教育課程部会 外国語ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

令和7年9月24日(水曜日)9時30分~12時00分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 外国語ワーキンググループにおける主な検討事項と今後のスケジュールについて(案)
  2. その他

4.議事録

【田井外国語教育推進室長】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会外国語ワーキンググループを開催いたします。
 本日は大変御多忙の中、御参加いただき誠にありがとうございます。私は文部科学省初等中等教育局教育課程課外国語教育推進室の田井でございます。本日は何とぞよろしくお願いいたします。
 開会に当たり、文部科学省初等中等教育局教育課程課長の武藤久慶より御挨拶申し上げます。
【武藤教育課程課長】  おはようございます。先生方、教育課程課長の武藤でございます。このたびは大変御多忙の中、このワーキンググループに御参画いただきまして誠にありがとうございます。事務局を代表して、まず御礼を申し上げたいと思います。
 英語教育につきましては、今日御参画の先生方をはじめ様々な学校現場の先生方の御努力の中で、EFL環境という極めて制約が大きい中でも、様々な改善を図ってまいりました。その結果、一定レベル以上の英語力を持つ子供たちの数というのは着実に増加をしてきているという状況があると思っています。
 一方で、先般出されました全国学調の経年比較調査の結果の中では、スコアの低下が見られているという心配な状況もあるということ、また、社会全般の英語教育に関する期待と、それから現実との乖離が相当程度見られていると思っています。
 この乖離の中に、フェアなものと、あるいは様々な構造的な要因によるものといった、いろんなものがあるのかなと思っていまして、その辺をうまく整理をしながら、いいものをつくっていくという大事なタイミングにあるのかなと。
 その中で、AIをどう活用するかですとか、あるいは学習科学だったり、あるいは第二言語習得理論、この辺りを学校現場でどういうふうに実装するのか、様々な課題がございます。
 そうした中、先般、中教審企画特別部会のほうで論点整理が出されました。先生方には前もって、この論点整理の御説明の動画というのを見ていただいていると思いますけれども、その中で深い学びの実装、それから多様性の包摂、さらに実現可能性の確保、これを三位一体でやっていくんだという方向性を示しております。
 これから先生方に様々な御意見をいただく中で、実現可能性の確保とそれから全体のレベルアップというのをどういうふうに両立させていくのか、さらに、同じ論点整理の中で「好き」を育み、「得意」を伸ばすんだ、自らの人生をかじ取りする力を身につけてもらうんだということや、あるいは自分の表現、意見を表現する活動だったり、あるいは興味や関心を広げるような学習方法だったり、教材の選択の促進だったり、さらには多角的な知見も生かした学習方略だったり授業方法だったり、こういったことも打ち出されているところでございまして、その辺りとの整合性も含めて多岐にわたる御意見をいただき、いいものを、事務局も最大限の用意をいたしますので、つくっていければと思っております。ぜひ御指導、御助言のほどよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【田井外国語教育推進室長】  議事に先立ち、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告いたします。
 参考資料3の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づき、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理につきましては、奈須教育課程部会長より、酒井英樹委員を主査に、𫝆井裕之委員を主査代理に、それぞれ指名していただいておりますので御報告申し上げます。
 なお、本ワーキンググループの委員の皆様については、参考資料5の委員名簿を御参照ください。
 それでは、議事に入ります前に、酒井主査から一言御挨拶をお願いいたします。
【酒井主査】  皆様、おはようございます。外国語ワーキンググループの主査に御指名いただきました、信州大学の酒井英樹と申します。
 前回改訂の中で、小学校の外国語活動の早期化、そして教科化、それを受けて中学校での内容の高度化、高等学校は科目再編と、大きく外国語教育の教育課程も変わってきました。また、DX化や生成AIの普及など、外国語教育を取り巻く社会環境というものも変わってきています。
 この中で、前回改訂の教育課程の成果と課題を踏まえて、次の外国語教育をどうしたらよいのか、どうあるべきなのかということを、ぜひ皆さんと議論していけたらいいと思っております。
 主査として、力不足ですけれども、皆さんのお力添えをいただきながら議論を進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
【田井外国語教育推進室長】  ありがとうございました。
 それでは、本ワーキンググループの進行は、これより酒井主査にお願いいたします。
【酒井主査】  それでは、これより議事に入ります。本ワーキンググループの議事・審議等については、参考資料3の教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めていただくとともに、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取扱います。
 それでは、事務局より、会議の留意事項を説明願いたいと思います。よろしくお願いします。
【田井外国語教育推進室長】  本ワーキンググループは、対面とウェブ会議を組み合わせた方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言願います。また、御発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただくようお願いいたします。
 事務局からの説明は以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 まず、最初にですけれども、本日は髙島委員が途中退席されますので、最初に一言御挨拶と、外国語教育に関するお考えを頂戴できればと思います。
 髙島委員、お願いします。
【髙島委員】  おはようございます。芦屋市の髙島です。すみません、この後議会がありますので先に失礼させていただきます。よろしくお願いいたします。
 もう英語は別に学校で勉強しなくてもいいんじゃないか、AIで別に全部できるよね、そう思う人って結構少なくないと思います。ただ、私は今こそ英語、外国語をちゃんと学校で学ぶべきだと思っています。なぜかというと、民主主義を守るためです。意味が分からないと思いますので、ちゃんと説明をしたいと思います。
 私は18年間、日本で暮らし、一条校で学んだ後、アメリカの大学で学びました。今回の教育課程企画特別部会にも参加をしていましたので、その議論の背景も踏まえて発言できればと思います。
 今回、新しい学習指導要領の大きな方向性は、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生をかじ取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育むということです。
 ここで注目したいのは、「民主的で持続可能な社会の創り手」という部分だと私は思っています。今回の学習指導要領の改訂は、史上初めて生成AIが普通にある時代の学びを考える改訂です。ともすれば、知識や技能を身につけるだけなら、AIと家で1人で勉強したほうが早いんじゃないの、そういう感覚は少しずつ広がっているように感じます。
 だからこそ、私たちは改めて、学校って何のためにあるのか、ここをきちんと議論しなければならないと思っています。私は、学校は学び合うということに大きな価値があり、そして民主主義を実践的に学ぶという場であるということに価値があるのではないかと考えます。
 何が言いたいかというと、多様な子たちが学び合う、特に公立の学校の場合、似たような場所に住んでいるだけで同じ場で学ぶという場所、多様な子たちがいる場所だからこそ、対話を通じて他者との違いを認め合い、学び合う場であってほしいということです。そのための、言葉というのはツールだと思います。そう考えると、外国語は極めて大事だと思います。
 言語が通じないことによる怖さって、誰しもあると思うんです。私もアメリカで外国人として生活をしていましたので、言語が通じないということによる怖さとかもどかしさというものはすごくありました。だからこそ、外国語を学ぶというのは、他者に思いが伝わったという喜びに加えて、安心感ということにも繋がるのではないかと思います。
 その意味では、特に低年齢期では、小学校もそうかと思いますが、細かい技術いかんよりも、様々な文化や生活の違いに出会い、新しい見方や考え方を育てる、そういうことが大事なのではないかなと思います。そのためにも、英語という1つの科目だけで考えるのではなくて、ほかの教科・科目を取り入れるカリキュラム・マネジメントが極めて大事なのではないかなというふうに思います。
 言葉というのは、生きるための道具だと思います。外国語を学ぶことがよりよく生きることに繋がるように、そしてよりよい社会をつくることに繋がるように、そんな議論がここでできればと思います。これからよろしくお願いします。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題1に移ります。外国語ワーキンググループにおける主な検討事項等について、事務局より説明をお願いします。
【田井外国語教育推進室長】  外国語教育推進室長の田井でございます。外国語に関する現状・課題と検討事項について、御説明をさせていただきます。
 初めに、外国語に関する現状と課題についてでございます。
 まず、学習指導要領のポイントについてです。前回の改訂においては、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」を一体的に育成する過程を通して、「学びに向かう力、人間性等」を育成することとし、小中高で一貫した目標を実現するため、CEFRを参考に5つの領域で英語の目標を設定いたしました。
 また、小学校から音声を中心に外国語に慣れ親しみ、動機づけを高めた上で中学校への接続を図るため、小学校3・4年に「外国語活動」、5・6年に教科「外国語」を導入いたしました。
 中学校では対話的な活動を重視し、授業は英語で行うことを基本とし、高校では5領域を統合的に扱う科目や、ディベートやディスカッションを通して発信力を高める科目を設定し、科目構成の見直しを行いました。
 次に、小学校に関する課題です。5領域の活動を通した指導が定着しつつあり、実施状況調査によると、4技能全てで相当数の児童ができている設問が多くなっています。
 一方、一文を書き写す問題の正答率に学校間で差があるなど、「書くこと」に課題が見られます。また、「読むこと」「書くこと」において、児童が興味・関心を持ちにくい、理解しにくいと回答した教師の割合が多く、教師が指導に難しさを感じています。
 次に、中学校に関する課題です。活動を通した指導に一定の進捗が見られ、CEFR A1相当以上の生徒の割合が増加するとともに、約10年前との比較である実施状況調査では改善が見られます。
 一方、3年前との比較である経年変化分析調査のスコアは低下し、コロナ禍の影響も考えられるものの、この傾向に歯止めをかける必要があります。なお、各種調査に共通して、社会的な話題に関する問題や文法等の正確性を問う問題に課題が見られます。中学校で習得すべき文法や語彙の増加、話題や活動の高度化により、教科書の難易度が上がり、授業づくりが難しいとの指摘があります。
 次に、高等学校に関する課題です。活動を通した指導に一定の進捗が見られ、CEFR A2相当以上の生徒の割合が増加しています。
 その一方、実施状況調査等によると、「話すこと」「書くこと」の発信領域において課題が見られます。特に、発信を中心とする科目であるはずの「論理・表現」において、4技能をバランスよく学ぶ「英語コミュニケーション」に比べ、活動を通した英語使用の機会が十分に与えられておらず、科目の趣旨に沿った指導が十分に行われていない実態があります。
 次に、小中高に共通する課題です。1点目は、校種間の接続・連携に関する課題です。
 小学校の外国語活動から外国語、中学校・高等学校の円滑な接続・連携が依然として課題となっています。教師が他校種等の指導内容・方法を必ずしも把握できていない、接続・連携のために重点を置いて指導すべき点を必ずしも理解・意識していない等の課題もあります。
 2点目は、語彙に関する課題です。以下の点が相まって、過度な負担が生じているとの指摘があります。
 まず、教科書の語彙数が増加した結果、中学校では、小学校で扱った語彙の定着に加え、増加した新出語彙を指導する必要が生じています。また、解説で受容語彙と発信語彙の考え方を示しましたが、実際には新出語彙を全て覚える指導がなされるなど、めりはりのある指導が行われていない実態もあります。さらに、社会的な話題が中学校の指導要領に位置づけられ、教科書の話題が高度化し、難易度の高い語彙が増加しています。
 3点目は、生徒の英語力の把握・評価に関する課題です。現行の指導要領は、CEFRを参照して目標や活動例を定めるとともに、教育振興基本計画ではCEFRを基準として数値目標を定めている一方、全国学調等ではCEFRを参照したレベル調整はなされていないなど、生徒の英語力の把握や経年比較がしづらい状況があります。
 また、高校のパフォーマンステストで「書くこと」「話すこと」の両方を実施している割合は、「英語コミュニケーション」「論理・表現」のいずれの科目においても55%に満たず、生徒の学習状況の適切な把握に課題があります。
 また、平成25年度以降、各学校が「英語を使って何ができるか」という観点で到達目標を示すことを求めてきた結果、CEFRを参照したCAN-DOリスト形式での目標設定が進んでいます。
 4点目は、社会や社会変化に関わる課題です。まず、AI時代に外国語を学ぶ意義についてです。英語が好きな児童生徒や、将来英語を使いたいと考える生徒の割合の減少など、英語を学ぶ動機が弱まっているとの指摘があるほか、他教科を含め、家庭学習の時間が全体的に減少傾向にあります。AIの飛躍的な発展で、手軽に高精度の翻訳が可能になる中、AI活用が当たり前となる社会を前提としつつ、外国語を学ぶ本質的意義を再定義することが不可欠です。
 グローバル化・内なる国際化が進み、多文化共生・共創社会の構築が喫緊の課題である中、こうした社会の創り手を育てていく観点から、外国語教育が果たすべき役割を検討する必要があります。グローバルな視点などを駆使した価値創造などを推進するとともに、日本や地域の魅力発信を強化していく観点からも、我が国において外国語を学ぶ重要性はますます高まっていると考えられます。
 次に、社会の期待・認識との乖離についてです。受検者数や層が異なるため、有効な指標とは必ずしも言えませんが、各種資格検定試験の結果、我が国のスコアは他国と比べて低いとの批判があります。
