令和7年10月9日(木曜日)16時00分~18時00分
WEB会議
【堀江特別支援教育課課長補佐】 定刻となりましたので、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育ワーキンググループを開催いたします。
本日は、大変御多忙の中、御参加いただき、誠にありがとうございます。
開会に当たり、今村文部科学省大臣官房文部科学戦略官より御挨拶申し上げます。
【今村文部科学戦略官】 皆様、こんにちは。文部科学戦略官の今村でございます。
本日は、特別支援教育ワーキンググループ第1回の開会に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
委員の皆様におかれましては、御多忙の中、本ワーキンググループの委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
先日、9月25日に教育課程企画特別部会で論点整理を取りまとめいただきました。この論点整理におきましては、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方として、3つの方向性が提起されております。1つに主体的・対話的で深い学びの実装、2つに多様性の包摂、そして、3つ目に実現可能性の確保でございます。
今後、各ワーキンググループにおきまして、この3つの方向性の下で、それぞれの分野の学習指導要領、次期の学習指導要領について具体的に御検討いただくという段階になっているということでございます。
さて、障害のある子供たちを含む多様な子供たちを包摂する教育課程の実現に向けましては、本ワーキンググループ、そして、御参加の先生方の御知見というものが大変重要な役割を担うというふうに考えているところでございます。
障害のある子供たちは、様々なところで学習をしております。すなわち通常の学級、通級による指導、特別支援学級、そして特別支援学校などといったところですけれども、こういったところ、それらの連続性のある多様な学びの場、その整備充実を進めまして、いずれの場におきましても、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に学ぶという、そういうインクルーシブ教育システムの確立に向けまして、障害のある子供たちに対する教育課程や学習指導の充実について、このワーキンググループにおきまして、活発な御議論をお願いしたいというふうに考えております。
委員の皆様におかれましては、ぜひそれぞれの御知見、そして御経験を踏まえて、様々な観点から率直で忌憚のない御意見を頂戴できますと大変幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【堀江特別支援教育課課長補佐】 議事に先立ちまして、本ワーキンググループの主査及び主査代理について御報告いたします。
資料1の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本ワーキンググループは、教育課程部会の決定により設置されております。主査及び主査代理につきましては、奈須教育課程部会長より、清原慶子委員を主査に、奥住秀之委員を主査代理にそれぞれ指名いただいておりますので、御報告申し上げます。
清原委員におかれましては、東京都三鷹市長を4期16年務められたほか、内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会、文部科学省が平成22年に設置しました中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会の委員なども務められ、特別支援教育や障害のある方への支援に御尽力されてきていらっしゃいます。また、現在は、中央教育審議会生涯学習分科会長も務められています。
奥住委員におかれましては、文部科学省が令和4年に設置しました有識者会議、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方に関する検討会議におきまして、副座長を務めていただきました。報告の取りまとめに御尽力いただきました。また、このたび教育課程部会の下に設置された総則・評価特別部会にも御参画いただくこととなっております。
以上、事務局より御報告申し上げます。
なお、本ワーキンググループの委員の皆様の御紹介につきましては、資料2の委員名簿をもって代えさせていただきます。
それでは、議事に入ります前に、清原主査、奥住主査代理から一言御挨拶をお願いいたします。
【清原主査】 ありがとうございます。皆様、こんにちは。このたび特別支援教育ワーキンググループの主査を拝命しました、杏林大学客員教授、前東京都三鷹市長の清原慶子です。
この役割をいただきまして、身の引き締まる思いでございます。障害のある子供たちの視点に立った望ましい教育課程の編成を目指して、ワーキンググループの皆様におかれましては、先ほど今村戦略官もおっしゃいましたけれども、何よりも多様なバックグラウンドを持たれていらっしゃる、その御知見と、そして専門性に基づき、活発に意見交換をしていただければと思います。
そこで貴重なお時間を割いて参加していただいている委員の皆様が、活発で建設的な意見交換ができますように、奥住主査代理、そして事務局の皆様と連携をいたしまして、環境整備に尽くしたいと思います。どうぞ皆様、前向きで、そして闊達な意見交換に御協力いただきますようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。以上です。ありがとうございます。
【奥住主査代理】 東京学芸大学の奥住秀之と申します。専門は、発達障害教育、知的障害教育で、主にシステムや制度に関する教育や研究を行っています。
このたび本ワーキンググループの主査代理という重要な役割を頂戴することになりまして、大変身の引き締まる思いでございます。
現行の学習指導要領では、各教科の連続性、自立活動の充実、個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成と活用、交流及び共同学習の充実など、インクルーシブ教育システムの実現に向けて様々な工夫がなされていると思っております。次期学習指導要領においても、こうしたことをさらに充実、発展させて、より実効性のあるものにしていくことが必要だろうと思っております。
微力ではございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【堀江特別支援教育課課長補佐】 ありがとうございました。
それでは、本ワーキンググループの進行は、これより清原主査にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【清原主査】 ありがとうございます。
それでは、ただいまより議事に入ります。本日は、進行資料としてお配りしております流れに基づきまして、議事を進めさせていただきます。委員の皆様におかれましては、適宜御参照いただきますようにお願いいたします。
なお、本ワーキンググループの審議等につきましては、資料1の教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただきます。それとともに、第6条に基づきまして、議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱います。
それでは、まず最初に、事務局より会議についての留意事項を御説明していただきます。堀江補佐、お願いいたします。
【堀江特別支援教育課課長補佐】 本ワーキンググループは、Zoomによるウェブ会議方式で開催しております。御発言の際は挙手ボタンを押していただき、ミュートを解除してから御発言をお願いいたします。また、発言が終わりましたら、再度ミュートにしていただくようお願いいたします。
事務局からの説明は以上になります。
【清原主査】 ありがとうございます。ただいまの留意事項につきまして、皆様御配慮いただきまして、積極的に御発言をいただきますようにお願いいたします。
それでは、早速議題の(1)に入ります。議題(1)特別支援教育ワーキンググループにおける主な検討事項についてです。
まずは、令和6年12月の中央教育審議会の諮問や、諮問を受けての教育課程企画特別部会におけるこれまでの議論の要旨、さらには特別支援教育に関する現状と課題を踏まえての本ワーキンググループにおける主な検討事項などについて、事務局の酒井企画官より、資料3から7を参照して説明をお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。
【酒井特別支援教育企画官】 失礼いたします。事務局、特別支援教育課企画官の酒井でございます。
まず、資料3を御参照ください。昨年12月に文部科学大臣より中央教育審議会に諮問が行われ、この間、教育課程企画特別部会を中心に検討が行われてまいりました。去る9月25日に論点整理が取りまとまってございます。その中で、特別支援教育に関する論点整理につきまして、簡単ではございますが、まず、御報告を申し上げます。
特別支援教育におきましては、今後の方向性といたしまして、資料の3ページになりますけれども、1ポツでございます。通常の学級における合理的配慮の提供の充実といったようなところ、障害のある子供たちに対して過重な負担がない範囲での合理的配慮の提供を促す観点から、その考え方などを明らかにする方向で検討すべきというところ。
2点目は、通常の学級に在籍する障害のある子供たちが通級による指導を利用する場合の特例的な取扱いといたしまして、通級による指導において、自立活動の指導に加えて、障害の状態等を踏まえ特に必要がある場合には、各教科の指導を行うことを可能とすることを検討すべきといったことや、通級による指導を含め、教育課程全体を通じて児童生徒の障害の状態を考慮した教育課程の編成を行い、例えば、各教科の目標・内容の一部について、障害の状態等を考慮したものに替えることや取り扱わないことなどについて検討すべき。
さらには、障害による困難の改善・克服を目的とする指導の充実を図る観点から、通級による指導において自立活動を取り入れることを明確にすべき。
続いて、4ページでございます。特別支援学級における特別の教育課程の質の確保といたしまして、自閉症・情緒障害などの障害種ごとの配慮事項を示すことや、特別支援学級の教育活動全体を通じて指導を実施することを明示する方向で検討すべき。
さらには、4ポツ、特別支援学校の教育課程の充実として、自立活動について、学校の教育活動全体の取組となるよう見直しを図る方向で検討すべきといったことや、知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科においては、知的障害の特性や発達の段階等を踏まえた構造化を検討すべきといったようなことについておまとめをいただいているところでございます。
続きまして、資料の5を御参照いただければと存じます。この教育課程特別部会の論点整理の取りまとめ、検討に当たっては、こども基本法の趣旨も踏まえ、これからの社会を担う子供たちの思いや願いを学習指導要領の検討に生かしていく観点から、こども家庭庁の「こども若者★いけんぷらす」の枠組みを活用し、今後の学校での学びの在り方について子供の意見聴取の実施をしてまいりました。
障害のあるお子さんにつきましても、特別支援学校、特別支援学級に在籍するお子様40名ほどの児童生徒から意見を、直接私ども事務局のほうが出向いて聴取をしてきたというところでございます。
その中では、資料3ページをお願いできればと存じます。将来の自分についてということでございます。例えば、1つ目のポツであります。「大学に進学して専門的なことを学びたい。心理学に興味がある。そのために、高校では基礎的な勉強をしていきたい」、これは視覚障害をお持ちのお子さんの御意見でございます。
また、3つ目のポツであります。「数学が好きなので、将来教えられたらと思っている。そのためには、コミュニケーション能力を身につけたいと思っている」、こちらも視覚障害のお子さんの御意見でございます。
さらには、6個目のポツ、「自分は海外で活動できる人になりたいと思う。そのために、聾の世界のコミュニケーションが広がるといいなと思う。国際手話を身につけられたらいいなと思う。小さな頃から国際手話を練習して、身につけられる環境が広がっていくといいな」、これは聴覚障害のお子さんの御意見でございます。
さらには、1つ飛ばして、「壮大かもしれないが、障害者を含むあらゆる人が差別を受けずに自分らしく生きることができる社会が欲しい。そのためには、いろいろな人から同意を得る必要があるので、コミュニケーション能力や語学力を身につけたいと思う」、さらには、次のポツですが、「いろいろなことが便利になって、障害者でも誰でも生きやすい社会になったらと思う。そのために、AIなどの新しい技術を身につけたいと思う」、共に肢体不自由のお子さんからの御意見でございます。
さらには、次のページ、4ページを御覧ください。教科の授業についての御意見であります。1つ目のポツです。「先生は親切に教えてくれているけれども、自分が通っている学校のテスト問題は、視覚障害者のための問題だという印象を受ける。自分の兄弟やほかの学校の問題を解いてみると、見たことがない問題がある。もっといろいろな問題を解く機会があるとよい」とか、次のポツです。「自分の意見をしっかり伝えられる授業があれば、社会に出てもコミュニケーション能力が高い人として認められると思う」、これは視覚障害のお子さんの御意見でございます。
3つ飛ばしまして、6個目のポツです。「手話にまだ慣れていない先生がいる。手話を読み取ってもらえないと勉強に対するモチベーションも下がってくるので、もっと手話を分かってくれる先生がいたらいいなと思う」であったり、次のポツです。「今の授業に不満があるわけではないが、学校の中で授業を受けるだけじゃなくて、外に行くような授業も少し増えるといいなと思う」、これは聴覚障害のお子さんの御意見でございます。
1つ飛ばしまして、ポツでございますが、「プログラミング。ゲームのコンテンツの基本となるプログラミングを体験できるのはわくわくする」といった御意見であったり、1つ飛ばしまして、「特に理科などでは面白い実験が増えてほしい。教科書を読むだけではなくて、実際に手を動かしたほうが分かりやすいと思う」、これは知的障害のお子さんの御意見でございます。
次のポツ、「情報を使いこなせるようになるためには、中学で必修科目としてメディアリテラシーなどを学べるようになるとよいと思う。現代社会は情報がたくさんあるため、デマ情報に惑わされないためにもそういう力を身につけたほうがよいと思う」といった御意見や、次のポツ、「ディベートの授業がよいと思う。最近では様々な学校が導入し始めていると聞いた。他の人の意見を聞いたり、少数派や自分と違う立場の意見を知ったりすることで、大人になってからも「こういう人がいたな」と思うことで、コミュニケーションがうまくできると思う」、これは肢体不自由のお子さんの御意見でございます。
