令和7年9月5日(金曜日)15時00分~18時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【貞広主査】 皆様、こんにちは。それでは、第12回教育課程企画特別部会を開催いたします。
本特別部会では、前回まで合計11回にわたり議論を重ねてまいりました。これまでの議論を踏まえまして、本日は、論点整理(素案)につきまして、皆様に御議論いただきたいと存じます。
なお、7月に令和7年度全国学力・学習状況調査の結果及び令和6年度の経年変化分析調査の結果が公表されましたので、結果等について御説明をいただいた後、論点整理(素案)について御説明をいただきます。その後、5分間休憩を挟んで、皆様の御意見を伺いたいと考えております。
それでは、全国学力・学習状況調査の結果と、それを踏まえた対応につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【相原学力調査室長】 学力調査室長の相原でございます。よろしくお願いいたします。
全国学力・学習状況調査につきましては、2ページの目次のとおり、今回はまず1つ、今年度の悉皆調査の結果、及び2つ、昨年度の経年変化分析調査と保護者に対する調査の結果、これをまとめて御報告させていただきます。
3ページですが、まず、今年度の悉皆調査です。国語、算数・数学に加えて、3年ぶりに理科を実施いたしました。初めて中学校理科にCBT調査を導入し、大きなトラブルなく完了いたしましたほか、結果返却を2週間ほど早めまして、夏休み前に児童生徒に返却できるスケジュールに改善をいたしました。
各教科の正答率・スコアは表のとおりとなっておりますけれども、中学校の数学が50%を切っておることをはじめとして、小学校国語以外の5つの教科におきまして、A問題・B問題が一体化された平成31年度以降で過去最低の水準となっております。
ただ、悉皆調査の問題は毎年度異なるものでございますので、過年度と単純比較するということは難しいというのは例年と同じですが、基本的概念の理解・定着が十分でないために取りこぼしたような設問も見られましたほか、15ページに参考でおつけしておりますように、特に今年度は算数・数学でばらつきが極めて大きいという結果もございました。
また3ページのとおり、公表の段階で初めて男女別の集計を行いました。結果、国語は女子が高く、理数の教科では大きな男女差がないという結果でございました。
4ページをお願いします。教科調査の国語です。
目的に応じて、文章と図表などを結び付けて必要な情報を見付けることや、自分の考えが伝わるように、根拠を明確にして書くことに課題が見られました。
4ページ右側、緑の中学校の問題は、今年の美術展のチラシに昨年参加した小学生の感想を基に工夫したことのPRを書き加えるというような場面の問題でございますが、この工夫とその根拠を適切に選んで結び付けて書いた生徒というのは、正答は3割程度でございました。
次は算数・数学です。
5ページ左側、オレンジが小学校算数です。分数の単純な計算というのはよくできておりました一方で、数直線上の位置を分数で捉えるというような問題では正答は3分の1程度、また、10%増量後の量が増量前の量の何倍になるかという選択式の問題でしたけれども、これも正答が4割程度にとどまりました。
5ページ右側、水色が中学校数学です。図形の証明を書くということではなく、あらかじめ書かれた証明の誤りを見つけて書き直す証明の改善という比較的易しめの形式での出題でございましたけれども、正答が4割程度ということでございました。
なお、ここにクロス分析と、小さい字で恐縮でございますけれども、今年度の生徒質問で「文字式や証明を読んで理解できるか」という質問を新規に聞きました。この結果、否定的回答の生徒というのは全体で3分の1程度おったんですけれども、この問題の正答状況をクロス集計いたしますと、否定的回答をした生徒のこの問題の正答率は1割程度にとどまっているというような状況が分かりました。
次は理科でございます。
6ページ左側、黄土色が小学校。こちらでは、電気を通すもの、電気回路の理解に課題が見られました。
6ページ右側、紫色が中学校です。こちら、CBTのメリットを生かしまして、実験動画を見て、化学反応を原子や分子のモデルでCBT上で表現するというような問題を出題いたしました。しかし、この反応前後で原子の種類や数が全然異なるというような誤答がかなりございまして、化学反応の概念、反応物質と生成物質の整理ができていないという誤答が非常に多かったという状況です。
なお、ここにG-P分析図というグラフをおつけしています。CBTを導入した中学校理科では、従来の正答数・正答率に代えまして、子供たちには5段階のIRTスコアバンドによって結果を返却しております。そして、その5段階のバンドにひもづけて、学力層ごとに正答、誤答などの特徴を表したG-P分析図を作成しております。このような分析を報告書などで活用して、授業改善の事例に結び付けてお示しをするという取組をしております。
各学校や学級でこのIRTバンドの分布状況というのはそれぞれあると思います。その状況とこのG-P分析図を照らし合わせることによりまして、個に応じた指導に取り組みやすくなる、そういう強力な支援ツールになっていくと考えておるところです。
次は質問調査でございます。
7ページ左側、赤の部分は、「主体的・対話的で深い学び」に取り組んだ児童生徒ほど正答率・スコアが高いという傾向が見られました。また、その下ですけれども、そうした学びに取り組んだ者は大変この正答率・スコアが高いという状況で、学習指導要領上の「主体的・対話的で深い学び」、どの教科もしっかり重視していくということが重要だと示唆されておるかと思います。
7ページ右側が、緑色の部分、ICT機器の関係でございます。
まず、中央下でございますけれども、授業でICT機器を使用した頻度の高い児童生徒のほうが正答率・スコアが高いという状況も確認されました。ネットワークの環境が整って、効果的な活用がこの使用頻度に結び付いてきていると考えられます。
7ページ右側はプレゼンテーション、情報の整理、といったICT機器の活用の具体的な場面での自信に関する今年度の新規の質問のデータです。こうした自信のある児童生徒ほど正答率・スコアが高いという傾向が見られまして、探究的な学びにも取り組めているという状況でございました。
8ページです。左上に「授業の内容がよく分かる」という質問が載っておりますけれども、これに「当てはまる」と積極的に回答した児童生徒の割合が、全ての教科で前回調査から減少が見られました。この点は引き続き分析が必要な点と考えております。
また、8ページ一番右下、青色の部分は、学校外での勉強時間でございます。小・中学生ともに、令和3年度以降、平日、休日いずれも減少の傾向が続いておる状況でございます。
では、続きまして、もう一つの調査のほうでございます。令和6年度に実施いたしました経年変化分析調査・保護者に対する調査の結果を御報告します。
10ページ上段に概要がございますが、経年変化分析調査につきましては、全国的な学力の時系列変化を正確に把握するため、また、保護者に対する調査は、家庭状況を併せて把握して分析するために、3年に一度程度抽出で実施しておるものです。
10ページ下段に経年変化調査の結果をまとめております。比較可能な調査を開始した平成28年度が基準年度となります。なお、英語については、初回となる令和3年度が基準年度となります。グラフにございますように、中学校数学以外の4教科について、スコアの低下が見られました。また、左下(2)に記述がございますが、中学校英語以外の4教科について、家庭状況の厳しい低いSES層でスコアの低下が大きいという状況が確認されました。
この調査の対象となった令和6年度の小学校6年生・中学校3年生は、新型コロナウイルスの流行のさなかに小学校低学年あるいは中学年であった学年であります。その影響をこの調査結果から断定する段階にはまだございませんけれども、例えば、英語につきましては、話す活動を中心とする授業を理想的に展開できなかったことの影響も想定されておるところでございます。
11ページをお願いします。現時点で分析できるデータには限りはありますものの、保護者に対する調査などを使いまして、児童生徒の学校外での過ごし方を中心に、結果を御報告いたします。
11ページ左上にグラフをまとめておりますけれども、子供の学校外での平均的な過ごし方というのが、この3年間におきまして、勉強時間の減少、ゲーム・スマートフォンの使用時間の増加という方向で変化が進んでいます。特にゲーム・スマートフォンの時間は、児童生徒質問調査でも何年かに一回聞いておるところですけれども、児童生徒質問調査での児童生徒自身の回答よりも、今回この保護者に対する調査での保護者の回答での増加が急激に大きくなっていたというところでございます。
また、SESが低いグループほど勉強時間が短く、ゲーム・スマホの使用時間が長いということも明らかとなりました。
12ページをお願いします。左上のとおり、子供と勉強の話をするという保護者の割合が少し減少しておるほか、その右ですけれども、学校生活が楽しければ良い成績を取ることにこだわらないという保護者の割合が増加しているというような状況が見られます。
また、12ページ左下ですけれども、ゲーム・スマホの保護者の使用時間が長いと、子供も長いというような状況も見られております。
12ページ右側ですが、授業がよく分かると回答した児童生徒のほうが勉強時間が長く、ゲーム・スマホの時間は短い、また、右下ですけれども、授業がよく分かる場合も分からない場合も、家で保護者と勉強の話をする児童生徒のほうが勉強時間が長いというような状況が確認されました。
今回、これらの調査結果につきまして大変大きな課題が明らかになったということで、私どもも大変重く受け止めておるところです。
この2件の調査の結果及びその活用については、8月8日付けで総合教育政策局長通知を発出しました。
まずは、地に足をつけて調査の趣旨・目的に立ち返りまして、先ほども言及しましたような返却時期の早期化ということも生かして、結果の振り返りをしていただくことをはじめ、児童生徒一人一人の学習改善・授業改善にフィードバックしていくということがまずは重要と考えております。
その上で、今年度の通知におきましては、既習事項の学び直し、家庭学習の充実、学校運営協議会における学習支援方策の協議といった具体的な取組も検討をお願いしたところでございます。
また、8月20日と21日の2日間にわたりまして、調査結果を踏まえた学習指導の改善・充実策、授業アイディア例等の説明会を国立教育政策研究所で開催いたしました。この資料は、現在ホームページに掲載しておりますけれども、近日、研修動画についてもアップロードする予定でございます。
さらに、30ページでございますけれども、今回の明らかとなったスコア低下など、厳しい課題につきまして、大学等の研究機関の専門的な知見を活用して、要因の分析、特徴的な学校の把握といった分析を今後進めてまいりたいと考えております。
引き続き、教育委員会・学校の現場と連携し、また、専門家の知見をお借りして、全国学力・学習状況調査の結果の分析・活用を通じた、エビデンスに基づく指導の改善の歩みを進めたいと考えております。
以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
では、今の全国学力・学習状況調査の結果を踏まえて、武藤教育課程課長より、参考資料1-2について御説明いただきます。
【武藤教育課程課長】 教育課程課長の武藤でございます。
今、相原室長から御説明があった調査の結果を踏まえて、当面の対応を中心に、簡単に御説明申し上げたいと思います。
資料の主な課題というところは、先ほど室長からあったとおりでございまして、これを受けまして、まさにこの企画特別部会、それから、これから始まる各教科等のワーキングにおきまして、この分析結果を踏まえて次の学習指導要領について検討していくと。これは当然進めていくことだと思っていまして、この後御説明申し上げる素案の中にも、そうした記載を盛り込んでいるところでございます。
その中で、チェックが2つございますけれども、大学等の研究機関による高度な追加分析の結果ですとか、あるいは、児童生徒等の基本的な生活習慣(スマートフォンの使用等を含む)に関する調査結果も実施するということで、こういった調査の結果につきましても、今後のワーキング等の検討において出していきたいと思っております。
一方で、改訂を待たずに取り組むべき施策や事業の展開でございます。
まず、教科等横断的な部分でございますが、学習指導関係で、全国学調について、SESが低い層の学習状況等のさらなる分析結果を秋頃を目途に提供予定ということ。
それから、今回明らかになった課題の解決に資するデジタル技術の活用方法について、ホームページ等で発信をしたいと考えております。
また、次のページに参りまして、生活習慣の関係ですが、こども家庭庁をはじめ、関係省庁と連携しまして、「親子のルールづくり」の推奨など、青少年のインターネットの適切利用に関する教育・啓発活動等を引き続き推進してまいりたいと思いますし、加えて、情報機器の長時間利用の防止を含め、教師向けの情報モラル教育のオンラインセミナーをやりたいと考えております。
ここから先が、各教科のそれぞれの取組でございますが、まず算数・数学につきましては、先ほど説明があったような基本的な概念の定着ですとか、個別最適の観点も含めた家庭学習に関する効果的な実践、あるいは、その家庭学習の実践と授業との関連といったことに関する効果的な実践を紹介する大規模なオンライン教員セミナーを9月から冬休みにかけて複数回実施したいと考えております。
また、概算要求に関わっては、「理数好きな児童・生徒を育てるプラン」というのがございます。この中でも、基本的な概念の定着のための指導方法の開発をメニューとして加えたいと考えております。
続けて、英語でございますけれども、生成AIを活用した英語教育の実証事業、これは今年度約300校でやっていただいておりますが、成功事例を普及する大規模なオンラインセミナーをやりたいと。
加えて、第二言語習得理論、あるいは、学習科学の研究による知見に基づいた実践的な英語指導方法を学ぶセミナーを開催するということ。
それから、国語の中でも、認知心理学の知見に基づきました読解力、記述力の向上に関するセミナーも併せて開催したいと考えております。
また、今日これから御議論いただきますが、本特別部会における論点整理がまとまった後、その方向性も踏まえながら、現行の指導要領下でも着手可能な取組について整理して、通知を発出したいと考えているところでございます。
説明は以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
続きまして、議題(1)に移ります。
お配りしている論点整理(素案)につきましては、事務局と御相談させていただきまして、これまでの論点資料を、委員の皆様の御意見を踏まえつつ修正し、御議論を俯瞰した全体のイメージと今後の検討の進め方等を追加いただいたものでございます。
内容につきまして、大変大部でございますので、少し長めにお時間をいただきまして、事務局より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。教育課程企画室長の栗山でございます。それでは、論点整理(素案)について御説明をさせていただきます。
まず、この論点整理(素案)の位置付けでございますが、目次の上のほうにございますように、本特別部会におきましては、令和6年12月の文部科学大臣による諮問を受けまして、初等中等教育分科会や教育課程部会への報告を交えつつ、教育課程の枠組みに関する事項や教科横断的な事項を中心として審議をいただいてまいりました。今般、11回にわたる検討の結果を暫定的に取りまとめまして、今後の本特別部会におけるさらなる検討の深化や各ワーキンググループ等での検討の前提として整理をしたものでございます。
その下に御覧いただけますのが目次でございます。第一章、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方と、右下にございます第八章、今後の検討スケジュールや検討の在り方等、この部分が新規で作成した部分でございます。その他の第二章から第七章までについては、これまで特別部会での御議論いただいてきた内容について、議論を踏まえて修正等を行った内容が主なものとなってございます。
したがいまして、ここからの説明は、第一章、第八章について詳細に御説明した上で、第二章から第七章については、御審議を踏まえた主な修正事項について御説明をさせていただきたいと考えております。
まず第一章、次期学習指導要領に向けた基本的な考え方についてでございます。
まず1番、改訂論議を貫く3つの方向性についてでございます。令和6年12月の文科大臣による諮問やこれまでの検討を総合的に踏まえまして、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な考え方として、以下を提起するとしております。
四角の中でありますが、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育むため、1、「主体的・対話的で深い学び」の実装、2、多様性の包摂、3、実現可能性の確保の3つの方向性を踏まえて議論を行う。これらの3つの方向性に基づく改善は、教育課程内外のあらゆる方策を用いつつ、三位一体で具現化されるべきものであるとしています。
具体的な御説明がその下からでありますが、まず1つ目、このうち、丸1、「主体的・対話的で深い学び」の実装は、現行学習指導要領が目指している、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を通じた資質・能力の育成について、一層の具現化・深化を図るものである。
