令和7年10月3日(金曜日)10時00分~12時30分
ウェブ会議と対面による会議を組み合わせた方式
【赤間企画調整室室長】 定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを開催いたします。
私は、本ワーキングの事務局を担当させていただいておりますスポーツ庁政策課企画調整室長の赤間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、開会に当たりまして、スポーツ庁スポーツ総括官の大杉より御挨拶を申し上げます。
【大杉スポーツ総括官】 御紹介いただきました大杉です。よろしくお願いいたします。御多用中、ワーキングの委員をお引受けいただき、心より感謝申し上げます。
中教審の諮問におきましても、社会の状況として少子化、デジタル化など進む中で、子供たち、一段と変化が止まることのない時代を生きていくという見通しでありますとか、学校現場の状況といたしまして、主体的・対話的で深い学びの視点を踏まえながら、デジタル学習基盤も活用した精力的な改善が図られているということが確認された上で、これまでのよい部分を継承し、課題を乗り越え、新たな時代にふさわしい学びの在り方を構築する必要性、こういったことが指摘されているところでございます。
また、先般、スポーツ基本法の改正が成立、施行されました。この中では子供たちが発達段階に応じて継続的に多様なスポーツに親しむことのできる機会を確保していこうということが求められているところでございます。また、健康、安全に関しましても、たえまなく変化する課題への対応の必要性が様々指摘されているところでございまして、本ワーキングにおきましては、こうした変化を踏まえつつ、状況を踏まえつつ、検討を深めていただく必要性があると認識をしているところです。
先日、取りまとめられました教育課程企画特別部会の論点整理におきましては、主体的・対話的で深い学び、これを実装していく上では、知・徳・体のバランスや人間ならではの身体性や実体験の重要性に留意する必要があるという言及がなされたところでございます。体育・保健体育等が子供たちの学びに果たす役割はますます大きくなると考えてございます。委員の皆様におかれましては、それぞれの御知見、御経験を踏まえまして、忌憚のない御意見をいただき、濃密な議論に御協力をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【赤間企画調整室室長】 議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告をいたします。参考資料1の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置をされております。主査、主査代理につきましては、奈須教育課程部会長より友添秀則委員を主査に、植田誠治委員を主査代理に指名いただいておりますので、御報告申し上げます。
なお、本ワーキンググループの委員の皆様については、参考資料3の委員名簿を御参照いただけたらと存じます。
それでは、議事に入ります前に友添主査から一言御挨拶をお願いいたします。
【友添主査】 主査を拝命いたしました環太平洋大学の友添秀則と申します。どうぞよろしくお願いしたいと思います。これまで平成20年と平成29年の学習指導要領改訂時の二度、体育・保健体育と総則の解説の作成協力者を経験させていただきました。当初とはまた違った意味で、現在は社会や時代の流れは加速度的で、子供たちを取り巻く状況や環境も大きく変わりつつあるように思っています。体育・保健体育、健康、安全は、子供の健やかな育ちに直接大きく関わる極めて大切なものだと感じています。
私自身の専門領域はスポーツ教育学、体育科教育学、スポーツ倫理学といったものですが、これらの知見も適宜活かしながら、主査代理の植田先生、委員の皆様方とともに実りあるワーキンググループの成果を上げられるようにと念じています。どうぞよろしくお願いいたします。
【赤間企画調整室室長】 ありがとうございました。
それでは、本ワーキンググループの進行は、これより友添主査にお願いいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございます。本ワーキンググループの審議等については、参考資料1の教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めるとともに、第6条に基づいて議事録を作成し、原則公開するものとして取扱いたいと思います。
それでは、事務局より会議の留意事項の御説明をお願いいたします。
【赤間企画調整室室長】 本ワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催をしております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言願います。また、御発言が終わりましたら再度ミュートにしていただきますよう、お願いいたします。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
それでは、早速議事に入ります。体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループにおける主な検討事項等について、事務局より説明をお願いいたします。
【赤間企画調整室室長】 事務局でございます。資料1-1に基づきまして、本ワーキンググループにおける検討事項等について御説明をさせていただきます。
1ページ目、体育・保健体育等に関係する社会や学校等の状況ということでございます。1ポツのところ、こちらの社会の状況につきましては、全体の議論の中でも出されている様々な社会状況に加えまして、健康、安全に関する課題の多様化・複雑化、それから、先ほどお話のありましたスポーツ基本法の改正、こういった点にも触れさせていただいてございます。それから、2ポツの学校の状況につきましては、現行の学習指導要領の中で実現しようとしている内容、こういったものも列挙させていただいている中で、スポーツや運動に関わる子供たちの機会の確保という観点での関係する部分、部活動改革、部活動の地域展開等、こういったものも記載をさせていただいてございます。
それから、3ポツの部分、子供たちの状況、簡単に記載をさせていただいておりますけれども、運動、健康、安全、それぞれについて記載をしております。運動につきましては、体育の授業を通じて生涯にわたって運動やスポーツを継続していく豊かなスポーツライフの実現、こういったところを目指しながらやってきているわけでございますが、卒業後も運動やスポーツを行いたいと考える子供の二極化、それから、子供の体力に関してもコロナ禍の状況も前の水準には戻っていないという状況もございます。また、健康に関しては、性や薬物等に関する健康の情報、こういった入手が容易になる中で、子供たちを取り巻く環境が大きく変化をしている状況、また、食習慣の乱れ等に起因する肥満や生活習慣病等々の健康課題が見られるところでございます。また、安全の分野につきましても、様々な自然災害の発生、SNS普及に伴う児童生徒等の様々な被害、熱中症や水難事故、こういった課題が近年顕在化しているというような状況がございます。
2ページ目でございます。そういった状況を踏まえて課題設定というところにありますけれども、1ポツ目でございますが、運動・スポーツを通じた社会課題解決への期待が高まっていく中で、先ほど申し上げましたように今年、スポーツ基本法が改正をされたというところでございます。こうした状況も踏まえながら、いま一度学校における運動・スポーツに関する学びの本質的な意義、価値、こういったものをいま一度検討するということがまず必要ではないかと考えてございます。
その上で発達段階を踏まえた、これは幼児期からのということで、幼児期も含めた発達段階を踏まえた系統的な指導の在り方、それから、評価の在り方についてということでございます。特に運動の技能のところに関しては、指導内容が積み上がっていくというような部分がございますので、そういったところも含めて適切なものになっているかというところの検討が必要だと考えてございます。
それから、3ポツ目のところ、デジタル学習基盤の活用につきまして、主体的・対話的で深い学び、こういったものを実装していく観点からの方策をさらに検討していく必要があると考えてございます。
2ポツ目、保健に関してでございますけれども、子供を取り巻く現代的な健康課題、こういったものが絶え間なく変化をし、多岐にわたって存在をしているという状況の中で、疾病構造や健康課題、こういったものの変化に対応できる資質・能力、汎用的な資質・能力というものの育成が一層求められていると考えてございます。また、日常生活において認識しにくい内容に関する知識・技能の習得でありましたり、健康の原則・概念、これは保健の学習の特有の部分でございますけれども、こういった原則や概念の習得と、それと具体的な生活行動を結びつけていく、そういった思考力、判断力、表現力等の育成については、まだ課題が見られると考えてございます。
3ポツが安全に関するところでございますが、基礎的な知識の習得、こういったものは一定程度できていると理解をしてございますが、そういった知識・技能を活用して日常生活における多様な危険や事故に対して行動化をする実践力の育成、こういった部分にまだ課題があるのではないかという問題意識。また、個人として安全に行動するというだけではなくて、安全で安心な社会づくりに参加・貢献していくという意味での主体的・協働的な取組を促すような学習の充実についての工夫、改善が求められていると考えてございます。また、保健と同様に現代的な課題に対応できる、いわゆる汎用的な資質・能力の育成、こういったものが求められているというところでございます。
4ポツのところが、指導に関する環境面の課題でございます。先生方の負担にも配慮をしながら、外部人材の活用、あるいは外部機関と連携をしながら、この体育・保健体育、健康、安全という分野についても行われているわけでございますが、人材の確保や、あるいは連携に係る調整、こういった部分に関する課題もあるのではないかということでございます。また、運動学習という特性を考えますと、気候変動の影響にも目配せをしていく必要があると考えてございます。また、スポーツ、運動を授業で安全かつ効果的に行うための、適切な活動場所等の確保も必要だということも含めて周辺状況として検討していかなければいけないと考えてございます。
次のページで検討事項・論点でございます。1ポツのところが、各教科共通に企画特別部会の論点整理を踏まえて検討していくべき事項として示させていただいてございます。1ポツにつきましては、資質・能力の育成の在り方ということでありまして、学びに向かう力や人間性と、それから、見方・考え方、これについては論点整理のほうで新たな再整理も方向性、示されてございますので、こういったものを踏まえて目標の示し方を考えていく。それから、中核的な概念等抽出し、内容を一層構造化していくこと、また、その表形式なども活用して、より分かりやすい学習指導要領を実現していくというところで、1ポツの柱を立てさせていただいております。
それから、2ポツ目については、指導と評価の改善・充実というところで、体育科・保健体育科についても主体的・対話的で深い学びの実装に向けた系統的な学習内容をどうしていくか。あるいは効果的で、かつ過度な負担が生じにくい評価の在り方というのは、どういうことがあるかということを検討していくものでございます。あと、3ポツにつきましては、柔軟な教育課程の在り方ということで、全体の議論の中でもございます調整授業時数制度等々の様々な仕組みを前提として、それを体育科・保健体育科としてどういうふうに受け止めていくかという部分の議論というものが必要になってくると考えてございます。
また、右側のほうにつきましては、先ほど1枚前のところで課題としてお示しさせていただいた内容を基本的には論点としてお示しをさせていただいておりますので、重複する部分については、説明を割愛させていただきますけれども、1ポツの3ポツの部分、指導内容として示してきた態度の考え方、ここは簡単に補足させていただきます。各教科におきましては、資質・能力の3つの柱のうち、学びに向かう力、人間性等、こちらの部分につきましては、目標レベルでそういったものが示されているわけでございますけれども、体育科の運動領域については、そういった内容が目標の中だけにとどまらず、指導内容としても具体的に態度として、そういったものが示されているというような特徴がございます。そういった部分を論点整理の全体の方向性等の中でどういうふうに整理をしていくのかというところについては、このワーキング固有の議論として議論を深めていただきたいと考えてございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
今、赤間室長のお話をお伺いしていまして、本ワーキンググループの責任も重大だなと感じております。
さて、本日は第1回目でもありますので、委員の皆様お1人ずつから、本ワーキンググループが担当します体育・保健体育、健康、安全に関する問題意識等について御発表いただきたいと思います。皆様に事前に御提出をいただいております資料は、名簿順で並べて資料1-2として配付をしております。私から指名させていただきますので、各委員には5分以内で御発表をお願いいたしたいと思います。本日、多くの委員に御出席をいただいておりますので、皆様の御協力をお願いします。
初めに、途中退室の可能性があると伺っておりますので、佐藤豊委員から御発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
【佐藤(豊)委員】 おはようございます。桐蔭横浜大学の佐藤でございます。学習指導要領に関しましては、3回目の関わり方を持たせていただく中で、自分なりに感じていることを発表させていただきたいと思います。今日、大学基準協会の審議と並行ですので、途中退席の可能性があるということで、最初に発表させていただくということになりました。
まず、タイトルですか、このワーキングは、僕は体育の立場からなのですけれども、単に体育の体育科という体育の分野の内容だけではなくて、健康、安全、幅広く、いわゆる総則に関わって、広くテーマとしては取り上げていくところがあるので、そういう中で、では、体育は何ができるのかということを考えていく必要があるのかなと思いました。
1枚目のこのパワーポイントなのですけれども、上のところに簡単に書いてあるのは、今回の改訂の肝となるところを簡単にまとめたのですけれども、事務局の御発表でもありましたけれども、主体的・対話的で深い学びの実装、授業の中でいかにアクティブラーニングを進めていくかだったりとか、多様性の包摂、いわゆる共生の視点、それから、実現可能性の確保ということで、作成したものが宙に浮かないように実際に学校現場で受入れられて学習指導要領の趣旨が踏まえられた授業が展開されていくということがすごく大事かと思います。ただ、どこに向かっているのかというと、ゴールとしては個人と社会のウェルビーイングの実現というところで、その真ん中にあるのが自らの人生を舵取りする力とか、民主的で持続的な社会での創り手、いわゆる課題解決力とか、社会性とか、そういうところを踏まえた、これが2番目の概念になるのかなと思いました。