一番下のポツです。「英語の授業のときに、みんなの前で発表するのが嫌だと感じる。違う部屋から発表できるようにしてほしい」、これは病弱のお子さんの御意見でございます。
こういった御意見を様々頂戴しているところでございます。
すみません。あと、6ページを御覧いただければと存じます。障害のない児童生徒とともに学ぶ機会についての御意見というのも、お子様から、児童生徒からいただいております。
1つ目のポツです。「自己紹介で自分の見え方を言う習慣をつけたり、お互いを理解する心持ちを大切にしたりすると、健常者と触れ合うときに伝えるのが上手になり、健常者からの質問に答えられるようになると思う。授業というより、会って話したほうが早いので、健常者との交流会を開いてもらいたい」とか、次のポツです。「健常者が通っている学校と能動的に関わって、みんなで一つのことに取り組むような授業があれば、コミュニケーションを通じて自分の障害のことも理解してもらえる社会につながっていくと思う」、これは視覚障害のお子さんの御意見です。
5つ目のポツ、一番下ですが、「今は聴者と話す機会がないので、聴者と話してみたいと思う。自分がどれだけ話せるか知りたい」、これは聴覚障害のお子さんの御意見です。
最後、自立活動に関する御意見です。1つ目のポツ、「基礎的な生活能力を高めないと、社会に出ることができない。学校で自立活動の授業があり、歩行や調理などの力を養ってもらっている。もう少し学べると、独り暮らしで苦労しないと思う」、視覚障害のお子さんの御意見です。
3つ目のポツ、「国際手話を身につけたい。実際に外国の人に会う機会が授業で増えるといいなと思う」、聴覚障害のお子さんの御意見です。
最後、「駅員さんに連絡して一人で電車に乗れるようになるための授業がよいと思う。そうすれば、両親の負担が減らせる」、肢体不自由のお子さんの御意見でございます。
以上、各障害種の特別支援学校や特別支援学級にお伺いをいたしまして、子供たちからの御意見ということで伺ってまいりました。
資料6をお願いできればと存じます。教育課程企画特別部会の論点整理や、こういった児童生徒の御意見等も踏まえまして、本ワーキンググループに関します、特別支援教育に関する現状・課題と検討事項について御説明をさせていただければと存じます。
資料の1ページをお願いできればと思います。まず、近年の特別支援教育に関する動向について、簡単ではございますが、御説明をさせていただきます。平成19年4月から、従来の障害の程度等に応じ特別な場で指導を行う特殊教育から、一人一人の教育的ニーズに応じた支援を行う特別支援教育の本格的な実施が行われているところでございます。この中では、小・中学校においてのLDやADHD等の子供への支援を含めた特別支援教育の推進が行われてきているというところです。
平成25年9月には就学制度が改正されまして、本人や保護者の意向を可能な限り尊重した総合的判断での就学決定の仕組みに変わったところでございます。
平成29年、31年には、それぞれ特別支援学校の幼稚部、小学部・中学部、高等部の学習指導要領が告示をされた。その間、平成30年4月からは、高等学校における通級による指導の制度化が行われたところです。また、8月には、個別の教育支援計画の作成に関する規定が、学校教育法の施行規則の中でも位置づけてまいりました。
令和3年には、医療的ケア看護職員や特別支援教育支援員の法令上の位置づけが行われるとともに、9月には、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が施行され、学校設置者等に医療的ケア児やその家族に関する支援が求められることになったところでございます。
さらには、令和6年4月からは障害者差別解消法が施行されまして、従前から公立学校については対象となっておりましたが、私立学校を含め、全ての学校において合理的配慮の提供が義務化をされたというところでございます。
次のページ、2ページ目をお願いできればと存じます。障害のあるお子さんの学びの場と教育課程という資料になります。そういった中で、障害のあるお子さんは、通常の学級においても、特別支援学級においても、特別支援学校においても、在籍するお子さんの数は増えてきているという状況でございます。
その中で、それぞれの学びの場における教育課程でございますが、1番目に、特別支援学校においては、特別支援学校学習指導要領に基づき、幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育課程を編成しております。その中で、特徴的な内容といたしましては、障害による学習上、生活上の困難を主体的に改善・克服するための自立活動を実施することや、障害の状態により特に必要な場合や重複障害の児童生徒には、弾力的な教育課程の編成が可能であること、さらには、知的障害者である児童生徒には、知的障害の特性を踏まえた各教科による教育課程を編成することが、その特徴的な内容となってございます。
真ん中、特別支援学級についてでございます。特別支援学級のお子さんは、小学校、中学校の学習指導要領に基づいて実施をいたしますが、総則の中で特別な教育課程の編成に関して規定がございます。障害による学習上または生活の困難を克服し自立を図るため、特別支援学校学習指導要領に示す自立活動を実施すること。その上で、障害の程度や学級の実態等を考慮の上、各教科の目標・内容を下学年の目標・内容に替えたり、知的障害者である児童生徒に対する教育を行う各教科に替えるなど、実態に応じた教育課程を編成することが定められております。
一番左、通常の学級に在籍するお子さんが通級による指導を利用する場合でございます。この場合も、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領の総則の中に特別な教育課程を編成することが規定をされておりまして、各教科等は通常の学級で授業を受けつつ、障害に応じた特別な指導として、自立活動内容を参考とした指導を実施すること。学校の教育課程に加え、または一部に替えることが可能といった旨が規定をされているところでございます。
そうした中、資料の3ページを御参照いただければと存じます。特別支援教育に関します現状と課題というところでございます。3ページ左側1ポツ目、小・中学校等に在籍する障害のあるお子さんの現状でございます。
まず、1つ、通常の学級についてでございます。通常の学級に在籍する学習面または行動面の困難があるお子さんの割合が増加をしている。公立小・中学校では8.8%と推定をされています。このうち通級による指導を受けているお子さんの割合は一定程度にとどまっているなど、個別の支援を受けていない子供が多数存在している現状がございます。
次に、通級による指導でございます。小・中学校で通級による指導を受ける児童生徒数は、過去20年間で5.6倍となっております。特に発達障害や情緒障害で通級による指導を受ける子供たちが急増している現状がございます。
次に、特別支援学級でございます。特別支援学級に在籍する児童生徒数は、過去20年間で4.3倍、特に知的障害学級や自閉症・情緒障害学級に在籍する子供たちが増加をしておりますが、一部には、通常の学級を学びの場とすることが適切と思われるような子供が特別支援学級に在籍しているような事例も見受けられるところでございます。
右側2ポツ目、高等学校等に在籍する障害のある子供たちの現状でございます。先ほど特別支援学級に在籍する児童生徒数が急増している旨申し上げました。中学校の特別支援学級に在籍していたお子さんの高等学校への進学者数が急増しており、過去10年間で3.5倍に増加をしております。
3つ目のポツです。他方、高等学校においては、通級による指導を平成30年度から制度化をしているものの、通級による指導を受けている生徒数は微増傾向にとどまっている現状がございます。
3ポツ目、特別支援学校に在籍する障害のある子供たちの現状でございます。義務教育段階の特別支援学校の在籍者数は過去20年間で1.6倍で、中でも知的障害の子供たちが増加をしております。
他方、視覚障害や聴覚障害の子供たちは減少傾向にあり、これらの障害種の学校の小規模化・学習集団の少人数化が進行している。そういった現状がございます。
資料4ページを御参照いただければと存じます。4ポツ、現行学習指導要領のポイントと成果ということで、前回の学習指導要領の改訂の際のポイントについて、簡単ではございますが、御紹介をさせていただきます。
まず、幼・小・中・高等学校における現行学習指導要領の改訂のポイントでございます。2つ目のポツでございますが、総則に加えて、各教科等においても、指導計画の作成に当たって、障害のある子供たちに対して、学習上の困難に応じた指導内容、指導方法の工夫を行うこと、これを規定してきたところでございます。
さらに次の3つ目のポツです。特別支援学級において実施する特別な教育課程の編成に関する基本的な考え方を規定いたしました。その中では、自立活動を取り入れること、実態に応じた教育課程を編成すること等を規定してまいりました。
次のポツ、通級による指導における特別な教育課程の編成に関する基本的な考え方、これも前回の改訂で規定をいたしました。その内容といたしましては、自立活動の内容を参考とし、具体的な目標や内容を定め、指導を行うこと。こういったことを規定してきたところでございます。
このページの右側をお願いします。特別支援学校における現行指導要領の改訂のポイントでございます。
まず、1つ目のポツです。特別支援学校においても、育成を目指す資質・能力、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、カリキュラム・マネジメントの確立など、小・中・高等学校を参照しました初等中等教育全体の改善・充実の方向性を重視した改訂を行ってまいりました。
その上で、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱の特別支援学校においては、障害の特性等に応じた指導上の配慮を充実し、ICT機器の活用等を規定する。そういった旨を規定してきたところです。
さらには3つ目のポツです。発達障害を含む多様な障害に応じた指導を充実するため、自立活動の内容といたしまして、障害の特性の理解と生活環境の調整に関すること等を新たな項目として規定をしてまいりました。
さらには4つ目のポツ、知的障害の各教科については、幼・小・中・高の教育課程との連続性を重視しつつ、育成を目指す資質・能力の3つの柱に基づき、各教科等の目標・内容について整理をする。中学部に2つの段階を新設し、小・中・高等部の各段階に目標を設定し、段階ごとの内容を充実。さらには、特に必要がある場合には、個別の指導計画に基づき、相当する学校段階までの小学校等の学習指導要領の各教科の目標・内容の一部を取り入れることができる旨を規定してきたというところでございます。
5ページをお願いいたします。そういったような現行学習指導要領に基づきまして、各学びの場において、障害のあるお子さんに対する指導、支援が行われてきているところでございますが、それぞれ課題もあると考えてございます。5ポツは、幼・小・中・高等学校の特別支援教育に共通する課題でございます。
1つ目のポツ、障害の社会モデルの考え方を踏まえ、多様な子供がいることを前提として教室環境や授業づくりを進めていくことが基礎的環境整備としても重要になるというところでございますが、その実現については道半ばだと考えております。
2つ目のポツ、障害者差別解消法で求められている合理的配慮の提供については、本人・保護者と学校・設置者との建設的な対話が十分に行われず、相互理解を通じた対応が講じられていないケースがあるなど、理解や提供が十分ではない状況も見受けられるところです。
3つ目のポツ、合理的配慮の提供の前提であります基礎的環境整備について、自治体間で格差が生じております。特に障害の状態や特性に応じた情報提供の方法、アクセシビリティ機能の活用を含めたデジタル学習基盤の活用状況には課題が見られるところです。
4つ目のポツ、個別の教育支援計画や個別の指導計画については、特に特別支援学級、通級指導を受けるお子さんに関してはおおむね作成をされています。他方、特に個別の指導計画において、その内容といたしましては、子供たちの障害の状態等に関する実態把握が十分ではなく、適切な指導目標や指導内容が設定されていないため、一人一人の子供たちの障害の状態等を十分考慮せずに指導が行われている学校もあるという指摘があるところでございます。
このページの右側の6ポツでございます。通級による指導に関する課題です。1つ目のポツ、通級による指導に際しては、個々の子供たちの障害の状態等の実態把握が十分されておらず、適切な指導目標や指導内容が設定されていない状況も見受けられます。また、障害の状態等を考慮せずに一律に「○○式トレーニング」といったような、特定の活動をもってのみ通級による指導としている学校もあるなど、その趣旨が十分理解されていない学校もあるところです。
次のポツです。特別支援学校のセンター的機能を活用した助言や援助を受けることができておらず、適切な指導に課題を抱えている学校もあるところです。
7ポツ、特別支援学級に関する課題です。特別支援学級における特別な教育課程については、当該学年の目標・内容や下学年の目標・内容への代替、知的障害の教科への代替等、様々な教育課程の編成を障害の状態等に応じて行うこととされておりますが、正確な理解を欠いたまま編成されている実態があるところです。
次のポツ、自立活動の指導について、障害の状態等を考慮せずに一律に特定の活動ありきで実施している学校や、自立活動の授業時間数が十分でないと思われる学校、自立活動の指導と各教科等の指導の関連を図ることに課題がある学校も見受けられるところです。
3つ目のポツ、交流及び共同学習として通常の学級で各教科等の指導を行っている場合に、個々の障害の状態等に応じた適切な指導や必要な支援が講じられていない状況があるところです。
6ページ目をお願いいたします。8ポツ目、高等学校の特別支援教育に関する課題です。左側のポツですが、全日制・定時制・通信制を問わず、また、いわゆる進学校とされる学校も含めまして、あらゆる高等学校に特別な教育的支援を必要とする子供が在籍している現状があるという指摘もありますが、その支援、配慮の状況が十分でなく、個々に応じた指導の実現に課題が見られるところです。
右側のポツです。小・中学校の特別支援学級や通級による指導において受けてきた指導内容、合理的配慮提供の状況が、高等学校に十分に引き継がれていない状況も見受けられるというところです。