 また、日本の若者は、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」「自信を持って自分のアイデアや意見を考えたり話したりした」割合が低い、「自分の意見を書くことが苦手」など、英語教育にとどまらない課題もあります。小中高の英語教育には一定の進捗が認められるものの、社会の期待・認識とは依然大きな乖離があり、これを埋めつつ、さらなる改善を図っていく必要があると考えられます。
 次に、指導体制・環境面に関する課題です。
 1点目は、5領域の活動を通した指導に関する課題です。活動を通した指導が定着しつつある中、中高で語彙や文法等の知識・技能を、目的や場面・状況などに応じて活用できるようにするための効果的な指導方法が分かりにくいとの声があります。
 中高では、授業は英語で行うことを基本としつつ、補助的に日本語を用いることも可能としていますが、日本語使用を禁止しているとの誤解を生んだり、教師・ALTの英語が生徒の理解の程度に応じたものとなっていない事例もあります。ALTによる適切なフィードバックが英語力の向上に寄与することが明らかになっていますが、自治体によってALTの参画や教師との連携に差が生じています。
 2点目は、AIを含むデジタル学習基盤の活用に関する課題です。外国語教育においても、デジタル学習基盤を前提とした学習の充実が不可欠であり、とりわけ生成AIは、会話練習や英文添削、家庭学習での活用等、練習量の増加や動機づけの強化が期待できます。国の実証事業でも、英語力や関心・意欲の向上、指導改善に有効であることが示され始めています。
 発信力強化の観点からも、AIを活用した教材作成や発信内容の改善など、自分の言いたいことを主体的に発信するために、母語もうまく活用しながら、AIを多様な場面で活用することが期待されています。
 外国語学習向けの生成AIや各種アプリについては、今後一層の発展が見込まれますが、指導要領等に位置づけられていないことが学校現場での活用格差を生み、英語力の差に繋がることが懸念されます。
 また、遠隔地の英語に堪能な人との個別会話が英語力の向上に寄与することが明らかとなっている一方、実施している割合は中高共に約10%にとどまっており、1人1台端末やクラウド環境が十分に生かされていない可能性があります。
 次に、これらの課題を踏まえた、本ワーキンググループにおける検討事項・論点について御説明します。
 左側は、企画特別部会の議論を踏まえた検討事項をお示ししています。1点目は、育成する資質・能力の在り方・示し方です。今回の諮問文でも言及されております、AI時代に外国語を学ぶ意義の再定義、また、論点整理で示された「中核的な概念の深い理解」「複雑な課題の解決」を中心とした、学習指導要領の一層の構造化の具体案について御検討いただきたいと考えています。
 2点目は、指導と教科の改善・充実の在り方です。生成AIを含むデジタル学習基盤の活用や情報活用能力の育成強化を前提とした、「主体的・対話的で深い学び」の一層の充実方策、目標・内容の一層の増加や、「学びに向かう力、人間性等」の評価の新しい整理を踏まえた評価の在り方について、御検討いただきたいと考えています。
 3点目は、誰一人取り残さず資質・能力を育成する柔軟な教育課程の在り方です。論点整理で示された義務教育における調整授業時数制度や、高校における科目の柔軟な組替えや履修の免除を可能とする仕組みを前提とした場合に、考えられる教育課程・学習指導の工夫の在り方について、御検討いただきたいと考えております。
 右側は、外国語固有の検討課題をお示ししております。
 1点目は、英語力・発信力強化に関する課題です。各種調査から見られる児童生徒の英語力の状況等を踏まえ、英語力・発信力強化のために必要な改善策を御検討いただきたいと考えております。
 2点目は、5領域の活動を通した指導に関する課題です。活動を通した指導が定着しつつある中で、知識・技能の効果的な指導方法が分かりにくいとの声があることや、語彙調べの学習が負担となっているなどの課題等も踏まえ、必要な改善策を御検討いただきたいと考えております。
 3点目は、指導体制・環境面に関する課題です。ALTの参画状況に差が生じているなどの課題等も含め、必要な改善策を御検討いただきたいと考えております。
 4点目は、社会の期待・認識との乖離に関わる課題です。全体として英語教育には一定の進捗が認められるものの、英語教育にとどまらない問題も相まって、社会の期待・認識とは依然大きな乖離があることを踏まえ、これを埋めつつ、さらなる改善を図っていくために必要な方策を御検討いただきたいと考えております。
 5点目は、その他環境整備に関する課題です。学習指導要領の問題に限らず、広く外国語教育に関する課題について、必要な改善策を御検討いただきたいと考えております。
 外国語固有の検討事項については、本日、委員の皆様の御意見をお伺いし、具体的に整理していきたいと考えております。
 続いて、参考資料・データについて御説明をいたします。
 まず、学習指導要領のポイントについてでございます。前回改訂では、小中高一貫した目標設定、小学校中学年への「外国語活動」、高学年への教科「外国語」の導入、中学校における言語活動の高度化、高等学校における科目構成の見直し、語彙数の増加などの改善を行いました。また、授業において、5領域の活動を指導の中心とすることを強調いたしました。その成果として、一定の英語力を有する中高生の割合は年々増加をしております。
 続いて、校種別の状況。まず、小学校についてです。
 授業において、児童が英語による言語活動を行っている時間の割合の推移です。本調査については、令和3年度までは学級単位、令和4年度からは学校単位で調査しているなど、年によって条件が異なっているため厳密な経年比較はできませんが、全体として教科「外国語」の導入当初から高く、年々上昇傾向にあります。
 また、教師への調査では、言語活動を中心とした授業の実施状況について肯定的な回答の割合が高く、言語活動を通した指導が定着しつつあると考えられます。
 次に、学習指導要領実施状況調査においては、4技能全てで相当数の児童ができている設問が多い結果となっております。
 一方で課題もあり、一文を書き写す問題は学校間の正答率にばらつきが見られ、また、教師への調査では、「読むこと」「書くこと」について、指導に難しさを感じている教師が少なからずいることがうかがえます。
 中学校への調査においては、「小学校での英語が授業の役に立った」と回答した生徒の割合が、小学校5・6年に外国語活動を導入した前回改訂時の調査と比較し、20%前後増加しております。
 なお、小学生のときに英語の学習が好きだった生徒は、中学校でも好きと回答する傾向があり、また、否定的に回答している生徒と比べて通過率が高い傾向が見られます。
 次に、中学校の状況です。CEFR A1レベル相当以上を達成した中学生の割合は年々増加し、令和6年度において52.4%となっております。教育振興基本計画では、令和9年度までに60%の達成を目指しています。
 授業において言語活動を行っている時間の割合の推移については、小学校と同様、厳密な経年比較はできませんが、旧学習指導要領下においても年々上昇しており、現行学習指導要領の実施時期とコロナ禍が重なった令和3年では一旦下がるものの、その後は再び上昇しております。教師への調査では、小学校と同様、言語活動を中心とした授業の実施状況について肯定的な回答の割合が高くなっています。
 学習指導要領実施状況調査では、約10年前の前回調査時の同一問題との比較において、多くの問題で通過率が上がっています。一方、「書くこと」の知識・技能を問う問題では、中3で全て低下しています。
 また、先月公表された経年変化分析調査では、3年前の前回調査時と比較してスコアが低下しています。内訳を見ますと、特に「書くこと」「話すこと」で5ポイント以上正答率が低下した問題が多くなっています。そのうち「書くこと」については、特に基本的な語や文法事項等を理解して書くことができるかどうかを見る問題の正答率が下がっており、「話すこと」については全体的に無回答率が高くなっています。
 また、学習指導要領実施状況調査において、社会的な話題に関する問題の通過率が低い傾向が見られます。生徒が英語の学習が好きではない理由としては、文法が難しい、単語のつづりや文字を覚えるのが難しい、英語の文を書くのが難しいという点が上位に挙げられています。
 続いて、高等学校の状況です。CEFR A2レベル相当以上を達成した高校生の割合は年々増加し、令和6年度において51.6%となっています。教育振興基本計画では、令和9年度までに60%の達成を目指しています。また、B1レベル相当以上を達成した高校生の割合は令和6年度において21.2%となっており、令和9年度までに30%の達成を目指しています。
 授業における言語活動の状況について、まず、「英語コミュニケーションⅠ」の状況です。高校においても厳密な経年比較はできませんが、中学校と同様、旧学習指導要領下で年々上昇し、コロナ禍の令和3年で一旦下がりますが、その後は再び上昇しています。また、教師への調査では、小中学校と同様、言語活動の実施状況について肯定的な回答の割合が高くなっています。
 次に、「論理・表現Ⅰ」の状況です。言語活動を行っている時間の割合は、コロナ禍で一旦下がる点は他の場合と同様ですが、その後も伸び悩んでいる状況が見られます。5領域を総合的に扱う科目である「英語コミュニケーション」に比べ、発信力を高める科目である「論理・表現」のほうが言語活動が少ない傾向にあります。
 生徒の英語力について、ベネッセコーポレーションに委託し、同社の行う検定試験GTECの受検者のスコアを令和元年・3年・6年で比較したところ、4技能を総合したスコアは高1において横ばい、高2・高3においては横ばいから上昇となっております。
 4技能別の傾向について学年別に見ていきますと、高1では「聞くこと」「読むこと」は横ばい、「話すこと」「書くこと」は低下傾向となっています。高2では、「聞くこと」「読むこと」は上昇、「話すこと」は横ばい、「書くこと」は横ばいから低下しています。高3では、「聞くこと」「読むこと」は上昇傾向。「話すこと」「書くこと」横ばいとなっています。全体として受信技能が伸びている一方、発信技能が伸び悩んでいる状況が見られます。学習指導要領実施状況調査においても、発信技能である「書くこと」の問題について通過率が低くなっており、課題が見られます。
 次に、校種間の接続・連携に関する課題についてです。中学校教師に対する調査において、「小学校で扱う言語材料や言語活動について理解している」と回答した割合は、平均で約50%にとどまっています。
 続いて、語彙に関する課題です。前回改訂で学習すべき語彙数が増加したことに伴い、中学校教科書の語彙数は大きく増加し、その後、同じ学習指導要領下の令和3年から令和7年の間でも増加傾向にあります。
 また、前回改訂において、日常的な話題と社会的な話題が学習指導要領に位置づけられ、中学校学習指導要領の解説には、日常的な話題として学校生活や家庭生活などの身近なものが、社会的な話題として自然環境問題やエネルギー問題といった比較的高度なものが例示されています。
 文部科学省で、中学校の教科書に掲載されている話題の状況を調べたところ、比較的解説の例示に忠実に話題が選択されており、両者の間にあるような話題、例えば食文化、日本の文化、住んでいる町や地域の魅力などの中間的な話題が少なくなっています。特に中3の教科書では社会的な話題が増えており、語彙の難化につながっている可能性があります。
 次に、生徒の英語力の把握・評価に関する課題についてです。高校のパフォーマンステストで「話すこと」「書くこと」の両方を実施している割合は、いずれの科目においても55%に満たない状況にあります。また、各学校におけるCAN-DOリスト形式の学習到達目標についての設定や達成状況の把握・公表は、達成状況を把握・公表していない学校も一定数見られるものの、いずれも進んでいます。
 次に、社会や社会変化に伴う課題についてです。小学校6年生の調査において、「英語の学習が好き」と回答した児童の割合は全体として高いものの、平成25年度から令和5年度で低下しています。また、学年が上がるほど低い傾向にあります。一方、「今後もっと英語ができるようになりたい」と回答した児童の割合は、小5にかけて低下しますが、小6で再び上昇しています。
 中学校において、「英語の学習が好き」と回答した生徒の割合は平成25年度と比較すると横ばいですが、平成25年度から令和3年にかけて若干上昇し、令和5年にかけて若干低下しています。また、学年別に見ると、「好き」「分かる」共に中2が一番低くなっています。
 続いて、高校生の調査において、「英語の学習が好きだ」「授業が分かる」と回答した生徒の割合は、平成27年度から令和6年度で上昇しています。
 次に、中学生の調査において、「英語の勉強は大切」「将来役に立つ」と回答した割合は、平成31年度から令和5年度で増加している一方、将来英語を使うような生活や職業を希望する生徒や、日常的に英語を使う機会が十分にあると回答した生徒の割合は減少しています。
 また、英語に限ったデータではございませんが、小中学校の児童生徒及び保護者への調査では、学校外での勉強時間が令和3年度から令和6年度で減少しています。
 次に、社会全体の状況です。在留外国人、訪日外国人旅行者が急激に増加し、グローバル化、内なる国際化が進んでいます。2067年には人口の1割が外国人になると試算されており、2040年頃に前倒しになる可能性も報道されています。
 学校現場では、外国に繋がる子供たちが10年間で急増し、日本語指導が必要な児童生徒は1.9倍となっています。
 政府では、中学・高校での国際交流、高校生・大学生等の留学について、政府目標を定め、推進しています。その際、「語学力は語学の留学の動機」「留学したい」と思わない理由の大きな要素となっています。
 また、生成AIの発展が目覚ましい中、人間が得意なこと、生成AIが得意なことが指摘されています。外国語教育においても、生成AIに代替・補完され得るものと、人間に引き続き求められるものを踏まえ、科目の意義や在り方を検討していく必要があります。
 なお、令和4年の経済産業省の調査では、国内外の企業がグローバルな日本人人材を確保する上での阻害要因として「英語力が課題である」と回答しており、生成AIが発達した状況であっても、引き続き英語力が必要とされていることが示されています。
 また、日本の若者は諸外国に比べて発信力に課題があるという調査結果、日本人は意見を主張することに消極的であるといった調査結果、国語に関する調査結果において、自分の考えをまとめたり書いたりする問題の正答率に課題が見られる状況もあります。
 次に、指導体制・環境面に関する課題、まず、5領域の活動を通した指導に関する課題についてです。
 教師の英語使用状況について、中学校では約7割の学校で、教師が発話の半分以上を英語で行っていると回答しています。高等学校では約4割の学校で、発話の半分以上を英語で行っていると回答しており、「英語コミュニケーション」に比べ、「論理・表現」のほうが英語による発話の割合が少ない傾向にあります。