右から大きな目標が、個人と社会のウェルビーイングの実現で、そこから真ん中があって、具体的な改善の視点が出ているのかなと。それに対して体育科・保健体育科って、学校教育で何を保証していくのでしょうかと考えていったときの、今日は1回目ですので、今後の視点になるところの提案ができたらなと思いまして、健康で生き生きとした人生を送る基盤づくりがこの中では一番大事で、2つ目、これは保健のところもそうですし、体育のところで言えば、運動やスポーツの多様な関わり方を通して生きがいとか自己実現に向けて、ライフワークバランスをとって人と関わり合いながら、自分らしく生き生きと人生を紡いでいくというんですか、そこに向けて体育科・保健体育科が学校教育として保証できるということを考えていったらいいのではないかと思いました。
この後、議題となると考えられることは、見方、考え方とか、中核となる概念とかいうところを踏まえながら、このワーキングでの視点を考えていく必要があるのかなと思いまして、事務局からも御説明がありましたけれども、学校教育法の前に、教育基本法で「知・徳・体」というところが、まず、基本、ど真ん中にあると思いますが、改訂の具体的に入っていくと、それを飛び越していってしまうところがあるので、まずそこのところを押さえた上で、体育科・保健体育科としては、心と体の相関性、もう一つ大事なのが、最後の赤間室長のほうからもお話がありましたけれども、態度の内容というのは、非認知能力の育成に関わる部分でありますので、これ、指導内容としてどう整理していくかというのは大事なのかなと思います。
教育の共通性と教科の独自性の学びのバランスということで、全教科が目指すのは資質・能力なのですけれども、全部の教科が金太郎飴みたいになってしまうと、これ、学ぶ子供たちにとって個性的でない。様々な仲間との出会いや、様々な教科・科目を学ぶことによって得られる資質・能力の育成というのがあるので、では、そのときに体育・保健体育科って、どういう立ち位置に整理していくというか、どういう立ち位置の個性をしっかり出しながら資質・能力を育成していくのかなというのが見方・考え方として整理していくことが大事かなと思いました。
2枚目のパワーポイントをお話しさせていただきますと、2つの視点で検討していく必要があるのかなと個人的には思っております。1つは縦の視点です。生涯にわたる多様で豊かなスポーツライフというゴール像は、スポーツ基本法でも出ていますけれども、ただ、学校の中の体育科・保健体育科、学校教育法上の資質・能力に向けてというところとスポーツ基本法は、スポーツの振興ですので、そこのところはイコールではないというか、共通性はありますけれども、そこのところはしっかりと踏まえながら、進めていく必要があるのかなと。ゴールはどこかといったら、多分、生涯にわたるというと、どうしても学校体育の中では12年間というところに視点が行きがちなのですけれども、幼児教育から、いわゆる卒業後のところまでを踏まえた学校の枠組みを超えた中でのバックワードのデザインが必要かなと思っております。その中の小中高12年間をどう据えるのかなということですね。それを4、4、4、そしてさらに2年ごとの整理というところがあるのかなと。
もう1個、スコープの横の視点としましては、今度、横のカリキュラム・マネジメント、教科、教科外の活動、そして今、地域に出ようとする部活動等も含めた学校教育活動全体の中で、先生の負担感の中の、いわゆる示せる内容って何なのかなということ。それから、発達の段階に応じた指導目標の重点化は大事なので小中高の中の、ここに書かれているようなところ、最終的に指導の基準と実際のこの往還によって検討がなされていくようになるといいなと思っております。
すみません、長くなりました。以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
では、続きまして日野委員、お願いいたします。
【日野委員】 愛媛大学の日野です。前回のワーキンググループも参加させていただきました。今日、午後、予定が入っていまして、先に発表させていただきます。
まず、このワーキングで議論を進める上での方向性と、特に体育に関する検討課題について、私から考えを述べさせていただきます。まず改訂に向けて大切にすべき視点を3つ挙げさせていただきます。1つ目は、現行学習指導要領の振り返りです。現行の学習指導要領の趣旨や内容を改めて確認し、時代が変わっても体育科・保健体育科として大切にしてきた基本理念は、しっかりと引き継いでいく必要があると考えます。ただ、その趣旨や内容が十分に伝わっていない場合もあります。より分かりやすく示していくことが求められていると思います。特に豊かなスポーツライフの実現や継続に向けて、運動やスポーツを学ぶ意義や価値を子供だけでなく、保護者や体育関係以外の人にも向けて届けるようなイメージで示していくことが大切ではないかと思っております。
2つ目は、変化への対応です。前回の改訂以降、社会や子供、スポーツを取り巻く状況、価値観の多様化など進みました。学習指導要領が理念的にはよくできていても、子供の実態や学校現場での実情に合っていなければ、見直しを図っていく必要があると思います。また、新たな内容について、例えば共生の視点から、ボッチャに代表されるような障害の有無にかかわらず、誰もが楽しめるアダプテッドスポーツを取り入れることは、これからの社会に合った工夫の1つだと考えられます。単なる種目の追加ではなくて、多様な人と共に楽しむ価値を学ぶ機会を作ることが期待されると思います。
そして、3つ目は、時代を見通すことです。改訂が来年度行われ、前回に従えば、小学校は令和12年度から、中学校は13年度から、高等学校は14年度から完全実施され、そこからおおよそ10年間、効力を持つことになります。その間、テクノロジーは飛躍的に進歩し、子供の数は逆に大きく減少するということが予想されます。こうした変化を踏まえ、体育科・保健体育科が、どのような役割を担うのか。子供にどのような力を育むのかを見通していくことが必要だと思います。具体的には身体活動を伴う協働的な学びやスポーツを通して身体性や社会性、非認知能力などを育むことが今後ますます重要になってくると思われます。
次に、体育に関して検討すべき課題を3つ挙げさせていただきます。1つ目は、先ほども説明がありました「学びに向かう力、人間性等」です。これまで体育は、全教科の中で唯一、「学びに向かう力、人間性等」の内容を示してきました。これは体育の特質を活かしたものであり、引き続き大切にしていくべき内容だと思います。論点整理では、その再整理や評価の方法について提案がなされています。体育としては、豊かなスポーツライフに繋がる態度の育成を重視し、その態度に関連して運動やスポーツの意義や価値に結びついた知識や運動実践につながる態度の「思考力、判断力、表現力等」とも関連づけていく必要があるのではないかと思っております。
2つ目は、発達段階を踏まえた系統的な指導と評価です。運動領域は従来、「4・4・4」で内容を構成してきました。これは「6・3・3」の学校段階とは異なります。小から中、あるいは中から高へと学校種を移行する際に急にレベルが上がるといった場面も見受けられます。例えば中学校では、小学校とのつながりを意識し、もっと簡易化された運動やスポーツを扱うことを1つの方向として示していけばいいのではないかなと思っております。また、幼児教育から小学校低学年にかけての遊びを通した学びを体系的に整理し、幼小の接続をより円滑に進めることも大切だと思います。現在の小学校低学年では、○○遊びとして示されていますが、幼児教育との遊びを通した学びのまとまりやつながりを意識していくことが大切だと思います。
3つ目は指導内容を易しくシンプルにすることです。内容が過度に高度化し、子供や教師の負担になっていないかという観点からも検討や改善を図る必要があると思います。論点整理にあるように、中核的な概念に基づき、内容を整理、精選し、理解しやすく、実践しやすいものにしていくことが確かな学びにつながると考えられます。
以上、簡単に3つの視点と体育に関する3つの課題について述べさせていただきました。これ以外にも検討すべき課題はたくさんあるのですが、まずは方向性を共有することが重要だと思います。これからの時代にふさわしい学習指導要領を作るために、このワーキングで議論を深めていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。以上になります。
【友添主査】 ありがとうございました。
ここからは名簿順で進めてまいりたいと思います。お手元の名簿を御覧いただければと思います。まず、岩佐委員、お願いいたします。
【岩佐委員】 大阪府高槻市立冠中学校の岩佐と申します。私は、これまで市教委の指導主事として、また、校長として本市の中学校の保健体育科の授業づくりに関わってきました。今日は高槻市における中学校の体育授業を振り返って、学習指導要領に基づいた指導の成果や課題を中心にお話しさせていただけたらと思っています。
まず、成果としての1点目です。学びに向かう力、人間性等の指導が充実したことです。本市では18校、全校で、男女共習での授業を実施しているところですが、なぜ男女共習を行うのかという意義についての理解を大切にして進めてまいりました。このようなことが共生の態度の指導の充実につながってきたのではないかと考えています。また、公正や協力などの態度についても汎用的な知識と具体的な知識を関連させた指導をするなどして態度の指導の充実が図られてきたと考えております。
次に成果の2点目です。3つの資質・能力を育成するための指導と評価の計画の考え方について、教員の理解が進んできたと思っています。教員研修などを通して単元全体を見通して、3つの資質・能力を育成するための指導と評価の計画の考え方が浸透し、積極的な授業改善が進んできたと考えています。
次に課題についてです。課題の1点目は、運動実践に繋がる態度などの思考力、判断力、表現力等の指導についてです。体の動かし方や運動の行い方に関する内容については、行い方の知識や技能を関連させた指導は随分と充実をしていると感じているのですが、体力や健康・安全、運動実践に繋がる態度に関する内容については、態度の知識は指導しているものの、それと関連させた思考力、判断力、表現力等の指導については、まだまだ不十分なところがあると感じております。
課題の2点目です。2点目については、中学3年生の指導についてです。中学3年で生徒が領域選択をすることについては、生徒にもその意義を年度の初めに教員から説明をして、年間指導計画を工夫しながら実践しているところなのですが、ただ、実際の授業を見てみると、どこか生徒の自主性に任せ過ぎてしまっているのではないかという場面が見られます。生徒が活動する場面、そして教員が教える場面、こういったことを適切に設定しながら、単元計画や指導方法などについて、もっと研究をしていかなければならないと考えています。
また、中学3年生では生涯スポーツの設計に関する思考力、判断力、表現力等の指導があります。生涯にわたる豊かなスポーツライフの実現ということのためにも、大切な指導内容だと考えておりますが、教員にとっては指導方法や生徒のゴールの姿のイメージがなかなかしにくいのではないかと感じています。
次にその他としてですが、指導に関する環境面の課題としまして、特に今年度は猛暑の影響で水泳の授業での熱中症の心配が度々ありました。水泳の実施時期については次年度に向けて本校でも検討したいと考えていますが、ただ、夏休みの河川、海などでの事故防止のことを考えると、やはり事故防止の心得、こういった知識の指導については、夏休み前に実施することが望ましいとも考えています。
最後です。こちらについては改訂後のお話しになりますが、本市では現在、市教委による教育課程説明会が各教科で行われています。NITSの動画のほうでも資料は提供されているところですが、もしも可能でしたら、教科調査官からの説明を現場の教員が直接聞くことができれば、学習指導要領の趣旨や内容の理解がさらに深まって、教員の意識や意欲もさらに高まるのではないかなと考えています。
以上となります。今後ともどうぞよろしくお願いします。
【友添主査】 ありがとうございました。中学校の体育実践についての成果と課題をうまく整理をしていただいて、非常に興味深い御発表だと思います。
続きまして、植田主査代理からお願いいたします。
【植田主査代理】 おはようございます。聖心女子大学の植田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。主査代理を務めますけれども、本日は特に学校保健学、保健教育学を専門とする立場から、7つの提言をさせていただきたいと思います。
まず1つ目は、保健の意義と役割の確認です。学校での保健教育というのは、地域や職域などでの健康教育とは異なって、児童生徒が生涯を通じて健康で豊かな生活を送る上での基礎を培うものです。また、学齢期の健康課題の克服、健康リスクの軽減、そういったことも重要な役割になっています。国際的に共通する考え方ですが、学校は保健に関する学習を計画的かつ系統的に実施することのできる最適な機関・組織であるという点も忘れてはいけないと思っています。
2つ目に、教育課程企画部会論点整理では、自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手の育成が示されました。このことに関わって保健教育では、健康情報の氾濫する中で、健康に関わる自己決定能力を育成することが必要です。学齢期の新たな健康問題、そして児童生徒が未来に直面するであろう新たな未知なる健康問題に対応できる持続可能なコンピテンシーを育てる必要があろうかと思います。そして、現行の学習指導要領、これは高等学校の学習指導要領ですが、そこでも示されているヘルスプロモーションの考え方を活かした環境づくりとそれへの積極的参加をさらに進めて、未来の環境そのものを主体的に創造していく力、これを育てる必要があると思っています。
3つ目、当然ながらですが、保健教育において中核的概念等の構造化と精選が必要です。その際、主要な概念の整理と示し方、そして課題の整理と示し方の提示というのは、先ほどもあったとおり必要だと思います。加えて、中核的概念等の系統性と、それから、学習内容の系統性、これを並行して整理し、精選していく必要があるのではないかと考えています。また、保健教育では知識、技能というものを基盤としますけれども、思考・判断・表現し、そして健康のための最終的に行動選択できる、そういう工夫が必要かと思います。
4つ目ですが、実際の授業においては、健康に関するコンピテンシーを育てる上で、より演習的な活動、これを取り入れていくということも必要になろうかと思っています。
5つ目ですけれども、保健教育における思考力、判断力、表現力等において、特に表現力の育成につきましては、これまでも論述やレポートの作成、発表等、そういったことが行われているのですけれども、そういったことにとどまらず、広く発信し、行動化するものへと発展させることが必要かと思っています。私も関わっております公益財団法人日本学校保健会のモデル授業づくりの動画では、例えば高校生の献血に関する授業を実践したのですが、授業でグループワークなどを活発に行った後、教室内で発表します。そういった活動を進めていきますと、彼らが学内で授業時間以外に意識調査を実施したり、また、献血バスを学校に呼べないかというような取組に発展しているということも実例としてありますので、参考にしたいと思っています。
