教育課程部会 教育課程企画特別部会(第13回) 議事録

1.日時

令和7年9月19日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所

WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式

3.議題

  1. 論点整理(案)について
  2. その他

4.議事録

【貞広主査】  それでは、第13回教育課程企画特別部会を開催いたします。
 前回は、これまでの議論を踏まえた論点整理(素案)につきまして御議論をいただきました。本日は、前回委員の皆様から頂戴した御意見を踏まえて修正をしました論点整理(案)につきまして、皆様に御議論をいただきたいと存じます。
 まず、論点整理(案)につきまして、前回からの修正点を中心に事務局より御説明をいただいた後、残りの時間で皆様と意見交換を行いたいと思います。
 それでは、まず、論点整理(案)につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  失礼いたします。教育課程企画室長の栗山でございます。
 それでは、論点整理(案)について、前回、素案を御議論いただきましたので、素案からの変更点を中心に御説明をさせていただきます。
 まず、目次については修正ございません。
 第一章、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方についてでございます。修正点中心にでございますけれども、まず、こちらのページにつきましては、2つ目のパラグラフの6行目ですけれども、文章が終わってから、「第一の方向性とすべきものである」という部分の後に、「これらを進めるに当たっては学校段階間の連携・接続の深化による学びの連続性の確保に一層留意すべきである」という、学校段階間の連携・接続について記載を加えております。
 その次のチェックのパラグラフ、デジタルの関係のパラグラフで、2行目に「また」と中段からございますけれども、「また」の後に「社会のデジタル化がもたらしている」と、負の側面との関連で記載を追記させていただいております。
 このページについては、追記、修正は以上でございます。
 次のページに参ります。一番上の丸3、実現可能性の確保に関連いたしまして、中段から、「実現可能とする観点であり」の後に、学習基盤や勤務環境整備について記載を充実させていただいておりまして、具体には、「デジタル学習基盤の更なる充実、教科書や教材、指導書の改善、必要な設備の整備、総合的な勤務環境整備等も相まって審議全体に通底させるべき」という形で記載を充実しております。
 その後、チェックのパラグラフの記載でございますけれども、「過度な負担・負担感が生じにくいよう」としていたものを、「生じないような」という記載にさせていただいております。
 その後、次の次のパラグラフ、「「みんな」が示す主体は」で始める部分でございますけれども、2行目の途中から、「「社会に開かれた教育課程」や」に加えて、「「個人と社会のウェルビーイングの実現」といった理念とも深く関わる」と追記をさせていただいております。
 第2パラグラフであります。7行目、この本文の最後の部分でございますけれども、「こうした考え方は」という部分、「こうした考え方は、教育基本法や学校教育法等の趣旨を踏まえたものである」と追記をしており、この考え方が教育基本法等の趣旨を踏まえているということを追記しております。
 その下、チェックの「このため」で始まる部分ですけれども、「全ての児童生徒」とあったところに「幼児」を加えております。
 また、このページの最後の部分でありますけれども、「「よりよい学校教育」を通じて「よりよい社会」への移行を図るという意味で、「社会に開かれた教育課程」や」の後に、「「個人と社会のウェルビーイングの実現」といった」と、この部分でも追記をさせていただいております。個人とも深く関わるということでございます。
 次のページでございます。こちらについて、前回の御議論では様々な御意見を頂戴しておりました。御指摘を踏まえまして、見栄え自体を、見せ方自体を少し変えさせていただいております。
 上から、主体的・対話的で深い学びの実装、多様性の包摂、実現可能性の確保と、3つの方向性をまずお示しをした上で、ブルーの部分をお示ししておりますけれども、その下に、「多様な子供たちの「深い学び」を確かなものに」ということを記載した上で、そのままの流れで、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」という、上から流れるように御覧いただけるようにさせていただいております。
 その上で、次のページ、それが具体的にどういう方向性なのかということを見やすいようにお示しをさせていただいているという、全体の構成を変えているというのが大きな修正でございます。
 その上で、記載の修正については、真ん中の丸3の実現可能性の確保に関連いたしまして、それぞれ1、2、3に具体例をもともと指し示しておりましたけれども、カリキュラム・マネジメントを丸3に関連して追記をさせていただいております。
 また、ブルーの、1、2、3を土台として支えている部分でありますけれども、「デジタル学習基盤」に加えて、「をはじめとする基盤整備」として、広く学習基盤整備について読み込めるようにしてあります。
 また、勤務環境整備についても、「総合的な勤務環境整備」という記載にさせていただいているところでございます。
 次のページについてでありますけれども、まず、一番大きな修正につきましては、幼児教育段階を新たに追記させていただいているところでございます。小中高とございましたけれども、幼児教育段階の「幼」と、矢印の一番根っこのところにございまして、そのまま横を御覧いただくと、「言葉を用いて思考を深めていく指導」、「他者と関わり協同する力の育成」、こうした幼児教育段階の内容が小中高以上を支えていくという形でお示しをさせていただいております。
 また、もともと左側に「進路の探究・支援」という記載がございましたけれども、様々御指摘いただいておりました。この部分につきましては、「好き・得意をベースとした主体的な進路選択の促進」という形で文言を適正化させていただいております。
 また、「各教科等」の真ん中の箱でございますけれども、一番下の家庭学習に関連いたしまして括弧を追記いたしておりまして、「家庭学習はじめ学習習慣の確立を含む」という部分を追記させていただいております。
 また、あちこち行って恐縮ですが、「総合」の部分で、「グループ探究」と「個人探究」、前回は三角形で「個人探究」と「グループ探究」で示しておりましたけれども、それをなくして、柔軟に検討できるように、御指摘を踏まえているという形でございます。
 また、同様に、一番下の部分でありますけれども、「デジタル学習基盤をはじめとする基盤整備」「総合的な勤務環境整備」という形で記載をさせていただいているところでございます。
 第二章以降の追記でございます。まず、第二章の関係でございますけれども、こちらのページ、丸1の構造化の上から4つ目のパラグラフを追記しております。必要に応じた精選を含めまして、「構造化の基本的な方針について、今後、総則・評価特別部会で速やかに検討した上で、各教科等WGで当該方針を踏まえて具体の検討を丁寧に進めるべき」と、今後の対応の考え方について追記をさせていただいております。
 次に、14ページでございます。右側の黄緑色の矢印が「内容の取扱い」まで伸びておりましたけれども、これについて表現を適正化し、少し矢印を短くして、「内容の取扱い」までかかっていない形にさせていただいております。
 少しページが飛びまして、50ページまで行かせていただきます。情報活用能力の関係の部分でございます。まず、丸1、小中高を通じた体系的・抜本的な教育内容の充実の部分でございますけれども、小学校段階について、2行目以降、「発達段階を踏まえつつ」の後、「総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を付加すべき」と、今後の具体的な施策を追記させていただいております。
 その上で、次のパラグラフでありますけれども、「留意しつつ」の後に、「情報活用能力の着実な育成を図るべき」ということで追記をさせていただいております。
 また、右側に目を転じていただきまして、丸2の部分でございますけれども、4つ目のパラグラフを追記させていただいております。「改訂を待たずに行うべきこととして」と書いてございますけれども、「生成AIを含む情報技術の活用が深い学びに繋がるよう、その好事例とともに、深い学びに繋がりにくいと考えられる事例も発信すべき」ということで、両面の事例を発信すべきという趣旨を記載させていただいております。
 次の51ページでございます。51ページの丸2の「適切な取扱い」の部分で、「具体的な課題」のところになります。「メディアリテラシー」で始まる箱でありますけれども、その箱の括弧の中、少し表現を具体化しておりまして、「発信源の確認、複数媒体の比較」ということで、メディアリテラシーの関係の取組が具体的に分かるように追記をさせていただいております。
 また、その次のポツの部分で、「長時間利用の影響の理解を含むデジタルとの適切な距離の置き方に関する自己調整」の「に関する自己調整」という部分を追記しておりまして、この部分の趣旨がより分かりやすくなるように、具体的に記載をさせていただいております。
 また、こちらのページについても、左下の小学校の「改善の方向性」の部分で、「一定の時間を確保して内容の着実な育成を図る」という記載にさせていただいております。
 また少し飛びまして、60ページになりますけれども、前回の素案段階で、中学校の下の情報・技術科の箱だけに「探究」という記載が残っておったんですけれども、この部分だけ特に探究をという趣旨ではございませんでしたので、この文字を削除させていただいております。
 また、69ページでございます。69ページの部分、余白の関係でありましたけれども、中段の教科書の関係の部分の真ん中の下のあたり、「紙に加え」という部分がございますけれども、もともと「デジタル学習基盤がインフラとして機能」だった部分に、「学校図書館・公立図書館」という追記をさせていただいております。
 さらに79ページまで進みまして、ポイントの部分でございますけれども、幼児教育の関係で、「遊びの中で直接的・具体的な」という、「遊びの中で」を追記させていただいております。
 次に、カリキュラム・マネジメント、81ページでございますけれども、これも表現の適正化でございますが、下のピンクの部分の丸1でありますけれども、「学校現場がそれぞれの実態に応じて」という部分と、「カリマネを行うのかを構造的・具体的につかみやすい示し方とすること」ということで、学校現場が実態に応じて構造的・具体的にやりやすい示し方を国がするんだということが分かりやすいようにお示しをしております。
 次、産業教育、85ページでございますけれども、右下の丸5の部分であります。もともと「専門高校の教員がマネジメントの」となっていたのを、「企業経営や」を加えているところでございます。
 最後でございますけれども、第八章まで行きまして、105ページでございます。こちらにつきましては、御議論を踏まえまして、3ポツのその他で最後のパラグラフを加えております。「中央教育審議会及び文部科学省は、本「論点整理」の内容について、教育基本法をはじめ現行法令を踏まえつつ、教師や学校、教育委員会はもとより、首長部局、保護者や地域住民、民間の担い手を含め社会全体が理解でき、浸透するようにするとともに、教師や学校、教育委員会が、現時点から次期学習指導要領への見通しを持って取り組めるように、あらゆる方策を尽くす」という記載を加えさせていただいているところでございます。
 素案からの変更部分は以上でございます。
 関連しまして、1点、補足でございまして、こちらについては、論点整理の参考資料集ということで、かなり大部の参考資料集を御用意しておりますので、適宜御参照いただければ幸いでございます。
 もう1点、補足でございますけれども、こちらは、論点整理の中で、調整授業時数制度の運用に向けた知見の蓄積という部分で、もともと研究開発学校でも取組を進めておりますが、全ての都道府県、指定都市での知見の蓄積を図るため、令和8年度、来年度からさらなる事例の創出の加速を図るべきという御指摘について記載させていただいておりました。
