教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和7年10月6日(月曜日)9時30分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 芸術系教科・科目に関する現状・課題と検討事項について
  2. その他

4.議事録

【奈雲参事官補佐】  定刻となりましたので、ただいまより、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループを開始いたします。皆様、大変お忙しい中、委員に御就任いただきまして誠にありがとうございます。また、本日の御出席ありがとうございます。
 開会に当たりまして、文化庁次長の日向信和より御挨拶申し上げます。
【日向文化庁次長】  文化庁次長の日向でございます。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループの第1回の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 先生方におかれましては、大変御多忙の中、芸術ワーキンググループの委員をお引受けいただきまして誠にありがとうございます。
 平成30年より、芸術系教科の学習指導要領等に係る事務を文部科学省本省から文化庁に移管いたしました。今回の学習指導要領の改訂は、文化庁に移管されてから初めての改訂となります。社会や経済の先行きが不確かな時代において、子供たちの創造性や、問いや答えを自らつくり出す力を育む芸術系教科・科目の重要性は極めて高いわけでございますが、残念ながら、子供たちが芸術系教科・科目の学びの意義を十分に実感できていない状況がございます。今回の学習指導要領改訂においては、このような点なども含め、文化芸術教育の改善・充実を図っていきたいと、このように考えております。
 先生方におかれましては、お忙しい中と思いますが、これまでの各現場での御経験、また御研究、そうしたことを基に闊達な御議論を頂戴できればと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  それでは、議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告申し上げます。本日配付の参考資料4の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本ワーキンググループは、教育課程部会の決定により設置されております。主査及び主査代理は、奈須教育課程部会長により、大坪圭輔委員を主査に、齊藤忠彦委員を主査代理にそれぞれ御指名いただいておりますので、御報告を申し上げます。
 次に、本ワーキンググループの委員の皆様を御紹介いたします。本日配付の参考資料3としましてワーキンググループの委員名簿を配付させていただいておりますので、名簿の順に御紹介させていただきます。
 新井浩委員でいらっしゃいます。
【新井委員】  新井です。よろしくお願いします。
【奈雲参事官補佐】  稲満美委員でいらっしゃいます。
【稲委員】  稲です。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  大泉義一委員でいらっしゃいます。
【大泉委員】  大泉でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  大坪圭輔主査でございます。
【大坪主査】  よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  加藤眞太朗委員でございますが、少し所用のため遅れておりますので、後ほど御挨拶を頂戴いたしたいと思います。
 加藤泰弘委員でいらっしゃいます。
【加藤泰弘委員】  加藤泰弘でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  小池研二委員でいらっしゃいます。
【小池委員】  小池です。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  齊藤忠彦主査代理でいらっしゃいます。
【齊藤主査代理】  よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  佐藤真菜委員でいらっしゃいます。
【佐藤委員】  佐藤と申します。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  原クミ委員でいらっしゃいます。
【原委員】  原でございます。よろしくお願いします。
【奈雲参事官補佐】  廣田和人委員でいらっしゃいます。
【廣田委員】  廣田でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  藤井康子委員でいらっしゃいます。
【藤井委員】  藤井康子です。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  道越洋美委員でいらっしゃいます。
【道越委員】  道越と申します。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  水戸博道委員でいらっしゃいます。
【水戸委員】  水戸です。よろしくお願いします。
【奈雲参事官補佐】  森公一委員でいらっしゃいます。
【森委員】  森です。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  山内尚委員でいらっしゃいます。
【山内委員】  山内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  山下薫子委員でいらっしゃいます。
【山下委員】  山下薫子でございます。よろしくお願い申し上げます。
【奈雲参事官補佐】  ありがとうございます。
 加藤眞太朗委員、今、入られましたでしょうか。御挨拶を一言だけお願いできますでしょうか。
【加藤眞太朗委員】  加藤眞太朗と申します。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  ありがとうございます。
 また、本日は御欠席ですが、岡本美津子委員が本ワーキンググループの委員に就任されております。
 委員の御紹介は以上でございます。
 続いて、文化庁、文部科学省の関係者を紹介させていただきます。
 文化庁次長の日向でございます。
【日向文化庁次長】  よろしくお願いします。
【奈雲参事官補佐】  文化庁審議官の森友でございます。
【森友文化庁審議官】  森友と申します。よろしくお願いします。
【奈雲参事官補佐】  文部科学省初等中等教育局教育課程課長の武藤でございます。
【武藤教育課程課長】  武藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室長の栗山でございます。
【栗山教育課程企画室長】  栗山でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  文化庁芸術文化担当参事官の小野でございます。
【小野参事官】  小野と申します。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  文化庁参事官付学校芸術教育室長の堀内でございます。
【堀内学校芸術教育室長】  堀内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  文部科学省初等中等教育局視学官、そして文化庁参事官(芸術文化担当)付教科調査官の志民でございます。
【志民視学官】  志民でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、文化庁参事官(芸術文化担当)付教科調査官の小林でございます。
【小林教科調査官】  小林でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  同じく教科調査官の河合でございます。
【河合教科調査官】  河合でございます。よろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  同じく教科調査官の平田でございます。
【平田教科調査官】  平田です。どうぞよろしくお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  同じく教科調査官の豊口でございます。
【豊口教科調査官】  豊口です。よろしくお願いします。
【奈雲参事官補佐】  そして私、参事官補佐の奈雲でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に、冒頭、主査から一言御挨拶をお願いいたします。
【大坪主査】  皆様、おはようございます。主査に指名いただきました大坪圭輔でございます。どうかよろしくお願いを申し上げます。
 ここには小学校の音楽、図画工作、中学校の音楽、美術、高等学校の芸術、音楽、美術、工芸、書道に関わる専門的知見を有される委員の皆様にお集まりいただいております。後ほど資料として説明があります中にも掲載されておりますけども、芸術系教科・科目の授業に対する社会的期待の一番は、より豊かな創造性、それからもう一つの想像性、クリエイティビティとイマジネーション、これと感性が育まれること、そしてさらには、より文化的な、文化芸術への親しみが醸成されること、というのが、ある調査では示されております。さらに、昨今の様々なフェーズにおけるAIの浸透は、一方で人間本来の能力としての身体性や創造力などを改めて再評価するという動きも高まっております。そのような中で、現行学習指導要領において採用されました資質・能力の育成を目標とする芸術系教科・科目の学びをさらに分かりやすく構造化していく必要があると考えております。
 想定される2040年の日本社会がどのような状況にあるかはまさしく不透明ではありますが、どのような社会においても自らの人生をかじ取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手として子供たちを育てようとするとき、我々のこの芸術系教科・科目の役割というものを、今回のこのワーキンググループの議論を通じて明らかにすることができればと願っております。委員の皆様の専門的知見による各方面からの御意見をいただき、議論が深まることを期待いたしております。これから長期間にわたる会議となりますが、私、主査役としてはいささか力不足で、多々御迷惑をかけるのではないかと案じております。どうか御高配のほど、お願い申し上げます。
 以上でございます。
【奈雲参事官補佐】  ありがとうございます。
 それでは、本ワーキンググループの進行は、これより大坪主査にお願いいたします。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【大坪主査】  それでは、早速、私のほうで議事を進行させていただきます。
 本ワーキンググループの運営につきましては、参考資料3の初等中等教育分科会教育課程部会の運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱います。
 それでは、まず、事務局より、会議資料の確認と、その他留意事項があれば御説明いただきます。
 お願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  ありがとうございます。まず、配付資料でございますが、議事次第に記載しておりますとおり資料1として「芸術系教科・科目に関する現状・課題と検討事項」、参考資料1-1として「教育課程企画特別部会論点整理」、その参考資料を参考資料1-2として御用意しております。さらに、参考資料2-1として「初等中等教育における教育課程の基準等のあり方について(諮問)」、その概要資料を参考資料2-2としております。さらに、参考資料3としまして「芸術ワーキンググループ委員名簿」、参考資料4として「初等中等教育分科会教育課程部会運営規則」、参考資料5として「各学校段階や各教科等の改訂の方向性を議論する専門部会等の設置について」を御用意しております。そのほか、委員の皆様にはワーキンググループにおける審議の御参考として学習指導要領本体及び解説、関係する審議会の答申などをまとめた参考資料を、対面会議でいうところの机上配付資料として事前に別途お送りしております。
 次に、会議の運営に関して、1点お願いでございます。本ワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただきまして、指名された後、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただけますように、何とぞお願いいたします。
 事務局からの説明は以上でございます。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題(1)に移ります。芸術系教科・科目に関する現状・課題と検討事項について、事務局より説明をお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】  文化庁学校芸術教育室長の堀内です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料1につきまして、私から説明させていただきます。
 資料の全体的な構成でございますけれども、1枚目から6枚目までが今回御説明申し上げる資料になります。7枚目以降は参考資料として、御審議の際の御参考にしていただければと考えております。
 資料の1枚目から4枚目につきましては、全体が青色を基調としたペーパーになっておりまして、こちらは芸術系教科・科目の現状と検討課題という点を記させていただいております。そして、5枚目、6枚目のピンク色のペーパーにつきましては、次回以降、芸術系教科ワーキンググループにおいて具体的に御議論いただきたい点について、整理して示させていただいているところでございます。