このため、学習指導要領の目標・内容の構造化・表形式化・デジタル化、そして、学びに向かう力、人間性等の重要概念の整理等により、分かりやすく、使いやすい学習指導要領を目指す。思考力、判断力、表現力等を発揮する中で、知識の概念としての習得や深い意味理解を促すこと、他の学習や生活の場面でも活用できるような、生きて働く「確かな知識」を習得すること、学びに向かう力、人間性等を育成することが一層重要となる中、「主体的・対話的で深い学び」の実装は、次期学習指導要領に向けた第一の方向性とすべきものであるとしています。
そして、このような授業改善に不可欠であるデジタル学習基盤の効果的活用は、育成すべき資質・能力が十分に意識されず「深い学び」につながっていない事例もあるなど、道半ばです。また、デジタルの負の側面への対応も含め、情報活用能力の育成にも様々な課題が見られます。このため、小学校の総合的な学習の時間への「情報の領域(仮称)」の付加、中学校での「情報・技術科(仮称)」の創設等の具体的方策を示した上で、情報活用能力を各教科等における探究的な学びを支える基盤と位置付け、抜本的な向上を図ります。こうしたことを進めるに当たっては、知・徳・体のバランスや、人間ならではの身体性や実体験の重要性を十分に踏まえる必要があると考えています。
2つ目、多様性の包摂は、多様な個性や特性、背景を有する子供が多くなっている実態に向き合うとともに、こうした多様性を個人及び社会の力に変える観点から、一人一人の意欲が高まり、可能性が開花し、個性が輝く教育の実現を目指すものであり、第一の方向性と両立させることが不可欠な第二の方向性であります。
このため、「裁量的な時間」をはじめとする「調整授業時数制度」の創設、学年区分の取扱いの柔軟化、高等学校段階における単位制度の柔軟化、不登校児童生徒や特定分野に特異な才能のある児童生徒のための特別の教育課程編成を可能とする制度の創設等により、教育課程全体を包摂的な仕組みに改め、その具現化を図ります。
こうした取組は、一人一人の個性や特性、背景を踏まえた対応が可能な仕組みとなるという意味で、公正性の拡大と言えるとも考えています。
3つ目が、実現可能性の確保ですが、第一・第二の方向性の両立を支え、実現可能とする観点であり、教育課程以外の勤務環境整備とも相まって審議全体に通底させるべき第三の方向性であると考えています。
このため、教育課程の枠組みや教科等横断的な事項、今後行われる教科等ワーキンググループを含む審議全般にわたって、教育課程の実施に伴い教師に過度な負担・負担感が生じにくい、持続可能な在り方を追求し、教師と子供の双方に「余白」、コメ(※)で「教育の質の向上のための時間的余裕」という意味で使っておりますが、この余白を創出することで、豊かな学びにつなげる方向性を踏まえた検討を行う必要があると考えております。
こうした3つの方向性を現時点で端的に表現すれば、「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」と言えると考えています。第一の方向性は「深い学び」、第二の方向性は「多様な子供たち」、そして、第三の方向性は「確かなもの」という言葉に主に託されています。
さらに、「みんな」で育むということを申し上げましたが、その主体は、学校教育の未来を切り拓く中心的存在である学校の教職員はもとより、学びの当事者である子供、人口減少の中で学校を支える主体でもある、保護者や地域住民、地方公共団体の職員、民間の担い手も含まれ、「社会に開かれた教育課程」の理念とも深く関わるものであります。今後、各ワーキンググループ等を中心に具体の議論を進める中で、こうした考え方もさらに深めていく必要があると考えております。
この内容を図示したものが、こちらのページであります。この次期指導要領に向けた検討の基盤となる考え方として、多様な子供たちの「深い学び」を確かなものにすることで、1、2、3の方向性を三位一体で具現化するということでお示しをしております。
丸1の主体的・対話的で深い学びの実装の下に関連するキーワードを並べておりまして、例えば、生きて働く「確かな知識」の習得、資質・能力育成の具体化・深化、「好き」を育み「得意」を伸ばす、情報活用能力の抜本的向上、個別最適な学び・協働的な学びなどを掲げております。
また、横に行って、丸2、多様性の包摂についても、調整授業時数制度、裁量的な時間、個別の児童生徒に係る教育課程の仕組み、デジタル学習基盤を活用した学習環境デザイン、個別最適な学び・協働的な学び等を掲げております。
また、下に行って、丸3、実現可能性の確保でありますけれども、授業時数の適正化・平準化、教科書の精選、構造化、裁量的な時間など様々な方策による教師・子供双方の「余白」の創出を掲げております。
これら全体を、下のブルーの部分にございますように、学びをデザインする高度専門職としての教師、デジタル学習の基盤、「裁量的な時間」をはじめ柔軟な教育課程による余白、教育課程以外の勤務環境整備が支えている、こうした全体像として図示をさせていただいています。
戻らせていただきます。2番、自らの人生を舵取りする力と民主的な社会の創り手の育成についてであります。
「正解主義」や「同調圧力」への偏りから脱却し、民主的かつ公正な社会の基盤としての学校を機能させる必要性について諮問で指摘された背景には、社会全体の構造変化があります。生成AIなどデジタル技術の発展が相まって、みんなと同じことができることも重要ですが、それ以上に独自の発想や視点に価値が置かれるようになってきています。現在の学校教育の中で主体的に学びに向き合えていない子供も多くなっています。少子化に伴う入試による動機づけの変化、学習時間の減少等も踏まえ、学びの動機づけをアップデートする必要もあります。予測困難な時代に、労働市場の流動化や就業期間の長期化、マルチステージの人生モデルへの転換が進む中、しなやかに「自らの人生を舵取りする力」が不可欠となりつつあります。また、内なる国際化で人口の多様性が増すとともに、SNSや生成AIの負の側面の影響もあり社会分断の可能性等も指摘される中、デジタル時代に主体的に社会参画する「民主的な社会の創り手」の育成も喫緊の課題であります。
このため、全ての児童生徒に育むべき資質・能力育成の具体化・深化と並行して、一人一人の「好き」(興味・関心)を育み、「得意」を伸ばしながら、それらを原動力として学び全体への動機づけを図っていく取組と、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、多様な他者と対話や合意を図る取組を同時に進め、これらが有機的に関わり合い高まっていく教育課程に変革していく必要があると考えています。
こうした問題意識の下、本部会では、学びに向かう力、人間性等の概念の再整理、総合的な学習・探究の時間を中心とした質の高い探究的な学びの実現、デジタル化の負の側面への対応を含む情報活用能力の抜本的向上、特別活動を中心とした主体的な社会参画に関わる教育の改善、個性・特性に応じた学びの充実に繋がる裁量的な時間の創設等を主な具体策として議論してまいりました。今後、ワーキンググループ等でさらに検討を深めていく必要がございます。
なお、これらは、丸1、「主体的・対話的で深い学び」の実装、第二の方向性である多様性の包摂という方向性について、社会全体の構造変化を踏まえて具現化するものであります。丸1、丸2の一部を構成するものということでございます。また、「よりよい学校教育」を通じて「よりよい社会」への移行を図るという意味で、「社会に開かれた教育課程」の理念とも深く関わるものでございます。
これを図示したものが、こちらの補足イメージ1の丸2でございます。「主体的・対話的で深い学び」の実現を通じた自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手の育成(今後の検討イメージ)としております。
左側に、「好き」(興味・関心)を育み、「得意」を伸ばすということ、そして、右側、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる、これを両輪で育んでいくとした上で、具体的なイメージを総合、各教科等、特別活動、道徳という形でお示ししております。
総合では、課題設定の充実を掲げた上で、発達段階が進むにつれて、個人探究とグループ探究のバランスが、やや個人探究を充実させていくようなイメージをお示ししております。
また、各教科等については、生きて働く「確かな知識」の習得を掲げた上で、興味・関心を広げ、教材・学習方法の選択を促進、自分の意見を表現する活動の充実、探究的な要素を持つ学習活動の充実、家庭学習の内容を自律的に決められるような段階的な指導、こうしたことを代表例として掲げつつ、総合と各教科等が両輪で回っていくようなイメージもお示ししております。
また、特別活動については、児童生徒主体のルール形成や学校生活の改善、行事の創造等の明確化、また、下のほう、納得解を形成しようとすることの重要性の明文化、こうした既に特別部会で御議論いただいたことを整理しております。
また、右側、道徳、考え、議論する道徳の徹底を目指してまいりましたが、さらにそれを深めていく方向性をお示ししております。
こうしたことに加えて、左側に行きまして、進路の探究・支援について、中学校・高等学校段階でも深めていくということを考えております。
こうしたことを、やや濃いブルーでお示ししておりますけれども、総則等で記載を深めていくようなイメージをもっておりますけれども、幾つか掲げております。
多様な子供を誰一人取り残さない視点としての個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実、また、科学的なエビデンス(認知心理学や学習科学等を主に念頭に置いておりますが)に基づく効果的な授業方法、児童生徒の学習方略の指導、そして、障害や認知特性等多様な実態を踏まえた調整、全ての活動の基盤としての心理的安全性の確保、こうしたことをさらに検討を深めていきたいと考えております。
そして、先ほどの絵と同様に、これらの教育活動について高度専門職としての教師や学習基盤、余白、教育課程以外の勤務環境整備が支えていくというイメージをお示ししております。
なお、下のほうにコメ(※)で書いておりますけれども、これは改訂に関わる全ての要素を網羅する性質のものではございませんので、念のためお示ししております。
これらが第一章の内容でございます。ここからは既に御議論いただいた第二章以降の内容でございます。
まず、質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方についてでございます。
(1)として、中核的な概念等を活用した一層の構造化・表形式化・デジタル化についてでございます。
これについては、特に、右側、丸1の構造化について、4つ目のポツでございますけれども、構造化は、これからの社会を創り出していく子供たちに必要な資質・能力を一層明らかにするものであり、「社会に開かれた教育課程」の理念を具現化するものといえるという記載を加えております。
さらに、基礎的・基本的な内容との関係ということで、パラグラフを加えておりまして、先ほど御説明もあった全国学力・学習状況調査の結果等でも、各教科での基本的概念の理解・定着に課題が見られております。
本部会でも、例えば分数の計算に当たって、前提としての分数の概念が理解できていない小学生が多い等のデータを踏まえ、認知心理学等の観点から、個別の知識の集積にとどまらない概念としての習得や意味理解を含む「深い学び」を促す指導の重要性を検討してまいりました。
こうした中で提起した中核的な概念等による教科等の目標・内容の構造化は、「深い学び」を実現する授業のイメージを教師が持てるようにすることで、「確かな知識」の習得にも寄与するものであり、そうした視点を踏まえて今後のワーキンググループ等での検討も行うべきという記載を加えております。
また、表形式化、デジタル化が次のページにございまして、中段下にございますように、これらをまとめて、「構造化・表形式化・デジタル化」を一体的に進め、参照や指導案等の作成がしやすい「分かりやすい」「使いやすい」学習指導要領とすべきということでまとめております。
また、こちらの「タテ・ヨコの関係」というイメージも既にお示しをしておりましたが、「深い学び」の具現化ということで、さらにブラッシュアップをした絵を示しております。
上の箱の矢印のとこでございますけれども、こうした「タテ・ヨコの関係」を学習指導要領上で可視化することによって、資質・能力の関係性の理解や、それらを一体的に育成するための教師の単元づくりを助け、「深い学び」の授業で具現化しやすくするという追記をさせていただいております。
こうした「タテ・ヨコ」の可視化ということの延長線上に、学習指導要領の構造化・表形式化のイメージ、これは「タテ・ヨコ」のイメージをまさに具現化するものでございますけれども、お示しをしております。
こちらは2月17日の企画特別部会で、石井委員からの提出資料を基に、文部科学省のほうでさらに具体的なイメージを作成させていただいたものでございます。こちらは中学校数学の「数と式」の例でございますけれども、まず、左側と右側、知識及び技能の系列、右側に思考力、判断力、表現力等の系列ということで、この左側、知識及び技能の系列の直下に中核的な概念の深い理解、右側に複雑な課題の解決ということで、内容のまとまりにおける理解してほしい主要な概念や内容のまとまりにおける知識・技能を総合的に使いこなして思考・判断・表現できる力、これをそれぞれ示すイメージをお示ししております。
その下にぶら下がるような形で、現行の学習指導要領においても記載されている個別の知識及び技能について、分かりやすく表形式の中で記載するイメージをお示ししております。また、右側には、個別の思考力、判断力、表現力等について、具体的に現行指導要領で示されている内容についてぶら下げているようなイメージでお示ししております。
このような表形式・構造化をしていくということによって、分かりやすく使いやすい学習指導要領を具現化していきたいというイメージをお示ししたものでございますが、これはあくまで現行指導要領を基に構造化・表形式化のイメージを作成したものでございますので、実際の構造化案については、今後、総則・評価特別部会やワーキンググループ等で具体的に御検討いただく前提でございます。
なお、こちらは中学校国語の例でございますので、御参照いただければと思っております。
次に、「学びに向かう力、人間性等」の再整理でございますけれども、こちらについては基本的に企画特別部会で御議論いただいた内容についてお示しをしておりますけれども、18ページの絵の下にございますように、初発の思考や行動を起こす力と、学びの主体的な調整、他者との対話や協働との往還を通じ、粘り強く継続的に思考・行動する経験が繰り返され、「学びに向かう力、人間性等」が育まれるというイメージについて追記をさせていただいておりますので、御参照いただければと思います。
また、「見方・考え方」の再整理についてでございますけれども、こちらについても、基本的な考え方はそのままに、企画特別部会でお示ししたイメージをさらに改善しております。資質・能力の関係との整理がより分かりやすくなるようにイメージを改善しておりまして、中段にございます、見方・考え方とブルーで大きな丸になっておりますけれども、学ぶ過程の中で見方・考え方が徐々に資質・能力の育成を、下に灯台のようなイメージをお示ししておりますが、灯台のように導くようになるとともに、よりよい社会や幸福な人生に繋げていけるという形でイメージをお示ししているものでございますので、また御参照いただければと考えております。
こちら、(4)については、基本的に企画特別部会で御議論いただいた内容を示しておりますので、御参照いただければと考えております。
次が第三章、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方についてでございます。
検討の前提については御参照いただければと考えておりまして、まず義務教育段階ついてでございます。
基本的な内容については同様でございますけれども、丸1について、調整授業時数の上限の拡大の適否や対象となる教科等について、丸1の最後に書いておりまして、この点を追記しております。
また、丸3、裁量的な時間の上限と類型にコメ(※)を付しておりまして、例えばとして、基本的な概念の獲得や意味理解を伴った確かな知識の習得、認知の特性に応じた学力保障、学習方略に関係する指導、個人探究を伴う体験活動、ソーシャルスキルトレーニング等、想定される類型について現段階でお示しをしております。
また、文言の整理として、2行目から、教育の質の向上を目的とした、授業や指導の改善に直結する組織的な研究・研修等に充てることも可能とする方向だということを具体的にお示ししております。
これらについて、全体として、左側にございますように、「調整授業時数制度」として創設する旨をお示ししております。
次のページでございますけれども、主な変更点は、調整授業時数制度の運用に向けた知見の蓄積という部分が中段の下にございます。条件整備の一環でございますけれども、令和7年度の研究開発学校では、9都道府県の46校で柔軟な教育課程を編成・実施、これは既に御紹介しておりましたが、加えて、今後全ての都道府県・指定都市での知見の蓄積を図るため、令和8年度、来年度よりさらなる事例創出の加速を図るべく、具体策を検討するということを新たにお示ししております。
こちらのイメージは、これまでお示しをしたとおりでございます。
