか、伝統工芸伝承者とか、あと諸機関とか、そういうようなところとの施設との一足飛びに考えがちではありますが、より身近な人との繋がりを大切にすることによって、芸術や文化施設の人材と繋がっていくことも考えられるのではないかなと思っています。やはり大事なのは、学校現場が無理なく連携できる在り方を考えていってもらいたいと思っております。
一方で先ほどもご質問したのですけれども、学校現場だけではなくて、例えば教育委員会と行政との連携ですね、そこら辺で後押しをしていただくということが非常に大事なのかなと思います。博物館や美術館、音楽堂等の施設との繋がりをどのように繋げるか、今以上に積極的に考えてもらうことが、やはりなかなかこう繋がりがうまく出てないという先ほどのデータもありましたが、その辺が意味があるのかなと思っております。あと自治体においてもいろんな実態があると思いますので、多様な問題点もあると思いますので、例えば国レベルでの後押し、先ほどもありましたけれども、例えば国立アートリサーチセンター等の機関も国ではあると思うのですけれども、その辺のところと活用していくのはこれからもっと可能なのかなと思います。昨年度見てきたのですけど、例えばドイツのある市ではですね、先ほどの埼玉の事例があって、指導主事の先生がいらっしゃるということでしたが、ドイツのある市では、博物館先生という方がいて、半分は学校にいて半分は博物館で働くと、だからこれから学校に行って働きます。このあと授業あるのよ、みたいなこともあって、子供たちと博物館をどんどんどんどん繋げていくというような事例もありました。何かそのようなこともこれから大切になってくるのかな、1つの鍵になってくるのかなって思いました。
もう一つですね、教科横断的な視点、それはやはり大切だと思います。先ほどの藤井先生のお話もありましたけれども、それがやはり芸術が社会と学校、教科間をつなぐハブとなる、それがやはり芸術教科の意義の1つとして考えられるかなと思っております。そのようなことで芸術教科が、教科横断的な学習を通した地域や社会との繋がりの中ではとても大きいですし、児童生徒にとっても豊かな学びに繋がると考えています。私から以上です。
【大坪主査】 それでは次に大泉委員お願いをいたします。
【大泉委員】 よろしくお願いいたします。ご発表を聞かせていただいて、考えたことをいくつか申し上げます。1つ目は、先ほど来お話が出てきていますけれども、連携する上で一番重要なのは、やはり連携するもの同士で、育てるべき子供の資質・能力が共通理解されているということかと思いました。つまり学校と学校外、あるいは教科とその他の教科の内容、学習内容であるとか組織であるとか人が繋がるためには、その前提として育てたい資質・能力観で繋がっているということが肝要だということを改めて感じました。このことは成功している事例においては自明化されているので、あまり自覚化されない。だけれども、じゃあそれを内容だけそっくりそのまま移し替えればできるのかというと、そんなことはなくて、実は今日ご発表の方々もとても短い時間の中でお話しされたので、おそらくもっと機微に富んだ対応であるとか関わりといったものが多様にあったと思うのです。それを一番集約されるのが、その育てたい資質・能力観で繋がっていることかなと思いました。さらにこのことが意味していることとして重要なのは、今考えている学習指導要領を学校外の人が読んで理解していただけるということが前提であるということを思い至った次第でございます。
2つ目なのですが、そのことに関連しますが、連携においてはやはり芸術各教科の見方・考え方がその学習プロセスにおいて正しく位置づいているということが必要だということを改めて感じました。特に小学校においては、指導する先生が全科担当の方でございますので、音楽科や図画工作科の見方・考え方が連携において正当的に位置づいているということが重要であります。例えば図画工作科においては単なる物作りであるとか作品作りのように手段化されないということが必要です。図画工作科の場合は意味や価値をつくりだすという見方・考え方がその学習において実現できているかということが必要かと思いました。
もう一つなのですが、連携先についてであります。今回ご発表いただいた連携については本当に諸手を挙げて賛成し、そして感動する内容でございますけれども、一方で子供とか学校を取り巻く環境というのは日々一刻と大きく変化していると思うのです。連携する対象、今回の場合は外部人材や学校外の文化施設等や地域とは何かということについては、今申し上げたような大きな変化に従って考えていくことも必要なのではないかなと思いました。つまり連携先として地域や文化施設、自明化された文化の施設はもちろんのこと、さらに連携できるような、自明化されていないような資源もあるのではないかということを今後考えていく必要があるのではないかと思いました。個人的なことなのですけれども、昨年、お笑い芸人の方と図画工作の対談を行わせていただいたのですが、その対談を通して、子供のクリエイティビティのありように対して、つまり先ほど申し上げたような育てたい資質・能力観についてお互いに共感し合うことができたのです。で、このように一見芸術であるとか学校とは関係のなさそうな対象や資源、いわば文化としても自明化されていないような対象も連携の対象として見出していくことが必要なのではないかなと思っています。例えば、今、多くの企業がCSRという取り組みを超えて子供の芸術活動であるとか子供のクリエイティビティを応援してくれています。その中には映像メディアの分野も含まれているかと思います。また、これは思いつきなのですが、子供であるとか保護者が日常的にカジュアルに訪れている機会や場所、例えば公園であるとかアミューズメントパーク、ショッピングモールといったところも子供たちの生活の場であり、今後文化がつくりだされる契機としての可能性を有している、連携の対象なのではないかと思いました。
さらに我々芸術教科で必ず位置づいているコンクールです。そのコンクールも育てたい資質・能力観の共有を前提としながら、さらに有意義に活用していく、共に子供を育てる組織、立場として連携していくということが今後非常に重要になってくるのではないかなと思います。そのコンクールの多くはいろいろな外部組織が関わっています。企業さんが関わっている場合もあります。そうした子供の創造性を応援するいろいろな立場の方とコンクールという場においてどのように有意義に連携していくかということは、今後問われていくのかなと思っております。まだまだ他にもいろいろな対象先あるかと思いますので、考えていければと思っています。
【大坪主査】 それでは次に稲委員お願いをいたします。
