令和7年7月28日(月曜日)15時00分~18時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【貞広主査】 皆様、こんにちは。時間が参りましたので、第11回教育課程企画特別部会を開催いたします。
本日は、高等学校の教育課程等の改善と、その他諮問で提起された諸論点として、主体的な社会参画に関わる教育の改善、カリキュラム・マネジメントの在り方について御審議をいただきます。本日も盛りだくさんでございます。
進行資料にありますとおり、議題1について事務局からの御説明と意見交換を行い、その後、5分間休憩を挟みまして、議題2について事務局説明と意見交換を行います。
それでは、議事に入る前に、事務局より配付資料の補足をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。本日の配付資料について補足をいたします。
資料1から参考資料3まで本日の議題に関係する資料をお配りしているほか、参考資料4では、今月9日に開催されました教育課程部会におきまして、各学校段階や各教科等の改訂の方向性を議論する専門部会等の設置について御了承いただきましたので、関係資料をお配りしております。昨年12月の諮問を受けまして、本特別部会において、中核的な概念等を中心とした学習指導要領の目標・内容の一層の構造化など、今後、各教科等別に専門的な御検討を要する論点について御議論をいただいています。つきましては、各学校段階や各教科等別に専門的な議論を進めるに当たって、十分な時間を確保しつつ、本特別部会の審議の状況等を共有し、本特別部会での論点整理後に速やかに専門的な検討を開始できるようにする必要があると考えており、早い段階での御設置の御了承をいただいたところでございます。なお、本特別部会における議論の状況によって変更の必要が生じた場合には、検討体制の見直しを行いたいと考えております。
2枚目は検討体制でございます。
学校種固有の審議事項については、総則・評価特別部会の中に、義務教育検討チーム、高等学校検討チームを設け、チーム別に専門的な検討を進めていただきたいと考えております。
なお、幼児教育については幼稚園教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂、特別支援教育については特別支援学校学習指導要領の改訂に向けた専門的な検討の必要があることから、個別にワーキングを設置しております。
また、本特別部会におきまして、中学校における技術・家庭科を2つの教科に分離した上で、現行の技術分野において情報技術をより深く広く学ぶことについて方向性を御議論いただいております。そのことから、家庭科については、家庭ワーキング、この表示の中段でございますけれども、として単独で設置しつつ、中学校「技術科」と高校「情報科」について一体的に検討するため、情報・技術ワーキング、右下の部分でございますが、を設置しております。
また、本特別部会におきまして、不登校児童生徒や特定分野に特異な才能のある児童生徒の実態に応じた特別な教育課程を編成・実施可能とする仕組みの新設について御議論いただいており、今後、具体的な運用等について専門的な検討を進めるため、一番下にございます不登校児童生徒に係る特別の教育課程ワーキンググループ、特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育ワーキンググループを設置しております。
その他、資料に記載のとおり、各ワーキンググループの設置を御了承いただいております。
各ワーキンググループと本特別部会や総則・評価特別部会との連携の在り方についても十分配意してまいります。
続いて、参考資料5についてでございますが、来月8月29日の開催日程と、これまでの審議の状況についてまとめておりますので、御参照ください。
参考資料6では、令和5年6月に設置し、約1年半の議論を経て取りまとめられた文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議の審議のまとめについてお配りしております。後ほど担当からも御報告をさせていただきます。
配付資料の説明は以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、議題1につきまして事務局より御説明をお願いいたします。
【橋田参事官】 高校担当参事官の橋田でございます。資料1に基づいて、まず私から説明させていただきます。
まず、高校教育に関する最近の議論でございます。
まず、2ページ目の資料でございますけども、こちらは、歴史的に、単位制高校の導入、総合学科、中高一貫制度の導入等々の改革に取り組んできた経緯のところでございますが、最近では、令和3年の「普通教育を主とする学科」の弾力化、令和6年の不登校生徒向けの通信教育・自宅等からの遠隔授業の制度化等々の内容を整理したものでございます。
続いて3ページ目でございますけども、中教審高等学校教育の在り方ワーキンググループ審議まとめ、今年の2月の概要でございます。
これからの高等学校の在り方に係る基本的な考え方といたしまして、高校教育の実態が地域・学校により非常に多様な状況にあるという中で、「多様性への対応」と「共通性の確保」、これを併せて進めることが重要であると。その中で生徒を主語にした高校教育を実現していこうという流れでございます。
その上で、現状・課題認識と具体的方策というところにございますように、1つには、小規模校の教育条件の改善、また、2つ目については、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方という中で、生徒の多様なニーズに応える柔軟で質の高い学びの実現、さらに3つ目の柱といたしまして、社会に開かれた教育課程、探究・文理横断・実践的な学びの推進、これを軸にした内容をまとめていただいたというところでございます。
続きまして、こちらのほうは骨太方針2025の抜粋でございます。
この中では、高校教育等への国の支援の抜本強化を図ること、さらに、いわゆる高校無償化といたしまして、これまで積み重ねてきた各般の議論に基づき具体化を行い、令和8年度予算の編成過程において成案を得て実現するという内容が盛り込まれております。
その中で、この注釈のところにございますように、自由民主党、公明党、日本維新の会3党の合意と併せて、今年の6月11日の大枠整理も引用されているというところでございます。この件については、就学支援金の収入要件の撤廃、私立加算の引上げと併せて、この5ページの2.にございますように、公立高校(専門高校を含む)などへの支援の拡充を含む教育の質の確保という中で、今後、国が示す高校教育改革に関する基本方針を踏まえ、都道府県が作成する計画に基づく高校教育改革、それに基づく環境整備、これを円滑かつ計画的に実施できるよう、交付金等の新たな財政支援により支援する仕組みづくりが必要といったような内容が盛り込まれているというところでございます。
最近の動向については以上でございます。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。それでは、本日、高等学校関係については、柔軟な教育の在り方、産業教育の更なる改善、中高の円滑な接続に資する高校入学者選抜等ございますが、まず、柔軟な教育課程の在り方について御説明を申し上げます。
まず、高等学校の現状でありますけれども、高等学校への進学率は約99%に達し、多様な入学動機や進路希望、学習経験など、様々な背景を持つ生徒が在籍し、高校の実態も多様化している現状がございます。また、15歳人口が減少していく中で、高校の数も減っていくということが見込まれます。
そうした中で、全国の市区町村のうち、公立高校ゼロとなっている自治体は約28.9%、1つしかない自治体は35%、合計63.9%となっており、増加傾向であります。このように統廃合が進み、地域によっては通学できる学校が1校のみとなり、学校の中で公立中学校等と同様の多様性も生まれやすくなる中、地域や各高校ならではの包摂や特色の在り方を模索し、具現化することが喫緊の課題であります。
こうした中で、各高校においては多様な特色が生まれつつございます。幾つか事例を御紹介していきます。
1つ目は、地域の教育資源を生かした取組など特色のある教育課程の例ということでありますけれども、ここでは愛媛県立の高校と和歌山県立の高校を御紹介しています。
左側、事例1でありますけれども、普通科を「社会共創科」に改め、特色のある学校設定科目により地域に関する理解を深めながら、2年次より地域探究コース、人文探究コース、科学探究コースを選択して学ぶというものであります。具体的な学校設定科目について、下のほうに「未咲輝学」といったもの、「地域文化と国語」、「芸術探究」などを紹介しております。
右側でありますけれども、事例の2つ目であります。地域の資源を活用した学校設定科目を含む宇宙探究コース、文理探究コース、地域探究コースを入学時に選択して学ぶということで、それぞれのコースの概要について下のほうに記載をしております。このような地域の教育資源を生かした取組が進んでいます。
また、もう一つでありますけれども、多様な進路に応じたコースを提供している教育課程の例であります。香川県立の高校の例を挙げておりますけれども、左側、1年次は学科を分けず全ての教科を共通に学習した上で、2年次から普通科と理数科に分かれ、それぞれ特色のある学校設定教科・科目を履修しながら探究的な学びを行うというものであります。下のほうに学校設定科目として、情報Ⅰの内容を扱う「科学探究基礎」といった科目が開設されていることを御覧いただけると思います。
右側であります。ここでは、大学進学を目指す生徒、就職を視野に入れる生徒、芸術の分野への関心や特性を生かそうとする生徒といった幅広いニーズに応じて、1年生より逆にコースを分けているというパターンです。人文コース、文理コース、総合コース、芸術コースの4つのコースから選択できるようにということで、特に下で御覧いただける芸術コースなどは、書道で「漢字創作」、「総合書道」、「書法研究」といった学校設定科目など、音楽・美術でも独創的な科目が設定されていることを御覧いただけると思います。
また、基礎的な内容の定着に取り組む教育課程の例もございます。新潟県立の高校を御紹介しています。
左側であります。こちらは、義務教育課程で学んだ内容と高校での学習との関連などを学び、確実な学力定着を図るため、1年次に選択して履修できる学校設定科目を開設しています。下に御覧いただけるように、1年次で「社会基礎」、「英語基礎」といった学校設定科目を設定して、主に学力に不安を持つ生徒や不登校等により十分な授業への出席ができなかった生徒を対象として開設されています。
右側であります。数学と英語について基本的な学習スキルを身に付けることを目的に、学校設定科目として「マルチベーシック」というものを開設し、1年次に必修で履修をするということになっています。内容としては、数学や英語について扱っていることを下のように御覧いただけると思います。
現在、こうした特色の創出というものが試みられておりますけれども、こうした特色の創出を支えて、また促し、深め、多様性を受け止めるための教育課程の柔軟性が高校でも問われていると考えています。こうしたことを踏まえて検討を深めてまいりますけども、こちらは現行制度の履修順や単位数ということでございます。
このような問題意識を踏まえまして、柔軟性をめぐる諸課題でございます。
義務教育課程と異なりまして、高等学校については単位制を採用しており、必履修教科・科目、選択履修教科・科目、学校設定教科・科目のうちから74単位を取得して卒業する仕組みになっています。多様な生徒の学習ニーズや人材養成ニーズに応え、各学校・生徒の実態を踏まえた適切な教育課程を編成する上で、様々な制度的な課題があるのではないかと考えています。
まず、真ん中を御覧ください。基本的な仕組みであります。申し上げたように、卒業に必要な単位数は74単位となっています。そのうち必履修は最低が35単位となっており、学校設定科目は最大20単位という仕組みに現在なっています。こうした仕組み、左側にありますように、週当たりの時数の標準については30コマという形で、現在、指導要領上お示ししておりますので、3年間実施した際の履修単位数というものは90単位程度になるということが一般的ということになっています。
こうした仕組みを前提として、4つほど課題をお示ししています。
まず、課題の1個目、特色を生かした大胆な教育課程編成についてであります。せりふのようにしておりますので、少し読ませていただきます。地域の特色を生かした課題研究を中核にダイナミックなカリキュラムを組みたいと。でも、学校設定科目を卒業単位にカウントできるのは20単位まで……限界を感じるなといったこと。また、下のほう、本当は74単位で卒業できるはずなのに、週30コマの授業が標準という規定も相まって、原則として3年で90単位必要となる。生徒の余白が少なく、学校外をフィールドにするダイナミックなカリキュラムが組みにくいなといった、こうした課題があるのではないかと考えております。
また、その下、課題2、生徒集団の実態に応じた対応についてです。習熟が早い生徒が多いので、必履修を減単して他科目に回したいと。今の減単の仕組みで週1コマ減ずると、逆に少々減らし過ぎると感じると。1コマ刻みじゃなくて、もう少しちょうどいい減らし方ができるといいなといったこと。基礎科目では物足りない生徒も多い。必履修科目と選択科目を一体でちょうどよい単位を割り当てて編成できたらじっくり深くできるのに、別々でないといけないルールだからカリキュラムが窮屈だなといったこと。義務教育段階の学力に課題のある子供が多く、必履修教科・科目の前に学び直しを丁寧にやる必要。でも、そのための学校設定教科と必履修を別々にやるのは、ともすると実態に即していないなといったことであります。
右上です。課題3、個々の生徒の学習ニーズへの対応であります。自分の苦手を克服したり得意を伸ばすなど、生徒が学習内容を自己決定したり、自己調整を促す時間を設けたいが、標準単位数のままだとカリキュラムが過密でうまく位置づけられないなといったこと。あるいはその下、英検1級などを持っている生徒も基礎科目からやらせるルールになっているけれど、これって本当に生徒のためになっているんだろうかと。もう少し履修の在り方について生徒の実態に応じて柔軟にできないかといったことであります。
最後に課題4、各科目の適正な学習量の設定であります。必履修を終わらせるのに1年次だけではなく2年次までかかると。基礎科目が終わらないと進路に応じた選択を十分にさせてあげられないなといったこと。また、前期と後期でそれぞれ単位認定をしたい、そういう取組をしたいけれども、1単位ずつ(35コマ)しか認定ができないから、前期だけで単位認定しようとすると週2コマ開講しなくてはならず、時間割が窮屈になるな、こういったお悩みがあるのではないかと考えています。
こうしたことを踏まえつつ、義務教育段階で既に柔軟な教育課程として御議論いただいたことと対比して検討課題についてお示ししたものがこのページです。義務教育段階と対比しながら御説明していきたいと思います。
左側、義務教育段階では、丸1、丸2にございますように、特例校制度の一般化として、国への申請を不要とすることも含めて、こうした特例的な仕組みを「常に利用可能な選択肢」とする方向で検討してはどうか。また、丸2の学習内容の学年区分についても、教師が学年区分にとらわれず、柔軟に教育課程を編成したり指導を展開しやすくなる方向で検討してはどうかという御議論をいただきました。これを踏まえて、高等学校での検討課題として、特例校は国の審査・指定を必要とする。また、必履修の基礎科目を履修した後に選択科目を履修するなど、科目の履修順が決められている教科が多いと。こういったことを踏まえまして、高等学校も義務教育段階と同様の方向で検討してはどうか。具体的には、必履修を含めた複数科目の統合・組替えを行ったり、単位数を柔軟に割り当てたりするなど柔軟な運用を学校判断で行えるようにすることをどのように考えるかということです。
左側に戻りまして丸3、標準授業時数の弾力的な運用については、各教科の標準時数を下回って生み出された授業時間を、他の教科や裁量的な時間に充てることを可能とする仕組みについて御議論をいただきました。これを高等学校段階について考えますと、右側であります。標準単位数の一層弾力的な運用ということで、各教科の標準単位数が定められており、原則減単はできないが、3単位以上の科目など一部の科目に関しては減単も可能。35時間掛ける1単位時間(50分)の学習を1単位として計算することが標準であることについて、各教科の単位数をよりきめ細やかに増減できる方策を検討してはどうかと考えています。
最後に、左側に戻りまして、年間最低授業週数の示し方について、40週での実態に合わせた授業時数の平準化、これを経て週28コマなどにできることを促進する方向での示し方を検討してはどうかと議論いただきました。これについて、右側になりますけれども、高等学校についても学校の実情に合った適切な週当たり授業時数を設定しやすいような示し方をどのように考えるかという論点があると考えております。
これを踏まえた具体的な論点・方向性であります。
左上、1つ目、教科・科目の柔軟な組替えについてであります。必履修を含む科目の履修の一部または全部を、一定の要件の下で、同一教科の他科目や学校設定科目等で取り扱うことを可能としてはどうか。イメージ例として、丸1、その下でありますけども、必履修科目と関連する選択科目を組み合わせた科目を創設、例えば、化学基礎と化学を一つの科目として複数年で履修といったこと。丸2、選択科目の中で、必履修科目の一部を取り扱う。例えば、数学Ⅱの中で数学Ⅰの一部の内容を一体的に扱うといったこと。また、学校設定科目の中で必履修科目の一部を取り扱うといったこと。データサイエンスで探究を行うといった学校設定科目の中で情報Ⅰの内容を扱うといったこと。こういったイメージであります。
この際、上記のように考えた場合の諸論点であります。
丸1、一定の要件について、科目の内容の面でどう整理するかということであります。元の科目と同様の成果が期待できる場合として、組替え先の科目等で元の科目の内容が適切に取り扱われていることとするかどうか、または、「元の科目の目標の趣旨を損なわない範囲」なのであれば、例えば基礎的・基本的な事項に重点を置くといった内容の選択も可能とするかどうか、こうしたことについて検討が必要ではないかと考えております。
丸2、組替え先科目等の単位数をどう考えるかということであります。複数科目を一体的に指導する場合、履修単位数を標準より減らすことを可能とするかといったことであります。例えば、化学基礎は、現在であれば2単位、化学は4単位でありますけども、これを足すと6単位になりますが、これを例えば5単位といったような運用を可能とするかどうか、こういったイメージであります。
丸3、こうした柔軟な取組を後押しするために、「卒業までに修得させる単位数に含められる学校設定科目等に係る修得単位数」を増やすことの適否、増やす場合の上限をどう考えるか(現行は20単位まで)であります。こうした仕組みを活用した科目を設定する場合には、科目の履修順を柔軟に取り扱うことを可能とする方向でまた検討する必要があると考えております。
2つ目、標準単位数の細分化による教育課程・履修の柔軟化であります。
単位計算を細分化、現在は74単位の要件でありますけども、これを半期ごとに分割して148単位とすることで学期ごとの単位認定を容易にし、増単・減単がきめ細かくしやすいようにするという提案であります。例えば、現行、数学Ⅰの単位は3単位でありますけれども、これを倍加して6単位という、より刻みを細かくして、それを例えば5単位での履修を可能とするとした場合、今までは3単位を1単位減らして3分の1減らすという話になりますけれども、6単位にきめ細かくした上で1単位を減らす場合は6分の1ずつごとの調整が可能になると、そういったイメージであります。後ほどイメージを御覧いただきます。また、生徒の学校生活に余白を生み、個々の進路希望や心身の状態などに応じて柔軟な学習や活動ができるようにする観点から、週当たり授業時数の標準、現在週30コマとしているものについて、引き続き示すことの適否をどのように考えるかということであります。