それから、次、保健の技能については、現在は身体的な技能に限定されているところがありますが、ヘルスリテラシーに繋がる認知的な技能であるとか、社会的な技能についての可能性を検討する必要があろうかと思っています。
6つ目ですが、体育・保健体育、健康、安全に関する外部人材の活用についてでございます。これについても先ほども御紹介がございました。私、関わっております、がんに関する教育においては、外部人材、講師の活用が行われてきています。それによって授業で行われている基本的な内容に加えて、その内容の実際であるとか、最新の情報を得たり、専門家への質問等によって知識を深めたり、あるいは誤解を解いたりするということが実際に行われています。また、外部講師、外部人材の活用によって、児童生徒の興味・関心が高まって、その後の調べ学習がより主体的、積極的に行われているという事実もあります。その際には、外部の人材、講師の方に教育課程の特徴であるとか、既修内容の連携であるとか、年間計画を立てる段階からの参画であるとか、あるいは経費等の調整など、そういったものは必要ではありますけれども、今後、がんだけではなくて、例えば性に関する内容であるとか、精神疾患に関する内容などで、こういった活用の可能性は考えられるのではないかと思います。
最後、7番目ですけれども、私も関わった調査の結果ですが、児童生徒の保健教育に対する意識調査の結果です。真ん中を見ていただきますと、保健の学習は大切だという意識が、肯定的な意識が小学校、中学校、高校とも90%を超えて非常に高い数値です。ただ、その一方で、好きだとか、楽しいとか、考えたり、工夫したりできたという意識というのは、やはりそれほど高くないということがありますので、こういったことの指導の改善、また、こういったことを高められる教師の力量形成、こういったことに対する支援が必要と考えております。
以上でございます。御清聴、ありがとうございました。
【友添主査】 御専門の立場から詳しい情報提供いただけたと思っております。
続きまして、宇山委員、お願いいたします。
【宇山委員】 おはようございます。Es.relierの宇山と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。私は中学校の部活動でフェンシングという競技と出会いまして、2021年の東京オリンピックまで選手として活動してまいりました。東京大会はコロナ禍での開催となりまして、無観客やイベント整理など従来とは大きく異なる環境でした。その中で公費をいただきながら競技に取り組む立場として、社会に十分還元できているのかという課題意識を強く抱いたことが、現在のスポーツを支える側に回ろうという決意のきっかけとなりました。私自身、大学院修士課程をようやく修了したばかりで、ここにいらっしゃる委員の先生方には遠く及びませんが、本日は現場での実践を通じて得られた視点を中心にお話しさせていただきます。
現在、特に力を入れております取組を2つ御紹介いたします。1つ目は簡単かつ安全に競技を体験できるツールを推進しております。フェンシングは本来、金属製の剣を使用するために、防具の着用が必須となっておりますが、そのハードルを取り除くとともに、デジタル通信技術を搭載して、アプリケーションで判定を見える化することで判定の明瞭化、それから、観客にとっても分かりやすい仕組みを導入しております。当初はフェンシング普及のために開発されたものですが、私自身も関わりを持つようになりまして、教育や福祉といった異なる領域で目的を付与したパッケージの検討と実証を進めております。
特に右の部分になりますが、学校教育分野において、自治体、教育委員会、学校と連携しまして、特別授業としての訪問授業を積極的に展開しております。その際、フェンシングを体育に取り入れるというよりかは、フェンシングが体育にどう貢献できるかという視点を重視しまして、体づくり運動の領域に沿ったカリキュラムを設計、実証しております。道具の扱い方やルールの意義を理解していただきながら取り組んでいただいて、最終的には武道領域への接続も意識した授業設計を行っております。
2つ目に、下になりますが、データ分析を活用したスポーツ現場支援技術の推進となります。スポーツ庁指導のハイパフォーマンス授業でも展開されているように、映像やセンサーを用いたデータ収集、それから、分析によって現場を支援するスポーツアナリストという方々がいらっしゃいます。その知見をより広く社会に還元する活動を進めております。これは選手のサポートにとどまらず、専門学校での次世代育成、それから、企業研修の中でスポーツのデータを題材としたデータ分析のシミュレーションを実施し、ドメイン知識の収集から解釈、考察、分析・評価、フィードバックに至るまでの一連の流れを体験していただいております。これによって複数の視点からデータを現場で見る力、それから、クライアントとのコミュニケーションの重要性など、気づくきっかけとなり、企業の方々からも評価をいただいております。
次ページをお願いいたします。最後に私自身の問題意識として大きく6点挙げさせていただきました。一部は既に学術的な指摘や今回の検討課題と重複するものもございますが、現場での実感を踏まえてお伝えいたします。1つ目は運動習慣の二極化になります。女子生徒の下肢筋力低下、体力低下が代表するように、体育での授業での経験が卒業後のスポーツ実践、それから、運動習慣につながっていないという現状がございます。その体験する中で得られる成功体験というものを増やしてあげたり、それを様々な技術により増幅することで、よりポジティブな行動変容に繋がるのではないかと考えております。
2点目がデジタル化と教育現場のギャップとなります。子供たちは日常的にICT機器に触れているものの、保健体育においては撮影や動作評価、スコア記録などといった限定的な利用にとどまっております。現場の先生方の負担を増やさない範囲で授業に小さくICTを取り入れていくだけでも、学びは一層深まるのではないかと考えております。
3点目は、インクルーシブな体育の不足となります。多様な文化、それから、障害を持つお子さんに対応する教材や指導法がまだ十分ではございません。包括的に外部連携をして、教材や情報が整備共有されれば、学校ごとの調整負担というものを軽減できるのではないかと考えております。
4つ目に健康・安全教育の実効性となります。知識としては知りつつも、実際の行動に結びついていないことが多いと感じております。短時間の体験やシミュレーションを取り入れるだけでも、自分事化することの学びに繋がるのではないかと考えております。
5点目は、評価の在り方となります。技能や体力を踏まえて生徒の主体性や仲間を支える姿勢、これらといったものをどのように評価するのか、難しい課題だと思うのですけれども、適度な負担をかけない形で、より多様で、具体的な評価で、これを示すことによって生徒一人一人の成長が拾いやすくなるのではないかと考えております。
最後に6点目は、ハイパフォーマンス知見の一般化不足を挙げさせていただきます。競技現場で培われた知識や経験が学校教育に十分還元されていないと感じております。正しい競技動作だけではなくて、自己管理や協働、課題解決といったトップアスリートが持っているような力を生涯にわたってケーススタディとして生きる要素として、教育に取り入れることができるのではないかと考えております。
以上、拙い発表で恐れ入りますが、私自身も学びながら少しずつ皆様のお力になれるように参画させていただきたいと思っております。私からの発表は以上となります。ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございました。トップアスリート、オリンピアンのお立場からの興味深い御提案だったかと思います。
続きまして、大井委員、お願いいたします。
【大井委員】 札幌市立中央中学校の大井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。資料はございません。口頭での発表とさせていただきます。このたびの検討事項に関わります問題意識につきまして、中学校で体育・保健体育科に関わります子供たちの学習の様子を見ている立場からお話をさせていただきます。
多くの課題がございますが、本日は、問題点、2点についてまずお話ししたいと思います。1つ目は運動習慣の定着や体力の向上を図る上で課題があると感じています。全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果でありますとか、また、本市、札幌市の中学生の様子を見ておりますと、ほとんど運動しない子供が依然として一定数存在しておりまして、運動に興味を持って活発に活動する者とそうでない者の二極化の改善ということが引き続き求められると感じております。特に運動が嫌い、あるいは苦手と感じている子供たちが主体的に学習に取り組めるような指導の一層の工夫、改善が必要と考えております。また、誰もが運動やスポーツの多様な楽しみ方を共有することができるよう、共生の視点を重視した指導の充実も必要だと感じております。
次に2点目ですが、先ほどの事務局の御説明でも触れられておりましたけれども、健康や安全に関わる社会環境の変化が、子供たちの心の健康に影響を及ぼしているという状況が見られると感じております。こうした状況への対応といたしましては、運動、食事、睡眠、休養ということの調和を意識した生活習慣を身につける力、また、ストレスに適切に対処する力、また、情報活用能力というものを一層高めていく必要があると考えております。情報活用能力の育成に関わるデジタル学習基盤の活用につきましては、学習の効果を高めるための効果的な活用方法についての研究は進んでおりますけれども、学校や教員によって使いこなす力量には差が見られると感じております。こうしたことの改善に向けた工夫も必要であると考えております。
こうした問題の改善を図っていくためには、子供が体育・保健体育の学習の成果を実生活や実社会に活かして運動や健康に関わる自らの課題を意識しながら、自ら考えて課題の解決に取り組む実践力の育成を図る指導の一層の充実が必要であると考えております。そのためには、教科の学習における体育分野と保健分野の関連を図った指導がますます重要になるのではないかと感じております。健康な生活と運動やスポーツとの関わりを深く理解したり、心と体が密接につながっていることの実感を深める学習活動の成果が生活習慣と結びついていくことで、健康的な生活を自らデザインし、実践する力を身につけることができると考えております。
また、健やかな心身の育成を目指して行われている学校の教育活動全体を通じた体育、健康に関する指導との連携を図ることも重要であると考えております。健やかな体の育成に関わる現代的な課題を踏まえた体育、健康に関する指導によって、健康で安全で活力ある生活を営むために必要な資質・能力を育て、心身の調和的な発達を図って健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指すことが引き続き重要と考えておりまして、教科の学習と特別活動や部活動、そして地域のクラブ活動、食に関する指導、安全に関する指導などとの関連を図った指導の充実が重要であると考えております。
簡単ではございますけれども、以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。中学校のお立場から日々感じておられる問題について御提案をいただきました。
続きまして、岡出委員、お願いいたします。
【岡出委員】 ありがとうございました。日本体育大学の岡出です。よろしくお願いいたします。
スライド、次、お願いいたします。この本スライドですけれども、我が国の中学校保健体育科の目標の変遷を示しております。小さい形ですけれども、ここを見ると、目標には複数の下位目標がずっと設定されていたこと、それから、その中には身体の領域、認知的な領域、社会的な領域、情動的な領域に関わる目標群がずっと設定されてきたということが確認できます。これらは、いわゆるフィジカルリテラシーの提案とも類似していると言えます。
次、お願いいたします。もっとも体育の授業の実態に関しては、肯定的な評価と否定的な評価が併存してきました。否定的な評価は、体育嫌いを生み出してきた体育、こういう評価かと思います。このこと自体はスポーツの価値を踏まえた良好な授業の実現に向けて、本スライドのような視点が必要になってくるということを示唆していると思います。
次、お願いいたします。同時に、今後の論議では学校教育全体の中でスポーツや運動をどのように位置づけていくのかという論点も必要になります。これはアメリカの子供の運動時間を増やす例ですが、このシステムは、実は日本でもそのまま使われているということになります。
次、お願いいたします。このような状況の中で、私たちは教師も子供も楽しくて、やりたい保健体育の授業の姿を改めて考え直すことが必要だと思っております。
次、お願いいたします。その際に体育の授業を通して学校生活を豊かにしていくとか、スポーツを魅力的にしていくという視点が大事になると考えています。
次、お願いいたします。この実際に体育の授業を行うときに、教師はどのときに情熱を持つようになるのか。これはミャンマーの教員の例ですけれども、このような語りをされることになります。こういうことに関わりましては、ユネスコの良質の体育の授業の提案というものが参考になります。
次、お願いいたします。ユネスコは現在、包摂的で良質の体育という、こういう概念を提案していますけれども、これは誰もが生涯にわたりスポーツに参加できるために必要な身体的な能力、心理的な能力、社会的な能力を意図的、計画的に育成していくということを求めています。これは我が国の体育の目標とも親和性が高いと考えています。
次、お願いいたします。類似の指摘はOECDからもなされています。ここでは身体、認識、情意、社会、こういう目標群が示されていることになります。
次、お願いいたします。他方で、今後、体育の在り方を検討する際に良質のコンテンツなくしてコンピテンシーを育成することはできない。こういうことも認識していくことが必要だと思っております。
次、お願いいたします。加えて、このEducation2030と言われているものでは、価値観だとか態度が重視されていた。こういうふうになった経過についても、私たちは改めて確認をし直すことが必要だと思います。
次、お願いいたします。これは同時に技能に関する捉え方についても目を向ける必要があると考えています。ここの提案を見ていきますと、各教科が保証しようとしている技能というのは何かということが、新たに問われるかと思います。
次、お願いいたします。この良質の体育の授業で何を保証するのかということに関しては、国際的にはフィジカルリテラシーという、こういう概念が提案されるようになっています。これはオーストラリアのそれですけれども、ここでも身体、心理、社会、認識、こういう能力が提案されています。
次、お願いいたします。他方で、子供さんの体力低下とか、動かない子供さんへの検討に関しては、発達の段階に則した指導内容の検討が必要になるということなのですけれども、ここで問題になるのは体力、あるいは運動能力の捉え方だろうと感じています。今、私たちは体力というと、体力テストの構成要素を想定しがちですけれども、未就学児の場合、特に、いわゆる体力とは異なる視点が必要になるだろうと思っています。これはドイツの提案ですけれども、基本的な動き、情報処理能力、コーディネーション能力、こういうものをバランスよく育てていくということが提案されています。
