令和8年1月21日(水曜日)17時30分~20時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【酒井主査】 それでは定刻となりましたので、ただいまから第7回外国語ワーキンググループを開催いたします。本日は新年を迎えての最初の会となりますが、引き続き本年もどうぞよろしくお願いいたします。
本日は、語彙の取扱い等のあり方を主な議題として審議を行います。審議を行うにあたり、東京外国語大学教授の投野様、立教大学教授の中田様にご発表いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは議題に移ります。本議題に関する論点資料について、まずは事務局より説明をお願いしたいと思います。続けて、お二人にご発表いただき、それぞれ終了後に質疑応答の時間を設けたいと思います。その後、休憩を挟みまして意見交換の時間に移りたいと思います。本日も皆様全員にご発言いただきたいと思いますので、ご協力のほどどうぞよろしくお願いいたします。
なお、ご発言に当たっては、ご自身の意見に対して他の委員からも意見を聞いてみたい場合もあろうかと思います。その場合は、よろしければその旨お知らせいただき、それ以降にご発言いただく委員におかれましては、もし何かその点に関してご意見、コメント等がございましたら適宜述べていただければと思います。提案された論点にご意見が特にない場合はもちろん構いません。
ワーキンググループでは時間が限られていることや、基本的には挙手の順番で当てさせていただくため、全ての論点を深めきることはどうしても難しい側面がありますが、可能な範囲で意見交換を深めていければと思っております。それでは事務局よりご説明をお願いいたします。
【田井外国語教育推進室長】 外国語教育推進室長の田井でございます。資料についてご説明いたします。本日は、語彙の取扱い等の在り方について、ご議論をいただく予定でございます。全体の検討事項の中ではこちらに関連する部分でございます。
まず、現状と課題、総論といたしまして、中学生の英語の学習が好きではない理由として、文法や単語を覚えることの難しさが上位であること、前回改定で語彙数が大幅に増加し、中学校で指導する文法事項が増えたこと、こうした中、特に中学校の教科書で難易度が高い語彙や文法の用法等が含まれるなど内容が高度化し、指導や学習の負荷が上がっているとの指摘があること、これらが相まって、英語を学ぶ意欲の向上や発信力の強化にあたっての課題となっている可能性があることを挙げております。これに対する右側の基本的な方向性といたしまして、コミュニケーションにおいて、使用頻度の高い重要な語彙や文法等を繰り返し扱うことで、児童生徒がそれらを着実に身につけ、それらを使って英語を理解でき、伝えたい内容を伝えられるよう、指導すべき語彙の選定の在り方を見直すべきではないかとしております。なお、文法等については別途議論予定としております。
次に左側に戻りまして、語彙に関する課題として、前回改定で語彙数が大幅に増加したこと、学習指導要領において学校種ごとに目安となる語彙数は定められているものの、指導すべき語彙の選定基準や具体的なリスト等が示されていないことを挙げております。その上で、語彙のばらつき、難易度として、各教科書で取り扱われている語彙のばらつきが生じたり、入試等を含め過度な負担になっているとの指摘があること。中学校では、社会的な話題が学習指導要領に位置付けられ、解説で、環境問題、世界情勢、人権問題等が例示されていることから、教科書の話題が高度化し、難易度の高い語彙が増えたことを挙げております。
これに対する方向性、右側といたしまして、既存のコーパスを複数参照するなどして、基盤語彙リストを作成し、当該リストに掲載されている語を教科書で使用することを推奨すべきではないか。高校については、目的に応じて多様な到達水準が存在し、教科書のレベルも様々であるため、教科書の多様性が担保される必要があるのではないか。また、小中学校の教科書においても、難易度が過度に高まらないようにしつつ、引き続き、多様なトピックを取り扱うことができるよう、配慮されるべきではないか。またリストを必要に応じて更新できるよう、継続的に調査研究を実施してはどうかとしております。なお、中学校における話題の改善により、語彙の難易度が上がりすぎないようにする一定の効果が期待できるのではないかとしております。
次に、語彙数、語彙指導として、小学校では、読むこと、書くことの目標は、音声で十分に親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにすることや、書き写したり例文を参考に書くことであり、語彙への慣れ親しみを目指したこと。そのため、中学校では、小学校既習語彙を読んだり書いたりできるようにすることに加え、増加した新出語彙を指導する必要があること。各社の判断で重要な語彙が明示されている一方、実際には教科書の新出語彙をすべて覚える指導がなされるなど、メリハリのある語彙指導が行われていない実態もあることを挙げております。
これに対する方向性、右側といたしまして、中学校において、小学校で扱った語彙の定着を図り、コミュニケーションの中で活用できるようにする必要があるのではないか。全学校段階で扱ったものも含め、児童生徒がコミュニケーションに必要な重要な語彙に繰り返し触れ、受容から発信に転換できるよう、また語彙の理解を深め、様々な文脈や場面で活用できるようにする必要があるのではないか。上記を可能とするため、前述の基盤語彙リストの作成とともに、語彙の難易度、使用頻度等に基づく重要度等を勘案し、指導すべき語彙数を精選も含めて見直す必要性があるのではないかとしております。合わせて、入試や調査の作問に資するよう、各教科書の新出語彙リストは電子データとして提供されるべきではないかとしております。
次に、左側に戻りましてその他として、専門的な知見を踏まえた効果的な指導方法や学習方略を充実させていく必要性、その際、AIを含むデジタル学習基盤の活用等、語彙指導や語彙学習が一層効果的になる手法も併せて取り入れていく必要性を挙げております。これに対する方向性、右側といたしまして、効果的な語彙指導・語彙学習が行われるよう、第二言語習得研究や学習科学の知見を踏まえた効果的な指導や学習方略、これらを効果的に行うためのAIを含むデジタル学習基盤の活用方法について、参考となる考え方を示すべきではないかとしております。
なお、左下の部分に、現行の学習指導要領における語彙数の数え方を記載しております。つづり字の同じ語は品詞に関わりなく1語と数え、動詞の活用形、名詞の単数複数形、形容詞や副詞の比較変化などのうち、規則的に変化するものは、原則として辞書の見出し語を代表させて、1語とみなすことができるとなっております。
こちらは先ほどの論点をイメージとしてお示ししたものでございます。左上の部分、現状では、各校種の語彙数の目安が示されているのみであり、中学校では難易度の高い語が登場し、各教科書の語彙選定にばらつきが生じており、過度な負担、重要な語彙の定着が不十分などの指摘があります。右の改善イメージにおいて、語彙選定のリストを示すとともに、取扱話題を改善することで、教科書の語彙の難易度の平準化、語彙選定の平準化、負担の適正化、重要な語彙を確実に使えるようにすること等を目指してはどうかとしております。左側が、現行の指導要領に示されている語彙数です。語彙選定の参考となるリストを作成するとともに、指導すべき語彙数を、精選も含めて見直してはどうかとしております。
右側に、語彙リストを作成するにあたり考えられる要素をお示ししております。既存のコーパスを複数参照するなどして作成すること、語彙の難易度、使用頻度等に基づく重要度等を勘案して、優先順位付け及び各学校段階への振り分けを検討すること、その際、他のアジア諸国における状況も一定の参考にする必要があること、高校については、生徒の実態も様々であるため、教科書の多様性の担保に留意が必要であること、小中学校においても、難易度が過度に高まらないようにしつつも、引き続き、教科書等で多様なトピックを取り扱うことができるよう配慮が必要であること、リストを必要に応じて更新できるよう、継続的に調査研究を実施する必要があること等を示しております。
本日は、リストの作成の是非に関するご意見や、リストを作成する場合にどの程度の語彙数をカバーしたリストを作成することが適当かという点をはじめ、リストを作成する場合に留意すべき事項などについて、幅広くご意見をいただければと思います。また学習指導要領に規定する各校種で指導すべき語彙数につきましても、ぜひご意見をいただけますと幸いです。また、語彙の指導や学習方略の在り方についても、ご意見を賜れればと存じます。
続いて、参考資料についてご説明いたします。こちらは、中央教育研究所の調査を基に作成した中学校の教科書の語彙数の増加を示す資料で、第1回でもお示ししたものでございます。先ほどのスライドと同様、中央教育研究所の調査をもとに作成した中学校の教科書における語彙の重なりを示す資料でございます。一番右側の令和7年度版の教科書では、6種類の教科書全てで扱われている語が1017語あり、一つ前のスライドを基に、1社の教科書全体で扱われている語彙を2500語と仮定した場合、6社に共通している語はその4割にとどまっております。
こちらは小中学校の教科書で使用されている語彙のCEFRレベルを、中学校の学習指導要領実施状況調査の一環で分析したものでございます。グラフはレベル外の語彙を除いて作成をしております。学年とともに語彙のレベルが上がっており、中学3年の教科書ではBレベルの語もかなり扱われております。
同調査において、中学2、3年の読むことの問題の語彙レベルと通過率の関係を分析したものでございます。通過率が高い問題ほど、語彙レベルが低くなっている傾向がございます。一方で、同じ分析を中学1年生で行いましたところ、通過率と語彙レベルにはあまり関係が見られない結果となっております。
続いて、同調査において、中学3年の書くことで使用された語彙のレベルを分析したところ、CEFR-Jのワードリストに掲載されている語彙のうち、A1レベルが67%、A2レベルまで含めると88%になっております。また、つづりに誤りを含む語を分析したところ、そのうちA1レベルが71%であり、A1レベルの語彙であっても、正しく書くことに課題が見られております。同じ分析を中学1年生で行いましたところ、リストに掲載されている語彙のうち、A1レベルが79%、A2レベルまで含めると92%となっております。つづりに誤りを含む語を修正した場合についても、ほぼ同様の数字となっております。
スライド13・14は、第4回でもお示しした資料でございます。資料のご説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【酒井主査】 はい、ありがとうございました。事務局からの説明にご質問やご意見がございましたら、意見交換の際にご発言いただければと思います。
続きまして、東京外国語大学教授の投野様よりご発表をお願いしたいと思います。投野様からは、教科書の語彙分析等を基に、語彙に関する課題についてご発表いただく予定です。投野様、どうぞよろしくお願いします。
【東京外国語大学(投野)】 よろしくお願いします。それでは画面を共有します。改めまして東京外国語大学の投野です。本日はよろしくお願いします。こちらが簡単な自己紹介です。専門はコーパス言語学と英語教育の学際的な分野です。この20年間は特にCEFRの日本の英語教育への適用の研究をCEFR-Jというプロジェクトで進めてきました。前回の指導要領の改訂にも関わっています。
本日お話しするのは主に3点であります。前回の改定において小中高の語彙数が決まったわけですけれども、それの算定根拠およびその語彙指定に関する海外の動向をまとめました。2点目は改訂後の教科書について。先ほども分析結果が文科省のほうで出ていますが、私なりに小中高をつないだときの教科書の語彙分析をしたものがあるので、それをお見せします。それから教科書の語彙選定のあり方について、最後に私見を述べたいと思います。
こちらが前回の改定での主な改善事項です。語彙は小学校に英語が正式科目として導入されたことを受けまして、小学校で600から700語、中学校で1600から1800語、高等学校で1800から2500語となりました。合計で4000から5000語という指定ですね。これがどういうふうに決まったのかという算定根拠についてです。
こちらはちょっと複雑な図なのですけれども、基本的には前回の改定は、世界的なCEFRの影響力を受けて、なるべくいろんな形で参考にしようというような動きがあったわけですね。4技能5領域のCAN-DO的な目標もそうですし、語彙数の指定も割とCEFRを参照しています。大きな考え方としては、ヨーロッパでは高校を卒業して大学に入る際のおよその基準がB2レベルなのですね。一方、日本だといろいろな調査結果からそこまでいかないだろうから、B1程度というのが大きな基準として押さえられたわけです。
その上で、CEFRレベル別の必要語彙数についてはどういう基準があるかというのを、それぞれ研究資料を見たわけですけども、我々が取り組んだCEFR-J Wordlist もその一つで、それを見ますと一番左側に出ているのですけれども、A1で大体1,000語、それからA2ぐらいまでで2,500語弱、そしてB1で5,000語程度というような枠があったんですね。これを同じケンブリッジが中心で実施しているEnglish Profileというプロジェクトがあるのですが、そちらの成果物でEnglish Vocabulary Profileという資料があります。これもですね、A1からB1まで大体足すと約4500項目あったので、4000から5000語くらいの数字がB1レベルの基準だというような感じになります。それを大きく枠組みとしては使ったというのがあると思います。
導入のイメージですと、我々のCEFR-Jでいきますと、小中それから中高はやっぱり連携が大事だというような観点から、前回改定ではA1レベルは小学校から徐々に導入して中1くらいで到達させて、小学校でやった内容を中学でまたもう一度繰り返しやって、A1を1年生ぐらいで終わる。それからあとA2を中2から始めて高1ぐらいまでで到達する。高2、高3でうまくスピードアップできたらB1ぐらい、というような目安で、最初に私は委員会でしゃべったんですね。それで1000語あったA1が3分の2ぐらいになって、小学校に降りて600から700っていう区切りになって、残りを中1でという感じに分散できたわけです。
ただその後の指導要領の改定で、中高の議論っていうのは比較的いろんな要素が他にもあって、僕の記憶だと語彙の数に関する議論がテーブル上であんまりちゃんとは行われてなかった感じで、特に私が言ったようなA2の区切りをまた高1から引き伸ばしてっていう辺があんまり議論がされなかったんですね。語彙数に関してある程度単純化して、中学校まででA2、だから2500語。そして高等学校でB1っていうような感じの区切りになったと記憶しています。それで中学校までで合わせて2500語、つまりA2レベルぐらいまでをカバーした形になりました。ですので、中学校の語彙数が、私が最初CEFRのつなぎっていう意味で中高連携を考えたときにはちょっと中学校の語彙数は多いかなと思ったんですけども、当時は分からなかったので、とりあえず実施してみて調整しましょうみたいな感じだったと思います。
