令和7年10月27日(月曜日)16時00分~18時30分
ウェブ会議と対面による会議を組み合わせた方式
【友添主査】
定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを開催いたします。
主査の友添でございます。皆様、今日もよろしくお願いいたします。
では、初めに、事務局より開催方式について御説明をお願いします。
【赤間企画調整室長】 事務局のスポーツ庁政策課、赤間でございます。よろしくお願いいたします。
本日のワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただくようにお願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございました。
今日の議題ですが、お手元の次第4にありますように、4つを予定しております。議題1は、体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループにおける検討事項についてですが、前回に続きまして、体育・保健体育に関する問題意識について、大日方委員から御発表をいただきます。
議題2は、今後の議論の進め方についてです。これは後ほど事務局より御説明をいただきます。
議題3は、前回のワーキンググループでの各委員の御発表を踏まえ、事務局でおまとめをいただきました体育・保健体育等を学ぶ意義・価値等について、御意見をいただければと思います。
議題4は、学びに向かう力、人間性等についてです。佐藤豊委員、岡出委員から御発表をいただく予定です。その後、意見交換をいただければと思います。
それでは、早速、議題1に入ります。大日方委員より、体育・保健体育に関する問題意識等について、御発表をお願いします。よろしくお願いします。
【大日方委員】 皆様、こんにちは。大日方邦子です。前回出席できなくて、大変失礼いたしました。よろしくお願いいたします。
私は、パラリンピックのアルペンスキーの元選手をしておりまして、小さいときの事故によりまして、いわゆる障害がある子供として教育を受けてきた、そういった経験があります。
この委員会では、パラリンピックでの経験だけではなく、自身が教育を受けてきた経験や、スポーツ基本計画、友添先生と一緒に策定してまいりましたけれども、そういった経験でありますとか、地元の渋谷で2017年から続けている教育委員、それから、部活動の地域移行に関わっている、そういった経験からお話をさせていただきたいというふうに思っております。
右下にありますが、渋谷はかなり新しいことに取り組もうとしておりまして、探究の学習、未来の学校づくりでありますとか、探究シブヤ未来科という、授業時間の特例制度を活用した探究時間というようなことを設けていたり、デジタルコミュニケーションツールを活用した対話的な学びであるとか、教員の働き方改革の推進、そういったこともやっております。
また、渋谷では、部活動の地域移行を進めておりまして、子供の数が集まらないとできないようなサッカーであるとか、新しいスポーツ、ストリートスポーツとかフェンシング、それから、パラスポーツの一つであるボッチャ、そういったものの部活動なども行っております。
次お願いします。その中で、課題意識として6点挙げさせていただきました。1つは、学校における運動・スポーツの学びの本質は何だろうかということ、こちらをしっかりと第3期のスポーツ基本計画の中で明確にされている、スポーツの価値を体験できる、そういった学びであってほしいなというように考えております。何よりも子供たちに自身の生活と人生と社会を豊かにする資質、そういったものを獲得していただきたいなというふうに思っております。子供たちがなぜ保健体育を学ぶ、その必要があるのか、その意義はどこにあるのかということを、学びの中で段階的に理解できる、そんなカリキュラムをつくっていければいいなというふうに思っております。
次、お願いします。その中で最も大切なことは、運動への苦手意識をつくらないことだというふうに思っております。今回の指導要領の改訂の大切な視点として挙げられている、得意を伸ばす、この裏返しにもあることではないかというふうに思っております。運動能力の高い、100メートルを速く走れる子供が偉くて、それよりも遅い自分は駄目な人だ、そのような意識を子供が持たないためには、大人のマインドセットが必要だというふうに思っております。
特に新しい評価、評定を考える上で我々が考えなければいけないのは、障害のある子供や運動が不得意な子供たち、そういった子が、頑張っても報われない、諦めてしまう、苦手である、そういったことをやらないような、そういったことをつくらない、そこが重要ではないかなというふうに思っています。
私自身も、進学では、実は体育の成績の評価に非常に苦労したんですけれども、運動自身は嫌いではなかったということで、パラリンピックへの道が開けたというふうに思っております。
そして、次、お願いします。3点目になります。それでは、体育における基礎基本といったところは何なのかといったところ、個別の競技に関する動作やスキルの取得というのは、むしろ少なくてもいいのではないかといったようなことを思い切って議論してみること、それが重要ではないかなというふうに思っています。
例えば、学びの多様化をもっと自由にして、ボッチャとか、バーチャルスポーツ、eスポーツ、あるいは地域との多世代・多文化の交流、そういったことも体育の授業の中でできる、そのような取組というのはいかがかなというふうに思っております。
また、「する」に偏らず、「見る」や「支える」視点での学びの充実も大切だと思います。他方で、第3期のスポーツ基本計画の中に明確な目標設定をしておりますけれども、参加を希望しているのにもかかわらず、見学だけになってしまう、そういった障害のある子供をなくすといったこと、こちらもとても大切なことで、発達障害も含めて、障害のあるお子さんが増えている中で、体育分野における特別支援教育との連携も重要というふうに考えております。
次お願いします。4点目は、体育・保健体育といったような分野は、非常に教科横断的な視点での学び、探究学習には実は適しているということをぜひ伝えたいというふうに思っております。スポーツデータの活用等は、理数教育にも生かされます。また、自身も含めて、パラリンピック・オリンピックで活躍する選手、英語でのコミュニケーションがいかにスポーツを通じるとしやすいかということ、多くのアスリートが学んでいることだと思います。
また、社会参画や主体性の獲得のためには、例えば、みんなで楽しめるスポーツのルールをつくろうとか、どうやってつくるとみんなが楽しめるのか、こういったことは渋谷の体育の授業などでも多く取り入れられているというように聞いております。
5つ目です。教師に求められる資質・役割といったものは、教えるということから脱却していく、そういったことが必要で、むしろファシリテーターやコーディネーター的な資質が必要な時代が来ているというふうに考えています。その中では、やはり教員自身が学び方、教え方、伝え方を探究する、そういった時間が必要だというように考えます。
そして最後、保健と安全に関する現代課題につきまして、4点を挙げさせていただきました。1つ目は、昨日のNHKスペシャルでも、子供を狙った性加害の問題、実は加害が子供にも拡大しているという、そういった問題が指摘されておりました。
また、認知症については、65歳以上の人口が既に30%以上、その中での認知症の発症率が12%、65歳以上に関してはあるということで、子供が大人になる頃には、大変身近な問題であり、社会問題、社会課題としてしっかりと学ぶこと、これも大切ではないかということ。
そして3つ目、スクリーンタイムの増加による影響と、どうすればそれを健康影響を最小限にできるのかといったようなこと、こういったことでありますとか、電動キックボード等が普及する中での、やはりヘルメットを着用することで頭部外傷のリスクを減らせる。こういったことについても伝えていく必要があるのではないかというふうに考えております。
雑駁ではございますが、私の課題意識をお話しさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
【友添主査】 大日方委員、ありがとうございました。大日方さんらしい、深い体験に根差した貴重な御提言であるとお伺いしておりました。ありがとうございました。
さて、前回から今回にかけまして、委員全員から示唆に富んだ御発表をいただきました。今日の議題の3にもつながってまいりますが、このワーキングにおける議論の手がかりや、あるいは本質につながる重要な指摘が多くあったと感じております。皆様の御協力に改めて感謝申し上げます。
それでは、議題2に入ります。今後の議論の進め方につきまして、赤間室長より御説明をお願いします。
【赤間企画調整室長】 資料2に基づいて御説明をさせていただきます。
今後の議論の進め方に関しましては、全体の改訂の方向性、これは論点整理が9月に示されて、今、その議論に付随して、総則・評価特別部会のほうでも御議論が続いているというようなところ、そこを踏まえてワーキングのほうで検討していくという形になります。
今、右肩に総則・評価部会の特別部会の資料ということでお示しをさせていただいているものが現在の資料でございます。今回、改訂の方向性の一つの大きな柱であります、深い学びの実装という観点からの学習指導要領の目標、内容の構造化、あるいは表形式化、こういったものを通じて、分かりやすい学習指導要領を実現していくという方向性が示されているわけでございまして、それで、論点整理の中に示されている内容というものを具体に検討していくということでございますが、左側、これ、目標と、それから内容、今の学習指導要領の内容を、こういった形で表形式という形になってございますが、こういった形で示していった場合に、それぞれ検討項目が右側に示されているというところでございます。
今後の議論との関連性でいきますと、上の部分の目標、特に丸1、丸2、見方・考え方、それから学びに向かう力・人間性等、ここの部分について集中的な議論が必要になってくると考えてございますので、その部分について御説明させていただきます。
次のページをお願いいたします。見方・考え方、こちらも総則・評価部会での資料を参考に提示させていただいてございます。左側が、見方・考え方を含む目標の柱書きの示し方ということで、現在の示し方、これは中学校国語の例が挙げられているわけですけれども、学習指導要領の中学校国語の教科としての目標の中に、何々の見方・考え方を働かせということで、かくかくしかじかの資質・能力を育成することを目指すと。いわゆる見方・考え方の具体の内実の部分、ここに関しては、現行学習指導要領の解説、こちらを見ることによって、初めて内容が具体的に明らかになるというような形になってございます。
今回、論点整理の中で示されていることに関しては、この見方・考え方を、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核に焦点化をしていくということ、また、解説ではなく、学習指導要領本体に位置づけるという方向性が示されているという点がございます。
それから、この資質・能力の育成を導くといった観点だけではなくて、よりよい社会や幸福な人生につなげるものというふうな位置づけで、学校教育のみならず、その後の人生でも、こういったものを豊かに働くことを視野に入れているというようなところでございます。
そういったところを踏まえて、右側、具体的に各教科の中でどういうふうなイメージで検討していくかというところを御提示いただいておりますけれども、この目標と、今、見方・考え方の欄が別になってございます。現行の目標の中には見方・考え方があるわけですけれども、その具体の内実を目標の中にさらに入れていくという形になりますと、目標自体が全体として冗長になっていくということもございますので、この見方・考え方を目標の直下にお示しするという形で整理をしてはどうかということが提案されてございます。
それから、この見方・考え方に含める要素といたしましては、その下にございますような内容を含めるというようなこと、それから、留意事項としては、できるだけ現在よりも端的な表現で、かつ、経験の浅い教師が読んでも分かりやすいような表現というようなことが留意事項として示されてございます。