また、高等学校段階についてでございますけれども、高等学校段階についても、内容については、基本的に企画特別部会で御議論をいただいた内容と同様でございますけれども、1番、教科・科目の柔軟な組み替えについてでございますが、丸1の内容として、少し文言の適正化・整理をしておりまして、必履修科目を含む科目の履修の一部または全部を、一定の要件の下で取り扱うことができる、同一の教科の他科目や学校設定科目で取扱いできる内容でございますけれども、その要件について、例えば、元の科目の目標の趣旨を損なわない範囲内で、基礎的・基本的な事項に重点を置くなど内容を選択可能とするかどうか、科目の内容面の取扱いを整理すべき。その際、例えば、探究的な学びに重点を置くなど、一層柔軟な取扱いをする場合の要件も検討すべき、というふうに、議論を踏まえて追記をさせていただいてございます。
次のページ、4番の科目の履修を免除する仕組みの創設についてでございますけれども、御議論を踏まえまして、例えば、2行目に、社会的信頼性が確立している基準によりといった文言、あるいは、丸2の部分、2行目で、関係団体からのヒアリングも踏まえ、学校が過度な負担なく適切な判断ができるよう一定の整理をするといった、今後に向けてのポイントをお示ししております。
右側5番でございますけれども、これら柔軟化の内容について、義務教育段階については、既に研究開発学校等やさらなる方策について検討を進めておりますが、高校段階についても、研究開発学校による先行的な事例の創出・展開について追記をしておりまして、事例を速やかに創出していきたいと考えております。
(4)、個別の児童生徒に係る教育課程の編成・実施の仕組みについてでございますけれども、こちらについては、基本的に記載については、議論のとおりでございました。
また、1階、2階としてお示しをしたイメージでございますけれども、御議論を踏まえまして、まず上側の灰色の部分でございますけれども、2つ目のポツを追記しております。「2階」の特例の適用がある児童生徒も、2階は個別の教育課程の部分でございますが、そこも、「1階」で、これは学校としての教育課程の部分でございますけれども、他の児童生徒とともに学びやすくするなど、全体としての包摂性を高める方向で制度設計する必要という記載を追記させていただいております。
これに伴って、真ん中の線も実線から点線に実は変えさせていただいておりまして、どちらかではなく、共に学びやすくするというイメージが分かりやすくなるようにしております。
また、特別支援教育の関係で、通級指導が必要な児童生徒についても、特例の拡充について御議論をいただきましたので、上の「2階」の部分に加えております。
また、この「2階」の部分について、学校だけではないということで、コメ(※)の部分で、真ん中の部分にございますけれども、教育委員会による支援を前提としつつ、大学等の協力も得る。全体としてデジタル技術を積極的に活用して、例えば、指導計画の策定などに関してでございますけれども、負担軽減にしっかりと配慮しながら検討を進めていくという趣旨を明らかにさせていただいております。
次に、第四章、情報活用能力の抜本的向上と質の高い探究的な学びの実現についての関係でございます。
まず、(1)として、情報活用能力の抜本的向上でございます。
基本的に記載は維持しておりますけれども、左側、丸1についてでございますが、追記した点で申し上げますと、小学校段階についての3つ目のポツであります。例えば、適切な取扱い、1行目に、長時間利用の影響も含むといった記載、また、2行目の後ろのほうから、生成AI等の技術革新がもたらす負の側面も踏まえつつといったことについて追記をしております。
また、中学校段階についてでありますけれども、2つ目のポツ、技術・家庭科について、既に技術と家庭科について分離していくという方向性について御議論いただいてまいりましたけれども、そちらに関連し、3行目に、家庭科と情報・技術科(仮称)と二つの教科に分離すべきということで、分離した技術についての新しい名称について、仮称でありながら、情報・技術科という名称をお示ししております。
また、高等学校段階については、2つ目のポツの2行目の後半から、文理を問わず生成AI時代に不可欠な基礎的な素養である「特性の理解」を身に付けられるようということで、趣旨をさらに明確化しております。
また、右側、条件整備に関連してでございますけれども、既に1つ目のポツにございますように、免許の保有状況等、指導体制に係る改善計画について、改善計画をしっかり履行する、あるいは、指導主事を含め研修を拡充する。あるいは、2つ目にあるように、動画教材を国が提供していくといったことについて記載をしておりましたけれども、加えて、4つ目のポツでございます。関連の概算要求等も踏まえまして、中学校技術あるいは高校情報の教員養成の課程の新設の促進、大規模な認定講習の実施といった記載を追記させていただいております。条件整備についてしっかりと進めていきたいと考えておりますことを改めて記載しております。
これに伴いまして、こうしたここまでお示しした絵について、改善の方向性について、例えば、情報の領域(総合的な学習の時間に付加)といった小学校段階の記載、あるいは、中学校について、情報・技術科(仮称)といった記載を加えております。
また、こちらの既にお示ししていた図についても、関連の記載を追記しております。
こちらも中学校での情報・技術科についてお示しをした図でございますけれども、こちらについては、2つ目のポツについて、一層その趣旨を明確化するために、2行目から、多くの子供たちが担う地域経済においては、いわゆる「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」(コメ(※)で、デジタル技術等も活用して、現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカーという注記を付しておりますけれども)が求められている中、DXによる生産性向上の余地も大きいといった点について、趣旨を補足させていただいているところでございます。
探究的な学びの実現についてでございます。
こちらにつきましては、右側の3、小中高を通じての部分でございますけれども、2つ目のポツについて、基礎的・基本的な内容との関連について追記をさせていただいております。探究的な学びを適切に機能させるためには、基礎的・基本的な内容の習得も重要であるとともに、各教科も含めた質の高い探究のプロセスが基礎的・基本的な内容の習得の必要性を感じさせ、両者が往還して高まっていく等の関係について分かりやすく示すべきということ。
また、次のポツ、探究的な学びにおいて、児童生徒任せになっている実践も見られることから、気付きや試行錯誤を促す適切な問いかけなど教師が適切に指導性を発揮し、基礎的・基本的な内容を踏まえつつ、探究的な学びの質を高める授業改善を進めるとともに、論述・レポート・作品製作等の「学びの主体的な調整」が求められる評価課題を重視することも必要になるということを追記しております。
また、先ほど第一章でも関連の記載がございましたが、グループでの探究と個人探究とのバランスや興味関心等を踏まえた多様なテーマ設定の在り方について、示し方を検討するなども追記をしております。
こちらの既にお示しした図についても、情報・技術科など関連の記載を変更しているところでございます。
第五章、「余白」の創出を通じた教育の質の向上の在り方についてでございますけれども、こちらの章については、基本的に企画特別部会で御紹介した記載から大きく変更している部分はございません。改めて御参照いただければと考えております。
そして、第六章、豊かな学びに繋がる学習評価の在り方についてでございます。
こちらについても、大きく修正した部分は、内容についてはございませんけれども、1点、重要な補足をさせていただいております。74ページまで飛びまして、その下の部分でございます。
「学びに向かう力、人間性等」の観点での評価について、「目標準拠評価」ではなく、「個人内評価」にするとともに、思考・判断・表現の過程で特に表出した場合には「○」を付記するという御提案をさせていただいたところでございます。これについての関連で、下の箱にございますように、これらの方向性について、学習の自己調整を含めた「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力が一層重要となることを踏まえ、その効果的な育成を図るために、「学びに向かう力、人間性等」の特質に応じた評価の在り方に改善を図るものであるということ。すなわち、「学びに向かう力、人間性等」の評価を「しなくてもよくなる」とか「軽視してもよい」といった誤った理解とならないよう、具体的な運用の設計と趣旨の周知・徹底を図るべきという点、非常に重要な点でございますので、既に関連の記載はここでございますけれども、改めて詳しく明記をさせていただいております。
加えまして、企画特別部会での御議論があった「思考・判断・表現」の観点別評価に「学びに向かう力、人間性等」が特に表出した場合は、「○」を付記するという御提案でございますけれども、それを付記した際に、教育課程の実現状況の総括的な評価である評定、評価ではなく評定に一定程度加味するということの適否については、御議論が分かれておりました。したがいまして、これについては、引き続き、総則・評価特別部会で検討を深めるべきという点について追記をさせていただいておりますので、御紹介をさせていただきます。
ここからは、その他諮問で提起された事項の在り方、第七章でございます。
まず、(1)カリキュラム・マネジメントの在り方については、表現の適正化等を行っておりますけれども、内容について修正等は大きくございません。
また、(2)高等学校入学者選抜についてでございますけれども、これについては、右側の1ポツの3つ目のポツを追記させていただいております。
採点等でのデジタル技術の活用や、負担軽減に係る取組を促進すべきとして、括弧の中で、高校の特色化・魅力化を踏まえた選抜実施の要請もある中、都道府県間で作問負担軽減についてどのような連携・協力が可能か、国としてどのような支援が必要かの検討を含むということで追記をさせていただいております。
また、(3)産業教育についてでありますけれども、これについては、右側の下の部分の丸5の中で、専門高校の教員がマネジメントの視点も含めて企業での経験を積むことができる環境を整えることの可否などを含めという点について、御議論も含めて追記をさせていただいております。
(4)が、特別支援教育についてであります。
特別支援教育の関係では、こちらの92ページの右上、合理的配慮の提供の部分で、1ポツ目を追記しております。多様性を包摂する学校教育の実現に向け、障害の「社会モデル」の考え方を踏まえて、多様な子供がいることを前提とした教室環境や授業づくりを進めることは基礎的環境整備として重要であるとして、この社会モデルにコメ(※)を付して、障害者が受ける制限は、心身の機能の障害のみならず社会における障壁と相対することによって生じるという考え方という注記をし、こちらを追記させていただいております。その他は、主に表現の適正化をさせていただいております。
(5)が、幼児教育についてでございます。
幼児教育についても大きな修正点はございませんけれども、考えられる方向性として、小中高と密接に関連するということで、幼児教育における遊びの中での直接的・具体的な体験を通した遊び、これが客観的・抽象的な認識や思考が発達していくことになる小学校以降の生活や学習の基盤となるという中段にある部分は、こうした方向性を明確にしているところでございます。
そして、(6)子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善の関係、特別活動等について御議論をいただきました。
これについても大きく内容は変わっておりませんけれども、ここでお示しした先行事例の関係でございますけれども、上の箱の2つ目のポツ、これらは全く新しい事柄ではなく、これまでの特別活動が目指してきたものと優れた実践の延長にあり、現行指導要領下でも実施可能なことであるということ、そして、既に全国各地に多様な好事例が生まれており、改訂と並行して優れた取組の普及を推進することが重要であるということを確認的に追記させていただいております。
最後が、第八章、今後の検討スケジュール・検討の在り方等についてでございます。こちらは新設の章でございますので、詳しく御紹介させていただきます。
まず、第七章までの内容を今後の総則・評価特別部会や各教科等のワーキンググループ等で御検討いただきますけれども、今後のスケジュールについてでございます。
この教育課程企画特別部会で本「論点整理」を取りまとめ、教育課程部会に御報告をした後、既に設置されている総則・評価特別部会や各ワーキンググループにおいて、第一から第七章の方向性や内容、全国学力・学習状況調査等の各種データで明らかになった教科ごとの課題等を十分に踏まえて検討を進め、遅くとも令和8年の夏頃までに取りまとめを行うとしています。
その後、教育課程部会での「審議まとめ」を経た上で、令和8年度中に中央教育審議会としての「答申」をお取りまとめいただけるよう、検討を進めるとさせていただいております。これがスケジュールでございます。
また、2つ目、本部会と各ワーキンググループの関係でございます。
今後の総則・評価特別部会や各ワーキンググループにおける審議は、本「論点整理」を的確に踏まえ、各教科等固有の議論を加味、共有しつつ、さらに豊かなものとすることが極めて重要であり、各教科等や学校段階に閉じたものであってはならないとしています。
このため、教育課程企画特別部会は、教科等横断的・共通的な事項の具体化を担う総則・評価特別部会とともに、各教科等ワーキンググループの議論の状況を把握し、教育課程全体としてどのような資質・能力を育成するか、積極的に調整する役割を果たすとしています。これが本部会と各ワーキンググループの関係でございます。
最後に、その他でございますけれども、第四章におきましては、小学校の総合的な学習の時間に情報の領域(仮称)を付加し、中学校で情報・技術科(仮称)を創設する方向性をお示しいたしましたが、これに伴う標準授業時数の増加につきましては、既に諮問で示されている年間の標準総授業時数については現在以上に増加させないという方針をお示しし、これを前提としつつ、教育課程企画特別部会及び総則・評価特別部会にて教育課程全体を見通した観点から検討を行い、令和8年の春頃を目途に一定の結論を得ることとするというふうにさせていただいております。
以上が、今後の検討のスケジュールと検討の在り方でございまして、最後のこのページに、学習指導要領の改訂に向けた検討体制ということで、既に教育課程部会でお認めいただいた総則・評価特別部会や各教科等のワーキンググループの体制についてお示しをしております。
最後に、審議経過として、委員名簿やこれまでの御審議の内容について俯瞰できる内容をお示しさせていただいているものでございます。
事務局からは以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
もう情報量が多くてオーバーヒートしそうですけれども、ちょっとクールダウンの時間を5分ほど設けたいと思います。4時5分まで休憩とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】 では、時間が参りましたので、議事を再開いたします。
御説明いただきました論点整理(素案)につきまして、これまでの御議論等を踏まえたコメントや、修正を要する内容等について意見を頂戴したいと存じます。御意見のある方は、Zoomの挙手ボタンを押していただければと思います。私から順次指名をさせていただきます。会場にいらっしゃる委員の方も、御発言時はミュートを解除してお話しください。
全員に御発言の機会があるよう、御発言は3分以内でおまとめいただければと存じます。全員の御発言の後に、時間が余れば、さらに御意見のある方に指名をさせていただきますので、御了承ください。
なお、今日、交通機関が乱れているということと、それぞれ委員の方々、お忙しくして、出たり入ったりしていらっしゃる委員の方がいらっしゃるので、必ずしも挙手していただいた順番どおりに御指名できない場合がありますので、そのことだけ御了解いただければと思います。よろしくお願いいたします。
では、いかがでしょうか。
では、オンラインから秋田委員、お願いいたします。
【秋田主査代理】 御指名ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
大変分かりやすくきちんとおまとめいただけたと思うんですけれども、3点申し上げたいと思います。
1点目は質問でございますけれども、5ページ目の図等にございまして、「教育課程以外の勤務環境整備」というふうに、教育課程以外というのは、教育課程の議論以外に勤務整備の委員会が立ち上がっていて、そこで勤務環境の整備の議論がなされていることは分かっているんですけれども、そうではなくて、これは単に教員の勤務環境整備でよろしいのではないかと思います。なぜこれが教育課程外のということが、あえて勤務環境整備についているのかというところが少し私にはよく分からなかったのです。これは質問で御説明をいただき、もし教育課程以外の勤務環境というのではなくて、教育課程も含めて先生たちの勤務環境をよくするのであれば、それにそぐう表現がよろしいのではないかと考えたというのが1点目でございます。
それから、2点目でございますけれども、この理念と、最後の八章のところでは、例えば、これが学校段階に閉じたものであってはならないということが書かれているんですけれども、一章のところを見ますと、現行学習指導要領であれば、総則の2節に書いてある学校間の段階間の接続、校種間連携というものが今回は一切文章からは除かれております。やはり幼小と小中、中高の接続が重要ということが書かれています。多様な子供たちが皆つながっていくためには、この一章のところにやはりこの理念が、幼小中高を通して一貫して連携・接続して実現されねばならないというようなところの文章を一言入れていただくことが必要なのではないかと考えてございます。