9ポツ目、特別支援学校に関する課題でございます。1つ目のポツです。障害の社会モデルの考え方も踏まえた学校経営、授業づくりが特別支援学校にも求められているところですが、全ての教師にその考え方が浸透しているかということについては課題があると考えてございます。
2つ目のポツ、障害により生じる困難さに対応しつつ、子供たちの資質・能力を育成するための授業づくりや、各教科等の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善は、多くの特別支援学校において道半ばの状況であると捉えております。
3つ目のポツです。視覚障害や聴覚障害など小規模化・少人数化が進む障害種の学校もあり、教育活動全体の充実に課題がある学校もあるところです。
4つ目のポツ、1人1台端末の活用頻度に学校間や地域間で格差があることや、入出力支援装置の活用が十分浸透していないなど、デジタル学習基盤の環境を十分に活用し切れていない実態もあるところです。
さらには、自立活動については、各教科等の指導の関連づけや、自立活動に関する実態把握や指導目標・内容の設定までのプロセスや考え方の浸透に課題がある。さらには、自立活動の指導自体が教師主導型の指導になっているんじゃないか。そういったところに課題が見られるところです。
右側です。知的障害の各教科については、小・中・高の学びの連続性の確保を図りつつ、知的障害の特性や発達の段階を踏まえた対応が必要であるところです。
さらには、重複障害のある子供たちへの対応、適切な指導の充実が必要であるとともに、センター的機能については、障害の早期発見・早期支援のさらなる充実に向けた、乳幼児期を含めた相談体制の充実も必要なところです。
さらには、高等部の充実といたしまして、子供の自立と社会参加を見据え、職業教育や専門学科における教育を含め、希望する将来の実現に向けた学習機会の充実がこれまで以上に必要になっています。
さらには、交流及び共同学習としては、障害種によって交流及び共同学習の機会が十分でないという指摘もあるところです。
そうしたことを踏まえまして、本ワーキンググループにおける検討事項について御説明をさせていただきます。7ページ目左側でございます。1ポツ目、教育課程企画特別部会の議論を踏まえた検討事項についてでございます。
まず、(1)育成する資質・能力の特別支援教育における在り方・示し方といたしまして、障害のある子供たちの深い学びを確かなものとするために、特別支援学校学習指導要領において、学びに向かう力・人間性等や、見方・考え方の新しい整理を踏まえた目標の示し方、中核的な概念等に基づく内容の一層の構造化や、その過程における必要に応じた精選の在り方、さらには特別支援教育における表形式を活用した目標・内容の分かりやすい示し方について御検討をお願いしたいと存じます。
(2)特別支援教育における指導と評価の改善・充実の在り方についてです。デジタル学習基盤の活用や情報活用能力の育成強化を前提とした、特別支援教育における主体的・対話的で深い学びの一層の充実を図るための方策、さらには、障害のある子供たちの教育課程においても、情報活用能力の抜本的向上を図るための教育課程の改善の在り方、これは今、小・中・高等学校におきましても、情報活用能力の抜本的向上を図るための方策について、9月25日の論点整理の中で取りまとめられているところでございますが、特に障害のあるお子さん、知的障害のある子供たちの教育課程における取扱いについて、御検討を賜れればと存じます。
さらには、資質・能力の育成のために、効果的かつ障害のある子供たちの学習の実態を踏まえた評価の在り方についても御検討いただければと存じます。
右側2ポツ目、特別支援教育に関する課題を踏まえた固有の検討事項についてでございます。こちらは、先ほどの課題とまさに対になっているところでございます。1つ目は、障害の社会モデルの考え方を踏まえた、多様な子供がいることを前提とした教室環境、学校経営・授業づくりを進めるための方策について。
2つ目のポツは、合理的配慮の提供について、基礎的環境の状況を踏まえつつ、本人・保護者との建設的対話を通じて相互理解を図り、過重な負担のない範囲で障害の状態に応じた対応が全ての学校で図られるようにするための方策について御検討を賜れればと存じます。
その際、デジタル学習基盤の活用について、基礎的環境整備に位置づくものであることを総則等で明らかにすることや、一人一人の障害の状態や特性等に応じた学び方に繋がる活用を促すための方策をどう考えていくか。併せて、アクセシビリティ機能や入出力支援装置の確実な活用に向けた方策についてもどのように考えていくか、御検討を賜れればと存じます。
次のポツ、個々の実態を的確に捉えた教育活動の実現に向けた個別の指導計画のさらなる充実の在り方、カリキュラム・マネジメントの在り方、そして、個別の教育支援計画の充実についてどのように考えるか、御検討いただきたいと存じます。
さらには、障害種ごとに必要な配慮事項、特に言語障害、自閉症、情緒障害、学習障害、注意欠陥多動性障害における指導上の配慮事項の在り方についてどう考えるか。
これらの障害種につきましては、今、特別支援学級、通級による指導の対象ということになっておりまして、特別支援学校の対象の障害種と異なり、必要な配慮事項等については特段定めがないところでございます。これらについてどのように考えていくか、御検討を賜れればと存じます。
次のページ、8ページをお願いいたします。左側(2)特別支援学校に関する検討事項というところでございます。1つ目のポツ、自立活動の内容のさらなる充実に向けた方策や、自立活動の時間の指導と各教科等の指導の関連づけの充実に向けた方策、さらには、子供主体の自立活動をさらに展開するための方策についてどのように考えるかといったこと。
2つ目のポツ、知的障害の各教科等について、小・中・高に準じつつ、知的障害の特性や発達の段階等を踏まえた構造化の在り方についてどのように考えていくか。
3つ目は、小規模化・少人数化が進む障害種の状況を踏まえた授業改善のための方策をどのように考えていくか。
4ポツ目、重複障害の子供たちへの指導や支援の充実に向けた方策についてどのように考えていくか。
5ポツ目、障害の早期発見・早期支援のさらなる促進に向けた、センター的機能を発揮した乳幼児期を含めた相談体制の充実に向けた方策について。
さらには、高等部において、教科指導を含めた学習機会の充実や、特色・魅力ある教育活動の実現に向けた方策についてどのように考えるか。その際、時代の進展に応じた職業教育・専門教育の展開に向けてどのような見直しが考えられるか。
最後のポツですが、交流及び共同学習のさらなる充実のために、どのような方策が考えられるか、これらについて御検討いただきたいと存じます。
(3)高等学校に関する検討事項です。特別な教育的支援を必要とする生徒が高等学校においても急増している現状を踏まえた、個々に応じた適切な指導、必要な支援の実現に向けた方策についてどのように考えていくか、御検討いただきたいと存じます。
右側でございます。特別支援学級に関する検討事項について、1つ目のポツ、特別支援学級の特別な教育課程の編成・実施に係る改善・充実に向けた方策をどのように考えていくか。特に自立活動の指導の改善や、各教科等の学びの充実に向けた方策をどのように考えていくかというところ。
2つ目のポツ、特別支援学級において適切な指導を担保し、特別支援学級の子供たちが交流及び共同学習として通常の学級で学ぶ際に、障害の状態等に応じた適切な指導、必要な支援が担保されるための取扱いをどのように考えていくか。
3つ目のポツです。一部には通常の学級を学びの場とすることが適切と思われるような子供が特別支援学級に在籍している事例もあることについてどのように考えるのか。この辺りについても御検討賜れればと存じます。
(5)通級による指導に関する検討事項です。1つ目のポツ、自立活動を取り入れることとするための方策について。
2つ目のポツ、通常の学級に在籍する子供たちが通級による指導を利用する場合の特例的な取扱いの見直しに向けた教育課程上の取扱いについて、具体的にどのような制度設計としていくのか。特に必要がある場合に各教科等の指導を行うことを可能とすることや、通級による指導の授業時間数・修得単位数の在り方、さらには、各教科等の目標・内容の一部を障害の状態等に考慮したものに替えること、取り扱わないことなどについて、具体的な制度設計について御検討いただきたいと思います。
その際、通級による指導を受けるための方策や、不適切な運用を防ぐための仕組みの構築についてどのように考えていくか。これについても併せて御検討いただきたいと思います。
最後、これらを実現するための環境整備に関する課題についても、特に障害のある子供たちの学習機会を保障するため必要な基礎的環境整備の充実、地域間格差の解消に向けた課題をどのように考えていくか、御検討いただきたいと思います。
以上が、本ワーキンググループにおきます御検討いただきたい事項でございます。
駆け足ではございますが、事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【清原主査】 酒井企画官、大変にコンパクトな時間の中にも重要な論点について御説明いただき、ありがとうございます。
それでは、ただいまの御説明、すなわち教育課程企画特別部会の論点整理や、「こども若者★いけんぷらす」における特別支援学校等の子供たちからの意見を踏まえた特別支援教育に関する現状と課題、そして、私たちのワーキンググループの検討事項について、皆様と意見交換をさせていただければと思っています。
本日は、委員の皆様全員から御発言をいただきたいと思っています。特に第1回目の会議となりますので、自己紹介を含めつつ、検討事項に関する御意見を御発言いただければと思います。
委員名簿の五十音順に私から指名をさせていただきます。お一人3分程度で御発言をお願いいたします。
なお、冒頭から御参加いただいている委員の皆様から順に指名をさせていただき、御都合により途中から御参加いただいている委員の皆様については、その後指名をさせていただきます。
それでは、まず、足羽英樹委員から御発言をお願いいたします。
【足羽委員】 皆様、こんにちは。鳥取県教育委員会教育長をしております足羽と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、もともと高等学校の国語の教員をしておりました。今、縁あってこういう立場で、県の教育行政全体を見渡す中で、この特別支援教育に関しても非常に高い関心を持ってこれまでも取り組んできたところでございます。
ただ、自分自身が、専門家ではございませんが、県の小・中・高・特別支援学校全体を見渡したときに、この特別支援教育が今後どうあるべきなのか、あるいはどうあってほしいのか、そうした現場の声を様々聞いてきた立場でございます。
そういう教育行政という視点に立って、全体を俯瞰しながら、現場の声を一つ一つ拾い上げて、このワーキンググループの中に反映をさせていくことができればいいのかなというふうに思っているところでございます。
先ほど酒井様のほうから、現状と課題を踏まえて、このワーキンググループでの検討すべき論点を的確に御指示いただいたなというふうに思っているところでございます。
説明資料の中で、現状と課題と、そして今後の方向性、論点は、言わばリンクするものだというふうに思っておりますが、資料で言えば、例えば、5ページでございます。現状と課題で、幼・小・中・高校等の特別支援教育に共通する課題ということで整理をしていただいておりますが、子供たちの指導に関わるという意味で言えば、それぞれの校種の先生方、教職員の理解が、その専門性があるかないかではなく、全ての教員が特別支援教育についての最低限の理解を持って、そして、最低限の指導力を有していくことが、このワーキンググループの議論のほうでもありました連続性のある学びの構築につながっていく、この原点は、やはり教職員の資質・能力の向上をいかに図るかということを、それぞれの部門、あるいは障害種に応じて構築していくことが必要じゃないかというふうに強く感じているところでございます。
特別支援学校のセンター的機能も、本県でも活用させていただいておりますが、やはりまだまだ理解が少ない分、特に私も在籍しておりました高等学校においては、特別支援学校のセンター的機能をうまく活用するというところには大きな課題があったように思っております。
また、高等学校でも通級指導が始まっておりますが、そこに指導できる教職員が非常に限定的であることから、ある学校では、7割以上支援が必要な生徒がいるにもかかわらず、各学年で2人か3人に限定して自立活動を指導しているというふうな実態もあること、そういう意味では、通級指導をしているから、あるいはしていないからではなくて、全ての学校あるいは現場で先生方が特別支援教育に関する理解を持って、視点を持って子供たちに関わっていけるような、そんな教職員の指導体制、指導力の向上といったことをしっかりと構築していくということが必要だろうなというふうに思います。
その意味では、通常の学級における指導をどう充実させるかということだろうと思いますし、そして、自立活動の指導の充実ということも、現状、課題、論点の中で度々出ましたけれども、この辺りを小・中・高、共通課題として理解していけるような論点を整理していくことが必要かなというふうに思っております。
学習指導要領においてもそれらが明確に示されると、我々教育行政を預かる者としても、しっかりと現場、管理職に伝えていくことができるというふうに思っておりますので、ぜひ私も議論の中に加わらせていただきながら、現場に発信ができる、子供たちのウェルビーイングに繋がる、こうした学びの充実に取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 足羽委員、ありがとうございます。小・中・高全体を見渡していくということ、そして、全ての教員に特別支援教育への理解と指導力が培われるような、そうした取組についてこれからぜひ御提案をいただければと思います。ありがとうございます。
それでは、有吉万里矢委員、お願いいたします。
【有吉委員】 皆様、こんにちは。全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会会長の有吉と申します。
私どもの団体には、全国の肢体不自由教育校、現在201校、世帯数でいうと1万4,053世帯が加盟しています。
私には重度重複障害のある息子がおりまして、現在、特別支援学校の高等部2年に在籍しております。本日の御説明と多くの情報を全て消化しておりませんが、私の立場でお話しいたします。
まず、日本の特別支援教育は、障害の程度が重度の子供であっても、入院していても、全ての子供が個々の教育的ニーズに応じた連続性のある多様な学びの場が整備されている点ですばらしいと思います。