 中学校における調査では、英語で授業を行うことを基本としている教師のほうが、そうしていない教師と比較して生徒の通過率が高いという成果が出ています。また、英語で授業を行うことを基本としている教師のうち、生徒の理解の程度に応じた英語を用いたり、補助的に日本語を用いている教師のほうが、そうしていない教師と比較して生徒の通過率が高いという結果が出ております。
 次にALTについて、ALTの授業内での活動、特に生徒の発言へのフィードバックなどが、制度の英語力に効果があるという分析結果が出ています。また、調査設計上、ICT活用についても同じ資料に表示しておりますが、ICTでの遠隔地とのやり取りについても、生徒の英語力への効果が示されております。
 ALTが授業に参画する時間の割合は、国全体としては増加しております。一方、自治体間では大きな差が見られます。
 次に、AIを含むデジタル学習基盤の活用に関する課題についてです。生徒の英語力と相関のある、生徒の英語による言語活動、教師の英語使用、教師の英語力のいずれにおいても、生成AIの活用による効果が期待できると考えられます。
 文部科学省の実証事業において、授業や家庭学習で生成AIとの英会話に取り組んだ学校では、生成AI活用前後で生徒の英語力が大きく向上した事例も見られます。今年度は、学習指導要領改訂の検討も見据え、全国約300校で実証事業を実施し、事例の蓄積を行っているところです。また、来年度の概算要求においても、関連する予算を要求しているところです。
 英語教育におけるICT機器の活用状況については全体として増加傾向ですが、生徒の英語力に効果が高いとされている遠隔地とのやり取りについては、活用が進んでいない状況があります。
 以上が資料の説明になります。本日の委員の皆様の御意見を踏まえ、具体的な検討事項を整理していきたいと考えております。何とぞよろしくお願いいたします。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日は第1回で、初めての顔合わせの会でもありますので、委員の皆様お一人ずつから、特に検討を進めるべきと考えている事項、審議の進め方に対する御意見等について、御発言いただきたいと思います。順に私からお一人ずつ指名させていただきますので、3分程度で御発言をお願いします。まずは途中退席される予定の委員を先に指名させていただいた上で、それ以降は名簿順とさせていただきたいと思います。
 それでは、初めにバトラー委員より御発言をお願いします。
【バトラー委員】  皆さん、こんにちは。ペンシルバニア大学のバトラー後藤裕子と申します。ペンシルバニア大学では教育学の大学院でプロフェッサーをしています。それから、TESOLというプログラムのディレクターもしています。
 後ろは富士山ですけれども、今日はペンシルバニアから参加させていただいています。私は日本に住んでいないので、できればマクロ的な視点でこのワーキンググループに貢献できたらいいなというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 私のほうからは2点、お話をさせていただきたいと思っています。1つは発信力についてです。私も海外に住んでから30年以上になるんですけれども、ここ数十年の間に一つ気になることは、やはり全体的に日本の存在感というのが少し薄れてきているのではないかということです。キャンパスにおりますと日本の学生は非常に数が少なくなってきておりますし、それから日常生活の中でも、あまり日本の話題を聞くチャンスというのが少なくなってきているような印象があります。
 これはあくまでも私の印象ですけれども、そういった中で、やはり発信力の増強に関して、まだ多少課題が残っているということは懸念材料でありまして、ぜひここの部分を何とか強化していきたい、それに対する考え方、対策というのを皆さんと一緒に考えていきたいなと思っています。
 例えばスピーキングであるとかライティングであるといったような言語技術を高めるということも一つありますけれども、やはり発信していきたいと思う積極性でありますとか、先ほども資料で出てきましたけれども、社会的な問題に対する関心であるとか、留学をしてみたいとか、英語を使って外国の人と交流したいとか仕事をしてみたいとか、やはりそういったような自分の考えを発信していく積極性、他人と交流していく積極性、そしてまた、日本の中でも非常に国際化が進んでいるということなので、外と内と両方に関心を持って、内向きにならないで発信力を高めていくということが非常に重要なのではないかというふうに思います。
 2点目は、AIに関してです。皆さん御承知のとおり、AIの進歩というのは物すごく目まぐるしくて、去年あったことが今年はもう違うみたいな形になっておりまして、先を見据えて考えていくというのは非常に難しいことですけれども、やはりそれはどうしてもやっていかなきゃいけない。
 次期の指導要領を考えていくときに、その指導要領が施行されるとき、ないしは5年後10年後、一体どうなっていくかというところを考えて、非常に長期的な視点で物を考えていかなくちゃいけない。
 私の同僚でAIの専門家の先生とこの間話をしておりましたら、先を見据えていろいろ考えていくのは非常に難しいけれども、でも確実に言えることは、ここ二、三年の間にAIのソーシャルロボットが教室の中に入ってくる、これはもう確実であるというふうに断言しておりました。これはアメリカのケースかもしれませんが、しかし、やはり何が起こるか分からないぐらい目まぐるしく進んでいく。
 その中で、長期的に、一体AIというものを日本の教育の中で、そしてまた外国語教育の中でどういうふうに位置づけていきたいのか、そのビジョンを今回ははっきり出していかなくてはいけないだろうと。
 今、300の学校でいろいろ実験がなされているというお話がありました。私も非常に興味があって、ぜひお伺いしたいと思います。ただ、今のAIの技術で何ができるか、そこで止まってはいけなくて、その情報は非常に重要なんですけれども、それを踏まえて5年後10年後はどうなっていくかという形の議論を、ぜひこの場でしていきたいなというふうに考えております。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 それでは、続いて𫝆井主査代理より御発言をお願いします。
【𫝆井主査代理】  失礼いたします。今回主査代理を務めます関西大学の𫝆井裕之と申します。英語授業研究ですとか、英語教師の成長を主な研究領域として、英語の授業実践の支援と改善に取り組んでおります。よろしくお願いします。
 今回特に検討を進めるべき事項の、まず1点目としては、教育課程特別部会のほうでもありました資質・能力の縦と横の関係、ここは非常に大事だと思っています。これを外国語科に落とし込んでいく際に、知識及び技能、そして思考力・判断力・表現力等の縦横の関係づけのための、いわゆる構造化の枠組みをつくること、この作業に慎重に時間を割いて議論していくことが、これからの小中高の指導内容とともに、授業方法にもかなりの影響といいますか、方向づけになる、そういう鍵になる取組だと思っております。
 例えば知識・技能の縦でいいますと、現在の語彙や文法の見直しもさることながら、それに言語の働きですとか、そういった言語を使う部分、語用論的な知識・技能も関係させながら、言語の形式、そして意味、そして使用、いわゆるフォーム・ミーニング・ユースを関係づけていくことですとか、思考力・判断力・表現力等においては、言語活動の問題解決の課題というのを、この定義・分類・整理して段階的に高度化していく、そういう目安なり方法なりというものを提案できることが大事かと思います。
 2点目は、多様性の包摂に関することですけれども、ここに対して外国語教育が果たす役割について考えていく必要もあろうと思います。
 児童生徒たちの多様化が進んで、先ほどの言葉で言うと内なる国際化が進む中で、外国語科、外国語の必要性やその目標というのも含めて、それ自体が多様化している中、それは社会でも学校でも起こっていることなんですけれども、コミュニケーション能力というものを育成していく外国語科の重要性はもちろん言うまでもないのですが、私が特に今回強調したいのは、同時に、いわゆる多様性の包摂というのは時間もかかりますし、労力もかかりますし、そこに直接的に当たる教員にとっては、特に感情労働が非常に強く伴うものではないかと想像します。
 そこから得られるものも大きい分、怖さもあるということを考えますと、その実現可能性の確保のために学びを支え合えるような教員生活、これを支援する積極的な議論ができればと思っています。
 それとも関わりますけれども、審議の進め方について、一言だけですけれども、これはむしろ自分への戒めとしてですけれども、改善課題を挙げること、それは必要なんですけれども、それだけに、現在学校教育において、いろんな教育成果というものが成果であるのだという、活動が成果であるのだという視点をしっかり同時に持ちたいと思います。
 よいプラクティス、グッドプラクティスを分析して、より多くの児童や生徒、そして何より教員の間で共有可能なものとして位置づけて、それを根拠ある、具体性のある提案として発信していけることが、最終的に学校教員が、教師としての自身のキャリアですとか、長期成長のビジョンというものを持って働ける教育改革になるかなというふうに思っています。
 最後は外国語科に限らないことでしたけれども、現状、私が考えているのは以上になります。ありがとうございます。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 続いて、臼倉委員より御発言をお願いします。
【臼倉委員】  臼倉です。よろしくお願いいたします。私は主に中学校と高校の接続ということをテーマに、もっと言うと高校に入ったときに、中学校で学んだことから比べて学ぶ内容がいきなり難しくなってしまって戸惑ってしまう生徒がいたりとか、あるいは先生方も、高校に入って教科書が難しくなったからたくさん解説をしてあげなきゃいけないんだというふうに思って、ついつい解説多めの授業になってしまって、授業中に生徒が英語を使う時間があまり確保できなくて、結果として、高校に入ってから生徒の英語力が伸び悩んでしまうような現場があるという、これを何とかして解決したいなということを考えながら、日々の研究活動や、先生方との研修であったり学生指導を行っています。
 今日、せっかくこのお時間をいただいたので、私が学習指導要領改訂に向けてどういうことを大事に思っているかということを少しお話ししたいと思うのですが、数でいうと3つほどあります。
 巻いていくようにしますが、まず1つ目は、学習者が、児童生徒が英語が使えるようになるまでのプロセスみたいな、あるいはその正しいイメージというのを、関わっている人全員がみんなで共有したいなというふうに考えています。
 新しい語彙とか文法という知識と言われるもの、あるいはそれに付随する技能と言われるものを生徒に与えてあげるということが英語力を伸ばすことに直結する指導だという、誤解が何となくあるなというふうに思います。
 英語を使うようにさせるためには、新しいものを与えることが大事なんじゃなくて、既に与えて学んだことがちゃんと身についているかなというところまで責任を持つということがむしろ大事だと。例えば、どんどん食べ物をあげて、食べて大きくなりなさいと言って食べ物を与えるだけが教師の仕事ではなくて、与えたものをちゃんと、与えた側の子供たちがかんで飲み込んで、それが栄養になって力になっているかというところまで責任を持つということが教師の仕事だということを意識しながらしたいなと思っています。
 なので、次の指導要領改訂で私が何としても阻止したいなと思っているのは、これ以上学習事項を増やさないということですかね、と考えています。
 2点目は、ちょっと関連するんですけど、学習者の学習プロセスというのをもっとちゃんと調べたいなと思っています。いつまでに何ができたかということだけじゃなくて、そこに至るまでにどんな学びを経たのか、うまくいったこと、いかなかったことまでちゃんと観察して、特に、うまくいかなかったことを失敗だとか悪いことと捉えるんじゃなくて、それが私たちがよい授業をしていくための貴重な資料だというふうに捉えて、もっともっと学習を科学するということを推進していきたいなと思っています。
 最後3点目は、自分がやっていることにも関わるんですけど、やはり英語を使わせながら英語力を伸ばす。もっと言うと語彙や文法をその中でどう指導していくのかという具体的なアイデアが、先ほどからもお話が出ていますが、まだまだ、苦しんでいる現場の先生方には十分に伝わっていないなという気がするので、そのアイデアをたくさん出すことと、それをどういうふうに現場に普及していくのかということを自分ができる範囲で考えながら、指導要領の改訂に携わっていきたいと思っています。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 それでは続いて、内田委員より御発言をお願いします。
【内田委員】  内田です。よろしくお願いいたします。九州大学の内田と申します。私、専門はコーパス言語学というのをやっておりまして、データを使って、データからいろんな言語の分析であるとか、学習者の状況を分析したりということをやっております。あと、CEFRとかの自動評価、そういうことも取り組んでいて、生成AIを使ってやったりしていますので、その辺りに関していろいろとアイデアが出せればと思っています。
 私は今回3点、提起したいといいますか、考えておきたいということがありまして、まず1点目ですが、これはもう先ほどからたくさん出ていますが、AI時代における学ぶ意義の再定義、これは確実にする必要があるかなと思っています。我々教員、大学もそうですし中高小もそうだと思うんですけども、どの教員も恐らくこの問題には必ずぶち当たってしまう、生徒からも質問が出てくるものだと思っています。なので、指導要領としてはこれに正面からちゃんと答えられる必要があると思っていますので、まずはそれが必要かなと思っています。
 多様性の包摂というような話も出てきましたが、私個人として、やはりそういう観点から外国語というのは非常に大事だと思っておりまして、文化の理解、外国語で発信できることということは多様性の包摂・理解に繋がると思っていますので、ここは考えていければなと思っています。
 2点目に関しては、教師の役割の再定義です。現在の案、論点整理の中では、「教師は学びをデザインする高度専門職」というような言葉が出てきておりますが、私はこれに賛成といいますか、変わっていくだろうなというふうに考えています。
 現状、教師はティーチャー、教える人ですけども、恐らくこの先、コーチであるとかコーディネーターというような、そういう役割として再定義していく必要があるのかなと思っています。
 これは学習指導要領であり、指導者要領ではないので、なかなか盛り込むことは難しいのかもしれませんが、ただ我々自身、教師としての認識を改めていく必要があると思いますので、その方向性を出していく必要があるのかなと思っております。
 3点目ですが、こちらは先ほど臼倉委員からの御指摘等も繋がるところがあるんですが、学習状況を可視化するという仕組みが必要だと思っています。
 これは私の専門でもあるのですが、生データを取るということですね。現状恐らくスコア等の二次データはたくさんあると思うんですが、とても簡単にいうとコーパスをちゃんとつくるということです。それを可視化していって、それが学びの改善に繋がるというふうに思っています。なので、PDCAサイクルをちゃんと回せるように、生データを蓄積する仕組み、それから分析する仕組みというのは必要かなと思っています。