【稲委員】 はい、よろしくお願いします。4人の先生方、事例の発表ありがとうございました。当然のことなのですけれども、学校の中では教室という箱の中で音楽、算数というふうに区切られて教科を学んでいますが、社会の中ではそういうものが線で区切られているわけではないので当たり前なのですけれども、学校での学びが生活や社会の中に置かれたときに教科横断的総合的に力が発揮されるということを再認識するご発表でした。私からは連携の意義と方法について2点意見を述べさせていただきます。
本日のご発表を伺って、芸術科の学びのフィールドが地域などに広がっていくことで、子供たちの学びはより探究的になるというメリットを伝えていきたいというふうに感じました。現在、総合探究のワーキンググループの方の皆様で探究の質というものの考え方について、課題の質、プロセスの質、成果の質の3つで検討されていると思っているのですけれども、このうち課題の質、プロセスの質に関しては、例えば総合的な学習の時間で出会った地域の伝統芸能の担い手減少という課題を自分ごととして捉えることができたとして、そうするとこう音楽科の活動中もそれを根底に持ちながら活動することで、音楽による試行錯誤が自分はこの音がいいと思うという自分の思いと、おはやしとしてはどうだろう、地域にとってはどうだろうというふうにより多角的、そして探究的になるというふうに考えます。そして成果の質の向上としては皆様がお話しくださった通りなのですけれども、自分にとって社会にとっての芸術の意味を生涯にわたって考えていくことに繋がったり、それは引っ越ししたとしてもそうだと思うのですよね。そして地域や技能を追求していくことに繋がったりするなと感じています。
2点目として、方法についてです。子供たちが地域の芸術文化と関わり、子供たち自身のそれが生活と結びついていくには、教員だけがそれを担うのは先生方おっしゃっていた通り持続可能という観点から無理があるなと感じています。これは芸術科だけの問題ではないかもしれないのですけれども、芸術科は文化の担い手を育てることが使命の1つであると考えたときに、特に持続可能かどうかということは大切な視点かというふうに感じています。現在全国の7割程度の小中学校でコミュニティスクールが導入されていると思いますが、例えばこの学校運営協議会と本日ご紹介いただいたような取り組みの教科としての狙いと地域の願いをそれぞれ共有して、協力を超えて地域の皆様には担い手になっていただく、取り組みをつないでいくことに加わっていただくということを働きかけていきたいなというふうに、それにはどうしたらいいかということを考えています。私からは以上です。
【大坪主査】 この後4名の委員の方が挙手されております。次の論点もございますので、今挙手をなさっている4名の方でこの分は終了させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは次に新井委員お願いをいたします。
【新井委員】 資料の14ページをお願いします。芸術文化を体験的に学ぶということは、日常生活、日常の学校生活では味わえない空気感を味わえるということで、大変強いインパクトを子供たちに残します。で、そのインパクトというのは心を開く機会でもあって、新しい価値を学べる環境が整っている状態と考えていいと思います。この機会を生かすことが大切で、単に鑑賞をさせたら終わりということでないようにしたほうがいいと思っています。私たち自身のことを考えても、私たちの周りには当たり前に、人の生き方を表現した小説があったり、アニメや漫画があったり、そういう世代に我々生きているわけです。そこから人の生き方の影響を受けている。で、その影響を受けたその背景にはやっぱりその作品のインパクトがあるのですね。で、心が開かれた状態で作品に表された生き方が入ってくる。ですから、そういった鑑賞する体験のときに、どういうふうに学びの機会に変えていくかということが大切で、これに参考になるのは演劇だと思います。演劇はですね、学習の転移に関するエビデンスが認められるというふうに言われていまして、なぜかというと、やはり演劇の場合は、観客席で見ている状態からステージ上に上った状態で全く違うわけです。つまり当事者意識を持った中で学びができている。なので、学習の転移に関するエビデンスが認められる。こういった鑑賞する体験のときでも、鑑賞体験などの振り返りで意見交換し合ったり、それから作家の言葉を聴くということは、子供たちをステージの上に上げるという、そういう意識を持たせるということでとても大切なのだろうなと思っています。
それから、14ページにはないのですけど、地域の伝統工芸や伝統芸能を学ぶこともとても大切で、これらは、芸術家の美的な体験だけではなくて、その地域の人が地域の資源を生かすためにどんな苦心をして産業として立ち上げていったのか。それが経済的にその土地にどんな潤いをもたらしてきたのかという、地域の先人たちの努力だとか継続的な営みを味わうことでもあって、これらは、特に高等学校の子供たちにはとてもプラスになるかなというふうに考えています。私からは以上です。
【大坪主査】 それでは続きまして、齊藤主査代理お願いをいたします。
【齊藤主査代理】 はい、お願いいたします。資料1の5ページを、ご準備いただけますでしょうか。まずご発表いただきました4名の皆様、本当に貴重なご発表ありがとうございました。芸術教育の可能性といいますか、ワクワク感というかな、そういうものがさらに広がっていくような、そんな思いがいたしました。それでは私から1点ですけれども、5ページのところに現行の学習指導要領の具体的な記述があります。音楽のところでご覧いただきたいのですが、下から2つ目の黒丸ですけれども、このところに児童が学校内及び公共施設などの学校外における音楽活動との繋がりを意識できるようにするなどと書かれています。この公共施設などという言葉が検討の余地があるかなと思います。先ほど大泉委員からご指摘がありました、その文化資源の対象の広さといいますか、これからの時代はさらに多様な文化資源が溢れる中で、その中で学校での授業においての資質・能力の育成と絡めながらではあるのですが、先ほどの公共施設という言葉がですね、やや限定されるようなイメージもあるかなと。公共施設などでもいいのですけれども、公共施設、公共に限らず民間、個人、そして地域など、様々な対象となるものがあると思うので、例えばこのところを文化施設などとするとか、またはこのところは児童が学校内及び学校外における音楽活動とのというふうにもう飛ばしちゃうとか、いくつか検討の余地があると思います。はい、以上です。
かなと思いまして、発言をさせていただきました。はい、以上です。
【大坪主査】 それでは続きまして、齊藤主査代理お願いをいたします。
