教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキング(第1回) 議事録

1.日時

令和7年9月26日(金曜日)9時30分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【嶋田教育課程課学校調査官】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループを開催させていただきます。本日は大変御多忙の中、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局教育課程課長、武藤久慶より御挨拶申し上げます。
【武藤教育課程課長】  先生方、おはようございます。教育課程課長の武藤でございます。先生方におかれましては、大変御多忙の中、本ワーキンググループに御参加をいただきまして、心から感謝を申し上げます。
 御案内のとおり、平成29年、30年に改訂いたしました学習指導要領に基づきまして、今、全国の学校現場で授業改善が行われているところでございますけれども、本日は、次の学習指導要領に向けた改訂の議論をしていただくということでお集まりをいただいたところでございます。
 とりわけ、このワーキンググループの所掌になります社会科、地理歴史科、公民科におきましては、持続可能な社会の創り手として求められる力の育成をどうやって図っていくのか、そうした御審議をお願いするためにお集まりいただきました。
 後ほど、本ワーキンググループの担当の高見より御説明をさせていただきますが、中教審の教育課程企画特別部会におきまして、次期学習指導要領の改訂に向けた論点整理が取りまとまったところでございます。この中で大きく3つの方向性が基本的な考え方として示されております。
 1つ目が主体的・対話的で深い学びの一層の具現化・深化でございます。2つ目が多様性の包摂ということで、多様な個性や特性、あるいは背景を有する子供たちが大変多くなっていると。この実態に向き合うという観点、それから、そうした多様性を個人の力と社会の力に変えていくような、そういう観点、これも大事にしたいと考えております。3つ目として、実現可能性の確保をということで、教育課程の実施に伴って先生方に過度な負担や負担感が生じにくい、持続可能な在り方を追求し、先生方と子供たちの双方に余白をつくっていくことで豊かな学びにつなげると、こういう大きく3つの方向性が基本的な考え方として示されたところでございます。
 この3つを、本ワーキンググループも含めて、全てのワーキンググループにおける審議に通底させていくという中で、それに加えて教科ごとの豊かな観点を付け加えていただくと、こういう仕切りで、ぜひ御審議をお願いしたいと思っております。
 このワーキングは令和8年度夏頃までに審議のまとめをお出しいただきたいと考えております。この社会科、地理歴史科、公民科は極めて重要な教科でございますので、ぜひ先生方の活発な御議論を賜りまして、質の高い教育活動がもっと生まれていくような、新しい学習指導要領を築いてまいりたいと思います。
 簡単ではございますが、私からの挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【嶋田教育課程課学校調査官】  それでは、議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告いたします。資料2の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されております。主査及び主査代理につきましては、奈須教育課程部会長より、土井真一委員を主査に、梅津正美委員を主査代理にそれぞれ御指名いただいておりますので、御報告申し上げます。
 なお、本ワーキンググループの委員の皆様におかれましては、資料1の社会・地理歴史・公民ワーキンググループの委員名簿を御参照ください。
 それでは、議事に入ります前に、土井主査から一言御挨拶をお願いいたします。
【土井主査】  このたび本ワーキンググループの主査を仰せつかりました土井でございます。力不足で恐縮でございますが、委員の先生方に充実した御議論をしていただくことができるよう努めたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
【嶋田教育課程課学校調査官】  ありがとうございました。それでは、本ワーキンググループの進行はこれより土井主査にお願いいたします。
【土井主査】  それでは、これより議事に入ります。本ワーキンググループの審議等につきましては、資料2の教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくとともに、第6条に基づき、議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱います。それでは、事務局より会議の留意事項を御説明願います。
【嶋田教育課程課学校調査官】  本ワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言願います。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただくようにお願いいたします。事務局からの説明は以上でございます。
【土井主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題1に移ります。社会・地理歴史・公民の改善充実について、その現状と課題及び検討事項を整理していただいていますので、まず、事務局より説明をお願いいたします。
【高見主任教育企画調整官】  主任教育企画調整官をしております高見と申します。私からは、現行の学習指導要領と今回の諮問事項、企画特別部会の論点整理の概要、本ワーキングにおける課題と検討事項について説明いたします。
 初めに、資料の7を御覧ください。1ページ目から5ページ目にかけまして、学習指導要領の基本的な考え方や法的な位置付け、変遷などについて、6ページ目には、現行指導要領として改訂の大きな柱となった知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成、学びに向かう力、人間性等の涵養といった資質・能力の明確化や、主体的・対話的で深い学びの視点からの学習課程の改善等について示しております。
 また、7ページ目以降に、現行学習指導要領の構成や内容項目の一覧を掲げるとともに、特に21ページ、最後のページになりますけれども、平成30年の改訂における高等学校の大規模な科目構成の再編の概要も示しておりますので、審議に当たっての参考として御覧いただければと存じます。
 続きまして、資料の3-2を御覧ください。昨年12月25日に文部科学大臣より中央教育審議会に対して、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方についての諮問がなされました。この中では、2ページ目にあるとおり、第一に、より質の高い、深い学びを実現し、資質・能力の育成に繋がると同時に、分かりやすく、使いやすい学習指導要領の在り方、第二に、多様な個性・特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方、第三に、これからの時代に育成すべき資質・能力を踏まえた、各教科等やその目標・内容の在り方、第四に、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む学習指導要領の趣旨の着実な実施のための方策などを中心として、これらに関連する事項を含め、初等中等教育における教育課程の基準の在り方について幅広く検討することが諮問において求められております。
 続きまして、資料5を御覧ください。先ほど説明した諮問を受け、教育課程の枠組みに関する事項や教科横断的な事項を中心として、教育課程企画特別部会において、本年1月以降、13回にわたって集中的な審議が行われ、先週19日に論点整理として取りまとめられ、25日、昨日でございますけれども、教育課程部会で了承されました。論点整理の詳細につきましては、先日事務局より解説動画を委員の皆様に共有しておりますので、全体の説明は割愛させていただきますが、特に本ワーキンググループにおける検討に当たって重要な点に絞って説明させていただきます。
 まず、初めに5ページ目を御覧ください。次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方として、深い学びの実装、多様性の包摂、実現可能性の確保という3つの視点を一体的に具現化していくことによって、多様な子供たちの深い学びを確かなものとし、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育むこととしております。
 続いて、6ページ目を御覧ください。先に述べた人材を育成していくために、各教科等で検討することが示されておりますが、特に本ワーキンググループにおいては、各教科等の欄にございますとおり、生きて働く確かな知識の習得、興味・関心が広がる教材・学習方法の選択の促進、自分の意見を表現する活動の充実、探究的な要素を持つ学習活動の充実、家庭学習の内容を自律的に決められるような段階的指導といった視点にも留意いただきながら、このワーキンググループにおいても検討を進めていただければと存じます。
 続いて、12ページを御覧ください。より深い学びを実現する授業のイメージを教師が持てるよう、前回改訂の構造化をさらに発展させ、知識及び技能、思考力、判断力、表現力等の資質・能力の深まりを示す「タテ」の関係、知識及び技能と思考力、判断力、表現力等の相互の関係を示す「ヨコ」の関係を、教師がつかみ取りやすくする観点から、中核的な概念の深い理解と、複雑な課題の解決の具体について、各教科の特性を踏まえて検討していくこととされております。
 具体的なイメージとして、現行学習指導要領ベースでありますが、13ページに中学校の数学の例、14ページに中学校の国語の例が示されております。別途設けられている総則・評価特別部会での今後の検討を踏まえて、本ワーキンググループにおきましても具体的な、中核的な概念等に関する議論を行っていただくことになります。
 続いて、18ページを御覧ください。今次の改訂において新たに設けられた資質・能力の一つである、学びに向かう力・人間性等について、主要な要素や要素間の関係を構造化して分かりやすくする観点から、図のように、「初発の思考や行動を起こす力・好奇心」、「学びの主体的な調整」、「他者との対話や協働」、「学びを方向付ける人間性」の4つの区分で内容、関係性の整理がなされております。これらの内容は各教科においても反映していくことになりますので、今後、本ワーキンググループでも社会科等としての在り方について御審議いただければと存じます。
 21ページを御覧ください。従前の見方・考え方の整理は、見方・考え方が資質・能力の一部と誤解される遠因となっていたといった指摘を踏まえまして、中核的な概念等といった資質・能力の育成を適切な方向に導くとともに、よりよい社会や幸福な人生につなげていける学びの本質的な意義として整理することとされております。
 なお、具体の改善イメージでございますけれども、右の方に記載がございますけれども、各教科を通しての全体の方針は、別途設けられている総則・評価特別部会での今後の検討を踏まえて、本ワーキンググループにおいても議論を行っていただく予定です。
 続いて、34ページを御覧ください。義務教育段階では、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程編成を促進するため、児童生徒や地域の実態を踏まえて、必要に応じて柔軟な教育課程を編成することができる取組を進める予定です。
 40ページを御覧ください。高等学校段階においても、より多様なニーズに対応できるようにするため、柔軟な教育課程の編成が可能となる方向で検討が進められております。
 69ページを御覧ください。これまで述べてきた学習指導要領の構造化や柔軟な教育課程を契機とした教科書についても、中段の改善の方向性にあるとおり、中核的な概念等の獲得に資する内容への重点化や内容の精選、教科書「を」教えるから、教科書「で」教える方向に改善を促すとともに、デジタル学習基盤や図書館等の有効活用も進めることとしております。
 最後に、105ページを御覧ください。今後のスケジュールといたしまして、各ワーキンググループ、これは社会科等ワーキンググループも含めてでございますけども、本論点整理の方向性や内容等を踏まえて検討を進め、遅くとも令和8年の夏頃までに取りまとめを行うこと。その後、教育課程部会での審議まとめを経た上で、令和8年度中に中央教育審議会として答申が取りまとめられるよう、検討を進めること。
 教育課程企画特別部会と各ワーキンググループの関係として、各ワーキンググループにおける審議は、本「論点整理」を的確に踏まえ、各教科等の固有の議論を加味、共有しつつ、さらに豊かなものとすることが極めて重要であり、各教科等や学校段階に閉じたものであってはならないこと。そして、最後のところにありますが、その他として、情報の領域(仮称)、情報・技術科(仮称)の創設、これは今回新たに創設されることになりますけれども、これに伴う標準授業時数の増加について、諮問で示されている年間の標準総授業時数を現在以上に増加させないという方針を前提としつつ、教育課程企画特別部会と総則・評価特別部会にて教育課程全体を見通した観点から検討を行い、令和8年の春頃を目途に一定の結論を得ることなどが示されております。
 論点整理の概要は以上となります。
 続いて、お手元の資料6を御覧ください。ここでは今後の本ワーキンググループの論点として、事務局にて事前に整理した課題と検討事項を整理しております。
 次のページになりますが、課題が青、それから検討事項が赤のページとなっております。まず、初めに2ページ目でございます。現状と成果といたしまして、1つ目、2つ目に今次の学習指導要領で見直しを行った事項、3つ目に全学校段階を通じた問題解決的、課題解決的な学習の過程の充実や、高等学校における科目構成の見直し、4つ目に学習内容・構造の改善の成果として、教育内容の充実が図られ、社会科等の学習について肯定的な回答をした児童生徒の割合を改善してきたことを示しております。
