令和7年6月16日(月曜日)15時30分~18時00分
WEB会議と対面による会議を組み合わせた方式
【貞広主査】 皆様、こんにちは。それでは、第9回教育課程企画特別部会を開催いたします。
本日は、余白の創出を通じた教育の質向上(これまでの議論を踏まえた整理)について御審議いただきます。進行資料にありますとおり、事務局の御説明の後、横浜市立獅子ヶ谷小学校、横浜市教育委員会より御発表をいただきます。その後、5分間休憩を挟みまして、意見交換の時間といたします。
それでは、早速でございますが、事務局より本日の配付資料と論点資料につきまして御説明をお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 失礼いたします。
まずは、本日の配付資料について補足をいたします。先月の本特別部会におきまして、6月までの日程をお示ししておりました。参考資料3において、第11回の特別部会の会議までの開催日程とこれまでの審議の状況についてまとめておりますので、御参照ください。
続きまして、本日の議題に関する論点資料について御説明申し上げます。
本日は、余白の創出を通じた教育の質の向上ということで、これまでの議論を振り返り、余白の創出という観点から、これまでの議論を踏まえた整理をお示ししております。
まず最初は、諮問文の「余白の創出」の関連の部分の抜粋でございます。
柔軟な教育課程編成を促進する観点から、例えば、各教科等の標準授業時数に係る柔軟性、あるいは、単位授業時間や年間の最低授業時数の示し方などについてどのように考えるか。そして、その際、これらが教師に「余白」を生み、教育の質の向上に資する可能性をどのように考えるかという記載がございました。
また、2つ目でありますが、教育課程の実施に伴う教師の負担や負担感がどのような構造により生じているのか。学習指導要領や解説、教科書、入学者選抜の影響、指導書も含めた授業づくりの実態等を全体として捉えた上で、教育課程の実施に伴う過度な負担や負担感が生じにくいやり方をどのように考えるか。
4つ目のパラグラフでございます。教科書の内容が充実し分量が増加した一方、網羅的に指導すべきとの考えが根強く存在し、負担や負担感を生んでいるとの指摘がある中で、新たな学びにふさわしい教科書の内容や分量、デジタル教科書等の在り方をどのように考えるか。こうした記載がございました。
こうしたことを踏まえ、今回、教育課程の実施に伴い教師が感じる負担・負担感のイメージをこのようにお示ししております。
まず前提として、丸1、授業時数や指導内容を含めた教育課程の在り方は、子供たちに求められる資質・能力や学習状況などを総合的に考慮した上で、全体として教育の質の向上につながるよう検討すべきもの。
丸2、この一環として、過度な負担・負担感が生じにくい在り方を追求することや、教師と子供の双方に余白を創出し、豊かな教育活動につなげることが必要です。
そのため、具体の検討に際しては、負担・負担感がどのような構造で生じているのか、授業を取り巻く環境全体を俯瞰した分析が必要と考えております。
具体には、教師の方の吹き出しで、せりふのようにまとめております。
まず、右上から見ていきたいと思います。右上、明日の授業はとりあえず指導書を使って何とかしよう。経験が少ないので、ベテラン教師の授業を見たり、もっと研修や教材研究が必要だけれども、時間がないなといったようなこと。
そして、時計回りに見てまいりますけれども、学習指導要領は、どんな資質・能力を身に付けるべきか、もっと分かりやすく、解説や教科書とのリンクも分かるように見れないかなといったコメントをお示ししています。
その間には、現在の若手教員が増加している教員構成でありますとか、学習指導要領が30年前と比較しますと、文字数で申し上げますと、資質・能力ベースの記述を伴う増加ではありますが、2倍の文字数になっていることなどを記載しております。
吹き出しに戻りますと、3つ目、学習指導要領を読んでも授業づくりのイメージは必ずしも湧かないし、教科書をしっかり教えてあげればいいか、でもそうすると終わらないなといったようなこと。こんなことを書かせていただいております。
今度左側は、主に教務主任や管理職の方のイメージでありますけれども、左上に行きまして、余白のある時間割にするために週28コマにしたいけれども、29コマやらなきゃいけないというふうにも聞くし、どうすればいいんだろうかといったこと。
その下、各教科の時数をもっと弾力的に使って、教科間で時数をやりくりしたり、柔軟で余白のある教育課程にしたいけれども、どうすればいいかなといったこと。
また、保護者の要望等もあり、高校入試との関係でも、教科書を網羅的に指導しなければいけないかなといったような中学校先生の声をイメージしております。こうした全体像を捉えて考えていきたいと思います。
なお、右下にございますように、教育課程以外の総合的な勤務環境整備も着実に進めることが大前提でございますし、加えて、余白を使いこなすことができる教師の力量が重要でございます。教師の養成や研修の在り方については、別途教員養成部会で御検討いただいているところでございます。
ここから、各学校の教育課程の状況について概観していきたいと考えております。
まず、総授業時数の状況でありますけれども、令和6年度の計画段階については、小学校、中学校ともにこの2年間で、1,086単位時間以上の学校については大幅に減少しているものの、依然として20%弱、計画段階で存在しているという実態がございます。
また、こちらは令和5年度の実績でありますけれども、同様の傾向が見られ、令和5年度段階で、1割弱が1,086単位時間を上回っている状況がございます。
そして、標準を大幅に上回る時数の使い道の想定でありますが、1,086単位時間以上の教育課程を編成している学校のうち、標準授業時数を上回る部分の具体的な使い方を想定していないとされている学校が約25%ほど存在しています。こうした場合は、真に必要な時間かを検討し、改善を図る必要があるのではないかと考えているところです。小学校、中学校ともに同様の傾向でございます。
また、週当たり授業時数の考え方と実態でございますけれども、1ポツのところに書いてありますのは、考え方として、国が定める年間の標準授業時数の1,015単位時間を35週にわたって実施することを前提に、週当たり29単位時間の授業を行う必要があるとの認識が学校には根強いのではないかといったことを整理しております。
その上で、現在の実態が下のほうにまとめてありますけれども、現在の実態といたしましては、小・中学校いずれも週当たり授業時数を28コマ以下で設定する学校の割合が増えており、特に小学校については、2割以上がそうした実態になっているところでございますけれども、依然29コマが一番多い状況になっているという状況でございます。
また、こうしたことに関連いたしまして、週当たり授業時数の考え方についての指導要領・解説における記載でございます。
先ほど申し上げましたように、指導要領の総則におきましては、年35週以上にわたって行うよう計画するという旨が記載されており、週29コマやるべきとの認識の一因になっているのではないかと指摘をいただいております。
また、その下の解説の部分では35週以上となっているわけでございますけれども、実態としては、40週で授業が実施されている状況がございますけれども、上から4行目にございますように、各教科等の授業時数を35週にわたって平均的に配当するほかといった記述がございます。こうした記述が学校の認識に影響を与えているのではないかといった御指摘もいただいているところでございます。
また、2ポツ、「不測の事態」で標準授業時数を下回る場合の取扱いについてでありますけれども、この場合については、従前から文部科学省といたしましては、不測の事態により当該標準授業時数を下回った場合には、それのみをもって法令違反ではないというふうにお示しをしてきておりますけれども、下から2行目でありますけれども、不測の事態により当該授業時数を下回った場合、その確保に努力することは当然であるがとしつつ、下回ったことのみをもって反するものではないといったような記載ぶりになっている状況でございます。
また、現行の教育課程の下で週当たり授業時数を工夫している事例でありますけれども、例えば、上の渋谷区の事例では、総授業時数の計画が標準授業時数となるように教育委員会が御助言をされて、28単位時間に設定した上で、水曜を4コマ、それ以外の曜日を6コマに設定されています。
そうした中で、3つ目のポツにございますように、6コマの日でも、様々な工夫によって、下校時刻を15時に設定しておられます。そのため、水曜の4コマの日には、最終下校時刻を13時に設定されて、午後を教員研修やスキルアップの時間に御活用されています。
左下の八王子市の事例でありますけれども、八王子市教育委員会として、週当たりの授業時数は28単位時間を上限とするという方針を示されています。その上で、実態としても、全ての小・中学校で現在週当たり授業時数を27または28単位とする教育課程編成を実現されているといった取組が進んでいます。
こちらの資料、第4回特別部会でもお示しいたしました。単位授業時間については、現行制度でも柔軟に運用することが可能でありまして、例えば、左側である横浜市の小学校において、午前中は40分5コマで実施されているといった状況がございます。本日は、横浜市の小学校、また、横浜市教育委員会に御協力いただきまして、事例の御発表もいただく予定でございます。
また、こちらも第4回特別部会でお示ししました研究開発学校の取組であります。目黒区や滋賀県愛荘町におきまして、子供の主体性を伸ばす教育活動を展開し、教員の研修や授業準備にも時間を使うということを、45分のコマを40分にすることで実現しているといったものでございます。
今回新しく用意いたしましたのは、目黒区の研究開発学校の日課表をお示しさせていただきました。
こちらでは、1単位時間を5分短縮して生み出した時間を活用し、そのうちの85コマについては、子供の主体性を伸ばす学習活動のための時間、うち42コマは、教員の研修や授業研究のための時間に使用しています。ピンクが85コマのほうで、青が研修や授業研究のための時間ですので、放課後の時間とも組合せでございますけれども、かなり余白のある様子を御覧いただけると思っております。
なお、こちらは日課表でございますので、個々の教師の持ちコマについては、教科担任制による空きコマも実際にはございます。こうした日課表の状況を御覧いただけると思っております。
また、こちらも第5回特別部会でお示しした資料でございますけれども、1単位時間を短縮して生み出された時間を用いて、柔軟に学びを選択できる時間、学習の素地を高める時間、あるいは、教師の研修や授業改善のための時間に充てるという取組について、本年度から大幅に地域、学校を増加いたしまして、管理機関9、学校数45で実施しております。中には戸田市や横浜市の学校でもお取組をいただいております。
そして、こちら、第4回でお示ししました柔軟な教育課程の論点イメージでございます。こちらについては、既に御案内のことかと思っております。
ここから学習指導要領・教科書・入試の関係について御説明をさせていただきます。
まず、学習指導要領、教科書、指導書の関係を見ていくということでありますけれども、ポイントといたしましては、学習指導要領も解説も、取り扱う事実的知識については網羅的に指定はしていないということでございます。
これは例として、中学校学習指導要領の歴史的分野、鎌倉時代の部分でございますけれども、赤字の部分を御覧いただければと思います。
武家政治の成立とユーラシアの交流という部分でございますけれども、鎌倉幕府の成立、元寇などを基に、武士が台頭して主従の結び付きや武力を背景とした武家政権が成立し、その支配が広まったこと、元寇がユーラシアの変化の中で起こったことを理解することということが示されております。
それを踏まえて、解説が下の部分でございますけれども、解説では、例えば、下線が引いてございますけれども、「東アジアにおける交流」などに着目して課題を設定し、モンゴル帝国の拡大の様子を背景に考察したりできるようにすることが考えられる。これらの考察の結果を表現する活動などを工夫してといったように記載されておりまして、事実的知識を網羅的に指定しているというものはないという状況でございます。
今の御説明した部分に対応する検定教科書の部分がこちらでありまして、学習指導要領の該当部分に対応して10ページ程度が確保され、多くの用語や発展的な要素を盛り込んでいただいているという状況でございます。
これはそのうちの2ページの部分でございますけれども、コラム的な資料でありましたり、資料の読み取りや協働的な活動など多様な学習活動の例示、あるいは振り返りなど、充実した記載をいただいております。
また、こちらが対応する指導書の部分でございますけれども、時間の配分や板書例、配当時間などが丁寧に記載されております。真ん中の部分でありますとか、あるいは、左端の部分とかを御覧いただくと分かりますが、年間を通じた配当時間、あるいは各単元や教科書のページごとの時間などを丁寧に記載いただいているところでございます。例えば、左端でありますけれども、第1学年であれば、月ごとにどのような時数を配当するか記載されております。
そして、下の部分でありますけれども、ここでは、それぞれの授業内での時間配分でありますとか、あるいは板書例を記載いただいているといったようなものになっているというのが教師用指導書の現状でございます。
その上で、教科書のページ数の推移でございますけれども、小・中学校について、約50年前と比較し、小学校4教科・中学校5教科の標準授業時数は減少しているものの、教科書ページ数は小学校で約3倍、中学校で約1.5倍に増加しております。
また、高等学校についても、対23年度比で約125%になっているということでございます。
こうした中、教科書の分量や教科書観に関する指摘であります。
2ポツの部分でございますけれども、こちらは中教審のデジタル教科書推進ワーキンググループの中間まとめ(令和7年2月)のものでございます。特別部会の堀田主査代理がこちらのワーキンググループの主査をお務めになられておりますけれども、この中では、上のパラグラフの4行目の黄色い部分からでございますが、このように記載されております。
教科書を網羅的に教えることに縛られるのではなく、教科書に加えて学習場面に応じて適切な学習材を選択して使用するという意識の改革に向けた取組を行うとともに、次期指導要領の検討を踏まえつつ、教科書においては多様な学習材を組み合わせやすくする連携性の向上や内容・分量の精選を行うことが望ましい。
例えば、次期指導要領に向けた中教審への諮問等において問題意識が示されているように、生成AI等が発展する中、個別の知識の集積にとどまらない概念としての習得や深い意味理解を促す指導が重要となっており、学びに有益な情報を教科書において網羅するのではなく、教科書は教科等の主要な概念に関する理解をつかみやすいものとしつつ、教科書で得た理解をさらに広げたり深めたりしていくための多様な情報を得る手段として教材を活用していくといった役割分担が考えられる。こうした観点から教科書の内容・構成の見直しを行っていくとすれば、必然的に教科書の記述の精選が必要となると考えられる。また、こうしたことを検討していく上では、次期学習指導要領の検討において、柔軟な教育課程の編成の在り方についても検討課題となっていることにも留意する必要がある。このように既に記載いただいているところでございます。
また、民間の調査結果では、「教科書通りに教える」と回答されている先生方が、興味関心に応じた授業、答えのない課題に取り組む授業というもの、上から4つ目の部分でございますけれども、こうした回答より多くなっているという状況がございます。
また、高校入試についてでございます。高校入試では、事実的知識の記憶を問う問題が引き続き出題されているとともに、一方で、思考力・判断力・表現力を問う問題も出題いただいております。
これは一例でございますけれども、例えば、左側を御覧いただきますと、上の問題は、794年に平安京に遷都した天皇は誰かという、特定の年代に対応した人物名の記憶を問う問題になっています。