これらを踏まえ、3点意見を申し上げます。まず、1点目です。分かりやすい学習指導要領という観点から、先生方にとって分かりやすいということは当然のことだと思いますが、保護者にとっても分かりやすいものであるという観点も重要だと思います。例えば、重複障害のある子供たちの障害の状態等に応じた弾力的な教育課程を編成することについて、正直、保護者はよく分かっていません。保護者が先生方と同じレベルで理解する必要はないと思いますが、社会に開かれた教育課程の理念の下、それが表形式なのか、各学校での個別の説明なのかは分かりませんが、保護者が学習指導要領について理解できるよう、検討を進めていただければと思います。
2点目です。連続性のある多様な学びの場において、特別支援学校がセンター的機能を果たしながら、共生社会の礎であることは大切な視点だと思いますが、小・中学校等については、先ほどの説明資料からも分かるように、まだまだ課題が多いように感じます。小・中学校の先生方一人一人が障害のある子供の理解を深め、小・中学校等こそ共生社会に向けた特別支援教育を充実させることが重要だと思います。まずは先生方が合理的配慮について共通認識を持つこと、そして、前提となる基礎的環境整備の充実は早急に課題解決すべきことと考えます。
また、学校生活の一環として通学があります。通学支援は教育を充実させるために欠かせないものであるとして検討していただきたく思います。
3点目です。今回の資料を拝見していると、随所に自立活動という文言が見られます。肢体不自由教育校では、自立活動を主とする教育課程以外では、自立活動イコール補足的な活動であると保護者は捉えてしまいがちです。調べてみたところ、自立活動には6つの区分があり、多岐にわたります。どれもが将来よりよい時間を過ごすための基盤となる指導であると思いました。
私自身、何となく自立活動イコール身体の取組と捉えていたのですが、改めて息子の個別指導計画を見てみると、後半の小さなスペースに、自立活動として「身体の動き」「コミュニケーション」「摂食」の3項目が書かれていました。これらは息子にとって非常に大切なことであり、各教科の指導と関連を図ることにより、よりよい学びとなり、確実に成長に結びつくことと思います。
自立活動は、特別支援学校、特別支援級での学びの特色です。教育支援計画を立てる段階で保護者の思いをより深く引き出し、双方が納得する形で計画書へ落とし込むことが重要だと思います。
さらには、家庭でのフォローも大事であり、その手法を共に考え共有することも必要なのではないでしょうか。
以上、3点でございます。
【清原主査】 有吉委員、ありがとうございます。肢体不自由の保護者の観点から、まず第1に分かりやすさを、第2には特に小・中学校の充実を、合理的配慮や通学支援というキーワードもいただきました。3点目に自立活動について、ぜひぜひそれを家庭との連携も踏まえて位置づけていければという御提案をいただきました。感謝いたします。
それでは、一木委員、いらっしゃいますか。それでは、一木薫委員、御発言をお願いいたします。
【一木委員】 こんにちは。福岡教育大学の一木と申します。主な担当は肢体不自由教育ですが、障害種を問わず、様々な特別支援学校、特別支援学級にお伺いする機会がございます。そういったことも踏まえて、この会でできる役割を果たせたらなと思っております。
先ほど丁寧な御説明をいただきました。ありがとうございました。本日は3点ほど申し上げたいと思います。まず1つ目は、自立活動についてです。小・中学校の先生方も含めて、担い手が拡大する中で、学習指導要領を見ても、ちょっとよく分かりにくいなと。そんな声が上がっているという御指摘があったところですが、ある意味、それは自然なことかなというふうに思います。
一方で、私も特別支援学級の先生方と接点がございますが、説明をすると、しっかり理解をされると。つまり、自立活動というのは、一人一人の子供に合った指導を具現化するということを担保するために、あのような内容の示し方に至っているということ、教科とそもそも内容の示し方が違うんだと。こういった内容構成の特徴ですとか、自立活動の視点で子供を理解するというのは、どんなまなざしを子供に向けて得られた情報からどのように指導を導き出すか、こういったことを改めて分かりやすく伝えていくということと併せて、学ぶ機会をしっかり担保していくと。教員養成を含め、学ぶ機会を担保していくということが大事だなと思っています。
関連しまして、自立活動と密接に関わる概念として、個別の指導計画というのがございます。これはちょっとお願いになるんですけれども、教育課程部会の資料を拝見した際に、自立活動とは直接的には関わらない文脈で個別の指導計画という文言が見て取れるかなというふうに受け止めました。個別に作成する計画が個別の指導計画ではないというところ、ここは改めて個別の指導計画の概念をしっかり確認して押さえていくということが、これまでの特別支援学校の学習指導要領の記載内容にも関わりますので、大事かなと思っています。
2点目です。知的障害の教科につきまして、教科の中核的な概念を構造化して示すという、この辺りについてどんな示し方になっていくのかなと思っています。そもそも教科の本質というものが、知的障害のお子さんが学ぶ教科の場合と小・中学校の教科の場合とで異なるのかどうなのか。この辺り、私自身もしっかり考えていきたいなと思っています。
3点目です。通級の教育課程について、子供の実態に応じて柔軟にということ、これ自体を否定するものではありませんが、一方で、どのように実現に向けた策を講じられるといいかなと。ここを今考えているところです。
具体例を申し上げますと、いわゆる各教科の、例えば、内容の一部を取り扱わないということができるということを実現するとしたときに、その判断は一体どなたがなさるのか。教育課程の取扱いの1番目の規定に相当するかと思いますが、実際に教科の内容の一部を取り扱わないとするかどうかの判断は、教育課程編成の際というよりは、出来上がった教育課程の下、年間指導計画を立案する、すなわち教科の目標・内容を子供にしっかり学んでもらうためにどんな単元構成で臨もうかと。このときに一部扱うことが難しい内容があるとすれば、それを勘案しながら単元を構想していくということになろうかと思います。
通級のお子さんの年間指導計画の立案者はどなたかなと考えたときに、通常の学級の先生もおられる。一方で通級もあるといったときに、指導内容の精選ではない、内容を一部扱わないかどうかの判断というものを誰が責任を持ってやっていけると、学び手のデメリットを小さくできるかなと。この辺りも含めて考えていく必要があると思っています。
関連して、これで終わりますが、改めて通常学級の先生、通級の先生、特別支援学級の先生、特別支援学校の先生、それぞれにどこまでの専門性を期待するかと。このことも併せて考えていくということが、我々が描くものを実現するためには不可欠だなと。
一方で、教員養成部会のほうでは、学校種別の養成段階の在り方について検討が必要だということが指摘されている一方で、共通して学ぶ中身は、これは厳選する必要があるという議論をされている。さあ、その中で果たしてどこまで特別支援教育に関わることを盛り込んでいけるか。このことも併せて検討していくということだなと思っています。
すみません。以上です。
【清原主査】 一木委員、ありがとうございます。第1点、自立活動を分かりやすく伝えて学習機会を確保していくことと、個別指導計画との関連について問題提起いただきました。また、2点目は、知的障害の教科の構造的な概念についての考察の必要性や、3点目には、通級の教育課程を柔軟にとありますが、その具体的な内容についての検討を問題提起していただきましたし、教員の資質の在り方、専門性の在り方についても問題提起いただきました。ありがとうございます。
それでは、海老沢穣委員、お願いいたします。
【海老沢委員】 一般社団法人SOZO.Perspectiveの海老沢と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、もともと知的障害の特別支援学校と肢体不自由の特別支援学校の教員を長くしておりました。その中で、タブレット端末を活用した授業づくりに取り組んでまいりました。2021年に独立をいたしまして、SOZOというのは、クリエーティブ・イマジネーティブというようなことで、Perspectiveは視点ということで、そういう視点で教育に関わりたいなという思いでつけた名前です。現在は特別支援学校を主に中心にいたしまして、授業づくりのアドバイザーでありますとか、研修会講師をしております。
今回の論点整理が、今の時代や社会の変化に即した教育の在り方というのがとても包括的に示されているなと思いました。自らの人生を舵取りする力であるとか、民主的で持続可能な社会の創り手を育むというのはとても大事な視点ですし、特別支援教育を受けている子供たちも、同じ創り手であるというのがとても大事だなというふうに思うんですけれども、その視点が今まではちょっと弱かったんじゃないかなというのを個人的に感じているところです。今の社会に適応させるということが主眼になり過ぎていたような感じがするんですね。
でも、今回、多様性の包摂ということで示されていますけれども、民主的な社会をつくるにはとても欠かせないことだと思うんですね。そこに特別支援教育を受けている子供たちも一緒に参画していくということがとても大事だなというふうに思っております。
そのためには、何のために授業をしているのかというのがとても大事かなと思うんですね。僕も特別支援学校を中心に学校を回っていることが多くて、いろいろな先生方の授業を見せていただく機会がとても多いんですけれども、最上位目標ですよね、本当に民主的で持続可能な社会の創り手を育むということが一番大事で、そのために授業をするという視点がとても大事だと思うんですけれども、そういった具体と抽象の往還というか、そういうことがなかなか見えなくなってしまっているなという部分があるんじゃないかなととても感じています。
そのためには、学習指導要領が分かりやすく、ビジョンを先生たちに落とし込めるものであるというのはとても大事だなということを思うんですね。現行の学習指導要領の理念や趣旨の浸透というのが道半ばであるということが示されていますけれども、実際、学校現場でやっぱり理念とか趣旨を十分に生かしているとは言い難いなというのをとても感じるように僕もなったんですね。
なので、現場の解像度を高めるために、学習指導要領、例えばデジタルのメリットとかを効果的に生かしていけるといいんじゃないかなというのをとても感じています。常に最上位の目標に立ち返って授業づくりを考え、土台に、先生たちが授業づくりに対応するベースになるような、そんな学習指導要領になっていくといいなというのをとても感じております。
私も微力ですが、お手伝いすることができればと思っております。よろしくお願いいたします。
【清原主査】 海老沢委員、ありがとうございます。何よりも持続可能な民主主義社会の構築に、特別支援教育の児童生徒の皆さんも参画するという方向で、授業内容の在り方など、デジタルのメリットを生かしながらも考えていく必要性を御提起いただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、大関委員、お願いいたします。大関浩仁委員です。
【大関委員】 全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長協会の会長を務めております、東京都品川区立第一日野小学校校長の大関浩仁です。どうぞよろしくお願いいたします。私、小・中学校の立場からいろいろと御意見を申し上げたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
これまでも各委員より御指摘いただいている内容とも重なる部分はありますが、今、小・中学校の実態といたしましては、特別支援学級、そして通級による指導を受けている児童生徒が非常に増え続けておりまして、そこに対して専門性が求められていながら、専門性のある教員の採用、あるいは育成が、増えるスピードに追いついていないという現実があります。
そのために、例えば、先ほども御意見ありましたが、個別の指導計画の中身はまだまだ課題がある、そういったような状況にあるのも実態で、我々もそこの部分には課題意識を持って、学校長としても努めている最中ではございますが、例えば、小学校の教員であれば、小学校全科として、国語、算数、様々な教科などを指導も行います。中には専門ということで、国語が得意な教員、あるいは算数が得意な教員などはそれぞれありますが、でも、基本としてはどの教科のこともしっかりと理解しています。
それと同じような考え方に立って、例えば自立活動についても、小学校の教員が共通に理解するという状況になっていく必要があります。そのことが、個別の指導計画を誰が立案、特別の教育課程の内容について誰が適切に判断できるのかという課題の解決につながっていくと考えております。
ですから、今回の事務局より課題を御説明いただいたように、もう少し全ての教員が分かりやすい内容として学習指導要領が共通理解できるものに方向性として目指していく部分は、校長会としても必要なものだと考えているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 大関委員、ありがとうございます。小・中学校のお立場から、専門性ある教員の育成などがまだ追いついていないところがあるけれども、個別的な指導計画を適切に立案していく上で、全ての教員に特別支援教育の学習指導要領等をしっかりと伝えていく必要性を御提起いただきました。ありがとうございます。
それでは、緒方直彦委員、お願いいたします。
【緒方委員】 全国特別支援学校長会の会長の緒方でございます。よろしくお願いします。
まず、教育課程部会でまとめられた論点整理を受けて、資料6などで具体的な課題や検討事項などが整理されており、事務局には感謝いたします。
ワーキンググループにおいては、検討の基盤となる考え方の柱の一つである、先ほど一木委員もおっしゃいましたが、実現可能性の確保を重視した検討が行われることを期待しております。特別支援学校の校長としては、検討事項にも関連しながら、次の内容についても十分な検討が必要だと考えています。1つめが、医療と福祉の連携についてです。厚労省からも連携通達等が出されていますが、特別支援教育は教育だけでなく、医療的ケアや福祉サービスとの連携が必要不可欠です。特に医療的ケアの増加に伴い校現場で看護師配置や医療的支援の体制整備が実は急務になっています。教育課程の中で医療的ケアを受けながら学ぶ児童生徒の学びをどう保障するかについては、医療的ケア児支援法の施行後、最初の学習指導要領の改訂になりますので、重要な課題として取り上げていただければと考えております。