【齊藤主査代理】 はい、お願いいたします。資料1の5ページを、ご準備いただけますでしょうか。まずご発表いただきました4名の皆様、本当に貴重なご発表ありがとうございました。芸術教育の可能性といいますか、ワクワク感というかな、そういうものがさらに広がっていくような、そんな思いがいたしました。それでは私から1点ですけれども、5ページのところに現行の学習指導要領の具体的な記述が記されています。このところは音楽のところでご覧いただきたいのですが、下から2つ目の黒丸ですけれども、このところに児童が学校内及び公共施設などの学校外における音楽活動との繋がりを意識できるようにするなどというふうに書かれています。この公共施設などという言葉が私自身では検討の余地があるかなと思って、今発言をさせていただいているのですけれども、先ほど大泉委員からご指摘がありました、その文化資源の対象の広さといいますか、これからの時代はさらに多様な文化資源が溢れる中で、その中で学校での授業においての資質・能力の育成と絡めながらではあるのですが、先ほどの公共施設という言葉がですね、やや限定されるようなイメージもあるかななどと書かれているので、公共施設などでもいいのですけれども、公共施設、公共に限らず民間、個人、そして地域など、様々な対象となるものがあると思うので、例えばこのところをもう公共施設とするならば、仮にですね、文化施設などというふうにするとか、でもそれもふさわしいかどうかね、検討の余地があるのですけど、またはこのところは児童が学校内及び学校外における音楽活動とのというふうにもう飛ばしちゃうとか、いくつか検討の余地があると思うので、公共施設を代表としていいかどうかなというところを少し検討する必要があるかなと思いまして、発言をさせていただきました。はい、以上です。
【大坪主査】 それでは次に森委員お願いをいたします。
【森委員】 はい、よろしくお願いいたします。まず4名の先生の事例報告も大変感銘を受けました。私も実は大学の実践において、学外との連携をかなり積極的に行っています。例えば、パーキンソン病患者の支援を行っているNPO法人がありまして、そことの連携によって学生にドキュメンタリー作品だとかドラマ作品を作らせたりする、そういう映像作品を制作する中で社会に貢献することを経験させています。学生はそれで、学生は自己肯定感を高めて非常に大きく成長することを実感しています。今日のご発表のような事例が小学校、中学校、高校でどんどん増えることによって、本当に充実してくるのではないかということが大変期待できると感じています。あともう1つ大学では女子高校生を対象としたフォトコンテストというのも実は主催をさせていただいており、私も18年間審査委員長を務めさせていただいているのですけども、大泉委員が指摘されていたように、高校からの積極的なアプローチを期待するところなのですけれども、実際のところ美術の専科を持っている工芸高校のようなところだとか、あるいはクラブ、写真クラブの活動からの参加が中心でして、通常の美術科の授業からは応募がなく対象にはなってない。つまり写真というメディアの教育は行われてなくて、外部のコンペに対して教育としては目を向けられてないのかなという実感を持っています。
そういった点も踏まえながら、外部人材との連携について1点申し上げたいのですけれども、美術教育に関係する表現分野というのは本当に多様な広がりと高度化も進んでいると思います。連携というのがますます必要ではないかというふうに思うのですけども、例えば先ほど申し上げたドキュメンタリーとかドラマだとか映像メディアを用いた表現というのは非常に高度だと思います。動画の撮影手法とか編集手法、あとMAと言われるマルチオーディオの手法など、これまでの造形表現とは全く異なる表現手法の理解だとか習得が必要です。こうした表現手法の教育をこれまで造形的な表現を専門とする先生に委ねるのはかなり無理があるのではないか。しかしながら社会には非常にニーズがありますし、先ほど申し上げたNPOのようないろんな連携先に対して貢献をする、社会に対して貢献するということが可能です。そういう意味では現場の先生たちは、例えばリタイアした映像制作の経験者だとか美術系大学の大学生とか大学院生、あるいは地域のアーティストなど外部の多様な人材と対話をしながら連携をして、一緒に教育プログラムを作り上げていくという、そういうパートナーシップを育てることが極めて重要だというふうに思います。そうした連携を進めるために、先ほどイギリスの例も出ていましたけれども、制度設計も含めて必要になるのではないかというふうに考えています。
【大坪主査】 それでは、山内委員お願いをいたします。
【山内委員】 はい、まず初めに、4人の先生方の大変示唆に富むご発表をいただきましてありがとうございました。私自身もこれまでの学校での指導の中で、例えば和楽器の必修化になったときに外部の講師の先生に来ていただいてご指導いただいたり、地域に能楽堂ができたときに生徒を連れて行って、その場に身を置くだけで生徒の意識が変わるというようなところを体験し、この外部との連携、文化施設等との連携については非常に重要だなと感じているところでございます。今日皆さんからお話しいただいた中で、やはり本物に触れるというところをワードとしても出ていましたけれども、非常に重要だなというふうに感じておりました。
さらに、もう1点私の感じているところから申し上げますと、その本物に触れて体験的に子供たちが学んだことが、授業に戻ったときに、学校での学びにどういうふうにそれが生きてくるか、学習指導要領でいうと指導事項、普段の学習とどのように結びついていくか、それによってどういう資質・能力を高めていくか、そのあたりの視点を持って、全体の年間指導計画であるとか、学校全体を通した教育活動の中でどう位置づけていくかということが非常に重要なのではないかなと改めて感じさせられたところでございました。
その中で課題としては、特に中学校、高等学校においては、やはり授業時数との関連があるのだろうというふうに思います。先生方が、校外の施設を活用したいとか、外部の先生方をお呼びしたいというふうに思っても、全体の授業時数や他の学習内容との関わりの中で、その時数をどれだけ確保できるかということは常に考えているところではないかなというふうに思っているので、そのあたりは1つ課題になるのだろうというふうに思っております。また、先生方が連携調整するにあたって、やはりどうしても業務量が増えてくるというところですね、そのところとの兼ね合いであるとかが1つポイントになるだろうと思っておりまして、先ほどどなたかのお話にもございましたけれども、地域と結ぶコーディネーター的な役割を担う人材などの方々がいらっしゃれば、先生方のそのアイデア、子供たちへの思いというところをつないでいただくような方がいると非常に有用なのかなというふうに感じたところでございます。以上でございます。
【大坪主査】 それではここで5分間の休憩を挟み、論点2へ進みたいと思います。それでは現在22分ぐらいかと思いますので、27分ぐらいから再開をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