これに関連して、6ページ目の2枚目の図なんですけれども、これも全部が網羅されていないのは分かるんですけれども、小中高と書かれていますが、今回の議論は、全て幼児期から高校までが議論がなされているんですが、この図には幼児教育がございません。むしろ幼のところで、総合の下に豊かな体験と遊びなどが入っていくことが、実はこの両方を生かしていくためには大事なのではないかと思います。また、ここでも教育課程以外のというのがついていますので、ここも確認をしたいというのが2点目のところでございます。
そして、3点目は、学力調査等のことからも、家庭学習と連携をした指導というようなところが重要ではないかと考えられます。それが全体として、今後教育課程をいろいろな人が参加してつくるということが書かれておりますが、それだけではなく、やはり学校内の授業や単元だけではなくて、より基礎的な家庭での学習の習慣を育てていくというようなことをどこかに書き込む必要があるのではないかと、今回のやはり学力の厳しい層の低下を見て思ったところでございます。
以上3点のことを申し上げました。よろしくお願いいたします。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、何人かの委員の方に御発言いただいた後に、事務局のほうにお返ししたいと思います。
次に、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 まず、事務局の皆様方には、本案の作成に向けた様々な意見や内外の調整等へ御尽力いただいたことに対し、感謝申し上げたいと思います。
本案は、現行学習指導要領の趣旨の一層の具現化と成熟を目指すものになっている印象を受けております。一方で、多くの心配があるため、そのことについて申し上げたいと思います。
1つ目は、教育委員会や学校は、今後、この論点整理や議論のプロセスよりも、マスコミ等の断片的な情報に触れて理解することも多いのではないかと思います。特に新たに加わった概念や用語の理解については、十分に注意していくべきかなと思います。
振り返ると、数年前に「個別最適な学び」が登場したときに、「主体的・対話的で深い学び」はどこに行ったのかという混乱が生じました。また、新たな概念や用語のみが伝わっていくと、「これまでの理念は消えるのか」「またはしご外しなのか」などと現場で不安や混乱を招くのではないかと危惧しています。これまでの流れや連続性を明らかにして現場に伝えていくことが大事であると思っています。
例えばということで幾つか申し上げますと、5ページの「自らの人生の舵取りと民主的で持続可能な社会の創り手」というこの理念は、大元は教育基本法の教育の目的・目標にあります。教育基本法を基に、時代状況を踏まえたコンセプトであるということは、説明がないとなかなか伝わらないと思います。
また、5ページと6ページの中から、これまで現場が大事にしてきた「基礎・基本の徹底」という文言が消えていることに誤解を招くことも危惧されます。よく読んでいくと、その次のページにおいて、構造化・特例校制度の要件・探究的な学びの中で、基礎・基本は強調されています。
さらに、多くの教師には、フィージビリティやエクイティといった言葉には、正直、違和感があるのではないかなと思っています。教師が理解しやすい言葉にして、今後丁寧に分かりやすく伝えないと、なかなか現場には伝わらないのではないかと心配しています。
個別の項目では、まず18ページの「学びに向かう力、人間性等」の整理についてです。今回の議論では学習評価との関係で、「初発の思考や行動」「学びの主体的な調整」「他者との対話や協働」に焦点化をされたことで、「人間性」の部分が、あたかも学びの道具のように見えてしまうところであります。「人間性」というのは、学びのみならず、人生や社会そのものに深く関わるものであって、知・徳・体の「徳」は、「知」に従属するものではありません。現行の各教科等の目標においても、単に学びのための資質・能力ではなく、より大きな視野から位置付けがなされているため、この点は、今後の各教科等ワーキンググループワーキンググループでもぜひ大切にしていただきたいと思っています。
また、第六章の学習評価で心配なのは、全体的に教師の負担を過度に強調されてはいないかということです。評価は指導と不可分であり、評価で教師が悩むことは、私は当然のことだろうと思っています。
特に、「学びに向かう力、人間性等」の評価については、一部報道を受けて、今後評価しなくてもよくなると誤認をしている人もおります。74ページに追記されたように、「学びに向かう力、人間性等」の重要性を踏まえて、その特質に応じた評価の在り方になるよう改善を図ることが狙いであるため、特に「思考・判断・表現」に「○」を付記するという運用の在り方を中心に、今後、一層効果的な学習評価となるよう、今後のワーキンググループワーキンググループで議論を深めていただきたいと思っています。
最後、心配ばかり申し上げてきましたが、強調したいのは、日々頑張っている全国の指導主事や教師がこの論点整理を読んで、しっかりと腹落ちして、納得感を持って実践に臨んでいただかなければならないということです。今後の教科等ワーキンググループワーキンググループを含めて、公開審議の過程で、教育委員会や学校関係者が気づいた違和感や様々な心配をぜひ会議の場で丁寧に解消して、納得解を一層高めていっていただきたいと思っています。それこそが、次期学習指導要領を成功に導いていく鍵になるのではないかなと思っています。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、堀田委員、お願いいたします。
【堀田主査代理】 堀田でございます。私は1点に絞って意見を申し上げます。
先ほど相原室長から、全国学力・学習状況調査の結果の報告がありました。参考資料でしたが、22ページあたりですか、ICTを活用する自信と探究的な学びには相関があるというようなお話がありました。このことは、このたび、情報の領域というのを探究的な学びの近くでしっかりと小学校でもやっていこうということの裏づけになるかと思います。
また、その次のページ、23ページには、ICTを活用する自信と各教科における学びにも相関が見られており、各教科の中の典型的な学習場面でICTを使う自信がある子供たちが、身に付けたスキルを発揮しているということが裏づけられているのかなと思います。このGIGA環境が、デジタル学習基盤がうまく機能するためにも、子供たちには、この学びの基礎である情報活用能力を学習の基盤となる資質・能力として身に付けさせるということが非常に重要かと思います。
その上で、今日の論点整理(素案)に戻るわけですが、53ページに、小中高で台形等の大きさで大体のことを教育課程上で示していただいていますが、小学校は、この情報の領域というところは、主に情報技術の活用を中心に進めていくと。中学校は、3つの要素を丁寧にバランスよくやっていくというようなことが述べられておりまして、また、58ページには、先ほど私が申し上げたとおりですが、各教科等のみならず、探究的な学びを支え駆動させる基盤として情報活用能力を位置付けるべきだというふうに書いてあります。
何回もすみません。また、その前のページ、57ページには、基礎的・基本的な内容の習得の話が書いてありますが、これは主に各教科等の話だとは理解しますけれども、情報活用能力においても、基礎的なこと、例えば、タイピングができるかどうかとか、そういうようなことはありますし、こういう基礎的・基本的なことをしっかりと習得させ、子供たちが自信を持てるぐらいのところまでしておくことで、各教科や総合的な学習の時間でそれが発揮されるのだと。
こう考えると、小学校の情報の領域は特にですが、活用を支えるようなこういうスキル等をしっかりと身に付ける。身に付けるということが私は大変重要かと思います。ややもすると、ICTを子供に使わせれば自然と身に付くと思いがちですけど、そこには必要な知識や、あるいは、練習が必要な技能がどうしてもございますので、そのことを視野に入れた学習内容の設定をしっかりとやっていく必要があると思っております。
私からは以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】 ありがとうございます。
今回の取りまとめの資料を拝見する中で、どのメッセージが一番学校に、または現場に伝わっていくのかなということを考えながら読ませていただきました。
よく学校現場を歩いていると、学校の職員室に先生方が、いろんな中教審とか審議会での資料でキーになるスライドを貼って、それが向かうべき方向性なんだということを確認しながら取り組まれているようなところに、たまになんですけれども出会います。
そのときに、よく貼られている資料が2つあって、そのうちの一つが、やっぱり前回の改訂のときの、改訂の方向性と示された社会に開かれた教育課程が真ん中に置いてあって、そこに三角形の何ができるようになるか、何を学ぶか、どのように学ぶかのスライド、これは、あれから特にコロナ禍ぐらいまで、いろんなところに貼られていたなというふうに見ていました。もう一つが、2022年の内閣府のCSTIの議論で示された、子供の特性を重視した学びの時間と空間の多様化という、その2つがすごく学校現場に下りているなというふうに、これはちょっと感想なんですけれども、思ったときに、やっぱりここにどの言葉を一番重要だというデザインとかメッセージ性で伝えるのかは、とても重要な方向感を示すなと思っております。
その意味で、特に6ページに、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができるだとか、または、自分の人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手の育成という言葉がこのように書かれていることはとても大切だと思って見たんですけれども。やっぱりこの2枚がもし現場に下りるとしたら、これら全てを包含して、一番上に来るのは、「多様な子供たちの深い学びを確かなものに」というところが、一番今回の資料で示す言葉として書かれているようにぱっと見えました。
私は、今の社会において、個人主義の多数決が集積して、それが社会をよりよくするという声の大きい人たちによってつくられる社会の在り方というのは、すごく大きな問題だと思っている中で、多様な子供たちの深い学びを実現するということはとても重要なんですけど、それが多様な子供たちの個人主義を実現していく深い学びを学校教育でも実現するんだというふうに伝わってはやっぱりよくなくて、この6ページに書いてある民主的で持続可能な社会の創り手というところが同じぐらいのレイヤーできちんと伝わるということがとても大切だと思っています。
ただ一方、現状の在り方だと、疎外されている子供たちが不登校になっているということもあるわけなので、やっぱり今回の柔軟な教育課程というとても重要なチャレンジも、これもやっぱり同時にどこかに示されることが必要で、すごく僭越なんですけれども、いろんなAIに相談して、どんな言葉を一番上に書けばいいのかなということを相談していた中で、どうなんでしょう、今の案では、「柔軟で深い学びを実現する教育課程で開く民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」という大変長い言葉になってしまったんですけれども。
つまり、言いたいのは、「多様な子供たちの深い学びを確かなものに」だけが一番よく見えてしまうことによる、本当は伝えたいことが伝わらないのではないかということの、そこの危惧を一番お伝えしたかったので長々話してしまいましたが、そんなふうに思いました。
「柔軟で深い学びを実現する教育課程で開く民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」というようなことを目立たせていただきたいなというふうに願っております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。先ほどの戸ヶ﨑委員の御意見とも恐らく通底するものかなと思いながら伺っておりました。
この後、荒瀬委員に御意見をいただいた後に、一旦事務局のほうにお返しいたします。
荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。
ページはやっぱり6ページなんですが、さっき秋田委員の御発言を聞いていて気がついたというか、思ったんですけれども、これ、小中高しか出ていないと、幼稚園というか、幼児教育もぜひとも載せるべきだと、本当にそうだなと思って承っていました。
そのときに、遊びを通して学んでいくという幼児教育の非常に重要な点が述べられたわけですけれども、そういうふうにして、改めてこの矢印に乗っかっている文字を見てみると、進路の探究・支援という言葉なんですけれども、進路だけなんですかね。次どこに行くかという話だけなんだろうかと思いました。
かつ、支援する際には、もちろん進路も支援するんでしょうけれども、何を支援するかというと、進路の探究を支援するというよりも、むしろ進路を選択した、その選択したものがちゃんと実現できるように支援する。それは、例えば、お金が十分でないのでとなってくると、これはもう教育課程の話ではなくなってくるんですけれども、若い人たちの学びの場を保障していくという取組にしていく必要があるのではないかなということを思いました。
さらに、これは言わずもがなといいますか、つまらないことを言うんですけど、私、探究という言葉がやたら使われることに対しては、ちょっと違和感といいますか、持っていまして。探究というのが、例えば、総合的な探究の時間の解説によると、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら見方・考え方を組み合わせて統合させ、働かせながら、自ら問いを見いだし探究する力を育成するようにしたということが示されているんですけれども、そのことと進路を考えるということが決してずれているとは思わないですが、進路については、最終的には答えがないものを見つけるということを通して、しかし、実際には最終的に決めなければならないので、選択というところに至るための探究ではないかと。
何でこんなことをあえて申し上げるかというと、探究という言葉が使われていてそれはよいことかもしれませんが、その探究というもので表されている子供たちの取組が、必ずしも探究的な学びでないこともあるように思っています。ですから、今後探究を大切にしていくということであるならば、探究ということについて、改めてもう一度、どういったことをすることなのだろうということを共有しておく必要があるし、それはまさにこの教育課程の議論の中でできればいいなということを思いました。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、一旦お返しします。短くコメントいただければと思います。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。
先ほど秋田委員から、教育課程以外の勤務環境整備という5ページ、6ページの表記についてお尋ねをいただきました。
この趣旨は、もともと今回実現可能性の確保ということで、指導行政におきましてもフィージビリティを大切にしていくという方向性を掲げたことの関係で、勤務環境整備について別途特別部会でも御議論いただいておりますけれども、指導行政、管理行政両方でしっかりと学びの在り方を支えていくということを分かりやすくしたかったという趣旨で、教育課程以外の勤務環境整備という書き方をしたところでございますけれども、秋田委員御指摘のように、少し分かりにくさはございますので、表記について検討させていただきたいと考えております。
【貞広主査】 御質問いただいたことについてお答えいただきました。
では、この後、神野委員、松原委員、内田委員、田村委員、石井委員まで御発言いただき、また一旦事務局にお返しをいたします。
お待たせいたしました。神野委員、どうぞ。
【神野委員】 ありがとうございます。
これまでの議論をまとめていただいて、ほとんど、ほぼほぼ全面的に賛成でございます。
今日のお話で、少しだけ私、1点申し上げたかったのが、生涯にわたって主体的に学び続けるということを前提に、子供たちの資質・能力を育んでいこうとしているわけなんですが、この学ぶ理由みたいなものを、あえて私たちは言葉にしたほうがいいのではないかなということなんです。
というのも、不健全とまでは言いませんが、受験のために学ぶとか、点数のために学ぶというような理由は、恐らく今回我々が議論しているところではないはずなんです。とはいえ、この何のために学ぶのかという中において、例えば、今日も学調の結果が出ていましたけれども、どうしてもこの学調の結果みたいなものが出れば、教育委員会も学校現場も引っ張られるわけですよね。このテストの結果に。そうしていったときに、この学ぶ理由みたいなものが、ちゃんと我々、教育者みんなの中でしっかり言語として確認できるというのはすごく大切なのではないかなというのはちょっと思っているところです。
そしてまた、私が何のために学ぶということが必要なのかと思っている中で、生涯にわたってそもそも学び続けるって、我々、社会の中で何やってるんだっけというところを私なりに考えてみたんですが。探究的でも、もしくは、もっと座学的でもいいんですけれども、何か学んでいった先に、多分、我々は、どこかでこの社会に対して何かしらの表現としての発露をするはずなんですよね。NPO法人をつくるでも、論文を書くでも、株式会社をつくるでも、プログラミングを書くでも何でもいいです。何か学んだ先に何かの発露があって、その発露ということをした後に、それに対するフィードバックが社会からやってくる。それは同僚からのフィードバックかもしれないし、全然反対意見の人からの発言かもしれませんし、同じような考え方を持っている人からのものかもしれません。それで、また次なる学びのサイクルが入ってきて、ということは、もっとこういうことができるかもという話で、どんどんどんどんぐるぐるぐるぐる回っていく。こういうような人材こそがどうやらこの後の社会に必要だという中で、恐らく生涯にわたって学び続けるというような概念が入ってきたりだとか、いわゆる非認知能力が大切だと言われるような社会になってきたんだというふうに思います。