右上に参ります。3つ目、科目の履修を免除する仕組みの創設であります。例えば、入学時点で高度な外国語の運用能力を有していることが外部試験で明らかな場合など、特定の必履修教科・科目について既にその内容を十分に修得していると判断できる生徒が在籍する場合には、一定の要件の下で、各学校や教育委員会の判断により、当該教科・科目の履修を免除可能とする仕組みを整えてはどうかということであります。
そのように考えた場合の論点として、丸1、履修を免除する場合、別の学習をもって当該科目の履修に替えることとするのか。例えば以下のような例など履修の振替先についてどう考えるかということであります。小さい字の部分でありますけれども、例えば、CEFRという国際的な英語の考え方でありまして、おおむねCEFRB2というものは英検でいえば準1級程度に相当しますけれども、この生徒は英語コミュニケーションⅠを免除し、英語コミュニケーションⅢや学校設定科目の履修を可能とする。あるいはCEFRC1、これは英検1級程度になりますけども、以上の生徒は大学の講義等の単位認定で替えるなど、そういったイメージであります。
こうした例も含めて、どの必履修教科・科目で、どんな生徒を対象とするかについて、過度な負担なく判断しやすいようにする観点も含めて整理を行う必要があると考えております。
また、こうした運用について、習熟度別の学習集団編成や単位制高校における取組についてイメージしやすい状況がございますけれども、実際に実施する場合の運用上の工夫についてどう考えるかということもあると思います。
4つ目、最後に、こうした仕組みについて適切な運用を確保するための方策であります。
多様な高校が柔軟な教育課程編成を進められるようにしつつ、不適切な運用を防ぐため、どのような取組が考えられるか。保護者や児童生徒への説明責任の観点から、スクール・ポリシーへの明記を求めるといったこと。また、科目の本質的意義に照らして適当とは言えない運用、例えば歴史総合で日本史・世界史を分割するといったことでありますけども、こういったことがないように、あるいは大学入試対策に過度に傾倒した運用を防ぐ都道府県教育委員会の適切な指導・助言、また、国による状況の把握、そして更なる事例の創出・展開であります。
こうした仕組みが相まって、全・定・通の相互乗り入れ、あるいは学年の区分を設けない単位制高校への移行、単位互換や地域留学、産業界と連携したカリキュラム開発、大学と連携した単位認定等が一層実施しやすくなる可能性についてどのように考えるかということが御提案の内容であります。
こちらについては、今御説明したことについてイメージ的にまとめたものでありまして、現行制度が上でありまして、今御説明した内容が下の論点イメージとして書かれていますので、後ほど御参照いただければと考えております。
また、最後に、単位の細分化について御説明いたしました。これがイメージ的に当てはめたものでありますけれども、現行の標準単位数を細分化し、学期ごとの単位認定を容易にし、きめ細かく増単・減単できるようにしてはどうかということで、148単位ベースで当てはめたものであります。例えばでありますけれども、1年次であれば、数学Ⅰの真ん中辺りにありますが、もともと現行の標準の単位数は3でありますけれども、これが細分化されて6になっているイメージを御覧いただけるかと思います。こうした工夫によって、きめ細かく増単・減単できるのではないかと考えております。
この部分については以上でございます。
【橋田参事官】 続いて、産業教育の更なる改善について説明いたします。
論点資料の20ページでございますが、現行の職業に関する教科・科目の構成でございます。必履修教科・科目の履修に加えて、専門教科・科目について25単位以上を履修すること、また、各教科は、おおむね入学年次に「基礎科目」を履修した上で、各選択科目の履修を経て、卒業年次に「課題研究」を履修するという構造になっております。
論点資料の21ページは、職業教科・科目の記述例として、教科目標、科目目標、指導項目、内容の取扱いについてお示ししているというところでございます。
その上で産業教育の現状と課題でございますけども、まず、産業界における課題といたしましては、変化の激しい社会の中で、前例にとらわれず市場環境や業態変化に柔軟に応えられる産業人材の育成が必要ということ。さらに、構造的な人手不足、特に、DX化を牽引する即戦力となる人材育成が必要という状況がございます。
さらに、産業教育の課題といたしましては、丸1にございますように、探究的・実践的な学びは、主に卒業年次の「課題研究」等を中心に行われますけども、そこに至るまでの選択履修科目の内容が指導項目を中心として構成されていると。これに伴いまして、多様な課題に対応できる探究的・実践的な力を育成するための学びの積み重ねが十分でないといったような点、職業人として身に付けるべき資質・能力を踏まえた授業展開が十分でないといった課題がございます。また、丸2でございますけども、産業界等と連携した取組が進められていますが、どうしても単発的で学校全体としての取組になっていない、ばらつきが見られるというところがございます。また、丸3にございますように、専門教科全体として、データサイエンス・AIに関連する教育内容を充実させる必要があるというところがございます。
その上で、この右側の具体的論点・方向性のところでございますけども、教育課程の柔軟化に加えまして、産業教育特有の事項として、丸1でございますが、産業教育に共通する資質・能力を検討し、各教科共通に記述する方向で検討してはどうか。丸2、データサイエンス・AIを活用した実践的な学びを実施するなどの改善を図ってはどうか。丸3、探究的・実践的な学びの積み重ねや深まりを意識できる構造に改善するとともに、各専門科目で身に付けるべき資質・能力の更なる明確化を図ってはどうか。丸4、分かりやすく使いやすい学習指導要領とするため、専門教科についても積極的に検討してはどうか。その際、職業に関する各教科固有の留意点は何か。丸5でございますけども、必要な条件整備としてどのようなことが考えられるか。こういったところを中心に考えていきたいというところでございます。
さらに、産業教育に通底する資質・能力にはどのようなものが考えられるかというところで、産業構造や市場環境の急速な変化、労働市場の流動性の高まりが進む中、専門高校において身に付けるべき「産業教育に共通する資質・能力」、この点について深掘りで考えていく必要があると考えております。
続いて、資料24ページでございますけれども、今後の各教科の科目の構造・内容の見直しに関わって、情報科の例、一例を挙げておりますが、左が現行の体系でございますが、今後の方向性としては、データサイエンス・AIを追加する中で、情報技術の進展に対応したより系統立った科目構造への変更、これを検討していきたいと考えております。
また、資料25ページでございますけれども、現行、工業について、左側にございますように、基本的な指導項目、例えば「建築構造の概要」ですとか「建築材料」のみ記載されているところでございますけども、改善イメージといたしましては、赤字で追記していますように、知識・技術、思考力・判断力・表現力に関わる内容、こういったものも加筆するような形で体系化してはどうかと考えております。
そうした中で、専門高校の教育課程の見直しといたしましては、改善イメージの大きく2本柱にございますように、資質・能力を意識した探究的・実践的な学びの充実、また産業界等の実態に即した学びの充実、これについて対応していきたいと考えております。
続いて、中高の円滑な接続に資する高校入学者選抜についてであります。
資料28ページは制度改正の取組でございますけども、1にございますように、各校の特色化・魅力化という中で、まず、設置者が、高校に期待される社会的役割(スクール・ミッション)を再定義するということ、さらに、高等学校における「三つの方針(スクール・ポリシー)」ということで、この育成を目指す資質・能力に関する方針、教育課程の編成・実施に関する方針、入学者の受け入れに関する方針を各学校に定めていただくというところで、今、取組を進めていただいております。
その上で、スクール・ミッションの再定義と併せて、スクール・ポリシーの中でも、入学者の受け入れ方針と併せてカリキュラム・マネジメントの取組、日々の検証・改善、こういったものにしっかりつなげていただくということで、今、取組を進めているというところでございます。
その上で、現状、小・中学校の不登校生徒が増加しているという中で、高校入学者選抜でこの状況をどう捉えていくかということも課題になっているところでございます。
また、多様な入学者選抜の例として、資料32ページに2例ほどお示ししておりますけども、長崎県では、従来の2回の選抜から3回の選抜に変更しておりまして、「特別選抜」では、出願要件を満たす者が自己推薦の形で出願するということで、調査書、面接またはプレゼンテーションなどで選抜を行うということ。「一般選抜」については、学力検査、調査書、面接を資料として、学校ごとに比重を設定しているということ。さらに、「チャレンジ選抜」では、丁寧できめ細かな指導を行う学校において再募集枠として新設という工夫をしている例でございます。
また、広島県でございますけども、令和5年度から、3回の選抜から「一次選抜」、「二次選抜」の2回の選抜に変更したということでございます。また、調査書の項目を「学習の記録」に厳選した上で、県として15歳の生徒に身に付けてもらいたい力を明示し、受検生を多面的に評価するために、これまで頑張ってきたこと、高校で学びたいことを自分で選んだ言葉や方法で表現する「自己表現」を受検生全員に実施しているという例でございます。「一次選抜」では、県内一律で実施する学力検査、調査書、自己表現に加えて、学校独自検査の実施、あるいはそれらの配点比重を各学校の判断で決定できる「特色枠」の設定、各高校のアドミッション・ポリシーなどを反映させた選抜、そういったものに取り組んでいるということでございます。
資料33ページは、デジタル併願制の議論に関わってというところでございます。今年の4月のデジタル行財政改革会議の場で、民間有識者のプレゼンを受ける形で、総理指示として、公立高校入試で1人の生徒が1つの公立高校にしか出願できないという単願制の問題点・解決策について提起をいただいたことを踏まえて、大臣に対して、そのメリット・課題を丁寧に考慮し、希望する自治体での事例創出の具体化を図るようにという指示がなされているというところでございます。
それに対して文科大臣といたしましては、1つは、実施者の都道府県教育委員会等が決定するものであるという前提の下で、デジタル併願制のメリットの一方で、生徒の多様な個性・能力が十分に評価されるか、特色・魅力が損なわれていないか、専門高校に影響がないかといった課題も想定されるという中で、メリット・課題を整理しつつ、自治体・高校関係者の意見をよく聞いた上で丁寧に検討していくというところで答弁しているというところでございます。
最後、資料35ページは高校入学者選抜の方向性についてでございますけども、学力検査に関する課題といたしましては、出題全体のバランスを踏まえた改善ですとか、入試を背景にした保護者の懸念や要望への対応をどうしていくかというところ。2.の多様な選抜方法に関わる課題といたしましては、多様な背景を有する子供たちの大幅な増加、無償化の流れを受けた各校の特色化・魅力化、少子化・過疎化の影響等の中での対応をどうしていくか。また、学ぶ意欲を有する生徒に対して、希望する学びの場が確保されるための望ましい選抜の在り方の検討が必要というところで、右側にございますように、学力検査の改善といたしましては、中学校以下の授業改善に資する観点を含め、思考力・判断力・表現力等を問う出題の充実に係る課題の整理を国として支援すべきではないか。また、中・高担当部署の連携を図り、出題方針の公表、作問解説、県全体・各学校の分析の共有等を促進することについて、その可能性についてどう考えるかというところでございます。
2.の多様な選抜方法の拡充については、スクール・ミッション、スクール・ポリシー等を踏まえた多様な選抜を導入する場合には、どのような方法、留意事項があるか整理すべきではないか。また、多様な背景を有する生徒の個性・特性を十分に踏まえた選抜を充実するための留意事項を整理すべきではないか。さらに、生徒や地域の実態に鑑み、学力検査を行わないことができる選抜や、調査書を用いないことができる選抜の取扱い等について整理すべきではないか。
こういったところについてもまた議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【貞広主査】 ありがとうございます。
それでは、ただいま御説明をいただきました議題1につきまして、御意見、御質問を伺います。会場の方も含めて、Zoomの挙手ボタンを押していただきますと私から指名をさせていただきたいと思います。会場にいらっしゃる委員の方も御発言時はミュートを解除してお話しください。また、いつもで恐縮ですけれども、全ての委員の方々に御発言の機会があるよう、御発言は3分以内程度でおまとめいただければと思います。よろしくお願いいたします。
では、いかがでしょうか。では、順番に御指名申し上げます。前川委員、荒瀬委員、戸ヶ﨑委員、髙島委員の順番で御指名させていただきます。
では、まず、前川委員、お願いいたします。
【前川委員】 まず、高等学校の教育課程の柔軟化についてです。
義務教育との制度や特性の違いを踏まえつつ、高等学校についてもより柔軟に教育課程を編成し、各高校の個性を教育課程上も発揮したいという意欲を生かし、具現化しやすくなる提案だと考えており、事務局資料16ページ、具体的論点・方向性の1から3のいずれの事務局案にも賛成したいと思います。
特に、イメージ例の丸1にあるように、必履修科目と関連する選択科目を組み合わせた科目を創設した上で、論点2にあるように、その科目の履修単位数を標準より減らすことを可能とできれば、現在、少なくない高校が必履修科目の必要性は十分に認識しつつも、その量的なコントロールに課題感を持っている中で、各学校や地域の実情に合わせた多様な選択肢を取り得るようになるという意味で非常に有効であると感じるものです。これについては事例創出を大いに期待したいと思います。
その際の諸論点丸1のチェックの2つ目では、科目の内容の取扱いについて、「例えば基礎的・基本的な事項に重点を置くなど内容を選択可能とする」と例示されていますが、少なくともこの運用は、現行学習指導要領総則でも目標の趣旨を損なわない範囲で一般的に認められており、大いに賛同するものです。その上で、そのような組み合わせた科目で、必ずしも基礎的・基本的な事項に重点を置くような場合のみならず、あくまで一例ですが、探究的・発展的な内容に重点を置くような場合に、一定の考え方の下で内容を選択可能とするなど、一層弾力的な扱いを可能とすることも特例とするかどうかも含めて今後検討いただけるとありがたいと思います。
次に、論点3の科目の履修を免除する仕組みの創設については、その意義については大いに理解できるところです。しかし、実際に運用する場合、特定の数人の生徒だけで履修免除された科目が行われている時間帯に、その生徒にどのような科目を履修させるか、実際の時間割を組む上では非常に悩ましいところです。一部単位制の学校を除いての話です。3の丸3に記載があるように、習熟度別の最上位クラスあるいは単位制高校などではイメージできますが、運用上の工夫につき、今後の事例創出を期待したいと思います。
次に、論点4にしっかりと記載がありますが、このような仕組みは無限の可能性を秘めている一方で、不適切な運用を防ぐ仕組みも重要です。その意味では、公立高校については、当然、都道府県教育委員会がしっかりと対応していく必要がありますが、国公私立を通じてという意味では、3つ目に記載のある国による教育課程編成状況の把握が重要になるのではないかと考えています。
次に高校入試についてですが、こうした方向性について国として留意事項を整理して示すことは歓迎しております。高校の設置者である都道府県として申し上げましたが、やはり都道府県教育委員会がここに示された事項を真摯に受け止め、高校入試が中学校教育に大きな影響を及ぼしていることを自覚した上で、それぞれの地域の実情を踏まえつつ、しっかりと改革を進めていくことが重要だという共通認識を持ちたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。教職員支援機構の荒瀬でございます。遅れて参りまして大変失礼いたしました。
3つ申し上げたいことがあります。1つ目は、学習指導要領の柔軟な取扱いについてです。高等学校教育というのが、ほぼ中学校卒業生の全員が来る場所であるということ、また、高等学校教育は、その後の具体的な人生を自分でどう設計するのかということを考えるという上で非常に重要な時期かと思います。共通性と多様性ということをずっと高等学校教育のワーキンググループで議論してまいりました。その中で、多様性と共通性という順序で考えたほうがいいだろうという結論を見ました。多様な生徒がいっぱいいる中で共通に学ぶことは何だろうということを考えていくということです。ちなみに私自身は、共通性というのは、義務教育段階の学びが修得されているかどうかという点ではないだろうかという思いを持っております。じゃあ高等学校で学ばなくてよいという意味ではもちろんありません。高等学校では、これからの自分の人生を考えた上で、どんな学びをしていくかをもっと生徒が選択できるようにするという意味で、柔軟性をしっかり保証することを考えていってはどうかと思っています。
たとえば、必履修単位が幾つかのジャンルに分けられて、その中で選択するという方法もあるのではないかなということを思ったりもしています。令和2年の11月に審議まとめを出した高校ワーキングでの議論の中ですけれども、3つのポリシー、アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、グラデュエーション・ポリシーという3つのことを提起した中での議論で、どういう資質・能力を養うか、そのためにどんなカリキュラムを設置するか、そのためにどんな入学者選抜を含めて入学者に対するアピールをするのかという、こういったことを議論してまいりました。
その点で言うと、カリキュラム・ポリシーについて、校長が主体性を持って、責任を持って取り組めるような、そういうことができるような裁量性が担保されることが大事ではないかなということを思っています。先ほど申し上げたジャンルに分けるということも、すべての必履修科目を学ぶことも、そのうち選択的に学ぶことも、生徒の状況を見て校長が考えたらよいのではないかと思います。
2つ目でありますけれども、今申し上げました3つのポリシーという点で言うと、アドミッション・ポリシーというのが、「うちの学校はこんな学校ですから、こういうふうな力をつけてきてください」というのがウェブサイトなどによく書かれていますけれども、それだけではなくて、高校の入学者選抜に関しても、もちろんこれは前川教育長がおっしゃった後で言うのはちょっと申し訳ないんですが、もっと校長がその学校の責任を持つという点で主体性が発揮できるようにしてはどうかなということを思っています。3つのポリシーはばらばらではなくて、つながっています。どういう力をつけるためにどんなカリキュラムを用意するのか、そのためにどういう選抜をして入ってもらうのか、その際には、例えば中学校の調査書の扱いについても見る、見ないといったようなことが選択できるような方法というのが、今、現に採られているところもあるんですけれども、それをもっと広げていってはどうかと思います。私の経験でいうと、小学校の3年生か4年生から一切学校に行っていなかった子が高校受験をして入ってきて、その後は本当に一日も休まず来て、このように高校に入って変わりたいと願いを持つ中学生も当然いるわけで、そういった子供たちが学び直しができる場を全ての高等学校が用意することができる、そのためには選抜に関してそれぞれの校長が責任を持って取り組めるということが大事ではないかなということを思っています。
そういう選抜の方法の一つとして、総合的な探究が高等学校で大事だということなのですから、探究に向けた意思であるとか、基礎的な能力であるとか、思考方法であるとか、そういったものを見るような入学者選抜があってもいいと思いますし、そうなるとこれはとても時間がかかってくるので、いつの時期から始めるかとか、どういう方法で始めるかというのは考えなければならないんですけど、そういったことも高等学校が責任を持って考えることができるというふうなことが実現するといいなと思っています。