 これを受けまして具体化したものを本日、公表をさせていただきたく考えている次第でございます。具体的な枠組みとしては、こちらにございますように、教育課程柔軟化サキドリ研究校事業として、新たに枠組みを創設したいというふうに考えてございます。
 趣旨でございますけれども、御案内のように、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂し、一人一人の可能性を輝かせる柔軟な教育課程編成を促進するため、中央教育審議会における次期学習指導要領に向けた検討において、調整授業時数制度創設について検討いただいております。
 既に研究開発学校で、9都道府県46校において今年度から先行的にお取り組みいただいておりますけれども、この柔軟な教育課程の実施に取り組みたいという声がかなり全国から私どものもとに届いているところでございます。
 次のパラグラフ、柔軟な教育課程を編成・実施する上では、より一層、各学校におけるカリキュラム・マネジメントや教育委員会等による伴走支援・指導助言が重要となりますので、これらの知見の蓄積が、制度導入後の教育課程の質に直結するというふうに考えております。
 これを踏まえまして、黄色い部分でございます。調整授業時数制度の導入後、各学校が創意工夫ある教育課程を円滑に編成・実施することができるよう、全国各地の教育委員会・学校が教育課程の柔軟化の具体や手法についてある程度のイメージを持ち、知見を蓄積できるよう後押しをする仕組みとして、この教育課程柔軟化サキドリ研究校事業を創設したいというふうに考えております。
 事業概要の真ん中にございますけれども、一番上、調整授業時数制度導入後の全国における円滑な制度実施に向け、研究開発学校とは別に調整授業時数制度を先取りするような形で教育課程を編成・実施し、研究開発を行うことができるサキドリ研究校を、御申請をいただいた上で文部科学大臣が指定するという枠組みでございます。
 対象が左下にございますけれども、全国の公立小中学校等で、規模としては、2つ目のコメ(※)にございますように、各都道府県・指定都市につき5校程度を上限として指定することを見込んでおりまして、その下にございますように、小学校のみならず中学校も含めて進めていきたいというふうに考えております。指定期間は、当面2年間を想定しております。
 また、スケジュールについては、右下にございますように、これから取組を開始、申請をいただきまして、審査、指定等を踏まえまして、来年度からスタートできるように準備を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 補足は以上でございまして、事務局からの御説明は以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 では、これより委員の皆様との意見交換の時間とさせていただきます。本日は、ただいま御説明いただきました論点整理(案)につきましての御意見とともに、論点整理を踏まえまして、今後、具体的にはそれぞれのワーキングでということになりますけれども、様々な検討を行っていく上での期待等につきまして御意見を頂戴したいと存じます。
 いつもながら恐縮でございます。御意見のある方は挙手ボタンを押していただければ、私から指名をさせていただきます。会場にいらっしゃる委員の方も、御発言時はミュートを解除してお話しいただければと思います。全員に御発言の機会があるよう、御発言は3分以内でおまとめください。全員の御発言の後に、時間的余裕があれば、さらに御意見のある方に御指名をさせていただきますので、御了承ください。
 では、議会の関係で退室御予定と伺っております戸ヶ﨑委員から、まずどうぞ。
【戸ヶ﨑委員】  まず、これまでの議論を的確にまとめ、我が国のこれからの教育の屋台骨である次期学習指導要領に向け、今後のワーキンググループ等での検討にあたり強固な土俵を構築されたことに対して、敬意を表します。
 事務局の資料は、特別部会の議論を豊かにする具体的な提案を常に含み、文科省の政策官庁としての矜持を感じるものであり、教育行政の歴史上の意義があったのではないかと感じています。そのことを踏まえて、今後に向けて4点ほど簡潔に申し上げたいと思います。
 1点目に、記載が修正されて、第1章で「総合的な勤務環境整備」との記載が複数出てきていますが、この実現なしには、次期学習指導要領の実現もないと思っています。
 「実現可能性の確保」は、今回の条件整備にあたって、管理行政のみに託すのではなくて、指導行政の側も当事者意識を持ったという意味で、大変画期的なことだと思っています。
 まさにFeasibilityを指導と管理が両輪で支えることがあるべき姿であり、質の高い教師の育成・採用・研修や、今般の給特法の改正で議論が始まった「教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針」の実働などに向け、大変僭越ですけれども、全国の教育委員会に向けて、文科省には、省内はもちろんのこと、省庁を越えた指導と管理の一体化の手本を示していただきたいと思っています。
 2点目に、今回、文字情報と図表等の視覚情報を組み合わせると学習効果が高まるという、認知心理学のデュアルコーディングという考え方に基づいたまとめは、テキストだけでは読まれない傾向がある中で、大変時宜を得たものであると思っています。
 一方で、審議のまとめや答申に向けては、より精緻で正しい理解となるよう十分な配慮もお願いしたいと思っています。
 3点目に、日本の教師たちがこだわってきた指導観や子供観が軽く薄くなる傾向がある中で、「深い学び」などが能力主義的な授業づくりのみを推奨しているように受け止められないように留意すべきと考えています。優れた実践を学術的な知見や理論に照らして意味づけていくことは極めて重要ですが、単なるハウツーにとどまらない技術の学び方や省察の仕方を身につけていくことで、指導観や子供観と科学的なアプローチが往還し、相互に磨かれていくことを忘れてはならないと思っています。
 最後に、本日事務局から報告がありましたサキドリ研究校事業について、待ちの姿勢に陥ることなく、次期学習指導要領を見据えて、「サキドリ」して挑戦することこそ、今まさに求められていると思っています。全面実施になってからさまよわないように、準備を整える必要があると思っています。
 その際、大きな役割を果たすべきは、広域自治体である都道府県教育委員会です。指導主事も配置できない市町村が多くある中で、今こそ国と市町村をつなぐ都道府県がこれらを「サキドリ」して、次期学習指導要領の実施に必要な知見の蓄積を牽引すべきと考えています。
 当然、各自治体の教育委員会や学校も、このサキドリ研究校事業への果敢な挑戦や自走が必要なことは論を俟たないと思っています。
 すみません。ではこれで失礼いたします。
【貞広主査】  戸ヶ﨑委員、本当にお忙しいところありがとうございました。
 では、会場から今井委員、お願いいたします。
【今井委員】  ありがとうございます。1点、文科省のほうで、いろいろな試みについて、よい事例を積極的に公開していくというか、見せていくということはすごくいいことだと思うのですが、同様に大事なのは、やってみたけどうまくいかなかった事例の公開だと思います。人間にとって、失敗してみて初めて分かることはたくさんあります。そして、やってみて、うまくいったときよりは、うまくいかなかったときのほうが学びが多いのです。
 なので、望ましくない効果というか、何かそういうことがどういうときに起こるのか、あるいは、実際に起こった。やってみてうまくいかなかったね、こういう懸念があるねというような、そういうのはぜひ事例として公開していっていただきたいと思います。
 それを今回の修正でも取り入れていただいたので非常にありがたいと思いますが、一般的に人が学ぶときというのは、やっぱり失敗から学ぶというのは非常に重要なことなので、今回だけでなく、ぜひ今回の改訂全般に、それを反映させていただきたいなというふうに思っております。
 それに関係して、今のカリキュラム柔軟化のサキドリにつきましてお聞きしたいことがあります。今、栗山室長からも御説明があって、先取りをしたいという学校は、事前に申請しなくてはいけなくて、しかも、自治体で5件程度に限られるということだったと理解しましたが、そのように、申請して許可を受けないと、そういうトライアルが先取りできない、そういう制度にするのはどういう理由なのかというのはちょっと教えていただきたいなと。
 本当に申し訳ないんですけど、私、教育行政の一般的な常識がなさ過ぎて、とんちんかんな質問をいつもしているのだと思います。今回もたぶんそうだと思いますが、何で事前審査しないといけないのか。これ、もちろん失敗も程度問題なので、失敗によってすごく子供の学びが傷つけられるような、そういうことは事前にやっぱり注意して阻止しないといけないんだとは思うんですけれど、でも、あまりこの方向はいいけど、この方向は駄目ということを最初に決め過ぎてしまうと、本当にいろいろチャレンジとかトライアルとかができなくなってしまうんじゃないかなと。
 だから、私は、今、戸ヶ﨑委員もおっしゃっていたように、この次期の学習指導要領の改訂の前段階で、マイナーなというところではあるとは思うんですけれど、やっぱり自分たちの常識の範囲内で、このぐらいだったらやってもいいよねと判断できることはどんどんやってみて、仮に失敗しても、そこから学べばいいと思うんですけれど、この考え方は文科省的には駄目なのでしょうか。ちょっとその辺りをぜひお答えいただきたいなと思いまして。
【貞広主査】  ありがとうございます。御質問いただいたんですけど、すぐお答えになりますか。じゃ、栗山室長、お願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】  失礼いたします。お尋ねありがとうございます。また、御説明不足で大変恐縮でございました。
 今回、申請、指定が必要となりますのは、現行の法令において標準授業時数が決まり、その確保をお願いさせていただいている中で、法令に部分的に従わずに、例外的にそれを動かすことができると。また、特に裁量的な時間については、現行法令上は全く想定していない仕組みになっておりますので、こうした現行法令においては許容されていない在り方を先取りして例外的にできるという点において、現行の仕組みの中では、そのような手続を取るということが定められておりますけれども、まず、その点も申請において負担がないようにしっかりと配慮していきたいということと、5校程度とさせていただきましたように、数についてもよくよく都道府県教育委員会と相談しながら、なるべく柔軟に対応していきたいというのが大前提でございます。それで知見を蓄積した上で、改訂のときに、こうした手続がなくてもできるような一般的な仕組みとして調整授業時数制度を創設できるように準備をしていくという意味で、現行制度の中で、まだ改訂をしていない段階で先取りしてやっていくという点において、そういう手続が限定的に必要になるといった趣旨でございます。ありがとうございます。
【今井委員】  分かりました。御説明ありがとうございました。
【貞広主査】  パイロット的に進めて、都道府県の教育委員会や指定都市の御支援や御指導もいただきながら、効果検証もして、どういうふうに横展開していくのかというのを検証するという意図なのかなとも思いますけれども、指導、支援できる数がスモールスタートじゃないとちょっと難しいというところで数の設定があるのかなと。勝手ながらの理解でございます。
【栗山教育課程企画室長】  おっしゃるとおりでございます。
【今井委員】  5校の意味は、自治体の規模によって全然違いますよね。大きい自治体の5校と、非常に小さい自治体の5校は、全体の中での意味が全然違いますので、その辺りも勘案するべきではないでしょうか。やっぱり一番大事なのは、やってみたいという学校の意志、やる気だと思います。あんまり制限して文科省や教育委員会が指導してという、上からトップダウンですることで、学校のモチベーションを削がないようにしていただきたいです。もちろん法令は守らないといけないんですけど、その辺りを教育委員会が入ってくださって上手にやってくださるんじゃないかなというふうに私は大変期待をしています。あんまりトップダウンになり過ぎないようにお願いできればと思っております。ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございます。期待の大きさからの御意見だと私も承りましたので、運用でまた工夫の余地ももしかしたらあるのかなと思いますので、そのように引き取っていただいて、何か応答ありますか。