一方で、下のほうは、群馬県の5つの都市から横浜までの区間が鉄道につながるようになったということ、これがなぜかということを問う問題であります。その際に共通して盛んだった産業と当時の輸出の特徴に触れるべきということでありまして、これらが主要な理解というものを問う形での出題になっているところでございます。
また、記述問題ではなくても、知識に関する設問であっても、概念としての理解を問う問題も選択式で出題されることがございます。
この問題では、基本的な事実的知識については、問題のリード文の中で材料として提供しつつ、主君が家臣に土地の支配を認めることによって、家臣が主君に従う関係で成り立っていた社会はどれですかということで、事実的知識の記憶のみを問うのではなくて、政治体制に関する本質的な理解を問う出題にしているところでございます。
ここまでを踏まえまして、現状と課題であります。
まず、右側の部分で御説明していきます。まず、授業時数の適正化についてでありますけれども、これまで標準授業時数につきましては、左側に若干ございますように、1,086という大幅に標準を上回る場合には、見直しを前提に点検を行うということを要請してまいりましたが、計画段階で過度な予備時数が設定されやすい要因として、以下のような指摘をいただいております。
丸1、不測の事態があっても標準を下回らないようにしたいとの認識が強いこと。
丸2、教科書を網羅的に教える必要があるとの認識、指導が終わらないではないかとの懸念が強いこと。
丸3、状況に応じて年度途中に計画段階で設定した授業時数を見直すという発想が一般的ではないこと。
そして、2ポツ、授業時数の平準化でございます。最低授業週数35週を根拠に、週29コマ実施するとの習慣が根強いということでございますけれども、近年、一人当たりの持ちコマの減少にも資する28コマへの平準化が進んでいる状況でございますけれども、そのイメージが持ちにくいというお声もいただいております。
3ポツ、「厚い教科書を全て教える」からの脱却でありますけれども、格段に充実した教科書を網羅的に指導すべきとの考え方が根強く、内容・分量の多さが、授業進度の速さや過剰な授業時数の設定に繋がっているとの指摘をいただいております。また、教科書や指導書のとおりに授業を行うとの認識がやや強過ぎ、創意工夫や力量向上を阻んでいる側面があるとの御指摘をいただいております。
4ポツ、構造化・表形式化・デジタル化と余白の創出との関係であります。既に、これについては、第2回特別部会で御議論いただいておりますけれども、これらの改善が指導要領自体のスリム化につながることに加えて、どのように教師・子供双方の余白の創出につながるかの可能性も議論する必要があるのではないかということ。
5ポツ、高校入学者選抜の在り方の改善について。これについては、左側にございますように、平成5年の通知で、中学校の教育課程の趣旨に即した改善を求めておりますところ、その質的改善については一定の進捗をいただいておりますものの、個別の知識を単純に問う出題もある中、出題全体のバランスを踏まえた改善を検討する必要があるのではないか。また、入試を背景にした保護者の懸念や要望等も背景となり、教科書の内容を網羅的に指導する必要があるとの認識を強めているとの指摘もいただいております。
こうしたことを踏まえて、方向性と具体的な論点(案)でございます。
1ポツ、授業時数の見直しのさらなる促進についてであります。
これについては、丸1、改訂を待たずに行うべきこととして、昨年度に引き続き、令和7年度も、標準を大幅に上回る1,086単位時間以上の改善状況等を調査した上で、さらなる改善方針を検討してはどうか。その際、標準授業時数を基本として特段の支障なく教育課程を実施している事例も出てきていることを踏まえてはどうかということを考えております。
丸2、その際、小1から3は標準時数が1,015より少なく設定されておりますけれども、小4以降を念頭に置いた「1,086以上」以外の見直し水準が現在設定されておりませんので、改善に当たってそこが課題になっているという御指摘もいただいておりますので、見直し水準の設定を小1から3について検討してはどうかということ。
2ポツ、週当たりコマ数の平準化の促進等についてです。
これも改訂を待たずに行うべきこととして、週当たり授業時数を年間を通じて平準化すれば、教師一人当たりの持ちコマ数の減少、余白の創出につながるのではないか。そのような取組を促進できるよう、各学校が参考にしやすい教育課程編成の具体例を示してはどうか。
丸2、その上で、総則の「年間35週以上」との規定が「週29コマの授業を行う必要がある」との認識につながっているとの指摘も踏まえ、授業時数の平準化を一層促進するために、全国の授業日数の実態を踏まえた示し方を検討してはどうか。その際、併せて年間を通じて平均的に各教科等の授業時数を配当することを前提とする趣旨の解説も改めまして、特定期間に集中して授業を実施できることを一層明確化してはどうかと考えております。
この特定期間に集中してという部分でございますけれども、例えば、中学校の技術について、現在、免許保有状況について改善に取り組んでいるところではございますけれども、現状において、各自治体で、例えば、前期はA校、後期はB校で実施するといったような取組を模索されているということも聞いておりますので、こうしたことがしやすくなるような形はないかというふうに考えております。
丸3、関連して、年度初めの始業日を後ろ倒し、特に多忙な時期に余白を生み出す取組も出てきております。また、人事異動の内示時期を早めることによって教師に余白を生み出している自治体もございます。こうしたことを含めて、好事例等を提供してはどうかということでございます。
3ポツであります。標準授業時数の弾力化による計画時数の適正化。
第3回の特別部会では、既に調整授業時数というものを他教科等や「裁量的な時間」に充当可能という調整授業時数制度について御議論いただいたところでございます。
これを踏まえまして、丸1、この調整授業時数制度の可能性として、仮に特定の教科等が標準授業時数を下回る見込みとなった場合でも、年度途中に他教科や「裁量的な時間」から当該教科等に時数を充てることも念頭に置いて制度設計をしてはどうか。また、その際の時数計算等の負担については、校務支援システムの機能やクラウドツールを活用して大幅に軽減ができるのではないか。この点、本日、堀田主査代理から資料も御提出いただいておりますので、後ほど補足をいただけるものと思っております。
丸2、丸1を踏まえれば、調整授業時数制度の下では、「不測の事態で標準を下回る」「進度が遅れ時数が足りなくなる」といったところの懸念は相当程度解消可能であり、年度当初の計画段階では真に必要な時数を設定しつつ、年度途中に柔軟なマネジメントを行うことを基本に据えられるのではないかと考えております。
次のページ、4ポツであります。
丸1、構造化・表形式化・デジタル化を「三位一体」で進めることで、記載の冗長・複雑さの改善によるスリム化につながるとともに、ユーザビリティが上がり、指導要領の参照や指導案等の作成がよりしやすくなるのではないか。
丸2、構造化に当たっては、各教科等の本質的理解(中核的な概念等)の獲得に重点を置き、各学校段階や教科等の特性を踏まえつつ、そのために必要な学習内容を検討したり、必要に応じた精選を行ったりしてはどうかと考えております。この点、内容削減自体を目的とする趣旨ではございませんので、念のため御留意ください。
5ポツ、構造化を踏まえた教科書等の在り方であります。
丸1、上記4ポツのような学習指導要領の構造化の考え方を踏まえ、教科書の内容は教科等の中核的な概念等をつかみやすいものに精選するとともに、教科書で得た理解を広げたり深めたりするための多様な情報を得る手段としてその他の教材を活用するという役割分担を考えてはどうか。
丸2、調整授業時数制度の下で、一定程度、各教科の標準授業時数を下回ることを可能とする方向で検討する場合、教科書の分量、教師用指導書での指導計画の示し方も、こうした仕組みと整合性を持って検討するべきではないかと考えております。なお、第3回の特別部会では、現行の授業時数特例制度、1割が上限になっておりますけれども、これよりも時数の調整幅を拡大する方向で御意見をいただいていたと考えております。
丸3、こうした教科書の改善による網羅主義の脱却を図りつつ、子供が学習を主体的に自己調整できるような学習活動を一層推進していくこと、教師がそうした指導ができるということも併せて重要であります。こうしたことを併せることによって、概念としての習得や深い意味理解を促し、学ぶ意味、社会やキャリアとのつながりを意識した指導のみならず、各教科における探究的な学びの充実にもつなげることができるのではないか。
6ポツ、高等学校入学者選抜の改革支援でありますけれども、上記のような指導要領や教科書等の改善の実効性を担保する観点も踏まえ、高校入学者選抜の学力検査や調査書の在り方や質的改善、スクールポリシーに応じた多様な選抜を一層進める上で、どのような取組が考えられるか。この点は、本日の議論も踏まえつつ、別途検討の予定でございます。
これを踏まえて、これらの1から6の方策に総合的に取り組むことで、教師と児童生徒双方に「余白」を生み出し豊かな学びにつなげると同時に、過度な負担が生じにくい在り方を実現できるのではないか。
特に、授業時数や週当たりコマ数についての1、2、6も含めてでございますけれども、現行の下で改善が相当程度可能な事項でもございます。本審議と並行して積極的な取組を促すことによって、次期学習指導要領の実施も一層円滑に進むのではないかと考えております。
ここからは補足イメージでございます。
こちらは、現行の教育課程の下で、具体的に週当たり時数を減らす工夫例、週28コマにする工夫例でございます。
丸1から御覧いただきますと、総授業日数200日(40週)という、実態より僅かに少ない程度に設定した上で、丸3、丸4にございますように、標準以外の、学級活動以外の、例えば、学校行事等の特別活動の時数、あるいは、いわゆる欠課・欠時と言われるような、始業式・終業式等の午後などの時数を、実態も踏まえまして、引くということをしますと、一番下にございますように、赤字の部分でございますが、40週で行う場合、これを28コマで行うと、1,120コマということになります。ここから先ほど申し上げました標準以外のコマ数を引くと、引く60と引く45をすると、1,015コマになるといった計算ができるわけでございます。
これは参考例でございますが、右側は、さらに中学校で週当たり27コマとする場合のシミュレーションもしております。中学校の場合は、小学校と比べますと、学校行事等の特別活動が少ない状況にございますので、そういったことも踏まえて、計算の例を示しております。
下の箱でございますように、必要に応じて、授業日数、学校行事等、欠課の時数等を柔軟に見直して、調整することで、現行の教育課程の下でも、標準授業時数ベースで各教科等の時間を1,015コマ程度として、週28コマでの編成が可能であります。
なお、下にございますように、以上はあくまで一例でございます。具体の適切な水準を示すものではございませんので、実情を踏まえて適宜調整をいただくべきものでございます。
また、こうした取組を進めていく上では、保護者や地域住民といった社会の理解の醸成も重要と考えております。
こちらが補足イメージの2つ目でございます。先ほど御説明した内容の一部を整理したものでございます。標準授業時数の弾力化と時数精選の関係であります。
右の1,086単位時間と書いてあるバーの辺り、右の部分から御覧いただきますと、例えば、標準を大幅に上回っている状況があれば、これはまた指導体制に見合うよう改善を促進していくということ。その上で、本来は1,015単位時間という赤い線がありますけれども、計画段階で真に必要な時数を見極めて設定することができればよりよいわけでございますけれども、懸念1、懸念2とありますように、1つ目の心配としては、やはり不測の事態等があってもなお、それで直ちに法令違反ではないとしつつも、標準を下回らないようにという懸念をお持ちなのではないかといったこと。そういうことについては、先ほど申し上げたように、年度途中のカリキュラム・マネジメントで特定の教科等の標準を下回る見込みであっても、他の教科や「裁量的な時間」から時数を充てるといったことも柔軟に行い、必要な時間の確保を可能とするといったこと。
そして、懸念の2つ目でありますけれども、時数を確保しないと教科書が終わらないという懸念、こういった認識を変えるとともに、教科書の重点化・分量の精選ということでございます。
こうした「2つの懸念」を解消できれば、不測の事態への対応を含めて、年度途中の状況に応じたカリキュラム・マネジメントがしやすくなり、年度当初の計画段階で真に必要な授業時数の設定が容易になるのではないかということを考えております。
最後のページでございます。最後に、指導要領の構造化・柔軟な教育課程を契機とした教科書等の改善でございますけれども、丸1の学習指導要領の構造化、丸2の標準授業時数の弾力化については、既に御議論をいただいてきたことでございます。
こうした今後の議論の方向性を踏まえますと、灰色の矢印にございますように、中核的な等をつかみやすい方向で改善し、裁量的な余地を増やす方向で改善(各教科の標準を下回る時数で指導可能)と書いてありますが、こうした方向で教科書の重点化、内容の精選を進めるということでございます。
こうしたことを踏まえれば、現在の在り方、ここに学習に必要な情報の大半を網羅、多数の用語・キーワード等の豊富な事実的知識やその確認問題、教科書の指導で授業が完結とありますが、こうしたことについて、中核的な概念等の獲得に資する内容に重点化・内容を必要に応じて精選していくということ。これによって、教科書「を」教えるから、教科書「で」教えるという改善の方向性をお示ししております。また、その他の教材との役割分担についてもお示ししているところでございます。
最後に、論点資料補足資料でございますけれども、こちらでは様々な参考資料を掲載させていただいております。こちらに今日御紹介した28コマの具体的な編成例をお示しておりますけれども、週当たり授業時数や総授業時数、時間外在校等時間に着目した幾つかの事例をお示ししておりますので、御参照いただければと思います。
また、新年度の始業日設定の工夫事例についても、石川県加賀市、熊本県熊本市の事例を具体的に掲載しておりまして、準備期間が確保できるような取組を御紹介しております。
事務局からは以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
続きまして、先ほどの事務局からの御説明でも一部言及ございましたけれども、週当たり授業時数や日課の見直し等による余白を生み、質の高い教育の実現に向けて取り組まれている横浜市立獅子ヶ谷小学校と横浜市教育委員会より御発表をお願いいたします。
【横浜市立獅子ヶ谷小学校(大塩)】 皆さん、こんにちは。横浜市獅子ヶ谷小学校長の大塩と申します。このたびはこうした機会を頂戴し、感謝申し上げます。
それでは、早速説明させていただきます。
まず、本校についての説明です。本校は、横浜市の北部、鶴見区の山手側にあり、住宅と自然と町工場に囲まれた学校です。全校児童数は、4月、718名でスタートいたしました。一般級22クラス、個別支援級クラス、国際教室3クラスとなっています。一昨年度は盛山文部科学大臣にも御視察いただきました。また、リーディングDXの指定も、昨年度までいただいておりました。
獅子ヶ谷小学校では、40分授業を令和3年度から全面的に実施いたしました。日課表を大幅に工夫・再編成するだけでなく、これまで行ってきた会議や打合せなどについて、これらが持つ意味や本質、目的についても問い直し、精選を行い、水曜日にはノー残業デーを設定するなど、15時以降の教職員自身の裁量ある時間を確保できるようにいたしました。
このスライドは令和6年度の例ですが、授業日数206日、6年生は202日で、1単位時間45分に必要な総時数を掛け算いたしまして、それを分けまして、それを40で割って、40分の授業のコマ数を出しています。