ここで大事なのはですね、その語彙が5000もあるということでみんな大変だっていう感じだったのですけども、むしろ語彙力のモデルの理解が非常に重要です。A1レベルの語彙というのはとても高頻度で、大体機能語と文法的な語と主要動詞がほぼ網羅されています。どのテキストにもこの1000語レベルの単語というのは7、8割は出てくると思います。このA1レベルの語彙がしっかりマスターできることが重要です。それからA2の2000語になると、その2000語の半分は名詞なんですね。だいたい1000語が名詞になります。それを機能語と動詞で作った文法的な文の枠に2000語レベルの名詞を入れて、いろんなことが言えるようになるのがA2レベルです。ですので、この2000語レベルをしっかりと産出語彙として身につける、ここが英語力の基礎になると思うわけですね。これらの語彙は用法的に非常に多機能で、辞書でも項目がすごくたくさん書かれているものが多いんですね。ですので、A2の語彙力というと2000語というと狭く感じるのですけども、深さ的には逆に一個一個の単語の用法を小中高と継続して身につけて伸ばしていくということが重要な単語群になります。それがA1、A2の2000語のイメージですね。
一方、B1レベル以上は高校レベルで受容語彙として身につけていくと、どんどん数を増やして、いろんな分野のことがちょっとずつ詳しく言えるようになってくるっていうような単語になります。ですから、まず読んだり聞いたりして意味が分かる単語として身につければいいという感じですね。これを前回は産出語彙と受容語彙というような分け方でちゃんと書きぶりをそうしたわけですけども、これも何が産出で何が受容なのかっていうことが、あんまり多分、末端の先生方の実際の指導ではハテナになっているというようなことが現状であると思います。
さあ次は海外の語彙レベルの設定の例です。大体私が調べたところですと、中国が3100語、台湾が4,500語。これらはフレンマ(flemma)というですね、最近提案されている単位で、単語の活用形などを辞書形にまとめます。これをレンマ(lemma)って言うのですけれども、この場合、レンマでは品詞が違うと別語と扱いますが、綴りが同じならそれを1語とカウントする、こういうのをフレンマと言います。そういう単位でカウントしています。一方、韓国は3000語ですね、高校終了までに。これがワードファミリーだということを調査では聞きました。これは辞書形に派生語を含むので、この場合はですね、3000と言ってもおそらくこの数字の2、3倍の量になると思います。で、日本は現在4000から5000のフレンマ換算ですね。これは文科省側でそのように教えてくれました。
ただ、明確な違いは、最初の3つ、中国、台湾、韓国は参照語彙リストを公表している点ですね。そしてそれで緩やかに縛るようにしています。韓国は9割程度を含むようにというふうに書いてあって、また中国は100から300語程度を超えても良いという制限で教科書を作るようになっているらしいです。日本はこのような語彙表は公開していないので、教科書の語彙選定は出版社に任されているというのが現状です。
はい、続けてですね、改定後の小中高の教科書の語彙分析の話をしたいと思います。こちらも少し分かりにくのですが、これは私の研究室で使用頻度の分析をしたものでして、ちょっと事前にお断りしておくと、分析対象は改訂直後の教科書データで、最近の改訂版は含んでおりません。指導要領ができた直後の教科書ですね。その分析です。それからあと教科書の本文、それから語彙リスト、練習問題、リスニングスクリプトを含んだ分析になっています。高校は点数が20点以上あるので、ここは特にスクリプトを全部収録していないです。教科書の端末に載っていたりするものはスキャンして入れておるのですが、全部教科書の付属の教授資料を見ておりません。その点はご了承ください。あとは分析対象の単語には固有名詞、数字、記号、句読点は除いています。これは先ほどの文科省のだとちょっと多かったので、その辺の固有名詞とか日本のいろんな文化的な言葉なんかが入っている場合がありますね。
まず左の図ですけども、これは小学校5年から中3までの累積語彙表、語彙数ですね。これは出版別に見たものです。これを見ますとですね、多少のばらつきはあるのですけども、中3到達レベルで2500語付近までみんな達しています。これに固有名詞などがつくとだいたい2500超えてしまうと思います。一番顕著な特徴は、小学校5、6年の語彙数の多さなのですね。指定は600から700語という基準があるのですけども、かなりこれを超えており、リスニングのスクリプトを含めてはいますが、小6で1000語程度を達成している教科書が複数あります。この原因はですね、やはり小3小4の外国語活動で出てきている語彙や表現、あの時にも結構レッスンごとに違う内容をやっていますので、そういう小3小4のテキストを受けて小学校5年のテキストが作られていますから、それが前提で作られたテキスト作りでちょっと語彙レベルが上がり過ぎかなという感じが見受けられます。小5で600語というのは、いろんな表現の繰り返しをしたり、スパイラルな教科書の設計をするのではちょっと高過ぎるかもというのが、私の印象です。また各学年の新規語彙数を学年別に見たものが右図ですね。ここでも小5の語彙数が突出して新語が多いという、これ小3、小4で出てきているからこんなに高いわけですね。それがこのぐらい高くて本当に妥当なのかというのがちょっと心配であります。
次に、小中を通じての2500語程度は各教科書がそれぞれ頑張って収録しているのですが、どのような単語を選んでいるのか、という点を、CEFR-J Wordlistに照らして評価してみました。一番教科書に出てきた単語でCEFR-Jワードリストのどの程度一致しているかを見たのが上の2つの図です。異なり語的には教科書で出てきた単語の80%程度は CEFR-Jと同じでした。つまり大体8割程度はCEFR-Jで指定している単語が出ていました。2割程度が違う単語だった。CEFR-Jのリストにはない単語だったということです。ここにちょっとだけ黄色っぽいところに枠で例が挙げてありますが、日本文化とか学校内で特によく出てくるものが登場します。これらの単語はレッスンごとに数語程度なのですね。だからあんまり大きな影響はないと思うんですね。その推測を裏付けるのが右上のカバー率を見ますと、先ほど8割カバーしていたというCEFR-Jに含まれる単語で、大体テキスト本文の95%以上カバーできています。ですので、2割程度は、オフリスト(off list)というのですが、リストにない単語が出てくるけれども、それはあまりテキスト理解上はそれで無理が出るほど影響はないという感じですね。
下の段は CEFR-J Wordlist には A1からB2、全体で7500語あるのですけれども、そのうち教科書の小学5年~中学3年の5年分でどのぐらい出てきたかという、つまりCEFR-Jリスト全体をどのぐらいカバーしているかという図です。これを見ますと、中3の終わりまでで約3分の1、つまりA2までのサイズに匹敵する2500語が出てきているのですが、よく見ますとA1レベルは7、8割ですね。A2になると30から50%と教科書セットによってばらつきがあります。これは2500語という数字は達成しているけれども、その中身がカバーしてほしいA2までの単語の2500語とは少し重なっていなくて、先ほど言ったようにBレベルとかの単語が結構出てきてしまっている、ということですね。このあたりは、語彙コントロールをしないで作っている影響なのか、それともさっきのような文化的な単語とかそういうもので問題ないのかというのは、もうちょっとよく調べないといけないと思います。
はい、次に高等学校の分析に移ります。こちらはですね、英語コミュニケーションのみ最初にレポートします。20数冊出版されているため、ここでは小中高の接続を見るために、一番採択率の高い4シリーズに絞って分析しています。そして小中からそこの出版社の教科書を使い、かつその出版社の出している採択率の高い、割と高難度のテキストを選んだ場合と、逆に低難易度のを選んだ場合どうなるかというそういうシミュレーションをしています。ここでも語彙のカウントの仕方は先ほどと同じです。出版社ABともにですね、難しめのテキストがセット1と3、それから易しめの方がセット2と4なんですね。そうすると、高3までの達成度の語彙の数を見ると、きれいに分かれていまして、難しい方は5000語を超えているのに対して、易しい方は4000語に達するくらいの分量です。ですので、教科書会社としては、この辺を数字としては意識して作っているということが分かります。
小学校からずっと通して見た、高校までの推移を見たのは右図ですね。この場合は高1の時に新出語彙の分量が、難易度傾向の高いテキストだとかなり大きな飛躍というか、そういうのがあるのが分かります。一方、これは我々の結果でもちょっとかなり低いなと思ったのですが、低難易度の高1のテキストは中学の繰り返しのような語彙がほとんどで、あんまりたくさん語彙を出していない教科書になっていたということですね。
同じことを小学校8年間の推移で見てみます。これCEFR-J全体との重なりですね。ご覧になっていただくと分かるとおり、異なり語のカバー率は徐々に低くなってしまいます。高校2、3年になると3割程度がリスト外の単語です。ですので、これは高3ぐらいでテキストが高度化してくると、レベルを超える難易度の高い単語とか分野別の語彙も多くなるので、ある程度仕方がないとは思います。ですから、ここら辺は語彙をコントロールして縛っても、多少こういうのは許容範囲をつけておくことでカバーできるのかなと思います。でも上の図を見ていただくと、カバー率は相変わらず9割以上ありまして、そのCEFR-Jに含まれる8割の単語で、テキストの95%近くは維持しているんですね。ですので、CEFR-Jの単語がしっかり入っていることで、基礎内容部分は結構カバーできています。そこにいろんな単語が、高難度のものが散りばめられているという感じになります。
下の図は逆に小中高の単語が、どの程度CEFR-Jリスト全体をカバーしているかというものになりますが、スライドの11だと中3まででは3割だったのですけれども、ここでリスト全体の5割まで上がってきています。下位レベルの教科書は40%で4割ですね。これは単純計算ですと、7500語がワードリストに含まれているので、その半分だから3500語程度になります。高3のB1レベルの5000語に照らすと、本来5,000語出てきてほしいのが3,500語程度出ているということなので、CEFR-Jにない単語が1,500語くらいあることになります。このズレ具合は1500語くらいあるのですけども、それでも4セットの平均では、この4種類のテキストに関しては、A1は9割、A2は7割までカバー率が上がっているというので、比較的インプットは良好であると思います。この2社は比較的 CEFR-Jリストを参照しながら作っているという感触があります。ですので、ワードリストに出てくる単語を比較的意識して設計ができているためかなと、個人的には思っています。
実はそれが教科書全体の高校の二十数冊を見てみると、相当にばらつきがあります。この左図の方を見ますと、英語コミュニケーションと論理・表現ですね。各教科書20種類程度の分布を見ているのですが、全体のテキスト量(総語数)では英語コミュニケーションはかなり分量が論理・表現よりは多めで、メインのインプットソースになっているということが分かります。ただ、分布の幅が問題ですね、テキスト量は教科書によってかなり違い、少ないものから多いものまでの分布があんまり均質ではないのが気になりますね。また、改定後の教科書採択の状況を見ますと、以前よりもちょっと易しめの教科書を採択する学校が増加しているんですね。これは英語で授業をするということを考えると、易しいテキストのほうが扱いやすいからだと思うんですけれども、一方で小学校から始める意義というのは、最終到達点を底上げして高めるということですから、それでいくと、教科書を易しいのにスイッチしてしまうと、認識語彙のレベルが低くなってしまう。そうなってくるとB1、B2の受容語彙が充実しなくなって、読む力が落ちるということがあり得るかなと思います。
右図は英語コミュニケーションと論理・表現の出版社のカバー率のヒートマップですね。これは緑色が濃いほどカバー率が高いのですけれども、左がA1のカバー率で、これは割と緑色なのですが、A2の右側の方は黄色や橙色が多い(=カバー率が低い)ですね。先ほどの採択率の高かった4セットの作りに比べると、20社全体で見るとまだまだA2は3、4割程度でばらつきが大きいことが分かります。赤く囲ったところが、実はこれはケンブリッジが出している教科書なんですね。これは他に比べると顕著に緑色が高いことが分かっています。彼らは別に我々のワードリストを参照しているということではなく、CEFR基準で何か作るとやはり語彙分布はCEFR-Jリストと同様の傾向が出てくるのかなと思います。
最後にすみません。教科書の語彙選定のあり方について私見をいくつか。まずこの分析から見えてくるものということでまとめです。まず小学校は語彙に関してはややちょっと詰め込み過ぎという印象が見受けられると思います。小3、4の活動の内容を踏まえすぎていて、小5ですでに500語が出てきています。小6で1000語レベルに達してしまっているんですね。新しく始まったということもあるのですけれども、各社力を入れていて、付属資料などもすごい盛りだくさんなわけです。ティーチャーズガイドを見ますと、導入事例の英語などはかなり難しいものが多いというのが私の印象です。語彙の活動も豊富で、そこから選択的に選べばいいんだという考え方もあるかもしれないんですけど、そうなってくると、あれだけ分量があると何が一番重要なのかということがあまり見えてこなくなっちゃう人もいると思うんですね。そういう先生にとっては、とても指針が見えにくいような教科書作りになってしまっているのかなと思います。
中学校は終了時に2500語を達成しているわけですけれども、CEFR-JのA2は中高接続を考えて、できれば中2、3年から高1でA2完成というイメージだったのですね。それを思い出すと、もう少し緩やかに2500語を導入するという案でもよいのではないかなと思います。それが右下の太い赤線で示したもので、この方がコア語彙を繰り返ししっかり定着しながらリサイクリングして、基礎語彙をしっかり身につけた形で上に上げるという方が、後がスムーズにいくのかなと思います。
2点目はばらつきの問題です。先ほどの中学校までは各社ともCEFR-Jの3割をカバーしていたと言いましたけれども、これはA1からB2までの単語を全部含めたときの3割でした。ここで数字のトリックがあって、各社がカバーしているCEFR-Jに載っている単語のうち、全社共通に載っている単語を調べてみると、A1は686語だったので7割ぐらいとまあまあいいんですけど、この全社というのは小中ですから、5年生から中3までの5年間の全部のテキストのことです。ただA2はたったの187語しか共通語はなかったんですね。相当ここでもバラバラ感はあります。これは、選んだ教科書によって、コア語彙のインプットで触れる単語がかなり異なるということ。CEFR-Jからは一応取っているけれども違う単語のセットが、教科書によってバラバラに出てきているので、発信の2000語っていうのをもう少しみんなで意識して均質にする作り方の方がいいのかなと思います。これは中韓台も語彙表を公表していることと、あと複数のいい語彙表も今利用できることを考慮すると、語彙選定はだいぶしやすい時代になっていると思うんですよね。ワーキングにはこの分野に詳しい先生方もいらっしゃるので、ぜひご検討をお願いしたいなと思います。これで小中の語彙導入がうまくいって、中高でのA2からB1、その上を行くB2への移行が、加速度的にスムーズになるといいなというのが私が思っていることです。