第2に、現行の学習指導要領の改訂のポイントでもあった、知的障害の教科を小学校との連続性や系統性を重視して整理されたことは画期的だと評価する一方で、特に高等部の目標及び内容が生徒の実態に合っているのかを検証し、表形式化と併せて検討する必要があると考えます。
さらに、幼稚部、小学部段階からキャリア教育を充実するよう規定していますが、キャリア・パスポート等などの活用、その成果や課題、さらには高等部の就労支援においては、今後、就労選択支援が始まろうとしており、また、福祉の現場では意思決定支援が重視されるようになっています。
学校教育においても、児童生徒が主体的に進路選択する力や態度を育成する上では、私は意思決定支援はとても必要だと考えております。これらの課題は、特別支援教育の質の向上と、全ての児童生徒の学びの保障、自立と社会参加に直結するものであり、次期学習指導要領の改訂において議論の中で取り上げていただければ幸いです。
以上です。よろしくお願いします。
【清原主査】 緒方委員、ありがとうございます。まず1点目は、医療と福祉の連携、とりわけ医療的ケア児への対応は法改正後初めてとなるので配慮をということ、2点目に、知的障害児の連続性については重要だけれども、とりわけ主体的な進路決定や意思決定支援について検討していきたいという御提案をいただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、奥住秀之委員、お願いいたします。
【奥住主査代理】 東京学芸大学の奥住でございます。先ほど主査代理として御挨拶をさせていただきましたので、短めに発言させていただければと思っております。
今回の次期学習指導要領の方向性にある、多様な子供たちの深い学びを確かなものにという理念は、特別支援教育やインクルーシブ教育システムと親和性がとても高く、大事な視点であると私は考えています。
先ほど事務局がまとめてくださいましたように、このワーキングでは、次期学習指導要領の基本的な考えに関連する検討事項に始まりまして、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導、そして通常の学級という多様な学びの場に通底する検討事項と、それぞれの場により焦点を当てた検討事項が含まれていると感じます。
限られた期間でこれだけの検討を行うことは容易ではありませんですが、実現可能性をもって、そして、計画的に検討を進めることが大切と思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 ありがとうございます、奥住委員。多様な子供たちの深い学びの実現のために、多様な場の学びに通底することと、それぞれの場に焦点を当てた検討を丁寧に実現可能性を持ってしていくことを御提起いただきました。ありがとうございます。
それでは、亀田香利委員、お願いいたします。
【亀田委員】 よろしくお願いいたします。石川県能美市教育委員会の亀田でございます。
私は、地方教育行政に携わり、県や市町等を含めますと、通算12年目になります。もともとは小・中学校の教員で、中学校では技術・家庭科の家庭分野を担当しておりました。このたび本ワーキングに参加させていただくにあたり、県の指導主事をしておりましたときに特別支援教育を約4年間担当し、個別の支援計画の作成や指導計画、一人一人の教育課程を見詰めて、現場の先生と対話を重ねてまいりました経験を少しでもまた生かしていきたいと存じます。本ワーキングに参加させていただきますことに感謝申し上げますとともに、責任の重みを感じております。
指導主事時代はそういう特別支援教育に携わっていたと申しましたが、現在、能美市教育委員会の中で、今まさに巡回就学相談をやっておりまして、保護者に寄り添いながら、子供の様子を伺いながら、就学先の決定に向けて丁寧に向き合い対応しているところでございます。
本日、端的に事務局から御説明をいただき、ありがとうございました。私が、現在、能美市で感じておりますことを、地方教育行政に携わる者の現場の声として少しお届けできればと思います。たくさんの委員の皆さんがおっしゃっていた、教員の専門性についてです。これについては大きな課題を持っておりまして、例えば、通級指導教室におきまして、本市は11校の小・中学校がありますが、全ての学校において通級指導教室を開設しており、教員を配置する際に、教育行政の立場として、専門性ある先生方を、全ての学校に配置することができないという現実があることです。
つまり、特別支援の専門ではない講師の方とか、あるいは、昨年までは学級担任をしていた小学校の先生に、今年からは通級指導教室をお願いしますと突然申し上げないといけない。こういう実態がございまして、教員の専門性に危機感をもっているところでございます。
また、担当された先生方も悩みを抱えておられまして、真摯に向き合っておられますが、学びが追いつかないといいますか、どのように通級指導を行っていいのかというあたり、悩まれています。市教委としましても、先生方が孤立することなく、しっかりと通級指導教室の先生方とつながり合う体制を構築しながら伴走支援に努めているところですが、たくさんの委員の方もおっしゃっていました、子供のニーズが、例えば通級は過去20年間で5.6倍であること、この子供のニーズの高まりに対しての教員の配置、専門性の向上が追いつかないというのが、地方行政としても大変心を痛めているところでございます。
そうした中で、今年、文部科学省の事業の「学習障害のある児童生徒等に対するICTを活用した効果的な支援に関する研究」の採択をいただきました。今まさに実践を積もうとしているところなんですが、子供の認知特性を把握するにあたりこれからデジタルツールも使って効率的にしていこうということで考えているところです。
これまで専門家派遣により、見取り、検査、資料作成までにかなりの月日を要しておりました。その辺りを一気に効率化させて、そして、個別の計画等も、デジタルの力も借りながら作成し、先生方がよりよいツールを用いて、効果的な指導、支援ができないかというふうに考えているところでございます。
皆様とこれから議論をさせていただく中で、微力ながら少しでも貢献できたらと思っております。デジタル学習基盤を生かした観点、地方教育行政の立場から尽力してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 亀田委員、ありがとうございます。地方教育行政のお立場からは、足羽委員も冒頭おっしゃいましたけれども、やはり教員の専門性については課題の一つであると。しかしながら、それを克服するためにも、デジタル学習基盤の活用や応用によって、少しでも適切な教育ができるようにと。また機会がありましたら、その実践事例なども報告していただくとありがたいなと思ってお聞きしておりました。ありがとうございます。
それでは、川合紀宗委員、お願いいたします。
【川合委員】 失礼いたします。私、広島大学ダイバーシティ&インクルージョン推進機構の川合紀宗と申します。よろしくお願いいたします。
私の専門は、言語・コミュニケーション障害、ほかにはインクルージョン、発達障害など様々な教育研究をやっていますが、恐らくここでは通級、それから言語・コミュニケーション障害についてということで委員として参加させていただいているという認識でおります。
幾つか申し上げたい点がございますが、1つは、やはり特別支援教育の段階的な接続、あるいは継続性の確保、支援の空白をどう埋めていくかというところが課題になっているかと思います。特に言語障害につきましては、通級指導教室の数が中学校以降著しく減少しているということです。高校に至っては、全国で数十名しか言語障害ということで支援を受けられていない現状がございます。もちろん小学校時代に障害が改善、あるいは治癒してというお子さんもいらっしゃるのですが、特に吃音であるとか言語発達に課題のあるお子さんについては、特に思春期以降に悩みが増えます。すなわち自尊感情とか対人関係、将来の不安というところで強く悩みが深まる傾向があります。にもかかわらず、より支援が必要な時期にそれが十分に届いていない、この点をどうするかということを我々は考えないといけないのかなというふうに思っているところです。
こうした支援の不十分さところが二次障害の助につながる可能性もありますので、この空白をどう埋めていくか。それから、一次性の障害と二次性の障害、両側面に着目した支援の在り方、あるいは支援体制の在り方をどう教育課程の中で位置づけていくか。こういったことを検討していく必要があるのではないかというふうに考えております。
もう1つ、高校についてですけれども、先ほども全日制・定時制・通信制を問わず、様々な特性、障害があるお子さんがいらっしゃるということでした。いわゆるチーム学校という言葉もございますが、学校全体としての、特に予防的な支援、それから包括的な支援の枠組みをどうつくっていくかということを考える必要があるのではないかと思います。
アメリカなどでも、これは20年ぐらい前の話ですけれども、かつては障害が顕著化してからようやく支援が始まるという状況でしたけれども、それをどう予防的にやるか。つまり障害が顕著化する前から支援をどう充実させていくかみたいなところが議論されまして、今ではかなり予防的な支援ということの取組が行われているわけですね。こういったところも我々考えていかないといけないのではないかと思っております。
ですから、特別な支援ということを前提とした教育課程の設計を明示していくということと、支援というものを、個人の一存ではなくて、学校全体で共有され、運営される体制をさらに強化していく、そういったところが必要になるのかなということですね。
ここでは恐らく、現行の学習指導要領にも出てきている「社会モデル」という理念をさらに具現化するということにも繋がるかと思いますし、例えば、欧米やオーストラリアでも、専門家の皆さん御存じかと思いますが、RTI(Response to Intervention)という考えがありまして、いわゆる支援に対する応答性ということですね。現状では通常教育vs. 特別支援というふうになっているんですけれども、その中間層というところですね。第1層、第2層、第3層という形で、中間層を設けるということで、たくさんの子供の中では学びにくいお子さんが少人数で学ぶ場があり、そこでうまくいけば、また大人数の教室の場で学べる。あるいは、そこで難しければ、さらに特別支援という形で支援していくみたいな、そういった多層的な枠組みをどう構築するかについても検討することが重要ではないかと思います。
また、ここでの議論の範囲を超えるとは思うんですけれども、いわゆるギフテッドというお子さん、こういったお子さんも、RTIの層のどこかに入り込む。そうすると、4層になるかも入れませんけれども、そういった連続性のある学びや柔軟な支援システムをどう構築するか。この辺りもどこまで議論ができるか分かりませんけれども、重要ではないかというふうに思っております。
それから、自立活動、これもやはり単なるスキル習得ということではなくて、児童生徒一人ひとりが自分らしく生きていくための教育の中核ではないかと思っております。ですから、先ほど資料にもございましたが、自立活動と教科等の関連づけであるとか、実態把握から目標設定までのプロセス、こういったところがどうも十分に浸透していない現状があるのではないかというところですね。スキル学習にとどまっているということが課題ではないかと思います。
これは、いわゆる教育課程というところまでは至らないかもしれませんけども、一方で、先生方が日々やられているスキルというものが、決して間違っているわけではないと思うんですね。そういったものと、自立活動の区分や領域との関連づけがうまく整理されていない。この点については、例えば、ガイドブックのようなものであるとか、そういったところで関連づけを行っていくということが望まれるのではないかなというふうに、お話を伺って思っていたところです。
これはまたこの部会ではなくて、教員養成、あるいは免許制度のところでご議論いただければと思っているんですけれども、自立活動免許状、こちらについても、例えば発達障害であるとか、そういった領域を追加しながら、もう少し現状の通級、それから場合によっては特別支援学級も含めて、この辺の専門性というところがどうしても空白になっている状況の改善に有効活用する必要があると思います。実はこの自立活動免許状は、年間50人程度しか取っていないからということで、あまり重要視されていないかもしれないのですけれども、現状では非常に取得しづらい免許状でもあります。これを例えば講習等でも取得できるとか、そういうふうに制度を変えることが、通級の先生方がこういった免許状を取得していただいて、専門性の担保をし、自信をもって御指導いただける、そういった方向づけができるのではないかと思いますので、ここの部会で議論することではないのですけれども、ぜひ別の部会で協議していただければと思いながらお話を伺っていました。
さらに、言語障害という観点からしますと、医療との連携、特に言語聴覚士(ST)との協働をどのように考えるかが重要です。言語障害の専門性については、教員養成の中でも、言語障害教育専門性を高める教員養成をしますという大学がどんどん減って、ほぼ消滅しているような状況です。
そのような中、教員になられてから研修で学ぶということが現状ではあるんですけれども、どこまで先生方に、先ほどおっしゃっていただいたように、言語障害のことを全く知らないにもかかわらず、校長先生から来年度から言語通級指導教室の担当者をやりなさいと言われて、非常に戸惑う状況で指導せざるを得ないケースも多く、そこにもやはり支援の質の空白ができてしまいます。そこで、STの協働ということを前提に支援の仕組みを考えるべきなのかについても検討が必要と思います。
私もアメリカの学校に勤めていましたけど、私は言語聴覚士として、米国では言語療法士ですけれども学校に勤務をしていたんですね。ですから、専門性を担保しながら、教員免許も持ちつつ、STの免許も持ちつつという状況でした。
ですから、必ずしもSTが通級をやりなさいということではなくて、通級の専門性を担保するために、そういったSTとの協働の在り方についても現状を鑑みると考えていく必要があるのではなかろうかということも思った次第です。
あと特に気になっているのが、支える側が疲弊してはいけないということで、やはり先生方が疲弊しない、レスパイトケア的な考えですよね。いわゆる子供たちのウェルビーイングも大事なんですが、先生方のウェルビーイングもどのように相互に確保していくか。そういったことも親部会では話があったと思いますので、何か制度的に整えるということが必要ではないかと思います。
そういったようなことを、皆様のお話、それから、今日御紹介いただいた話題を聞きながら思ったところを申し上げました。
以上です。よろしくお願いいたします。