45分授業では年間1,015コマだったものが、40分授業では1,148コマが必要になります。週当たりにすると、31コマ必要となります。通常の6時間授業では足りませんので、水曜日を除いて20分モジュールを付け加えました。これにクラブ、委員会、行事などを含め、年間54コマがプラスされます。
昨年度、欠課の時間はございません。余剰時間としては、6年生で2と8分の5コマ、5年生で11と8分の3コマです。児童の下校時刻は、6年生でも15時ぐらいになります。
本校では、「質の高い学び」、「持続可能な学校」の実現に向け、令和4年度から6年度にかけ、日課表の工夫や1人1台端末の利活用の在り方を研究しながら、業務改善、意識改革を同時に実現していきました。その具体の取組を一つ二つ紹介いたします。
業務の改善については、先ほどもお話しいたしましたが、日課表の工夫を行い、40分授業の実現によって、児童の下校時刻を早めることができました。その日課の編成においては、児童の実態に合わせることを大切にし、教室移動にも余裕を持たせるために、5分休みを午前中は必ず入れました。それに伴って、給食時間が遅くなってしまいます。そのため、衛生上・健康面上の安全を確保するためにも、始業を早めることといたしました。児童の登校時刻は8時5分から8時20分です。8時20分からは朝の会を開始いたします。これに合わせて、職員の出勤時刻も早めることといたしました。横浜市ではフレックスタイムが導入されておりますので、8時出勤が難しい職員には、この制度を使ってもらっています。
結果として、児童の登校前に先生が教室にいる状況をつくることができました。早く授業が終わりますので、休憩時間が確実に取れるようになりました。会議の精選に伴い、教職員の裁量ある時間を増やすこともできています。
また、本校では、リーディングDX推進校として、ICTの活用も進められてきました。その成果として、教職員一人一人の端末の活用や情報活用能力の向上が見られ、ICT機器の活用は日常化しています。校務クラウド化も進み、校務支援システムの利活用によって、教職員の打合せは週に1回のみで、ほとんどの連絡はこのシステム上で行われています。記録も残りますので、後で見返したり、不在の職員が確認したりすることもできます。余白の時間の創出に寄与しておりました。
このような業務改善による余白の創出は、教職員同士のコミュニケーションの場を創出することにもつながり、自分たちで話し合ってノー残業デーをつくったり、教職員の意識改革を図るべく、教職員でプロジェクトチームをつくり、自分たちで業務を減らす話合いを進めたりしました。業務を具体的に改善し、時間を創出していくことが、教職員の意識を変え、働き方を変えたとも言えます。そして、教職員の業務改善と意識改革は、子供たちの学びにも大きくつながることになります。
日課の工夫、そして、一人一人の端末の活用は、教職員の情報活用能力の向上とともに、業務上のゆとりを生み出し、子供たちの学びの質を変えることにつながりました。校務だけでなく、授業においても端末を活用した学びが日常的に行われるようになり、学習ダッシュボードによる子供たちの学びの状況や思考の可視化、また、AIドリルの活用による基礎学力の定着とともに、個別最適な学びを進めることができました。
午前の60分授業では、授業を柔軟に活用することで、地域に出かけることや、まちの人とつながる機会を増やすなど、豊かな体験を基にした探究的な学びにつなげることができました。また、普通の40分授業にスキルタイムをくっつける形で、児童の集中力を切らさずに基礎学力をつけられたりするなど、よい形が出来上がっております。もちろん、単なる学習だけでなく、学級経営にもそうした余裕のある時間が活用され、児童の落ち着きにもつながっています。
児童の学びの様子としては、ロイロノートなど、クラウドを活用し、情報の共有や資料提示、プレゼンテーション、映像や音声の記録など、幅広くその長所を生かした学習が進められ、なくてはならないものとなっています。これまで教師が「プリントを配ります」と言っていたのが、「タブレットに送ります」と言って、用意していた資料やワークシートを送信し、それを活用する授業が当たり前のように進められています。学力の向上とともに授業準備の効率化が図られました。
先ほどもお話ししたとおり、日課表の工夫等に伴う時間の創出により、教職員の意識がどのように変わったのかをグラフを用いて説明いたします。
裁量ある時間が増えたと思う教職員の割合は、令和4年度は「思う」が0%、「やや思う」が27%であったのに対し、令和6年度は、「思う」が28%、「やや思う」が39%と、肯定的な意識が令和4年度に比べて40%以上アップしています。教職員も授業準備の時間が抑えられ、また、効率的に授業ができていることを年々実感してきていて、このスライドのように、裁量ある時間が増えたと感じられる職員が増えてきています。
教職員の意識改革の様子を時間外在校等時間の推移で見てみると、このグラフのように、令和4年度は34時間54分だったものが、令和6年度には27時間9分と、約22%減少しています。本格的な取組前と比べると、恐らく10時間以上減少しているのではないかと思われます。
このように、日課表の工夫などによる業務の改善は、教職員の意識の改善へとつながりました。今後も、「持続可能な学校」の実現と「質の高い学び」の実現に向けて取組を進めてまいりたいと思います。
獅子ヶ谷小学校の説明については、以上でございます。
【横浜市教育委員会(丹羽)】 続きまして、横浜市教育委員会学校教育部の丹羽と申します。本日は横浜市の取組を提案させていただく機会を頂戴し、感謝申し上げます。
さて、今、獅子ヶ谷小学校における3年間の研究について、皆様にお聞きいただきました。獅子ヶ谷小学校は、本市の研究モデル校の一つとして、学校経営や学校運営の改善に努めています。その中では、着実に教職員の働き方への意識が変わり、加えて、授業改善と学力の向上が図られてきています。
近年、横浜市では、獅子ヶ谷小学校のような研究モデル校だけではなく、505ある市立学校全体で、「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現に向けた取組が広がってきています。子供の数が約25万人、教職員の数が約2万人を擁する横浜市の研究結果を、そのスケールメリットを生かしたビッグデータとして分析することで、今後、質の高い教育データとして、持続可能な学校づくりに活用していきたいと考えています。
先ほど獅子ヶ谷小学校は研究モデル校の一つだと申し上げました。各モデル校では、それぞれの学校の特色を生かした研究を行っています。ほとんどの学校では、日課表の工夫により教職員の裁量で使える放課後の時間の確保に努めており、その余白の時間を活用して授業改善や児童生徒理解に資する議論や教材研究を行っています。
一方、「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現に向け、本市ではそれらを支える仕組みづくりや環境づくりにも取り組んでいます。
支える仕組みとしては、「チーム学年経営」を小学校全校で展開していることが挙げられます。これにより、子供一人一人をチームで見守り、子供の心の安定を図るとともに、教職員の多様な働き方を推進することができています。今年度からは、「チーム学年経営」を基盤とする横浜型の「チーム担任制」の研究にも取り組んでいます。横浜型の「チーム担任制」は、学級担任業務の分担の方法を複数から選べることにその特徴があります。学校の特色を生かした研究ができるようになっています。
また、環境づくりとしては、昨年度から学習ダッシュボード(横浜スタディナビ)を小・中・義務教育・特別支援学校の496校に導入していることが挙げられます。子供一人一人の状況をダッシュボードに表すことで、的確に把握し、余白の時間を使って授業づくりや教材研究をすることで、日々の学校運営が活発化する、そのことによって質の高い学びの推進と教職員の働き方の効率化を図るようにしています。
このように、横浜市では、「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現のために、各学校の努力や工夫だけに頼るのではなく、行政が責任を持って新たな仕組みをつくり出したり、最先端のICT環境を市全体に整備したりすることが大切だとの共通認識を持っています。
そして、今後は、学校の教職員、大学、企業が連携・協働しながら、新しい価値を生み出していく横浜ならではのリソースを生かした共創の仕組みを構築し、「質の高い学び」と「持続可能な学校」の実現を一層推進していきたいと思っております。
最後に、次期学習指導要領への期待を述べさせていただきます。
【横浜市立獅子ヶ谷小学校(大塩)】 それでは、私のほうからお話しさせていただきます。
スライドにあるところでございます。まず1番目、学校の裁量を増やすための取組の一つとして、標準授業時数の弾力化と学校の特色に合わせた時間の創出を進めていただければと思います。そうした新たな仕組みができれば、例えば、現在はモジュールで各教科等の時数を確保している部分について、どの教科にも当てはまらない子供たちの一人一人に応じた自己調整型学習の創設、あるいは探究学習の時数増などの取組につなげていただければと思います。
探究的な学びを行うためには、それを行うための時間の確保が必要となります。総時数、内容が精選され減らなければ、それが実現することはできません。裁量をそれぞれ持たせられる時間が取れるようになるとありがたいです。
そして、丸2番、40分午前5コマ制など日課表の工夫により生まれた時間を教育の質の向上に有効に活用しておりますが、これは大変ありがたいなと思っています。次期学習指導要領の下で、こうした取組がさらに充実した形で実施され、余白を生み出せるようになるとありがたいです。
また、40分授業は、教育DXと併せて、様々な課題を解決する有効な手段となり得ると考えています。
そして、丸3番です。全面実施までの取組として、一定の条件の下で、各学校で教員の裁量ある研究・研修の時間を設けるなど、柔軟な教育課程の編成を試行できるようにしていただければと思っています。
先ほどもまた話しましたが、ICTの活用が前提の新しい授業の在り方を創造していく必要がこれからはあります。そのために生まれた時間を有効に活用できればと考えております。
以上でございます。
【貞広主査】 大塩校長、丹羽学校教育部長、どうもありがとうございました。
続けまして、今の御発表に関連しまして、昨年度まで横浜市教育委員会でこれらの取組を推進してこられた本部会の山本委員より補足の御発言をいただきたいと思います。山本委員、お願いいたします。
【山本委員】 ありがとうございます。私からも2点ほどお話しさせていただければと思っています。
本日、子供をより多面的に理解するために、エビデンスに基づいたデータの活用ができる余白の時間の使い方ということで提案がありました。
1つ目の視点は、こうした客観的なデータの活用というのは、若い教員の育成という視点からも必要ではないかと考えているところです。
こちらの資料を御覧ください。左側のグラフはA小学校での教員の年齢構成を示していて、20代30代の若い教員の割合がどんどん増えていっています。こうしたことは市内の多くの学校で見られるような傾向です。
中央のグラフを御覧ください。ちょっと字が見にくいのですけれども、グラフの赤いところが課題だと思っているところですが、この若い教員たちが主に何を課題に思っているかというと、授業の準備や子供理解というところになります。
しかし、右側のグラフを見ると、結果として、子供たちの学力や学習意欲は学年、学級で差が生まれているような実態もあります。これは、先生方の中で子供理解や授業準備の時間がまだまだ不十分であり、若い教員の人材育成が追いついていないのではないかという見方もできると思います。
こうした若い教員の育成をサポートするものとして、経験や勘だけに頼らない、客観的なデータを一元化して子供理解に活用できるような、今回の横浜市の取組というのは、全国的にもニーズがあるのではないかと考えております。
働き方という視点では、これからの教育の中では、教師を個業にしてしまってはいけないと考えております。チーム担任制など複数の目で子供を見て、気づきの量を増やしていく仕組みと組み合わせて、子供理解を進めていくことが肝要ではないかと考えています。
また、教師の課題の一つの中で、同僚性コミュニケーションという割合も高くありました。最近の若い教員は、同僚とのコミュニケーションを図るということにも非常に課題意識を持っています。子供を中心に置いて、多面的・多角的な視点から子供理解を図るようなミーティングを余白の中でもできるような、ダッシュボード等のデータを基にした仕掛けが教員同士のコミュニケーションを生み、教師の孤立を防ぐのではないかと考えております。こうした不安の解消が、働き方の中で負担を軽減することになると思います。
さらに、子供の様子が分かるデータを保護者と共有するということも、働き方の改善につながると考えています。客観的な事実を基にすることで、お互いの主張だけによらない円滑な保護者とのコミュニケーションにもつながり、信頼ある関係が築けます。共有のエビデンスがない中で、お互いの主張や考えが伝わらないことも最近多く、その対応の時間がまた負担になっているという現状もあります。写真とか動画を含めた学びの記録、学びの履歴、プロセスの可視化などが望まれます。
2つ目の視点は、学校知の共有や蓄積、活用ができる仕組みづくりという点です。
先日、教育DXのロードマップも公開されていましたけれども、教員の一人一人の知の財産や取組が学校の中で蓄積され、活用しやすくなることで、若い教員が一から考えて資料を作成するような時間も短縮できます。学校は、今まで教員のスキルや専門的な知識が個の中で蓄積され、同僚や学校へ転移することが少なかったことが、知の共有や蓄積、活用につながらなかった点ではないかと考えています。
そして、この学校知の蓄積を考える上で、こうしたデータの分析や蓄積には、外部の人材や機関と連携していくオープンデータの発想というものが必要ではないかと思っています。
横浜市のある行政区では、既に地域のNPO団体や大学教員が共同してデータを分析して、各学校の指導に生かしている事例もあります。教育内容だけではなくて、教育データも広く開いていくことが肝要だと考えています。
今、2つの視点からお話しさせていただいたのですが、校長のマネジメント力を発揮するためには、本日の横浜のような教育委員会のサポートが欠かせないと考えています。しかし、教育委員会も様々規模がありますので、今後は教育委員会同士がしっかり連携、情報共有して、共に協力して取り組んでいくことが必要だと思っておりますので、もし何かいろいろお尋ね、またはご相談ありましたら、横浜市教育委員会にご連絡していただきながら、協力してやっていかれればと思っています。
私からは以上です。
【貞広主査】 補足の御説明ありがとうございました。
それでは、後半の質疑応答の時間に先立ちまして、5分ほど休憩を取らせていただきたいと思います。中途半端で申し訳ないですけれども、今、私の時計で16時22分ですので、ここから5分ということで、27分まで休憩を取らせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
( 休憩 )
【貞広主査】 それでは、時間になりましたので、議事を再開いたします。
意見交換に先立ちまして、時数管理等に関するICTの効果的な活用に関しまして、堀田主査代理より資料を御提出いただいておりますので、補足の御説明をお願いいたします。大変貴重な資料なのに恐縮ですけれども、6分程度でおまとめいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
【堀田主査代理】 堀田でございます。慌てて提出したもので、資料に名前も書いておらず大変恐縮でございます。