3つ目でありますけれども、公立高校が授業料の無償化に伴ってなかなか厳しくなっていくんじゃないかということが言われています。そのときに、私立高校と公立高校が生徒獲得で敵対関係になるなんていうのはばかな話でありますので、あるいはまた、広域通信制高校の取組がいろいろと課題はあるということはありますけれども、しかし、なぜそこに中学生が引かれるのかといったようなことについても、しっかりと正面から見た上での高等学校の在り方というのを考える必要があると思います。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございました。
では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 私からも3点ほど申し上げたいと思います。
1つ目は、資料の15ページについて、先ほど前川教育長からもお話がありましたが、これまで義務教育段階において議論してきた方向性を高校の特質を活かして具現化するものであって、教科等の内容面の整理や単位数の増減を容易にし、学校設定科目を充実するという方針は、学校の裁量、特色づくりや地域との連携を強化する上で極めて重要な考え方かなと思っています。また、単位の数え方を「半期で1単位」に改めて卒業単位数を倍増させる案も、柔軟性を支える仕組みとして大変有効と考えています。
一方で、危惧しているのが、単位数などの制度設計の技術的側面にどうしても目が行きがちになるわけですが、これを目的化するのではなく、何のためにという目的を、学校現場が具体的にイメージできることが不可欠だろうと思っています。荒瀬先生が仰ったように、高校教育は人生設計の大変重要な節目であります。総合的な探究の時間を核として、教科を超えたPBL的な学びや社会と繋がる実践的な学びを推進し、生徒が社会の変化を先導して未来を切り開く資質・能力を育んでいくという視点を重視していくべきだと思っています。
こうした視点を前提として、各校が卒業時までに育む力や期待する人物像を明確にし、この柔軟な仕組みを通じてそれらの実現を図ることが今後大きな鍵になると思っています。共通性の要請が高い義務教育段階においても、調整授業時数制度をはじめとする柔軟な教育課程編成を推進する方向で議論が進んでいます。各学校における特色ある魅力的な教育課程編成が期待されている高校段階においては、一層大胆な取組が可能となるように制度設計と運用の具現化を進めてほしいと思っています。
それから、2点目に産業教育については、産業界の変化や労働市場の流動性が高まる中、指導する教師が産業現場での勤務経験を持たないという現状が私は大きな課題であると思っています。即戦力となる人材の育成を掲げるならば、教育課程の改善に加えて、教師自身が社会経験を得るような機会を制度的に今後整えていく必要があると思っています。例えばインターンシップ制度の創設など、指導者の質の向上とセットで考えていかなければなりません。教員養成部会のほうでも議論されていますが、様々な領域で専門性を有する質の高い教師を確保し教師集団の多様性を高める手段を講じることが、ここでも急務なのではないかなと思っています。
最後に、高校入試については、都道府県が自己PRやプレゼンテーションなどを活用する事例がありますが、ここで危惧しているのが、中学校教員が筆記試験に加えて自己PR指導まで丁寧に行うということになると、当然、現場での負担が非常に懸念されてきます。選抜方式は日々の教科等で培った資質・能力をぜひ自然に発揮する場になるように、学校現場に特別な指導や準備を強いることにならないように、今後、留意していただければなと思っています。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
続きまして、髙島委員に発言をお願いしたいのですけれども、髙島委員、資料を御提出くださっています。また、公務の関係で後半の議論には御参加できないと伺っていますので、後半の議論も併せて少し長めに6分程度でお話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【髙島委員】 ご配慮ありがとうございます。芦屋市の髙島です。高校入試の話と、あとは次の議題になりますけれども、子供の社会参画というところ、2つのテーマでちょっと話したいと思います。
芦屋市には市立高校がないんです。じゃあ、なぜそんな市長が高校入試を語っているのかというと、本当に学校現場、様々なところで高校入試の話が極めてたくさん出てくるからです。中学生と話していても、例えば、「内申点についてちょっと気になるんだよね。例えば学校によって本当に内申点って差がありそうだ」と。別の場所で出会った子たちに聞くと、「何であの子のほうが内申高いんやろう。それによって受験できる高校が左右されるんじゃないか」と言って、「不安だ」というような声があります。一方、学校の先生に話を聞くと、「授業改善したいと思っているけれども、やっぱりボトルネックが入試なんだよね。探究型の授業に変えようと思っても、入試はそのままだとやっぱり変えにくいという、ちょっと心の障壁があるな」という声がありました。保護者の方々とお話をしていても、「新しい学びってすごく魅力的だけど、でも、それ、入試、大丈夫なの?」、そういう声もやっぱりあるわけですね。こういうような声、中学校現場でやはりまだまだたくさんあるなと思います。だからこそ、改めてここで高校入試について話すということは、義務教育の学びを充実させる上でもとても大事だと考えています。
今回、私は「子供の声を聞く入試改革を」と掲げました。じゃあ、なぜ中学生を巻き込みたいのかという話を少ししたいと思います。多くの公立中学校に通う子供たちにとって、高校入試というのは初めての入試です。入試、本当に初めての経験なので、すごく不安に思う子たちもたくさんいるでしょうし、自分の将来がそれによって、簡単に決まるわけではないですけれども、ある程度影響あるんじゃないかと思うことはあると思います。という最も自分ごとになるテーマだからこそ、そこで当事者を巻き込んだ議論をすべきではないかと思うんです。もちろん、校則について考えるとか、児童会・生徒会活動を充実させる、とても大事だと思うんですが、自分の人生に関わるこれくらい大きな行政が決めたルールにも自分の声が反映されるんだというような、そういう経験を持つことというのは、非常に大きな主体的な社会参画の機会になるのではないかなと思います。
同時に、今の入試制度がなぜこのような制度になっているのか。例えば内申点って何であるのかというところって、恐らく正しく伝わっていないと思うんですね。きっと何らかの意図を持ってつくられているはずだし、例えば、「試験一発勝負じゃ困るよね」みたいな話もあるはずです。ただ、一方で、そこがうまく伝わり切っていない部分が正直あるのではないかと思いますので、そのような意図を知る機会にもなるのではないかなと思います。
あくまで中学生を含めて共創するということを前提とした上で、ちょっと私見を述べたいと思います。
まず、高校入試、そもそも何のためにやるのかというところで、もちろん合格者を選ぶというところですけれども、高校、まさに先ほどもありましたように特色化・魅力化が進んでいく時代です。となると、偏差値によって序列をつけるのではなくて、各校の特色や魅力に応じたマッチングがより重視されるような、そんな制度に変えていくべきではないかなと思います。
複数出願制度の話がありました。実は兵庫県、既に複数出願、第2志望まで出せるというような状況なんですが、第1志望にボーナス点があるみたいな形になっています。そうなると、やはり点数で決めるみたいな話になりがちですので、マッチングを図る制度というものをうまくつくる必要があるのではないかと考えます。
もう少し具体的な話をします。まず、内申の話をしたいと思います。中学校で一番よく中学生に話を聞くのが、「内申に響くぞ」という言葉がすごく怖いということです。主体的な学びをしてほしいというような思いが文科省のほうでも当然あると思うんですが、一方で、「内申に響くぞ」と言われると、なかなか主体的にやろうということにならない。どうしても心のどこかで内申点を気にしてしまって、その教科本来の学びや活動の楽しさに浸るよりも内申点が気になると。そうなってしまうと本末転倒ではないかなと思います。
そして、不登校をはじめとする多様な背景を有する子たちの個性・特性を十分に踏まえて選抜するためには、やっぱり内申がある、特に実技教科を重視する配点の場合は非常に厳しい。不登校の場合、公立高校行けないねというふうになってしまうことも十分あるかなと思います。毎日学校に通える生徒が前提の制度になっているので、ここは、例えば内申点と調査書をオプショナルにするという話もありましたけれども、そういうものを含めて検討すべきではないかなと思います。
続いて、学力検査です。これもオプショナルにするという話もありましたので、そういうような展開があるのは当然いいことかなと思いますが、問題の中身がとても大事かなと思います。兵庫県の場合は、学力検査が探究的な問題になかなかなり切っていない部分があるかなと現場では感じていて、なかなか授業改善につながらないと。今後、複数高校への出願を認めるのであれば、会場を超えた採点基準のすり合わせがあるというのが結構見落としがちなポイントかなと思います。兵庫県は既に複数出願ができるので、その結果、採点のぶれが小さい選択式や短答式を多く取り入れているという話もあります。そうなると本末転倒なので、採点をすぐ学校の先生がやるという形以外の方法を模索できないかということをできれば考えられないかなと思います。当然、生成AI等のDXの利活用もそうなんですけれども、先生がやるというところをちょっと見直せないかなというふうにはぜひ考えていただければと思います。
採点が解決しても、やっぱり問題の作問って大変だと思うんですよね。今、都道府県教委ごとに作っている部分はあると思うんですが、今後、都道府県を超えた作問の協働も検討できればいいかなと思います。もちろん郷土の問題ってあると思うので、こだわりを残す部分は大事だと思いますが、全体の負担を減らせるのであれば、協働という部分も考えていただければなと思います。
そういうふうに学校の先生の負担が減った先に何があるかという話ですけれども、先生にしかできない部分の採点や評価に注力できる環境を整えられないかなと思います。今回の資料にも自己表現の話がありましたが、そういう人間の先生にしかできない部分に時間を割けるような、そんな形で進められるといいのではないかと思いますし、これがまさに先ほど最初にお話しした志望校と志望生徒のマッチングというところにも資するのではないかなと思います。こうやって、高校入試、様々な角度、様々な側面があると思いますが、こういうものも全部オープンにした上で、当事者の中学生を巻き込むということがやはり極めて大事だと思います。
最後に少しだけ、いわゆる社会参画の部分で1つだけお話しさせてください。今回、教育大綱というものを1つ例に出していただきましたけれども、教育大綱の策定前に、芦屋市では中学生との対話というものをやりました。それによって、中学生が今度は「市長と市民の対話集会」に参加してくれるという展開も生まれています。大事なのは、これ、教育委員会任せにしないということだと思います。いわゆる首長部局も一緒になって子供の声を聞くというところ、子供の声をしっかりとまちづくりの施策に生かしていくというところをできる、そんなきっかけになればなと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、今井むつみ委員、お願いいたします。
【今井委員】 今までの御議論ありがとうございました。皆様、制度設計の専門の立場から非常にいい議論をしてくださったと思います。ただ、私はそちらのほうは本当に専門でなくて、よく分かっていないところもあります。高等学校教育での多様性はすばらしいと思うんですね。様々な視点で特色のある高校のカリキュラムをつくるって大事だと思いますが、今、本当に私たちがすごく考えなければならないことは、高校生が本当に二極化してしまっていて、上のほうにいる人たちはいいんですけれども、下のというか、学力の分布の二こぶの下のほうのこぶに属する人たちは、義務教育課程の内容が十分に学習できていない人たちが非常に多いということです。高校には行けるかもしれないけれども、高校生になっても、学力がすごい低く、ことによったら小学校で学ぶ算数も十分に習得していないことは否めません。例えば分数とか割合とか、そこができないと社会に行って本当に困るだろうと思います。そういう生徒たちに対して、そこができていないのにそれを前提とする教科・内容をどんどんどんどん積み重ねていって、これできないと単位上げない、これできないと高校を卒業できないというのは現実的でないと思うし、高校でもきちんと義務教育の内容をしっかりと学習できるように、そういう仕組みづくりって絶対に必要だと思うんですね。
そこをやった上で、じゃあ高校のことをそこからさらにやらなくちゃいけないのかという問題になります。本当に基礎のところでつまずいてしまっているとその先へ行けません。特に数の概念、例えば分数とか割合とか、そういう基本的なところも全然正しく理解できていない人が、いきなり高校のカリキュラムで数学のカリキュラムをやろうとしても無理なわけです。だけど、人間の学習力ってすごいものがあります。基礎がしっかり押さえられれば、自分でそれこそオン・ザ・ジョブ・トレーニングとか、本当に必要になったときに自分で学習する力って身に付けることができるし、だから、別に高校で学びは終わるわけではないし、大学で学びは終わるわけでもないのです。大事なのは一番基礎のところをしっかり押さえて、その間に自分で学ぶ力、それこそ自走する学び手になるということができるようになれば、高校や大学を卒業した後も必要なことを自分で学ぶことができるわけです。だから、基礎的な概念は高校では「すでに習得している」ことにされていても、習得できてきなければ、小・中学校の内容を学んで習得しなければいけない。それをどういうふうに単位の制約と折り合いをつけるのかというのは、私は専門ではないのでよく分からないですけれども、その辺りはぜひ御議論いただいきたいです。何が一番大事って、義務教育の内容をまったく理解できないまま高校に入ってしまって、さらにそのまま大学に入ってしまって、そのまま社会に出てしまうみたいな、そういう人たちが教育の制度の中で救われて、やっぱり自分はやり直してよかったというような気持ちになれ、自分でこれから必要なことを何でも学べるというような、そういう力をつけることが高校でも大学教育でもできることが大事なのではないかなと思っております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。自走する学び手になるというのは、学力が十分に身に付いていない層だけではなく、全ての高校生に言えることなのかなと受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
では、内田委員、お願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございます。柔軟な教育課程の在り方についてですけれども、今までバランスよく学ぶことの重要性を実現するために高校が様々工夫していた中で、カリキュラムオーバーロードの問題というのは非常に課題であったと考えております。そんな中、文科省が本日提案していただいた、こちらの課題と捉えていた順序性であるとか標準単位の縛りが、非常にドラスティックな考え方の下、柔軟に対応できるような形で御提案いただいたということは、非常に応援をしていただく御提案であると考えております。半期認定単位についても、高校側でこれから様々な可能性を考えることができるという点でも有効でありがたい提案であると考えております。
その一方で、人材確保の問題であるとか、多様な講座を設定することによって物理的な教室などの制約というところは、様々今後生じてくると思いますので、相談をしながら、そういったところについてもどういう形で実現することが可能なのかチャレンジをしてまいりたいと思います。まさに人を育成するためにカリキュラムというところは重要だと考えておりますので、その学校の実態あるいは学ぶ生徒の実態に応じた教育課程が編成できるというところは、それぞれ地方も併せて有効であると考えております。
あと、ちょっと質問なのですが、ここのところ広域通信などの課題が出ておりまして、そういった学校については、教科・科目の従来の形でなく学校設定科目を柔軟に実施することによって、教員免許に関わらない授業というのが生じてきてしまっているというところが問題になっております。やはり必履修科目の減じる内容であるとか学校設定科目の柔軟化というところは、そういった広域通信の今まで抜け道でやっていたところについてもちょっと暴走する可能性もありまして、それは高校教育にとっては決していいことではないと考えております。何らかの方策を今後検討する必要があるかと思いますけれども、学校設定科目のどの程度増加を認めるのかというところの方向性をお示しいただけると助かります。
2番目の産業教育については、産業界を支える意味でも専門教育というのは非常に重要であると考えます。一方で、今までのそれぞれ専門教科、工業・農業・商業ともに、御自身の専門性を生かした職業教育というのは充実してきた反面、経営面での指導というところがなかなか難しいところがあるかと思います。搾取される立場にならない、経営できる人間の育成に向けての取組というのを今後検討する必要があるかと思います。
3番目の入試に関してのところでありますけれども、東京都でも長年、この高校入試について隠れたカリキュラム(ヒドゥン・カリキュラム)と位置づけ、中学校教育で必要なところを中心に公立入試については取り組んでまいりました。ポジティブに進路選択を行うというところが、中学校から高校に進む際あるいは高校から大学に進む際も重要だと考えております。私立学校を併せて、ポジティブに進路選択を行うためにどういった入試が実現できるか、基礎と称して単なる知識で済ませるような教育が大学入試の一部の大学でも出始めておりますので、そういったことが起きないように全体で考えていく必要があるかと思います。
私からは以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。1点目の御質問については、もし御方針があれば、後ほど事務局のほうから応答いただければと思います。
では、溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】 溝上です。
まず、全体の方向性はいいと思います。特に私なんかは、単位が74単位から半期に分けて148単位というのは、生徒にとっても、教員にとっても、学校にとっても、いろんな形で個別の裁量を生み出していく余白ですかね、そういうところに繋がると思いますので、ここはとてもいいと、進めていただきたいなと思います。
全体の中で2点、懸念することをコメントしたいと思いますが、1つは、高校の修得が十分にできている履修教科・科目等の免除という辺りなんですけれども、十分に修得ができているというのはどういうことかということがもうちょっと示されないと、この話はとても危険だという印象を受けます。例えば基礎的な事項とか概念とかそういったものが、いわゆるペーパーテストで理解できているような、そういう意味での修得というのだったら、今進めている中核的な概念・方略を基にした授業、特に思考・判断・表現等をかなり育てていこうという構造改革ではいったい何なのだとなります。その辺りの条件をもう少し示していただいて、また改めて理解をしたいと思います。もう少し説明が欲しいということです。
もう一つは、高校の入学者選抜なんですけれども、荒瀬先生がおっしゃったことを私もちょっと引き取りたいんですが、アドミッションだけの問題じゃないんですよね。やっぱりどういう生徒を受け入れたいかという高校側が中学校に向けての発信という意味が高校の入学選抜にはとてもあって、それは高等教育でも3つの方針としてアドミッションとカリキュラムをつなげた形でやってきたんですけれども、まず、そこの、入学をさせた生徒が高校に入ってどういうカリキュラムにいざなわれるかという学校側の連動した姿勢というのを見せるのが私は入学者選抜だと思っていますので、まず、この点、もう少し含みを持って示していただくほうがいいんじゃないかと思います。