【栗山教育課程企画室長】  貞広主査、今井委員の御指摘を踏まえて対応してまいります。ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、続きまして、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。非常にまとめのところで様々な意見を盛り込んでいただきまして、多様な教育が実現できるのではないかなというふうに期待しております。
 また、高等学校においても、カリキュラム・オーバーロードの状態が、こういった取組によって解消するというところについて期待しております。
 資料の中で3番の実現可能性の確保という項目がございまして、そこの部分での懸念と、それから、それを解決するための方策についてちょっとお話をさせていただきたいと思っております。
 小学校、中学校と異なりまして、高等学校では、単位制ということで、教科、科目ごとにクラス編成、カリキュラムの中で時間割編成をしております。
 そういった形で、例えば今回お示しをいただいております前期・後期などの組合せにより、新しい単位の組合せ、あるいは、それぞれの生徒の学習状況に応じた学習、単位の設定をした場合に、教室数であるとか、あるいは教員数というところが大きな課題になる可能性がございます。小学校、中学校でクラス単位で授業をするというところから、単位ごとに授業展開しますので、大学とは異なり、教室の限られた高校ではなかなかそれが難しい。あるいは、教員定数の考え方から、なかなか新しく授業を設定しても難しいというところが、実現をする上ではネックになる可能性があるというふうに考えられます。
 一方で、少子化の影響を受けまして、各自治体、地方によっては、既に学校の再編成ということで統廃合も進んでおります。統廃合に合わせて1つの学校の学級規模を減らして、その教室を多展開、あるいは新しく設定した授業に用いるとか、クラスは減ったんだけれども教員定数を減らさないという形で、授業を多様に組み合わせるというようなことも考えられるかと思います。
 先を見通してというところでは、自治体、特に設置者としての教育委員会の役割が重要になると思いますので、先ほどの御提案の中では、サキドリ研究校として小学校、中学校を指定されるということを計画されているようですけれども、高等学校においても、例えば、教育委員会単位で、学校の再編成を見通して、新カリを考えた上でそういったサキドリ研究校のような計画が立てられれば、先を見通した学校の在り方も設定できると思いますので、ぜひ御検討いただければと思っている次第です。
 私からは以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 事務局からのコメントは後でまとめてお願いできればと思います。
 それでは、山本委員、どうぞ。
【山本委員】  ありがとうございます。今回の論点整理(案)については、本当に学校教育現場が抱える課題を適切に捉えて、学校の実践に結びつく形での制度設計に踏み込んだ具体案になっているんじゃないかというふうに考えているところです。
 さらには、議論をフルオープンにしていただいたので、先ほどのサキドリ研究校のように、今、既にいろいろなところで話題になっていたり、さらに、実際やってみたいという意欲も見られているので、ぜひこの辺りは各教育委員会のほうには丁寧にお伝えしていただければと思っています。
 ここでの議論がちょっと曲解して伝わっているところとか、具体的に資料の文言だけでなかなか伝わりづらい部分もあると思いますので、その辺り、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 その中で、私も2点お話しさせていただければと思うんですが、1つは、構造化についてなんですけれども、今回の論点整理(案)は、現行指導要領の目指す理念の実現が道半ばであるという認識から出発したというふうに思っています。
 改めてその背景を考えたときに、学校現場が「主体的・対話的で深い学び」、その中の特に深い学びというものがどのようなものなのかということが十分にイメージできていなかったという課題があるんじゃないかというふうに思っています。
 この深い学びの姿について、各教科、各単元の授業を指導要領の内容に即して先生方が具体的にイメージできるようにしていくためには、今回の学習指導要領の構造化といったところが非常に大事な鍵になってきて、これはまさに授業改善につながっていく視点だというふうに考えています。
 今回の12ページの補足イメージのところでも、タテ・ヨコの関係の可視化ということで、深い学びを具現化しやすくなるというふうにも記載いただいておりますが、ここがまさに核心になる部分で、今後、各教科等のワーキングで話し合われていくときにちょっと懸念するのは、中核的な概念を抽出するということが目的化してしまって、そこに終始してしまうのではなくて、各教科の固有の深い学びの姿を教師がありありとイメージできるような、そういった趣旨を大事にしていただきながら、構造化の在り方ということをぜひ検討していただければというふうに思っているところです。
 2点目は、探究についてなんですが、これまでの議論の中で、私からも度々探究や探究的な学びの充実、学びのプロセスの可視化の重要性については述べさせていただいてきたところなんですが、今後、探究を一層充実していく中で、私は言語能力の育成の重要性というものが一層高まってくるんじゃないかというふうに考えています。
 言葉にするということは、探究的な学びの中でも、子供一人一人の体験や経験に連なる個々の思いや感情を他者に伝えられるようにして、外化していく、形に残すという役割を持っていると思うんですが、現在これだけAIがどんどん進んでいく中で、経験や体験を持たないAIが紡ぎ出す言葉、そういったものと、学校教育の中で培う言語というものを差別化していくためにも、これからは言葉の力というのが不可欠になってくるというふうに考えております。
 今後、学習の基盤となる資質・能力を情報活用能力と言語能力の2つに整理する方針が今回も示されましたけれども、言語能力の重要性を改めて認識して位置付けし直す、そういった必要性を感じておりますので、今後の総則・評価のワーキングや国語のワーキングなんかで言語能力の育成ということをしっかり中軸にして、議論を深めていただけることを望んでおります。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。ワーキングの議論の進め方について、大変重要な御示唆、御指摘をいただいたと思います。それぞれの運営に生かしていただければと思います。
 それでは、宮原委員、お願いいたします。
【宮原委員】  宮原でございます。それでは、私のほうから感想と、1点コメントをさせていただきます。
 全体としては、これまでの議論、よく盛り込まれている一方で、そこまで総花的にもならず、これから目指したいなという教育の方向性を頑張って示している内容になっているなというふうに感じました。その点では皆様、特に事務局の皆様の御尽力に感謝申し上げます。
 特に、「民主的で持続可能な社会の創り手」という形で表現を修正いただいたことで、必ずしも社会のリーダーのみを育成するということではなくて、多様なスキルだとか価値観、得手不得手のある方たちが、共に社会をつくっていくということを目指す、と理解しやすくなり、それを促進していく教育の方針が示されたことで、企業の立場からも、賛同できる方向性だと思いました。
 それらを踏まえまして、特にAIのことについても、かなり情報活用、AIということで触れられておりますが、こちらのテクノロジーの今後の革新、進化ということに対する、それに即した社会の変動への対応という意味では、非常に画期的な内容にはなっておりますが、一方で、この指導要領が出るときには、我々の今の想像を超える新たな変化が起きている可能性が十分考えられます。
 こういった社会の変動に対して、今後の学習指導要領がどう機敏に対応していくかということについては、まだ課題があるかなと思いますし、どう対応していくのかということは議論を継続するべきだと思います。
 また、同時に、こうした大きな社会の変化に対して、今申し上げた学習指導要領をどう対応させるかということもそうですけれども、それを実行する学校現場がどう機敏に対応していくかということについては、変化のスピードが今まで以上に速いですので、企業にとっても非常に大きな課題になっておりますので、そういったところをどうやって対応していくのかということについては、継続的に御議論していったほうがいいかなと感じております。
 私からは以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、松原委員、どうぞ。
【松原委員】  ありがとうございます。論点整理(案)のまとめ、ありがとうございました。
 まず、4ページにある、「教師に過度な負担・負担感」というところですけれども、修正をしていただき、ありがとうございました。今後はこのことが実現されるよう、具体的な検討が進められることを期待しております。
 また、「社会に開かれた教育課程」の後に「個人と社会のウェルビーイングの実現」と補っていただいたのも、大変よいと感じました。「社会に開かれた教育課程」という言葉だけでは抽象的ですし、学校は子供たちを中心に据えてウェルビーイングを目指していくことが大切だと考えているところです。
 その上で本日は2点、申し上げたいというふうに思います。
 第1に、33ページのところですけれども、調整授業時数制度が教師の仕事や子供の学びに余白を生み出すとともに、教育の質の向上に資するものとなるためには、そこで示されていますその他の条件整備が極めて重要になるというふうに考えております。校長からは、準備段階で大きな負担がかかるのではないか、また、自治体によって様々な制限がかかるのではないかという声も聞こえてきます。この「調整」という言葉はやや受け身の印象もありますが、むしろ積極的に活用できる制度となるよう、条件整備の充実をお願いしたいと思います。
 そういう意味において、参考資料2でお示しいただいた教育課程柔軟化サキドリ研究校事業には期待しているところです。また今後も積極的な情報発信をお願いしたいと考えております。
 第2に、諮問を改めて読むと、「子供たちが社会で活躍する2040年代を展望する」という言葉がありました。ちょっと余談なんですが、先日、リアルタイム通訳ができるイヤホンというのが話題になりまして、まだ試せていないんですけれども、改めて2040年代は今の私たちが想像できないような社会になっているということを実感したところです。
 ただ、その一方で、急速に時代が変わっても、小学校段階で大切にすべき変わらない部分というのは多くあるはずです。それは57ページ、質の高い探究的な学びの実現のところにもある、基礎的・基本的な内容に重なるのかもしれません。変わっていくことにどうしても我々注目してしまいますけれども、変わらない部分を学習指導要領でしっかり示し、公教育として、全国どこの小学校でも確実に身に付けられるようにしていくことも大切だろうというふうに捉えております。
 私からは以上となります。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 では、植阪委員、どうぞ。
【植阪委員】  ありがとうございました。まず、こうした議論に参加することができたということを自分は幸せだと感じています。ちょうど3週間ほど海外にいて、日本の先生がいかに熱心であるかということに気付かされます。それこそ自分の時間、土日も削って自分で勉強していくみたいなことに、本当ですかというふうに問いかけられることもある。この日本のすばらしい、授業研究というユニークな仕組みも含めた独特の仕組みや、意欲の高さであるとか、そういった先生たちの基準となるというか、心に留め置く指導要領の検討に参画できたことを、本当にありがたく思います。