もしそういうことがそうなんだとすれば、この学ぶ理由というもの自体は、何か点数を取るためのものではなくて、この学ぶというサイクル自体にしっかり自分自身が入っていくために存在するものだと。そうしていったときに、この学調の取扱い方等々も今後検討すべきなのではないかなというふうには思います。
単純にこの瞬間のテストの結果を出すのではなくて、例えば、このテストの結果など、今日このフィードバックが少し早くなったというお話ありましたけど、フィードバックした後で、学校でこのテストの結果を子供たちが渡された後、それこそ対話的にみんなででもいいかもしれませんし、個人でもいいですけれども、学び直しやその学びのサイクルということにどのように子供たちが入ったのか、結果、その後、2週間後同じような問題をやったときにどのような結果になったのか。ここもまた子供たちに育てていきたい、育んでいきたい資質・能力としては非常に大切な部分が含まれるとも思うんですね。
というようなやり方で、今回まとめたことをしっかり現場にも理解してもらうためには、こういう学調等々の子供たちの評価という軸を全国的に考えていくという必要もあるのではないかなと思いました。
以上であります。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、松原委員、どうぞ。
【松原委員】 ありがとうございます。
これまでの11回にわたる議論を分かりやすく整理していただきました。大変充実した議論を積み重ねてきたということを実感しております。
私からは、この素案に書き込んでいただいて特によかったというふうに感じた点を2点お話しいたします。
1点目は、戸ヶ﨑委員からもありました、断片的な情報が誤解を与えないようにというところですけれども。例えば、74ページ、戸ヶ﨑委員からもありました、「主態」評価の改善のところに、「学びに向かう力、人間性等」の評価をしなくてもよくなる、軽視してよいといった誤った理解とならないよう、具体的な運用の設計と趣旨の周知・徹底を図るべきと記されていますけれども、この点は特に強調すべきというふうに考えます。
各教科ごとの目標準拠評価から、教育課程全体を通じた個人内評価へと変更することが切り取られて、知識・技能偏重への揺り戻しとならないよう、強調して発信していく必要があると考えました。ほかにも、同様に気をつけなければいけない点があるというふうに思います。
もう一つは、5ページのところに次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方のところですけれども、実現可能性の確保の下の部分にしっかり土台を書き込んでいただいたというのは、大変よかったなというふうに感じております。
先日の教員養成部会でも、ここで言うところの学びをデザインする高度専門職としての教師をいかに養成・採用・研修していくかという議論がされています。主体的・対話的で深い学びをデザインできる教員の存在は不可欠です。また、教育課程以外という言葉にちょっとご意見がありましたけれども、勤務環境の整備が進まなければ、教師の努力と熱意だけでは限界もあるわけです。
先頃概算要求も発表されましたけれども、人・物・情報、こうしたところを予算としてしっかり確保していただいて、現場が取り組みやすい環境、特に多様性の包摂をしていくために必要な環境を整えていくことで、次期学習指導要領の理念が実現してくると考えております。
そういう意味では、4ページに、教育課程の実施に伴い教師に過度な負担・負担感が生じにくいとあるんですけれども、生じさせないくらい言い切ってほしいなというような、そんな感想も持ちました。
もう1点、ちょっと感想めいたことですけれども、その4ページの一番下のところに、よりよい学校教育を通じてよりよい社会への移行と書いてあるんですが、保護者や地域の方と日々接する中で、このよりよい学校教育とかよりよい社会というのが、これ自体も昔に比べると多様化してきているのかなというふうに思いますので、こういった辺りも、社会とどういうふうに共有していくかというのも、一つ課題ではあるかなというふうに思いました。
以上です。よろしくお願いいたします。
【貞広主査】 ありがとうございます。
この後、内田委員、どうぞ。
【内田委員】 ありがとうございます。
非常に分かりやすくまとめていただいて、頭の中の整理ができてきました。
最初のほうの5ページ、6ページのところに当たるかと思います。デジタル学習基盤については、学校によって、あるいは地域によって、まだ差があるというところもありますし、高校においても多様なカリキュラムが今編成されているところになっております。学習基盤であるとか学習環境というところの整備という文言も、どこかの部分でぜひ入れていただきたいと思います。
と申しますのは、高校の無償化というところもありまして、今、概算要求のところで、高校応援のための整備の予算が1,000億円積み上げられているというところもありますので、教育課程がまさに個に応じて多様になるということは、学習環境についてもそれなりの整備が必要だというふうに思いますし、我々、応援してほしいですし、文科省の取組について応援していきたいしというところもありますので、ぜひ盛り込んでいただければと考えております。
それから、2点目です。技術・情報教育、中学校において技術・情報というところが盛り込まれておりますけれども、ページとしては、資料の59ページ、60ページのところかと思いますけれども、審議のところでもお話をしましたが、中学校・高校で人的な確保、それから、教員の育成というところについては、継続的な課題になっております。文科のほうで今年概算要求の中にも育成であるとか教材の編成について、こちらも概算要求に盛り込んでいただきましたけれども、ぜひ、こちらについても実現するよう、予算の裏打ちのある施策実現をお願いしたいと思っております。
3点目です。こちらは資料の後半、専門学科のところでございますけれども、産業教育のところで、今後、専門教育の教員がマネジメントの視点も含めてというところで表記をしていただいておりますが、企業経営やマネジメントの視点も含めてというような、あるいは、マネジメントや企業経営の視点も含めてというような文言を入れていただけると、技術を単に身に付けるだけでなく、自走できる産業教育の専門家となる人材を育成するという視点が提言できるかと思いますので、こちらについても併せてよろしくお願いいたします。
私からは以上となります。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、次、田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 失礼いたします。
3点あります。1点目は、次期学習指導要領の検討の基盤となる考え方というところです。2ページ以降、分かりやすく端的にまとめていただけたかと思います。5ページ、6ページも、すっきりしていいと思います。
ただ、深い学びと多様性の包摂を支える持続可能性の確保のところに、カリキュラム・マネジメントという言葉を入れていただくといいのではないかなと思います。前回の学習指導要領の基盤となる考え方の中で、図の真ん中のところにあった考え方で、今後もこの考え方が重要性を減じていくということはないと考えておりますので、児童生徒や学校の実態に合わせてカリキュラムをデザインし、実施し、振り返りながら、人的・物的な条件等も併せて調整したり開発していくというカリキュラム・マネジメントの営みを、図の下のブルーの土台と上の楕円を結ぶようなイメージで入れていただけたらいいのではないかなと思います。
次、2点目は、標準時数についてです。32ページ、標準時数を削減する上限について、各教科等のワーキンググループで検討するような内容が書いてあります。教科等ワーキンググループでの検討の際に、今想定される1割程度の時数を一旦削減していった場合、現行の内容を深く学び、中核的な概念に迫れるのかという検討とともに、内容的に整理し、削減することができる部分はないかなということも検討いただけたらいいのではないかと思います。
内容を整理せずに時数の調整を学校に任せてしまうと、時数調整に必要なコストを学校に新たに課すことにもなりかねないかと思います。特に中学校では、仮称情報・技術科を新設することに伴って、全体として必要とされる時数について再検討することが必要になることが予想されますので、そういったことも念頭に、総時数を増やさないためにどうするのかということが検討事項になるのではないでしょうか。
各教科等の標準時数について、戦後間もない時期には、かなり幅のある示し方がされていたものもありました。今回も、例えば、65時間から75時間程度というような幅のある示し方をしたり、標準時数はあくまでも標準であることを改めて説明するようなことも、総則・評価部会や各教科のワーキンググループ等で検討いただいてもいいのではないかと思います。
3点目、仮称情報・技術科についてです。60ページの図を見ますと、中学校新設の仮称情報・技術科が、単独で探究まで担うかのように読めます。59ページの図とここはやや違うなと思いました。これは単独で探究まで担うという意図でしょうか。
個人的には、各教科においても探究的な学びが実現することを望ましく思うのですけれども、この教科のみ探究が明示的に書き込まれるということについてどう考えるのか。私個人としましては、慎重に検討してはどうかと考えております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、石井委員、どうぞ。
【石井委員】 では、失礼します。
まず、今回のこの論点整理の素案ですけれども、これまでの議論を非常に丁寧に構造的にまとめていただいているかなと思いますし、先ほど今村委員が非常に象徴的におっしゃってくださった、一方において現行学習指導要領の社会に開かれた教育課程の図があり、もう一方においてCSTIの多様性を包摂するといいますか、それに応じた学校システム、あるいは、子供たちの生活とか学びを保障するシステムの図がある。これら2つを質と公正、包摂性という形で統合していったというのが今回の大きなポイントかなと思いますし、それを多様な子供たちの深い学び、ある種、ゆるくて深い学びを、それを確かに実現していくという非常にバランスの取れた提案になっているかなと思います。
現行学習指導要領は、理念とか枠組みとしては非常によくつくられていたと思いますが、しかし、○○な学びとかもそうですけれども、いわゆるスローガンであるとか言葉先行であったと。それに対して、現行学習指導要領の熟成という点からしますと、今回の論点整理においては、かなり制度的な仕掛けがたくさんあるというのが一つポイントかなと思っています。
ですから、中核的な概念云々ということも、これは新しく何かをしましょうよということよりも、これは内容を重点化していくための仕掛けなんですね。まずは、この概念の意味は。だから、学習指導要領とかカリキュラム作成者が考えておく、その仕掛けをつくるための概念であって、それによって構造化する。さらに言うと、それによってある種深さ志向のレス・イズ・モアをめざすということは、現行の学習指導要領の趣旨をより徹底して、実現することであって、こうした文脈で捉えられる必要がある。さらに、調整授業時数制度というのは、学校の包摂性を高めていくということを実質化し、さらに学校現場の裁量を高め、それで、小文字のカリキュラム開発によってカリキュラム・マネジメントを実質化するものであって、それ以外にも理念を具体化する制度的仕掛けが様々に提起されているというふうなことだと思うんですね。
制度的にかなり弾力化・柔軟化するような、そういった仕掛けづくりがされていると思うんですけれども、そうして自由度を高める仕組みがつくられても、最終的に、実装するという段階においては、こんなことができるんだとか、そういった実装のイメージとか見通し等、自由とか裁量を使いこなす現場の理解であるとかキャパシティ、そこの部分をやっぱりしっかりと見据えておく必要があるのかなと思います。
ですから、現行学習指導要領の熟成というふうな方向性からしますと、新しい学習指導要領の改訂を待たず、今進められているところはどんどん進めていくということが大事なのではないかと。その中で様々な事例を蓄積していきながら、現場の裁量を実質的に拡大していく。やっぱりそれは条件整備とか、そういったものが不可欠ですし、一方では、こういったこともできるんだというようなイメージがあることで、広がる可能性もあると思うんですね。ですから、そういった部分については、特に教育委員会のサポートも含めて、知見や取り組みの蓄積というのが重要ではないかと思います。
もう一点なんですけれども、それこそこの中核的な概念等ということで言いますと、前から申し上げているように、中核的な内容を絞り込んでいくために、よりメタで概括的な内容に注目する、たとえば、比例とか一次関数とかではなくて関数、そういうふうにメタに見るからこそ、一貫性がカリキュラムに生まれてくるということですね。
それはコンテンツフリーで内容論を薄めるということでない点は、強調しておく必要があるのではないかと思います。むしろ今も学習指導要領の解説において、内容の系統表みたいなものがあるわけですけれども、そこは縦でポイントがよく見えるんですね。国語にしても、算数にしても。だから、そこをもう少し見やすくすると。縦関係を見ることによって、内容の幹が分かりますから、若い先生も含めて、ポイントが分かりやすくなると。だから、現場の内容理解を深めていくということが重要かなと思います。
もちろん、子供の学びということもそうなんですが、学び一般の理解ということもさることながら、内容に即した学びの理解、あるいは、学びに即した内容理解、これはPCKなんていう言葉がありますけれども、教えることを想定した教科内容に関する知識。それらを高める気運をより重視していくことが大事かなと思います。
ですから、それで申しますと、先ほどの全国学調の結果を踏まえた取組ということで、定着、定着、定着という手法が出てくるんですが、そもそも訳が分からないという状況をどうするかだと思います。それで言うと、先生方の内容理解をやっぱり高めていくような取り組みが重要ではないか。例えば、位取りの原理とかにしてもそうですけども、11を101と書く子は割といるわけです。それは何でなのか。だから、今回のつまずきに関しても、なぜこういうつまずきが生まれているのかというふうなことを、中身に即してそこの理解を深めていくような、そういった研修こそが重要ではないかなと思います。ですから、やはり教師の子供理解と内容理解、ここがないと子供に委ねることも難しい。
逆に、中高に関しては、この中核的な概念がメタであるということを考えると、民主主義とは何か、あるいは、それは誰の物語なのか、関数とは何かといった大きな問いが扱えるということがポイントかと思います。
その中で、問いと答えの間が長い。先ほど「学びに向かう力、人間性等」の中で、粘り強く継続的に思考・行動する経験というのがありましたけれども、まさに問いと答えの間が長い思考する経験、これが実現できることが、まさに教科に即した主体性の育成といったものにつながってくると思うんですね。
さらに言うと、中高であれば、もっと世の中、DXの世界観といったものを見せていくような、オーセンティックな学びの中で、よりダイナミックに活動を展開して、それこそもっと格好いい問いを青春の思春期のときに問えるような、そんな教科書であるとか入試の在り方、これがもっと展開されていくといいのかなと思います。
それともちょっと関係しますが、先ほどの「学びに向かう力、人間性等」に関しては、やっぱり教育課程全体で育てていくという視点が大事だと思います。だから、学びということに閉じずに、まさに学びを方向付けるとあるんですが、それこそ社会をつくる人間性みたいな、そういう形でやっぱり大きなビジョンがちゃんと掲げられているわけですから、そこに即して、この学びということもそうなんですけれども、人間を育てているんだということで言えば、人物像が明確に示されているわけですから、それに即してカリキュラム全体で、教育課程全体で育成するということを意識できるといいのかなと思いました。
すみません。長くなりました。以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
ここまでで一旦事務局にと申し上げていたんですが、特に御質問はなかったので、このまま続けてもよろしいですか。
ありがとうございます。
では、小見委員、お願いいたします。
【小見委員】 みらいずworksの小見まいこです。ありがとうございます。
5ページの自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手というところなんですけれども、特に自らの人生を舵取りすることができるという点、先ほど戸ヶ﨑委員から、今までの流れと連続性というところで、教育基本法とも通ずるというお話あったんですけれども、キャリア教育が目指しているところともかなり通じているなというふうに考えております。時代は大きく変化しているのに対し、日本のキャリア教育の定義ですとか考え方が、2011年の中教審で示された方向性からあまり大きくアップデートされていないなというふうに感じています。