( 休 憩 )
【大坪主査】 それでは、議事を再開いたします。続いて、論点2といたしまして、高等学校芸術科における学びの改善・充実について、まず事務局より資料の説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 失礼いたします。それでは資料1の15ページ目でございます。論点2といたしまして、高等学校芸術科における学びについて、どのように改善・充実することができるかということを設定させていただいております。下の枠囲みにございますように、現状の高等学校芸術科におきましては、音楽、美術、工芸、書道を選択して履修をするという形をとっておりますけれども、その学習内容につきましては、それぞれの専門に関する内容が全体を占めているという形になっておりまして、芸術そのものを学ぶ機会がないといった状況にございます。このようなことを踏まえまして、論点に関しましてご意見を頂戴できればというところでございますが、その際の検討の視点例といたしまして、下の点線枠囲みに3点挙げさせていただいております。
1つ目が科目の導入段階におきまして、生徒が小・中学校における学びを踏まえ、芸術を学ぶことの意味や価値など、「芸術」そのものを学ぶ機会の設定でありますとか、幅広い分野を設けることについて、どのような改善が考えられるかということ。また2つ目といたしまして、科目のまとめ段階におきまして、「芸術」に属する各科目の芸術分野に関わる探究的な学習を設定するなど、生徒が身に付けた資質・能力をもとに芸術の意味や価値を追求し、心豊かな生活や社会の創造に繋げていけるような学びの充実について、どのような改善が考えられるかということ。さらに3つ目でありますけれども、限られた授業時数を前提とする中で、教師の指導力向上のための研修でありますとか、教科書・教材、あるいは教員養成課程など、丸の1、丸の2といった芸術科の改善充実を図る際に留意すべき点、あるいは考えられる対応については、どのようなことが考えられるかを挙げさせていただいております。
次の16ページ目をご覧いただけましたらと思います。これは前回、第5回のワーキンググループの資料ですけれども、高等学校芸術科の教科目標につきましては、今回の改訂でこの黄色マーカーを付した部分、芸術そのものについての学びが充実できるように、例えば知識及び技能に関しましても、各芸術分野の特質や芸術文化について理解するということでありますとか、思考力、判断力、表現力等に関しましては、価値意識をもって芸術のよさや美しさを深く味わうということ、あるいは学びに向かう力、人間性等ということに関しましては、芸術によって、心豊かな生活や社会を創造していく態度を養うといったようなことも、盛り込んではどうかというところで、現状ご議論いただいているところでございます。
このような中で現状の高等学校芸術科の科目の履修状況が17ページにございます。高等学校の教育課程の編成・実施調査の結果となりますけれど、例えば音楽I、美術I、工芸I、書道I、これらは必ず履修することとなっておりますので、合わせますとほぼ100%という状況となっておりますが、IIやIIIを付した科目になりますと履修の割合が急激に下がっている状況となります。このような中で、Iを付した科目では、18ページにございますように内容にいきなりはいっていくかたちとなっておりますが、この科目の内容構成の在り方に関しまして導入あるいは、まとめの段階で何か改善できることがあるのかどうかということを論点に挙げさせていただいております。なお、このことに関しましては、19ページの令和6年12月25日文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議の二つ目の黒丸にございます芸術を学ぶことの意味、価値など「芸術」そのものを学ぶ機会の設定や、幅広い分野を学ぶ機会を設けるなどの改善が必要であるといったご提言にも関わる論点となります。事務局からの説明は以上です。
【大坪主査】 それでは論点2について意見交換を行います。ご意見等ある委員におかれましては、挙手ボタンにてお知らせいただけたらと思います。早速、加藤泰弘委員お願いいたします。
【加藤泰弘委員】 資料19ページ、先ほど説明がございましたけれども、文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議の委員も務めさせていただきましたので、その議論の経緯や背景も含めて発言をさせていただければと思っております。これまで学習指導要領の冒頭に芸術科の目標が示されてまいりましたけれども、これが十分に活用されていないということが考えられます。現状では各科目の学習の冒頭に芸術を学ぶという視点は意識されず、すぐに各科目の内容に進んでしまうという実態があるのかと思います。
検討会議の主な意見をご紹介しますと、義務教育段階では確かに音楽・図画工作・美術の学びはありますけれども、芸術という学びは設定しておらず、幅広い視点から芸術という概念に触れる機会がないわけでございます。また、芸術の意義や価値、また美などについて考えるには、小中学校での義務教育の学びを発展させて、高等学校段階で改めて意識を促すことが望ましいのではないかということでございます。また、選択した科目の学習の冒頭で、芸術には様々なジャンルや表現形式があることや、芸術の幅広さや多様さを十分に理解した上で、選択した科目を学ぶということを自覚することなどには、とても意義があるのではないかと思います。
また、現行の学習指導要領の改訂では、高等学校芸術科で〔共通事項〕を初めて示したということが、改善充実の目玉であったと思うのですけども、次期改訂において高等学校において芸術科を貫く共通する指導内容を示すことは、改訂の大きな視点にもなるので、良い方向ではないかと考えているところでございます。
次に実際の充実の方向性についてお話をさせていただきたいと思います。私の考えとしては、美術の教員が音楽や書道について授業をするというような、科目横断的にそれぞれの科目の内容を授業の中で扱おうというものではないわけです。また、いわゆる芸術学のような大学の授業を平易にしたようなものを専門的な形として扱うというものでもありません。高等学校の生徒の学びとしてそれは適当ではないと考えております。また、芸術科の教員は非常勤講師が非常に多いわけですので、教員が混乱したり指導の大きな負担となったりするということは避けるべきであると考えております。