参考資料1-3でございますが、令和6年度の調査によると、校務支援システムは全国の学校の91.2%に普及しております。成績処理や通知表の作成等の機微情報を扱う場合が多くありますが、校務支援システムが持つそのほかの機能としまして、様々な名簿管理、例えば、登校班とか部活ごとの名簿とか、そういうような名簿をうまく作れたり、クラス替えの資料を作れたり、そのほかに、授業の時間割管理、時数管理などの機能もございます。
例えば、この画面では左側に時間割を入れられるようになっていて、時間割は大体毎週定型ですので大体同じになりますが、内科検診とかがいろいろあって、毎日細かく変わるわけですけれども、そこに単元名を割りつけていくと、右側には、これはそのクラスの算数の単元、予定時間は何時間だけれども、今何時間やっているというようなことを先生方が把握できるようになっています。
今のは算数のですが、このページは、同じように、これは教科別に見ることができて、1学期の残り時数、国語で言うと、あと67時間ある、予備は2時間分ぐらいみたいなことが常にモニターできるように、図工は早くもちょっと時数が足りない感じになっているみたいなことが見られるようになっているということです。
これを今度は学級別に見ることができて、例えば、これは国語ですけれども、国語は各学年、特に低学年は国語の時数は多いですからまだ余裕はあるけれども、高学年は残り時間このぐらいだみたいなことが表示されるということで、これは管理職も見ることができるということになります。
また、こちらは別の校務支援システムですけれども、同様のもので、あるクラスの年間配当時数のうちの今何%が執行されているみたいなことが把握できるという、これが校務支援システムに登載されている非常にポピュラーな時間割と授業時数の把握のシステムでございます。
また、GIGAスクール構想によって広く全国に端末が普及したわけですけれども、子供たちの端末は汎用のクラウドシステムを使うということが前提になってございます。多くの場合、最近は、文部科学省の推進によって、極めて機微な情報を除いて、先生方の校務も汎用クラウドツールによってDXしていくという動きが非常に大きくなってございます。例えば、保護者へのお便りの配布もクラウド上でとか、アンケートもクラウドシステムでやるとか、そういうことが多くなっておりまして、これが教員の負担軽減にもなってございます。教員同士の情報共有も、クラウドツールで行っているというのが多いです。
そのクラウドツールを用いて、校務支援システムにあるような機能と、ほぼ同様のことをやられているという例もございまして、例えば、これが1つ目ですけれども、これはある学校の、先ほどとほぼ似ていますが、左側に学習指導計画、時間割が書いてありますが、これに合わせて右側が進捗状況、これは4月のものでございますので、今達成率は何%とか、特別活動が先に走っているような感じが分かります。
5月になると、いろんな教科の授業が追いついてきて、6月になると、今こういう状況みたいな感じで、常にモニターできるということが一つポイントになります。
この次、もう一つ、これは別の学校ですけれども、A週とかB週とかいうような形で、時間割を2種類、授業時数の関係で使い分けているようなところがあります。この学校では、縦に日付が並んでいて、ここからここまではA週とか、ここからここまではB週とか、AとかBとか入れると自動的に教科が割り当てられるようになっていて、そこに先生方が、ここではローマ字をやるとか、ここでは、こん虫のそだちかたをやるとかということを入れていくわけですけれども、これも、このシートを入れると、別のシートに現在の時数とか残り時数何時間かとかいうことが出るというようなことがあります。これも汎用のクラウドツールでできるということです。
また、少し特殊な例かもしれませんけれども、これは専科の先生が外部から来ている、複数校勤務とか、そういう例なのですが、小規模校ではこういうことがよくあります。専科の方々に来ていただく勤務時間の管理とか、いろんなことがありますので、その方々の勤務が何時間なのかということを時間割からこうやって実績として取り出しているという、こういう例もあるということです。
まとめますと、日々の状況を、学級担任はもちろん、教科担任も、あるいは、管理職も、リアルタイムとは言いませんけれども、その週その週でちゃんと把握できるということによって、教科による時数進捗の凸凹が把握でき、これを踏まえて計画的に修正進行していくということができると。このことにデジタルは非常に役に立つ。これを手計算でやっていたら結構大変なことだと思いますし、手計算でやるのは大変だから最初から余剰をたくさん上乗せして教育課程を運用しようみたいな動きが今まではあったのかと思いますが、校務DXによってこういう把握はリアルタイムにできますし、学校ってシーズンがありますので、この時期は運動にすごい力を入れる時期だとか、季節によっては水泳にとか、文化的なことにとかということがありますので、時間割が毎週、年間全く同じというのはむしろかえって不自然で、いろんな弾力的な運用というのがあり得ますので、だからこそ、こういう時数管理、避難訓練で1時間抜けたとか、そういうことが自動的に把握できるということは非常に重要なことかと思います。
私からは以上です。
【貞広主査】 ありがとうございました。かなり具体的なイメージを我々も持つことができました。
それでは、委員の皆様との間の質疑応答、意見交換の時間といたします。御質問や御意見のある方は、会場の方も含めまして、恐縮ですが、Zoomの挙手ボタンを押していただければと存じます。私から指名をさせていただきますので、会場の方も御発言時はミュートを解除してお話しいただければと存じます。毎度恐縮です。委員の皆様全員に御発言の機会がありますよう、御発言は3分程度でおまとめいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、いかがでしょうか。
では、溝上委員、お願いいたします。
【溝上委員】 溝上でございます。
まず、いわゆるカリキュラム・オーバーロード、分厚くなっている教科書を、中核的概念を基に教科書をスリム化していく流れではないかと理解いたしました。そのスリム化は、決して学習指導要領改訂の平成10年改訂、ゆとり化の推進を進めたところですが、ああいう学習内容を減らしていくような、ああいう轍を踏まないように、ぜひお願いしたいと思います。
もう一つは、非常に難しいところですけれども、学習指導要領と高校入試との関連に言及されましたけれども、あくまで学習指導要領は高校入試のためにするものではありませんので、緩やかにガイドするような程度でとどめてほしいといいますか、お願いしたいと思います。
私の専門領域では、やはり2014年以降の高大接続改革で、大学入試を間に挟んで高校教育と大学教育の三位一体改革というのが進められましたが、あれは非常にトラウマでありまして、私は、高校教育に対して、大学受験の予備校ではないと、あくまで生徒を大学、社会に力強く送り出すために育てる、こういうことを真正面から大事だと言ってきた立場ですので、その上で、入試という現実の対応をしていくのが高校であって、それを政府が真正面から引き取って、大学入試を間に挟んで、これはもう気絶するほどショックなことでありまして、あまり結果もいい感じで終わったとは思っておりませんで。そういう入試って非常に難しいですね。ですから、この部会で高校入試に言及されていくのは必要だと理解しましたが、緩やかにぜひお願いします。
最後は、横浜市の取組、非常に興味深く拝聴しました。柔軟な教育課程ということは、この部会でも前向きに進められていると思いますので、現場に課していく課題が重いということもありますから、せめてこういう現場裁量の取組、制度化・システム化は引き続き進めていただくようお願いいたします。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、続きまして、オンラインから、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 まず標準授業時数ということで、真っ先に思い出すのが、平成15年の学習指導要領一部改訂です。私は勝手に平成15年ショックと言っていますが、標準授業時数またはそれ以上の授業時数の確保や、標準を下回って教育課程を編成することは通常考えられないということが示されました。以後、学校現場は時数の確保に向けて奔走してきたという経緯があることを忘れてはなりません。
その当時の中堅教員が、今まさに学校の管理職や教育委員会の幹部になっています。ですから、この経緯・背景を踏まえると、標準授業時数の弾力化に向けたカリキュラム・マネジメントの実現は、学校だけではなく、教育委員会や校長会が果たす役割等も非常に重要だろうと考えています。
大前提として、内容や授業時間の削減に終始した短絡的な議論によって子供の学びを貧しくすることは、到底首肯できません。
削減した後に生まれる余白とは、教育の質の向上のための時間的余裕であるという認識です。週28時間もよいですが、確保した1コマ分なり2コマ分をどう有効活用するかが極めて重要になってくると思っています。
そして、この標準授業時数は、量的な枠組みとして機会均等や水準確保、格差拡大を防いでいく役割も果たしてきました。
また、カリキュラム・オーバーロードの問題は、学習指導要領の内容や解説、入試、教科書、指導書、授業時数など、様々な要素が絡んでいる極めて難解なパズルです。すぐにでも着手すべきは、学校が自校の強みや課題をしっかりと見極めて、重点的に取り組む分野を明確にし、ここぞという部分を焦点化していくことだろうと思っています。
また、事務局資料の27ページの4の丸2に、「構造化に当たっては、各教科等の本質的な理解(中核的な概念等)の獲得に重点を置き、(中略)必要に応じて精選を行ったりしてはどうか」とあります。ここの文言は非常に重要で、中核的な概念を軸に内容が重点化・構造化されることで、本質的な理解を掘り下げて質的に深く学び、量的にも多く学べるという、まさにLess is moreの考え方の実現にもつながっていくのだろうと思っています。
なお、ここでの精選というのは、御説明の中にもありましたけれども、単に内容的な削減ではなくて、本質的な理解の獲得に向けての必要に応じた厳選であると思っています。
一方、教科書の分量については、精選が絶対不可欠だろうと思っていますし、教科書網羅主義の呪縛を解いて、本時主義から単元主義への転換を徹底することで、授業の質の向上と負担感の軽減が期待できるだろうと思っています。
なお、先ほどの説明にありましたけれども、現在の教師用指導書には、具体の配当時間が記されていますが、これは、年間指導計画がそれに縛られてしまい、余白の障壁となっていることも課題であると認識したほうがいいと思っています。
最後に、地域によっては、小学校では、学校はできるだけ長く子供を預かってほしいという福祉的要望が強いところもありますし、中学校では、保護者や学習塾等からの「指導内容網羅の監視の目」もあります。ゆえに、保護者や地域社会の社会的理解を得ることも極めて重要であるということを申し添えます。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、続きまして、会場から、松原委員、お願いいたします。
【松原委員】 全連小の松原です。よろしくお願いいたします。
まず、具体的かつ成果の上がっている事例を御紹介いただきまして、ありがとうございました。大変参考になりました。
1点お聞きしたかったのは、裁量ある時間が増えたと思う教職員の割合のところで、全体としては成果が上がっているわけですけれども、変わらないと答えた教職員が27%、20%で、また28%となっています。この辺りの声が伺えればと思いました。
教員というのは、余白ができて、そこに教材研究や授業準備を入れていきますので、結果としては多忙感が変わらないというようなことではないかと私は想像しましたけれども、具体的な声があれば、ぜひ教えていただければと思いました。
私からは、論点資料8について3点お話しいたします。
まず、6ページの標準を大幅に上回る時数の使い道の想定についてですけれども、標準時数に上乗せされている時数の具体的な使い方の想定がない学校が4分の1に上るという事実は、正直驚きました。
私の経験では、学級閉鎖等の不測の事態への備えとして、教育委員会から20時間以上確保することという下限の指示であるとか、最近では15時間以内や0時間といった上限の指示が出ています。こうした運用を抜本的に改善できるよう、次期学習指導要領の下では、年度初めの計画段階で、真に必要な時数を設定し、年度途中にカリキュラム・マネジメントできるような在り方を具現化することで、現場が安心して計画できるようになると考えます。
次に、19ページの教科書のページ数の推移についてです。
小学校の標準授業時数は減っているにもかかわらず、教科書のページ数は、私の小学生時代の約3倍になっており、非常に驚いています。
教員は必ずしも教科書の全ページを扱おうとはしていませんけれども、授業で取り扱わなかったページや問題について指摘されることもあり、網羅的な指導を求められがちです。また、教科書に準拠した教材も教科書と類似の内容を盛り込むため、結果として全てのページを扱うという面もございます。
さらに、ランドセルの重量も社会的課題となっており、教科書の内容の精選は、教員の創意工夫や子供たちの探究的な学びの余白を確保するためにも必要だと考えます。
最後に、30ページにある丸1、学習指導要領の構造化についてです。
中核的な概念・方略等を基に学習指導要領を整理・構造化するという方向性は、学びの全体を俯瞰するという点で、大人にとっては有意義だと考えます。
一方で、子供たち、学び手の側から見ると、一つ一つの具体的な内容をスパイラルに学んでいき、その過程で振り返ることで、一つの概念をより確かに、豊かにできるものだと捉えています。そのため、必要な学習内容を検討したり、必要に応じて精選の上で構造化する際には、精選自体を目的としないことに加え、小学校という学校段階や教科等の特性をしっかりと踏まえる必要があると考えております。
私からは以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、青海委員、お願いいたします。
【青海委員】 横浜市の皆様、山本先生、堀田先生、ありがとうございました。御説明、大変良いヒント、参考になりました。
初めに、論点資料8の2ページ、教育課程の実施に伴い教師が感じる負担、負担感、この資料の中身なのですけれども、吹き出し、それから、このつぶやきは、まさにそのとおり、言い得て妙の感想です。
さて、私から3点なのですけれども、1つ目は、週当たりのコマ数についてです。今回の事務局からの資料の後ろの28ページ、具体的に週当たり時数を減らす工夫例、これは極めて具体的なもので、各学校が自校の状況を把握し、振り返り、改善・見直しをする上で有用なので、全ての小中学校にぜひ御覧いただき、参考にしてほしいと思いました。
28コマ、それから、27コマの例示がありますけれども、働き方改革を契機として、カリキュラムの工夫、生徒や教師の余白の創出に向けて、私ども全日中としても全国の中学校に紹介するなどして、積極的な見直しのきっかけ、ヒントになればと思います。
文科省におかれましても、今後ぜひ週28コマなどへの見直しを明確に呼びかけていただけると、都道府県や市区町村の教育委員会の動きも加速するのではないかと思います。御検討いただければと思います。
2つ目は、学習指導要領の構造化についてでございます。学習指導要領の構造化に当たっては、各教科の中核的な概念、いわゆる本質的な理解の獲得に重きを置き、それにより必要な内容の検討や精選については、学習指導要領のスリム化につながりますが、学習内容削減のための精選ではなく、あくまでも必要に応じた精選であることは、改めて確認しておきたいと思います。
3点目ですけれども、教科書のオーバーロードについてです。
教科書の内容は充実し、不登校等の生徒の自学自習にも役立ち、個人的には、教科書会社の努力について大変評価しています。これは以前の会議でもお話ししましたので、はしょります。