 それでは、1枚目に戻らせていただきまして、御説明させていただきます。まず、「子供たちを取り巻く状況と芸術系教科・科目を学ぶ意義」というところです。子供たちを取り巻く状況に関しましては、先行き不確かな状況という中で、子供たちは自らの人生を舵取りする力を身に付けるということが求められております。また、教育を通して個人が幸せを感じると同時に、社会全体でも豊かさを享受できるよう、日本社会に根差したウェルビーイングの向上を図っていくことが求められているという状況にあります。
 このような中にありまして、芸術系教科・科目を学ぶ意義について、音楽や美術などの芸術と関わることで、社会や生活がより豊かなものになり、短期的な幸福のみならず、幸福で充実した人生につながっていくということがあります。
 そういった中で、芸術系教科・科目を学んでいく意義ということに関わってまいりますが、芸術系教科・科目の特徴として、自分で問いや答えをつくり出していく学習であるということが挙げられます。そして、その過程において、身体を通して自らの感性や知性を働かせ、創造性を育むというところに特徴があります。
 また、芸術系教科・科目の学びというところにも非常に特徴がありまして、芸術系教科・科目の学びとして個別性の高い学び、即興性の強い学び、そして、創発性のある学びと、これら三つの学びが非常に重要であると考えています。
 とりわけ、下の枠組みに記させていただいておりますように多様性を包摂するという観点からは、子供たちの特性や関心に応じ考えたり表現したりする個別性の高い学びというものが非常に重要になってまいります。
 また、即興性の強い学びについては、発達段階に応じて自分なりの感性を働かせて直感的に考えたり表現したりする、このような学びが非常に重要であると考えています。
 さらには、問いやテーマ、答えを自分でつくり出すとともに、個人の発想をイノベーションへと誘発する創発的な学びにつながっていくという点も非常に重要な点であろうと考えているところです。
 以上を踏まえまして、児童生徒が芸術系教科・科目を学ぶ意義を実感できるよう、更なる改善をしていくことが重要ではないかと考えているところでございます。
 それでは、2枚目に移らせていただきます。現行学習指導要領改訂のポイントでございます。現行学習指導要領の改訂の大まかなポイントは下の枠囲みにお示ししておりますけれども、とりわけ芸術系教科・科目におきましては、「生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質・能力」などを規定いたしました。
 また、これは全ての教育課程に通じているのですけれども、(1)の知識及び技能、(2)の思考力、判断力、表現力等、(3)の学び向かう力、人間性等、の三つの資質・能力の柱で目標や内容を整理したという点が大きなポイントとなっております。
 先ほど申しましたように「生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質・能力」ということが今回の改訂で非常に重視した点でありますが、その実現状況については、(2)の点線枠囲みに記載しております。こちらは、小学校の学習指導要領実施状況調査(令和4年度)の調査結果の一つの例でありますが、その下を御覧いただきますと、例えば、「音楽の授業で学んだことは、私たちの生活や社会でいかすことができると思う」ということに関しては肯定的な回答が55.5%、また、図画工作については、「図画工作の時間で学習したことを、ふだんの生活の中に生かしている」ということに関しては肯定的な回答が同様に60.1%ということで、現時点では、児童生徒が十分に芸術系教科・科目の学びの意義が実感できている状況には至っていないのではないかと考えられるところです。
 また、右上に記載のとおり、芸術系教科・科目全体として、〔共通事項〕や「知識」を意識した授業改善の取組は着実に進んでいる一方で、例えば下の枠囲いにありますように、教師からの働きかけが強く、子供が自律的に学習を進められていないといったような状況が一部で見られるといったことですとか、表現と鑑賞の活動の相互の関連付けが適切に行われていないのではないかといったような課題も見受けられるところでます。
 それでは、3枚目に移らせていただきます。芸術系教科・科目の指導と評価に関する現状と課題というところです。まず、指導の面に関しましては、(音楽、芸術(音楽))についてでありますが、例えば1つ目のポツにありますように、根拠を明確にしながら思いや意図を持ち、技能の習得や活用によって豊かな音楽表現の能力を身に付けるとともに、音や音楽の新たな価値を見いだしていくということに課題があるということなどがあります。
 また、(図画工作、美術、芸術(美術、工芸))に関しましては、真ん中のところにありますが、例えば、生活や社会の中の形や色、美術や美術文化などと自己との関わりについて考えることができるようにすることへの改善が課題ということなどを挙げさせていただいております。
 また、(芸術(書道))に関しましては、創作の指導において、作品や書の伝統と文化の意味や価値を自己との関わりを通して考えながら、表現の意図を自ら想起し創造的に構想・工夫することに課題があるといったようなことが挙げさせていただいています。
 また、学習評価に関しましては、右側に移らせていただきます。課題として、作品の出来や上手に歌えたかといったような結果ではなく、そこに至るまでの過程において目指す資質・能力が育成されているかどうかという点を評価できているかといったような点に課題があるのではないかと考えているところです。
 このようなことを踏まえ、芸術系教科・科目ならではの学びの充実を図っていくためには、例えば、次のような改善を図っていくことが考えられるのではないかと考えております。例えば、一つ目のポツにありますように、芸術の働きというものを意識したSTEAM教育などのカリキュラムの編成や、我が国の文化芸術に関する教育の充実、あるいは芸術教育の特性を踏まえたデジタル学習基盤の活用、あるいは多様な人材の活用や学校外の文化施設との連携、そして教師の指導力の向上、このようなことなどの改善を図っていくことが課題ではないかと考えているところです。
 次に、4枚目に移らせていただきます。伝統と文化に関する教育やデジタル学習基盤の活用に関する現状と課題でございます。まず、伝統と文化に関する教育の現状と課題ということに関しまして、点線の枠囲みに令和4年度小学校学習指導要領実施状況調査の結果の例をお示しさせていただいておりますが、例えば、「音楽の授業で「ふるさと」などの唱歌、あるいは日本に古くから伝わる歌を歌うことが好きだ」、そして、図画工作では、「日本の伝統や文化を感じる作品に興味がある」、こういった日本の伝統と文化ということに関連して、肯定的な回答が5割から6割といった結果になっているところです。
 このような状況も踏まえ、下の黒丸にありますように、音楽、図画工作、美術、工芸、書道の特性を踏まえて改善を図っていくことが課題ではないかと考えているところです。
 それから、右側の方に移らせていただきまして、デジタル学習基盤の活用に関する現状と課題というところです。二つほど調査結果を掲載させていただいております。こちらは異なる調査ですので単純には比較できないところではありますが、例えば上の方の調査、令和7年度の全国学力・学習状況調査においては、児童生徒のICT機器の活用状況ということで尋ねましたところ、ほぼ毎日活用したという割合が小学校、中学校ともに8割を超えるという回答が示されている一方で、下の令和6年度の「文化芸術による子供育成総合事業に関する調査研究」という調査では、文化芸術活動を行う際のICT機器の活用状況ということで、活用した割合が小学校、中学校が五、六割にとどまっており、こちらは少し低い値が出ているというところに差が見られる状況にあります。
 このようなことも踏まえ、芸術系教科の特性を踏まえた実体験に基づく学びは引き続き重視する必要がありますが、デジタル学習基盤を効果的に活用できる指導のあり方ということについても課題があるのではないかと考えているところです。
 それから、(3)メディア芸術に関する教育の充実という点です。我が国のマンガ、アニメ、ゲーム、映像などのメディア芸術を通して学ぶことによって、日本の文化に関する理解を深めることが期待されている状況にあります。こういった中にありまして、芸術系教科・科目の中でも、マンガなどの表現技法を活用したり、アニメーションの仕組みを活用したりといった、取組が現状見られるところではありますが、デジタル学習基盤の整備が進んだという状況も一方であります。こういった状況も相まって、さらなる充実ということについても、その余地があるのではないかと考えているところです。
 以上が現状と課題となります。
 5ページのピンク色のペーパーが、今後ワーキンググループで御議論いただきたいと考えている点です。まず、教育課程企画特別部会の論点整理が先日取りまとめられておりますが、その企画特別部会の議論を踏まえた検討事項ということで整理させていただいております。
 まず、目標の示し方というところですが、先ほど申し上げましたような現状や課題、方向性を踏まえまして、目標のあり方をどう考えるかという点がまず一つでます。
 それから、芸術系教科・科目を学ぶことが、生活や社会においてどのような意義があるかということについて、この点がより明確になるように目標を示すべきではないかという点。
 その際、論点整理で示されておりますような「見方・考え方」が教科を学ぶ意義の中核となるよう、示すという点が重要ではないかと考えています。
 それから、四つ目のポツでありますが、芸術と豊かに関わることに関する資質・能力を育成するということに加え、全ての教科等に通底する「創造」の土壌、芸術系教科・科目においては創造性が非常に重要でありますが、これが全ての教科等に通底する創造の土壌となるという視点、この両面から目標をどのように設定すべきかという点も重要ではないかと考えております。
 それから、(2)中核的な概念の明確化というところです。育成すべき資質・能力がより分かりやすくなるように、中核的な概念を明確化するということを今回の改訂で重視していくということになります。あわせて、表形式を活用して分かりやすく目標・内容を構造的に示していくということになります。この点をどのように整理したらよいかという点であります。
 また、その過程において、必要に応じて中核的な概念等の獲得に資する内容の焦点化や精選をどのように行うことができるかということも重要な点と考えています。
 また、芸術系教科・科目におきましては、「表現」、「鑑賞」の二つの領域、そして〔共通事項〕について、内容を構成しているところですが、このたびの内容の構造化において、中核的な概念等との関係性をどのように分かりやすく示すことができるかという点も重要な点であると考えています。
 それから、右側に移らせていただきます。指導と評価の改善・充実のあり方について記載しております。
 まず、指導についてです。児童生徒が自律的な学習を進めるという点で、指導の改善・充実のあり方をどのように考えるかという点が一つです。
 それから、表現及び鑑賞の活動を相互に関連付け、効果的に指導を行うための改善・充実のあり方をどう考えるかという点です。
 それから、(2)の学習評価に関連するところです。二つ目の点ですが、作品やペーパーテストでの評価だけでなく、学びの過程での評価、児童生徒の主体性につながる評価をどう実現していくかという点が一つの大きな論点と考えているところです。
 それから、4点目ですが、領域横断的な評価やパフォーマンスから設定した評価、ルーブリック等の形で目標・評価規準を児童生徒と共有し、見通しを持って学習できるようにするといったような評価など様々な評価がありますが、どのような評価の改善方策が考えられるかということです。
 それから、(3)デジタル学習基盤の活用と評価のあり方について、芸術系教科においては、身体を通して学ぶということが非常に重要な点ですが、あわせて、効果的にデジタル学習基盤を活用した指導及び評価のあり方をどう考えていくかということが重要な点と考えているところです。
 それから、6枚目のペーパーに移らせていただきます。教科等横断的な視点に立ったカリキュラムマネジメントや芸術系教科・科目における柔軟な教育課程のあり方という項目です。
 まず、他教科等との連携のあり方ですが、芸術系教科・科目の学びを深め、その意義を高めるとともに、他教科等で求められる創造的な思考を深めるために、他教科とどう連携を図ることができるかという点が1点です。
 それから、多様な芸術や文化、舞台芸術あるいはメディア芸術などの多様な芸術や文化について体験的に学ぶ機会を、教育課程全体の中で、あるいは教育課程外において、あるいはそれぞれを連携させる中でどのように充実させることができるかという点です。
 それから、(2)の柔軟な教育課程のあり方という点です。こちらも論点整理において示されていますが、義務教育段階における調整授業時数制度や、高等学校段階における柔軟な教育課程の取扱いということに関連しまして、教育課程あるいは学習指導の工夫のあり方をどのように考えるかという点です。
 それから、最後、右側ですが、芸術系教科・科目に関する課題を踏まえた固有の検討事項という点で5点ほど挙げさせていただいています。
 まず、芸術系教科・科目で学んだことがより豊かな社会の創造にどのようにつながっていくと考えられるかという視点です。それから、伝統と文化に関する教育の更なる充実、地域との連携を図った芸術教育の充実、外部人材や学校外の文化施設との連携のあり方、あるいは、教師の指導力の資質・能力の向上のあり方、これ以外の点も含めまして、次回以降のワーキンググループの中で具体的に御議論いただきたいと考えているところです。
 私からの説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様より、それぞれ御意見をいただきたいと思いますが、今説明がございました芸術系教科・科目に関する現状・課題と検討事項の関連や、委員の皆様の御専門に関して今後検討すべきことや現状・課題の共有など、どのようなことでも御意見をいただきたいと思います。なお、本日は初回でございますので、自己紹介と併せていただければと、お願いいたします。