 これは、個別最適な学びであるとか主体的な学び、さらには確かな知識というところにつながっていく取組だと思いますので、その辺りもしっかり考えていければなと思っております。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 まだ江原委員は不在でしょうか。
【江原委員】  今、入らせていただきました。遅れましてすみませんでした。
【酒井主査】  すみません。それでは、江原委員より御発言ください。
【江原委員】  すみません、遅れまして。今日はどうしても、後期の第1時間目の授業だったものですから、少しだけ授業をしてやってまいりました。
 私のほうは、もともと高等学校の教員を経てということもありまして、研究分野としては言語教師認知、あるいは英語教育ということで、高校の先生がどういうふうに考えながら日々の授業をされているのかというのを、いろいろ先生方と話しながら研究してきたという経緯があります。
 ですので、学習指導要領が高校現場でどういうふうに伝わっていっているのかということに興味があって研究しています。そういう立場から、高校の場合を念頭にお話しするんですけれども、英語力、発信力強化ということで、現行学習指導要領から4技能5領域の指導と評価が求められるようになったんですよね。それでパフォーマンステストが学校でかなり実施されるようになりました。
 一方で、よく指導主事の方とか先生方にお伺いするのは、パフォーマンステストは頑張ってやっています。でも、それに至る指導というのはあまり丁寧にできていないと。テストはするけれども、そこに至る段階的な指導、先ほど学習プロセスという言葉も出ましたけれども、それが十分でないという問題があると思うんです。
 これは、教科書の英文があると、そこを理解させることを優先してしまうので、発信スキルの指導まで手が回らないという事情があると思うんです。あとは、「読むこと」の指導というのは先生方もいろいろノウハウはあるけれども、スピーキングやライティングの指導は難しいという部分もあると思います。
 こうした点について、学習指導要領改訂でどうするかということなんですけれども、先生方に実現可能な方法で、どういうふうにすれば現在のいろんな現状の制約というかコンストレインツというか、そういうものの中でできるのかと。目標自体の--こういう言い方をすると少し乱暴なんですけど、目標自体の設定は実現可能か。別の言い方をすると、もっと具体的にこれができればいいよというふうに示す。そして、それが生徒の願いや目標と合致するといいなというふうに思っています。どうしても、大人が「これが目標だよ」と言っても、それが生徒の目標と合致しなければ、心の入ったコミュニケーションはできないのかなというふうに思います。
 あとは、特に発信力を目指す科目、今は「論理・表現」になっていますけれども、もっと身近なやり取りとか、ライティングについても基本のところから、もう少しそのカーブをゆっくりしてもいいんじゃないかなと思います。特に1年生のときは基礎を徹底的にやって、できる子はどんどんどんどんできるように。ただ、最初の基礎のところであまり急ぎ過ぎないのがよいかなというふうに思います。
 あとは、もう一つだけお話しさせていただきたいとすれば、今後、学習指導要領もしくは解説が公示された後に、評価についての研究部会が発足すると思うんですけれども、大抵その評価の部会が発足されると、じゃあどうしましょうかということで悩むんですけれども、できれば学習指導要領・解説の作成の段階から、評価に関する先生方からの疑問がないように、いろいろな例えば知識・技能はこうだとか、思考・判断・表現はこうですよというような、そういう学習指導要領改訂の段階からそういう評価を見据えた、いろいろな語義の定義とか、あるいは教えるべき内容の項目の線引きとか、そういうのができればいいなというふうに思っています。
 以上でございます。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは続いて、川﨑委員より御発言をお願いします。
【川﨑委員】  ありがとうございます。株式会社グロバリ代表の川崎あゆみと申します。ふだんは小学生から大人、80代まで、英語のコミュニケーション力の指導をしておりまして、あとは執筆活動などをしております。
 本日は、現行の指導要領や教育現場の実態を踏まえて、コミュニケーション学と第二言語習得論の観点から、今後、特に検討すべきだと感じた課題を4点申し上げます。
 まず第一に、AIを活用した教師支援の可能性、今後はスチューデントセンター、生徒中心の学びというのが求められる時代になりまして、教師は「教える人」から「学習を支えるファシリテーター」に転換していくということが言われております。
 発話の現場では音読がメインということで、生徒たちは発話と称して音読をしていることが多いようなんですけれども、自分の意見やアイデアを考えて伝えることで、言語の気づきですとか自立的な学習者として育っていきますので、教師は教えるというよりは個別のサポートや振り返りの支援、心理的支援などに注力していって、AIが知識の導入・添削、評価の一部や基本的な反復練習を担うといった、役割分担を考えていけるといいのかなというのは思いました。
 第2点として、指導要領はCEFRを参照していて、コミュニケーションとしての英語を身につける上で非常にすばらしい方向性だと感じておりますが、その上で、具体的なオブジェクティブズを目安として設置することも検討してはどうかと考えました。
 既に学校ごとにCAN-DOリストが作成されたりしておりますが、やはりばらつきが見られており、あまり固定するのは望ましくないと思う一方で、具体的なオブジェクティブズがあることによって、全国学力調査や教科書、教材、授業内容、学習プロセスなどの方向性がさらに一貫していくのではないかと思います。
 目的や目標から逆算して授業を設計することで、実際の狙っていることと行動、そして結果のずれが少しずつ緩和されていくと思いましたので、目安程度でもよいのでオブジェクティブズが具体的に少しずつあるといいのかなというのは感じました。
 第3に、語彙のすみ分けです。指導要領では目標の語数が示されておりますが、やはり産出語彙と受容語彙を区別する指針を提示することが、教師と学習者双方の負担軽減に繋がるのではないかと思っております。
 研究では、会話の約9割、最大9割が721語の単語ファミリーでできている一方で、書き言葉に関しては94%が2,800語、頻出2,800語ファミリーでカバーされているとされていて、やはり発話できるものとリーディングやリスニングから理解できるものの語の差というのがすごくある、差が大きい。ですので、これは語彙としては理解できるだけでいいですよ、これは発話でも使ったほうがいいですよというものを少しでも参照資料として提示できると、さらに教科書などでもいいのかなと感じました。
 最後に、多読の促進です。先日、説明会資料に、予習内容はいずれの学年も新出の単語や熟語を辞書で調べる予習が多い、高2生では約22%と記載がありましたが、これは費やしている時間の割に効果がかなり限定的かなと感じております。
 研究によると、多読や多聴といった大量のインプットの繰り返しのほうが、やはり言語習得には効果的なので、30万から50万語で例えば読解速度が向上したりですとか、100万語読んだ時点で定着がかなりされていくというようなことも言われておりますので、精読や辞書で調べる時間がかなり長いというよりは、もう少し易しい多読なども取り入れていくというところも検討していくのがよいのではないかと感じました。
 以上4点、AIによる教師の支援、CEFRに基づくオブジェクティブズの明確化、そして語彙のすみ分け、多読の促進というものを、今後議論していければと考えております。ありがとうございます。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 それでは続いて、工藤委員より御発言をお願いします。
【工藤委員】  皆さん、よろしくお願いします。東京外国語大学の工藤洋路と申します。ふだんは小中高の英語教育、主に授業を見させていただいたり教員養成をしたりして、現場に関わらせていただいているというところです。ふだん、小中高の授業を見させていただく機会が非常に多いので、その授業を見た中で私が感じる今の英語教育の課題というのをお伝えしたいと思っています。
 現行の学習指導要領は、これまでに比べて現場がかなり意識しているような印象があります。特に評価の観点もそうですし、言語活動が大事だというメッセージは伝わっている印象があるかなと思います。
 今回は、言語活動に特化した話をしたいと思います。今日、最初に田井室長からの報告にもあったように、実際に言語活動を行っている割合は全体としては増えているというのは、私が見ている中でも印象としてはあるかなと思います。
 一方で、ある教育現場ではほとんど行っていない授業もあるというのも聞くこともありますが、少なくとも一部がある程度言語活動をするようになったということがあって、そこから次の課題が少し明らかになったかなと思っています。
 何でもそうなんですけど、ある概念とか用語が広まっていくと、その一部だけがフォーカスされていくという傾向が見られるようになります。言語活動も同じで、現行の学習指導要領は「言語活動を通して」という、このフレーズが何度か出てくるんです。この「通して」というのが大事なはずなんですけど、ここはちょっと無視されて、言語活動だけにフォーカスが行って、言語活動をすること自体が目的化されている印象があります。
 言語活動をするのが目的なのか、それとも言語活動を通して何か身につけることが目的なのかというのをちゃんと考えていくべきだなと思います。これは、学習指導要領でどこまで記載するかどうかというのは置いておいて、英語教育をするに当たっては大事な視点ということで捉えていただければと思います。
 現行の学習指導要領は、御存じのとおり領域別の目標には「何々できるようにする」というふうな記述があって、これは一見習得目標的なイメージとして書かれているんですけど、実際の授業では言語活動が目的化されているので、言語活動でコミュニケーションを達成しようという状況をつくる、あるいはつくろうとしていることにフォーカスが注がれているということで、習得目標寄りというよりは体験目標的になっている印象があります。
 アクティビティーを行って、実際の英語のコミュニケーションのシミュレーションを教室で行うという、これ自体は悪いことじゃ当然ないんですけど、コミュニケーションを達成したという経験を学習者に積ませようとすると、それを通してどんな英語力が身についていくかというところは見えなくなってくるというのがある。習得目標が見えなくなるということがある印象です。
 特に現行の学習指導要領だと、評価の観点で「思考・判断・表現」というのがあって、これの評価が先生たちがやや苦しんでいるところではあると思うんですけど、この評価って主にコミュニケーションが達成されたかどうかという視点で測るので、コミュニケーションができたかできないか、つまりコミュニケーションをちゃんと体験してそれができたかどうかが評価のポイントになっていて、それに対して、どんな力が身についているかというところがやや見えにくくなっているということがあるかなと思います。
 体験目標自体が悪いわけではなくて、本来は体験目標というのはコミュニケーションを達成できたという経験が得られるから、動機づけとか心理面にいい影響が与えられるはずなんだけれども、現状は、その面がどんどんよくなっているという印象はあまりないと思うんです。
 なので、言語活動を通して行うというところがちょっと無視されたことによって、言語活動が目的化されて体験目標になってしまっているという今の現状は、改善する必要があるかなと思います。
 この現状認識が仮に正しいとすると、原因はたくさんあると思うんですけど、一つ挙げるとすると、田井室長も分析されていた教科書のトピックというところの影響は大きいかなと思います。
 仮に中学生だと、基本的にはA1レベルの実力なのに、タスク自体はBレベルのものをやっているという印象があります。ここはちょっとギャップがあるので、「ちょっと上」ではなくて「かなり上」のをやっている印象なので、教室内で先生のサポート、教材のサポートで何となくできてしまうところはあるんだけれども、何とか達成させようとしているところが、結局はそれが目的化になっているということなので、この辺が少し今後考えていくべきところだなと思います。
 ただ、繰り返しになりますけれど、指導要領でどこまで記述するかというのは結構難しい問題なので、教科書に任せるのか教員に任せるのかというところは、また検討できたらいいと思います。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、鈴木委員より御発言をお願いいたします。
【鈴木委員】  本日は発言の機会をいただきありがとうございます。宮城教育大学の鈴木渉です。英語教育と第二言語習得が専門です。特に、日本の児童生徒がどのように英語を学んでいるのか、その学びを教師がどのように支援すればよいのかに関心があります。これらの観点から、今後外国語教育の方向性として私が重要だと考える点を3つ申し上げます。
 第1に、小中高等学校の連携・接続についてです。現行の学習指導要領の下に積み上げられてきた小中高の連携・接続を、より確かなものにしていくことが重要だと考えています。
 少し具体的に申し上げます。校種間で外国語の学び方、今、工藤委員もお話しになっていましたけれども、「言語活動を通して学ぶ」ですが、この外国語の学び方をより共有する。題材や話題を連続的に扱う。言語材料をスパイラルに掲示する。文字や音の基盤を系統的に育成する。小学校における「読むこと」と「書くこと」の指導を中学校の指導へ円滑につなげる。これらの点を含めて、教育課程企画特別部会の議論を踏まえながら、小中高等学校の間に橋を架けることが大事だと思っています。
 第2に、小中高等学校ごとに、より一貫した教育を行うことが大事だろうと思っています。つまり、現行の学習指導要領で大切にしてきた点を維持しつつ、教育課程企画特別部会の議論を踏まえ、各校種内でらせん階段を一段ずつ上がることが必要だと考えています。
 少し具体的に申し上げます。CAN-DOリストに基づく目標をより明確化する。話題や内容や言語材料をスパイラルに積み上げていく。小学校における「読むこと」や「書くこと」の指導をより一層充実させる。これらの点を含めて、小学校・中学校・高等学校ごとにコンパスをつくる必要があるのかなと思っています。
 第3に、急速なグローバル化・デジタル化の中で、外国語教育の意義をより明確化することが大事だろうと思っています。外国語教育を通して、児童生徒の世界観を広げる、異なる他者への理解を深める。少し抽象的な言い方かもしれませんけれども、日本社会や国際社会において、人々の間に存在する分断を和らげるような視点を、児童生徒に育むことを目指したいなと思っています。
 これらの点を踏まえながら、外国語教育の意義・意味を、ワーキングの委員の先生方だけではなく、教科調査官の先生方、外国語教育推進室の皆様、そして日本で外国語教育に関わられている多くの皆様と、みんなで共創していくことが重要だと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 続いて、関谷委員より御発言をお願いします。