最後に言いたいのが、前回の改訂ですと、CAN-DO的な指標の目標が立って、テキストタイプ別の受容や発信という観点では非常に優れた目標文になったと思うんですね。そこで情報の種類によって概要を読み取るとか、要点を読み取る、あらすじをつかむ、そして細かい情報をとらえるみたいなことが、テキストタイプ別に受容と発信で何をするべきかということはよくわかったと思うのですね。ところが「言語の働き」の要素は比較的解説の一部に埋もれてしまって目標文になりませんでした。CAN-DO的には少しこれはアンバランスかなっていうのが印象ですね。ですので、今回の改訂でできれば、言語の働きの面をもう少しCAN-DO的に格上げして、言語の働きとテキストタイプのバランスが取れると良いのかなと思います。その際に語彙というのは単語同士で結びついてチャンク=定型表現を作りますよね。この言語の働きを担うのは割と定型表現の塊なので、そういうことをうまく語彙指導とか語彙学習にリンクさせて、定型表現の重要性っていうことをやっぱり見直すべきかなと思います。この辺りうまく小学校では言語の働きに気づかせながら、形と意味の結びつきを慣れさせて、中学後半からA2、B1レベルでまとまった発話、もっと情報構造が複雑なものに意識を向けていき、テキストタイプ別の受容・産出語彙を身につけるっていう、そういうような道筋が段階的にあると良いのではないかと思うんですね。
すみません、ちょっと長くなりました。まとめです。前回改定の語彙数の算定根拠の説明をし、中学校の語彙レベルはちょっと高めの設定ではないか、再考の余地があるのではというのが意見です。また改定後の教科書の状況、小中の語彙数が少し高いので、抑え目にして基礎語彙をしっかり定着を図る必要性がありそうです。また教科書の基礎語彙選定、品質管理、語彙とCAN-DOの有機的な関係を考慮に入れて、前回のいろんな改定の長所を発展させて、短所を補って、さらに学びやすい指導要領の改定になりますようにと期待しております。参考資料ですが、これは2000語の働きということで、2000語以上になりますとカバー率がガクンと落ちるという図と、それから語彙力のイメージの前に私が書いたコーパスを調べたことによって、こんな感じかなという語彙力のイメージの図です。以上になります。ご静聴ありがとうございました。
【酒井主査】 はい、投野様ありがとうございました。詳細なデータに基づくご発表、それからまた前回改定のときのいわゆる背景的な考え方も踏まえて、ご提案いただいたかなと思います。
また今日議論したい論点について、基盤語彙リストは必要なのか、そして語彙数はどの程度、あるいは学校種でどの程度の語彙数が必要なのか、またリストを作るときにはどういうところに留意すべきかということについても、具体的にご提案いただいたかと思います。またこれを踏まえて、後ほど委員からはご意見いただきたいと思っております。この時点で、ご質問のある方は挙手ボタンでお願いをしたいと思います。投野様にご質問がある方は挙手ボタンをお願いします。亘理委員お願いします。
【亘理委員】 ありがとうございました。一点確認、一点質問で、確認は資料の16ページなんですけども、語彙選定の必要性のところで、「A1 686語 70.4%」。これは975語に対する686語で70.4%だと思うんですけど、「187語のA2が7%」の7%は、母数はどれになりますか。同じ仕組みで962語だと19%ぐらいかなと。
【東京外国語大学(投野)】 はい、えっとですね。これ962語で割る数になりますね。間違えてましたか。ごめんなさい。
【亘理委員】 そうですか、19.4%でしたか。
【東京外国語大学(投野)】 ごめんなさい、これはA2が全部出てるわけではなくて、962語だったので、それのうち187語ということなので、ごめんなさい、間違えました。
【亘理委員】 カバー率が低いという論旨には影響はないかなと思います。 もう1点質問したいのは、資料の10ページとか14ページで教科書によるばらつきが指摘されてると思うんですけど、投野先生にご意見をお伺いしたいのは、教科書の中でこのばらつき、特に今のこれで言うと中学校のA2レベルが30%から50%のばらつきが大きいということなんですけど、教科書の中で6社あれば6社がなるべく同じぐらいのカバー率になるように統制すべきというご意見なのか。それともこれを踏まえてリストを作った場合に、教科書外からカバー率を充足するような指導をするとか、教科書の多様性は担保した上でこのばらつきを埋めるような外からの補填が必要という風に考えた方がいいのか、先生のご意見はどちらになりますか。
【東京外国語大学(投野)】 そうですね。そこは一応教科書の中に出てくるように作る努力は他の国でもみんなやっているので、語彙指定をした場合ですね、そこはできるだけ指定した語彙が出てくるっていう機会を確保するっていう形で教科書の中に出てくるのは大事だと思うんですが。ただ1回しか出てこない単語とかの場合がとにかく無理やり入れてるみたいな感じになってる場合もあるので、そこは今、亘理さんが言ったみたいに、実際に教科書をどう扱っていて、授業中にどのぐらいそれを繰り返したり、授業中のタスクでどのぐらいフォーカスしてるかっていう、ボキャブラリープラクティスの部分の内容とも関連するので結構複雑なことで、こうしたほうがいいってなかなか言えないですね。だから、どっちもやるっていう感じの方向で、結果的にカバー率が上がるようにしたほうがいいっていうことですかね。
【亘理委員】 語彙習得研究・語彙研究のご専門の立場から、職人技的な肌感覚みたいなものをお伺いできればという感じで言うと、教科書内の統制を強めてしまうと、教科書のバラエティというか面白さが失われてしまうことを我々は懸念した方がいいのか、それとも英語を学ぶ入り口で苦労が多くなってしまう方がリスクなのか。
【東京外国語大学(投野)】 先ほどのレポートにもあるように、僕らの語彙表のカバー率が多少低い単語はあるが、テキストのカバー率全体でいうとCEFRの指定している単語の8割くらいをカバーしていれば、残り2割は違っていても、95%くらいのカバー率が出ています。残り2割は本当に各レッスンでちょこちょこっと出てきて、他では全く出てこないような単語なんですけど、そのくらいのバリエーションはあっても大丈夫なんだなっていうのは思います。ただ、現状だと教科書ごとに出てきている2000語が相当違うので、教科書を選ぶごとによって習ってきた単語が均一でないことは気になるんですね。そこのところでも語彙はどんなものなのかという参考資料を皆が一緒に共有できる価値はあると思います。
【東京外国語大学(投野)】 先ほどのレポートにもあるように、僕らの語彙表のカバー率が多少低い単語はあるが、テキストのカバー率全体でいうとCEFRの指定している単語の8割くらいをカバーしていれば、残り2割は違っていても、95%くらいのカバー率が出ています。残り2割は本当に各レッスンでちょこちょこっと出てきて、他では全く出てこないような単語なんですけど、そのくらいのバリエーションはあっても大丈夫なんだなっていうのは思います。ただ、現状だと教科書ごとに出てきている2000語が相当違うので、教科書を選ぶごとによって習ってきた単語が均一でないことは気になるんですね。そこのところでも語彙はどんなものなのかという参考資料を皆が一緒に共有できる価値はあると思います。
【亘理委員】 ありがとうございます。
【酒井主査】 はい、ありがとうございました。続けて他にご質問ありますでしょうか。臼倉委員お願いします。
【臼倉委員】 はい、投野先生ありがとうございました。うまく質問できるかなんですけど、投野先生が高校の教科書のお話をしていて、最近の傾向として高校で今までよりもちょっと易しい教科書を使って、英語で授業やることを基本とするっていうのをより推進するために易しいものを選んでいる学校が出てきていると。それに関する懸念事項として、それのままいってしまうと受容語彙の最終到達レベルが下がってしまうという懸念があるっていうのはとおっしゃっていたときに、これも投野先生のご意見を聞きたいなと思ったのが、そのカバー率ってことで前提として、例えば小学校中学校でやった語彙が全部身についていれば高校でどうっていう話はしやすいんですけど。現状としてそのやっぱり小中のものが身についていないという現状があったときに、身についていないんだけれども全部身に着けさせることは難しいから、とりあえず可能性を広げるために新しい語彙を積み重ねていくっていうようなアプローチが望ましいのか、それとも地固めを先にやるっていうアプローチがいいのかっていうのが、どっちも大事だと思うんですけども、投野先生としては小中高全体を見たときに、どちら寄りとお聞きしていいのか分からないんですが、もしコメントがあればいただけないでしょうか。
【東京外国語大学(投野)】 そうですね、もうレベルが全然高校のB1レベルっていうのに達していないような生徒さんたちがいるようなところで無理やりやるっていうのは僕は良くないとは思うんですけど。あの、そうじゃなくてB1レベルに達することができ、B2も狙えるような学校が易しいものを選んでいる傾向がちょっとあると思うんですね。そこはあのやっぱりしっかり受容の高度な語彙も仕込んだルートもパラレルにないと、全部教科書を易しくしちゃうのは、せっかく底上げを図ろうとしているのに、そこは違うかなと思って言ったので。もともとできてない、そこまで達していない子たちに無理やり難しい教科書という意味ではないんですけど、そこがちょっと僕としては、やっぱりリーディングが弱くなっちゃうのはCEFR的に言っても本意ではなくて、割と話すことばっかりになっちゃうっていうのは、そうじゃないんじゃないかなと思います。
【臼倉委員】 はい、ありがとうございました。もう1点だけ。教科書によって語彙のばらつきが異なることの懸念点として、生徒が選んだある学校が、地区が選んだ教科書によって、中学校卒業時点とかで身についている、例えばA2のレベルの語彙が元ですかね。A2レベルの方に違う語彙を同じレベルでも違う語彙をそれぞれ使った教科書によって変わってしまうというお話があったんですが、それが良くない理由というのは、ちょっともう一回お聞きしたくて。はい。例えば入試、高校入試とか問題を作るときに困っちゃうんじゃないか、アンフェアじゃないかみたいなことなのか、それ以外かっていうところで、そこをすいませんもう一度お聞きしたいです。お願いいたします。
【東京外国語大学(投野)】 触れてる語彙がばらつきが多いっていうことは、同じ学校に集まった子たちが新しいテキストを得たときに、それがなんか人によって難しさがかなり違ったり、あるいはそこのテキストの出てくる単語がかなり知らないことを知ってる子がまあばらつきが多くなる可能性があるってことですね。ですから高校の教科書はやはり小中の内容を踏まえてるっていっても、どういうふうに踏まえるかっていう部分についてはそこの均質じゃないっていうところがあると、高校の素材自体がもっと難しく感じるようになって、その子たちにとっては高校の出てくるものはますます分からないっていうのが多くなる。そういうことが心配ですね。
【臼倉委員】 ありがとうございました。よく分かりました。
【酒井主査】 はい、ありがとうございます。時間も来てるんですが、関谷委員、端的にお願いします。
【関谷委員】 すみません、投野先生ありがとうございました。1点質問なんですが、スライドの17ページのCAN-DOと語彙のところなんですが、今回私、基盤リストというものの存在は賛成しているところなんですが、言語の働きに基づいてリストを作れるといいんじゃないかと思っていたところで、先生のご説明を聞いて、具体的にどういった形で言語の働きと、語彙だけではないかもしれませんけれども、示していくのが良いのか、もし具体的なイメージがあればお伺いしたいなと思います。
【東京外国語大学(投野)】 これはヨーロッパの方では機能別の表現リストみたいのものがCEFRができる前からありまして、それをもっと現状の教科書から出てきている教科書データをもっとよく活用した機能別リストみたいなものをコーパスで作ることは割ともう現実的じゃないかなと思うので、「感謝する」っていう表現についてたくさん、例えば3語、4語、5語連鎖ぐらいのチャンクみたいなものを切り出した後、それを分類したりして、こういうものにまとめていくみたいなことを、代表的によく教科書で出てきている表現というものを調べて、その表現をこういうふうに分類したらいいんじゃないかというのが私のアイデアですね。こういうものは研究としてもやると面白いと思うのですが、チャンクの表現ってCAN-DOと結びついたものっていうのはあんまり発表されてないので、そういうものがあると便利だなと思って提案したわけです。
【関谷委員】 ありがとうございました。ぜひ中学生にも、高校生にも、使える英語のためにはそういったリストが必要かなと思いました。ありがとうございました。
【酒井主査】 投野様ありがとうございました。本日は貴重なご意見をいただきました。
続きまして、立教大学教授の中田様よりご発表をお願いしたいと思います。中田様からは、語彙の学習には特に学習方略が必要であるということの重要性を踏まえて、語彙の学習方略に関する内容を中心にご発表いただく予定です。中田様、どうぞよろしくお願いします。
【立教大学(中田)】 ただいまご紹介いただきました中田と申します。本日はどうぞよろしくお願い致します。
本日は語彙指導に関してお話いたしますが、前提として一斉授業における語彙指導には限界があるといったことも指摘されております。主に理由は2つありまして、1つ目は習得すべき語彙の数というのが多いので、限られた授業時間で必要な語彙を全て教えるのは非現実的であるということ。あと、学習者ごとに知らない単語というのが異なりますので、一斉授業における直接的な語彙指導は非効率的になることもあると。これは先ほどの質疑応答でもあったと思いますけれども、Aさんにとっての知らない単語が、Bさんにとっては既に知っている単語であると、そういった可能性もありますので、授業時間を使って語彙指導したとしても、一部の学習者にとってはあまり有益ではないこともあり得るということです。こういった2つの理由から、語彙指導に関しては家庭学習との連携というのが重要になってくるかと思います。ただ一斉授業では限界があるからといって、単語に関しては各自自宅で学習しておいてくださいと言うだけだと無責任になってしまうかと思いますので、どのように語彙学習を進めればよいかという指針、学習方略、これを指導することが重要になってくるだろうと考えられます。研究者の中には、授業中に教員が語彙を直接教えるよりも、教室外で学習者が自律的に語彙を学習できるように学習方略の指導を優先すべきであると、そういった主張をしている人もいます。
語彙学習方略には様々なものがありますけれども、本日はこちらの4点をご紹介したいと思います。1つめは多読や多聴による語彙習得のことです。多読や多聴というのは、簡単な英文をたくさん読んだり、あるいは聞く活動のことです。多読とか多聴をすることで語彙力だけではなくて読解力とか文法力も伸びますので、厳密に言うと語彙学習のための方略というわけではないんですけれども、多読とか多聴によって語彙習得も促進されると言われています。具体的には2つの効果があると言われてまして、1つ目がテキスト中に出てきた知らなかった単語、新しい単語を習得できるということ。2点目として、すでに馴染みがある単語に関してより深い知識、例えば発音とか活用形とか派生形とか文法的機能、コロケーション・連想、そういった知識が習得できるということです。同時に学校教育で多読とか多聴を行う場合は、教材をどのように用意するのかとか、多読とか多聴の活動をどのように成績評価に結びつけるのかとか、そういった問題があるかなと思います。さらに、授業時間外に多読しておいてくださいというだけだと、学習者はあまり読んでくれないということもありますので、授業の中でみんな一斉に本を読む時間をとったりですとか、授業で多読の指導を行うことが重要であるというふうに指摘されております。
2点目が単語カードによる学習という方略です。単語カードというのは片面に単語、もう片面に単語に関する情報が書かれたカードのことです。この単語カード学習に関しては批判もありますけれども、語形と意味のマッピング、すなわち英単語から和訳を思い出したり、あるいは和訳から英単語を思い出す、こういった知識をつける上では効果的で効率的であるというふうに指摘されております。さらに最近はスマホやタブレットのカードアプリも広く使われており、こちらも効果的であると指摘されています。なぜかと言いますと、アプリの中には分散効果ですとか、想起練習効果といった学習原則に基づいて作成されたものもありますので、こういったアプリを使うことで、学習者自身は意識しないでも効果的な原則に基づいた学習が自動的にできるということです。