次のページをお願いいたします。学びに向かう力・人間性等についての議論でございますけれども、左側、論点整理で示された方向性、こちらはいわゆる学びに向かう力・人間性等につきまして、主要な要素や要素間の関係を構造化して分かりやすく示すといった観点から、資料の中ほどにございますけれども、4つの要素によって整理をするという方向性が示されたところでございます。
また、よりよい知の獲得に向けた力としてのみ捉えるのではなくて、人生や社会に向かう際の情意、あるいは感性に係る側面も重視すべきであるというような御議論があったと理解してございます。
また、下に行きますと、学習評価との関係なども記載をされておりますけれども、一番下のポツ、学びに向かう力・人間性等につきましては、学習指導要領の内容に原則として記載がなく、学習評価に当たっては、教科等の目標も踏まえて行うということになるため、そうした点も踏まえた目標の書きぶりが重要であるということ。
また、米印のところには、各教科において育成する学び向かう力・人間性というものは、個別の学習内容に応じて異なることが想定されにくいということから、原則として、各教科等の目標水準のみで記載をされているということが記載をされております。
原則として、とありますが、体育の運動領域につきましては、各教科、あるいは保健と違う形でありまして、学びに向かう力・人間性等につきましては、目標に加えて指導内容としても位置づけがある、愛好的な態度であるとか、公正、協力、責任、参画等、そういった指導内容として具体的な内容が示されているといったところが違ったところというところでございます。
その上で2ポツ、右側でございますけれども、この学びに向かう力・人間性等をこの4つの要素で整理をしていくということになりますが、この要素を個別に一つ一つ盛り込んでいこうとすると、やはり目標としても、先ほどと同様、冗長になっていくということもございますので、大きく分けて2つの要素でバランスよく含めるということにしてはどうかということでございます。
この丸1と丸2でございますけれども、こちら、左の表の下3つ、それから上の1つの丸、これとほぼ対応しているという形になってございます。丸1が、当該教科等の学習で育みたい学びや生活に向かう態度という部分、それから、丸2が、当該教科等の学習で育みたい情意や感性、こういったものを示した内容、これらをバランスよく含めるということで検討してはどうかという御提案をいただいてございます。
次のページをお願いいたします。こちらは、学びに向かう力・人間性等の資質・能力の柱に対応する、いわゆる学習評価の観点としまして、主体的に学習に取り組む態度の評価というものがあるわけですが、これが今回の論点整理の中では、改善の方向性というものが示されているというところでございます。
現行は、学習指導要領の目標に、学びに向かう力や人間性等というものが提示をされていて、それに対する評価の観点というものがあると。これらを目標準拠評価をする際に、学習の自己調整、それから粘り強さという2側面で評価をしていくというような形になっているわけでございますけれども、この目標準拠評価として、この両方の考え方を整合的に理解をしながら評価基準を設定することに関しては、現場の先生方にとってもいろいろ難しい側面があると。
あるいは、やはり客観的な評価というところを目指していくという形になりますと、どうしても形式的な勤勉さばかりが強調されるような実態も生じているというところ、こういったところを踏まえて、改善イメージが下に示されてございますが、あらかじめこの4つの要素で学びに向かう力や人間性等というものを整理し、これを学習指導要領の目標に適切に反映をした上で、先ほど申し上げたような課題に対応するという観点から、目標を踏まえた教科等を横断した個人内評価で見取るというような整理としてはどうかというような御提案をいただいているというところでございます。
次のページをお願いいたします。それを新たな観点別評価の方向性イメージということで、新旧という形でお示しをしているものでございますが、従来は、感性、思いやりなど、こういったものについては個人内評価としつつ、主体的に学習に取り組む態度というものは目標準拠評価をし、それを評定に結びつけるということをやっていたわけですけれども、新たな整理の中では、この学びに向かう力・人間性等、これを全体として個人内評価として見取り、評定はしないというような形で、観点としては残るわけですが、評定に結びつけない個人内評価で見取るというような整理がなされております。
7ページ目をお願いいたします。そういった上で、今後のスケジュールでございますけれども、具体的には、このワーキングと総則・評価特別部会との間でキャッチボールしながら物事を進めていくと御理解いただければと思います。
(1)のところ、ここが目下、ワーキングで進めていく部分でありますけれども、1月中を目途という形になってございますが、目標、それから見方・考え方、それから、高次の資質・能力、これは従来まで中核的な概念等というふうに言っていたものでございますけども、こういった高次の資質・能力全体を整理し、たたき台としてワーキングとして整理をするという作業を進めていく必要がございます。
それを踏まえて、2月中目途とございますけれども、総則・評価特別部会、それから企画特別部会において、全体の御議論の中で必要な部分に関してはフィードバックをいただきながら議論を進めていくと。
また、(3)(4)についても同じような形で、今度、高次の資質・能力の精査というような議論の部分でのキャッチボールを進めていきながら、最終的には(5)のところでございますけれども、ワーキング、それから全体としての議論の取りまとめというところに運んでいくというところでございます。
8ページ目をお願いいたします。こういった全体の進め方を踏まえまして、本日は、第2回というところの上から3つ目の丸のところ、体育・保健体育を学ぶ意義・価値等というふうに示してございますけれども、先生方から前回いただいた様々な御意見を踏まえて、この意義とか価値を整理させていただき、次回の議論になると思いますが、この見方・考え方の議論につなげていくというようなことを考えてございます。
それから、4つ目の丸につきましては、先ほど体育の運動領域の特殊性の部分がございますけれども、そういったところを踏まえて、学びに向かう力、人間性等について、佐藤豊委員、それから岡出委員から御発表いただくというような形で、今後順次議論を進めていきたいと考えてございます。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
駆け足ではありましたけれども、よく理解していただけたかと思います。総則は、学習指導要領の構造を規定する重要なところで、そこの部会からの御提案をいただいているということでもあります。後で御議論いただきますが、体育にとっては少し悩ましい提案も含まれていますので、この点も含んで御議論いただければと思います。
ただし、本ワーキングとしては、中教審全体の議論も踏まえながら、このワーキングとしての検討を重ねて、計画的に進めていく必要があると感じています。委員の皆様には、引き続きの御協力を願いいたします。
それでは、議題の3に入ります。前回の会議での議論の御発表を踏まえ、事務局で体育・保健体育等を学ぶ意義・価値等のイメージをまとめていただきました。
今後、先ほど御発表いただきました大日方委員の内容も踏まえて、さらにブラッシュアップしていく必要があるかと思っておりますが、まずは資料3について、赤間室長から御説明をお願いいたします。
【赤間企画調整室長】 それでは、資料の3について御説明させていただきます。
こちらについては、前回のワーキングにおきまして、各委員から御発表いただきました内容について取りまとめさせていただいたものでございます。問題意識、課題意識等々、御発言いただいた内容を整理させていただいております。
大きく分けて、社会の状況に関すること、児童生徒に関すること、それから教育課程・指導体制に関することということで整理をさせていただいております。それぞれの内容について御説明させていただくのは、時間の関係で割愛させていただきたいと思っておりますが、全体としては、青い丸、それから赤い丸、緑の丸で表現しているもの、青い丸につきましては、教科全体の内容に関わるもの、赤い丸につきましては、体育科のいわゆる運動領域に関連する内容、緑の内容につきましては、保健や安全に関連する内容ということでいただいた貴重な御意見を整理させていただいたものでございます。
次のページをお願いいたします。いただいた御意見を踏まえて、事務局のほうで、学校で体育や保健体育等を学ぶ本質的な意義というのはどういったものなのか、あるいは、そういったものを踏まえて、幸福な人生、あるいはよりよい社会につなげていくといった際に、どういったものをイメージするのかというところを整理させていただいたものでございます。
左側に縦に伸びている絵がありますけれども、こちらはこれまでの論点整理等々の中で示されているイメージ図、いわゆる主体的・対話的で深い学びを通じて資質・能力が身についていく、その学ぶ過程で見方・考え方というものが徐々に育成をされていく、そして、よりよい社会や幸福な人生につなげていけるというような、イメージがあるわけですけれども、それに則した形で本質的な意義というものを整理させていただいております。
体育に関しては、いわゆる運動学習という独特の学習方法の中で、非認知能力等々を含めました、身体的・社会的・情意的スキルを育成するとか、あるいは、運動・スポーツとの多様な関わりを保証する、そして、知・徳・体のバランスを支える不可欠な学びであるということ、それから、AI、こういったものが知的活動を担う時代において、身体を通じた人間性の回復であるとか、社会性の育成であるとか、あるいは自己理解の深化、そういった場としての意義や価値を有するのではないかといった点。
それから、多様性の包摂、そういった観点から、自らの豊かなスポーツライフを舵取りする力、あるいは、スポーツを通じた共生社会の創り手の育成、こういった両方を目指すような視点というところでございます。
それから、保健・安全に関連いたしましては、学齢期の健康や安全に関する課題の克服や、リスクの軽減に資するといった部分、それから、生涯を通じて身体的・精神的・社会的によい状態で豊かな生活を送る上での基礎を培う役割があるというところ、それから、学校という場、この場は、発達段階を踏まえつつ、保健について計画的、系統的に学ぶことのできる最適な場所であるというふうに考えられるということ。
また、知識の集積にとどまらない健康に関する原則・概念、こういったものを習得することにより、健康に関わる自己決定能力を育むと。それによって、未知の健康課題にも対応できるレジリエンスを含むコンピテンシー、こういったものを身につけていくことができる。
また、学習内容、こういったものを日常生活で行動化する実践力、こういったものを身につけることによりまして、現代的課題を含めた様々な課題に対応できるということ、そして、保健・安全に関するよりよい社会を含む環境の創造に主体的に参画する力、こういったものを育てることにつながる。こういったことを本質的意義として位置付けてございます。
その上で、幸福な人生、それからよりよい社会というところで幾つか示させていただいてございますが、個人のウェルビーイング、あるいは社会全体のウェルビーイングというところを表現した部分が1つ目の丸、それから、運動・スポーツに関連するところといたしまして、「する、みる、支える」、それから、今回の改正スポーツ基本法の中では「集まる」とか「つながる」といった表現も出てきておりますけれども、そういったものを通じて、生涯にわたるスポーツライフの実現、あるいは、自他が安全で安心し、健康を保持増進していくというような人生、こういったものが挙げられるのではないか。
また、右側に行きますと、運動・スポーツを通じた地域・経済の活性化であるとか、人々の豊かなつながり、あるいは新たな価値創造の実現であるとか、また、健康で安全でレジリエンスを備えた豊かな人生を送ることができる社会を含む環境づくり、こういった部分での様々な担い手が主体的に参画する社会、こういったものが想定されるのではないかということでございます。
事務局のほうで作成をさせていただいた案でございます。先生方の御議論をいただいて、ブラッシュアップできればというふうに思ってございます。
事務局からは以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
