令和7年11月10日(月曜日)16時00分~18時30分
ウェブ会議と対面による会議を組み合わせた方式
【友添主査】 定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会体育・保健体育、健康、安全ワーキングループを開催いたします。これからは健康、安全を略して、体育・保健体育ワーキンググループと呼びたいと思います。皆様、今日もよろしくお願いいたします。
初めに、事務局、赤間室長より開催方式について御説明をお願いいたします。
【赤間企画調整室長】 事務局でございます。本ワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただきまして、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただくようにお願いいたします。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
今日の議事でありますけれども、2つございます。
1つ目は、現行学習指導要領を踏まえた現場における指導の状況等についてです。本ワーキングにおいては、学習指導要領改訂に向けて、今後、目標や内容の議論をさらに進めていくわけでありますけれども、これに向けては、やはり学校現場における指導の成果や課題などについて、理解を深めながら進めていくことが重要だと考えています。今日は3名の委員の皆様から現場の状況等について御発表いただき、その上で意見交換を行ってまいりたいと思っています。
2つ目でありますが、「見方・考え方」、「学びに向かう力・人間性等」についてです。前回までのワーキングで、体育・保健体育を学ぶ意義や価値について、委員の皆様の問題意識をお聞かせいただきました。今回はそれを踏まえ、教科等を学ぶ本質的な意義の中核として整理されました「見方・考え方」につきまして議論を行いたいと思います。また、「学びに向かう力・人間性等」については、前回、佐藤豊委員、岡出委員から改善方策について御発表いただいた上で意見交換を行い、体育科としての今後の方向性を確認しております。これを踏まえました改善イメージについて議論を行いたいと思います。
それでは、早速でありますけれども、議事に入ります。現行学習指導要領を踏まえた現場における指導の状況などについて、事務局とも御相談し、今回は、小学校のお立場から藤原委員、中学校のお立場から大井委員、高校のお立場から佐藤若委員に、お一人10分程度で御発表をお願いしております。お三方から御発表いただいた後に、全体で意見交換を行いたいと思います。
では、初めに、藤原委員からお願いいたします。
【藤原委員】 それでは、よろしくお願いいたします。それでは、現行学習指導要領や現場での授業づくりの実際から見えてきた成果と課題についてお話しさせていただきます。
次のスライドをお願いいたします。京都市では、「一人一人の子どもを徹底的に大切にする京都市の教育」という理念の下、日々の教育活動に取り組んでいます。この「一人一人の子どもを徹底的に大切にする」という言葉には、誰一人として決して取り残さないという教師としての強い使命感が込められていると考えています。私たちが日々行っている体育科の授業においても、この理念に基づき、一人一人を徹底的に大切にする授業づくりを目指して取り組んでいます。本日は、誰一人取り残さない、全ての子供への学習機会と学力の保障といった視点で、小学校の体育科の授業づくりで大事にしていることについてお話しさせていただきます。
次のスライドをお願いします。初めに、全ての子供への学習機会と学力の保障についてお話しいたします。私たちが小学校の体育科の授業で大切にしていることは、小学校学習指導要領体育科の目標に示されている内容であり、目指すは、生涯にわたって心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフの実現に向けて、3つの資質・能力をどのように偏りなく育成していくかということであります。体育科の授業は、決して競技選手を育てる時間ではないと考えています。例えば、陸上運動系のハードル走。陸上の競技会では、ハードル間のインターバルは一定の距離で速さを競いますが、小学校の学習では、ハードル間のインターバルは、自分がリズミカルに3歩か5歩で走ることができるインターバルを見つけて、自己の記録に挑戦したり、仲間との競い合いを楽しんだりして、学習を進めていきます。つまり、ハードル間のインターバルは、固定ではなく、子供が選べるということです。身長や体力、走力や運動の得意・苦手など、様々な子供たちが一緒に学ぶ小学校では、子供たち一人一人が自己の能力に適した課題を見つけ、課題に応じた場を選んで取り組む授業を計画し、進めるようにしています。
次のスライドをお願いします。次に、どのように単元の計画を立てるのかについて、3つの視点で考えています。
1つ目は、運動の特性を明らかにすることです。具体的には、これから子供たちが学習を進めていく運動はどのような運動なのか、またどのような楽しみがあるのかということです。
2つ目は、各単元で育成を目指す資質・能力を明らかにすることです。さらに、その運動の系統性も明らかにします。例えば、陸上運動系の高跳びでは、第1学年及び第2学年では跳の運動遊び、第3学年及び第4学年では高跳び、第5学年及び第6学年では走り高跳びをいずれかの学年で取り上げますが、それぞれ単元計画を立てる段階で、この学年で扱う運動はどういう資質・能力が育まれ、この先どのように育成していくのかといった縦の系統を把握した上で、その学年で育成を目指す資質・能力を明らかにしていくようにしています。
3つ目は、子供の実態を把握し、明らかにすることです。学級の子供のこれまでの運動遊びや運動ではどのような経験をしてきたのか、またどのような学習の進め方・取り組み方を経験してきたのか、事前に子供たちに聞き取りをしたり、アンケートを取ったりしながら、子供の実態を把握します。その上で、どのような進め方で、どのような場や道具やルールなどで学習を進めていけば、子供たちが運動の特性に応じた楽しさや喜びを味わえる学習になるのかを考え、単元計画を立てるようにしています。
この3つの視点で単元の構成を考えていくことが、子供たちが安心して意欲を持って運動に向かい、できるようになりたい姿を目指して挑戦し、頑張ってできるようになった成功体験を積み上げていくことにつながる授業になっていくと考えます。
次のスライドをお願いします。次に、授業では様々な工夫を行っていますが、本日は時間の関係もあり、主運動につながる運動の工夫についてお話しいたします。私がこれまで在籍した学校では、主運動につながる運動を、それぞれの運動の準備運動に当たる体慣らしと位置づけ、単元で狙いとする動きを意図的、計画的に取り扱うようにしています。
例えば器械運動系のマットを使った遊び・マット運動の学習では、日常生活ではあまり経験することがない、腕で体を支持する動きなどは、体慣らしの時間に取り入れるようにしました。1年生の導入で指導した後は、カエルの足打ちやロバキック、川跳びなどを低学年から意図的、計画的に取り扱うことによって、中学年以降も多くの子供が抵抗なく
倒立回転グループの技に挑戦していく姿が授業の中で見られるようになりました。
また、この体慣らしは、学級単独での取組とせず、学校全体で取り組むことによって、学校体制での学習機会と学力の保障を図ることにもつながります。現状、学級担任が体育科の授業を行うことが多い小学校では、学校体制で取り組んでいくことはとても大きな意味のあることだと考えます。また、今後は、体育専科の教師が各学校の中心となって、学校体制で学習機会と学力の保障に取り組んでいくことも期待しています。
次のスライドをお願いします。次に、課題解決に向けてのデジタル学習基盤の活用についてお話しいたします。器械運動系のマット運動や鉄棒運動、跳び箱運動では、技ごとのイメージ映像を見ることで、憧れと具体的なイメージを持ち、意欲的な活動につながっています。また、自分の姿を撮影し、自己の課題を明確にしたり、つまずきに気づいたり、少しずつできるようになってきた様子を確認したりすることにも活用しています。さらに、イメージ映像や今までの自己の試技と比較したり、同じ場を共有する友達や同じ技に挑戦している友達と一緒に課題を共有し、解決方法を考えたりすることに活用することで、主体的かつ協働的な学びとして学習が進められてきます。同時に教師も指導や評価に活用することができます。
次のスライドをお願いします。次に、誰一人取り残さない取組として、障害のある子も、ない子も楽しめるよう、インクルーシブ教育システム構築の視点での授業づくりを行っています。障害の有無にかかわらず、どの子も運動の特性に応じた楽しさや喜びを味わうための工夫として、例えばボール運動系のバスケットボールでは、ゴールのリングを大きくしたり、扱いやすい大きさや重さのボールにしたり、ソフトバレーボールでは、ルールをより易しくして、プレー中にキャッチすることを認めたり、回数制限を増やしたりする工夫などを行い、誰もが安心して、そして誰もが楽しめるように工夫して学習を進めています。また、動きが分からず、ゲーム中に止まってしまうような子供には、ソフトバレーボールなどでは、コート内に厚みのない輪を置いて、プレーで動いた後には戻る位置を分かるようにしたり、バスケットボールでは、ボールをもらう動きをイメージできるように、端末で撮影した動画をプレー前に示したりするなどの支援を行ったりしています。
さらに、競技スポーツのルールでゲームを進めていくのではなく、学級のみんなが楽しめるルールをみんなで工夫するという視点で、まとめの時間等を使い、教師と子供が互いに考えを出し合いながら進めていくようなこともしています。全ての子供が楽しく安心して力いっぱい運動に向かうことができる体育の学習を今後もさらに追求していきたいと考えています。
次のスライドをお願いします。最後に、課題として3点お話しいたします。低学年の運動遊びについては、まだ改善の余地があると考えます。運動遊びが遊びのまま終わってしまったり、反対に教師側がついつい教え込んだりし過ぎてしまい、狙いとする動きを遊びの要素を取り入れて行えていない現状も若干見受けられます。現行の学習指導要領でも、幼稚園教育との関連を図ることが示されています。次期改訂においても、低学年における運動遊びが幼児教育との接続をさらに意識し、幼児期の遊びと小学校における運動遊びが円滑につながるような取組を充実させていくことが大切であると考えます。
次に、「学びに向かう力・人間性等」の指導と評価についてです。「学びに向かう力・人間性等」に示されている、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全等に関する態度及び意欲的に運動する態度を養うことについては、前回のワーキンググループでの議論を踏まえ、次期改訂では再整理が必要であると感じています。
最後に、「深い学び」の実態についてです。論点整理で、次期改訂に向けた検討の基盤となる考え方として「主体的・対話的で深い学び」の実装が示されていますが、体育科における「深い学び」の実装とはどういった姿なのかといったことを改めて見つめ直す必要があるのではないかと考えます。現状では、「深い学び」の子供の具体の姿を教師が持ち切れているのだろうかという点で課題があるように思います。もう少し踏み込んで言うと、現行学習指導要領で示されている「見方・考え方」の理解がまだまだ浸透しているとは言い難いことに要因があるのではないかと考えます。結果として、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善については道半ばであり、実現可能性の確保に向け、次期改訂ではさらなる議論が必要であると現場の校長として感じています。
以上になります。
【友添主査】 藤原委員、どうもありがとうございました。
それでは続きまして、大井委員、お願いいたします。
【大井委員】 札幌市立中央中学校の大井でございます。本日は、学習指導要領を踏まえた学校現場での保健の授業改善の取組とその成果と課題について御報告いたします。
まず、札幌市における授業改善の基本的な考え方について御説明します。本市では、「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら問題を解決する資質・能力」を「学ぶ力」と定義し、子供に育みたい共通の資質・能力として学校教育の中核に位置づけています。この「学ぶ力」の育成に向けた取組の柱の一つとして、子供が自ら疑問や課題を持ち、主体的に解決する課題探究的な学習を取り入れた授業づくりを幼稚園から高等学校までの全ての学校、園で進めています。これは、「主体的・対話的で深い学び」を実現し、資質・能力の育成を目指すものです。課題探究的な学習のコンセプトは、学びのコントローラーを持っているのは子供自身であること、つまり子供が学習の主体となる多様な学びの実現です。そのために、1単位時間だけではなく、単元や題材など、内容や時間のまとまりの中で、子供が主体的に学習を進めることができるよう、資料の下段に示す学習の過程を教師が意識しながら授業を構築し、日々改善に取り組んでいます。
次をお願いします。では、授業改善の取組の一端を第3学年「健康と環境」の指導事例で御紹介します。教師が指導する観点と子供の学習状況を評価する際の観点を連動させる、指導と評価の一体化を実践の柱とし、教師の授業改善と子供の学習改善につなげることを目指しました。
次をお願いします。本単元では、身体の環境に対する適応能力、至適範囲、飲料水や空気の衛生的管理、生活に伴う廃棄物の衛生的管理に関わる知識を習得し、至適範囲に関わる原則や概念を基に、習得した知識を個人生活に関連づけて課題を発見し、健康を保持増進する方法を選択することなどを通じて思考力、判断力、表現力を育むことを目指しました。単元の7時間目は、これまで学んできたことを活用して思考・判断することを主眼とした時間となりますので、その内容について紹介させていただきます。
次をお願いします。本時は、震災時の環境の変化とそれに伴う健康問題について考える学習です。子供たちは、教師の発問により、震災の発生時には避難所での生活やライフラインの遮断、衛生環境の悪化などにより様々な問題が生じ、心身の健康に大きな影響を受ける可能性があることを明らかにし、震災が起きた際、どのように環境の変化に対処したらよいだろうかという課題を発見しました。