3点目が辞書の使用という方略です。近年は機械翻訳や生成AIの発展で、最近の学習者はあまり辞書を引かないといった状況もあるかもしれませんが、辞書使用も重要な方略の一つであると言われております。辞書の効果としては主に二つ考えられまして、一つ目が単語に関する深い知識の習得を促す、すなわち和訳だけではなくて様々な知識が身につくということ。2点目として、多義語の理解を促進するということです。例えば、ストレスという単語を辞書で引きますと、こちらに挙げた様々な意味が書いてあるんですけれども、ある辞典によりますと、ストレスの中心義、すなわちコア・ミーニングというのは、強い圧力だと書いてあります。こういった中心義を知っていると、単語の様々な意味を理解する手助けになるということです。
辞書に関して問題になるのが、紙の辞書と電子辞書ではどちらを使うべきかということかと思いますが、これに関してはそれぞれ利点があるということが考えられます。紙の辞書の利点としては一覧性が高いこと。あとは付箋とかハイライトとか書き込みをしやすいということです。一方で電子辞書に関しましては、検索性に優れている、例えば複数の辞書を同時に検索するといった串刺し検索ができたりとか、あと見出し語だけではなくてフレーズや用例を検索できると、そういった柔軟な検索ができるといった利点があります。さらに音声とか動画なんかのマルチメディアが利用可能と。このように紙の辞書と電子辞書にはどちらも利点がありますので、双方を目的に応じて使い分けることが必要かなと思います。
4点目の方略が記憶術でして、いろんなものがありますが、ここで3つご紹介しています。一つ目が語呂合わせで、例えば「無礼者と非難する」という語呂合わせからblameという単語の意味を覚えたりとか。2点目は単語部品方略、語源学習というふうにも呼ばれますけれども、単語を接辞とか語幹に分解して意味を考えるというものです。3点目としてカタカナ英語をきっかけに単語の意味を覚えるということもできます。
次に、方略に関する留意点ですけれども、方略に関しては、あらゆる語彙のあらゆる知識を効果的に習得できるような完璧な方略は存在しないということが言われています。なぜかと言いますと、まず学習方略の効果というのは、どんな種類の単語を身につけたいかとか、単語に関するどういった知識を習得したいか、これによって変わるからです。例えば単語のスペリングを習得したいのであれば、単語を繰り返し書くといったスペリングに注意を払う学習、これが有益だと考えられます。一方で単語を発音できるようになりたいのであれば、その単語の発音を聞いたり、実際に発音したりといった発音に特化した学習が効率的だと考えられます。つまり、単語に関するどういった知識を習得したいか、これによって最適な方略が変わってくるということです。
さらに、方略にはさまざまなものがありますけれども、いずれも利点もあれば欠点もあるというふうに指摘されています。例えば、多読とか多聴による語彙学習というのは、単語に関する深い知識の習得に適するといった利点がある一方で、習得に時間がかかって効率があまり良くないといった欠点もあります。一方で単語カードとか記憶術による学習というのは、語形と意味を結びつける上では有益であるといった利点もありますけれども、単語に関する深い知識の習得には適さないと、こういった欠点もあります。どんな方略も一長一短ありますので、特定の方略に偏ることなく、様々な方略を目的に合わせて柔軟に組み合わせて使うことが有益だと考えられます。
さらに学習方略を効果的に使うためには、方略使用を制御する能力、これが必要であると指摘されています。具体的には、様々な方略の中から状況に適したものを選択して、必要があればより適切な方略に切り替えるということです。具体例としては、知らない単語について辞書で調べた後に、その単語に関する知識を定着させるために、単語カードを使用して定期的に復習すると。こういったふうに複数の方略を組み合わせるということです。これに関しては、関西大学の水本先生が提案されました、メタ認知リソース利用の概念というのが参考になるかと思います。こちらは生成AIですとかDDL、Data Driven Learningの文脈から提案されたものですけれども、学習者が自分の能力とか課題に合わせてさまざまなツール、例えば辞書とか生成AIとか機械翻訳とかアプリ、そういった様々なツールから最適なものを選んで戦略的に使用すると。さらにその使い方が適切かとか問題が解決されたかといったことを監視して調整するといった考え方です。
次に、方略の指導における留意点というのを4点ご紹介します。1点目は、方略を指導する上では、教師がその方略を説明して実演するということが一般的かと思いますが、それだけでは不十分であるということが指摘されています。教師が説明とか実演するだけではなくて、学習者が方略を使えるようになるまで十分な練習を積む必要があるだろうというふうに指摘されています。十分な練習はどのくらいかということですが、目安として、一つの方略につき数週間にわたって少なくとも4、5時間くらいは必要だろうというふうに言われています。ただ、この4、5時間というのはあくまでも目安ですので、参考程度にお考えいただくのはいいかなと思います。3点目に、学習者がその方略を本当に使えるようになったかというのを確認してフィードバックを提供すること、これも重要であると言われております。具体的には学習方略がどのくらい使えるかを測定するテストというのがこちらに挙げたようにいくつか開発されていますので、こういったテストを使用することができます。最後に、方略を使用した際にうまくいった点とかいかなかった点、これを学習者が振り返った上で教師に報告して助言を受けること、これも有益であるというふうに言われています。
最後にコミュニケーションで単語知識を使うためにはという点について触れたいと思います。これに関しては英単語とその意味、和訳を結びつけられるだけでは不十分といったことが考えられます。和訳だけではなくて、単語に関する深い知識ですとか、流暢性、これを身につけることが有益であると言われております。語彙知識の流暢性というのは、必要な語彙知識に瞬時にアクセスするアクセススピードのことです。語彙知識の流暢性をつける上でのポイントを5つご紹介します。1つ目が知らない言語要素、すなわち語彙とか文法がほとんど含まれない難易度の低い教材を使用するということです。英語学習というと、新しい単語や新しい文法事項を覚えることが重視されがちかと思いますが、それだけでなく、既に知っている言語項目を素早く使えるように意識することも有益です。2点目として、時間制限のある活動を行うということで、1分間でテキストを読んでみるとか、5分間でできるだけ多くの英文を書くとか、そういったスピードが求められる状況で活動を行うということです。3点目が同じ活動を繰り返すということで、例えば同じテキストを複数回読んだりとか、同じスピーチを複数回行うと。こういった活動を繰り返すことで、同じ語彙を何度も使用することになりますので、次第により少ない認知的負荷で語彙知識にアクセスできるようになって流暢性が発達するというふうに考えられています。4つ目が技能統合型の活動を行うということですけれども、これは例えばあるテキストを読んだ後にそのテキストの内容について要約を書いたりとか、あるいは内容に関する意見を話したりすると。こういった活動を行うことで、同じ語彙を異なるスキルを通して何度も使用することになりますので、流暢性の発達に有効であると考えられています。5点目、先ほどご紹介した多読と多聴というのも、語彙知識の流暢性をつける上で効果的であると言われております。流暢性というとスピーキングと結びつけられることが多いかもしれませんが、リーディングとかリスニングにおいても語彙知識のアクセススピードというのが有益であるということです。
さらにコミュニケーションで単語知識を使うためには、流暢性に加えて、先ほど投野先生のお話にもあったかと思いますが、単語がどのような定型表現、すなわちフレーズで使われるかといった知識も有益になってきます。例えば、roundという語を例にとりますと、roundは丸いという風に覚えるだけでは不十分で、こちらに示したようなroundを含む様々な定型表現に関する知識が有益であるということです。最後にですね、単語を使う上でもう一つ注意すべきなのが、文法的には正しいけれど通常は使われない表現というのが言語にはたくさんあるということです。こちらの表で左側はいずれも文法的に正しくてかつ一般的な表現です。一方で、右側は文法的には正しいけれども、通常はあまり使われない表現となっています。こちらの例から分かる通り、単語を使う際というのは理屈では説明しづらい様々な文法的、語彙的制約があるということです。文法ルールに当てはめて、一からクリエイティブに文を組み立てていくと、右側のように聞き慣れない表現になってしまうこともあるということです。その代わりに、この表で黄色くハイライトしたような定型表現、これをつなげ合わせたり、一部を入れ替えたりすることで、読み手や聞き手にとって理解されやすい自然な表現になるということです。ですので、コミュニケーションで単語を使うためには、その単語がどういった定型表現で使われるのかとか、どういった文法的意味的制約があるのか、これも知っている必要があるということです。あとですね先ほど流暢性の話をしましたが、この表で黄色くハイライトしたような定型表現を知ることで流暢性も高まるというふうに指摘されています。つまり定型表現を知ることで、言語の処理単位というのが個別の単語ではなくて、複数の語から構成されるチャンクになりますので、より効率的な言語処理につながって言語の理解とか産出における流暢性も高まるということです。最後に参考文献を示しております。大変駆け足でしたがこれにて発表を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
【酒井主査】 ありがとうございました。それでは中田様のご発表に関しご質問のある方は挙手ボタンよりお願いいたします。髙木委員お願いします。
【髙木委員】 中田先生ありがとうございました。学習方略を教えることは中高で教えておりまして非常に賛成なんですけれども、例えば日本のようなちょっと大きめのクラスサイズで教えるってなった時に、先ほどスライドの10ページ目で留意点についてご説明いただいたと思うんですけども、これらの留意点っていうのがそれぞれ個別の学習者に定着して初めて効果が生まれていくんではないかなというふうに思うんですけれども、クラスサイズが大きい中で方略の定着に向けて教師がどんなことでアプローチできるかなというところで、もしご意見あればお伺いしたいんですけれども。
【立教大学(中田)】 クラスサイズが大きい場合は確かに学習者一人一人あまり目が届かないということもあるかと思いますので、例えば方略を使ってみてどうだったかというのを、学習者にジャーナルか何かの形で書いてもらって、それを教師が確認したりですとか。あとは、その方略が実際に使えるようになったのかというのを示すようなテストがありますので、テストであれば一斉に実施して、それから定着度を確認するとかそういった方法が考えられるかなというふうに考えております。
【髙木委員】 ありがとうございました。
【酒井主査】 続けていかがでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。中田様からは、語彙の広さってよく言いますけども、語彙を覚える、数を広げていくっていうか、覚える量を増やしていくっていう側面で、単語カードの活用、それからストラテジーですね。それからもう1点は語彙の深さというところで、中田様のご発表の中でも用法の深さという言葉が出てきましたけれども、語彙の様々な使われ方を学んでいくときにどういうことが必要なのか。さらに、ただ単に広げたり深めるだけではなくて、そこに流暢さっていう学び方も大事なんだということで、アクセスをいかに効率化するというところでどういう活動が必要なのかということを、学習方略の話と、それからどういう語彙を学ぶことが必要なのか、どういう語彙の側面を学ぶことが必要なのかということをお示しいただいたかなというように思います。大変貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。
続きまして本議題に関して内田委員より資料を提出していただいておりますので、内田委員よりご発言をお願いしたいと思います。
【内田委員】 それでは私の方から、検定教科書と学習者のライティングに出現する語彙についてということで、簡単に説明させていただければと思います。
簡単に自己紹介ですが、私、九州大学の内田諭と申します。この委員会も参加させていただいておりますが、専門は認知言語学、それからコーパス言語学、英語教育学というところです。最近は、投野先生とかも一緒に研究をさせていただいているんですが、CEFR-Jのプロジェクトにも関わっていて、一つの成果としてライティングのCEFR-JレベルをAIで自動判定するというようなものを論文として書いております。こちらCWLAとして公開しておりますので、もしよろしければご参考いただければと思います。
今日は、これまでのご発表にもありましたとおり、中高生の発信語彙、スピーキング・ライティングで使える単語を増強したいという課題があるのかなと思います。前提として英語学習においてインプットはとても重要だということは広く認識されていることかなと思います。先ほど中田先生のご発表でも多読多聴というところがありましたが、やはり学習方略にしても指導法にしてもインプットというところはとても大事になると思います。そこでまずは教科書ですね、中高生の教科書を見るということ、どのように英単語が出現しているかというところ。あともう一つ、中高生がどういうことを書いているかというアウトプットの部分ですね、ライティングのところを見て、両者を比較することによってギャップがあるかどうかというところを検証したいなというふうに思っております。
まず方法として今回用いたものですけども、中高の検定教科書を用いました。この中から単語の種類、それから頻度というものをコーパスとして分析をするということをしました。具体的には低頻度語の割合を算出してみました。中高のライティングのほうも同じようにコーパス化をして、そこから低頻度語がどのように出ているのか、あるいは中高生はどんな単語を使っているかということを分析しました。今回、教科書のデータですけど、中高のものに関しては本文のデータを使っております。ですので、これまで事務局あるいは投野先生からご提示いただいたものは、カバー to カバーのすべてのデータだったと思いますが、今回私は本当にど真ん中といいますか、レッスンの本文だけを利用していることになります。数字固有名詞等は除いております。中学に関しては今年度から使われているものを利用しておりますが、高校の方はちょっと手元のデータが古かったですので2016年のものになってしまいますが、大まかな傾向としては変わりがないのかなと思っております。ライティングに関しましては、福岡県内の中学校、高校に協力をいただきまして、データを集めたものになります。直近のデータになります。中学校3年生のデータ75人分のデータ、約2万6,000語のデータですね。それから高校生のほうに関しては1年生と2年生、それぞれ300人、370人程度のライティングを集めております。大体10万語、15万語規模のコーパスになっていて、スペルミスに関しては今回は除外をしてカウントをしております。