 また、時間も限られておりますので、お一人5分程度でおまとめいただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
 順番といたしましては、まず、齊藤主査代理、そして、名簿順に新井委員からお願いできればと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、齊藤主査代理、よろしくお願いいたします。
【齊藤主査代理】  皆様、こんにちは。信州大学の齊藤と申します。最初に簡単な自己紹介ということでありますので、私は音楽教育を専門にしておりまして、もともと中学校の現場で13年間、そして大学に赴任して26年ぐらいになります。現場を離れて大分感覚が鈍っているような気がするのですが、現場感覚も大事にしながら考えていきたいなと思っております。
 それでは、私からお話をさせていただきたいのは、一応メモ書きで今、皆様と画面を共有させていただきましたが、3点、特に大事にしたいなと考えている点について挙げさせていただきました。
 まず、多様性の包摂というキーワードが論点整理の中でも最初に掲げられております。この多様性の包摂というのは、これからの時代においてまさに大事なところになるかと思います。特に、本日の資料の37ページの左側のところにもあったかと思いますが、芸術ならではの様々な学びに出会えるという、ここが芸術の喜びにつながっていくのではないかなと思うのです。
 そして、学びの対象の多様性と書きましたけれども、様々な芸術の対象のものに出会う、ここでは子供の目線で、そしてもう一つ、美しさの価値も多様であると書かせていただきました。美しさには、一様の美しさもありますけども、「子供にとってのそれぞれの美しさって何だろう」ということを考えることも大事ではないかなと思っております。論点整理の7ページにありました「好きを育み得意を伸ばす」という、これもまさに大事なキーワードになっていくような気がいたします。
 そして、私がもう一つ大事にしたいなと思うのは、学び方の多様性というところであります。芸術の学び方は一つではないということは今までも大事にされているのですが、さらにその辺りのところを意識し、どちらかというとロジック的で西洋的な学びの構造になりがちではありますが、さらに東洋的な学びと書いたのですけども、少し視点を広げて東洋的な視点も大事にしたいなと。時間の関係であまりここは詳しく話しできないのですが、例として道端に咲く小さな花の美しさと書きましたけども、西洋的な整った花束のような美しさもそうですが、いや、もっと近くに美しさってあるのではないかなというような話であります。 さて、2番目です。芸術教育における感性の重要性であります。ここのところは、既に目標や見方、考え方にありますように感性、そして知性というところです。このところを両輪のように往還しながら進めていくということは芸術の大事な特性だと思います。その中で、やはり芸術教育だからこその感性というものは非常に大事だなと思っています。学び方も感性に重きを置くモデルとか、そういう特性があってもいいのではないかな、作品の美しさを味わう感動とか、こういうものをまずは大事に扱うということです。1時間の中で感性と知性の往還ということを大事に、題材の中でも往還というのを大事にしてきたのですが、やはり感性に注目し、芸術教育の特性であるところを生かしたらよいのではないかなと思います。直観というキーワードもこれからの時代で、特にAIの時代において人間の直観というのは非常に大事なキーワードになっていくような気がいたします。 3番目ですが、芸術教育におけるウェルビーイングの向上です。これは、先ほど御説明いただいた資料1の最初のところでもお話しいただきましたが、芸術教育は人間の感情に直接的に影響を与えることができる非常に重要な教科であると思います。特に情動が発現するのは今という瞬間であるので、子供たちの未来に向けてどうするのだということももちろん教育の中でも大事な視点ですけれども、でも、今という瞬間に、目の前にいる子供たちがどういう気持ちになるかと、ここで感動したりということを芸術教育では大事にし、その時間でのウェルビーイングを実感し、それが連続していくとよいのではないかと思います。
 そろそろ時間となりますが、最後に学習指導要領です。できるだけシンプルに、これは論点整理のところでもそういうようなキーワードもありますが、分かりやすくということです。その辺りのところを大事にしながら現場の先生方にとって分かりやすいもの、その先に子供がいることも大事にしていきたいと思います。
 以上であります。
【大坪主査】  齊藤先生、ありがとうございました。
 それでは、次に、名簿順で行きたいと思います。新井委員、お願いいたします。
【新井委員】  芸術ワーキンググループ委員で福島大学に勤務しています新井浩です。どうぞよろしくお願いします。私の専門は美術教育の彫刻領域です。その視点を中心としながら、高等学校での15年の指導経験、それから、大学でのSTEAM教育の実践や教科教育の提言、そういったものを行ってきました。研究が複数にまたがる点で多少異なった視座から意見を申し上げることもあると思いますけれども、よりよい方向にまとまるよう努力していきたいと思います。
 さて、検討事項論点案についてですが、私からは4点について意見を申し上げます。まず第1に、中核的概念と重ねた目標の示し方についてです。これについては、中核的概念と目標を関連させ、2本の柱、2系統に絞ることが新教育課程ではふさわしいと考えています。1本は現行の学習指導要領を発展継続して学習者自身の将来を豊かに支えるというような観点でまとめ、もう一本は様々な機会に生じる未知の問題にも対応できる汎用的な能力、例えば創造性や感性といった観点でまとめることが合理的と考えています。特に2本目は、論点整理の資料の中にある溝上慎一氏のインサイドアウト志向の育成ともつながってきます。
 これについて、以下、理由です。論点整理まとめで縦横の関係が示されて、縦の柱が2系統で示されています。これは分かりやすい学習指導要領の実現を目指したフィージビリティの方向性と重なってきます。学びに向かう力、人間性等は、それが顕著に認められる場合は思考力、判断力、表現力の中で評価してよいと整理されています。これは、今まで課題とされてきた学びに向かう力、人間性等の評価を学習成果と結びつけて評価しやすく、かつ授業改善に繋がるものと考えています。
 第2に指導と評価の改善・充実についてです。これについては、授業途中で子供たちの学習改善のために行う形成的評価の活用と、それに付随する助言指導の改善で、この検討事項の複数の課題が解決、解消できるものと考えています。私は長く形成的評価と助言を学生指導の核としてきました。形成的評価は評定ではありませんから、指導者の時間的負担はほとんど生じません。途中段階で評価と助言を加えることで、学生たちは思いがけない視点と出会います。それによって自分自身の表現が新鮮な取組に変わって、主体的な取組へと繋がるようです。現場の先生方の負担とならないように解説や指導書で事例を丁寧に紹介するといいかなと考えています。
 第3にデジタル学習基盤の活用と評価の在り方です。美術教育ではこれらを活用する機会の充実が当然必要になります。しかしながら、もう一方では感性や想像力を育むという点において、実際の対象物を五感を駆使して味わうフィジカルの充実は欠かせません。これは論点整理まとめの資料にある今井むつみ氏のアブダクション、仮説形成を支える推論の「正しい・誤っている」を判定する基盤を身に付けるということにもつながってきます。
 第4に他教科との連携の在り方についてです。これについては、STEAM教育のAの役割として新たな気付きを生み出し、粘り強く一定の解をまとめ上げる教科としての関わりがふさわしいように考えています。優れた科学者は芸術に親しむ機会が極めて多いという研究結果が出されていまして、探究的な学びを深めるためには芸術教科の技能とは別の側面、双方向的な思考だとかレジリエンスなどの教科特性を生かす連携を主としたほうが効果的と考えています。
 また、実際にSTEAM教育を実践していると、子供たちの思いつきや失敗までも受容的に受け止めるような環境形成がいかに大切かが理解できます。探究的な学習の場面で最も大切にすべきは、まず授業者側の受容的な態度の醸成と私は考えております。
 以上が私の意見です。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、稲委員、お願いいたします。
【稲委員】  皆様、こんにちは。稲満美と申します。私は中学校音楽科です。中学校で二十数年教えた後、中学校の副校長を2年やりまして、今は教育委員会で働いております。私から、今のお話を受けて大きく3点申し上げたいなと思います。
 1点目は創造性ということに関してなんですけれども、私、先生たちの授業を普段見ていて、新たに芸術に出会ったり表現をしたりする際に、自分との対話ということをすごく大事にしてお話をしています。学校で勉強しなければ、新たなものに出会ったときに自分には関係ないと思って、それをスルーしてしまうということもあるかなと思うのですけれども、学校でいろいろなものに出会って、自分にとってそれはどんな価値があるのかということを考えることで、世の中のいろいろな様々なことが自分にとって意味のあることになる、それが芸術を学ぶということかなと思っています。齊藤先生からも美しさの価値も多様というお話もあったのですが、そういうことをよく考えます。
 デジタル学習基盤というところで、ICTの活用で再現性が担保されるということでとても重要と考えているのですけれども、ICTの活用で自分との対話、自分にとってどう価値があるかということを考えるということが飛ばされてしまうということがないようにしなくてはいけないと思っています。そのことによって学び続ける人を育成するということができるのではないかなと考えていますので、音楽や美術、芸術における創造性というところに、新しいものをつくり出す、その前に、そのことは自分にとって何の意味があるのかというところを大事にしたいなと、繰り返しですが思っています。
 そして、この自分の物差しで判断したからこそ対等に人とつながって協働的に学べるのではないかと思っていて、ともすると芸術系教科って得意な人とか、習っている人とかが教室の中にいて、その人に教えてもらうといった場面が出てきたり、先生は詳しい人というふうになるのですけれども、まず自分の物差しで判断して必要な知識とか技能とかも自分で獲得しながら、ほかの人と対等に協働的に学んでいってほしいなという願いがあります。
 2点目は、全体の論点整理の基本的な考え方で多様性の包摂というのが挙げられていますけれども、この多様性を個人や社会の力に変えるというところが芸術系教科の強みだなと考えていまして、多様でなくてはならないとまで言えるか分かりませんけれども、多様性というのは芸術系教科ではもう当たり前のことでして、これが基本的な考え方として打ち出されてきたこと、そこの芸術系教科の意義というのを考えていきたいなというのが2点目です。
 3点目としては、先ほどもお話がありましたが、学習評価の課題については、ふだん学校で指導や助言をする中では、本当に10年前の改訂の頃から様々な御意見をいただいています。やっぱり課題もありますし、負担もあるということを感じています。何ができるようになればいいかということを整理していかないと共通理解ができていないなというように感じることが多くて、加えて、学校の先生方は専門的に学んでいらっしゃる専門家でいらっしゃるので、自分の中にある一般的な表現力のゴールとか、学習指導要領ではなくて自分として、音楽や美術のゴールはこれだと思っているという、自分の専門家としての考えに縛られてしまうという言い方はちょっと後ろ向きですけれども、そちらに引っ張られてしまうということがよく見受けられます。学習指導要領で、どのような、何ができるようになればいいか、それが何につながっていくかというメッセージをどのように、形式も含めて出していけるかということがとても大事かなと思っています。
 短いですが私から以上です。よろしくお願いします。
【大坪主査】  稲委員、ありがとうございました。
 それでは、次に、大泉委員、お願いいたします。
【大泉委員】  こんにちは。早稲田大学教育・総合科学学術院の大泉と申します。専門は美術教育学、その中でもとりわけデザイン教育の内容について研究しております。さらにワークショップ論の探究をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速なのですが、今回、芸術ワーキンググループに参画させていただくに当たって考えていることについてお話ししたいと思います。時間が許しましたら三つお話ししたいのですが、もしかしたら二つになるかもしれません。いずれも頭出しとしてお話ししますので、非常に雑駁なお話になることをお許しいただきたいと思っています。
 1点目です。それは、美術教育における創造性についてです。創造性、すなわち意味や価値を「つくりだす」ということは、現在、図画工作、美術科の見方、考え方に位置付けられています。この創造、「つくりだす」ことには、もちろん今ここの現実に対する意味、つまり問題解決の意味は非常に重要だと思うのですけれども、それだけではなくて、まだ見ぬ未来に向けた意味、つまり子供による問題提起としての意味もあるのではないかと考えております。先ほど齊藤主査代理がおっしゃったように、今ここも大事にしながらも、なお一層未来に向けた価値が創造性にはあるのではないかということが芸術ならではの創造性の発揮だとも考えております。端的に言いますと、創造性に未来という時間軸を加えて考えるべきなのではないかということを考えています。こういったことがこれからの図画工作、美術科の教科性に必要なのではないかと思っております。
 今申し上げたことは、芸術ワーキングの資料1との関係で言うならば、1ページの御説明があった右側の枠囲みの3つ目のポチです。「個人の発想をイノベーションへと誘発する創発性のある学びに繋がる」というようなことであるとか、あと、5ページの左側の目標の示し方の2つ目のポチ、「芸術系教科・科目を学ぶことが、生活や社会においてどのような意義があるのか」ということ。そしてさらにその2つ下、「芸術と豊かに関わることに関する資質・能力を育成するという視点と、全ての教科等に通底する『創造』の土壌となる視点の両面から、目標をどのように設定すべきか」というようなことについて関係しているのではないかと思います。