 ただ、まだ課題もあると感じています。山本委員から深い理解というのが実は伝わっていないんだということが挙げられました。前回、私もそれを指摘させていただいて、深い理解というのを本当に持っていただくのが、先生方の努力を正しく方向づけていくためにすごく重要だと思うので、私もぜひそれをお願いしたいということがすごくあります。
 それから、それとともに、やはり「学びに向かう力、人間性」って、一体これなんですかということを繰り返し問われてきています。学びの主体的な調整ということもかなり丁寧に説明する必要があると感じています。説明しても説明してもなかなか通じないというところもあるんですが、一つは、深い学びに向かっていこうとする子供の姿を評価することだと思います。ただ答えが出ればいい、何かちゃちゃっとこなせばいいというのではなくて、自分の意味理解を追求したりとか、納得感を持って学んでいくような姿というのを共有していく必要がすごくあると思います。
 評価からは、残念ながら明示的な形からは落ちたんですけれども、決してそれは落ちたわけではないというのは、多くの委員の先生のコメントを聞いて、私もそのように思います。しかもそれをすばらしい様子が見えたときには「○」(丸)をつけて残すんだということが残っておりますので、ということは、学校の先生方にこれをやっぱり理解していただかなきゃいけないというふうに思っています。
 ですので、今後、総則・評価特別部会が立ち上がってきたときに、期待したいと思います。教科の内容については先生方がそれをかなり中心的に教えますので、分かりやすい言葉で伝えていけば分かるような感じもするとは思うんですけども、それを支えるプロセスの評価についても期待したいと思います。子供がそこにどう関わっているのかというプロセスの評価もぜひして、それについても、すばらしい子に対しては積極的に評価して、周りと共有して、こういう姿であってほしいと共有する、この総則・評価特別部会の役割はとても大きいのではないかというふうに思っています。ですので、難しい課題だとは思うんですけれども、この総則・評価特別部会での発信というのを注目して見ていきたいなというふうに思っております。
 最後に、深い自己調整という言葉がやはり、世界では当たり前に言われるようになってしまったので、ここにも残っておりますし、明示的にそれだけを評価するという観点ではありませんけれども、どういう姿を目指しているのかということを分かりやすく、メタ認知、自己調整あたりは、学校の先生が御自身で使われるようになっている用語なので、日本の先生方についても苦しみなく理解できるようになったらすてきだなというふうに思っています。
 そのためにはいろいろな努力が必要だと思うんですけれども、私たちも努力したいと思いますし、文部科学省の方が分かりやすく示していただくということは、すごく先生方、そちらを向いていますので、ありがたいかなというふうに思っております。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 複数の委員から、深い学び、深い理解のイメージがいかに先生方に腹落ちして伝わるかということが非常に重要だということを御指摘いただいていますので、これもそれぞれのワーキングの議論で一つの大きな柱として引き取っていただかなければいけない部分だと思います。とりわけ評価という部分でという御指摘もいただきました。ありがとうございます。
 この後でございますが、荒瀬委員が途中で退室御予定と伺いました。荒瀬委員から先に御意見を伺いたいのですけれども、いかがでしょうか。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。秋田先生、割り込ませていただいて申し訳ありません。
 私、今回これ、論点整理の段階としても、本当にとてもきちんとといいますか、丁寧に、きちんというよりも、どっちがいい言葉なのか分からないですけど、丁寧にまとめていただいたということに本当に感謝をしています。
 前にも申し上げたかと思うんですけれども、およそ今回こんなことができる、ここまで丁寧にまとめることができるものというふうに、私は思っていなかったんですけれども、見事にまとめてくださったというので、非常に事務局と、それから貞広先生はじめ、皆さんに感謝をしているところです。
 そこで、あえてちょっと違った角度から申し上げたいと思っているんですけれども、教職員の学びに関しての仕事をしている関係で、とりわけ今、貞広先生がおっしゃった、いかに腹落ちするかというようなことって大事だと私も思うんですけれども、そのためにはやっぱり自分で考える。その意味では、さっき今井先生がおっしゃっていた、失敗したところから学んでいくということの大切さというのはとても大きいと思いますし、逆に言うと、なかなかそうでないと本物の学びにならない可能性があるような気がします。
 今回、きちんとという言葉を避けて、丁寧にというふうな言葉に言い換えたのは、きちんとしていたら、これをやっておいたらいいというふうに思う人も出てくる。でも、実はここのところは、どちらかというと、きちんと書き込んでということの意味合いではなくて、丁寧に考える余地を置いていただくということが大事なんだと思っています。
 余白という言葉が盛んに使われているんですけれども、私もまた学習指導要領にこそ余白があることが必要だと思っています。口幅ったい言い方ですけれども、それがあったからこそ、実際、学校で探究を軸にした取組をやってみようなんていうことも考えることができたのだと思いだしておりました。もしも学習指導要領で、学び方についてきちんと書き込まれていたら、それ以外のことをやろうとは必ずしも思わなくなってしまう、思う余地がなくなってしまう可能性があるように思います。
 だから、これからさらに各ワーキングとかで詳細を詰めていくわけですけれども、考える余地が常に現場にあるように、現場は子供一人一人に向き合う場であり、地域によっても違うし、学校によってもそれぞれ事情が異なるし、子供によってはもちろん事情は全く違っているという状況があるでしょうから、そういう中で、余白がちゃんと残っているという状態のものにしていくということが重要だと思います。
 これ、言うのは簡単ですが、実際、そんなことするのは難しいんですけれども、よって、私はぜひ全国の先生方に、考える余地というのはいっぱいあなた方に託されているんですよとアピールしていくことが大切だと思います。これはあくまでも基本のものであって、まさに学習指導要領、大綱でありますから、それをどう使って、どのように目の前の子供のために展開していくかということが、その余白に何を書いていくかが先生方に任されています、委ねられていますということがちゃんと伝わる形がいいんじゃないかなということを思っている次第です。
 時間をいただいて、ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございました。余白ということを再度御指摘いただいています。論点整理(案)について大変丁寧にとお褒めいただいていますが、まだ論点整理(案)ですので、これからどんどんバージョンアップしていく予定でございます。ありがとうございます。
 それでは、秋田委員、どうぞ。
【秋田主査代理】  ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
 今、荒瀬委員が「丁寧」と話してくださいましたが、丁寧で豊かであるということは、実はこの委員の一人一人の言葉を大事に聞いて、それを入れ込んでいただいて、いろいろな人の多様な声が生かされた論点整理(案)になっているということが非常に重要なことであろうと私は思っています。要するにどうというだけではなく、多様な言葉が生かされていることによって、みんなが分かりやすい方向になった。これは本当にひとえに事務局の皆様の御尽力と、そして、お一人お一人の多角的な意見が、先ほど荒瀬委員も言われましたが、私たちの想像を超えて知の結集が出来上がってきているというふうに感じております。
 実は、これはこの教育課程の企画特別部会だけではなく、前回と本日の午前中にございました教員養成部会にも武藤教育課程課長がお越しくださいまして、2回、教員養成のほうでも御説明をくださいました。その中で本日、例えば、5ページ目の深い学びの実装と、それから多様性の包摂、それから実現可能性の確保というのは、まさに子供の学びだけではなくて、教師の学びにも全く当てはまる大事な軸をここで出してくださっているのではないかという意見もございまして、非常にこの教育課程を支持する意見が教員養成の部会の委員からも出ていた。この教育課程を実際にどうやって教師が高度な専門性を整え、そして、総合的な勤務環境の整備の中で実現していくのかという、今回、その両輪が同時に回ることが非常に重要なわけですけれども、そういう意味での大きな方向性と、それから、細かな一つ一つに込められた言葉の持つ意味を大事にしているところに、今回の論点整理(案)の重要な点があると1点目で思っているところでございます。
 そして、2点目でございますけれども、先ほど御説明がございましたけれども、今回の今後のスケジュールの最後のページのところに、今回、新たに中教審と文部科学省が論点整理の内容について、法令に基づいて、教師や学校教育委員会はもとより、首長や保護者や地域、民間の担い手を含む社会全体で理解ができるようにするという文言を入れていただいて、その見通しを持つということが非常に重要だと私自身思います。
 ぜひここには広報戦略というんでしょうか。どういうふうにこれから、やはりこの論点については、私どもは何回も部会に参加して学んで積み重ねていますので分かっていますが、これを見せられて分かる保護者はなかなかいないと思うので、もっと簡単なピクトグラムとか、分かりやすい版というのは誤解も生みやすいんですけれども、もう少し分かりやすいものも、保護者や、それから首長部局と手を取り合えるようなイメージの戦略というものをこれから打っていただいて、学校教育の未来が明るいということを子供や保護者、そして教師に与えていただけるような形の示し方をしていただきたいということがございます。
 また、実はここに私は入れていただきたかったことの一つが、これはこれで結構ですが、子供にも知ってほしい。子供は教育を与えられる存在だけではなくて、子供自身が一緒になって自分たちの声を上げています。この学習指導要領の案のときも、たしか最初に子供たちから意見を聞いたはずです。でも、子供の意見は聞いても、集められて、ただ紹介してそれで終わりで、子供に戻らなかったら、やっぱり子供たちは今後声を上げなくなると思います。
 なので、ぜひ子供たちにも、これは子供たちにもこんなものを難しいものを出すんじゃなくて、こうやって君たちの声が生かされて、学校やカリキュラムも変わっていくんだよ、教科書の在り方やいろいろなことを一緒にこれから君たちとも考えていこうということが、特に中高生であったり、若者と一緒に返せるような、そういう在り方が、本当はここに社会の中に子供も一員なので入れていただけるとよかったかなと私自身は思っているということが2点目でございます。
 そして、最後に3点目ですが、これからそれぞれのワーキングが起こっていくわけですが、今回の論点整理(案)と、それから、従来の学習指導要領の例えば総則とか各教科の構造がどういうふうに結びつくのかということは、これまで議論していません。ここでは図示が分かりやすいということが出ていますが、あの解説書やその文書にどういうふうな形で記せばいいのかということが全体としてまず議論をされていくことが、構造や各教科の特性を生かしながらも、これを生かしていくためには必要であろうと思います。
 ここまで論点は詰めたんですけど、これは改訂の経緯のところだけに書かれるのか、それがどういうふうに今後生かされて、分かりやすく入れ込まれていくのかという、ここからいわゆる総則をつくるときのトランスフォーメーションというか、そこが結構大事だと思いますので、それをまず御議論いただきたいというふうに考えるところでございます。
 以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。今回、いろいろな特質があるわけですけれども、柔軟化、弾力化という話は、指導要領というか、教育課程政策上、かなり大きな変化だと思うんですね。余白という言い方もしていますけど。これ、一つには令和答申で出された、多様性の公正な包摂という課題を引き受けたと思いますけど、もう一つ、先ほど宮原委員が言われた機敏な動きを可能にするという意味でもすごく大事で、少し意味や側面が違うかもしれませんけど、機敏に動けるようにということもすごくあるんだなということを先ほど思いました。