大変な作業だったかと思います。今後、このワーキングにおいても、教科の目標、あるいは見方・考え方など、極めて重要になる部分について議論を進めていくことになりますが、今後の本ワーキングの審議の方向と大いに関係する内容であると思います。つまり、体育とか保健体育の本質とは何かとか、あるいは、体育・保健体育とは何のために存在する教科なのかと。こういった本質的なところの議論とも大いに関わってくるところでもあると思います。
それでは、ここで25分程度時間を取って、資料3の体育・保健体育等を学ぶ意義・価値等について、意見交換を行ってまいりたいと思います。
問題意識を含んで、どの部分、どの文節からでも結構ですので、御意見等がある方は挙手ボタンを押していただければと思います。いかがでしょうか。多くの委員の方々に御発表いただきたいと思っていますので、コンパクトに御協力をいただければありがたいです。
それでは、よろしくお願いいたします。どなたかいらっしゃいますでしょうか。
渡辺弘司委員、よろしくお願いします。
【渡辺(弘)委員】 日本医師会の渡辺でございます。座長がおっしゃられたので、簡潔に意見を述べさせていただきたいと思います。
資料3の2ページのところで、私はやはり学校医でございましたので、どうしても保健・安全という観点からの意見になりますけど、青ポツの下から2番目、「知識の集積に止まらない」という文章でございます。あの点に関しまして、私としては、この考えをできれば進めていただきたいというふうに思っておりますし、私は体育のほうは専門ではございませんけれども、できれば、体育を行うことに関しても、例えば、スポーツのスキルを学ぶだけではなくて、やはり先ほど大日方委員もおっしゃられたように、体育を行うことということが、自分で考えて、どういうような体の動かし方をするかとか、そのような自ら考えて自らが何か新しいものを生み出す能力というのをできれば身につけていただきたいというふうに思うわけです。
きっと保健の2番のレジリエンスとコンピテンシーという意味が、体育を御専門の先生方に分かりにくいかもしれませんけれども、じゃ、具体的に学校でどういうことをすればそういうことができるかというと、私の考え方では、これを学校で実践する場合は、学校における、例えば、健康診断の結果などを本人に見せて、自らがその課題を考え、睡眠とか食生活とか運動などをどうすれば有効な結果が出るかというようなことを自ら考えて、自らの健康にどう生かすか。その結果というのは、アウトカムとして、身長・体重成長曲線というような形で表に出ますので、結果をフィードバックできるんじゃないかと。それによって、自ら考える力が養えるのではないかと。これはほかの教科とか、先ほど申し上げた体育にも生かしていけるんじゃないかなというふうに考えました。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。貴重な御提言だと思います。レジリエンスもコンピテンシーも、体育にとっても重要なキーワードでもありますし、保健と体育の言わば融合をどのような形で進めていくのかということを考えていく上で、非常に貴重な御提案をいただいたかと思います。
ほかにいらっしゃいますでしょうか。挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、私のほうからまずは御指名をさせていただこうと思います。
細川江利子委員、いかがでしょうか。
【細川委員】 御指名いただき、ありがとうございます。
まず、皆様には、このように本当にとても丁寧に、とても簡潔にまとめてくださって、ありがとうございます。全て納得のいく内容であったかなと思います。
私は、今やっぱり国が目指しているウェルビーイング、また、共生社会の実現ということを考えますと、この体育のほうですと、下の2つが特に重要な点かなというふうに考えているところです。
やはり今、SNS等の普及等で、子供が自分の実態をつかめていないというか、生身の自分を感じることができていない、あるいはコミュニケーションが取れないといったようなことを考えたときに、体を通じたコミュニケーションですとか、自分の存在の実感を得ることとか、そういった点で非常に体育は重要でありますし、また、社会性を育成していくこと、また、他者を認めることで自分の存在も認めるということ、そういった点についても、体育が担うべき重要なところかなと思っております。それが実際に共生社会の創り手、担い手づくりにつながればというふうに願っているところです。
現在の考えとしては以上です。よろしくお願いします。
【友添主査】 ありがとうございました。今こそ身体性の復権ということかとお伺いしました。ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。全然遠慮なさらずに、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
今、金岡先生が200メートル越しに見えました。金岡委員、どうでしょうか。
【金岡委員】 御指名ありがとうございます。正直、この議論にはあまり慣れておりませんで、私自身の背景は、医師として壊れたものを直すというか、そういうふうな環境におりまして、子供たちの教育について、正直、今お話しいただいた中でどうもうまく理解できないところとかがありまして、例えば、具体的に、学校における学びで保健体育における知識及び技能に関する統合的な理解、思考力、判断力、表現力等、それらというのは何を通して身につけていく。授業なんでしょうか。それとも、体育で動いてということなんでしょうか。ちょっとその辺りが、すみません、うまく理解できておりませんで。友添先生、教えてください。
【友添主査】 いえいえ、ありがとうございます。金岡先生に腰痛を直していただいた1人でもあるのですが、専門領域が異なると用語や認識を共有化して相互に理解するというのは、なかなか難しいところではあるのですが、これらは体育の授業で展開していく学習の内容を示しています。そして、子供に育ってほしい資質・能力は何かといった大きな枠組みを示しているとお考えいただければと思います。また個人的にお話させていただきますので、またそのときはよろしくお願いします。
【金岡委員】 お願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございました。
いかがでしょうか。御意見いただければありがたいんですけれども。
岡出先生、よろしくお願いします。
【岡出委員】 時間がもったいないかなと思って。今、見せていただいた資料のところの一番上のところ、幸福な人生とよりよい社会と、横に2つ並んでいますよね。これですね。幸福な人生とよりよい社会、この2つはどういう関係に置かれるというふうに理解したらよろしいでしょうか。体育・保健体育を学ぶことによって、よりよい社会を実現していく中で、幸福な人生が送れるようになりますよねというふうな話だと、多分、横ではなくて縦になるような気もしていて、そういうふうに理解していいかどうかという。いや、そうじゃないんですという。ここは多分そごがないようにしておいたほうがいいのかなというのは感じました。今のところで考えておられることをちょっとお伺いできればなと思います。
【友添主査】 ありがとうございます。
事務局のほう、いかがでしょうか。
【赤間企画調整室長】 私のほうでうまく正確に表現できるかというところはあるのですけれども、幸福な人生とかよりよい社会、これが縦関係という考え方もあり得るとは思うんですけれども、大きく分けて考えるのであれば、例えば、幸福な人生というのはある種、個人に着目をした考え方、個人としての人生というものを豊かにしていくという意味での捉え方なのかなと。
それから、よりよい社会というのは、やはり社会全体に参画をしていく。寄与していく。運動・スポーツを通じて、あるいは保健の学習を通じて、そういったものに寄与していくという視点ということですので、大きく分けては、個人と社会全体に対してのアプローチといいますか、そういった部分の接点でこの2つが位置づけられているのかなと。
先生のおっしゃるとおり、縦関係になる瞬間も当然あるというふうには理解をしてございますけれども、大きな分け方としては、そのような観点で分けられているという認識をしてございます。
【岡出委員】 ありがとうございました。今お話ししたように、お互いのそごがないように確認をしていったほうがいいかなというふうに思ったというレベルでございます。ありがとうございました。
【友添主査】 よろしいですか。
植田主査代理、お願いします。
【植田主査代理】 ありがとうございます。保健・安全に関係してになります。これは、幸福な人生の最後に入れていいのか、それとも、下にあります保健・安全のところに入れていいのかということをちょっと迷うのですが、やはり新型コロナウイルス禍のときに我々は様々な経験をしたわけですけれども、特に健康に関わる情報、こういったものを取捨選択する能力、それをヘルスリテラシーというふうに定義する方もいれば、もう少し広く定義する方もいるのですが、いずれにせよ、そういった健康の情報を自ら取捨選択するような、そういった力というのがこの教科には求められるのではないかと思います。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
ほかに御意見、御感想ございますでしょうか。
森委員、お願いします。
【森委員】 ありがとうございます。。用語についてですが、資料2では、「中核的な概念の深い理解」という言葉が使われていて、資料3では「学校における学び」「資質・能力が身に付く」の下の用語が、「知識及び技能に関する統合的な理解」と、「思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮」となっており、資料2と資料3とで若干用語が変わっているので、その辺についても教えていただけるとありがたいです。
【友添主査】 事務局のほう、いかがでしょうか。
【赤間企画調整室長】 これは、論点整理の全体の議論、9月にまとめられた論点整理の議論の中では、いわゆる「中核的な概念等」ということで、個別の知識及び技能、それから、個別の思考力、判断力、表現力等、そういったものを深めていく中で、中核的な概念等を抽出して、分かりやすい指導要領を実現していく、構造化をしていくというような議論の中で、「中核的な概念等」というふうな形でくくられていた文言でございます。その後の総則・評価特別部会、今並行して走ってございますけれども、総則・評価特別部会の中での御議論の中で、精査をされていまして、先ほど私のほうで御説明させていただきましたが、「高次の資質・能力」というような言葉、これも結局、資質・能力の中身としての整理ですので、今、この中核的概念等と従来言われていた、論点整理の中で言われたものが「高次の資質・能力」というふうに整理をされていると。
「高次の資質・能力」の内容、知識及び技能、それから思考力、判断力、表現力等、それらに該当する内容が、この緑色の丸の中に書かれている「知識及び技能に関する統合的な理解」であるとか、「思考力、判断力、表現力等の総合的な発揮」という文言で表現してはどうかという形で、最新の状況がこういった示し方になっているというところでございます。
【友添主査】 ありがとうございます。同時並行で総則部会も本ワーキングも走っていますので、言葉の概念、これからまだ多々変わっていく可能性もあるし、あるいはより洗練された言葉が生まれてくる可能性もありますので、ひとまず森委員、この辺りも今後の議論の課題になっていくかというふうに思うのですが、よろしいでしょうか。
【森委員】 ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございます。
続きまして、柏原委員、お願いします。その後、南委員、お願いします。柏原委員、どうぞお願いします。
【柏原(聖)委員】 ありがとうございました。丁寧な御説明をいただきましたので、大体の概要は理解したつもりですが、私も保健・安全を専門の立場から申し上げます。先ほどの図の保健・安全の丸ポツの2つ目ですが、ここは「知識の集積に止まらない健康に関する原則・概念を習得することにより」、その次ですが、「健康に関わる自己決定能力を育み」と表現されています。
これは、すべて自分で決めるという捉え方もできるように思います。「健康に関わる」が2つ並んでいるため、後述の「健康に関わる自己決定能力」は、生活の質の向上に向けた、あるいは向上を図るという将来的な方向性を示すことで、健康がウェルビーイングにつながることが分かる言葉が入ったほうが、自己決定能力の方向性がはっきりするのではないかと感じました。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございました。