まず中学校の分析結果ですけども、これ大体の語彙サイズになります。各社A、B、Cが出版社ですけども、それぞれ学年が上がることにつれて基本的には語彙サイズが伸びているということになります。この語彙サイズというのはタイプで表してまして、種類です。その教科書の本文に出てくる単語は何種類あるかということを示しております。A社を共通して3年間で見ますと大体979種類本文に出てくるということですので、大体どの社を見ても、C社の分は少なくなっておりますが、1000語程度が語彙サイズとして、種類として出てきている、本文だけですけれども、出てきているということがわかります。その中の1000語のうちの頻度1の単語を計算してみました。どのくらいの割合が頻度1なのかということですね。これを見てみますと、どの会社もそうなんですけど大体半分ぐらいの単語が頻度1ということになっています。ですので、多くの単語は頻度1、1000種類あったのですが、そのうち半分ぐらいは1回しか出てこないというようなものになってしまうということになります。
具体的には頻度1の単語にはどういう単語があったのかということでCEFRレベルごとに少し検討してみました。こちらがA社、B社、C社ですが、A社の場合ですと、例えばA1のレベルは大体3割ぐらいですね。B社の場合は37%ということで、平均すると大体頻度1の単語の中の36%がA1レベルのものということになりました。このレベルに関しては、投野先生がお作りになられたCEFR-Jワードリストから取ってきているものになります。このA1、A2を合わせますと50%を超えますので、頻度1の単語の半分以上がAレベルの単語ということになります。例えばですけど、これもA社の例ですけどadd, ask, between, bird, clean, cultureみたいなものが頻度1でAレベルということになります。もう少し範囲を広げまして頻度3以下だとどうなるかということですけれども、こちら見てみますと大体7割を超えるラインにまできます。ですので語彙サイズ全体の1000語ぐらいある中の7割が頻度3以下のものになるということで、繰り返しが少ないということが見て取れるかなと思います。
一方高校ですけども、こちらも語彙サイズを調べたものになります。これも大体ですけども学年が上がるごとに伸びている傾向が見られますが、シリーズを通しますとA社は少し初級レベルの教科書ですので全体で1200語ぐらいしかないんですが、大体2500語ぐらい、2000レベルの語彙サイズというのが分かります。2000ぐらいが目安になるかなと思います。同じようにそのうちですね、2000語あるうちのどのくらいが頻度1かというのを見ました。これも中学と同じような傾向ですけども、だいたい50%ぐらいのものが頻度1になっているというのが見て取れるかなと思います。同様に頻度3以下というのでやってみました。だいたい2000語のうちの7割程度、7割が超えるラインぐらいで、どの学年においても頻度3以下ということが見て取れるかなと思います。
続きましてライティングですね。こちら個人の語彙サイズではなくて、学年全体、その学校、そのクラスということになってしまいますけれども、の語彙サイズを取ったものになります。大体中学校3年生の一学年といいますか、学校全体の語彙サイズとしては1200種類ぐらい出てきたということになります。高校の場合ですと1年生で2200語ぐらいですかね、高校2年生になると3000語近くが出てくるということになります。高2ぐらいまでで、集合知にはなるんですけども、3000種類ぐらいを発信として使っているというところが一つ見えてくるかなと思います。同じように頻度1ですね、これもちょっと人あたりじゃなくて学年あたりになってしまいますので、ちょっと計算の仕方は注意が必要なんですけども、これを見ると教科書に比べるとコーパス全体としては3割ぐらいのものが頻度1になっていますので、比較すると高校生のコーパスを見ると繰り返し同じ語が出ているということが言えるのかなと思います。教科書との差がありまして、教科書は頻度が低いもの、頻度3以下のものが結構多かったんですけども、高校生の場合は繰り返し同じ語を使っていて、頻度1のものが少ないという傾向が見て取れました。
で、ライティングで頻度10以上ですね。かつ中学校のライティングで限定してますけど、中学校のライティングで頻度10以上で、かつ中学校全体の教科書、これは6社合算です。頻度3以下のもので、かつCEFR-JワードリストでAレベルの語というものを集めてみました。例として挙げているのがこちらですが、cafe、deep、grandfather、hobby、must、round、これは先ほど中田先生のご発表にもあったものだと思いますけども、このあたりは中学生が使いたい単語、だけど教科書にはあまり出てこない単語で、Aレベルのものということになりますので、このあたり、特に使いたいのに例が教科書には出てこないというようなものになるのかなと思います。
ここまでの話をまとめます。中学校・高校とも頻度1の単語の割合というのはだいたい半分程度です。中学校の中身を見ますと半数以上がAレベルのものでしたので、この辺りやはりインプットとしては足りないのではないかなというところが一つの結論だと思います。中高ともに頻度3のものに関しても70%以上が出てきますので、発信語彙の習得のためにはやはり教科書のインプットとしてはちょっと十分ではないということですね。Morita et al 2025でも同じような結果を指摘しております。Sato 2025でも同じように高校の教科書でもばらつきが大きくて、新出語彙の頻度が学習のためには十分でないということを指摘しており、学術的な成果としてもこのようなことは言われているのかなと思います。で、ライティングの方も頻度1の単語の割合が30%ぐらいありますので、こちらはちょっと傾向が違ってまして、一定の単語を繰り返し使う傾向があると。ところが、トピックにもよると思うんですが、学習者が頻繁に使うものが教科書に出ていない可能性があるということが分かりました。
ここまでがファクトなんですが、ちょっとだけ私のオピニオンも最後に言わせていただければと思います。こういう結果、それから先生方のご発表を聞いていて、やはりある程度の語彙のコントロールというのは必要になってくるのかなというふうには思っています。特に中学レベルですね、A2のレベルの割合が少ない、カバー率が少ないということで、投野先生のご発表もありましたけれども、やはりそのあたりも含めてAレベルの単語というのはリストとして用意するのは一つかなというふうに考えております。もう一つ留意しなきゃいけないのは、単語のリストだけでいいかどうかということです。世界的にもいくつか例があるということですけども、日本も過去に単語のリストがあったと思います。おそらくこの時代に作るのであれば、もう少し新しい単語リストとして定型表現を含むとかフレーズを含む、それからフレーザルバーブですね。この辺りもやはり配慮が必要かなと思います。ですので先ほどのCAN-DOリストとか定型表現というところでご発表がありましたけれども、その辺りも含めたリストというのも考えていく必要があるのかなと個人的には思っています。
最後、このような分析いろいろとしてきましたけども、この基礎となるのはやはり電子データです。このICTの時代、AIの時代ですので、教科書のデータは電子化して、それを広く提供できるような形にするのがいいかなと個人的には思っています。これは学習者の進捗ですね、学習状況を可視化することにもつながりますし、教室で活用することもできるかと思いますし、我々研究者にとっても同じ土台で研究ができるようになりますので、教科書の電子化されたものというのがオフィシャルに提供されるといいのかなというふうに個人的には思っています。最後3点意見を述べましたが、私の発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。
【酒井主査】 はい、ありがとうございました。中学校でA1の頻度1のレベルが30%から40%ぐらいあるってことは、インプットとしても十分でないばかりか、深さですよね。今日、投野様、それから中田様もおっしゃってたコロケーションっていうか、どういうふうに使われるのかという学習もなかなか難しい状況があるのかなというようにデータから思いました。情報提供及びご意見ありがとうございました。この後のご意見では、ぜひ内田委員のご発言も含めて議論いただければと思っております。
それではここで一旦休憩を差し挟みたいと思います。再開については19時4分に再開をしていただく、5分間休憩を取るということでお願いします。休憩後は本議題に関する全体での意見交換となります。それでは休憩に入ります。
(休憩)
【酒井主査】 はい、それでは時間となりましたので、これより意見交換の時間といたします。事務局よりご提示いただいた案につきまして、ご意見等がございましたらお願いいたします。それではまず工藤委員お願いします。
【工藤委員】 意見というより内田委員の先ほどの発表に対する質問でもよろしいでしょうか。
【酒井主査】 お願いします。
【工藤委員】 先ほど頻度1の単語が非常に少ないということで特にAレベルは課題だということでご発表いただいて非常に参考になりました。資料の9ページで中学校における頻度1の単語のレベルというのが出ていて、A1が36%でA2が28%ってなっていますので、合わせると平均ですね、6者平均がA1が36%、A2が28%なんで合わせると64%なんで、Aレベルの単語が中学校の教科書では1回しか出ない単語は3分の2ぐらいになっているということだと思います。これはやっぱり繰り返し学習ということを考えたとき、やっぱり課題だなというのは当然皆さん考えられるところだなと思うんですけど。今後我々が議論することとして今の語数を減らすのかといったときに、Aレベルの割合が、これが減ればいいわけですね。減れば繰り返しが増えるってことだと思うので、減らすためには、例えば今、36%と28%を足した64%を50%にするには、今の語数指定より、例えば100語減らせば50ぐらいになるのかとか、200語減らせば40%になるのかとか、純粋に総語数が同じで、教科書会社が今のような形で作ったっていう仮定だと、どのぐらい減らせば例えば今の64%が50%になったり、40%だったりするっていう試算というのはできますでしょうか。感覚的なものでもいいのでっていうことを内田委員にちょっと質問したいなと思います。
【内田委員】 ご質問ありがとうございました。教科書の全体の語彙サイズとか、今出ている語彙リストからある程度は逆算はできるのかなというふうに思います。おっしゃる通りやはり語彙のコントロールっていったときに、何をどこを削るかといいますか、何を犠牲にするかっていうところは多分あるのかなと思いますし、繰り返し出てくるっていうふうにするとき、たぶんやっぱり仕掛けがいるのかなと思っています。例えば今ここに出てる、addとかaskとかのほうですけど、addは単純に加えるという意味もありますし、加算をするという、足し算をするという意味もありますので、多義性への配慮というのも必要になってくるのかなと思います。ですので、ある程度割合としてこのくらい減らせばこのくらいになる、どのくらいかっていうところもおそらく示せるのではないかなというふうには思っていますけども、その中の工夫の仕方というところは執筆者あるいは教科書会社等が考えていく必要のあるところかなというふうには思っています。以上です。
【工藤委員】 数値は今は出せないと思うんですけど、試算はやろうと思ったらできるということですよね。ありがとうございます。
【酒井主査】 はい、ありがとうございます。藤田委員お願いします。
【藤田委員】 はい、よろしくお願いいたします。先ほど3人の先生方のお話を聞きながら非常に示唆的で、学ぶことも非常に多かったんですけれども、そのお話を聞きながら語彙数のことを考えたときに、本当に発信用に繰り返し使わなければならないのであれば減らす必要があるであろうが、その一方で例えば高校レベルになってきた時の受容的な部分のところでもう少しいろんな理解度を高めるということになると、あまり減らしてしまうのも危険なのかなというあたりで、減らすべきなのか増やすべきなのかみたいなところがなかなか逆に難しいなというふうに感じたところがあるというのが感想です。
その中で、今、前回の改定において、語彙数が増えたことで負担感を感じている児童生徒、あるいは場合によっては先生方も多いというところが課題として上がっていたと思うんですね。その先に、数を数えるという、数え方をどうしていくのかというところにも関わってきていて、例えば今回の資料の4ページのところに現行のところで小学校が600から700、中学校が1600から1800というような形で図が上がっているというふうに思うんですけれども、ここら辺の部分で小学校はこれです、中学校はこれですというふうに別々に換算するだけではなくて、場合によってはオーバーラップする部分があってもいいのかな。オーバーラップというのはどういうふうに考えるのか。例えば小学校でもこれも先ほどの先生の発表の中でも3、4年生の語彙数の影響で5、6年生の数がというお話もあったと思いますけど、例えば3、4年生レベルでは扱うものは基本的にはさほど産出であるという意識はしなくてもよく、ここは受容がとりあえずできればいいんだと。その代わり、そこで扱った語彙が再び5、6年生の外国語になって登場してきて、そこでは単に受容ではなくて産出にできるとか、あるいは小学校で扱ったこれだけの語彙数があるんだけれども、それを小学校では基本的には受容語彙として見ていけばいいんだけれども、中学校の段階に行ったら今度はそれが産出までできるように消化させていきましょうとか、あるいは中学校レベルになってもこれは受容語彙のままでも構いませんよみたいな、何かそういうふうないくつかの同じような語彙がこっちでもあちらでもカウントができるというふうな形にすることによって、実質的にあまりここの例えば数字そのものを600を700にするのか700を800にするのかとか、あるいは800を400にするのかという数字のところだけではなくて、このオーバーラップするものがあることで実質的に扱うものを減らしていき、また同時にスパイラルに、先ほどから何度も議論になっているように扱っていってということが可能になれば、校種間での指導の一貫性みたいな部分というもの、接続の部分というところにも寄与していくのではないのかなというふうに考えています。
特にその中である程度この基礎語彙みたいなものに絞っていくといったときに、これもすでに発表の中で触れられていたと思うんですけれども、ちょっと留意しなきゃいけないのが、おそらく基礎語彙になればなるほど多義的になると思うんですね。上位語彙になればなるほど意味が一つしかないけれども、基本的な語彙のほうが意味が多いというようなことで、意外に易しい単語だからといってそれが易しいかというと必ずしもそういうことはなく、先ほど内田委員なんかもphrasal verbみたいなものの扱いというような形で発言されてましたが、例えば日本の小中高生でも例えばウェイターとかウェイトレスみたいな言葉はよく知っているけど、それの元になった例えばwait onっていうような表現がどれだけ認識されてるかっていうと必ずしも認識されてないかもしれない。むしろ逆に語彙数は増えてもserveというような別の単語を使った方が意味内容としてははっきり混乱なく伝わっていくし、というような形で、学習の難易度が単語が増えたから難しいんじゃなくて、かえってそういうのが下がるなんていうようなことにもつながったりする可能性もあるかなみたいなところもあったりするので、そこら辺のところはやはり注意していく必要があると思いますし、あるいはこれはちょっと語彙の数とかっていうことはずれるかもしれませんけれども、例えば読解とかリスニングとかの話をしていても、やはり知らない単語をどのように推測をしていくのかっていう、ここもおそらく中田先生が多読とか多聴っていうような話でなされたと思うんですけど、そういうふうな中で全てを知ってなきゃいけないんではなくて、そういうふうな形で文脈の中から理解できるという推測力みたいなそういうふうな指導っていうものも、もう少し積極的に取り入れる。それが逆に言うと自然に触れる数を増やしていくことによって、後々にしっかりと身につけるところにもつながるという、そういうふうなちょっと単純な数だけの話ではなくて多層的な指導も含めたことでちょっと考えていく必要があるのかなと。すみません長くなりましたけれども以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。鈴木委員お願いします。