そのような前提に立った上で、まず各教科のその冒頭の部分で、音楽・美術・工芸・書道だけではなく、芸術には様々なジャンルがあります、また新たなジャンルもあるし、それらが独自の日本文化を作り上げている。あるいは小中学校では音楽・図画工作・美術の学びがあり、国語における文学も芸術とも言えると思いますし、その多様な芸術の中で生徒が各教科、音楽・美術・工芸・書道を選択して学習していくことを再認識させるという取り組みであるとか、芸術とは一体どういうものなのか、生活や社会の中でどのような役割を果たしているのかといった視点から探求的な学びを設定していくことなども考えられます。生徒や学校の実態に応じて、美や文化・感性などについて考えていく方法もあるかと思います。
そして、各科目のまとめの段階で、各科目での表現や鑑賞の学習活動を踏まえ、16ページの目標や見方・考え方に示されている内容がキーワードになると思うのですけれども、文化や芸術の広がりと多様性、芸術が生活や社会に果たしている役割、芸術を学ぶことの意義や価値、それらを授業の冒頭で考えていったことが1年間の学びを通してどのように変わったのかということを自覚させるというようなこともあるかと思います。芸術の楽しさや面白さ、見方・考え方の広がりや高まり、あるいは学ぶことの意義や価値を再度考えてみることで、生涯にわたって芸術を愛好していくことに繋げられればと考えている次第でございます。
次に示し方の問題なのですけれども、検討会議の委員同士では共通の指導事項を示す方法もあるといったような意見もありました。一方、その評価を考えた時に慎重に検討していく必要があり、芸術科の見方・考え方等とも強く関わりますので、芸術科全体を貫く内容を扱うことから評価には適さないということも考えられます。また、芸術科の目標や見方・考え方の解説レベルで、このようなことを一旦示した上で、各科目の内容の取り扱いなどで共通の文言を示す方法なども考えられますので、実践上の課題に照らし合わせて今後検討する必要があるのではないかと思っております。
また、実現にあたっての課題ですけれども、教員研修などが必要かと思いますので、実現にあたっては教職員支援機構などを活用するなどして、指針や指導の具体例などを示していくことなども考えられますし、また教科書への反映ということで、教科書の冒頭にこういった内容が共通に示されるよう、教育課程説明会等で教科書会社等の周知なども考えていくこともあると思います。また、指針やこういう指導の具体例を示したりしていくことは、現在の芸術の科目選択がクラスの編成の関係上、高等学校入学前に希望を取って決めていくという現状を踏まえて、各学校が提示していく芸術科の説明資料の冒頭部分への反映なども期待できるのではないかと考えております。現状こういった実践例が不足していることもありますので、実践・検証協力校などで実践例を蓄積して提示していくという方法なども考えられるのではないかと考えております。以上になります。
【大坪主査】 それでは次に新井委員お願いをいたします。
【新井委員】 はい、16ページをお願いしたいと思います。私は小中の教育課程では今まで創造性や体験というものが大切だということで申し上げてきたのですね。それが社会に出てからの思考や判断の大切な核になると考えてきたからです。高等学校の芸術教育では、創造性だとか体験的な学びを今後に向けてどう方向づけるかという論点が大切かなと思うのです。もちろん先ほどの加藤委員のおっしゃった入り口の部分もとても大切だと思うのですけれども、私からは出口のお話をします。
これから社会に出ていく高校生は、内面を耕す学びと同時に、社会に出て社会を支える、それから社会を作っていくという外へ向かう学びの在り方が重要ですね。もし高校段階で芸術教育が芸術の内側にとどまるのであれば、専門教育として見なされる恐れがあります。という意味で言うと、外側に向かう在り方が大切という考え方ですね。先ほど申し上げたように、社会を支える、作るという2つの視点ですけど、これは社会を健全に進歩させる上では欠かせない観点です。OECDでもエージェンシーというふうに呼んでおりまして、この社会を支えたり、それから新たに構築したりという意識化は重要と指摘がされています。
支えるというのは、今ある大切なものをどう支えてアップデートしていくかというところですし、作るというのは、これまでの常識から一歩進めて新しい調和の形をどう作り出すかという、そういうことです。創造性にはそれを支える基盤的な能力がたくさんあって、例えば美術科の学習では、1つは観察することですね。その観察することの対象を社会に向けていくと。その眼差しの解像度を高めていくということが、社会がどういうふうになっているか、複雑な要因が絡み合っていて、また矛盾もはらんでいるのですけれども、私たちの生活を支えています。解像度を上げることによって、その矛盾がなぜ生じているのかについて気づいたり、そのことをどう判断したら良いのかという、その根拠となるのが解像度の高い観察力だと思うのです。芸術で学んだことを外に向けて使っていくということですね。
そういう意味で言うと、16ページのこの目標のたたき台の中に、もうちょっと外に向けたメッセージがあってもいいのかなと思います。例えば、学びに向かう力、人間性等の案のところですけれども、芸術によって心豊かな生活や社会を創造していく、というより、芸術を通した学びによって心豊かな生活や社会をより良くするというような言葉であったり、あるいは豊かな情操を培う、と。培うってやっぱり初期段階の方が強いイメージがあるのですね。ですから、情操をより豊かに高めるというような言葉の方がいいのかなと考えた次第です。私からは以上です。
【大坪主査】 続きまして、山内委員お願いをいたします。
【山内委員】 はい、それでは私の方からは、学校現場の状況も踏まえた上でお話をしたいというふうに思います。まず、今回この論点2のことで取り上げていただいた点ですけども、資料で言うと16ページをご覧いただければと思うのですが、今、改善案たたき台のところで右側の下の方の見方・考え方で示されているような、芸術の意味や価値を追求することを通して、芸術文化の視点から自分や社会における芸術の意味や価値について、探究的に学んでいくというところについては、これまで皆さんからもお話があった通り、高校段階では非常に重要だろうと考えているところです。
ただし、一方で、先ほど加藤泰弘委員からもお話ありましたが、普通科で学ぶIからIIIを付す科目以外に新たな科目等を設定していくのは、なかなか急には難しいのだろうなとも思っておりますが、各科目の中で、例えば指導事項や内容の取扱いなどにおいて、まず趣旨を入れ込むことはできるのではないかと思っています。例えば現行の学習指導要領、音楽Iの鑑賞の知識事項の中で、「音楽の特徴と文化的・歴史的背景、他の芸術との関わり」という事項があったり、音楽III の鑑賞においては、それが発展的になりまして、「芸術としての音楽と文化的・歴史的背景、他の芸術や文化との関わり」などの事項もすでに設定されておりますので、そういうものをベースにしながら考えていくこともできるのかなと捉えているところです。