次をお願いします。この課題の解決を目指し、教師は、子供の興味・関心に基づき、具体的に考えたり調べたりする内容を整理し、子供が自分でテーマを決めて課題解決に取り組む学習活動を位置づけました。各自が異なるテーマについて調べ、授業の後半にグループ内で共有する流れとしました。子供たちは、例えば食料に関することなど、自分でテーマを設定し、それに関わる健康課題や対応方法を調べ、スライドにまとめる活動を行いました。調べる方法についても子供が自ら選択し、教科書や授業で用いた学習カード、インターネットの検索サイトなどを活用する姿が見られました。
次をお願いします。まとめのスライドには、「環境の変化によって起こる健康課題とは」という問いに対して、自分で選んだテーマを記載します。この生徒が選んだテーマは「食料の不足」です。このことへの対応策について、自分で調べたことを記載し、まとめました。具体的には、避難所生活では食事が偏りやすいこと、高齢者や乳幼児向けにおかゆや食べやすいスティックタイプの乾パン、粉ミルクなどを備蓄していることなどをインターネットから調べて記載していました。インターネットの情報には偏ったデータや信頼性の低い情報も含まれていることから、どこで情報を得たかという情報源も記載することで、信頼できるデータが否かを判断した上で活用することを促しました。
次をお願いします。子供が自ら選んだ方法で学習を進めていくため、ともすると教師が想定しない方向に進んで、学びの質を担保できない状況が生まれてしまう懸念があります。そこで、本単元の学習で大切にしてきたキーワード、衛生的な環境を保つこと、運動、食事、睡眠・休養の健康3原則に基づく生活を送ることを再確認する場面を設けました。これは、疾病等のリスクの軽減や生活の質の向上といった「保健の見方・考え方」につながるものです。学習の途中で子供が「見方・考え方」に基づくポイントに立ち返ることができるようにすることで、学習の方向性を明確にし、学びの質を担保することができました。
次をお願いします。これは、授業の後半で各自がまとめた内容を共有した場面です。どのグループにおいてもそれぞれの発表に聞き入る様子が見られ、友達の発表内容と自分が学んできたことを関連づけたり、新たな視点に気づいたりする様子がうかがえました。発表を互いに聞き合う場面では、やはり「見方・考え方」が働いていることが重要なポイントとなります。テーマは異なっても、疾病等のリスクの軽減や生活の質の向上といった共通の視点を基に思考・判断・表現することで、一人一人の学びを広げ、深めていくことができることを実感した授業でした。
次をお願いします。こうした指導事例など、授業づくりに関する研究の成果を全市で共有しながら授業の改善に取り組んでいますが、現時点で感じている成果と課題についてお話しします。
まず、成果についてですが、指導と評価の計画に基づいて授業を進めることについて、教師の理解が徐々に進んできたと感じています。1単位時間だけではなく、単元や題材など、内容や時間のまとまりの中で3つの資質・能力をバランスよく育む学習をデザインすることや、子供の知的好奇心が膨らむ単元の導入、子供が自らの成長や学びの進捗を自覚できるようにする振り返りの方法を工夫すること、個人生活における健康・安全に関する内容について、より科学的に理解することを促す資料を活用することなどについては、教師の意識が向上してきたと感じています。
一方、課題についてですが、学びの深まりの鍵となる「保健の見方・考え方」を働かせながら、健康についての自他の課題を発見し、その合理的な解決のための活動の充実を図るということについてはまだまだ道半ばだと感じています。その理由の一つとして、「見方・考え方」における健康や安全に関する原則や概念について、教師の理解が深まっていないのではないかと考えています。学習指導要領解説の記述から原則や概念を現場の教師が明確に読み取り、指導に結びつけることが難しいのではないかという問題意識を持っています。また、学んだ知識を活用して思考・判断・表現する学習の充実が一層求められると考えています。習得した知識を個人生活と関連づけて、健康についての課題を自ら発見し、課題解決に取り組み、健康を保持増進する方法を選択するといった学習過程をより計画的、効果的にデザインする工夫が必要だと感じています。
次をお願いします。最後に、カリキュラムマネジメントの視点からの成果と課題についてです。
まず成果についてですが、保健・安全教育の充実に向けて人的・物的資源の活用が積極的に図られていると感じています。札幌市においては、丸1から丸5の具体例にあるような市の事業を保健の授業だけではなく、保健分野の学習と特別活動、「特別の教科 道徳」などとの関連を図った指導においても活用することができ、安定的に教育課程に位置づけられるようになっています。
一方、課題についてですが、教科横断的視点に立った各教科等の関連を図った指導について、保健分野で学んだことを体育分野や各教科等の学習と結びつけて理解を深める計画的、効果的な指導にはさらなる工夫が必要だと感じています。
小学校においては、学級担任による指導が中心となるため、各教科等の学習内容との関連を図った指導を意図的、計画的に行う取組を目にすることも多いのですが、教科担任制の中学校においては、他教科の学習内容との関連を図る意図が十分に働いていない状況もあるように感じています。教師が健康や安全に関わる学校の全体計画を確認しながら、子供が保健の学びと他教科等での学びを結びつけながら理解を深め、学んだことを日常生活での実践につなげることができるような指導の工夫が必要だと感じています。また、学習評価については、子供の資質・能力の育成につなげることや、教師の指導の改善に生かす意識の向上が必要だと感じています。評定につなげるための評価資料の蓄積に意識が向きがちですが、子供が自身の成長を感じたり、学びの積み重ねに自信を持ったりして、学ぶ意欲をさらに高めていくことにつながるフィードバックや、子供一人一人の学習状況に合わせて教師が自らの指導を改善するためのフィードバックの方法を工夫し、指導の充実に生かす取組が求められると感じています。
中学校においては、現行の学習指導要領に基づく指導が5年目となります。この間にも健康・安全に関わる課題が複雑化、多様化していますが、学習指導要領の目標と内容を踏まえた保健の学習を一層深め、学校で学んだことを実生活や実社会に生かすことを促す指導の充実を図っていくことで、未知の健康課題にも対応できる汎用的な力を育むことができるのではないかと考えています。
以上で私の発表を終わります。御清聴いただき、ありがとうございました。
【友添主査】 大井委員、ありがとうございました。
では最後に、佐藤若委員、お願いいたします。
【佐藤(若)委員】 山形県立南陽高等学校の佐藤若と申します。本日は、文字だけの資料で大変見にくくて申し訳ございませんが、今、高校現場で感じていることということで、高校の指導内容と「学びに向かう力、人間性等」について私なりの考えをお話しさせていただきます。
まず、高等学校は、豊かなスポーツライフを継続するための資質・能力を育成ということで、中学校から引き継いで指導している時期ということで、4・4・4の大きな系統性からすると、卒業後も運動やスポーツに多様な形で関わることができるようにする時期ということになりますので、「する、みる、支える、知る」という多様な関わり方ができるように、3つの資質・能力のバランスを取りながら指導しているものと思っております。
現状と課題ということですが、まず知識及び技能については、技能の面ですけれども、まず生徒の技能レベルの差が少し大きくなっていて、全体的には低い傾向が見られる感じがしています。得意な生徒と得意でない生徒の差が広がっているということで、学校現場ではそういった中で指導することを課題として挙げている教員が多いと感じています。
知識の内容については、体力の高め方や競技会の知識、試合の仕方、課題解決の方法などいろいろありますけれども、特にうまく体を動かすための知識については、具体的なコツややり方ということだけでなく、何のためにそのように動かしたらいいのかということをしっかりと理解してというか、教員が指導することによって、生徒がそれを納得して練習しているという姿などが見られています。
それから、技能ということだけではありませんが、中学校3年生から高校3年生までの4・4・4の中で選択制授業が主になっていますが、選択制授業については、学校の実情に応じて領域や種目選択が行われていると思っています。ただ、施設や用具が十分整っていない状況もあり、なかなか生徒の好きな選択種目ができない状況みられます。論点整理の中では「好きなことを育み得意を伸ばす」というフレーズもり、あ環境面、施設面など、工夫が求められるのかなと思っています。
それから思考力、判断力、表現力等については運動に関する課題解決は十分行っているかなと思います。体の動かし方とか、どうすればもっとうまくなるのかといった課題解決の場面は非常に多く見られますが、一方で、運動実践につながる態度、具体的には、よりよいルールやマナーを提案したりとか、合意形成、話合いをするときに、どのようにしたらうまく話合いができるのか、調整できるのかなどということ、さらに危険回避について、活動をどうしたらいいのかという健康・安全について、さらに生涯にわたってスポーツを楽しむ関わり方など、こういった内容についての実践が少ないのが現状だと思っています。運動技能を高めるための課題解決だけではなく、今お話しさせていただくように、本当にみんなで一緒に楽しむ態度やマナーとか、それからスポーツを観戦する楽しみ方とか、それから自分に合ったスポーツの関わり方についてもっと「思考・半案する時間や場面を設定できたらいいと感じています。
あとは、体の動かし方や運動の行い方についても、課題を発見するということはなかなか簡単なことではないと私は思っているんですけれども、そういったところに教師の手だてというか、指導・支援というのがもう少し丁寧に行われればいいのかなと感じています。例えば場の設定とか、視点を示すなど、先週、全国学体研が北海道であったんですけれども、そこの研究の柱の一つに、子供が自ら課題を発見し解決するための手だてということが挙げられていて、まさにそういった視点は大事だなと思っています。
それから、「学びに向かう力、人間性等」については、実際に指導を行った先生方から、チームでの協力や声かけとか、対戦相手へのリスペクトなど、そういった行動ができるようになってきたという声を聞いています。また、共生については、スポーツが得意な生徒も苦手な生徒も一緒に楽しむためにはどうしたらよいかを実際に話し合い、そしてルールを工夫するような授業を行ったところ、全ての違いを超えたルールを完全に出すということは難しいけれども、生徒たちの中で、なぜ共生が必要なのかという理解が深まったという報告もありました。このように、スポーツを通して共に学んだり支え合ったりするという経験をもって共生社会をつくるということ、そしてスポーツを通して人とつながることなどを学べる、この「学びに向かう力、人間性等」の共生の指導内容は本当に重要だと感じています。
豊かなスポーツライフを継続するための資質・能力の目標に対して、この指導内容については十分なものだと思っています。実際の成果と課題と分けて書くことはできなかったのですが、一番の課題としては、こういった内容を教員がしっかりと理解できるようにするためにはどうしたらいいのかということが課題であると感じています。
それから「学びに向かう力、人間性等」についてお話しさせていただきます。ここでは、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全といった観点をどのように整理して指導や評価に生かしていくのかということについてお話をさせていただきますが、次のスライドをお願いいたします。
こちらは、専門学科体育科の指導内容が左側に示されています。高等学校には専門学科体育科という内容があるんですけれども、これは現行の指導内容になります。体育の指導内容(スポーツ2)と書かれていますが、これは科目体育では球技の内容になります。そのスポーツ2の技能の中には5つ示されているのですが、その中に「危機回避の際の行動及び事故発生時の応急手当ができること」、そして「体力や技能の程度、性別や目的、障害の有無など様々な違いを超えて、スポーツを楽しむために調整し合意したマナーを実践できること」という2つの学習内容が例示として入っています。これを対比させると、科目体育では、上が「学びに向かう力、人間性等」の「健康・安全」であり、下は、「共生」の内容や「合意形成」、もしかしたら「公正」の内容も含まれているのではないかと理解しております。こういった整理の仕方を体育科でもう一度確認したところです。前回、佐藤先生と岡出先生から「学びに向かう力、人間性等」の整理の仕方というところで示されていたと思いますけれども、類似しているというか、似た形になっているのではないかと思っています。
それから評価と評定についてです。「公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全」については、その性質ということから考えると、知識及び技能の資質・能力の中で整理されたほうがいいと思います。一方、小学校だと積極的中学校で自主的、高校では主体的となりますが、主体的に運動に取り組もうとする意欲のようなもの、言葉で言うと愛好的な態度となりますが、この内容については個人内評価が適しているのかなと感じています。生徒一人一人のこうした成長や努力を肯定的に積極的に価値づけするということを考えると、そういった個人内評価ということに整理されるのがいいのではないかと感じたところです。以上で終わります。
【友添主査】 佐藤若委員、ありがとうございました。
お三方の校長先生の豊富な御経験を基にした貴重な御発表だったかと思っています。
それでは、これより意見交換を行ってまいりたいと思います。お三方への質問、感想を含めまして、ぜひ活発に御意見を交わしてまいりたいと思っています。
ひとまず30分程度を想定しています。御意見等ある方は、挙手ボタンを押していただけたらと思います。いかがでしょうか。
渡辺弘司委員、お願いします。
【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。私は、以前から申し上げているように学校医でございますので、どうしても視点が狭くなるのはちょっと御容赦いただきたいと思うんですが、2番目に御発表をなされた大井先生の最後から2番目のスライド、ページ数を振っていないので、授業改善の取組における成果と課題というところのスライドでございますけれども、そこに三角で書かれている課題の丸1に、見方・考え方における「健康や安全に関する原則や概念」に関する教師の理解に課題があるという問題点を挙げておられると思うんですけれども、私、医療関係者から見ましても、大変ごもっともな話だと思っております。