 さらに、6ページに固有の検討課題がございましたが、その中でより豊かな社会の創造にどのように繋がるかということ、これにも関連するかと思われます。
 以上が一つ目です。
 二つ目なのですが、これ非常に大まかな意見なのですけれども、子供の造形であるとか音楽の表現に関わる教師であるとか大人、あるいは社会が持つ学習観や子供観についてでございます。先ほど稲委員がおっしゃったように、これは非常に重要なことであると思っておりまして、先ほど述べました創造性の意味であるとか、あるいは今回示されている学習指導要領改訂の理念を実現するためには、もちろん学習論であるとか教育方法論の開発、あるいは教育環境の整備というものは絶対的に必要だと思うのですけれども、それを実践する先生方であるとか子供と関わる大人、あるいはそれを取り巻く社会の学習観、子供観、芸術観といった、そういった観、ビジョンであるとかethicの転換が必要なんじゃないかなと昔から思っているところであります。
 実は、このことについても資料1との関連で申し上げるならば、2ページ目の右側に、先ほども御説明がありましたように「教師からの働きかけが強く、子供が自律的に学習を進められていない状況が一部で見られる」というのは方法論ではなくて、恐らく学習観かと思います。そういったところから考えていかなければいけないのではないかと考えております。
 さらに、3ページ目になります。3ページ目の右側にも、学習評価に関して四角囲みの中に書いてございます。「結果ではなくて、そこに至るまでの過程において目指す資質・能力が育成されているかという点を評価できているか」ということ、これも今申し上げたような観、ビジョン、ethicの問題ではないかと考えられます。
 さらに、5ページ目の右側の指導の改善・充実のあり方の一つ目のポチにも「自律的な学習を進めるための指導の改善・充実」ということがありますが、子供が自律的に学習を行うということはどういうことなのかということについて、根本的な共通理解が必要なのではないかと考えております。
 最後、三つ目となりますが、これは資料と全然関係ないことなのかもしれませんが、申し上げて終わりにしたいと思います。それは、日本型の芸術教育ということについてです。我が国の芸術教育は日本型の芸術教育であるということを、ある意味では自覚する必要があるということも、そういう面もあると考えております。御存じのとおり、我が国においては全国民が義務教育段階で音楽や美術等を系統的に学んでいます。また、自分の専門である図画工作科においては造形遊びという学習内容があります。これを例えば学術論文で英訳する際はローマ字で「zoukei-asobi」と訳されることがあるように、これは日本が生み出した教育文化として非常に高く評価されています。さらにその考え方や実践は特に東南アジア、東アジアで注目されて、ナショナルカリキュラムに導入されつつあるようであります。ですので、グローバルな知見を引用することももちろん大事ではありますが、我が国で脈々と培われてきた芸術教育思想も大切にしたいと考えております。とりわけ普通教育における芸術教育では、このことは大事にしたいと考えております。
 以上となります。ありがとうございました。
【大坪主査】  大泉委員、ありがとうございました。
 時間的にはやや順調に進んでおりますので、先生方、どうか落ち着いて用意された御意見を、ぜひ今日は御披露いただければと思います。
 それでは、次に、加藤眞太朗委員、いかがでしょうか。
【加藤眞太朗委員】  愛知県立愛知商業高等学校の加藤と申します。先ほどは大変失礼いたしました。私は、高等学校芸術科書道の教諭でございます。そうした視点でちょっとお話をさせていただきたいと思っております。
 まず、様々な資料をお送りいただきまして、見させていただきましたけれども、芸術科目の時間数が減らされるのではないかという懸念がまず一つあります。高等学校では、なかなか芸術科教科が果たす役割というものを理解してもらいにくい現状があるかなと感じておりますので、まさに芸術を学ぶ意義をいかに社会に発信するか、そして理解してもらえるかというところが大切なところになるのではないかなと感じております。
 二つ目は、デジタル学習基盤の活用についてでございます。それぞれの教科・科目において、学習方法や指導方法での研究や実践は大いに進んでいるところかと思いますけれども、特に書道では教科・科目としての特性もありまして、表現の方法や形態におけるデジタル学習基盤の活用については、まだ幅広い実践事例や積極的な研究というものが見られていないのが現状だと思っています。併せて、最新の技術を活用した鑑賞の方法ということについても、芸術系の他の教科・科目の知見や、あるいは実践等も参考にさせていただきながら検討を進めることも必要だろうと考えております。
 次に、先ほどもお伝えしたとおり書道の教科・科目としての特性と、ここでは東アジア限定で発達してきたということが背景になろうかと思いますけれども、そうしたことが強く影響するということもございまして、今回の検討で強調されている芸術を学ぶ意義というものについて、書道はこれまで書道の枠の中で完結して捉えられて学習指導がなされてきたという傾向が極めて強いものですから、今回の芸術ワーキングの中で検討していただくことを大いに期待しているところでございます。
 以上になります。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、加藤泰弘委員、お願いいたします。
【加藤泰弘委員】  東京学芸大学教育学研究科の加藤泰弘でございます。専門分野は書写・書道教育学でございます。国語科書写の授業や、高等学校芸術科書道の教員養成を日頃担当しております。たまたま書道に関わる委員2名とも加藤でございます。私のほうからは、本ワーキングで検討していただきたい内容などについて、3点に絞って申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、1点目でございますけれども、芸術は重要であるということは社会の共通認識でありますが、実際の教育現場では、なかなかそうでもない場面に出くわしたりするということがあるかと思います。その中で、今回お示しいただきました資料1には、芸術教科・科目を学ぶ意義というのが強く打ち出されているところでございます。これは極めて重要な視点であり、教師にとっても、子供たちにとっても非常に重要なところであると思っております。
 その際、先ほど齊藤主査代理が言われておりましたように、私も感性というのが一つのキーワードであると思っております。芸術の学びの本質であると思いますし、お示しいただきました今回の検討事項・論点というのが後半にございますけれども、そこには感性を芸術教科・科目としてどのように位置付けていくのかということがあまり示されていないように感じましたので、これは学習評価との関わりもあるところでございますけれども、芸術教科・科目において感性は他の教科・科目とは異なる位置付けであると考えておりますので、こういう加速度的に進展する社会にあって、それに適応する資質・能力を身に付ける点で感性が重要であると思いますので、それは芸術教育を中心として担う資質・能力であると思います。これについて、本ワーキンググループで議論できる場があるというのはよいと感じた次第でございます。
 次に、2点目でございます。資料1の検討事項・論点には、伝統文化に関する教育の更なる充実というのが示されております。これは、現行学習指導要領においても改善・充実を図った内容であるかなと思います。一方で、先般示された教育課程の方向性を示す論点整理では多様性の包摂が一つの柱となっており、その中には外国にルーツを持つ、日本語を家で話さない子供の状況などが示されているところでございます。そのような状況の中で現在、日本人は内向きになっているというようなことが言われておりますが、これから世界で活躍する人材を育成するという視点からも、この伝統文化というのは非常に重要な視点であるのではないかと私は考えているところでございます。いわゆる日本の芸術文化であるとか日本人としての捉え方、あるいは見方、あるいは考え方を育てていく、ひいては日本人とは何かということを考えるということにもつながっていくのではないかと思います。そういうような学習の一層の充実も重要ではないかと考えている次第でございます。子供たちの実態もありますので、それを踏まえつつ、バランスを考えた芸術教育のあり方を検討できればよいのかなと思っている次第でございます。
 以上、2点目でございました。
 3点目になります。これは若干各論になって恐縮ではございますが、特に高等学校に当てはまる内容になるかと思います。場合によっては義務教育においても一つの視点となり得るのではないかと考えておりますので申し上げたいと思います。先の文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議で議論されたことではございますけれども、高等学校学習指導要領の芸術科には、まず、芸術の目標というのがはっきりと最初に示されて、そのあとに音楽、美術、工芸、書道の各科目の目標、指導事項等が示されているところでございます。しかしながら、高等学校芸術科においては、授業が始まりますとすぐに音楽、美術、工芸、書道の各科目の学びへと進んでいくわけでございます。そういった状況を踏まえ、その前提として、芸術を学ぶであるとか、芸術で学ぶであるとか、あるいは芸術とは何かとか、あるいは美とは何かとか、高等学校の段階となりましたらそういった学びを考えていくというようなことも大事ではないかなと思っている次第でございます。芸術科を貫く共通の内容といいますか、そういったものを検討できればいいのかなと思っているところです。
 また、高等学校では〔共通事項〕が現行学習指導要領で新設されたところです。個人的には、これは非常に画期的であったと考えております。それを各科目で横に並べてみますと資質・能力も科目ごとに異なっていて、各科目の独自性が高いというものになっているように感じております。この点についても、再整理して検討していくのもよいのではないかなと感じております。この〔共通事項〕というのは芸術を学ぶ意義とも深く関わっていると思いますので、ぜひお願いできればと思います。
 以上、3点を述べさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。以上でございます。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、小池委員、お願いいたします。
【小池委員】  横浜国立大学の教育学部の小池といいます。よろしくお願いいたします。私は中学校の美術の教員でありました。それで、現在は美術科教育学を専門としております。主に国際バカロレアの美術教育を研究しております。その面から、今回の学習指導要領について、少し自分の考えといいますか、その辺を、最初の段階ですけれども述べさせてもらいたいと思います。
 まず、国際バカロレアですけれども、構成主義的な学びで探究的な学びを行います。その中で概念理解というようなことをずっと行ってきました。今回の学習指導要領の論点整理でも、教科の中核的な概念等を明確にするということがかなり多く出ておりますので、この辺が何か今までの私の研究とつながっていくのかなということも考えております。ほかにも教科横断、教科を超えた学びというようなことを国際バカロレアもやっておりまして、この辺も非常に関連性があるのかなと、私としては思っております。教科横断のところでは、それぞれの学習、教科の学びをしっかりやっていくと、いわゆる表面的なつながりではなくて、教科は教科としてしっかりと学んでいくと、それをどこでつなげるかというと、概念というようなことになります。ここでは中核的な概念というようなことになるかもしれませんが、本質的な概念、キー概念といいますか、そのようなところが非常に大事になってくるのかなと考えております。
 それから、2つ目ですけれども、学習指導を見てきた中で、今回、表現と鑑賞の関連というようなことが出ていると思います。これも、表現と鑑賞と書かれておりますけれども、例えば国際バカロレアですと調査、研究をしていくこと、それもかなり深く文脈に沿って美術を捉える、文脈に沿って芸術を捉えていくというようなことで研究していく、それから制作する、あと創造的な考えを持っていく、そして振り返りを行うというようなことが一つポイントになっているというようなことがありまして、この辺も、先ほどもありましたように単に作品だけでとか、最後のところだけで評価していくということではなくて途中経過を学んでいく、評価をしていくというようなことにも非常に近いのかなと思っております。
 あと、最後に、今、加藤泰弘委員からもありました、美術文化、芸術文化、文化ですよね、その辺は非常に大事なことなのかなと思います。中学校の美術でも美術文化というようなことがありますけれども、それがなかなか伝わっていかないというのは確かにあると思います。その辺はまさに我が国、日本の文化とはどういうことなのか、どういう文脈の中でその文化があるのかというようなことを少し広い視野で見て、芸術として文化を捉えるというようなことも今後ますます大事になってくるのかなと思います。そうなってきますと、文化は鑑賞だけではなく表現にもつながってくるのかなと思っております。表現と鑑賞の関連性がさらに強まって美術文化ということを考える、それが我が国という文化であれば、それを知ることによって、正にほかの世界の視点から見ていくというようなことがつながっていくのかなと思います。先ほど大泉委員から日本の美術教育の独自性といいますか特徴というようなことが、確かにございます。それは非常に大事なことだと思いますので、それを踏まえた上で他のいろいろな広い視野から見ていくということも大切なのかなと今のところは思っています。