 具体的なデータといたしましては、この資料の7ページ目でございますけれども、7ページにあるとおり、社会科の学習が好きな児童生徒は、小中学校を中心として増加していること。また8ページ目、次のページになりますが、社会科・地理歴史・公民を学習すれば、生活や社会の役に立つと思う児童生徒は増加傾向にあること。
 さらに9ページ目でございますけれども、社会科の授業が分かりやすいと感じる授業が増加していることなどの状況が見られるところでございます。
 3ページ目にお戻りください。検討課題として5点掲げております。1点目は小・中・高等学校における目標・内容・方法の体系的な整理に関する課題です。これまでの系統性は引き継ぎつつ、より一層、内容等の体系的な整理を行う必要があります。2点目は社会的諸情勢の変化に伴う新たな課題です。グローバルな協調や競争に関する課題や、地球環境、地域社会の変化、デジタル技術の発展等を踏まえ、内容の更なる見直しが必要となっております。
 3点目は「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成に関する課題です。社会との接点を持ったり、社会参画意識を育成したりするという観点から、各分野、科目等の学習が有機的な関連を持つ必要があること。一人一人の自己決定権の尊重や社会参画の促進、こども基本法や成年年齢引下げを踏まえた主権者に関する教育の在り方が求められているということ。社会参画について、SNSや生成AIが普及する中で、情報モラルやメディアリテラシーの重要性が一層求められていることなどが挙げられます。
 4点目はAIなどデジタル技術の発展に関する課題です。デジタル学習基盤の一層の活用や、適切かつ有効な情報収集がより求められるようなっております。5点目は社会科等の指導上の環境整備に関する課題です。学校外の機関や地域人材等の協力を得ること等により、実感を持った学習活動を行う必要性が高まっております。
 また、これらを裏づけるデータとして、例えば、11ページ目に飛びますけれども、若者の社会参画意識につきまして、18歳の当事者意識は上昇傾向にありますが、諸外国と比較して低水準である状況も見られること。12ページ、13ページにまたがりますけれども、選挙における投票行動に影響した情報媒体として、若い世代はSNSの情報を挙げていること。
 一方で、15ページ目になりますけれども、SNSの情報について、正確性を見極められると回答している割合は半数程度であること。さらに19ページ目に飛びますけれども、高等学校段階の主権者教育において、模擬選挙等の実践的な学習活動は4割程度であること。そして次のページ、20ページ目になりますけれども、地域でのフィールドワークについて、特に中学校段階の実施率が低いこと。21ページ目にあるとおり、学校内外の施設を活用した学習活動は限定的であることなどの状況を参考として添付しております。
 4ページ目にお戻りください。ここでは本ワーキンググループの検討事項の案を掲げております。まず1ポツとして、教育課程企画特別部会、先ほど論点整理を示しましたけれども、こちらの議論を踏まえた検討事項でございます。
 (1)社会科を通じて育成する資質・能力のあり方・示し方として、「学びに向かう力・人間性等」や「見方・考え方」の新しい整理を踏まえた目標の見直し、中核的な概念等に基づく内容の一層の構造化や、必要に応じた精選、表形式を活用した目標・内容の分かりやすい表現への見直し。
 (2)にあるとおり、社会科の指導と評価の改善・充実のあり方として、社会科における「主体的・対話的で深い学び」の一層の充実を図るための方策の具体化、あるいは評価の見直し。
 (3)にございますように、誰一人取り残さず資質・能力を育成する柔軟な教育課程のあり方として、義務、高校、それぞれの柔軟化の仕組みを踏まえた教育課程・学習指導の工夫、あるいは課題、それを防ぐための運用方策の検討、こういったことを検討事項として掲げております。
 次に、右側に移りますが、2ポツの社会科等に関する課題を踏まえた固有の検討事項でございます。この中では、先ほど青のページもございましたが、各課題を踏まえてということで、小・中・高等学校における目標・内容・方法の体系的な整理を検討事項として掲げるとともに、(2)にございますように、社会的諸情勢の変化に伴う新たな課題を踏まえた検討事項として、国内外の複雑化・多様化する社会の状況を踏まえた内容のあり方、社会の分断や格差の拡大を防ぎ、共生社会の実現を目指す主権者の育成のあり方を示しつつ、検討の方向性として、グローバル化についての内容の一層の充実、あるいは社会の現状を把握する活動の充実等を考えております。
 5ページ目を御覧ください。検討事項の(3)「民主的で持続的な社会の創り手」の育成に関する課題を踏まえた検討事項として、社会構造の変化や災害等への対応を踏まえた、社会の展望と参画についての学習のあり方、地域の特色を踏まえた課題発見・追究・解決の学習過程を含んだ学習活動のあり方と工夫、多様な意見から合意形成を生み出す視点や方法の習得を示しつつ、検討の方向性として、地域調査等を通じた参画意識の育成等を掲げております。
 また、(4)AIなどのデジタル技術の発展に関する課題を踏まえた検討事項として、概念としての習得や、深い意味理解を促す学習のあり方、根拠を踏まえた考察を行うための技能の習得、情報収集・情報活用の重要性の認識と技能の習得を示しつつ、検討の方向性として、「社会的事象について調べまとめる技能」について、新たな状況に対応した整理と充実、確かな情報源に基づく、有用性の高いデジタルコンテンツの積極的活用等を掲げております。
 さらに(5)、上記(1)から(4)を実現する上での環境整備に関する検討事項として、学校外の機関との連携や、具体的な体験を伴う学習、デジタル環境を活用した取組の実施などを通じた、社会に開かれた学習環境の構築を示しつつ、検討の方向性として、地域人材や教育資源の活用の一層の工夫と仕組みの構築、行政機関の協力を掲げております。
 資料の説明は以上となりますが、これらはいずれも議論を円滑に進めていただくに当たっての事務局のたたき台でございますので、記載の内容にかかわらず、より広範かつ深い視点から、委員の方々から様々な御意見をいただければ幸いです。
 私からの説明は以上となります。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは、本日は第1回目で初顔合わせの会でもありますので、委員の皆様お一人ずつから、今後特に検討を進めるべきと考えておられる事項や、審議の進め方に対する御意見等について御発言いただきたいと思います。
 途中退席を予定されている委員を初めに、以降、委員名簿の順に私からお一人ずつ指名させていただきますので、最大3分程度で御発言をお願いします。
 なお、本日多くの委員に御参加いただいており、全ての委員に御発言していただきたく存じますので、誠に恐縮でございますが、発言時間に御配慮いただけますと幸いに存じます。
 それでは、初めに中山委員より御発言をお願いいたします。
【中山委員】  中山と申します。1人目ということで、どのレベルでお話をしていいか、つかみ切れていないので、的外れだったらごめんなさい。12時前に退室いたします。
 今、具体的なところで自由に発言をということなので、思うことを述べさせていただきます。今日の議論では早過ぎるかもしれませんが、検討事項の論点のあたりで、今回結構グローバルな協調とかグローバル化について示されております。その辺で貢献できるかなとは思っております。
 最近ではインド太平洋という一つの枠組みで政治も動いていますし、世の中も太平洋の資源を目指して動いていて、ヨーロッパ、アメリカとかに視点が向きがちですけれども、太平洋地域についての記述とか視点が、これまでの社会系科目に少ないかなと思っておりまして、戦後言及されなかった太平洋についてのことも触れられたらいいなと思っております。
 それから、人種・民族問題で結構メディアも、一般にもいろいろ言われますけれども、社会科の中で人種・民族という言葉の使い方がもう少し検討できるかなということはここ10年ぐらい思っておりまして、その辺も丁寧に発言できたらいいかなと思います。
 どの桁でしゃべっていいか分からないので、いきなりですけれども、自己紹介代わりにこんなことを考えていますということです。ありがとうございました。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは、続いて升野委員より御発言をお願いいたします。
【升野委員】  よろしくお願いいたします。升野と申します。私は今、大学籍におりますけれども、定年まで中高におりまして、中学校及び高校の社会科についていろいろ関わってまいりました。主に経済分野のほうをやってまいりました。最後の現役の4年間は管理職をしておりまして、コロナに直面したわけですけれども、そのときに、学校の学びというのは、先ほどもお言葉が出ましたけれども、余白がないととても続かないなということを実感いたしました。あと、先ほどからICTを用いた学びのことが出ておりますけれども、ICTもとても余白が必要なものでして、そういうことについても目を向けていけるような学校教育でありたいなと思っております。
 また、均質的ではない生徒がどこにもおりますので、そういう子たちに手を差し伸べたり、目を向けたりすると、定数では足りないというところもありましたので、学校の学びと余白、そして、できましたら入試についても考えていけるような会議であればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【土井主査】  それでは、ここから名簿の順でお願いをしたいと思います。池委員より御発言をお願いいたします。
【池委員】  早稲田大学の池と申します。専門は地理教育論でして、最近はフィールドワークについて特に関心を持っております。このフィールドワークというのは地域調査に代表される野外での活動ということですが、学習指導要領のレベルではかなり一貫して重視されてきたわけですが、先ほどの御説明にもありましたように、実際にはかなり実施率が低いというのが大きな問題になっております。
 小学校では結構実施率が高いですが、中学校で資料のとおり、かなり低いですし、あと高校でも大体実施率20%ぐらいと言われております。ですので、なかなか普及が進んでいないというのが実情かと思います。
 フィールドワークを通して身につけられる知識だとかスキルというのは、社会科学習の中で広く活用できるものですし、さらに社会的なスキルの習得ですとか、あるいはリアルな社会との接点を提供する、そういった意味で、かなり私は重要じゃないかなと思っておりますので、フィールドワークの充実が図れればなと個人的には考えております。
 簡単ですが、以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは、次に石井英真委員よりお願いいたします。
【石井(英)委員】  失礼いたします。石井と申します。私は学校教育のカリキュラムとか授業とか評価の研究が専門でして、今回の論点整理をまとめるに当たりましては、企画特別部会のほうに委員として参加しておりました。
 改めて、その企画特別部会の中でまとめられたこの論点整理で言いますと、その中心的なキーワードとして、「多様な子供たちの深い学びを確かなものに」ということがあるわけですけれども、これはどういうことかと言いますと、結局、現行の学習指導要領、社会に開かれた教育課程、それから主体的で対話的で深い学びの実現といった形で、教育の学びの質を追求する。これを社会科に絡めて言いますと、民主的な社会の創り手になるような、そういった方向で子供たちに知性をしっかりと育んでいくということが大事だと思うんです。物知り社会科ではなくて、世の中がちゃんと分かるということだと思います。
 ですから、そのためには、表面的に知識とかそういった項目をなぞるのではなくて、学び深めないといけないというところで、主体的に、対話的に、そして深く学んでいくということが現行学習指導要領の趣旨であると。
 さらに言いますと、今、現状においては、多様性が拡大しているという中において、多様な子供たちで、学びの場も多様化している。しかし、そうであったとしても、全ての子供たちに世の中をしっかりとつかんでいくことのできる、そういった確かな知性を育てていく、この辺が、多様な子供たちに深い学びを確かなものにという理念として今回提起されているかなと思います。
 その中で、学びを深めるためには、厳選された内容を深く学んでいくということが大事になってくる。だからそこで中核的な概念とか方略ということが出てくるわけですけれども、まさにそれは、社会科の現状の課題を克服することにもつながってくるかなと思います。
 カリキュラムとか授業においては、「双子の過ち」というのがありまして、一つは活動主義、逆にもう一つは網羅主義というのがあります。小学校で言うと、活動あって学びなし、活動主義の傾向が強いのではないか。さらに言うと、中高になると網羅主義、とにかく教科書をなぞって終わるというようなことです。明治維新にしても、一つ一つの年号とか、学制は何年に発布されて、そういったことは知っているけれども、結局、「近代化って何ですか」と聞かれてもよく分からない。つまり、個別の、そういった物知りではあるけれども、根本の世の中をつかむ上での基本的な概念がつかめていないんじゃないかというようなところです。
 物知りというので、年号は覚えるものですけども、他方、歴史の流れは理解するというようなことで言いますと、内容をよりメタな桁で捉えることが重要で、中核的な概念というのは、よりメタな内容ということになるわけです。ですから、明治維新よりも近代化ということがよりメタになりますけども、そういったメタな内容で大きな、そういったビッグアイデアなどと言いますけども、中核的な内容をちゃんと重点化することによって、個別の事項を覚えるとかではなくて、メタな内容なので議論し思考するといった、そういう活動がやりやすくなる。近代化だったら近代化といった、そういった概念で通すことによって、小学校も中学校も高校も一貫して、重要な概念とか社会認識といったものを深めていくような、そういった一貫性のあるカリキュラムにつなげていく、この辺がポイントかと思います。