非常にこれは、健康という概念だけでもいろいろな関係者が様々な認識を持っていますし、安全に関してもそうでございます。それについて、大変お忙しい学校の先生に保健の授業だけにおいてこれを十分御理解いただいた上でお教えいただくというのは、大変難しいんではないかなと思います。むしろ、こういう基本的な概念というよりも、ポイントとか基礎的な考え方を解説のほうに書いていただいて、後で出てくるかもしれませんが、資料2に、以前の2回目まで僕はレジリエンスという表現を使って、今回は日本語で「柔軟で持続的なコンピテンシー」と書かれてございますけれども、そのような与えられたテーマに対して既存の課題を見つけてというよりも、むしろ未知のテーマに対して考え得る課題を見つけて解決する能力を目指すと考えられれば、ここを学校の先生が十分理解しなければいけないというハードルを越えられるんではないかなと、この大井先生の御提案を読ませていただいて感じました。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。「健康や安全に関する原則や概念」、ここまで理解を教師に求めるというのは、小学校の先生方を含めて、あるいは多くの教科を持たれる方を含めていうと、なかなか大変だろうとお聞きしました。
大井先生、いかがでしょうか。
【大井委員】 今、お話にありましたとおり、ここが非常に学びの深まりという意味では、学習を進める上でこの「見方・考え方」がとても大事だと思うんですけれども、教師がなかなか解説書のどこの部分が概念に当たるのか、原則なのかということを理解し切れていないために、そこに十分に着目した指導ができていないのではないかという課題意識は持っております。
【友添主査】 ありがとうございます。今回はその辺りの示し方を工夫して、よく分かる形、もちろんそのためには概念や原則を精選しておく必要があるかと思うんですけれども、前に進んでいきたいと思います。渡辺委員、よろしいでしょうか。
それでは次に、御質問、御意見等はございますでしょうか。
斎藤委員、いかがでしょうか。斎藤委員は、行政、スポーツ庁、それから現場と、なかなか豊富な御経験をお持ちかと思います。何かお感じになられたことがありましたら、お願いいたします。
【斎藤委員】 ありがとうございます。小、中、高それぞれの立場からお話しいただいて、学校現場の様子がとてもよく分かりました。どの学校種でも「見方・考え方」や「学びに向かう力・人間性等」の話が進んでいることから、やはりここが論点なのだろうという認識を持ちました。
佐藤若委員から発表いただきました高校の「知識及び技能」の指導の状況について、生徒の技能の習得が低い状況や生徒間の技能差が大きい状況は、本当に対応が難しいのだろうと思います。一方で、運動やスポーツを「する、みる、支える、知る」ことについて学ぶことは、高校生という段階においては、個人の多様な関わり方という意味で大変重要になってくると思います。
そこで、佐藤若委員、これからの子供たちが本当に生涯にわたってスポーツに親しんでいくための学びを実践するには、高校の学習指導要領の在り方として何を求めていったらいいのか、先ほど公正、協力等の内容を技能として指導するという視点をお話しいただいたので、その立場から、また現状の子供たちへの育み方について御意見をもう少しいただきたいと思います。
【友添主査】 佐藤若委員、いかがでしょうか。
【佐藤(若)委員 ありがとうございます。私もすごく悩んでいるというか、現場の先生といろいろ話をしながら悩んでいるところですけれども、一つは、できないと意欲がなくなるといった生徒が多いので、そういったところを「学びに向かう力、人間性等」で共生といった指導で、みんなで楽しむんだという、それはできる子だけではなくて、できない子もという意識を高めることはすごく大事なことだなと思うものと、あとは、できなくても考えたりすることが楽しいとか、見たりするのが楽しいといったことができる、指導内容にあると思うんですけれども、そこが大事だと思います。あとはもっとスポーツを広く捉えて、いろいろなことに楽しみ方を見つけられるような、すみません、具体的にどうしたらいいか分からないんですけれども、関わり方とか、何かそういったことができるような指導内容がもっとあると、子供たちが得意でなくても、もっともっとやりたいとか、いろいろなことをしてみたいとか、調べてみたいとか、そういった意欲が高まって、生涯スポーツの実践につながっていくのではないかと感じています。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
体育学科コースは、今多分全国で50校ぐらいあると思うんです。私立公立を含めて、たしかそれぐらいあったかと思うんですけれども、山形県には何校ぐらいあるんですか。
【佐藤(若)委員】 山形県は、山形中央高校1校です。
【友添主査】 そうですか。
【佐藤(若)委員】 体育科の設置です。
【友添主査】 分かりました。
ほかに御質問はございますでしょうか。佐藤豊委員、お願いいたします。
【佐藤(豊)委員】 すみません。ありがとうございます。学校現場の様々な御報告から学習指導要領の改善を考える際に幾つか視点があると思うんですけれども、まずは指導要領自体の改善が必要なのか、これは周知システムで言ったら、県に国の説明があって、市町村にあって、それから教育事務所に行ってという形で、3段階、4段階で説明されていくというルートの問題、その中で情報がうまく伝わっていかないという課題もありますし、例えば我々みたいな年配の先生方は、技術を高める授業を受けている、それから保健で言えば、テストのための知識をいっぱい増やす授業を受けている。そういう年齢の先生方と、県によってはかなり若い先生でいっぱいになっていて、なかなかその授業手法そのものがまだいっぱいいっぱいで、教科書をとにかく開いて教えなければというレベルの先生方もいるので、何か軸となるものを本当に変えるべきなのか、どこに手を入れるべきなのかというのは十分考えた上で分析していく必要があるのかなというところはちょっと感じました。先生方の発表は非常に参考になるという前提の下でです。
【友添主査】 ありがとうございました。学習指導要領本体の問題なのか、解説の問題なのか、あるいはその指導主事さんも含んで、伝達システムに問題はないかという御提案だと聞きました。よろしいですか。
ほかに御質問、御意見、何でも結構です。いかがでしょうか。
すみません。岡出先生、その次に中村先生、御準備ください。
【岡出委員】 では先に言っていただいてもいいですが、中村先生に。
【友添主査】 岡出先生、先にお願いします。次に中村めぐみ先生、お願いします。
【岡出委員】 分かりました。すみません。ありがとうございました。ちょっと話を戻すような形にもなるかもしれませんが、藤原先生が言われていた誰一人取り残さないというお話のところで、今はいろいろな子供さんたちがいる。当然、言葉の問題だとか、自信がない子供さんたちがいる。そこに関しては、小学校のところでこういう手だてというのは今書かれているといえば書かれているわけですね、例としては。そういうものが現行のところで使えるようなものになっているのか、いや、もっとこういう情報を入れてもらったほうがいいんではないかと、そういうものがあるかないかというのはお伺いしたいなと思ったのが1点。
小学校のところで体育専科のお話がちょっと出たと思うんですけれども、中高の場合は基本的にその教科担任でやっていると思うんですけれども、小学校のところで体育専科の人がおられることによってどういうメリットが出てきているのかということも改めて教えていただきたいなと思いました。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
藤原先生、まず、よろしくお願いします。
【藤原委員】 1つ目の質問をもう一回だけよろしいですか。岡出先生、申し訳ありません。
【岡出委員】 すみません。今、誰一人取り残さないといった場合、いわゆるいろいろな配慮が必要な子供さんは当然いますよね。解説書等だと、こういう子供さんたちにはこういう配慮をしましょうという配慮の例が出ていたりしていると思うんですけれども、その配慮の例というのは実際に今役に立つような例になっているのかとか、あるいはこういうところでもっと情報を足してほしいことがあるんですというものがあるのかないのかということを教えていただきたいというのが1点目です。
【友添主査】 まずここをお願いします。
【藤原委員】 配慮の例は、解説書に載っているものは役に立っていると思っています。ただし、ページ、載せられるスペース等にも限りがありますので、それだけでは十分ではないと思っておりますし、京都市などではスタンダードという指導計画がありますので、そんなところに様々な配慮とか支援等は載っておりますので、それを参考にして京都市では進めているという現状があるかなと思っております。
あと、体育専科の先生は、実は本校にもいませんし、実はそんなに京都市にはまだ多くないと思われます。若干つかめていないんです、正直なところ。委員会が配置している人数は数人だとお聞きしていますが、まだまだ交換授業とか教科担任制でのそれぞれ学校では体育を持っている教員はいると思いますが、専科として配置されているのは少ないのかなと思われます。
ただ、専科がついても、そのクラスだけよくなるのではなくて、体育の専門的な知識とかを持った先生が学校体制でどうしていくのかというところの核になることがすごく大事なことかなと思っています。どうしても学級担任は体育専門の先生ばかりではありませんので、いろいろな教科の専門の先生で、体育をどのように進めたらいいのか分からない、その中で一生懸命指導計画を読みながら授業しているのが現状かなと思いますので、そんなところで各学校に核になるような方が中心になって、学校全体の体育の授業が高まっていくような体制が取れたらいいなとは個人的には思っております。
以上になります。
【友添主査】 岡出委員、よろしいでしょうか。
【岡出委員】 ありがとうございました。
【友添主査】 ちなみに、今、小学校全国の専科教員の配置率ですけれども、7.1%ですので、数的にはまだまだ少ないというところが現状かと思います。
中村委員、すみません、勝手な突然の指名で申し訳ないですけれども、いかがでしょうか。
【中村委員】 ありがとうございます。みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。本当に、私も現場の教員で、日々、小学校段階、それから中学校段階の体育を見ながら、今の御発表の内容、御報告を、それぞれに工夫されている点、それから現行の指導要領にのっとった形で、その指導要領の具現化といったところに最大限工夫されている授業をしているんだなということで、本校も非常に学ぶところがあるなと思っております。その中で藤原先生に1点、それから大井先生のほうに1点、もし教えていただければありがたいなというところがありまして、参考にさせてほしい点がございます。
まず、藤原先生のお取組のほうで、本校でもインクルーシブというような、多様なお子さんに合わせた具体的なルールの変更だったり、学びの場、体育の実践の工夫だったりというところをしているんですけれども、これに対して評価というものが非常に難しくなっております。例えば、このインクルーシブという視点で一人一人多様なお子さんに合わせた学びの工夫をした場合に、評価の視点として何か工夫されていることがありましたら、藤原先生に教えていただければと思います。まず藤原先生に1点、お願いしてもよろしいでしょうか。
【友添主査】 藤原先生、いかがでしょうか。
【藤原委員】 評価としましては、それぞれの子供たちのできる範囲でのルール等というところで決めていきますので、それができたら、できると考えたらいいのではないかなというところで進めています。なので、決して競技レベルでのできる、できないというところで体育の授業を進めておりませんので、その中で、みんなが楽しめる視点で、どういう視点でやったら楽しめるのかな。その中ではボールとかの用具が変わったり、ルールが変わったりということがあります。その中で子供たち一人一人がやることができれば、できるという判断で進めているような感じです。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。いかがでしょうか、中村先生。
【中村委員】 ありがとうございます。まさに次世代への指導、次の学習指導要領にも反映されている中核的な概念といった中の個人内評価というところが既にインクルーシブの授業の中の評価として押さえられているということで、大変勉強になるところであります。
もう一つ、大井先生、すみません、勉強不足で教えていただければと思うところが1点あるんですけれども、先ほどの保健の授業の課題として、先生のほうでよく横断的な視点に立った関連の指導というのが一つの課題として挙げられているんですが、これは横の教科、ほかの教科に展開されにくいとお感じになったのは、例えば現行指導要領の中にそういった記載が少ない、またはそういった視点が少ないからだとか、もしくは何か、このようになったらこの横の横断的な視点が広がるのではないかという工夫とか、先生のほうでお感じになっていることがあれば教えていただけると大変助かります。よろしくお願いいたします。
【友添主査】 大井先生、お願いします。
【大井委員】 他教科との関連という部分につきましては、指導の配慮事項等にも様々、各教科の学びとの連携を図ることの重要性等の記載がございますので、記載としては十分になされていると思うんですけれども、先ほど申し上げましたとおり、なかなか中学校の場合は教科担任制ということで、体育の教員が、例えば保健で学んだ内容が他の例えば社会とか理科とかという教科の中で、どの時期にどんなことを学習していて、そこにどうつなげていくのかといってもなかなか意図が働きにくいと感じているんです。
対しまして、先ほども申し上げたんですけれども、小学校のほうは、学級担任の先生がほとんどの教科を中心に担当しますので、自分でどの時期にどんな教科でどんなことを勉強しているかということも把握して、そこも含めて単元の配列なども工夫をなされているなというところにちょっと違いがあると感じています。ですので、中学校においては、なかなか他教科のことを十分に知るというのは難しいんですけれども、先ほどもちょっと申し上げたとおり、学校全体の安全計画とか、保健計画とか、そこにはいろいろな教科での関連の学習内容を位置づけていると思うんです。ですから、その辺の取扱いを全体計画の中で読みながら、少し意図を持って、関連に触れたり示唆をしていくという取組が、少しのことですけれども、子供にとっては、学んだことが自分の中でつなぎ合わせたり統合するようなきっかけになるのではないかなと感じております。