続きまして、南委員、お願いします。
【南委員】 ありがとうございます。私のほうは、資料3の最後のページにありました右下の囲み、体育の記載に少し違和感があるなと思ったんですけれども、私、保健体育科の教員ですので、体育と保健が関連して学んでいくことが非常に重要だと考えていた中で、豊かなスポーツライフの実現が、スポーツを通した共生社会はもちろんのこと、「健康の保持増進と回復」という文字がないのが少し残念というか、違和感があるなというふうに思っていて、この辺り、当然それは入っていますよねということであれば問題ないんですけども、いかがでしょうか。
【友添主査】 事務局、いかがでしょうか。
【赤間企画調整室長】 ありがとうございます。便宜的に体育と保健・安全というのを分けておりますけれども、おっしゃるとおり、体育の領域、それから保健・安全の領域、そういった内容を相互に関連して学んでいくという中で健康を保持増進するという観点は当然ございますので、そういったところについては、先生の御指摘を踏まえて検討してまいりたいと思っております。ありがとうございます。
【南委員】 ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございます。
中村めぐみ委員、お願いします。
【中村委員】 ありがとうございます。みどりの学園義務教育学校教頭の中村でございます。本当に丁寧に説明いただきまして、私のような教頭であっても、すごく理解をするところです。まずは御礼申し上げます。
その中で、まだまだ理解が追いついてないところを御質問させていただきたいと思っております。私の学校は、デジタル学習基盤、生成AIなども使った教育方針を掲げている学校です。その中で、資料の中の体育の3ポツ目、AIが知的活動を担うようになるにつれて、人間にとって、体を通して考えたりという学びが不可欠になると私も考えておりまして、そういう分野において、身体知とAI知の対比による体育がこれから再定義されていくんだというような表現のところ、すごく私も理解するところです。
ただ、この「身体を通じた人間性の回復」という部分に関して、人間性、広くもちろん定義されているところだとは思うんですが、身体を通じて回復できる人間性というのは、どの部分のことを指し示しているのかなというのが、ちょっといまいち私のほうが思いを巡らすことができずに、もし可能であれば、教えていただきたい……。
【友添主査】 すみません。私が答えるべき筋ではないのかも分からないんですけれども、身体性というものをどういうふうに捉えるのかというのはこれからの議論かと思うのですが、例えば、心拍数が高まれば、苦しく感じたり、あるいは、鉄棒を回るときに、回転の中で自分の身体の存在を感じたり、あるいは、友達と汗をかいて、その汗が飛び散るような関係性、そういったことの経験というのはこれからますます少なくなっていくだろう。そういう意味でいうと、身体を通して、あるいはドイツの、これ、岡出先生が詳しいと思うのですが、身体の経験としての体育という授業が今後ますます一層重要になるだろうということで、身体ということに着目しながら、身体性を回復していくような体育の在り方、これは世界的にもこれから必須要件になってくるということで入れている。ただし、ここで議論を重ねていくべき内容だろうというふうに思っています。
まず、取りあえずよろしいでしょうか。
【中村委員】 もう1点だけ、申し訳ありません。実は保健・安全のところに書かれている2ポツ目のレジリエンスという部分なんですけれども、ここについては、保健・安全の分野におけるレジリエンスを言っているのか。どうしてもレジリエンスというのは、心理的レジリエンスであったり、身体的レジリエンスだったりという部分があるかと思うんですが、このレジリエンスというのはどこを指して、健康課題にも対応できるレジリエンスというのは、具体的にどのようなイメージを持たれての文章なのかというのを教えていただければと思います。
【友添主査】 実はこの概念も結構難しいんですね。保健と体育で違っていたりする場合もあり、体育の場合で言えば、学びに向かう力、態度のところに入ってくるような概念なんですね。
多分、事務局のほうでも、これについて、検討されていると思うのですが、赤間室長、いかがですか、この辺り。レジリエンスの概念について。
【赤間企画調整室長】 ありがとうございます。恐らく保健体育、それぞれあるんだと思いますが、今回ここに提示させていただいているのは、あくまで保健・安全というところをとらまえて書かせていただいておりますけれども、今回の学習指導要領全体の議論の中でも、個々の知識・技能、こういったものを活用しながら様々な課題に対応していくというようなことがあるわけですけれども、特に健康・安全の分野に関しては、こういった健康課題とか安全に関する課題に対して、未知の健康課題、安全の課題に対して柔軟に対応できるようなレジリエンス、柔軟性といいますか、あるいはしなやかさといいますか、そういったものを身につけるという意味で書かせていただいております。その具体の内実については、より先生方の御議論をいただきながらここを補強していく必要があるのかなと思ってございます。ありがとうございます。
【中村委員】 ありがとうございました。
【友添主査】 少し議論が駆け足になっていますが、またその辺りも詰めていくということで、ここで保健の専門家である植田先生、少し補足をお願いできますか。
【植田主査代理】 ありがとうございます。中村委員おっしゃるように、レジリエンスというのは、保健の分野では特に精神面に関係して使うということが多いと思うんですね。ただ、赤間室長もおっしゃっていたように、ここでの使い方というのは、そういったものももちろん含むとは考えられるのですけれども、レジリエントな、柔軟なというような、そういった意味で、そういう資質・能力を高めるというところでまずは押さえていくのがいいのかと思います。今後、その辺りも精査していかなければならないとは思います。
以上です。
【友添主査】 中村先生、よろしいでしょうか。
【中村委員】 ありがとうございます。大変よく分かりました。ありがとうございました。
【友添主査】 今後検討していく必要があるということかと思っています。
宇山委員、お願いします。
【宇山委員】 では、端的にお願いいたします。ちょっと書きぶりのところになるかと思うんですけれども、皆さん恐らく理解はされている部分になるかと思います。体育の一番最終部の4ポツ目のところ、「スポーツライフを舵取りする力」と「スポーツを通した共生社会」という表現について、ほかの部分に関しては「運動・スポーツ」という形でまとめられているんですけれども、ここで「スポーツライフ」という総称になっていて、「スポーツを通した共生社会」のところから「運動」が外れているところに関して、恐らく「スポーツライフ」に全ての、身体活動を伴う、そういった活動が込められている。また、現行でも「スポーツライフ」というものを使用されているという背景があるかと思うんですけれども、ここで「運動」を「スポーツを通した共生社会」のほうで外しているというところに関して、意味があれば教えていただきたいです。
【友添主査】 ありがとうございます。実は子どもの発達段階を考慮して、体育の学習指導要領の構成上、小学校段階では運動教育を行っています。特に1・2年生は運動遊びという用語を用いていますので、その概念を的確に表現したら、運動・スポーツというのが一般的な言い方になるということなんですね。
ただし、ライフロングエデュケーション、生涯教育の視点から見たときには、やはりスポーツという文化の学習ということが前面に出てきますので、ここで言葉の使い分けをしているというような理解をしていただければと思いますが、いかがでしょうか。
【宇山委員】 分かりました。大変勉強になりました。ありがとうございます。
【友添主査】 先ほど金岡先生もおっしゃっていましたし、今、宇山さんもこういう専門用語を理解するころがなかなか大変かなと思います。どんどん御自由に今のようなお尋ねをしていただきながら、認識を合わせていければと思います。
大日方委員、よろしくお願いします。
【大日方委員】 ありがとうございます。今の友添先生の言葉にちょっとほっとしたんですけれども、なかなかやっぱり「自己理解の深化」とかいう言葉も難しいなというふうに思って、具体的なイメージをちょっとお聞きしたいなというふうに思っていました。
多分、教えていただけるんだと思うんですけれども、その中に、恐らく自身の成長を知る。すごく発達段階にある子供なので、自身がどういうふうに成長していくのかといったたようなことも含むのかななんていうことを想像はしています。
やはりここでのテクニカルタームも開いていくことというか、誰にでも分かりやすくしていくことというのが、子供自身も保健体育を学ぶ意義といったことを、子供に先生たちが伝えていくとき、大人が伝えるときにも重要なのかなというふうに思って、そんなちょっと感想めいたものを持ちました。よろしくお願いします。
【友添主査】 ありがとうございます。
事務局、いかがでしょうか、この辺り。
【赤間企画調整室長】 ありがとうございます。やはり体育の運動領域の活動というのは、個人でやるような種目も当然ありますが、いずれにしろいろいろな方々と関わりながら活動していくという中で、他者との関わりの中での協働的な学びであったり、自己理解を改めて振り返る中で自分の理解を深めていくというような部分がございますので、そういった部分を端的に表現された言葉だと理解をしてございます。
以上でございます。
【友添主査】 大日方委員、よろしいでしょうか。
【大日方委員】 ありがとうございます。やはりなかなか専門用語は難しいなと。
【友添主査】 難しいですね。最初、岡出委員から質問のありました、幸福な人生とよりよい社会、どう結びつくんだという話も、一応これ、掘り下げていくとなかなか厄介なんですけど、個人ベースのところと、いわゆる社会との対比の関係の中でつなぎを持っていくということ。私流に言えば、嘉納治五郎の精力善用と自他共栄をうまく両輪で構成しているというふうに理解をしているところでもあります。
申し訳ありません。少し余談になってしまいました。次の議題に移ってまいりたいと思います。今の議論の中で御発言の機会を逸してしまった方がいらっしゃいましたら、次の議事のところで御発言をいただいても結構です。また、事務局までメールを出していただいて、ここの言葉が分からない、ここはどうなっているんだということをお尋ねいただければと思います。
それでは、議題の4に入ってまいります。もちろん今のところに戻ることも必要になってきますけれども、先ほど室長のほうから今後の進め方の中で御説明がありましたとおりに、論点整理において、学びに向かう力、人間性等の検討の方向性が示されています。この言葉も多分理解しずらいかと思うのですが、教えるべき内容には3つの資質・能力がありまして、そのうちの3番目のところに学びに向かう力、人間性等が入ってくるということですが、この方向性が総則部会から示されております。
特に体育については、他教科等と異なって、この学びに向かう力、人間性等については、学習指導要領に実は指導内容を明示してきたところでもあります。今後、目標などの議論を進める上で考え方を整理しておく必要があるかと思っています。
このことにつきまして、事務局とも御相談をしてまいりましたが、今日はまず、佐藤豊委員と、佐藤委員は現行の学習指導要領をおつくりになられた当時の調査官でもあったということでありますし、一番詳しいということで、あるいは、岡出委員は研究の対象とされてきた部分でもございますので、この辺りお詳しいということで、岡出委員のお二人に専門的な見地から御発表をお願いしたいと思います。
今日はトップバッターとしてお二人に御協力をいただきますが、今後も皆様に適宜御発表いただきながら、知見を結集していければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、お二方から御発表いただいて、その後に全体で意見交換を行いたいと思います。
佐藤豊委員も岡出委員も分かりやすく御発表方お願いいたします。まずは、佐藤豊委員からお願いします。
【佐藤(豊)委員】 よろしくお願いします。
なるべく分かりやすい言葉で。学習指導要領の中身を考えるときも、ついついやっぱり専門の先生が専門の言葉になりやすいので、例えば、御専門でない先生から見たら、この言葉は何だというところがなるべくないようにといいますか、見る先生方が分かりやすいようにという意識でこの20年間もやってきたことはやってきたんですけど、それでもなかなか取り去られてないだろうなというところはあるかと思います。