また、今までの議論でもあったように、子供たちの多様性がある中で、不登校をはじめとした、どのような子供たちに対しても、この自らの人生を舵取りすることができるという力を身に付けていく必要があるなというふうに思っています。
そういった視点でも、6ページ、先ほど荒瀬委員がおっしゃった部分なんですけれども、進路の探究・支援というところで、目先の進路だけでなくて、かつ、自己実現だけではなく、自分の生き方とか働き方だけでなく、在り方とか、社会とどうコミットするのかというところの幅広い視点で、子供たちの未来というか、その先の人生を誘っていくという必要があるかなと思ったので、この進路の探究・支援というところは、もう少し大きなくくりでの言葉にしていただけるといいのではないかなと思いました。
また、以前もお話ししたんですけれども、保護者としてキャリアパスポートというのも日々手にするんですけれども、それが基礎的・汎用的能力をベースに目標を定めている学校が多いです。今回の学習指導要領の改訂の中で示されている、自らの人生を舵取りする力ですとか、民主的で持続可能な社会の創り手という要素も、子供たちのキャリアパスポートの要素に入れ込み、小中高で積み重ねていけると、より子供たちの育ちがエンパワーメントできるのではないかと考えました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、次、前川委員、お願いいたします。
【前川委員】 ここまでの特別部会の議論のまとめ、検討の基盤となる考え方として、3ページに提起されています3つの方向性、主体的・対話的で深い学びの実装、多様性の包摂、実現可能性の確保、これを三位一体で具現化するという整理がなされたことには大きな意味があると思います。
非常に分かりやすく、時代性もしっかり捉えているのかなというふうに思っていますし、広く社会で共有してもらうためには、一層分かりやすい表現等に今後の議論も配慮していただければと思います。これは、実現可能性の確保というところで戸ヶ﨑委員がおっしゃったこととも重なるかと思います。
「多様な子供たちの深い学びを確かなものに」という、合い言葉のように提示されているわけですけれども、これには非常に納得感があるわけですが、先ほどから何人かの委員がおっしゃっているように、これだけではなくて、この出口として、自らの人生を舵取りする力と民主的で持続可能な社会の創り手を育成するという関係がしっかり分かるほうがやっぱりいいのかなと思います。
今回の議論の中では、この自らの人生を舵取りする力、民主的で持続可能な社会の創り手、ここは重要な観点だと思いますし、単なる課題認識ではなくて、ここを目指すということがはっきり分かったほうがいいのかなというふうに思います。
その上で、好きを育み、得意を伸ばすということと、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる、これを両輪で進めていくという考え方も、学校現場にとっては理解しやすく、これからの社会、世界の在り方を見据えたときに、特別部会の議論が模索してきたものだというふうに思います。今後の検討の中でしっかり形にしていかなければならないと思います。
その上で、第一章はもちろんですが、論点整理の随所で、生きて働く確かな知識の習得がしっかり位置付けられている、あるいは、中核的な概念等による構造化や探究的な学びと基礎・基本の関係が整理されている。裁量的な時間においても、基本的な概念の獲得や意味理解を伴った確かな知識の習得などが例示されており、しっかりと基礎・基本にも配慮されていることが適切だと思います。
また、全国学調の結果だけではなくて、明らかになった課題等もしっかり受け止めようとしていることは評価できると思いますし、学校現場が着実に実装できるように、これらの内容を各教科のワーキンググループでしっかり具現化してほしいと思います。
ちょっと長くなります。すみません。そして、その論点整理の内容のさっきの三位一体ですが、1つ目の主体的・対話的で深い学びの実装が、前回の改訂をさらに具現化・深化させようとしているというふうに捉えると、ある意味、そこに2つ目、3つ目、多様性の包摂と実現性の確保が加わっているというふうにも見られますし、今回の射程は、前回改訂を超えて、極めて広く教育システム全体にわたる、ある意味、戦後最大のものと言っていいのかというふうに思います。また、それが必要な時代になってきているということです。
それゆえ、今後のワーキンググループの議論で、しっかりと論点整理の内容を受け止めて具体化していく必要がありますし、文部科学省は、この段階から論点整理の内容を教育委員会や学校現場が理解できるように周知・浸透に努めていただきたいと思います。
最後に、各ワーキンググループの議論において、本部会が配慮してきたように、現場の教員にとって分かりやすい表現、言葉に一層配慮していただけたら幸いでございます。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、青海委員、どうぞ。
【青海委員】 ありがとうございます。
論点整理(素案)をまとめるに当たりまして、貞広部会長をはじめ、事務局の皆さん、とても御苦労があったのではないかなと思います。御礼申し上げます。
全国で行われている中学校の研究会などで、校長先生方の声を伺う中、新しい学習指導要領が向かう方向性については、これまでの議論などをお聞きになられて、期待しているという声がとても多いように思います。ひいき目で見ているからではありません。その反面、不安もあるようでした。例えば調整授業時数の運用のイメージですとか、柔軟な教育課程の2階の部分の編成などです。
ここでは不安を踏まえて事務局へのお願いを2点お話しします。1点目は、調整授業時数制度のイメージについてですけれども、早ければ来年度ぐらいから多くの自治体でモデル先行実施するなどして、これまで自治体単位で教育課程を特例編成し、新教科などを実施している場合なども含め、調整授業時数制度の運用に向けた事例の蓄積や課題のあぶり出し、提示が大切になるのではないかなと思います。
2点目は、柔軟な教育課程、2階の部分の編成についてです。多様な個性や特性、背景を有する子供に対応するため、個々の児童生徒に着目した教育課程の新設・拡充に当たっては、各教育委員会による支援ですとか、デジタル技術を効果的に活用、また、大学などの協力などを得て、教育課程編成・実施に向けた伴走支援をお願いできればと思いました。
最後に、これは先ほど御説明を聞いていて思ったことなんですけれども、中学校の技術・家庭科の新しい教科名についてです。中学校において技術・家庭科が2つに分離した後の技術分野の名称ですけれども、情報・技術科(仮称)となっていますけれど、文字で見ると、黒丸があるため、これまでの技術と、それから情報と読み取れるんですけれども、音声で聞いた場合、情報技術と聞こえるため、情報技術を学習する教科なのではないかなと誤解されるのではないかと思います。
また、現在の技術・家庭科の技術分野のD領域が「情報の技術」となっていますので、その学習内容に特化した教科という印象を与えないかなとも思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、この後、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】 一般社団法人UNIVAの野口です。
事務局の皆様、これまでの審議について丁寧に分かりやすくおまとめいただき、本当にありがとうございます。
3点ございます。
まず、3ページから5ページにおいて、主体的・対話的で深い学び、多様性の包摂、また、実行可能性(フィージビリティ)とおまとめいただいています。
4ページにおいて、「主体的・対話的で深い学び」と「多様性の包摂」の両立が重要と書いていただいていますが、多様性があるからこそ、主体的・対話的で深い学びができるのではないかと思っています。この二つは相反するものだと学校現場では捉えられていることが多いのではないでしょうか。多様性があると、深い学びができない、学びの質が低下すると捉えている方が多いかと思うのですが、そうではなくて、「多様性の包摂」なしに「主体的・対話的で深い学び」はあり得ない、両者は共存関係であるということを改めて強調していきたいと思いました。自分と異なる価値観や事情を持つ他者と接して対話をするからこそ、学びが深まっていくということです。これは今村委員や神野委員からもあったように、何のために学ぶかとか、どこに向かっているのかというところともつながってくると思います。
不登校状態にある子供や、特別支援学校・特別支援学級に在籍する子供がこれだけ増加している中、「多様な子供の深い学びを確かなものに」というスローガンのみが現場で独り歩きしてしまうと、どんどん別の場に分けて、それぞれで学んだらいいじゃんというふうにもなりかねないかなと思っています。しかし、ここの委員の皆さんは、そうじゃないということはもう御存じかと思いますが、やっぱりその方法では共生社会や民主主義の担い手は育たないと。
先ほど堀田委員から、ただデジタルデバイスを子供に渡すだけでは情報活用能力は育たないとありましたが、これは共生社会をつくっていくということ、多様な他者との協働も同じだと思います。共生社会の担い手というのは、多様な他者とただイベント的に出会う機会のみではやっぱり育たない。日常を共にして、継続的な対話の機会を確保し、納得解の形成方法を具体的に学ぶことなしには、共に生きていくという具体的なスキルというのは身に付かないのではないのかなと思います。
それを踏まえたときに、やはりこの今回の方針が、「別々の場に分けてそれぞれで深い学びをすればいいじゃん」と捉えられないようにしていきたいなということを改めて思いました。
2点目です。「主体的・対話的で深い学び」と「多様性の包摂」の両立、共存を支える具体的な視点や方法というのがやはり重要だなと思っています。6ページ目における青い箱は総則などで絡めていくというお話をいただいたかと思います。こちらの3つ目に、「障害や認知特性等多様な実態を踏まえた調整」と書いていただいています。これは学校を含む社会環境がマジョリティを中心につくられているがゆえに、現在様々な障壁が生じているという社会モデルの前提に立って、障壁をなくすために必要な調整をしていくという意味であると理解をしております。学びづらいから配慮してあげるとか、生きづらいから、かわいそうだから配慮してあげるという、そういった上から目線ではなくて、誰もが当たり前に学びにアクセスするための権利を保障するために、この障壁を解消していく、そのために調整をする視点が重要であると思っています。
このように、総則において社会モデルを踏まえた記述をしていただくということがとても重要であるということと、また、今後各教科等のワーキンググループにおいても、通常の学級の中に日本語指導が必要な子供、特定分野に特異な才能のある子供、障害のある子供、性的マイノリティの子供など、マイノリティの子供たちが必ずいるということを踏まえた上で、各教科等において包摂性を高めるために具体的にできることは何なのかということをぜひ検討していただきたいなと思います。
それに関連して、柔軟な教育課程の1階、2階の関係性についても追記いただいたり、実線を点線にしていただいたということにも賛同したいと思います。
長くなりすみません。3点目、最後です。
夏休み中にいろんなところで研修や講演をさせていただいて、本審議のこれまでの議論についても多くの現場の先生方にお伝えをしました。現場の先生方からの声で一番多かったのが、やはりこの丸3のフィージビリティに関する声でした。とても魅力を感じるけれども、学校現場が今疲弊していて、これは実行できる自信がないという率直な意見や、学校間格差や自治体間格差が広がるのではないか、それは果たしてどうなのか、そういった声もありました。改めてこの学習指導要領が実現されるための指導体制の確保や、教育委員会のサポート体制の確保などが重要であると思いました。
戸ヶ﨑委員からもコメントがありましたが、学校現場や教育委員会からの意見や御心配事など、そういったことを踏まえて納得解を図っていくということが重要であると思います。
以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、澤田委員、どうぞ。
【澤田委員】 先生の幸せ研究所の澤田です。
おまとめいただきまして、本当にありがとうございます。
諮問でも日本社会や教育の弱みとされていた正解主義や同調圧力から脱することにしっかり向き合ったもので、人権意識が高くて民主的なものとして、次期改訂は節目になるのではと思いました。子供の権利や多様性の包摂など、ここまで来たかと非常に感慨深いものがありました。
ほかにも、教師と子供の双方向の余白ですとか、好きを育むとか、対話と合意などの重要なキーワードが全面に出ていて、こうしたことを本気でやった学校では、子供も大人も幸せな学校が実現するだろうなと思いました。
ただ、こうした趣旨が学校現場で具体の教育活動として具現化されることの現実的な難しさを、現場を数多く回る学校専門コンサルタントとしては感じています。
概念型の授業になった場合の具体的な授業の姿というのは、一コマずつのぶつ切りの授業だけではなくて、単元を通してダイナミックなものになっていくはずですし、個別と協働や自己調整が授業の中にデザインされていくならば、複線型にもなると思います。
現行の学習指導要領の現場での具現化もまだ道半ばで、それどころか、私が新卒で教員になりたての大昔と変わらない授業も実際にはまだ多く見かけます。教育委員会や学校現場に丁寧に伝えるということも当然必要ですが、発信してもしても、どうにも届きにくいというのも現実です。
実際の現場では、教師用指導書を参考にしている先生が非常に多いです。資料1の64ページには、指導書のとおりに行うとの認識がやや強過ぎだとありますが、ややどころではないかなと思います。なので、指導書が変わったら授業が大きく変わり始めるきっかけになり得ます。教科書と違って、指導書は国の範疇ではないとは思いますが、指導書が変わる必要性と影響力は非常に大きく、概念型の深い学びを実現する授業のイメージを先生たちがつかみ取りやすいものになるよう、これは文科省にというよりかは、今日傍聴しているであろう教科書会社に大いに期待したいなと思いました。
また、次に、多様な子供たちの包摂についてですが、これは調整授業時数や特別の教育課程だけで達成されるものではなくて、中核的な概念で構造化された学習指導要領を通じた授業づくりが最も重要なことです。多様な子供たちにとって資質・能力を発揮しやすくて、教科の本質的な理解にも繋がるような思考・判断・表現力が高まる授業、そして、パフォーマンス課題を研究していくということが学校で広がってほしいなと思います。それは現行の学習指導要領の実現でもありますし、構造化された次期学習指導要領を使いこなす準備にもなります。
文科省が春に出したサポートマガジンの『みるみる』は、とても読みやすくて助けになるはずですので、各学校でも『みるみる』を使いながら、今から取組を進めてほしいなと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、奈須委員、どうぞ。
【奈須委員】 ありがとうございます。3点ほどと思うんですけれども。
1つ目は、論点整理は、これまで大きなテキストで全部書かれていたと思うんですけど、今回テキストもあるんですけど、結構図が多いですね。これはかなり画期的だと思います。やっぱり多くの方に見てもらいたいとか、それから、伝わりやすいという話はあると思うんですが。逆に言うと、図というのは多義性が高くて、誤解や曲解を招きやすいという難しさがあるのではないかなと思っています。この辺り、どうしていくかということは、一つ今後の課題かなと思っています。
そのことで言うと、今の図で、本当にそうなのかなと。先ほど荒瀬先生がおっしゃった6ページのところなんか、ほかにも気になるところはあって。例えば、総合のところで、グループ探究と個人探究というのがあって、下のほうはグループ探究で上のほうは個人探究というイメージだけど、本当かなと思うんですよね。だって、幼児教育、最初はみんな個人探究ですよね。自由遊びって。だから、個人探究は小さい子供はできないという、それは多分間違いで、1年生からむしろやったほうが、幼小の連携・接続はうまくいくという取組をやっていらっしゃる方もいます。わかりやすく図示するのはいいんですが、書くとそれが強い影響力を持つということもあるので、図というのはなかなかいつも難しいなというふうに思ったりもしています。だから、またこれを見ながら、いろいろ確認していくということも大事かなと思っています。
それから、エクセレンスとエクイティが2つ大きな柱になるんだと。先ほど来もありましたが、エクセレンスとエクイティというのは、どうも相容れないのではないかというイメージが日本にはあるということですよね。でも、ヨーロッパの教育政策では普通ですよね。エクセレンスとエクイティを両面作戦で追っていて、どうやってそれを統合するかというのが、イングランドなんか典型だと思いますけど、普通の教育政策のつくり方ですよね。逆に言うと、今回これが出てみんなが驚くというのが、これまでこの国が何をやってきたか、かなり構造的に深いところで見ていかなければいけないんだと思いますし、令和答申で出た同調圧力がかなり大きな問題だったのではないかというところの問い直しは、まさにそういうことだと思います。民主的とか、共生とかいう話が、この辺りとの関係でどうなっていくかということですね。だから、多様性の包摂であるという話が大事で、先ほど野口委員からもあったエクセレンスとエクイティというのは、むしろ相互依存関係にあるんだという把握はすごく大事だと思っています。