【友添主査】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。評価の問題については、今後また検討する時間を設けていきたいと考えています。指導内容の言わば資質・能力の張り替えに応じて、評価については少し御議論をいただかなければいけないかなと思っているところでもあります。よろしいでしょうか。
植田委員、お願いします。
【植田主査代理】 植田でございます。大井委員に1つ御質問させていただきたいと思います。先ほどの質問とちょっと関連するのですが、特に保健分野と体育分野の関連のことです。今回御提示いただいた事例は環境と健康に関わる内容なのですが、私は、非常に関連しやすい内容と、言ってみれば少し関連が難しい内容というものがあるのではないかということを感じたりします。そういったことは現場でも感じられるということはありますでしょうか。
以上です。
【友添主査】 大井委員、お願いします。
【大井委員】 おっしゃるとおりでございまして、関連しやすい学習内容と、そうでないものがあるかなとは思っておりますけれども、日常の生活とか、運動の効果とか、そのようなところと保健での学習内容の関連を図っていくということが大事なことかなと思っております。
【友添主査】 よろしいですか。
【植田主査代理】 ありがとうございます。
【友添主査】 それでは、日野委員、お願いいたします。
【日野委員】 失礼します。先生方、御発表ありがとうございました。それぞれ校種ごとに成果や課題が具体的に述べられて、大変勉強になりました。
1点、今後の検討や私自身が感じていることで、藤原委員が言われていたのですが、幼小の接続であったり、小中や中高の校種の接続については、学びの連続性を保つ上でも今後大切になってくるのではないかと思っております。特に体育は、4・4・4という内容構成で、校種によってその内容が重なるところがあります。校種がかわるところで課題が見られるようなことを聞いたりしておりますので、そういった点も今後検討する課題のポイントになってくるのではないかと思っております。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。具体的な御質問ということではなくて、御意見と伺いました。校種の接続については、また今後、御発表いただきながら考察を深めていきたいと思っています。
続きましては、最後になりますが、岩佐委員、お願いいたします。
【岩佐委員】 3人の先生方、ありがとうございました。私は感想だけになるんですけれども、私も中学校現場として、今お話を聞いていて、改めて小中高の系統性のある指導の大切さということがより分かりましたし、ここにも課題はあるなとも思いました。もちろん今の学習指導要領解説の中にも、例えばそれぞれの資質・能力のところでの系統表もあります。大変分かりやすいと私は思っているんですけれども、そういったものがもっともっと重要視されて、授業計画とかも組んでいければいいなと思いますし、特に私は中学校現場ですので、小学校から受けて高校へ渡すという意味では、中学校は非常に大切な校種だなと思っています。小学校では何を学び、また高校で何を学ぶのかということも、中学校の教員としては知っておかなければならない。小学校の先生方についても、小学校で終わりではなく、中学校・高校でどのようにこの体育の内容がつながっていくのか、高校に関しても、小学校・中学校でどういう学びを得てきているのかということが分かるような各校種の学習指導要領にしていきたいなとも感じるところでした。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。たしか先週、北海道でお会いしたように、今お顔を拝見して思い出しました。失礼しました。
今、貴重な御意見だったかと思います。系統表については、現行の学習指導要領をつくるときに、当時、佐藤豊委員が中核になって動かれましたけれども、系統表は随分苦労して作ったわけなんですけれども、この系統表を3資質に応じて、これももう一度ブラッシュアップしながら、もう一度更新しながら、再考しながら進めてまいれればと思っていますので、またそのときによろしくお願いします。ありがとうございます。
あまり先生方は緊張しないで、どんどん自由に言いたいことを言って、御意見を伺えればと思います。今御発表いただきました3人の先生方には、大変貴重な現場の状況をお聞かせいただいたと思っています。このワーキングの今後の議論につながる重要な視点が皆さん方の御意見の中にもあったかと思っています。今後の議論にまた反映させていきたいと思っています。ありがとうございました。
各委員にも、実はこれから幾つかお願いをしていくことになるかと思っています。御発表をまた今後よろしくお願いします。少し心積もりしておいていただけたらありがたいなと思っています。
それでは、議事の2に入ってまいりたいと思います。議事2でありますけれども、ここもなかなか前回の引継ぎを含めながら考えていかなければいけないところなんですけれども、「見方・考え方」、「学びに向かう力・人間性等」について、事務局から今日の御提案について御説明いただければと思います。赤間室長、お願いします。
【赤間企画調整室長】 事務局でございます。
まず、参考資料2という形で、こちらの資料は、前回までの議論の中で、体育・保健体育を学ぶ意義や価値につきまして、各委員からいただいた御意見を集約した資料になってございます。特に、前回御提示した資料から、その第2回のワーキングでいただいた御議論、プレゼンの内容、そういったものを反映させていただきながら、さらにブラッシュアップさせていただいている資料でございます。下線が引いてあるところが、具体的に追記がされている内容でございます。
資料2、こちらが今回事務局から御提案をさせていただく資料になります。体育・保健体育科における見方・考え方、学びに向かう力・人間性等ということで、2つのテーマがございます。
次に、本日の議論についてということで、これは全体の見取図という意味でお示しさせていただいておりますが、各教科の目標の柱書きの中に現在記載されている「見方・考え方」について、論点整理で示されている役割の改善イメージを踏まえた検討をしていく、具体的には学びの本質的な意義の中核というところに焦点化して整理していくということでございます。
それから丸の2、資質・能力の柱ごとの目標の一つであります「学びに向かう力・人間性等」につきまして、前回の議論を踏まえた「資質・能力の中での改善イメージ」、それから「構成する要素」の検討を行いまして、次回以降の「目標」の検討につなげてまいりたいと考えてございます。
まずは「見方・考え方」について御説明をさせていただきます。こちらの資料、論点整理のほうで提示されております、今後の見方・考え方の役割の改善イメージというところでございます。主体的・対話的で深い学びという学習過程を通じて資質・能力を身につけていくという学びの成果、各教科等の学びを深めていきながら資質・能力を身につけていくと。
さらに、この見方・考え方といったものが学習過程の中で徐々に資質・能力の育成を導くようになるとともに、よりよい社会や幸福な人生につなげていけるものとして、具体的にはこの丸2の各教科等を学ぶ本質的な意義の中核、こういった部分に今回は焦点化して示していくこととしてはどうかということになってございます。
次のページをお願いいたします。こちらも前回の会議で提示させていただきました総則・評価特別部会の資料でございます。左側が現在の見方・考え方を含む目標の柱書きの示し方というところで、中学校国語科の例が載っておりますけれども、目標の柱書きの冒頭のところにそれぞれの「見方・考え方を働かせ」という一文が入ってございます。
一方で、この具体の中身は、学習指導要領の解説を見ることによって見方・考え方の具体の中身が初めて分かるという構成になっているところでございます。
中ほど、論点整理で示されたことといたしましては、先ほど申し上げましたように、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核に焦点化した上で、解説ではなく学習指導要領本体にこういったものを位置づけていくということ。
それから、この見方・考え方の意義につきましては、教科固有の様々な世の中を見る視点や考え方が豊かになることで、徐々にこうした資質・能力の育成を導いていくといった観点だけではなく、よりよい社会や幸福な人生につなげるものと位置づけておりまして、具体的には、学校教育のみならず、その後の人生でも豊かに働くことを視野に入れているというものでございます。
その上で、右側でございますけれども、目標の中にまた見方・考え方の具体を入れていくという形になりますと目標自体もまた長くなっていくということもございますので、まさにこの見方・考え方というものを目標の直下に別途記載を設けるという形。それから、そこに含める要素はこの丸1から丸3の要素。そして留意事項としては、現在よりもできるだけ短く端的に、そして経験の浅い教員が読んでも端的に理解が可能な記述にしていってはどうかという全体からのオーダーをいただいているというところでございます。
5ページをお願いいたします。これが、体育の新たな見方・考え方のイメージとして御提案させていただくものになります。
まず一番上の四角囲みにつきましては、今御説明いたしました今回の見方・考え方のコンセプトということで、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核に焦点化しながら、こういった整理で進めていきたいというところ。
その上で、中ほどにオレンジ色の帯で書かれておりますものは、先ほど参考資料2という形で御説明させていただきましたけれども、これまで委員からいただきました様々な学びの意義・価値等というところに結びつく内容といったものを体育の関連で記載させていただいております。
そして、中ほどより下が具体に今回この見方・考え方を各教科等を学ぶ本質的な意義の中核というところに焦点化した場合にどのような改善が図られるかというところで、事務局のほうで試みの案として御提示させていただくものでございます。
改訂案でございますけれども、こちらは身体を媒介に運動学習を行うという独特の学習手法を持っている体育科としては、運動・スポーツというものが教科で扱う事象や対象としては確立しているというところで、ここは変更がないわけでございますけれども、2行目に相当する部分でございますけれども、「全ての人にとっての自由な楽しみ方や、心身の充実に果たす役割の視点から捉え」としてございます。こちらにつきましては、現行の2行目、「その価値や特性に着目して」という文章、この中に運動やスポーツに関する価値とか特性というものの部分にかなりいろいろなものを含み込んでいるというところがあるかと思います。それを分かりやすい学習指導要領にしていく、そして見方・考え方としても、教員が理解しやすい内容にしていくという観点から、どのような工夫ができるかと考えさせていただいたところでございます。
まず、「全ての人にとっての自由な楽しみ方」というところでございますけれども、運動やスポーツというものは、運動やスポーツが得意な人間だけのものでも当然ないわけですし、先ほどのお話の中でもあったように、要は競技スポーツのアスリートを育成するということが体育科の目的ではないということであります。先ほどのお話の中でもありましたが、体力や技能の程度であったり、それから障害の有無であったり、性別の違いであったり、いろいろな違いを乗り越えて、全ての人々が自由にスポーツ・運動を楽しむことができる。そういった自由な楽しみ方ということをこの見方・考え方の、あるいは各教科を学ぶ本質的な意義の中核に置いてはどうかということでございます。
それから、心身の充実としてございますけれども、これは、運動やスポーツを通じて体力が向上するとか、あるいは心身の健康の保持増進ということも当然ございますし、この運動学習の中で、心と体のつながりを感じられる教科としての一番の特性を端的に表す文言として、「心身の充実に果たす役割」という形で表現させていただいたものでございます。
それから3行目の部分、現行の中にあります「する、みる、支える、知る」といった多様な関わり方、この考え方というのはまさに体育の学習の中での重要な見方・考え方を構成する要素だと考えられますので、そういったものを通じてということを置きつつ、今回の視点や考え方が豊かになる中で、よりよい社会とか幸福な人生につなげていけるということを念頭に置いているというところから、「自他の豊かな生涯の実現を目指すこと」と整理させていただいているところでございます。
続きまして6ページ目です。保健の新たな「見方・考え方」のイメージということで提案させていただいているものでございます。上半分の作りは、先ほどの体育と同じような作り方になってございます。下半分で見方・考え方について具体的な改訂案という形でお示しさせていただいてございます。
まず冒頭、「保健に関する課題や情報を」とさせていただいておりますが、こちらについては、後続の2行目、3行目にあるような、まさに健康や安全という内容を全体に含み込んだ言葉として「保健」という言葉にしてございます。
それから2行目、もともとは「健康や安全に関する原則や概念に着目して捉え」となっていたわけですけれども、先ほどの大井委員をはじめ、各委員からの御発言もありましたけれども、なかなかその原則や概念というものがそれこそ解説書のレベルを見てもなかなか理解することが難しい。さらに現場の教員がそれを理解するということの困難性ということも御指摘いただいたところでございます。これは具体的にどのようにこの中身を示していくかということとも関連はいたしますけれども、いろいろな用語があることによってさらに分かりづらさが増すということのないように、今回は「健康や安全に関する概念」という形で表記させていただいております。具体の中身は、またさらにこの中で解説も含めて整理していく必要があるかと思っております。
その上で3行目ですけれども、3行目の内容、「リスクの軽減や生活の質の向上」というところ、これは現行の内容と大きくは変わってございません。まさに個人生活、個人レベルのこういった内容というところと、及び以下に書かれております健康、また安全を今回は見えるような形で書いておりますが、「健康・安全を支える環境づくり」といったものも、まさに個人レベルだけではなくて、社会全体の健康や安全といったものに貢献、寄与していくという意味での環境づくり、こういったものを目指すことという形で整理させていただいているところでございます。
続いて、学びに向かう力・人間性等についてでございます。