一応、10分というところでお話をさせていただきますが、前回もお示ししました全体の流れを見ながら、体育・保健体育を考えていかなきゃいけないので、そう考えると、まず、進んでいる方向性、主体的・対話的で深い学びの実装や、多様性の包摂、実現可能性の確保というところがあって、今、この前段階でありました個人と社会のウェルビーイングの実現というところは、OECDの2030等でも示されている、個人だけじゃなくて社会、やっていることが両方にうまく幸せにつながっていくような資質・能力を育てましょうということだと思うんです。
僕なりに5W1Hの視点で一回ちょっと見たときに、一番やっぱり大事なのは、何で保健体育を教えているのかというふうに考えたときに、向かっていく方向性は、学校教育の場合は、やっぱり教育基本法というのが一番上にあって、学校教育法、学習指導要領という法律的な順序があります。我々体育なので、スポーツ基本法というのも横目に見るんですけれども、スポーツ基本法はもうちょっと広く、社会全体を包むスポーツ権であるとか、スポーツを国民にとっての享受させていくための法律ですので、今ここだとちょっと焦点が学校の中のいわゆる体育というところに絞って考えていく必要があろうなということで、別物では、全然分かれるものではないですが、スポーツの推進に行ってしまうと、もしかしたら一部の方々のものになってしまって、多くのそれこそそこに関わる人たちが、この学びが自分の成長に役立ったなと思えるようなものを体育がどうやって保証していくのかという論点かなと思います。
そこで、ちょっと流れなんですけど、平成20年度からこういった形で、2回目の前のときも同じように、体育は必要ですかねというか、本当に体育って何を教えているんですかね、小学校でも中学校でも高校でもバレーボールを教えていますよね、違いはあるんですかみたいな、そこのところ考えているんですかみたいな指摘がございまして、それに対して流れを追ってここまで来ているという、ちょっと縦系列の流れで見ていきますと、一番最初にミニマム論議というのをまずしました。世界のいわゆる体育、この後、岡出先生のほうもお話があるとは思いますが、そういった流れの中での話。
簡単にいきますと、こんな感じで、まず、ゴールイメージを共有しましょうということと、要するに、卒業した後にどういう資質・能力が養われているか。でも、発育・発達があるので、そのまま上から下に下ろしてきてしまうと、非常に大人的になり過ぎちゃうので、子供には子供の理解できる世界や言葉がありますと。それを4・4・4という大きな枠組みをつくって順次育てていきましょうというものを20年度、20・21のところでは考えて、小中高の接続というところをすごく重視しました。今回、多分幼稚園から、あるいはもしかしたら大学での体育も含めた大きな中で、生涯スポーツから絞った4・4・4というのをもう一回再検討するのも大事かなと思っています。
その流れの中で、当時まだ観点が各教科等に任されていましたので、まず、知識・技能という部分、それから、思考・判断・表現、それから、態度というキーワードで体育はこれまで教えてきた。例えば、公正、フェアに取り組むとか、あるいは仲間と協力して取り組むとか、そういったものが入った3つのカテゴリーとなっていて、その後、指導要領をつくりますと、評価規準に関する事例集を作成します。そういった事例集の作成の中でどう評価をしていくかという情報も出しながら、まとめながらここまで来ているんですけれども、その中で例えば、大きな概念と具体的な知識と、それから、どうやってそれを改善していくのかという方法的な知識みたいな形で、知識の中身もある程度、細かい具体的なポイントだけではなくて、先生方にはどこに向かってそういう細かいポイントが示されているのかというのを、学習指導要領と解説のところで整理していく作業をしておりますと。
あとは、今日の話でもそうですけど、体育と保健をどうつなげるのとか、その教科等で得た内容をどうやって、いわゆる学校全体のところにつなげていくのかというのは、カリキュラム・マネジメントという視点がありますので、要は、教科等で絞り込んだものをあまり広げ過ぎずに検討していくというところがあったのかなと思います。
この辺は資料です。そのときに出した資料ですので、後ほど御確認いただければと思います。こんなものをつくって、一個一個の概念ごとに、どういうことを具体的に教えるのかというものの抽出の作業をしていったものでございます。後ほど見ていただければ。これは態度の大本になる資料で、知識と思考・判断という認知領域のつながりを示したものです。多分、今、中教審の総則で話されている、この辺のところが、知識と思考・判断の関係性を明確にしましょうというところが出てきているのかなというふうには思っております。
実際の学習指導要領のところの表記なんですけど、中学校、高校のところでは、このような形で既に表になっていて、中学校1、2年生だと――これ、思考・判断・表現の表記なんですけど、こんな形で3段階になっています。
実はこの中に態度につながる思考・判断というのも入れていて、態度に関しては、知識を教えるんですが、それと同時に、それを活用する中で本当にうまく関われていますかとか、共生という指導内容もあるんですけれども、本当に他者に配慮した今学習が行われていますかというようなものを、子供たちが実践の中で気づいていくという時間といいますか、中身を入れるような形で整理を図っていますというところです。
これが学びに向かう力、人間性等の、今日のメインになるところの内容なんですけど、特に態度に関しては、なかなか一回教えたら身につくものではないので、かなり少し長いスパンで、4年間スパンで同じものを書いていくような形で、ゆっくりと育てるという配慮もしながら中身が書かれているという状況になっています。
学習指導要領実施状況調査というもので定着状況を見ているんですけど、その中で特に、これは前回ですね。これが今回です。いずれも学びに向かう力、人間性等に関しては、学校現場からの反応としては、体育分野に関しては、しっかりと指導し身についているというようなデータが戻ってきていますので、ほかの、内容がないと書かれている教科との違いとしては、体育分野に関しては、それを指導内容とし、授業の中である程度指導した上で評価ができているという認識がここまででございます。
ここから先がちょっと提案といいますか、あれなんですけど、教科全体、どちらかというと、知識を基盤とした教科、中間とか期末でテスト評価をしているところの評価の構造がこれまで、左側に示したような形で、右側が体育の、先ほどの健やかワーキング等の概念を用いると、基盤は知識はいいんだと思うんですよね。ただ、それを技能として発揮するのか、態度として発揮するのか、その間に思考力が介在するのか。それによって体育が目指しているのって、運動への愛好的態度や価値的態度、いわゆる好きであるとか、大切だとか、意義があるとか、そういうことを育てていく。具体的にこれを4・4・4の中で回しながら、ここを段階的に育てていく。スピンオフとして、当然ながら、学校教育全体が目指すキーコンピテンシーに迫れればいいなというような形の多分モデルのイメージが、僕の中でのイメージがあります。
簡単に言うと、知識のところには何があるかというと、運動に関する知識、当然ながら、仲間としっかり関わりましょうという態度に関する知識、いわゆるそれ以外の文化に関する知識を子供たちに伝え、それを子供たちが考えることによって、出力として運動の技能、それから、態度としての所作、そして、何を考えたのかという文章表記や言語表記、これが今評価の観点の3つで評価しているという構造になっています。
今回の提案は、多分、ここの知識の部分と思考・判断の部分に関しての整理が結構前面に出ていて、体育分野でいくと、この技能のところとかこの部分をどう整理していくかというのが難しい状況、すみません、時間10分過ぎちゃいますのでまとめていきます。
出ているのが、左側の知識・技能と思考・判断で、学びに向かう力、人間性等のところは別立て、内容がないのでということで評価から外れた形になっていますが、これはいわゆる体育分野の構造だと、それを織り込んだ形で指導と評価と学習指導要領をつくってきた経緯があるので、そう考えると、態度も実は知識をちゃんとしっかりと明確化する。知識の中に位置づけ、これ、技能のところは技能のもとになる知識なので、分かった上で、いわゆる運動の技能として発揮できるようになる。態度の知識を知った上で所作ができるようになる。その間に本人なりの思考・判断を経てということと、生涯スポーツという視点からは、いわゆる体育理論というのが中高でやっていますので、その辺の文化的知識と合わせた中で単元が積み重ねられていって、能力が育っていくという構造になるといいんじゃないのかなというふうに思います。
あと、簡単に言いますと、例えば、具体的な態度のこれ、何を教えて何をどういう場面で育てましょうかというような態度を考える枠や、あるいは、思考・判断を考えることとかもあったりもしますので、こういったことを授業レベルではやっていったらいいんじゃないのかなと。モデルが3つ変わってくると。必ずしも今の話が1個のモデルじゃなくて、4年間ごとに変わっていくようなモデルになるといいのかなと思います。
友添先生、すみません。2分過ぎました。以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。また後で意見交換のところでいろいろ御意見いただければと思います。
岡出委員、お願いします。
【岡出委員】 共有をさせていただきます。岡出です。よろしくお願いいたします。
まず、最初ですけれども、本スライドの方針と課題を踏まえて発表させていただくということになります。
まず、検討方針ですけれども、最初に思考力、判断力、表現力等を養うために解決すべき課題と知識及び技能、学びに向かう力、人間性等の関係性を検討したいと。その際には、9月25日に示されています中央教育審議会の論点整理の概念、記述との整合性、これは検討しないといけないと。
それから、現行の学習指導要領等の記述との関係性をちゃんと整理しましょうと。
それから、現行学習指導要領の作成前後から今までに提案されてきたこと、実践されてきたことの知見を検討するということで、例えば、フィジカルリテラシーだとか、学習指導モデルの提案、あるいはその効果検証というものの成果を踏まえた検討を進めたいというふうには考えています。
この検討に関しては、現在示されている諸概念との整合性を検討することが課題になってきます。そのときに同時に、日本の教員の方たちにとって、なじみやすさ、それはやっぱり検討しないといけないというふうに思いますので、今日の発表の中での用語については、整理とか洗練化が必要になると考えています。
例えば、今、フィジカルリテラシーという言葉をお話ししたんですけれども、なじみが薄いよねというふうに思われると思います。また、フィジカルリテラシーという概念を使って日本の学習指導要領が記述されてきたわけでもないと。でも、その内容については、現行学習指導要領、あるいは解説書の記述にほぼ反映されているという意味で、実質的にはなじみの深い用語ということになります。
それを踏まえて次のスライドに行きたいというふうに思います。ここにちょっと時間を取りたいなと思っています。本スライド、学びに向かう力、人間性等の指導内容を知識及び技能並びに思考力、判断力、表現力等に位置づけ直すとともに、現在示されている指導内容となる知識及び技能を整理したものということになります。
先回も御指摘させていただきましたけれども、体育教育学の知見だとか、我が国で実施されてきた授業を踏まえると、学びに向かう力、人間性等には、具体的な指導内容となる知識・技能、価値観というものが存在していますし、それを意図的・計画的に学習していくことは可能だと考えています。また、この評価も可能だと考えています。
実際、スポーツ並びに健康に関連しては、膨大な科学的な知見が蓄積されていますし、どの教科等においても、教科指導の対象となる知識の設定に際しては、そのような科学的知見を踏まえていることになります。これは体育に関しても全く同じで、膨大な知識や技能を、発達の段階という時間条件、児童生徒の実態を踏まえて適切に配置していくということが、カリキュラム上重要になると。