【関谷委員】  東京都教育庁、関谷でございます。このたびはこのような貴重な機会をいただき感謝申し上げます。私はグローバル人材育成部というところで、小学校から高等学校までの英語教育・国際教育のことを所管しております。その経験も踏まえてお話しさせていただければと思っております。
 東京都では、高校生を海外に派遣したり、海外からの生徒を受け入れる事業をしておりまして、英語圏に限らず同世代の生徒と交流することで高校生が刺激を受けて、英語学習を超えて他者とのコミュニケーションを通して得た楽しさですとか充実感を感じる生徒が非常に多いです。
 英語を学ぶ意義は、英語を使って、言葉を使って人とつながって何かを成し遂げたり、また、自己の可能性を広げて人生を豊かにすることだと考えています。
 現行学習指導要領につきましては、私も小学校・中学校の授業を拝見させていただく中でも、今の「目的や場面・状況等に応じて」という言葉であったり、それから「お互いの考えを気持ちを伝え合う」「言語活動を通して」といったフレーズは、コミュニケーションの相手がいるということが前提となっていて、学校のほうの授業改善の視点でも浸透しているというふうに感じます。
 それを踏まえて、私のほうから3点お話ししたいんですけども、まず1点目は学習指導要領なんですけれども、教育委員会として、この目標ですとか内容を学校に分かりやすく伝えていくことが我々の仕事だというふうに考えているんですけれども、現行の学習指導要領の内容については、なかなか、メッセージはあるのですが、分かりやすく体系的に説明していくことが難しい部分があります。
 また、指導と評価がセットですので、目標を実現するに当たってはどんなことを指導すべきなのか、また、指導したことをどう評価すべきか、ほかの委員の先生からもありましたけれども、具体的な方法が分からずに悩んでいらっしゃる先生方が多いと感じておりますので、そこの部分を改善する必要があると思います。
 続いて2点目は、小中高の連携の在り方ですけれども、こちらは、やはり言語の習得には非常に時間がかかりますので、学習したことを繰り返して定着を図っていく必要があると思っています。
 そういった意味でも、小学校から高校までの連携は必須だと考えているんですけど、こちらもなかなか、ほかの校種の学習内容を理解している先生方がまだまだ少ないのかなというふうに思っています。
 また、それぞれの発達段階のお子さんたちがどのような英語力を持っていくべきなのか、英語力が必要なのかというような具体的なイメージ、先ほどの目標の具体化という話もありましたが、そういったイメージを持っている先生方が少ないんじゃないかなと思っています。
 また、中学校の先生であれば、「小学校で学習したはずなのに、何を学んできたんだろうか」という発想になりがちなんですけども、発想を変えて、「この子たちは今何ができるようになってきているのか」というような視点で、生徒の今持っている力をさらに磨きながら、その力を伸ばせるような指導をしていってほしいというふうに考えています。
 校種が上がるにつれて言語事項などを、言語事項というより言語の働きの中で、先ほど語用論という話もありましたが、その中でどう活用していくのか、今の文法をどう活用して表現していくのかということを、時間がかかることを理解した上で育成する機会を、先生のほうで意図的に計画し、指導にあたることが重要であると思います。
 また、評価においても、現在の定期テストや入学試験などは、やはり知識・技能のみを問うものになりがちなので、言語の働きとか機能の面で評価する、またはできていることを評価するといった評価の例を示すのがいいのではないかと思っています。
 最後に、英語科だけではこの外国語の目標については難しいというふうに考えています。英語はツールであって、全ての教科において言語活動の充実を図っていくということ、また、内容の高度化という話がありましたけれども、取り扱う内容についても、ぜひ教科を超えて連携を図っていけたらいいなと考えています。
 以上となります。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、髙木委員より御発言をお願いします。
【髙木委員】  ありがとうございます。神奈川県にあります聖光学院中学校高等学校で英語の教員をしております髙木俊輔と申します。このような場で発言させていただくことをありがたく思うと同時に、非常に緊張しております。現場の教員ということで、実は今日、裏で本校の体育祭でして、同僚の協力をいただきながらこの場に参加させていただいております。実際に生徒たちと触れ合う現場の視点から、皆様に貢献できるように頑張っていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 私からは2つ述べさせていただきたいと思います。1つはAIの活用についてです。実際に授業で中高生を相手に、ここ2年ほどAIを活用した英語教育の可能性を模索してまいりました。その中で感じるのは、AIが指数関数的に発達していく中で、ほかの委員の皆様の御発言にもありましたように、英語を学ぶ意義というのは、本当に現場ではかなり大きな問題になってくるのではないかなというふうに思っています。
 それと同時に、教師の役割が問い直されているんじゃないかなというふうに感じています。AIを活用した授業を行っていく上で、ティーチすることに関しては本当にAIがある程度において代替できる一方で、その中で教師は、人間の教師として何ができるのかということはやっぱり考えていくべきだと思いますし、それが少しでも織り込めるような学習指導要領にしていけたらうれしいなというふうに思っております。
 ただ、AIの力をうまく活用していくことで、人間の力だけでは解決できなかった課題を乗り越えることができるなという実感値を持っているんですけれども、AIのリスクや特性を理解した上でどう活用していくかということに関しては、単純に現場にAIを使いましょうというふうに投げたところで、なかなか定着しないものだと思っていますので、どのような活用の方法があるのかということを、グッドプラクティスを見せていこうということもありましたけれども、ぜひこの場でいろんな形で考えていければいいなというふうに思っています。
 一方で、現場で日々、子供たちと接する中では、新しいことを取り入れる際になかなかリスクを取りづらいというのも感じています。なので、そういう活用を目指したい方、あるいはそれを手段として有効に活用したい方がどういうふうに、あるいは教師だけではなくて学習者の皆さんも、どういうふうに使えば安全に活用していけるのか、安全安心に活用していけるのかということに関しては、ぜひ皆様の意見も伺いたいなというふうに思っております。
 あとはもう一つなんですけれども、評価についてです。評価について語るときに、日本では総括的な評価というのがやはり中心になっているように思っていまして、ただ、学習プロセスの中で、学習を改善するために行う形成的評価の重要性というのが、これからさらに強まっていくのではないかというふうに考えています。
 なので、学習を支援するためにどのような評価を活用できる可能性があるのかという観点も、ぜひ皆様の意見を伺いたいなというふうに思っております。ただ、一方でこういう形成的評価というのは手間もかなりかかりますので、どういう観点でテクノロジーを活用することができれば、よりよい評価につなげることができるのかなというふうなことを考えております。
 あとは、こうやって新しいことが増えることで、現場に対して負担が純増してしまうということは避けたいなというふうに思っていまして、現場の先生方が専門性を生かして学習者とよりよく向き合うことを実現するためにも、実現可能性というところが今回のポイントになっていますが、重要視していきたいなというふうに思っております。
 以上です。ありがとうございます。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、布村委員より御発言をお願いします。
【布村委員】  すみません、チャイムが鳴ってしまいました。東京国際大学の布村です。昨年度まで中高の教員をしていましたので、特に高等学校の授業の在り方について、もしくは授業でどういったことをするのかとか、何が実現可能なのかということについて、こちらで議論できればいいなというふうには思っております。よろしくお願いいたします。
 私からは3点挙げさせていただきたいんですけれども、特に発信力に関する問題が一番です。高等学校で、特に「論理・表現」の授業が、いまだに文法授業と捉えられている側面が多いんじゃないかなというふうに感じています。言語活動は増えているという結果は出てはいますけれども、いろんなところで講演をさせていただいていますと、生徒同士のペアワーク等がやっぱりやりづらい、いい学校でしか成り立たないんじゃないかとか、生徒同士で話をしていると間違ったことを覚えてしまうからよくないんじゃないかというような声が、学校の高校の先生方からよく聞かれます。
 ですけれども、生徒同士のペアワークで言語が習得できないという、恐らく研究結果はないと思っておりますし、生徒たちはやっぱり話をしたいという思いが根底にはあると思いますので、高校の先生方が本当に、堂々というんですけれども、そういった言語活動が心理的安全性の中でできればいいなというふうに思っております。
 そのためには、争点にもありましたけれども、心理的安全性が確保された空間を授業の中につくるというところ、まず、ここを先生方にしていただけるといいんじゃないかなと。そういったことを指導要領にどうやって書くかは分からないんですけれども、間違ったことを発言してもいいんだ、自分の意見には正しい・間違いはないんだという、そういったところがベースにあると、いい授業というのはできていくんじゃないかなというふうに考えています。
 2点目は評価についてです。特に高等学校で、「話すこと」「書くこと」のルーブリック評価というのがまだまだ浸透し切れていないなというふうに感じています。これは恐らく、40人もの生徒の話すことを評価するのに2時間かかってしまうだったりとか、書くことをやらせようとしても物すごく時間と労力がかかってしまうという、そこがネックになっているんじゃないかなというふうに思います。
 AI等の活用、デジタルの活用というのもありますので、例えば知識・技能は電子採点だったりとか授業内のFormsでやってしまって、定期考査はライティングで書くだけで、そこで採点をするとかというふうに、授業の時間の使い方をうまくすることで実現可能な方法なんかもあるんじゃないかなというふうに思いますので、そういった実現可能な評価の仕方等々もお話しできればいいのかなというふうに思っています。
 あと、AI活用なんですけれども、いろんな議論があると思いますけれども、生徒たちに教材、AIを与えても、それをどう活用、何のために使うのか、その後に授業で何をするのかによって、使い方というのは変わってくると思います。ですので、こちらでは授業で何をするのか、生徒同士がどうやって対話をするのか、そういったことも含めて議論させていただければなというふうに思っています。よろしくお願いいたします。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは続いて、日向端委員より御発言をお願いいたします。
【日向端委員】  小学校の教員としての立場から、4点ほどお話ししたいなと思っております。
 まず1点目ですけれども、前回の改訂で導入された小学校の「外国語活動」、そしてこの「外国語科」というものが一定の成果を上げているんだという点を前提にして、次の学習指導要領は検討していかなきゃいけないんじゃないかなと思っております。
 資料の中にもありましたけども、学習指導要領の実施状況調査について、4技能全てにおいて相当数の児童ができているという結果も示されておりまして、この要因としましては、小学校の先生方の授業改善だったり研究、それから研修というもの、そういった努力の成果なのかなと思っております。まず、こういう成果をしっかりと踏まえた上で、次に進めていきたいなというのが一つです。
 2点目です。成果を上げていると言いつつも、一方で課題もあるかなというところで、その一つが言語活動というものの充実というところに考えていました。
 子供たち自身が、自身の言葉として、英語を使える言語として獲得していくためには、やはり授業におけるコミュニケーションを行う目的・場面・状況等の設定、これは必須ではあるものの、まだまだ、小学校においてそこの理解が十分とは言えない部分もあるなというところで、今後改善していくことを期待したいなと思っています。
 3点目です。本日の資料にもありましたけども、小学校において、「読むこと」「書くこと」の指導については、今の学習指導要領で小学校で初めて導入されたということもありますけれども、先生方は指導に悩んでいる部分も多いんじゃないかなというところで、特に一文を書き写す問題の正答率で差異が見られたというところについては、やはり授業でそれまで丁寧な指導をやってきたか、あるいは学習改善を積み重ねてきたかというところが、ここでうかがえるんじゃないかなというふうに考えています。
 ですから、今後この「読むこと」「書くこと」の入門期の指導ってどうあるべきなのかという、その具体が現場に浸透していくことで、この課題は解決に向かっていくのではないかなと考えています。
 最後、4点目ですけども、皆さんおっしゃっているように、AIが普及してくる、発展してくる時代に、外国語を学ぶことの意義というものは、やはり問い直しが必要だろうなということです。
 私が着目したのは、資料の59ページにありましたけれども、日本の若者が発信力に課題というところです。こちらは英語だけに限らず全ての教科に関係するものではありますけれども、やはり日本の外国語教育においては、コミュニケーション教育というところの役割の重要性というものが期待されるんじゃないかなと、それをこの部会で確認できればなと思っております。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 それでは続いて、藤田委員より御発言をお願いいたします。
【藤田委員】  上智大学言語教育研究センターの藤田と申します。よろしくお願いいたします。既に多くの委員の先生方からいろいろな意見が出ていて、若干オーバーラップする部分もあるかなと思いますけれども、まず、今お話にあったとおり、やはり発信力の部分というのは大きな問題だろうというふうに捉えております。
 その中で、取りあえずこれまでの外国語の活動というか外国語の学習に関して、どうしても日本では「正確さ」というものへのこだわりといいますか、そこが非常に強かったように思えます、ここの部分を、「正確さ」というものから「適切さ」というものを重視していくといったような、ある程度転換が必要なのかなと考えます。
 全国学力調査でスコアの低下が問題という話も先ほどありましたけれども、そこでテストを通じて何を見ているのかという部分が恐らく関わってくることで、当然ながらCEFRなどに準拠したということになると、これは何を知っているかではなくて何ができるかという部分が、CEFRなどでは問題になっていて、見るべきとなっています。