 すみません、雑駁な意見ですがよろしくお願いいたします。以上です。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】  こんにちは。佐藤と申します。よろしくお願いいたします。私は美術館に勤務しておりまして、先ほど6ページのところで、固有の検討事項の下から二つ目のところに外部人材とか学校外の文化施設との連携というようなことが出てきていました。そういったことも関連しながら、関わらせていただければなと思っています。
 自己紹介をさせてください。鳥取県立美術館に今は勤務しているのですけれども、公立の中学校に20年ほど勤務しまして、その後、県の教育センターに異動しました。そこで教員研修等を組みまして、その後、教育相談課でいじめ、不登校の相談対応をしながら、美術科の指導主事としても兼務させていただいていました。その後、今の美術館の前身となります博物館に異動しまして、そこで十数年勤務した後、今は美術館勤務となっております。
 鳥取県立美術館が今年3月30日にオープンいたしました。全国で最後発と言ってもいいぐらいの県立美術館がなかった中、やっと建ったのですけれども、構想から計画まで10年ぐらいかかってやっとオープンしたところです。今のこの苦しい時代の中で美術館が建つということに対して大変厳しい、もう要らないのではないかというような意見もありました。そこの中で一つ大きな柱として据えたのが、アート・ラーニング・ラボという教育普及の拠点です。頭文字を取って今はA.L.L.と呼んでいるのですが、子供たちをはじめとする全ての方々がアートを身近に感じて楽しむことを目指し、館内外でいろいろなプログラムを実施しています。
 中でも大きな取組として、県内の4年生を全員、美術館のお金で、ですので、バス代も、それからバスの予約も、それから入館料はもちろん全部持って、県内全ての4年生を美術館に招待するという事業を始めました。これは県内の小学校、それから義務教育学校、それから特別支援学校の全ての4年生へ向かっております。これは開館してすぐのイベントではなくて、これを15年間続けていくということでお金も全部積んで準備して始めたところですが、これは今、先生方がお話しされている子供たちの文化的な体験ですとか、それから感性を育てるとか、あるいは学校の先生方とどのように連携して、学校の先生方の負担感なくどんな場をつくっていくかというようなことと関わっていると感じています。初年度の今年は、124校が県内にあるのですけれども、110校がやってきます。なので、毎日小学生が来て作品を見ているというような状態です。
 私の話は随分現場に近い話になってしまうと思うのですが、でも、これを15年続けていくと、今年10歳で来た子たちは15年たつと25歳になって、中には子供を連れて美術館という場所にもう一回やってくるというようなことが起きると思います。人間は、多分行ったことがない所を行き先の選択肢としては選ばないと思いますので、選択肢として選べるような環境をつくっていくということも美術館の使命だと思って取り組んでいるところです。
 頂いた資料には、文化的体験等子供の道徳感・正義感、自己肯定感との関係というのが13ページに、それから芸術に期待している点というグラフが14ページに出ていますが、2021年に国立青少年教育振興機構からこういう報告書が出ていて、これは私たちも初期段階からとても意識しているところでして、家に美術館に行くという文化的な要素がない子供たちは「美術館に来たことがない」と答えますし、それから「経済的な理由で来たことがない」と言っている子供たちもたくさんいます。そこのところを美術館のほうが補填していく形で、美術館が子供たちの本当の学びの場になるということを目指しているところです。
 後半で、少し私が気になっていることを二つほどお話ししようと思っているのですが、このような取組に美術館として力を入れているのは、鑑賞するということが子供たちにとってとても大切なアートを通じた学びにつながっていくと考えているからです。子供たちの様子を見ている先生方にも変化が生まれるのを再々目にします。どういう変化かというと、「子供たちがこのように感じ取る力があるんですね」とか「このように話すんですね」ということを先生方がおっしゃいます。学校内での授業の指導助言に行かせていただくことも多々あるのですけれども、これが一つ目なのですが、そこで気になっていることがありまして、先ほど子供たちの直観という言葉が出てきましたが、子供たちの気づきをスタートにして組み立てられている授業は案外と少ないなと思うことです。子供たちが最初に発する言葉をつかまえて、それを組み立てて、そして授業の狙いに持っていくということが教員としての能力に必要なんじゃないかと思っています。そのためには、子供たちの言葉を聞き取る力というのが必要だなと思っているところです。これが最近一番気になっていることの一つです。
 そのために、私たちは子供たちを迎え入れるに当たり、子供たちを小グループに分けまして、そこに1人ずつ大人がついて、そして子供たちがただ美術館に来たということではなくて、子供たちが学びを実感するような場をつくっていこうとしています。大人はボランティアさんを中心にファシリテーション能力をつけていくということで、令和2年から年間5回の研修を組み立てていまして、聞き取る力、それからファシリテーション能力をつけた大人がそばにいて、子供の直感的に発した言葉をつかまえて、そこから鑑賞を深めていくということができるような仕組みをつくりました。まだまだ未熟で、まだまだ勉強途中ですが、そういうことをやっています。
 ここからが二つ目に気になっていることなのですけれども、子供たちとの対話を通して鑑賞を深めていく活動というのはファシリテーションを行いながら場をつくっているのですけれども、例えば色・形からイメージをつかみ取る、あるいはつかみ取ったイメージを色・形に置き換えて、「あっ、こういうことが根拠だったんだ」というように感じ取る、それから、気づきをお互いに交換し合う中でコミュニケーション能力を高めながら鑑賞を深めていくということはできているのですけれども、その先にある例えば文化の学びに対して、いつどんなタイミングでその作品固有の学びのもとをどのように子供に伝えていくのかということが1点。
 それから、気づきのほうばかりに気が取られていて、その先にある作品に出会ったときの味わう、鑑賞というところの、味わうって、じゃあ、どのように個別に起きるのか、何をどのように設定したら味わうというところまで届くのかというのが、ここもう5年ぐらい何か気になっていることでして、このワーキングは私にとってはとても大きな学びの場になりますし、一緒に考えながら学ばせていただければなと考えております。
 すごく大まかな話で申し訳ありませんが、そのような気持ちでここにおります。どうぞよろしくお願いいたします。
【大坪主査】  佐藤委員、ありがとうございました。
 それでは、次に、原委員、お願いいたします。
【原委員】  原でございます。よろしくお願いいたします。私はもともと小学校の教員でございました。それから、附属学校での研究等を含めて行政に入りまして、今は福岡県教育委員会の出先機関である福岡教育事務所で主幹指導主事をしています。これまで教頭、校長を経て今の職にあるのですけれど、校長をしているときにも、音楽を専門に研究していましたので音楽の授業をつくるのが大好きな人間でございます。ですので、このワーキングの中では、授業に落とし込むときにはどうなるのかなということまで見据えたお話ができたらいいなと考えております。よろしくお願いいたします。
 論点整理と教育課程部会等のログも今まで拝聴させていただきながら、現平成29年の改訂のときにはコンテンツベースからコンピテンシーベースに変わるという大きな変革があったけれども、現行学習指導要領のよさは生かしつつ、それをバージョンアップするような形でということでこれから検討がなされていくと思っています。齊藤主査代理もおっしゃっていましたけれど、分かりやすく、そして見やすくというところ、学習指導要領はそうなっていくべきだなと、私もそう思っています。今、小学校でも保護者が学習指導要領を読んで勉強して学校に来るという場合も考えられていますので、ぜひそうなったらいいなと思っています。
 私からは、今考えていることを3点お話しさせていただきたいと思います。1点目は、子供にとっての芸術系の学びの意義、先ほどからお話が出ていますけれど、私たち大人が考える意義と、それから子供側からの意義を整理しないといけないなと常々思っているところです。子供の側からの意義を改めて考え、子供の中心にあるのは何なのかなと考えたときに、やっぱり感動、心が動かされるというところにあるだろう、そこが一番の始まりなのではないかなと考えています。教え子が大人になっていく過程でもそういう話をするのですが、音楽そのものであるとか音そのものは楽しんでいるし、自分も寄り添っているのだけれど、じゃあ、学校で音楽を学ぶときはどうなのか、そこで学ぶ意義がどうなのかということを私たちは考えないといけないなと思っています。
 事前に頂いたデータの中で、15ページに参考資料として頂いていますが、「音楽の学習は、生活を明るく豊かなものにする上で必要だ」という上の項目と、それから「心を豊かにする上で必要だ」という、これは観念的には子供たちも感じているのです。16ページの心を豊かにしたりというところも、中学生も高校生もよく考えていると思うのですが、実際に17ページとか18ページになると6割程度にとどまっているという、やっぱりそこで音楽の学習が好きだとか、音楽の学習が役に立つのかと言われると、なかなか肯定的な回答に伸びが出ないというところ、ここから意義を子供たちにどう捉えさせるのかとか、どう感じさせられるのかというのを考えていきたいなと感じています。
 見方、考え方というのも、現行の学習指導要領でとても大事にされているところなのですが、じゃあ、音楽科で言う感性の働きと見方、考え方、その関係はとか、つながりはどうなのかとか、子供たちの中でどういうシステムとして捉えているのかということも、皆さんとお話しさせていただきながら自分なりにまとめていけたらいいなと思っております。それが1点目です。
 2点目は、日本型学校教育の令和答申が出た際に、個別最適な学びと協働的な学びということが方法論として出てきたのですが、現行の学習指導要領で大事にされている主体的・対話的で深い学びということと、学校の先生方はどう捉えればいいのか迷っている授業が多いなと考えています。今、割と授業を見させていただいている中でそう感じています。主体的・対話的で深い学びを実現しようと推進しているのですが、個別最適な学びと協働的な学びを意識するようになると、深い学びまでに到達してないという授業が散見されるなというように感じています。ですので、方策に走り過ぎている部分もあるのではないかなと。私たちが何をどう発信するかというのはすごく授業に関係すると感じていまして、中核的概念というのが論点整理の中でも示されていますし、今、資料にもありますが、36ページを見ていただくと、ここに具体的な中核的な概念や方略ということでお示しされています。この中核的概念を先生たちがどう捉えていけばいいのか、私たちがどう発信していけばいいのか、それを分かりやすく、見やすくというところがキーポイントになるのではないかなと思っています。先ほど、深い学びが深い学びまで到達していない授業が散見されると申し上げましたが、ここの中核的概念をどう示すのかというところでそれが解消できていくのではないかなと思っているところです。
 それから3点目については、伝統と文化に関する教育の現状を見まして、私が研究しているときに多文化的なアプローチといって、我が国の音楽もそうですが、いろいろな外国の音楽とつなげて授業をつくっていったということがありました。そこでは、先ほどどなたかおっしゃっていましたが外国のいろいろな文化を知ると、我が国の自分たちの文化のよさも知るだろうということがございまして、本当にそうなっていたなと思っています。ただ、そうなると教科等横断的な学び、教科等横断的なカリキュラムの構成というのは大変重要になってくるのですが、25ページからのデータを見ると、教科横断的な学びへの取組が小学校は4割程度、中学校は3割程度にとどまっていて、「あっ、こんなに少ないんだな」ということを感じたところです。もっとしているのではないかなと思っています。
 また、教科横断的な学びの取組については少なかったのですが、音楽は割としやすいということで割合的には高くなっているので、ただここのずれもあるし、この点もしっかりと真正の学びになっているのかということは見ていかなくてはいけないなと思っています。
 地域素材を使ったりとか、それから我が国の伝統音楽を用いた教材を使ったりという点については、学校でしかそういう伝統的な音楽、文化を学ぶ場はないので、しっかり各学校、先生方が取り組めるように示していく必要があるなと思ったところでございます。
 大きくは、学ぶ意義を子供たちが感じ取れるためにどうすればいいのかということをしっかり考えていきたいなと思います。
 以上でございます。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、廣田委員、お願いいたします。
【廣田委員】  失礼いたします。さいたま市立大谷場中学校の廣田と申します。私は現在、中学校の管理職をしておりますが、もともとは小学校の教員を長年ずっとやっておりました。また、指導主事も経験させていただいて、今の立場というところで、小学校の図画工作科の立場として主に話をさせていただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私のほうからも3点、話をさせていただければと思います。まず、1点目は学びの意義というところで、今までの委員の皆様からもいろいろとお話がありましたが、私自身も芸術系教科・科目というのはこれからの時代を生きていく子供たちになくてはならないものというのは間違いないと感じているところです。ただ一方で、資料の2ページにあります令和4年度小学校学習指導要領実施状況調査の、「ふだんの生活の中に生かされているか」というところの肯定的な回答が図画工作においては60.1%と、十分に実感できている状況には至っていないということがあります。