 そこから考えると、先ほど今井委員が言われたように、トップダウンというか、出してもらって審査して、それを戻してというふうなやり方を、何らかの形で改善する必要があるのかなと思いますし、戸ヶ﨑委員が言われた、管理行政から指導行政に、さらに開発支援行政という言い方もしてきましたよね。現場が基本的にはどんどんつくっていくので、それを支援すると同時に、行き過ぎた規制をしない行政。だから、極端に言えば、やっぱり昭和33年より前のイメージをどこかで少し持つ。昭和22年や26年の試案の時代のイメージを持つということは、法令上のこと、いろいろあると思うんですけど、少し考えたほうがいいのかなと思います。
 昭和22年の社会科指導要領をつくった重松鷹泰先生は、教育に関する諸悪の根源は天下りだとよくおっしゃっていました。天下りを要求され、天下りに従えばいいと思うことが全てを駄目にするとよくおっしゃっていたことを思い出すんですけれども、そういうことでいうと、さっきの伴走支援という言葉も、広島県なんかが最初に伴走支援をやったとき、僕、現場にいましたけど、指導主事が毎週学校に通って一緒につくるんですね。伴走支援ってしばしば誤解されていて、行く回数が増えるんだと思っている指導主事がいて、違うんですね。あれ、一緒につくるんですよね。指導主事も、個別最適とか協働とかはあまりやったことないんだから、十分な指導ができない可能性がある。だから、指導主事が一緒につくって、つくれるようになるという。それが広島の成功の一つのポイントだと僕も思っていますし、だから、それはやっぱり管理行政じゃないんですよね。開発支援行政なんですよね。そういうやり方が一つ一つ細かいところで変わっていくということがすごく大事だなと思っています。
 そういう意味では、今日出されたサキドリ研究校事業というのは画期的で、とても期待するところですけれども、今井委員がおっしゃったとおりで、できるだけ自由に動けるようにするという。法令上の枠組みとして、研究開発学校の枠組みを使うと。でも、研究開発学校とは随分違うんですね。そこは、どうなりますかね。研究開発学校の枠組みを使うということは、調整授業時数を生み出してもらって、それを闊達に使って、いろいろなトライをしてもらうということだろうけれども、どうしても弾力化、柔軟化という話が、時数の側面、つまり、形式的な側面ばかり行くんだけれども、弾力化を実際に図っていくために必要なのは内容ですよね。
 先ほど荒瀬委員が、学習指導要領の余白についてお話されました。学習指導要領の本体、目標、内容の部分に余白をつくるということは、内容の構造化と今回言っていることですよね。そこの部分だと思うんですよ。それは、これから各教科等のワーキングで各教科等の御専門の先生が御専門の見地から、あるいは各教科等の事情や経緯も踏まえてしっかりやっていただくし、それをまた議論するということだろうと思いますけど、このトライアルの中でも、それをやっていいことにするかどうか。つまり、研究開発学校の枠組みを使っていいということは、現行学習指導要領の規定を一定程度離れてもいいわけだから、調整授業時数という形式の部分だけじゃなくて、内容も一定程度、対象にするのか。ここは結構大問題だと思います。
 今の話は、例えば、今日ので言うと、66ページの辺り、つまり、弾力化とか余白の具体的な方向性で、1、2、3のところは授業時数という形式面だけど、4のところの、指導要領の構造化という話、中核的概念に基づく再編成という話も弾力化だという、これをしっかり打ち出していかないといけないと思っていて、やっぱり弾力化というと、時数の調整の話だとみんな思っちゃっているんですね。形式だけでは変わらないので、内容面でもやっていくし、それによって本当に先生方が教科の本質に焦点化した、現行指導要領で見方・考え方と言っている話をしっかりやっていこうという現場や、それをやっていける力を持っている現場はある。現行学習指導要領、再々申し上げていますが、目標は変えましたが、内容は大きくは変えていないので、見方・考え方を大事にしてねと言っても、やっぱりそこに若干のずれがあるんですね。今回、それを何とかしていこうという話がこの中核的概念の話だけれども、だったら、このトライアルの中でも一定程度やっていただいたらいいんじゃないかと思うんですね。というのが一つです。
 そうなったときに、今は公立学校をベースに、都道府県教育委員会と連携してやるという話だけど、一番そういったことができるのは、形式面も含めて、実は附属学校ですよね。教科の専門家がいて、教科に関しての開発が一番できるのは、国立大学等の附属学校の人たちで、先々ぜひ附属の皆さんにも参画していただくということをやっていただければいいなと思っています。
 それから、もう一つは、今井委員がおっしゃったことなんだけれども、申請したものをそのままやらなきゃいけないという誤解が研究開発学校によくあります。4年間変えちゃいけないと思っている人たちがいます。でも、研究開発するということは、当初これでいけるかなと思ったけれども、やってみたらうまくいかなかったとか、やってみたらもっといいことが見えてきたと。だったら、変えてもいいですよね。これが今井委員がおっしゃったことだと思うんですよ。失敗をしたり、もっといいアイデアが浮かんだりしたときには、どんどん申請したものを変えてもいいと。以前、愛知の緒川小学校が研究開発を受けたときに、当初出したものとは全く違う結論を出して終わったことがありますが、文科省からは何のお叱りも受けませんでした。
 いや、もともと研究開発学校ってそういう趣旨なんですよ。開発するんだから、当初の仮案と変わっていいんですよね。ところが、学校現場の研究というのは、仮説検証型というやり方をしていて、仮説を立てて、実践して、検証されましたと。私は、仮説が検証されなかった実践研究を一つも見たことがない。これは僕ら心理学者としてはあり得ないことで。だから、実際にはしっかりと検証してはいないんじゃないか。科学的にしっかり開発して、データを取るのであれば、まずは申請をしたものに対していっぱいトライアルをして、失敗もして、もっといいものをつくって、そして、うまくいった、うまくいかないというデータを出していただくような、研究開発もそうなんですけど、今回もぜひそういうことで出していただけるといいと思うんですよ。
 そうしたら今井先生が言われた趣旨にもかなっていくかなと思いますし、闊達にやっぱりどんどん開発をしていただく。その開発を文科省も僕らも支援すると。まさに伴走支援ですよ。文科省もそういう学校を伴走支援して、一緒につくっていく。一緒につくって、僕らもつくれるようになるという。
 今回の実はこの調整授業時数もそうですし、弾力化、柔軟化で出していることは、僕らもまだまだ実践経験が十分ではなくて、どうすればうまくいくか分からない部分もあるわけですよ。僕らもトライアルしなきゃいけなくて、そういう形が入れ子になって僕はここに出ているような気がして、先ほど、だから、県教委も指導主事が学校に行って一緒につくってねと。一緒につくったらうまくいくんですよ。同じようなことを研究開発学校とか、このサキドリ研究校でもやりたいなと思いますし、僕なんかだったら一緒に幾らでもつくりますけどね。学校に通って一緒につくる。
 ぜひこのメンバーはどこかの学校に行って、最低2校以上は一緒に行ってつくるとか、どうですか、それ。いいと思います、私。
【貞広主査】  ありがとうございます、奈須委員。ちょうど会場が、奈須委員の両隣が今井委員と秋田委員なんですけど、サキドリ研究事業の御発言について、深く3人がうなずいているんですけれども、現時点で事務局のほうで何か応答があれば、今後の方向性などについてで結構ですので。
【武藤教育課程課長】  教育課程課長の武藤でございます。幾つか御質問があった件、今の奈須部会長のものも含めて、若干リアクションを取りたいと思います。
 1点目ですが、まず、内田委員からありました高校の今回の柔軟化に関わって、例えば、教室数などがネックになる可能性があるのではないかという御指摘がございました。実態について関係者のお話も聞きながら、よく検討していきたいと思っています。
 それから、高等学校で、まさに調整授業時数のサキドリ事業のように先を見通した取組をやっていくべきではないかという御指摘がありまして、全くそのとおりだと思っております。まさにそういう発想の下で、母体になる研究開発学校のほうで、高等学校の教育課程の柔軟化について今まさに募集をかけているところでございます。
 義務のほうは、研発の取組がある上でのサキドリ事業があって、高校はそこまで至っていないということもあるので、改訂自体も少し後になりますから、まず、研究開発学校でしっかり取組を進めていくことを考えていく必要があるのかなというふうに思いました。
 総則・評価特別部会で高校の検討チームもございますので、こうした先のことも含めて、丁寧な検討というのを進めていきたいと思いました。
 また、宮原委員から、学習指導要領、いいものが今つくられつつあるけれども、まださらに新しい変化がというお話がございました。全くそのとおりだと思っていまして、今日の論点整理の資料でいうと50ページに掲載している、情報活用能力の今後の抜本的な強化に向けた様々な論点というのは、まさに先生方の御意見を踏まえておまとめをしているところでございます。50ページの丸の3、右下のところに、さらなる変化への対応ということが記されておるわけです。
 読みますと、中ほど3行目、「情報技術の加速度的な進化に対応した指導内容の刷新を図る観点から、教科書検定のサイクルを念頭に置いて、指導要領の解説の一部改訂というのをタイムリーに行うことを検討すべき」だと。なので、もう少し踏み込んで言えば、指導要領そのものに書く部分と解説に落とす部分のバランス感覚みたいなものも含めて、非常に変化が激しい分野でございますので、その辺も含めた検討が必要なのかなと思っておりますし、このことについても、情報・技術ワーキングはこれから設けられますので、大事な論点であろうと思っております。
 また、さらに、それでも対応し切れないような変化も当然見込まれますので、次のポツになりますけども、国が必要に応じて指導の手引とかデジタル教材を提供していくといった方向性も出してきているところであります。
 もっと言えば、一番上の黒丸の最初ですけれども、最先端の技術が社会に非常に大きな影響を及ぼすようなことも考えられるわけで、そういう場合には、そのことについての社会的な論議についても、必要に応じて触れることも念頭に置きながら検討していきたいなと思った次第であります。
 最後、奈須先生から御指摘が多岐にわたってございました。基本的に先生の御指摘に私どもとしても同じくするところがありますが、一方で、ちょっと制度の話にも関わってくるところであります。
 まず、内容を出し入れというか、内容といっても多岐にわたって、学習指導要領本体のものと、解説で書いてあるものと、教科書で具体的になっているもの、様々あるわけでございますけれども、学習指導要領でこれはきちっとやってくださいという内容の出し入れについては、研究開発学校の本体のほうでと思っておりまして、研発自体を今増やしている状況で、ここは引き続きやっていきたいことでございます。
 一方で、このサキドリ事業の中で一体どういうことができるのかというと、実は今の指導要領においても、内容は重点化の余地が相当あるとも思っています。実際選べる部分があったり、それから、学年を越えてという部分があったり、さらには教科書レベルまでいったら本当にいろいろなものがあると思っていまして、そこら辺も含めて、どういう重点化が今の仕組みの中プラス、サキドリ事業の中でできるのかということについて、丁寧な伴走支援というか、私どもとしてもいろいろな思いにお応えする形で、この新たな仕組みを育てていきたいと。こういうことで対応ができればなと思った次第であります。
 それから、もう一つあったのが、研究開発学校自体が当初の仮案と違ってというのは、まさにそのとおりだと私たちも思っていまして、一度、大臣から指定をした後、計画の変更という手続も毎年あるわけなので、ただ、実際に指定を受けた学校がそのことを知らないということもあるでしょうから、この制度の仕組みと、その仕組みの中での柔軟性も含めて、よく共通理解を図っていく必要があるということも反省を抱きながらお伺いしたところでございました。