左側が、論点整理等で整理されている内容ですけれども、「学びに向かう力・人間性等」については、主要な要素や要素間の関係を構造化して分かりやすく示していくという観点から、中ほどにありますような4つの要素に整理していくという方向性が示されているというところでございます。
その上で右側、具体に目標においてこれをどのように表現していくかというところに関しましては、全ての要素を個別に盛り込もうとすることによって目標全体が冗長になるということを避けるという観点からは、大きく分けて以下の2つの要素をバランスよく含めることとしてはどうかということで、学びや生活に向かう態度、それから2つ目としては人生や社会との関わりにおいて育みたい情意や感性、こういったものを含むような形で整理してはどうかという提案をいただいているところでございます。
9ページ目をお願いいたします。先ほど来、前回の会議も含めまして御議論いただいている中でもございましたけれども、体育の部分については、学びに向かう力や人間性等については、他教科にない指導内容としても、態度に関する内容というものが位置づいているという特性を踏まえて、これをどのように整理していくかということに関して、前回の会議でもいろいろと御提案をいただいたところでございます。したがいまして、その内容を踏まえて、体育全体の、その資質・能力全体での改善イメージという形でお示しさせていただいております。
一番上が現行の知識及び技能、それから思考力、判断力、表現力等、そして学びに向かう力、人間性等というところのそれぞれの目標だったり、指導内容の中に含まれている要素というところを整理させていただいております。
そして、中ほど、青い枠囲みについては、現状と課題、それからその下にあります赤い枠囲みは、改善の方向性としてお示ししている内容でございます。
まず、青枠囲みから順に御説明させていただきますけれども、1つ目、態度に関する内容(公正、協力、責任等)につきましては、体育科において育むべき資質・能力として、これは重要な要素であるというのは、これまでの累次の御意見の中で一致した御意見だったのかなと考えてございます。
2ポツ目でございますけれども、その「指導」と「評価」に関しましては、体育独自の内容(公正、協力、責任等の要素)の部分と全教科共通の側面、「粘り強さ」と「自己調整」の2側面から評価していくということがあるわけですけれども、その様々な要素が混在する中で、教師の適切な理解に基づく指導と評価を難しくしているのではないかという課題があったと考えてございます。それから、特に体育を御専門としているわけではない小学校の先生方にとっては、少し指導要領の構成、作りが違うというところの中で、一層理解が難しいという部分があったのは事実であろうと考えてございます。
それから3点目、例えば「公正に取り組もうとしている」等の意思的な部分に関する指導と評価という部分につきましては、態度を指導するという意識が、公正、協力などの意義について児童生徒の十分な理解を伴わない形式的な指導を生んでしまうのではないかといった懸念や、態度に関する内容の本質を踏まえた子供たちの意思の表出を適切に評価することの難しさがあったのではないかと考えてございます。
その上で、改善の方向性として3点お示ししてございます。まず態度に関する内容の構成要素につきましては、前回の御提案の中でもいただいたところでございますけれども、概念知、なぜこのような態度が必要なのか、あるいは態度としてどのような振る舞いを具体的にするべきなのかといった知識で捉えられる部分、あるいは実際の行い方といった技能で捉えられる部分、それぞれこうした面に着目いたしまして、内容の一部を「知識及び技能」に位置づけし直すといったことなどによりまして、資質・能力の中で再整理していく。これによりまして混在していた要素がクリアになるとともに、態度の形式的な指導にとどまらず、公正、協力などの意義の本質的な理解につながるような指導の改善を図ることができるのではないかということが考えられるところでございます。また、体育を専門としない小学校等の教員にも指導内容が分かりやすくなることによりまして、発達段階を踏まえた指導のさらなる充実につながることも期待できるのではないかと考えてございます。
それから2点目でございますけれども、実際に中高の指導内容の中で、特に「運動実践につながる態度に関する思考力、判断力、表現力等」ということで、「思考力、判断力、表現力」の中に既に態度に関連する指導内容というものが出てきているというところ。一方で、これに対しては、対応する知識や技能に関しての記載がないという形で、指導や評価の難しさも指摘されているというところから、こういった内容の指導や評価の改善にも寄与していくものになるのではないかと考えてございます。
また、「愛好的な態度」は、発達段階に応じて積極的にあるいは自主的に主体的に取り組もうとするという部分でございますけれども、これは各運動領域で共通事項として示されている内容ということからいきますと、全体の整理の中でいう「学びに向かう力、人間性等」というところに位置づけていくことがふさわしいのではないかと考えているわけでございますが、運動やスポーツに「する、みる、支える、知る」等の多様な関わり方で親しむ姿といったものをより一層積極的に価値づけることにつなげていく観点から、例えばでございますが、「運動・スポーツに多様な関わり方で親しむ態度」などと示してはどうかということを御提案させていただいてございます。そういった内容を表記させていただいたものが、下の改善イメージという形になってございます。
最後、10ページ目でございます。体育と保健を併せました新たな「学びに向かう力・人間性等」の要素ということでございます。体育科に関しては、体育の運動領域の固有の整理というところがございますが、保健に関しては、基本的に全体の他教科と同様な整理が行われ得るものと考えてございます。そういった意味で、体育、保健の両方を併せました保健体育科全体の学びに向かう力をどのように整理していくかということを全体の要素の整理に当てはめて、どのように整理していくかをお示ししたものでございます。
一番上は、論点整理でお示しいただいている全体の整理の仕方。それから「現行」とあるところは、現行の中学校の「学びに向かう力・人間性等」の目標として示されている内容を参考としてお示ししてございます。その上で、資質・能力の改善イメージということで、これは先ほどの体育・運動領域のところでお示しさせていただきました内容を再掲させていただいてございます。
この全体の整理の中で「学びに向かう力・人間性等」の要素を大きく分けて2つの内容を組み込むような形で整理してはどうかということに対して、一番下のところでお示しさせていただいているものでございますが、丸1の学びや生活に向かう態度の部分に関しては、既有の知識や経験等を土台として、初発的な思考や行動を起こす態度であったり、他者との対話や協働の中で課題に取り組もうとする態度であったり、あるいは自身の思考や行動等を客観的に把握し、自己調整しながら課題に取り組もうとする態度、あるいは運動やスポーツとの多様な関わり、あるいはそれらを通じた人との関わりの中で運動に親しみ、そのよさや価値を味わおうとする態度というものをイメージとして掲げさせていただいております。
また、丸2につきましては、その教科の学習の中で育みたい情意・感性ということで、運動・スポーツを、多様な関わり方を前提としまして生活の中に取り入れ、あるいは心身の充実に努めながら、明るく豊かな生活を営もうとする態度。あるいは生涯を通じて心身の健康の保持増進、回復を目指そうとする態度。そしてまた、社会とのつながりというところでいきますと、健康長寿社会や共生社会、安全・安心な社会を実現していく。さらには社会全体が持続的にウェルビーイングであるというところに向けて、その環境づくりに主体的・協働的に参画しようとする態度というものを具体の要素イメージとして整理させていただいております。
事務局からの説明は以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
第2回までのワーキングの議論を踏まえた案として、今、教科を学ぶ本質的な意義の中核としての「見方・考え方」、そして教科において育みたい学びや生活に向かう態度や情意、感性としての「学びに向かう力・人間性等」について御説明いただいたところであります。これらにつきましては意見交換を行いたいと思うんですが、かなり広い論点になることが予想されましたために、全体を2つに分けて、つまり「見方・考え方」についてと、「学びに向かう力・人間性等」に分けて意見交換を行ってまいりたいと思っています。
最初でありますけれども、見方・考え方について、30分程度時間を取って意見交換をしたいと思います。体育、保健いずれか、あるいは両方を含んで御意見等がある方は、挙手ボタンを押していただければと思います。いかがでしょうか。
森委員、どうぞお願いします。
【森委員】 どうもありがとうございます。見方・考え方のところで、体育と保健ですけれども、事務局案で示していただいたものの文末表現について、少し意見を言わせてください。
次の論点にも関わる話なんですが、これまで「学びに向かう力、人間性等」の保健に関する目標は、健康の保持増進を目指すということが示されていてます。今回示していただいた保健の「見方・考え方」の一番最後が「目指すこと」となっていると、「学びに向かう力、人間性等」の目標と少し重なるようなところがあって、この表現で本当にいいかどうか。そもそも見方・考え方というのは、どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくかということですので、目標レベルの言葉を使うよりは、もう少し考え方ということを表す表現のほうがいいのかなと思いました。
またと、リスクの軽減、生活の質の向上、環境づくりについては、今までは関連づけるということでしたが、もしこれを「目指すこと」にすると「環境づくりを目指す」となるので児童生徒の考え方につながるかどうかというのもありまして、ここの表現を御検討いただければなと思います。
【友添主査】 ありがとうございます。「目指すこと」という表現ぶりだと、多分矮小化されてしまう可能性があるという御指摘と聞いたわけですけれども、よろしいですか。
【森委員】 はい。それに加えて「目指す」という表現よりも、「考える」というイメージの表現に変えたほうが、考え方としてはいいのではないかという意見です。
【友添主査】 ありがとうございます。
それでは、柏原委員、お願いします。
【柏原(奈)委員】 遅れて入ってきて、すみませんでした。私も、保健の見方・考え方のところについて少し気になっているので、お話をさせていただこうと思います。
小学校の学習指導要領実施調査の委員をさせていただいたので、そこでの小学校の結果のことを考えると、概念とか原則と生活や行動が結びつかないというのが課題として挙がっていて、これは私もふだん授業を見ていても、概念とか原則は知識として分かるんだけれども、実際の自分の生活の中でのことを考えると結びついてこないというところが足りていない部分だなと思っているんですね。なので、この見方・考え方のところも、「概念や原則に着目して捉え」だけで終わっていくと、結局同じことになるのではないかなと思っていて、この概念や原則を理解しつつ自分の生活や行動も見直していくというところをうまく盛り込めないかなと、私も、勉強不足なので言葉はうまく作れないんですけれども、そんなことを思って見せていただきました。中核的なものになるのだとすると、これを見たことで、どんな子供というか、将来どうなるのかというところが見えるようなものにしていく必要があるのかなと思ったので、意見をしてみました。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。先ほど渡辺弘司委員が大井先生の御発表に対してお尋ねになられて、そして御意見を言われた際のところと問題点がかなり重なってくるかなと思っています。
それでは続きまして、渡邉正樹委員、お願いします。
【渡邉(正)委員】 引き続き保健になってしまうんですけれど、私も森委員と同じようなところが気になったんですが、見方・考え方の3行目ですね。これまでは最後に「関連づける」ということで、あまり違和感はなかったんですけれども、今度は「目指す」という言葉、これは体育のほうも同じようになっていましたよね。となりますと、ちょっとこの並びが気になってきました。
というのは、高校ももちろんなんですけれども、小学校・中学校にしても、保健の内容の組み方というのは基本的にはヘルスプロモーションによって作られている。要するに主体と環境の関係で健康づくりを行い、そしてその先にあるのが、実はヘルスプロモーションだとQOL、生活の質ということになるわけですよね。それを考えますと、3行目、もしこれは「目指す」という言葉を使うのであれば、ちょっと案を考えたんですけれども、「リスクの軽減や健康安全を支える環境づくりを通じて生活の質の向上を目指すこと」というのが、ヘルスプロモーションの考えに合った書きぶりになるのではないかなと思うんです。この書き方だと、体育と書きぶりが同じになるので、その整合性というのはできるかなと思います。もしそういう「目指す」という方向で行くのならば、今の案もお考えいただければと思います。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。「目指すこと」の表現ぶりについて、御意見が重なっておりますが、事務局のほうで補足等がありましたら、御提案の背景について少し御説明いただければと思います。
【赤間企画調整室長】 ありがとうございます。事務局でございます。体育も保健も含めて、従来の見方・考え方で示している「関連づけること」という表記を今回はしていないというところでございます。この点については、今回の見方・考え方というものが、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核というところに焦点化するということ。また、その中でよりよい社会とか幸福な人生につなげていけることを見方・考え方によって示すという中で、この内容に関してお示ししていくときに、個人あるいは社会全体の保健も体育も、共通するところは恐らくウェルビーイングみたいなところになっていくわけですが、そういったところを目指していくということで全体が整理できないかということで、「目指すこと」という文言を使っておりますけれども、これは我々もあくまで保健体育科の中で今考えているだけなので、全体の状況、他教科の状況ということも理解しているわけではございませんし、より適切な表現ぶりというものが考えられるのであれば、先生方に御提案いただきながら、さらにブラッシュアップをしていきたいと考えてございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