 ただ、子供たちは現場の授業を見ていると様々なことを考えて資質・能力を発揮して、図画工作や美術、ほかの教科もそうですが取り組んでいる中で、私自身の個人的な考えとしては、そういった図画工作科で育成されている資質・能力というものがふだんの生活の中で生かされているということが、子供たちには自覚化されていないのではないかなと個人的には思っています。
 また、生活の中で生かされるということは非常に大切なことだと思いますが、それだけではなくて、図画工作科ということ自体が感性を育んだり、つくり出す喜びを味わったりというような、図画工作科を行うというそれ自体の大切さということも忘れてはいけないと感じているところです。
 2点目は、指導と評価の課題についてでございます。こちらも2ページの右側のところにありますが、教師からの働きかけが強く、子供が自律的に学習を進められていない状況があるということですが、こちらは私も日頃から実感しているところです。例えば先生方の指導過多と思われるような授業では、子供たちの考えや工夫というのが子供たち自身のものになっていないという状況も少なからず見られると感じています。また、逆に教師の指導が足りていなくて、子供たちの資質・能力の育成につながっていないのではないかという授業も見受けられます。ここで大切だと思っているのは、子供たちが考えることと、教師が指導しなければいけないことのバランスをしっかり考えることが重要なのではないかと思っています。
 また、作品だけで評価するということも、実態としては見られるところもあると思っています。こちらは、先ほども形成的評価という話もありましたが、国立教育政策研究所の指導と評価の一体化のための参考資料にもあります指導に生かす評価と記録に残す評価、ここの適切な計画が大切なのではないかと思っています。
 また、図画工作では造形遊びというものが、先ほど大泉委員からもあったようにあります。必ずしも作品に残るとは限らない題材がありますので、こういう学習の過程を評価するというのは今後も一層大切にしていきたいと考えているところです。
 こういった指導と評価を改善していくには先生方の指導力の向上が求められるわけですが、たくさんの委員の皆様からもあったとおり学習指導要領が現場の先生方に分かりやすいものでなければ意味がないと考えています。今回構造的に示していくということは言われていますが、既に深い学びの実装、多様性の包摂、実現可能性の確保、中核的な概念、それから学びに向かう力、人間性の新たな方向性も出されており、本当にたくさんのキーワードが出てきていて、現場の先生方の目線に立って分かりやすく示していかなければ、先生方には腹落ちしていかないかなと考えています。
 最後、デジタル学習基盤についてです。図画工作では現在、コマ撮りアニメや、プロジェクションマッピングといった様々な題材が行われてきていますが、現在、小学校1クラスでいうと10.4%の児童が学習面または行動面で著しい困難を示す子供がいるという現状で、多様性を包摂するための一つの道具として使えるのではないかなと考えています。ICT自体で表現するだけではなくて、そういったところの手助けになるのではないかと考えております。
 以上でございます。ありがとうございます。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、藤井委員、お願いいたします。
【藤井委員】  ありがとうございます。私は現在、大分大学の教育学部で美術教育を担当しておりまして、絵画のほうも少し担当しています。幼稚園から高等学校の先生を養成するというところに携わらせていただいております。
 研究としましては、今まで地域と連携した実践研究に主に取り組んできたことと、それから海外のほうの研究も同時に進めてきており、最初はスペインから始まりまして、現在はSTEAM教育の観点からアメリカの教科書も研究対象として取り組んでいるところです。
 地域と関わって、具体的には現場の先生方と一緒に、それから美術館の方ですとか地元の企業とか、そういった方々と一緒に教育をつくっていくということを研究のテーマとさせていただいています。本日までたくさんの資料をお送りいただいて誠にありがとうございます。すごく分かりやすく、私自身が今後たくさん勉強していかなければならないことを認識いたしました。例えば、今回頂いた資料1の5ページから6ページに関連するところで、私自身の研究も踏まえると、今後、特に地域との連携というのが、地域社会と学校をどうつなげていくかというのが本当に大事なことになってくると私自身考えております。
 私の担当教科は図画工作・美術という視点ですが、その視点から申しますと、図画工作・美術、造形の大切さというのを地域社会の人々にどう理解してもらうか、そして、地域全体で子供を育てていくという視点がさらに必要になってくると考えています。その上で、他教科との連携というのがこれまで以上に重要な視点になってくるのではないかと考えているところです。
 本日頂いた資料の中でも、今後の検討課題の中で、3ページのところにもありますが、芸術の働きを意識したSTEAM教育などのカリキュラム編成というのが1つ目に書かれていますが、先ほど大泉委員がおっしゃったように、私自身も日本型のSTEAMをどうつくっていくかという考えがすごく大事ではないかなと思っています。STEAM教育の発祥の地であるアメリカと、それぞれ歴史や考え方が随分違いますので、これまでの日本の教育が培ってきた教育内容、あり方を大事にしながらイノベーションにつなげていくような、そういう新しい発想につながっていくような教育をどのようにつくっていけるのかという、これまでの日本の教育を大事にしながら、少し新しい視点を取り入れていくということが本当に大事だなと思っています。
 今、私の紹介のところで地域の方々と一緒に実践的な研究を進めていると申しましたけれども、私自身、STEAM教育の実践研究に携わる中で、私も授業に入っていったりするのですが、教師自身のマインドセットの重要性ということをすごく感じています。それも成長に繋がるようなマインドセットということで、STEAM教育は教師教育に本当に繋がるのではないかというのを実感しておりまして、教師自身が新しい知識や体験を得るということが、子供たちに新たな見方、考え方を提示することに繋がると思っています。私自身、そのように一教員として授業に入らせていただくこともあるのですけれども、そういった経験をする中で、イノベーション、創造的な思考というのは、自分の殻とか今まで持っているものを打ち破っていくような、そういった生の体験というのが非常に大事だと思っています。その点に関連して、地域の人との連携、特にアーティストの方々がそういった意味では大きな影響を与えるのではないかなと思っています。
 時間が限られていますので、全ては申し上げられませんが、今とても大事になっているICTの活用については、芸術においてICTというのはとても大事ですけれども、あくまでもツールであるというようなスタンスや考え方も重要であると思っています。アイデアの具現化であったり、創造そのものに使っていく場合もあるでしょうし、鑑賞の資料として使うという場合もありますし、ICTは様々な活用方法が広がっていると思います。実体験、これを重視していきたいというところと、ICTの持つ良さ、特性を生かせれば子供たちの体験格差を埋めていく、そして教師の教材を充実させていくとかによって先生方に具体的に指導に生かしていただくという、そういうような視点で検討していく必要があるのではないかと考えております。
 以上です。ありがとうございます。
【大坪主査】  藤井委員、ありがとうございました。
 それでは、次に、道越委員、お願いいたします。
【道越委員】  道越と申します。よろしくお願いいたします。私は小学校で3年間、それから中学校で20年以上、図画工作・美術の教諭を務めてまいりました。その後、県の美術科の指導主事、そして現在は藤枝市教育委員会で、教科教育や、授業づくりとは違う視点で仕事をしております。しかし令和5年度までは教頭として自分も授業をしておりましたので、現場の声を届けることができたらなと思っております。勉強させていただきます。お願いいたします。
 私からも3点、頂いた資料と絡めてお話をさせていただきたいと思います。まず、1点目ですけれども、資料で申し上げますと2ページ、授業改善の取組というところで述べさせてください。現行の学習指導要領が資質・能力の育成ということになりまして、学校現場では特にどういった力を子供たちに図画工作・美術の授業を通してつけるのだということで、研究が大分進んでいるとは思います。特に中学校ではどの指導事項にも主題が位置付けられているために、書く活動やつくる活動で子供自身が何を表したいのか、子供一人一人の思いや主題はとても大事にされるようになりました。大変よいことだと思います。
 また、鑑賞の授業も重視されるようになってきて、絵画や彫刻作品を鑑賞する中で、作者はどのような主題をもってこの作品を表したのかということについて対話的に学ぶ授業も増えております。
 ただ一方で、〔共通事項〕についてですが、知識と位置付けられまして、授業の中で教員が子供たちに言葉かけなどを通して具体的に指導する中で、どうしても形や色などの個別の造形要素に目を向けさせるということにとどまっていることが多いように思います。教員が造形的な見方を意識して知識を子供たちに身に付けさせることができる授業をつくることは大切ではありますが、そのためには子供たちが自ら知識を獲得することができるような授業に工夫しなければならないと思います。例えば、先ほど新井先生が五感を通してということをおっしゃっておりましたが、私も全くそのとおりだと思います。音ですとか感覚ですとか温度とか、そういったものを身体の諸感覚を働かせて子供自らが気づいて、子供自らが問いを立てて課題が解決できるような授業をつくり上げることが大切だと思います。教師自身が自分の授業を通して図画工作・美術でどんな子供を育てることができるのかという教科の中核的な概念について主体的に考えて、題材や年間計画を構想する必要があるのではないかと思います。私も、そのために学習指導要領が分かりやすくなることは大切なことであると思います。そして、教師自身が自らの生き方を授業を通して見詰め直し、ダイナミックに生活や社会の中の美術や美術文化と関わって、子供のために授業を創造していく力が大切なのであり、求められていると思います。
 そういったところで2点目ですけれども、資料1で申し上げますと3枚目になりますでしょうか、芸術系教科の授業改善、それから学習評価に関するところでございます。子供一人一人が何を学んでいるのか、子供の姿からその資質・能力を発揮できているかどうかというところを教員がしっかりと見とって、その場その場で価値づけなければいけないと思います。これは形成的な評価というところですけれども、先ほどの話とも通じますけれども、教員がどんな力を育てているのかというところを意識して、子供の資質・能力を目の前の子供の姿から評価することができる、その力が大切かと思います。大泉委員が子供観とか学習観の転換とおっしゃっていましたけれども、教員の育成や後進を育てていくというときに、目の前の子供の姿をどのように捉えるかということが何よりも大事になってくるのではないかなと思います。
 最後に、3点目です。美術文化に関することを少しお話しさせていただきたいと思いますが、美術の文化、美術文化ということへの教員の捉えが少し狭いのではないかと思います。私たちの生活では様々な場面で美術文化があふれておりますけれども、そのよさに目を向けたり、あるいは地域の中で子供たちのために財を開発したりする、そういったことも必要になってくるかと思います。そういった授業を教師が独自性を持って構想することは非常に時間がかかることであって、忙しい現場の中で教師の授業改善、題材開発というところにどのように時間を確保して取っていくかということもそうですし、どのような研修を市町それから県教育委員会等が組み立てていけるかということも大切になってくるかと思います。子供たちの生活するそれぞれの地域には財があふれていると思いますけれども、子供の中の問いがその中で生み出されて、子供たちが地域の中で主体的な学びを行っていくことが芸術系教科にも大切だと考えております。
 長くなってすみません。以上でございます。
【大坪主査】  道越委員、ありがとうございました。
 それでは、次に、水戸委員、お願いいたします。
【水戸委員】  よろしくお願いします。私は今、明治学院大学の心理学部の中にある小学校の教員養成の課程で音楽を教えております。私自身、大学を卒業してからすぐに教員養成の仕事に関わったので教員の経験が非常に少ないので、どこまでこのワーキンググループでお役に立てるかなということを心配したのですが、今回の改訂の方向性と、それからいろいろな要点等を拝見させていただきまして、自分がこれまでやってきている研究が随分と今回の改訂の方向性に反映されているなということを見て、とてもうれしく思いまして、その点からいろいろ貢献できたらなと思っております。
 これまで私がやってきた研究は主にインフォーマルな場での学習の特徴と、それから最近やっているのは、高齢者の音楽活動とウェルビーイングの関係について調べております。これが特に学びに向かう力、それから人間性というところに非常に関係してくるなということを強く感じております。特に今行っている高齢者の音楽活動とウェルビーイングとの関係を見てみますと、今申し上げた学びに向かう力と人間性等に非常に関わっていることが、それで学校教育にも随分下ろして考えることができるなということに気がつきました。
 海外では今、音楽活動のどういう特徴がウェルビーイング、特にユーダイモニックなウェルビーイングにどう関わっているかという膨大な研究が行われているのです。もちろんそれを学校教育に下ろしてきて理論的に明らかにしようという研究があるのですが、これらの研究の中で明らかになっていることというのは、音楽活動が持つ特有の非認知的な能力を育てる力に非常に注目が集まっています。なので、特に音楽だから何ができるのか、私が音楽のほうの者なので音楽のことばかり申し上げてしまいますけれど、全教科にまたがる資質・能力のことについてきっちり説明することが大事であると同時に、それぞれの教科の特性がそこにどう関わっていけるかということを考えるのも大事だと思うのです。それを考えると、特に学びに向かう力、人間性等に音楽というのが非認知的能力の育成から関わっていけるのではないかなということを思っています。