 以上でございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。今の最後のコメントを聞いていらっしゃる、研発を受けてくださっている学校の先生方が、そうだったのという、ほっとしていらっしゃるのか、聞いていないよっておっしゃっているのか、どっちでしょう。ほっとしてくださって、試行錯誤をより深めていただければと思うところでございます。
 では、髙島委員、お願いいたします。
【髙島委員】  なかなか伝わらんなというのが、私の率直な実感です。この議論って、なかなか社会に伝わらないなと。
 この間、特別部会の議論の過程を全国の教育委員会に届けたことというのは、前向きの一歩だったと思います。ただ、様々な場で、今、学習指導要領を変える検討をやっているんですよという話をしても、「ふーん」という反応だったりとか、資料の文言や報道の見出しだけを見て、全然違うふうに誤解されていたりとか、あるなと思います。
 同時に、でも、伝わっていないなというのは、現場の実感かもしれないなとも思うんですね。現場が大変なのを分かっているのかとか、何で変えるのかとか、様々な報道を見て、現場の皆さんが感じていることかもしれないなとも思います。この擦れ違いをどう解決するかというのが一番大事かなと思います。
 例えば、今回、大きな特徴が、余白の創出だったと思います。この現場を信じ委ねるという方向性が、上から現場に丸投げされているとか、文科省は責任放棄しているんかとか、そんな声もやっぱりあると思うんですよね。
 改訂の意図を含めたさらなる発信がやっぱり大事だと思います。ここは先ほどもありましたけど、デザイナーなどの専門的な力を借りてでも、ぜひ発信を強めていただければと思います。
 と同時に、あえて言うと、地方自治体や学校現場側の受け止めの在り方も変わんなきゃいけないのかなとも思います。現場の思いが届いていないと感じる向きもあるかもしれないんですが、ただ、同時に、この10年に1回の改訂こそ、現場の思いを伝えて、現場の取組を変えて、社会を主体的に変えるチャンスかなとも思います。なぜなら、現場の一人一人も社会の創り手だと思うからです。
 今回、民主的で持続可能な社会の創り手を目指そうというふうに掲げましたが、これって子供だけじゃないと思います。大人も含めた私たち一人一人が民主的で持続可能な社会の創り手にならなきゃいけないのではないかと思います。
 地方自治は民主主義の学校とも言われます。学校以外も含めて、あらゆる場面で市民主体のまちづくりを進めていくことで、みんなで民主的で持続可能な社会の創り手になれる環境をつくっていきたいなと思っています。
 細かい点で2点だけお伝えさせてください。1点目、基本的な考え方の中に、個人と社会のウェルビーイングの実現という記載が追加されたことは、第4期教育振興基本計画のコンセプトの統一という点でもよかったなと思います。今後の各分科会での議論でも、この最上位目標とのつながりを常に意識していただければと期待します。
 もう一つ、今、全国の市区町村での大きな課題って、部活の地域展開だと思います。部活はこれまで教育課程外だったんですが、非認知能力の育成など、部活が担ってきた学びの価値って大きかったんじゃないかなと思います。
 もちろん部活を補うためではないですけれども、課程内に何を位置づけるか。例えば、調整授業時数の先取り研究とか、今後の特別活動ワーキンググループ等での議論には期待したいなと思います。
 例えば、部活の地域展開って来年夏に予定している地域もあると思うんですけれども、それが一段落すると余白ができて、先取り研究しやすいというのもあるかなとも思います。取組開始時期4月とありましたけども、ここにこだわらない調整もあってもいいかなとも思いました。
 最後に、今後の検討スケジュール・検討の在り方等に、今から社会全体が理解でき、浸透するようにと挙げている点はすばらしいなと思います。でも、「分かる」と「できる」はなかなか違います。全国の市区町村の教育委員会の皆様、首長部局も巻き込んでいただいて、一緒に前向きに進んでいただければと思います。
 秋田先生、本当にそのとおりだと思います。子供に対する発信も含めて、芦屋市も頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
【貞広主査】  ありがとうございました。何か意見を伺っていたら、前向きな気持ちになってきたような気がします。ありがとうございます。
 では、溝上委員、どうぞ。
【溝上委員】  溝上でございます。今回の企画特別部会の議論の特徴というのは、現行の学習指導要領の課題を徹底的にベースにしながら、社会で求められる課題を組み込んで、総合的に構造的にかなり細かく丁寧にまとめられて、今日に至っていると思います。本当に事務局の皆様、貞広先生、部会長、関係の皆様の御努力に敬意を表したいと思います。お疲れさまでございます。
 今、髙島委員もおっしゃっていましたし、先ほど荒瀬委員もおっしゃいましたけれども、私も、柔軟な教育課程、余白、裁量的な時間、ここは非常に今回の大きなポイントの一つがあると思っていまして、やはり今回こうやってYouTubeで現場へ発信されておりますので、かなりタイムリーに現場はこれを受け取っていて、意欲的にこれを歓迎する声はたくさん聞いています。私もこれをぜひ後押ししながら、実装していく助力をしたいと思っています。
 他方で、髙島委員おっしゃったように、結構、戦々恐々としているというか、丸投げとは聞いておりませんけれども、ただ、どうしたらいいか分からないという現場の声も聞いております。ただ、これだけ非常にいろいろなレベルの多様性に向き合って、それを包摂的に取り組むということが非常に大きな社会の課題になって、その上での指導要領の方向性ですので、そういう意味では、現場はやっぱり考えるということ、ここは荒瀬先生がかなり強調されたと思いますけれども、そこが今回は非常に求められているし、学校、教師の創意工夫に大いに期待して、私たち、ここを支援していく取組をしていきたいと思います。私はここをしっかり押さえていくべきだと思っております。
 今後の議論、検討において2点、期待を込めてコメントしたいんですが、1つは総合探究と情報のところですね。私は、総合探究の質を高めていくために、本来なら情報で扱っていくべきものが一緒になっていて、探究の質が落ちているというか、求めるところがうまく進められていないことを非常に懸念してきた立場ですので、そこが情報と切り離されてカップリングしていくという構造を示されたことは、非常にいい流れだと一方で思っています。
 他方で、情報のほうはいろいろやること、分かりやすくあるんですよね。その情報をやった上で、探究が本当にちゃんと落とし込まれていくかという、こういう話が次にあって、まだそこの部分がしっかり出てきていないと。むしろこれからの教科ワーキングで検討されることだと思いますので、情報に取り出した後、すかすかにならないように、ぜひ探究はやっぱりこういう形でカップリングして質高く進んでいくんだということが最後議論されて、示されることをとても期待しております。よろしくお願いします。
 もう一つは、主体的に学習に取り組む態度の「○」(丸)を付記していくところですね。私は「○」(丸)ということに非常に意味があると思っています。これはA、B、Cという意味での△、×をつけるということではなく、ポジティブな側面を前に出して見取っていくということですので、そういう発展性はあると思います。
 あと、個人内評価はいいんですけれども、各教科の思考・判断・表現、そこに付記するということが加点になるかどうかは、多分、次の総則・評価特別部会の議論になると思いますけれども、学習評価論に基づいて「○」(丸)を付記ということですかね。そこは非常に理にかなっているし、私もこれがいいと思うんですけれども、現場の実態ということが他方にあって、ここの理屈が別次元で存在する。ここを踏まえるのか否かが、議論のポイントだと思います。「〇」(丸)を付記するだけでは、やらなくていいとか、そんなことではないとは思いますけれども、この評価や取り組みに対するモチベーションが現場で落ちていくことを懸念しています。そういうことになると、平成元年改訂から進めてきた新学力観といいますか、関心・意欲・態度も含めて、主体性施策がトーンダウンします。この30年間進めてきた取り組みがいっそう発展していくように、期待したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 この後、青海委員、古賀委員、野口委員、石井委員の順番で御指名を申し上げたいと思います。
 まず、青海委員、お願いいたします。
【青海委員】  各会で実践発表、提示いただいた多くの教育委員会、学校関係者、研究者の皆様には感謝しております。各会のテーマについて考えるとき、大変参考になりました。
 また、主査、それから事務局の大変丁寧なまとめ、対応に感謝申し上げます。正直、ここまでしていただけるのかなと驚きました。この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。
 これまで学習指導要領の方向性を考える上で、中学校現場の声を届けることに心がけてきました。例えば、学習指導要領が教師にとって使いやすく分かりやすく、真の羅針盤となることですとか、教師と生徒に教育の質の向上のための時間的余裕を生み出すことですとか、現行の学習指導要領の理念の継承とデジタルの利活用、ダイバーシティーなど、新たな課題への取組の方向性を分かりやすく位置づけること、また、調整授業時数制度の運用に向けた事例の蓄積や課題のあぶり出し、提示、こういったことが必要であることなどなどです。
 これまで今回の議論がタイムリーに現場に届けられたことで、さらに全国の校長先生方のお考え、御意見などを伺うことができています。学校に新しい教育が浸透し、実現化するには、多くの時間を費やします。これまでも中教審で議論され、現時点において求められる教育が学校現場に示されてきました。その本質的な理解に基づく教育が学校全体に根差し、実現されようとする頃には、次の学習指導要領が示される。子供の学びには大変時間がかかります。
 今後、この論点整理で示された方向性、「多様な子供たちの「深い学び」を確かなものに」に沿った具体的な検討が進んでいきます。理念や趣旨の浸透が道半ばである現行の学習指導要領の熟成を踏まえ、これからの時代にふさわしいGIGAスクール構想時代の学習指導要領となることを期待しています。
 ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、古賀委員、どうぞ。
【古賀委員】  スピード感を持って、分厚く丁寧に取りまとめをいただき、ありがとうございました。
 幼児教育を専門としてきた立場から、この企画特別部会での議論をどう捉えて教育の接続を考えていくのか、それぞれの先生方の専門的なお立場からの御意見や、事務局のおまとめの内容に大いに刺激をいただいて、方向性が確認できましたこと、大変感謝いたしております。
 特に、本日の案におきましては、6ページの「自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手育成」の今後の検討イメージの中に幼児教育が位置づけられたことは、大変ありがたく思っております。
 今後の議論の中でということで2点申し上げます。6ページに、幼児教育において、言葉を用いて思考を深めるということと、他者と関わり協同する力というところを示していただきましたが、これがどういう具体的なレベル感か。それが例えば、小学校の生活科での振り返り場面であるとか活動場面、また、そのほかの授業などとどうつながっていこうとするのか、専門部会での議論を通して一層明確にしていくということが重要であろうというふうに思っております。
 また、特に言葉に関しましては、先ほど言語能力の育成の重要性の御指摘があり、私も非常に重要だと思っているんですけれども、誤った方向性でこれが広まってしまうことで、早期教育化や幼児教育の学校化みたいなことが生じないように、慎重に取り扱うということもまた重要だというふうに思っております。