そういうことを踏まえつつ、15ページの視点例、3つございますが、視点の(2)、科目のまとめ段階ということで、先ほどからも申し上げておりますけれども、探究的な学びのスタイルというものを設定していくことが今高校現場でも非常に重要になってきていることから、そういうものを高校の芸術科の科目の学習内容の中に入れ込みながら、芸術全体としての意味や価値を見出していくという学びを設定できるのではないかなと思います。特に高校の履修状況を見ていただくと、Iを付す科目を学ぶ生徒がほとんどそこで終わりますので、小学校・中学校9年間プラスIを付す科目必履修、10年間の学びの集大成として、自分なりに振り返りながら、この先どのように芸術と関わっていくか、文化と関わっていくかということをまとめるという場面があってもいいだろうと思っています。そういう点から、例えば課題研究のようなものを学習の中に置いて、各科目の中で学んだことを生かしながら、芸術としての意味や価値を見出していく、考えさせるというようなところが、まとめの段階であってもいいのではないかなと考えるところです。
また(3)になりますけれども、教員研修や教科書、教材等については、学習指導要領に示すことで、その方向性に伴った改善が図られるのだろうと考えているところです。一方、高等学校の芸術科の教員養成については、大学における教育学部等も含めた教員養成が、例えば以前のような特別教科教員養成課程の改廃等に伴って、この辺りが非常に1つ課題にはなってくるのだろうと思っています。大学での教員養成課程段階での、この芸術科であるところの内容の改善を図っていくためには、本ワーキングだけでは解決できるものではないということもございますので、ぜひ今後とも様々な場面でご検討いただければと思っています。
最後に、先ほど加藤泰弘委員からもございましたが、このような実践はまだまだ足りないということを考えますと、例えばモデル校であるとかパイロット校であるもの、あとは実践検証協力校を指定するなどしながら実践を積み重ねていくことも必要かなと思っておりまして、ここはちょっと突飛な話にはなるのですが、例えば理科学系で取り組んでいるSSH(スーパーサイエンスハイスクール)のようなものも非常に効果があるというふうに伺っておりますので、例えば芸術文化の人材育成に関して文化庁で取り組まれているCBXとの関連においても、そういうものを関連付けながら施策として行っていくこともアイデアの1つとしてはできるといいのだろうなと考えているところでございます。私からは以上です。
【山内委員】 はい、それでは私の方からは、学校現場の状況も踏まえた上でお話をしたいというふうに思います。まず、今回この論点2のことで取り上げていただいた点ですけども、資料で言うと16ページをご覧いただければと思うのですが、今、改善案たたき台のところで右側の下の方の見方・考え方で示されているような、芸術の意味や価値を追求することを通して、芸術文化の視点から自分や社会における芸術の意味や価値について、やっぱり探究的に学んでいくというところについては、これまで皆さんからもお話あった通り、高校段階では非常に重要だろうと考えているところです。
ただし、一方で、先ほど加藤泰弘委員からもお話ありましたが、普通科で学ぶIからIIIを普通科目以外に新たな科目等を設定していくのは、なかなか急には難しいのだろうなとも思っておりますが、各科目の中で、例えば指導事項であったり内容の取り扱いなどにおいて、まず趣旨を入れ込むことはできるのではないかと思っています。例えば現行の学習指導要領、音楽Iの鑑賞の知識事項の中で、音楽の特徴と文化的・歴史的背景、他の芸術との関わりという事項があったり、音楽III の鑑賞においては、それが発展的になりまして、芸術としての音楽と文化的・歴史的背景、他の芸術や文化との関わりなどの事項もすでに設定されておりますので、そういうものをベースにしながら考えていくこともできるのかなと捉えているところです。
そういうことを踏まえつつ、15ページの視点例、3つございますが、視点の丸2、科目のまとめ段階ということで、先ほどからも申し上げておりますけれども、探究的な学びのスタイルというものを設定していくことが今高校現場でも非常に重要になってきていることから、そういうものが高校の芸術科の科目の学習内容の中に入れ込みながら、その芸術全体としての意味や価値を見出していくという学びを設定できるのではないかなと思います。特に高校、先ほどの履修状況からを見ていただくと、Iを普通科目の学ぶ生徒がほとんどそこで終わりますので、小学校・中学校9年間プラスIを普通科目必須履修、10年間の学びの集大成として、自分なりに振り返りながら、この先どのように芸術と関わっていくか、文化と関わっていくかということをまとめるという場面があってもいいだろうと思っています。そういう点から、例えば課題研究のようなもので学習の中に置いて、各科目の中で学んだことを生かしながら、芸術としての意味や価値を見出していく、考えさせるというようなところが、まとめの段階であってもいいのではないかなと考えるところです。
また丸3になりますけれども、教員研修であったり教科書、教材等については、学習指導要領に示すことで、その方向性に伴った改善が図られるのだろうとは考えているところです。一方、高等学校の芸術科の教員養成については、大学における教育学部等も含めた教員養成が、例えば以前のような特別教科教員養成課程の改廃等がありましたので、に伴って、この辺りが非常に1つ課題にはなってくるのだろうと思っています。大学での教員養成課程段階での、いわゆるこの芸術科であるところの内容の改善を図っていくためには、本ワーキングだけでは解決できるものではないということもございますので、ぜひ今後とも様々な場面でご検討いただければと思っています。
最後に、先ほど加藤泰弘委員からもございましたが、このような実践はまだまだ足りないということを考えますと、やはり例えばモデル校であるとかパイロット校であるもの、あとは研究実践、検証校ですか、あたりを少し指定するなどしながら実践を積み重ねていくことも必要かなと思っておりまして、ここはちょっと突飛な話にはなるのですが、例えば理科学系で取り組んでいるようなSSH、スーパーサイエンスハイスクールのようなものも非常に効果があるというふうにそちらの方の方面では伺っておりますので、例えば芸術文化の人材育成に関して文化庁で取り組まれているCBXとの関連においても、関連付けながらそういうものを施策として行っていくこともアイデアの1つとしてはできるといいのだろうなと考えているところでございます。私からは以上です。
【大坪主査】 それでは、続きまして小池委員お願いをいたします。