一方、その内容の分量の多さが、授業の進度の速さ、過剰な授業時数などの課題へとつながっていることは事実であり、教科書を全て教えることから脱却するためには、教師の認識を変えることが必要です。教科書は中核的な概念などをつかむもの、教科書で得た理解を深化する手段として教材を活用するという役割分担、すみ分けをするなど、教科書の重点化、分量の精選は、今後の教科書の在り方、一つの方策だと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございました。
では、続きまして、オンラインから、小見委員、お願いいたします。
【小見委員】 みらいずworksの小見まいこです。具体的な事例の御発表ありがとうございます。
特に、学習観の転換と地域・家庭との協働について発言させていただきます。
現在の教育課程の編成・運用においては、時間をかけて教えれば学力が上がるといった従来の学習観が依然として現場や保護者の中に根強くあるのではないかなと考えています。先ほどもありましたが、例えば、保護者から教科書どおりに授業が進んでいない、この授業で本当に受験に対応できるのかといった声が、教師の実践や教育課程の柔軟な運用を阻んでいるという実情も見えてきています。
先ほど戸ヶ﨑委員から社会的理解の促進という御発言がありましたが、こうした状況を打開するためには、教育課程を学校だけで完結するものではなく、地域や保護者とともに構想し共有するものへと転換する必要があると考えています。
特に、総合学習や学校裁量の時間など柔軟に設計できる時間領域を生かして、教員だけでなく、保護者や地域と、教育課程の意図ですとか、これからの学習観を対話的に共有する機会を持つことが重要だと考えています。
また、先般成立した特別措置法等の一部を改正する法律においては、第3条に、学校運営協議会の基本方針に、教員の業務量管理や健康確保措置の実施が含まれることが明記されました。令和8年度以降は、コミュニティスクールを通じて、教育課程の編成や実施と、教職員の働き方を一体的に議論していく必要があります。
一方で、保護者対応がしんどい、地域連携は負担が大きいといった現場の声があるのも事実です。保護者対応の時間は、特に若い先生方の課題や負担感にもつながっています。生み出された余白が有効に活用されていくためにも、教員養成課程や現職研修においても、教育課程を社会とともに構想するカリキュラム・マネジメント能力や、同僚だけでなく、多様なステークホルダーと合意形成をしていく力などを育成することが求められていると考えます。
学校、家庭、地域が、共にこれからの学びとは何かというのを問い直し、子供と向き合う時間を確保し、子供たちの資質・能力が育つ教育課程を各校で育んでいく、そのための制度設計と人材育成の両面からの検討をお願いしたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】 発言させていただきます。
先生たちのカリキュラム・オーバーロードが、結果的に、これまで子供たちに苦しさを感じさせる学校になっているという面があったのではないかという意味で、改めて時間の見直しによる余白を生み出すことはとても効果的なことだと受け止めました。
これまでは教科書を教えるということが実質的なカリキュラム・マネジメントだったと思うのですけれども、これが教科書を教えるのではなくて、どのような資質・能力を育みたいかという視点から、一人一人の先生がカリキュラム・マネジメントをしていけるようになるということに先生の役割が本質的に転換していくということはとてもすばらしいことだと思います。一方で、短期的にはとても難しいことなのではないかということも感じています。
その意味で、横浜の方々のお話からとてもたくさんのヒントがあったなと思うのですけれども、事例発表の中で教えていただいた、さらっと流されていたと思うのですけれども、横浜市学力学習状況調査を行政として設計して、きっとそこに資質・能力を横浜なりに定義されて、それをスタディナビでフィードバックしていくというサイクルがあるから、きっと現場に任されたカリキュラム・マネジメントをベースにした余白の時間を使った研修とか、先生方が自分の頭で考えた教え方とか、そういったことが何をよいとするかというところのフィードバックになって、そのサイクルが回っているのではないかなと感じました。その辺りをもう少し補足して御説明いただけたらいいなと思ったというのが質問となります。
今回の方針はすばらしいので、全国的にもこれを、思考・判断・表現をどのような評価で現場がよいとしていたのかというところに、指針となるような何かツールや支援が横浜のようにあるとよいのではないかと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
先ほど松原委員の御質問の際にも言うべきだったのですけれども、横浜市さんへの御質問については、質疑応答の最後にお返しをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
では、内田委員、よろしくお願いいたします。
【内田委員】 ありがとうございました。
横浜市の発表、大変参考になりました。学びの質向上のために余白をつくっていくということ、改めて大切だと考えました。ある意味、指導の上での時間構築のためのパラダイム転換ではないかなと思います。
それで、戸ヶ﨑委員からもお話がありましたけれども、教員の余白による指導力向上のために、生徒の時間を増やすために、裁量のある時間の具体的な活用方法について、横浜市の事例を御紹介いただければと思っております。
また、福祉的な要請というところがあるかと思うのですけれども、こういった裁量の時間が生じることによって、場合によっては下校時間が早くなるかと思います。具体的に横浜市のほうで学童の時間はどういうふうにされているか、御紹介いただければと思っております。
あと1点ですけれども、海外の教科書はかなり厚い現状がありますけれども、これを全て教え込むわけではないというところがあるかと思います。教科書の内容を精選しつつ、内容について、それぞれ絞り込んでいく、内容を充実させていくということが必要かと思いますけれども、併せて教員側の指導観を変えていく必要性があるかと思いますので、こちらについても考えていく必要があるのではないかと考えております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、オンラインから、石井委員、お願いいたします。
【石井委員】 本日も非常に充実した資料だと思って拝見しておりました。
余裕の創出に関しましては、負担感のイメージ図の右下のほうにもありますけれども、やはり条件整備の問題といったものがまずあると。働き方改革、待遇改善、定数改善、ここに関しては引き続き取り組んでいくことが大事です。一方で、特に若い先生が増えている中で、結局仕事がうまくこなせていないというふうなことがかなりあるのだろうとも思います。そうすると、人が育つ仕組みをどうつくっていくのか、この辺も一体のものとしてやはり考えていく必要があるかと思います。今回、この図、条件整備等を進めていくのもあるのですが、しかし、なぜその負担感が生じているのか。そこを教師目線から整理しているということで、非常に重要な図ではないかなと思いました。
時間的余裕が生まれたからといって、負担感がなくなるとは限らないということもあったりするわけですね。この辺、教師目線から一体何が障壁になっているのかという辺りを丁寧に見ていくということ、しかも、それを本人たちが気づかないところもあると思うので、そこはやはり客観的に分析するということが非常に重要かなと思います。
それは様々なレイヤーというか、レベルにおいて考えていくということだと思うのですけれども、その中で、ほかの委員の先生方もおっしゃっているように、とらわれみたいなものが一つはあるかなと思います。時間割とかカリキュラムといったものは、途中で計画は変更するものでないじゃないですけれども、何かそれは邪魔くさいみたいな。だから、それに対して、時間割いじりとか、そういった小文字のカリキュラム開発がどれだけ日常化できるのかということが一つポイントなのかなと思っています。
あともう一つは、教科書をこなすではなくて、教科書で教える。さらに言うと、教科書を資料にして学ぶという、まさに先ほど指導観の転換というか、教科書観の転換みたいなこともあったかと思いますが、そういった考え方ですよね。そういったものが広がっていくことが大事かなと。
その点で申しますと、40分、45分でというふうな、そういった運用というのは一つの切り口になってくると思います。ただし、それが40分、45分授業にすればいいんだというふうに逆に定型化に陥ってしまいますと、時間割いじりから離れてしまうというところですね。
あくまで本丸の部分を見失わないということで申しますと、今回の資料にもありますように、柔軟な時間の使い方、かつてモジュール、ブロックとか、2000年前後あたりにいろいろとそういったこともなされたと思いますけれども、改めてこの時間割いじりということが、様々な創意工夫が目の前の子供たちに合わせて、学校の状況に合わせてできてくることが大事かなと思いますし、あとは、教科書をこなすということを脱却する上で、逆に40分、45分とせわしなくなって、むしろこなすというふうなことになっては本末転倒というところですね。
だから、短い授業でもスマートにやりますよということではなく、そこが浅い学びになってはいないかということをしっかりと見極めながら、この間も議論になっている単元で考える、それで質と深さといったものを追求する、この辺が非常に重要になってくるかなと思います。
あとは、午後の裁量的な時間といったものに関しても、実は、むしろ午前中の授業の改善が肝になってくるのではないかなと思います。午前中の授業で訳が分からんというふうなことになってしまったら、午後、自分でさあ計画を立てようと思っても、教科書を開く気にもならないというふうなことではなかなか難しい。
さらに言うと、授業を通じてもっとやりたいことが生まれるということがあるからこそ、この後の時間をちゃんと自分のものとして使いたいという思いが生まれてくるのだろうと思いますね。
ですので、それで言いますと、ただ午後の時間をフリーにということではなくて、むしろそれをするためには、子供たちに委ねるためには、子供たちの心に火をつける、そういう午前中の通常の授業といいますか、本体部分の充実が欠かせないと思います。
同様に、これは先生方の研修といったこともそうですけれども、そこの部分も、新しくこういった取組のために研修ということもそうですが、そもそも若い先生がどこに困り感を感じているのか。だから、午前中の国語、算数、理科、社会とか、体育とか、図工とか、そういった授業をやっていくときに、先生が内容がわからない、もう一つ十分つかみ切れていないということであれば、そういった内容理解が大事になるのではないでしょうか。教材研究といった場合に、内容とか素材に関する理解を深めていくような、そういった研修も大事になってくるかもしれません。そういう観点で申しますと、結局、最終的に若い先生とかも育っていくような、そういった仕掛けという観点でトータルに見ていくことが大事かなと思います。
あともう1点、内容の重点化・構造化に関しては、ほかの委員の先生方も言っておられるように、削減のための削減みたいなことになるのではなくて、やっぱり幹と枝葉をしっかりと明確にするということによって、結果として減らしていくということが大事だと思いますし、何よりこの議論は、コロナ禍の中で、内容をそれこそ圧縮してというか、時間数をどう確保するかといったときに、どう軽重をつけるかということが問われ、教科書会社もプランを出したと思うのですけれども、結局そういった軽重をつけるという発想ではなくて、満遍なく進めがちであったという実態があったように思います。
ですから、やはり学校現場の中で、軽重をつけていくというこの思考をどう実装していくのか。それが分かりやすいような形で、学習指導要領の示し方自体をどういうふうに考えるのかということが大事になってくると思いますし、そのときには、小学校と中高とではまた様子が違うと思います。小学校に関して申しますと、先ほど松原委員もおっしゃったように、奈須先生もよくおっしゃいますよね。特に算数はなかなか削るのは難しい。だから、むしろそのスパイラル、本質の部分がよく分かるように、そこの部分を学習指導要領において分かりやすくするとか、そういったむしろ内容の縦系列といいますか、内容理解が深まるようなことが、ポイントが分かるようにしていくことが重要になってくるかもしれませんし、教科によってやっぱり違いますよね。
さらに言うと、中高に関して言うと、よりダイナミックに。この辺は、教科書であるとか入試のコンセプトとも関係するわけですが、それこそ教科書においても大きな問いを扱うようにすること。例えば、日本における近代化の特質とは何かとか、今の教科書では扱っていないような大きめの問いがある。その大きめの問いに対して、それだけ投げかけるではないですけれども、それで、あとはそれぞれ学習ツールで学んで、それで理解を深めていく。そういった大きな問いとか課題を設定できるかどうかということが重要ですし、それは取りも直さず、先ほどの入試の例もありましたけれども、そういった大きな問いといったものを入試において扱えるかどうか。教科書や入試で扱う問い、これが大きくなっていくということが中高においては大事になってくるのではないかなと思います。
そういった観点から、教科であるとか、あるいは、学校段階に応じた特色を踏まえながら考えていく必要があるのではないかなと思います。
すみません。長くなりましたが、以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
日常的なカリキュラムいじりを小文字のカリキュラム開発と言っているのを初めて知りまして、そうしたものの蓄積によって、大きな問いを出せるような内容の重点化・構造化がなされる必要があるということを改めて御指摘いただきました。ありがとうございます。
では、会場から、澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】 先生の幸せ研究所の澤田です。
学習指導要領について、文科省のこの審議会で1回分を割いて余白を取り扱うというのは本当に画期的で、ありがとうございます。ゆとりが教育の質を落とすのではなくて、むしろ高めるのだということが、これを機に教育関係者にも社会にも共通の価値観として広まればと願っています。
事務局の提案にはどれも賛成です。その上で、幾つかお伝えします。
まず、本日の横浜市の御発表と事務局の説明や資料では、現行制度の中でもできることが整理されたと思います。
また、論点補足資料では、中学校でも部活動をしても4時45分下校という例や、時間外在校等時間が17時間という例も示していただきましたので、後に続く学校が現行制度の下でスピーディーに増えるということを期待したいと思います。
次に、論点資料の27ページの学習内容の必要な精選というのは、非常に重要だと考えます。内容が多ければ追いかけられるような授業になってしまいますが、内容が精選されるということは、授業中に深く考える時間ができるということです。概念をしっかり身につけるためには、深く考える時間は欠かせません。現行学習指導要領の内容のそれぞれを見れば、当然どれも価値があるわけですが、内容の精選の際に、本質的理解の獲得のためという目的を大切にするならば、個別の内容と同じように、余白にも価値があって、その優先度は深い学びのために非常に高いという認識で進めていただきたくお願いします。
次に、教科書の指導書についてです。
指導書どおりにするとあっという間に年間時数を埋めてしまうようになっていて、しかも5分単位で計画が書かれていたりして、学校現場は非常に大きな影響を受けています。教科書の内容の精選とともに、指導書の在り方も、本質的理解の獲得にストレートに向かうものに問い直す必要性を感じています。例えば、子供がそれぞれに学び進められるような前提のもので、先生たちは協働や一斉指導を単元全体を通して効果的にデザインしていくことができるようになるようなこととか、子供たちが深く考える時間や個別の試行錯誤を想定したものなどかと思います。