 あくまで幼児が遊ぶ姿に私もこだわって今回いろいろお話をさせていただきましたけれども、やっぱり遊ぶ姿に学びを見取るということを基本として、遊びの中の気づきや不思議さなど、素朴な思いが言葉と結びついていくということで伝わるうれしさを感じるとか、もっと伝えたくなるというような情意的な側面や、身体的な動きや具体的な活動と強く結びついた言葉であることなど、幼児教育において押さえるべき点というのもまた確認していく必要があるというふうに考えております。
 もう1点ですけれども、幼保小の架け橋プログラムに関わってきた立場から、今後の評価の在り方につきましても、非常に関心を持っているところです。今回の改訂の基本的な考え方として、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」ということが非常に大きく示されていますが、いまだその評価の関心というところでは、学力テストというところに偏りがちであるということの不合理性についてどうアプローチしていくのか、考えていかなくてはならないというふうに思っております。
 本部会でも繰り返し「学びに向かう力、人間性」の捉え方の重要性が指摘されてきましたけれども、幼児教育は人格形成の基礎を培うものですので、学びというところに焦点化、集約、もちろん遊びは学びだと言っているんですけれども、学習というところに焦点化、集約されていくことの怖さというのも感じているところです。本来育てようとしていることの広さに対して、また、小学校教育以上の段階においても、プレイフルであることですとか、身体性の重要性が確認されてきている中で、評価の在り方が狭い意味での学習に回収されないことと、社会的な理解というのを広めることは重要だろうというふうに思っております。今後、その辺りのことの議論が進むことに期待したいというふうに思っております。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】  野口です。様々な声を反映した形で論点整理をおまとめいただき、改めてありがとうございます。
 「多様性の包摂」が、メインストリームである通常の教育において方針として示されたのは初めてのことかと思います。共生社会の実現に向けて、非常に大きな一歩であると私は思っております。
 これまではメインストリームの通常の教育に追加する形で、多様な子供たちのニーズに対応する、という制度設計になっていましたが、今回の論点整理(案)は、大本である通常の教育そのものが、より多様性を包摂するインクルーシブなものに変わっていかなければならないという強いメッセージが示されていると思っています。
 これは、障害のある子供、外国ルーツの子供、性的マイノリティーなど、マイノリティー性のある子供たちはもちろん、子供たちはそもそも誰もが多様であるということを前提とした学校づくりを私たちは目指していくということであると思います。
 この方向性は、組織や体制の在り方にも今後影響してくるかと思います。つまり、文科省で言えば、多様性の対応に関して、インクルーシブや多様性担当の部署がやればいい、特別支援教育課がやればいい、そういう話ではないということですよね。全ての部署の土台、OSとして多様性の包摂の視点が重要であるということ。教育委員会で言えば、インクルーシブ担当の指導主事や、特別支援教育の指導主事がやればいいとか、そういうことではないですよね。全ての指導主事、部署の土台に多様性の包摂を置いていかなければならないということ。当然、学校でいうと、特別支援学級や日本語指導の担当者、不登校支援担当者を付け足して、その人たちに任せればいいということではなくて、全ての学級の土台に多様性の包摂をしていく。ちょっとくどいようですが、そういうことであるというふうに認識をしています。
 今後、総則・評価特別部会はもちろん、各教科等のワーキンググループにおいて、どう多様性の包摂をしていくのかということを御議論いただきたいと思います。特定分野に特異な才能のある児童生徒のワーキンググループや、不登校、特別支援教育のワーキンググループのみで多様性の包摂を議論するのでは、これまでどおりになってしまうと思いますので、ぜひ委員の先生方も含めてお願いしたいと思います。
 目指すべき資質・能力を目の前の子供たちの、本当にいろいろな子供たちの多様性に合わせてどう教えていったらいいのか、全ての先生が自分事として考えられるような指導要領にしていきたいと改めて思います。
 そのために、学習指導要領のみでなく、当然、現行の指導体制や支援体制は果たして適切なのかということを検討する必要がありますし、荒瀬委員からも指摘があったように、先生たちがやっぱり考える余地や余白がないと難しいというふうに考えています。
 1点、どうしても悩ましいなとこの間考えていたのが、「多様性の包摂」が本当に「equity」でいいのかというところ、ここは正直、私は迷いがあります。恐らくインクルージョンやインクルーシブという言葉が、これまで日本の中では障害に使われてきたため、障害のイメージが強いため、今回、equityとあえてしてくださったのかなと思っているんですが、equity、公正というのは、インクルージョンを実現していく上で必須ではあるんですが、イコールではないので、そこの部分をどうやって現場の先生方も含めて共通認識していくのかということは、改めて考えていきたいところだなと思っております。
 秋田委員がおっしゃっていた、子供たちにも今回の指導要領改訂の方向性、私も伝えていきたいとすごく思いました。ぜひ検討していただきたいです。
 奈須委員がおっしゃっていたサキドリ学校に私もぜひたくさん関わりたいですので、今、研発にも関わらせていただいていますが、やっぱり先生たちと一緒につくっていくというのを、私たち委員も一緒にやっていけると、とてもうれしいなと思っています。
 これからさらに具体の議論を進めていくところではあると思いますが、一旦の区切りかと思います。ここまでたくさんの意見をくださったり、先駆的に多様性を包摂する実践をくださっている学校現場の先生方、また、御意見を聞かせてくださったマイノリティー当事者や御家族、また、この場にいらっしゃる委員の皆様や事務局の皆様に改めて感謝をしたいと思います。ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、石井委員、どうぞ。
【石井委員】  すみません。ちょっと会議が長引きまして、遅れて参加になりました。ですので、ここまでの議論を聞いていないのですけれども、改めまして、事務局の皆様、貞広先生中心に、委員の皆様もそうですけれども、ここまでのご尽力に感謝申し上げます。前回も特徴みたいなことについては述べさせていただきましたけれども、非常に骨太な提案になっているのではないかなというふうに思います。
 それが絵に描いた餅にならないためにも、様々な仕掛けがあるということをどう実装するかということにおいても、教育委員会の伴走支援もそうですし、やはりリソース、その辺をどういうふうに調達していくのか、この辺はかなり急務かなというふうに思っているところでもあります。
 その上で、今後の議論を進める上で、一つ改めて確認していきたいところを指摘させていただきたいと思っています。前回の質疑の中でも、例えば、深い学びということの捉えに関しまして、どちらかというと、個人主義的、知識習得重視みたいなイメージが語られたこともあるかなと思うんですが、決して深いということはそういうことではなく、知識習得の質を重視するということが深いという言葉に込められた意味かと思うんですね。
 ですから、それは思考・判断・表現と深く関わりますし、さらに言うと、協働性、主体性、これとも深く関わるということかと思います。つまり、深いということは、処理の浅さに対して深さ、つまり、分からなさを引きずって、問いと答えの間がいかに長くなるのか、ここがポイントであると。なるほど分かった、さらに、探究的という要素でいうと、これはどういうことなのかと思わずさらに聞きたくなるというふうな、新たな疑問が湧いてくる。こういった姿を想像するということかと思います。
 それこそ学習科学においても、オーセンティック、つまり、有意味であること、そして、協働的であること、そういった学びを通してこそ深い理解が実現されるということが、これ、3点セットで語られていると思うんですね。だから、そういうことを考えますと、深い学びということの意味といったものは、主体的・対話的で深い学びということともつなげながら考えていけるかなと思います。
 そのとき、学習者主体という授業を進めていく上では、むしろ教師の内容理解が重要になるということも、これも再確認する必要があるのかなと思います。それこそ中核的な概念といったものを中心に、学習指導要領を構造化していくということのポイントかと思います。
 この中核的な概念などは、先日も申し上げたと思うんですが、目標、内容の重点化、構造化において基本的に意識するものであって、3つの柱に加えて何か目標が新しく加わったみたいなことになると、非常に負担感を感じてしまうと。そういったレベルの話ではないということは、強調していくことが必要なのかなと思っています。
 もう1点、情意的側面の評価、評定、この見直しに関しては、前回も負担軽減とか、楽するためじゃないんですよということがあったんですけども、しかし、この問題は、負担軽減云々ということ以上に、望ましさの問題があったと。つまり、主体的に学習に取り組む態度といったものの評価、評定が逆機能している。この状況をどう考えるのかということですね。ここをやっぱり再確認しておく必要があるかなと思います。
 つまり、これまでも学習評価、教育評価の研究においては、原則論として情意領域というのは伸ばすことは結構。だから、形成的評価もオーケー。しかし、総括的評価、特にA、B、Cをつけるなどして、評定の対象にするということに関してはかなり慎重でなければいけないと。なぜならば、それは人格評価であるとか、あるいは態度の偽装といった管理的な性格が生まれがちであるということですね。それがむしろ教室とか学校を息苦しく、また、主体性の育成とは全く逆の機能をもたらしているのではないかということがあるかと思います、現状においても。
 そうしますと、先ほど溝上先生からもお話があったかと思いますけれども、改めてこの主体性を育てるということはどういうことなのかと。これをこれまでの蓄積を基に再確認していきながら、真に主体性を育てるということに注力できるように、むしろ大事な部分は、評価はすれども、評定に関してどういうふうにするかということは慎重に考えていくということが大事なのかなというふうに思いますし、まさに幼児教育においては、主体性云々ということを、別にA、B、Cをつけなくても大事にするということがあるわけですよね。総合的な学習の時間等もそうかと思いますけども、そういったところから学んでいくということが大事かなと思います。
 最後に、「多様な子供たちの「深い学び」を確かなものに」というフレーズ、これをどう捉えるかということで言いますと、私、京都市の教育委員をやっておりまして、それで一つ、京都市の中で「一人一人の子どもを徹底的に大切にする京都市の教育」という言葉があるんですね。私、その言葉が非常に大好きでありまして、一人一人を徹底的に大切にする、まさに公教育の矜持みたいなものかと思います。どの子も見捨てへんということですね。
 ですから、まさにこれこそがequityとか、平等、公正の問題に関係する。まさに人権尊重、人権保障の理念であると。この理念を再確認するとともに、徹底的に大切にするということは、もちろん子供たちのウェルビーイングを実現するというふうに、広くはそうなるわけです。しかし、学校というのは、やっぱり学ぶということを通してウェルビーイングにつなげていくということ、これが大事かと思います。まさに学ぶことをちゃんと保障する。それは先ほどの個人主義的であるとか、お勉強的な狭い意味での学習ということでなく、まさに学ぶということはどういうことなのか。これを再確認していくということが重要なのかなと思います。
 ですから、まさに「多様な子供たちの「深い学び」を確かなものに」ということは、これは公教育の矜持と当たり前を再確認するという文脈で捉えていくことが重要なのかなと。そうしましたら、それを掲げるのであれば、十分なそれに見合う条件の整備、ここを国もそうですし、自治体も含めて考えていく。そのための社会的な合意の調達が非常に重要になってくるんじゃないかと思います。