 これらの研究では自己決定理論とかを用いて説明しているものが非常に多くて、それを非常に客観的な細密な方法で説明しているのですけど、その中で明らかにされていることは、音楽というのは自分の有能感を感じること、それから達成感というところに非常に深く関わっていると。これは特に身体的な技能とか、それとか楽譜を読めるようになる技能とか、ある程度粘り強く勉強していかないとできるようにならないという特性が音楽にあるので、それを身に付ける上では大変だけど、自分ができるようになっていく、身についていくという過程で非常に有能感とか達成感とか、あと効力感を感じることができるというのが非常に大きな特徴で、それが学びに向かう力等にも関係しているのではないかなと思っています。
 それから、もう一つそれに関連することとしては、音楽というのは、そもそも人と一緒に演奏すること、それから技能を先生から教えてもらうこと、それから聴き合うことというのが活動のそもそもの中心となっていることなので、これも自己決定理論とかで説明されている関係性というところに深く関わってくると思います。
 あともう一つ、これも一番大事なのですけど、今回の改訂でも学習の自律性ということが非常に強く打ち出されていますが、音楽というのはそもそも自分が好きなものだからやる、好きなものだから弾いてみる、好きだから聴いてみるということを深く感じているので、私は自律性というよりも学習の所有性という言い方をするのですけど、学習のオーナーシップと、そもそも学習は自分のものなのだというようなことが音楽では非常に強い側面があると思うので、そこが学びに向かう力に強く影響していると思います。
 これらの今申し上げた3点のところが相まって、本当に自分がやりたいから音楽をやるという内発的動機づけの醸成につながっていくというところが、音楽が学びに向かう力、人間性に貢献できる大きな力を持っているのではないかなと思っております。
 最後にもう一つ、今お話ししたこととも関わるのですけど、資質・能力を養うためにそれぞれの教科が何をできるかということを考えていくときに、二面あって、例えば、今、芸術ワーキングの中でさえ分野が違うと、資質・能力の捉え方そのものと、それからそれに対してどういうことができるのかという中核的概念をどう考えるのかということに関して、なかなか一致点を見いだすのが難しいと思います。これがもっと教科が広がるともっと難しくなるのですが、今回も方向性で出ているように、まずは中核的概念の横と縦の関係からその辺をうまく煮詰めていくというところがこれからのすごく難しい作業ではないかなと思います。
 ただ、これが各教科で実際具体的に資質・能力を身に付けていくためにどういう活動をするかというような、具体的に下ろせば下ろすほど教科間の隔たりが出てくる場合があると思うので、そこが難しいところだと思いますが、一方で、共通性を見いだすほうにベクトルを向けると、今度は教科の独自性が失われてしまうという難しさもあると思うので、その辺のバランスを保ちつつ、かつ今回の一つの大きな目標となっている分かりやすい発信ができるということに気をつけて、これからみんなで検討していけるといいのではないかなと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、森委員、お願いたします。
【森委員】  森でございます。同志社女子大学で特任教授を担当しております。今回このワーキンググループに参加させていただいて、率直なところを申し上げるのですけども、実は私は教育の専門家ではございません。初等中等教育には関わっていなくて、皆さんのお言葉を聞いていて、それぞれのキー概念を今理解するだけで精いっぱいというか、ほとんどついていけていないかなという気はするのですけれども、いずれにしても私はアーティストとして作品をつくっている立場で、かつメディアを使っているので、恐らくメディアという観点で、今、初等中等教育に何が可能なのかということを私の貢献できる範囲で何か語れるのかなとは思っていますけれども、いずれにしても初等中等教育における教育のキー概念に関しては、本当にまだまだこれから皆さんに勉強させていただきたいと思っているところでございます。
 ひとまず、私自身がこれまでどういう作品をつくってきたかということを簡単に紹介させていただいて、そして大学での学び、これは専門教育に近くなってしまいますけれども、もしかしたら初等中等教育に貢献できる何かがあるかもしれませんので、その辺りをざっと紹介させていただきたいと思います。
 
 今申し上げたとおり、私は初等中等教育の専門ではございません。80年代にビデオアートを始めて、それから映像制作会社に行ってディレクターをやりました。その後、マルチメディアコンテンツを制作する会社を立ち上げてマルチメディアコンテンツを制作し、2000年以降はメディアアート作品を、現代アートの中のメディアアート作品をつくっています。そういうメディアに関わった経験からメディア表現に関わる教育を大学で行っているわけですけども、主として映像作品の制作をさせたりとか、多様なメディア表現の理解を促す講義を担当したりしているということでございます。
 大分古い作品ではありますけども1990年代に、1,000年前の京都にタイムトリップして、いろいろな歴史上の登場人物だとか想像上の魑魅魍魎だとか鬼が出てくるような京都という場所にバーチャルにトリップして、そこで様々な知識を得たり経験したりするという、小松和彦先生という民俗学の先生に監修いただきながらつくったコンテンツです。
 その後、「TRIPITAKA」という、玄奘三蔵という中国の僧侶がなぜ中国からインドに行ったのか、その旅のプロセスを再現しながら、仏教文化の中でも特に仏教心理学に関する哲学的な知見を得るという、そういう作品を湯浅泰雄先生、哲学者の先生に監修や原作をいただきながらつくった、その辺りの企画とか、あるいはディレクションをさせていただきました。
 その後、2000年代にメディアアートの教科書というのを出版しました。当時、1990年代からどんどんと世界で新しいテクノロジー、つまりコンピューターが普及していく中でアートがどんどん変貌していったわけです。その変貌しているさなかに初期のメディアアートをまとめて、さらにそのメディアアートに至るプロセスも、歴史的経過も紹介していくような、メディアアートに関係する事柄を網羅したような本を出版させていただいて、自分自身の学びのためにもやったということです。
 その後、2000年代以降は自分で作品をつくるということに、メディアアート作品をつくるということに時間をかけました。今見ていただいているのは鑑賞者の脳波を測定して、それを色や形に置き換えていく、そういう作品です。それから、これは脳の血流を測定して、脳科学の先生方とコラボしながらですけれども、情動反応を色や形に置き換えていって、自分の情動をメタ認知するような作品をつくりました。
 あるいは、これは「待庵(たいあん)」というテーマで日本の伝統文化、伝統工芸にリンクしていくようなアート作品をつくりました。
 それから、最近は呼吸をテーマにしています。デジタル化がどんどん進んでいく中で、何よりも身体というのが重要だということはこのワーキンググループでも言われているとおりですけれども、鑑賞者の呼吸を使って、その呼吸を光等に変えて、かつ植物に光を当てることで植物は光合成を促されます。光合成が促されることによって植物のCO2の変化を音に変換して、鑑賞者と植物が合唱するような場をつくったりとか、あるいは、一番最近の今年つくった作品ですけども、鑑賞者が呼吸をすると、キューブ状の部屋の壁面に投影している映像、雲がスピードを変えていく、呼吸のリズムに応じて大気の状況がどんどん変化していく、さらに鑑賞者の目の前には霧を発生するテーブルがありまして、呼吸に合わせて霧が変化していく、我々の身体、そして生命活動の基本である呼吸と地球というものを結びつけるような、そういうことをメディアを使って展開し、医療での活用、看護学の先生方とのコラボなんかもして研究を進めているところです。
 こういう活動を続けながら、実際に学科での学びというのは映像系メディアによるPBLです。今回PBLという言葉が全く出てこなかったので、あまり初等中等教育でPBLは関係ないのかなと思いながら聞いていたのですけども、ドキュメンタリー作品を制作させたりとか、ドラマ作品をつくったりとか、公共CMをつくったりとか、クライアントワークとして映像制作をするということをやっています。
 この映像系メディアのPBLに関しては、後から気付いたのですけども、いわゆる21世紀型スキルと非常に親和性が高くて、創造性、イノベーションを育むとか、批判的思考や問題解決の力を育むとか、協働性、コミュニケーション力を育む、ICTリテラシーも中に組み込まれていますし、グローバルあるいは社会参加意識というのはテーマに応じて強く関係していますので、そういう意味では、プロジェクトを学生同士が検討していきながら作品をつくっていくというプロセスの中に非常に重要なスキル、能力の開発が含まれているということを後で気づかされたという感じです。
 さらにこれの教育的意義を考えたときに、学生たちがテーマや内容において様々な分野と接続します。私自身もこれまでいろいろな分野と接続してきましたけれども、多様な分野との接続というのはメディアを用いた教育に非常に親和性が高いという感じがします。調査とか企画とか構想を学生自らが計画を立てて、そしてメディアの表現技法ももちろん獲得して、仲間と協働しながら、あるいは支え合いながらつくる、あるいは発表する喜びを共有していく、このプロセス全体の中に三つの思考、クリエイティブシンキングとロジカルシンキングとクリティカルシンキング、そこがしっかりと組み込まれているというところが非常に意義のあるところではないと思います。
 ということで、学校教育でもし何かこういうメディアという観点から、特に美術教育において拡張していくことができるならばですけれども、紙媒体とか舞台系、あるいは映像系、デジタル系で様々な試みができるのではないか、特に日本では演劇教育だとか映画教育というのはほぼないに等しいわけですけども、非常にもったいないなといつも思っているわけです。今回の議論の俎上にのるかどうかは分かりませんけども、非常に重要な観点として、できれば検討いただきたいなと考えている次第です。
 いずれにしても教育の専門家ではございませんので、先生方の知見を学ばせていただきながら、できる範囲で私の経験に基づくメディアに関わる何らかのアイデアが貢献できればなと思っている次第です。どうぞよろしくお願いします。
【大坪主査】  森委員、ありがとうございました。我々は今のところデジタル学習基盤というところを中心にして考えつつありますけども、実は我々の芸術系教科・科目においては、今、先生がお話しになったようなデジタルアートをどのように位置付けていくのかということは大きな課題でございますので、我々の教科・科目の特性の一つとして、これから先生に御指導いただくことは多々あるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【森委員】  お願いします。
【大坪主査】  それでは、次に、山内委員、お願いいたします。
【山内委員】  宮城県仙台三桜高等学校の山内でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、もともと高校の音楽の教員を二十数年ほどやっておりまして、行政にも10年ほどおりました。その中で、特に管理職になってからは特別支援学校の教頭と校長を歴任させていただきながら、前職、県庁の特別支援教育課にもおりまして、また4月から高校に戻ってきたというところでございますので、そういう経歴も含めまして感じているところを、大きく3点についてお話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、これまでも皆さんお話しされているとおりでございますが、芸術教科を学ぶ意義というところについては常に、特に高校については御承知のとおりカリキュラム編成を学校で行いますので、そのところも踏まえつつ、これまで考えてきたところでございます。その中で大事なのは、様々な意味はあると思うのですが楽しみながら学ぶというか、学ぶ意義を子供たちが感じながら学んでいくということが芸術系教科にとってはとても大事なのだろうと思っています。ある意味、生命線ではないかなと思っているところでもあります。例えば大学入試のために学ぶとか、そういうことではなくて、先ほどからも出ておりますが生活や社会の中でどう自分が豊かに生きていくかという本質的なところについて、大きく関わっていく教科・科目であると認識しているところです。
 そのような教科の特性からしまして、内容からしますと正解があるという教科ではございませんので、質を求めていく学びなのだろうなと思っていて、その中で、これまでもお話があったとおり自分で価値を見いだしていく、価値をつくり出していく、自分の中で、自分がいいというものはこういうものなのだということを常に求めながら学びを進めていく教科と捉えているところでございます。私は研究というよりはどちらかというと実践のほうからのお話になるかと思うのですけども、そういうところを感じてこれまでも取り組んできてまいりました。
 そういう中で、正解が一つではないということが一番大事かなというところで、現行の学習指導要領のところで〔共通事項〕なり、あとは音楽で申し上げますと知覚・感受のところが随分ここ数年浸透してきているところでございますが、感受の部分についてとても大事にしていく、それは知覚をベースにするということがあるのですけれども、そういうところを大事にしてきているというところは、一つ成果としては出てきているのかなというところでございます。