大学のほうで起こっていることを私のところの桐蔭横浜大学を例に挙げますけれども、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーを連動させていく意味というのは、多様な生徒を受け入れていくという広さをどう担保するかということだと思うんですね。先ほどから基礎学力が十分にないとか広域通信制とか、そういうこともかなり念頭に置いてこの問題を考えていくべきで、例えばうちの大学は、一般選抜が非常に弱い大学です。総合型とか学校指定校で結構多くの学生を入学させます。基礎学力は高いとは思っていません。ただ、主体性とか探究とか、大学で、さらに高校での学習を前提とした更なる学習を希望する、そういう生徒がしっかり合格するような選抜にはなっています。その代わり、入ってからのカリキュラムが、主体性・探究を育てながら基礎学力もつけていくようなカリキュラムになっています。ここはかなり連動させていて、だからそういう意味では、私たちの学校は実は世の中でよく批判されるんですけれども、「基礎学力を担保しない一般選抜なしの大学」とか、こんな言い方をされるのは大変不愉快でありまして、それは中に入ってから引き続き育てることを私たちはとても大事にしておりますので、そういった高校版が今回は求められているんだと思うんですね。高校に入ってからの教育課程でカバーしていくような、そういう総合的な教育的営みになるようなことも併せて、入試選抜の方向性がうまく示されるような記述をお願いしたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。履修免除要件の明確化についても、何か御方針があれば後で応答いただければと思います。
現時点で、田村委員、植阪委員、野口委員、青海委員、今村委員に手を挙げていただいています。ちょっと時定を考えますと今村委員までの御発言とさせていただき、ほかの方も議題1について御意見がある場合は会議後にメール等で事務局にお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします。
田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 よろしくお願いいたします。2点申し上げます。
1つ目は、高校教育は、99%の生徒が進学するわけですが、それでも義務教育ではありません。そして、興味・関心や進路希望が分化していく発達段階であることを鑑みますと、学校の柔軟な教育課程編成を可能とする条件整備の提案について基本的に賛同いたします。高校ワーキングの末席に私も名を連ねておりましたけれども、今回、多様性と共通性の順序を変えたことは大きな転換点であったと認識しております。しかし、内田委員も言及されましたが、多様性という言葉の下、柔軟な教育課程という制度の下、生徒たちの学びが貧しいものとなるような不適切な運用がないように、特に共通性の確保について点検体制は必要だと考えております。また、教育課程が柔軟になればなるほど、学校が責任を持って策定するカリキュラム・ポリシーの重要性も増すと考えます。
2点目です。後半のトピック、子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善も含めて私見をお話しいたします。私は、高校の教育課程を見直す上で、柔軟性、対話、生徒の参加、そして市民性の育成がこれからますます大切になってくると感じております。これからの教育課程は、学校が一方的に与えるものというよりは、生徒自身が関わり、対話を通じて一緒につくっていく方向へと開いていくことが望ましいのではないかと考えています。例えば岐阜県立岐阜北高校では、生徒たちと先生方とが対話を重ねながらスクール・ポリシーづくりに関わってこられました。その中では、制服や校則の策定にとどまらず、学校設定科目や長期休業中の課題の在り方など、教育課程に関わる内容にも生徒の意見が反映されてきました。こうしたプロセスそのものが、カリキュラムを形づくると同時に、生徒にとって民主主義を体験し、市民性や公共性を育んでいく貴重な機会となっています。成人年齢が18歳となった今、高校時代に自らの学びのデザインに関わることや、自らの学びを社会と繋げる経験が得られることは、とても意味のあることだと思います。その際の対話の相手は教師や生徒同士だけにとどまりません。探究学習などの機会を生かして、地域社会、企業、NPO、さらには海外の人々とも繋がりながら対話を広げていく教育課程が実現していくことで、学校が未来の市民を育む共創の場としてより豊かなものになっていくように思います。
以上です。
【貞広主査】 では、植阪委員、どうぞ。
【植阪委員】 よろしくお願いします。東京大学の植阪です。膨大な資料をまず用意してくださったこと、本当に感謝申し上げます。
産業教育において、実社会で活用できる資質・能力についても育成するということを改めて強調された点というのは、産業教育が単なる職業教育を超えた全人的教育であるということを示す上でも大変すばらしいことであったと思っております。
一方で、社会に出てからの力の育成ということが産業教育においてのみ強調されているように、少なくとも今日の資料では見えてしまうのが少しもったいない気がしています。一般の高校においても当然強調されるべきものではないかと思っています。先ほど田村先生からも岐阜の例が紹介されていましたけれども、そこからも、実際に社会に出てからの力に結びつくようなものが大きく見えてきていると思います。社会に出てからも通用するような力としてどんなものがあるのか。それは例えば、現状を分析して、課題を自ら発見して、実際に工夫してみて、工夫がもしかしたらうまくいかないかもしれない。それは工夫を繰り返し改善し、最後どうだったかチェックして先に進んでいく。場合によっては人に頼ることも必要かもしれません。こういうふうに自分自身でPDCAサイクルを回していく。そういうような子供というのが非常に必要で、産業教育においても育んでいくでしょうし、一般の高校においても育まれるべきだと思っています。
こうした力というのは、校則の話など、一般的な話題のみだけで培われるものではなくて、教科の学びについても育てられるものと考えています。何らかの高度な知識を深く学んでいくという学習プロセスの中で、先ほど申し上げたような現状を分析し、工夫し、改善していく、PDCAサイクルを回しながら自らのレベルアップを図っていく経験の場とするということも十分できるかと思います。
それから、他者から指示されてこうしたサイクルを回していくことを大切にするだけではなくて、自らこういうことに喜んで関わっていく力というのも大事だと思います。喜びをもってやれなければ、社会に出た後の学びであるとか、社会において働くということがある種苦痛になってしまう、他人から言われてやるものになってしまう。それは非常に残念です。自分で課題を見つけることを楽しみ、工夫をすることを楽しみ、そして解決したときの喜びを知る、そういったことを、もちろん小・中でも大事ですが、高校という、より力もついた段階で体験するということを強調していただくことは、高校教育の魅力化にも繋がりますし、高校生にとってもそれが実感できる場がたくさんあることは、高校に行ってよかった、だから今、自分があるんだと言えるような力になっていくというふうに考えています。
全体敵には、今回のカリキュラムの柔軟化、これに関しては賛同いたします。それに加えて、上述しましたような社会に出てからの力の育成が、一般の高校の教育においても明記されていくということを期待したいと思います。
以上です。失礼いたします。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、野口委員、どうぞ。
【野口委員】 一般社団法人UNIVAの野口です。ちょっと遅れての参加ですみません。今日、長野県のある自治体の小・中学校の教職員研修に行ってきましたが、これまでの審議の内容等について共有をした際も、学校の包摂性を高めたいと思っても高校入試が大きなネックとなって、「入試に耐えられる力を身に付けさせなければ」と先生方も追い立てられているという声をもらいました。先ほど髙島委員からも提案のあったように、当事者である中学生の参画も踏まえながら、今回、改訂を進めていっていただけるということに期待しています。
高校における教育課程について、前回御提案させていただいた基礎的環境整備と合理的配慮の提供について、高校段階でも充実をさせていくということが重要だと思います。昨年4月に障害者差別解消法が改正されまして、私立の高校においても合理的配慮提供が義務づけられていますが、まだまだ不十分で、聞いたことがないという先生たちも多い実態です。そういった状況を変えていかなければならないと思います。
また、高校においても通級による指導の設置が各自治体で進んでいます。前回提案にあった通級における指導をより柔軟にしていくという視点、こちらも高校でも推進していくことが重要だと思います。
最後に、高校入学者選抜についてです。現在、障害のある子供の受入れについてかなり自治体間格差があります。例えば、自治体によっては定員内不合格を出す自治体と出さない自治体があります。また、大阪や神奈川のように、知的障害のある子供が入れる枠を用意している自治体もあります。また、高校と特別支援学校を一体的に運営することにより、よりインクルーシブにしていこうと考えている、そういった自治体もあります。各自治体ごとに特色があるのはいいと思いますが、例えば定員内不合格を出さない自治体にわざわざ引っ越すというような事例もかなり多くあります。各学校の特色や地域性を踏まえつつ、子供たちが民主主義の担い手になるということ、共生社会の担い手になるということを考えたときに、高校段階における障害のある子供のインクルーシブの在り方ということは検討していかなければいけないと思っています。
以上です。
【貞広主査】 では、引き続き、青海委員、お願いいたします。
【青海委員】 ありがとうございます。昨今の学力検査は、以前のような知識量だけではなく、思考力・判断力・表現力、読解力、それからコミュニケーション能力など、特に文章や資料を正確に読み解き、そこから得た情報を基に論理的に思考し、自分の考えを的確に表現する力を見ようと努力しているように思います。中学校でも、そのような力を育もうと、日々の授業づくりや定期考査などの出題にもかなり工夫が見られます。
ところで、各高校の入試は、その高校が入学させたい生徒に求めている力を調べるもの、端的に言えば、本校に入学してもらう生徒にはこのような問題が解ける力が必要なのだという受験者へのメッセージだと思います。中学校では、高校を目指す生徒には、その高校の入試が解けるよう、パスするよう支援します。
不登校の生徒を含めて、生徒一人一人の志望進路の希望をかなえるため、保護者の期待に応えるために、全力を尽くすことが中学校は使命だからと思っているからです。学力調査の改善は、正に中学校の指導、授業改善に直結すると思います。以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、今村委員、どうぞ。
【今村委員】 高校の柔軟な教育課程の論点の17ページのところで御提案された74単位、卒業に必要な単位数を74単位から148単位に分割する、つまり1単位の時間数を減らすということは、大変よい、すばらしい案だなと思って賛同いたします。といいますのは、前回の学習指導要領の改訂の議論のときに、総合探究が最も大切な、高校の学力の中核となる科目だということで設定されたんですけど、今はどうしても総合探究がもう追いやられている存在になっている学校が大変多いし、先日も関東のとある自治体の高校の先生と話したら、「え、まだ探究大事だと思っているの?」みたいな、「もうそんなトレンド終わったよ」って言われて、「え、ちょっと待ってください」みたいな話をしたんですけれども、今回、全体的に新しいことは追加せずに周知していくという全体方針なんですが、やっぱりこの探究が忘れ去られた存在になってしまうんじゃないか。今まで以上に面談時間を確保するための時間くらいの位置づけに学校では運用されているということを何とかしたいと思ったときに、やっぱり先生方が柔軟にカリキュラムを設定できるということ、重視すべきところの力点の工夫を凝らせる状況をつくるということが重要だと思うので、そういう意味では148単位に分割するということはとてもいいことだなと思いました。
さらになんですけれども、先ほど、65%の自治体が地域の中にゼロ及び1校の高校がある状態だというお話がありましたが、それによって結局90単位の設定をしなきゃいけないぐらい、多様な子供たちのニーズを高校が拾っているということが起きていて、これは今後も同じ状況が続くと思います。そうすると、先生方も忙しいし、授業を1日7コマやらなきゃいけないし、休み時間もずっと探究と向き合うなんてとても無理という状況が続いてしまうということは今後も想像できる中で、何とかDXとかいろんなことを駆使して、教員が教員のリソースを学校を超えてシェアできるとか、学習集団も地域の中だけでつくるのではなくて習熟度別に構成して、そこに学校を超えて教員が配置されるとか、そういった未来が数年後には技術的にはできる状態に、今でも既にできると思うんですけども、そういう状況にしていくトライアルをしていく必要があると思っています。その意味でも、何とか学校の設定している単位数を減らすということを前向きに検討できる状況をつくれないんだろうかと。90単位はやっぱり多過ぎると思うんです。これを何とか、74単位とは言いませんけれども、80単位ぐらいとか、少なくするという方針をここから下ろせないものかなと。そうじゃないと、また都道府県ごとに「無理だった」みたいな感じになって、数年たってまた次の検討みたいになってしまうと、結局、子供たちが何かに探究して、主権者としての力を身に付けていくための多様な人との接点を持って壁にぶち当たるような機会を提供していくということが、今後も時間が確保できないということになってしまっているので、そこを何とか減らすということも下ろせないものかということも引き続き検討いただきたいなと思っておりまして、発言させていただきます。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
それでは、休憩に入る前に、事務局のほうに御質問がございました、広域通信制において教員免許に関わらない学校設定科目があるということをどのように考えているのかということと、あとは、履修免除という方向性を考えたときに、十分に修得しているということをどのように明確化して考えていくのかということで、現時点で何か御方針をお持ちであれば応答いただければと思いますが、いかがでしょうか。
【橋田参事官】 内田委員からの御指摘の点でございますけども、広域通信制における状況も踏まえながら、全体としてどういう取扱いにするか、今後さらに整理を深めていきたいというふうに考えております。
【武藤教育課程課長】 教育課程課長の武藤です。
溝上先生からありました科目の履修のところですね、現時点で幅広い科目でやるイメージは持っていません。むしろ、ここで例示してある外国語みたいに、外部に社会的に相当な評価がされている検定試験等があるような場合を中心に考えてはおりますけれども、今日のこの御議論と、また、限られた時間なので、例えば産業教育の関係で何かもう少しあり得るのかどうかとか、少し関係の団体の御意見も伺いながら、またさらに精緻なものにしていきたいと思っているところでございます。
【貞広主査】 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、議題1は、申し訳ありませんが、この辺りにさせていただきます。
今16時29分ですので、16時35分まで休憩とし、その後に議題2に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】 それでは、議事を再開いたします。
議題2につきまして事務局より御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。それでは、議題といたしまして、子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善について、まず御説明を申し上げます。
現状と課題についてです。
まず、1つ目、現行学習指導要領までの改善について御説明を申し上げます。教育基本法では、教育の目的といたしまして、教育は「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」を備えた国民の育成を期して行われなければならないと規定しております。その上で、選挙権年齢の引下げに伴いまして、主体的な社会参画等に必要な力を身に付ける新科目「公共」を高校に新設するとともに、総務省と協力いたしまして、政治や選挙等に関する副教材を作成し、毎年、全高校1年生に配布しております。現行の学習指導要領では、社会科を中心に政治的教養を育む教育を充実するなどの改善を図るとともに、特別活動では「様々な集団活動に自主的、実践的に取り組む中で、等しく合意形成に関わり役割を担うようにすること」や「自分たちで決まりをつくって守る活動などを充実すること」を明示しております。こうした中、特に高校を中心として、選挙管理委員会等との連携により模擬議会、模擬投票等の取組も見られるところです。
2つ目です。こども基本法の制定などの近年の動きについてです。令和5年に施行されたこども基本法では、子供の権利の保障、意見表明及び社会参画の機会の確保、子供の最善の利益の考慮等を基本理念として規定しています。令和4年に生徒指導提要が改訂され、「発達支持的生徒指導」の考え方が示されるとともに、子供の生活に影響を及ぼし得る校則について、子供の意見を聴取した上で定めていくことが望ましいという旨が定められています。こうした中、校則の見直しや生徒によるルールの形成の取組なども中・高を中心として広がりを見せています。18歳の社会参画に関する意識は改善傾向であるものの、諸外国と比べると改善の余地が大きく、10代、20代の投票率は約3割と低い状況が続いています。一方、家庭や学校、地域で「ルール決めに関わった経験がある」という場合には「ふだんから投票に行っている」と回答する割合が高いといったようなデータも見られています。
右側、課題です。
1つ目、教育内容面の課題についてです。選挙権年齢の引下げに伴い、高校教育において特に大きな改善を図ったが、更なる取組の余地があると。また、中学校において校則見直しなどの取組が進む一方、子供の関わりが十分ではない例が見られるほか、小学校においても、学校運営上の様々な面において、主体的な参画の余地が大きいのではないか。小・中・高を通じて、GIGAスクール構想で整備されたクラウド環境を生かし、意見を可視化したり、少数意見を吟味したりして、よりよい合意を実現する取組が進みつつあるが、道半ばであるということ。我が国の学校教育の長所であるはずの協調性の涵養が、ともすれば集団性の強調に陥り、子供にとって意義が不明確な校則や学級ルールなどの存在とも相まって、「同調圧力」への偏りを生んでいる側面も指摘されています。意見表明の機会の確保や対話や協働を通じた参画の機会は、多様性を包摂する教育の実現にとっても重要であるが、十分に整備されているとは言えないのではないか。
2つ目、学校・社会の受皿などの課題についてです。子供の意見を授業や教育課程に生かす仕組みや、その際の指導技術などが未成熟。子供を社会の一員として受け止め、その意見を政策や社会の仕組みづくりに生かす地域・社会の受皿も不足しているのではないか。総じて、子供たちにとって身近な社会である学級・学校をフィールドにして、意見表明の機会、合意形成の機会、参画の機会をより充実させる余地があるものと考えられるのではないかと。そのために、各種指導要領において関連する教育内容を適切に盛り込むとともに、教員研修を含めて、必要な条件整備を図る必要があるのではないか。
このような現状認識と課題認識を踏まえて、改善の方向性と具体的論点についてであります。
子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善に向けて、以下、1、2のような方向で検討してはどうかと考えております。詳細は関連するワーキングで議論することが前提でございます。
まず、1.子供の社会参画に関わる教育内容の充実についてであります。
まず、全ての教科を通じた改善についてでありますけれども、丸1、社会科・公民科を中心としつつ、関連する教科等のワーキングで、子供の社会参画や意見表明を推進する観点から、見直すべき点がないか検討してはどうかということ。丸2、全ての教科等を通じて、自分の意見の根拠を持った説明、また、一方的な意見の主張にとどまらない対話を含む「協働的な学び」を一層重視してはどうかということであります。