それから、最後ですけど、今回いろんなことをやっていく中で、この後、教科等のワーキンググループに分かれていって、専門的な議論が進んでいきますよね。そこではいろんなことを御議論いただくと思うんですけど、一つ大きな柱は、やはり中核概念・方略に基づく内容の構造化というところだろうと思います。このことが10ページあたりに出ていて、私、2つ大事なことがあるなと思って、この文章を見て確認していました。
1つは、2つ目のポツですが、各教科等の中核的な概念等の獲得に重点を置くために必要な学習内容を検討したり、必要に応じた精選を行うと。つまり、構造化というのは、今までやってきた学習指導要領の指導事項を整理したら中核概念が生まれて、構造化が進むということには多分ならないんだろうと思うんですよね。逆で、改めてこの教科等の任務は何かということを考え直す。これまでこれでやってきたから、さあ、まずいところがあったら部分的に修正しようという話では今回はないんだろうと思います。改めて、戦後80年近くやってきましたけど、この教科の任務は何か改めて考える。これは難問ですが、教科等の御専門の皆さんが集まるから、御議論できると思います。そうなったときに、先ほど石井委員からもありましたけれども、中核的な概念、かなり上の桁の概念を出していただく必要がある。もっとも、これは諸外国にもいろんな研究がありますので、委員の皆さんの中にもお詳しい方はいると思うので、出してくださると思うんですが、それで改めて上の桁を見ていこうと。
その上の桁を見た場合に、今の学習指導要領ではどうなっているかというと、当然一致するところも多いと思うんですけれども、一致しない部分も出てくるのではないかと思うんですね。そのときにどうするかというのは大問題ですけれども。ただ、上の桁からだんだん下に下ろしてくる。そうやってくると、私の予測ですが、今、学習指導要領の各教科等に入っているほとんどの内容やほとんどの指導事項は実はうまく収まると思うんですけれども、同時に、今の指導事項を全部収めようとして構造化するのではないんだろうなと。このことがあっさり書かれているけど、その辺り、どうなのかなということを一つ思っていました。
それから、もう一つは、この下なんですけど、構造化は記載の冗長・複雑さの改善によるスリム化、それから、俯瞰しやすさの向上に資すると。この記載の冗長・複雑さの改善というのは、実際に最終的な段階で目指すものだろうと思いますけれども、もうすぐに教科等のワーキンググループは始まりますので、どのぐらいの冗長をスリム化するのだろうかというイメージを全然共有していないように思います。以前、諸外国に比べて4倍だとかいう話もありましたけど、じゃ、4倍が多いんだったら、どうでしょう、半分ぐらいまで減らすんですかね。そういうことをどこかでイメージを持たないと、実は各教科等の議論には入れないのではないかなという気がしています。そんなことをいきなりここで議論して決めるという話ではないんですけど、どこかでこのことのイメージを持たないと。
そして、先ほど来からあるべきフィージビリティということを考えると、あるいは、教科書会社の皆さんに思い切っていい教科書を作っていただくということを考えると、この構造化、そして、記載のスリム化というのはとっても大事だと思います。こういうシンプルで見やすくて構造化されたものだったら、自分らしい授業をどんどんやっていこうじゃないかと、先ほど澤田委員がおっしゃったような気持ちにも現場がなってくると思うんですね。そうすると、教師用指導書ばかりを当てにするのではなくてという話にもなってくるし、教科書会社だって、現状ではどうしてもここが細かいから細かく作らなければいけないし、細かく示さなければいけないということも私はあるのではないかと思っていて。すると、この辺りの作業イメージというか、何を目指すんだというイメージはどこかで議論しなければいけない。それはすぐではなくてもいいんですが、議論しなければいけないんだろうなと、そんなことを思っていました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
ちょっと恐縮ですが、順番を変えまして、髙島委員にお入りいただいていますので、髙島委員、御意見いただけますでしょうか。
【髙島委員】 遅参しまして失礼しました。髙島です。よろしくお願いします。
5ページの次期学習指導要領に向けた検討の基盤となる考え方のところですが、私たちは何を目指すのかというのが書かれていると思います。生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育むということです。
何度でもこの行を読みたいと思うんですね。「民主的で持続可能な社会の創り手をみんなで育む」と。もちろん、自分のため、自分の人生の舵取りのために学ぶということは大前提だと思います。今回、個別最適な学び、ちょっと小さいですけれども、一人ひとりに合った学びというのは、これまでの議論もあった「何のために学ぶのか」にも関わるとても重要な点だと思います。
ただ、学校の存在意義というものを考えると、改めて違いを認め合い、学び合うということになるのではないかと思います。生成AIの時代、自分で家で学んだほうが早いという人もいるかもしれない。けれども、学校という多様な人たちが学び合う環境を私たちが保障し続けるのは、民主主義の担い手を育てたいからではないかと思います。だからこそ学校は、民主主義を学び実践する場であることが望ましいのではないかと思います。
では、それは学校関係者だけで実現できるのかというと、文科省と教育委員会と先生だけでできるのかというと、それは無理だと思います。子供はもちろん、保護者、市民、地域の方、そして、もちろん首長部局、文科省から見ると、ほかの省庁も含まれるかもしれません。みんなの力がないと実現できない。だからこそ、みんなで育むと書いているのではないかなと思います。改めて、最上位目標として掲げられたこの部分、ぜひ各教科が繋がっているのか、今後のワーキンググループの議論は常にここに立ち返っていただければと期待をします。
最初の数回の特別部会の議論で、私は、新しい学習指導要領はデザインと発信を重視してほしいという話をしました。何が変わったのかはぼんやり伝わるけれども、なぜ変わったのかはほとんど伝わっていないと感じていたからです。今回、諮問のポイントが分かりやすいデザインで示されたこと、事後に議論の過程が全国の教育委員会に共有されているということは、とても大きな一歩だと思います。諮問のポイントは、実際に私たちも市の教育に関するイベント等で使わせていただきました。今回の論点整理の資料、ちょっと長かったので、分かりやすいデザインになることを期待したいと思います。
そして、今回多分見てくださっていると思います教育委員会や学校関係者の皆さんに、ちょっとお伝えしたいことがあります。今回の指導要領の改訂というのは、およそ5年後ぐらいになるかなと思います。でも、それまで待っていられないと思うんですね。今の指導要領でもできることはたくさんあると思います。今この瞬間も、子供たちは日々学び成長しています。進められることはどんどん進めていただきたいと思いますし、私たち芦屋市も頑張っていきたいと思います。
そして、どうか、ぜひ首長部局に対してこの議論を伝えていただきたいと思います。首長部局、正直、学習指導要領について、今改訂の議論が行われているということについて、ほとんど知らないと思います。一方で、目に見えやすい全国学調の結果には注目する人も多いと思うんですね。今何が課題で、何を目指して学びを変えようとしているのか。首長部局も巻き込んで、みんなで取り組まなければいけないと思いますし、私も市長の立場から応援していきたいと思います。
最後に各論なんですが、市の立場で、実は国の立場でもなかなか動かしにくいのが高校入試だと思います。今回議論していただいてありがとうございました。実施者の負担軽減の論点が出たらよかったなと思うんですけれども、ぜひ全国の都道府県教育委員会の皆さんには、子供の声を聞いて、入試について共に議論するということをぜひ進めていただきたいと思います。これこそ民主主義の担い手を育てる上で何よりの手段ではないかなと思います。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 お時間ない中、ありがとうございました。
では、植阪委員、どうぞ。
【植阪委員】 よろしくお願いします。海外からつないでおり、接続が不安定になったら申し訳ありません。よろしくお願いします。
まず、次期学習指導要領の方向性として、やはり「深い学び」ということを守るんだ、それも、多様な子供たちに対して、全ての子供にそれを保障するんだということがゴールになったことは本当にすばらしいことだなというふうに思います。前回よりもいろいろな具体的な方策によって深まっていくのはすごくうれしいと思っています。
また、6ページに示されたように、実は6ページの図のところには、科学的エビデンスに基づいて児童生徒の学習方略の指導もやるんだということが、この短い図の中にきちんと表されていて、各国では、やはり内容だけではなくて、学び方ということについても保障するという方向性が出ているので、すごくいいなというふうに思っている次第です。
気になる点だけ、簡単に3点お話しさせていただきたいと思います。
まず、この出していただいた図なんですけれども、このページの一番左、進路の探究・支援という言葉については、そもそもその文言自体が気になるという先生の御発言が何人かあったと思います。私にとっては、2個かかれているのがかなり気になっています。まるで、中学校のときに高校を選択し、高校で大学を選択するというように見えてしまうと思います。もう少し広い意味を持たせるということを考えると、あえて2つ書かなくていいのではないかと思っています。自分の人生が社会とどう繋がっているのかを模索するという意味であり、高校、大学の進路選択をするという意味ではないと思うので、1個に減らして、良い言葉にするという方法を模索していただければと思っています。
2点目は、「深い学び」というイメージが学校現場の先生方となかなか共有されていないということを感じます。深いという言葉が入ってきたのは画期的だと思います。しかし、心理学から出てきた言葉であったこともあり、深いとは何かということが十分に伝わっていない気がします。ただ問題を解くだけではなくて、何を求めるのかという辺りだと思います。本人自身が自分の言葉で説明できるとか、そういうことなんだということが十分に伝わっていないところもあります。根本に戻って、「深い学び」とは何かということを社会と共有する努力を文部科学省の方々にもぜひしていただければと思っております。
3点目は、戸ヶ﨑委員とか松原委員からも出ていたと思うんですが、知識・技能の偏重への危惧です。具体的には高校の先生から、評価は楽になりそうだということをちらちらと聞きます。今後は、何ができるかで評価すればいいんですね、どう学んでいくか、どう学びと向き合っているか、それは評価しなくていいんですねと言い切った先生もいて、課題があるなと思った次第です。
高校の先生にとっては、3観点が入ってきてすごく負担感があったので、新しいものへの負担感がなくなってうれしいという部分はあると思うんですが、戸ヶ﨑委員がおっしゃったように、評価で悩むということは本質だというような気もいたします。評価に入ってくることで、やはり教師の目線に入ってくるということは非常に重要だと思いますので、今回少しこのやり方が変わりましたが、これが最終確定ではなくて、フィージビリティもあって、こういう形になっていくけれども、どういうふうにしていくかは今後も検討を要する継続課題なのであるということを基本認識にして、継続課題というふうに位置付けておいていただけるといいかなと思います。
石井委員の話を聞いて、今回の中核的な概念でですとか、複雑な課題の解決ということが、中核的な概念のカリキュラム設計者の視点からもすごく大事というのは理解できたんですが、これがばーんと出ることで、学校の先生は、まずこれか、何ができるかが大事かみたいな目線の誘導みたいなこともあることはあるので、それ以外のものも射程に入っているのだということをどう社会と共有していくかは結構大事な課題かなと思っています。
最後に、これだけの膨大なものを議論からまとめてくださった文科省の皆様の御尽力、特に夏休みにもかかわらず頑張ってくださったことに本当に心から感謝したいと思います。
以上です。ありがとうございます。失礼いたしました。
【貞広主査】 ありがとうございます。
古賀委員、どうぞ。
【古賀委員】 ありがとうございます。
これまでの分厚い議論を丁寧におまとめいただき、ありがとうございます。
幼児教育の視点から1点お願いがございます。論点整理案の6ページです。
先ほど秋田委員のほうからも豊かな体験と遊びというような御指摘があったかと思いますけれども、幼児教育で何を育み、どのようにこの後の学びに繋がっているのかということを位置付けるということで、意見申し上げたいと思います。
好きを育み、得意を伸ばすというところは、まさに幼児教育でも大事にしているところですし、当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができることの芽生えのようなものは、幼児教育においても育もうとしているところです。
例えば、一日の振り返りの時間に、しっぽ取りをしていた人たちが、みんなに聞いてほしいことがあるとか言い出して、負けたくないあまりにしっぽを握りながら走る人が出てきちゃうわけなんですけれども、あんなことしたらしっぽが取れないと怒っている人がいたり、強い人ばっかり集める人たちがいるからほかのチームは絶対勝てないとか言って怒り出す人がいたりして、楽しく遊びたいのにという自分たちの必要感を基に、じゃ明日はどうしたらいいかなと、みんなが納得する自分たちに必要なルールを考え合うということもしています。
また、仲のよい友達と好きな遊びをするだけではなくて、いつもは一緒に遊ぶことの少ない人同士をペアやグループにして飼育活動に取り組んだり、運動会のチームを組んだりもします。幼児教育では、一つの目標を共有して力を合わせてやっていこうとする力のことを、協力の協の字と同じという漢字を使った「協同性」という用語で表してきましたが、その協同性の育みですね。いろいろな他者と活動を共にする中で、感情や意見がぶつかり合って、自分と異なる思いを持つ人がいることが分かり、それでもリレーに勝ちたいという目標を共有して考え合うというようなこと。つまりは、他者と関わり協同する力の育成といったことが、今後一層大事にしたいポイントです。
また、資料真ん中あたりの探究につきましても、幼児期にも探究の芽生えといったことに一層力を入れていけるところです。これまでも幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の中で、思考力の芽生えということを大事にしてきましたが、それは言葉を用いることでより考えやすくなったり、考えが共有できて新たなアイディアを加えることができるようになったりもします。
第10回のときに、花壇のダンゴムシをどうやって殺さずに捕まえて、自分たちのダンゴムシハウスで幸せに育てるかということを考え合っている4歳児のクラスの姿を紹介しましたけれども、保育者は、写真や絵や実物など、視覚的な手がかりを用いつつも、身体的な経験を言葉で引き出していきます。遊びの時間は身体的な探究の時間ですが、振り返りの時間は、言葉を用いた探究の時間になります。もちろん、子供だけでは十分に伝わる言葉にはなりにくく、身体的なジェスチャーも多く使われますけれども、保育者が丁寧に聞き取ります。ダンゴムシの振り返りでは、ある子供が「おいしかったと言って帰っている子もいるんじゃない?」というふうに問題提起すると、保育者は、「餌だけ食べて逃げているダンゴムシもいるかもしれないってこと?」って、分かりやすく言い換えて確かめます。すると、「そう」と、発言した子供は考えが明確になってすっきりした顔になって、また、周りの子供も「ああ」と納得顔になって、考えやすくなったりします。「じゃあ、餌の周りにダンゴムシが逃げていかないようなカップを置いてみたらどうかな」とか言う子供が出てきて、「いいねえ」というふうに考えを深めていくということにもつながっていきます。こういった言葉を用いて思考を深めていくという指導も、今後一層大事にしていきたいところだろうと思っています。
そういった意味で、このページの内容の基盤的な段階として幼児教育があるというふうにぜひ位置付けていただきたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、今井委員、どうぞ。
【今井委員】 ありがとうございます。
私も事務局の膨大な資料のまとめ、本当に御努力に頭が下がります。
この皆さんがおっしゃる5ページの深い学び、多様性、それから、フィージビリティ、それをどういうふうに実現可能にするかという、この三角形は本当に大事で、すばらしいと思います。これに関して、今日もお話がありましたように、どういうふうに現場の先生方、それから保護者に、この大事さを伝えるかというときに、指導書に頼り過ぎというコメントもありましたが、やはこれまでの学習指導要領でも大事なことをすごくたくさん書いているのに、それがなぜかということを読み手が本当に腹落ちできていないので、指導書に頼らざるを得ないというところがあったのかなと思うんですね。
それで、私は僭越ながら、発達科学、認知科学の観点から、なぜこれが大事なのかということを少し補足説明させていただきたいと思って資料を作らせていただきましたので、画面共有させていただいてもよろしいでしょうか。
今日冒頭に全国学力調査のことをお話しいただきました。私も自分で一応調査問題と公表された結果を見てみまして思うところがありまして、もう少し具体なことは今日の資料として事務局にアップしていただいた資料のほうに少しまとめておりますので、よろしければ、そちらを御覧いただければと思います。