次、お願いいたします。小さくて申し訳ないのですけれども、これは非認知能力に関わる社会、情動的な学習領域に関する資料です。これは日本でも既に示されているもので、このような構成要素が示されています。我が国では体育はこのような能力を育成する教科であることが指摘されています。
すみません、5分、過ぎました。次、お願いします。こういうものに関しては、一応、期待するレベルが想定されているということを確認した上で、次、お願いします。ここで確認しておきたいのは、社会、情動的な学習と言われているものは、一定の手続を踏まないと学習成果を保証することができない。こういうことを確認していくと、逆に言いますと、この能力は学習改善のための評価の対象にすることはできるということになります。
最後になります。こういうことをやっていこうとすると、よいプログラム、よい人材、よい場所、こういうものが必要になってくるということになりますので、我が国でも持続可能なシステムというものをこのような観点から改めて確認し直していくことが必要かなと思います。
以上です。申し訳ありませんでした。1分、過ぎました。
【友添主査】 いや、岡出先生、1分程度は全然大丈夫ですので、そう御心配なさらなくても大丈夫です。いわゆるグローバルスタンダードを見ながら体育の、あるいは保健の教科内容を考えていくことの重要性の御指摘だったかと思っています。
続きまして、柏原聖子先生、お願いいたします。
【柏原(聖)委員】 柏原聖子です。狛江市教育委員会に勤務しております。その教育委員会の立場から、今日はお話しさせていただきたいと思います。
まず、現行の学習指導要領の告示以降、社会に目を向けますと、ラグビーワールドカップ、オリンピック・パラリンピック東京大会や世界陸上など国際競技大会が日本国内で開催をされました。コロナ禍で制限があった期間はございましたが、開催国が日本であることから国民のスポーツに対する意識や、「する・みる・支える・知る」といったスポーツへの向き合い方の変化を感じているところです。また、AIやSNSなど急速な進歩と発達による恩恵を受ける一方で、健康への影響が課題として浮き彫りとなっております。そのため、心身に及ぼす影響のみならず必要とする情報が正確な内容であるかどうかを大人も子供も判断する力が求められるようになりました。
論点整理から、運動に関しましては本質的な意義や価値、保健に関しましては発達に応じた内容を生活行動と結びつけること、安全に関しましては知識に基づく適切な行動を生活、交通、災害における実践力の育成、社会貢献や社会参加を促進することが重要というように言われていると理解しております。学校で行う体育や健康、安全に関する教育におきましては、知識理解にとどまらず、資質や能力を育むためには、生物的側面、社会的側面、心理的側面からの学びが求められます。学齢期の発育、発達途上にある全ての子供たちに対するポピュレーションアプローチを基本として、課題につきましては、教科と領域を含めた横断的な計画を教育課程に位置づける必要があります。
例えば、病気の予防の感染症を1つ取り上げたとしても、体育科や保健体育科のみならず、理科、社会科、家庭科、特別の教科道徳、特別活動などにおいて関連づけたカリキュラム・マネジメントが実現できるよう、学校がその解釈や教科間の関連づけに四苦八苦しなくても実践できる解説の作り込みを期待しております。そして、多様性を包摂する観点から、疾病には防げるものと防げないものが存在することを認識しつつ、様々な疾病を治療しながら学校生活を送っている子供たちや学校に通うことができず、オンラインで授業を受けている子供たちには、個々への配慮は不可欠です。また、個人差があることを前提に健康診断に基づいた個に対する健康相談や保健指導の取組が必要とされています。
その上で、本学習指導要領が環境や条件が異なることを前提として、全ての学校が目標に向かう役割を果たすナショナルスタンダードであることが重要だと考えます。外部人材の皆様との連携は大変有意義であります。特にトップアスリートとの直接交流は、子供たちの心を揺さぶる経験となっております。また、とりわけ健康に関しましては、保健指導、健康相談が職務とされている学校医、学校歯科医、学校薬剤師の先生方には、これまでも大変熱心にお取組いただいておりますので、より積極的な関わりができるようICTなども活用した方向づけができるとよいかと存じております。
正確で適切な知識に基づく意思決定や行動選択、実践力を育むことが目標でございます。生涯にわたり心身ともに健康に生きることを考えた場合、学習習慣、運動習慣、生活習慣を育むとともに心と体を調整する主体性を育むこと、不測の事態にも対応できる判断力、実践力を育むことが重要であると考えております。
以上で私の発表を終えさせていただきます。御清聴、ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございました。貴重な御提案だったかと思います。
続きまして、柏原委員、お願いいたします。
【柏原(奈)委員】 こんにちは。横浜市立南台小学校の柏原と申します。私は教育委員会の指導主事として教育委員会のほうに従事し、その後、小学校の校長として務めております。同時に今、横浜市立小学校体育研究会の副会長をさせていただいています。体育のほうはずっと好きで研究も進めてきましたので、現場にいる立場として、今日、少しお話をさせていただければと思います。資料は、子供たち、それから、指導者という立場で、今の私の立場から見えていることについて示させていただきました。これについてお話をさせていただきます。
まず、子供たちの状況ですが、一番気になっているのが、子供たちの二極化傾向が顕著になっているなということです。ちょうど今の6年生が入学してすぐというか、入学のときに休校になってしまった子供たちですので、もしかするとコロナ禍の影響も大きいかなとも思っています。まず1つ目は、体幹の弱さとか、持続力の低下がとても目立つなということです。教室で普通に座って授業を受けていても、真っ直ぐに座っていられない子供とか、歩いていくとすぐに疲れてしまう子供とか、体育のときにもすぐに座り込む子などが目立つ状況です。そして、運動経験が極端に少ない子供とか、体を動かすことへの楽しさとか、心地よさを実感できていない、実感していることが少ない子供も、以前よりも増えているかなとも思います。
ただ、体育の授業が好きとか、体育の授業を楽しみにしている子供は、依然とても多い状況にはあります。それから、体育だけではありませんが、不登校傾向とか、不登校などで心の不安を示す子供が増えているなと思っています。多くの人と一緒にいることへ不安を感じたりとか、心の弱さを感じさせる子供も多くいます。それから、いろいろな意味で情報か容易に入ることで、リストカットとか、オーバードーズとかというふうなものを小学校でも見られるような状況になっています。
続いて、人とのコミュニケーションに課題とか不安を感じる子供も増加しているように感じています。人の表情を見て考えるということがなかなかできない子供、高学年でもこういう子供が多く見られます。それから、人の心を感じ取れない子供も多くいて、コミュニケーションの取り方が分からずにトラブルになるということが高学年でも多くなっています。そういうことが分からなかったのかと指導していて思うような場面も多々あります。それから、デジタルの世界の中での関わりの中で閉じてしまっている子供もいるので、そういう意味でもやっぱり心配だなと思っています。それから、いまだにマスクが外せない子供もいて、心の影響もしているのでしょうけれども、心配でいます。
あともう一つは、世の中でもたくさん言われていますが、スクリーンタイムが増加している傾向は増えているのかなと思っています。そこでやっぱり、子供の多様性が加速している状況を見ると、様々な子供に学習の機会を与えて、学習の場や在り方を考えていく必要があるな、指導要領を考える上では、そういう視点がとても重要になるなと思っています。
続いて遊び方の変化です。以前から既存のスポーツで遊んでいる子が多いということは言われていましたけれども、私の周りを見ていても、そこは大変強く感じています。それから、体を使うような遊び、汗をかくような遊びを好まない子供も多くいます。ただ、授業の中で鬼ごっことか、人間知恵の輪みたいなものを教えていくと、そういうのを楽しんで遊んでいる子供も増えてきているので、幼保小等との連携を考えたり、指導内容の工夫をしたりしながら、遊びとか日常的な運動について、もう少し取り入れていかれるようなものを考えていきたいなと思っています。
続いて、指導者の立場で気づいたところです。指導力の差が大きいなということをとても感じています。特に小学校は体育の専門ではない教員が指導に当たっております。最近は教科分担制が導入されて、学年全体での指導がそろってきている。誰かが専科のような形で体育を指導するということは増えているのですけれども、体育なので若い先生がというようなこともあったりして、経験の浅い教員が指導するケースも増えてきているなと思っています。指導する際に学習指導要領の解説だけでは育成を目指す資質・能力というのを理解し切ることが難しい教員がいるのも現状です。先日、夏休みのときに、実は体育のほうの全国集会というのに行ってきたのですけれども、そこでの提案されたものも、倒立のみを指導、5年生全体に対して、指導したという提案が実践として挙がっていました。やはり指導要領の内容の示し方、それから、中学校との接続についても分かるように改善をしていかなければいけないんだなと感じております。
続いて、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実というものについての誤解についてお話をしたいと思います。個別最適な学び、協働的を学びがそれぞれ独立して独り歩きをしているなという現状です。個別最適な学びをとか、協働的な学びを、それぞれを取り上げながら授業を構成しているような場面をよく見ます。一体的な充実を図ることの大切さが伝わっていないなと感じています。体育は特に子供の状況等も考えると、やっぱり一体的な充実を図っていくことが主体的・対話的で深い学びに繋がると、とても感じていますので、そこを併せて整理しながら進めていく必要があるな、それが伝わるような工夫をする必要があるなと思っています。
続いて3番目は保健領域の学習のことです。これまでにお話しいただいた方からも挙がっているものなのですが、自分事になっていないなと、とても感じています。日常の生活や行動と関連づけて考えるまでの学習に至っていない。教科書を教える形にやっぱりなっていて、雨降り保健からは脱却してきたなとは思うんですが。そして、子供の日常を例にしながら学習を進める場面は増えてきているのですが、なかなか子供自身が自分の生活や行動と関連づけさせて学習を深めていくところまでは行っていないなと感じています。それに伴って、やはり学習したことが日常の場面に活用し切れないというふうな現状が起きていると思っています。
最後は、性暴力とか性犯罪から身を守る学習についてです。横浜市の教員がということで、世の中をとても騒がせているので、今、横浜が特に大事にしなければと思って取り組んでいるものの1つでもあるのですけれども、子供が自分の身を守る。けがとかということだけではなくて、命の教育についても考えていく必要があるのかなと思っています。ただ、これについてはなかなか難しい問題も含まれていると思うので、すぐにとか、今回の改訂でということではないかなと思いますが、自分の身を守るということの1つとして考えていく必要もあるのかなと思っています。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。先生の背後から聞こえてくる子供の元気な声に随分癒された思いをしているところです。
【柏原(奈)委員】 すみません。運動会の練習なので、うるさかったですね。すみません。
【友添主査】 いえいえ、ちょうどタイムリーな会議だと思います。ありがとうございました。貴重な御提案をいただきました。課題について感じておられることを丁寧に御説明いただけたと思います。
続きまして、金岡委員、よろしくお願いします。
【金岡委員】 皆さん、こんにちは。初めまして、私はスポーツドクターとして主に水泳の競技サポートをしてきていたのですけれども、2007年ぐらいからは、それをうまく腰痛予防に使えないかということで、ライフパフォーマンスサポートの研究を行っております金岡恒治と申します。
次、お願いいたします。今まであまり教育の現場にはいなかったので、私、慣れていないのですけれども、私が今までやってきたことを御提言させていただきたいと思います。御存じのとおり、生まれて、ハイハイできるようになって、お座りできて、立ち上がって、歩けるようになって、そういうふうに発育、発達した後に正しい動作ができるようになって、それが徐々に加齢に伴って低下していって、五十肩、腰痛、膝痛などの痛みが出てきて、それがだんだんひどくなっていくと手術をしなければいけなくなるような狭窄症とか、膝の変形とか、そのようなのが起きて、最終的にはロコモ、フレイル、サルコペニアと呼ばれるようなかなり運動機能が低下した状態になって、杖をついて3本足になって、最終的には四つ足に戻っていく。そのような状況が今起きているのではないかと思います。健康寿命をいかに伸ばすかということで、運動・スポーツというのは重要ということは皆さん御存じのとおりかと思います。
では、次、お願いします。私、スポーツ庁でいろいろと仕事をさせていただいて、室伏長官が提唱される運動には様々な種類があって、目的があるというふうなことで、筋・骨格系に対する運動、神経系に対する運動、モーターコントロール系とも言いますけれども、いわゆる内臓に働きかける有酸素運動になりますけれども、体力を高める、持久力、それを高めるような運動、それとメンタルに対する介入、そのように運動には種類分けができると提言しております。
では、次、お願いいたします。私自身は、先ほど少し言いましたように、水泳選手をサポートしてきていて、腰痛が多かったのですけれども、この神経系に対するエクササイズを重点的に実施することで腰痛が減ったというような成功体験があります。
では、次、お願いします。今のはある意味、ハイパフォーマンスのサポートなのですけれども、それを東京2020のレガシーとして国民のライフパフォーマンス向上へ応用しようということで、室伏前長官が提唱されて様々な研究活動を行って、私もその一部をやらせていただきました。
では、次、お願いいたします。北海道の東川町という町で町民に対して主にこのモーターコントロールのエクササイズということを介入するような実証研究というものを行いました。結果として腰痛者は結構減って、室伏長官が提唱するセルフチェックというのがあるのですけれども、では、次のスライドをお願いします。この体の様々な機能を評価して、それで、その人の身体機能をチェックするという、自分でやって、セルフチェックで、同時に自分がどこが劣っているのかを気づくというふうなものなのですけれども、これの点数も3か月の介入によって改善していたというふうな結果が得られています。