他方で、論点整理等で示されている方針を踏まえると、学びに向かう力、人間性等の指導内容を知識及び技能に位置づけ直すことが求められているのではないかとに感じています。体育の場合は、運動領域と体育理論、これが存在しているわけですから、今からのお話はこの両者を想定しているということになります。今、佐藤先生がお話ししたように、具体的な内容に関しては、児童生徒の発達段階に即して設定していくということになります。
この際に、まず、体育の場合は、生涯にわたって健康で豊かなスポーツライフを営むことができる資質・能力を授業で保証している。この際には、授業において3つの課題の解決能力を身につけていくことが必要になる。このことの確認が必要だというふうに思っています。体育の授業で児童生徒が解決を求められる課題は、別に運動課題のみではなくて、自身の情動的な課題だとか、人間関係に関わる課題は当然存在しています。技能が上達しても、自分の感情とか自信といった情動的課題を解決できなければ、継続的に運動に参加することは困難になります。また、共にスポーツをする仲間を育む資質・能力を高めることができなければ、継続的にスポーツをすることは困難になっていきます。
体育の授業では、これら3つの課題を解決する場面が授業の中で意図的・計画的に設定されている点で、他教科等以上にオーセンティックな学習を進めていくことが容易になると考えています。逆に言いますと、授業では、これら3つの課題の解決に向けて必要な知識及び技能を学習する意味が児童生徒に理解しやすいことを意味しています。
この運動課題の解決に向けては、まず、運動課題の解決に必要な知識、運動技能に関する知識、戦術に関する知識、体力に関する知識、安全に関する知識、健康に関する知識、社会的、歴史的、文化的価値に関する知識、多様な関わり方に関する知識に一応整理をしてみました。
それから、技能に関しましては、運動課題の解決に必要な技能、情動的技能、人間関係に関わる技能及び自己決定に関わる技能を想定してみました。
これだけでは分かりにくいと思いますので、補足をさせていただきます。知識は課題解決に不可欠ですけれども、知識の理解度が深まると、自動的に課題が解決できるわけではなくて、課題の解決には特定の技能を発揮することが必要になっていきます。運動課題の解決に必要な知識は、運動の効果的な学習に必要な知識、これを想定していますし、運動課題の種類や構造、運動課題の設定方法や学習成果の評価方法、解決方法等が必要になると考えています。
運動技能に関する知識では、技術の名称、技術の構造と学習過程を想定しています。
また、戦術を知識として独立させてみました。
体力に関する知識では、体力の構成要素並びに発達の段階に応じた体力の高め方を位置づけてみました。
安全に関する知識では、安全確保に影響を与える要因、並びにその対処方法に関する知識を位置づけてみました。
健康に関する知識では、運動することから期待できる便益、並びに心身の健康の意味や価値、それらの実現手段に関する知識を想定しております。
社会的、歴史的、文化的価値では、スポーツを通して実現可能な多様な価値、並びにその歴史的、文化的背景に関する知識を想定しています。スポーツの価値に基づく教育は、スポーツを通して価値を実現する人材育成を想定しています。スポーツがより豊かな社会を実現することに貢献できるためには、このようなスポーツの価値について知ることや、その実現に向けて取り組む人材が必要になっていきます。
多様な関わり方に関しては、体育の授業においても、スポーツに対する多様な関わり方が可能であることを伝えるということを想定しています。
運動課題の解決に必要な技能は、歩く、走る、跳ぶ、泳ぐ、滑る等の移動系の技能、バランスを取る等の非移動系の技能、ボールやバット等の用具操作の技能、情報処理や判断に関わる技能並びに表現系の技能を想定しています。人間は、生涯にわたって意図的に運動を学習していくことを余儀なくされる生き物です。また、運動を適切に行うためには、常に情報収集し、収集した情報を適切に処理する判断が必要になります。この情報処理については、技能が存在しているというふうに考えています。
情動的な技能は、自己肯定感を高めたり、学習動機を高める個人的な技能や、感情を含めた自分自身への気づき、自己の身体への気づきの技能を想定しています。できない状態は自分自身について知るいい機会ですし、自分の感情への気づきは、自分の心理状態を踏まえた行動を決定していく際には重要な契機となります。
人間関係に関する技能は、他者への気づきや寛容、協力・役割の受容、合意形成に係る技能を想定しています。スポーツとは、多様な関わり方は可能ですけれども、その関わり方は好ましい人間関係に支えられています。仲間とともにスポーツを営む際には、互いの考え方や価値観の違いを認めた上で、どのように合意形成を図るのかが重要になります。これらの技能もまた授業の中では指導されていくことになります。実際、優れた授業を実施している体育の教員は、人間関係に関わる技能を学習する機会を意図的・計画的に設定しています。
自己決定に関する技能は、生徒自身が自分の決定に責任を持てるようにするための技能とも言えます。ここでは、合理的な判断を下す技能や、自身の行動の結果に対する予測や、評価に関連した技能等が想定されています。
すみません。残り時間も、終わるところですけれども、最後、終われというメッセージが出ていますけれども、ここに記しているようなことが検討課題かなと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【友添主査】 御発表ありがとうございました。
それでは、時間もありますので、ただいまのお二方の御発表を踏まえて、意見交換をこれから行ってまいりたいと思いますが、まず最初に、保健分野についてもお話をお伺いできればと思います。植田主査代理のほうから、ここのところの御意見がございましたらお願いします。
【植田主査代理】 ありがとうございます。まず、佐藤委員、それから岡出委員、詳しい説明をありがとうございました。特に体育科教育に関わるお二人の先生ですので、旧学習指導要領といいますか、現在の学習指導要領といいますか、そういった中で、体育の中でも、健康であるとか安全であるとか、そういったものが示されている。また、岡出先生の御発表の中にも、安全や健康に関する知識であるとか技能であるとか、そういった面もありました。今後、こういったことも含めて、やはり保健と体育の連携というのを強く図っていくということがまず大事かなということを感じました。
その中で、ちょっと論点整理の中で整理をされている学びに向かう力、人間性、これに関わって、特に保健の立場からお話をしたいと思います。こういった今の学習指導要領、あるいはこれまでのものでいうと、態度に関わるようなところだと思うのですが、これは体育のほうでは、それが目標だけではなくて、内容の中にも示されています。小学校の場合は、体育科、中学校、高等学校では保健体育科ということになるのですが、小学校の体育科の保健領域、それから、中学校、高等学校の保健分野、あるいは科目保健というところでは、こういった学びに向かう力、人間性であるとかの態度面、これは目標としては、体育と同様に非常に大事なことだというふうに思います。これを目標として捉えるというのは当然のことだと思います。
ただし、保健では、内容として捉えるのかどうかについては、ちょっと難しいところがあるかなというふうに思います。論点整理のところでも示されているような形で、そういったものは個人内評価をし、評定せずというようなことで保健は一定進められるのではないかと思います。
ただし、気をつけなければならないのは、評定をしないということは、こういった学びに向かう力や人間性等が重要でないというふうに捉えられないように、そこの表現というのは十分慎重に行っていかなければならないのではないかと考えております。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
御意見いただけますでしょうか。いかがでしょうか。なかなか難しいところかと思うのですが、いかがでしょうか。
藤原委員、お願いします。
【藤原委員】 失礼いたします。佐藤委員と岡出委員のお話を聞かせていただいて、とてもいいなと私自身感じておりました。
子供たちがこの先迎える社会では、健康長寿社会や共生社会の実現、地域や経済の活性化、デジタル化が進む中での人と人との豊かなつながりなど、様々な社会課題に対応していくことが求められる中で、スポーツを通じた社会課題の解決に対する期待が高まっている現状に対応するとともに、ウェルビーイングといった、多様な国民一人一人の生きがいと幸福の実現を図ることも期待されていると考えています。
とりわけ心身の成長過程にある児童には、その発達の段階に応じて、運動やスポーツを通じて豊かな人間性を育む基礎を涵養することが重要であると考えています。
そのような中で、現行の小学校学習指導要領における成果と課題を考えたとき、成果としては、運動領域においては、豊かなスポーツライフを実現することを重視し、学びに向かう力、人間性等に対応した内容が示されており、学校現場としては、指導する内容が明確で分かりやすいと感じています。
一方、評価については課題が見られたと感じています。主体的に学習に取り組む態度の評価に際しては、単に継続的な行動や積極的な発言を行うなど、性格や行動面の傾向を評価するということではなく、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど、自らの学習を調整しながら学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価することが求められたため、運動領域については、この側面を踏まえた公正、協力等の評価に課題が見られたと考えています。
また、他教科等と並べたときに、運動領域に内容が示されたことで、小学校の教師にとっては、他教科等との違いに理解の難しさがあったことも課題として感じています。
そのような課題を踏まえ、次期学習指導要領においては、豊かな人間性を育む基礎となるものを確実に育成するとともに、指導と評価の一体化のさらなる充実を目指し再整理を図る佐藤委員、岡出委員の発表に私は賛成です。お二人の発表からは、現行の学習指導要領の内容や評価の手続を増やすのではなく、現行の学習指導要領の考え方を踏まえた改善策であると捉えることができました。
以上になります。
【友添主査】 ありがとうございます。
ほかによろしいですか。挙手をお願いします。
斎藤委員、お願いします。
【斎藤委員】 お願いします。私も、藤原委員と一緒で、岡出委員、佐藤豊委員の知識及び技能、思考力、判断力、表現力等のところに態度の内容を再整理するという考え方、すごくいいなと思って賛成しております。
私も、これまでの体育が育んできた態度の資質・能力というのは、これまでどおり目標に準拠した評価と、それと一体化した指導によって、子供たちに育成することを目指すべきなのではないか、それをこれからも続けていくべきなのではないかと思っております。
先ほど佐藤豊委員がお示しくださいましたが、小学校の学習指導要領実施状況調査の分析では、体育の態度に関する理解は、相当数の児童ができているという報告がされています。私は体育の態度の指導と評価というのは、現在成果を上げている現状の行い方を、先ほど藤原委員がお示ししてくださったような課題には対応しつつも、基本的にはこれまでどおりに進めていくべきであると考えています。
体育の態度を子供たちに確かに育む指導と評価を、各学校がこれまでどおり自信を持って続けることができるような学習指導要領の示し方になるように配慮はしながら、佐藤豊委員、岡出委員の御提案くださったような体育の態度の位置づけを整理することに賛成します。
ただ、今私が申しました配慮しながらというところでは、体育の態度の各内容を、知識及び技能や思考力、判断力、表現力等にどう位置づけるのかということについては、慎重に検討したいという思いがあります。というのは、特に小学校は、現行の学習指導要領において、態度の各内容は、学びに向かう力、人間性等にのみ示していて、知識及び技能にも思考力、判断力、表現力等にも示していない状況があるからです。
このことから、今回の改訂で、体育の態度の各内容を、小学校も現行の中学校・高等学校と同じように、思考力、判断力、表現力等に示して、さらに知識及び技能にも示すというように、知識及び技能と思考力、判断力、表現力の両方に位置づけて示してしまうと、学校の先生たちに指導する内容が増えたような誤解を招くと思います。そのため、私は両方に示すのは避けたほうがいいと思っております。
先生たちはこれまですばらしい態度の指導をしてくださっているところですから、そのようなミスリードにならないように配慮しながら、小学校という発達段階を踏まえて、小学校に適した位置づけ、再整理ができたらよいと思っております。