 そういったようなところを評価の中に取り入れていく。そういった意味のパフォーマンスなんかをどんどんどんどんルーブリック化して評価することによって、質の高まりみたいなものを求めていくということが、今後求められていくのかなと思います。
 それをするためには、やはり生徒一人一人が自分自身の考えとか気持ちというのを自由に表現するということがどうしてもふだんから必要で、これも発言が先ほどありましたけど、そのための心理的安全性というものが確保されているということが不可欠になります。
 その心理的安全性というのは、間違っているとか正しいだけではなくて、何の話をしてもいいというようなものも多分含まれるのかなというふうに思うんですけれども、それが、例えばですけれど語彙制限があるために、本来自分がしたい話が、これの話題は扱われていないからできない、みたいな形になってくると、それは本末転倒になってしまうのではないでしょうか。
 そういうふうになってきたときに、例えば語彙指導に関して、さっきこれもお話があったと思うんですけれども、受容語彙についてはある程度きちんと事前に定めておくということはあると思うんですが、産出語彙に関して言うならば、すごい単純な言い方をすると、例えば天体の話をしたい子と、昆虫の話をしたい子と、料理の話をしたい子によって、何の語彙が必要かは当然変わってくるわけですから、これをあらかじめ定めてしまうみたいな形にすると、自分が言いたい話ができないとか、興味ない話をさせられるみたいな形になると、結局何も発言が出てこないみたいなことがあるので、例えば、本当に必要なものは、今はAIなんかを使えば、この分野について必要な重要単語を30個挙げてください、なんて言えば、もう3秒で出てくるみたいな状況があるわけですから、その辺のところの考え方、これは今まで縛られていた考え方と違った考え方というのも必要になってくるかなと思います。
 そういう形で、自由に自分の言いたいことが言えるという力を身につけた上で、これも先ほど指摘があったように、急に身近なところから社会的な話題にジャンプするということではなくて、自分のふだん考えていること、していることと社会とのつながりみたいなことをちょっとでもつないでいくような、中間段階みたいなところを段階的に指導していくことによって、社会的な話題にもつなげていくみたいなことが大切になります。
 ですから、そういうためにもやはり、話す目的は一体何なんだろうかというところが大切になります。要するに、この表現を使って何かを書きなさい、この文法を使って何か言いなさいと言われたところで、やはり意見というのは出てこないわけです、となってくると、英語科においても探究学習的な要素、ある種のタスクベースという言い方をしてもいいのかもしれませんけれども、目標を持って、何のために私はこの言葉を使うのであろうかというようなことというところを、やはり根本に、軸にして置いていくみたいなことが、ひょっとすると必要になるのではないでしょうか。
 そういうふうな探究活動をやっていくのであれば、それをクラス内とか、あるいは校内だけにとどめておくのはもったいない。そうなってくると、国内外の様々なところと協働していくというような形で、より意味のある形でのコミュニケーション活動というものを推進していくというようなことにつなげていくということも必要なのではないだろうかなというふうに思っています。
 そして、そういうふうなことをやるためには、よく言われるのが、知識・技能みたいなものを持っていなければ、難しい思考・判断・表現はできないみたいな言い方をされることも多いと思うんですけれども、そこもある程度逆転の発想で、言いたいことが何なのかから出発をしていって、その言いたいことを表現するために必要な語彙とか表現とは何なんだという形で補っていくというような発想というものも必要で、これこそが、逆に言えば個別最適化を英語科で実現していくというところにつながっていくことなのかなと思います。
 もちろん、そういうふうないろんなテーマについて話をするとなると、語彙的にはある程度高度なものが必要になってくるかもしれないけれども、逆に言うと、文法構造に関しては単純なものでも結構高度な話はできるというようなことも認識をしておく必要があります。だから、全て難しい言葉を使わなければ難しい話はできないということではないですということですよね。
というのが一つ発信に関するものです。
 接続に関しては、これも多くの先生がおっしゃっていました。ただ、その中で、ひょっとするとこれまでの、今回の最初の整理の中でも出てきたCAN-DOといったもの、これを校内で整理していくということは当然大切なんですけれども、同時に一つ欠けているなと思うのが、小中高である種の一貫したスケーラブルなCAN-DOというものが、ひょっとすると今、欠けているのではないかなというような気がしています。
 それを、小3・小4・小5という学年別ではなくて、あくまでスキルとしてこのレベルからこのレベルまでという形で、小学校から高校まで一貫して見ることができるものを持っていれば、少なくとも今この子はここのレベルです、であれば次にやるべきことは何です、ということが指導者のほうからも見えますし、学習者自身からしても、今はここだから次にやるべきことは何だというところの目標というのもはっきり見えてくるのかなというふうに思っています。
 それを、本来ならば多分、学習指導要領が果たすという役割なんだろうと思うんですが、とはいえ学習指導要領も校種別に分かれてつくられているという事情があるので、この辺のところを国主導でやるのか、都道府県でやるのか、その辺ところはわかりませんが、少なくとも、そういう学年とかを取っ払うということで、少なくともここまで今できているというのが見えるものが必要です。そうすると、例えば小学校で3の段階までやってきているのに、中学校でいきなり4・5をすっ飛ばして6から始めた、そうしたらそこでギャップが出るのは当然なので、少なくとも今この子はどの段階ということが見えるようにしておく、可視化しておくというためにも、こういうものが必要なんじゃないでしょうか。
 そして、そういう中で、本質的な意義の話というところもちょっと触れておきたいんですけども、やはりこれも多くの方がおっしゃっているように、既に日本語を英語に訳すみたいな、翻訳的な能力みたいなものは確実にAIに取って代わられることを前提とした上で、じゃあ教室で学ぶのは何かというと、やはり言語とか文化、あるいは考え方、思考法みたいなものが異なる人々と、国内外でどうやって共生をしていくのかという対応力で、意見の相違を埋めていくとか誤解を解くといったようなコミュニケーション力になります。だから、言語スキルというよりはコミュニケーションスキルみたいなものを、教室における言語活動を通じて身につけていくというようなものを、やはりもう少し明確化していくということが必要なのではないだろうかというふうに思っています。
 若干蛇足的なことだけ2つ言いたいんですけれども、1つは、よく小学校で外国語を導入するに当たって、英語みたいなものを見ることによって、自分の母語である日本語であるとか、日本の文化を客観視できるというようなことがよく言われていますけれども、これと同時に、EUみたいに3つも4つもというわけにはいかないかもしれませんけれども、英語以外の言語、いわゆる第二外国語みたいなものをもう少し推進していくことによって、英語という言語、あるいは英語学習そのものといったものを少し客観視してみるということなんかにも進むのかなというふうに思います。その辺のところ、当然高校レベルでは幾つかのところでは導入されていますけれども、その辺を推進してもいいのかなということがあります。もう一つ、これは一度頓挫したというところがあって、あえてここで出すのはどうかというふうに思う一方で、やはり5領域が大切ですと言いながら、そのうちの2つを占めるスピーキングというものが、入試とかその他のところでやはり十分に活用されていない、はかられていないという現実があります。
 それによって、私自身は、試験のための勉強というものが必要というふうにはあまり思う人間ではないのですが、その一方で現実的なことを考えると、そこは問われないからやらなくていいというような意識が、結局メッセージとして教わるほうにも教えるほうにも伝わってしまっているという現実があるとするならば、やはりもう一度スピーキングの力を測ることの導入を再検討する必要があるのではないでしょうか。
 これも出てきているように、AIの活用みたいなことで、多分採点その他のものというのは随分状況が何年か前とは変わってきているというようなこともありますので、そこら辺のところをもう一回模索してみるということも、少し考えてみてもいいのではないだろうかというふうに思っています。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、米野委員より御発言をお願いいたします。
【米野委員】  皆様、山形県教育局の米野と申します。地方の教育行政に携わる者として、日頃、英語教育について考えていることを自由にというお話でしたので、いろいろお話しさせていただければと思います。もともとは高校の英語の教員でございます。
 大きく3つですが、まず1つ目が、やはり英語の学習動機について、まずちょっとお話しさせていただきたいと思うのですが、日本では日常生活で英語を使う機会がなかなか限られていて、学習した英語を実践する場が少ない、そういう状況があります。学習者が英語を学ぶ目的や必要性を実感できづらいために、学習意欲が低下しやすい傾向があり、その分、自宅学習など、今は様々すばらしいアプリとかサービスがあるのですが、授業外での学習習慣形成にもやはり影響があるという状況かと思います。
 また、英語を使う経験を積みにくいものですから、学習へのモチベーションの維持や、自信を持つことや自信の向上、こういったものが難しい状況にあるのではないかと思います。特に地方ではその傾向が顕著でありまして、例えば道案内の仕方を学んだとしても、誰も英語で道を聞いてくれないという笑えないような話もあるわけです。ALTには、中学生・高校生を見たら道を聞いてくれなんていうお話をすることもあるぐらいです。指導者は、学んだ英語を実際に使ってみることができる場の設定をそれぞれ工夫をするわけなのですが、これが非常に大事になってくるというふうに考えます。
 なお、山形県教育局では今年度から、オンライン英語を産業系高校に導入したところです。先日、理食物科のクラスで、1人1台端末でそれぞれがマン・ツー・マンでオンライン英語で学ぶ様子を見てきたのですが、やはり25分間、生徒ががやがやと英語をしゃべっているんです。そして英語学習への動機が高まっている様子が見られました。
 ただ、課題としてはお金がかかるというところがあって、持続可能にするというところで課題があります。
 なお、オンライン英語の講師も、生徒1人に講師1人がつくわけなんですが、終了後に学習者から評価を受けるので、講師たちも意欲的で、非常に有効だなというふうに思いました。
 それから、学習動機に関しては、生成AIについては、いろいろ今、話が出ていますが、やはり情報検索や翻訳、文書作成などの分野で英語の壁が徐々に低くなっていて、ちょっと英語学習への動機が下がる影響が出ているのかなと。ただ、英語学習が必要ないという短絡的な発想ではなくて、やはりますます必要になってくるという状況がある、そして、それを説明できる必要があるのではないかなというふうに思います。
 それから、主に進学者が多い学校では、特に高校では英語は受験科目と認識されているという状況がまだありまして、受験のための科目、それが強い。英語学習の楽しさを実感しにくいという声もあるという状況でございます。
 2つ目になります。教師の英語運用能力と指導法の課題です。英語教員自身の英語運用能力や指導法に関する知識・経験が不十分な場合があって、従来型の授業、自分が教わったような授業を教員はしがちですので、そういった状況がまだ残っているのではないかなというふうに思います。学習者の主体的な参加や発話の機会が少ないということも、ケースによっては課題となっています。
 また、音声を重視した授業が展開はされていて、生徒は英語を繰り返し発声しているのですが、見ているとどうも頭の中で意味処理が行われていないのが明らかだったりする指導が行われていたり、そういったところが気になる場合があります。
 指導については、やはり技能統合的な指導に差があったり、CAN-DOリストによる到達目標はつくっているのですが、それの活用に非常に差があるといったところに課題があるのではないかなというふうに思います。
 また、「論理・表現」についても、高校は一クラス当たりの生徒数が多いので、そこは教師が様々な工夫をしないとディベート・ディスカッションということができないので、この辺の工夫ができる教員と、なかなか苦労するところで、差があるのではないかなというふうに考えております。
 3つ目になります。これは教員研修に関わるものになりますが、教師の英語の授業力、授業改善力の向上ということが非常に大事ではないかなというふうに考えています。
 質の高い英語教育を実現するためには教師自身の授業改善力の強化が不可欠で、授業改善というのは終わりはなくて、しかも、それぞれの教室、担当教員の力量や弱み・強みなどによって、英語学習の授業の環境が、同じ学校の中でも大きく異なってきます。教員は転勤もあるので、やはり授業改善の手法を身につけておくことは必須なのですが、果たして身につけているかどうかというのは大分差があるのではないかなと感じます。
 教師は、到達目標実現のための様々な課題を焦点化して、その課題について児童生徒の授業参加状況を観察して記録したり、テスト等の数量データだけでなくて質問紙調査とか、あるいは生徒に直接インタビューをして実態をよく把握した上で課題解決のための仮説を設定して、しばらくの間実践を行い、その後、実践を検証して必要な改善を行って、振り返りを行って自分の指導力も上げていくと。そういったことは、良識のある教員は無意識にやっているのだと思うのですが、やはり意識的にできる、そういう力を身につける必要があると考えます。
 また、これも同僚と協働して行うといったことができることが重要だと考えますし、定期的な研修の機会も利用し、そういった力を伸ばしていくことが大切と考えます。
 まとめとなりますが、生成AIの普及によって英語教育の在り方も問われているわけですが、学習者一人一人の動機、それから自信を高める取組、授業外での学習習慣や学習方法を学ぶこと、そして教師の授業改善力の向上が、授業外での学習習慣や学習方法を学ぶことが、今後ますます重要になると考えております。
 以上でございます。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 細田委員が参加されましたので、もしよろしければ、ここで細田委員から、今後特に検討を進めるべきこと、考えている事項、それから審議の進め方に対する御意見について、御発言いただいてもよろしいでしょうか。
【細田委員】  細田でございます。よろしくお願いいたします。
 そうですね、私、生成AIが英語学習のゲームチェンジャーだということを、かなり強く実感しているところでございます。このことにつきましては、既に先進的に文部科学省の事業でAIを導入しながらモデル的にチャレンジをしている幾つかの自治体の授業を様々見させていただいたり、それから、それに対して指導・助言のような形で関わらせていただいている中で、その思いはますます強くなっております。