なお、5月12日の特別部会において、既にフィルターバブル・エコーチェンバーの影響が強く指摘される中、情報モラルやメディアリテラシーの育成を重視する方向性をはじめとして、情報活用能力の抜本的向上について御議論をいただいております。これらも社会参画に関わる教育内容の改善の一環として捉えつつ、今後、関連する教科等のワーキングで検討を深めるということで考えております。
その上で、特別活動における改善であります。
特別活動は、米印にございますように、「集団や社会の形成者としての見方・考え方」を働かせ、よりよい集団や学校生活を目指して様々な活動に実践的に取り組む領域として位置づけられているものであります。
まず、その位置づけについて、丸1であります。身近な社会である学級・学校で多様な個性や特性、背景を持つ他者との対話や協働により、児童生徒が主体となってルールの形成や学校生活の改善、学校行事など様々な活動に参画することにより、「生成AI時代の主権者」として、確かな民主主義の担い手を育み、共生社会を実現する基盤を提供する領域として、特別活動の位置づけを明確化してはどうかということ。
その上で、丸2以降は具体的な教育活動についてでありますが、まず、児童会・生徒会活動についてでありますけれども、教師の適切な指導の下、校則など学校のルールの設定をはじめとする学校運営に発達段階に応じつつ子供が関わる仕組みであるということを、教育的活動であるという性質に十分配慮しつつ、明示的に示してはどうかということであります。
次に、丸3、学校行事についてであります。様々な学校行事がありますので、各行事の特質や、あるいは教師の過度な負担を生じさせない観点を踏まえつつ、子供たちが創造する活動であるという旨をより明確にしてはどうかということであります。
丸4、学級活動についてであります。学級内の多様性を前提に、共生社会の実現に向けた納得解を形成しようとするということの重要性をより明確に位置づけてはどうか。このことが社会的障壁の低減や教育課程全体の包摂性の向上に資する可能性についてどのように考えるかということであります。具体の取組例について後ほど御説明いたします。
丸5、子供が自主的、実践的に取り組む活動という特別活動の特質を踏まえまして、学習評価の運用につきましても過度に仔細なものとならないよう、評価の質を向上させるための合理化について検討してはどうかと考えております。
こうした方向性を具現化するに当たって、取組を促進する方策の充実も必要と考えております。右側であります。
まず、教師の負担への配慮等ということで、丸1、児童生徒の意見を生かした学校運営やルールの形成等の取組を円滑かつ豊かなものにできるよう、クラウドツールの活用方法を含めて、意見表明を過度な負担なく学校の様々な活動や運営に繋げる好事例等について、整理・提供してはどうかということ。
丸2、児童生徒の参画や意見を生かした学校運営、授業づくりに関する指導上の工夫等について、学校管理職や教師等に対する研修を充実させてはどうかということであります。
加えて、子供の意見を反映させる受皿の整備についてであります。
丸1、子供が学校生活で気づきや悩みをクラウドで寄せることができる仕組みなど、学校運営の包摂性を高める取組の一環として、教師の過度な負担なく児童生徒の声を聞く取組を促すことについて検討してはどうかということ。
丸2、学校運営協議会制度(コミュニティスクール)において、子供の社会参画を促す方策を検討してはどうか。例えば、子供の社会参画や意見表明の推進をまず議題とするといったこと。加えて、子供自身が学校運営協議会に参画するということであります。
丸3、学校評価において、学校運営の評価・改善プロセスに子供が関わることについて、子供の社会参画に関わる教育内容と関連づけることを促すことを検討してはどうかということであります。
丸4、教育振興基本計画や教育大綱の策定をはじめとする地方公共団体での議論におきまして、子供の意見表明の機会を設ける等、学校を超えて子供の社会参画を促すということを検討してはどうかということを考えております。
こうした内容について、補足イメージとした取組例を示したものが次のページであります。
右側の取組例丸1から時計回りに少し見ていきたいと思います。まず、取組例丸1でありますけども、特別活動の関係で大田区の小学校では、代表委員会の発案で校内に学校生活をより楽しくするためのアンケートボックスを設置し、寄せられた声を委員会に振り分けて検討、全校児童集会や交通安全のキャンペーン、運動会の改善など、様々な取組を実現してきました。また、岡山県の玉野市の中学校では、生徒会費は生徒会が配分を査定し、決定すると。また、体育祭や修学旅行を生徒による実行委員会が主導し、デジタル学習基盤を駆使しつつ、競技などを委員と教員が話し合って決定するというものであります。
また、取組例丸2の中段であります。国立市の中学校では、生徒の意見を取り入れた校則の見直しを継続して実施し、各学級で意見を出し、生徒会・学級委員等で組織する校則検討委員会が中心となって検討し、まとめた案を校長に提案しています。
その下、取組例丸3であります。町田市の小学校では、海外からの児童の転入を機に、当該学級の児童の発案で「誰もが過ごしやすくなるための取組を考えよう」というテーマで話合いを行い、誰もが過ごしやすくなる環境づくりを児童自ら工夫して実施しています。また、岡山県の高校では、「ネット投票の是非」についてホームルームで話し合い、結果をクラウドで全校に共有。生徒会で論点を整理し、ホームルームで検討を重ね、生徒会役員選挙で電子投票を導入しているといった事例がございます。
その他の事例について、取組丸4、取組丸5、取組丸6、取組丸7という形で、先ほど御説明した内容の具体例をお示ししていますので、御参照いただければと思います。
また、さらに具体的な内容について補足資料で1枚ずつ御用意しておりますので、必要に応じて御覧いただければと考えております。
次に、カリキュラム・マネジメントの在り方についてであります。
まず、カリキュラム・マネジメントの現状と課題についてであります。
左側を御覧ください。カリキュラム・マネジメントについては、前回の改訂におきまして、「社会に開かれた教育課程」の理念の下で、子供や地域の実態に即して教育課程の不断の見直しを図り、教育活動の質的向上の好循環を生み出していく観点から、考え方を総則に盛り込んでいます。
以下、カリマネの三つの側面として総則で記載されているものが、丸1、丸2、丸3であります。その上で、カリマネの手順例について、指導要領の総則の解説で記載されておりまして、御覧いただけるように、1、2、3、4、5、6という形で記載をされているところです。
これを踏まえて右側、前回改訂以降の変化であります。
前回改訂以降、まず、以下のような変化も生じる中、現行のカリマネの考え方に関わってAからCのような課題が顕在化していると考えております。まず、変化でありますが、各種特例校制度により大胆にカリキュラムを工夫する取組も一部に広がり、次期改訂に向けては「調整授業時数制度」など柔軟な教育課程編成を促進する仕組みも検討されています。また、デジタル学習基盤の活用による校務・授業運営・教職員間の連絡調整の効率化などによって余剰時間のマネジメントの余地も拡大しています。
その上で、顕在化している課題であります。
まず1つ目、「なぜカリマネが必要なのか」が十分に咀嚼されない中、現行の書きぶりが結果として「教科等横断の視点での教育課程編成」と理解され、例えば単元配列表を作ること自体が目的化している場合もあるのではないかということ。
また、これと関連して、教育課程編成の中核である「指導上の課題解消・目標実現のため、どの教科を、どのような時数で、どのような日課の下実現するか」という時間マネジメントが着目されにくく、今後の柔軟な教育課程実現の観点から課題があるのではないかと。括弧にありますように、総授業時数、授業時数の割当て、単位時間の柔軟な運用、日課表の工夫など、働き方改革とも整合しつつ、大きな変更をもたらすマネジメントが進みにくいという課題があるのではないかと考えています。
また、最後に、先の解説の部分で手順例の部分でありますけれども、現場実務においてなかなか具体化が難しいのではないかという指摘もあると考えています。こうした課題を踏まえた方向性と論点がピンクの部分でお示ししております。今次改訂の検討と並行して、総則・評価特別部会において、以下のような観点を重視して整理してはどうかと考えています。
まず丸1、「何のために(目的)」、「どのように(手段)」行われることが期待されるのかを具体的に示すということ。
丸2、教育課程を核として学校運営の諸要素をつなげ、学校が直面する指導上の課題の解消という具体的成果につなげつつ、学校教育目標の実現に迫るという実際的な視点を重視するということであります。
丸3、調整授業時数制度等の柔軟な教育課程の仕組みの活用により、何が可能になるのかということを具体的に示すということであります。
そして丸4、過度な負担を避ける視点も重視するということで、表形式化・デジタル化による効果、生成AIを含むデジタルツールの活用の可能性を含めて、こういったことも重視すべきではないかと考えております。
最後に、丸1から丸4を重視した考え方の整理によって、全ての教師が当事者となり、カリマネが教師にとって意義を感じられる日常の取組となる可能性について追記をすべきではないかと考えているところでございます。
この後については、現行の指導要領の具体の記載でありますとか手順についてお示ししているところでございます。
最後に、補足資料についてでありますけれども、先ほど前半に御説明いたしました主体的な社会参画に関わる教育につきましてでありますが、触れました内容に、例えばこども基本法の関連の規定でありますとか、あるいは当事者意識の状況でありますとか、あるいは投票率の状況、あるいはルール化に関わった経験があると投票率が高いといったような調査。さらには、先ほど御紹介いたしました具体の取組例について、こちらで1枚ずつより分かりやすくお示ししておりますので、これらの資料についてもぜひ御参照いただければと考えております。
事務局からは説明は以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
議題2に関わる議論に先駆けて、続きまして、参考資料6、文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議審議まとめにつきましても御説明をお願いしたいと思います。その理由についてお話をいたしますが、本特別部会では、中核的な概念を中心とした学習指導要領の一層の構造化、パフォーマンス評価などを含む多様な学習評価の在り方、そして、学びに向かう力、人間性の要素の一つとしての「初発の思考や行動を起こす力、好奇心」の位置づけなどについて御議論いただいたところでございます。昨年12月に取りまとめられました文化芸術教育の充実・改善に向けた検討会議の審議まとめでは、これらの議論とも整合する形でおまとめいただいておりますので、今後の議論の参考として御報告、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀内学校芸術教育室長】 ありがとうございます。文化庁参事官(芸術文化担当)付学校芸術教育室長の堀内と申します。音楽、図工、美術、書道等の芸術系教科につきましては、平成30年に文部科学省から文化庁に業務移管されておりまして、現在、文化庁で担当しております。文化芸術基本計画(第2期)に基づき、文化庁において、今後の文化芸術の教育の在り方について有識者会議を令和5年に設置し、昨年の12月にその取りまとめをいただきました。本日は、この取りまとめの概要資料である参考資料6-1に基づき、御説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、1枚目のところを御覧いただきたいと思います。第1章の「文化芸術教育を取り巻く環境の変化」というところです。
1の「社会の構造的変化」のところに丸が三つございます。
まず、丸1「社会経済の変化の中で求められる文化芸術」として、文化芸術は、人々の生活の礎となり、日常に彩りと潤いを与えるとともに、豊かな人間性を涵養し、創造性、感性を育むとしており、このようなことに関連する資質・能力を育成する文化芸術教育の果たしてきた役割は大きいということを最初に確認いただいたところです。
それから、丸2「デジタル化がもたらす社会の構造的変化」とは、社会の誰もがICTの活用によりまして創造性を発揮し未来を創り出すことができる、創造性が開かれた時代となり、そうした時代に即した学びの在り方が求められるということです。
それから、丸3「GIGAスクール構想を踏まえ大きく変わる学びの環境」とは、1人1台端末の整備により、空間的・時間的制約を乗り越えながら子供たちの創造性の発揮ができるようになったということ、また、個別最適な学びや協働的な学びの展開が可能になったということ、こういったことにより、学びの転換が進みつつあるといったことです。
報告書の最初において、こうした社会の構造的変化における現状について、確認がされたということです。
2枚目を御覧いただきたいと思います。第2章の「文化芸術教育の今後の方向性」というところになります。
丸1、「文化芸術教育とこれからの学習指導要領の在り方」に関しまして、芸術系教科の特色として、問いやテーマ、答えを自分でつくり出していく学習であり、これから先の不確実な社会の中でこそ一層重要であるということが指摘されたところです。
また、文化芸術教育におきましては、右上のところを御覧いただきたいと思いますが、丸2、「個別性・即興性・創発性のある学びとしての文化芸術教育」として、三つの学びがこれからの学校教育で重要であるということを指摘されたところです。具体的には、個別性の高い学びとして、子供たちの特性や関心に応じて考えたり、表現したりする学び、即興性の高い学びとして、自分なりの感性を働かせて直感的に考えたり、表現したりする学び、そして、創発性のある学びとして、自分の感覚を研ぎ澄ませ、個人の発想と全く異なる次元や分野から全く異なるものを創発するイノベーションへと誘発するといった学び、こういった三つの学びが、特に、この芸術教育には重要であるということが指摘されました。
特に、三つ目の創発性のある学びということに関しましては、右下のところを御覧いただきたいと思いますが、これからの日本社会において、科学技術と人文学、社会学等の異分野を融合することにより新たなものを生み出すイノベーションということにも密接に関わる学びということであり、こうした芸術教育における学びは重要ということが指摘されたところです。
次に、三枚目を御覧いただきたいと思います。2の「文化芸術教育の充実・改善の方向性」の丸1「教育課程における文化芸術教育の充実の方向性」に黒丸が3つございます。一つ目の丸として、芸術系教科の学びは、生活や社会の中の芸術や芸術文化と豊かに関わる資質・能力の育成を目指しているということを広く国民にお伝えする必要があるということ。それから、二つ目の黒丸として、表現や鑑賞のプロセスによる創造性や資質・能力の育成をより一層重視すべきであるということ、これは、結果だけでなく、そのプロセスにおいてどのような道筋をたどりながら子供たちが答えをつくっていくのかということが大事ではないかという点です。それから、三つ目の黒丸として、子供たちが自発的な問いを立てながら学び、求められる資質・能力を育成する授業の実施が重要ということ、これらが指摘されたということです。
このようなことを踏まえ、下の「今後の検討」を御覧いただきたいと思いますが、赤字のところに記載されているような芸術系教科それぞれの見方・考え方を働かせ、生活や社会の中の芸術や芸術文化などと豊かに関わる資質・能力を育成する、こうした目標・内容をより改善していくということ。また、今回の改訂の方向性としてもお示しいただいているような目標・内容の構成への中核的な概念や方略、これらの更なる構造化ということにより、芸術系教科の学びの意味や、生活や社会との繋がりに対する更なる明確化ということについても必要ではないかということが指摘されたところです。
最後に、四枚目を御覧いただきたいと思います。
四枚目の左側中ほどの二重丸のところですが、芸術系教科において育成する資質・能力の一層重視や教育内容に関連する今後の在り方については、中央教育審議会における専門的な議論を期待とし、今後、ワーキンググループなどでも御検討いただくことを想定しております。一つ目の米印のところを御覧いただきたいと思いますが、ICTを活用した活動と身体や用具を使って具体化する活動とを往還した事例を収集する。それから、二つ目の米印ですが、芸術と他教科等を往還する教科横断的なSTEAM教育など、芸術の本質や芸術の重要性に子供たちが気付く教育の在り方を考えていくことは重要ということで、STEAM教育についても重視するということを指摘されたところです。
それから、左下のところの丸2を御覧いただきたいと思いますが、「豊かな土壌としての文化芸術体験の充実の方向性」ということに関しまして、AIなどのテクノロジーの進化の中であっても、感性を働かせることはより一層重要であるということであり、子供たちに様々な本物に実際に触れる機会を提供することが必要であるということが指摘されました。
さらに、右上のところに移っていただきますと、丸3「文化芸術教育を支える人材とリソースの多様性の方向性」ということに関しまして、地域における美術館・博物館や芸術団体等との連携を図るコーディネーターとなる文化芸術の外部人材を活用するということが重要とされたところです。それから、この下の米印のところでありますが、雅楽や歌舞伎、文楽、能楽など伝統芸能は、子供たちがその意味や価値を見いだすことができるようにすることが重要であるということ、また、マンガ、アニメ、ゲーム、映画等の授業実践の少ない分野につきましても、関係団体や大学等と連携・協力して効果的に授業を行っていくことについても指摘されたところです。
以上、御報告をさせていただきましたが、芸術系教科につきましては、創造・創作の活動が、人の感情、あるいは社会の彩りなどと相互作用の上に成り立っていくというところに特徴があります。子供たちは自分と芸術との関係性を自らの中に問い、生活や社会との繋がりの中で思いもよらない表現というものが生まれることがあります。そういったところで、先ほど御紹介いたしました創発性のある学びというものが芸術においては様々なものをつなぐハブということになり得ることから、全ての子供たちにとって芸術系教科を学ぶことは重要ではないかということが、この会議の中で共通認識が図られたというところでございます。
今後の教科における専門的な議論につきましては、取りまとめで示していただきました方向性を参考としていただきながら議論を一層進めていただきたいと考えております。
説明は以上となります。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございました。
それでは、意見交換に入りたいと思いますけれども、まず、カリキュラム・マネジメントについて専門的な知見をお持ちの田村委員より御発言をいただきたいと思います。資料の御提出もいただいております。田村委員、恐縮ですが、6分程度でお願いいたします。
【田村委員】 再び失礼いたします。ここでは、カリキュラム・マネジメントに関しまして、現行の学習指導要領の下で見えてきた課題と、次期改訂に向けた展望につきましてお話しさせていただきます。以下、カリマネと略させていただきます。
私自身はカリマネの研究を四半世紀にわたって行ってきましたが、これが学習指導要領に初めて明記されたのは平成29年、30年の改訂です。これは、学校の裁量を生かし、教育課程を教職員が協働的に見直し、教育の質を向上させていくための大きな一歩でありました。一方で、現場の柔軟で創造的な実践を十分に支えるには課題も残されていると考えています。
御覧のとおり、総則では、カリマネが、教育課程の組織的・計画的な実施を通して教育の質の向上を図るものと定義されています。その上で、教育の質の向上を、教科等横断的な内容の組立て、教育課程の評価と改善、人的または物的な体制整備と改善という三側面を通して行っていくこととされていますが、ここからある種の偏りや誤解が生まれていることが現場の声から明らかになっています。