それでは、渡辺弘司委員、お願いします。
【渡辺(弘)委員】 渡辺でございます。私も、6ページの保健のところで、申し訳ありませんが、意見を述べさせていただきます。
まず1つは、オレンジの帯のところに書いてある「学校における学びの意義・価値等」の2番目の丸のところに、以前の資料ではレジリエンスという言葉が入っていたと思うんですけれども、今回、「健康に関わる自己決定能力を育み、未知の健康課題にも対応できる柔軟で持続的なコンピテンシー」と、日本語で非常に分かりやすい表記にしていただいたことに対して大変感謝いたします。これですごく分かりやすくなったと、まず思います。
それから2点目が、先ほどから問題になっております見方・考え方のところでございますけれども、改訂案に関して、まず1つは、2行目ですけれども、健康や安全に対する概念というところの原則が消えたことに関しては、先ほど意見を述べたように、原則というのは非常に固まったイメージがありますので、理解するのに非常に難渋であるし、またその原則自体が不明確でありますので、取っていただいたことはいいと思います。概念という表現がなかなか微妙だと思うんですが、これは解説にしっかりと書き込めば対応できるのではないかとまず思います。
それから3行目ですけれども、「疾病等」のという文言が削除されたことは、医療者としては大変ありがたいと思うのは、むしろ疾病等以外にもリスクがございますので、「疾病等」とここである程度書き込まないほうがよかったと思いますので、その点は賛同いたします。ただ、最後のところで今問題になっております「リスクの軽減や生活の質の向上及び健康・安全を支える環境づくりを目指すこと」と併記されたことに関しては、私も、例えばリスクの軽減や生活の質の向上というのはどちらかというと一人称であり、自らのことにまず対応し、それで健康・安全を考える、それから環境づくりを目指すというイメージのほうが、医療者としては非常に理解しやすい。それがこの文章だと併記されて、優先順ではなく均等に扱うと考えられますので、この「目指すこと」が併記されることは、ちょっと分かりにくくなったのではないかという印象を持ちました。ぜひ書きぶりをもう少し分かりやすくしていただけると大変ありがたいかなと思いました。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
それでは、今いただいた御意見はまた事務局で検討していただければと思います。
佐藤豊委員、よろしいですか。
【佐藤(豊)委員】 ありがとうございます。短い時間で事務局は本当に先生方の意見を取りまとめて大変な作業を御苦労さまです。その上で見方・考え方については、結構初出といいますか、初めての感じなんですけれども、まず見方・考え方の位置づけですね。保健体育科の上に来る構造、保健体育科としてどうかという、書かれるのは目標の下に書かれて、内容という位置づけになるんですけれども、性格としては、保健体育が特に目指すという捉え方で考えていくということでよろしいですかねというのが1つ目。その際に多分、今まで解説にあったものが本体に上がってくるという形になるので、言葉に対してさらにその解説をしていく形になるんですけれども、易しくするというのは非常に分かりやすくするということと、それを易しい言葉に換えたときにかなり意味が限定的になりやすいので、その辺の言葉遣いのところが大丈夫かというところは議論が必要かなと思っているのが1つです。
それから2つ目ですけれども、今、体育と保健の科目のところで見方・考え方が出ているので、例えばこれは社会科で言ったら、日本史と地理の見方・考え方みたいな形で出ていると思うんです。要は、合体した教科としての考え方としては、保健体育の見方・考え方があって、多分それに対しての目標があって、体育の分野、保健の分野の目標があって、目標といいますか、という流れの中に見方・考え方をどう位置づけていくのかというのと、何か一体的に捉えていかなくていいのかなという、今2つを別々に考えてがっちゃするのがいいのか、保健体育という目標やその見方・考え方に基づいてそれぞれ落としていくのがいいのか。見た感じだと、今は体育の見方・考え方と保健の見方・考え方とでレベル感に少し違いがあるんではないかなという印象がありますということです。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。体育の見方・考え方、それから保健の見方・考え方、保健体育の見方・考え方、この3つの層があると思います。小学校から高校まで全部、保健と体育が1つの科目教科として入り込んでいるわけですけれども、ここの示し方については御議論いただきながら進めていければと思っています。取りあえずは、今日はまず体育と保健の提案について御検討いただければと思っているところでもあります。まず、その点、確認はよろしいでしょうか。
【佐藤(豊)委員】 はい。
【友添主査】 今後、保健体育についても御検討いただくことになっていくとも思っています。
事務局のほうはいかがでしょうか、保健体育の見方・考え方については。
【赤間企画調整室長】 ありがとうございます。まさに体育と保健が同じ教科の中で学習をしているということの一体性、そういったものに関しては、これを見方・考え方の中に表現していくのか、目標の中に表現していくのかというところは、それぞれいろいろ考え方があるかと思います。先生方の問題意識も伺いながら、どのような整理の仕方があり得るのかというのは模索していきたいと考えてございます。
【友添主査】 佐藤委員、よろしいでしょうか。
【佐藤(豊)委員】 つないでいたのが2009年までで、「体力の向上」というキーワードでつないでいたのが、現行ではそこのところが崩れていて、「知識・技能」という形に目標構造が変化していって、その辺のキーワードがなくなってしまうのかなとかというのも含めて、目標に残るのか、何かその辺が一体的にこの内容に入る前のところで一旦、一覧で確認しながら進めたほうが、後で戻れなくなってしまうときに、つじつまが合わなくならなければいいなというところをちょっと心配しながら発言させていただきました。
【友添主査】 ありがとうございました。いずれにしましても、本質的な意義の中核という位置づけですので、ここのラインを外さない形でお示ししていかなければいけないだろうと思っています。今後また議論を重ねていければと思います。ありがとうございます。
岡出委員、お願いします。
【岡出委員】 ありがとうございました。私はそんなに長く言うつもりはなくて、体育の見方・考え方のところの「自由な楽しみ方」という言葉が気にかかっていて、全ての人々にとって何々の視点から捉えるという言い方のときに、これは目指すべき方向性とかがあるような気がしていて、ここを例えば「多様な楽しみ方」とか、あるいは「価値」という言葉を僕は残したほうがいいんではないかなと個人的には思ってはいます。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。「自由」という言葉の問題性は、例えば自由放任という捉われ方をするということでしょうか。
【岡出委員】 はい。そこがちょっと怖いなとは思います。
【友添主査】 例えば、「各自の楽しみ方や」という形に置くというのはどうでしょうか。
【岡出委員】 一応、この生活を豊かにしていくということで言うと、多分みんなが認めるべき価値みたいなものがあると思っているんです。それがあるからスポーツをよりよいものにしましょうとか、あるいはそれを通して社会をよりよいものにしていきましょうと、そういう多分価値に関する合意形成というのは継続していく必要があるだろうなと思うので、そこは「自由な」という言葉ではないほうがいいなと思います。
【友添主査】 分かりました。ありがとうございます。それも含めて今後検討していきたいと思います。
斎藤委員、お願いします。
【斎藤委員】 ご提案ありがとうございます。事務局の提案は、内容にすごく感銘を受けました。賛成です。特に、事務局の説明を聞くと本当に分かりやすく、今まで体育が目指してきたこと、そしてこれから目指すことをよく示していると思っています。特に体育は、これまでよりもさらに多様性に着目している点がよく見られ、また、「する、みる、支える、知る」といった運動やスポーツに多様な関わり方をすることについても大切にしていくことがよく見えると思います。
一方で、内容としての賛成であることと、今、幾方の委員からお話があったその言葉の遣い方をどうしていくかという議論との両方を一緒に行ってしまうとことには、難しさを感じます。内容として総意を得て言葉を選んでいくのか、内容を根本的にもっと議論する必要があるのか。私は今、内容には賛同できるところが多いのですが、遣う言葉となると、例えば岡出委員が言われたように「自由な」など、確かに気にかかるところが幾つかあり、そのような議論の整理を今後していただけるとありがたいです。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。本質的な部分と、それを表現する表現ぶりの仕方の問題と、これは違うわけですけれども、この辺りのすり合わせをこれからしていく必要があるかなとも思っているところです。ありがとうございます。
この後、岩佐委員、柏原(聖)委員、日野委員、前島委員までで一度ここを止めて、次のテーマに移りたいと思います。よろしくお願いします。
岩佐委員、お願いします。
【岩佐委員】 失礼します。私は、中学校現場としてです。教員が見方・考え方の一文を読んで頭の中でイメージできるものにならなければいけないなと思っていますし、その見方・考え方の解説や説明が必要ないくらいにすっと落ちるものになればいいなと思っています。その上で、少し私自身が気になったところを2点お話しさせていただきたいと思います。
1点目については、先ほど岡出委員からもありましたように、私自身も「自由な楽しみ方」というところの「自由」という文言レベルですけれども、少し気になっています。これまでの学習指導要領解説の中にはあまり「自由」という言葉は出てこなかったかなと思っているんですが、この「自由」というのはなかなか教員によってはいろいろな捉え方をするんだろうなと想像しているところです。3行目のところには「多様な関わり方」とありますので、「多様な楽しみ方」というところよりも多分「自由」というのは広いんだろうなという想像はつくんですけれども、その辺の言葉の意味合いというのはもう少し議論する必要があるかなと思っています。
2つ目ですけれども、3行目の最後、「自他の豊かな生涯の実現」というところです。体育の見方・考え方ということもありますし、「豊かなスポーツライフ」という言葉の方が、私は教員にとっては非常に分かりやすい言葉なのかなと思っているところですが、目標と見方・考え方というところの関係性の検討は必要になってくるのではないかなと思っています。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
柏原委員、お願いします。
【柏原(聖)委員】 ありがとうございました。私も、今までの皆さんの御意見を伺っていて、特に、保健と体育がなかなか関連し合えない、一体的に学びが進められていないということが以前から課題になっていたかと思います。先ほど御意見が出ましたけれども、保健と体育で着地するところはどこだという共通認識は持っていたほうがいいと思います。
学校教育法の21条8項にある「心身の調和的発達」というところが保健と体育の着地点だと思いますので、これは「健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣」と、「運動を通じて体力を養い」という、この両輪が「心身の調和的発達を図る」というところは、ここでいま一度この原点というのは押さえた上で、学習指導要領は準拠したものとして、教員たちが体育と保健が一体的に捉えられるように、体育はすごく書きぶりが詳しくて、保健は詳しく書かれておらず温度が違うということではなくて、両輪で進めていけるような書き方が必要かなと思いました。
【友添主査】 ありがとうございます。心身の充実という点に今のお話のところが帰一してくるところかと思うんです。一つの条件としては、現行のものよりもう少し端的に、精度を高めて、短い文字数でもって示していく。若い先生たちも分かるような、それを読んで理解できるようなものという、これは非常にハードルの高いオーダーが来ているわけなんですけれども、この辺りは議論を重ねていかなければいけないなと思います。今、貴重な御意見をいただいております。
日野委員、お願いします。
【日野委員】 すみません。前の委員とほとんど重なるのですが、同じく、使われている言葉は、今後の学習指導要領との関連性の中で十分慎重に検討していく必要があると思っております。
例えばですが、最後のところで「自他の豊かな生涯の実現を目指すこと」になっていますが、現行では、「生涯にわたって豊かなスポーツライフを」と「生涯にわたって」という期間を示すような言葉になっています。この言葉を、今後どう使っていくのかということも含めて検討する必要があると思っています。
さらにこの見方・考え方が、学校教育にとどまらないで、今後の人生を見通して書くということなので、ここで書く内容は学習指導要領の本文とは違った言葉にしたほうがいいのか、より関連づけて、「多様な楽しみ方」、「多様な関わり方」のように、本文と同じ言葉を使っていったほうが現場の先生は分かりやすいのか、その辺りの整理も必要だと思いました。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。本質はウェルビーイングで、表現ぶりは生涯なのかスポーツライフなのか、幾つかの表現ぶりがあると思います。この辺りも事務局を交えて検討していかなければいけないところかと思います。御意見ありがとうございます。
では最後になります。前島委員、お願いします。
【前島委員】 先生方は日々の業務を行いながら新しいことを吸収していくという、忙しい中で変化に対応しようとしています。分かりやすく、短い言葉でずばり伝えたい事が入っていた方が先生方は理解しやすいのではないかと思います。ここに示されている言葉が、これからいろいろなことを決めていき立ち返った時に納得できる言葉が入っていた方が良いのではないかと思います。
以上です。
【友添主査】 大事な点かと思います。今後、こういうことも含めて、御提案いただいたことも含めて、またメールでいただいた御意見も含めて、さらに議論を深めてまいりたいと思います。
少し駆け足になってまいりましたけれども、続きまして「学びに向かう力・人間性等」について、30分ほどの時間を取って意見交換をしてまいりたいと思います。御意見等のある方は、挙手ボタンを押していただけたらと思います。いかがでしょうか。今度は「学びに向かう力・人間性等」のところでございます。