 その際に、生成AIが、じゃあ何もかもそれで済むのかということでは全くなくて、AIをうまく授業デザインに落とし込みながら、どう授業改善をしていくかということがやはりキーであるわけです。
 そして、そのキーを握っているのは、とにもかくにも教師一人一人の授業力である、教師の関わりが大変重要であるということも、これはもう間違いないことだなというふうに思っているところでございます。
 ですから、この外国語部会のワーキングのここの議論におきましても、冒頭で髙島委員もおっしゃっていたように、AIが普通にある時代の教育課程の審議である、まさにAIが社会インフラになっている状況の中での議論であるということを踏まえながら、かつ、イロハのイ、基本のキであります教師の英語の運用能力や英語の授業デザイン力を高めていくということも、大きく議論の中核に置きながら、このワーキンググループで議論していければいいなというふうに思っているところでございます。
 もう一つ最後に、誰一人取り残さず資質・能力を育成する柔軟な教育課程の在り方という、この特別部会の議論を踏まえた検討事項のところにも大変期待をしているところでございまして、高校はもとより中学校でも、かなり基礎的な力の差の大きくなる教科・科目であるということもありますので、一人一人の子供たちが英語学習について、自分がどうありたいのか、どんなふうに将来外国語を使って生きていきたいのかという、その一人一人の思いも大変重要になってくる教科だというふうに思いますので、義務教育における調整授業時数の制度やら、高校における科目の柔軟な組替えや履修の免除を可能とする仕組みを前提とした、こういった教育課程、学習指導の工夫の在り方も、議論の中で大変重要になってくるなと実感しております。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは続いて、亘理委員に御発言をお願いします。
【亘理委員】  こういうとき、なぜ亘理という名前に生まれてしまったのかなと思うんですけど、亘理です。教育方法学が専門で、英語教員養成に関わっている立場から、現行指導要領でも200時間以上は授業を小中高で拝見してきたと思うんですけど、その立場から、私の場合はかなり各論の話で、3つほどお話ししたいと思います。
 1つ目は、特に議論したいなと思っているのは、思考・判断・表現と知識・技能の接続の問題です。これは特別部会でもヨコの関係として提示されていることなんですけど、このヨコの関係が、教えたことをすぐ思考・判断・表現でどう使うかというふうになってしまうと、臼倉委員が懸念していることになってしまう。
 例えば、誘うということ一つ取っても、いろいろな達成の仕方があって、Let’s一辺倒というのはおかしいと思うんですよね。小学校でも中学校でも高校でも「Let’s何々」というふうにしか言っていないというのはおかしくて、より高度な達成の仕方、誘う一つ取っても、その前置きをして、一緒に行くとどういうことがあるのかとか、なぜ一緒に行きたいのかとか、あるいは、一緒に行くということを直接Let’sと言わずに、「あなたと一緒に動物園に行けたりなんかしたら幸せなんだけどなあ」みたいな遠回しな言い方を選んだりする場合も、関係性によってはある。
 そうすると、その誘うという行為の前後にどういう言葉を付け加えるかというあたりに、思考・判断・表現の高度な達成や、知識・技能で自分が持っているレパートリーの発揮が関わってくるわけですけども、そこの立体的な構成みたいなところをもっと詰める必要があって、その時に、言語の働きの見直しが不可欠と思っているのが一つです。
 もう1つは、鈴木委員がおっしゃっていたように、あるいはほかの委員がおっしゃっていたように、小中高の接続の問題として、同じような言語の働きが発揮される言語活動を用意していくときに、小学校でやった経験を生かして、中学校ではそこに何を付け加えることができるか。あるいは、小学校のときにはこういう経験をしてきたんだけど、中学校のこの目的・場面・状況の場合は、自分はどんな言語資源を使う必要があるか。そういう観点で、特に小学校・中学校の先生が、高校段階ではここまでやるんですよということを見通せるようになっているといいなというふうに思います。
 つまり、高校生だったらこれぐらいの誘い方をするんだから、今、小学校ではこういう誘い方をしているんだなという、そこのところがつながったようなデザインになるといいなと思っています。
 その時に一つ懸念しているのは、小中学校で伝える宛先が専らALTになってしまっているという現状が少なからずあると思います。米野委員がおっしゃっていたような地方の実態はあるので、理解できる部分もあるんですけど、常に伝えたい相手がALTとは限らないと思うんですよね。そうすると、常に紹介するとか質問をするということになってしまって、言語の働きが狭い範囲になってしまう。あるいは、児童生徒にとって言葉を交わしたい相手というのが常にALTとも限らないので、その辺のところで、宛先の問題を少し丁寧に、言語の使い方はもっと多様にいろいろあるんだということが見えるデザインになっているといいかなというふうに思っています。
 2点目は、「論理・表現」の位置づけといいますか、「英語コミュニケーション」との関係の問題なんですけど、少なからず「論理・表現」が文法・語彙の知識・技能の指導に充てられている。つまり、言語活動というよりも学習活動ばかりをやっているという実態があると思います。
 これがどうしてそうなってしまうのかということを検討したほうがいいと思うんですけど、「英語コミュニケーション」の時間に経験したモヤモヤといいますか、その経験したことを整理したくて、つまり工藤委員がおっしゃったような、言語活動を通して学んだことを整理したくて、そういうふうに「論理・表現」が使われているのであれば、いいカリキュラム・マネジメントと言える面もあると思うんですけど、一方で、ただ「論理・表現」の時間を、語彙・文法を詰め込まないといけないんだというふうに使われているとすると、それは言語教育観自体を改めてもらわないといけない部分があるかなと。
 つまり、これも臼倉委員がおっしゃっていたことですけど、そういう言語教育観って、とにかくたくさん食べさせて体重を増やそうみたいな、相撲の力士さんとかプロレスラーが体重を増やすような学び方になっている。
 でも、今の指導要領が求めているのって、イメージで恐縮ですけど、団らんや健康管理のために、先生と児童生徒で献立を立案して、みんなで調理をしていきましょうということだと思うので、とにかくたくさん、食べられる量を超えて食べて、どれだけ歩留りするかというような言語の詰め込み型で「論理・表現」が行われているとしたら、少し見直しが必要かなというふうに思っています。
 最後に、これはもう本当に、特に最近なんですけど、「中間指導」という言葉とか「フィードバック」という言葉は外国語教育に随分浸透して、多くの教室で聞かれるようになったんですけど、これが定型化しているような部分が少し気になっています。
 中間指導って、授業の途中で先生が児童生徒に向けて行う指導なんですけど、指導案に書いてあったりするんですよね。工藤委員がおっしゃったように、言語活動を通して、つけたい力の狙いに照らして、こんな表れがあるんじゃないかなという予想は立つと思うんですけど、「こういうことを中間指導する」ってあらかじめ決めておけるものではないと思うんですよね。それって旧来的な、あらかじめ教えることを決めておいて伝えるというふうになっていて、子供自身は欲しがっていなかったりする。そういう授業を複数見てきました。
 そうすると、これは指導要領に書き過ぎたゆえにそうなのか、書かな過ぎたゆえにそうなのか、私自身も分からなくて、ここで委員の先生方と検討したいなと思っているんですが、CEFR CVにあるように、インタラクションについては特に、インタラクションとしてちゃんと立てることが必要ではないか。つまり、レセプションとプロダクション、受容と産出とは別に、やり取りというのはやり取りの特性があって、どう展開するかというのはあらかじめ決めることはできない。その部分に関して先生は、より望ましいやり取りの仕方はどうかということで、振り返ってフィードフォワードすることは可能なんだけど、あらかじめこれを教えると決めるのは何かおかしくないかという。
 そういう面でも、今、「話すこと」の下に「発表」と「やり取り」がありますけど、発表モードで教えちゃっている先生の意識を、やり取りの指導として高める必要があると考えていて、それはWritten Interactionとして、生成AIを活用した授業なんかを考える上でも重要な視点かなというふうに思っています。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 一応、皆さんから御発言いただいたかと思います。時間を守っていただいたおかげで大分時間あるので、ちょっと私のほうで、私の考えも示させていただいた後、皆さん同士で意見交換ができればいいなというふうに思っております。
 まず、私ですけれども、ほぼ皆さんが御指摘されたところ、同様に考えていますが、特に子供目線の議論ができるといいなというふうに思っています。
 よく、「英語を使って何かしたいか」と問われると、自分は英語はできないからということで消極的な回答になる。けれども、「英語ができたとしたら何をしたいか」と尋ねると、私は大学生、それから中高生にアンケート等々やりましたけれど、いろんな思いが出てくるわけです。そういう、「英語ができたらこういうことをしてみたいな」という気持ちを大事にして子供自身が学んでいけるような、そういう教育課程をつくれるといいな思っています。その意味では、学び方というのが一つキーワードになると思います。
 それから、そこにきっと恐らく多様なお子さんたちがいます。特別な支援を必要とする子、それから日本語の支援を必要とする子等々ですね。それから高等学校でも、いろいろな目的によって、普通科だけではなくて専門高等学校があります。こういうそれぞれのニーズというものを考えたり、あとは学びの多様化学校とか、そういうところを踏まえたような外国語教育の在り方というところを考えていけたらいいなというふうに思っております。
 もう一つは教師のところです。論点整理の中でも「余白」という言葉がありましたけれども、見せるべきところは見せつつも、先生たちがやはり創意工夫していく、やる気になっていくような、一緒にこれに向かって頑張っていこうと思えるような、何かそういうようなCSになっていくと思っています。
 ちょっと具体的になりますけれど、3点大事な点があるとい私としては思っています。
 まず1つですけども、育成するべき資質・能力や見方・考え方を整理・検討していけるとよいと思っています。前回改訂では、学力の3要素を受けて、どの教科等でも資質・能力を3つの柱から整理をしたわけです。これは、実は外国語教育においては、我が国独自のコミュニケーション能力観というものが導入されたという言い方もできるかというふうに思います。一方で、この3つの柱がどういうものなのかという概念整理というものが、前回改訂のときに十分なされていたかというと、そうではなかったのではないかという課題意識を持っています。今回、論点整理で、先ほど亘理委員からもありましたけれども横の関係、それから縦の構造化ですね、中核的な概念の理解と複雑な課題の解決の、横と縦の構造化ということが大事になってくる。これは、今、学校で取り組んでいただいている学年ごとの目標の設定、CAN-DOリストの形式の目標のような形で、どういう順番で、どういうステップで目標を達成していくのかというようなところの知見からも参考になるところがたくさんあるのだと思います。そういうものを加味しながら、縦と横の構造化を図るというところを議論できればいいかと思っています。
 また、深い学びというのが大事であるということは認識しているんですけれども、外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方というものが深く理解されているかというと、そうではない。つまり、外国語教育で大事にしたい、コアの教科としての特徴みたいなところは、結構それぞれの先生方が千差万別というか、いろんな方がこういうところが大事というふうに思っていると。そういうところで、ある意味、ここは教科としての特質の見方・考え方があるのだということを分かりやすくする議論できるとよいと思います。この2つに関しては、子供たちもそれを理解できるような形になるといいなと思います。つまり、子供たちがつけたい力を自分でしっかり理解して、自分で学んでいけるというようなところにも繋がるといいなと思っています。
 第2は、冒頭でも述べたのですが、今の教育課程、前回改訂で大分変わりました。ですので、それまでの知見とそれ以降の知見というのはちょっと違うかなと思います。まず、子供たちが指導をされている時間であるとか、目標というものが大分変わってきています。ですので、この前回改訂において改編された教育課程に基づく児童生徒の学びの実態をしっかり捉えて構造化を図っていくという、そういう議論ができるといいなと思っております。
 もちろん、調査の結果ということもあるかもしれませんし、内田委員からもあったように、もうちょっとコーパス化というか、もうちょっと細かな可視化に基づくもの、それから先生たちの指導の実体験みたいなところが、子供の実態を表していくのだと思うんですけれども、そういうものを踏まえた上で、例えば児童生徒の学力からは難し過ぎてはいないかとか、あるいは、学びの過程で本当は必要な段階が幾つもあるのに、それを飛ばしてしまっていないか。逆に、もっと力を引き上げられるところを、引き上げられていないところがあるのではないかといった観点で、指導要領の構造化ということを考えていけるといいなと思っています。
 最後、学び方、委員の皆さんからもこの点については御指摘がありましたけれども、「主体的に学んで、自らの人生をかじ取りする力」について、論点整理で言及がありましたけれども、ある調査で、高校3年生の卒業時に、「英語を使う力を高める力が分からない」という項目に「分からない」と回答した高校生が6割いたというところです。つまり、英語は教えるんだけれど、学び方についてを教えてこなかったわけです。
 これは教員も、学びの専門家として、どういう学び方がよいのかということをあまり意識してこなかった現実もあるのかなというふうに思います。
 これは皆さんが指摘されているように、認知科学であるとか言語習得の考え方であるとか、あるいはそのほかの探究のプロセスとか、様々な知見を取り寄せながら、学び方、それから言語活動を通して言語能力を高めていくやり方、それから、聞き方・読み方・話し方・書き方、こういうものをどのような言語指導をしたら力がついていくのかということを検討できるといいなと思っています。
 以上、私は3点、大事だなと思うことを述べさせていただきました。
 それでは、先ほど江原委員から質問という形ではなかったんですけれども、評価の検討について、どういうタイミングで検討していくのかということに対する御意見があったと思うのですが、それについて、もし御回答できれば、事務局のほうからお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
【田井外国語教育推進室長】  ありがとうございます。江原先生から御意見いただきましたように、ある程度指導要領の改訂の議論の中で、評価についても議論していくことが必要ではないかというような問題意識から、今回、企画特別部会のほうでも一定、評価に関する議論をしておりますし、それを受けた各ワーキンググループの中でも、評価の在り方についても議題とさせていただいているところでございます。