また、学習指導要領解説についても、同様に、本質的理解の獲得にストレートに向かうものになることを期待します。
最後に、裁量的な時間の組織的な研究活動等についてです。
この間、学校現場を回っていると、学びの質を上げるための時間が確保できるようになるということに、次期改訂への期待が非常に高まっています。この時間についての上限はこれから検討ということですが、先生たちがこの期待を持ったまま次期学習指導要領を迎えられて、先生たちがしっかり学んで、専門性を発揮するための時間というのを十分に確保できるようにしていただきたいと思います。これについては、先生方の声を聞くということも、この部会でできたらいいのではと考えています。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、続きまして、野口委員、お願いいたします。
【野口委員】 野口です。事務局の皆さん、すばらしい方針を御提案いただき、ありがとうございます。方針に賛成したいと思います。
改めて、余白と質というのはトレードオフではなくて、むしろ余白があるから質が向上するという共通認識を持っていきたいなと思いました。
また、この方針が、多様な子供、そして多様な先生たちにとってプラスに働くように推進していきたいなと思いました。
まず、学習指導要領の構造化と、あと、教科書についてです。
お話にあったように、これまでは学習指導要領が日常的に使いづらい、準備する時間もないし、だから教科書をそのまま教えざるを得なかったという状況にあるかと思います。その結果、今はまだまだ基本的に全ての子供が同じ内容を同じペースで同じように学ぶ、同じ方法で学ぶということが前提になっていると思います。私たちもそういう学び方をしてきたので、まだまだそれがしみついているのかなと思います。
それを変えていくためには、中核的な概念に向けた構造化、必要に応じた学習内容の精選というものを推進するとともに、この中核的な概念に障害のある子供や外国にルーツのある子供も含む、多様な子供誰もがアクセスするために具体的にどんな方法があるのかということを先生たちは学ぶ機会や知る必要があるのではないかと思います。例えば、学びのユニバーサルデザインなどを参考に、取り組み方や表現方法、情報の提示方法の多様性について、学習指導要領の解説あるいは、教科書の指導書などで先生方が具体的に知る手だてがあるといいなと思います。
また、先ほどの委員の先生方のご発言ともちょっと重なるのですが、先生たちが学校の子供の多様性に応じてカリキュラムデザインができるということが重要だと思っていて。つまり、今回の提案の結果、またどこも同じような時間割になるみたいなことが結構起きてしまうのではないのかなということも考えています。そういうふうにならないように、好事例を出すときに、こういう地域で、こういう子供たちで、だからこういうカリキュラムデザインをしましたという、そういう文脈というものを併せて共有していくことが重要なのではないのかなと思います。
時間割をこう変えました、というのはわかりやすいのですが、なぜ時間割をそう変えたのか、という文脈があると、自身の学校の文脈に合わせて参考にできるかと思います。
その学校における多様性に応じたカリキュラム・マネジメントを実施し、その上で、学級の多様性に合わせて単元や授業のデザインをするときに、横浜市さんが示してくださったダッシュボードというのは非常に有効だと思いました。
つまり、自分が受け持っている子供たちの多様性を知り、その子どもたちに対してどういう単元デザインが最適なのかというのをチームでデータを見ながら検討するというのは、非常に効果的だと思います。さらに、その中でより支援が必要な子供に対してどんな支援ができるのかというところについても検討できると良いかと思います。
その際には、これまでの議論にもあったように、2階の知見を1階の包摂性に活用するという観点で、特別支援教育の担当者と通常の学級の担任とのコラボレーションが肝になるのではないのかなと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、古賀委員、お願いいたします。
【古賀委員】 ありがとうございました。
今日は、横浜市の非常に興味深いお取組の御発表をいただき、ありがとうございました。
1点質問なのですけれども、こういった裁量のある時間を増やすことをどう家庭に説明していかれたのか、その辺りも教えていただけたらと思いました。
今回の余白の創出に関する御提案の内容は、現場の先生方にとって非常に重要な内容だと思います。裁量ある時間が増えることが、教育活動の充実や質の高い学びにぜひつながってほしいと思います。
私は、幼児教育と小学校教育の架け橋プログラムの関係で、小学校低学年の授業を拝見することが多いのですが、昨年度末の1年生の生活科の授業で、小学生になって1年経つ頃には、時間的な制限の中で学ばなくてはならないということを子供たちなりに頑張っている姿がありました。今度1年生になる幼児たちに、1年生って楽しいよということをそれぞれに伝える活動を準備しているというところを拝見しました。
その授業の終わりにみんなで振り返りをしていたら、1年生の生活を表したすごろくを作ろうと活動していたある子供が手を挙げて、できるか分からないと言い出したのです。それを聞いていたある子供が、完成できるかどうか心配だということじゃないというふうに言い換えて共有して、また、先生もそれを聞いて、その不安な気持ちを受け止めて、今いろんなアイデアが出てきているんだねというふうに肯定的にコメントをしていました。
つまり、すごろくに書きたいイベントがたくさん出てきているというので、その時間内にできないかもしれないと。また来週、友達と一緒にやれるからきっと大丈夫だよというふうに次につなげて先生は言っておられましたけれども、こういった子供たちの中でやりたいことが膨らんできたときに、もっと時間が欲しいということが1年生でも出てきます。やりたいことに使える時間と場所があるというのは、やっぱり子供たちにとっても先生にとってもうれしいことだと思います。
そのときに、ぜひ実現してほしいと思うのが、そのクラスで起こっていることをほかのクラスとそろえるという、形式的平等主義とでも言えるような発想をやめることです。先ほどの堀田委員のお話からは、ツールで簡単に余白の時間が分かるということで、いろいろな学校現場で柔軟に時間が使える希望を感じました。
1学年に複数クラスがある場合に、全てのクラスで同じことを同じように、また、同じ量をやっていないと保護者に説明がつかないというような理由で、壁面に貼る内容をそろえたり、授業の内容をそろえたりしている現状があります。もちろん、基本的に漏らしてはならない内容を構造化するということは重要なのですけれども、そこから展開していく内容について、それぞれのクラスで子供が発想することが違えば、それに必要な時間もものも異なってきます。子供たちの探究を深めるということに必要なことをするという原則と、その具体的実践について、学校が、また文科省が、また学習指導要領が、きちんと社会に、家庭に、保護者にしっかり説明していかないと、保護者からのクレーム対応で、せっかくできた余白の時間が取られてしまうというようなことになりかねないかと思います。
1年生でも、自分たちのやろうとしていることはもっと時間が必要だと考えることができます。子供たちが自らもっとやりたい、工夫したい、考えたいと思うことを伸ばしていくという、子供の自立的向上心に基づいた教育改革について、社会的コンセンサスをつくっていくということが重要ではないかと思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、植阪委員、お願いいたします。
【植阪委員】 よろしくお願いします。
まず、今回、現行制度の中でも、柔軟な対応はかなりできるのだという話を出してくださったことは、すごくありがたいかなと思っています。私がつながりのあるところでは、例えば、大田区の調布大塚小学校において、45分授業のままでも、週28時間に収めて水曜日は午後を空けるという運用をされています。そうしてみると、学校の授業改善とか独自カリキュラムとかにかなりパワーが回るようになっているので、すごくいいことだなと思っています。
45分という時間があるからこそ、基本的な内容を学んだ上で、発展的な内容を含められるという側面があるので、40分にしないとできないと言われるとちょっときついところがあるので、そうではなくて、現行でも十分できる、45分でもできるということだと思うので、それが正しく伝わっていくといいなと思った次第です。
それ以外の3点について、少しだけお話しさせていただきます。
第一点目に、教科書の利用についてです。今回、教科書の話がかなり出てきたのですけども、留意すべき点として、日本はすごくいい教科書を作っていて、しかも、貸与ではなくて償与というすばらしい制度があるにもかかわらず、学校現場で教科書が使われていないという問題があります。これはかなり大きな問題で、もったいないです。
例えば、小学校教育であれば、教科書の内容について発見的に授業で取り上げたいという思いが強いです。このため、研究授業で、最初から教科書を開いているところはごくわずかです。練り上げて、発見したのちに、教科書の問題をドリル的に使うという使われ方をしているのです。日本の教科書は、説明の部分の質は高いが、問題のところはちょっと解くことに偏っているよねというのが世界的な研究で言われていることなのです。一方で、一番大事で、すごくいいと言われている部分を、実は授業で使っていないという現実があります。一番良い部分については、授業中に閉じていて、あとはドリルで使っているという逆転現象が起きています。
この教科書の使い方については、ほかの委員からも、教科書を使う力とか、それこそ自己調整力でもありますけれども、見通しと振り返りをする際に使えるものとして捉えていくべきではないかというご意見がありましたね。やはり、これだけ巨額の税金を使って教科書を作っているので、教科書を使っていくことって大事ではないかと思います。
また、恐らく内容を精選したからといって、そんなに劇的に減ることはないのだと思います。その環境の中で、時間もタイトな中でやっていくにはどうするのかを考える必要があります。すなわち、深い理解も保障して、時間を減らすにはどうしたらいいかということを考える必要があります。そうすると、教科書の使い方がポイントになると思っています。例えば、事前に見通しを持ってある程度学んできてもらって、やっぱりここが難しいというところを中心に教える。その上で、さらに発展的な内容もプラスアルファで工夫をして教師が入れていくであるとか、生徒も自分で読んで、ここが分からないというところを出して、そこから発展的につなげていくみたいなことがあるほうがずっと生産的ではないかと思っています。その教科書の使い方が一点目です。
二点目は、教え方、授業論の話です。今、どうしても発見的な内容のところに子供のアクティブな学びを持っていこうとしているがために、教科書の内容を終わらせるのも精いっぱいということになっています。それでは、児童生徒にとっても教員にとってもゆとりと深い学びは生まれにくいと思っています。教科書に書かれているようなものについては、ある程度教科書も使いながら分かりやすくきちんと教えた上で、さらにその発展的な内容も入れられるような時間を保障していく必要があるのではないでしょうか。そのためにも、教科書をうまく使うことを、きちんと国として奨励していく必要があるのではないかと思っています。
三点目は、ノートテイキングに関する指摘です。日本は、ほかの国に比べると、ノートテークに先生が責任を持たなければいけないという強い文化があります。ただ、完成品が深い理解なのではなくて、頭の中が深い理解であるべきなのです。先ほど澤田委員からも、多様な子という話があったときに、かなりしんどい子はノートを取るだけでも精いっぱいになって、内容が入らないみたいなことも起こっています。ただ、教科書と同じ内容が板書で書かれていて、先生も説明したりもしているので、教科書に書き込んでいくとかデジタルに書き込んでいくみたいなことをやることで、生活保護受給世帯のお子さんですとか、外国ルーツのお子さんも、かなりサポートされる可能性があります。これは実際に、生活保護受給者世帯の支援に入っていての実感です。ですので、多様な学び方を保障していくという中に、ノートテークに責任を持つというカルチャーを先生から自由にしてあげるというか、そうすることによって、両方にとっての深い学びにつながっていくのではないかなと思っています。さらに、今後、教科書にデジタルが入ってきます。そうすると、白いノートに書き込むこともそうですが、デジタルの教科書に書き込みながら授業を聞くというスタイルも考えていく必要があります。もちろんこのことは、紙の教科書においても可能です。小学校1年、2年であれば書き方の練習ということで白い紙のノートに書き込んでいくということも重要ですが、デジタルや紙のノートに書き込んでいくというノートテークを考えてはどうかということを感じている次第です。ノートテイキングに関する新しい発想を国が示し、授業のスタイルを変えていく必要があるのかなと感じている次第です。 以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】 よろしくお願いします。私から3点ほどです。
まず教科書の件ですけれども、今日、指導書の話とか教科書会社の推奨時数の話が出ましたけど、それらは検定対象ではないということを確認したいと思います。誤解している人がいて、教科書会社の推奨時数でやることを文科省が指示しているように考えていることがあって、そんなことはないのでということです。
それから、デジタル学習基盤下での教科書というのはどうなるかということを今後考えていく必要があると思うのですが、これまで以上にいろんな情報を使えるようになった、また、子供自身が自分で判断してアクセスできるようになると。そうなったときに、教科書というものが全教材とか全学習情報に占める割合は、私は減るのではないかと思っています。そういう時代に教科書がどういう位置づけになるのか。これはデジタル教科書も含めてですが、教科書というものが全教材においてどんな位置になるのかということは、またしっかり考えていかなければいけないのだろうと思います。
それから、もう一つ、教科書問題というのは、いわゆるティーチャープルーフ・カリキュラム問題、これから夏に防水の日焼け止めが出てきますが、あれがウォータープルーフですね。ティーチャープルーフというのは、だから防教師カリキュラム、あんまり授業が上手じゃない先生でも、そこそこの授業ができるカリキュラムです。
それはいいことではあるのですけれども、逆に、それが先生方の闊達な動きを止めていたり、あるいは、もうこんないいものがあるんだから私が下手につくるよりもいいんじゃないかと思って、つくるという方向に行かなくなるという問題があって、これがいわゆるティーチャープルーフ問題です。
教師の主体性とか創造性ということ、あるいは、教師が育つという言い方を石井先生はなさいましたが、そういうことに対して、どうしてもそっちに進みにくくなるような条件があるのだと。痛しかゆしのことがあるのだろうなと思います。
2つ目、入試のことですが、今日、改革支援という表現がなされていて、とてもいいなと思います。つまり、改革自体をやるのは、その入試をやっている、例えば、公立学校で言えば、都道府県の教育委員会がやることで、文科省が指示するようなことではないのだろうと。現行指導要領の中学校部会での議論のときに、そんな話題になりました。文科省としては、一律で何か強い指示をするようなことはないのだという説明がありました。
そうあるべきだと思いますし、私は不思議なのですが、各都道府県教育委員会の中で、義務の担当と高校の担当の間であまりコミュニケーションがなされていないのではないかという危惧を持っています。これは何とかしていただきたい。県教委の部屋の中で話をすれば随分進むこともあるのではないかと思います。