【鈴木委員】 事務局の皆様、いつもわかりやすい資料を作成していただきましてありがとうございます。投野先生、中田先生、内田先生も大変わかりやすいご発表ありがとうございました。私自身も大変勉強になりました。
質問というか意見一つだけなんですけれども、今日の議論、資料では語彙数や基盤リストの作成リストの話になってまして、どちらかというと学びの質と量でいうと量の話になりがちで、学びの質の話になりにくいなというふうに思っていました。今日中田先生のお話にもありましたけれども、単語を学ぶ、学び全般ですけれども、学びにおける想起、思い出すことですけれども、この想起の重要性であるとか、間隔を空けて繰り返し繰り返し、単語、文法もですが、練習すること、文脈を通してすること、学習者をどのように動機づけるのかとか、単語やチャンクを覚えるのが苦手な子供にはどう指導するのか、語彙を音声で提示するのか文字でも提示するのか、いずれかなのか両方なのかなど、学びの質の話が抜けないでいってほしいなというふうに私個人的には思っています。また授業でどのような語彙学習をしたらいいのか、どう復習させたらよいのか、個別最適な学びの話が後回しにならないでほしいなと思っていまして、その点を学習指導要領では難しいのかもしれないんですけれども、学習指導要領の解説であるとか、その他の指導ガイド資料のようなものを作成していくことで、全国の先生方や教科書を作成する出版社にも役立つのではないかなというふうに思っています。以上です。
【酒井主査】 はい、ありがとうございます。確かに学びの質ってとても重要なポイントかなと思います。指導の仕方、それからどういう学びを確保していくかということですが、今の時点でこの学びがどうして確保できないのか、繰り返し学んだりいろんな多聴多読みたいのができたりしないのかということを考えたときに、ある意味ちょっとこう語彙数っていうのは量的なところを勘案することで、そういうところの実現を目指していくということで、ただ単に減らすだけではなくて、この学びの質を確保するために減らすとかコントロールするとか、なんかそういうようなことの背景的なところですね、鈴木委員言われたところとても大事だなと思いました。ありがとうございます。日向端委員お願いします。
【日向端委員】 私の方から3方の発表も踏まえてというところでお話しします。先ほど藤田先生の方もご指摘されてましたけども、小と中で重なっている語彙っていうところを、やっぱりこのイメージというか、どのように小学校で扱ったものを中学校で扱っていくかっていうもののイメージは、すごく大事にしたいなというところです。それで言うとですね、資料には小学校600から700とあるんですが、これ外国語科、外国語活動も含めて外国語5、6年生の語彙数なんですけども、3、4年で大体どれくらいの語を使ってるかっていうようなものも参考としてあった方がいいかなというのはあります。確か解説だと400語ちょっとみたいなことであったと思うんですけども、それも使いながら小学校で600から700というようなことで、まあそういう話を踏まえると小学校5年生でかなりの語彙数が出てきてるってのはやっぱりちょっとかなりギャップがあるんじゃないかなというところに課題が一つあると思います。
またですね、小学校のところの学び方というと、5、6年生は特に音声中心で学んでいます。ですから読むこと、書くことについてはあくまで慣れ親しみというレベルなので、受容といっても聞くことはできるけど読むことはできていない、それから発信といっても話すことはできてるけどライティングはできないというようなところを、しっかりと中学校がそこを埋めていくんだというようなところ、いわゆる中学校1年生の接続部分、それ以降もあるかもしれませんが、そこがしっかりと学び方として明示できるように示していかなきゃいけないかなというようなことで感じています。
もう一つは発表の中でも投野先生などもお話いただいてましたけども、やっぱり単語が一人歩きしないように、定型表現というもの、どのようにこれがどのような場面で使われてということで、やはり文とか文脈の中でその語彙っていうものの位置づけを示していただけると、学校でも単語練習というものにならないようにできるんじゃないかなというようなところの意見でした。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。今の日向端委員、それから藤田委員のお話を伺って、オーバーラップのところですけれども、先ほどの投野委員からは中学校の語彙数がちょっと多い可能性があると。で、ある意味A1、A2の2000語を小中、そしてプラス500を含めて高校までかけて、発信語彙にするつもりで指導していくというところがありました。そういうことを考えると、ある程度減らしつつ、A1、A2を十分学ばせていき、プラスアルファ、中学校ではそれ以外のトピック語っていうんですかね、話題に応じた語とか本人の関心のある語とかいうところが1割2割出てくるような作りになるのかなと思うんですけど。考え方としてそのオーバーラップの部分を含めて作るか、あるいはそこの部分を少なくして中学校の負担を減らしていくような見せるかっていう、2つの方法あるかと思うんですけれども、もし数を減らす、中学校の方では小学校で合わせたことも指導するので数を減らすというような扱い方をする場合には、今のを伺っていると本当にこのオーバーラップの部分ですよね、あの小学校で音声を中心にやっているので、小学校をさらに読み書きをしていく、そういう要素があるんだということもしっかり少なくした部分をしっかり指導してもらうというようなところが留意点で入れておく必要があるかと思います。また、小学校のものをもし中学校に含めていいというような考え方の作り方をするとすれば、それは何の意味かといったら、やっぱ音声でやっていたことをプラスして今度は文字を学んだり、受容から発信できるようにという、そういうところを意識してるんだというような語彙の扱われ方についてもしっかり明記していく必要があるなというふうに伺いながら思いました。ありがとうございます。髙木委員お願いします。
【髙木委員】 よろしくお願いいたします。今、酒井主査がおっしゃっていたことと重なる部分なんですけれども、今表示していただいているその表のところで、やっぱりグラデーションがあった方がいいなというふうに思っています。というのもやっぱり小学校から中学校に上がってくるときに、中学校の教科書でいきなり音声で慣れ親しんでいた言葉っていうのが一気にバーンと出てきて、そこでこれ全部覚えなきゃいけないんだっていうような壁を感じて、苦手意識を感じてしまう中学生がかなり多いように感じています。なので小学校で扱った語も、それを例えば小中の接続という点から考えると、やっぱり何度も何度も繰り返していくっていうことが前提で、そのコアの単語っていうのを身につけてほしいなというふうなメッセージを投げられればいいんじゃないかなというふうに思っています。あとはその語彙リストを作ることに関してはすごく賛成で、特に例えば若い先生方、先生方の目で見たときに、じゃあその出てくる単語をどこを重点的にどれぐらい教えたらいいのかっていうのはやっぱり雲を掴むような感じで、なかなかどこに重点を置いて指導したらいいのかわからないっていうケースっていうのが多々あるように感じています。またこれは学習者の目から見ると、やっぱり特に苦手層の学習者でこれ出てきたもの全部覚えないと英語ってわからないんだっていうメッセージになってしまいかねないなというふうに思っているので、特に重点化したいところっていうのはやっぱり見せていくことによって、学習者としての不安も下がっていくんじゃないかなというふうに感じました。以上です。ありがとうございます。
【酒井主査】 ありがとうございます。内田委員お願いします。
【内田委員】 ありがとうございます。せっかくいらっしゃっているので、投野先生と中田先生にご質問をしたいんですけど、今のところで語彙リストに関しては賛成の意見が多いかなと思うんですが、それを深める一つの手段としてフレーズであるとか定型表現というところも出てきているかなと思います。もしそれを語彙リストと紐づけるとなったときにおそらく直面する問題としてはレベル分けの問題かなというふうに考えています。そのあたりちょっとアイディアをいただければと思うんですけど、例えばですけどput out the fire、putもoutもtheもfireも全部A1レベルだと思うんですが、火を消すというような表現があったとして、これはおそらく慣用性が高くてなかなか難しいのかなというふうに、そんなレベルの単語だと思いますけれども。そういういわゆる定型表現のレベルの判定をどうしていけばいいかというところですね。先ほど投野先生から教科書のコーパスを見る、あとはCAN-DOリストを参照するというようなこともいただきましたけれども、それ以外にもしヒントといいますか、何か考え方等があればご教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【酒井主査】 投野様はいかがでしょうか。
【東京外国語大学(投野)】 ありがとうございます。一つの目安は、例えば海外のELTの外国人向けの英英辞典ですね。その辺を見ると、例えばオックスフォード、それからケンブリッジの辞書は、句動詞までCEFRレベルがついたものが出ています。これがどういうふうにちゃんとつけたかっていう点は多少検証が必要な部分はあると思うんですが、しかし参考資料にはなると思いますね。それとあと語義に関しても今レベル分けをし始めているので、そういう主要な基本語の深さをどのぐらいまでレベルで身につけるのかということについて、多少指標になるかなと思いました。
【酒井主査】 ありがとうございます。中田様お願いします。
【立教大学(中田)】 定型表現の中でどういったものが優先順位が高くて、ということを判断するための基準は何かというご質問かと思いますが、多分3つあるかなと思いまして。1つ目が句動詞であれば、PHaVE Listと呼ばれる句動詞のリストとか、あと定型表現であればPHRASE Listとか、コーパスに基づいて作成されたリストがありますので、そういったリストに入っているものを優先するですとか。あと2点目として、定型表現の中でも使用頻度が高いものと低いものがありますので、使用頻度を基準にしたりとか。あと3点目としてパラフレーズができるかできないかということだと思うんですよね。例えば、句動詞なんかの場合は、その句動詞を知らないでも、他の単語でパラフレーズできれば同じ意味を伝えることができるものが多くありますので、そういったものは優先順位がちょっと低くなって、代わりにコロケーションとか複合語なんかだと、それを知らないとそのアイデアが表現できない、パラフレーズしづらいというものがあると思いますので、そういったものを優先した方が良いかなというふうに考えます。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございました。内田委員いかがでしょうか。
【内田委員】 非常に参考になる意見をいただきました。ありがとうございました。
【酒井主査】 ありがとうございます。今日のお話でいくと、ここの議論ではまだ議論詰めてはいないんですけども、言語の働きですね、これを扱うというようなところで、今表現が参考程度に出てる程度と思うんですけど、ここがきっとおそらく文法を使えるものにする、使える知識にしていく、技能にしていくためには言語の働きがキーになるというような認識はあるかと思うんです。ここに語ですよね。語をチャンクの中で使うことで機能を果たしていく、そしてある程度の談話というかまとまりみたいなところの中で使っていくという発想も必要かなと思いますので、今日ご指摘いただいたところ、それからリストの活用も含めてですけれども、言語の働きとも含めてまた考えていければいいかなと思います。ありがとうございます。臼倉委員お願いします。
【臼倉委員】 お願いします。今日主に3点皆さんから意見を追って冒頭に言っていただいた中の、リスト作成の留意点みたいなところについてちょっと意見を言いたいと思います。今日は私も皆さんの話を聞いていて、そもそもこの基盤語彙リストというものを作るべきか否かということをちょっと自分でも今後考えていくために、基盤語彙リストとなるものを作ることで、英語教育がどういう風に変わりうるのかっていうのをちょっと整理する必要があると思いました。私たちが大事にしたいってずっと今日も出てきたのは、とにかく繰り返し、学生、児童、生徒に教科書に出てきた英語に触れさせる機会を担保したいというのがあったと思います。その繰り返しの機会を担保するっていうアプローチって二つあると思いますよね。一つは物理的に教科書の中の出現頻度を上げるという方法。これは藤田委員がおっしゃってたような小中高でのオーバーラップも含めて、そういう方法があって、それを検討していくという方法がまず一つあると思いました。二つ目は、繰り返しの工夫としては、教科書の中での出現頻度は例えば半分以上1のものがあったとしても、授業の中の工夫で学びの質の担保とか鈴木委員のお話があったり、酒井主査の方から扱われ方をちょっと工夫するとか、中田先生からは様々な方略で繰り返し触れさせるなんてお話があった。そちらの方法で繰り返しの機会を担保するという2つのアプローチがまずあるので、基盤語彙リストを提示することで、この2つのそれぞれがどういうふうに発展していくかのシミュレーションをする必要があると思いました。
2番目の授業での扱い方のシミュレーションをしようと思ったときに、語彙の話だけではだめで、小中で扱う文法事項と言ってしまいますが、文法はどうなのか、あと題材はどうなのかということですね。教科書を作る上では網羅しなきゃいけないことが語彙だけではなく当然文法事項と題材があるかと思います。これを網羅するためにどうしても分量が多くなってしまう。そこにさらに今は語彙の量がたくさんあるので、マシマシマシとなってしまうということなので、基盤語彙リストを何らかの形で作ったとした時に、例えばそれを基にして作られる教科書、現行の文法事項と題材を全部盛り込んだものを作った場合に、だいたい総語数としてどのくらいになってしまいそうなのかとか、というのを算出して、分量を減らすことが基盤語彙リストの提示により減ることが可能になるのかとか、そういうシミュレーションをしたいと思いました。そういう風にすることで、投野先生からちょっと小中盛り沢山気味ですよというお話があったので、それの解消にもつながるといいなというふうに思いました。すみません、以上コメントになります。
【酒井主査】 はい、ありがとうございます。調査研究の必要性について提案されていますけれど、おそらくその中で、今臼倉委員が言われたことも考慮し、検討していただくという、そういうご意見だったかなと思います。ありがとうございます。亘理委員お願いします。