 ですから、活動あって学びなしということで言いますと、世の中を読み解く眼鏡としてのそういった中核的な概念を明確にする、さらに言うと、その中核的な概念といったもの、メタなものに注目することによって、中高においてはもっと大きな問いを扱える。この辺が重要かと思います。中高生が、年号を覚えましょうよというだけではなくて、それこそ教科書にしても、入試にしてもそうですけれども、そういった大きな問いを扱えるようにしていく。
歴史のいろんなものを学ぶんですけど、結局そもそも時期区分とは何ですか、みたいなこともよく分からない。時代というのはどのように区分されるのか、そのときのポイントとしては何なのかということも問われず、よく分からないままに世の中に出ていくということもあろうかと思います。
 ですから、改めて、この中核的な概念云々ということを軸にしながら、社会科のカリキュラムを構造化し、さらに言うと、それで物知り社会科を超えて、ちゃんと世の中をしっかりととらまえていく。そういった眼鏡というかレンズ、そういったものを駆使して世の中をつかみ、それに関わることを大事にするような、そういった活動主義と網羅主義を克服するような、そういった展望が見いだせるとよいのではないか。それがまさに民主主義を支える社会の担い手を育成する、社会科の任務を果たすことに繋がるんじゃないかなと思っています。
 そのような思いを持って、大きなカリキュラム全体、学習指導要領改訂全体の動きの中で、この社会科というのは逆に非常に重要な位置を占めてくるだろうと思いますので、そういったスタンスで、これからの議論に関わらせていただけたらと思っております。よろしくお願いします。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは石井正広委員、お願いいたします。
【石井(正)委員】  皆さん、こんにちは。私は、学校現場の立場からお話することになると思っています。先ほど御提案がありましたワーキンググループにおける検討事項・論点の中で、2点についてお話させていただきます。
 1-1については、今回の改訂で目標に見方・考え方が位置づけられて、学校現場でも、見方・考え方を基軸にした教材研究や資料の焦点化などが行われています。また、考える学習についても、質が随分高まってきているというのが現場の私の感覚です。ですので、授業改善は一定の成果が上がっている最中だと思うので、ぜひ、この取組を進められるような改訂にしていきたいというのが私の考えです。
 もう一点は、2-3についてです。小学校では内容の取扱いに発展を考えたり、関わり方を選択・判断したりする学習が位置づけられています。学校現場では、この学習に積極的に取り組んで、実践を積み重ねてきているところです。ただ、難しさもあって、アイデア合戦になってしまったり、実際の社会の課題が捉え切れないまま、いろいろな対策を考えて話し合うことにとどまってしまったりする実践もまま見られているところです。
 ですので、よりよい社会の形成者としての基礎を育成するためには必要な学習だと思うので、より現実社会の課題を捉えて、どう学習の内容に反映させていくのかを考えていく必要があります。こういった学習は現社会とつながって実感のある学習じゃないと、なかなか価値が見いだせないことがあると思っています。例えば、私の学校では、来週、5年食料生産の学習で食料サミットを子供たちが行うのですけども、実際の農家の方や水産試験場の方、あとは果物農家の方とオンラインでつながって、子供たちだけで話し合うんじゃなくて、社会の人とも対話して一緒にこれからの食料生産を考えていくというような取組をしています。
 オンラインを使うことでそういった現実社会とつながった学習が、これまで以上に実現できるんじゃないかなと思っていますので、ぜひ、そういう選択・判断や発展を考えるような学習の充実を私は考えていきたいと思っているところです。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは井田委員、お願いいたします。
【井田委員】  井田と申します。大学籍でしたけれども、退職して今はフリーランスです。私の専門は社会教育、特に地理教育ですが、先ほど池先生がおっしゃっていましたように、フィールドワークについては強い関心を持っていて、どのようにフィールドワークを現場でできるようにするかというのは大きな課題かなと思っています。
 そういう意味では、今回好奇心という話が出てきましたけども、子供の好奇心をいかに生かして、それをフィールドワークにつなげて、フィールドワークでさらにまた好奇心を強めていくかというようなものが必要になってくるかなとは考えております。
 それから、今まで見方・考え方ということで、いろいろ議論してきましたけども、今回は中核的な概念ということで、それを社会科としてまとめられるのか、あるいは地理歴史・公民としての中核的概念として考えるのか、そういうことでまた議論していかなければいけないと思うんですけども、共通なものと、それぞれの科目独特なものがあると思いますので、それを踏まえた中核的な概念というのが議論できれば面白いかなと思っています。
 それから、今、課題だと思っていますのは、小中高の連携ということで、内容的にそれぞれ学習指導要領上ではつながっているはずですけども、現場の先生たちがそれぞれ独立して考えていて、なかなか小中高の連携ができていない。そこで、どのように小中高の連携をつけていくか、内容論、方法論を含めてですけども。そうした意味では、教師の負担が大きいと言われますが、研修というのが重要で、研修等で小中高の先生方がうまく連携できればいいんじゃないかと考えていますけども、そういう観点で議論させていただければと思っています。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは板倉委員、お願いいたします。
【板倉委員】  福島県で小学校の教員をしております板倉正哉と申します。よろしくお願いいたします。先ほど事務局より御説明いただきました点について、2点お話しさせていただきます。
 1点目は、検討事項にありました体系的な整理についてです。現場の状況を見たときに、学校段階のつながりを意識して資質・能力を育成するという意識は高くはないと感じています。令和6年に行われた指導主事会の中では、視学官や調査官の先生方から行政説明をいただきまして、接続・発展について御指導いただいたところですが、既に現行の学習指導要領で示されていることでも、説明の仕方や示し方によって、学校段階における違いや系統性への理解は大きく変わるということを感じています。
 恐らく全国の指導主事の先生方でも、そこまでの意識を持って学習指導要領を読み込むのは難しい状況であったことを考えると、現場の先生はなおさらかと思いますので、体系的な整理はとても大事だと感じています。
 また、それに関連しまして、系統性という意味では、企画特別部会の中で石井先生がお示ししてくださいました構造化、表形式化というものを、社会科・地歴・公民でどう表現するのか、その表現の仕方次第で、現場に浸透するのかどうかが大きく左右されると考えています。
 2点目は、見方・考え方についてです。先ほどからお話に出ているところですが、これまで実際に子供と授業をする中で、社会的事象の見方・考え方が鍛えられて、対話の中でより思考が深まっていく姿をたくさん見てきましたので、見方・考え方を繰り返し働かせて、そのよさを感じて鍛えられていくものであり、同じ事象を見ても、個々に着目する視点が違うというよさがあるからこそ、深い学びにつながっていくのだと感じています。評価すべき資質・能力ではないという立ち位置が重要だったのかなと感じているのですが。
 これについて、小学校段階のデータになってしまうのですが、実施状況調査の教師質問紙の中に、「見方・考え方を意識して指導していますか」という項目がありますが、3年から6年にかけて肯定的な回答をする割合が次第に上がっているというのも、この「鍛えられる」ということと相関があるのかなと感じています。課題に挙がっているように混同されやすいという点はあるのかもしれないのですが、分かりやすく整理、表記することで、求められている「質の高い、深い学び」につながっていくのではないかと感じています。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは井柳委員、お願いいたします。
【井柳委員】  静岡大学の井柳です。前任校は教員養成大学におりまして、社会科教育講座におりました。主に主権者教育とか社会参画という分野での発言といったことを、今回は私が関わっている関係で、させていただくことになろうかと思っています。
 主権者教育に対する期待というのは、社会からの期待が今、非常に大きな分野の一つだと思っておりますが、一方で、学校現場の中でどのように実質的に意味ある形で教育に落としていくかということが今大きな課題かなと感じています。
 先ほどの資料にもありましたとおり、主権者教育だと、今でも仕組みを学ぶものが多く、実践的な活動、例えば現実の政治的な事象とか社会的な事象を扱った教育が、教育の中ではまだ十分浸透していないということがあって。こういったことを普及していくということも重要だと思うんですが、そのためには、どうしても現場の先生方からすると、中立性にどう配慮していいのかといったちゅうちょがあると思うので、取り組みやすい、実現できるような環境整備とか手法の提示といったことも必要かなと思っています。
 この中に関係機関とか地域人材活用といったことも書かれており、そこも重要だと思っているんですが、私も議会事務局とか選管と関わることがあるんですけれども、そういったところも連携すればすぐに実現できるというわけではなくて、結構地域によって、スタッフとかのリソースの問題があるので、いろんなメニューを提示する中で、どう実現していくかということが、先生方が取り組みやすい環境整備といったものがもう一つ重要かなと思っています。
 それから2点目に、主権者教育に関して、政治参画、それから社会参画と両方ありますけれども、一つは分野横断的な取組といったことの指摘がありましたが、ぜひこういったことを進めていただきたいなという期待があって。分野横断的、社会科だけではなくて、意見の表明とか、議論のスキルとか、意思決定、合意形成といったものについて、社会科以外の科目、さらに言えば、学校内における、学校の在り方と、いろんな学級活動とか、特別活動とか、そういったところでの主権者教育といったものを、そういったところでも意識していくということが必要かなと思っています。
 また、あと現状で言うと、どうしても熱心な先生の取組とそうでない場合との落差があるかなと感じていますので、小中高、学年も継続的な取組ができるよう、有機的な連関という言葉がありましたけども、そういった形で、いろんな形で有機的に、分野横断的にある学校内での取組、それから継続的な取組の中で主権者教育といったものが実質的に進んでほしいなと思っています。
 最後に短く1点、情報リテラシーについて、最近選挙とネットの関係でいろんな課題が出てきていますので、情報入手、情報発信について、情報媒体の特性を踏まえて、政治とか選挙とかも意識した情報リテラシーといったことも重要ではないかと考えています。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは、次、岩戸委員、お願いいたします。
【岩戸委員】  奈良大学の岩戸と申します。私は考古学を専攻しておりまして、長らく国立博物館であるとか文化財の研究所におりまして、博物館では博物館教育、生涯教育を含めて学校、生徒に文化財の面白さを伝えるというようなことをずっとやっておりました。その後、文化財研究所でも遺跡の活用ですとか、実際に学校教育に携わったことはないですけれども、そういう形で仕事をずっと担当してきておりました。
 大学に行ったのは昨年からですけれども、恐らく今回の委員を委嘱されましたのも、そういった博物館でのキャリアということだったと思います。博物館との連携ということも含めて担当させていただくことになろうかと思います。
 私自身の経験から言いましても、私は古代の8世紀とか奈良時代を研究しているんですけれども、そんな古いところを研究して一体何の役に立つのかということは、もう人生で数え切れないぐらい一般の方に聞かれてきたんですけれども、歴史学なり過去のことを研究することが、いかに社会に生かせられるかということはずっと考えてきたわけです。
 歴史から申しますと、他者へのまなざしというのを、子供たちには歴史を通じて身につけてほしいなと思っておりまして。例えば地理でしたら、現代という時間の中で、横の広がり、日本の各地域であったり、世界であったりというような横への広がりになっていくかと思うんですけれども、歴史の場合は、過去という時間軸の中で遡っていく。今、自分とは違うバックグラウンドにいた人々の営みがどういったものであるかということを知るということになるかと思います。
 自分と違う状況や条件下で、それなりに皆が幸福な生活を求めて生きてきた、それを学ぶことが、歴史を学び、また今現在、グローバル社会で様々なバックグラウンドにある人々と付き合っていく中で、歴史を学ぶということが現代を生きる力にもなるんだということをいろんなところでアピールしてきました。
 子供たちがやってきたときに私がよく話すのは、歴史というのはすごく過去形として語られることが多いですけれども、現在完了として知ってほしい、大人向けの話ですけれども。今私たちが生活していることが100年後、1,000年後には歴史になっていくんだという話をすると、ぱっと子供たちの顔つきが変わるんですよね。
 また、過去を単に教科書で、文字づらで学ぶだけでなくて、そこで遺跡であったり、博物館で生の資料を見てもらって実感する、そういったか情感、感情のところにもつないでいくというようなことを博物館でもできたらいいなと思っておりました。
 今後、デジタルの活用、ICTの活用は一層求められていくとは思うんですけれども、できれば一番最初のスタート地点というのはオリジナルの部分、実物、それから実際の場所というところを経験した上での、そこから好奇心を発展、子供たちが歓喜する中での、実際に行けない遠いところ、離れたのをデジタルで使うというような使い方をしてもらえたらいいなと思っていまして。