ただ、そのとき難しいのが、何をこの教科の学力と見るかということを英断することなのですよね。それはやはりこの教科の任務がはっきりしていない部分があって。つまり、指導要領がそこをまだまだ示し切っていない部分があって、それを今回の中核概念で明確に示していこうという話になってきて、それが進むと、入試も各都道府県でもっとしっかり考えて進められるのではないかと思います。
最後に、今日、横浜市の御報告がとても面白かったですけれども、一つ不思議なことがあって、獅子ヶ谷小学校さんは、学校行事は24コマと出してくださっています。それに対して、今日の文科省の事務局の28ページの資料では、全国平均なのですか、60コマ。この差は36コマ。こんな違いがあるのかなという。これはどうしてだろうと。獅子ヶ谷小学校さんが多くの学校の半分以下しか学校行事をやっていないなんていうことはないのだろうと思うのですが、この辺はどうなんだろうということです。
それ以前に、学校行事のコマ数が当日本番のことなのか、行事に向けては準備や演習もありますが、これを含むのか、その辺りのことも気になります。
そもそも、時数を示している別表第1には学校行事は入ってない。学校行事に何コマぐらいの時数を使うのが日本の教育課程の適正な運用において望ましいのかという議論は、どこかでしましたかね。していないですかね。していないのだったら、どこかでしたほうがいいのではないですかね。
別表第1の外で、それは当然だと思いますが、どのぐらいの時数を学校行事で動かすのか。しかも、それは本番の部分、当日の部分なのか、準備や練習も含めてなのか。教育課程全体の議論の中で大事だと思います。
学級活動は35ですが、60を足すと95時数やっているということですよね。95時数というのは適当なのかどうか、多いか、少ないかという話ではなくて、ほかの教科についても議論しているわけだから、それはどこかでしたほうがいいのではないですかね。規定するという意味で言っているのではなくて、一度そういうことはちゃんと考えたほうがいいのではないか。
それから、教師の負担ということで言うと、行事に向けての準備って現場は結構大変ですかね。それで業務時間が持っていかれることは結構あるように思うのです。もちろん、それだけの効果もあるし、子供も楽しみにしているので、私はいいと思いますけれども、一般の他の、例えば、別表第1に載っている教科の授業を1時間分やるための準備と、どのぐらいのバランスになっているんだろうか。教師の業務全体の見直しの中で、このことは一度しっかり考えたほうがいいのではないかななんて思いました。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。今の最後の点については、後ほど事務局からもコメントをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
では、宮原委員、お願いいたします。
【宮原委員】 宮原です。
今回の議論は、民間企業で仕事をしている人間なので、そこまで時間を厳密にお考えにならないといけないのだということが大変驚いたということが1つ目と、2つ目は、そもそも個別最適な学びと言っている一方で、やはりクラスルームでの授業というのが大前提になっているがために、こういう学校でどうやって余白を生むんだということについて、かなり議論をしないといけないという現実を理解しました。
ということで、全く御批判は恐れずに申し上げますと、基本的にクラスで先生が教える時間と生徒児童が自主学習する時間、そして、グループで議論して理解を深める時間、及び、分からないことを個別に聞く時間、そして、アウトプット、テストなどで学び・研修を確認する時間というのが、学びの基本的な必要な大きなコンテンツ、中身なのかなと思ったときに、そのそれぞれに必要な時間は、個別最適な学びというからには、生徒児童によって大きく違うのだろうと思います。
これは、もちろん企業に入ってきた新入社員にとっても同じことでありまして、非常にスピード速くキャッチアップする方もいれば、大変時間のかかる方もいるのですが、どちらがいいということではなく、時間がかかるという方でもきちんとキャッチアップする場合もありますし、ある程度のところまで行って止まってしまう方もいて、それは経験だったり、学び方だったり、そういったもので変わってくる。このようにキャッチアップする上でも個人によって大きく違うということを見ていますと、恐らく、小学校、中学校、高校生の世代の子供たちの学びのスピードや学び方や、学びに必要な時間というのは個別に相当違うのだろうと思います。その個々の違いにどれだけ柔軟に対応できますかというのが次の学習指導要領でとても重要で、もちろんデジタルを使えばもう少し個別最適な学びが可能になる可能性はありますけれども、クラス別ではなく、それぞれの子供にとって、どれだけの時間を使えばその単元について理解できますかということのばらつきがあるという大前提で議論をするべきではないかと思っていまして。それは今申し上げた、単純にこの子は算数が得意だから何時間でできるのよということではなくて、その子にとっては、実は先生から学ぶより自分でどんどん教科書を解いていったほうが学びやすいという方もいれば、お友達と話をしながら学ぶほうが早いという子もいれば、先生に教えてもらうのが早いという子もいて、同じ単元でも学び方も違うのだろうと思ったので、その辺りをどういうふうに考えるのかなというのを、皆様の意見を聞きながら悩みながら聞いていました。
特にこうすればいいという意見ではなく、そういうふうに考えましたということで、コメントまでです。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、続きまして、同じくオンラインから、前川委員、お願いいたします。
【前川委員】 よろしくお願いいたします。
27ページの具体的論点の4から6の部分についてコメントしたいと思います。
丸2のところですが、構造化に当たっては、各教科等の本質的理解(中核的な概念等)の獲得に重点を置き、以下、必要な学習内容を検討したり、必要に応じた精選を行ったりしてはどうかとありますが、これは非常に重要な指摘だと思います。ただ、内容削減自体を目的とした削減であってはならないと思いますし、質的理解の獲得のために、あくまでも必要に応じた精選をするということであるべきだと思います。
第1回のときにも申し上げましたが、京都府のように経済的に非常に厳しい地域もある中で、これは京都府だけではありませんが、標準授業時数とか学習指導要領が定める学習内容というのは、格差の拡大を防ぎ、子供たちに必要な力を身に付けさせるために大いに機能してきたという側面を御理解いただきたいと思います。
今回、標準授業時数については、その本質的な機能を維持した上で弾力化を図るという優れた提案がなされていますが、学習内容についても、各教科等の本質的理解の獲得のために必要に応じて精選を図ることができるということが重要であり、本質的な機能を失わないよう、すなわち、子供たちの身に付く力が弱ったり貧しくなるような、削減ありきの方針ではないということを明確に打ち出していただきたいと思います。
繰り返しになりますが、学習指導要領が格差拡大を防いできた側面があるということを御理解いただきたいと思います。こうした前提があればこそ、中核的な概念等をつかみやすい方向で改善するとか、調整授業時数制度により、各教科の標準を下回る時数で指導を可能にするといった、教育課程の在り方の改革と整合性のある教科書の精選についても大いに歓迎したいと思います。
教科書の精選や指導書の改善については、事務局の提案のような在り方でぜひ進めていただきたいと思います。
もう一つ、高校入試が話題に出ておりますので、6のところですが、設置者でもありますので、少しコメントさせていただきたいと思います。
中学側から言いますと、保護者の要望等によって、教科書の内容を網羅的に指導する必要が高校入試から起こってくるという指摘については一定理解できます。ただ、都道府県側についても、採点の公平性ですとか、そのための時間の確保ですとか、問題作成ですとか、もうそういったところですぐに進まない状況があったということは御理解いただきたいと思いますが、今、改善の道半ばであると言っていいと思います。
一方、都道府県において質的改善をすることは当然のことでありますので、都道府県の権限と責任において取り組むべきことではありますが、学力検査と調査書を原則とする学校教育法施行規則の在り方ですとかも含めて、国として高校入試の改革の方向性を示すことは重要ではないかと思います。また、それに伴った伴走支援も検討いただきたいと思います。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
では、会場から、堀田委員、お願いいたします。
【堀田主査代理】 堀田です。先ほど資料の説明をしましたが、今度は、資料1-1で言えば、21ページにあるデジタル教科書推進ワーキンググループの主査を拝命しておりますので、その立場から少しコメントしておきたいと思います。
現行の法令では、教科書というのは紙ということになっております。検定し、義務教育段階では無償給与という、これは優れた国策、世界的にも誇るべきものだと思っております。
一方で、デジタル教科書は、紙の教科書と同等のものをデジタルにしたものをデジタル教科書と呼ぶということになっていて、ゆえに検定は不要であり、しかし、使うときは、これは代替教材として使うということになっているということでございます。そして有料です。
現行の学習指導要領の下では、このスキームで進むことになっているわけですが、教育課程企画特別部会で次の学習指導要領がどうあるべきかということが審議され、教科書はどうあるべきものなのかということが議論されています。
このワーキングでは、こちらの教育課程企画特別部会の検討を見ながら、デジタルの場合のいろんな課題とか、そういうようなことを先回りしていろいろと検討しているところでございます。
私思うには、一人一人の子供に多様な考えとか豊かなリソースを提供するとかいう観点から、教科書会社はいろいろ工夫をし、結果として現在の教科書は厚くなってしまい、教科書に載っているものは全部大事だという考え方から、全てのことを網羅的に教えないと保護者にいろいろ言われてしまうんだということから、先生方もどうしても網羅的にというふうになっている、結果的に浅い授業になりがちであるという御指摘があると思います。みんな良かれと思ってのことなのだと思います。
また、今回の学習指導要領の検討では、中核的な概念を明確にするという方向ですから、中核的な概念を中心とした教科書にしていくということになれば、厚さ問題も解消されると思いますし、中核的な概念を理解するために、獲得するためにデジタルが手伝える部分というのは、例えば、何かが動いて、あ、そういうことかあって分かるみたいなことはあると思います。
一方で、習熟のようなものは、一人一人のペースや理解度などに合わせてデジタルが強みを出せるところだと思いますし、また、いろんな方向に発展的に学んでいくようなことも、デジタルで提供される多様な学習リソースが支援できることはいろいろあると。
つまり、こういうデジタルの強みが発揮できる部分をデジタルにある程度委ねていけば、紙のよさはもちろんありますから、中核的な部分の大事なところが紙に残ると考えると、この教科書厚さ問題も解決するのかなと考えます。
つまり、紙のよさを生かし、デジタルのよさも生かした、そういう併せ持ったものを教科書と呼ぶという定義にすることができれば、今のようなことは実現するのですが、教科書というものが何なのかということの再定義みたいなところ、これはもちろんたくさんの法令に関わりますし、業界のいろんな御苦労とも関わりますし、予算的なこともいろいろありますので、そういうことの難しさとあるべき姿、新しい時代の教育課程に合わせた教科書の在り方ということを、慎重かつ、でも大胆にこのタイミングで議論しておかなければいけない大事なことなのかなと思っております。
諮問には、デジタルでリアルな学びを支えると書いてありますので、このことを考えると、子供が学ぶというのは、体験も紙も含めて非常に重要なことであり、これをデジタルの強みをうまく生かして助けていくのだという考え方で教科書も構成されるということが望まれるのかなと思っております。
私からは以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
私のほうから堀田委員に、ぜひこの資料についてもコメントいただきたいとリクエストをお願いして、御発言をいただいたところでございました。
では、オンラインから、秋田委員、お願いいたします。
【秋田主査代理】 学習院大学の秋田です。今日は途中からの参加になっておりまして、もしかすると既に様々な御意見が出たものと重複しているところがあるかもしれませんが、どうぞ御容赦ください。私のほうから3点申し上げたいと思います。
まず、1点目につきましては、ほかの委員からも出ておりましたけれども、まず教科書の内容の精選と、それから、学習のためにデジタルをうまく学習教材を活用していくという方向性に賛成でございます。
ただし、教科書というものが一体何なのかということの問い直しが必要であろうと思っております。
実は、先ほど植阪委員も話されましたけれども、教科書というものが、教師が教えるためのものなのか、児童生徒が自ら学習のための材として使うものなのかというところです。実際に私や関係者の人が教科書の使い方、読み方、利用の仕方を学校で学んだことがあるかと学生に聞くと、ほとんど教職課程でも学んでいないということが分かります。また、実際に教科書をどう読んだりどう使ったら自分たちの学びに役立つのかということを子供時代に学んだことのある学生もほとんどいません。
実際に自分で主体的に教科書を使って学ぶ学び方、教科書を、例えば、「たぶん、もしかして」と推測しながら読むたぶん読みをするとか、自分でまずは読んで意味調べをしてから学んでみると分かりやすいとか、教科書中のキーワードが使えるように読んだり活用できるといいよとか、自己調整学習の中で教科書が自分の学習の歩みを支えてくれるものになるという、そういう発想の教科書の使い方をまずは行っていかないと、教科書をいくら薄くしたり精選をしても、また、教師が教える指導書も、教師が教えるというものとしてではなく、まさに生徒が自分で学習を進めるために獲得する概念を支えてくれるものであるというような形の発想への転換が必要です。併せて教職課程でも、また、実際の教員研修等でも、教科書利用の仕方、それを生徒自身が自分で使えるようにしていくことがまず求められます。だからこそ1人1冊が意味を持ってきますし、そのために精選はするけれども、ビジュアル部分が重要な概念の精緻化のためには役に立つというようなことにもなります。そこを紙にするのか、デジタルをもっと利用していくのかというような議論が必要であろうと考えます。
教科書そのものの位置づけ、内容は検定があり、内容は押さえるべきことがあるわけですけれども、しかしながら、それを誰がどのように使うと有効なのかということについて、教科書会社自体も理解していただき、また、ここでも議論をすることが、単に教科書を薄くするということではなく、教科書の利用の仕方、学び方とともに、活用するという議論が必要だろうと思うということが1点目であります。
それから、2点目は、先ほど行事の話が奈須委員からもありましたけれども、行事の時数をどう扱うのか、また、行事の在り方が教師の負担になっているというところと、その行事等の時間が多い学校と少ない学校で、恐らく行事そのものの扱いやその準備の仕方が今変わってきています。運動会をはじめ、様々な文化祭等でもかなり生徒に委ねたりしているところと、教師がかなり準備に時間を使っているところがあるという現実があります。
この辺も実態を調査しながら、実際にどれぐらいの時数でどういう意味あるものができるのかの検証が必要です。これは統一ではなく、学校や地域の裁量があっていい内容だと思いますけれども、妥当な時数というものをやはり示していくことが必要だという奈須委員の御意見に賛成でございます。