【清原主査】 川合委員、ありがとうございます。通級、言語・コミュニケーション障害の御専門から、継続性の問題や一次性、二次性の障害、あるいは中間層まで目配りをということと、学校全体で包括的、予防的な支援をという御提案をいただきました。さらには、他の専門家との関係など、最後には、教員の皆様のウェルビーイングもという御提案をいただきました。ありがとうございます。
それでは、菊地一文委員、お願いいたします。
【菊地委員】 弘前大学の菊地と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
これまで特別支援学校の教員、特総研の研究員、県教育委員会の指導主事、そして大学教職員、教職大学院の立場から特別支援教育に携わってきました。専門は知的障害教育とキャリア教育ということで、多くの障害のある方に関わってきました。
現行の学習指導要領では、いわゆる知的障害教育の各教科の改訂作業に携わらせていただきました。引き続き改訂に関わることになり、大変ありがたく思う一方で、その任の重さに身が引き締まる思いでおります。
さて、現行の学習指導要領では、全ての学校種別において、社会に開かれた教育課程、育成を目指す資質・能力、主体的・対話的で深い学び、カリキュラム・マネジメントの4つのキーワードが示されて、学習者主体の視点で教育活動を見直して充実を図ることや、今を生き、次世代を担う子供たちの資質・能力を育み、ウェルビーイングであるために、コンテンツベースからコンピテンシーベースへの教育課程へと転換を図ることを求めてきています。
これらの学びの場を超えた共通言語を踏まえて、障害の有無や学校種別を超えて教育活動の充実を図っていくことは、インクルーシブ教育システムの推進、充実にもつながっていくものと認識しています。そして、よい意味で、その道半ばであるというふうに捉えております。
大くくりになりますが、2点、意見を述べさせていただければと思います。1点目は、教育全体を視野に入れた特別支援教育の充実という視点からです。連続した多様な学びの場において特別支援教育が行われていますが、それぞれの場は別物ではないという意識が必要であると考えています。そのことについて、学校経営をはじめとする具体的な取組が求められていると思います。
そう考えていくと、ある意味で、特別支援学校の学習指導要領等のみならず、総則等にも関係してくる部分も出てくると思いますし、改訂後の各教育委員会に理解いただいて実装、実行していくための手だての工夫も必要ではないかと考えています。
現在、私は教職大学院の所属であるため、ここ数年間、幼稚園・小・中・高・特全ての教育の場に出入りしているんですが、現行指導要領の理念を具現化するために、学校現場では様々なチャレンジや試行錯誤が重ねられてきて、そして、成果を上げて課題と向き合っていると捉えています。
例えば、小学校の授業では、一斉指導型から一人一人の学び方や発達に応じた柔軟な授業、中学校においても身近な生活に関連づけた具体的な活動を取り入れ、または着目するように仕掛けた、子供にとっての必要性を踏まえた授業が増えてきているように思います。
一方で、知的障害のある子供を対象とする特別支援学校では、各教科と合わせた指導など、子供にとって必然性のある豊かな学習活動の中で、各教科等の内容や資質・能力を明確にして、そのつながりを意図した授業や単元を構想し、展開してきているように思います。
このような取組を双方で進めていくことによって、両者の重なりが増えていくことが期待され、そのことがひいては基礎的環境整備の底上げや交流及び共同学習の充実に繋がるものと考えています。
しかしながら、まだ指導内容の取扱いや指導方法の工夫をはじめ、様々なハードルがあると認識しておりますので、双方の学習指導要領レベルでこの動向を後押ししていくような仕組みや、具体的なモデルを検討して示していく必要があると考えます。そして、それぞれは別ではなく、同じ方向を向いているということについても意識化ができるような発信ができればと思います。
これらのことについては、現在、文部科学省が全国13地区で進めておりますインクルーシブな学校運営モデル事業の取組において、現行のシステムを弾力的、柔軟に運用することにチャレンジしていますので、その成果等を取り入れていくことも必要であると考えます。
もう一つは、特別な教育の場における教育の充実です。今申し上げたような取組は、まだ正直、道半ばであり、特別支援学校や支援学級においては、専門性の問題やシステム構築の不備などによってまだ混乱も見られるように捉えております。
私は、これらの課題や混乱を否定的に捉えているということではなく、全ての教育の場における多様なニーズのある子供たちの学びをより一層充実させていく上での必要なプロセスの一つではないかと捉えています。
例えば、検討と提案が必要なことの一つとして、自立活動の指導の充実や、各教科等の指導の充実においては、研究開発学校の取組に関わらせていただいた経緯からも、カリキュラム・マネジメントが肝要になると思います。しかしながら、その具体をどのように進めていけばよいかなどについての課題について、やはり具体的な考え方やモデル提示などが必要ではないかと思います。
また、自立活動については、例えば、知的障害や発達障害のある子供の認知特性や学び方、学習方略などに関する具体的な指導に関する例も示していくことが必要ではないかと思います。そして、何よりも本人主体の教育の実現が求められて、そのための具体的方策が必要と考えますので、その一つとして、キャリア・パスポートの活用を積極的に図っていくことなども必要かと思っています。
いずれにしても、このような背景からも、論点整理で示された基盤となる考え方として多様性の包摂が位置づけられたことは、画期的だと思っています。また、深い学びの実装と実現可能性の確保の3つの方向性を三位一体で具現化するということは、何よりも学習者である子供目線に立つということ、そして、実際に教育を行う教師目線に立った議論を重ねることが不可欠であり、理念を具現化するための分かりやすさが必要だと感じています。
そういったことで、このワーキングでは、障害による学習上または生活上の困難に視点を当てた特別支援教育というカテゴリーでの議論になると思うのですが、障害を背景とする対象範囲は歴史的にも拡大してきましたし、一方で、教育全体の流れとして、障害の有無に関わらない多様なニーズへの対応の必要性が高まり、必要性が広がりを見せてきているということから、この辺りのつながりを意図しながら議論を進めていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 菊地委員、ありがとうございます。今おっしゃったように、多様性の包摂をはじめとするキーワードを学習者主体で考えていくときに、ひょっとしたら、総則との関係も出てくるかもしれないという問題提起と、しかしながら、特別支援教育の現場での自立活動の取組などには、さらに具体的なモデルの提示やカリキュラム・マネジメントなど、いずれにしても文部科学省が支援している13地区のインクルーシブ学校運営モデルづくりであるとか、研究開発のプロジェクトなど、そうしたものを生かす意義を示していただきまして、ありがとうございます。
それでは、澤隆史委員、いらっしゃいますか。
【澤委員】 はい。
【清原主査】 お願いいたします。
【澤委員】 澤隆史と申します。東京学芸大学で勤務しております。よろしくお願いいたします。
論点整理、現状の課題についていろいろと挙げられて、私も読ませていただいて、非常に課題が多岐にわたるなということで、難しさを感じているところでございます。微力ながらお手伝いができればなというふうに思っております。
私、聴覚障害が専門で、聾学校、いわゆる特別支援学校ですとか、難聴学級、通級教室の先生方と一緒に取り組んでまいりました。やはり読んでいると、どうしても聴覚障害のところに目が行ってしまうんですが、やはり今、聴覚の特別支援学校では、とにかく子供の数が減少していて、なかなか主体的・対話的で深い学びというところを維持していくことが非常に難しくなっているというところがあります。ここをどうしていくのかというところが一つ私にとっても課題でもありますし、全体にとっての課題でもあるのかなというふうに考えております。ICTの活用ですとか、あるいはAIの活用ですとか、様々な考え方ができると思うんですが、皆様と一緒に議論できればというふうに思っております。
あと、もう一つは、川合先生も御指摘いただきましたけれども、やっぱり中学校や高等学校段階で悩むお子さんが非常に多いということですね。高校通級もまだ十分に広がっているとは言えませんし、聴覚障害に関しては、聾学校の子供の数が減っている一方で、通常学校に通う子供の数が非常に増えてきている。ただ、中学校、高等学校段階で、なかなか支援が行き届いていない、あるいはその実態が見えないというお子さんがたくさんいらっしゃると思うんですね。その辺りのところ、高校通級というところを含めて、どういうような方策が考えられるのかなというところを深めていければなというふうに思っております。
あとは、個人的な意見なんですけれども、2つ言わせてください。1つは、先ほど有吉委員が言われたようにし、分かりやすい指導要領ということですね。私も読んでいて、正直、なかなか読むのに骨が折れるといいますか、感じがします。これを先生方に手に取って読んでいただく、理解していただくというための書き方というんでしょうか、そういったところも工夫ができるといいのかなというふうに思っています。
最後は、私どもの大学はやはり教員養成の大学ということで、専門性のある学生を育てて教員にしていくということが使命なんですけれども、正直、大学で学んだ専門性が生かされる学校や職場になかなか採用されていないという現状もあります。これは、この部会でお話をすることではないのかもしれませんけれども、やはりせっかく培った専門性が生かされるような採用制度ですとか、試験制度であるとか、何かそういうところまで踏み込んでお話ができればありがたいなというふうに考えております。
以上です。ありがとうございました。
【清原主査】 澤委員、ありがとうございます。聴覚障害が御専門の立場から、人数が減っていく中、ICTやAIの活用も検討すること、それから、中学校、高校段階での生徒の悩みに寄り添う必要性、何よりも分かりやすい学習指導要領をと。そして、教員養成のマッチングにも御提案がありました。ありがとうございます。
それでは、谷口明子委員、お願いいたします。
【谷口委員】 ありがとうございます。東洋大学に勤務しております谷口明子と申します。専門は病弱・身体虚弱教育でございます。
先ほど子供たちの声を御説明いただきましたけれども、子供たちが将来に向けて力をつけたいということをすごく願っているということが胸に迫ってきておりました。やはりそうした子供たちの思いに応えられるような教育の質と量を保障していくということに強い責任を感じた次第でございます。そうした責任を担わせていただくということを、私自身とても光栄に思いつつ、力を尽くしてまいりたく思っているところでございます。
病弱の立場からが主になってしまいますけれども、御説明いただいたことに関しまして、少し意見と感想等を申し上げたく存じます。
まず、現在の病弱教育の現状でございますが、かつては大勢を占めておりました慢性疾患のあるお子さんたちのほとんどが、今、通常の学級に在籍をしているという現状がございます。けれども、通級の指導を使っているというお子さんは極めて少なくて、言わば慢性疾患等のあるお子さんたちは、必要な支援を受けられないまま学校生活を送っているのではないかというところが一つの課題になっているかと思います。
こうしたところに関しましては、養護教諭の先生をキーパーソンにしながら、通常の学級の中で支援のシステムをつくっていくというところも必要になるところではないかと思っております。
それを特別支援学校の学習指導要領に書くのか、通常の学級のほうの小・中学校、高等学校のほうに書くのかというところにつきましては、両方書いておいたほうがいいようには思っておりますけれども、また御議論いただければと思っております。
また、慢性疾患のお子さんが減ったと申し上げましたけれども、それに対応する形で、精神疾患や発達障害のあるお子さんたちが病弱の学校に多く在籍をしているという現状がございます。どんどん増える一方でございます。
こうしたお子さんたちへの対応や、あるいは教育実践上の課題というのが、従来からの身体の病気を持っている、例えば、東京の大学病院に入院している小児がんのあるお子さんたちへの教育といったものとやはり違っているというのが現状でございます。
こうしたお子さんたちのそれぞれの違いというふうなものを踏まえつつ、病弱教育というところにおける教育支援をどのように考えていくのかということも考えてまいりたく思っているところでございます。
ただ、違うと申し上げましたけれども、先日も地方の精神疾患を中心とする特別支援学校の先生とお話をする機会がございましたけれども、共通点というのはやはりございました。それは、自立と社会参加というものをどんなふうにして見据えていくのかということで、どういう形で元の学校に返すなり、あるいは社会に送り出したらいいのかということに心を砕いていらっしゃるというところでございました。ここは本当に通底する部分かなと思っているところでございまして、菊地先生の御専門のキャリア教育というところとも重なるところと考えております。
そして、そのキャリア教育、あるいは自立と社会参加を見据えた教育の鍵は、やはり自立活動ではないかということは強く思っております。自立活動の中で新しい一つの流れとしては、やはりICTの活用ということが大きいと思っています。この情報活用能力の育成については、論点整理のほうでも、いろいろな形で中学で新しい科目が設定されたりと、様々な取組が行われておりますが、病弱児に関しましても、病弱児への支援の制度ですとか、支援の資源が今どんなふうにあるのかということを、常にアップデートされていくものですから、今ある制度を教え込むというよりも、調べる手だてをきちんと教えていく。そういった教育が自立活動としてあるということも、自立と社会参加ということに向けた一つの大事な教育になるのではないかということも思っております。
また、通級の制度が非常に柔軟になり、また、充実していくということも心強く思っているところでございます。やはり課題となるのは、教員の専門性をどのように担保していくかというところで、拡大して、教科も教え、さらに自立活動も教えるということになりますと、やはり専門性の高さが求められてくる。それをどのようにしてサポートしていくのか、また、どんなふうに考えていくのかというところは、今後、先生方と一緒に御議論させていただければと思っているところでございます。