私からは以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
ちょっと交通整理しておきたいと思います。今、学びに向かう力、人間性等という3つ目の資質・能力、これについての議論をしているわけですが、戦後の日本の学校体育でずっとここを大事に実践してきたし、積み重ねもしてきました。そして、現行の学習指導要領では、この中に何を教えるのかということをしっかり明示してきた。ほかの教科等はやってこなかった部分が多いんですけれども、体育はしっかりここを明示してきたということがまず1点、ここを理解しておく必要があるかなと思っています。
あと、私たちに与えられた選択肢は3つあると思っています。1つは、どういうことかというと、特別部会の例示にあるように、この学びに向かう力、人間性等は目標には書くんだけれど、内容には記載しないという選択肢も実はあるということなんですね。ただ、この場合は、今までやってきた実践とか現行の学習指導要領で積み重ねてきた成果、こういったことを全部捨ててしまうことになる可能性もあるということです。
2つ目なのですが、これはどういうことかというと、指導内容については、今、岡出委員あるいは佐藤委員から御発表があったように、知識及び技能や思考力、判断力、表現力等、ここに書いていく。いずれに書くか、あるいは両方に分散させて書くか、ここは議論の検討の余地はあるんだけれども、とにかくこの中に吸収し、一応、妥協的な案として妥協的というと語弊がありますけれども、特別部会の例示、これも踏まえつつ、体育の成果も反映させる。ただし、何を拾い、どういう書き方をするか、ここは随分検討していかなければいけないということですね。
3つ目です。これはお叱りを受けるかも分かりませんが、理論的には可能性としてはあると。つまり、現行どおりそのままでいいじゃないかと。ただし、精選して書いていく。内容を精選していく。今のような書きぶりではなかなかこれは難しいので、分かりやすく精選して書いていく。この3つのタイプが、実は私たちがこれから行く方向性としてあるわけなんですね。
今日は2番目の方向性で、佐藤委員にも岡出委員にも御発表いただいたという今位置づけになっています。よろしいでしょうか。
金岡先生、まだちょっとやっぱり難しいところがあるのですが、大丈夫ですか。
【金岡委員】 ありがとうございます。このついでにちょっと感じたことを言わせていただいてもよろしいでしょうか。
岡出先生の御発表の3枚目の表がすごく分かりやすいなと思って、拝見させていただいております。安全に関する知識、これ、もちろん何らかの自分の体に障害が起きないような様々な防御知識だと思いますけれども、もし何らかの外力が加わったら、自分の体がこうなってしまうリスクがある。つまり、体がある程度の負荷にさらされると、痛みを起こすような状況になってしまって、そのときにはどのようにするべきか。どういうふうな対応が必要か。救急処置はある程度そこかとは思いますけれども、けがではなく、何か使っているうちに腰が痛くなったとか、肘が痛くなったとか、そういうふうなときにはこうしましょうみたいな、ちょっとしたそういう知識も入れていただけるといいんじゃないかなというふうに感じました。ありがとうございました。
【友添主査】 ありがとうございます。
岡出委員、今の金岡委員のコメントに対して何かございますか。
【岡出委員】 ありがとうございました。私がお見せしたのは一覧なので、発達の段階に応じて何をどういうふうに重みづけしていくのかということが別に見えるような状態になっていないのだと思います。
なので、佐藤委員も言われましたけど、やっぱり発達の段階に応じて伝えてあげるべきことと、そこはあんまり細かく言い過ぎると、全然授業にならなくなっちゃうと。限られた時間数の中ですので、そういう重みづけということはちゃんと検討していかないといけないのかなというふうには感じました。
言っていただいたことはちゃんと理解できますし、配置ということでいうと、具体的な作業をやっぱり通していかないと見えてこないこともあるかなという、そういうことです。
【友添主査】 ありがとうございました。
ほかに御意見ございますでしょうか。
岩佐委員から、その次は渡辺委員に移ります。まず、岩佐委員からお願いします。
【岩佐委員】 失礼します。佐藤先生と岡出先生、ありがとうございました。本校だけではなくて、本市の体育の先生方が今お二人の先生方のお話を聞いて、態度の指導はやっぱり大事なんだということがすごく伝わって、安心しているんじゃないかなというふうに思っています。その1人、私自身も重要性を再確認できたなと思っています。
私からは、学びに向かう力、人間性等の内容の重要性について、子供たちの姿を通して少しお話をさせていただきたいと思っています。私たちは、運動領域の授業を技能で終わらせることなく、3つの資質・能力の育成ということで、特に態度の指導のところの充実を頑張ってきたという思いがあります。中でも共生の態度の内容について力を入れてきたところなんですが、教員がこういった狙いを持って授業をすることで、例えば、チームでの話合いに自己主張するだけではなくて、相手の思いを尊重する生徒の姿が生まれてきたりとか、様々な違いがあることに気づいて、それを受け入れようとする姿であったり、それから、仲間のために貢献したい。そういった姿などが子供たちに少しずつ表れてくるようになってきました。
態度の指導を大切にして、積み重ねていくことによって、生徒たちがみんなでルールを守ったり、助け合ったりして、何かみんなで楽しむ力というのがついてきたように私自身は感じているところです。このようなことがきっと社会性の育成につながってくるんだなと実感もしているところなんです。
ただ、これが保健体育に終わらなくて、他教科とか、特に学級活動、それから生徒会活動、こういったほかの場面でも、仲間のことを認めたり、協力をしたり、そして、私はこれが一番子供たちの姿として好きなんですけど、多様な考えに折り合いをつける力、こういった姿も見られるようになってきて、学級経営にも効果が出てきたと、先生たちの声も聞いています。
こういう声を聞きますと、やっぱり私自身は、保健体育での態度の学びに向かう力、人間性等の指導というものが功を奏しているんじゃないかというふうに自負しております。生徒たちの毎日授業で学習する姿を見ていますと、保健体育科の教員が学習指導要領に基づいて学びに向かう力、人間性等の指導をこれまでも行ってきたことは、しっかりと生徒たちには伝わっているなというふうに見ていて思いますし、また、態度の指導というのは、豊かなスポーツライフの実現という意味においても、やはり保健体育科においては指導すべき重要な内容であるというふうに、私は中学校の校長として毎日感じているところです。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。体育授業がうまく回ると学級経営がうまくいくというのが、小学校に関する研究でその相関がはっきりデータで出ていますし、中学校で体育授業がうまくいくと学校経営がうまくいくというのも、これもはっきり分かっています。
渡辺弘司委員、それから前島委員、その後、日野委員の順番でお願いします。よろしくお願いします。
【渡辺(弘)委員】 渡辺でございます。私、先ほど申し上げましたように、学校医でございますので、どうしても保健の視点で体育を見てしまうんですけれども、先ほど佐藤委員がおっしゃっておられた、12ページにあった「運動・健康」という言葉なんですけれども、できれば体育の中の健康に、身体だけでなく、精神とか心理的な健康というイメージをぜひ概念として加えていただけるとありがたいと思いまして、それが、例えば岡出委員の3ページのところにございます、安全に関する知識、個人的要因のところに「寛容」という言葉がございます。これが多様性への対応ということになっておりますけども、これが多様性への対応も大事ですけど、それ以外に、自分にとってのストレスに対する寛容性というのを運動でぜひ身につけていただくような、いろいろなストレスに対して対応できる力を持っていただけるようにすれば、これは健康に関する知識における寛容性ということも関連してくるのではないかなというふうに思います。
これは保健の視点から見て体育にすごく期待をしているという意味で、ぜひ限られた体育の時間で、なおかつ、今度は企画特別部会で授業のカリキュラムが時間を削られたり、授業数を減らしたりすることが自由にできるような方向になったときに、体育と保健が削られることがないように、ぜひこれがいかに重要かということを、保健と体育オをコミットで考えて、ぜひ主張していただきたいと思いますので、これは私の希望でございます。御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【友添主査】 ありがとうございます。
前島委員、お願いします。
【前島委員】 ありがとうございました。佐藤委員と岡出委員の内容がとても分かりやすくて、すごくすっと腑に落ちるなというふうに思いました。
私は、先ほどの整理された概念、この整理のところで、多様性の部分なんですけれども、子供の多様性もすごく大事なんですけど、教員の多様性ですね。年齢的な部分とか、様々な背景を持っている先生方がやっぱり分かりやすく理解できるためには、専門用語の部分はちょっと丁寧に扱ったほうがいいのではないかと思います。子供の多様性を大事にするためには、先生の多様性も大事にすべきではないかなというふうに思いました。
それから、学びに向かう力、人間性等がどうなってしまうのかってすごく心配だったんですが、知識と思考、判断、表現のところに残していくというところと、あと、もしかしたらそのままでというようなところもあったので、これからの部分でじっくり考えていきたいなと思いました。
以上です。ありがとうございました。
【友添主査】 前島委員、ありがとうございました。
続きまして、日野委員、お願いします。
【日野委員】 失礼します。日野です。
私も、体育・保健体育においては、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全に関する、仮称ですけれども、豊かなスポーツライフにつながる態度については、しっかり指導内容として位置づけていくことが必要だと思っております。それを検討する際に、現行の課題についても確認しながら、今後の方向性を検討していく必要があると思っています。
友添先生、よろしければ、資料を事前に事務局には確認いただいたのですが、共有してもよろしいでしょうか。
【友添主査】 どうぞ投映してください。画面共有をお願いします。
【日野委員】 まず、現行の課題についてです。「学びに向かう力、人間性等」ですけれども、論点整理で幾つか提案がありました。現行の学習指導要領につきましては、目標、内容、評価が3つの観点で整理されました。1つ目の課題は、「主体的に学習に取り組む態度」ですけど、実はこれが二重構造になっているのではないかと思っております。1つは、体育は独自に内容を具体的に示し、その学習状況を「主体的に学習に取り組む態度」として評価することになっております。それが右側の欄のところです。
一方、前回の改訂後に、「主体的に学習に取り組む態度」については、全教科で共通の方向性として、「粘り強さ」や「自己調整」の側面から評価することが示されました。そして、論点整理では、これをさらに4つの要素から目標に向けて検討することが示されております。
その結果、体育・保健体育の運動領域では、同じ「主体的に学習に取り組む態度」という名称で、体育独自の内容である、公正、協力、責任、参画等と、全教科に共通の内容である、「粘り強さ」や「自己調整」の側面、この2つの異なる内容が混在している状況が今生じていると思っております。このことが現場での理解を難しくしたり、学習評価を複雑にしている一因ではないかと考えております。
もう1点、現状の課題についてです。「知識・技能」と「思考力、判断力、表現力等」の関係性についてです。これも今回の改訂では、より深い学びを実現するために関係性を高めていくことが言われております。
2つ目の課題として、「思考力、判断力、表現力等」を核に考えたときに、中学校、高等学校の学習指導要領解説では、この「思考力、判断力、表現力等」の内容を、体の動かし方や運動の行い方に関するもの、体力や健康・安全に関するもの、運動実践につながる態度に関するもの、生涯スポーツの設計に関するものの4つの内容で整理されております。