現状の課題としまして、例えば、教科等横断が過度に強調され、「カリマネといえば教科等横断」との理解が流布しています。そのため、カリマネの考え方で大切な視点である繋がりは教科等横断だけに限定されがちで、例えば、系統性という繋がりであったり、学校の学びと実生活の繋がりといったことに対して意識が及びにくいということが指摘できます。また、本部会の重要なテーマの一つである時数・時間割の工夫などがカリマネの重要な要素だということも見過ごされがちです。さらに重要な点として、子供の実態把握についての言及はあるものの、そこに重点があるように見えにくいという点も指摘されます。児童生徒の実態を適切に把握し、その実態の背景にある要因を考察すること、そして教育の目的・目標を教職員間で納得感をもって共有することなくして、「多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程」の実現は困難ではないでしょうか。ほかにも、教育課程の評価・改善の方法は多岐にわたるにもかかわらず、PDCAに偏りがちで形式化に導きやすいこと、これらが相まって現場にはカリマネをしなければならないという受け止めが強まり、カリマネの本来の意図とは逆に、教師の創造性や主体性が阻害されることさえあります。
実際、私は、ある教員研修の会場で受講者の方から「カリマネは柔軟に行っていいのでしょうか」という質問を受けたことがあり、驚きました。カリキュラム・マネジメントは本質的に柔軟なものです。Aという学校のカリマネをそのままBという学校で行うほうが無理な話です。さらには、現代的諸課題やICT活用など、様々な文脈で「○○教育のためにカリマネが必要」と論じられている文章によく出会うんですが、そこで終わってしまっていて、カリマネの言葉がまるで魔法の杖かのように使用され、カリマネの実質がブラックボックス化しているように感じることもあります。
実際、私が教職大学院で担当しているカリマネに関する授業で、現職院生に授業の開始前と終了後にカリマネに関する文章を自由記述で書いてもらって、それらを比較してもらうという取組をしていますが、次のような典型的な実態と変容が多く見られました。すなわち、授業前は、カリマネは、「管理職の仕事」、「難しい・苦手」、「子供の姿が見えない」、「新たな業務が増える」といった受け止めが多いのです。15回かけて授業を進めていく間に、自身の実践をカリマネの観点からリフレクションするということを重ね、その受け止めは、「自分たちでつくる」、「教職員全体で担う」、「子供や地域の人たちも一緒に」、「楽しい・創造的」、「やってみたい」というように変容してまいります。
実際、文部科学省の4年間にわたる委託研究に参加した自治体、学校など、創造的な実践が各地で着実に広がってもいます。その一部を紹介しますと、秋田県能代市では、小・中学校と地域が連携し、教育目標、教科間連携、地域との協働を一体的に推進、子供の学びに「知の総合化」が見られ、教員も研究を自分ごととして主体的に取り組んでいます。
福島県棚倉町では、8つの手法を開発し、各校が自校の実情に応じて柔軟に実践。保護者や地域と子供の学びの姿を共有することで、教育課程全体への波及的な効果が生まれています。
山口県では、9年間の地域連携カリキュラムを策定し、地域や教職員による熟議を重ねています。児童生徒が熟議に参加する学校もあり、学びの質の向上と業務の効率化が進んでいます。
大阪府では、各学校が実態に応じた多様なカリマネを展開。共通するのは、教職員が児童生徒を丁寧に見つめ、方向性を共有しながら、多様な方法を協働でつくり出している点です。
提案です。次期学習指導要領を検討する際、カリマネについても、トップダウン的に捉えられがちな誤解を解き、子供中心の教育課程の開発という目的意識を促し、創造的な営み、子供の学びのための営み、場合によっては子供自身も参画可能な営みへと捉え直しを促し、子供の姿が見えるようにすることを目指してはいかがでしょうか。
まとめです。現行定義の意義は大きいので、これを踏まえつつ、さらに子供理解、地域性、柔軟性、教師の専門性と同僚性、エージェンシーを基盤としたものであることを読み取りやすいよう、発展的に更新してはいかがでしょうか。教科等横断やPDCAに縛られず、そして、人的・物的資源の調達に、学校だけではなく、教育行政はもとより社会全体が共に尽力し、学校現場での教育課程づくりを柔軟で豊かにするようなカリマネの在り方を共に考えていければ幸いです。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 田村委員、ありがとうございました。
では、他の委員の皆様から御質問、御意見を伺います。Zoomの「手を挙げる」機能で手を挙げていただければと思います。いかがでしょうか。では、順番に御指名申し上げます。荒瀬委員、戸ヶ﨑委員、山本委員の順番でお願いいたします。
では、荒瀬委員、どうぞ。
【荒瀬委員】 教職員支援機構の荒瀬です。ありがとうございます。
今、田村先生のおっしゃったことも含めて、本当に大事な御指摘をいただいたと思います。田村先生のおっしゃったカリマネがちゃんと伝わっていないとか誤解を受けているとか、どうしてそうなるのかというと、これはこれまでの議論の中でも時々出ていましたけれども、新しい言葉とか新しい考え方みたいなものが、もちろんそれは必要があって出てきているわけなんですが、それがいっぱい出てきているところがあって、やっぱり整理する必要があるんじゃないかなということを思います。
例えば、さっきちょっと申し上げた3つのスクール・ポリシーですね、そういったことも、これは令和3年答申に盛り込まれているんですけれども、言い続けないとスクール・ポリシーというのも忘れられていくように思うんですよね。そういうことでいうと、キャリア教育というのは、これは答申という点でいうと2011年の答申で出ているので、大分もう薄れてきていて、キャリア教育というのがどうしてもやっぱり職業に就くための準備教育のイメージが強くなってしまっている。こういったところの整理ということをきちんとしていかないと、せっかく考えて伝えていることが共有されないということになっていっては本当にもったいないと思いますので、その辺りについても考えながら進めていく必要があるなと思った次第です。
以上です。ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。
この後、大変多くの委員の方々から挙手をいただいています。改めてお礼を申し上げたいと思いますが、18時が終了ということですので、3分程度の御発言ということを強く意識していただければと存じます。よろしくお願いいたします。
では、戸ヶ﨑委員、どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】 意見表明や表現活動等についても申し上げたいことがありましたが、時間の関係につき特活とカリマネに焦点化して意見を申し上げたいと思います。
まず日本型学校教育のお家芸である特活の意義の分かりやすい周知についてです。キャリア教育の要であり、学級経営に直結し、不登校の未然防止に寄与するなど、特活の今日的な意義は一層高まっています。今、特活がトーンダウンしているように危惧される中、先の見通せない時代において、確かな民主主義の担い手を育む基盤であることを、改めて前面に出してアピールすることが重要かなと思っています。先日、本市の学校に視察に訪れたエジプトの教育関係者は、特活の授業を見て大変感動しておりました。
2点目として、外国籍の児童や支援が必要な児童生徒が、特活の中に十分に関われていないと思われる現状があります。特別活動はインクルーシブな社会を実現していく基盤であるということを関係者が改めて認識して、誰もが活躍できる場を意図的に設計し、これまで野口委員からも出ていましたけれども、一層支援の充実と役割分担等の工夫を実装していくことが重要だと思っています。
最後に内容の精選について、例えば中学校、高校において、学級活動、ホームルーム活動の内容の項目が大変多いことが、実は話合い等の活動が深まっていかない要因になっていないかということを、今後考えていく必要があると思っています。今般の方向性を基に、特活を豊かで充実したものにするためにも、精選とセットで今後考えていくことが重要かなと思っています。
最後に、カリマネについては、現行学習指導要領から総則に盛り込まれて多くの学校が向き合ってきた一方、事務局資料や田村委員から御指摘された様々な課題があります。全ての教師がカリマネの当事者となって、人ごとや「ための」カリマネではなくて、意義をしっかりと感じて学校の日常として具体的に実施されるという意味では、まだまだ道半ば甚だしく、今回の改訂でカリマネのアップデートが必要だと思っています。
加えて、授業時数の増減や裁量的な時間の活用等を通じながら、カリマネの具体化を必然としてもたらす調整授業時数制度の創設は、具体化のイメージがつかみにくいとされてきたカリマネのアップデートにも間違いなく大きな契機をもたらすはずです。さらに、中核的な概念等による構造化、表形式、デジタル化も強力に教師の単元ベースの授業づくりを促し、全ての教師にとってカリマネが必然となることを期待しています。
すなわち、今回の改訂の大きな要素となる教育課程の柔軟化や中核的な概念等による構造化などがカリマネのアップデートと三位一体となって展開されることが今回の改訂の肝であって、決してここは単なる学習指導要領の改善にとどまる話ではないということを改めて強調しておきたいと思います。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、山本委員、どうぞ。
【山本委員】 よろしくお願いします。
今日、子供の社会参画ということを念頭に置いてお話を聞かせていただいていました。特に教育内容の充実であるとか子供の社会参画を一層推進していくという方向性については本当に賛成ですし、今もありましたけども、確かな民主主義の担い手を育み、共生社会を実現する基盤という言葉が、これからは一層大事になってくるんじゃないかと考えています。
コロナ禍の中で、学校行事や校外学習などは本当に数が少なくなってきていると思うのですが、特別活動については、前回の学びに向かう力、人間性の新たな整理をしていただいた際の、他者との対話、協働、共感や対立を乗り越える経験を通して学びを支える態度を養うということと、今回の方向性というのは非常に親和性が高いというように考えています。こうした目的や役割をしっかり明示することが特別活動の推進にも繋がると思っています。
その中でもう一つ、これは願望というか、お願いですけども、子供たちがつくる社会または参画してほしいと思っている社会は、どこからでも、またはいつからでもやり直しが利く、自分たちが何度でも作り変えていける社会だというメッセージを今回ぜひ送ってほしいと思っています。前半の議題に戻って恐縮ですが、高校教育の中で、私も指導部長で市立高校を所管していたときに感じたことは、中高一貫校ですと12歳前にもう自分の進路を選択しているということです。高校に入って気がついて、あ、やっぱりこういう方向じゃなくて違う方向だったなとか、または勉強している中で、さらに自分のやりたいことが見つかって違う方向の高校に行きたいと思ったときに、違う高校へ行くという選択肢はすごくハードルが高いということを身にしみて感じています。その際に、やっぱり子供たちに親身になって進路・将来について相談する機能であるとか、またはやり直しができる、その際に結局不登校とかオンライン高校しかないという選択肢ではなくて、他の全日高校ともマッチングができるようないろいろな選択肢があるということを実現するような研究を、ぜひ始めていただければと思っているところです。
私からは以上です。
【貞広主査】 では、秋田委員、お願いいたします。
【秋田主査代理】 ありがとうございます。私のほうからは、子供が主体的に参加することに関して4点発言をさせていただきたいと思います。
子供が学びの主人公になる学校をつくるためには、こども基本法や子供の権利について、教師も、また子供も、共に知る必要があります。しかし、校長会や指導主事のところ等で研修をしたときに「説明を受けたことありますか」と訊くと、残念ながらほとんど手が挙がりません。省庁が違うと、委員会と所管が違うとこんなにどなたも知らないんだと悲しく、理念は分かっていても、習指導要領は憲法や学校教育法と同時にこども基本法の理念に基づいているんだということをきちんと学習指導要領の総則の中に入れていただき、子供の社会参画を促進していくということ、また子供自身がそれを幼・小・中・高とつないでいくことが重要であります。それは総則とか社会科だけではなくて、道徳や特活も含めて教育をしていくということが大事です。また、先ほど荒瀬委員からもございましたキャリアプランとかライフデザインを考えていくということが、総合的な学習の時間や特別活動等も含めて自分自身で考えていくということが大事ですし、それから、ヤングケアラーやインクルージョンの取組等についてもぜひ学習指導要領の中できちっと取り上げていただきたいというのがこども家庭審議会での意見でございましたので、お伝えさせていただきたいと思います。
あわせて、例えばプレコンセプションケアという、妊娠や性に関して、子供が大人になっていくために必要な知識をきちっと身に付けていくことについて、教育をしていくことが重要ではないかというのが第1点です。
それから第2点目としては、子供の意見表明や社会参画ということが、ここにも社会科だけではなくて特活と同時に全ての教科でというということを書いてくださっているんですけれども、私はそこのところが重要だと考えています。先ほど田村委員や植阪委員からも出されましたが、私も、例えばスクール・ポリシーやカリキュラム、研究開発学校の泉大津市の小津中学校などでは生徒が教師と一緒にスクール・ポリシーやカリキュラムを対話を通してつくっていくといたことがなされています。それから2つ目としては、授業の中で、例えば今、自由進度学習がありますが、教師が課題をつくるだけではなくて、生徒が中学校で一緒に学習指導要領を読んで、学習内容部分の課題をつくるというのを宮城教育大の附属中学校で実際に見せていただいたこともあります。また、評価としてのルーブリックも大人が決めるのではなくて、それを自分たちの表現で子供たちがもう一度確認して、自己評価や総合評価が自分でできるような形で参画をしていくとか、それから、学校図書館のデザインや選書をはじめ、学校施設の改築等にも子供の意見を反映させるなどの多々の在り方があります。
また、授業研究会も教師だけが行うのではなくて、最近は、福井大学附属義務教育学校等をはじめとしても、生徒が授業直後に5分、10分意見を言った後に、その子供たちの声を基にして、子供の事実を基にして研究授業を協議するというようなことが各地で広がっています。そうした形や、また、宿題も一斉で出すのではなく、自学ノートを作るとか、それから探究レポートを子供自らがやっていくというような形で、学習場面においても、先ほどのこの資料にも書かれてはいますけれども、児童や生徒の参画を生かすような学校づくりとか授業づくりの研修がどういうふうにあったらいいのかというようなことについてくみ上げていくことが主体的・対話的で深い学びを一層広げるということを、校則のルールメイキングも極めて大事ですし、特活も大事なんですが、一番長い授業の時間の中で子供が主体的になっていくような形を考えていくことが大事だというのが第2点目でございます。
また、第3点目としては、子供の主体的な参画のために、子供の声を生かす場所とか、それを支える人が必要でございます。現在、東京都のモデル事業で、子供の居心地と生徒のメンタルヘルスの関係を西田先生を中心にしてハーバードの先生と共同研究をされていますけれども、そこで分かっているのは、例えば意見箱を設定しても、それを教師が読む場合と地域や教師以外の人が読む場合では意見箱に入る数が違うというようなことが分かっています。それから、生徒が学校のビジョンづくり等に自分たちが参画しているという割合が高いほど、高校生のメンタルヘルスがよくなるというようなことが分かっています。学校参画ということが、単に子供がつくるというだけじゃなくて、子供自身のメンタルヘルス、鬱を下げるとか積極的な感覚があるというようなことで重要なのではないかと考えます。この意味でも、地域に開かれて、教師だけではなくて、ソーシャルワーカーとかスクールカウンセラーとか子供の声を聴く人が様々な形でそれをまたつないで、教育活動に生かしていくということが重要だと思います。
それから、子供の声に関して、4点目でございます。意見表明というのは、はきはきと積極的に意見が言える子だけではなく、声が出しにくい子供や悩んでいる子供たちの声をきちんと聞いて、それを生かしていくということが重要だと考えています。知的なことだけではなくて、心身のバランスや、それから、例えばLGBTQの問題で今回調査の結果が出ていますが、思春期にあったLGBTQの半数がやはり自殺念慮を持っているというような、そういう悩みがあったりします。また、それから小児科学会で出ているのでは、今、幼児期や小学校低学年から「ちょっとぽっちゃりしてかわいいね」とか言われることが、女子のやせ願望という、「やせていないのに御飯を食べてはいけない」というダイエット志向などを生んでいるというような現象が生まれています。体の知識についてもやっぱり正確に子供が知っていくというようなことが、声なき声の子供たちの悩みをきちんと入れていくということにおいて必要なのではないかと思います。もう一度、インクルージョン的な視点を入れて子供の参画ということを考えていただくことが大事だというのが、子供の声についてです。
最後に5点目として、文化芸術でありますけれども、幼児期から、アートということが創発性であり、多様な個性の発揮、できる、分かるではなくて美的なことを感じるというような、やっぱりそれによって生き方を自分で考えられるということは非常に重要であります。例えば専門家としての、高松市の芸術士派遣事業というのは既に15年間継続的に行われていますけれども、特別支援学校等にも今入っていて、多様な子供たちがアートによって救われたり、もう一つの私を発見するというようなところがアートの重要なところの一つだと思いますので、ぜひそうしたところも踏み込んでいただけるといいなと思います。
ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
大変恐縮ですけれども、大変多くの委員の方に手を挙げていただいていて、恐らくこのまま御発言いただくと18時に終了しません。主査の強権発動で大変申し訳ありませんが、今日初めて御発言いただく方を優先的に御指名申し上げまして、2回目の方につきましてはメールで意見をお寄せいただき、議事録に反映していただくという形でひとまず進めさせていただければと思います。
この後、小見委員、石井委員、松原委員、古賀委員、堀田委員、澤田委員、神野委員の順番で御指名をさせていただきたいと思います。2回目の方、本当は議事2のほうが強調したかったんだというお気持ちをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますけれども、申し訳ございません。
では、小見委員、どうぞ。
【小見委員】 ありがとうございます。みらいずworksの小見まいこです。提出資料を作成しましたので、こちらを御覧ください。子供の主体的な社会参画に関わる教育について絞って発言をします。
子供の主体的な社会参画意識や力を育んでいくためには、特別活動での経験やほかの教育活動を基盤としながらも、やはり実社会で子供の意見が反映されたり、社会参画を実際にする体験を積み重ねることが必要だと考えています。
事例として示した魚沼市立小出中学校では、学校運営協議会委員と全校生徒が地域の魅力や課題、地域活性化のために自分たちがしたいこと、できることというのを毎年話し合っています。その後、実際に子供たちが考えたプロジェクトを実行していきます。中学生の出した案による主体的な活動ですが、プロジェクトの実施には、運営協議会委員や地域学校協働本部のボランティアの方々がコーディネートや伴走役を担います。結果的に、コミュニティ・スクールの中で育てたい力として共通に認識をしていた生徒の自己肯定感が高まり、特にCSポートフォリオの指標である「自分はやればできる人間だと思う」という数値が上昇しました。発達段階に応じてではありますが、中学生、高校生になると、意見表明だけでなく実際に行動を起こすことで、やればできる、自分が動けば変えられるという実感を持つことが必要ではないでしょうか。