 現状も、例えば博物館に学校で来られるんですけれども、なかなか、熱心な先生と熱心な学芸員がぴたっと合わないとうまく歯車が回らないというところもありまして、現在ですと、熱心な先生、熱心な学芸員、かなり個人に偏ったところに寄っていて、システムとしては、あまりまだ過渡期かなと思っております。そういう意味では、子供たちに実物や実際の経験を踏まえて、そういった歴史教育、先ほど申しました現代へ生かせる力を育んでいく、そういったシステムをうまくつくっていけばいいなと思っております。
 簡単ですが、以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは次、大村委員、お願いいたします。
【大村委員】  失礼いたします。大村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。社会科も含め、授業研究や学ぶための共同体の在り方とか、特に初等教育の学びの在り方とか深まりについて研究をしています。私からは、初回ということもありますので、大枠として目指すことと、学びのありようと指導要領における示し方のビジョンということで感じていることを3点お話ししたいと思います。
 まず1点目、目指すことですが、「国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者としての公民的資質の育成」と、民主的シティズンシップとか主権者の育成を直接的に目標に掲げている教科ということの重要性を先生方が明確に自覚できるように、細かいこと一つ一つももちろん大切ですけど、常にこの教科がいかに重要な教科であるのか、常にそこに立ち返るという習慣を教師が持てるようにすることが大事だと思います。
 そのための問題解決的な学習であり、課題解決的な学習なのだということ。そのことを意識した指導要領になるように一緒に考えさせていただきたいなと思っています。それが1点目です。
 2点目は、学びのありようについてですが、よりよい社会とは何か自体を問い続ける子供を育てなければならないわけなので、そのためには、事実を正確に捉えるとか、資料を読み解くとか、フェイクを見抜くとか、今であればこれはとても重要だと思うんですが、社会とか複雑な問題を深く考えるための情報活用能力が不可欠だし、関連づけて考える思考の経験、あと、過去や現状から考えたことを基に未来の在り方を考える経験の積み重ねが必要だし、そのプロセスで授業の中で多様な他者との対話をすること自体が民主的な社会の形成者として必要だと思います。
 それを通して知識や概念を形成したり、身につけたりしていくのであって、結果的に何を獲得したかというよりも、重要なのは、そのような問い続けるとか、対話し続けるとか、考え合い続ける中で概念や態度を形成していくという授業をデフォルトとする、日常化していくことが必要だと思います。そのために、地域や学校の実態に応じて、余白もうまく活用しながら、学びを充実させることが伝わるように示していく必要があるのだろうなと思いました。それが2点目です。
 最後3点目で、具体的な示し方については今後の検討だと思うんですが、見方・考え方とか、中核的な概念と、それが現実場面で具体化、細分化された知識の関係を明示することの必要性とともに、後者はあくまでも事例であって、それ自体を暗記することが公民的資質を育むことではないということが分かりやすく示されるようにすることが大切だろうなと思いました。
 以上、簡単に3点ですが、感じたことです。どうぞよろしくお願いします。以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは唐木委員、お願いいたします。
【唐木委員】  よろしくお願いいたします。筑波大学の唐木です。これまで先生方がお話しになったことを繰り返すような形になりますけれども、3点ほど述べさせていただきます。
 1点目は、社会参画に関わる教育が重要かなと思っているんですけれども、例えば地域の特色を踏まえた課題解決的な学習とか、フィールドワークもそれに含まれますし、あと外部機関、地域人材との連携というのもそうかなとも思っています。あと子供の意見表明、議会との連携みたいなことも語られていて、これはすごく大切にしていかなければならないことだなと思いつつ、一方で、整理とか、精選とか、見直しとか、厳選という言葉が出てきて、この辺りの教育内容を少し減らしていくということと、あと社会参画は結構時間かかるものですから、教育内容を増やすようなところと、この2つのバランスをどのように取っていくのかということだと思うんですよね。
 多分、教育課程企画特別部会で考えていたこと、それは知識とか、概念とか、そういったところに注目していくことで統合されていくものだという理屈だろうと思いますが、なかなか教科の中に入ってくると、その統合的なカリキュラム開発の原理というのは難しいところだと思うので、ぜひその辺りに関わる理論を構築していってほしいなというのが1点目です。
 2点目は、教科横断的というところはすごく重要かなと思っていて、これがこのワーキングでどこまで議論されるのかというのは興味深いなと思っています。先ほどお話しした社会参画に関わる教育も、結局社会科系のものが中心だけれども、多く紙面が割かれているのは特別活動です。特別活動との連携もすごく重要かなと思いますし、消費者教育で言えば、家庭科との連携というのもありますので、こういった教科横断的な観点をこのワーキングでどこまで議論して、連携を図るような理論をつくれるかというところもすごく重要かなと思っています。
 3つ目は、系統性と体系性、ここはすごく肝になるところだと思っているので、小中高の系統性というところと、あとすごく重要ですが、体系性、特に地歴公の体系性、多分このワーキンググループが終わった先には、具体的な学習指導要領の作成の作業に入っていき、そうするともう地歴公に分かれて、なかなか一緒に議論する機会はないのかなと思うと、社会系教科、社会科として一括りにされたときに、例えば見方・考え方をどのように設定するのかというあたりのところを議論していただいた上で、社会科、社会系教科としてのまとまりをぜひ検討していただければと思います。
 以上になります。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは北川委員、お願いいたします。
【北川委員】  皆さん、こんにちは。北川と申します。北川智子ですけれども、本を書いているときには私は英語名の北川ケイトとして書いています。私は今オーストラリアに在住で、ふだんは実は物理学の教授ですけども、今まで、最近は「世界の数学史」という本を英語で出していまして、それが日本語に最近もなったところです。なので、視点として、海外からの視点と、世界を見据えた世界史みたいなところとか、数学からの視点とか、さっき唐木先生がおっしゃっていたように「教科横断的」ということもあって、少し違う目線からの意見が取り入れられたらいいのかなと思ってこの担当をお引受けいたしました。
 皆さんがおっしゃっていたように、デジタル化ということに関しましても、オーストラリアに引っ越す前に、私はJAXAの宇宙教育センターのセンター長をしていたんですけども、日本にそのとき初めて教育の関わりとして帰ってきまして、そのときに、デジタル化をすごく進めようと思って、1人1台のタブレットで学習できるという形のサンプルを2つ3つつくってみました。
 そのときに、これは教科にかかわらず、いろんな意味で、いろんなデジタルな形を駆使して教科書の内容を反映しながら、それにまた補完するものもつくりながらという活動ができたらいいなと思って進めてきたという過程もあって、今回、私の専門の歴史ということで、この社会のワーキンググループにいるんですけども、できればそういう形で、何かしら経験とか、そんなことを取り込めていければいいかなと思います。
 なので、少しバックグラウンドが違うんですけれども、皆さんの先生方の議論をしてあるところから学ぶことも多いですし、また、ぜひ私も、今はオーストラリアですけども、もともと歴史を教えていたのはアメリカのハーバード大学で、あと、その後に世界の歴史ということで、ドイツとか南アフリカに教授として行ったこともあるので、そういう意味では、いろんなカルチャーの視点から、今の進め方の中の議論をどう見えるかという形でリフレクションを出していければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは、続いて黒田委員、お願いいたします。
 すみません、順番が前後するようですが、先に小林委員、お願いできますでしょうか。
【小林委員】  東京都立三鷹中等教育学校の校長の小林正人と申します。全国の高校の地理の教員等で組織しています全国地理教育研究会の会長も兼ねております。私から今日3点お話しさせていただきたいなと思っています。
 今、一番私が思うに、学校で、地理だけではないですけれども、社会・地理歴史・公民全部関わりますが、どうしてもカリキュラムオーバーロードの問題があると思います。教科書が非常に厚くなっていまして、内容も豊富になっています。網羅的に書かれていて、また教員も網羅的にそれを全部扱わなければならないということで、幾ら時間があっても足らないというような状況が一つあると思っています。
 それに対して、今回、学習指導要領の構造化ということで、中核的概念等、表形式、箇条書などの学習指導要領の構造化を図っていくことについては、学習項目とか学習内容の精選に繋がるものとして、非常に期待しているところであります。ただ、これは簡単にはいかないのではないかなと思っていまして、議論にも時間がかかるように思っております。また、示し方も非常に分かりやすいものにしていかないといけないのかなと考えているところでございます。
 次に、2つ目としては、見方・考え方の再整備というところでありますけれども、2つの側面があって、1つとしては、各教科等の学びの深まりを示す。2つ目としては、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核を示すということでありまして、今回は側面の2のほうの、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核に焦点化をして、より端的に示していくということで論点整理のほうで示されていると思いますけれども、高校の地理の現場で言うと、どちらかというと地理学習を深めるための視点、方法として活用している実践が多いのかなと思っています。
 ただ、この見方・考え方を活用した授業というのは、新規採用者とか、他の科目の教員には難しいです。ですから、混乱なく行っていくためには、分かりやすさが必要かなと思っております。この見方・考え方の改善にも相当の時間が必要ではないかなと思っております。
 最後に、民主的で持続可能な社会の創り手の育成というところで、ワーキンググループの資料6の論点2の(3)のところにありますが社会参画の意識の涵養というところが極めて重要だと思っています。そのためには、フィールドワーク以外の単元であったとしても、課題を追求したり、解決したりする活動の充実が欠かせないと思っています。ただ、この学習活動というのは多くの授業時間が必要となるわけでありまして、この時間をどうやって捻出するのかというところがポイントになってきます。したがいまして、学習内容の精選と不可分になってくると思っています。
 私からは以上でございます。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは新保委員、お願いいたします。
【新保委員】  皆さん、こんにちは。新保でございます。私は小学校でずっと教員を務めておりました。その中で社会科を主に勉強してきたものでございます。同時に、今、退職しまして、NPOほっかいどう学ということを始めておりまして、地域学習をどうやって充実させていくかというような、そんなお仕事をさせていただいております。
 3点、申し上げたいと思います。まず1つは、論点整理で示された3つの基盤というのがありましたが、これは本当に大事なことで、これを社会科で実現していくという、これが本当に大事だと思います。特に、私は校長としても11年ほど一般的な先生と一緒に社会科を進めていきましたけども、社会科の場合、特に熱心な先生と一般的な先生の間に差が大きいのかなというのは気になっております。一部の熱心な先生と普通の先生の間の差が大きい。これを、みんなが一歩前に進んで、質の高い社会科を進めるというのが重要なことかなと思います。
 立派な学習指導要領ができると思うんですが、それを広く浸透させて、みんなの質が上がるために、どんなアドバイス、助言の仕方が必要なのかとか、その辺も含めて考えていきたいなと思います。
 2点目でございます。私は北海道におりますが、人口減少の加速は本当にすさまじいことで、地域がどんどん疲弊していることを日々感じております。社会科では、この参画ということが非常に重要なキーワードになっておりますけども、これはまさに自分の住んでいる地域・地方をどうしていくかという、そこに関わることも大きいと思います。デジタル、DXは非常に重要でありますが、ただ任せっ放しにしておいたのでは、むしろ地方の学びは先細っていくような危機感も覚えております。地域の学びの充実、地域を誇りに思うような社会科の実現にどうやってDXをつなげていくか、ここも大事な観点かと思います。
 3つ目でございます。災害大国日本でございます。これはもう社会科で本当に取り上げなければならない大事なポイントですが、これについてもっと充実させるべきかなと思います。日本は自然が豊かです。そして同時に、極めてそれが一方では、地震、台風も含め、たくさんの脆弱さがある。これはまだ十分知られていない、学ばれていないのではないか。これは海外との比較というような視点も含めて、もっと充実させるべきでないか。それから、歴史上の災害、これについてもあまり取り上げられることが少ないのかなと思います。さらにはそれを乗り越えてきた先人、我々の今の国をつくってきた様々な取組についても、もっと内容として学ぶべきかなと思っております。