【亘理委員】 投野先生と中田先生、そして内田委員を筆頭に委員の先生方に聞きたいのが1つで、中田先生にお伺いしたいことが1つあります。1つは、中田先生が単語の流暢性を身につけることの重要さを指摘されて、酒井主査もおっしゃってましたけど、とても重要だと思いました。つまり、すでに知っている語彙の流暢性を高めること。新たな語彙を身につけることに追われている教室の現状を考えるとこの指摘はとても重要で、その時にどの委員がおっしゃったかはいちいち重ねないのですが、「繰り返す」ということの重要性をもうちょっと深掘りしたいというか、何のために繰り返すべきなのかということを確認しておきたくて。つまり現状だと教室で新しい単語を導入して、すぐ正確に綴ることを求めている傾向が少なからずあると思うんですね。中田先生が挙げていた資料は、必要な語彙知識に瞬時にアクセスするということをおっしゃっていて、必ずしも綴りということは言っていない。しかも、資料の中でどういう知識を身につけさせたいのかということを考える必要があるということも指摘されていて、綴りということには特化されない。何度も繰り返し出会わせるっていうのはどこまで連れていきたくて、その繰り返し出会う機会をどこで保証するのかということのコンセンサスを作るべきではないか。その時に内田委員のデータはライティングだったので仕方がないんですけど、日向端委員がおっしゃったようにsubjectという単語は書き言葉としては1回しか出てこないかもしれないけど、音声では小学校でWhich subject do you like?という表現が何度も繰り返し登場する。そうするとこのリスト、我々が今議論しているリストというのは音声語彙と書字語彙というか書き言葉の語彙のリストを分けるべきなのかどうか、この辺の意見をお伺いしたいっていうのが一つです。
もう一つは、慣用表現、定型表現に関わってなんですけど、現状教室では小学校でも中学校でも、例えばタブレットの様々な自動翻訳サイトに児童生徒が言いたい日本語を入れて直接その表現を得るということが少なからずあると思うんです。それは単語のレベルではなくてフレーズや文のレベルで出てきて、小学生だと基本的には読めませんから、音声ボタンを押して出てきた音声をオウム返しのように繰り返して英語での言い方を手に入れるということになる。そういう分解しない形で表現文を得るというのは、これは中田先生にお伺いしたいところなんですけど、語彙学習としてはやめた方がいいんでしょうか。つまり、中田先生の資料の中で、ある程度のレベルになると、接辞に区切って、接辞の知識を活用して単語を学ぶのが有効ということは、今ここに出席している先生方全員知っていることだと思うんですけど、小学校でフレーズで手に入れるような形を、小でも中でもあるいは高校でも、自動翻訳で日本語を英語に変えて、それを言ったり書いたりして使っているというのは、語彙学習としてはご法度というか、ちゃんと分解して単語というものを切り出すというプロセスを踏むべきなのかどうかという、それも繰り返し出会わせることに関わって抑えておくべきことかなと思い、お伺いする次第です。以上です。
【酒井主査】 中田委員、端的にお答えいただければと思います。
【立教大学(中田)】 はい。ご質問が2つで、1つ目が何のために繰り返すのかっていうことでよろしいですか。いくつか理由はあると思うんですが、1つ目は1回その単語に接したとかリーディングで出てきたというだけだと、なかなか記憶に定着しないので何回も接することによってその単語に関する知識が定着するということとか。あと、いろんな文脈で同じ単語に触れることで、深い知識、例えばこの単語は名詞だけじゃなくても動詞としても使えますとか、あと多義語で基本的な意味だけじゃなくて拡張的・比喩的な意味もありますとか、あとこんなコロケーションでも使えますとかそういった深い知識がつくというその2点。あと3点目として、同じ単語に繰り返し出会うことで流暢性がつくとか、そういった3つの利点があるかなと思います。
2つ目のご質問が、はじめに単語を分解しないでまとまりチャンクとして学習するのは語彙学習的にはどうかということだと思いますが、例えば小学生とかの場合であれば分解しないでひとまとまりとして覚えると。ひとまとまりとして覚えることで、それを使って挨拶をしたりとか、そういった語用論的な機能を果たせることができると思いますので、それは価値があることだと思います。その時点では分解しないでも、後になってからメタ言語的な知識が出てきて、分解してみて、実はこういうふうに分解できると。そういう風にして理解を深めるというそういった順番でも問題はないかと考えております。
【亘理委員】 中田先生は、語彙学習方略的には音声語彙リストと書き言葉書字語彙リストは別にあった方がいいとお考えになりますか。
【立教大学(中田)】 書き言葉で頻度が高い単語と音声で頻度が高い単語が違うということかと思いますが、確かに書き言葉だとフォーマルなものが多かったりとか、話し言葉だと基本的な身の回りのものを表現するのに使う単語が多いと思いますが。ただ語彙リストが多くなってしまうと、なかなかそれを教えたりとか使う点でちょっと煩雑になるかなというのはあります。あと先ほど投野先生もおっしゃってたと思いますが、基本的な単語に関してはあまりばらつきがないということかと思いますので、頻度の高い単語に関しては書き言葉と話し言葉であまり変わらないのかなと思ったんですが。投野先生いかがでしょうか。
【東京外国語大学(投野)】 そうですね。A1、A2レベルの、Aレベルぐらいの単語は、全体の会話のほぼ9割ぐらいを占めてしまうので、そういうものはどっちでも覚える必要がありますから、そういうところはざくっとまとめてそういう感じで両方で使える単語っていうのは共通してるんじゃないかなと思います。
【亘理委員】 ありがとうございます。音声と文字の行き来というか、その辺は教材や教室で考えるべきことかなとも思うのですが、今日の議論でお三方の話を踏まえると、やはり、授業時間は増えない。そして教科書をむやみやたらに分厚くすることもできない。でも投野先生がおっしゃったようにレッスンごとに違うことをやっているという状態は学習者にとって負担が重いと考えると、「繰り返し出会わせる」の第二言語習得的なパラダイムは大量のインプットに支えられているところがあって、現状の教室が、小中高の学校教育の英語のできる範囲で考えると、語彙サイズを減らすという結論にやっぱり至るのではないかと思った次第です。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。手がたくさん上がってますので、端的にご意見をいただければと思います。工藤委員お願いします。
【工藤委員】 ありがとうございます。語彙の方略とか語彙の学習方法までどこまで具体的に指導要領だったり指導要領解説で伝えるかっていうのは議論がもちろん必要なんですけど、教科書だったりあるいは先生がいろんな語彙の方略とかを授業で試せるっていうような方向に持っていけるような指導要領作りが大事だなと思った時に、現行の指導要領はやっぱり知識技能に語彙が入っていて、知識技能は実際に英語を用いた言語活動を通してっていうのがついてるわけで。そうするとコミュニケーション活動の中でやっていくっていうことになってるんですけど、今日中田先生からご提示いただいた様々な方略は、言語活動を通してでないものもたくさんあるわけなので、そこのところ今後こうもうちょっと緩やかにするか、知識技能の習得を言語活動を通してっていうことだけではないものを提示していくかどうかっていうのは、非常にまあ大きな議論かなと思いますし、まあやっていかないといけないのかなと思います。
その時にやっぱ大事なのが、どう評価するかみたいなところまで当然入っていくと思うので、現行を出されている指導と評価の一体化のための参考資料は、知識技能についての例は主に文法が出ていて語彙についてはほとんど出ていません。なので広さとかいうことも含めたところ、コロケーションとかも含めてそういうところも評価の仕方も見せていかないと、最終的には現場にはなかなか届いていかないかということ。
なぜかというと語彙リストを今作ろうという話になっていて、これが何語のリストになるかっていう議論まだちゃんとできてないと思うんですけど、仮に1000とか2000レベルの語彙リストを指導要領が出すと、おそらく出版社がその単語帳を作ると思うんですね。特に高校入試なんかはその共通の語彙でしか出てこないので、これをやれば高校入試受かりますみたいなのが出てくる。単語帳の学習が悪いわけではないんだけど、それだけに走ると、今高校が単語の学習、生徒たちは単語帳でやるみたいなのはかなり大きいと思うんですけど、中学校もそれがたくさん回ることになってしまうので、語彙リストを作ることによって一つの学習方略、単語カードの話も中田先生今日出していただきましたけど、その学習にフォーカスしていく、それだけになってしまうっていうちょっと懸念があるので、リストを出すときにどのようにそれを活用してほしいか、教科書の方あるいは学習の方というところをちゃんと見せていくということができるといいかなと思っています。
最後小学校の話だけちょっとしたいと思います。小学校はさっき日向端委員がおっしゃったように領域の中でできることが限られているということがあると思うんですけど、話すこと中心というのは先生方のマインドにあって、それ自体は悪くないんですけど、聞くことをちゃんとたくさんやらないと語彙の習得までいかないかなと。話すことはやっぱり限られた言語材料の中で子ども同士が話していくと思うので、その広さを広げるためにやっぱり聞く活動を重視するっていうのは大事かなと思いますので、聞く活動の中でどういう書きぶりをするかわからないですが、聞こえてきた単語に着目して聞くような、これは言語活動とは呼ばないかもしれないんですけど、知識技能を育成するような聞き方みたいなところをもう少し提示してあげるといいんではないかなと思います。以上です。
【酒井主査】 川﨑委員お願いします。
【川﨑委員】 本日はとても勉強になる内容をありがとうございました。私もリストを作るということには賛成です。教師や生徒にとって学習の方向性がよりクリアになるという意味でとても有益だと思っています。一方で語彙リストを活用するにあたって留意しておきたいと感じたのが2点ございます。1点目はリストそのものが学習者や指導者にとって、ここにある語彙だけを使って産出の活動をしましょう、という見方になる誤解が生まれないようにした方がいいかと思います。固定された語彙リストだけを使うことが推奨されてしまうと、主体性や自分ごとを大切にするという観点から、例えばサッカーが好きな子が専門的なことを言いたい時にリストとは異なる語彙は使わない方がいいというような、教師や学習者の思い込みが発生してしまうと学習そのものを阻害してしまいます。そのため、全国共通で抑えるコアの語彙リストに加えて、例えば1、2割程度は専門分野や興味に基づいた語彙を拡張語彙として使って言語活動をしましょうのようなことをどこかで明示しないと、もしかしたらそういった誤解が生まれてしまうのかなというのを一つ懸念しました。
2点目は語彙リストがそのままテスト化だけされてしまうことや、教えたのでイコール習得されましたよねという誤解を生んでしまうのも一つ懸念しました。教えたことイコール習得したことにはなりませんので、リストを使って例えば暗記偏重だけになってしまったり、語彙を教えただけで終わってしまうっていうものでは、今回の話にありましたが、深い語彙の理解にはつながらないので、そういった逆効果になることを防いだ方がいいかなというのを一つ感じました。第二言語習得の研究では語彙を定着、自動化させていくためには、さまざまな文脈の中で7回から20回ほど出会う工夫が必要ということも言われています。学校の教科書だけですとやはり1回2回しか出会わないことがあるので、リストにある語彙を習得するためにできることとしては、例えばタブレットやAIを活用して、自宅や他の場所でも、小学校や中学校で学んだ教科書の語彙を定着していけるように、教科書のテーマと同じテーマだけどレベル別の多読で、何度もその単語に出会うといったように、出会う回数をタブレットなどを使ってコントロールできるようであれば、さらに効果的に習得できるのかなというのを感じました。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。布村委員お願いします。
【布村委員】 はい、ありがとうございます。私も基盤リストを作ることに関しては賛成です。特に中学校今回難しくなったなというふうに感じさせた理由の一つとしては、語彙数が増えただけじゃなくておそらく語彙の難度が上がったっていうところが先生方に難しくさせてしまった一因かなというふうに思いますので、この基盤リストを作ることでそこのところが少し難易度はそこまで高くない、しっかりA1、A2の語彙が使えるようにするということが意識つけさせてあげられるといいかなというふうに思いました。今までの先生方がたくさん言っていただいていると思うんですけれども、やっぱり何回も何回も使えるように出会えるように、そういった工夫ができるといいかなと思います。小学校のものは中学校で出てきて、中学校のものが、実は私高校も高校1年生のところで中学校のものをもう1回復習、高校1年生のところで復習するっていうところで、高校のところもリストがあってもいいのかなっていうふうに、リストの作り方だとは思うんですけれども。例えばコアの基盤はここで、プラス拡張の部分はそれぞれ学校レベルに合わせてとかテーマによって違ってもいいけれども、ここの部分はちゃんとどの学校でも高校でも習得しましょうというA2レベルの語彙が高校のところでも入ってもいいのかなというふうに思っています。その時に語彙数の量と語彙の中身とのカウントで、語彙数を増やすために多分何度の高い語彙が今回教科書にたくさん入ってしまったのかなというふうに思う部分もあるので、うまくフレーズの定型の表現もカウントできるようにして、5000とかというまだ決まってないですけども語彙の分量がはまるといいかなというふうに思いました。
何度も何度も何度も繰り返して同じ英語を使わせるようにっていうのは、ここは授業の工夫なのかなっていうふうに思いました。語彙だけではなくて、多分この後の4技能をどうやって習得させていくのかっていうところも絡んでくると思うんですけれども、例えばストラテジーの中で難しい語、知らない語を推測するみたいな、そんなのも授業の中で一番最初に予習させないで入った時に、私なんかも隣同士で、じゃあこの語はどういう意味だろうか、A、Bなんていうふうに選択してあげて、どっちだと思うっていうのをペアワークで推測させて、Aだと思う人、Bだと思う人、そんなゲーム性を持たせながら推測して、あ、合ってた、間違ってた、こういうふうに推測するんだよみたいなことを授業でやったりとかもするんですけれども、そういった単語テストだけ、綴りにいきなり書いてそれで間違ってたとかっていうことではなく、ちょっとしたゲーム性だったりとか推測して間違ってた、ここのところこんな風に読んじゃったから間違っちゃったんだなとかっていうことを授業の中で何度も何度もやって、そのストラテジーも含めた語彙習得みたいなことができるといいのかなというふうに思いました。ちょっとどういうふうに指導要領に表現するか難しいんですけれども、授業の中身ともやっぱり関わってくるかなそんな風に感じました。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。𫝆井委員お願いします。
【𫝆井主査代理】 はい。本日ご発表を伺って私、なるほどなと思って学んだことを踏まえてお話しさせていただきますと、どなたかもおっしゃってましたけれども、語彙に出会うやっぱり頻度を高めたいただ授業の時間数を考えると、総語数を増やすというわけには必ずしもいかない。であって、語彙数は減らすべきであるということについては、私は非常に賛成しています。その目安として語彙リストを作っていく中でそれが2000語という一つの数字がアイデアとして出ていますけれども、それについてもなるほどなというふうに思いました。ただ、そこで工藤委員もおっしゃっていましたけれども、リストを覚えていくっていうようなそっちの方向に進んでいくような学習方法をそうなってしまったら困るなというのはやっぱり思うところで、その意味でもその用法の深さ、深い知識というのを身につけるために、投野先生がおっしゃったような言語の働きですね、ファンクションと結びつけることですとか、テキストタイプと関係づけること、中田先生がおっしゃったようなコロケーションといった、これまでの構造化の議論の中でも文法や語彙を言語の働きと結びつけましょうということはしっかりと言い続けていますけれども、それによって知識技能をより今よりも体系化していくこと、より体系をしっかりと提示していくことによって、単純に単語リストを覚えればいいだけというものじゃないですよというメッセージにもなっていくんじゃないかなというふうに思います。