頭の切替えがなかなか難しいところかも分かりませんけれども、柏原委員、お願いします。
【柏原(聖)委員】 先ほどの発言と関連しますが、「学びに向かう力」に関しましては、保健の欄が「主体的に学習に取り組む態度」となっています。これは保健ではなくても全ての教科に通ずるものであって、体育とあまりにも書きぶりが違っている。保健の教科特性、特有の内容とは若干言い難いと思いましたので、例えば「保健安全に関する正しい知識に基づき実践する態度」であるとか、「行動化に結びつける態度」であるとかという具体をイメージできるものでないと、保健・安全が、先ほど行動化という課題の解決に、結びついていかないと思いました。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
渡邉正樹委員、お願いします。
【渡邉(正)委員】 私も保健のほうなんですけれども、「主体的に学習に取り組む態度」というのが、他の教科との整合性を考えて、これでいくということであれば、今、保健の学習指導要領の「態度」のところを見ると、例えば中学校は「明るく豊かな生活を営む態度を養う」、高校の場合は「明るく豊かで活力のある生活を営む態度を養う」とあるんですけれども、学習指導要領の「態度」のところと、「主体的に学習に取り組む態度」がフィットしないというか、整合性がないんですよね。だとしたら、「学びに向かう力・人間性等」をこのままでいくのであれば、まだこれは先のことでしょうけれども、学習指導要領の書きぶりを工夫したほうがいいと思います。全体と今のところつながっていないので、そういうことを今後考えていただければと思います。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。実は、体育・保健体育ワーキングからむしろ部会のほうに提案を逆にしたいところも幾つかこれから出てくるかと思うんです。そういうことも含めて議論していきたいと思います。「主体的な学習に取り組む態度」については、従前、評価規準という形で置いてきたところでもあるし、あるいは評価の観点としては「粘り強さ」や「自己調整力」ということも入ってきていますので、むしろこういったことも含めて、いいのかどうかまで含めて検討していく必要があるのか、あるいは、いや、それは基本的にはいわゆる特別部会のほうでお願いしたほうがいいのか。この辺りについてもまだ情報が定かではないところがあって、同時進行していますので、適宜その辺りについては先生方にフィードバックしながら御意見をいただこうと思っています。
ほかにいかがでしょうか。結構核心に触れた議論に入ってきているかと思うんですね。特に「学びに向かう力・人間性等」については、前回の御議論をいただいて、資質・能力のところで言うと、指導内容の張り替えを行おうということをしているところでもあります。こういった張り替えと、あと現行で「思考力、判断力、表現力等」の中にも、先ほど室長からお話がありましたけれども、体育に関しては態度の内容を含んでやってきているところもあるかということです。
佐藤豊委員、この辺り、いかがでしょうか。
【佐藤(豊)委員】 先週提案させていただいたのに非常に反映していただいて、僕のほうはいいなと思いました。ただ、思考力、判断力、表現力の中高のところで、誤解のないように言いますと、4つの思考力、判断力が示されているというところも一応確認ですけれども、ここでは学びに向かう力・人間性も入っていますけれども、体力・健康に関する思考・判断とか、生涯にわたる豊かなスポーツライフにつながる思考・判断というのを広げながら、豊かなスポーツライフにつなげる。ただ、小学校の書きぶりと中高の書きぶりが違うので、その辺のすり合わせを多分、すり合わせといいますか、小学校の先生方に分かりやすいその知識の書きぶりはこの後検討されるのかなとは思います。
以上です。
【友添主査】 アスタリスクで中高と書いているところに該当するわけですよね。
【佐藤(豊)委員】 はい。
【友添主査】 ありがとうございます。
ほか、御意見はいかがでしょうか。
南委員、いかがでしょうか。現場と、そして行政と、管理職のお立場ということで言えば、この辺りはどのようにお考えなのか、提案について御意見をお伺いできればと思います。
【南委員】 失礼いたします。皆さんの御議論を伺っていて、本当に友添先生がおっしゃったように、核心に随分近づいていて、すごい勢いだなと思って、お聞きしていました。素朴に、子供たちがスポーツを通じて、何が起こってきたのかなということを振り返っているんですけれども、滋賀県の場合には、国スポ・障スポが開催され、本校の生徒も深く関わらせてもらって、感銘を受け、非常にいい学びができたなと思っているんです。スポーツの価値とはすごいことだと思っています。
その中で、私が学校教育の中で大切にしているのは「たたえる」という言葉なんですよね。要は、批判的に物を見るのではなくて、相手に対して、よいところをしっかり見ていくという視点が非常に重要だと思っているので、今回の大きなスポーツイベントに関わったことによって、たたえる意識が非常に強くなったなと思っています。それは、集会などで子供たちの活動などを紹介をしているんですけれども、そのなかでも随分たたえる意識というものが深まったなと思っています。なので、多様な関わり方という中に、「知る」というところで終わっているんですけれども、「等」の中にたたえるという要素がしっかり入り込むような解説になっているといいかなと思っています。たたえるためには、知る必要があるんだとも思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。改正基本法、スポーツ基本法の中には「集う」、「集まる」という形の文言も入れております。それはむしろ、この我々の中で何を取り、何を拾わないかというのを決めていいわけでありますけれども、そういうことで言うと、今「たたえる」という御提案についても賛同するところもございます。
ほかに御意見をいただけるでしょうか。かなり専門的な話になってきているところ、恐縮なんですが、大日方委員、率直な御意見、御感想はいかがでしょうか。
【大日方委員】 ありがとうございます。なかなか難しい議論をしているなと思いました。私のほうで一つ教えていただきたいところを質問してもよろしいでしょうか。
【友添主査】 お願いします。
【大日方委員】 体育・保健体育科の系統性というところで、今回、もともと相当考えられているカリキュラムだなというところを学んだわけですけれども、子供たち、特に中学生や高校生というのは、今、自分たちがこういったところの何に必要な運動領域を学んでいるのかとかということを、自分が置かれている場所とか、ここを目的としたいといったところは授業の中では何かされているような工夫があるのか、あるいはそういったところが分かるといいのかななどということを感じたんですけれども、これはどのように今行われているのでしょうか。すみません、どなたに質問していいか分からないんですが、教えていただければと思います。
【友添主査】 ありがとうございます。
佐藤若委員、いかがでしょうか、今のお尋ねについて。
【佐藤(若)委員】 すみません。ちょっと私は理解ができなかったので、質問の意図がよく分からなくて、すみませんでした。
【友添主査】 了解です。
大日方委員、もうちょっと端的にお尋ねの意図をお示しいただけますでしょうか。
【大日方委員】 すみません。資料の参考資料2のほうでいただいている8ページのところに系統性ということが書いてありました。先生方は皆さん、これらを踏まえて、4・4・4の中でどういった運動領域を今学んでいるのかというところについて、非常にここの部分を学んでいるということを先生方は理解されてもちろんやっていると思うんですが、中学生や高校生ぐらいになると、今、自分が水泳とか球技とかで、これが小学校からのゲームでこのようにつながってきたのかといったことを理解する機会とか、そういったことを教えることはされているのかどうかというところをお聞きしたいなと思いました。すみません、分かりづらくて。
【友添主査】 佐藤若委員、どうでしょう。
【佐藤(若)委員】 高校ですけれども、オリエンテーションのときにみんながどのように学んできたのかを聞いたりと
か、選択領域や種目制を取るときなどはよく私のほうは聞いていました。それで、小学校のときにこんなことをしてきたとか、中学校のときにこんなことをしたという学びの足跡みたいなものを調査して、では高校でどんな選択がしたいかという形で、詳しくここまでしっかりと小学校のときに多様な動きでとかというところまでは説明しませんけれども、ただ、そういったことについては、オリエンテーション等では高校生にはざくっとお話しすることはあって、一応分かっているのではないかなと感じています。
以上です。
【友添主査】 丁寧な御説明ありがとうございます。私はよく分かりました。
大日方委員、今スライドをお示ししておりますけれども、小学校の1年生から4年生まで、ここでは特に各種の運動の言わば様々な動きを学んでいくような時期、そしてその後、今度、小学校高学年、中学校1・2年生、これはゴールデンエイジといって、即座の学習ができる年、小学校高学年は見てすぐできるようになるということで、その特性を生かしながらこの4年間をやっていく。高校の4年間では、何か一つ、二つ、生涯にわたってそのスポーツを愛好していけるようなものを探していこうということで、選択制という形になっているんですね。もちろん子供さんはこれを見ているわけではないんだけれども、先生方はこれを見ながら指導し、年間の計画を立ててやっています。
それから、もう一つ見ていただければ分かるように、小学校の低学年は運動遊びをやっていく。その後、運動という形で、スポーツを教えるよりも運動教育をやっていく。そして中学校に入って以降、それぞれのスポーツ教育に近い形でスポーツ教育をやっていく。実はこういった系統性も考えられて作られているということで、そういう意味で言うと、こういった違いとか、そして積み上げですよね。もう一つ見てみると、2年ごとのグリッドになっているんです。小学校1・2年生と3・4年生の固まり、5・6年生と中学1・2年生、それから中学校3年生・高校1年生という2年のグリッドで、その間は行ったり来たりできるような形になっていますので、今も素朴な疑問を抱かれたことかと思うんですけれども、そういう意味で言うと、日本の体育は、こういう積み上げ方式で系統性を非常に重視しながら、技能だけではなくて、知識・思考・判断も、それから「学びに向かう力・人間性」についても、言葉を変えつつ、ただ言葉だけのことではなく、本質を発展させながらやってきた経緯があるということです。
よろしいでしょうか。
【大日方委員】 ありがとうございます。今お聞きして、本当にこの点が重要なんだなということがすごく分かりました。そうなると、今自分が運動しているものがどういう要素になるのかといった判断がついたり、分かるということ自身が必要なんだなという、そこも子供たちがここから学べる中核なんじゃないかなということを理解いたしました。ありがとうございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
南委員、お願いします。
【南委員】 失礼します。すみません。あのような分かりやすい表が出ると思っていなかったもので。ただ、私が勤めている学校では、高校と高等養護学校が併設している学校ですので、保健や体育だけではなく、個別の指導計画であったりや個別の教育支援計画というものを非常に大事にしています。そういうことから考えると、我々が取り組んでいる学習活動、学校教育活動では、常に接続や、系統的なところを重要視しています。特に保健に関しては、常にイントロダクションのほうでこれまで学んできたことを振り返るような発問や、そういった場面をつくるような形で、子供たちをどんどん学びのほうに引き込んでいくような仕掛けをやっていますので、現場ではそういったところをしっかり子供たちにも分かるように提示しながら、しっかりやっているということも御理解いただければと思います。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。先生方は、様々に工夫しながら、これまでの学び、これからの学び、ここをどうつないでいくのかということをいつも考えながら授業を工夫されているというのは、現場を拝見するたびに感じているところでもあります。
いかがでしょうか。御質問は以下、ありますでしょうか。金岡委員、どうでしょうか。素朴な疑問等ありましたらお願いします。
【金岡委員】 ありがとうございます。この10ページの一番最後の一文ですけれども、「活力あふれる健康長寿社会」、これはすばらしいなと思って、これが幸福な人生やよりよい社会にそのままつながっていくんだなということで、一番最後にあるよりも、もっと大きくどこかに示したほうがいいんじゃないかなとは感じております。
【友添主査】 まさに金岡先生ならではの御意見だと思いますし、またすばらしい御意見かと思います。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。岡出委員、どうぞお願いします。
【岡出委員】 すみません。ありがとうございました。いろいろ御意見を聞かせていただいて、考えることがたくさん出てきたなと思っているんですけれども、今こうして3つに整理していただいて、「学びに向かう力・人間性等」のところで今日お話をしている。改めてこれは多分、3つを横に並べてみたときに、今のこの並び方でうまくいくかどうかの再チェックがどこかで必要になるんだろうなと考えてはいました。それは、運動・スポーツ、主体的に学習に取り組む態度云々と言われているところも、これは本来は多分この態度が形成されるために知っておかないといけない知識とか技能はあると思っているんです。そのことを学習している子供さんたちは主体的に学習できるし、それを知らない子供さんたちはむしろドロップアウトしてしまうというか、そういうことが多分あるはずだと思っているんですよ。だから、そういう知識とか技能とかと、この「学びに向かう力・人間性等」でここに書かれているものとの関係をほかの教科等もどのように捉えられるのかなということは、ちょっと気にはかかっています。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。公正、協力、責任、健康、安全も含めて、特別活動等を含めて、これは指導内容に入ってきていますし、体育だけの専売特許ではない。ただ、体育だけのものももちろんありますし、そういう意味で言うと、現行の解説要領の中でどのようにこれを扱ってきたのかを念のために先生方に情報提供という形で示すことも必要かなと、今の御提案を聞き取りました。よろしいでしょうか、そういう理解で。
ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。まだ時間がございます。
宇山委員、いかがでしょうか。すみません、なかなか専門的なところで御発言しにくいかと思うんですけれども、率直な疑問あるいは御意見がありましたらお願いします。
【宇山委員】 ありがとうございます。すみません、いきなりあさっての方向にボールを投げるのも失礼かなと思いまして。
【友添主査】 とんでもないです。大賛成です。
【宇山委員】 今回、感想なんですけれども、この示されているモデルの上部の部分です。その知識等々をインプットした上で、それを自身の人生、それから社会に接続していくというところで、私はどちらかというと現場側でたくさんの学校を回らせていただいているときに、先日、学校の先生から、実際にこの教育で学んだことを社会で生かしてほしいというところに対して、自分たちがあまりにも教員という専門職なので、会を実は知らないということをおっしゃっていて、僕もそれにすごく共感して、アスリートもよく、井の中のカワズだったりとか、社会を知らないという表現されるんですけれども、そういったところを補完できるようなこの書きぶりの、それから示されたこの指針に沿って実行できる、またお子さんを評価できるという形の現場の指導になっていけばいいなと思っております。
恐らくはそこを補填するのが、例えば社会経験のある教職員の採用であったりとか、部活動の地域移行と似た形になるかと思うんですけれども、その外部コーチを招聘して、ほかの委員さんの御発表にあったような専門家によって言わばケーススタディーをさせていただくみたいなことになってくると思うんですけれども、それを評価から離れたところではなくて、あくまでも評価を一緒に外部コーチとできるような仕組みだったりとか、その外部コーチが教えていること、またそういったところに参画する児童生徒さんの学びに向かう積極性だったりとか、そこで見せるような成長ぶりというところを正当に評価できるような形になればいいなと思いました。
すみません、ざっくりで申し訳ないんですけれども、以上となります。
【友添主査】 もっととんでもない球が飛んでくるかと見構えたんですけれども、適切な御意見で非常に参考になりました。ありがとうございました。多様な教員が求められてくる時代になっていますので、誰が見ても、全てが分かる必要はないんだけれども、概要を理解できる、そしてそれについてまた意見が言えるような形の指導要領であるべきだろうし、解説であればと思っています。ありがとうございました。
斎藤委員、いかがでしょうか。
【斎藤委員】 ありがとうございます。今回の「学びに向かう力・人間性等」の整理、私は賛成しています。今、宇山委員がおっしゃられたような、社会から求められている力のようなことも、「学びに向かう力・人間性等」の新しい整理の中でしっかりと示しつつ、これまで体育が大事にしてきた態度の指導は、「学びに向かう力・人間性等」ではない資質・能力として整理し、今後も大切にしくということがしっかりと現れていると思います。
先ほど思考・判断の系統表の話が出ましたが、これまで態度として育んできた内容も、解説等では系統表を示し、12年間の学びの中で育む形をつくっているので、整理の仕方についてはこれから議論されるところではありますが、再整理がされても、これまで育んできた確かな学びは、今後も持続可能なのではないかと思います。
ただ、「知識及び技能」に整理されたものを改めて見ると、まるで今までの体育よりも学習内容が増えてしまったというような誤解や、態度として指導してきたことをこれからは知識や技能として教え込みをしなければいけないのではないかという錯覚が起きてしまわないか心配です。今まで大切にしてきた指導をこれからも続けるために整理をしたということが伝わりにくくなるといけないと思いますので、その示し方というか発信の仕方については配慮が必要であると思います。私は教育委員会の立場として、学校に知らせる際の配慮については考えてしまいます。
【友添主査】 改善の要点のところの示し方ですよね。ここには特段の配慮が必要かなと思っています。
大日方委員、お願いします。
【大日方委員】 すみません。もし時間があればと思ったんですけれども、少し「見方・考え方」のところで教えていただいてもいいでしょうか。
【友添主査】 どうぞ、お願いします。
【大日方委員】 ありがとうございます。先ほどの先生方の議論の中で、5ページのところで「自由な楽しみ方」という
ところが少し表現としてどうかという意見を持たれている方が多かったかなとお見受けしていて、そこのことをもう少し、どの辺りが違和感なのかというのを教えていただけるとありがたいなと思いました。素人から見ると、運動とかスポーツは本当に自由に楽しめるものだよなと思って、何の違和感もなく受け止めてしまったんですけれども、教育的にはどこの部分なんだろうというところが、少し参考になればと思いまして、すみません、基礎的なことかもしれませんが、よろしくお願いします。
【友添主査】 ありがとうございます。「自由な楽しみ方」は、一般的には非常にいい表現なんですけれども、教育というフィルターに通したときに、この言葉が学校の中で独り歩きしてしまうと、ああそうね、楽しみ方が自由だということは、何をやってもいいんだよねという誤解を含む可能性がある。それを極力避けたほうがいいのではないかということなんです。先ほど来お話をしてきた「自由な楽しみ方」、これは本質的なところでは皆さんの賛同を得られると思うんですが、書きぶりのところについては、言わば教育的なフィルターを通して少し工夫して書いたほうがいいのではないかという御意見を今いただいて、そこについて検討していきましょうということになっています。いかがでしょうか。
【大日方委員】 ありがとうございます。その前提の上で、何をやってもいいという、逆に言うと、やらなくてもいいみたいなことではないよというところを誤解がないようにと理解いたしました。ありがとうございます。
【友添主査】 そうですね。楽しみ方についても、技術だけではなくて、関わったり、分かったり、あるいはできたりする楽しさもあれば、あるいは運動の特性そのものを達成したり、競争したり、自分との競争をしたり、そういった競争や表現したりする楽しさもあるし、そういう意味で言うと、非常に多様な楽しみ方があるわけなんですけれども、ただ下で「多様な関わり方」に「多様な」を使っていますので、この辺りの表現ぶりについても結構慎重に扱っていかなければいけない。ある種、行政文書ですので、語義が多様に解釈されない形、かといって非常に矮小化されて理解されても困るし、この辺の落としどころに非常に気を遣うし、注意していかなければいけないというところで、今後ここを詰めていけばとも思っているところでもあります。よろしいでしょうか。
【大日方委員】 ありがとうございます。先ほどもあった「つながる」とか「集う」とか、そういうまさに「多様な楽しみ方」ももっとあるんだなというところも含めて、いろいろと伝えていけることは多いなと理解しました。ありがとうございます。
【友添主査】 ありがとうございます。
ぼちぼち時間が少なくなってきましたけれども、いかがでしょうか。まだお一人、お二人、いけるかと思います。
植田主査代理、お願いします。
【植田主査代理】 植田でございます。「見方・考え方」も、それから「学びに向かう力・人間性等」にも関連してですが、何人かの委員の先生と意見を同じくするのですが、保健と体育の関連性とかについて、どこかで検討する必要があると感じました。書きぶりももちろんそうですし、例えば「学びに向かう力・人間性等」のところでも、岡出委員もおっしゃっていたように、こうやって具体的なものが出てきますと、もう一度見直す必要があって、例えば「運動・スポーツに多様な関わり方で親しむ態度」というのが仮称で出てくるということになると、その下に今度は要素イメージ、これは事務局も丁寧に作られていると思うのですが、そういった中で保健に関係する、例えば「生涯を通じて心身の健康の保持増進及び回復を目指そうとする態度」というものがあって、これなどは、生涯、これから様々な健康課題が起こる可能性がある、そういう未知なる社会に向かっていく上では非常に大事な態度になってくるかと思います。こういったものを「運動・スポーツに多様な関わり方で親しむ態度」とともに示していくという考え方もできたりすると思いますので、「見方・考え方」、それから「学びに向かう力・人間性等」、全体を通して、保健と体育の関連性であるとか、そういったところにかなり着目して検討する必要があるのではないか思いました。
以上です。
【友添主査】 保健と体育の統合をどうするかというところだと思います。非常に大事な視点かと思います。
最後になりますが、吉田委員、いかがでしょうか。御感想、御意見等をいただければありがたいです。
【吉田委員】 ありがとうございます。幼児教育の視点からで恐縮なんですけれども、「学びに向かう力・人間性等」について、幼児教育段階では、「心情、意欲、態度が育つ中で、いかによりよい生活を営むか」という説明がなされています。この「心情、意欲、態度」ということについては、平成20年の幼稚園教育要領のねらいの説明がまさにこれで、「生きる力の基礎となる心情、意欲、態度」などという説明がなされていました。
それが、3つの資質・能力の柱が示されたことでねらいの表現は変わったんですけれども、でもその「心情、意欲、態度」というのが幼児教育段階では「学びに向かう力・人間性等」で説明されていて、その立場から考えると、今お示しいただいている「学びに向かう力・人間性等」の中に少し意欲の部分が見えにくいなと感じています。
現行の小学校学習指導要領の低学年の目標の中にも、「進んで取り組む」とか「意欲的に運動する」という目標があるかと思います。それを考えると、今の幼稚園教育要領と小学校の低学年までの学習指導要領というのがそういった面でもすごく系統性、連続性が見られていると私は理解しているんですけれども、今お示しいただいている「学びに向かう力・人間性等」の中で、その意欲に関するところが少し見えにくくなっているように思いました。もちろん、それぞれの段階でその表現する言葉というのも変わってくると思いますけれども、その点について少し気になったので、もし教えていただけたら、お願いできればありがたいです
【友添主査】 ありがとうございます。今、非常に大事な点かと思います。特に体育においては、「愛好的態度」という形でやってきた部分で、もちろんこれは残そうということで、「愛好的態度」は残っております。ただ、いわゆる個人の評価のところに移していくかどうか、これは今後の検討でもありますけれども、そこの弱さが見て取れるときに、弱いと、少し私たちの思いとはずれが出てくるので、ここも検討していかなければいけないかなと思っています。
幼児体育については、幼児期運動指針が出ていますので、この辺りも参考にしながら、接続をどうつくっていくのかというところもこれからの議論で、この辺りは吉田先生に御意見をいただきながら進めていかなければいけないかなと思っているところです。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【吉田委員】 はい。ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございます。
いかがでしょうか。もうお一人、御意見を伺うことが可能なんですけれども、いらっしゃらないようですので……。
【岡出委員】 佐藤豊先生が手を挙げています。
【友添主査】 佐藤豊先生。失礼しました。豊先生、お願いします。
【佐藤(豊)委員】 すみません、端的に。これは今進んでいくと、多分、目標の文言とかが出てきたときに、言葉が重複したりすることがあるので、そういったときにまた後半になって修正がかけられるといいなと思ったので、今これは、もう原案が出たらこれで確定ですというところから進むというよりは、今まず原案を出していただいて、ここから修正しながらという形での理解でよろしいですか。
【友添主査】 そうですね。教育課程部会にも諮る必要があるし、それから分科会にも諮る必要があるし、総則・評価特別部会にも諮りながら相互のやり取りをしていきますので、ここの会議体で全て決定ということはなかなか難しいかなと思っています。もちろん、ここでの御意見を最大限重視する形で、前回3つの道がありますよねといったときに室長が明言したように、ここでの御意見を尊重しながら進めてまいりたいということでした。
【佐藤(豊)委員】 あと、先生、本体に残る部分と解説で加筆する部分の整理とかで先生方の意見が少しずつうまく反映できるような形の書きぶりも、多分この後実際に解説を作る段階では出てくると思いますので。
【友添主査】 そうですね。すみません。作成協力者会議の方向性についてはここで決めていくわけですけれども、大枠の方向性は決めるんですけれども、具体的な例えば解説の書きぶり等は、もちろん要領そのものに従ってやっていくわけですので、これは釈迦に説法ですけれども、そういう段取りを取っていく必要があるだろうと思っているところです。
よろしいでしょうか。ありがとうございました。
今日は皆様方に御発言をしていただきました。どうもありがとうございました。
先ほど申し上げたように、教科全体に関わる大変重要な議論を深めることが今できつつあると感じています。もちろん、今日で全てが終わるわけではなくて、まだスタートラインに立っているところでもあります。今日取り扱いました内容は、今後の議論の深まりの中で、改めて確認するような場合ももちろん、今最後に佐藤先生からお話がありましたように、あると思っています。こうした点も含めて、事務局においては次回以降の準備を進めていただければと思います。
今日いろいろ御意見、御発言をいただきましたけれども、できれば事務局に補足の意見等がありましたら、御提出いただければと思います。
それでは、本日の議事は以上とさせていただければと思います。
次回の予定について事務局にお願いします。
【赤間企画調整室長】 次回は12月5日金曜日午前10時からを予定しておりますけれども、正式には後日改めて御連絡をさせていただきます。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
以上をもちまして第3回体育・保健体育ワーキンググループを閉会します。
いつ突然の指名が行くかも分かりませんので、緊張感と、そして心の準備だけをしていただければと思います。今日はどうもありがとうございました。これで散会します。
―― 了 ――