コミュニティ・スクールだけでなく、こども基本法の施行以来、行政や地域づくりにおいて大人が子供の声を聞く機会をつくる場面は増えています。ただし、聞きっ放し、言いっ放しにしているという状況も各地で起きています。表明した意見を事業や計画に反映させたり、それができなくても、子供たちになぜ反映できないのかという理由をフィードバックするなどして、真摯に向き合うように留意する必要があると考えています。そうしないと、かえって、声を上げても意味がない、変わらないと思ってしまう子供たちもいると感じています。
一方、子供たちが自分たちの考えで何かが変わった、もしくは、失敗したけれど、やってみたことで社会や大人が身近に感じられたという実感を持つことが、子供の社会参画意識を高めていきます。その社会参画のサポートは、既に子供たちの実態や姿が見えていて関係性もあるコミュニティ・スクールや地域学校協働活動が担っていくということが一番近道ですし、全国的にもそういった事例は小・中・高校でたくさん散見されています。田村委員がおっしゃった地域資源を生かしたカリマネとも通ずると考えています。
大切なのは、学校だけが子供たちの社会参画を担うということではないという前提に立って、コミュニティ・スクールなどの対話や協議の機会において、目標やビジョンの共有と、その実現に向けた役割分担を地域と家庭と一緒にやっていくことだと考えています。
CSの質的な向上と、そのために、管理職やミドルリーダーの先生方にもコミュニティ・スクールを機能させるためのリーダーシップですとか組織間調整能力などの力の育成が必要ですし、加えて、秋田委員もおっしゃっていましたけれども、教師を含めた周りの大人たちが、こども家庭庁が進めている意見表明ファシリテーターや子供の権利について学ぶなど、周りの大人たちもそういった姿勢や考え方を学び、身に付けていくということが必要ではないかと考えています。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、石井委員、お願いいたします。
【石井委員】 すみません、前半のところは少し遅れて参加になってしまって、発言はできなかったんですけども、前半のところも絡めて少しお話しさせていただけたらと思います。
それこそ先ほどの高校の改革もそうなんですけども、結局、忘れてはいけないのは、次期学習指導要領改訂に向けてということで言うと、現行の学習指導の趣旨を再確認することがまず原点になるだろうということです。そうしますと、結局それは、社会に開かれた教育課程あるいは資質・能力ベース、その根っこにあるのはコンピテンシーベースって考え方がありますけども、その場合のコンピテンシーといったものも、要は、単なる労働者とか人材ということではなくて、世の中に出ていく上での一人前をどう育てていけばいいのか。これを義務教育段階、さらには高校も含めて、いわゆる公教育においてどういうふうに一人前を育てていくのか。つまり、学校から社会への移行の問題が根本にあるというところですね。
そういった観点からしますと、この後半の話題である主体的な社会参画に関わる教育、これはまさに一番本丸の部分であろうと思います。特に高校であれば、18歳で主権者となっていくということでいいますと、ちゃんと主権者を育てているのかどうか、ここが厳しく問われてくると思うんですね。そういった観点から、まさにカリマネといったものも、これは教科課程経営ではなくて教育課程経営なので、まさに目指す生徒像あるいは子供像に向けてどういうふうに教科、それから総合、特活、トータルに成長保障を行っていくのか、ここが重要かと思います。
ですので、その成長ということでいうと、人材、さらには生活者として、あるいは市民として、一人の人物として育てていく。だから、成熟した人間像というんですかね、それを設定し、そこに向けて、何を、どういう経験を学校・公教育において保障していくのかということが大事かなと思います。
そういう観点からしますと、今回、この主体的な社会参画ということで言うと、まさに民主主義すること、あるいは特に特活に関して言えば自治することをどう経験していくのか。確かにルールメイキングって非常に重要なんですけども、ただつくるということではなくて、そこから自分に返ってくるわけですよね。自治する経験というのは、決めて終わりでなく、実行や調整も含めて、最後、自分たちで引き受けていくわけです。ですから、民主主義するとはどういうことなのか、ここをしっかりと考えていく必要がありますし、先ほどの小見委員のお話にもあったように、最終的に社会参画ということであれば、総合とかで地域創生型の総合といったものがかなり広がっていると。つまり、自分たちが働きかけることで社会が変わるかもという、そういった手応えを得ると。そういう面においてはオーセンティックな学びではないですが、先ほどの文化芸術の話でも出てきましたけども、やっぱり本物経験、特にそれは本物からただ学ぶということではなくて、本物とともに社会に参画する、こういったことが非常に重要になってくるのかなと思います。特に中・高においては、社会を本物とともに見つめていく。それで、そこに少しでも参画する。そういったオーセンティックな学びといったものがより重要になってくるかと思いますし、一方で、教科においては、メディアリテラシーとかもそうですけれども、前にも申しましたが、今は情報社会であるという以上に情動社会であると。ファクトチェックであるとかそういったものが非常に重要になってくるというところですよね。また、社会科を学んだけども、民主主義とは何ぞやということが分からないということも問題がある。
それでいうと、中核的な概念云々もそうですけれども、改めて、単に小・中、義務教育から高校になったときに内容が細かくなるということではなくて、例えば市民改革とかと言っても細かい内容が増えるだけで、でも、一向に民主主義あるいは市民とは何ぞやとかいうことが分からないという状況ではちょっと具合悪いだろうと思います。ですから、先ほど話題になったように二極化もあるというときに、改めて高校教育において、細かい知識ということではなくて、中核的な概念を軸にしながら、幹の部分は何なんだろうと。市民として子供たちを社会に送り出していくときに必要になってくる認識であるとか、まさに本質的な理解とは何なのかというふうなことを考えていく。逆にそこが明確であれば、例えば関数という内容にしても、細かいグラフを描いて問題を解くことはできなくても、関数的な指数関数の感覚とか、そういったものを基に様々な世の中の事象を数理モデルで解釈することはできるわけですよね。ですから、改めて、大きな中核的な概念があるからこそ、細かいパーツに惑わされずに、目の前の子供たちに必要な数学とは何ぞや、目の前の子供たちに必要な生物学とは何ぞやというふうな形で考えていくこともできるのかなと思ったりします。
ですから、そういう観点で、カリキュラム・マネジメントに関しても、改めて原点は教育課程経営で、それとともに、まさに教科書で教えるとか学ぶということからしても時間いじりといったものが一番中核になってくるかと思いますので、改めて、そういったこれまでの議論と併せて、カリキュラム・マネジメントということの意味を再確認することが重要かなと思います。
すみません、長くなりましたが、以上です。
【貞広主査】 では、松原委員、どうぞ。
【松原委員】 私からは、子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善について少しお話をします。
子供の社会参画に関わる教育内容については、自治体や学校ごとにこれまでも様々な取組が創意工夫の下行われてきております。また、こども基本法の施行や各自治体の子供の権利に関する条例の制定などに合わせてということだと思いますけれども、子供の権利に関わるような学習をする機会や、子供の意見を学校生活や教育活動等に反映させるような取組が増えてきていると感じています。こうした取組は、これまでは自治体や学校ごとに手探りで試行錯誤しながら進めてきた面がありましたけれども、子供の主体的な社会参画に関わる内容が整理され、具体的な実践例が示されることは大変参考になりますし、ありがたいことだと受け止めています。
加えて、全てを教育活動の中だけで完結させるのではなく、先ほども実社会ということがありましたけれども、学校運営協議会や地方公共団体での議論等も受皿として例示・検討していただいているのはよい方向だと感じました。今回はこれまでの議論に比べて比較的内容が具体的に示されており、分かりやすいと感じましたけれども、今後の専門部会等での議論の中で改めて育成すべき資質・能力や中核的な概念を発達段階に応じて整理することで、さらに明確にしていただけることを期待しております。
私からは以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、古賀委員、どうぞ。
【古賀委員】 子供の主体的な社会参画に関して、幼児教育の立場から申し上げます。前回改訂時、社会に開かれた教育課程という概念ができまして、京都市立幼稚園では地域での連携・協働を深める取組の研究を進めてきました。子供たちが種から育てた苗を地域の人に配ったり、小学生に買いに来てもらったりして、自分たちが育てた苗を園の立札とともに地域の人が植えてくださったり、小学校の合同授業のときに小学校で自分たちの苗が元気に育っているのを見たりというようなことをします。時には育てた豆で豆御飯パーティーを地域の人を招いてやったりとか、そのときに知り合った地域の竹を育てているおじさんに七夕の笹を分けてもらったりと、地域との関わりを続けてきて連携・協働が深まるということで、幼児の自己有用感とか自己有能感を高める活動の展開があります。
そこで重要なことは、子供が名前のある具体的な人を思い浮かべて考えるという相手意識を持てることや、地域の人との継続的な関係が多様な活動の中で生かされること、つまり一過性のイベント化しないということ、自分たちも地域の一員なのだということを喜びをもって感じられるというようなことがあるだろうと思います。そういったポイントが踏まえられることで、子供は乳幼児期から地域と関わって地域社会の一員として育つことができると思います。また、こうした取組によって、今後子供が少なくなる社会において、地域リソースを積極的に教育に取り入れていくということの意味は大きいと思います。
そうしたときに、今回の改善の方向性と具体的論点案で示されている内容では、社会参画を、ルールのつくり手側になることや意見表明をすることを中心として考えられている印象がありますけれども、社会参画というのはもっと広く、先ほどから様々な委員の意見にもありましたが、もっと広くいろいろにあるだろうと思います。幼児期からの地域との連携・協働を進め、継続的な関係形成をし、その中で様々な子供にとって見通しを持てるような意味ある活動をしていくことで、子供が地域の中で自己有用感を感じ、自分は地域の一員であると知り、地域への愛着を持って育つ、そういったことが、その後、子供が主体的に地域に参画していくベースになるのではないかと思います。その育ちの基盤があってこそ、自分たちは、また地域ではどうあるべきかというルールが、地域への愛着を持って建設的に考えられる市民性というものが育まれるのではないかと思います。
全ての教科等を通じてとありますので、この中に生活科とか含まれるのかなというふうにも思いますけれども、社会科、公民科の前に、生活科や幼児教育の保育内容、人間関係及び保育内容・環境において、地域での活動というものをどういった教育課程の繋がりの中で扱うか、子供が相手意識を持って主体的な継続的な社会参画をしていくことを幼児教育からの教育課程の繋がりの中でどう考えるのかという検討が必要なのではないかと思いました。
以上です。
【貞広主査】 では、堀田委員、どうぞ。
【堀田主査代理】 堀田でございます。私はちょっと角度を変えてDXの話をします。
今日は高等学校の教育課程の在り方の検討が進んだわけですけども、高校生に必要な、あるいは共通的に重要なことは何かみたいな話で考えますと、我が国では社会全体が人口減少で、テクノロジーによる支援が一定程度ないと恐らく社会が立ち行かないという現実があるということと、また、その結果、人材流動性が高くなり、学び続ける必要があり、産業構造もどんどん変化していると。つまり、社会のDXにどういうふうに生徒が対応していくかという未来像を彼ら自身に描いてもらう必要があるんだということだと思います。
また、主体的な社会参画で言えば、SNSで選挙の流れが大きく変わるみたいなことを私どもは最近体験しておりますし、また、先ほど秋田委員がおっしゃった性や健康の誤解についてもSNSの影響は非常に大きい。メディアに対するリテラシーというのはより一層重要なことと思いますし、このことを情報に関する学びだけにとどまらない形で教育課程に反映させることが重要かと思います。
また、小・中学校でも探究的な学びの重点化という方向に全体的には向かっていると思いますし、これは社会の要請だとも思います。
また、義務教育段階でのGIGAスクール構想というのは、ある意味で学びとか授業とかということをDXするということだと思います。つまり、単にデジタル化するということではなくて、デジタルによって社会が変わっていく、私たちの生き方も変わっていくということを、学びが変わっていくということで先行体験しているんだというふうに考えます。
カリキュラム・マネジメントについても、弾力的に運用すればするほど、マネジメントにICTを使わないということは恐らくないと思いますし、この機会にDXすることで、いろいろうまくいくようになることもあります。
PDCAサイクルのことについて先ほど田村委員がおっしゃいましたけども、少しずつ改善しながら新しい方向に向かっていくときには、プランを立てられる状況にないんですね。やってみないと分からないことのほうが多いので、そういう意味ではOODAとかいう言い方も最近は多いですけども、PDCAサイクルを前提とするというやり方の限界が来ていると思います。すなわち、私が言いたいのは、教員自体がもっともっとDXを体験すべきではないかということでありまして、そのことは校務DXともつながっていると思いますし、働き方改革とも大いに関係していると思います。従来の紙の書類をPDFにしただけみたいな、結局ハンコは押すのねみたいな、それで郵送なのねみたいなことを私たちもしばしば体験するわけですけど、そういうことをとにかく大いに改善するということを、基礎自治体もそうですけど、都道府県も改善していただく必要があります。また、ルールが細か過ぎて、それに従うことが仕事みたいになっているということを大いに見直すということがないと、恐らく教育課程の弾力化で先生方に余白ができないと思います。ここは教育課程の審議の場ですけども、それを支える社会基盤というか、労働環境をしっかりと見直すということを同時にやっていくということですね。
もう一つ加えて言えば、そういう社会に出ていく教員を教員養成段階で育てている。その教員養成の段階のデジタル学習基盤がどうなのかみたいなことですね。これ、先日、別の会議で秋田委員がおっしゃったことですけども、教員養成の段階のデジタル学習基盤の設置や活用についてもっと真剣に考えないとまずいだろうと私は考えていると、そういうDXのお話でした。
以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございます。
この後、澤田委員、神野委員の順番で御発言をお願いしますが、2週目の方にもぜひ御発言をいただきたいと思いますので、ちょっと時間を延ばしまして、ただし、3分程度だとかなり延びてしまうので、1分半か2分程度でお願いいたします。そして、恐らく前川委員と植阪委員が手を挙げていたのを取り消してくださっていたかと思いますので、もしよろしければ、こちらのお二方にも御発言をいただければと思います。また、私が見逃している方がいらっしゃいましたら、手を挙げておいていただければと思います。大変申し訳ありませんでした。
では、澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】 先生の幸せ研究所の澤田です。
今回の事務局案は、「多様性を包摂する社会の主権者とは」ということを知識として習得するだけではなくて、実践するための場に学校がなっていくということだと理解しましたので、非常に重要なことであり、歓迎します。その上で幾つかお伝えします。
まず、行事についてです。学校現場では、先生が用意した内容を立派な姿でできることをもって「充実したよい行事だった」としていることをとてもよく見かけます。つい先日も見たばかりです。一方で、これで民主主義の担い手としての力がついたのだろうかという疑問も先生たちからは聞きます。もしかしたら、言われたとおりに動ける力を育てるにとどまっていないかという疑問です。でも、子供がつくるものにしてこれまでよりも見栄えが悪くなっては、誰かから批判を受けるんじゃないかとか、何か大変なことになってしまうんじゃないかという葛藤もあるのが現実です。子供が主体になれば、大人主導に比べれば拙さは当然想定されますが、だとしても、子供の創造する活動が、それこそが大事なんだとしっかり強調していただき、先生たちが子供主体の活動に自信を持てる工夫を期待します。
次に、今後の審議の中で子供の声を改めて聞いていただきたいということです。具体的には、今後、関連ワーキングで詳細を検討する際などに子供を呼んで声を聞いていただきたいと思います。例えば、4ページの取組例丸1にある荘内中学校は、昨年見に行ったんですが、たまたま生徒会の生徒が小6の子たちへ学校説明で、「うちの学校では主体的に学校をつくれるんだよ」と自分の言葉で語っていたんです。校長先生は日頃から「学校を生徒に渡します」とまで言っているそうです。今日、ほかの委員の方々からも実践例は複数紹介されていましたので、そうした学校の子供の声も聞いてみたいなと思いました。子供主体の学びの実践の現場や社会の心配を解消するためにも、そして子供の声を大切にするためにも、子供の声を聞くということを検討いただきたくお願いします。
次に、心理的安全性についてです。子供が参画して納得解を生み出していくという学びのためには、心理的安全性は欠かせません。ただ、これは特活に限らず、学習全体でも常に意識するべきことです。なので、総則部分においても心理的安全性を高める生徒指導の必要性の記載も要ると考えます。また、先ほど秋田委員の御発言にもありましたが、子供主体についての現場の理解を助けるためにも、こども基本法や生徒指導提要も教育活動全体に係ることとして総則などで取り上げていただきたいと考えます。
次に、カリマネについてです。子供主体の教育活動にしようとしたら、先生達が考える時間や話し合う時間が今までよりもより多く必要になります。「教科の時数確保に追われ過ぎずに、もっとじっくり取れたらいいのに」という声は、少なくない先生たちから現状聞いています。柔軟な教育課程が実現していけば、裁量的な時間の中でそうした時間が増やせることと思います。一方で、教科横断や合科的な授業の際には、例えば合わせた2教科ともの学習が、2教科とも標準時数より短い時間で効果的に完結するということもあり得ます。こういう場合に、両方の教科それぞれから裁量的な時間に回すことができれば、それはとてもニーズがあります。こうしたことが日常のカリマネとしてできるようにしていただけたらと考えます。
最後に、すみません、高校入試について短く1点だけ。入試の多様化について非常に重要なことで、着実に進みやすくするためには、通知や法令の見直しも含めてしっかり議論して、積極的に取り組んでいただきたいと思いました。
以上です。
【貞広主査】 では、神野委員、お願いいたします。
【神野委員】 よろしくお願いします。私たち東明館という学校の中において、カタリバさんがやられている「ルールメイキングプロジェクト」という枠組みに参画させていただいたりして、校則の改革というのをこれまでもやってきました。その中で我々が経験したことを皆さんにシェアさせていただければと思うんですが、まず、やはり主体性というのを育てるという文脈の中において、「自主性」という言葉と「主体性」という言葉の明確な違いを教員集団が理解しておかなければいけないということがありました。というのは、自主性というものは他人が決めたことを自ら率先してやる力、これが自主性であって、主体性というものは、自らやる、やらないも含めて自己判断する力、これを主体性としたときに、この2つの言葉の意味するものをごっちゃにしている教員の方々はやっぱりうちの学校でもめちゃめちゃ多かったです。