 さらにそれを踏まえた上で今後のことを考えたときに、今回の頂いた資料1で申し上げますと、36ページに今後の文化芸術教育の充実・改善の方向性という形でお示しをされていたところで、学習指導要領の趣旨を踏まえた指導の充実という項目がございます。ピンクの点線で囲まれたところに事例が掲載されているかと思います。題材とか、あとは中核的な概念や方略については皆さんお話しされていたのですが、ここに「本質的な問い」というところで掲載していただいていて、ここについて、私は非常に大事なのではないかなと思っています。これは子供というよりは、どちらかというと指導者、教員のほうがこういうところを押さえながらきちんと指導していく、具体的な内容については中核的な概念や方略を持ちながら迫っていくという形になると思うのですけども、この題材をなぜ学ぶのかということをきちんと教師自身が押さえていくということが今後、より必要になってくるのかなと思って拝見させていただきました。この後、どのような御議論になるかというところで見ていきたいと思っています。
 自分の中で価値をつくり出していく学びの中で、それを互いに協働的な学びを中心に据えながら対話的な学びの視点で授業していくという形を取った場合に、学校という集団の中で芸術を学ぶ意義ということを考えたときに、他者がおりますので、他者と自分がどのような関係性の中で自分が考えたことが他者に理解されているか、あとは他者が考えたことを自分がどう受け入れられるか、いわゆる相互承認の場として非常に重要なのではないかなと思っているところでございます。それを踏まえていくことで自己肯定感なり自己有用感なりが育まれていくのだろうと思っています。特に高校におきましては入試を経て入学してきますので、その後、社会に出ていくという位置付けからして、自己理解というのが一番重要だろうと考えているところです。この自己理解に非常に重要な視点を与えてくれるのは芸術系教科だろうと認識しているところでございます。これが大きい一つ目になります。
 二つ目としては、芸術系教科は、実際に本物に触れていくという教科の特性がございますので、それを生かしながら、身体性というところが大事なってくるのかなと思います。先ほどからもお話が出ていますが、五感とか感性、感覚を非常に研ぎ澄ましながら、磨きながら獲得していく学習だろうと思っています。最近の授業を私も研究会とかで拝見するときがあるのですが、学習指導要領の趣旨がかなり浸透しまして、思考・判断・表現を重視するとか、思考・判断・表現をどのように技能で表すかというようなところがあって、先生方はそこをポイントに授業をしていただくのですが、ちょっとそちらに偏っている授業もあるかなと感じているところでございます。なので、どうしても「頭で考えてどうするか」というようなところで子供たちにアプローチしてしまうというか、そういうような傾向も若干見られるかなと思いながら、じゃあ、聞いたこと、目で見たこと、あとは肌感覚で感じたことをどのように学びとして表現していったり、あとは言葉で表していったりするかという、そのところを大事にしていくということが少し大事かなと感じているところなので、その辺りのこれからの示し方ということも非常に大事になってくるかなと思っています。
 もう一つ、一人一人の特性を生かした学びが可能である教科だろうと思っています。先ほど特別支援教育に携わらせていただいたお話もさせていただきましたが、特別支援教育で学びをしている子供たちについては個別の指導計画等をつくって、子供主体で学習を進めるのですが、そういう中で芸術教科との親和性というのは非常に高いなと、私自身、ここ数年で感じてきていたところでございます。それが今回の論点整理の柱で言うと多様性の包摂にもつながっていくのだろうと思っておりまして、音楽のお話をしますと、合唱というもの、皆さん、混声合唱をイメージしていただければ、ソプラノとアルトとテノールとバスがあって、それぞれ高い声が得意な人、低い声が得意な人、それが男性、女性、それが相まって一つのハーモニーをつくり上げていると、これがそもそもある意味でインクルーシブな場なんだろうなと思っていたところでございますので、多様性の包摂とちょっと意味は違うかもしれませんけども、教科・科目としては、非常にこの辺りは美術、工芸、書道においても通じるものがあるのではないかなと思っているところです。
 最後に1点だけ、課題として現場感覚で感じているところについて申し上げさせていただきますと、実は、学びの積み重ねが小学校、中学校、高等学校でどれだけできているのかなというのは、芸術、私は音楽の立場から言いますと、非常に危惧しているところでございます。例えば楽譜の読める、読めないというところも、それがメインではないとはありますけれども、9年間とか10年間学んでいって、それによってどのように最終的に子供たちが資質・能力を身に付けられたのかと、その辺りについては引き続き検証していく必要があるだろうと考えているところでございます。
 長くなりまして申し訳ございません。どうぞよろしくお願いいたします。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 それでは、山下委員、お願いいたします。
【山下委員】  東京藝術大学の山下薫子でございます。日常の職務としては、大学院で音楽教育学の教育研究に携わるとともに、音楽学部では教職課程の授業を受け持っております。教員養成課程での指導歴は、前職から数えて約30年となりました。学習指導要領や学習評価の改善に関しましては、平成20年告示、学習指導要領の解説以来、幾つかの委員を務めさせていただいてまいりました。
 その一つ、令和4年度の小学校学習指導要領実施状況調査では、相当数の児童が音楽を聴いたり楽譜を見たりしてその特徴を捉えること、そして我が国や郷土の音楽のよさを言葉で表すことなどができているという結果を得ました。このことから、旋律やリズムなどの音楽を形づくっている要素をよりどころとして主体的に思考したり判断したりしている子供たちの姿を思い浮かべて、うれしい気持ちになりました。
 他方で、部分的にではなく曲全体の構造を捉えて音楽表現を工夫したり、曲全体のよさを味わって聴いたりすること、そして、音楽を形づくっている要素を聴き取って楽譜と結びつけることなどには課題があることが明らかになっています。そして、改善の方向性としては、実感を伴って知識を習得することの必要性などが示されました。その実感を伴った知識を習得するために、私は体を動かす活動など身体性を伴った学習が重要であると考えています。なぜならば、音楽のまとまりや抑揚、緊張と弛緩の関係などを身体全体の感覚で捉える経験を積み重ねることによって動きが内面化し、実際に動かなくてもダイナミックな動きや音楽のニュアンスを内的に想起することができるようになって、より深い音楽の理解へと繋がると思うからです。
 また、身体性は協働的な学びとも深く関わっています。9月25日の教育課程企画特別部会の論点整理を拝見したところ、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方の中に、「人間ならではの身体性や実体験の重要性」という言葉が挙がっておりました。これはデジタル学習基盤を前提とした探究の中で主体的・対話的で深い学びを実現するために大切なこととして示されているものですが、私はこの身体性を音楽学習のみならず、教科横断等の枠組みにもしっかりと位置付けることによって我が事としての学習が実現し、ひいては全ての教科等に開かれた感性や知性、創造性の土壌となり得るのではないかと考えております。これは、本日の資料1の6ページにある「目標の示し方」に関する課題にも直結することであると思います。
 現行の小学校学習指導要領でも内容の取扱いの中に体を動かす活動を取り入れることが示されていますが、私は音楽と身体の関わりについて研究してきたこれまでの経験に基づきまして、身体性の観点から広がる学習指導要領改善の可能性について、いま一度考え直してみたいと思っております。
 それから、論点整理の中で、特定分野に特異な才能のある児童生徒について言及されていることにも注目しております。現在、私は附属音楽高等学校の校長を兼務しておりますことから、教育課程のあり方に関連して何かお役に立てる話題がありましたら発言させていただきたいと存じます。
 主として身体性に絞って意見を述べさせていただきました。引き続きまして、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【大坪主査】  ありがとうございました。
 一応皆様から御意見を賜りまして、最後に、時間がございますので、私のほうでかいつまんで意見を述べさせていただきます。
 まず、私自身は中学校美術科の教員を7年、それから都立高校で4年、その後、東京大学の教育学部附属中等教育学校で12年ほど指導しておりまして、その後、母校であります武蔵野美術大学に戻って美術・工芸の教員養成を担当していたということでございます。
 今回、各委員の御意見を伺っている中で、加藤泰弘委員からもありましたけども、高校の場合、音・美・工・書はあるのだけど、その全体を通底する芸術という枠がないということがありまして、今現在、各委員からの御意見を伺っている限りにおいてはできそうかなと思ったのですが、これがまた各論に入った場合どうなるか、いささか難しい面はあるなと思っております。
 それから、私自身がこのような芸術教育の研究に入りましたのは、実は非常に具体的な経験がございまして、中学校の教員から都立高校に転勤いたしますときに離任式というのが大体あって、生徒たちがいろいろお別れの言葉を述べてくれるのですが、その中で私向けに述べた1人の男の子が、「先生は美術の時間によく褒めてくれました。でも評価は3でした」と言われてしまって、そこから「これは一体どういうことだ」というところが私の原点みたいにして、ずっと芸術教育の研究をしてきたという経緯がございます。
 そういった中で、今回の検討事項の中で、1ページ目にあります芸術系教科・科目の特性である個別性、即興性、創発性というのが出てきて、これはまさしくそのとおりだと思うのですが、私はもう一つここに、他教科ではちょっと入りにくいと思うのですけども多様性、あるいは括弧して寛容性でもいいと思います。その領域が入っていいのかと、我々の学びの中には、それは絶対的な正解とかそういったものがない学びであるというところから多様性(寛容性)というような概念も入り得るのではないかと思っております。
 それともう一つ、ここの資料にはございませんが、令和5年1月から2月に行われました義務教育に関する意識に関わる調査の中で、児童生徒に関しては「学校生活を通じて身に付けたいこと」は何ですか、全て挙げなさいというのと、それから教師向けには、それからウェブモニター向けには「子供たちが義務教育修了時に身に付けておくべき能力や態度として特に重要だと思うもの」について訪ねていて、その中で同じ選択肢に「新しいものや考えを生み出す創造的な力」がありました。その中で、教師は回答した人が7.1%、webモニターは14.8%、児童生徒は48.8%となっています。ですから、半数まではいってないのですけども、子供たちのほうがこれから先、自分たちが生きていく上で創造的な力、何か新しいものを生み出す力みたいなことが重要なのだということはもう感じ始めていると、それを我々教育者がまだつかみ切れないでいる状況ではないかと思っております。この点については、これから我々が何しろ分かりやすい学習指導要領を目指す上においては重イントであると考えています。
 今次改訂においては、「分かりやすい」「使いやすい」学習指導要領言われている上においては、まずは教師にとって先生方が授業をデザインしやすい、そういった学習指導要領であることはもちろん大切です。ただ、もう一つは、それを読んだ保護者、あるいは一般の方々も読んでみて分かる内容でないといけないと思います。全く教育と関係のない人に現行の学習指導要領で中学校美術を読んでもらったところ、「意味が分かるか」と問いましたら「分からない、イメージできない」とおっしゃいます。それでは、これから先、学校教育が世の中で果たすべき役割が社会に理解されないということにつながってくると思っておりますので、分かりやすいということを考えたときに、世の中の人に対しても分かりやすいということが大事かなと、今現在は思っております。
 今回、「表形式化」等によってそれを実現していこうという方向でございますので、それがどのように働いてくるかは少し研究を要するかなということもありまして、これから先の各論に入りましたときに各委員から御意見をいただければと思っております。
 ちょっとかいつまんで私のほうから最後に意見だけ述べさせていただきました。
 
 それでは、時間的には順調にここまできておりますので、最後に、今回、特に最初のほうに御発言いただきましたら委員の先生方は大分時間を気にして短く御発言になって、ちょっと言い足りなかったということもあるかもしれませんので、そういうことがございましたらぜひ事務局までメール等でお知らせいただいて、後ほど共有できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。その目途といたしまして、10月13日ぐらいであれば事務局で対応できるということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後に次回の予定について、事務局よりお願いいたします。
【奈雲参事官補佐】  ありがとうございます。次回の会議は10月27日月曜日の9時半を予定しておりますが、正式には後日御連絡させていただきたいと思っておりますので、また正式な御連絡をお待ちください。よろしくお願いいたします。
【大坪主査】  それでは、第2回の日程についても御留意のほど、お願いいたします。
 今回、委員の先生方の御意見をお聴きし、多様な視点から示唆に富んだ御意見をいただきました。芸術という言葉一つにしても、創造性という言葉一つにしても、感性という言葉一つにしても定義が難しい領域を担当している教科・科目でございます。それを何とか分かりやすい学習としてまとめていく上においては先生方のお力が非常に大きいと思いますので、ぜひこれからよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、以上をもちまして本日の芸術ワーキンググループを閉会といたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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