そして、最後に3点目ですけれども、余白をつくっていくために柔軟であるというときに、子供の側から見た柔軟性ということを古賀委員からも言われていましたけれども、やはり子供自身が学びの見積りを教師とともにつくり、それによって柔軟にできるような弾力性を持った教育課程が発達の段階に応じてつくられていくということが大事です。単にモデルで出されたものをまねしてつくれば大丈夫というような形ではなく、地域、学校の裁量による柔軟性を、教師、それから、子供にとっての余白を持った学びが保障できる教育課程の在り方という形で議論を進めるべきではないかと思います。
以上が3点になります。ありがとうございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
皆様の御協力をもちまして、比較的今日は予定どおり進んでいるところですけれども、どうしても付け加えて発言をしたいという方がいらっしゃいましたら、お一人かお二人ぐらい御発言できる時間がありますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
もし時間が余ったら、今日は座長も発言していいと事務局の方からお許しをいただきましたので、短く2点だけ発言をさせていただきたいと思います。
まず、1つ目でございます。事務局から出していただいた資料の28ページ、これは本当に今現場の先生方、これをとても注目して御覧になってくださっていると思います。週28コマ、または、中学校で27コマの場合も踏み込んで書いていただいて、なるほどこういう形なのかと思っていらっしゃる方が多くいらっしゃると思います。
その上で、これはとても参考になるいい資料、考えるきっかけになるにはとてもいい資料だと思うのですけれども、この資料はあくまでも横展開しやすい一つの例としてお示しいただいたものだと思います。各学校のカリキュラムやカリキュラム・マネジメントというのは、目前の特定の現場に講じる特定の手だてであって、それぞれの学校の諸条件に応じて考えていただくということが重要かと思いますので、この資料に過剰に縛られることがないように、むしろこれをきっかけにして、ぜひ各学校で自校の最適解を御検討いただきたいと思います。
関連して、あえて申し上げると、カリキュラム・マネジメントは、やりくりや節約ではなく、あくまでもカリキュラム・マネジメントだということです。それを考えますと、もう一つ、12ページの資料では、目黒区さんの研究開発学校の日課の事例をお出しいただいていて、事務局の側から、これはさらに専科の先生などが入り、空きコマもありますという口頭での補足がありましたが、そこの部分が恐らくとても重要で、そして、そういう柔軟なカリキュラム・マネジメントをするには、やはり条件整備がとても重要だということを、私はこの目黒区の日課表を拝見してさらに感じたところでございます。これが1点目です。
2点目、これもちょっと懸念になります。今日は、植阪委員も御指摘されたとおり、現行の制度でも結構ここまで柔軟にできるんですよということをお示しいただきました。これ、できますよというメッセージもなりますけれども、できている学校もあるけど、あなたたち、やってないところもあるよねというような伝わり方をするのは、我々の望むところではありません。
というのは、先生方はやりたいと思っていらっしゃるんだと思うのですよね。例えば、今日網羅性の呪縛という話が出てきましたが、この網羅性の呪縛も、決して先生方が呪縛されているというよりも、他者に勝ち抜くとか、勝者と敗者があるといったような強固な日本の学力観と連動していて、どうしても網羅性を担保せざるを得ないというところなのだと思いますね。
この辺りは、入試への規制をするのは悪手だという御指摘もありましたので、または、ちょっとずつしか進んでいかないということでしたので、そこにというよりも、ただ、学校を説明の矢面にあまり立たせないでいただきたいなと思っているところがあります。せっかく学校が挑戦的なカリキュラム・マネジメントをしようとしたときに、その説明まで一人でやらなければいけないというのは、非常にしんどいので、ぜひ文科省から強いメッセージを出していただく、または、教育委員会の方々に保護者の方や地域の方への説得という役割は受け止めていただいて、学校はカリキュラム・マネジメントに専念できるようにしていただきたいなと強く思います。
もちろん、決してできていない学校を責めるつもりで事務局も資料を出してくださっているわけでもないですし、ここの委員の方々もそういうふうに思っているわけではないので、みんなでちょっとずつ進めていければなと改めて思ったところでございます。
ということで、今日、横浜市さんのほうからとてもいい発表をいただいたところでございます。横浜市にお返しする前に、遅れていらした髙島委員が御入室されましたので、髙島委員、もし御意見ありましたら、どうぞお願いいたします。
【髙島委員】 議会中で大変遅くなりました。失礼いたしました。
余白を生み出す様々な工夫、御提案いただきまして、ありがとうございました。おおむね賛成ですし、敬意を表したいと思います。
先ほどの貞広先生のお話とも本当にかぶるのですが、改めて、これ、やっぱり保護者の理解がとても大事だと思います。特に中学校現場を見ていると、時数が減るということに対する忌避感があるなと感じます。それはつまり高校入試対策が十分にできるのか、という懸念もあってのことではないでしょうか。恐らく教科書や指導書が分厚くなっているのも、現場の要請もあるのではないかなとも思います。というのも、何か保護者に言われたときに、「いや、これ、教科書どおりなんです」と言えてしまうというのが、先生にとってすごく大きな心のよりどころになっている側面もあると思うんですね。保護者の理解こそが重要というのは、今まさに進められている部活の地域展開も同じかもしれません。
やっぱり保護者の方々は、御自身が受けられた時代の教育から来る何らかの経験や、固定観みたいなものもあると思いますので、いかに学校側が説明しやすいような情報発信を全体で、国全体でやるかというのはとても大事だと思います。
兵庫県では、いわゆる「トライやる・ウィーク」と呼ばれる1週間の体験活動というのが、県内すべての公立中学校で行われています。これは何かと言うと、1週間、例えば、いろんなお店で体験をする。市役所に1週間来る生徒もいれば、福祉施設に行く生徒もいるわけなのですね。それはともすれば、そんなことより授業をやってくださいと言われそうなものですが、これは阪神・淡路大震災等々の経緯で始まったものなのですけれども、全県でやっているからこそうまくいっている部分ってあるなと思います。つまり、みんなでこの方向に進んでいくんだということをちゃんと打ち出して、ちゃんと意義を説明することができれば、保護者の理解も得られるのではないかということです。
まさにこの余白を生み出すための様々な工夫は、質を上げるためにやるんだということを改めて文科省のほうからもしっかり発信していただくと、現場のほうもやりやすいのではないかなと思っています。
すみません。あと高校入試についていろいろ話したいのですけれども、またちゃんと、次回、次々回ぐらいにあるという話なので、そのときに話したいと思います。
以上です。
【貞広主査】 意見をお待ちしております。本当に駆けつけていただいてすぐに御指名してしまいまして、申し訳ありませんでした。どうもありがとうございます。
では、改めまして横浜市さんのほうに、松原委員、今村委員、内田委員、古賀委員、そして、奈須委員から具体的な御質問をいただいています。答えられるところだけでも結構ですので、応答いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【横浜市立獅子ヶ谷小学校(大塩)】 それでは、まず私のほうから何点かお答えさせていただきます。
まず、職員のアンケートで、「変わらない」というところのパーセンテージのことについてですが、これ、実は毎年アンケートを取っておりますので、変わらないというのは、実は前の年に変わっているものがそのまま変わらないというふうになっておりますので、そういう意味で、実は変わった状態がキープされているというふうに御理解いただければと思います。ですので、このグラフの中で言えば、「やや思わない」という職員がかなり減少したというところが注目されるところではないかなと思います。
そして、2点目です。裁量のある時間の使い方ですが、何か大きく変わっているわけではなくて、例えば、通常の時間よりも30分余裕がございますので、そういったところで、例えば、令和3年、4年、5年ぐらいでしたら、端末の使い方について職員同士でいろんな話合いをしたり、子供たちのことについての職員同士での話であったり、一番変わったのは、もしかしたら保護者対応が、これまでよりも時間の余裕があるので、丁寧にできている。逆に、そこが学校の落ち着きにつながっている可能性はあるかなと思います。
そして、下校時間が早まったことへの対応ですが、こちらについては、横浜市では放課後キッズ、いわゆる学童保育を公的にやっておりますので、こちらのほうに預けていただく家庭が若干増えているかなと思います。
また、横浜市では、今後朝預かりも今予定されているところでもございますので、こういった家庭へのフォローも含めて、教育委員会と一緒にやっているところでございます。
そして、次でございます。家庭へどういうふうに説明したのかというところでございますが、これ、実は40分授業はコロナ禍の中から進められておりましたので、逆に、それが令和3年度からは、それをそのまま継続するということでやってまいりました。保護者へは、子供たちの実態にとても合っているということ、時数はきちんと確保されるということ、そして、学力もきちんと保障できますよというところを説明しています。
また、毎年のことですが、早く下校することであることや、登校時間が早まるなど、若干の変更点についても丁寧に保護者に発信することで御理解を得られています。今のところ、これについての苦情というのは一件も来たことはございません。
また、本校に限らず、ほかの実施している学校においても、それは同様でございます。
次でございます。行事の少ないというところへのことでございますが、これもやはりコロナ禍で本質について校内で議論し、行事の精選をまず行いました。そこでまず大きく減ったところでございます。そして、教科的に取り扱えるものは重なりをなくすようにということで、教科の取扱いの中でも進めてまいりました。
そして、実態としては、逆に今度は特活が増えつつあります。これはやはり職員が経年の中で、子供たちにこういうことが必要だということを話し合い、そして、少しずつまた学校として変わってきているというようなところでございます。こういったところが大きなところでございます。
私からは以上でございます。
【貞広主査】 ありがとうございました。
では、続きまして、お願いいたします。
【横浜市教育委員会(丹羽)】 では、続きまして、私からは、横浜市学力学習状況調査についても触れていただきましたので、そちらについてと、それらの結果が学習ダッシュボード上で可視化される意味みたいなものを御説明したいと思います。
まず、横浜市学力学習状況調査ですけれども、これ、横浜市の教職員と指導主事が連携・協働しながら、横浜の子供の資質・能力の育成状況を把握するために、問題作りから行っています。ですので、横浜の子供、はまっ子と言われているのですが、はまっ子のための調査ということで、実際には小学校2年生から中学校3年生までの全ての子供たちが対象になっていて、特別支援学校もしくは特別支援学級においても、本人の希望と保護者の希望があれば、その調査に参加するということになっていて、約23万人分のデータが毎年蓄積されていくことになっています。
学力レベルで経年変化を追っていくことができますので、毎年の成長ですとか、もしくは変化を、小学校1年生の学力から中学校2年生までの8年分を追うことができるようになっています。
これによって、子供たちは自分の学力状況をよく知ることができまして、次の学びというものを自らがつくっていくための基礎データ、基礎資料になっている。また、教職員に関しては、指導や支援の在り方について、エビデンスに基づいて一人一人の子供の成長に寄り添っていく、そういったデータになっているということと、我々横浜市教育委員会事務局においては、教育のEBPMを進めていく上でのローデータになっているというようなことです。
また、保護者の皆様とは、教職員と保護者がこの学力学習状況調査の結果を共有するだけではなくて、子供自らが保護者と状況を共有することを促していますので、保護者にとっては、横浜市の学校教育はどんなことをしているのか、どんなことに取り組んでいるのかということを知る一つの手だてにも、もしくは機会にもなっています。
2つ目の、なぜこれが学習ダッシュボード上で可視化されているのかということですけれども、それはやはり子供自身から言いますと、自分自身の学力の状況を子供自身が確認したいタイミングでしっかり確認できるということと、あとは、教職員のダッシュボード上にもあるということは、日頃の授業場面において、ふだんの授業とこの子供たちの調査の結果というものがどういうふうにリンクしているんだろうということで、時にはアジャイルに対応する、そういった机間指導の中でも、こういった結果をダッシュボード上に表現しながら、表しながら、指導と支援の質を高めよう、そういったときに使われている状況がございます。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
大変優れた取組をされているということがさらに分かりました。どうもありがとうございます。
では、事務局のほうに、先ほど奈須委員、秋田委員の御指摘がありました特活、学校行事の件については、武藤課長より応答をお願いいたします。
【武藤教育課程課長】 教育課程課長の武藤でございます。
先ほど奈須教育課程部会長から、特別活動の標準時数、枠外の時数の在り方について議論すべきという御提案があったかと思います。
今日の説明資料の中の補足イメージの丸1、ここで掲げている時数、小学校60コマと中学校45コマ、ここについては、あくまでも全国平均を踏まえて置いた仮の数字でございまして、特に基準性を持たせてお示したものではございません。一応補足的な説明です。
先程、奈須部会長のほうからもありましたとおり、これは標準時数の枠外でもあって、各学校の創意工夫で計画して時数を配当していただいている部分でもございますので、まさに部会長おっしゃったとおりで、ここを標準として規定するようなことは慎重であるべきというのは印象として持っております。
ただ、その一方で、特別活動は日本型学校教育の非常に評価もされている特徴的な部分であるのに、この間の様々な動きの中で、活動として少し細ってきているという御指摘もあるところでございまして、今後、この特別部会の論点整理を検討する中で、このことについても一定程度議論していただき、その議論を踏まえて、今度は特別活動のワーキンググループでさらに議論を深めていただくことが考えられると思ったところです。
いずれにせよ、また奈須部会長、それから貞広主査とも御相談の上で、また考えてまいりたいと思っております。
以上です。
【貞広主査】 ありがとうございます。
奈須先生、よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
皆様の御協力をもちまして、何と時間内に終わりそうでございます。ありがとうございました。
ただ、継続審議のような事項も幾つか御指摘ございましたので、事務局で引き取っていただいて、ぜひ今後の検討課題にしていただければと思います。ありがとうございました。
それでは、最後に、次回の予定につきまして、事務局よりお願いいたします。
【栗山教育課程企画室長】 次回は7月4日金曜日9時半から12時を予定しておりますが、正式にはまた別途、御連絡を差し上げます。
【貞広主査】 それでは、以上をもちまして閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
電話番号:03-5253-4111(代表)