主体性を育むためには、むしろ他人が決めたことを自ら率先してやる部分はどこなのかということを明確に子供たちに伝えないと、子供たち自体が空気を読んじゃうんですね、「決めていいよ」と言ったとしても。我々、じゃあどこの部分で自主性を求めるという話をしたかというと、法律、命に関わること、あと人権。この3つは、君たち、まだ投票権も参政権もない中で言えば、大人が勝手に決めたことかもしれないけれども、君たちに自主性を求めなきゃいけないし、君たちはこのことを本当に重く受け止めてくれないと、社会に出てから大変なことになってしまうんだと。これが我々教員が子供たちに対して重く指導するときになります。一方で、それ以外のことに関しては、子供たち、君たちが一人一人が決めていいよと。ただ、全会一致で持ってきてくれと。誰かその変更に対して不安な子がいるんだったら、ちゃんと対話しながらやっていこうと。そんなような声かけをしながら校則というものの改革をしていきました。
この校則改革ということをやっていく上で、教員から「校則がなくなると子供たちに指導できなくなる」とかという声が上がったりするんですね。そういうことではありませんよと。子供たちが殴り合ったり誹謗中傷したりするときって、これ、校則云々じゃなく法律違反ですからと。命に関わることなんていうことは当然我々は止めなければいけないし、人権に関わること、差別に関わることって当然そうなんですと。このような線引き等々をしっかりと現場に伝えていきながら、子供の意見の表明、社会参画ということを促していくのが大切なのかなと思っております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、さらに2回目の御発言をいただける委員の方を順次御指名申し上げたいと思います。溝上委員、どうぞ。
【溝上委員】 ありがとうございます。溝上です。
ちょっと大きな話をしたいと思うんですけれども、カリキュラム・マネジメントというのは、田村先生がおっしゃったように、例えば教科等横断とか、PDCAサイクルとか、あるいは地域との連携とか、そういう手段として書かれていることが目的化することではなくて、学校教育目標が全ての基点であると。これを実現していくためにカリキュラム・マネジメントがあるというのは、常に押さえておかないといけないポイントだと思います。
そういう意味では、戸ヶ﨑先生がおっしゃったように、私はカリキュラム・マネジメントという新しい言葉がどうだという話じゃなくて、教育改革・改善していくときの全ての基点は、学校がどういう目標を立てて子供たちを育てていくか、もうここに全てがあると、そういうふうに言ってもいいと思っているんですね。高校は多様化とかいろいろ機能別がありますから、スクール・ミッション、スクール・ポリシー等を掲げておりますし、それは進めていかないといけない。小学校は、そういうものはちょっとトーンは落ちますけれども、ただ、学習指導要領が定めている様々な教科、それから観点別等の評価、そういうことをスタンダードに行うだけではなくて、やっぱり教育の柔軟化を求めていくわけですから、学校が地域特性やこれまで大事にしてきたことを受けて力を入れて育てたい、育成すべき資質・能力ですね、こういったことを取り上げていくためにも、学校が目指すべき教育目標というのが小学校、中学校等でも立たないといけない、これぐらいの言葉だと思うんですね。
そういうことを考えていったら、カリキュラム・マネジメントというのは、私は、学校教育の営みを構造化していく一番大きな構造的言葉だと思うんですね。本当は、これがすごくいろんな意味でうまくいっていれば、細かい話は要らないかもしれない。だけれども、実際、構造改革、この学習指導要領改訂というのは構造改革というのを非常に特徴を出して謳っておりますけれども、構造改革というのは、いろんな構造のパーツがうまくいったら全体としては理想とするところに向かいますが、パーツがうまく機能しなかったら全体総崩れってなるような、こういう特徴を持っているんですね。そういうところが今回うまいこと押さえられているのかということが、ちょっと私としては気になっています。
例えば、大学というのは、ディプロマ・ポリシーという形で3つの方針、構造改革を進めたんですけれども、結局、学校、大学の全体の方向性を定めるだけでは、授業とかカリキュラム、大きいところは定めましたけど、授業はなかなか変わらない。学生の指導というものにそれが反映されない。こういうことがありますので、なかなか学校教育から全体の構造がうまく運営に繋がるということがないわけですけども、でも、小・中学校を見ていても、学校教育目標は意外と立っているんですが、アンケートをもって子供たちの学びは実現してと簡単に示されてしまいますので、細かいところの学び等になかなか向かわないという問題があります。
指導要領改訂に併せて、私がちょっと気になっているところを2つだけ具体的に言いますと、ちょっと大風呂敷を広げるところはあるかもしれませんけれども、全体の学校教育目標はとても大事だと思います。一方でしっかり進めていかないといけないんですけれども、そのパーツ、パーツがちゃんと崩れないように押さえていかないといけない。そういうところで、今、何か崩れるんじゃないかと思っているところが2つあるわけですね。1つは、先ほど今村委員が言いましたけれども、探究ですね。社会に開かれた教育課程ということを資質・能力ベースでずっと謳ってきた、この探究の位置が、中核的な概念・方略指導をベースにした教科等、構造化していく。これ、とても大事なので、私、ここに賛成している立場ですけれども、ここで教科等の力が前に出過ぎて、せっかくこれまでつくってきた総合探究が後退していくという現場の声というのがもう既に出ていますね。それが落ちないような最終的な構造的な推進ですね、ちゃんと残りの審議で出てくるのかということが私はとても心配です。出てきてほしい。
もう一つは、やっぱり主体性評価です。加点にすることは、私は本来の趣旨にのっとってとてもいいと思っています。だけれども、その加点が単なる現場の自由裁量みたいな意味で受け取られるのであれば、これは多分、せっかく30年やってきた関心・意欲・態度からの主体性施策は相当後退すると思います。そういった一パーツで構造が崩れないように進めてほしい。カリキュラム・マネジメントを単なるカリマネのポイントとして捉えるのではなくて、この教育改革全体の構造改革と、そこに繋がる言葉として捉えてほしいというのが私の主張のポイントです。
以上です。
【貞広主査】 では、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】 前回の学習指導要領の総則で、今使われているものの中に、教科横断等で育成すべき基盤となる資質・能力のところで、言語能力と情報活用能力と問題発見・解決能力が設定されたと思うんですけど、ここに社会参画力を入れられないものかというのを一度御検討いただけないかなと思って発言させていただきます。こども基本法ができたことで、子供たちの意見表明をする機会というのは自治体ごとにも学校ごとにもかなり増えてきていると思うんですけど、私たちもかなりやってきているほうなんですが、かなり同じメンバーが参加するという状況は、要は、権利を与えても、その意欲が育っていないので、表明する力が育っていないので、大体そういったところに来る子は限られる。学校によっても、自治体が「こういうのをやります」と呼びかけたら、「生徒会を出しておきますので」みたいな感じになって、それを大人たちが手を入れまくった原稿を子供議会で読んで、メディアが取り上げて、うちの自治体はすごい子供の意見表明が担保されているとかという、そういうシーンはいろんなところで見る状況です。
そんな中で、意見を言いたいとか、自分はこれが課題だからこれを伝えたいとかということは、日常的なルールメイキングとかも大事だと思ってやっているんですけど、やっぱり教科の学びの中でどういうふうに育成していけるかというところが重要だと思っていて、それを何とか教科横断的に育成していく基盤に位置づけられないかということ。これを検討しないと、本当の意味で、もちろん特活は大切なんですけれども、特活は教科じゃないので、まだまだ軽視されたままいってしまうんじゃないかと思うと、やっぱり重要視するならば資質・能力のところに設定すべきなんじゃないかと思いました。
以上です。
【貞広主査】 なるほど。
では、内田委員、どうぞ。
【内田委員】 ありがとうございます。まず、社会参画意識の育成ですけれども、物事の決定に生徒が関与できる、自ら提案できる、様々な経験を実際に実現できるための工夫というのはすごく大切だと思います。生徒自身が物事をつくり出すことができるという意識を育てることを今回まとめていただいたというところで、すごく意味があるということがあります。いろんな自治体で政策提案のコンテストであるとか、例えば青年会議所についても政策コンテストとか実施されていますけれども、こういったことが、日常、子供たちが提案することで当たり前になって、ニュースにならないような状態になることが理想だと思いました。
それから、カリキュラム・マネジメントなんですけれども、各学校において、それぞれ教科指導、それから探究も含めてですが、強みを生かし、弱みをカバーアップするということが全ての教員・生徒にとって重要なことで、今までは「隣は何する人ぞ」というような意識で、管理職に任せておけばいい、あるいは先生がやっているんだからというところだったかと思うんですけれども、そうならない学びの組立てとか、学びを深めるための子供の関与というところについても、我々は配慮していかなければいけないと改めて感じたところです。
それから、芸術の分野なのですが、ちょうど3月にこの教育課程特別部会にオンラインで参加したときに、ボストンに生徒を連れて行っておりました。MITで建築学の先生と生徒の対話をしていたわけですけど、向こうの大学では非常に芸術と建築工学というところで意識を持って指導しているというところで、生徒は非常に関心を深めたところです。その構造的な美しさというところも含めて、芸術がより意識された指導、教科横断的な意識を持っていくことが改めて大切だと感じたところです。
ありがとうございました。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】 子供の社会参画について意見をしたいと思います。今回の御提案、大賛成しています。ありがとうございます。やっぱり学校という場をつくる主体者は教職員のみではないということ、子供たち自身も自らの学校を誰にとっても安全・安心な場にしていく担い手であるというメッセージも含まれているのではないのかなと思います。そういう学校での日常的な経験が、インクルーシブな社会や共生社会をつくっていくことにつながっていくのではないかと思います。
その際に進めていく上でのポイントが、先ほど秋田委員からもあった子供の権利と、あと石井委員からあった民主主義じゃないかと思います。秋田委員の御発言どおり、子供の権利について、子供自身も教職員も、そして保護者も、やはり知る機会が必要なのではないかと思います。総則に記載することをぜひ検討していただきたいです。
また、石井委員からもあった民主主義するってどういうことなのかということを改めて考えていかないといけない。民主主義は多数決じゃないですが、やっぱりまだ多数決だと思っている子供は多いと思います。少数派の子供たちも、言葉を使って意見表明をしない子も、その子らしいやり方で参加して合意形成をしていく。先ほど今村委員からもあったように、意欲のある子だけを対象とするのではない。意見表明権というと、本当に言葉にちゃんと意見を表明できないといけないって捉えがちですが、英語でright to be heard(聞かれる権利がある)とも言います。このような視点を先生たちも子供たちにも理解する機会があることが重要だと思います。
また、前回御提案したように、今の社会というのはマジョリティーを中心につくられている、力のある人を中心につくられているということ。だから、いろんな障壁と格差があるんだよという社会モデルの視点を踏まえた上で、そういった声にならない声も含めて、みんなにとって安心・安全な場をつくっていくためにはどうしていったらいいんだろうという納得解を探っていく、そういう経験を子供たちが日常的にできるということが重要だと思います。
先生に「他の子どもたちから合理的配慮はずるいって言われたら、どうしたらいいですか」と言われます。なぜ「ずるい」って言われるのか。障害のある子だけが「自分はこういうふうに学びたい」って言う機会が合理的配慮として保障されているからだと思うんですね。本当は全ての子供たちが、自分はもっとこうやって学びたいとか、ここに障壁があるとか、もっとこういう授業をしてほしいとかそういうことを本当は言っていいはずなのに、そういう機会がない。だから「ずるい」という言葉が出てくるのではないのかなと思います。
今、戸田市さんなどと社会モデルを踏まえて、学校における普通について子供たちと考える授業を実践していますが、その実践では、全ての子供たちが、「実は自分は、ここ、学びづらかった」とか「実は学校のここ、しんどかった」ということを言ってくれます。例えば授業、「自分はちょっと45分、実はきついんだ。本当は15分単位がいいな」とか、あと、「実は発表するときに私はめちゃくちゃ緊張するから、事前に動画で録画したいな」とか、特別支援対象の子だけじゃなくて、みんな結構言ってくれます。もちろん実現できないこともありますが、まずはそれが聞かれるということ。子どもたちの声を踏まえて、考慮して、じゃあ何ができそうかなって一緒に考えられる、そういう機会が全ての子供にあれば、「ずるい」という言葉は出てこないんじゃないのかなと思います。
そのためにも、やっぱり先生も声が聞かれる。先生も、意見を言ったら、ちゃんとそれが反映されるんだという、それが考慮されるんだという、やっぱりそういう経験がないと、なかなか先生もこういう取組ってやろうと思えないと思うんですよね。だからこそ、今回ももちろんパブコメとかあると思いますが、先生たち自身にも、この学習指導要領をつくっている一人なんだよということをもっともっとメッセージとして発信していきたいですし、そういう機会もつくっていきたいなと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
続きまして、先ほどは気を遣わせてしまって申し訳ありませんでした。前川委員、お願いいたします。
【前川委員】 ありがとうございます。
特別活動についてです。
主権者教育というものが全ての教科活動を通して行うものであるということを前提にしながらですが、本日の事務局資料の「特別活動における改善」の中に、「『生成AI時代の主権者』として、確かな民主主義の担い手を育み、共生社会を実現する基盤」という言葉があります。生成AIが虚偽の情報を大量に発信し、人間の潜在意識に働きかけたり、世論を巧妙に操作する事例も出てきている中、仮に何が事実かとか、誰が信頼できるのかとか、そういったことすら分からなくなるとすれば、民主主義の基盤が瓦解し、社会的な合意形成とか納得解の形成が困難になります。また、社会的分断を助長するおそれさえあります。そのような意味で、「生成AI時代の主権者」という言葉には極めて重い意味があろうかというふうに受け止めました。
また、このような時代だからこそ、生徒たちが答えのない問いや答えが一つではない問いに向き合うときに、情報モラルやメディアリテラシーも含め、情報活用能力の抜本的向上が重要になります。具体的には、大量の、そしてフィルターバブルやエコーチェンバーなどにより偏った情報やAIが作成した虚偽の情報と向き合う場面がより一層生じやすくなる中で、そうしたデジタル化の負の側面への理解、情報の信頼性を判断するためのファクトチェック、あえて複数の情報源に当たる習慣、性急に、また安易に結論を出さずに熟考する等のネガティブケイパビリティーの重要性が一層高まると考えます。主体的・実践的に民主主義の担い手を育んでいく基盤を提供する領域として、特別活動の位置づけを明確化するという方向性について賛成いたします。その上で、「生成AI時代の主権者」を育んでいくという意味において、全ての教科活動において育むという観点と、5月12日の情報活用能力の議論との十分な一体性を持って議論していくということをぜひお願いしたいと思います。
もう一つ、すみません、文化芸術教育の充実についてです。芸術科目のみならず、文化ということを考えれば、日本にはそれぞれの地域に根づいた生活文化というすばらしいものがあります。主権者教育の一つに持続可能な地域社会の形成があるということを考えれば、これを扱えるのは特別活動であろうと思います。そういった意味で、特別活動との関連も文化芸術教育の中で検討すべきではないかと思います。
カリキュラム・マネジメントについては、多くの委員が私と同じような考えをおっしゃっていただきましたので、今回は遠慮させていただきます。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、植阪委員、どうぞ。
【植阪委員】 すみません、大変御迷惑をおかけします。よろしくお願いします。
オランダで何校かに訪問していて、子供たちに「自分たちで学校をつくっているという感覚がある?」と問いますと、彼らははっきり「ある」というふうに言いました。じゃあどんなことをしているかということを考えると、例えば、「学校に行きにくい子のために、空いている部屋をソファーとかぬいぐるみとかいっぱいにして避難できる部屋をつくる」とか、「ジェンダーレストイレをつくる」とか、あと「学校は暗いから壁にペインティングをする」のように、学校という箱そのものも変えているようなところをたくさん見かけました。彼らは、自分で社会をつくれるという感覚が多分あるんだと思います。その結果として投票率も80%を超えています。
日本でいろんな実践、澤田先生とかのお話を聞くと、日本でもそういうふうに学校を自分でつくっているんだという感覚が持てている学校があると伺ってとてもうれしく思いました。ぜひ日本でも一度、「自分で学校をつくっているという感覚がありますか」と聞いてみるのは大事なのではないかと思っています。もしかしたらほとんどが「ない」と言うかもしれないんですが、それを事実として受け止めて、どういうふうに変えていくかを考えることは重要でしょう。私自身が生徒であった時、良い学校にいたとは思っていますが、学校は箱のようなもので、自分は変えられないと思っておりました。部活や自分の裁量のある狭いところは変えられるけれど、学校全体を変えられるとは思っていなかったのです。それでも、社会を変えるという力につなげていくためには、学校全体を変えられるんだという感覚を持ってほしいと感じています。そこで、まず、そういうものを定点観測していくということは、現状を知る上では必要なのかなと思ったりしています。
評価というか、現在地を知るという意味で把握するということについて言えば、もう一つ、今日の議論で創造性の話がありましたが、最近、海外の先生によく聞かれるのが、「OECDの創造性の調査、日本は参加しなかったですよね?あれはなぜ?」と多くの先生に聞かれます。実は世界から見ると、「最もクリエーティブな国はどこ?」と言うと、トップクラスに日本は入ります。一方で、「自分は創造的か」という質問に関して、日本は世界最下位レベルです。このギャップがあるというのがあって、なかなかそこに現状を知るのが辛いということがあるかもしれません。ただ、どういう評価が創造性として大事なのか。OECDによる評価がベストではないから、どうしていくのか、それも含めて検討していくことは必要なことだと思っています。今現状どこにあるのかということをあまり恐れず知るということはいいのではないかと思っています。よろしくお願いいたします。
以上です。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
カリマネならぬ私の会議マネジメントがまずくて、一部気を遣わせてしまったりして大変申し訳ありませんでした。でも、皆様に御意見をいただきまして、本当にとてもよかったと思っております。時間が延びてしまったことはおわび申し上げたいと思います。ありがとうございました。
それでは最後に、次回の予定につきまして事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 次回は8月29日(金曜日)15時半から18時を予定しておりますが、正式には、後日、御連絡を差し上げます。
【貞広主査】 では、以上をもちまして閉会といたします。時間が少し延びてしまいまして申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(代表)