ほかにも入院中の高校生の教育保障がまだまだ至っていないといったところも含めて、課題山積の領域ではございますが、その領域の中のことを含めつつも、全体のことも先生方から学ばせていただきながら、御一緒に考えていければと思っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 谷口委員、ありがとうございます。病児・病弱児の御専門から、自立と社会参加がやはり重要であり、ICTの活用、そして、教員の専門性についても御指摘いただきました。ありがとうございます。
それでは、丹治敬之委員、お願いいたします。
【丹治委員】 よろしくお願いいたします。筑波大学人間系の丹治と申します。
私の専門は、発達障害教育、知的障害教育になりまして、主に学習障害ですとか、自閉症スペクトラムの教育について専門にしております。
先ほど事務局のほうからお示しいただきました特別支援教育における課題、あるいは次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方で、特に私が注目したのは、やはり多様性の包摂というところと、深い学びの実装というところ、こちらは特別支援教育の子供たちにとってみてもとても重要な概念ですし、キーワードになるかなというふうに思っています。
私が学習障害の専門ということで、そういった立場からちょっとお伝えをしていきたいなと思うところは、やはり合理的配慮というところをキーワードに挙げたいと思います。合理的配慮、ワーキンググループにおける検討事項論点丸1の中でもお示しいただきましたが、やはり本人・保護者との建設的対話を通じた合理的配慮の提供というのがなかなか難しいというような現状もあるかなと思います。
これは、本人・保護者が抱えている課題もありますし、やっぱり学校全体、学校自体がどう進めていいか分からないというような、そういった現状もあるんじゃないかなというふうに思っています。そうすると、なかなか建設的対話、対話が進んでいかないというような現状もあるかなというふうに思いますので、そういったことの問題を今後どういうふうに考えていけばいいのかなと。方策というのはちょっと考えていかないといけないかなと思っています。
その中で、やはり障害の社会モデルの考え方というのも私もかなり注目していまして、そもそも社会モデルの考え方に基づいて、多様な子供たち前提の学級づくり、授業づくりが進められれば、学びの多様性が確保されたり、多様な学び方が確保されるような環境づくりが整って、そういった違う学び方ですとか、その子に合った学び方というのが尊重される環境ができるんじゃないかなと思っています。そうしますと、学習障害の子供たちや学習に困難を抱えている子供たちがより学びやすく、そして、より意見が表明しやすくなるのではないかなというふうに思っています。
やはりニーズが潜在化されたりとか、あるいは、意見が表明しにくい環境というのが現状あったりするのではないかなということを感じていますので、そういった社会モデルの実装とか、多様な子供たちを前提とした授業づくり、学級経営というのが基盤にあって、その上で合理的配慮といったところが充実していくといいのではないかなというふうに思っておりました。
もう一つ、深い学びの実装のところで、やはり先ほどから教師の専門性という話がありましたが、自立活動の専門性というのが一つキーワードになってくるのではないかなというふうに思っております。
ただ、自立活動はなかなか難しかったり、学習指導要領も難解だったりするかなというふうに思いますので、先ほど来から出ております分かりやすさ、あるいは、今回の学習指導要領でかなり非常に画期的なビジョンは示されたかなというふうに思いますが、それを実装していく、先生方に届けていく、使っていくというようなところを目指したときに、やはり先ほど川合先生ですとか、ほかの先生もおっしゃっていましたけれども、ガイドブックですとか、あるいはデータベース、例えば自立活動のデータベースですとか、そういったことも踏まえながら、どう実装していくかといったところ、あるいはどう届けていくかというところが課題になってくるかなというふうに思いますので、ビジョンと実装というのが今後の課題になってくるのではないかなというふうに思っておりました。
以上になります。
【清原主査】 丹治委員、ありがとうございます。発達障害、自閉症等の御専門から、合理的配慮についての方策、あるいは、社会モデルの実装に向けては、教員の皆様が活躍していただくために、データベースやガイドラインなどの充実が必要ではないかという御提案もいただきました。ありがとうございます。
それでは、堀川淳子委員、お願いいたします。
【堀川委員】 失礼いたします。広島市教育委員会特別支援教育課で課長をしております堀川淳子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私はもともと教員でして、小学校で17年間、発達障害や情緒障害の通級指導教室を担当しておりました。その後、特別支援学校の教育相談主任ということで、いわゆるセンター的機能、地域支援ということで、本人・保護者相談を担当させていただくということと、その後、たまたまちょうど時が高等学校の通級指導教室を立ち上げるという時期にタイミングが重なりまして、そちらの通級指導教室の立ち上げと実際の指導の担当を2年間というふうな貴重な経験をさせていただいてきたところです。
現在は政令市の行政のほうにおりまして、小学校、中学校、高等学校、そして幼稚園、特別支援学校、幅広く校種を所管しているところでして、本当に日々、現場の課題と、それから、先生方の頑張りというものを実感しているところです。そういった幅広の校種、そして、現場の感覚、視点というところをしっかりお役に立つようにしていきたいと思っています。
このたび、先ほども事務局のほうから御説明がありましたとおり、特別支援教育に関する現状と課題をお聞きする中で、本当に多岐にわたる課題があるということを改めて実感しているところです。
中でも私は課題だと思っているところが3点ありまして、1つは自立活動の在り方です。どの委員もおっしゃっていましたけれども、これは通級指導教室も含めて、特別支援学級、特別支援学校において、教育課程上、自立活動を位置づけて、個に応じた指導を進めていく必要があるにもかかわらず、その位置づけの不十分さであるとか、また、実際に本当にその子に必要なニーズや実態を踏まえた適切な指導が行われているのかというと、まだまだ十分ではないように思っています。
それはなぜかというと、先生方の経験の差ということもあるでしょうし、急増する学級や子供たちに対応できるような状況になっていないのではないかと思っています。本来こういった、特に自立活動をするに当たっては、実態把握、個々の課題をしっかり把握して、目標や実践につなげていくという力が必要であるところ、そういった専門性といいますか、教員の力というものをどのように高めていくかということに課題を感じているところです。
また、日々、学習指導要領に戻りながら、現場の指導を進めているところで課題を感じているところです。
2点目は、通級による指導について、新たに時代に合った、また、子供のニーズを満たすものとなるようにするにはどうしたらいいかというところです。私が教員になったちょうど30年ぐらい前に通級が制度化されたというところがありまして、そこから通級そのものは随分定着してきて、現場の認知度や利用状況というのは変わってきていると思いますけれども、でも、やはり課題にも挙げられていたとおり、子供のニーズをきちんと把握した上で、そして、ピンポイントで効果が発揮できるような指導になっているかというと、まだまだ課題があるように思います。
今回の改訂の論点の中で、通級の指導の中で教科を扱うのかどうかというところも非常に大きな転換期になっていて、自立活動を扱いつつ、さらに教科を扱うとなると、誰がどのように判断して、担任とどう分担して子供の力を伸ばしていくのかというところについては慎重に考えていく必要があると思っています。
3点目が、高等学校での支援です。私も高等学校での勤務の経験の中で、派手に困っている子、そして、密かに困っている子というのが本当にいろいろいるように思いますし、高校の全日制・通信制・定時制いろいろある中で、もしかしたら密かに困っていた子が学校に来られなくなるといったような、どんどん潜在化するとか、表に出なくなってしまうという課題が生じているように思っています。
そこをしっかり学校のほうで支援を進めていくには、やはり実態把握力に尽きると思っていて、表面化している困難の背景には何があるのかということが、きちんと先生方の理解に繋がるような、そういった示し方がこのたびの学習指導要領の中に求められるのではないかと思っています。
全体的な課題は本当に様々ですけれども、子供たちの力を最大限伸ばすことができるような指導、そして、評価に繋がるような、また、先生方にとって分かりやすく活用できる学習指導要領となるように、一つ一つの事項を丁寧に検討していきたいと思っております。
委員の皆様から学びながら精いっぱい努めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【清原主査】 堀川委員、ありがとうございます。まず、自立活動の在り方、そして、2番目に通級指導の中での自立活動と教科の扱い、3番目に高等学校の実態把握力に基づいた多様な支援について問題提起いただきました。ありがとうございます。
それでは、続きまして、宮内久絵委員、お願いします。
【宮内委員】 筑波大学人間系の宮内久絵と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、簡単に自己紹介からですけれども、私の専門は視覚障害教育になります。これまで研究の視点から、視覚障害のある子供たちが地域の通常学校で学ぶ中で、どういう条件が整う必要があるのか。これについて、主に海外の研究者たちと見てきたというのがあります。
あと、それ以外には、歴史的な視点から、特に私が注目してきたのはイギリスなんですが、分離教育が主流であった1930年代から、その後でニーズ教育だとかインクルーシブ教育の理念が普及していく中で、分離的な場を担っていた盲学校がどのように変わってきたのか、そういったところに着目して研究をしてまいりました。
今回、事務局のほうから御丁寧に資料の説明をいただき、本当にありがとうございます。私のほうで拝見しながら、幾つか印象に残ったキーワードがあります。既に多くの委員の先生方もおっしゃっていましたけれども、まず、1つが自立活動ですね。海外の研究者と一緒に、特に今、イギリスとアメリカの先生方と一緒に研究していますと、これ、ちょっと視覚障害に特化したものなんですけれども、イギリスやアメリカでは、視覚障害に特化した自立活動というものがありまして、これ、エクスパンデットコアカリキュラムというんですね。主に9つの領域があるというふうに言われていて、これは視覚障害があれば、通常学校で学ぶにせよ、特別支援学校で学ぶにせよ、必ずこれは学習しなくてはいけないという形になっています。
その中には、セルフディターミネーションスキルとか、あと、セルフアドボカシーなども入っていて、もしかするとこれはほかの障害種にも共通する部分かなと思いながら、今日のお話を聞いていた次第です。
それ以外に、資料の中で自立活動というキーワード以外に、柔軟な教育課程、そして、学習評価、この2つはとても大事だと思っています。特に海外の研究者と今主に研究しているのが、通常の学校で学ぶ視覚障害児がうまくいっている例と、なかなかうまくいかない例というのが分かれます。うまくいっている例を見ると、共通した条件があって、その条件の一つに、子供たちがきちんと自立活動のスキルを身につけているかどうかというのが一つ大きなことがあります。あとは、通常学校側に柔軟な教育課程があるか。柔軟ということは、やっぱり自由度がたくさんありますので、学習評価とセットになってきますので、この両方がきちんと整備されているかというのが大事になってきます。
あと、もう一つは、多くの委員の先生方が言っていましたけれども、やはり高い専門性を有する教員の存在ですね。
なので、こういったキーワードをこれから委員の皆様と一緒に考えていければというふうに思っています。今回、このような場に参加させていただきますことを本当にうれしく思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上になります。
【清原主査】 宮内委員、ありがとうございます。自立活動、そして柔軟な学習課程、学習評価、そして、高い専門性を有する教員というキーワードをいただきました。ありがとうございます。
それでは、青山新吾委員、お願いします。
【青山委員】 皆様、今日は授業があり遅れまして、申し訳ございませんでした。ノートルダム清心女子大学の青山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、もともと小学校の現場で通級による指導を中心に教員を務めておりました。その後、岡山県教育委員会で指導主事をさせていただいた後、大学に赴任して、現在に至っております。
大学では、教員養成に携わると同時に、幼稚園・小・中・高等学校等々、学校との関係性、フィールドを大切にしながら仕事をさせていただいているという、立ち位置にいる者でございます。
今回、論点整理を拝見したときに、多様性の包摂という考え方が新しい学習指導要領の中心の考え方として位置づけられるというのは、これは本当に画期的なことで、私、大変うれしく、また、驚きを持って受け止めました。少し大げさかもしれませんが、令和の大改革と言ってもいいような、そういったようなことではないのかなというふうに考えました。
と同時に、ここから、それを踏まえまして、3点、考えていることを申します。1点目は、そのすごいことが起きているということと相まって、この部会で議論していくことが、社会モデルを大切にしていく考え方と上手に融合されていくような、そういったような方向性を持てることというのが大前提として非常に大切だろうと思います。
もう少し具体的に言うと、社会モデルと個別の指導支援の必要性ということが、これ、二項対立にならずに、それが合わさった形で大切なんだということが多くの現場、全ての現場、子供たち、保護者、学校、教職員、その他に分かりやすく伝わっていくことがまず第一に大切なのではないのかなと。いろいろな議論をしていく上でも、やはりそこが一番肝になる部分なんじゃないのかなというふうに考えたということが1つ目でございます。
2つ目は、それを踏まえた上で、先ほどから多くの委員から出ている話ですけれども、自立活動が実際検討していく中で大変重要なテーマになるのではないのかと思いました。
重なる部分は外しまして、重なっていないことで少しだけ申し上げます。それは、自立活動を大切にしていくときに、先ほど川合委員からも出たんですけれども、子供たちが自分を大切にするというか、自分らしくある、自分らしく生きるということが、実は自立活動と密接につながっているんだということを、子供たちも指導者もみんなが共通して持てることというのが大切なような気がします。