このうち3番目に示している運動実践につながる態度に関する思考・判断の基となる知識については、先ほど佐藤先生からも御説明があったと思うのですが、「知識・技能」ではなくて、「学びに向かう力、人間性等」に含まれている知識として指導されております。例えば、フェアプレーの態度を育てるには、フェアプレーの知識とその態度を関連づけながら、「学びに向かう力、人間性等」で指導されていると思っております。
知識と技能の関連性を高めていくときに、このクエスチョンのところを具体的に示していくことが、より関連性を高めていくことになるのではないかと思っております。
今回、参考資料の中で、中学校学習指導要領実施状況調査の速報版のデータも示されておりました。特に運動実践につながる態度に関する「思考力、判断力、表現力等」に課題があることが示されていましたので、こういった背景もこのことに関係するところがあるのではないかと思っております。
そういった中で、今後の方向性として、1つには、先ほど友添先生が言われました、従来を踏襲して独自の形を維持していくことが考えられます。もう一つ、従来のとおりに「学びに向かう力、人間性等」の内容を書いて、体育の独自性を主張していく以外に、私自身は、先ほどからも話が出ていますけれども、資質・能力の構造の中で再整理していくことが必要ではないかと思っております。
現状の愛好的な態度に関するものは、「学びに向かう力、人間性等」に残しつつ、それ以外の内容については、今示しているとおり、仮称ですが、豊かなスポーツライフにつながる態度や運動実践につながる態度として、態度的要素を知識・技能に含ませて、資質・能力として明確化することがいいのではないかと思っております。
このように整理することで、課題として指摘した、主体的に学習に取り組む態度の二重構造や、運動実践につながる態度の知識と思考、判断、表現の関係については再整理することができて、指導内容の明確化や指導と評価の一体化につながるのではないかと考えております。
ただ、これも学校現場の受け止め方や内容構成、表示の仕方、また、学習評価等、検討すべき事項が多いと思いますので、今後の議論の参考にしていただければと思っております。
私からは以上になります。
【友添主査】 ありがとうございました。
日野先生の今の御発表も踏まえて、大体大方のところの方向性が見えてきたかなというふうに思っています。知識及び技能の中でうまく吸収していけるのではないかということかと思います。
森委員、お願いします。
【森委員】 ありがとうございます。お話を伺っていて、まず、私は、友添先生の言われた第3の道を実現できるのが一番いいというのは間違いないんですけど、それが完全に無理という話になると、第2の道、今日御発表いただいたお二人の先生方のものになると思います。
本日、事務局から資料2として説明されたスライド6に新しい評価がありまして、学びに向かう力・人間性等の評価が矢印で思考・判断・表現のところに行っていて、小さな文字で、思考・判断・表現の過程で観点別評価に丸をつけるということが書かれているのに気づきました。実は保健は以前、学習指導要領に知識及び技能の技能がなくて知識だけの時代がありまして、実在する技能の評価を当時の知識・理解に位置づけるか、思考・判断に位置づけるかでいろいろ悩んだところがあります。
斎藤先生から知識及び技能のお話もありましたが、思考力、判断力、表現力等は幅広で、いろいろ吸収できる枠を持っているので、検討している内容の位置づけについて、ここを全くなくすことがないようにしたほうがいいのではないかと思います。
佐藤先生の一番最後のスライドのところの説明をもっと聞かせていただければ、多分、その辺が明らかになると思います。
以上です。失礼しました。
【友添主査】 ありがとうございます。私が先ほど申し上げた第2の道なんだけれども、その第2の道の中の前1、2の2つのところのいわゆる案文の仕方、ここについては何も捨てる必要はなくて、むしろそこをうまく利用すべきではないのかという御意見だったかと思います。非常に示唆に富んだ御意見だと思います。ありがとうございます。
ほかによろしいでしょうか。
佐藤豊委員の後、柏原先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【佐藤(豊)委員】 今、森先生からもいただいたんですけれども、多分、一つは、学校現場の混乱ができるだけないようにというのが、皆さん共通している御意見だと思うんですよね。
そこがまず最優先でどうしていきましょうかねというのと、もう一つ、やっぱり軸としては、体育・保健体育ですので、体育の学習と保健の学習がうまく交互に連関して思想?につながるような改訂というのも大事になってくるだろうというのと、斎藤先生が心配したように、例えば、小学校の場合って全教科等を教えていて、特に専門でない、特に低学年、中学年は学習評価がかなり難しい。アウトプットが曖昧なので、そこに対してあんまり厳密に思考力の基準をつくってしまうと、多分見取れないというのが出てくるというのもあるので、一番最後のパワーポイントで、多分、3段階のそれぞれモデルをある程度しっかりと考えながら、どうしたらいいのか。
ただ、やっぱり5、6年生、中1、2を一つのまとまりとして考えたときに、小学校はこうです、中学校はこうですというよりは、そこがうまくつながっていくようなメッセージを、例えば高学年とかで少しうまく整理していくとか、中学校でもやっぱり分かりづらい事例もあれば、小学校の中にも分かりづらい事例があるので、その辺のところはどういうふうにしたらより学校現場が混乱しない、今できていないというところに迫れるのかというところも、保健とも連動しながら整理されていけたらいいなというふうには思います。
以上です。
【友添主査】 ありがとうございます。
柏原教育長、お願いします。
【柏原(聖)委員】 ありがとうございました。私も第3の道がよいと思います。御説明を伺い、学びに向かう力・人間性等が思考・判断・表現にはめ込めるものもあるという安心感は得られました。
やはり経験の浅い教員が分かりやすい学習指導要領にすると同時に、経験のある教員がアップデートしやすい学習指導要領である必要があると思います。経験による思い込みを払拭するのはものすごく難しいと感じています。それで学校が混乱してしまうというところがありますので、注意が必要です。もう一つは、評定しないということは、評価もしなくていいんだという捉え方をされると困る。だから、きちんと個人内評価で見取っていかなくてはいけないということは、伝えていくべきだと思います。例えば、第2の道になったとしても、注意すべき点だと思いました。
【友添主査】 ありがとうございます。貴重な御提案だと思います。アップデートしていかなければいけない、これは非常に大事な視点だと思います。分かりやすいだけでは駄目、分かりやすくてなおかつアップデートできるものと。
大日方委員、お願いします。
【大日方委員】 ありがとうございます。私もお二方の先生の発表と、その後の意見を聞きまして、丸2の方向の中で、学びに向かう力や人間性が一緒に入っていけるというところを聞いて、少し安心しました。
正直なところ、ちょっと事務局からの資料の2のところの説明をいただいて、学びに向かう力、人間性等、態度といったところが、評定せずと言ってしまうと、非常に障害のある子供とかは、じゃ、どうすればいいんだろうというところが不安に駆られるところでした。
御承知のとおり、特に中学校のときには、やはりそこの5段階の評価といったところ、評定の部分が内申点として反映されるという中で、ぜひそこの評定の中に、こうした学びに向かう力、態度といったところもしっかりと評価できること、評定の中に加えられるといったところを大切にして議論できるといいなというふうに思いまして、お二方の意見に大変賛同いたしました。ありがとうございます。
【友添主査】 ありがとうございます。
赤間室長、第3の道の可能性はどうですか。ないんだったらないで、議論を進めていければと思うんですけれども。
【赤間企画調整室長】 我々としては、このワーキングでの御議論を踏まえて、最適な合意形成というのがどこにあるのかということを模索しながら、検討を進めていきたいと思っております。
その際に、教科としての特性というもののバランスと、この論点整理の全体の議論の中の整合性を可能な限り取りながら、議論を進めていければと思っております。
【友添主査】 ありがとうございます。今日の議論を集約していくと、合理的なところで言うと、やはり2番目の道、第2の道が一番合理的で、なおかつ順当で、しかもアップデートに関しても、精選のしようによって、非常に前向きに進めることができるだろうという御意見が主だったように思います。
最後になります。御意見をいただければありがたいです。全体をまとめてもいいですし、細かなところでも結構です。いかがでしょうか。
佐藤 若先生、よろしくお願いします。
【佐藤(若)委員】 本日の皆様方のお話をお聞きして、学びに向かう力、人間性等の指導が私は必要だなと思っています。それは指導しないと育成できないと感じて、ぜひ佐藤先生と岡出先生のように整理していただいたような方向性に行けばすごくいいなと思っています。
私、前の資料に戻りますが、先ほど実は前の体育の授業を学ぶ意義、価値のところの2枚目のところで、幸せな人生とよりよい社会というようなところのフレーズの中で、「運動・スポーツとの「する、みる、支える、集まる、つながる」等」というふうなフレーズを見たときに、ちょっと前回の見方・考え方では、多様な関わり方ということで、「する、みる、支える、知る」となっており、学習指導要領を実践してきたという思いがあって、「する、みる、支える、知る」という4つのワードはすごく大事に思ってきましたが、今回提案の学ぶ意義・価値のところでは、「する、みる、支える、集まる、つながる」となっています。また新しいフレーズになるという確認でよろしいのでしょうか?すごくいいワードだなとも思っていたところです。
【友添主査】 ありがとうございます。「集まる、つながる」は、改正スポーツ基本法、これ、9月1日から施行されています。そこに掲示されている用語で、非常に重要だということで今お示しをいただいているところでもあるかと思います。
ただし、ここでの議論を踏まえながら、どのような関わり方でいくのか、どういう視点で関わるのかということは、ここの会議でお決めいただく方向かと思っていますが、室長、よろしいですかね。ありがとうございます。
今日、御発言の機会を逸した委員の方々、もしいらっしゃいましたら、ぜひ事務局に御意見等をお寄せいただければと思いますし、まだ実は言い足りない、今日は時間がなかったからもっといろいろ考えているんだということがありましたら、ぜひ事務局宛てに御意見をいただければと思います。
今日は、非常に深い議論まで進むことができてよかったかと思います。少しまとめになりますけれども、学びに向かう力、人間性等については、細かいことは言いませんけれども、第2の道を私たちは今日を境に選びつつあるし、選んだという形になるかと思っています。
本日はどうもいろいろありがとうございました。これで議事の全てを終わりにしたいと思います。
次回の予定について、事務局より赤間室長、お願いします。
【赤間企画調整室長】 次回は、11月10日の16時からを予定しておりますが、正式には、後日改めて御連絡をさせていただきます。
以上でございます。
【友添主査】 ありがとうございました。
遅い時間になりました。もう外は真っ暗になっています。
以上をもちまして、第2回体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループを閉会したいと思います。ワーキング名、少し長いですので、略称で体育・保健体育ワーキングと言ってもいいかもしれないですね。
どうも皆さん、ありがとうございました。これで終わります。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
【日野委員】
体育・保健体育等を学ぶ意義や価値は、体育・保健体育という教科の枠を超えて、学校教育全体の中で共有されるべきものであると思います。
学習指導要領の総則(第3)に「学校における体育・健康に関する指導は、…」とあるように、教育課程全体を見通したカリキュラム・マネジメントの視点からも、子供の身体性や心身の健康、ウェルビーイング、非認知能力の育成は、学校教育全体の課題として位置づけられる必要があると思います。
体育・保健体育は、その実現に向けて中心的な役割を担う教科であることをアピールできればと思います。