 以上でございます。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】  鈴木裕行と申します。私は今、全国中学校社会科教育研究会の会長ということもあり、このワーキンググループに参加させてもらっていると理解しています。そういった意味では、中学校の社会科教員の現場の思い、声を何とか伝えられたらと思っています。
 中学校の社会科は、御承知のとおり、地理、歴史、公民について、学校にもよりますが、ほぼ1人で全部の分野を担当するという状況にあります。中には地理専門、歴史専門として研究を深めていく者はいっぱいいますが、中学校の社会科として、地理、歴史、公民と3年間を通してどのように教育を行っていくのかという視点は大事にしていけたらと思っています。
 それから、フィールドワークの話が出ていますが、子供たちの体験不足というところは非常に気になるところです。いろんな経験が不足している中で、様々な知識や概念を伝えていこうとしても、学ばせようとしても苦しいところがあるので、フィールドワークの視点が議論として膨らむのは大変楽しみです。
 一方で、教員自身も経験不足があります。研修に努めていても、例えば国会議事堂を見学したこともない、子供の頃に行ったきりというようなこともありますので、研修もそこを考えていかなければいけないです。学習指導要領の中には書き込めないかもしれませんが、その辺も意識した議論ができたらありがたいと思っています。
 そういった中で、教員自身の経験不足も含めて、タブレットパソコンも配備されていることですから、ネット情報、オンラインに頼り過ぎている傾向も多いところも気になるところです。
 それから、もう一つ、協議の視点として、社会科に限らないですが、学習指導要領の在り方に係るところとして、生徒の発達段階について、発達段階に応じてとか発達段階に配慮してという一言で片づけられない現状はあると思います。乱暴な言い方ですけども、中学校は、ついこの間まで小学校6年生の子供たち、そして3年生はもうすぐ高校1年生になる生徒の集まる学校です。小学6年生から高校1年生ぐらいの幅の子供たちを3年間指導していくということを考えたとき、これは書きぶりとか難しいかもしれませんけれど、どの時期にどの分野のどんな学習をするかという大枠をつくる際に、発達段階にもっと配慮した、分かりやすい示し方もあってもいいと思います。
 それと併せて、多様性というところが今回の協議のキーワードになると思いますが、それぞれの子供たちの特性を意識した示し方ができたら良いと思います。抽象的な思考が非常に苦手な子も多くいます。考えて、それを表現していくということに非常に苦しい思いをする子もいます。でも、そういう子供たちも、こういう学習でこの内容までたどり着けばいいのだと安心させられるような、そして指導する側も安心できるような示し方もできたら良いと思っています。
 どうしても学習指導要領は、教員、大人向けのものなので、そこまでの書きぶりを変える必要はないかもしれません。でもそれが教科書の作成段階に変わると、中3で教えるような書きぶりや内容がそのまま中1の内容にもその書きぶりが出てきます。教師自身がそこの発達段階に関する吟味が不足する状況が現状ではあるのではないかと思います。
 歴史も、中学1年生で学び、そして中学3年生までずっと内容が続いているわけで、中1の1学期と中3の1学期の学習の内容や深まりは全く違うところがあると思います。それが学習指導要領の中にうまく表されて、先生たちもそのことを十分に考えられるような示し方ができたら良いと思います。現場の声をうまく伝えられたらという思いで参加しています。どうぞよろしくお願いいたします。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは髙野委員、お願いいたします。
【髙野委員】  初めまして、全国歴史教育研究協議会会長を務めております髙野修一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私からは、初めに高校現場での現状と課題をお話しし、検討課題からは4点ほど指摘をさせていただきたいと思います。
 まず、現状ですけれども、高校における地理総合、歴史総合、公共といった必履修科目の導入は、生徒にとって現代社会の課題を横断的に考える入り口となって、一定の効果は上げていると思います。また、地域課題や防災など身近なテーマを題材にすることによって、学びが役立つ、分かると実感できる生徒が増えている点は大きな前進だと考えています。
 しかし、課題も少なくありません。特に、高校歴史教育では内容が膨大である一方、授業時数が限られており、知識理解と探究学習の両立が難しい状況です。結果として、生徒がなぜ歴史を学ぶのかという問いに十分答えられないまま、知識習得に偏る傾向は残っています。さらに、学校や教員によって実践の格差が大きく、学びの質が均等に確保されていない点も問題です。
 次に、検討課題から4点ほど指摘をさせていただきたいと思います。第1に、小中高の体系的整理についてです。歴史総合や探究科目が導入されたものの、発達段階を踏まえた縦の接続、科目間の横の関連が十分に見えにくいという声が現場にも多くあります。次の学習指導要領の改訂に向けては、今、様々な先生方がお話をされていますけれども、中核的な概念を軸に、より明確な学習系統性を示す必要があるかと思います。
 次に、社会変化への対応です。生成AIの普及やSNSの影響は、生徒の情報収集や判断に大きな影響を及ぼしています。歴史学習でも単なる知識習得にとどまらず、情報を吟味し、自らの意見を、根拠を持って表明する力を育む方向性を強化する必要があると思います。そのためには、メディアリテラシーや情報モラル教育を歴史、公民と結びつけ、より体系的に扱うことが必要だと思っております。
 第3に、民主的で持続可能な社会の創り手の育成について、特に主権者教育の充実についてです。成年年齢の引下げを受け、模擬選挙や地域連携の実践は広がっていますが、まだまだ形式的に終わる例も多い状況です。歴史や公民の授業の中で社会参画の意味を実感できるようにすることが、民主的で持続可能な社会の担い手を育成するための鍵になると考えています。
 4点目、最後に指導環境の整備についてです。外部人材や地域資源の活用、デジタル教材の充実が進めば、生徒の主体的な探究活動を一層支えることができます。現場の教員が過度な負担を抱えずに質の高い学びを実現できる仕組みが、このワーキンググループでできればと思っております。
 以上を踏まえて、次期学習指導要領の議論においては、高校の歴史教育を知識の暗記から未来を構想する力の育成へと確実に転換できるよう議論が進められ、検討が進められればと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 以上でございます。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは田中委員、お願いいたします。
【田中委員】  法政大学の田中と申します。よろしくお願いいたします。私は国際法の研究をしております。ですので、教育ということについては全く素人ですけれども、その辺りについては先生方にいろいろと教えていただきながら、教える内容のところで少し意見を述べさせていただければいいのかなと思っております。特に、先ほど御説明いただいた検討事項の中でも、グローバル化についての内容の一層の充実という点がありましたので、そういった部分について国際法学の立場から少し考えを示させていただければいいかなと思っております。
 普段大学の法学部で学生と接していますと、学生の国際法とか国際的な問題に対する関心はすごく以前に比べて、例えば10年前とかに比べてすごく増しているなと、最近の国際情勢を受けてだと思いますけれども、感じます。他方で、高校までの段階で十分な前提的な理解を得た上で入ってきてくれるかというと、必ずしもそうではないなというような感触、印象があります。
 それがどうしてなのかなというのが十分に分かっているわけではありませんけれども、一つ想像するのは、国際社会の構造が全く国内社会とは異なるというところがすごく分かりにくくて十分伝わっていないのかなという気がしますので、その辺りをうまく分かりやすく伝えられるような工夫ができればいいかなと思っております。
 もう一点気になりますのは、これは学生とか生徒とかだけではなくて、日本社会全体の課題かもしれないですけれども、国際法とか、あるいは国際的な制度を、外から、あるいは上から押しつけられたものと見て、あまり自分たちが関わっていないような、外にあるものというような印象を持っていることが多いのではないかという気がするんですけれども、そうではなくて、日本も国際社会を形づくる一つのメンバーとして、主体的に、そしてまた日本という国家全体としてだけではなくて、一人一人がもっと主体的に関わっていけるようにということが大切だと思いますので、そういった視点が入れられるといいのかなと思っております。
 簡単ですが以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは、順番が少し前後してしまいましたが、黒田委員、お願いできますでしょうか。
【黒田委員】  御配慮いただきありがとうございます。私は香川県で教頭をしております。現場の人間として現在の社会科について非常に大きな成果を感じています。現行の学習指導要領は非常によくできているなと感じていて、社会科でずっと言われ続けてきたんですけど、曖昧だった見方・考え方が明確に出されたこととか、単元の中で問題解決学習を通すことや、内容ごとに概念、基礎的な知識、それを形成する思考、判断、表現、見方・考え方がある種、既に構造的に示されていることが非常に読みやすいなと感じております。
 そして、150ページの縦の系統、横のつながりということも非常にチャレンジングな取組で、現場としては非常に授業がやりやすいなと感じています。先生方は、社会科の授業をつくるときに、教科書を分析する前にまず指導要領を見るということが、ある種、定石になって、内容研究に視点を入れるようになってきています。また、社会科というのは、ある程度解釈に幅を持たせてくださっていますので、多様性が生み出されております。全国の実践者、各地でそれぞれ事例が違いますので、その事例の違いによる多様性が認められて、社会科の層が厚くなって幅が広がっているんじゃないかなと思っております。そのこともあって、社会科が好き、分かる、役に立つという肯定率が上がっているんだと思っております。
 学習指導要領実施状況調査というのが非常に大きい成果だなと思うんですけど、資料から問いを見いだせるとか、読み取ることができるとか、基礎的な知識については非常によくできているということです。今まで課題だったことが少しずつできるようになっているということは非常にすばらしいことだと思っています。
 この先、見通しを持つとか、自己の意見を形成するとか、選択判断することというのが、本当に社会科の面白いところだと思っています。今こそ、これからの改訂に伴って、見通しを持つとか、自分の意見を形成して選択判断するというようなところを、しっかりとみんなで、子供たちと先生も楽しめる時期になってきたんじゃないかなと思っています。それらを踏まえると、私は現行の指導要領をしっかり継承しながら、ある種改善していくという方向が必要じゃないかなと思っています。
 私の改善のポイントとして2点考えているのは、社会科というのは、概念化へ至るプロセスと、その後、概念を得た後に社会を見つめ直すプロセスの両方に面白さがあると思っております。だから、1つ目は、概念形成に至るプロセスを改めて大事にすることをポイントにしていきたいなと考えております。特に再構成という考え方を重要視したくて、学習問題解決のために、終末までため込んだ知識とか思考、判断、表現、見方・考え方というのを総動員して知識を再構成していく学びというのを重視していきたいなと思っておりますし、吟味、練り上げというところのイメージを共有して、全国の先生方の授業改善の一助になるような指導要領になったらいいなと思っています。
 2つ目は、その後ですけど、概念を得た後にきちんと社会に戻してあげるという仕掛けを大切にしたいなと思っております。従来の選択、判断、発展という評価対象ではなくて、授業の最後に、現代的な諸課題、なかなか大人も解決が難しいような諸課題を示して、君たちはどう考えていくのか、どう生きていくのかというオープンエンド的な問いも持ってきて、概念や見方・考え方で改めて社会を見つめ直すというような仕掛けが必要じゃないかなと思っています。学習で閉じることなく社会生活へしっかり戻してあげることが、生活と社会科を常に関連づける引っかかりの仕掛けになると考えております。
 以上2点です。以上です。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは永田委員、お願いいたします。
【永田委員】  よろしくお願いします。広島大学の永田です。実は今アメリカにいて、夜の9時、10時前ですか、ホテルの一室からで失礼をしてしまいます。
 私からは、まず教育課程企画特別部会の議論を踏まえた検討事項のほうですけれども、中核的な概念の深い理解と複雑な課題の解決に少し個人的には心配をしています。それは何かというと、イメージとして示されている数学が、最も整理はしやすいんだと思うんですけれども、社会科の場合にはこのような整理をする上では、何人の委員の方も言われたと思うんですけど、かなり留意が必要ではないかと受け止めています。それは、中核的な概念の深い理解と複雑な課題の解決が、知識及び技能と思考力・判断力・表現力等との関連のように、ある意味きれいな縦横の関係で整理を社会科でできるかどうかということを心配するからです。
 これは論点整理で示されている中核的概念の理解が、知識及び技能、複雑な課題の解決と思考力・判断力・表現力が縦で結びつくように考えることは、かなり社会科では、理念的にはもしかするとできるかもしれないんですけども、実践的にはとても、特に誤解を生じる可能性が高いのではないかと危惧をしています。この点は評価の在り方とも関わってきたりとか、もっと言えば、このような議論にまた社会科を戻してしまうのかという言い方も私の場合にはしてしまいます。