では、次、お願いいたします。このスライドを横軸に身体機能、先ほど言った様々な運動によって得られた機能が右に行くように高まるにつれて、縦軸のパフォーマンス、これ、上が競技レベルで、途中の緑がADL、日常生活を快適に過ごすことができるかというレベルで、これをいかに高めていくか。アスリートは、これを高めて世界一になるような努力をしているわけですけれども、一般の人もこれをできるだけ高めるということが、恐らくは健康寿命延長につながっていくと思います。これはかなり人によってばらばらだと思いますけれども、できるだけ若いときに高くしておいたほうが、低下していくときに最終的な寝たきり状態にはなりにくいと考えていいのではないかと思います。ある意味、ライフパフォーマンスのピークを向上させるということが求められますけれども、そのためには正しい身体関連知識、今日の中でもありましたけれども、ヘルスリテラシー、それが必要になってきて、そのような教育の重要性を感じているところです。
では、次、お願いします。ある意味、知識としては正しい身体機能の知識、健康リテラシー向上という知識、それが学校で教えてもらえるといいなと思いますし、それと並行して正しい体の使い方、運動には様々な種類がありますので、それらのエクササイズ、運動を食事のようにバランスよく実施するということが必要かなと考えています。
では、次、お願いいたします。これもスポーツ庁の図なのですけれども、様々な運動をするときにまず必要なのは、神経系の機能向上、まず体の使い方、その技術を身につけて、その後に筋・骨格系、いわゆる体づくりですね。それを行って最終的に持久力を高めて、競技パフォーマンスを高めて、それで高みに上がっていくというふうなことだと思うのですけれども、この発育曲線によりますと、神経系の発育というのは、もう10歳以下で終わってしまうのではないか。ですので、なるだけそのぐらいのときに神経系の発育を促進するような運動介入というものが求められるのかなと思います。いわゆるトレーニングというのは、体ができた後に体を鍛えるというふうな時期の時期別が必要なのかと思います。
では、次、お願いします。これは今回の資料の中にもあった図ですけれども、小さいときにこの表現リズム遊びとか、表現運動とか、それが恐らく先ほどの神経系の発育を促すような運動になるのではないかと思います。あと、最近ダンスが入ってきていますけれども、ダンス自体も体をいかにうまく動かすか、バランスをとるか、そういうふうなことに寄与する運動なのかなと思います。ここに様々なイラストを挙げていますけれども、いわゆるきつい運動というよりも、バランスをとって何かができるかどうか、そういうふうなことが求められるのかと思っております。
では、次、お願いします。これは最後のスライドですけれども、私がこの「小学保健ニュース」というのに記事を書くのを依頼されて、体幹をいかに強くするという言い方は、私、抵抗があるのですけれども、うまく使うというふうな、そのような遊びに、様々あるのでチャレンジしてみましょうという記事の協力をさせていただきました。
私からの発表は以上になります。どうもありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございました。運動だとか、あるいは身体活動の臨床的なデータとかエビデンスを御提供いただけることを楽しみにしています。よろしくお願いします。
続きまして、斎藤委員、お願いいたします。
【斎藤委員】 よろしくお願いします。私は神奈川県の教員研修、教育研究、教育相談を担当する県立総合教育センターにあります体育指導センターに勤めております斎藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は体育における多様性の包摂について考えていることをお話しします。次のページをお願いします。本図は学校の子供の多様性について驚きを持って知らされる図である一方、学校現場の教員は驚くでもなく受け止めている様子が見られます。教員は学校の子供が多様であることをもう既に認識しております。そして、そのような中で誰一人取り残すことない授業を行うことの難しさもまた認識しています。そこで、私の所属する神奈川県立総合教育センター、体育指導センターでは、このような状況を踏まえて、近年は体育における子供の多様性の包摂に向けた授業研究に取り組んでいます。
次のスライド、お願いします。これは障害のある生徒が在籍する高等学校で行った授業の様子です。車椅子を使用する生徒とほかの生徒が一緒に運動ができるように、アダプテッドの理論を用いた活動の工夫をしました。写真のように他の生徒も使用できる車椅子や様々な形状や性質のラケット、ボールを用意して、生徒がそれらを選びながら運動に取り組みました。
次のスライドをお願いします。これは外国につながりのある児童が在籍する小学校で行った授業の様子です。日本語の理解に困難のある児童とほかの児童が一緒に運動ができるように簡潔な表現を用いた指導の工夫をしました。写真のように動画や図などを示しながら、学習を進めました。
次のスライド、お願いします。これは生徒のスポーツ経験や関わり方に様々な状況がある高等学校で行った授業の様子です。生徒がスポーツの多様な楽しみ方を実践できるように、体育理論と球技を関連づけた指導計画を工夫しました。
次のスライド、お願いします。写真のように授業の場面でも、球技の授業では運動することだけでなく、応援することや審判をすることにも楽しく取り組めるようにしました。
次のスライド、お願いします。これらの授業研究に取り組んだ際に、私たちが重要視したのは、一人一人の違いを大切にしようとすることと運動の多様な楽しみ方を共有することです。これらは現行の学習指導要領に既に示されている事項です。そう考えると、体育はさきの改訂の時点で既にもう多様性の包摂について着目した改善を行っていたのだなということを実感して驚くばかりです。その一方で、実際に授業研究を行ったことで、これらの2つのことを重視して授業を行うことの難しさにもまた気づくことができました。例えば一人一人の違いを大切にしようとしながらも、学年や学校種が上がるにつれて、育成を目指す資質・能力というのは、より高い内容が示されています。また、運動の多様性、多様な楽しみ方を共有しようとしながらも、育成を目指す資質・能力として示されているのは、主として運動することに関連したものになっています。そのため、教員は、これらのことを授業で実現するのは難しいとか、やりづらいと考えてしまいます。ここには改善の余地があるのではないかと考えさせられます。
次のスライド、お願いします。多様性を包摂する体育の授業は、自らの豊かなスポーツライフを舵取りする力とスポーツを通した共生社会の創り手を育成することに繋がると考えます。それには現状、教員が難しさを感じている一人一人の違いを大切にしようとすることと、運動の多様な楽しみ方を共有することが真に授業に実現できること、つまり、現行学習指導要領で示すこれらの2つの多様性、包摂に関する事項を実装することが必要であると考えます。そのための議論に向けて私が着目している1つ目が、分かりやすく、使いやすい学習指導要領の示し方です。せっかく体育が前回改訂で多様性の包摂に関する事項を先取りしたにもかかわらず、難しいと思われてしまうことは、学習指導要領の示し方を改善することで解消できるのではないかなと思っております。
また、着目する2つ目が、豊かな学びにつなげる余白の創出です。多様性の包摂に関する事項が過度な負担となっていたり、他の内容と両立するのが難しいということになっていたりするならば、学習指導要領の内容を精選して余白を創出したいと考えています。これら2点を論点整理では、ほかの方向性の中で示されていると思いますが、私は多様性の包摂という議論の中でも着目したいと思っており、本ワーキンググループの先生方の御意見を伺い、検討していきたいと考えております。
早口になりましたが、私の話は以上となります。ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございました。今後のワーキングの重要な論点かと思っております。
続きまして、佐藤委員、よろしくお願いします。
【佐藤(若)委員】 山形県立南陽高等学校の佐藤若と申します。ワーキングにつきましては、前回も入らせていただいて2回目となります。本日は、学校現場の高等学校の立場で感じていることについてことについてお話しさせていただきます。
最初に書いたのは、学校の全体の課題ということで、ざくっとの内容です。少子化による学校の変化や学習指導要領の本質の理解が不十分と感じています。評価に関しても、高等学校では観点別学習状況評価を指導要録に記載することが令和4年度から義務づけられていますがその評価方法に関する理解が不十分であることを課題として感じております。
生徒につきましては、肌感覚ですけれども、子供たちのコミュニケーション力というのが低下していっているような気がします。人間関係を築く力が弱まっている印象を受けています。その背景や影響等もあって、不登校の児童生徒も多いのではないかなと感じているところです
体育・保健体育、健康、安全の分野の問題意識について4つにまとめてみました運動に関する課題では学習指導要領の理解と授業実践には差があると感じているところです。実は令和5年に全国学体研を山形で開催させていただいたときに、研究部長として幼小中高、特支において3年間にわたり3つの資質・能力をバランスよく育成するという大きな課題で取り組んできました。校種による違いはあれども、こういった取組がとても功を奏してきたかなと感じています。ざくっとした評価ですが、体育授業に対する意欲や楽しさというものが高まったという結果でした。
特に「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力の重要性ということを先生方も感じておられて、「共生」や「協力」しっかりと学習した生徒たちは、スポーツの価値や楽しさや喜びを感じられるデータが少し高まる傾向でした。しかしながら、これは発表校以外はまだ技能中が見られます。こと「学びに向かう力、人間性」の学習、態度の学習についての取組が重要であり、まだ課題であるとも感じています。
豊かなスポーツライフの実現、継続に繋がるスポーツ好きな子供の育成についていろいろな方々からもお話しされているとは思うのですけれども、運動が楽しいと感じられたり、大事だなと感じられないと、人生100年時代の中で高校卒業した後、スポーツに携わろう、関わろうというふうな気持ちにならないのではないかと感じています。それはスポーツをすることだけではなく観客としてスポーツを見たり、サポーターとして支えたりとか、そういったことをする楽しさをやはり学校の授業の中で経験、体験することが一番大事なのだなと思っております。
人生をスポーツで豊かにするにはどうやったら実現できるのかということを改めて今思っているところです。体育理論の授業で一般の方のスポーツをしないという方にインタビューしたところ、実は時間がないというよりも、学校でスポーツができなくて嫌な思いをしたと答える方も多く、過去には、そういった経験でスポーツから遠ざかるような原因になっているケースもあったのではないかと考え、スポーツを「する・みる・支える・知る」といキーワードについて、様々な形で楽しめるような授業づくりを考えると、改めてこのフレーズ、目標に対しての体育授業の改善が必要だなと感じています。
保健に関しては、現代的な課題や生活への意識の変化は大分変わりつつあると感じています。ただ、より自分事として考えられるような授業の改善について本校でも昨年、がん教育で外部の方に来ていただいて、いろいろお話をお聞きしたところ、生徒たちにとっては大きなきっかけになったなとも感じております。その際の年間計画の作成の仕方や、その外部の先生方との打ち合わせ等、TTの役割分担なども含めて、重要だなと感じています。
安全に関することですが、4番の環境整備のところも併せると、安全については保健教育、指導だけでなくて、学校全体のカリキュラム・マネジメントが必要だと感じています。特に今、自然災害について教科を超えて、特別活動も含めた取組が重要不可欠だと感じています。例えば避難訓練だけやればいいとかではなく、避難訓練と保健、理科、地理など関連づけて行っていくことや、熱中症について保健と体育理論を結びつけて指導することで、生徒の主体的な行動に結びつけるような工夫をしたことで効果が出始めています。熱中症に関しては猛暑の影響で大変授業が厳しくなっています。ここで言う話ではないとは思うのですけれども、猛暑で体育の授業ができないことから本校では年間計画で夏に集中して体育理論をすることも実施してみました。エアコンの設置やそれからICT活用については、教員はやる気満々ですが、体育館にWi-Fiがないためうまくできないため、環境整備の課題があります。水泳授業については、プールの老朽化施設の管理面、外部人材の活用など、様々課題があると思われるので、ぜひ内容等も含めて検討していくことが必要なのかなと思っております。
長くなりました。大変申し訳ございませんでした。以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。高校の現場からの様々な課題の提案をいただきました。
ちょうど今折り返したところで、時間が少し切迫してまいりました。この点、どうぞよろしくお願いします。
続きまして、中村委員、お願いいたします。
【中村委員】 つくば市立みどりの学園義務教育学校教頭の中村と申します。本ワーキングは初めての参加となります。委員の先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、私なのですが、教育課程特別部会総則・評価部会のほうにも参加させていただいておりますので、この教科部会のほうのやりとりにつきましても総則部会のほうに持ち帰りお話しさせていただきたいとも思っております。学校につきましては、本校、次世代チェンジメーカーを育てるという大きなビジョンを掲げております。その中でデジタル学習基盤というものを有効に使って教育をしていくということが教育方針になっておりますので、実は体育につきましても、体育ICT部会というものを設置しておりまして、AR、VRを使った体育といったところにもチャレンジしております。本日、資料がなくて大変申し訳ないのですが、私も実は体育科の教員ということで、少し現場で感じている体育の課題または今後の期待感を踏まえて5点ほどお話しさせていただきたいと思います。
まず、1つ目です。育成する資質・能力の在り方という部分につきまして、実は皆様、本当に私が言うようなことではないのですが、体育は技能の習得にとどまらず、生涯にわたり健康で、一人一人が幸せに生きるための力を育むということが求められております。その中で、本校は、実は部活動地域移行を100%、地域展開をして、もう2年目が行われている学校になっております。その中で感じているのは、実は学校内の体育と、それから、地域クラブというものが連動することによって、新たな子供の学びの創出という場面を見ることができております。
部活動がこれまで培ってきた先輩、後輩との関わりだったり、それから、チーム、協働といったものが地域に展開、手渡してしまったことによって本校でも少し人間関係の希薄であったり、生徒指導上の課題が少し増えたという、実は課題意識がありました。そこを今年度課題解決するために、学校体育と地域部活動というものが連動して行う、関連させるということを取り組みましたら、少し新しい場面の創出ということを感じているところです。つまり、人間関係づくりや文化の継承という部分においても、学校体育と地域活動、地域部活動の連動ということも今後視野に入れていくことで新たな体育の創出というところを私も考えていきたいなと思っております。