現状の総括をすると、多くの子供が、算数・数学において最も重要な基礎概念が接地できていない、意味が分からない状態にあるということです。そのために算数・数学に対して、学習性無力感に陥ってしまっているということ。これが、一言で言えば、私からの総括です。
この接地という言葉をいきなり使って、何のこっちゃって思われる方も多いと思うんですけれど、要するに、自分の身体経験や、あるいは生活経験に全然結び付いていない、意味が分からない、そういうことなんですね。小学校の分数の問題にしても、分数の計算の問題、80%以上の正答率なのですが、意味を考えなくてはいけないものは30%台にとどまっているという、そういう状況がございます。
それでつまずいている子供に必要なのは、結局、丁寧な説明ではなくて、記号接地なのです。これまでの学びの考え方は、つまずいていると、じゃ、どうやって教えたら、説明したら分かってもらえるだろうかということを一生懸命やってきたんだと思うんですね。でも、この記号接地の考え方とは、教えられたものを暗記しても学び手は腹落ちできないということなのです。腹落ちするには、むしろ反対方向に、いろいろな生活経験の中で事例を集めて、それを抽象化して自分で概念をつくっていく、知識をつくっていく、それができないと分かったという気にならないということなのです。これを記号接地というふうに認知科学では呼んでおります。
現状を変えるために、ぜひ知ってほしいポイントを簡単にまとめてみました。
1つは、先ほどもちょっと申し上げたんですが、私たちは、先生方、本当に御努力なさって一生懸命丁寧に教えよう、上手に説明して分かるように教えようというふうに努力をされてきました。それは非常に尊いことなのですが、でも、一つ、教え手の頭にある知識というのは、どんなに丁寧に説明しても、学び手の脳に移植するということはできないということなんですね。
そうしようとすると結局何が起こるかというと、学び手の頭の中で暗記した記憶の断片にしかならない。記憶の断片というのは、実際には使えない、問題を解決するのに使えない、いわゆる「死んだ知識」になってしまって、これを幾ら集めても「生きた知識」にはならないということです。
では、「生きた知識」はどうしたらつくることができるのでしょうか。教育者の頭にある知識を子供に移植することができないとしたら、「生きた知識」は子供が自分でつくることしかできないのだとしたら、教育者の役割は、子供が「生きた知識」をつくるための支援をするしかないんですね。その支援をするときに大事なのは、学び手の特性を知るところからです。
私は、子供のつまずきを先生が見てとれるようなテスト、「たつじんテスト」というテストを広島県の教育委員会と一緒につくりました。それは幾つかの学校、自治体で今使っていただいて始まっているのですが、たつじんテストを使ってみてくださった先生方から、いろいろとお手紙、コメントをいただいています。これまでずっとどうやって分かりやすく教えるのかと心がけていて、でも成果が出なかった。それで、たつじんテストをやってみたら、やっぱり分かりやすく教えるだけでは駄目だということが分かったという内容のコメントが非常に多いです。
学びに著しい困難を覚えている、そういう学習困難のお子さんたちに対しても、今までは一様に学習に向かいにくいという同じような姿にしか見えなかったが、たつじんテストをやってみると見えてくる姿は三者三様で、やっぱりそれに合わせないと、子供のつまずきに本当に合わせないと駄目だと実感できたというお声をいただいております。
もう一つ、発達科学の観点からすごく大事なのは、「生きた知識」の習得過程、あるいは、記号接地の過程というのは、直線的な一次関数的な累加ではないということなのですね。むしろらせん状に発達していくもので、知識の記号接地、概念の記号接地には、すごく時間がかかるし、そこにおいて失敗と修正が付き物なのです。
どれだけ記号接地にかかるかという時間にも、大きな個人差があります。でも、個人差はありつつも共通に言えることは、基盤概念(事務局がおっしゃっている中核的な概念)がきちんと腹落ちできていて、自分の身体と生活経験に接地できていれば、学び手は、その後は自分で自走した学びができるということなんです。そうすると、その後の学習はどんどんスピードアップすることができるということです。
結局、これまでの3つの観点から何が言えるのでしょうか。総括すれば、皆学び手の記号接地を促して、「生きた知識」を学び手がつくることを助けるのが教育の役割であって、そういう観点から、私は、3つ提言、提案をさせていただきたいと思うんですね。これは今全く新しいことを言い出すというよりは、事務局でまとめてくださったこと、これを補強というか、補足するような形の提案となります。
1つは、やはりこの中核概念の記号接地を保障する教育でなくてはいけないということですね。この記号接地は時間がかかるし、すごく個人差があります。この個人差あるから、真ん中くらいにいる子供を一応のターゲットにして、真ん中の子が記号接地ができるような、そういうスピード感でやっていきましょうよというようなことが、これまで学校でなされてきたことです。また、学習指導要領で定められた学習内容、単元が、例えば、1年でこの単元が12ありますというと、この12を等分割して、この単元に1か月、次の単元に1か月というふうにやっていきましょうよと考えられ、実践されてきました。しかし、さっきも申し上げたように、「生きた知識」、記号接地の習得過程はリニアではありません。中核概念にしっかりと記号接地をさせる、それができるまでは、必要なだけ十分に時間をかけて、子供たちが概念の意味を理解して、接地ができるよう保障する必要があります。意味が理解できたら、その概念知識を様々な教科単元で使う練習をする、そういうことによって身体化できるようなカリキュラムとしていかなくてはいけないのではないか。この点において、やっぱり事務局の提案というのは非常に理に適ったものになっています。
次のスライドをお願いします。これは発達には個人差が大きいということを踏まえて、そこで、基礎基盤の概念をしっかり接地させ、身体化できるようなカリキュラムとした上で、個人の興味、目標、習熟度に合わせてメリハリをつけた学習プログラムを教師が設計できるように、そういう自由度の高いカリキュラム設計を学校の判断で可能にするということ、これが大事になってくると思います。そこにおいて、調整授業時数制度によって裁量的な時間というのは、こういう学習にしっかりと使われるように制度設計を進めていただきたいなと思っております。
そして、そのフィージビリティということを考えると、提言1と2、これが実現するためには、先生方への支援というのが最も大事になってくると思うんですね。これは記号接地を促して、子供が「生きた知識」を身に付けるための支援の仕方というのを先生方が一人一人探究できる、そういう時間をつくる。そのために、理論的なバックボーンも含めて先生方を支援する、そういうことをしないといけないと思います。幾ら調整可能な時間をつくっても、それだけでは、先生方も何で学習指導要領が大事なのか、何で深い学びが大事で、多様性が大事なのか、そこが接地できない、腹落ちできないと思うんですね。
そういうものを踏まえて、学びと発達の過程についての仕組みを理解して、子供たちの姿に接地していれば、先生方は幾らでも教え方を――教え方というのは説明の仕方ではなくて、支援の仕方ですね――自分たちで工夫することができます。日本の教育の方々は、ほんとうに優秀です。そして、子どもたちのために自分ができることは何でもするという気持ちも持っておられる。そういうすばらしい先生方を私はこれまでたくさんたくさん見てきました。
そういう方たちに大事なのは、やっぱり背後にある理論に腑落ちをすることなのです。言ってみれば、先生方が、学習指導要領の理念を自分の毎日の授業実践とつなげて理念を接地する必要があるということです。だから、次期の学習指導要領は、目指す目標、理念に先生方が接地できるように先生方を支援する、そういうものであってほしいなと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
先生方への接地の難しさは、もうここの会議で複数の委員がおっしゃったことで、本当に皆さんの意見が重なる部分でした。ありがとうございます。
皆様の御協力のおかげで、少し時間があります。秋田委員、二巡目の御発言、御希望でしょうか。
【秋田主査代理】 そうです。
【貞広主査】 お願いいたします。
【秋田主査代理】 ありがとうございます。最初3分でお話しさせていただいたときに、私のほうで付け加えたかったことがあるので、お話をさせていただきたいと思います。
それは、先ほどの今井委員の中核的な概念であったり、それから、植阪委員から深い理解というお話がございましたが、この夏いろいろなところで教員研修をさせていただいたときに、一つ質問が出て、大事だなと思ったのは、現行の学習指導要領では、習得・活用・探究ということを大事にしてきました。しかしながら、今回のこの内容の中では、習得という言葉と活用という言葉はあるんですけれども、探究という言葉は、いわゆる探究的な学習で、総合的な学習の時間のところだけで使用されています。それは今後どういうふうな学びのプロセスを、要するに、深い理解であれば、深い理解とは一体何なのかとか、それから、最初の戸ヶ﨑委員が、やっぱり新しいものが前面に出ることは大事だと思うんですけれども、現行の学習指導要領を使っている先生たちが、それを移行しながらリニューアルしていくためには、今の習得・活用・探究と深い理解がどう繋がるのかということが、例えば、ここのところでは、問題を解決できるというような言葉で表現されているんですけれども、それと探究は同じなのか。
先ほど荒瀬委員も、探究という言葉の吟味が必要なのではないかと言われましたが、私自身も、教科においてこの黄色いところを入れてくださいと主張して、総合的な学習と教科のところにも探究の語を入れてはいただいたんですけれども、結局、その深い理解と探究の関係というんでしょうか、教科の中で深く学ぶということが、今回は中核的概念、構造化として説明されているんですけれども、この辺りの関係が、先ほど奈須委員が話してくださったように、図で描かれて鮮やかなんですけど、前回の文章とこれがどう繋がるのかということが、今、現行学習指導要領を使っている先生たちにとってどう分かりやすいものにするのかということを考えなければならないと思っています。
その点で、私は、一つ事務局に答えていただきたいところがあります。それは、13ページ目の学習指導要領の構造化の中学校数学の図と、14ページの国語科の図の扱いのところです。
実は、先ほど神野委員が言われましたけれども、中学校数学の場合には、矢印を見ていただくと、縦の矢印が見えると思うんですけれども、これがいわゆる指導事項の内容のところに入っていて、内容の取扱いのところは構造化には入っていないんですね。下のところに含まれていません。ところが、次の国語のほうを見ていただきますと、内容の取扱いの一番下まで線が伸びています。これは内容の取扱いの扱い方が教科によって構造化のときに違うということを意味するのか、あまりそういう深い理由ではなく、この矢印がこの内容の取扱いにかぶったりかぶらないようになっているのか。
これは実は、先ほど奈須委員が言われた、各教科で構造化しましょう、精選しましょうというときに、何をどこまで精選するかの基準をここで議論しないでいいんでしょうかというお話があったところとも私は繋がってくると思っています。事務局が、この内容の取扱いを実際に見てみますと、書きぶりが確かに中学校両方とも四章の取扱いのところを見ると、書きぶりが結構違うんですけれども、この矢印が違うのは、これが結局、もうあと次回で終わりなので、これが全国に回ったときに、どういうことを意味するのかということをぜひ教えていただきたいと思います。
また、先ほどお話ししましたように、その構造の精選をするということが、どういう基準でやっていくのかというのが、非常に抽象論ではレス・イズ・モアなのも、構造化するのも、みんな学習科学や認知心理学者は同意するところですが、それが現行の学習指導要領をどう精選していくのかという方向の議論は総則ワーキンググループでと書かれているだけなんですけれども、そこについて、ある程度の方向性が見えない限り、これだけでは各教科で混乱が起こるのではないかと私は考えております。
大変よくここまでいろいろな委員の意見をまとめていただいてありがたいと私は思っているんですけれども、この点については、やはりここではっきりしておかないと、中核って何を指すのかということの議論が必要になるのではないかと思います。
同様のことが、69ページ目のスライドのところでも、例えば、教科書の在り方ということが書かれているのが69枚目だと思うんですけれども、教科書の現在の在り方からスリム化したり、教科書を教えるのではなくて、教科書で教えるというふうなところが書かれています。それによって余白ができた部分を探究学習や裁量的な時間の余白創出と書かれているんですけど、精選して、そこでの探究学習というのは、教科でより深い探究をすることを意味しているのか、それとも、それを総合的な学習の時間に充てるんだよという意味合いでここで書かれているのかというのも非常に曖昧だと思っていますので、この辺りをもう一度議論がきちっとされる必要があるのではないかと思います。
また、その他の教材というところで、ぜひ書き加えていただきたいのが、デジタル学習基盤というところで、学校図書館とか図書資料というものが、これから教科の学びの中で必要になります。総合教育政策局のほうの部会では、学校図書館や資料をどう使うかというのが前回の会議でも議論されたところになります。ここにそうしたその他の教材というところで、ぜひ、多様な教材活用というだけではなく、学校図書館や公立図書館を活用していくというような文言を入れていただければと思います。
質問1つと意見2つです。以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
事務局、どなたからお答えいただけますか。課長、お願いいたします。
【武藤教育課程課長】 教育課程課長の武藤でございます。秋田先生、どうもありがとうございます。
秋田先生からの御質問のうちの1つ目です。構造化のイメージの13ページと14ページの違い。これは単純なミスでございまして、特にこの違いで何か深淵なものを示そうということではございません。これは修正したいと思います。
それから、2点目の御指摘、これは奈須部会長からあったものとも通底しているところでございます。いずれもごもっともだと思いつつ、あまり明確にこうだと言ってしまうと、それこそ何割削減みたいな話にもなりかねないという難しさもあると思います。他方で、お二人がおっしゃったこともごもっともだということもございますので、次回の会議に向けて、何らかのことがお示しできないかということは考えたいというのが1点。
それから、もう一つ、一旦各教科で一定の考え方の下に始めていただいた上で、総則・評価特別部会等で刈り取って調整をしていくということもあるかと思いますし、最終的には教科ごとの特性にも一定の配慮も必要だと。この辺も含めて、次回までにまた部会長とも、それから貞広先生とも御相談をしたいと思っております。
以上でございます。
【秋田主査代理】 すみません。これ以上事務局に御無理を申し上げるつもりはないんですけれども、素朴な質問でしたので、矢印の件が分かりましたので、あとは御検討賜れば幸いです。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございました。
もう本日はこれだけの資料ですので、絶対時間どおりに終わらないと踏んできたんですけれども、皆様の御協力のおかげで、何とか時間どおりに終わりそうです。
今日、これ、たまたまだったのか、計算だったのか、ちょっと分かりませんけれども、冒頭で全国学力・学習状況調査の結果についての御説明があった後のこの論点整理の素案が出てきて、また、今井むつみ先生の御説明もあって、この素案の、何度も皆さん御言及くださっている5ページと6ページのものをいかに先生方に接地して実装していただくのかって、もうそれに尽きるというような感想を私も持ちました。
また、今村委員が2枚貼ってもらえる図とおっしゃっていたので、もしかしたら5ページ目と6ページ目になると考えると、じゃ、図の多義性も踏まえて、ちょっと作り込みをしなければいけないと思ったり、また、もっと先のことで考えると、この5ページ目、6ページ目というのは、子供の目で見るとまさに学びの地図で、今日、何で学ばなければいけないのかというお話も出てきましたけれども、子供が見て分かる学びの地図の形で渡してあげられるようなことも考えられたらいいなと、いろいろ考えたりしましたが、いずれにしても、前川委員が極めて広く、戦後最大の改訂と、それも制度的な仕掛けもあってということをおっしゃっていて、さらに襟を正されるような気持ちになりました。
ワーキンググループの方々にも、今日の論点整理の素案に絶えず立ち返りながら、しっかりと議論をいただきたいなと思ったところでございます。
以上、私も余計な蛇足を申し上げました。申し訳ありません。
本日いただいた御意見を踏まえまして、事務局と相談の上で素案の修正を行いますので、次回は、論点整理案として改めて御議論いただきたいと思います。
それでは、最後に、次回の予定について、事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 次回は9月19日(金曜日)15時半から17時半で予定しておりますが、また後日、御連絡を差し上げます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして閉会といたします。本日も、委員の皆様、ありがとうございました。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(代表)