 あともう一つ、誰一人取り残さずという言葉の使い方も、社会科として今後もこれを使うのかどうかは慎重にと思います。その上で、社会科に関する課題を踏まえた固有の検討事項のほうですけど、これは5点ともに個人的に総括に考えていることをまとめた言葉にすると、今後も社会科の中だけで議論を続けていくべきか、それとも社会科を中心にしながらも、他教科や総合的な学習の時間、探究の時間、特別活動など、そして学校と現実社会との関係性の再構築も視野に入れながら検討事項の全てを考えていく必要があるのではないかと考えたりもしています。
 これはすなわち社会科等に関する課題を踏まえた検討事項は、もはや社会科だけでは抱え切れないのではないかということになります。ただし、これは表現を変えると、社会科を中心に他教科や総合的な学習の時間、探究の時間、特別活動などで補える点をそれぞれ結集していけば、社会科の問題、課題も光が見えてくるのではないかという言い方もできるかと思っています。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは韮塚委員、お願いいたします。
【韮塚委員】  韮塚と申します。カメラがうまく起動しておらず、ちょっと画面がない中でのお話となります。申し訳ありません。私は今、埼玉県の小川町というところで、小川学コーディネーターという仕事に従事しています。具体的には、町内の小学校、中学校、それから高等学校、これを縦につなぎまして、小川地域の地域内の教育資源をうまく活用しながら探究的な学びを段階的に深めていこうという学びでございます。
 この小川学にとってのキーワードは、探究的な学びを深める上で、いかに自分事として学びを構築できるかというところにあります。社会科でも、探究的な学びを今様々な形で深めていると思うんですけれども、私のこうした経験を踏まえて、今回の学習指導要領の改訂に向けた議論に何らかの貢献ができればと思っております。
 今回の検討課題の中に、地域の特色を踏まえた課題発見、追究、解決の学習過程を含んだ学習活動の在り方を工夫という文言が入っておりますが、こうした観点で何らかの知見を皆さんに提供できればと思っております。よろしくお願いいたします。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは額田委員、お願いいたします。
【額田委員】  額田です。私は弁護士をしておりまして、これまで子供との関わり合いというところから3点ほどお話しさせていただければと思います。
 ずっと子供の案件を割合やってきていまして、その中で少年事件であるとか、いじめの被害者であるとか、就学問題であるとか、そういう事件をやってまいりましたけれども、まず第1点として、ある少年事件のときに、非常にその生徒さんは学校では授業妨害をしていたと。何でなのかと聞いたら、授業が分からないから、自分がアピールするためにはわざと変なことを言ったりというようなことをしてきてしまいましたと。その子が少年審判の後、施設に入った後に、個別的な授業を受けたときに、その後会いに行きましたら、非常に表情も変わって、分かるようになってすごく楽しいと言ったことがあるんです。ですので、今回、個別最適な学びであるとか、一人一人に合わせたというような過程ができるということは非常に大事なことだなと思っています。それがまず第1点です。
 もう一点、就学で問題になったこともあるんですが、以前は通常学級へというような御相談だったりしたのが、反対に特別支援学校に行きたいという相談を受けることもありまして、その差がすごく大きいのではないかなというところで、先ほどの少年の話にも関連しますけれども、個別的な対応ができるような膨らみのあるというか、柔軟なというか、そういうものができるということが非常に重要なのではないかと思います。
 もう一つが、法教育活動ということをずっとやっておりまして、こちらは自由で公正な民主主義社会を担う市民を育成するということで、社会参画をしていくためのそういう授業であったりとか、イベントであったりというようなことをずっと活動しているわけですけれども、その中で日弁連が行っている高校生模擬裁判選手権というのがあるのですが、毎年8月に実施されていて、今回参加した生徒さんから感想を伺う機会があって、正解のない問題を、全くそれまで知らなかった、同じ学校だけれども知らなかった人と喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をして、一定の主張というところにたどり着く、その過程が非常に楽しかったと。模擬裁判では事実を多角的に見て、論拠をもって論理的に考えて形成した主張を分かりやすく主張して、説得的に表現するということになりますけれども、そこが対話的であったりとか、協働的な学びということを体現しているのかなと感じました。
 それをやるためにはある一定の時間が必要ですので、今回出ている余白というようなところも非常に重要なのかなというところと、あと外部の人との接触ということで、裁判ということで社会的な問題にも目が向くというようなところからは連携ということも非常に重要なのではないかと思っています。
 もう一つが法律家ということで、子供については「子どもの権利条約」であるとか、「こども基本法」というところが非常にポイントと考えておりますが、私自身そういう権利条約であるとかいうところの一番注目しているのは、意見表明権というところで、子供がその発達段階に応じて意見を表明することができる、それからその意見が尊重されるということが、社会が自分で変えられるというような意欲、あるいは、そういう力を持つということに繋がると思いますので、そこをどのようにしていくかというところの中で、一つは、学校自体が社会なわけですので、その学校の中で意見表明ができるというような経験を積むことによって、意欲であるとか、力であるというのがつくのかなと思っています。
 自分の経験からということですけれども、以上の3点を申し上げました。よろしくお願いします。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは森本委員、お願いいたします。
【森本委員】  明治学院大学の森本泉と申します。よろしくお願いします。私自身、地理学、人文地理学を専門としていまして、教育は専門ではないですけれども、これまで入試ですとか、それから高校の教科書の作成に関わったという非常に限られた経験なので、あまり皆さんのお話を伺っているように教育について深く学んでいるわけじゃないので、今後、勉強しながら参加させていただければと思っております。
 そんな状態ですけど、2点気になったことを申し上げたいと思います。
 まず、1点目ですけれども、これまで、特に教科書をつくっているときによく言われたのが、見方・考え方ということで問いが大事であるということを強調されていたんですが、これからそれを一層整理した上で、中核的な概念ということに昇華していくのかなとお話を伺っていたんですけれども、そのときに気になるのは、暗記偏重の学び方に戻らないようにしなければいけないだろうなというところです。
 特にこの概念というのは、見方・考え方が違うと当然捉え方も解釈も変わってきますので、それをどのように教えるのかというのはなかなか難しいだろうなと思いつつ、これまで皆さんのお話を伺っていて、問い続けることが大事と、まさにそういう姿勢を、中核的な概念を学びながら身につけていくことが大事なのかなと思いました。
 特に、私自身の専門、ネパールの地域研究をやっているんですけど、自身もフィールドワークを長らく四半世紀にわたってやってきているんですけれども、こうした専門に偏ってしまうんですけれども、近年、大学生を見ていると、偏った考え方の学生が多いかなという印象がありまして。それがせんだっての参院選に見られるような状況だったんじゃないかと思うんですが、どこでそんなことを学んできているんだろうと思って、教科書を見てもそんなことは書いていないわけです。そこで重要になってくるのが恐らく情報リテラシーの問題だと思います。
 いろんな多様な意見を取り入れること自体はよろしいかと思うんですが、それをちゃんと判断する、何が妥当であるかというのを自分の頭で判断するという、そういう力を社会科で身につける必要があるだろうと思っています。
 特に気になるものが、多文化社会といったときに、どうしても外国にルーツがある、外国に関することと捉えがちで、それも物すごく重要なことですけど、そこから例えばジェンダーであるとか、性的多様であるとか、それから障害であるとか、個性であるとか、そういったことがなかなか配慮に上ってこないんじゃないかなという気がしています。私の印象のレベルですけれども。そういう多文化、多様な社会といったときに、まさにその中核的概念としたときに、そもそも多文化社会とは何だろう、文化とは何かというところから問うていくという、そういう姿勢が大事じゃないかなと思っています。
 もう一つ、このワーキンググループだからこそできるかなと思ったのが、分野横断的な連携の可能性を追求することかと思っております。特に小学校からフィールドワークを重視する、すごく重要なことだと思うんですけど、フィールドワークは校内でやるものじゃありませんので、社会との連携というのがすごく重要になってくると思いますし、現場の先生がフィールドワークに行くときに、個人で自分の人脈を生かしながら、行き先を探しながらというのは本当に大変なことだと思います。
 どういう学習効果があるのかとか、安全担保であるとか、そういったことまでやる、本当に大変だと思うので、そういったことも踏まえた、これまで何人もの先生方が御指摘されていたように、指導要領の中には、もしかしたら先生に対することはあまり書いてこないかもしれませんけれども、先生のための指導要領でもあったほうがいいかなと感じております。そこで私が貢献できるかなと思います。フィールドワークを長らくやってきた経験とかが生かせたらなと考えております。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは次、山内委員、お願いいたします。
【山内委員】  よろしくお願いいたします。兵庫教育大学の山内敏男と申します。個人的には小中学校の実務経験がございますので、そうした点も踏まえまして、子供たちとか、あるいは授業者にとって、何ができて、何が難しいかという点から議論に加わっていけたらと考えています。
 例えば、これから何をどう学ぶかということもありますし、理解、認識というか、授業を経てできたとしても、社会の一員として何ができるか、どう生活するかという点、これまでもずっと言われてきたことではあるんですけど、そこになかなか接続しづらいという実情もまだあるのではないかなと捉えていまして。そういった点とか、あるいは見通しと振り返りということに代表されるように、学びの前後の関連についても効果はあるということは分かっていても、継続的に例えば続けていくとか、何か変化を持たせていくみたいなところに対しては、まだまだ改善の余地があるのではないかなと考えています。
 例えば、根拠を表す、外化するということ一つ取っても、何をどうすればよいかということが、例えば授業者と子供たちとの間でずれていたりとか、混乱していたりとかということもまま見られると感じていまして。そういった点をこれからどうしていくのかということについて、また考えていけたらと思っています。
 また、問いの生成ということにとっても、子供たちが問いをつくるということもいいことであるということは、いろいろと了解していただけているところもあるかと思うんですけれども、もともとその辺のところも、子供と授業者双方で、これからどうしていくべきかということはもう少し精緻化していく、いろいろ議論していかなければいけないのではないかなと考えています。
 それから、ワーキンググループにおける検討事項の論点で、資料6の例えば5ページのところに書いています、(3)の最初のところに書いていただけているところでございますが、例えば社会構造の変化ということをお示しいただいているかと思うんですけれども、頭のところです。そこの社会構造の変化ということに対して、例えば歴史教育で言いましても、例えば継続と変化ということがあって、何が続いて、何が続いていないかみたいな、権利化したのか、みたいなところと、あとそれから、概念との関係はあまりこれまで重点化されてこなかったかなと、実践者として、そういったことを感じてきていますので。
 例えば鎌倉時代と江戸時代では何か一緒で何が違うのか、みたいなところは、あまり話題になってこなかったというところもあるかもしれませんので、そういった点、災害等への対応ということもそうですけれども、そういったことも、これまでの概念ということも踏まえてどう考えていくか、その辺についても考えていく、捉え直していく必要があるのではないかなと思っています。
 以上でございます。よろしくお願いします。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは山田育穂委員、お願いいたします。
【山田(育)委員】  山田でございます。よろしくお願いいたします。私は大学に所属しておりまして、空間情報科学地理情報システムといったものを専門に研究をしております。ですので、小中高の教育に実際に関わった経験があるわけではないですけれども、地理総合にGIS、地理情報システムが取り入れられたことによって、私たちの研究分野でも地理教育であるとか、地理教育にGISを使ってもらうということに対して非常に興味が高まっていまして、現場の先生方とは少し異なる視点になるかもしれませんけれども、議論に貢献ができればと考えております。
 地理総合が始まるというときに、各種学協会でも非常に張り切って、先生方向けの教科書をつくったりもしたんですが、張り切り過ぎてしまって盛りだくさんになり過ぎて、現実的ではなかったというような反省もありまして、今、私の所属している学会でも、もう少し本当に役に立つようなものをつくれないかといった話をしています。GISというものは、与えられた一枚の地図を見るだけではなくて、子供たちが自分で考えながら情報を足したり、表現を工夫したり、いろんなものを比較したりということができるので、まさに知識・技能と思考力・判断力・表現力といったものをつなげるツールになり得るものです。
 また、古地図のデジタル化したものみたいなものも活用すれば、歴史と地理と、そして今、子供たちが生きている社会をつなぐ、そういったツールにもなるものなので、GISを学ぶというところから、教科書の話でもありましたけれども、GISで学ぶといった、そういった視点を提供していければと考えています。