2点目です。指導と評価につきましては、実は体育は非常に探究的な学びに直結する分野というふうに私は感じております。例えばなのですが、バスケットボールの中で、本校ではデータアナリストチームがあって、机の上でデータ分析をしているチーム、それから、実際に計画を立てるチームであったり、中にはドリブルをとにかく研究するということで、向かっていくゴールというのは同じなのですけれども、その中の探究の過程が非常にあります。つまり、この探究のプロセスを体育からパフォーマンス評価に繋がるような評価モデルというものが提案できたらなと感じているところです。
3つ目です。実はこれは誰一人取り残さない柔軟な教育課程といったところにひもづくのですけれども、実は本校、VR体育をやっている最初の目的としては、インクルーシブの視点でした。つまり、体力差のあるお子さん同士が、ボール運動だと非常に難しい側面があるのですけれども、VRゴーグルの中で波動というシステムを使って、例えば動作を学んでいく、捕球動作であったりとか、攻撃をよけるという動作を学んでいくという身体運動をやりました。そうしたことによって、技能差を乗り越えた体育の楽しさであったり、そういった学びを展開することができました。また、これはダンスにおいても非常に効果的であることも実証されております。こういった意味で、誰一人取り残さないインクルーシブな体育へのチャレンジというのは、デジタル学習基盤の中において可能ではないかと考えております。
4つ目です。ここにつきましては、私、デジタル学習基盤を推進する側の立場にもあるのでけれども、実はここについて非常にメンタルの不調だったり、心身の健康だったりということが、デジタル学習基盤の使い過ぎというような側面で言われることが多いですが、ここを学校体育の中で、トータライズで、教育課程の中に体育で心身のリフレッシュだったり、視力の回復だったりといったものを担いながら保健的な要素、また、デジタル学習基盤を効果的に使っていくという連動があってもいいのかなと感じているところです。
最後です。環境整備と持続可能性ということで、実は私、データ利活用の分野でも少し関わらせていただいているのですが、体育は非常に個人固有のデータを創出する、輩出する教科だと思っております。このデータというものをただデジタル学習基盤ということで動画を撮るためだけの端末ではなくて、データを取り入れて、それを分析する保健体育であったり、自己をメタ認知するためのデータ利活用であったりといったものの座学と、それから、体育の実技系の体育といった、ここを区別して体育の教育課程を計画的にデザインしていくということも、今、チャレンジしているところですので、そんな可能性があるのかなというのも皆様にぜひ御知見の中で御指導いただきたいなと思っております。ぜひ次世代体育という非常に次世代に向かった体育というものをこのワーキングで見据えていけたらと思っておりますので、どうぞ御指導のほどよろしくお願いいたします。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
続きまして、藤田委員、よろしくお願いいたします。
【藤田委員】 大阪教育大学の藤田大輔と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
スライド、お願いいたします。私の専門は学校安全で、具体的には学校における安全教育、安全管理と学校と家庭、地域、関係機関との組織的連携に携わる研究に従事しております。
スライド、お願いします。私は24年前、2001年6月に本学附属池田小学校で23名の児童、教職員が殺傷された事件の後、事件6年目となる2007年4月から4年間、同校の学校長を併任し、事件後の附属池田小学校における安全教育と安全管理の再構築や事件によって被害を受けられた方々への支援に従事いたしました。この附属池田小学校長としての経験や附属池田小学校事件に関わる反省、教訓を基盤とし、児童生徒や教職員にとって安全で安心な学校を構築していく取組としてのセーフティプロモーションスクールの制度を提案し、現在、国の第3次学校安全の推進に関する計画や学校安全総合支援事業、さらに所属大学の支援を通じて国内外の学校への制度普及に取り組んでいるところです。
スライド、お願いします。このセーフティプロモーションスクールの活動は、令和4年に閣議決定された第3次学校安全の推進に関する計画にも明記いただいているところです。
スライド、お願いします。この第3次学校安全の推進に関する計画では、家庭、地域、関係機関等との連携・協働による学校安全の推進のために、地域学校安全委員会やコミュニティ・スクール等の仕組みを活用して、地域と協働して学校安全に取り組んだ学校数と学校安全に関するPTAの参画状況、安全点検、登下校時見守り活動が主要指標として設定されているところです。また、学校における安全管理の取組の充実では、児童生徒が安全点検に参加する活動を行っている学校数と専門的な視点から学校における具体的な安全点検の方法、体制を構築している学校設置者数、さらに重大事故の予防のためのヒヤリハット事例に関する校内での定期共有の状況が主要指標として設定されているところです。
スライド、お願いします。このような学校安全の実践につきましては、学校保健安全法第27条や第30条に規定されているところですが、いまだ充実した活動となっていない地域もあり、今回の学習指導要領の改訂に当たっては、学校安全計画の策定、見直しや地域、関係機関との連携の充実を含め、さらなる学校安全充実のための検討を深めていただきたいと願っております。
スライド、お願いします。そこで、今回の先ほど示された体育・保健体育、健康、安全に関する現状と検討課題の3、安全に関する課題について意見を申し上げたいと思います。安全に関する課題につきましては、例えば防災教育では単に生命、命を守る技術の教育として狭く捉えるのではなく、どのような児童生徒等の資質・能力を育みたいのかという視点から、防災を通した教育と広く捉えることが必要であり、防災教育には災害時に自分と周囲の人々の命を守ることができるようになるという効果とともに、児童生徒等の主体性や社会性、郷土愛や地域を担う意識を育む効果や地域と学校が連携して防災教育に取り組むことを通して、大人が心を動かされ、地域の防災力を高める効果も期待されているところです。
また、私が関わっておりますセーフティプロモーションスクールでは、教職員のみならず、児童生徒や保護者が校内で気づいたヒヤリハットの情報を収集、分析、共有するとともに、得られたデータを体育科や保健体育科、総合的な学習の時間、家庭科、美術科、特別活動の時間などを活用し、教科横断的に校内での事故災害の発生を予防するための主体的・協働的な活動として展開したり、また、ある高等学校では気象データや交通事故データを活用して、独自にアプリを開発したり、また、地域の課題に基づいた防災カルテを新たに作成し、これらを用いて近隣の小学校や自治会で出前授業を行うなど安全で安心な社会づくりに参加、貢献する態度の育成が期待される取組が数多く実践されております。
さらに、近年では集中豪雨による洪水、落雷、竜巻などによる災害、水の事故、また、熊などの野生生物の出現に加えて、SNSに起因する犯罪や性犯罪、性暴力など子供たちの安全と安心を脅かす現代的な課題の存在が認識されているところです。こうした現在的課題への対応に関する指導内容や指導計画についても、各学校において関連する教科等における指導内容との関連を意識しながら、学校安全計画に位置づけることを推奨し、児童生徒等に必要な知識を身につけさせるとともに、ギガスクール構想の充実を考慮しつつ、情報モラルやサイバーセキュリティに関する安全教育も充実させることが重要であると考えております。
スライド、お願いします。令和5年に閣議決定された教育振興基本計画の児童生徒等の安全確保に明記されているように、児童生徒等がいかなる状況下でも自らの命を守り抜き、安全で安心な生活や社会を実現するために主体的に行動する態度を育成することや児童生徒等が危険を予測し、回避する能力を育成することが重要であると理解され、地域によっては安全教育に取り組む時間数を徹底することを推奨する取組も見られておりますが、いまだ十分ではないと懸念される地域も存在しております。そこで、次期学習指導要領では、各学校における安全教育は体育科、保健体育科をはじめ、関連する教科等で教科横断的に体系的に実施されるとともに、家庭・地域・関係機関と連携・協働して、その指導効果の充実を図ることが促されるよう、各学校が学校安全計画に安全教育を取り扱う時間を適切に位置づけることなどを含めて、着実な指導の実施のための方策について検討いただきたいと考えております。
今回のワーキンググループで、次の時代の学校や地域の安全と安心を担う人材の育成を目指した議論に参加し、学ばせていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
続きまして、藤原委員、よろしくお願いします。
【藤原委員】 京都市立太秦小学校の藤原といいます。私は小学校の教員として採用され、京都市小学校体育研究会に所属して、体育科、運動領域の授業づくりについての研究と、また、その研究してきたことを全市への一般化を目指して、これまで取組を進めてきました。この会議では、現場からの声をしっかりお届けできたらなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、資料はございません。口頭のみで失礼いたします。私は小学校における体育科の意義と課題について、現場での実感を交えながら、4点お話しさせていただきたいと思います。1点目は、子供たちの運動の現状についてです。運動する子としない子の二極化が進んでいると言われていますが、実際に学校現場を見ていても、その傾向は確かにあると感じています。小学校には朝休み、中間休み、昼休み、放課後といった外で体を動かす機会がありますが、運動場で元気に遊ぶ子もいれば、教室や廊下、中庭などで友達と話をしたり、静かに過ごしたりする子もいて、その傾向は固定化しているように見受けられます。
放課後についても、広い運動場があるのですが、外で遊んでいるのは、ごく一部の子供たちです。多くの子供たちは、習い事などに通っていて、そもそも遊ぶ時間が少ないのが現状です。また、遊び方も変化し、家に帰ると、友達とオンラインゲームで遊ぶ子供たちが多くなってきているように感じられます。さらに、地域の公園もバットを使うような野球だけでなく、ボール遊びなども禁止されている公園が増えてきています。小さな子供や高齢者とともに利用する場としては、仕方のない面もありますが、結果として子供たちは公園に集まっても、走り回るよりもスマホやゲーム機を囲んで過ごす姿が目立っています。
このような状況の中で、体育の授業は子供たちにとって、運動の楽しさや魅力に出会う大切な機会となっています。ふだんなら一部の子だけが使っているような鉄棒や縄跳び、バスケットゴールなども体育の授業をきっかけに休み時間になると多くの子供たちが運動場に出てきて、授業でできるようになってきたことに改めて挑戦したり、もっとできるようになりたい技などに挑戦したりする子が増え、そんな中で、できるようになったことを友達と喜び合うような姿も見られます。体育の授業でやってみたいな、もう少し頑張ったらできるかもしれないなといった気持ちを持つことが、ふだんあまり運動しなかった子供たちにも体を動かす意欲を育てるきっかけになっています。
つまり、体育の授業は子供たちが自ら進んで体を動かそうとする意欲を育むなど、知識及び技能、思考力、判断力、表現力等、学びに向かう力、人間性等という資質・能力の3つの柱を偏りなく育むという大変重要な役割を担っていると考えています。
2点目は、体育専科についてです。小学校では多くの場合、学級担任が体育の授業をしています。小学校の先生方は、学習指導要領や京都市なら市独自の指導計画などを踏まえて、一生懸命、教材研究を行い、授業を進めていますが、運動経験や熱心に体育の授業づくりに取組、実践を積み重ねてきた先生方とはどうしても指導に差が出てしまうこともあります。子供に合った課題設定や課題解決に当たっての適切な助言ができる先生がいる一方、経験が少ない先生や体育の指導に苦手意識を持っている先生の中には、指導に不安を抱えていることもあります。また、学校現場が今後ますます若返っていく中で、体育専科が中心となって校内の指導の推進を担う体制づくりというものが今後はさらに重要になってくるのではないかと考えます。
3点目は、指導に関する環境面の課題についてです。近年は熱中症のリスクが大きな課題となっています。熱中症のリスク等ありますので、柔軟なカリキュラムの工夫や環境整備を考えていく必要があると思っています。
最後に低学年の運動遊びについてです。現行の学習指導要領でも幼稚園教育との関連を図ることが示されていますが、特に低学年における運動遊びは幼児教育との接続を意識し、幼児期の遊びと自然に繋がるような取組をさらに充実させていくことが大切だと考えています。小学校の低学年の体育では、運動遊びを通して体を動かすことの楽しさや心地よさ、友達と関わりながら活動することの楽しさ、そして、今ある力で頑張ればいいということを学んでいくことが、安心して、そして自ら進んで運動に向かう子を育て、中学年以降の体育の学習や生涯にわたって豊かに運動に関わっていこうとする基盤を作ることにつながっていくものと考えています。
【友添主査】 藤原先生、ありがとうございました。それでは、続きまして細川委員、お願いいたします。
【細川委員】 細川江利子と申します。埼玉大学教育学部で教員養成に関わっております。また、公益社団法人日本女子体育連盟のほうでは全国の学校の先生方からお話を伺ったり、また、地域でダンスや健康体操、リズム体操等の指導をされている生涯スポーツの指導者の方々やそこで活動されている方々の活動を見たり、また、お話を伺ったりする機会を得ております。そうした経験を活かして何か発言することができたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
ワーキングについては、初めてです。現行の高等学校学習指導要領の作成のほうには関わらせていただいて、いろいろ勉強をさせていただきました。ありがとうございます。今回、5分ということで、既に50秒たってしまったのですけれども、児童生徒にいかに学習指導要領の趣旨を踏まえた内容の学習を保証して、生涯スポーツの実践につなげていくかということで、思うところは多々ありますけれども、本日は1点のみ、課題として中学校第3学年以降の選択の授業を充実させることがやはり大事ではないかということについてのみ少しお話をさせていただきます。
最初に生徒の学ぶ自由の保証と書きましたけれども、選択の授業についていろいろ先生方からお話を伺いますと、選択制なのでやらなくていい、つまり学校が全ての領域の授業を用意しなくてもいいと捉えているような発言が現場にあるというふうに聞いております。また、実際に学校が領域、あるいはその領域内の内容を選択しているという場合もしばしばよく聞かれているところです。やはり生徒がそれまでの必修の授業を経て、これをもう一度学びたいと思っている、その希望する領域、内容を選択できるということがやはり生涯スポーツにつなげるという意味でも重要であると考えておりますので、もちろん施設面等、いろいろな問題を抱えつつだと思いますけれども、実現に結びつけられるようにと思っております。それが深い学びを確かなものにという、これからの考え方を実現するにも重要ですし、そういった意味でカリキュラム・マネジメントが重要だと思っております。今回、教育課程の柔軟化ということが示されておりますけれども、それがマイナスではなく、よい方向に働くようにということを危惧しているところです。