 本日いただいた御意見も踏まえまして、今後の審議事項などを整理した上で、各回の議題なども設定していきたいと思いますので、評価について御議論させていただく回も、今回のワーキンググループの中で設定していきたいと思っております。
 すみません、ちょっと具体的な時期等はこれから整理をさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 それでは、若干時間があるところですけれども、御発言の後に、皆さんの御意見を伺ってこんなことを考えたということで、追加で発言されたい方がいらっしゃったら、受け付けたいと思います。
 また、皆さんの発言の中に、外国語教育の意義について言及されている委員が多かったかなと思います。冒頭の髙島委員からは、民主主義を担う子供たちのための、多様な人と協働しながらやり取りをしていく、コミュニケーションを取っていく、そういうような力の観点からの学校教育での外国語教育の在り方。そのほか、内・外の両方のグローバル化というものを受けたときの、社会とのつながりを持ったりすることの大切さからの外国語教育の在り方。それから、いわゆる英語のスキルということではなくて、もうちょっと発信力ということで発言していく、考えていく、自分の考えをまとめていく、それからコミュニケーション能力としての重要性というようなこともありました。
 この本質的な外国語教育の意義について、もし皆さんのところで、伺っていて御発言されたい委員があったらお願いしたいと思います。
 もう1点、最初にトピックだけ言ってしまいますけれども、生成AIの話はたくさんの方から御指摘を受けました。細田委員からはゲームチェンジャーとしての位置づけ、それから具体的に授業でのデザインの話、活用の仕方という話もあったかと思うんですけれども、バトラー委員からは、5年後10年後のAIの状況がどうなっているかと。そういう長期的な目で見たときに、この生成AIの中での外国語教育の在り方というものを考えていかなきゃいけないという御意見があったかと思うんですけれども、そういう、ちょっと大きな視点でのAIというところで、もし御意見があればお伺いできればいいかなと思っています。
 今日は第1回ですが、あまり細かくなり過ぎてもいけないかなと思いますので、大きい外国語教育の意義、それからAIというところで御意見いただければと思います。もちろんそれにかかわらず、もし何か考えられて、御発言があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 亘理委員、お願いします。
【亘理委員】  私のこのメンバーの中での役回りとしては、大きい話はあんまりしないかなと思っていたんですけど、一応今日はそういう場ということで、AIに関して気になっているのは、誰がその費用を負担するかということです。
 高校の場合は、BYODで端末を買ったのと併せて、ほかの学習教材、辞書とかそういったものとのすみ分けで、ある程度の負担は許容される部分があると思うんですけど、義務教育の範囲で、この外国語学習のアプリについては必ず有償のものが多くなってくる中で、ずっと負担を強いられるということについては、地域によっての格差が出ないようにとか、その負担ありきで我々が学習指導要領をデザインすることは難しいのではないかというふうに考えると、本当に5年10年先を見据えた話をするのであれば、検定教科書と同じぐらいのレベルで、公費で生成AIを使用するある程度の部分を保障してあげるみたいなところまで必要なんじゃないかなと、思っています。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 今の亘理委員の御意見を受けて、あるいは関連して、いかがでしょうか。
 工藤委員、お願いします。
【工藤委員】  AIについては、もちろん英語教育の中でどうするかということと、費用面を考えたときに、汎用性のあるもので費用がかかるものであれば、他教科との兼ね合いもあるので、英語だけで購入ではなくて、汎用性のあるものはもしかしたら全教科で考えていくというアプローチには当然ならなきゃいけないと思うんですけど、生成AIを考えるときに、これは内田委員のほうが詳しいとは当然思うんですけれど、ChatGPTのような、自分で自らプロンプトを入れて動かすような汎用性のあるタイプと、あと、もうAIが組み込まれているアプリというのがありますよね、英語学習に特化する。
 それは両方ともAIなんですけれど、多分全然役割が違うんだと思うので、AIと言ったときにどっちタイプのことを指しているのかというのは必ず議論しなきゃいけなくて、自らでプロンプトを入れ込んでいくタイプは、学習力が高ければ、自分で必要な出力をうまく出していける、チューニングしていけるということはあると思うけれども、それがなかなか難しいので、アプリみたいなのは、例えば音声認識にたけたアプリだと、発音チェックに限定したAIが搭載されているアプリだけれども、学習者は別にプロンプトを入力する必要はないというタイプもあると思うので、ただ、自分でチューニングできないから、本当にそれがその学習者にとって適したアプリかどうかというのは、使う側も検討していかなきゃいけないので、繰り返しになりますけれど、AIと言った場合にどっちタイプのことを指しているのかは、常に考えていかなきゃいけないのかなと思っています。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございます。
【亘理委員】  私が先ほど言ったのも、後者のタイプのイメージです。現場に今入っているAIだと、英語学習のために特化した何らかのアプリが多いと思うので、その場合の、例えばChatGPTの5なんかだと、音声モードにすれば英会話の練習相手としては本当に不足ないんですけれど、じゃあその英語を児童生徒が聞き取れるかというと難しいので、そこのところをチューニングしたようなアプリが様々な形で企業から出ているわけですけれど、それを使うためにはある程度の負担が必要で、それを受益者負担というふうにして押しつけるわけにはいかないだろうなということです。
 でも、工藤委員がおっしゃったとおり、その点の議論は必要だと思います。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 関連して、いかがでしょうか。
 細田委員、お願いします。
【細田委員】  細田でございます。先ほど私自身が、まさにAIが英語学習のゲームチェンジャーだというようなお話をして、実際、文部科学省が今、事業でチャレンジしている英語×AIの実証事業なども見させていただいたりとかしている中で、そこで使っているのは、今のお話の後者の、AIが組み込まれているようなアプリケーションなわけです。
 さすがに非常にうまくできているアプリケーションでありますので、それを使いながら、子供たちの言語活動の発話量が、1時間でもびっくりするぐらい、2倍3倍になるという実態を見ますと、変な言い方ですが、こういったChatGPTのようなものを、高度なプロンプトを使いながら、無償の生成AIをうまく授業の中に組み込んでいく、そういうITのリテラシー、AIのリテラシーが高い先生じゃなくても、後者のAIが組み込まれているようなアプリケーションを使うと、相当子供たちにインパクトのある授業ができるという実態を見ていますと、やはりAIが組み込まれているような非常に有用なアプリケーションが、いろいろな、全部の学校で使えるようになると、本当に日本の英語教育がまさにゲームチェンジするなというのは実感しているんですけれども、おっしゃるとおり、そうなりますと誰が費用を負担するのかというあたりのところは大変大きな課題になってきます。
 ここで、この外国語ワーキンググループで、そこまで踏まえて議論をする必要に迫られるのかどうかというあたりのところも整理が必要になってくるというふうに思います。
 ですから、ちょっと、ここで発言するべきではないかもしれませんけど、私は大きな自治体の教育長をやってきた経験からも、自治体がまたそういったところについても一つ踏み込んだ力を発揮するということも今後求められると思いますが、これも含めて、このワーキンググループで議論することではないかもしれません。
 ですから、その辺のところも文部科学省の皆さん方で整理をしていただきながら、このワーキンググループでどこをどう議論していく必要があるのかということ。でも、冒頭で申しましたように、確かにAIと英語学習というのは、これ以上親和性がないぐらいのものだなというのを近頃ますます実感しておりますので、その辺のところも勘案しながら、ここで何を議論するかということも整理していく必要があるということにとどめさせていただきたいと思います。
 以上です。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 具体的な生成AIの活用に関して、それから、そのほか予算的なところや切り分けに関して御意見があったら、事務局のほうからお願いします。恐らくここのワーキンググループでは、外国語教育の学び方、指導の在り方において、もし生成AIを活用するのであればこういうような活用の仕方が目的を果たすのに適しているというような、そういうような在り方の議論になってくるのかな思うんですけれども、事務局のほうで、もし説明があればお願いします。
【田井外国語教育推進室長】  どうもありがとうございます。学習指導要領や解説をどのようにしていくかという観点からですと、先ほど酒井主査のほうでおっしゃられたような、生成AIをどのように英語教育に活用していくか、どういった活用が効果的かというようなところを中心に御議論をいただければというふうに思います。
 併せて、その他の環境整備に関する課題といったところも、今回、論点の中に含めさせていただいているところもありますので、それに関連するいろいろな推進方策といったようなところも、実際にAIを議論する回の中で、こちらのほうでもどこまで御議論いただくかというところを整理しまして御検討いただきたいと思っておりますが、まずはやはり前者のところが、今回議論の中心になってくるのかなというふうには考えております。
 以上でございます。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 今、生成AIに関して御意見がありましたけれども、そのほかの点でも構いません、御意見等ありましたら、ぜひ共有いただければと思います。発言の際には挙手ボタンを押していただけるとありがたいです。いかがでしょうか。
 よろしいですか。今日のところは、御意見、皆さん発言したというような形でしょうか。
 バトラー委員、お願いします。
【バトラー委員】  すみません、今日新しいコンピューターになったので、ちょっと使い方が分からなくなってしまって挙手ができなかったんですけれども。ちょっと、AIに関して一言なんですが、私が感じている限りにおいて、AIの技術があんまり早く進歩しているので、何か現場のほうがその進歩について右往左往してしまっているという、そういうのが、日本だけじゃなくて恐らく私が見ているアメリカなんかでもそうなんですけれど、教育界のほうが振り回されてしまっている。こんなこともできますよ、あんなこともできますよ、えっどうしようどうしよう、先生はAIリテラシーをもっともっと身につけてください、えっそんな、という、何か後手後手に回ってしまっているというのが現状ではないかと思います。この状態が、これからもどんどん加速化していくのではないかというふうに思います。
 私が5年後10年後と先ほど申し上げたのは、もっとすごく根本的に、人間ではないAIを、例えばカンバセーションパートナーとしてどういうふうに見ていくのかとか、そういったかなり根本的な話というのを、今ここでしておいたほうがいいのかなと。それによって、これから教員研修とかをしていくに当たって、もう最低、絶対にここは押さえておきたいみたいなコアの部分というのを、後手後手に回らない形で考えていく必要があるのではないか。
 例えば、今アメリカでとても議論になっているのは、AIというのは人間じゃないから丁寧な言葉を使わなくていいというふうに考えている人たちがいるわけなんですよね。例えばポライトネスみたいな、先ほどプラグマティクスの話が出ましたけれども、そういう丁寧な言葉をAIに使うのはおかしいではないかと。人間じゃないんだからそういう言葉を使うのはおかしいだろうという、そういうグループもいたりして、その一方で、やはり幼い子供たちを持っている保護者の方なんかは、いやいやAIに対してそんな乱暴な言葉を使うのは問題だと言って、すごくかんかんな、もうかんかんがくがくの議論になったりしているわけです。
 そういったような、すごく根本的に、AIをどうやって見ていくのか。何か一つの異文化コミュニケーションの相手として見るのか、それとも、例えば外国語のモデルスピーカーみたいな形で見るのか、モデルライターみたいな形で見るのか、どうなのかということですよね。
 やっぱりAIの今までの形成の形を見てみると、例えば一つ懸念材料としては、それこそ平準化したようなしゃべり方、平準化したような書き方というのに収束してしまう可能性もあるのではないか。そういったような重要な、根本的な話というのを、今の段階で一度どこかでしておく必要があるのではないかというふうに、私は思っています。
【酒井主査】  ありがとうございました。
 問題意識の明確化をありがとうございました。確かに実際、小学校の状況とかを伺っていても、小学生は相手意識を大事にしてやり取りをする、質問したい気持ちがあるというところですけども、これがいわゆる生成AIとの会話となったときに、この知りたい気持ち、あるいは尋ねたい気持ちというところをなかなか強めることができないという話も伺ったりしています。その意味では、生成AIをどう見ていくかということというのはものすごい大きい、これから付き合っていくということにおいてとても大きなポイントになるかなと思いながら伺わせていただきました。ありがとうございます。
 恐らく時間が大分来てしまったので、委員の皆さんには、今の生成AIというものの在り方、あるいは今後の展開もちょっと意識した上で、また次回からのミーティングの議論ができればいいなと思っていますので、よろしくお願いします。
 それでは、時間が来ましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。
 最後に、次回以降の予定について、事務局より御連絡をお願いします。
【田井外国語教育推進室長】  次回は10月30日、木曜日、18時から20時を予定しております。遅い時間で大変恐縮でございます。正式には後日御連絡をさせていただきます。
 以上でございます。
【酒井主査】  ありがとうございます。
 すみません、若干時間が早いですけれども、本日は、以上で外国語ワーキンググループの第1回を閉会といたします。皆さん、お疲れさまでした。ありがとうございます。
 
―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課外国語教育推進室企画調整係

電話番号:03-5253-4111(代表)

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