時間ないところもう一点すいませんけれども、仮に2000語ですとかそのレベルの数が語彙として指定された場合、高等学校にはそれがなかなか及ばないような印象を持つかもしれないんですけれども、先ほどのご発言の中にもありましたがある程度高等学校でそれをどう自由にやっていいというわけではないということを考える方法として、高校にもリストを作るというお話もありましたけれども、やはり投野先生が示してくださった用法の深いコアの部分と裾野の部分でいうと、裾野の部分によっては教科書の特徴を示すという意義もあったりすると思いますので、そのリストの何パーセント、2000語の語彙のどれくらいをカバーしているのかということを積極的に示すとともに、新しく教科書で出てくるものがCEFRのレベルでいうとどういうレベルをカバーしているのかとか、そういった語彙についての中身をより明確に示すようなことを高校でやっていくと、高校の先生方もその教科書を選ぶ際になるほどと納得して、自分たちの生徒に適した教科書選びにもつながっていくのではないかなと思いました。以上です。ありがとうございました。
【酒井主査】 ありがとうございます。江原委員お願いします。
【江原委員】 よろしくお願いいたします。小中高の連続ということを考えると、思いとしてはできるだけ高校に入ってきた学生が全然わからないまま入ってくることがないようにしたい。つまり、基盤語彙リストを作った場合に、それが現場でも理解されて、先生も生徒も、教科書会社も「こういう目的で作られたからここは習得に向けて努力しなければ」っという体制ができるようにできればなと思います。別の言葉で言うと、基盤語彙リストはどう使うためにできているかというメッセージをはっきりする。教科書会社には、こういうところが入ってきますよね、と決して押し付けるのではなく、そういうふうに言う。例えば言語活動を中心にするときにぜひ必要なものってありますよね、チャンクの中の語彙とかそういうものを含めるとよい。先生が、これは教室でも使いましょう、生徒も使いましょうよ、とすればリサイクル率は高まるし、自分で学習方略ができない生徒ももしかしたら教室で楽しく学習できるかもしれない。できれば小中では多くのいろいろな学習レベルの子もある程度英語が習得できるような仕掛けができればよいなというふうに思いました。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。今挙手されている委員で止めたいと思います。細田委員お願いします。
【細田委員】 今日はお三方の先生方のご発表を伺いまして、これだけ教科書を扱う語彙のばらつきがあるということをデータ等でお示しいただいても初めて知ったというようなことも多かったんですけれども、そこからするとやはり語彙のコントロールというのはやはり必要なんだなということで、基盤語彙リストというのはやはり必要だということを感じた次第で、これは多くの委員の皆様がおっしゃっていることと同感でございます。ただ一方を学習指導要領の中で示すことのこのインパクトの大きさ、こういったものは何人かの先生方も委員の方も少しおっしゃっていたようにこれさえ覚えればというようなそういう暗記、その単語の暗記に走ってしまわないということも本当によく注意をしていかなくてはいけないところであり、ただ一方でまた、習得に向けて努力することをするためのリストであるということがメッセージとしてストレートにきちんと伝わるとすると、若年の先生にもリストの活用がその中で学習方略の具体例と合わせて示していけるとすると効果はあるのかなというふうに思っているわけです。心配も若干ありながらそれをどううまくこの基盤語彙リストを扱っていくかということに皆さんで議論して注力をしていくと良いものになるのかなという感じです。以上です。
【酒井主査】 ありがとうございます。米野委員お願いします。
【米野委員】 はい、本日のお三方の先生方のご発表大変勉強になりました。ありがとうございました。本日の会議資料2ページの方で示されているように、中学校3年生の新出語彙の半数以上がB1、B2レベルであるというのは非常に驚いたのですが、やはり指導すべき語彙選定の在り方を見直すべきだというふうに感じます。そういった中で語彙リストにつきましてはA2レベルの語彙も含めコアとなる語彙の導入定着が確実になるようにリストの作成は必要ではないかなと考えます。またそのリスト作成において留意すべきことは、学習指導要領で示すリストですので、「学習指導要領の基準性」の趣旨を踏まえるということが大切ではないかと考えます。
もう一つは、第一回会議で今顕在化してる課題として、例えば全国学調の経年比較で4技能のうち特に書くこと、話すことの正答率が5ポイント以上も下がってるとか、高等学校の6年度の学習指導要領の実施状況調査によると話すこと及び書くことといった発信領域において課題が見られるということが示されておりますので、こういった課題の改善につながるような語彙の扱いにする必要があると考えます。また、語彙指導については、学校現場では、教員個人の経験や、個人の信念に基づいて行われているという可能性もあるかもしれないですので、最新の語彙指導の実証研究の知見を踏まえた指導ができるように、何か学習指導要領の解説等で記載の工夫ができないかなというふうに感じたところです。何度もターゲット語彙に出会うにはやはり指導の工夫があって然るべきだと考えますが、簡単ではないと思いますので、教科書で何度も出会うような工夫ができないかというのはよく考えることです。以上でございます。ありがとうございます。
【酒井主査】 ありがとうございます。関谷委員お願いします。
【関谷委員】 はい、ありがとうございました。基本的には事務局の皆様が出していただいた今回の資料の方向性が今回皆様の発表で裏付けられたのではないかなと思っています。先ほど少し質問の際に申し上げたとおり語彙リストにつきましてはやはり学校現場での影響も非常に大きいので、基盤リストを作成することの目的、これがいきなりまた降りてきたという風に先生たちの受け止めにならないように、なぜこのリストが必要なのかということで、資料の2ページの基本的な方向性にありますけれども、子どもたちがリストの語彙を着実に身につけて、それら使って相手の言いたいことをきちんと理解するためである、それから自分の伝えたい内容を伝えるものであるということを、どこかで明示していく必要があるのではないかというふうに思います。
また、これまでの方向性と大きく違わないということを明らかにするためにも、言語活動を充実させるためであるとか、コミュニケーションを充実させるためのリストであるということを出していく必要があるのではないかと思っています。また言語の働きと加えて、あと場面ですかね、子どもたちが身の回りのことであったり、身近な社会的な話題について表現していくために、自分が伝えたいこと、あとは理解したいことを学ぶためのリストであるということで、それも川﨑先生もおっしゃってましたけれども、例えば余白を作って、自分がそのリストを学習者のために広げていくようなものであって、そういった活用もできるものになるといいんじゃないかなと思いました。以上です。
【酒井主査】 はい、ありがとうございました。本日は投野様、それから中田様、そして内田委員、ご発表ありがとうございました。大変貴重なご意見いただいたかと思います。皆さんのご意見もありがとうございました。是非については、リストを作るか作らないかということについては、概ね賛成ということだったかと思います。狙いですよね、何のためにこの語彙リストを作るのかということで、いくつかの観点が出たかと思います。学習者のためですね、学習者がそれを活用して学習できるようにすると。これは中田様の家庭学習、自分で語彙を増やしていくというようなそういうようなところを促すということでもとても重要なリストになるだろうということですね。それから小中高の連携のために、これは投野様の発表の中でもありました、小学校から中学校、中学校から高等学校につないでいく際に、どういう語彙が前提として身についていて、またさらにその続けてどういうような深さを持たせていくのかということを考えると、語彙ですと特にコアなものについては必要になってくるだろうと思います。
また、投野様その他、内田様等々ですね、重ねてご発表ありましたけれども、学ぶべき語彙が本当に学ばれているのだろうか、学ばせているのだろうかということですね。偏りがあるのではないかということですね。その意味では、数だけではなくて、どういう語彙を学ぶ必要があるのかというレベルのようなものを、初級者から上級になるに従ってどういう語彙をどのように学んでいくのかということを考慮したそういうリストが必要であるということになるかなと思います。学習の方向性ですね。学ぶべきものをしっかり学んでいこうというようなところが大事になってくるかなと思いました。
入試に向けた機械的な活用というところも懸念が出されましたけれども、逆にですね、今までの入試の場合のリストは入試に出るから覚えなさいというような発想だったと思うんですけれども、今回の学ばせたい語彙は活用するために必要な語彙なんだと、これは運用上とても役に立つ有意義な語彙なんだということになるかと思います。もしそれが入試の方に影響を及ぼすとするのであれば、本来学ばせたいことをしっかり評価していただいているということで、むしろ活用をしていただいた方が良いのではないかというようなことも、皆さんのご意見を伺いながら思いました。ただその際ですね、中田様の発表にもあったように、ただ単に広さを作るというか数を覚えるだけではなくて流暢さを持つように、それから語彙リストを活用にするにしてもですね、何のためにその語彙を学ぶのか、自分が話したいからなのか、読むために必要なのかによっても学ぶ側面が異なるなんていうご指摘がありました。その意味ではしっかりとですね、指導と関連づけたり言語活動、コミュニケーションの中で使っていくということを関連づけてリストを位置づけるっていう、そういう重要性もご指摘いただいたかなと思いました。
また、語彙の数については、投野さまの発表の中では、A1、A2の2000語、中学校2500語を高校1年にかけてというご提案があったかと思います。また、実際に子どもたちが必要な語彙、日本の子たちが必要な語彙というのはそれぞれ必要かもしれません。そういうものを検討しながら、川﨑委員もご指摘いただきましたけど、プラスして子どもたちが本来使いたい語彙を学ぶ機会は回避されないように、むしろ推奨するような形で、子どもたちにとって必要な語彙というのもあるだろうということを思いました。
で、留意点についてもいくつかあったかと思います。音声、文字の違いであるとか、あるいは深さの部分ですよね。それからA1、A2で特にA2レベルの語彙の扱い方というものが欠けてるのではないかというようなことを。それからA1のところは投野様の発表の中では、むしろ機能語を中心として使われ方、用法の深さ、あるいはどういう単語と組み合わせて使われるのかなんていうことで、いわゆるチャンク定型表現との活用ですね。なので実際にそれだけ覚えるのではなくて、知識技能の方も統合されていくような学び方ですね。文の中に使われていく、文構造の中で使われていくというような、そういう統合をしっかり意識したような指導というものが留意点としては指摘できるのかなと思いました。1989年の学習指導要領の時には500語として指導要領の中にあり、そして全体としては1000語ということでしたけれども、その当時と比べるとかなりコーパスの研究が進んでいると思います。その意味で子どもたちにとって学ぶべき段階にふさわしいいわゆるコーパスっていうのがいくつかあると思いますので、そういうものでぜひ活用できる基盤語彙リストができるといいのかなというように思いました。
長い時間ありがとうございました。最後私も意見を言わせていただき、時間が超過して申し訳ございません。それではですね、本日の議事は以上とさせていただきます。最後に次回以降の予定について事務局よりお願いいたします。
【田井外国語教育推進室長】 次回は2月6日金曜日9時半から12時を予定しております。正式には後日ご連絡させていただきます。
【酒井主査】 それでは以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
■会議終了後の追加意見
【髙島委員】
語彙の数を減らし、語彙リストを作成することには賛成です。多くの語彙をとにかく学ぶことよりも、モチベーションを持って学んでもらうことのほうが大事だと思います。そう考えると、例えば最低限の基盤語彙に加え、自分が好きなテーマの語彙を主体的に学ぶほうが、語彙数ということを考えたときにも前向きに学べるのではないでしょうか。余白をつくることで、結果的に語彙もより多く身につくのではないか、ということです。生成AIについては今後の議論ということですが、今の時代、例えば生成AIに語彙と文法事項を指示すれば、自分の好きなテーマについての文章で学ぶ、ということもできるはずです。そう考えると、ますます基盤語彙は最低限にして、余白をつくるべきではないかと考えます。
なお、蛇足ですが、外来語の活用も一緒に考えるべきではないでしょうか。例えば、小学生でも外来語として知っている英語があるかもしれません。英語の語彙としては知らなくても、この言葉は聞いたことがある、という語彙があれば、こどもにとってとっつきやすいのではないでしょうか。基盤語彙リストをつくる際には、ぜひ外来語の活用についても頭の片隅に置いておいていただければ幸いです。
【バトラー委員】
私は目的と手段を混同してはいけないと思います。目標は、あくまでも子供たちのコミュニケーション能力を向上することにあります。第1回の会議でも、児童生徒たちのコミュニケーション能力、特に発信力に問題があることが指摘されていました。語彙学習はあくまでも、コミュニケーション能力を向上するための手段の一つです。ですから、語彙に関する事項の変更をはかるなら、その変更がどのような形で児童・生徒のコミュニケーション能力の向上につながるかの関係性が明確になっている必要があると思います。その点、定型表現を含めるという提案は、非常にいいと思います。定型表現の定着は、コミュニケーション能力を向上させるからです。
その一方で、語彙数の軽減には少し注意が必要だと思います。私は語彙数を減らすことに不賛成ではありませんが、減らすことが、どのような形で学習者のコミュニケーション能力の向上につながるかの明確な説明が必要になると思います。たとえば、減らすことで、同じ単語をいろいろなコンテクストの中で使う機会が増え、語彙の知識が深まることで、理解や発信能力の向上につながるといったような説明です。単に、現行の指導要領では、学習者や現場の負担が大きいからという理由だけだと、近隣のアジア諸国で起こっているような結果を招くことにつながりかねません。
韓国や中国では、学習者の英語学習の負担が大きすぎるということで、その負担を減らすため、語彙だけではありませんが、全体的にカリキュラムをスリム化しました。その結果起こったことは、格差の拡大でした。
小中高のカリキュラムデザインは、大学や社会のニーズとも切り離して考えることはできません。例えばもし、大学入試が小中高カリキュラムの変更に関わらず、高い水準を要求してきたら、塾に行ったり、補習授業を受けたりなどの特別な学習が必要になります。その一方で、そのような特別学習の機会がない生徒もいるわけです。韓国や中国では、この点を十分に抑えていなかったため、格差拡大が広がりました。
このワーキンググループでは、公平性の問題はほとんど議論になっていませんが、カリキュラム改正を行う際には、社会全体への影響や公平性の問題も、留意する必要があると思います。
電話番号:03-5253-4111(代表)