少し情緒的な言い方になりますけれども、例えば、夢に向かう自立活動とでも申しましょうか。その自立活動というのは、子供たちの夢に向かっていくものなのだということが丁寧に位置づけられておくことということが重要なのではないだろうかというふうに考えたことが2つ目でございます。
そして、3つ目ですが、私自身、いろいろなフィールドで仕事をしておりますけれども、やはり小学校、中学校のフィールドで一緒に先生方や子供たちと仕事をすることが多いです。その中で、やはり非常に教職員の方々は努力をしている現場がほとんどだと思います。なんですけれども、多くの先生方は物すごく努力をされていますが、それでもなおかつ、本当に切なくなってしまうくらいに難しいこと、うまくいかないことが、小・中学校の現場で起きているという現実があるのではないかと思います。
ですから、それを踏まえたときに、特別支援学校を基本的なモデルとして、特別支援教育ということが進んできているという面はもちろんあると思うんです。
【清原主査】 青山先生、ごめんなさい。実は文部科学省のほうのネットワークの関係で、先生、3点目からが途切れてしまいました。自立活動の重要性、夢に向かう自立活動まではお聞きすることができましたが、3点目の小・中学校のところからもう一度御発言をお願いします。文部科学省以外の皆様には重ねて聞いていただくことになりますが、青山先生、よろしくお願いいたします。
【青山委員】 承知いたしました。では、3点目から参ります。私、小・中学校をフィールドとして仕事をすることが多い関係で、小・中学校に少し焦点を絞ります。多くの現場で先生方は子供たちと一緒に本当に丁寧な仕事をなさっているというのが現状だと思います。しかしながら、うまくいかないことがたくさんあって、本当に切なくなるような状況が起きているのではないかと認識しています。
それを踏まえたときに、やはり特別支援学校をモデルとして、特別支援教育が大切に丁寧に今まで進んできたと思いますが、小・中学校を中心とする特別支援教育の独自性というものもやはり丁寧に語られ、示される必要性があるのではないのかと考えます。
例えばですけれども、現行学習指導要領で初めて示された特別支援学級の教育課程の編成モデルですが、それを具体的にやっぱり運営、実装していくときに、まだまだ丁寧な示し方が必要なのではないだろうかとも思います。
また、交流及び共同学習の中でも、特に共同学習の側面が、カリキュラムのことを考えていくときには非常に重要ではないかとも思います。それは今、文部科学省さんがなさっている学校運営モデル事業の中の成果と恐らく重なってくるところがあるのではないだろうかとも思います。
また、自立活動にしても、実際には、ひょっとすると小・中学校の現場では、集団との在り方を丁寧に踏まえた、そういう関係性の下での自立活動の在り方といったような、視点も重要なのではないだろうかと思います。
といったようなことから、小・中学校で取り組んできている特別支援教育の独自性を丁寧に整理しながら、それを分かりやすく発信するということも、今回の議論の中で大切にしていければよいなというふうに考えている次第でございます。
以上でございます。
【清原主査】 まず、社会モデルと個別の指導支援の必要性が対立するものではないということ。そして、自立活動の重要性は、自分を大切にする、自分らしく生きるという、まさに夢に向かう自立活動として推進していく必要性。最後に、小・中学校の取組というものを出発点にして、共同学習の側面や集団の在り方など、いわゆる学校運営モデルの在り方を参考にしながら、視点の柔軟性を持って検討していくことを御提案いただきました。
さて、皆様、お諮りいたします。あと2名の方の御発言をぜひ聞きたいと思っておりますので、多少の時間の延長をお許しいただいて、早速、是永かな子委員に御発言をお願いいたします。
【是永委員】 よろしくお願いします。高知大学の是永かな子と申します。専門は、北欧の特別ニーズ教育です。本日は、学校種、教育の場、障害種、そして北欧の取組を念頭に3分程度お話しします。
まず、通常学校の通常学級です。通常学級の柔軟化のために、第1に、通級や特別支援学級での自立活動を意識的に通常学級に導入することで、合理的配慮の提供を具体化する方法を検討したいと思います。これは、スウェーデンにおける通常学級において知的障害カリキュラムを学ぶ統合児のイメージです。
第2に、過重な負担の判断を段階的に支援することです。校内のみならず、基礎自治体、県、そして国で判断の支援をする機関が必要だと考えます。スウェーデンでは、国レベルで異議申立て機関があります。
第3に、デジタル学習基盤に関して、テクノロジーによって何が効果的なのかの検討の継続が必要だと考えます。これは、スウェーデン、フィンランドの紙、アナログ回帰の傾向を考慮しています。
次に、通級に関して、通級がある場合と通級がない場合が考えられます。通級がある場合は、実態把握、指導目標や内容設定のための時間の確保や、通級担当教員への支援が必要だと考えます。スウェーデンは、校内に配置されている特別教育家という専門家が個別の計画作成を支援してくれます。
通級がない場合は、13人の通級対象児が想定されない学校では、基礎自治体単位で拠点校に、巡回も行う通級を計画的に設置するのがよいのではないかと考えます。
次に、特別支援学級についてです。障害種対応を考慮しつつ、特別支援学校のセンター的機能の活用が重要になると考えますが、言語障害児教育に関しては、医療との連携も検討したいと考えます。スウェーデンでは、言語聴覚士が学習障害対応を担っているからです。
次に、特別支援学校に関しては、スウェーデンではインクルーシブ教育を推進した結果、バイリンガル聾教育を保障する聾学校と知的障害の特別学校しか残っていません。それを考えると、聴覚障害における手話保障の強化と、知的障害特別支援学校の専門性の強化の方向性を検討したいと考えます。
また、病弱特別支援学校については、心身症等を想定した精神疾患対応は、学びの多様化学校との連携も有効だと考えます。それはスウェーデンのリソース学校のようなイメージです。
最後に、高校に関して。高校では、通級の充実とともに、高等学校における特別なコースの設置を検討したいと考えております。中学校の自閉症・情緒障害特別支援学級や知的障害特別支援学級の卒業生の高等学校における進路保障として、東京都のエンカレッジスクール、チャレンジスクールや、大阪府の知的障がい生徒自立支援コース・共生推進教室のような場所の拡充が重要だと考えます。スウェーデンにおいても、義務教育の単位が履修できなかった子供を対象とした導入プログラムの機能が現在重視されているからです。
以上です。
【清原主査】 是永委員、ありがとうございます。スウェーデンの実態との関係で、合理的配慮や過重な負担の在り方の判断支援や、デジタル学習のための在り方など、いろいろ御提案いただきました。感謝いたします。
それでは、野口晃菜委員、お願いいたします。
【野口委員】 一般社団法人UNIVAの野口です。私は、現在、様々な自治体とともにインクルーシブな学校づくりをしています。教育課程企画特別部会特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る教育課程のワーキンググループ、外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議のほうの委員も努めております。本ワーキンググループで特別支援教育の第一線で御活躍をされている多様な立場の皆様と御一緒できることをうれしく思います。
事務局からも御説明があったとおり、次期学習指導要領の大きな柱の一つが多様性の包摂です。これまでも特別支援教育への転換、さらに差別解消法による、通常の学級においても基礎的環境整備や合理的配慮の提供が推進されてきました。
一方で、特別支援教育や合理的配慮はまだまだ特別な場で、特別な担当者が個別に行うものとの認識は強く、そもそも授業や学級経営の在り方の土台を変えるものにはなっていないと思います。今回の方針は、通常の教育そのものをインクルーシブを土台に変えていこうということであり、共生社会の実現に向けた大きな一歩です。
改めて共生社会、そして民主主義の担い手を育むためには、多様な事情や背景を持つ人たちと日常的に出会い、共生するための具体的な方法を全ての子供が学ぶ機会が必要であるという前提を共有しておきたいと思います。
その上で4点ほど意見を簡単に述べます。1点目です。先生方からもお話がありましたが、土台を変えていくためには、これまで蓄積されてきた特別支援教育の知見を、通常の学級の包摂性を高めるために活用することが重要です。具体的には、社会モデルの視点に立ち基礎的環境整備や合理的な配慮を実施することにより、社会的障壁を解消していくことが包摂性を高めるという共通理解を持つためにも、総則に社会モデルについて記載すること、そして、各教科や領域等において多様性を前提とした授業づくりや学級づくりがなされるように、基礎的環境整備や合理的配慮の記載を学習指導要領にしていくことが必要だと思っています。
こういった知見は、特別支援教育の子供のみでなく、外国人等児童生徒、特定分野に特異な才能のある子供、そして、不登校状態にある子などにとっても必要な知見です。これは川合先生のおっしゃっていた多層型支援における第1層支援をいかに充実させるかというところに繋がるかと思います。本ワーキンググループを通して議論をし、それぞれのワーキンググループに御提案するような形がいいかと思います。
2点目です。先生方からもお話がありましたが、自立活動です。現在の自立活動の目的は、障害に起因する困難さの改善・克服が中心になっており、社会的障壁を解消するという社会モデルの視点が欠けています。それによって、例えば事務局資料にも記載されているとおり、自立活動の内容がパッケージ化された、「○○トレーニング」的な内容に偏っているような現状もあります。
先ほど緒方委員や菊地委員からもあったように、本人を主体とした意思決定支援やセルフアドボカシーについても、今後、自立活動で扱っていくようにすべきだと思います。
既に合理的配慮は義務づけられているので、自らに必要な合理的配慮を知って、意思表明をすることを学ぶ機会を保障していくためにも、社会モデルに基づいて、自立活動の目的や内容を検討することを提案します。
3点目は、通常の学級において、目標の異なる子供が共に学ぶことをどう考えるかです。養護学校義務化のときとは、子供の数や実態、授業の在り方も大きく変わり、デジタル学習基盤も整備されつつあることを踏まえたとき、そして、日常的に多様な他者とともに過ごすことの大切さを踏まえたとき、異なる目標の子供は別の場で学ぶ前提、同じ場にいる子たちは全員が同じスピードで同じ目標を同じ方法で学ぶという前提を、私たちは改めて検討していく必要があるのではないかと思います。
現在、通常の学級に22条の3に該当する子供が在籍している実態もあります。例えば、知的障害のある子供について、通級による指導の対象にしていくかどうかなども検討していきたいです。
最後に、交流及び共同学習です。特に特別支援学校と地域の学校の交流及び共同学習は、学習指導要領上に位置づけられているものの、実態としてはほぼ実施していない学校もあり、インクルーシブ教育システムを実現しているとは言えないのではないでしょうか。運用上の課題も含めて検討していきたいです。
先生方から専門性が足りないという言葉がとても多くありましたが、今回の柱の3点目が実行可能性ですので、どうしたらより実行可能な形で子供たちに必要な支援が届けられるのかということを考えていきたいと思います。
以上です。今後の議論を楽しみにしています。
【清原主査】 野口委員、ありがとうございます。難しい困難な環境の中でもちゃんと御発言が届きましたので、御安心ください。多様性の包摂を実行していくために、4点について御提案いただきました。通常学級の包摂性を高める、社会モデルを前提とすること、そして、2点目に、自立活動の内容については、主体としての意思決定支援をしていくこと、3点目に、通常の学級で多様性をいかに包含していくかということ、最後に共同学習についても御提案いただきました。念を押すように、実行可能性を担保しましょうということでした。ありがとうございます。
私も発言したいところではございますが、定刻を過ぎておりますので、本日、お一人お一人からいただきました特別支援教育の実態と課題、そして、私たちがワーキンググループとして受け止めて解決をしていくべき論点について、さらに委員の皆様から深めていただいたように思います。
何よりも共通して皆様が言ってくださったのは、まさに特別支援教育と通常学級の壁を越えるような包摂性ということに対する共通認識だったと思います。しかしながら、個別的に一人一人に伴走できるような教育の在り方を決して忘れてはいけないということも共有できたと思います。
本日皆様からいただきました御意見を、さらに私たちは今後の検討の中の切り口として、あるいはキーワードとして生かしていきたいと思います。皆様、大変に積極的に御発言をいただきまして、ありがとうございます。
それでは、時間も参りましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。
最後に、次回以降の予定について、堀江補佐、御説明をお願いいたします。
【堀江特別支援教育課課長補佐】 資料の8を御覧ください。本日資料6でお示ししました検討事項について、このワーキンググループで審議を行うことを基本といたしますけれども、その議論の状況については、教育課程企画特別部会に適宜報告するということになっております。
また、今後、審議の過程におきまして、本ワーキンググループの検討事項について、関係団体からのヒアリングを実施する予定にしております。
教育課程企画特別部会におきましては、遅くとも令和8年、来年の夏頃までに取りまとめを行うこととされておりますので、このワーキンググループとしての取りまとめをそれ以前に行うということを想定しております。
次回第2回につきましては、10月21日火曜日を予定しております。詳細については、改めて御案内させていただきます。
事務局からは以上でございます。
【清原主査】 堀江補佐、御説明ありがとうございます。
皆様、日程について共有をさせていただきました。私たちは、限られた時間ではございますが、与えられた課題について一定の時間感覚を持ちながら、集中的に審議を重ねていきたいと思います。
私にとりましては初対面の委員の皆様も多かったのですが、今日、お一人お一人の問題意識を共有させていただいて、多角的視点で、しかし、実行可能な学習指導要領の検討に向けて連携できるという確信を持たせていただきました。
それでは、次回、10月21日9時半からまた皆様お目にかかります。御参集よろしくお願いいたします。
本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――