【小池委員】 はい、簡潔に述べたいと思います。まず19ページのところの2つ目ですね、芸術を学ぶことの意味、価値など、芸術そのものを学ぶ機会の設定、幅広い分野を学ぶ機会を設けるというのは、まさにその通り大賛成で、そのようにしていっていただきたいなと思います。ただ、高等学校はもちろん専門的な学習をするところなので、教科の専門性を担保されなければならない。その上で、そもそも芸術とは何かを生徒に考えさせることは非常に大事なことだと思っています。
それで、先ほど加藤先生の方からもありましたけれども、その最初にこう話をする、例えば複数教科を開設している学校では、年度初め等に各教科の先生が自分の教科の意義、目標について語ってもらうだけで、それでだいぶこの芸術教科ということの意義を考えるきっかけになるのかなと思います。そして、新井先生からもありましたけども、さらに出口ですね。例えば、Iを付した教科の最後のところでも、そのまとめの授業は例えば合同で行って、どのような学びを行ってきたのか、何をしてきたのかを生徒が相互に発表したり考えたりする等の活動も考えられるのかなと思っております。これらの学習内容については、各教科の中で行っていくことを考えて、内容の取り扱い等で示していければ可能なのかなと思っております。一方、単教科のみの開設の学校においてはですね、例えば校外学習等での他分野の芸術に触れる機会とか、他分野の専門の先生方の講演等を考える等をして、教科の芸術そのものは何かっていうことを考えていければいいのかなと思っております。このことについても内容の取り扱い等で触れることは可能かなと考えています。私からは以上です。
【大坪主査】 続きまして加藤眞太朗委員お願いをいたします。
【加藤眞太朗委員】 よろしくお願いいたします。先ほどの加藤泰弘委員のお話を受けて考えたことを少しお話させていただきます。高等学校芸術科書道では、従来中学校国語科の書写との円滑な接続ということが大きな課題として挙げられております。文字や書による表現、これに関する学習については、小学校、中学校では国語で扱い、高等学校では芸術科で扱うため、書道の授業においては導入期で芸術の書ということについて扱う先生は多いと感じています。加えて、現在発行されているすべての教科書においても、冒頭にそうした内容が掲載されております。
一方で、音楽並びに美術及び工芸は、義務教育段階での音楽、図画工作、美術としての学習内容が高等学校での芸術科の学びにそのままスムーズに繋げられているのか、あるいは高等学校段階で改めて芸術としての意義づけというものが必要なのか、そしてその高等学校の教科書の冒頭部分、あるいは内容にそうした記載があるのかといった点についてお伺いしたいなというふうに思っております。また、履修する芸術科目を高等学校入学前に選択をし、入学直後から選択科目の学びが始まる現状においては、各科目を担当される先生方も専門性の違いから他科目の学習内容について共有する機会っていうのは少なかったのではないかなというふうに思っております。
一方で、その科目を横断したような視点から共通したテーマに基づいて、科目の属性を生かしながら協働して作品を作るとか、合同作品を制作したりするという取り組みが現在では多く見られるようになってきておりますので、そういった芸術教育の方向性について教科内、あるいは学校内で議論したり、共通認識を持つために、芸術の学びとは何かということが改めて示されることは大変意味のあることだと思いますし、教科や科目を横断していくという取り組みを考える中で、それが一層推進されていくきっかけになるということを期待したいなと思っています。さらに学校のカリキュラムマネジメントへ発展し、学校全体で認識され、さらに入学する生徒や、あるいは地域に共有されることを期待したいと考えております。
芸術科目を担当されている先生方のほとんどが、おそらく自身の高校時代にその科目を選択し、大学でさらにその領域を専門的に学んだ上で教職に就かれていると思いますけれども、そうした先生方が音楽、美術、工芸、書道を包括して芸術の学びとは何かということについて扱うにあたっては、教師の既存の知識や経験を基軸としながら、さらに幅広い視野を持って生徒に指導することができるように、また実践のために過度な負担をかけることのないように、具体的な事例ですとか教材を公開、共有することや、十分な支援や手立てということが必要であるということを考えております。もし学習指導要領に示す際には、わかりやすく、かつ柔軟な対応が可能な内容にしていただきたいと思います。
【大坪主査】 現在、3名の方からこれ以降手が挙がっておりますので、この3名の方で今回は終わらせていただきたいと思います。なお、ちょっと時間も迫っておりますので申し訳ありませんが、齊藤主査代理、岡本委員、山下委員、的確にご発言をまとめていただけるとありがたいと思います。では、齊藤主査代理、お願いをいたします。
【齊藤主査代理】 はい、お願いいたします。では、15ページをお示しいただきたいと思います。最初に加藤泰弘委員からまとめていただきましたような点、また具体的な方向もお示しいただきまして、ぜひそれが実現するといいなというふうに思います。
丸1の実現にあたりましては、丸3のところにも関わってきますが、研修、そして教科書の工夫がやはり大事だなと思います。例えばその最初に芸術とは何ぞやとか、また美とか芸術文化とか、そういうことについて考えるような、またはそうですね、先ほど山内委員から課題研究っていう提案もありましたが、そういうようなページがありますと、具体的に子供たちも、そして先生たちも工夫して展開することができるような気がいたします。そして、この視点は、高校で考えている内容ではありますが、例えば中学校でも音楽、そして美術、を学ぶ場合にですね、芸術における音楽、芸術における美術とか、また書道、そういう領域について考えることは非常に大事なところだと思うので、学習指導要領でどうのこうのってことではありませんけれども、中学生にもちょっと意識させることができると、より芸術教育が魅力的につながるような気がいたします。そして、私も教員養成なので、教員養成でもその点についての指導をより大事にしたいなと思いながら聞かせていただきました。以上であります。
【大坪主査】 次に、岡本委員お願いをいたします。
【岡本委員】 はい、短くいきます。現在の芸術表現というものは個別の分野にとどまらず、それらが統合された総合芸術の形で発展しています。総合芸術とは複数の芸術分野が統合されて成立する表現形態を指します。映画やアニメーション、ゲームもそうですし、演劇などの、先ほど委員の皆さんから出ましたけれども、舞台芸術などもそうです。ここが高等学校の芸術教育においても、現在はその美術Iに映像メディア表現が位置づけられているのですけれども、先ほど森委員からもお話がありましたが、これまでの美術分野の教員にこれを教えてもらうのには無理があります。むしろこれらを総合する、統合する総合芸術分野の制作を位置づけることが重要であると考えます。