そして、その選択の授業内容の検討と実践が必要かと思います。先ほど大阪の岩佐先生から、その授業について課題であるということも少しお話しされておりましたけれども、学生等に聞きましても、必修のときと選択制になったときの授業の違いというものをあまり認識できていない様子が見受けられます。やはり小中高、12年間の学習の最終段階として、どのような学習をして卒業させるかというところで、ここはすごく大事なところかと思います。文科省から発行されている指導の手引きは私もよく参考にさせていただいておりますけれども、そちらに生徒自らがやりたい種目を選択して、計画的に授業を進めていくというような実践例も示されております。けれども、そういったことを多忙な現場の先生方がどこまで参照できているのか。手引きなどの資料に当たらなくても、やはり学習指導要領解説等で具体的な授業イメージといったものをいかに伝えて、実践につなげていくのかというのがとても大事なところだと思っています。
学生の姿を見ていると、ウォーキングやジョギングのイメージはあるのですけれども、いろいろな運動と自分がだんだん年齢を重ねるにつれてどのように関わっていけるかという具体的なイメージを持てていない学生が多いようです。本学の学生に、私はダンスが専門なのですけれども、上は80代までの生涯スポーツでダンスを楽しんでいらっしゃる方々の活動を見せて、一緒に踊る体験をさせたときに、感動したと言っていたんですよね。自分の好きなこの種目をこんな幅広く、こんな年代の方たちが楽しんでいる様子に何か自信を持てたといったような発言をしていたことが、私はすごく印象に残っています。今回「地域移行」が「地域展開」という名称に変更されたのは、すごく賛成なのですけれども、やはり外部人材に学校に来ていただくだけではなくて、生徒たちが地域に出て、地域の方々とそれこそ年齢、性別、障害の有無等に関わらず、一緒に活動したり、関わったりすること。それが難しくても、例えば映像で、そういう皆さんが運動を楽しんでいる様子を見せるなど、何か具体的なイメージを示すということも、これからすごく大事なのではないかと思います。体育と体育理論と保健と、そして学校と地域社会との連携というものがますます重要になってくるのかなと思っております。すみません、時間ですのでここで終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございました。
それでは、前島先生、お願いします。
【前島委員】 私は児童生徒の多様性を包摂する必要性について、以下のキーワードを基に話をします。私は特別支援学校の教員として体育・保健体育の授業を実践してきたこと、それから、通常学級の中で支援の必要な子供たちに対しての支援の工夫や手立てについて実践と研究を行ってきました。これらの経験を踏まえ昨年度より本学で特別支援教育を教えています。
スライド2に示されているようにクラスには多様な子供たちが在籍しています。こちら図には小学校、中学校について示されていますが、高等学校の通常学級に在籍する学習面や行動面に困難があると担任が回答した調査では、2.2%在籍していると報告されています。また、2018年から高校において通級による指導が始まっていますので、発達段階における多様な特性を持っている児童生徒への指導の必要性が高まってきていると考えます。現行の体育・保健体育の学習指導要領の小学校3年生以上に共生の視点が示されたこともあり、学校の授業を見ると先生方の配慮や工夫がされている様子が多く見られるようになりました。将来、多様な特性を持った人たちとともに運動やスポーツを楽しむ力を身につけていくためにも、共生の視点はますます重要になってくると考えます。
しかしながら、子供のつまずきの背景に目を向けず、指導している様子も見られます。子供の弱点ばかりに目を向けて、熱心にその姿を正そうとする。熱心な無理解者にならぬよう、つまずきは、その子だけの問題ではなく、関わる教師もまたその状況を生み出しているという自覚が必要だと思います。
障害とは個人の要因と環境の要因の相互作用によって生じるものです。同じ心身の状況であっても、取り巻く環境によって変わってきます。
以前は医療モデルのように日常生活で受ける制限や制約は、個人の病気等によるものという考え方でした。ですが、今は制限や制約は社会の中にあるという考え方である社会モデルの中で子供たちは生きています。
誰もが学びやすくするために、1次的な取組として全ての子供たちが使える選択肢を準備するなど、基礎的な環境を用意し、学びやすい環境を整えていくことや2次的、3次的な取組として配慮を要する子供たちへの支援を工夫することで、多様な子供たちの学びの機会が広がると考えます。
2024年に障害者差別解消法が改訂され、民間事業者も合理的配慮が義務化されました。これは障害のある人もない人も共生するためのもので、今後さらに共生社会が進んでいくと思います。将来、多様な特性を持った人たちとともに運動やスポーツを楽しむ力を身につけていくためにも、共生の視点はますます重要な学習内容となります。多様な子供たちが中核的な概念をつかみやすくなるよう、学習指導要領を構造化していくことが大切だと思います。
もう1点、現在私は、第5次食育推進基本計画に向けた会議に、食育推進評価専門委員として参加しています。そこで話題になっていることとして、大人の食育に課題があること。特に高校生の食育の必要性が話題となっています。このことについても考えていきたいと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございました。
南委員、よろしくお願いします。
【南委員】 よろしくお願いします。私のほうは、皆さんにお伝えしたいのは大きく2点あって、1つは私の所属している学校がアイチと読まずにエチと読むということをお知りおきいただければと思います。
スライドのほう、どうぞ進めてください。2点目、私がどうしても皆さんにお伝えしたいことは何かというと、知育、徳育、体育の中に体育が位置づけられているということが非常に重要だと私は考えていて、現場の教員をやっていても、このバランスが絶妙だなと日々感じているところです。私の勤めている県立校は、普通科の高等学校と、軽度の知的障害のある生徒が通う高等養護学校を併設しているんですね。そんな中で、この知育、徳育、体育というこのバランスがいかに重要で必要なもの、汎用性の高いものであるということがよく分かってきました。
特にそれを現場の先生方を含め、私も含めてマネジメント能力、これが非常に重要だと思っていて、特に最初につまずくのが授業経営だと思います。そしてまた、担任を持てばクラス経営があると思います。そして、分掌の主任とか部長などを務めると、その分掌、あるいはその係のマネジメントが必要です。最終的には、今回のワーキングのほうでもたくさん御参加の校長先生などの学校マネジメント、これも非常に重要だと考えていますので、こういったところをしっかり見ながら、皆さんと一緒に考えていければなと思っているところです。
次、お願いします。これ、私が作成した稚拙なものですけれども、先ほど申しましたマネジメントをどんなふうにして発展していけばいいのかなということをイメージしたものです。当然、学校教育活動ですので、左側に示しているような子供の学びというものを考えたときに、こういったいろいろな要素が絡んでいるんですけれども、それらをどのようにマネジメントにつなげていくのかということ、これを体育、保健体育、そして現在、私が勉強させていただいている保健・健康教育といったところに落とし込んで研究を進めていきたいなと考えているところです。
次、お願いします。現在、健康課題が散見されて、主体的に学ぶことがどうなのかということは、日々、本当に悩みながらなのですけれども、やはり大事なことは、ヘルスプロモーションの考え方をしっかり活用していくということだと思います。つまり、見方、考え方です。先ほど申しました汎用性、非常に重要だと思います。そして、開かれた教育課程を実現するための一歩としては、外部講師の活用、がん教育でもそうです。いろいろなことに活用できると思います。ただし、授業時間には限りがあります。詰め込んで何とか終わったということではなくて、子供たちがいい授業だったなとか、先生方が、よし、次はこれをやろうという前向きな、ポジティブな内容になるような、そういう視点が必要だし、やはりチーム学校ですので、教科横断的な視点、非常に重要だと思います。そうすれば必然的に保健体育科の教育というのは充実するだろうと考えているところです。
私の説明は以上で、あとは森先生のほうにお願いします。以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
森委員、お願いします。
【森委員】 東海大学の森良一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、全体的にこれから進んでいくことを見据えて問題意識を書かせていただきました。まず1点目ですが、健康課題について考えていくときに、現代的な健康課題は結構クローズアップして取り上げられることが今まで多かったです。事務局のほうから示していただいたように、現代的な健康課題に限定するのではなく、健康課題の変化に対応できる資質・能力を検討すると言っているのですけれども、いつの間にか現代的な健康課題に落ち着いてしまうところがありました。国民の健康を考えたときに不易なものがあって、そこは外せないなということが中核的概念にもなっていくと思いますので、その辺を少し意識したいというのが1点目です。
2点目ですが、体育・保健体育、健康、安全ワーキングでは体育・保健体育の中身と健康教育、安全教育の中身が全く一致するわけではないという交通整理をきちっとやっていく。健康・安全については教科横断的にやる中で、体育・保健体育の例えば保健に関わるところでは、どういう内容にするかという整理をする。これについては、私は体育の内容と保健の内容との関連をしっかりやっていくというのも1つの方法ではないかなと思っています。ということで、保健と体育の関連を重点的に取り上げるべきではないかなというのを思っています。
3点目ですけれども、身体的、心理的ウェルビーイングという話も出ていましたが、全体的に保健の内容として心の部分が薄いというふうにずっと感じています。もう少ししっかりと心理的な内容を入れるべきだというのがあります。それに伴って、デジタル化が進んでいく中で、心に関する健康課題というのは増えてきていると思うのですけれども、この辺を一度議論したほうがよい気がいたします。デジタル化に関しては、保健の授業でスクリーンタイムを多過ぎるのは問題だよねという内容をスクリーンを見ながら学習しているにはどうも違和感があって、少し保健でできることは何なのかを真剣に考えたほうがいいと思っています。
次に資料の2番です。私はここが今回のワーキングの肝になるのではないかなと思っていますが、この中核的概念というものを考えていくときに、それぞれの教科の特質というか、本質があるのではないかなと思っていて、それを決めていく際のアプローチの仕方にはいろいろあるなと考えています。資料は中学校を参考に作ってみたものなのですけれども、保健は、この病気の予防という内容は小学校にも中学校にも高等学校にもあるんですよ。病気の予防の中核的概念を決めていくと、小・中・高等学校が同じになってしまうという考え方もありますが、実際は小学校、中学校、高等学校は違う内容でできているわけです。
例えば小・中学校はやはり1次予防を軸にして2次予防を加味して内容構成していますし、高校は1次予防、2次予防だけでなく、疾病にはかかりますので、3次予防も含めてという内容になっているんですね。そういうことを考えると、系統的に考えてそれぞれの校種がどうなのかを検討する必要があると思って、例として作らせていただきました。今後、事務局のほうから案が出てくると思いますので、御検討よろしくお願いいたします。
最後に、性に関する内容なのですけれども、これをここでやるかどうかというのは、やはりこのワーキングの1つの課題になるのではないかなと思っています。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
吉田委員、お願いします。
【吉田委員】 東京学芸大学の吉田と申します。資料はございませんので、口頭での発表とさせていただきます。
私は現在、幼稚園教諭や保育士といった保育者養成に当たっております。また、幼児期の運動発達や保育内容、健康、領域健康を専門としておりますので、その立場からお話しさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
幼小の接続に関しては、生活科を中心にとされておりますが、誤解をおそれずに申し上げるならば、体育でこそ、最もスムーズな接続が図られていると私は考えております。それは、幼稚園は教科はありませんけれども、現行の幼稚園教育要領等と小学校学習指導要領の低学年体育においては、運動遊びや動きがキーワードとしてあること、また、低学年の目標に関わることは、教育要領等でも示されておりまして、幼児期に保育内容として経験していることだからです。ただ、それは学習指導要領上、表記上のことであって、実際はそれほどスムーズな接続がなされていないのではないかというのが問題意識としてあります。
具体的に申しますと、小学校低学年では内容が運動遊びとなっていますし、基本的な動きを身につけることが目標の1つです。したがって、本来であれば授業において遊びが指導されるものと考えられますが、実際は遊びと称していても運動や動きに関する技能の指導になってしまっているのではないかと感じています。以前、4歳児から小学校2年生までの各学年に見られる動きの種類を比較したことがありました。幼児は通常の運動遊びの場面を、小学生は体育の授業について1学期から3学期で各1回ずつ、どのような動きが子供たちに見られていたかを担任に評価してもらいました。その結果、4歳児から5歳児3学期にかけては、観察される動きの種類が増加、多様な動きをしていましたが、1年生になると、1学期から3学期の全てで、ごくわずかな種類の動きしか観察されておらず、全く見られないという動きの割合が高くなっていました。
これは1つの幼稚園、1つの小学校を対象とした調査でしたが、3年間にわたって複数クラスで行った平均ですので、特に小学1年生の体育授業時の動きの経験は制限されているのではないかと感じました。また一方で、幼児を対象とした調査ですが、遊びとして取り組んでいるほうが観察される動きの種類は多様であるという結果が得られております。これらのことから、小学校低学年の体育では、運動遊びであるにもかかわらず、遊びとしての指導がなされていないのではないかと考えています。この点においては、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方が挙げられておりますが、低学年、特に1年生の運動遊びとしての運動の行い方が分かりにくく、もしかしたら誤解されているようにも感じております。