 以上になります。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、前川委員、どうぞ。
【前川委員】  公務のため入室が遅くなりまして、申し訳ございません。既に発言された委員の方と重複するかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。
 今回、様々な観点からの意見に真摯に取り組んでいただいて、本日の論点整理(案)としてまとめていただきました。既存の考え方を大きく超えた提案をいただいたというふうに思っています。
 例えば、41ページに、高校における標準単位数の細分化の例などを示していただいているんですが、長らく高校教育で教育課程の編成に携わってきました私から見ましても、正直、目からうろこの提案をいただいたというふうに思います。事務局の次期学習指導要領に向けた情熱と努力というんですか、に本当に心から感謝したいというふうに思います。
 その上でですが、今後開催されます教科等のワーキングにおいて、学習指導要領はナショナルスタンダードという面を維持しつつも、多様な子供たちの学びを保障するためのカリキュラム・マネジメントが実現できるような柔軟さと、もう一つ、やっぱり現場で実装できる学習指導要領であるために、分かりやすさ、この2つの観点をぜひしっかりと酌み取っていただいて、議論いただければというふうに思います。
 本当に膨大な議論の中からまとめていただいたことに感謝申し上げます。ありがとうございます。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして、小見委員、お願いいたします。
【小見委員】  ありがとうございます。これまでの様々な御意見や議論を丁寧にまとめてくださり、事務局の皆さんや主査の先生方、ありがとうございます。また、御発表いただいた先生方、教育委員会の皆様にも重ねて感謝申し上げます。
 授業時数の調整や、来年度から始まるサキドリ研究校について少し申し上げます。先生方が各校で果敢に挑戦をしていくためには、先ほど秋田委員をはじめ、ほかの委員の皆様もおっしゃったとおり、保護者や児童生徒の理解が不可欠だと感じています。また、学校運営協議会委員をはじめ、日頃から地域のボランティアの方々が学習支援に入ってくださっている学校も全国で多数あります。
 そういった地域住民も含め、何のために取り組むのか、どのような学びを目指したいのかということ、また、今ほど石井委員がおっしゃったように、学ぶというのはどういうことかといったことも含め、関わる皆さんと共有し、納得感を共に育むということが重要だと考えています。
 実は私の娘が通っている小学校は授業時数の特例校なんですけれども、なぜ小学校で総合的な学習の時間が多いか分かるかと先日娘に尋ねたら、全然分からないというふうに言っていました。
 また、保護者の皆さんにも、早帰りの増加を、先生方の働き方改革のためだけというふうに受け止めている方がいらっしゃいます。しかし、授業時数の調整というのは、子供たちの学びを豊かにするための手段ということで、その目的や狙い、期待する学びの姿を明確に言語化し、児童生徒や保護者、地域の皆さんへ説明会や学校だより、ウェブなどを通じて継続的に発信していくということが大事だと考えています。
 とりわけサキドリ研究校に手を挙げてくださる都道府県や市町村におかれては、関係者の方々への丁寧な対話や説明を重ねていただきたいと思います。調整時数の意義が共有されるほど、現場の先生方は一層力を発揮できると思っています。
 以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】  ありがとうございます。
 では、澤田委員、どうぞ。
【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田です。おまとめいただき、本当にありがとうございます。
 次期学習指導要領の改訂は、現行学習指導要領の成熟であることに加えて、民主的で包摂性の高い学校づくりに向き合った、人権意識の非常に高いものとして、大きな節目になると思いました。
 審議会の議論をしっかり追っている先生たちからは、既にわくわくするとか、もっと学んでいかないとという声も聞いています。今後、この期待に応えられるように、ワーキンググループなどでの検討の深まりを心から期待しています。
 その上で、これまでの部会の中でもお伝えしてきたことともしかしたら重なる部分や、多少細かいこともあるかもしれませんが、幾つかお伝えします。
 まず、5ページ6ページで書きぶりを入れ替えていただいて、「自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」というのが目立つようになって、何を目指すのかが現場にも伝わりやすくなったと思いました。修正、本当にありがとうございました。
 この文言の中で最も重要だというのが、民主的な部分かなと私個人としては思っていまして、これは諮問にもありました、同調圧力や正解主義ではないということだと考えています。こうしたことをまさに多様な他者とともに学ぶ民主的な場が学校であるんだということを意識しながら、今後議論していただけることと思います。
 特別活動では、意見表明や合意形成の機会などの実践について取り扱われることと思いますが、実践の場は特活だけではなくて、全ての教科を通じてのことだと書いていただいていることも非常によかったと思っています。
 また、深い学びの実装ということと多様性の包摂は両輪であり、同質性の高い人たち同士だけよりも、異なる背景や能力を持った多様な人同士で考えるほうが、表現や思考の幅も深みも、そして、人としての幅も深みも増すと考えています。
 私の本業である学校の業務改善においても、一部教員だけよりも、様々な背景を持った教員やその他職員や、あるいは保護者、子供も一緒に考えたほうが、より本質的な業務改善になります。そうした、みんなで考えていくということが当たり前の学校文化をつくる道しるべとしての学習指導要領になるのではと思っています。
 また、包摂性に関わる学年区分の柔軟化についてなのですが、同じ学年であっても、実際には前後二、三学年程度の成長スピードの差のある子供たちが同じ教室の中にいますので、学年区分の柔軟化によって救われる子供が相当数いると思います。恐らく何学年相当というふうに記載していくのかなと思っていますが、杞憂だといいんですが、各教室や学校においては、それだけだと柔軟に運用されにくい可能性があるのではと考えています。これまでの学習指導要領において、様々に学校現場との擦れ違いが生まれてきたことを考えると、例えば、めったに学年相当を超えてはいけないんじゃないかと、より消極的なほうに傾くのではと考えています。学年区分の柔軟性を、現場が子供たちのためにしっかり使いこなせるようになることに留意して検討していただきたくお願いします。
 次に、調整授業時数についてです。1割をどこまで拡大するかを今後検討していくということだと思いますが、高い専門性を持って子供を間近で見ている先生たちの判断が最大限生かせるように、例えば2割など、できるだけ現場に裁量を持たせていただきたいと思います。
 話は変わるんですが、つい先日、管理職の先生たちと話したときのことですが、探究的な学びがやっと少し定着してきたのに、今度は新しく概念学習が始まるのが怖いという声がありました。
 それを受けて、改めて論点整理資料を確認しましたが、恐らくこのことに関連するであろう61ページには、中核的な概念という言葉が入っていなかったりしたので、もしかしたら現場の混乱に繋がる可能性があるように思いました。今後の議論の中では、探究や総合的な時間と各教科の中核的な概念の関係が分かりやすく、現場の先生が確かにと思えるような形で示されていくことを期待したいと思います。
 次に、教師と子供の双方の時間的余白についてです。深い学びの実装のためには、深く考えるための時間が不可欠です。改めて余白の優先度の高さについて認識しながら、検討を進めていただければと思います。
 資料にもある、中核的な概念等の獲得に重点を置くために必要に応じた学習内容の精選というのは、決して単なる引き算ではなくて、本質的には足し算であって、余白の優先度は非常に高く、むしろ余白なくして中核的な概念の獲得は不可能だという認識で御議論していただければと思います。
 また、深い学びの実装のためには、教師が学び続けるための余白、具体的には、放課後の余白も不可欠です。調整授業時数のうち、裁量的な時間の上限と、そのうち組織的な研究に充てられる時間の上限の検討は今後に委ねられていたかと思いますが、教師が学ぶ時間が足りないということが決してないように、教師自身も深く学べるための必要十分な時間が確保できるように検討していただきたいと思います。
 以上です。
【貞広主査】  ありがとうございました。
 おおむね出席をいただいた委員の方から御意見を全体でいただいたところでございます。本論点整理は、各教科等の今後のワーキンググループでの議論の前提となるものですので、ワーキンググループの設置を決定した教育課程部会の審議を経て、正式に取りまとめる必要がございます。
 本日皆様から様々な御意見をいただきましたが、とりわけサキドリ研究校事業については、様々御意見をいただいたところでございますけれども、論点整理(案)自体の内容につきましては、大筋御了承いただけたのではないかと理解しております。よろしいでしょうか。
 本日の議論を踏まえまして、教育課程部会での御意見を踏まえた修正というのもあるわけですけれども、この点につきましては、私と奈須教育課程部会長に御一任いただくということでよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。
 少しだけ時間があるので、ちょっとだけ蛇足をさせていただきますと、今回、深い学びの実装、多様性の包摂、実現可能性の確保ということが3本の柱になっていますけれども、個人的には、この中でもFeasibility、実現可能性のところが実は最難関なのではないかと思っています。
 今回、余白とか裁量という言葉、今日の議論の中でも様々出てきましたけれども、言うまでもなく、そもそも多様な子供たちを対象に、思ってもみなかった学びを展開する、様々な子供たちを対象にしている教育という営みでは、そもそも学びの専門職たる先生方に裁量を与えて専門的な関わりをしていただけなければならないものなんだと思います。新たに裁量と言ったわけではないということは、その専門職たる先生に、この学習指導要領の哲学とありように納得していただいて、腹落ちしていただいて、さらにわくわくしていただいて、遺憾なく専門性を発揮していただけるようにしなければいけないということで、ワーキングの中でそういう学習指導要領をいかにつくっていただけるのかというところが非常に重要かと思います。
 2点目にもなりますけれども、実現可能性を浸透という形で書き換えたり、言い換えたりすると、実は今日縷々いただいた御意見というのは、今回のこの論点整理(案)の行間に潜んでいる様々な重要な考え方を、今日、それぞれこちらで御紹介いただいたわけですけれども、ぜひこのワーキングの議論にも、しっかりとこの行間を踏まえた考え方や思いが浸透した形で議論をしていただけるように、事務局については、とりわけその点については御配慮と御尽力をいただきたいと思いますし、また、こちらの部会ともワーキングとのやり取りをさせていただきながら、すり合わせながら、理解をしていただきながらということで進めさせていただければと強く考えているところでございますので、よろしくお願いいたします。
 ということで、今後は各教科等別のワーキングを中心に審議を進めていただくことになりますけれども、本特別部会は各ワーキンググループの議論の状況を把握し調整する役割も担っておりますので、今後、必要なタイミングでまた開催をさせていただくことになろうかと思います。こちら、また事務局と御相談申し上げますけれども、その際はまた先生方の御尽力をいただければと思っているところでございます。
 それでは、以上をもちまして、本日は閉会といたします。大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
―― 了 ――

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