例えばアメリカの高校ですと、メディアアートというものが正式な芸術科目になっていますし、ヨーロッパなどでも総合的な創造力というものを育成しています。これらの事例が示しているというものは、現在の芸術教育において重要なのは、個別の技術の習得だけでなく、それらを統合して新しい表現を生み出す力を育てるということであるということです。総合芸術の制作というのは単に芸術的能力だけではなく、構想力や協働力、そして社会にメッセージを届ける力というものを育てます。日本においてなのですけれども、映画、アニメーション、ゲームといった総合芸術というものは、文化的にも産業的にも重要な位置を占めています。高市政権の17の戦略分野の1つにコンテンツというものがあります。これらを支える人材を育成するためにも、高等教育の芸術教育の中に総合芸術分野の制作を明確に位置づけるということは非常にこう時代に即した教育改革として極めて重要であるというふうに考えております。ただし他分野の時間数を減らすというものは違うと思いますので、芸術教育を超えたもう少し広い分野として考えられないものかというふうに思います。
【大坪主査】 それでは山下委員お願いをいたします。
【山下委員】 はい、よろしくお願いいたします。芸術科における学びについてお話しすべき時間であるとは承知しておりますが、専門学科についての発言をさせていただく機会が他にございませんので、お時間が許すようでしたら、高等学校音楽科での学びに関する意見を2点述べさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
1点目は鑑賞者、批評者として育つことの大切さについてです。日々実技の研鑽に没頭しておりますと、どうしても「私は音楽を作る人間である」という感覚に支配されやすくなります。しかし、よりよく表現できるようになることと、よりよく聴けるようになることが本来表裏一体であることは明白です。よりよく聴くためには音楽の構造を捉えることはもちろんのこと、そこに内包される意味や暗示される意味など、文化的・歴史的な背景の理解を投射した聴き方も重要になります。そして批評者としての資質・能力を身につけた友人と音楽について対話する環境を得ることが、高等学校で音楽を専門的に学ぶことの最も重要な意義の1つであると考えます。その点で私が特に注目しているのは鑑賞研究の授業です。これは、平成21年告示の学習指導要領で新設されたものですが、生活や社会の中で音楽が果たす役割を学ぶという点からも、またキャリア形成上の選択肢を増やすという点からも重要な科目であると思われます。この授業を核として音楽科以外の教員、そして外部の方々とも連携を進めながら、新たな価値を発見、創出することの重要性を再確認したいと思います。
2点目は音楽を学ぶ身体を健全に育てることについてです。健康な体づくりと聞くと、私などはとかく保健体育を思い浮かべがちですが、本来は全教科科目で留意すべきことであろうと思います。私事ながら最近音楽家ジストニアについての研究に着手しました。ジストニアは難治性の疾患であり、何より予防が大切になります。もちろんジストニア以外にも音楽を専門的に学ぶ人たちが罹患しやすい病気や怪我があると思います。しかし、現在のところいずれの傷病についても予防に向けた教育が十分になされているとは言い難い状況です。専門学科音楽の学習指導要領解説の中にも、曲にふさわしい発声や奏法、身体の使い方などの技能という言葉が見られるものの、実技研鑽に伴う身体の不調に対する注意喚起は見られません。将来、難治性の疾患によって自身の志す道が絶たれることのないように、またウェルビーイングの向上のためにも、音楽を専門とする生徒に対して健康の保持に関する教育が早期に実現することを願っております。
【大坪主査】 本日予定されていた論点に関する議論は以上となりますが、ここで事務局より、先日2月2日に開催された教育課程企画特別部会を踏まえた報告事項があるとのことです。それでは、事務局より報告をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 資料1の21ページ目をご覧ください。こちらが、先日2月2日の教育課程企画特別部会の資料でございます。前回、この芸術ワーキンググループにおきまして、学習指導要領の見方・考え方、あるいは高次の資質・能力、目標のたたき台につきましてご議論いただいた後に企画特別部会に提出をさせていただきました。この企画特別部会の方で、各教科等から提出されてまいりました見方・考え方等につきましての横串を刺した検討が行われ、それを踏まえて、この方向性や考え方というものが、各ワーキンググループに示されているという状況になっております。時間の関係もございますので、22ページ目をご覧いただければと思います。
特に5つの黒丸がございますけれど、一番下のところでございます。資質・能力の3つの柱の性質を踏まえた整理についてという見出しのところでございますけれども、並列パターン、並行パターンといった形式上の違いはあれど、資質・能力の整理は本質的なところで共通している必要があると。特に思考力、判断力、表現力等については、これまで習得した知識や技能を活用して、実社会・実生活などの場面を想定した課題解決に近い形で資質・能力を発揮するという性質の柱であり、知識及び技能、とりわけ技能との適切な整理が必要であるということでございます。
学びに向かう力、人間性等は思考力、判断力、表現力等の中で見取る方向で検討していることも踏まえ、異なる整理をしている教科においては引き続き検討が必要ということが指摘をされております。この指摘事項、特にどの教科にということが特定されたものではございませんけれども、この整理の仕方に関しまして、芸術系教科でどのような在り方があるのかということを今後検討していく必要があろうかというふうに考えてございます。具体的な議論につきましては次回、第7回以降でご審議いただけたらと考えております。私からの報告は以上でございます。
【大坪主査】 今日はご議論が活発でございまして、予定された時間が長引いておりまして申し訳ございません。限られた時間でのご発言となりましたので、会議中に言い尽くせなかったことや、追加のご意見などございましたら、2月24日火曜日頃までに、事務局までメールにてお送りいただければと思います。それでは、次に次回の予定について事務局よりお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】 はい、失礼いたします。次回は、3月24日火曜日13時からを予定しておりますが、正式には後日改めて事務局よりご連絡いたします。
【大坪主査】 はい、それでは以上を持ちまして、本日の芸術ワーキンググループを閉会といたします。
―― 了 ――
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