現在も学習指導要領自体は幼小の接続が示されていると私は理解しておりますし、低学年の運動遊びと中学年の運動となっている点や動きと技能としている点も発達を踏まえたものであると思います。遊びの捉え方の難しさもあると思いますが、幼児期からの主体的な活動としての遊びに取り組む経験、すなわち、子供が自己決定することは、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方でも挙げられている自ら人生を舵取りできる力に通じるものと考えます。論点整理の中で「タテ」「ヨコ」の関係の可視化による深い学びの具現化が挙げられておりました。
また、小学校から高等学校までの12年間の系統性、発達の段階を踏まえてという指摘もあったと思いますが、一方で、その課題として幼児期からの発達段階を踏まえた系統的な指導と評価も挙げられております。人の発達という長期的な視点も念頭に置いた上での検討、ほかの委員の先生方からも御指摘がありましたけれども、幼児期からの発達も考慮して、特に接続期の体育の在り方を検討することが必要ではないかと考えております。
非常に限定的、ピンポイントな視点で恐縮ですが、以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
続きまして、渡辺弘司委員、お願いいたします。
【渡辺(弘)委員】 日本学校保健会並びに日本医師会の渡辺でございます。日本医師会は、横倉義武元会長が中教審の委員として参加以来、中央教育審議会で継続して健康教育の重要性を指摘してまいっております。日本医師会には、学校保健委員会という会内委員会がありまして、日本医師会長から諮問を受けて2年に一度答申をしております。本日は、その資料としては提示することができませんでしたけれども、この会内委員会では、子供たちへの健康教育の重要性を長年議論し、提言をまとめております。令和4年の答申では、子供たちを取り巻く環境変化と新たな健康課題を示しております。
具体的には生活習慣、近視の児童生徒の増加、アレルギー疾患の増加、それから、いじめ、不登校、自殺、家庭環境、性の問題などであります。これまでの健康教育は、生涯にわたって健康な生活を送るために必要な資質・能力の育成を具現化するために行われてきておりますが、現状を鑑みれば、これらの課題に十分応え切れていないと思っております。
平成28年度の中央教育審議会の答申では、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の1つとして、健康・安全・食に関する力が示されています。健康教育は、教科横断的なテーマであり、特に健康に関する力の育成を目指すためには、例えば人体の構造や適切な栄養の摂取など各教科で取り扱う健康に関する内容について、関係性を強化しつつ、教育課程全体とのつながりの整理を行い、教科書間の相互の連携をしながら、その育成ができるようにすることが求められています。その中で、この保健体育という科は、中心的な位置を占めると考えております。
今後の協議におきましては、先ほど森委員もおっしゃいましたけれども、現代的な課題とは何かを整理し、現場に理解しやすい学習指導要領ができればよいと考えています。また、中央教育審議会の学校安全に関する委員会においても申し上げてまいっておりますが、健康、安全、食に関する力と単に知識を得、これまでに分かっている課題に対応するのでは十分ではないと思っております。植田委員もおっしゃいましたように、これまで経験されていない課題にもフレキシブルに対応できるレジリエンスを身につけることが真の力、能力と考えます。そのためには児童生徒自身で現状を分析し、自身が解決策を考える学習も必要と思っております。
現在、教育課程企画特別部会で議論されている学習指導要領改訂の論点整理に示されている深い学びの実装が具現化できる内容となることを希望しております。児童生徒が自らの健康を把握するためには、学校健康診断の結果を利活用することが望ましいと思います。そのためには厚生労働省が進めているパーソナルヘルスレコードを整備し、マイナポータルによる自己管理能力を身につけることが必要と思います。学校医の立場から、児童生徒が学習をしっかりと行う基盤として、運動と健康管理は極めて重要と思います。教育課程特別部会で示された授業時数の適正化が、一部の授業に偏ることなく、小中高全てにおいて体育と保健の授業が現状から減ることのない制度設計をしていただきたいと思っております。
最後に、私は臨床医であることから、視点がどうしても各論に向きがちであります。本日は、森委員のように各論を話すことはできませんでしたけれども、今後は細かな課題を指摘するかもしれませんけれども、委員の皆様と協議することにより、適正なゴールを探っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございました。
渡邉正樹委員、お願いします。
【渡邉(正)委員】 渡邉正樹です。前回に引き続き、ワーキングに参加させていただきます。私からは2点ほどお話ししたいのですけれども、1点は、保健の見方、考え方についてです。保健の見方、考え方、中核的な概念の検討というのは、今回、挙がっているわけですけれども、現在の保健の見方、考え方の中に大事な内容として、情報という言葉があるんですね。情報というのは、保健の中で扱うということになりますと、これが他の委員の方のお話にありましたけれども、ヘルスリテラシーの考え方を取り入れていくということだと思います。ヘルスリテラシーが実際に今、現行の学習指導要領だと高校の最後の内容のまとまりの健康を支える環境づくりのところに位置づいております。ただ、ヘルスリテラシー自体は、従来の研究ではヘルスプロモーションのインパクト指標として取り上げられていますので、そう考えるとやはりヘルスプロモーション同様に重要な概念として学習内容の最初の方に示していくことが必要ではないかなと考えます。
もう一つが、リスクの考え方なのですが、これは私の資料を出させていただきますが、リスクといいますと、例えば防災教育などではハザードとリスクという考え方がよくあるのですけれども、現行の学習指導要領では例えば感染症などの中でもリスクは位置づいています。要するに感染症そのものはハザードなのだけれども、それが自分自身に、そういう病気になる可能性を考えると、リスクの概念って非常に重要なんですね。ですので、この考え方は汎用性のある概念なので、今後も取り入れていただくという形で、もっとよりよくしていくと考えていきたいと思っております。
2点目は、現代的な課題ということになるのですが、全部取り上げられないので、安全に係る部分だけをお見せしたいと思います。この安全に関わる、前回、前々回の高校の学習指導要領なんですけれども、前々回までは安全というと、交通安全と応急手当だったんですね。応急手当は内容こそ、どんどん新しくなってきますけれども、同じように位置づいています。ところが、交通安全は、前回の指導要領では少し薄まってきて、現行の指導要領ですと、もう安全な社会生活の中の一部分として位置づくようになりました。これは交通事故の死者数が一番多かった1970年から比べますと、現在は6分の1ぐらいまで減っています。となると、やはり相対的にほかの話題、特に最近ですと防災、防犯のことなどが増えてくるというのは当然かと思うんですね。
ですので、新しい現在の状況に合った内容というものをやっぱり加えていく必要はあるのですが、ただ、何でもいいというわけではなくて、体育・保健体育科で取り上げている安全の課題というのは、けがの防止、傷害の防止ですから、例えば窃盗に遭うとか、そういうようなことというのは、安全の課題ではあるんですけれども、体育科、保健体育科で扱うような内容ではないですよね。そうすると、やはりこの心身に直接危害が加わるような、そういった問題を精選していく必要があるのではないかと思います。その中で今日、スポーツ庁からの資料の中にも書かれていたこと、性暴力の話がありました。これは今、見ていただいているのは、ここ10年ぐらいの未成年者の性犯罪被害ですけれども、横ばいで、令和5年は少し増えています。これは刑法改正に関係しているんですけれども、性犯罪に遭う年齢というのが中学生以下であることが多いのが明らかになっています。右側はよくあるSNSで裸の写真を送らせようとする犯罪被害ですけれども、小学生が増えているんですね。
そういうことを考えますと、やはりどこかでこういったものを指導していかなければいけない。また、性被害に遭ったということを認識するまでに非常に時間がかかるという報告もあります。その中で今、国は骨太の方針の中でも入っているんですけれども、こういった性犯罪、性暴力対策というのが進められている中で、この中の5番目に教育啓発活動として生命の安全教育というのがもう始まっています。これはどこでやるかという問題があって、実際の事例集を見ると特活だったりすることもあるのですけれども、教科でやっぱり体育科・保健体育科の発展的内容として入ってきています。ただ、今のところ学習指導要領の中に位置づいていないものですから、実施状況というのがあんまりよくないということもあるんですね。もちろん、これは全部、体育科・保健体育科が引き受ける内容ではないですけれども、どういうところでこういったものが扱われるかということについては、現在的課題の中の1つとして検討していただければと思います。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
会議終了予定の残り時間が少なくなってきましたが、最後に私から学習指導要領の改訂に向けて、少し考えていることをお話させていただこうと思います。
次のスライドをお願いします。スライドには体育科の教科内容と書きましたが、教育課程と読み替えてもいいかも分かりません。私の専門領域である体育だけのお話になります。右側のボックスを御覧いただければと思います。これは体育科を取り巻く時代背景や当該の社会的な要請が大きく教科内容、教育課程の決定に影響するということでもあります。また、時代や社会状況を基に体育が何をすべきかの、まずグランドデザインが描かれる必要があると思っています。
他方で、国の政策、あるいは関連法令との関係も問われなければなりません。同時に世界の先進諸国のものに比べて、レベルの点で遜色がないようにすることも極めて大切な点です。真ん中のボックスには運動やスポーツの特徴が書かれていますが、これも教科内容、教育課程の決定に大きな影響力を持っています。運動やスポーツなら何でもいいというわけではありません。教育的な視点からルールを改変したり、発達段階によって競争性を弱めたりとフィルターにかけられて教科内容になっていきます。今回の改訂では、これまでにないスポーツの多様化を考えていく必要があると思っています。また、左側のボックスには、学習者の様々な発達課題が考慮されなければならないことを示しています。学習者の発達課題に応じて学ぶべき内容は、体育科教育学やスポーツ教育学の研究成果に依拠しています。
次、お願いします。次に先ほどのボックスで言えば右側に位置する体育を取り巻く時代的な、社会的な状況についてどう考えるべきかについてお話をしたいと思います。現在という社会は、急速な社会変化に伴って様々な課題が生まれてきているように思います。急激なデジタル化、人口減少、地域の衰退、社会の分断などによって未来への不安が人々を覆っているようにも思えてなりません。こういった社会的な課題に影響されて、子供たちにとっての身体性の希薄化、集団活動の困難性、運動習慣の二極化や体力低下といった体育的課題も生まれているように思います。他方で、定住外国人の子弟や様々な障害を持つ子供への適切な配慮を通して、体育から共生社会をどう実現するのかも問われていると思います。
次、お願いします。私自身は、こういった課題を前にして、何よりも体育の再構築が必要ではないかと感じています。再構築の戦略的な基盤には、主体的に学び続ける力や対話と共創の力の育成が位置づくべきだと考えています。加えて、テクノロジーを通して個人の可能性を拓く力を育成すること、ウェルビーイングの醸成、そして2040年代を見据えながら、グローバルスタンダードに立つ日本の体育の構築が必要だと思っています。
次のスライドをお願いします。スライド2では体育の再構築のための戦略的な視点を仮に6つ挙げてみました。1つ目は身体性の再構築という視点です。身体を通じた学びの意味を再考する必要があると思っています。2つ目は、多様性の包摂という視点です。これは今まで議論に出ていました文化的背景や障害、能力差を尊重した体育を描いていく必要があります。具体的には身体的な障害の有無だけではなくて、自閉症やADHD、LDなどの子供を包摂する体育を実践していくことも大切だと思っています。3つ目は、個別最適化と協働性という視点です。例えば個別最適の学びと協働的な学びを体育の探究型授業で可能とさせるような授業構想がこれから一層求められていくと思っています。
次、お願いします。4つ目は、先ほど来少し中村委員からお話がありましたが、地域連携型体育という視点です。部活の地域展開と連動して地域資源を活用する体育授業の在り方が模索されていく必要があってもいいのではないかと思っています。5つ目は、保健との統合という視点です。現代的な課題を克服する上からも、健康、安全を含む体育と保健との統合的な学習ももっと模索されるべきではないかと思っています。6つ目は、探究的な学びの視点です。主体的・対話的で深い学びを実現するために必要な視点です。これらの戦略的視点に立って体育授業の再構築が必要だと思っています。
次、スライド、お願いします。生成型AIの非常に大きな影響があって、これが知的活動を担う時代であるからこそ、体育は身体を通じた人間性の回復、あるいは社会性の育成、そして自己理解の深化という、そういった非認知的能力やメタ認知が体育という場で再構築されるべきだと思っています。こういった事柄は、ある意味では体育の中核的な概念の一端を担うとも言えるように思っています。中教審特別部会の論点整理の提案を体育で引き寄せれば、今までお話をしてきたこととも関連させれば、スライドにお示ししたような体育における探究的・協働的活動の強化、体育授業における共生への配慮、地域連携・教員の負担軽減・柔軟な授業設計などが求められるように思います。
最後になりますが、もっと自由で、もっと楽しい体育の創造が何よりも求められるように思います。そのためには見やすくて分かりやすい、そして使いやすい要領が必要だと思っています。こういった観点から、ワーキンググループで皆さんとともに考えていければというふうにも思っています。
今日は、進行の不手際で時間配分がうまくいかず、おわびいたします。限られた時間ではありましたけれども、学会でも実はこれほど一時に大勢が発表することは、ほとんどありません。学会発表以上に内容豊かなものであったと思っていますし、示唆に富んだ発表だったと思っています。まさに今後の議論の礎になっていく御発表ばかりだったかと感じています。
なお、今回、御欠席の大日方委員につきましては、次回のワーキングの際に御発表いただくことになっております。
それでは、本日の議事は以上としたいと思います。次回の予定について、事務局よりお願いいたします。
【赤間企画調整室室長】 次回は10月27日の月曜日、16時から18時を予定しておりますけれども、正式には後日、御連絡をさせていただきます。
【友添主査】 5分の超過でもって、以上をもちまして第1回体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを閉会したいと思います。今後は闊達な御議論を、ネットを通してではありますけれども、よろしくお願いいたします。これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――