 また、近年の大学生と接していますと、本当にデジタルネイティブと言われる世代ですので、ICT技術に対する抵抗感はすごく低くて、何か新しい技術、GISでもそうですけれども、少し教えてあげれば、自分でどんどん勉強して上手になっていく。そういう反面、情報リテラシーであるとか、自分自身の情報を含めた個人情報保護みたいなものに関する考え方というのは本当に無防備だなという印象を持っています。
 ですので、これから生成AIの技術等もどんどん広がって社会に使われていく中で、適切に、安全に情報を活用していく力というのは、子供たちにとっても、また日本の社会全体にとっても、この先非常に重要な能力だと思いますので、そういった視点をどのように育んでいくのかという点に関しても議論ができたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【土井主査】  ありがとうございました。では、引き続いて山田圭一委員、お願いいたします。
【山田(圭)委員】  千葉大学の山田です。よろしくお願いします。私は専門は哲学で、特に現代欧米系の認識論、知識の哲学と言われる領域や、言語の哲学と言われる領域を研究しています。教育に関しては、哲学対話の推進とか、あるいは教科書の作成、高校の公民科公共とか、あるいは中学の国語とか道徳の教科書の作成とかに携わらせていただいてきております。
 私としては、先ほどから多くの委員の方が言及されていた情報リテラシーの話はすごく、自分の専門、インターネットの情報を信じていいのかとか、陰謀論は信じてはいけないのか、みたいなのはまさに現代認識論の主要トピックですけれども、そういう観点が非常に重要じゃないかなと思っていて。
 何でかというと、例えば政治経済、政治の中で政治システムについての知識は学校で身につけたとしても、でも、生徒はSNSでほぼ、これからの生徒は生涯学習という観点でいうと、その後はほぼインターネットを通じて知識を獲得していくと考えたほうがいいと思うんです。そこで例えばディープステートに政府が操られているみたいな陰謀論を信じてしまうと、せっかく教えたことが全部ひっくり返ってしまうわけです。
 どんなにいいことを教えたとしても、もうその陰謀論を信じただけで無になってしまうという、これは非常にまずいことだと思うので、実際どういう知識を教えるのかということと、その知識をどういう仕方で獲得していくべきなのかという、その両方を多分教える必要があるんじゃないかと思うんです。
 その観点でいうと、情報リテラシーという一般的なものに関しては情報という教科で教えればいいと思うんですけれども、せっかく社会の中にそれぞれの教科の知識というのがあるのであれば、その教科の知識の特徴というのが、どういうときにそれが正しい知識と言えて、どういうときに正しくないと、根拠がないというのかというのは、例えば歴史の事実であれば、南京事件について2つの意見があったときに、どっちがより信頼できるのかというのは、多分それぞれのディシプリンの中であると思うんです。どういうものが根拠になって、ならないのか。
 それは多分地理は違うし、倫理は違うしというので、その領域ごとに違うと思うので、それぞれの社会の教科の中の知識の特性、特徴というのを合わせて教えるということが、広い意味でのメディアリテラシーというか、間違った情報に対する免疫をつけるためには重要じゃないかと私は思っていて。実際、国際バカロレアのセオリー・オブ・ナレッジという教科があるんですが、そこではまさにそのそれぞれの知識の特徴というのを教えているんです。そういう観点を少し日本の各教科の中にも入れていく必要があるんじゃないかというのは一つ思っていることです。
 もう一つ、先ほど指導要領の構造化という話が出てきていて、指導要領が基本的に分かりにくいという話が、私も小学校、中学校、高校の先生と話をしていてすごく聞くんです。私はまさに土井先生と一緒に新しい公共の指導要領をつくった側で、解説も書いた側なので、そう言われるとつらいものはあるんですけど、でも確かに分かりづらいです。
 その分かりづらさの理由は、いろいろあると思うんですけど、概念が明確じゃないというのはすごく大きいと思うんです。先ほどから主体的・対話的で深い学びというのは何回も出てくるんですけど、主体的とは何で、対話的とは何で、深い学びとは何なのかというのがよく分からないし、私の専門から言うと、知識と理解というのが何か混在しているというのがすごく気持ち悪くて。知識・技能のところに、例として理解というのが出てくるんです。でも我々としては、知っているということと理解しているということは区別されるというのが前提なので、何でそこの2つが混在しているんだろうというのはすごく気持ち悪くて。
 その辺の概念分析という、我々は概念分析と呼ぶんですけど、近い領域の概念のどこが違うのかというのをもう少し明確化していく中で、単にあることを知っているというのと、あることを理解しているというのはどう違うのか。深まるというのは多分、知識は深まらないわけです。だから理解しか深まらないので、深まるというときには理解というのが多分問題になっていて、単に理解しているのと、理解が深まるというのはどう違うという。そういう概念分析をしてもらった上で、この項目の中で単に知っている場合と理解している場合と、さらにそれが深まっている場合というのはどういうものなのかという仕方で、指導要領をそれぞれ構造化してもらうと、かなりもう少し分かりやすくなるんじゃないかなとか思ったりしているので。
 先ほど森本先生から、文化とはそもそも何なのか、みたいなお話もありましたけど、そもそもここで使われている概念とはどういう概念として使われているのかというのの洗練というのも、吟味というのも必要じゃないかなと個人的には思っている次第です。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは山本委員、お願いいたします。
【山本委員】  こんにちは。東京都立八王子東高等学校長の山本と申します。私は高等学校の現場の声をお届けできればということとともに、全国公民科・社会科教育研究会の会長ということで、とりわけ高校公民科という立場からも議論を進めて参加させていただければと考えております。
 私からは大きく2つほどお伝えできればと思います。今、高校現場で当然、総合的な探究の時間等の活用を含めて、様々な探究的な学びや協働的な学びというのは意識して取組を行っております。とりわけ、これを地歴公民、社会科という全体で見ていくと、現行の学習指導要領における科目の再編と絡めて言いますと、必履修科目の地理総合、歴史総合、公共、こういった科目においては、本校でもそうですけども、教員はかなり意識的に、生徒に主体的に考えさせるような場面をつくっていく、そして生徒同士の学び合いの活動をかなり積極的に取り組んでいるというのは現状としてございます。
 ですから、今後、引き続き主体的・対話的で深い学びを促進していく上で、特にこの必履修の科目については、本校はたまたま100%大学進学の学校ではありますけれども、そういった学校であっても、かなりのところを教員たちは意識しておりますし、それに対する生徒の反応もいいのは事実です。
 一方、選択科目でございます地理探究、日本史探究、世界史探究、倫理、政経、こちらについては、教員側も様々模索はしておりますし、探究科目ですから当然探究ということを意識していくんですが、当然のごとく、目先の大学受験というところを見据えざるを得ない。そして膨大な知識の詰め込みが必要になってしまうんだという認識を持っていたりしますので、その辺りが足かせになって、どうしても知識注入型の授業になっている、ならざるを得ないという現状は見られております。
 これはまた、大学受験を前提としていない高校であればまた違う可能性もあるかなと思いますが、現状としてそういったところが現場の声としては見てとれるというところでございます。
 それから、あともう一点、事務局から示された平成27年と令和6年度の児童生徒たちの授業への反響というか、のアンケートを見て感じたところですけれども、これでも当然、該当になっているところが地理総合、歴史総合、公共という必履修の科目について聞いておりますから、おおむね事務局から説明あったとおり、児童生徒の好意的な印象が非常に増えてきているというのは事実だと思われます。
 ところが、私が公民科の研究団体として、公共の導入につきましては、もうこれは非常に各教員ともに、ここをもって社会参画意識の向上であるとか主権者教育の充実というところは、まさしくこの公共の科目においてこそ、どれだけ力を入れていくんだという意識を持って取り組み、様々な授業の工夫等を協議したり、やってきております。にもかかわらずと言ったらあれですが、この、よりよい社会の在り方を社会科等の学習を通じて考えたいと思うようになったかという質問では、公共では肯定的な意見は減ってしまっているというところが実はあるんですよね。
 ですから、この辺り、我々教員の意識と、逆に生徒の受け取り方の乖離というところがあるのかなということが見てとれるわけですけれども。また背景として、先ほど他の委員にも御指摘いただいたとおりで、例えば高等学校の実際、公共を持つ先生は必ずしもその公民の専門ではない。当然、地歴・公民全ての科目を持たざるを得ないとか、あるいは歴史専門の形で専門の方が公共を持つというような実態が当然ございますから、その辺り全ての教員がそういう意識を持ってできるのかというところは大きな課題になるのかなと。
 とはいえ、当然これまでの議論にあったとおり、情報、メディアリテラシー等のところも含めて言えば、生徒が実際に自ら主体的に社会事象を考えて、社会参画を意識して行動できるかどうかというところについては、公共のみならず、様々な教育活動を通じて実現していくという必要があるのは事実でございます。とはいえ、私はひとまず、ここでは高等学校の公民科というところの立場から、ぜひ皆様方の議論に一定の貢献ができればと考えております。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは𠮷水委員、お願いいたします。
【𠮷水委員】  皆さん、こんにちは。関西学院大学の𠮷水と申します。私の専門は社会科教育、特に地理教育を専門にしております。今日は2点お話しできればと思っています。
 1つは、これまでも出ておりますけれども、社会参画についてです。社会参画ですけども、中身は地理の分野の先生方もお話しされているとおり、社会参画のきっかけとして地域調査が非常に重要ではないかということです。フィールドワークの実施率が特に中学校でも低いということですけれども、これを中学校の地理の学習でもう早い段階から、できれば繰返し行うことによって、持続可能ですとか、ダイバーシティーですとか、エクイティーとか、インクルージョンとかという、こういう概念を、その概念がそもそもどういったものなのかということも考えつつ、空間のデザインを繰返しできるような、こういう学習、これが問いを育て上げる学習にもつながっていくかと思います。ですので、こんな学習のきっかけに地域調査ができればと。それは社会科だけではなかなか難しいところもあるのかも分かりませんので、ほかの教科等とも連携しながらということなのかも分かりません。
 2つ目は、見方・考え方と概念ということの関係性についてであります。見方・考え方というのについては、これまで私なんかの理解では、レンズ、先ほど石井委員もおっしゃいましたけども、レンズというような見方をしておりました。一方、これとビッグアイデアというのがどのように関わってくるのかということです。教科や分野に固有の見方・考え方と、それから固有の概念みたいなものはかなり二重性があるかなと思います。それと、もう一つ次元が高いような、抽象度が高いような、こういう概念との関係性みたいなものをどのように整理していくのかということは、うまくやらないと学校現場も混乱する可能性が高いかと思いますので、その辺りの議論を慎重にできたらと思っております。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。それでは、続きまして梅津主査代理よりお願いいたします。
【梅津主査代理】  よろしくお願いいたします。鳴門教育大学の梅津正美と申します。私自身の専門は社会科教育、そして歴史教育、これを専門としております。本会におきまして、図らずも主査代理を御指名いただきました。大変力不足の者ではありますけど、本会における議論の整理等でできる限りの力を尽くしてまいりたいと思います。改めて皆様に御挨拶申し上げたいと思います。
 その上で、与えられた時間の範囲内で私なりの意見を述べたいと思います。私自身は社会科教育を専門にしているということもありまして、社会科の理念から考えます「社会科教育」はソーシャルスタディーズエデュケーションであり、その本質は現代社会の諸研究を通じて、よりよい未来社会を展望する。もって民主主義社会の形成者としてふさわしい資質や能力を身につけていくことにあります。それが社会科教育の理念であり、学校教育における教科の名前は異なれども、小・中・高等学校を貫く教育理念であると思っております。この理念を踏まえ、皆様と一緒に議論をしたいと思う現段階の私の問題意識なり争点を4点ほど観点を立て述べたいと思います。
 1つめは、教科、分野、科目の接続をどういう原理で考えるのかということです。私は29年版、30年版の学習指導要領、とりわけ社会科について捉えたときに、一番魅力を感じたのは、やっと小中高を貫いて分化社会科から現代社会研究に連なる総合社会科に転じていく形が曲がりなりにも整ったという理解をいたしました。
 小学校は、もちろん五、六年生になりますと分化された内容が出てまいりますけども、それでも政治、歴史、地理的な学びを通じて、グローバル社会に生きる私たちの生き方、在り方みたいなものを最終単元で学んでいくような、まさに分化から総合に向かう形ができています。そして中学校社会科の歴史的分野、地理的分野、公民的分野についても、変型パイ型の構成の中で、地歴の分化した学びを基盤に現代社会を考察する公民的分野への形。そして高校では必履修科目に地理総合、歴史総合が出てまいりまして、これらの学びを基盤に公共を学ぶという形が出てまいりましたので、まさに分化社会科を基盤としながら、総合的に社会を研究していく形、すなわち「分化から総合へ」という形が小中高において整ったなと思って、高く評価したところです。しかし、分化の圧力というのは、これまでもずっとそうでしたけども、強いわけです。
 これからの要領の実際の議論でも、どなたかが指摘してくださいましたけど、分化したそれぞれの分野とか科目に分かれていけば、歴史は歴史、地理は地理、公民は公民で考えていくということになりかねません。そうなったときに、改めて現代社会研究のための総合社会科の在り方を、小中高を貫いてどう考えるかというのは非常に大きな議論になると思いました。
 2つめは社会科における中核的な概念の捉え方についてです。学習内容の構造化に係って中核的な概念について皆様からも御指摘がありました。私も数学の「関数」を事例にするならたやすいが、人文・社会科学領域を総合的に含み込む社会科で考えたときに、概念は多様な次元で捉えられますし、石井英真先生の言葉を借りると、概念についてメタ認知の度合いを高めていけば高めていくほど、最後は見方・考え方のような方法概念になっていくわけです。そうしますと、社会科系教科において中核的な概念は、かなり幅広の各次元で捉えられる中、どこに焦点を当てるのか、要領社会科系教科では中核的な概念をどういうレベルで規定し世に問うのかというのは非常に大きな問題になると思いました。
 3つめは、方法の原理として今次示されました「考察」と「構想」についてです。私は分化から総合へという基本的なカリキュラムレベル、科目とか分野の編成のレベルで捉えれば、「構想」が中核になり、「考察」はその基盤になる学び方という整理をするのですけれども、「構想」がその扱いの難しさもありまして、今次の要領において曖昧であると理解しているんです。現場の先生方も「構想」とは何だ、カリキュラムにどう組み込んでいけばよいのか、「考察」まではできるけども「構想」までどうやって組み込むか、要領の内容を見ても、言葉は乱暴ですけど、お飾りっぽい、分野・科目の学習の最後頃にちょっと出てくるみたいな感じになっている。「考察」と「構想」の関係性についても十分この場で議論しなければならないと思っています。
 最後4つめです。主体的・対話的で深い学びというスローガンが掲げられました。今次要領から次の要領においても引き継がれるべき重要な学習の原理であると思っていますけども、当然この主体は子供であるということになります。ただ、子供が主体的・対話的まではよいとして、深い学びというものに至るということの、その内実をどう捉えるかということです。教科教育をめぐる継続する議論の中で、系統主義社会科の立場から子供の主体的な学びを重視する問題解決学習としての社会科に対して「這い回る社会科」という言葉で批判がなされることがありました。つまり子供の経験に基づき発見された問いを主体的・対話的に子供が追究する学習を展開し、子供を深い学びに至らしめたいが、しばしば知識レベルが低く、学習が常識的な知識のレベルで這い回っているじゃないかという論争的な議論は長くありました。
 子供主体でどこまで深い学びに至れるのか、教師の教授活動と子供の主体的な学びをどのようにバランスするのか、これは非常にまた大きな課題であると思われます。ここまで問題意識と争点を述べさせていただきました。今後皆様と議論を深めていければと思います。
 以上です。
【土井主査】  ありがとうございました。それでは、最後に私から発言をさせていただきます。
 高校の地歴科、公民科につきましては、現在の学習指導要領で大きな科目構成の見直しを行ったところでありますし、先ほど御説明のあった児童生徒のアンケート調査の結果を踏まえますと、今回は、基本的に現在の方向性を維持しつつ、その成果と課題を丁寧に検証して、着実に教育内容、方法の改善を図るフェーズであろうと考えております。その上で、私が特に議論を深めたいと考えている事項として3点申し上げます。
 第1に、教育課程企画特別部会から求められています、中核的な概念等に基づく内容の一層の構造化と精選です。学習指導要領の趣旨を広く理解していただくためには、表形式を活用するなど、分かりやすい形に整理することが重要だと思いますが、しかし他方で、この整理はなかなか難しいものですから、整理のための整理に陥らないようにする必要もございます。
 そこで、このワーキンググループでは、今回、特別部会でお示しいただいた構造を手がかりにして、まずは社会科等の各教科・科目において、どのような力を身につけてほしいか、そのために何を学ぶことが必要で、その際、どのような問いを設定すべきかといった実質論から議論を深めていただければと思っております。
 第2に、主権者教育と合意形成、あるいは協働的な学びの在り方です。教育の場ではどうしても表現力、話す力が重視されますが、合意の形成、あるいは協働的な学びの出発点は、聞く力にあると思っております。人は話すことによって自らの存在を示しますが、聞くことによって相手の存在を認めるからです。現実社会であれ、学びの場であれ、協働の基礎は信頼にあります。そのためには、話し手が本当は何が言いたいのかを理解しようと努め、たとえ異なる意見であっても最後まで聞くことができるようになるといったことが重要であろうと思います。
 また、積極的な社会参画の意識を醸成するためには、議論するだけではなく、その結論を実施すべく取り組む必要がございます。真剣に取り組めば聞いてくれる人たちがいる。協働することで周りも、また自分自身も変わることができる。このことを実感しなければ、参画の意識は育たないということなのではないかと思います。その意味では、社会科等に加えて、特別活動や地域との連携をしっかり図っていく必要があると考えております。
 最後に、デジタル技術への対応や情報活用能力との関係では、もちろん授業におけるデジタル端末等の活用も重要ですが、それだけでなく、データに基づく推論、あるいは推論のために必要なデータの収集など、実証的な論証の作法を重視する必要があると考えています。また、SNS等の関連で、倫理面、道徳面が強調されがちですけれども、人間がどのようなバイアスを持って判断しがちなのかといったような点についても学ぶ必要があろうかと思っております。
 前回の改訂の際に、「公共」ではゲーム理論の成果を取り入れたところですけれども、今回は認知科学ですとか、行動経済学の成果なども踏まえて、誤りやすい人間が合理的に判断できるように、どのような仕組みを工夫していくべきかといった点についても学ぶことが、特に公民科等にとっては重要なのではないかと考えています。
 私からは以上でございます。
 これで一通り委員の先生方から御発言をいただきました。皆様方の御協力のおかげで、少し時間に余裕ができましたので、何名か追加の発言をしていただくことが可能です。そこで、ぜひこれだけは述べておきたいと御希望の方がおられましたら、挙手のほうをお願いできますでしょうか。いかがでしょうか。石井委員、お願いいたします。
【石井(英)委員】  では失礼いたします。まさに今御発言が様々あった中ではありますけども、この中核的概念云々というものと、それから見方・考え方との関係、こういったところの整理は、もともと見方・考え方という言葉は、現行学習指導要領の前から、例えば算数・数学もそうですし、社会科においても、各教科教育の文脈で使われていたわけです。それと、現行学習指導要領の中での見方・考え方というのがあって、今回の中核的な概念というところで、この辺の整理といいますか、ここは大事になってくるかなと思っています。
 基本的には、言葉遊びにはなってはいけないということから言いますと、現行の学習指導要領の下で、いかなる実践が展開されているのか、その中で良質の実践といったものに、そこにフォーカスしながらそこを励ましていく視点が重要だと思うんです。ですから、先ほども𠮷水委員からも、レンズであるということを伺ったりとか、あるいは黒田委員からも、社会に戻して考えると。つまり頭でっかち社会科ではなくて、言葉として例えば民主主義とは何ぞやということを文章で書けることが、本当に民主主義を理解している、あるいは腹落ちしているとか、ちゃんとそれに基づいて判断できることとは違うわけですよね。
 まさにそれは社会科学の基本と言ったらおこがましいですけども、眼鏡として学んでいくということが重要かと思います。つまり概念装置として学ぶと。世の中というのは見えども見えずですから、体験ということもとても重要ですけども、体験しても見れども見えずです。ですから、概念装置、眼鏡を踏まえてしっかりと世の中といったものをつかんでいく、その眼鏡となる、眼鏡足り得るものが果たしてこれまでの社会科教育の中で提供されてきたのかどうかということも問われるところなのかなと思います。
 まさに見方・考え方概念というのは、そこに切り込んだものではないかと私は思っているわけです。ですから、改めて、次の学習指導改訂に向けた議論というのは、現行学習指導の熟成であるという観点からしますと、現行学習指導の下で生まれている良質な実践、そのエッセンスといったものから学んでいきながら、そこを励まし得るような枠組みをどう構築していくのかという、そういう現場の実践に根差した議論が重要ではないかなと思います。
 その中で、概念装置ということを申しましたのは、先ほど、多文化なら多文化、文化とは何ぞや、もっと言うと社会とは何か。学習指導要領は、そんな大層なことは言えないかもしれませんが、今の世の中をどう見るんですかと。大人の見方が非常に試されているんじゃないかなと思います。今の世の中をどのように特徴づけるのか。確かに先行き不透明ですけども、それとても、そういう見立て自体が一つの社会像なわけです。だとすると、いかなる社会像を我々は想定しているのか。その社会を捉えるときに、どういう観点、着眼点から捉えていくことが社会を捉えたと言えるのか。
 だから、学習が、社会科の学びが楽しいもそうですが、世の中自体が楽しいにならないと、究極的に世の中に、社会に参画する力には多分なってこないと思います。ですから、社会科を学ぶことを通じて、社会科は好きだけども世の中に関心なしでは困るわけです。世の中は非常にダイナミックなものでありまして、私も社会科学の端くれですが、教育実践というのはダイナミックなわけです。ですから、どのように理屈があっても、現場とか現実の前では無力という部分もある。でも、その中で逆に概念を鍛え直していく。こういったプロセスが社会科学においては非常に面白いところかと私自身は思っています。
 ですから、そういう面で、世の中をちゃんと捉えながら、そこから眼鏡として学んでいく。世の中を捉える暫定的な仮説じゃないですが、眼鏡として足り得る、そういった内容になり得ているのか。そこを改めて再検討する。内容をメタにということはそういったことになりますけども、個別の年号だけ見ていても世の中は見えないです。でも、それこそ例えば日本国憲法の条文を学ぶだけではなかなか見えづらいけども、最高法規とは何かというようにメタに考えていくと、最高法規としての日本国憲法ということで言うと、また世の中の見え方が違ってくるかと思います。
 そういったものが事実として学ぶ、事実としての知識ということではなくて、概念的知識としての憲法とか、最高法規としての日本国憲法というのはそういうことだと思うんですけども。そういう形で世の中を広く見通すための眼鏡たり得るのかというところで、個別の内容についても吟味していくということが重要かなと思いました。
 長くなりましたが、以上です。
【土井主査】  ありがとうございます。そのほかおられますでしょうか。よろしゅうございますか。小林委員、お願いいたします。
【小林委員】  石井先生に今の発言、お話で御質問があるのですが、教育課程企画特別部会において、見方・考え方の議論のところで、今回、側面に各教科等を学ぶ本質的な意義の中核を示すということになりましたけども、その辺の経緯と、あるいは、これはどうしてこのようになっていったのかというところをもう少し詳しく教えていただけないでしょうか。
【土井主査】  ありがとうございます。事務局から何か補足説明されますか。
【栗山教育課程企画室長】  教育課程企画室長をしております栗山と申します。今、石井先生から特別部会での論点整理における内容について、代わって御説明いただき、大変恐縮でございました。見方・考え方、また今日、構造化についても様々御指摘いただきましたけれども、今後の教科横断的な方針につきまして、総則・評価特別部会で、近々にも議論いただくことを予定しております。そこでしっかりとお示しの仕方を分かりやすく整理した上で、改めて御説明できるように準備してまいりたいと思いますので、改めてまたお示しできればと思っております。ありがとうございます。
【土井主査】  ありがとうございます。そのほか御発言御希望の委員、おられますでしょうか。よろしゅうございますか。
 最後、追加でお話しいただいた見方・考え方、中核概念をどう整理するのかという点は、社会科あるいは地歴公民科で、全体として考えていく必要があると思います。この点、詰めて考えていきますと、例えば歴史を扱っていただいている際には、当然、政治分野の歴史、経済分野の歴史、法あるいは文化の歴史といったものを取り扱っていただいているわけです。他方、公民科でも当然、分野として政治、経済、法などがあるわけです。そうすると、政治とは何か、経済とは何かということが分からずに、政治の歴史は分かるんですか、現在の政治の在り方、あるいは経済の在り方を考えるときに、過去と切り離して考えられるんですかという話になり、実は中核的概念と言われるものが、社会科全体の中に入り組んだ形で当然存在しているということになります。それを社会科全体としてどうするか、あるいは各科目でどうするのかは、全体として御議論いただいて整理する必要があると思っておりますので、この点については、引き続き、委員の先生方から御議論いただければと思います。
 それでは、時間も参りましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降の予定について事務局よりお願いいたします。
【嶋田教育課程課学校調査官】  次回でございますけれども、次回は10月23日木曜日の18時から20時を予定しておりますが、正式な日程につきましては、後日事務局より御連絡させていただきます。
【土井主査】  それでは、以上をもちまして本日の社会・地理歴史・公民ワーキンググループを閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――